主文 被告人を懲役10年に処する。 未決勾留日数中150日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、名古屋市(以下、住所省略)被告人方で、母親であるA(以下「被害者」という。)と二人暮らしをしていたが、進路選択について希望を聞いてくれなかったことなどから、長年被害者に嫌悪感を抱いており、令和4年11月に父親が死亡して以降は相談する相手もいなかった。そのような中、被告人は、父親の誕生日であった令和6年9月4日、父親の仏壇に供え物をしていたところ、被害者から「いつまでも死んだ人のこと思っとらんでもええんだわ。」などと言われたことにより、自身や父親を侮辱されたと感じ、同月5日午後8時頃、前記被告人方において、就寝中の被害者(当時82歳)に対し、嫌悪感を増幅させ、被害者に消えてほしいと考え、殺意をもって、その頭部を両手で持った鉄アレイ(重量約1.96キログラム。名古屋地方検察庁令和6年領第2187号符号1)で複数回殴り、よって、その頃、同所において、同人を頭部外傷による外傷性ショックにより死亡させて殺害した。 (量刑の理由)本件は、被告人が、同居の母親に対し、その頭部を鉄アレイで複数回殴って殺害した事案である。 被告人は、就寝中で無防備な被害者に対し、約2キログラムという相応の重さのある鉄アレイで、その頭部を少なくとも7回殴打しており、その犯行態様は残忍で死の危険性が高いものである。また、被害者の遺体には、頭蓋骨骨折、脳挫傷、くも膜下出血等が生じている上、出血量も多かったことからすれば、被告人が被害者を強い力で殴ったと認められる。それに加え、被告人は、最初の攻撃で被害者が声を出し、防御するような姿勢をとっても、なお攻撃を続けたのであるから、その殺意は強固なも とからすれば、被告人が被害者を強い力で殴ったと認められる。それに加え、被告人は、最初の攻撃で被害者が声を出し、防御するような姿勢をとっても、なお攻撃を続けたのであるから、その殺意は強固なも のといえる。本件犯行により被害者の尊い生命が奪われ、取返しのつかない重大な結果が生じたことはいうまでもなく、突然実の娘に殺された被害者の衝撃、痛み、恐怖は計り知れない。 被告人は、罪となるべき事実記載のとおりの経緯で本件犯行に及んでいる。長年にわたる被害者の言動は、被告人にとっては理不尽であり、とりわけ本件前日の言動は被告人の父親への思いを踏みにじるようなものだったかもしれないが、娘に対する接し方として行き過ぎたものとは言い難く、被害者に落ち度があったとまではいえない。 そのため、このような動機・経緯を有利に斟酌することはできない。なお、弁護人は、被告人が被害者との生活面につき先行きへの不安があったことを指摘するものの、そのような事情が本件犯行に直接影響したとは認められない。 他方、被告人が、犯行の翌々日朝であったとはいえ自首をしていること、上手く言葉に表現できていない部分はあっても、被告人なりに自身の行為を後悔し、反省の態度を示していることは、被告人に有利に酌むべき事情といえる。 以上の事情を考慮し、被害者が親で鈍器類を凶器とする同種事案の量刑傾向も参照した上で、被告人を主文の刑に処するのが相当であると判断した。 令和7年6月2日名古屋地方裁判所刑事第1部 裁判長裁判官森島聡 裁判官津島享子 裁判官藤井茜 津島享子 裁判官藤井茜
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