- 1 -平成28年4月28日判決言渡平成27年(行コ)第413号都市計画決定無効確認等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成20年(行ウ)第602号) 主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 原判決別紙1都市計画目録記載1の都市計画決定が無効であることを確認する。 3 被控訴人は,原判決別紙1都市計画目録記載1の都市計画決定に係る都市計画の廃止手続をせよ。 4 原判決別紙1都市計画目録記載1の都市計画決定による都市計画が違法であることを確認する。 5 控訴人らが,原判決別紙2物件目録記載1及び2の不動産について,原判決別紙1都市計画目録記載1の都市計画決定により都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限を受けない地位にあることを確認する。 6 被控訴人が,原判決別紙1都市計画目録記載1の都市計画決定に係る都市計画の廃止手続を執らないことが違法であることを確認する。 7 被控訴人は,控訴人X1に対し,100万円及びこれに対する平成20年10月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 8 被控訴人は,控訴人X1に対し,2118万円及びこれに対する平成25年3月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(以下において略称を用いるときは,別途定めるほか,原判決に同じ。)- 2 - 1 本件は,控訴人らが,被控訴人に対し,以下を求める事案である。 (1) 控訴人らの請求原判決別紙1都市計画目録(以下「都市計画目録」という。)記載1の都市計画決定(本件都市計画決定)に係る都市計画施設である幹線街路外郭 訴人に対し,以下を求める事案である。 (1) 控訴人らの請求原判決別紙1都市計画目録(以下「都市計画目録」という。)記載1の都市計画決定(本件都市計画決定)に係る都市計画施設である幹線街路外郭環状線の2(外環の2)の区域内に,原判決別紙2物件目録記載1の土地(本件土地)及び同2の建物(本件建物)を所有して居住していたX2(承継前原告。平成21年▲月▲日死亡。)から本件不動産(本件土地及び本件建物)を相続した控訴人らが,外環の2に係る本件都市計画は,都市計画目録記載2の都市計画決定に係る都市計画施設である都市高速道路外郭環状線(外環本線)の構造形式が嵩上式であること等を重要な基礎事実としていたところ,都市計画目録記載2(4)の平成19年4月6日付けの都市計画変更決定(平成19年外環本線変更決定)において外環本線の構造形式が嵩上式から大深度地下方式に変更されたこと等により,本件都市計画は重要な基礎事実を欠くこととなって違法なものになったなどと主張して,以下の請求をする。 ア行政事件訴訟法3条4項所定の無効等確認の訴えとして,本件都市計画決定が無効であることの確認を求める(本件無効確認の訴え)。 イ同条6項1号所定の義務付けの訴えとして,本件都市計画の廃止手続の義務付けを求める(本件義務付けの訴え)。 ウ同法4条所定の公法上の法律関係に関する確認の訴えとして,以下を求める(本件各法律関係確認の訴え)。 (ア) 本件都市計画が違法であることの確認(イ) 控訴人らが本件不動産について都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限を受けない地位にあることの確認(ウ) 被控訴人が本件都市計画決定に係る都市計画の廃止手続を執らないことが違法であることの確認(2) 控訴人X1の請求- 3 -承継前原告から本件不動産以外 けない地位にあることの確認(ウ) 被控訴人が本件都市計画決定に係る都市計画の廃止手続を執らないことが違法であることの確認(2) 控訴人X1の請求- 3 -承継前原告から本件不動産以外の全ての遺産を相続した控訴人X1が,以下の請求をする。 ア本件都市計画の廃止義務の懈怠という被控訴人による不作為の違法な公権力の行使により,承継前原告が,本件不動産を収用されるという不安を抱いたり,都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限等がされたりして,財産権(憲法29条1項),居住の自由(憲法22条1項)及び平穏に生活する自由(憲法13条)を侵害されたため,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料100万円及びこれに対する遅延損害金の支払請求権を有していたところ,これを承継前原告から相続したとしてその支払を求める(本件国家賠償請求の訴え)。 イ少なくとも平成19年外環本線変更決定において外環本線の構造形式が嵩上式から大深度地下方式に変更されたことにより,本件都市計画の根拠とされた公共的必要性が消滅し,本件都市計画決定に伴う都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限が承継前原告に対して特別な犠牲を課すものとなったため,承継前原告が,憲法29条3項に基づき,建築物の建築の制限による本件土地の価格の下落分2118万円の損失補償の請求権を有していたところ,これを承継前原告から相続したとして,当該損失補償及びこれに対する遅延損害金の支払を求める(本件損失補償の訴え)。 2 原判決は,本件各訴えのうち,本件無効確認の訴え,本件義務付けの訴え及び本件各法律関係確認の訴えをいずれも却下し,控訴人X1のその余の請求をいずれも棄却したので,控訴人らがこれを不服として控訴した。 3 関係法令の定め,前提事実,主たる争点及び争点についての当事 及び本件各法律関係確認の訴えをいずれも却下し,控訴人X1のその余の請求をいずれも棄却したので,控訴人らがこれを不服として控訴した。 3 関係法令の定め,前提事実,主たる争点及び争点についての当事者の主張は,原判決を以下のとおり改めるほかは,原判決「事実及び理由」中の第2の1ないし4に記載のとおりであるから,これらを引用する。 (1) 7頁22行目「48m」を「40m」と改める。 - 4 -(2) 8頁4行目「外観の2」を「外環の2」と改める。 (3) 同頁12行目末尾に改行の上,以下を加える「 なお,練馬3キロ区間は,控訴人らが所有する本件不動産から,杉並区を間に挟み,約1.5キロメートル離れた場所に位置している(甲32の1・2,弁論の全趣旨)。」第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,本件各訴えのうち,本件無効確認の訴え,本件義務付けの訴え及び本件各法律関係確認の訴えをいずれも却下し,控訴人X1のその余の請求をいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 2 本件無効確認の訴え及び本件義務付けの訴えについて本件都市計画決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないから,上記各訴えが不適法であることは,以下に当審の判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」中の第3の2及び3に説示するとおりであるから,これらを引用する。 (1) 本件都市計画決定は,東京都が都市施設である外環の2を都市計画事業として整備しようとするものである。都道府県又は市町村が道路等の都市施設を都市計画事業として整備しようとする場合には,都市計画法11条に基づき,都市施設の種類,名称,位置,区域等という基本的事項を決定した後,同法59条に基づく都市計画事業の認可を得た上で,事業が施行されることが予定されている ようとする場合には,都市計画法11条に基づき,都市施設の種類,名称,位置,区域等という基本的事項を決定した後,同法59条に基づく都市計画事業の認可を得た上で,事業が施行されることが予定されているのであって,都市計画決定がされただけでは,当該都市施設の区域内の土地について収用されることがほぼ確実になるなど,その所有者等の法的地位に直接的影響が生ずると解する法的根拠はない。都市計画事業については,土地収用法3条各号の1に規定する事業に該当するものとみなして同法の規定を適用するものとされ(都市計画法69条),同法59条の規定による認可をもって,土地収用法20条の規定による事業の認定に代えるものとするとともに,都市計画法62条1項の規定による告示をもって,土地収用法26条1- 5 -項の規定による事業の認定の告示とみなすものとされているから(都市計画法70条),都市事業計画の認可は,その告示の日から,土地収用法上の事業の認定と同一の法律効果を生ずるものということができ(同法26条4項),都市計画事業の施行者である都道府県又は市町村は,都市計画事業の認可の告示により,同法に基づく収用権限を取得するとともに,その結果として,事業区域内の土地の所有者等は,特段の事情のない限り,自己の所有地等が収用されるべき地位に立たされることになる。したがって,都市計画事業の認可により,初めて事業区域内の土地所有者等の法的地位に直接的影響が生ずるものとみるべきであり,同認可を対象とする抗告訴訟を認めれば,その権利救済の実効性に欠けるところもないものというべきである。なお,都市計画決定がされると,当該都市施設の区域内において,都市計画法53条1項に基づく建築規制が生ずるが,上記規制は,一般的,抽象的な規制にとどまり,それ自体により上記区域内の土地所有者等の権 なお,都市計画決定がされると,当該都市施設の区域内において,都市計画法53条1項に基づく建築規制が生ずるが,上記規制は,一般的,抽象的な規制にとどまり,それ自体により上記区域内の土地所有者等の権利に具体的に制限が加えられるものとみることはできず,同法53条に基づく建築許可申請に対して不許可処分がされた場合に,初めて具体的な権利侵害があったものとみるのが相当である。(最高裁判所昭和61年(行ツ)第173号同62年9月22日第三小法廷判決・裁判集民事151号695頁参照)以上のことは,市町村が,都市計画に定められた施行地区の土地について土地区画整理事業を行う場合において,特段の事情のない限り,その事業計画に定められたところに従って具体的な事業がそのまま進められ,その後の手続として施行地区内の土地について換地処分が当然に行われることになる事業計画決定の段階において,当該施行地区内の土地所有者等の法的地位に直接的影響が生ずるものとする最高裁判所平成17年(行ヒ)第397号同20年9月10日大法廷判決・民集62巻8号2029号の趣旨とするところに照らしても明らかというべきである。 (2) 以上の判断に対し,控訴人らは,平成24年7月18日,本件都市計画に- 6 -係る外環の2の一部(αJCT区間)について都市計画事業が認可され,平成26年11月28日,上記一部に続く3キロ区間(練馬3キロ区間)について事業化に向けた都市計画変更決定がされており,本件都市計画全体について事業化される蓋然性が格段に高まったと主張する。 しかし,控訴人らの所有に係る本件不動産がαJCT区間の区域内に所在するものではないのであるから,本件不動産についてはいまだ都市計画決定がされたにすぎない段階にあり,αJCT区間の都市計画事業が認可されたことや練馬 所有に係る本件不動産がαJCT区間の区域内に所在するものではないのであるから,本件不動産についてはいまだ都市計画決定がされたにすぎない段階にあり,αJCT区間の都市計画事業が認可されたことや練馬3キロ区間についての都市計画変更決定がされたことによって,本件都市計画決定による法的効果に変動が生ずるものではない。ある行政行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか否かは,当該行政行為の法的効果に着目してこれを判断すべきであって,事業の進捗状況に照らして将来の進展を予想し,これを判断すべきものであるとの趣旨に帰する控訴人らの主張は独自の見解であって,採用することができない。 (3) 以上によれば,本件都市計画決定及び本件都市計画の廃止手続について処分性が認められることを前提とする本件無効確認の訴え(争点①)及び本件義務付けの訴え(争点③)は,その余の点について検討するまでもなく,不適法であって,却下を免れない。 3 本件各法律関係確認の訴えについて本件各法律関係確認の訴えは,いずれも公法上の法律関係の確認を求めるものであるが,これが確認の利益を欠く場合には不適法として却下を免れないところ,本件都市計画が控訴人らの法的地位に直接的影響を与えるものではないこと,都市計画法53条1項に基づく建築規制は,抽象的,一般的な規制にとどまることは,上記2において説示したとおりである。 したがって,本件都市計画が違法であること,都市計画法53条1項に基づく建築制限を受けないこと,本件都市計画決定に係る都市計画の廃止手続を執らないことが違法であることの各確認を求める本件各法律関係確認の訴えは,これが- 7 -控訴人らの権利ないし法的地位について存する危険ないし不安を除去するために有効かつ適切であるとみる余地はなく,確認の利益を欠くものとい の各確認を求める本件各法律関係確認の訴えは,これが- 7 -控訴人らの権利ないし法的地位について存する危険ないし不安を除去するために有効かつ適切であるとみる余地はなく,確認の利益を欠くものというほかはない。本件各法律関係確認の訴えも,不適法であって,却下を免れない。 4 本件国家賠償請求の訴え及び本件損失補償の訴えについて上記2において説示したとおり,本件都市計画は,承継前原告又は控訴人X1との関係において,その法的地位に直接的影響を与えるものではないから,① 同計画により,承継前原告又は控訴人X1に損害賠償の対象となり得るような法的利益の侵害があったと認めることはできず(本件国家賠償請求の訴え),② 同計画が,承継前原告又は控訴人X1に特別の犠牲を課すものと認めることもできないから(本件損失補償の訴え),これらの訴えに係る控訴人X1の請求は,いずれも理由がない。 第4 結論よって,本件各訴えのうち,本件無効確認の訴え,本件義務付けの訴え及び本件各法律関係確認の訴えにつき,いずれも不適法であるとしてこれらを却下し,控訴人X1のその余の請求につき,いずれも理由がないとしてこれらを棄却した原判決は,結論において相当であって,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官綿引万里子 裁判官黒津英明 - 8 - 裁判官上 村 善一郎 村善一郎
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