【DRY-RUN】主 文 一 原判決中第一審判決別紙第一物件目録五、六の各土地に係る請求に 関する部分を破棄し、右部分につき本件を福岡高等裁判所に差し戻す。 二 同物件目録九、一〇の各土地に係
主文一原判決中第一審判決別紙第一物件目録五、六の各土地に係る請求に関する部分を破棄し、右部分につき本件を福岡高等裁判所に差し戻す。 二同物件目録九、一〇の各土地に係る請求に関する部分につき、原判決を破棄し、第一審判決を取り消し、右部分に係る被上告人の請求を棄却する。 三上告人のその余の上告を棄却する。 四第二項に関する訴訟の総費用は被上告人の負担とし、前項に関する上告費用は上告人の負担とする。 理由一上告代理人松本伸一の上告理由について所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし首肯するに足り、右事実及び原判決が適法に確定したその余の事実関係のもとにおいて、被上告人が、所有の意思をもつて、第一審判決別紙第一物件目録の各土地(以下、同目録の各土地を「本件第一の一の土地」のように表示する。)の占有を継続したと推認した原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。所論引用の判例は、事案を異にし本件に適切でない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原審の認定しない事由に基づいて原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。 二職権により按ずるに、原判決は、以下のとおり、法令の解釈適用を誤つた違法があり、一部破棄を免れないものというべきである。 原審は、被上告人の本訴請求のうち、本件第一の一ないし三、五ないし一〇の土地(いずれも農地)に係る請求について、(一) 上告人は亡Dの長男、被上告人は同人の次男である、(二) 本件第一の一ないし一〇の土地及び第一審判決別紙第二物件目録の一ないし四の土地(以下、同目録の各土地を「本件第二の一の土地」- 1 -のように表示 亡Dの長男、被上告人は同人の次男である、(二) 本件第一の一ないし一〇の土地及び第一審判決別紙第二物件目録の一ないし四の土地(以下、同目録の各土地を「本件第二の一の土地」- 1 -のように表示する。)は、もとDの所有であつたが、同人が昭和一七年一二月三〇日に死亡したのに伴い、当時朝鮮に居住していた上告人が、家督相続人として、これらを相続した、(三) 上告人は、昭和二一年八月ころ、朝鮮を引き揚げて帰国し、被上告人や母のEが居住していた実家に身を寄せていたが、昭和二二年九月ころ、前記各土地を含むD家の財産の分割についての話し合いが、主として、上告人、被上告人及びEの間でされ、結局、D家は被上告人が跡を継ぎ、上告人は分家する、Eには隠居田を与える、弟のFにも一反の田を取得させるとの趣旨で、上告人は、被上告人に対し、本件第一の一ないし四の土地(一ないし三は畑、四は宅地)、本件第一の五、六の土地(田)のうち後記Fに贈与する一反を除いた残りの土地五五一平方メートル及び本件第一の七、八の土地(七は畑、八は田)を、Eに対し本件第二の一、二の土地(当時は、a番の一筆の田であつた。)を、Fに対し本件第一の五、六の土地のうち一反の土地(以下「F取得地」という。)を、それぞれ贈与し、自らは、その余のb番の土地(田。その後、昭和四五年六月に本件第一の九、一〇の土地及び同番三の土地に分筆された。)、本件第二の三、四の土地(畑)を保有することとなつた、(四) 右合意に基づいて、被上告人は、自己が取得すべきものとされた前記各土地の田畑の耕作を継続し、また、Eの取得すべきものとされた土地及びF取得地も同女らの承諾のもとに耕作を続けた、(五) 上告人とEは、昭和三二年ころ、Eの取得したa番の土地(本件第二の一、二の土地)と上告人所有のb番の土地(本件第一の九、一〇の のとされた土地及びF取得地も同女らの承諾のもとに耕作を続けた、(五) 上告人とEは、昭和三二年ころ、Eの取得したa番の土地(本件第二の一、二の土地)と上告人所有のb番の土地(本件第一の九、一〇の土地を含む。)を等面積で交換することを合意し、これに伴い、被上告人は、新たにEが取得することになつたb番の土地と、右交換に供されなかつたa番の残りの土地約三畝につき、同女の承諾のもとに耕作を続けることになつたが、その際、Eは、同女の死亡後は、右b番の土地を被上告人に贈与(死因贈与)する旨の意思表示をした、(六) 被上告人は、昭和四五年六月三日、Fから、F取得地を含む同人の所有地合計約一反五畝を代金五〇万円で買- 2 -い受ける旨合意し、右代金を昭和四九年四月一〇日までに完済した、(七) このようにして、被上告人は、本件第一の一ないし三の土地、本件第一の五、六の土地のうちF取得地を除いたその余の土地及び本件第一の七、八の土地については、遅くとも前記財産の分割についての話し合いに基づきその耕作を開始した昭和二二年九月末日から、本件第一の九、一〇の土地については、遅くともEの死亡した昭和四三年二月二二日から、いずれも昭和五四年六月に至るまで、所有の意思をもつて、平穏公然に占有を継続し、その占有の始め善意で過失がなかつた、(八) Fは、F取得地につき、遅くとも昭和二二年九月末日から前記昭和四五年六月三日に至るまで、被上告人を介し、所有の意思をもつて、平穏公然に占有を継続し、その占有の始め過失がなかつた、(九) したがつて、本訴において取得時効を援用した被上告人は、本件第一の一ないし三の土地、本件第一の五、六の土地のうちF取得地を除いたその余の土地及び本件第一の七、八の土地については、昭和三二年九月末日の経過により、本件第一の九、一〇の土地については 人は、本件第一の一ないし三の土地、本件第一の五、六の土地のうちF取得地を除いたその余の土地及び本件第一の七、八の土地については、昭和三二年九月末日の経過により、本件第一の九、一〇の土地については、昭和五三年二月二二日の経過により、それぞれ、その所有権を時効により取得したものであり、F取得地については、Fが昭和三二年九月末日の経過に伴い時効により取得した右土地の所有権を前記売買により取得したものというべきである、(一〇) それ故、上告人は、被上告人に対し、本件第一の一ないし三、五ないし八の各土地につき、昭和二二年九月末日時効取得を、本件第一の九、一〇の各土地につき、昭和四三年二月二二日時効取得をそれぞれ原因とする所有権移転登記義務があるものというべきであるから、被上告人の本訴請求を認容すべく、上告人の本件控訴は棄却すべきものとしている。 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。 被上告人及びFが、上告人からの贈与に基づき前記各土地の占有を開始した昭和二二年九月当時においては、農地の所有権を移転するためには、農地調整法(昭和- 3 -二二年法律第二四〇号による改正前のもの)四条、農地調整法施行令(昭和二三年政令第三五号による改正前のもの)二条の各規定に従い、地方長官の許可を受けることが必要であつて、右所有権移転を目的とする法律行為は、これにつき右許可がない限り、その効力を生じないとされていたものであり、また、被上告人が、Eからの死因贈与に基づいて前記各土地の占有を開始した昭和四三年二月二二日当時及びFから前記F取得地を買い受けた昭和四五年六月三日当時においても、農地法(前者の当時は昭和四五年法律第七八号による改正前のもの、後者の当時は昭和四五年法律第五五号による改正前のもの)三条が、それぞれ同 から前記F取得地を買い受けた昭和四五年六月三日当時においても、農地法(前者の当時は昭和四五年法律第七八号による改正前のもの、後者の当時は昭和四五年法律第五五号による改正前のもの)三条が、それぞれ同趣旨(ただし、許可の主体は都道府県知事である。以下、前記農地調整法時代の許可を含め「知事の許可」という。)を規定していたものである。したがつて、農地の譲渡を受けた者は、通常の注意義務を尽くすときには、譲渡を目的とする法律行為をしても、これにつき知事の許可がない限り、当該農地の所有権を取得することができないことを知り得たものというべきであるから、例えば、譲渡についてされた知事の許可に瑕疵があつて無効であるが右瑕疵のあることにつき善意であつた等の特段の事情のない限り、譲渡を目的とする法律行為をしただけで当該農地の所有権を取得したと信じたとしても、そのように信じるにつき過失がないとはいえないものというべきである(最高裁昭和五八年(オ)第一〇六四号同五九年五月二五日第二小法廷判決・民集三八巻七号七六四頁参照)。これを、本件についてみるに、原審の確定した前記事実関係によると、被上告人及びFが上告人から前記各土地の贈与を受けた時点及び被上告人がEから前記各土地の死因贈与を受けた時点において、右贈与及び死因贈与につき、いずれも知事の許可があつたとはいえず、また、記録に照らすと、被上告人は、原審において、前示の特段の事情のあることを主張・立証していないことが明らかであるから、被上告人及びFが前記の贈与ないし死因贈与を受けたことのみによつて、前記各土地の所有権を取得したと信じたとしても、そのように信じるにつ- 4 -いて過失がなかつたとはいえないものというべきである。したがつて、被上告人及びFに右過失がなかつたとした原審の判断には、民法一六二条二項の解釈適用 たと信じたとしても、そのように信じるにつ- 4 -いて過失がなかつたとはいえないものというべきである。したがつて、被上告人及びFに右過失がなかつたとした原審の判断には、民法一六二条二項の解釈適用を誤つた違法があるものというべきである。そして、本件第一の九、一〇の土地については、後記の他の本件各土地とは異なり、被上告人が、民法一六二条一項所定の取得時効をも援用しているものと認める余地はないものというべきであるから、前記違法は、判決に影響を及ぼすことが明らかであり、原判決中、本件第一の九、一〇の土地に係る請求に関する部分は、破棄を免れない。そして、原審の確定した前記の事実関係及び右に説示したところによれば、右部分に係る被上告人の請求は理由がないものというべきであるから、これを認容した第一審判決を取り消した上、右請求を棄却すべきである。 もつとも、本件第一の一ないし三の土地及び本件第一の五ないし八の土地については、記録に照らすと、被上告人は民法一六二条一項の取得時効をも援用しているものと認めるのが相当と解されるところ、原審の確定した前記の事実関係によると、被上告人は、本件第一の一ないし三の土地及び本件第一の五、六の土地のうちF取得地を除いた部分並びに本件第一の七、八の土地については、昭和二二年九月末日から二〇年を超える期間、所有の意思をもつて、平穏公然にその占有を継続したものということができるから、結局、被上告人は、昭和四二年九月末日の経過とともに、右各土地の所有権を時効により取得したものということができる。そうすると、上告人に対し、本件第一の一ないし三の土地及び本件第一の七、八の土地について昭和二二年九月末日時効取得を原因とする所有権移転登記手続を求める被上告人の本訴請求は、結局容認することができるものというべきであるから、右請求を認 一ないし三の土地及び本件第一の七、八の土地について昭和二二年九月末日時効取得を原因とする所有権移転登記手続を求める被上告人の本訴請求は、結局容認することができるものというべきであるから、右請求を認容すべきものとした原審の判断は、前記の違法にもかかわらず、結論において是認することができるものというべきである。 ところで、本件第一の五、六の土地のうちF取得地を除いた部分については、前- 5 -記の説示に照らし、被上告人にその所有権の時効取得を肯定すべきものであるとしても、右土地の範囲が図面等により具体的に特定されていないため、このままでは、被上告人の本訴請求を認容することはできないものといわざるをえない。更に、F取得地については、Fが、被上告人を介して、右期間その占有を継続し、その結果、右土地の所有権を時効により取得したものといえるとしても、被上告人は、昭和四五年六月三日に右土地をFから買い受けるに当たり、知事の許可を受けたものとはいえないのであるから、前記の説示に照らし、その所有権を取得することはできないものといわなければならない。そうすると、これと異なり、本件第一の五、六の土地に係る被上告人の請求を認容すべきものとした原審の判断は、法令の解釈適用を誤つた違法があるものというべきであり、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかというべきであるから、原判決中、本件第一の五、六の土地に係る請求に関する部分は破棄を免れない。そして、右部分については、前記の説示に照らし、本訴請求を認容すべき部分と棄却すべき部分とを確定させるため、更に審理を尽くさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すのが相当である。 三よつて、民訴法四〇八条一号、四〇七条一項、三九六条、三八六条、三八四条、九六条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判 必要があるから、本件を原審に差し戻すのが相当である。 三よつて、民訴法四〇八条一号、四〇七条一項、三九六条、三八六条、三八四条、九六条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官伊藤正己裁判官安岡滿彦裁判官坂上壽夫裁判官貞家克己- 6 -
▼ クリックして全文を表示