平成18(ワ)22173 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成21年1月26日 東京地方裁判所 棄却
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判決文本文23,873 文字)

平成21年1月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成18年(ワ)第22173号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成20年10月27日判決主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,原告に対し,3325万9740円及びこれに対する平成18年10月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,被告の開設するA病院(以下「被告病院」という)内科に従前か。 ら糖尿病等の治療のために通院し,平成16年2月7日に誤嚥性肺炎,インフルエンザ等との診断を受けて被告病院内科に入院して治療を受けていたBが,入院中の同年4月2日に死亡したのは,被告病院の医師においてBの脱水症状に対する対応や血糖値のモニタリングを適切に行わなかったためである,などと主張して,Bの子である原告が,被告に対し,不法行為に基づいて,Bの死亡慰謝料等の損害金及びこれに対する訴状送達の日の翌日からの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 前提事実(すべて当事者間に争いがない)。 (1)当事者原告は,平成16年2月7日(以下,特に断らない限り,同年のことを指すものとする)に被告病院内科に入院し,被告病院に入院中の4月2日に。 死亡したBの長男である。 被告は,被告病院を開設している医療法人社団である。 (2)Bの診療経過等Bは,大正5年○月○○日生まれで,かねてから糖尿病等の治療のため被告病院に通院し,非インスリン型の経口薬の投薬療法を受けていた。 Bには,2月6日から発熱,嘔吐等の症状がみられ,同月7日に誤嚥性肺炎,インフルエンザ等との診断を受けて被告病院に入院して治療を受けていたが,4月2日に死亡した。 Bの入院後に被告 法を受けていた。 Bには,2月6日から発熱,嘔吐等の症状がみられ,同月7日に誤嚥性肺炎,インフルエンザ等との診断を受けて被告病院に入院して治療を受けていたが,4月2日に死亡した。 Bの入院後に被告病院がBに対して行った主な医療措置や検査結果は,別紙診療経過一覧表記載のとおりである。 争点 (1)原告の主張の骨子アBの死亡に至る機序Bについては,以前から高血圧や心房細動により心機能が低下していたが,3月9日以降の脱水と糖尿病管理の不徹底による糖尿病の悪化が相互に悪循環を形成し,次第に血糖値が上昇していたところに感染症を併発して糖尿病性昏睡に陥り,意識障害を起こすほどの全身状態の悪化や,心不全の発症を経て,死亡するに至ったものであり,糖尿病治療の不徹底による糖尿病の悪化,不十分な糖尿病管理,脱水,糖尿病性昏睡が競合してBの死亡の大きな要因となった。 イ医師の過失の有無,,被告病院の医師には①補液の中止によってBを脱水症状に陥らせた上利尿剤を投与してこれを悪化させ,Bを糖尿病性昏睡に陥らせた過失,②Bの血糖値検査を怠り,血糖値の上昇を看過した過失,③Bが糖尿病性昏睡に陥った後に補液,インスリンの投与等の適切な治療を怠った過失がある。 (2)被告の主張の骨子 アBの死亡に至る機序重症の肺炎患者であったBは,3月16日夜に感染症を発症したため,被告病院の医師が抗生剤を投与したところ,菌交代症により抗生剤の効か(。 「」。)ない耐性菌メチシリン耐性黄色ブドウ球菌以下MRSAというが増殖し,その感染により再燃した重症の肺炎を直接の原因として死亡したものである。Bは,感染症を契機に一時的に糖尿病性昏睡に陥ったものの,糖尿病性昏睡は直接の死因ではない。同月24日に急上昇した血糖値は,ヒューマリンRの静注によっ 症の肺炎を直接の原因として死亡したものである。Bは,感染症を契機に一時的に糖尿病性昏睡に陥ったものの,糖尿病性昏睡は直接の死因ではない。同月24日に急上昇した血糖値は,ヒューマリンRの静注によって同月25日未明には下がっており,同月26日には意識レベルも入院直後と同程度に改善しているから,同月24日の糖尿病性昏睡による意識レベルの低下は一時的なものであり,これがBの死亡を招来したということはない。 イ医師の過失の有無Bに対しては肺炎に対する治療はもとより補液血糖値のコントロー,,,ルも含め,適切な治療が行われていたものであり,被告病院の医師に過失はない。 (3)Bを脱水症状に陥らせた過失の有無(原告の主張)ア補液の中止被告病院の医師は,2月7日から同月20日までは1日当たり2240mlの,同月21日から同月27日までは1日当たり1200mlの補液をBに行っていたが,同月28日から3月16日までの間,Bに対する補液を中止した。Bは,補液が中止されていた間に脱水症状に陥った。 イ利尿剤の投与被告病院の医師は,3月2日から利尿剤であるラシックスを投与してBの脱水症状を増悪させ,Bを糖尿病性昏睡に陥らせた。 ウBの臨床症状 Bには,3月9日には水様便がみられ,同月10日から同月13日まで及び同月15日には下痢を起こし,看護記録においても同月12日に「脱水の影響心配,同月23日及び同月24日に「浅表性速拍呼吸あり」と」の各記載があり,臨床的にみて脱水症状があったことは明らかである。 エBの検査結果(ア)BUN値及びクレアチニン値Bが3月10日ころに脱水症状に陥っていたことは,BUN/クレアチニン値が一貫して高い数字を示していたことから明らかである。 また,Bの腎機能は,同日にはBUN値43.1mg/dl,クレア チニン値Bが3月10日ころに脱水症状に陥っていたことは,BUN/クレアチニン値が一貫して高い数字を示していたことから明らかである。 また,Bの腎機能は,同日にはBUN値43.1mg/dl,クレアチニン値1.3mg/dlと大幅に悪化しているところ,その要因として最も考えられるものが脱水である。 さらに,同日(1.3mg/dl)及び同月17日(1.0mg/dl)のBのクレアチニン値の上昇は,Bが脱水症状を起こしたことを示すものである。 (イ)ヘモグロビン値及びヘマトクリット値3月17日におけるBのヘモグロビン値(14.5g/dl)及びヘマトクリット値(41.9%)の急上昇は,血液中の水分が減少していることを意味し,脱水症状と矛盾しない。 また,ヘモグロビン値やヘマトクリット値が正常値の範囲内であっても,水分欠乏型脱水症等の赤血球増加症を伴わない脱水症状に陥ることはある。 (ウ)尿比重値腎機能障害が発生していた3月11日以降の尿比重値では,脱水症状の有無を判断できない。 (被告の主張)ア補液について 被告病院の医師は,2月28日以降,経管栄養によりエンシュア及び白湯を投与し,経管栄養を中止した3月17日以降,1日当たり合計2340mlの補液を行っており,運動量の少ない高齢者に対する補液として十分である。 イ利尿剤の投与について糖尿病患者に対するラシックスの投与は禁忌ではないとされているところ,Bの尿量は3月に入ってから減少しており,脈拍の急上昇及びカリウム値の上昇もみられたことから,利尿剤を投与する必要性が高かった。被告病院の医師は,同月2日から1日当たり10mg,同月15日からは1日当たり20mgのラシックスを毎日投与しており,投与量は適切であった。利尿剤の投与は連日行われていたが,同月23日及び同月24日にも尿量は増 は,同月2日から1日当たり10mg,同月15日からは1日当たり20mgのラシックスを毎日投与しており,投与量は適切であった。利尿剤の投与は連日行われていたが,同月23日及び同月24日にも尿量は増えていないから,利尿剤の投与によって糖尿病性昏睡に陥ったという関係にはない。 ウBの検査結果について(ア)BUN値及びクレアチニン値Bのクレアチニン値は,BUN値とともに上昇しているから,腎機能障害の進行を示す所見というべきであり,脱水の根拠とはならない。 (イ)ヘモグロビン値及びヘマトクリット値ヘモグロビン値及びヘマトクリット値の上昇すなわち赤血球増加は脱水の重要な指標となるところ,3月10日,同月17日,同月18日及び同月23日のヘモグロビン値及びヘマトクリット値は,いずれも正常値の範囲内ないし下限未満であり,Bは脱水の状態にはなかった。 (ウ)尿比重値脱水の指標として尿比重値があるところ,3月11日(1.015)及び同月12日(1.016)の尿比重値は,正常値の範囲内であり,Bは脱水の状態にはなかった。 (4)Bの血糖値管理を怠った過失の有無(原告の主張)被告病院の医師は,糖尿病患者であるBに血糖値検査を行い,血糖値が上昇した場合にはこれを下げる治療をしなければならない。しかし,被告病院の医師は,3月10日に血糖値検査を行った後は,同月24日までBに血糖値検査を行わず,同月17日以降Bの血糖値が上昇していたにもかかわらずこれを放置して,Bを糖尿病性昏睡に陥らせた。 Bが糖尿病治療を目的として入院した患者ではなかったとしても,糖尿病の既往症を持っているのであるから,糖尿病の治療目的で入院した患者と同程度の注意義務をもって血糖値管理をしなければならないのは当然のことである。 (被告の主張)Bは,入院直前の2月2日まで月に 病の既往症を持っているのであるから,糖尿病の治療目的で入院した患者と同程度の注意義務をもって血糖値管理をしなければならないのは当然のことである。 (被告の主張)Bは,入院直前の2月2日まで月に1回程度被告病院の外来受診において内服薬による非インスリン型の治療を受けており,同日のヘモグロビンA1Cが5.8%と血糖コントロールが極めて良好な状態を保っていた。また,(),。 Bの入院直後の血糖値218mg/dlは高い値を示していなかったそして,Bの同月24日から3月17日までの経管栄養による摂取カロリーは1日当たり750kcalから1000kcalまでに抑えられており,それ以外の入院期間中の点滴による摂取カロリーは1日当たり500kcalを超えないようにコントロールされていた。 これらを前提に,被告病院の医師は,適時適切にBの血糖値の測定を行うなどして血糖値管理を行っていたものである。 Bの血糖値は同月24日に突然上昇したものであるところ,高血糖を生じる原因は,感染症,軽微な身体の変化等多様であり,これを予見し,回避することはできない。 (5)Bの糖尿病性昏睡に対する治療を怠った過失の有無 (原告の主張)糖尿病患者が糖尿病性昏睡に陥ったときは,直ちに血管を確保し,補液,インスリンの投与等による適切な治療を行うべきであるのに,被告はこれを怠った。 (被告の主張)被告病院の医師は,Bの高血糖が判明した3月24日午前11時半の直後である午前11時45分からインスリンであるヒューマリンRの静注を開始し,その後も,数時間おきに血糖値を計りながら,血糖値の降下に合わせて量を調節しながらヒューマリンRの静注を継続している。 また,被告病院の医師は,Bの血漿内ナトリウム濃度の上昇に備えて生理食塩水よりもナトリウムの少ないソリタT1によ りながら,血糖値の降下に合わせて量を調節しながらヒューマリンRの静注を継続している。 また,被告病院の医師は,Bの血漿内ナトリウム濃度の上昇に備えて生理食塩水よりもナトリウムの少ないソリタT1による補液を行っている。 このように,Bが糖尿病性昏睡に陥った後の被告病院の医師の対応は迅速かつ適切なものであった。 (6)損害(原告の主張)被告の不法行為により,Bに発生して原告が相続した損害は,下記のアないしウの合計3325万9740円を下らない。 ア死亡による慰謝料3000万円イ証拠保全費用送達費用3724円弁護士手数料10万4000円記録謄写費用11万2653円画像コピー代1万5750円ウ弁護士費用302万3613円(7)被告の過失とBの死亡との間の相当因果関係の有無(原告の主張) 被告による糖尿病管理の不徹底が糖尿病の急激な悪化すなわち糖尿病性昏睡を引き起こし,これによる全身状態の悪化がBの死亡という結果を発生させたのであって,被告の過失とBの死亡との間に相当因果関係があることは明らかである。 (被告の主張)Bは,3月25日及び同月31日の胸部X線写真の肺の浸潤影等が示すとおり,遅くとも同月23日に感染したMRSAに起因する肺炎による呼吸不全で死亡したものであり,被告の行為とBの死亡との間に相当因果関係はない。 第3当裁判所の判断 本件に関係する医学的知見後掲各証拠によれば,本件に関係する医学的知見に関し,以下の各事実を認めることができる。 (1)脱水症状について,,,脱水症状の所見として臨床症状における皮膚や粘膜の乾燥血圧の低下,,,,頻脈等が血液検査におけるヘモグロビン値ヘマトクリット値BUN値BUN/クレアチニン値の上昇が,それぞれ挙げられる(甲B6ないし8,乙B 症状における皮膚や粘膜の乾燥血圧の低下,,,,頻脈等が血液検査におけるヘモグロビン値ヘマトクリット値BUN値BUN/クレアチニン値の上昇が,それぞれ挙げられる(甲B6ないし8,乙B7,証人C。 )女性のヘモグロビン値は11.3g/dlから15.2g/dlまでが,女性のヘマトクリット値は33.4%から44.9%までが正常値であり,ヘモグロビン値が高値(軽度ないし中等度増加)を示した場合には,二次性多血症ストレス多血症脱水による赤血球増加症等の原因が考えられる乙,,(B10・1頁,2頁。 )BUN値は,8.0mg/dlから20.0mg/dlまでが正常値とされ,女性のクレアチニン値は,0.3mg/dlから0.8mg/dlまでが正常値とされている(乙A1の1・141頁ないし159頁,乙A2・1 03頁ないし116頁。 )尿比重値は,1.015から1.025までが通常の基準値であり,1. 030以上の高値を示した場合には,脱水,糖尿病,ネフローゼ症候群等の原因が考えられる(乙B12・1頁。 )(2)人体から1日で失われる水分量について経口摂取ができない状態が持続している場合には,不感蒸泄量(体重1k)()g当たり15mlと尿量を加えた量から代謝水体重1kg当たり5mlを差し引いた量の水分が24時間で自然に失われる。これに加えて,発汗,下痢嘔吐胃液の吸引等が持続している場合はさらに水分が失われる乙,,,(B8・2頁。 )(3)ラシックスについてラシックスは,利尿降圧剤であり,腎機能が低下している場合でも利尿効果が期待できる利尿作用,高血圧患者に投与した場合の降圧作用等があり,無尿の患者,肝性昏睡の患者,体液中のナトリウム,カリウムが明らかに減少している患者及びスルフォンアミド誘導体に対し過 でも利尿効果が期待できる利尿作用,高血圧患者に投与した場合の降圧作用等があり,無尿の患者,肝性昏睡の患者,体液中のナトリウム,カリウムが明らかに減少している患者及びスルフォンアミド誘導体に対し過敏症の既往歴のある患者には禁忌とされている。用量については,通常成人には1日1回40mgないし80mgを連日又は隔日経口投与するものとされており,年齢,症状により適宜増減するものとされている。また,使用上の注意として,糖尿病のある患者,高齢者には慎重に投与することが必要で,高齢者への投与に際しては,少量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与することとされている(乙B9・1頁ないし4頁。 )(4)血糖コントロールの指標についてヘモグロビンA1Cの数値に基づいた血糖コントロールの評価については,5.8%未満が優,5.8%以上6.5%未満が良,6.5%以上8. 0%未満が可(治療法の変更を要する状態では必ずしもないが,それまでの治療の徹底により,良以上に向けて改善の努力を行うべき領域,8.0%) 以上が不可(細小血管症への進展の危険が大きい状態であり,治療法の再検討を含めて何らかのアクションを起こす必要がある領域)とされ,細小血管症の発症予防や進展抑制のためには良又は優の領域を目指すことが望ましいとされている(乙B1。 )(5)糖尿病患者における血糖値上昇の原因について糖尿病患者における血糖値上昇の発症誘因としては,感染症,大量の糖質摂取,高カロリー輸液,手術・外傷等によるストレス,ステロイド剤等の薬物投与などが考えられる(乙B7・2頁。 )(6)高血糖と脱水との関係について高血糖は,尿糖による浸透圧利尿を介して水分の喪失を伴うため,脱水を引き起こす(甲B5,乙B2,証人C。 )(7)糖尿病性昏睡について糖 乙B7・2頁。 )(6)高血糖と脱水との関係について高血糖は,尿糖による浸透圧利尿を介して水分の喪失を伴うため,脱水を引き起こす(甲B5,乙B2,証人C。 )(7)糖尿病性昏睡について糖尿病患者に発生する昏睡を始めとする意識障害のうち,糖尿病状態と密接に関係した機序で生じる病態を糖尿病性昏睡と呼び,糖尿病性ケトアシドーシス(インスリン作用が著減し,体内にケトン体が蓄積して酸血症を呈する病態)や非ケトン性高浸透圧性昏睡(著明な高血糖と高浸透圧を呈するが,ケトン体の増加や酸血症を示さない病態)等が代表的なものであるとされる。いずれの場合も,高度のインスリン作用不足によって生じる血糖値の増加が認められ,治療としては補液とインスリン投与が基本であるとされており,補液には等張食塩水(0.9%)を用いるのが通例であるが,血中ナトリウム濃度が155mEq/l以上の高ナトリウム血症が強い症例では低張食塩水(0.45%)が用いられることもある。インスリン投与の方法としては,0.1~0.2U/kg体重の速効型インスリンを投与後,0.1U/kg/時でインスリンを持続投与する少量持続静注法が一般的であるとされている(乙B2・374頁,375頁,乙B7・1頁ないし4頁。 )(8)意識障害の判定基準について 意識障害の程度についての判定基準として我が国で広く用いられている方法にJCS(JapanComaScale)があり,意識障害の程度が大きい順に,刺激をしても覚醒しない状態を示すJCSⅢ(さらに,痛み刺激に反応しない300,痛み刺激で少し手足を動かしたり,顔をしかめたりする200,痛み刺激に対し,払いのけるような動作をする100に分類される,刺激をすると覚醒する状態(刺激をやめると眠り込む状態)を。)示すJCSⅡ(さらに,呼びかけを かしたり,顔をしかめたりする200,痛み刺激に対し,払いのけるような動作をする100に分類される,刺激をすると覚醒する状態(刺激をやめると眠り込む状態)を。)示すJCSⅡ(さらに,呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する30,握手等の簡単な命令に応ずる20,合目的的な運動をするし言葉も出るが間違いが多い10に分類される,刺激しないでも覚醒している状態を示すJC。)SⅠ(さらに,自分の名前,生年月日が言えない3,見当識障害がある2,意識清明とはいえない1に分類される)の3群に分けられる(乙B3・1。 頁,表1。 ) Bの診療経過について前記前提事実に加え,後掲各証拠によれば,Bの被告病院における診療経過について,以下の各事実が認められる。 (1)被告病院への通院Bは,平成6年10月1日に被告病院内科を初めて受診し,糖尿病と診断され,糖尿病,高脂血症等の治療のため,被告病院内科において通院による治療を続けてきた(乙A1の1・3頁ないし54頁,95頁,99頁,103頁,105頁,乙A10。 )Bは,平成15年以降,およそ1か月に1回程度の割合で被告病院に通院し,血圧測定,血液検査,尿検査等を行い,血糖降下剤(内服薬)であるオイグルコンを1か月分処方されていた(乙A1の1・44頁ないし54頁,63頁,71頁ないし79頁,99頁,105頁,121頁ないし126頁,141頁ないし146頁,171頁,172頁,乙A10。 )平成15年中の血液検査におけるBのヘモグロビンA1Cの数値は,1月 15日が8.8%,3月17日が6.7%,4月9日が10.3%,5月14日が6.3%,7月28日が5.9%,10月8日が5.8%,12月8日が5.8%であった(乙A1の1・44頁ないし54頁,121頁ないし126頁,142頁,乙A10。 ) 日が10.3%,5月14日が6.3%,7月28日が5.9%,10月8日が5.8%,12月8日が5.8%であった(乙A1の1・44頁ないし54頁,121頁ないし126頁,142頁,乙A10。 )(2)被告病院への入院Bは,2月6日夕方から発熱し,嘔吐がみられ,市販薬を服用して自宅で経過観察をしていたが,改善がみられなかったため,同月7日午前9時ころに救急車で被告病院の内科を受診した。このとき,Bの体温は37.8度で,胸部X線写真上肺野に浸潤影が認められたこと,インフルエンザ検,,,査でA型の陽性であったこと嘔吐がみられたことなどから急性胃腸炎高血圧緊急症,誤嚥性肺炎及びインフルエンザA型との診断を受けて入院し,抗生剤の投与及びインスピロンマスクによる酸素投与が行われた。同日に行われたBの血液検査の結果は,CRPが2.3mg/dl,白血球数(WBC)が8700/μl,ヘモグロビン値(Hb)が12.2g/dl,ヘマトクリット値(Ht)が35.5%,血糖値(BS)が218mg/dl,BUN値が17.1mg/dl,クレアチニン値(Cr)が0.6mg/dlであった(甲A4の1,乙A1の1・55頁ないし61頁,77頁,乙A2・6頁ないし15頁,99頁,100頁,131頁,151頁,165頁,乙A3の1・2,乙A10。 ),. ,同月8日に行われたBの血液検査の結果はCRPが210mg/dl白血球数が10200/μl,ヘモグロビン値が12.5g/dl,ヘマトクリット値が35.1%,BUN値が21.9mg/dl,クレアチニ. (,,)。 ン値が07mg/dlであった乙A2・16頁103頁117頁同月12日に行われたBの血液検査の結果は,CRPが15.9mg/dl,白血球数が3300/μl,ヘモグロビン値が10.0g )。 ン値が07mg/dlであった乙A2・16頁103頁117頁同月12日に行われたBの血液検査の結果は,CRPが15.9mg/dl,白血球数が3300/μl,ヘモグロビン値が10.0g/dl,ヘマトクリット値が29.4%,BUN値が10.3mg/dl,クレアチ ニン値が0.6mg/dlであった(乙A2・17頁,104頁,118頁。 )同月16日には,Bの意識レベルが改善し,発語がみられるようになり,同日に行われたBの血液検査の結果は,CRPが6.7mg/dl,白血球数が5800/μl,ヘモグロビン値が9.3g/dl,ヘマトクリット値が27.7%,BUN値が9.4mg/dl,クレアチニン値が0. 6mg/dlであった(乙A2・18頁,105頁,119頁。 )同月18日には,Bの個室隔離が解除され,大部屋に移された(乙A2・155頁。 )同月21日からは,Bに対し,経鼻胃管から白湯900mlの投与が開始された(乙A2・19頁,37頁,155頁。 )(3)経管栄養の開始と点滴の中止2月24日からは,Bに対し,経鼻胃管から白湯300mlに加えてエン()(,,シュア3p750mlの投与が開始された乙A2・37頁45頁155頁,乙A10。 ),. ,同月26日に行われたBの血液検査の結果はCRPが05mg/dl白血球数が5500/μl,ヘモグロビン値が10.4g/dl,ヘマトクリット値が30.6%,BUN値が8.3mg/dl,クレアチニン値が0.5mg/dlであった。同日に行われたBの胸部X線写真上,肺野の浸潤影は減少した(乙A2・19頁,20頁,106頁,120頁,乙A5,乙A10。 )同月28日には,Bの点滴による補液が中止された。 3月2日に,Bは容態が安定していると診断され,ヨーグルトを用い 浸潤影は減少した(乙A2・19頁,20頁,106頁,120頁,乙A5,乙A10。 )同月28日には,Bの点滴による補液が中止された。 3月2日に,Bは容態が安定していると診断され,ヨーグルトを用いた嚥下評価が行われたが,捕食動作がみられなかった。同日のBの尿量は710mlで,同日から,利尿剤であるラシックス10mgの投与が開始された(甲A3の1,乙A2・20頁,38頁,47頁,155頁,187頁, 198頁,乙A10。 )同月3日,Bの嚥下機能及び摂食状況を判断して退院を検討することとされ,同月5日に再びBの嚥下評価が行われたが,捕食は行えるようになったものの,誤嚥のリスクが高く,咳反射の認められない誤嚥の疑いもあるため経口での栄養摂取は難しいとの評価がされた甲A3の2乙A2・,(,21頁,22頁,171頁。 ),,。 ,同月9日にはBの全身状態は良く退院を検討することとされた同日Bには水様便及び泥状便がみられた(乙A2・22頁,171頁,199頁。 )同月10日,Bの経管栄養の量がエンシュア4p(1000ml)及び白湯600mlに増量された。同日に行われたBの血液検査の結果は,CRPが1.4mg/dl,白血球数が10700/μl,ヘモグロビン値が11.7g/dl,ヘマトクリット値が33.2%,血糖値が280mg/dl,BUN値が43.1mg/dl,クレアチニン値が1.3mg/dlであった。同日,Bには下痢がみられた(甲A4の2,乙A2・22頁,38頁,107頁,121頁,172頁,199頁,乙A10。 )同月11日から同月13日まで及び同月15日,Bには下痢がみられた。 ,. . 同月11日及び同月12日のBの尿比重値はそれぞれ1015及び1016であった(乙A2・172頁,173頁,200頁 同月11日から同月13日まで及び同月15日,Bには下痢がみられた。 ,. . 同月11日及び同月12日のBの尿比重値はそれぞれ1015及び1016であった(乙A2・172頁,173頁,200頁。 )同月15日からは,利尿剤であるラシックスの投与量が20mgへと増量された(乙A2・38頁,53頁,乙A10。 )同月16日,Bのバイタルサインは安定していると診断され,下痢が改善され次第退院することとされたが,夜にBの体温が37.8度に上昇した(乙A2・23頁,乙A10。 )(4)Bの発熱3月17日にBの体温が38度に上昇し,抗生剤であるメロペンが投与さ れ,喀痰培養検査が行われた。その後,Bの体温は39度まで上昇し,喀痰量も増加した。Bに感染症のおそれが生じたため,抗生剤であるロミカシンが投与され,経管栄養が中止され,点滴によりソリタT1(500ml,ポタコールR(500ml,アミノフリード(500ml×2,1)))0%NaCl(40ml)等の補液が開始された。同日に行われたBの血液検査の結果は,CRPが32.2mg/dl,白血球数が13700/μl,ヘモグロビン値が14.5g/dl,ヘマトクリット値が41.9%,BUN値が49.2mg/dl,クレアチニン値が1.0mg/dlであった(乙A2・23頁,24頁,38頁,65頁,108頁,122頁,155頁,173頁,乙A10,証人C。 )同月18日に行われたBの血液検査の結果は,CRPが31.6mg/dl,白血球数が9200/μl,ヘモグロビン値が11.4g/dl,ヘマトクリット値が34.2%,BUN値が58.5mg/dl,クレアチニン値が1.0mg/dlであった。同日に行われたBの喀痰培養検査の結果,MRSAは同定されなかった(乙A2・109頁,123頁,142頁 ット値が34.2%,BUN値が58.5mg/dl,クレアチニン値が1.0mg/dlであった。同日に行われたBの喀痰培養検査の結果,MRSAは同定されなかった(乙A2・109頁,123頁,142頁,144頁。 ),. ,同月23日に行われたBの血液検査の結果はCRPが37mg/dl白血球数が10600/μl,ヘモグロビン値が11.1g/dl,ヘマトクリット値が34.8%,BUN値が58.1mg/dl,クレアチニン値が0.9mg/dlであった。同日から同月25日にかけて,Bには浅表性速拍呼吸がみられた(乙A2・25頁,110頁,124頁,175頁,176頁。 )(5)意識レベルの低下(昏睡)3月24日にBの意識レベルがJCSⅢ-100ないし200まで低下し,頭部及び胸部のCT検査が行われたが,異常は認められなかった。血液検査の結果,同日午前11時30分ころ,CRPが5.8mg/dl, 血糖値が920mg/dl,BUN値が73.6mg/dl,クレアチニン値が1.1mg/dlであることが判明し,高浸透圧性昏睡と診断された(甲A4の3,乙A2・25頁ないし27頁,111頁,175頁,乙A10・3頁,弁論の全趣旨。 )同日午前11時45分,Bには,微注ポンプを使用した静脈注射により,インスリンであるヒューマリンR2ml/hの投与が開始され,血糖値が450mg/dl以上の場合にはヒューマリンRの投与量を1ml/hずつ増量し,血糖値が200mg/dl以下の場合には投与量を1ml/hずつ減量することとされた。同日午後1時及び午後2時のBの血糖値がいずれも高かったため,ヒューマリンRの投与量がそれぞれ3ml/h及び4ml/hへと増量され,同日午後3時のBの血糖値は390mg/dlと下がったものの,ヒューマリンRの投与量は4ml/hのま 値がいずれも高かったため,ヒューマリンRの投与量がそれぞれ3ml/h及び4ml/hへと増量され,同日午後3時のBの血糖値は390mg/dlと下がったものの,ヒューマリンRの投与量は4ml/hのまま維持された。その後,同日午後6時,午後7時及び午後9時のBの血糖値がいずれも高かったため,ヒューマリンRの投与量がそれぞれ5ml/h,6ml/h及び7ml/hへと増量された。さらに,同月25日午前0時のBの血糖値が528mg/dlであったため,ヒューマリンRの投与量が8ml/hへと増量され,同日午前3時及び午前5時のBの血糖値がそれぞれ235mg/dl及び80mg/dlに低下したため,ヒューマリンRの投与量がそれぞれ7ml/h及び2ml/hへと減量され,同日午前6時のBの血糖値が72mg/dlに低下したため,ヒューマリンRの投与が一時中止された。その後,同日昼から,朝昼夕3回の血糖値の測定が開始され,その数値に応じてヒューマリンRの投与量を増減させるスライディングスケールが継続された(乙A2・26頁ないし28頁,39頁,40,,,,,,,頁67頁175頁176頁191頁201頁乙A10・3頁4頁。 )同日,Bの意識レベルはJCSⅢ-300と診断された。同日に行われた Bの血液検査の結果は,CRPが8.2mg/dl,白血球数が13500/μl,ヘモグロビン値が9.7g/dl,ヘマトクリット値が30. 5%,血糖値が196mg/dl,BUN値が78.5mg/dl,クレアチニン値が1.2mg/dlであった(甲A4の4,乙A2・28頁,112頁,125頁,乙A10・4頁。 )(6)意識レベルの改善3月26日にBの意識レベルはJCSⅡ-30と診断され,刺激に開眼するようになった。同日に行われたBの血液検査の結果は 2・28頁,112頁,125頁,乙A10・4頁。 )(6)意識レベルの改善3月26日にBの意識レベルはJCSⅡ-30と診断され,刺激に開眼するようになった。同日に行われたBの血液検査の結果は,CRPが14. 2mg/dl,白血球数が12700/μl,ヘモグロビン値が10.3g/dl,ヘマトクリット値が32.3%,血糖値が214mg/dl,BUN値が843mg/dlクレアチニン値が11mg/dlであっ. ,. た(甲A4の5,乙A2・29頁,113頁,126頁,177頁,乙A10・4頁。 ),。 同月27日Bの意識レベルはJCSⅡ-10ないしⅠ-3と診断されたまた,同日,同月23日に行われたBの喀痰培養検査の結果,MRSAが同定されたことが判明し,抗生剤であるバンコマイシンの投与が開始され。 ,. ,た同日に行われたBの血液検査の結果はCRPが180mg/dl白血球数が9500/μl,ヘモグロビン値が9.4g/dl,ヘマトクリット値が29.0%,血糖値が254mg/dl,BUN値が76.6mg/dl,クレアチニン値が0.9mg/dlであった(甲A4の6,乙A2・29頁,30頁,114頁,127頁,146頁,乙A10・4頁。 )(7)肺炎の診断3月23日に撮影されたBの胸部X線写真では,明らかな肺炎の所見は認められなかったが,同月25日に撮影された胸部X線写真では,Bの肺野に浸潤影が認められた。そして,被告病院のC医師は,同月27日に,B に対し,インフルエンザ後肺炎(再燃)の診断を下したが,同医師は,同月25日の胸部X線写真において肺野に浸潤影が認められるようになったのは,遅くとも同月23日ころには感染していたMRSAによる肺炎を発症したことによるものであると推測している(乙A2・25頁,30頁, 5日の胸部X線写真において肺野に浸潤影が認められるようになったのは,遅くとも同月23日ころには感染していたMRSAによる肺炎を発症したことによるものであると推測している(乙A2・25頁,30頁,乙A7,乙A8,乙A10・5頁。 )(8)Bの死亡3月31日にBの自発呼吸が微弱となり,血液ガス検査において動脈血酸素飽和度が低下したため,Bに人工呼吸器による呼吸補助が開始された。 同日に撮影された胸部X線写真上,Bの両肺野全体に浸潤影が認められた(乙A2・32頁,33頁,91頁,179頁,乙A9,乙A10,証人C。 )4月2日午後8時37分,Bの自発呼吸がなくなり,心拍が停止し,死亡が確認された(甲A1,乙A2・34頁,181頁,乙A10・5頁。同)日,Bの死亡診断書を作成した被告病院のC医師は,死亡原因について,重症肺炎による呼吸不全と記載した(甲A1。 ) Bの死因について(1)前記2の認定事実(7(8)記載のとおり,3月25日に撮影さ),れた胸部X線写真上,Bの肺野には浸潤影が認められたこと,同月27日にはBはインフルエンザ後肺炎と診断されたこと,Bの死亡直前の同月31日に撮影された胸部X線写真上,Bの両肺野全体に浸潤影が認められたこと,4月2日午後8時37分にBの自発呼吸がなくなり,心拍が停止し,死亡が確認されたこと,被告病院のC医師が,Bの死亡診断書に死亡原因を重症肺炎による呼吸不全と記載していること等からすれば,Bの直接の死亡原因は肺炎であったと認められる。 (2)これに対し,原告は,糖尿病治療の不徹底による糖尿病の悪化,不十分な糖尿病管理脱水糖尿病性昏睡が競合してBの死亡の大きな要因となっ,, た旨主張している。 ,,「」しかしながら原告の依頼により本件を検討したD医師は鑑定意見書と題す 悪化,不十分な糖尿病管理脱水糖尿病性昏睡が競合してBの死亡の大きな要因となっ,, た旨主張している。 ,,「」しかしながら原告の依頼により本件を検討したD医師は鑑定意見書と題する書面(以下「D意見書」という)において,3月31日の胸部X。 線写真に見られる両肺野浸潤性陰影や胸水の出現は,Bが心不全を発症していたことを示唆し,高血圧や心房細動による心機能の低下を基盤に感染症や糖尿病性昏睡などの負荷が加わって起きたものであると考えられる,Bは,かねてより認知症や日常生活動作障害など中枢神経障害を有しており,糖尿病性昏睡以外にも重篤な感染症や心不全により,意識障害を起こしやすい条件を備えていた,Bの死亡は,3月17日ころから発症した感染症が直接の誘因となったが,心機能低下や中枢神経障害などの本来の身体的要因に治療の不徹底が重なってもたらされたものである,との意見を述べており(甲B9・4頁,5頁,D意見書を全体として読めば,D医師がむしろ糖尿病性)昏睡以外の要因をBの死亡原因として重視していることがうかがわれる。 また,別紙診療経過一覧表及び前記2の認定事実(5(6)記載のと),おり,入院後JCSⅠとJCSⅡの間を推移していたBの意識レベルは,糖尿病性昏睡に陥った3月24日と同月25日にJCSⅢになったが,翌26日には入院時と同じJCSⅡ-30に戻っており,Bは,糖尿病性昏睡による意識レベルが低下した状態のまま死亡に至ったわけではない。 (3)これらの事情を考慮すれば,糖尿病治療の不徹底による糖尿病の悪化や糖尿病性昏睡がBの死亡の主たる原因となったと認めることは困難である。 Bを脱水症状に陥らせた過失の有無について(1)アBの臨床症状について(ア)原告は,Bが3月9日から同月15日までにかけて水様便ないし 死亡の主たる原因となったと認めることは困難である。 Bを脱水症状に陥らせた過失の有無について(1)アBの臨床症状について(ア)原告は,Bが3月9日から同月15日までにかけて水様便ないし下痢を起こし,看護記録において,同月12日に「脱水の影響心配,」同月23日及び同月24日に「浅表性速拍呼吸あり」との各記載がある ことを根拠に,Bが脱水症状に陥っていたと主張する。 確かに,前記2の認定事実(3)記載のとおり,Bには,同月9日に水様便及び泥状便がみられ,同月10日から同月13日まで及び同月15日に下痢がみられたことが認められる。しかし,水様便,泥状便及び,,下痢は通常の便に比べて多量の水分及び電解質の排出をもたらすため脱水の原因となり得るとされているものの,これによって脱水症状がもたらされるか否かは,摂取された水分量及び電解質量と排出された水分量及び電解質量とのバランス等によって左右されるのであって,Bに臨床的に水様便,泥状便及び下痢が認められたことは,直ちにBが脱水症状に陥っていたことの根拠にはなり得ない。 また,同月12日の看護記録には「10/9~下痢持続中「脱水,。」の影響心配」との記載がある(乙A2・172頁)が,これはBに下。 痢が持続していたことから,看護師においてBの脱水を懸念して注意を払っていたことを示す記載であり,Bが脱水症状に陥っていたことの根拠となるものではない。 さらに,前記2の認定事実(4)記載のとおり,同月23日から同月25日にかけて,Bには浅表性速拍呼吸がみられたが,浅表性速拍呼吸が脱水症状を示す臨床症状であることを認めるに足りる証拠はない。 (イ)また,前記1の医学的知見(1)記載のとおり,脱水症状を示す臨床所見としては,皮膚や粘膜の乾燥,血圧の低下,頻脈等が挙げられるところ, 状を示す臨床症状であることを認めるに足りる証拠はない。 (イ)また,前記1の医学的知見(1)記載のとおり,脱水症状を示す臨床所見としては,皮膚や粘膜の乾燥,血圧の低下,頻脈等が挙げられるところ,Bの入院診療録(乙A2)を精査しても,Bが高浸透圧性昏睡と診断され,糖尿病性昏睡に陥った同月24日以前に,Bにかかる臨床所見が認められたことはうかがわれない。 これに対し,原告本人は,同月22日にBの舌が口の中でへばりつい,(,)。 ており口腔内の乾燥が認められた旨供述する原告本人・1頁2頁しかし,上記のBの入院診療録の記載内容と対比すると,原告本人の上 記供述を直ちに採用することはできない。 (ウ)よって,Bの臨床症状からBが脱水症状に陥っていたと認めることはできない。 イBの検査結果について(ア)ヘモグロビン値及びヘマトクリット値前記1の医学的知見(1)記載のとおり,ヘモグロビン値及びヘマトクリット値の上昇は脱水症を示す検査所見のひとつであるとされているところ,前記2の認定事実(3(4)記載のとおり,3月10日(1),1.7g/dl,同月17日(14.5g/dl,同月18日(1))1.4g/dl)及び同月23日(11.1g/dl)のBのヘモグロビン値は,いずれも正常値(11.3g/dlから15.2g/dlまで)の範囲内又は下限未満であり,同月10日(33.2%,同月1)(. ),(. )(. 7日 9%同月18日 2%及び同月23日 8%)のBのヘマトクリット値は,いずれも正常値(33.4%から44.9%まで)の範囲内又は下限未満である。 そして,C医師は,ヘモグロビン値及びヘマトクリット値が正常値の範囲内にある患者に脱水症が存在することは通常はほとんど考え難いと証言している(証人 から44.9%まで)の範囲内又は下限未満である。 そして,C医師は,ヘモグロビン値及びヘマトクリット値が正常値の範囲内にある患者に脱水症が存在することは通常はほとんど考え難いと証言している(証人C7頁,21頁,22頁。 )(イ)尿比重値前記1の医学的知見(1)記載のとおり,尿比重値が1.030以上の高値を示した場合には,脱水が原因である可能性があるとされているところ,前記2の認定事実(3)記載のとおり,3月11日(1.015)及び同月12日(1.016)のBの尿比重値は,正常値(1.015から1.025まで)の範囲内である。 (ウ)BUN値及びクレアチニン値前記1の医学的知見(1)記載のとおり,BUN値及びBUN/クレ アチニン値の上昇は脱水症を示す検査所見のひとつであるとされているところ,前記2の認定事実(3(4)記載のとおり,3月10日(4),3.1mg/dl,同月17日(49.2mg/dl)及び同月18)日(58.5mg/dl)のBのBUN値は,正常値(8.0mg/dlから20.0mg/dlまで)を大きく上回っており,同月10日(1.3mg/dl,同月17日(1.0mg/dl)及び同月18)日(1.0mg/dl)のBのクレアチニン値も,正常値(0.3mg/dlから0.8mg/dlまで)を上回っている。 そして,原告は,同月10日及び同月17日のBのBUN値,クレアチニン値及びBUN/クレアチニン値が正常値よりも高いことを根拠に,上記両日にBが脱水症状に陥っていたと主張する。 ,,,しかしながらC医師の証言によれば消化管から出血している場合細胞内が飢餓の状態に陥っている場合のほか,腎機能障害が存在する場合にも,BUN値,クレアチニン値やBUN値のクレアチニン値に対する比率が大きくなることが認められ(証人 ば消化管から出血している場合細胞内が飢餓の状態に陥っている場合のほか,腎機能障害が存在する場合にも,BUN値,クレアチニン値やBUN値のクレアチニン値に対する比率が大きくなることが認められ(証人C22頁,23頁,D意見)書中の「BUNが血清クレアチニン値より相対的に高い腎障害が持続,しており,脱水が持続していた可能性が高い」との記載(甲B9・4。 頁)も,脱水以外の原因によってBUN値のクレアチニン値に対する比率が大きくなることを否定していないから,BのBUN値,クレアチニン値及びBUN/クレアチニン値が上昇したのは腎機能障害の進行等によるものとみる余地が十分あると考えられる。また,上記(ア(イ)),記載のとおり,同月10日から同月23日までのBのヘモグロビン値,ヘマトクリット値及び尿比重値は正常値の範囲内であり,これらの数値が正常値の範囲内にある患者に脱水症が存在することは通常考え難い。 したがって,同月10日,同月17日及び同月18日に,BのBUN値,クレアチニン値やBUN値のクレアチニン値に対する比率が大きく なったことから,直ちにBが脱水症状に陥っていたことを認めるには足りないというべきである。 ウ補液の中止について原告は,被告病院の医師が2月28日から3月16日までBに対する補液を中止したため,Bが脱水症状に陥ったと主張している。 しかしながら,被告病院の医師は,点滴による補液を中止した2月28日から3月16日までの間,別紙診療経過一覧表及び前記2の認定事実(3)記載のとおり,経鼻胃管を通じて,2月28日から3月9日までは1日当たりエンシュア750ml及び白湯300ml,同月10日から16日までは1日当たりエンシュア1000ml及び白湯600mlをそれぞれBに投与しており,補液が中止されていた間も,Bに対し までは1日当たりエンシュア750ml及び白湯300ml,同月10日から16日までは1日当たりエンシュア1000ml及び白湯600mlをそれぞれBに投与しており,補液が中止されていた間も,Bに対しては,脱水症状に陥ることを回避するための水分補給が行われていたから,補液の中止によってBが脱水症状に陥ったと即断することはできない。 ,,,そしてBへの補液の量及び内容を更に検討すると被告病院の医師は別紙診療経過一覧表及び前記2の認定事実(2)ないし(4)記載のとおり,①Bに誤嚥性肺炎及びインフルエンザの症状がみられ,発熱も認められた2月7日から同月20日までは,1日当たり,ソリタT3(1000ml,ポタコールR(500ml,アミノフリード(500ml)及))びNS(240ml)の合計2240mlの点滴による補液を行い,②肺炎等の症状が緩解した同月21日から同月23日までは,1日当たり,ソリタT3(1000ml)及びNS(200ml)の点滴による補液のほか経鼻胃管を通じた白湯900mlの補液を開始し,③同月24日から同月27日までは,1日当たり,ソリタT3(500ml)及びNS(200ml)の点滴による補液のほか経鼻胃管を通じたエンシュア750ml及び白湯300mlの補液を行い,④点滴による補液を中止した同月28日から3月9日までは,1日当たり経鼻胃管を通じたエンシュア750m l及び白湯300mlの補液を行い,⑤下痢が認められた3月10日から同月16日までは,経鼻胃管を通じた補液を1日当たりエンシュア1000ml及び白湯600mlに増加し,⑥感染症のおそれが生じて経管栄養が中止された同月17日から同月23日までは,1日当たり,ソリタT1(500ml,ポタコールR(500ml,アミノフリード(100))0ml,NS(30 増加し,⑥感染症のおそれが生じて経管栄養が中止された同月17日から同月23日までは,1日当たり,ソリタT1(500ml,ポタコールR(500ml,アミノフリード(100))0ml,NS(300ml)及び10%NaCl(40ml)の合計2)340mlの点滴による補液を行っているのであって,このような補液の選択や補液の量が不適切であったとは認められない。 この点,上記④の経鼻胃管を通じたエンシュア750ml及び白湯300mlの補液の量が十分といえるかが問題となる。Bの体重は約34kgであることが認められる(甲C6)から,前記1の医学的知見(2)記載のとおり,経口摂取ができない状態のBにおいて24時間で自然に失われる水分量は,概ね不感蒸排量(15ml×34kg=510ml)から代謝水(5ml×34kg=170ml)を控除した約340mlに尿量を加えた量であることが認められるところ,Bの2月28日から3月9日までの1日当たりの尿量は,別紙診療経過一覧表記載のとおり,1000mlを下回る日が多く,平均すると800ml程度であったことが認められるから,3月9日に水様便及び泥状便がみられたことを考慮しても,上記期間中における1日当たり合計1050mlの補液が極端に少ないとまでは認め難く,前記のとおり上記期間中Bが脱水症状に陥っていたとは認められないこと,上記期間の前後の期間中Bに十分な量の補液がされていたこと,上記期間中Bの体温が平熱で推移していたことも併せ考えると,上記期間中の補液の量が1日当たり合計1050mlにすぎなかったことをもって被告に過失があったと認めることはできない。 エ利尿剤の投与の適否について原告は,被告病院の医師にはラシックスを投与してBの脱水症状を増悪 させた過失がある旨主張し,原告本人作成の意見書には,Bに投 過失があったと認めることはできない。 エ利尿剤の投与の適否について原告は,被告病院の医師にはラシックスを投与してBの脱水症状を増悪 させた過失がある旨主張し,原告本人作成の意見書には,Bに投与されたディオバンやラシックスが,Bの腎機能障害を悪化させた旨をいう記載がある(甲C5・3頁,4頁,甲C6・4頁。この点について,D意見書)には,Bに投与されていた薬剤の中で,比較的腎障害を起こす頻度が高いことで知られているのはディオバンとラシックスであるが,ディオバンについては2月7日に投与が開始された19日後の2月26日の時点で腎機能の数値(BUN値は8.3mg/dl及びクレアチニン値は0.5mg/dl)が正常であったことからすれば,ディオバンが新たにその後の腎障害の原因になった可能性は低いが,ラシックスについては,しばしば腎障害を起こす原因となり得る薬剤であり,Bに生じた腎機能低下に関与した可能性を否定できない,との記載がある(甲B9・2頁,3頁。 )しかしながら,C医師作成の陳述書によれば,ラシックスの投与が開始された3月2日及びその前日の同月1日のBの尿量はそれぞれ710ml,700mlと少なく,2月26日の血中カリウム値が5.7mEq/lと上昇していたため,尿量を増やすことによりカリウムの排泄を促すた(),めにラシックスが投与されたことが認められるところ乙A10・2頁当時のBの尿量や血中カリウム値からすれば,ラシックスを投与して利尿及びカリウムの排出を促す必要性は高かったと考えられる上,前記1の医学的知見(3)記載のとおり,ラシックスを投与することが禁忌とされる患者に単なる糖尿病患者は含まれていないから,C医師がBにラシックスを投与したことが不適切であったとは認められない。 また,別紙診療経過一覧表記載のとおり,ラシッ シックスを投与することが禁忌とされる患者に単なる糖尿病患者は含まれていないから,C医師がBにラシックスを投与したことが不適切であったとは認められない。 また,別紙診療経過一覧表記載のとおり,ラシックスの投与量は,3月2日から同月14日までは1日当たり10mg,同月15日から同月24日までは1日当たり20mgであって,投与量が1日当たり20mgに増量される直前の3日間のBの尿量は,400ml(同月12日,650)ml(同月13日,700ml(同月14日)で,連日ラシックス10) mgが投与されていたにもかかわらず尿量は増えず,一方,3月10日の血中カリウム値が6.1mEq/lと更に上昇していたことから,ラシックスの投与量を増量する必要性は高かったものと認められる。そして,高齢者にラシックスを投与するに当たっては,少量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与することとされているところ(前記1の医学的知見(3,ラシックスの通常の投与量が1日1回40mg))ないし80mgを連日又は隔日であるのに対し(前記1の医学的知見(3,Bに対するラシックスの投与量は,上記のとおり,当初は10))mg,その後は20mgであったから,被告病院の医師は,ラシックスを当初は少量投与し,Bの容態や尿量を観察しながら慎重に投与量を調整していたものと認められる。 したがって,ラシックスを投与したこと及びその投与の方法について被告病院の医師に過失があったと認めることはできない。 (2)以上によれば,被告病院の医師にBを脱水症状に陥らせた過失がある旨をいう原告の主張は,採用できない。 Bの血糖値管理を怠った過失の有無について(1)前記2の認定事実(2)ないし(5)記載のとおり,被告病院の医師は,Bが被告病院に入院した2月7日及び3 る旨をいう原告の主張は,採用できない。 Bの血糖値管理を怠った過失の有無について(1)前記2の認定事実(2)ないし(5)記載のとおり,被告病院の医師は,Bが被告病院に入院した2月7日及び3月10日にBの血糖値検査を行った後は,同月24日まで血糖値検査を行っていないが,原告は,同月17日以降Bの血糖値が上昇していたにもかかわらず,同月24日まで血糖値検査を行わず,これを放置したことをもって被告病院の医師に過失があった旨を主張する。 ,,しかしながら①Bの平成15年以降の被告病院における糖尿病の治療が1か月に1回程度の頻度の通院による非インスリン型の経口内服薬の投薬療法にすぎなかったこと(前記2の認定事実(1,②平成15年の被告病))院における通院治療のうち,Bの血液検査が行われた回数は7回にすぎず, 同年5月以降の4回の血糖値検査において,BのヘモグロビンA1Cの数値は,いずれも血糖コントロール良と評価される数値(5.8%以上6.5%未満)を示して安定し,殊に入院前の最後の検査である平成15年12月8日の血液検査におけるヘモグロビンA1Cの数値は,血糖コントロールの指. (()標の優と良の境界値である58%であったこと前記1の医学的知見 及び前記2の認定事実(1,③Bの入院後の血液検査における血糖値が))218mg/dl(2月7日)及び280mg/dl(3月10日)と,糖尿病患者としては高い数値ではなかったこと(前記2の認定事実(2,)(3,④Bの入院中の摂取カロリーが,点滴による輸液と経管栄養を合))計しても1日当たり1000kcalを超えないようにコントロールされていたこと別紙診療経過一覧表に照らせば3月10日に血糖値検査を行っ(),た後に2週間後の同月24日まで血糖値検査を行わなか 計しても1日当たり1000kcalを超えないようにコントロールされていたこと別紙診療経過一覧表に照らせば3月10日に血糖値検査を行っ(),た後に2週間後の同月24日まで血糖値検査を行わなかったとしても,これをもって被告病院の医師に血糖値検査を怠った過失があると認めることはできない。 (2)原告の上記主張は,3月17日以降Bの血糖値が上昇していたことを前提とするものであり,D意見書には,Bが3月17日の時点で感染症を併発しそれにより糖尿病が急激に悪化した可能性が高いとの記載がある甲,,(B9・4頁。 )しかしながら,感染症が糖尿病患者における血糖値上昇の発症誘因となることは,前記1の医学的知見(5)記載のとおりである。また,前記2の認定事実(7)記載のとおり,同月23日に撮影されたBの胸部X線写真では明らかな肺炎の所見は認められなかったにもかかわらず,同月25日に撮影された胸部X線写真においてBの肺野に浸潤影が認められたことからすれば,BにMRSAによる感染症の症状が現れたのは同月23日ころであったと考えられる。そうすると,同月23日ころにMRSAによる感染症を発症したことが誘因となってBの血糖値が急上昇して同月24日の血糖値(92 0mg/dl)に至った可能性も十分あると考えられるから,同月17日から同月24日までの間にBの血糖値が測定されていればBの血糖値が急激に上昇していたことを測定できたとは断定できない。 (3)以上によれば,被告病院の医師にBの血糖値管理を怠った過失がある旨をいう原告の主張は,採用できない。 Bの糖尿病性昏睡に対する治療を怠った過失の有無について原告は,被告病院の医師には糖尿病性昏睡に陥ったBに対し,血管の確保,補液,インスリンの投与等による適切な治療を行わなかった過失がある旨主張 Bの糖尿病性昏睡に対する治療を怠った過失の有無について原告は,被告病院の医師には糖尿病性昏睡に陥ったBに対し,血管の確保,補液,インスリンの投与等による適切な治療を行わなかった過失がある旨主張している。 前記1の医学的知見(7)記載のとおり,糖尿病性昏睡の治療としては,補液とインスリン投与が基本であるとされ,インスリン投与の方法としては,少量持続静注法が一般的であるとされているところ,前記2の認定事実(5,)(6)記載のとおり,被告病院の医師は,3月24日午前11時30分ころにBの血糖値が920mg/dlに上昇し,高浸透圧性昏睡に陥ったことが判明,,した直後の同日午前11時45分から微注ポンプを使用した静脈注射によりインスリンであるヒューマリンRの投与を開始し,その後も1ないし3時間おきにBの血糖値を測定し,血糖値に応じてヒューマリンRの投与量を増減する少量持続静注法を実施し,さらに,同月17日から開始されたソリタT1(500ml)等の1日当たり合計2300mlを超える量の点滴による輸液を同月24日以降も継続しており,その結果,同月25日午前5時及び午前6時にはBの血糖値がそれぞれ80mg/dl及び72mg/dlにまで低下し,Bの意識レベルが同月26日には刺激に開眼するJCSⅡ-30に,同月27日には刺激しないでも覚醒しているJCSⅠ-3にまで改善しているから,Bの糖尿病性昏睡に対する被告病院の医師の治療に不適切な点は見当たらない。 よって,被告病院の医師にBの糖尿病性昏睡に対して適切な治療を行わなかった過失がある旨をいう原告の主張は,採用できない。 結論 以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第14部孝橋宏 結論 以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第14部 孝橋宏裁判長 裁判官坂田大吾 裁判官宮川広臣

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