平成31(ワ)7038等 特許権侵害行為差止等請求事件,損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年10月29日 東京地方裁判所
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令和3年10月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成31年(ワ)第7038号特許権侵害行為差止等請求事件(第1事件),同第9618号損害賠償請求事件(第2事件)口頭弁論終結日令和3年6月28日判決 第1事件・第2事件 原告グラフェンプラットフォーム株式会社(以下「原告」という。) 同訴訟代理人弁護士広瀬元康 同吉川景司 同正木湧士 事件被告伊藤黒鉛工業株式会社(以下「被告伊藤」という。) 事件被告西村黒鉛株式会社(以下「被告西村」という。) 上記2名訴訟代理人弁護士 日野英一郎 同西﨑達史 同補佐人弁理士小磯奈祐 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 (目次)省略 第1 請求 1 第1事件について (1) 被告伊藤は,別紙1被告伊藤製品目録記載の各製品を製造し,販売し,又は販売の申出をしてはならない。 (2) 被告伊藤は,前項の各製品を廃棄せよ。 (3) 被告伊藤は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成31 製品目録記載の各製品を製造し,販売し,又は販売の申出をしてはならない。 (2) 被告伊藤は,前項の各製品を廃棄せよ。 (3) 被告伊藤は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成31年4月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 第2事件について 被告西村は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成31年4月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,発明の名称を「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」 とする特許第5697067号の特許(以下「本件特許1」という。)に係る特許権(以下「本件特許権1」という。)及び発明の名称を「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材,これを含有するグラフェン分散液及びグラフェン複合体並びにこれを製造する方法」とする特許第5688669号の特許(以下「本件特許2」といい,本件特許1と併せて「本件各特許」とい う。)に係る特許権(以下「本件特許権2」といい,本件特許権1と併せて「本件各特許権」という。)の特許権者である原告が,被告らに対し,以下の請求をする事案である。 (1) 第1事件被告伊藤に対し,別紙1被告伊藤製品目録記載1ないし3の各製品(以下, 同目録の記載順に「被告製品A1」,「被告製品A2」などという。)が本件特許1の特許請求の範囲の請求項1記載の発明(以下「本件発明1」という。)の技術的範囲に属し,被告伊藤による被告製品A1ないし3の製造等が本件発明1の実施に当たり,同目録記載4ないし11の各製品(以下,同目録の記載順に「被告製品A4」,「被告製品A5」などといい,同目録記 載1ないし11の各製品を併せて「被告製品A」 製造等が本件発明1の実施に当たり,同目録記載4ないし11の各製品(以下,同目録の記載順に「被告製品A4」,「被告製品A5」などといい,同目録記 載1ないし11の各製品を併せて「被告製品A」という。)が本件発明1及び本件特許2の特許請求の範囲の請求項1記載の発明(以下「本件発明2」といい,本件発明1と併せて「本件各発明」という。)の技術的範囲に属し,被告伊藤による被告製品A4ないし11の製造等が本件各発明の実施に当たるとして,特許法(以下「法」という。)100条1項,2項に基づき,被告製品Aの製造,販売及び販売の申出の差止め並びに廃棄を求め,民法70 9条に基づき,本件各特許権侵害による損害金合計7139万円(被告製品A1ないし3の製造等により本件特許権1が侵害されたことによる損害として各649万円並びに被告製品A4ないし11の製造等により本件特許権1が侵害されたことによる損害として各324万5000円及び本件特許権2が侵害されたことによる損害として各324万5000円)の一部である1 000万円及びこれに対する不法行為後の日である平成31年4月7日(被告伊藤に対する訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるもの(2) 第2事件 被告西村に対し,別紙2被告西村製品目録記載1ないし5の各製品(以下,同目録の記載順に「被告製品B1」,「被告製品B2」などという。)が本件各発明の技術的範囲に属し,被告西村による被告製品B1ないし5の製造等が本件各発明の実施に当たり,同目録記載6の製品(以下「被告製品B6」といい,同目録記載1ないし6の各製品を併せて「被告製品B」と,被告製 品Aと被告製品Bを併 る被告製品B1ないし5の製造等が本件各発明の実施に当たり,同目録記載6の製品(以下「被告製品B6」といい,同目録記載1ないし6の各製品を併せて「被告製品B」と,被告製 品Aと被告製品Bを併せて「被告各製品」という。)が本件発明1の技術的範囲に属し,被告西村による被告製品B6の製造等が本件発明1の実施に当たるとして,民法709条に基づき,本件各特許権侵害による損害金合計4億8240万円(被告製品B1ないし5の製造等により本件特許権1が侵害されたことによる損害として各4020万円及び本件特許権2が侵害された ことによる損害として各4020万円並びに被告製品B6の製造等により本件特許権1が侵害されたことによる損害として8040万円)の一部である1000万円(被告製品B1ないし5の製造等により本件特許権1が侵害されたことによる損害として各83万円及び本件特許権2が侵害されたことによる損害として各84万円並びに被告製品B6の製造等により本件特許権1が侵害されたことによる損害として165万円)及びこれに対する不法行為 後の日である平成31年4月25日(被告西村に対する訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるもの 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠(以下,書証番号は,特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1) 当事者ア原告は,グラフェン及びナノ材料又はこれらを用いた電子デバイス,構造材,試薬,医薬品,医療機器等の製造,輸出入,販売,コンサルティング等を目的とする株式会社である。 イ被告伊藤は,鱗状,土状人造黒鉛の精錬加工及び販売等を目的とする株 式会社である。 ウ被告西村は, 等の製造,輸出入,販売,コンサルティング等を目的とする株式会社である。 イ被告伊藤は,鱗状,土状人造黒鉛の精錬加工及び販売等を目的とする株 式会社である。 ウ被告西村は,炭素製品の製造等を目的とする株式会社である。 (2) 本件各特許原告は,平成26年9月9日,本件特許2に係る特許出願(特願2014-550587号。以下「本件特許出願」という。)をし,平成27年1月 8日,この一部を分割して本件特許1に係る特許出願(特願2015-2556号)をして,同年2月20日,本件特許権1の設定の登録(請求項の数1)を受け,同年2月6日,本件特許権2の設定の登録(請求項の数6)を受けた(甲A1,2,甲B1,2)。 (3) 本件各発明に係る特許請求の範囲 本件特許1の特許請求の範囲の請求項1(本件発明1)及び本件特許2の特許請求の範囲の請求項1(本件発明2)の各記載は,以下のとおりである(甲A2,甲B2)。 ア本件発明1【請求項1】菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し,前記菱面 晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が31%以上であることを特徴とするグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材。 Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)ここで, P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度である。 イ本件発明2【請求項1】 101)面のピーク強度P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度である。 イ本件発明2【請求項1】菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し,前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が40%以上である ことを特徴とするグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材。 Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)ここで,P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度 P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度である。 (4) 本件各発明の構成要件の分説本件各発明は,以下の構成要件に分説することができる(以下,各構成要件につき,頭書の記号に従って「構成要件1A」などという。)。 ア本件発明11A 菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し,1B 前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が31%以上であることを特徴とする (Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100…(式1)ここで,P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度,P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度である。)1C グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材。 よる(101)面のピーク強度,P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度である。)1C グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材。 イ本件発明22A 菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し,2B 前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が40%以上であることを特徴とする (Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100…(式1)ここで,P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度,P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度である。)2C グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材。 (5) 被告らによる被告各製品の販売等ア被告伊藤は,業として,被告製品Aの製造,販売及び販売の申出をしている。 イ被告西村は,業として,被告製品B1及び2の製造,販売及び販売の申出をしている。 また,被告西村は,業として,被告製品B3ないし6の販売及び販売の 申出をしている(甲B4,乙B2,3)。 (6) 被告各製品の構成要件充足性ア被告製品A1及び2は構成要件1A及び1Bを充足する。 イ被告製品B2は構成要件1A,2A及び1Bを,被告製品B6は構成要件1A及び1Bを充足する。 (7) 関連訴訟ア原告は,平成31年3月25日,日本黒鉛商事株式会社(以下「日本黒鉛商事」という。)及び日本黒鉛工業株式会社(以下「日本黒鉛工業」といい,日本黒鉛商事と併せて「日本黒鉛ら」と 関連訴訟ア原告は,平成31年3月25日,日本黒鉛商事株式会社(以下「日本黒鉛商事」という。)及び日本黒鉛工業株式会社(以下「日本黒鉛工業」といい,日本黒鉛商事と併せて「日本黒鉛ら」という。)に対し,日本黒鉛工業が製造,販売及び販売の申出をし,日本黒鉛商事が販売及び販売の申 出をする5つの黒鉛製品(青P,AP,UTC-48J,J-CPB及びSP-5030。以下,順に「日本黒鉛製品1」,「日本黒鉛製品2」などといい,これらを併せて「日本黒鉛各製品」という。)が本件各発明の技術的範囲に属するなどと主張して,日本黒鉛各製品の製造等の差止め等を求める訴訟を提起した(当庁平成31年(ワ)第7470号,同第747 6号。乙B5,6。)。 イ原告は,平成31年4月12日,株式会社中越黒鉛工業所(以下「中越黒鉛」という。)に対し,中越黒鉛が製造販売する3つの黒鉛製品(K5,AP-2000及びAPR。以下,順に「中越黒鉛製品1」,「中越黒鉛製品2」などといい,これらを併せて「中越黒鉛各製品」という。)が本 件各発明の技術的範囲に属するなどと主張して,損害賠償を求める訴訟を提起した(当庁平成31年(ワ)第9492号。弁論の全趣旨。)。 3 争点(1) 被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属するか(争点1)(2) 無効の抗弁の成否(争点2)ア特開2000-348727号(乙A3,乙B7。以下「乙A3公報」 という。)を引用例とする新規性欠如(争点2-1)イ特開2006-273615号(乙A10。以下「乙A10公報」という。)を引用例とする新規性欠如(争点2-2)ウ特開2014-9151号(乙A11。以下「乙A11公報」という。)を引用例とする新規性欠如(争点2-3 (乙A10。以下「乙A10公報」という。)を引用例とする新規性欠如(争点2-2)ウ特開2014-9151号(乙A11。以下「乙A11公報」という。)を引用例とする新規性欠如(争点2-3) エ化学工学論文集,第4巻第6号,639-645頁(1978年)(甲A4の2,甲B6の2。以下「甲A4文献」という。)を引用例とする新規性欠如(争点2-4)オ JournalofTheElectrochemicalSociety,vol.146(10),p.3660-3665 (1999)(乙A82。以下「乙A82文献」という。)を引用例とする新規性欠如(争点2-5)カ公然実施に基づく新規性欠如(争点2-6)キ記載要件違反(争点2-7)(3) 先使用権の成否(争点3) (4) 消尽の成否(争点4)(5) 損害の発生及びその額(争点5)(6) 差止め等の必要性(争点6)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属するか)について (原告の主張)(1) 構成要件1A,2A,1B及び2Bの充足性ア被告製品AのRate(3R)について(ア) 原告は,被告製品Aについて,株式会社リガク(以下「リガク社」という。)の全自動多目的X線回折装置「SmartLab」(以下「SmartLab」という。)で測定を行い,この測定結果を統合粉末X 線解析ソフトウェア「PDXL」(以下「PDXL」という。)を用いて解析してRate(3R)を算出したところ,別紙3Rate(被告伊藤)の番号1の列記載のとおりの結果を得た(甲A5。以下「甲A5結果」という。)。 (イ) 前記(ア) 」という。)を用いて解析してRate(3R)を算出したところ,別紙3Rate(被告伊藤)の番号1の列記載のとおりの結果を得た(甲A5。以下「甲A5結果」という。)。 (イ) 前記(ア)の測定及び解析(甲A5)によれば,被告製品A3には,菱面 晶系黒鉛層(3R)のピーク強度であるP3及び六方晶系黒鉛層(2H)のピーク強度であるP4が存在し,同製品は,菱面晶系黒鉛層(3R)及び六方晶系黒鉛層(2H)を有するものと認められるから,構成要件1Aを充足する。そして,甲A5結果のとおり,被告製品A3のRate(3R)は,31%以上であるので,同製品は,構成要件1Bを充足 する。 また,前記(ア)の測定及び解析(甲A5)によれば,被告製品A4ないし11には,菱面晶系黒鉛層(3R)のピーク強度であるP3及び六方晶系黒鉛層(2H)のピーク強度であるP4が存在し,それらの各製品は,菱面晶系黒鉛層(3R)及び六方晶系黒鉛層(2H)を有するもの と認められるから,構成要件1A及び2Aを充足する。そして,甲A5結果のとおり,被告製品A4ないし11のRate(3R)は,40%以上であるので,それらの各製品は,構成要件1B及び2Bを充足する。 イ被告製品BのRate(3R)について(ア) 原告は,被告製品Bについて,SmartLabで測定を行い,この 測定結果をPDXLを用いて解析してRate(3R)を算出したところ,別紙4Rate(被告西村)の番号1の列記載のとおりの結果を得た(甲B7。以下「甲B7結果」という。)。 (イ) 前記(ア)の測定及び解析(甲B7)によれば,被告製品B2のRate(3R)は,40%以上であるので,同製品は,構成要件2Bを充足する(被告製品B2が構成要件1A 果」という。)。 (イ) 前記(ア)の測定及び解析(甲B7)によれば,被告製品B2のRate(3R)は,40%以上であるので,同製品は,構成要件2Bを充足する(被告製品B2が構成要件1A,2A及び1Bを充足することは争い がない。)。 また,前記(ア)の測定及び解析(甲B7)によれば,被告製品B1及び3ないし5には,菱面晶系黒鉛層(3R)のピーク強度であるP3及び六方晶系黒鉛層(2H)のピーク強度であるP4が存在し,菱面晶系黒鉛層(3R)及び六方晶系黒鉛層(2H)を有するものと認められるか ら,構成要件1A及び2Aを充足する。そして,被告製品B1及び3ないし5のRate(3R)は,40%以上であるので,それらの各製品は,構成要件1B及び2Bを充足する。 ウ被告らの主張に対する反論(ア) 被告らは,同一のロットのサンプルについて,複数回,測定解析を行 ったが,算出されたRate(3R)にばらつきがあったり,31%未満のものと31%以上のものが混在したり,原告が主張する数値(甲A5結果及び甲B7結果)とかけ離れたりしていることからすると,Rate(3R)は本件各発明の構成要件を特定するパラメータとして機能していないと主張する。 しかし,Rate(3R)の算出に当たっては,X線回折法により回折線の角度及び強度を測定して回折プロファイルを得る工程と,得られた回折プロファイルを解析する工程があるところ,前者の工程については,本件各特許に係る特許出願の願書に添付した明細書(以下,それらの願書に添付した図面と併せて,本件特許1に係るものを「本件明細書 1」,本件特許2に係るものを「本件明細書2」といい,これらを併せて「本件各明細書」という。また,明細書の発明の 以下,それらの願書に添付した図面と併せて,本件特許1に係るものを「本件明細書 1」,本件特許2に係るものを「本件明細書2」といい,これらを併せて「本件各明細書」という。また,明細書の発明の詳細な説明中の段落番号を【0001】などと,表を【表1】などと,それぞれ記載する。)に記載されている測定装置(リガク社製試料水平型多目的X線回折装置「UltimaⅣ」(以下「UltimaⅣ」という。))やこれと同等以上の測定装置(例えば,SmartLab)を用いれば測定可能で ある。また,後者の工程についても,当業者が使用することができる解析方法及び解析条件を適宜選択すれば回折プロファイルを解析することは可能であり,甲A5結果及び甲B7結果を得るのに用いたPDXLは,その一例にすぎない。原告と被告らとの間で算出するRate(3R)に差異が生じているのは,解析条件の違いに起因するといえるところ, PDXLは,被検試料の特性を考慮した解析条件を入力しなくても,ソフトウェアが自動的に解析条件を設定し,回折プロファイルを解析できる自動解析機能を有するが,同機能には限界があり,回折プロファイルのピークが不明瞭な場合,不合理な解に収束したり,解が発散したりするので,被検試料の特性を考慮した解析条件を作業者が手動で入力し, 不合理な解に収束したり,解が発散したりしないようにすることが必要となる。しかし,被告らは,測定結果を収束させるように適切な解析条件を設定していないため,算出されたRate(3R)にばらつきがあったり,甲A5結果及び甲B7結果とかけ離れたりしたものである。 したがって,Rate(3R)は一義的に算出することができ,本件 各発明の構成要件を特定するパラメータとして機能し得るから,被告らの上記主張は理由 とかけ離れたりしたものである。 したがって,Rate(3R)は一義的に算出することができ,本件 各発明の構成要件を特定するパラメータとして機能し得るから,被告らの上記主張は理由がない。 (イ) 被告らは,原告が本件訴訟提起前に交付したメモ(乙A1)には,原告が被告製品AをX線回折法により測定し,これにより得られた回折プロファイルを解析して算出したRate(3R)(以下「乙A1結果」 という。)が記載されていたところ,乙A1結果は原告が訴状に記載したRate(3R)(甲A5結果)と大きく異なり,Rate(3R)に再現性がないことを裏付けると主張する。 しかし,乙A1結果は,SmartLabを用いて測定し,リガク社の黒鉛系炭素材料分析ソフトウェア「GGIndex」のテスト段階のバージョン(以下「GGIndex(β)」という。)により解析して 算出したものであるところ,同ソフトウェアは,当時,未完成のものであって,一部のサンプルにつき解析結果が収束しない未完成のものであったから,乙A1結果と甲A5結果が相違することをもって,Rate(3R)が収束するように解析条件の選択を適切に行うことができないということはできず,被告らの上記主張は理由がない。 (2) 構成要件1C及び2Cの充足性ア構成要件1C及び2Cの解釈について本件各明細書によれば,本件各発明は,従来,黒鉛系炭素素材から剥離されるグラフェンの量が少なく,グラフェンの生産効率が悪かったところ(【0006】及び【0007】),この課題を解決するための手段とし て,式1(構成要件1B及び2B)で規定されるRate(3R)(六方晶系黒鉛層と菱面晶系黒鉛層の総量に対する菱面晶系黒鉛層の比率)がある数 び【0007】),この課題を解決するための手段とし て,式1(構成要件1B及び2B)で規定されるRate(3R)(六方晶系黒鉛層と菱面晶系黒鉛層の総量に対する菱面晶系黒鉛層の比率)がある数値以上となっている黒鉛系炭素素材という物の発明を提供するものである(【0008】)。 そして,「グラフェン前駆体」とは,「天然黒鉛に所定の処理を施すこ とでグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散することができる黒鉛系炭素素材」(【0007】)を意味し,構成要件1C及び2Cの「用いられる」とは,「用いることができる」という可能を意味する。 そうすると,構成要件1C及び2Cの「グラフェン前駆体として用いら れる黒鉛系炭素素材」とは,天然黒鉛に所定の処理を施すことで,グラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散することができる黒鉛系炭素素材として用いることができる黒鉛系炭素素材を意味すると解される。 イ被告製品Aについて被告製品A1ないし3は,グラフェン前駆体として用いることができる 黒鉛系炭素素材であるから,構成要件1Cを充足する。 被告製品A4ないし11も,グラフェン前駆体として用いることができる黒鉛系炭素素材であるから,構成要件1C及び2Cを充足する。 ウ被告製品Bについて被告製品B6は,グラフェン前駆体として用いることができる黒鉛系炭 素素材であるから,構成要件1Cを充足する。 被告製品B1ないし5も,グラフェン前駆体として用いることができる黒鉛系炭素素材であるから,構成要件1C及び2Cを充足する。 エ被告らの主張に対する反論(ア) 被告らは,本件各発明は「天然黒鉛に所定の処理を施すことで,粉 して用いることができる黒鉛系炭素素材であるから,構成要件1C及び2Cを充足する。 エ被告らの主張に対する反論(ア) 被告らは,本件各発明は「天然黒鉛に所定の処理を施すことで,粉砕 や超高温に加熱する処理では30%程度までしか増えない菱面体晶(3R)の割合を,40%以上まで増加させることに成功した」(【0024】)ものであり,ここにいう「所定の処理」とは物理的力による処理及び電波的力による処理を真空又は気中において施すことを意味するから(【0011】,【0016】及び【0027】ないし【003 5】),「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」(構成要件1C及び2C)を天然黒鉛に物理的力による処理及び電波的力による処理を施すことにより生成されたものに限定して解釈すべきであると主張する。 しかし,本件各発明は,単に黒鉛系炭素素材中の菱面晶系黒鉛層の割 合を増加させるための方法の発明ではなく,式1(構成要件1B及び2B)で表されるRate(3R)がある数値以上である黒鉛系炭素素材という物の発明である。本件各発明が単に黒鉛系炭素素材中の菱面晶系黒鉛層の割合を増加させるための方法の発明であるとすれば,【発明が解決しようとする課題】において,従来の方法では菱面晶系黒鉛層の割合を増加させることができなかったことが記載されるべきであるが,本 件各明細書にはそのような記載はない。この点に関し,「天然の黒鉛に所定の処理を施すことで」(【0007】)との記載はあるものの,ここにいう「所定の処理」とは「何らかの処理」という意味であり,物理的力による処理及び電波的力による処理に限定しているものではない。 したがって,物理的力による処理及び電波的力による処理を真空又は 気中において施すこ は「何らかの処理」という意味であり,物理的力による処理及び電波的力による処理に限定しているものではない。 したがって,物理的力による処理及び電波的力による処理を真空又は 気中において施すことは,本件各発明を実現する方法の一つにすぎず,本件各発明の技術的範囲を限定するものではなく,被告らの上記主張は理由がない。 (イ)a 被告らは,菱面体晶(3R)の割合が40%以上の黒鉛系炭素素材は従来から存在していたから,本件各発明に新規性が認められるよう に解釈するためには,「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」(構成要件1C及び2C)を前記(ア)のとおり限定解釈する必要があると主張する。 b 本件各発明におけるRate(3R)は,六方晶系黒鉛層と菱面晶系黒鉛層の総量に対する菱面晶系黒鉛層の比率であり,単なる菱面晶黒 鉛層の割合ではない。 そして,本件特許出願前に,式1(構成要件1B及び2B)で算出されるRate(3R)が40%以上である黒鉛系炭素素材が存在したという事実はない。 c 原告は,欧州特許庁に対し,平成28年9月30日付け文書(乙A 6)を提出したが,そこには,「D2は,20~55%の“Rate”を有する黒鉛粉末について述べている(段落[0026])。」との記載があるにすぎない。原告は,上記文書において,先行文献D2(乙A3公報)が菱面体晶の存在割合が30%以上55%以下である黒鉛粉末を開示していることを認めたわけではなく,本件各発明の実施例と乙A3公報の実施例との相違点を述べたにすぎず,本件各発明 が物理的力による処理及び電波的力による処理によって生成されたグラフェン前駆体についての発明であると主張したものでもない。 そもそも,乙A3公報に記 を述べたにすぎず,本件各発明 が物理的力による処理及び電波的力による処理によって生成されたグラフェン前駆体についての発明であると主張したものでもない。 そもそも,乙A3公報に記載されている「30%以上55%以下」がいかなる数式に基づく数値であるかは不明であるし,特許を受ける者は,各国における特許は別個独立のものであることを前提として, どのような権利範囲の特許を受けるか,特許を受けるためにどのような主張を行うかを国ごとに判断することになるから,欧州特許庁に提出した上記文書をもって本件各特許の権利範囲が限定されることはない。 d 被告らは,甲A4文献において,菱面体晶黒鉛量αRhが40%を上 回ったことが指摘されていると主張する。 しかし,Rate(3R)は,六方晶系黒鉛層及び菱面晶系黒鉛層の総和に対する菱面晶系黒鉛層の比率であるところ,甲A4文献に記載のある菱面体晶黒鉛量αRhは,これを算出するための数式が記載されておらず,何に対する菱面体晶黒鉛量を意味しているのかが明らか でない。被告らは,菱面体晶黒鉛量αRhが「contentofrhombohedralstructureintotalcrystalstructure[%]」と定義されていると主張するが,これだけでは,「結晶総量中における菱面体晶の量」であるのか,「結晶総量中の,菱面体晶の量」であるのか,あるいはそれ 以外の意味であるのか不明であるし,この表現のみからでは菱面体晶黒鉛量αRhを算出する式は不明であるから,Rate(3R)と同義であるとはいえない。 また,本件各明細書で非特許文献1として紹介する文献「黒鉛の磨砕にともなう構造変化」(乙A24。以下「乙A24文献」とい は不明であるから,Rate(3R)と同義であるとはいえない。 また,本件各明細書で非特許文献1として紹介する文献「黒鉛の磨砕にともなう構造変化」(乙A24。以下「乙A24文献」という。)の「αRh」について,これが「菱面体晶黒鉛の量」であることは乙A 24文献に記載されているが,これを算出するための数式は記載されておらず,原告は,上記「αRh」とRate(3R)が同様又は類似の概念であると仮定して,本件各明細書(【0021】及び【0024】)に記載したものであるから,上記「αRh」がRate(3R)そのものであると捉えていたものではない。 したがって,菱面体晶黒鉛量αRhが40%以上であることのみをもって,式1(構成要件1B及び2B)で算出されるRate(3R)が40%以上であることを特徴とする黒鉛粉砕生成物が開示されていたとはいえない。 e 以上のとおり,被告らの前記の主張は理由がない。 (ウ) 被告らは,被告製品A3ないし6並びにB1及び2は結晶性の低い土状黒鉛であり,グラフェン前駆体という用途に適さないものであるから,構成要件1C及び2Cを充足しないと主張する。 しかし,Rate(3R)が増えると,当該黒鉛系炭素素材を前駆体として用いることでグラフェンが剥離しやすくなるという本件各発明の 効果は,本件各明細書に実施例として記載のある鱗片状黒鉛のみならず,土状黒鉛を含む他の種類の黒鉛系炭素素材にも妥当する。そもそも鱗片状黒鉛,土状黒鉛,膨張黒鉛といった分類は,「肉眼で目に見えるほどに結晶がよく発達した鱗状黒鉛と顕微鏡下で結晶が確認される程度の土状黒鉛とに分類される」(甲A18)といった厳密とはいえない分類の 仕方からわかるように,黒 った分類は,「肉眼で目に見えるほどに結晶がよく発達した鱗状黒鉛と顕微鏡下で結晶が確認される程度の土状黒鉛とに分類される」(甲A18)といった厳密とはいえない分類の 仕方からわかるように,黒鉛粉末の製造販売業者が便宜上設けた分類にすぎない。 土状黒鉛に限らず,一般的に結晶性の低い黒鉛をグラフェン前駆体として用いてグラフェンを生成することもあり,結晶性の低い黒鉛がグラフェンの材料として適していないことを裏付ける科学的論拠はない。土状黒鉛がグラフェンを生成する際の原料として用いられていることは, 多数の特許公報等(甲A35ないし41)からも明らかである。 したがって,被告らの上記主張は理由がない。 (エ) 被告らは,被告製品A3ないし6並びにB1及び2について,その原材料である土状黒鉛の原鉱石のRate(3R)は31%以上であり,本件各明細書に「天然黒鉛は,発掘された段階では菱面体晶が殆ど存在 しない」(【0021】)と記載されていることからすると,本件各発明に係る「黒鉛系炭素素材」に土状黒鉛の原鉱石,ひいては土状黒鉛は想定されていないというべきであると主張する。 しかし,被告らが主張する原鉱石が,発掘された段階での黒鉛であることの証拠はなく,発掘されてから被告らが入手するまでの間に,約3 00℃の加熱による乾燥処理しか行われていないことや5mm(=5000μm)以下程度の大きさへの粗砕しか行われていないことを裏付ける証拠もない。 したがって,被告らが主張するRate(3R)は,発掘後,何らの処理も行われていない原鉱石についてX線回折法による測定及び解析を したものとは認められないから,被告らの上記主張は理由がない。 (オ) 被告らは,一般 te(3R)は,発掘後,何らの処理も行われていない原鉱石についてX線回折法による測定及び解析を したものとは認められないから,被告らの上記主張は理由がない。 (オ) 被告らは,一般的に,土状黒鉛は,その粒子が鱗状黒鉛と比較して小さく,層間のファンデルワールス相互作用力が全体として小さくなるため,はがれやすいという特徴があり,このような特徴は本件特許出願前から周知であったから,当業者は,土状黒鉛について,Rate (3R)が31%以上又は40%以上であることとグラフェンが剥離しやすいこととの間に因果関係があると考えることはないと主張する。 しかし,当業者の認識を踏まえた因果関係を議論する必要はないし,被告らは,Rate(3R)がグラフェンの剥離しやすさに影響を与えていないことを一切立証していないから,被告らの上記主張は理由がない。 (カ) 被告らは,被告製品A7ないし11及びB3ないし5は膨張化黒鉛(膨張黒鉛)であるところ,膨張化黒鉛はその製造工程において黒鉛層間に無機酸が挿入され,黒鉛層間の距離が広げられたためにグラフェンが剥離しやすくなったものであり,「所定の処理を施すこと」(本件各明細書【0007】)によりグラフェンが剥離しやすくなったものでは ないから,構成要件1C及び2Cを充足しないと主張する。 しかし,前記(ウ)のとおり,Rate(3R)が増えると,当該黒鉛系炭素素材を前駆体として用いることでグラフェンが剥離しやすくなるという本件各発明の効果は,鱗片状黒鉛のみならず他の種類の黒鉛系炭素素材にも妥当する。 膨張化黒鉛(膨張黒鉛)が,一般的にグラフェンが剥離しやすい性質を有するものであるとしても,そのことにより,六方晶系黒鉛層と菱面晶系 ず他の種類の黒鉛系炭素素材にも妥当する。 膨張化黒鉛(膨張黒鉛)が,一般的にグラフェンが剥離しやすい性質を有するものであるとしても,そのことにより,六方晶系黒鉛層と菱面晶系黒鉛層との総和に対する菱面晶系黒鉛層の比率がグラフェンの剥離しやすさに影響を与えていないことにはならない。被告製品A7ないし11及びB3ないし5について,グラフェンが剥離しやすいという効果 を奏することに争いはないところ,本件各発明のメカニズムを一切利用していないことの証拠はない。 したがって,被告らの上記主張は理由がない。 (3) 小括以上に加え,前記前提事実(6)によれば,被告製品A1ないし3及びB6は, 本件発明1の構成要件1Aないし1Cを全て充足するから,本件発明1の技術的範囲に属し,被告製品A4ないし11及びB1ないし5は,本件発明1の構成要件1Aないし1C及び本件発明2の構成要件2Aないし2Cをいずれも全て充足するから,本件各発明の技術的範囲に属する。 (被告らの主張)(1) 構成要件1A,2A,1B及び2Bの充足性 ア被告製品AのRate(3R)について被告らは,被告製品Aについて,同一のロットのサンプルをそれぞれ3ないし5回,SmartLabで測定を行い,この測定結果をPDXLを用いて解析してRate(3R)を算出したところ,別紙3Rate(被告伊藤)の番号2の列記載のとおりの結果を得た(乙A9。以下「乙A9 結果」という。)。 イ被告製品BのRate(3R)について被告らは,被告製品Bについて,同一のロットのサンプルをそれぞれ3回,SmartLabで測定を行い,この測定結果をPDXLを用いて解析してRate(3R)を BのRate(3R)について被告らは,被告製品Bについて,同一のロットのサンプルをそれぞれ3回,SmartLabで測定を行い,この測定結果をPDXLを用いて解析してRate(3R)を算出したところ,別紙4Rate(被告西村) の番号2の列記載のとおりの結果を得た(乙A17。以下「乙A17結果」という。)。なお,被告製品B3及び5は被告製品A7と,被告製品B4は被告製品A8と,それぞれ同一の製品である。 ウ Rate(3R)の再現性がないこと(ア) 乙A9結果及び乙A17結果のとおり,被告製品A3ないし11及 びB1ないし5について,算出されたRate(3R)にはばらつきが認められ,31%未満のものと31%以上のものが混在したり,原告が主張する数値(甲A5結果及び甲B7結果)とかけ離れていたりする。このように,同じ測定条件及び測定方法で,同じロットのサンプルを測定し,同じ解析条件で解析をしているにもかかわらず,測定 結果に基づく解析結果が有意に異なっている。 また,原告代表者は,本件訴訟提起前の平成31年2月初旬,被告伊藤代表者の親戚に対し,原告がX線回折法による測定により得られた回折プロファイルを解析して算出した被告製品AのRate(3R)(乙A1結果)を記載したメモを交付した。このメモに記載された乙A1結果は,別紙3Rate(被告伊藤)の番号3の列記載のとおりであり, 原告が訴状に記載したRate(3R)(甲A5結果)とは大きく異なっており,両者には誤差の範囲とは認められない実質的な違いがある。 これに対し,原告は,上記の違いが存在するのは一部のサンプルにつき解析結果が収束しない未完成のGGIndex(β)を用いて解析したためであると主張する。しかし,そもそも乙A い実質的な違いがある。 これに対し,原告は,上記の違いが存在するのは一部のサンプルにつき解析結果が収束しない未完成のGGIndex(β)を用いて解析したためであると主張する。しかし,そもそも乙A1結果がGGIndex (β)を用いて解析された結果であることを裏付ける証拠はないし,乙A1結果と甲A5結果の数値の相違が,GGIndex(β)が抱えるバグによるものであることを裏付ける証拠もない。 したがって,Rate(3R)は本件各発明の構成要件を特定するパラメータとして機能していないというべきである。 (イ) 被告らは,被告各製品をSmartLabを用いて測定し,その測定結果をPDXLの自動解析機能を利用して解析することにより,構成要件1B及び2BのP3(菱面晶系黒鉛層(3R)の(101)面のピーク強度)及びP4(六方晶系黒鉛層(2H)の(101)面のピーク強度)の各数値を得たものであるが,乙A9結果によれば,各 回折プロファイルは,試料間で若干の違いは認められるものの,製品ごとに概ね共通しているといえる。しかし,回折プロファイルを解析して得られたP3及び4の違いは顕著であり,Rate(3R)に違いを生ずる原因の一つは,解析工程にあるといえる。 そして,被告製品A1及び2のRate(3R)に関し,被告らが 行った乙A9結果は,原告が行った甲A5結果及び乙A1結果と比較して,安定した解析結果となっていることからすると,被告らの解析手法に問題がないことは明らかである。 原告は,当業者が通常行うように,得られた回折プロファイルを適切な手段により解析すればよいだけであり,一義的なRate(3R)を算出することができない原因が被告らにあるかのように主張する。 しかし,被告ら黒鉛 通常行うように,得られた回折プロファイルを適切な手段により解析すればよいだけであり,一義的なRate(3R)を算出することができない原因が被告らにあるかのように主張する。 しかし,被告ら黒鉛材料メーカーの大部分は,通常の業務において黒鉛製品の回折プロファイルを解析することはないから,これを解析するための適切な手法の内容等は,基本的に被告らの知るところではない。被告らは,PDXLにおいて自動的に設定される解析条件を用いると同じロットの黒鉛製品の試料間で解析値がばらつく場合にどのように 対処すべきか,数値を収束させなければならないとすればどの数値に収束すべきか,その数値に収束させるために解析条件をどのように設定すべきかについて,客観的に確立した基準や方法が存在していたとしても,本件各明細書にそれらが記載されていない以上知ることができず,これは黒鉛材料メーカーの技術水準からすればごく自然なことである。 また,原告は,P3及び4がばらつく場合,測定結果を収束させるように適切な解析条件を設定する必要があると主張するが,どの数値に収束するように解析条件を選択するか,そのためにどのように解析条件を設定するかについて,解析者が適宜定めることができるとすると,Rate(3R)が40%以上になるようにP3及び4が収束する解析条件 を設定することも可能になり,Rate(3R)が客観的なパラメータとして機能しないことになる。 (ウ) 前記(イ)のとおり,回折プロファイルは製品ごとに試料間で概ね共通しているにもかかわらずRate(3R)がばらつきが生ずるのは,回折プロファイルにおけるピークがシャープでないため,P3及び4 (構成要件1B及び2B)に対応するピークが一意に定まらないことにも起因すると考えら ずRate(3R)がばらつきが生ずるのは,回折プロファイルにおけるピークがシャープでないため,P3及び4 (構成要件1B及び2B)に対応するピークが一意に定まらないことにも起因すると考えられる。 このことは,回析プロファイルのピークが土状黒鉛製品や膨張化黒鉛製品のそれよりシャープである鱗片状黒鉛製品については,自動解析機能により得られた解析結果から算出されるRate(3R)が安定していることからもわかる。回折プロファイルのピークがブロードになる理 由としては,個々の結晶子の結晶性(周期性,ひずみ),バルクとしての結晶性が不均一であることが挙げられる。土状黒鉛及び膨張化黒鉛は,その性質上,鱗片状黒鉛と比べ,バルクとして結晶性の均一性が劣るため,回折プロファイルにおけるピークの幅がブロードになると理解される。 このように,黒鉛の種類や結晶状態によって回折プロファイルのピークがシャープであるか否かの差異が生じ,安定したRate(3R)を算出することができたりできなかったりするので,Rate(3R)は黒鉛に係る発明を特定する事項として適切とはいい難い。 (エ) 以上のとおり,Rate(3R)は,再現性をもって算出することが できないから,構成要件で定めるパラメータとして不適切である。 エ小括以上のとおり,被告製品A3ないし11及びB1ないし5のRate(3R)には再現性がなく,定量的な測定ができず,土状黒鉛である被告製品A3ないし6及びB1及び2の各回折プロファイルにおいては, Rate(3R)を算出する基礎となる2つのピークが「ピーク」としての体をなしていないことからすると,被告製品A3ないし11及びB1ないし5は,構成要件1B及び2Bを充足するとは おいては, Rate(3R)を算出する基礎となる2つのピークが「ピーク」としての体をなしていないことからすると,被告製品A3ないし11及びB1ないし5は,構成要件1B及び2Bを充足するとは認められない。 (2) 構成要件1C及び2Cの充足性ア構成要件1C及び2Cの解釈について (ア) 本件各明細書には,次のような記載がある。すなわち,天然黒鉛は,層の重なり方によって六方晶,菱面体晶及び無秩序の3種類の結晶構造に区別され(【0020】),発掘された段階では菱面体晶がほとんど存在せず,物理的力や熱によって処理することにより菱面体晶の比率を増加させたとしても30%程度にとどまっていたところ(【0021】),本件各発明は,「天然黒鉛に所定の処理を施すことで, 粉砕や超高温に加熱する処理では30%程度までしか増えない菱面体晶(3R)の割合を,40%以上まで増加させることに成功した」(【0024】)ものである。そして,この「所定の処理」とは,物理的力による処理及び電波的力による処理を真空又は気中において施すことを意味する(【0011】,【0016】及び【0027】な いし【0035】)。このような特徴を持つ黒鉛系炭素素材をグラフェン前駆体として用いることにより,簡単に高濃度又は高分散されたグラフェン溶液等が得られるとの知見を得たという。 したがって,本件各発明の技術的意義は,天然黒鉛に「所定の処理」,すなわち物理的力による処理及び電波的力による処理を施すこ とにより,従来,30%程度までしか増えなかった菱面体晶(3R)の割合を40%以上にまで増加させることに成功し,このような特徴を持つ黒鉛系炭素素材をグラフェン前駆体として提供することにあると理解される。 (イ) までしか増えなかった菱面体晶(3R)の割合を40%以上にまで増加させることに成功し,このような特徴を持つ黒鉛系炭素素材をグラフェン前駆体として提供することにあると理解される。 (イ) しかし,実際には,菱面体晶(3R)の割合が40%以上の黒鉛系 炭素素材は,従来から存在していた。 すなわち,原告は,本件各発明に関して,本件特許出願を優先権主張の基礎として平成27年2月27日にPCT国際出願をし,当該国際出願に基づき,欧州特許庁に国内移行した特許出願(EP15727864.9)をした(同出願の当初の請求項1及び2は,本件発明 1及び2にそれぞれ対応する。)。平成28年3月4日に発行された同出願に関する拡大された欧州調査報告書に含まれていた欧州調査意見書(乙A5の1ないし3)には,同出願の請求項1及び2について,先行文献D1ないし3との関係で新規性又は進歩性が欠如している旨の意見が記載されており,このうち先行文献D2は乙A3公報であった。これに対して,原告は,同年9月30日付け提出文書(乙A6) において,先行文献D2(乙A3公報)に「菱面体晶の存在割合が30%以上55%以下である黒鉛粉末」(【0026】)が開示されていることを認めつつ,「当該黒鉛粉末は,ボールミル(物理的力による処理)及びジェットミル(物理的力による処理)の組み合わせにより生成されている(段落[0026])。ところで,ジェットミルに おける超音波処理は,超音波は電波ではないので,電波的力処理にあたらない。したがって,D2において,当該黒鉛粒子は物理的力による処理だけで生成されたものである。更にD2は,原料の型式番号や黒鉛粉末を生成するためのハンマーミルやジェットミルの運転条件等の具体的な条件を開示していない。それ故,D ,当該黒鉛粒子は物理的力による処理だけで生成されたものである。更にD2は,原料の型式番号や黒鉛粉末を生成するためのハンマーミルやジェットミルの運転条件等の具体的な条件を開示していない。それ故,D2は,31%以上の“ Rate”に関して実施可能な開示があるとはいえず,したがって,請求項1の内容(subjectmatter)の新規性を喪失させるものではない」と説明した。 (ウ) また,甲A4文献では,黒鉛をジェットミル等により粉砕した粉砕生成物をX線回折法により測定した結果について,菱面体晶黒鉛量αR hが気体に窒素又は空気いずれを用いた場合も40%を上回ったことが示されている。 ここで,菱面体晶黒鉛量αRhとは,(101)Hと(101)Rhの積分強度比を理論強度比と比較することにより求めた菱面体晶の生成割合で,甲A4文献には,菱面体晶黒鉛αRhの定義として,「cont entofrhombohedralstructureintotalcrystalstructure[%]」と記載されており,菱面体晶黒鉛αRhが結晶総量,すなわち六方晶系黒鉛層と菱面晶系黒鉛層の総和に対する菱面晶系黒鉛層の量を意味していることは明白である。 上記の菱面体晶黒鉛量αRhは文献乙A24文献にも登場するところ, 乙A24文献は,本件各明細書の非特許文献1として紹介され,本件各明細書中の「精製時における破砕を長時間行っても,菱面体晶の比率は30%程度で収束することが知られている」(【0021】)との記載の根拠とされていることからすると,菱面体晶黒鉛量α Rhは,式1(構成要件1B及び2B)で規定されるRate(3R)と同義とい える。 原告は,乙A24文献における「 との記載の根拠とされていることからすると,菱面体晶黒鉛量α Rhは,式1(構成要件1B及び2B)で規定されるRate(3R)と同義とい える。 原告は,乙A24文献における「αRh」をRate(3R)と同様ないし類似の概念であると仮定して本件各明細書(【0021】及び【0024】)に記載したものであり,乙A24文献における「αRh」がRate(3R)であると捉えていたわけではないと主張する。し かし,この主張を裏付ける記載は本件各明細書には見当たらないし,本件各明細書においては,非特許文献1として乙A24文献を引用し,何らの留保もすることなく,「精製時における粉砕を長時間行っても,菱面体晶の比率は30%程度で収束することが知られている」(【0021】)などと記載されているのであるから,本件各明細書において, 乙A24文献における「αRh」とRate(3R)とが同一視されていることは明らかである。 したがって,Rate(3R)並びに甲A4文献及び乙A24文献における菱面体晶黒鉛量αRhは同一視することができるものである。 (エ) 前記(イ)及び(ウ)のとおり,本件特許出願前に,式1(構成要件1B 及び2B)で算出されるRate(3R)が一定数値以上である黒鉛系炭素素材は開示されていたから,本件各発明に新規性が認められるように解釈をすると,本件各発明の技術的意義は,菱面体晶の割合を40%以上に増加させるために,天然黒鉛に物理的力による処理のみならず電波的力による処理を施した点にあり,「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」(構成要件1C及び2C)は,天然 黒鉛に物理的力による処理及び電波的力による処理を施すことにより生成されたものに限定して解釈すべきである。 「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」(構成要件1C及び2C)は,天然 黒鉛に物理的力による処理及び電波的力による処理を施すことにより生成されたものに限定して解釈すべきである。 (オ) 原告は,構成要件1C及び2Cの「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」とは,天然黒鉛に所定の処理を施すことでグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散することができる黒 鉛系炭素素材として用いることができる黒鉛系炭素素材を意味し,構成要件1B及び2Bを充足する場合は,構成要件1C及び2Cも充足するのが通常であると主張する。 しかし,構成要件1B及び2Bを充足するときは構成要件1C及び2Cも充足するとすれば,構成要件1C及び2Cは発明特定事項としての 機能がほぼないに等しいということになり,妥当でない。また,前記(ア)のとおり,本件各明細書の記載によれば,「所定の処理」とは,「電波的力による処理」と「物理的力による処理」との併用を指すものと理解すべきであり,「グラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散することができる」という判断基準は,必ずしも明らかではない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 イ被告製品Aについて(ア) 被告製品A1及び2は,鱗片状黒鉛であるところ,被告伊藤は,輸入先においてジェットミルにより粉砕されたものを輸入し,分級処理を行って梱包している。 したがって,被告製品A1及び2は,その製造工程において電波的力による処理が施されておらず,構成要件1Cを充足しない。 (イ)a 被告製品A3ないし6は,土状黒鉛であるところ,輸入先から受け入れた後,被告製品A3は,精錬処理(混錬機 程において電波的力による処理が施されておらず,構成要件1Cを充足しない。 (イ)a 被告製品A3ないし6は,土状黒鉛であるところ,輸入先から受け入れた後,被告製品A3は,精錬処理(混錬機による粉砕),脱水,乾燥及び微粉砕処理(微粉砕機による粉砕)を経て梱包され,被告製品A4ないし6は,微粉砕処理を経て梱包される。このよう に,被告製品A3ないし6は,その製造工程において電波的力による処理を施されていない。 b また,X線回折法による測定により得られた回折プロファイルにおいて,回折線の角度が43.3°付近及び46°付近に菱面体晶に帰属されるピークが観察されることが知られているところ,被告 製品A3ないし6の各回折プロファイル(甲A5の3ないし6)において,いずれもについても43.3°付近のピークはほとんど確認できず,被告製品A3,4及び6については46°付近のピークは観察されず,被告製品A5についても当該ピークは微弱である。 土状黒鉛は一般的に結晶性が低いことで知られており,上記のとお り実際に結晶性の低い被告製品A3ないし6がグラフェン前駆体の用途に適しているといえるかは疑問である。 c さらに,被告製品A3ないし6の原材料である土状黒鉛の原鉱石のRate(3R)は32.10ないし67.08%であったところ(乙A9),発掘された段階で既にRate(3R)が31%以 上であり,本件各明細書の「天然黒鉛は,発掘された段階では菱面体晶が殆ど存在しない」(【0021】)との記載に反するものであるから,本件各発明に係る「黒鉛系炭素素材」の原料となる天然黒鉛には土状黒鉛の原鉱石は含まれておらず,上記「黒鉛系炭素素材」として土状黒鉛は想定されていないというべきである。 d るから,本件各発明に係る「黒鉛系炭素素材」の原料となる天然黒鉛には土状黒鉛の原鉱石は含まれておらず,上記「黒鉛系炭素素材」として土状黒鉛は想定されていないというべきである。 d そして,本件各発明の「グラフェン前駆体」に該当するというためには,Rate(3R)が31%以上ないし40%以上であることを特徴とする黒鉛系炭素素材をグラフェン前駆体として用いることと,グラフェンに剥離しやすくなるとの作用効果との間に,当業者の認識を踏まえた因果関係が認められることを要すると解すべきである。この点,一般的に,粒子の大きさが100μm以上の鱗状黒鉛と比較 して,土状黒鉛の粒子は数μmないし数十μmと小さく,粒子が小さいほど層間のファンデルワールス相互作用力が全体として小さくなるため,土状黒鉛にははがれやすいという特徴があり,このような特徴は本件特許出願前から周知であった。そうすると,土状黒鉛について,当業者は,Rate(3R)が31%以上又は40%以 上であることとグラフェンが剥離しやすいこととの間に因果関係があると考えることはない。 e 以上のとおり,被告製品A3ないし6は,その製造工程において電波的力による処理が施されておらず,結晶性が低いため,グラフェン前駆体という用途に適するといえるかは疑問があり,本件各発 明が前提とするグラフェン前駆体を生成するための天然黒鉛に由来しないものである上,仮に,グラフェンが剥離しやすいという特徴があったとしても,Rate(3R)との間に因果関係は認められないから,構成要件1C及び2Cを充足しない。 (ウ) 被告製品A7ないし11は膨張化黒鉛であるところ,膨張化黒鉛は, 膨張黒鉛(膨張前)を膨張させ,プレスすることにより作られたグラファイトシー 成要件1C及び2Cを充足しない。 (ウ) 被告製品A7ないし11は膨張化黒鉛であるところ,膨張化黒鉛は, 膨張黒鉛(膨張前)を膨張させ,プレスすることにより作られたグラファイトシートを裁断し,粉砕した粉末である。そして,膨張黒鉛(膨張前)は,酸化黒鉛を含む黒鉛の層間化合物を高温下で急激に熱分解し,黒鉛層間を層面(六角網平面)に垂直な方向に膨張化させた芋虫状の嵩高い粉末である。 上記の酸化黒鉛(グラフェンオキサイド)は,本件特許出願前から,黒鉛からグラフェンを製造する工程において作成される中間体として広く知られており,WO2014/175449(乙A26)にも,「一方,近年,グラファイトからグラフェンを製造する方法として,次の2つの手法が主に用いられている。一つは,グラファイトを酸化した後,水中で剥離してグラフェンオキサイドを得る方法である(非特許文献 2)。もう一つの手法は,溶媒又は界面活性剤溶液中でグラファイトを超音波処理などで剥離(液相剥離)し,液中で分散したグラフェンを得る方法である(非特許文献2~3)。」(【0004】)との記載がある。そして,膨張化黒鉛は,酸化黒鉛を含む黒鉛層間化合物を出発原料としているので,上記のグラフェンシートに剥離しやすい性質を黒鉛層 間化合物から受け継いでいると解される。 したがって,被告製品A7ないし11は,その製造工程において電波的力による処理が施されておらず,また,酸化黒鉛を含む黒鉛層間化合物を出発原料としているからグラフェンが剥離しやすいのであって,六方晶系黒鉛層に対する菱面晶系黒鉛層の割合を高くすることに よりグラフェンの剥離しやすさが増すという技術的思想に基づいておらず,「所定の処理を施すこと」により「グラフェンが剥離し であって,六方晶系黒鉛層に対する菱面晶系黒鉛層の割合を高くすることに よりグラフェンの剥離しやすさが増すという技術的思想に基づいておらず,「所定の処理を施すこと」により「グラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散させることができる」(本件各明細書【0007】)ものでもないから,構成要件1C及び2Cを充足しない。 ウ被告製品Bについて(ア) 被告製品B1及び2は,土状黒鉛であるところ,その製造工程において,電波的力による処理は施されていない。 また,前記イ(イ)bと同様に,被告製品B1及び2の各回折プロファイル(甲B7の1,2)において,いずれも,回折線の角度が43.3° 付近のピークはほとんど確認できず,46°付近のピークは観察されず,グラフェン前駆体の用途に適しているとはいえない。 さらに,前記イ(イ)c及びdのとおり,本件各発明が前提とするグラフェン前駆体を生成するための天然黒鉛に由来せず,仮に,グラフェンが剥離しやすいという特徴があったとしても,Rate(3R)との間に因果関係は認められない。 したがって,被告製品B1及び2は,構成要件1C及び2Cを充足しない。 (イ) 被告製品B3ないし5は,膨張化黒鉛に分類されるところ,前記イ(ウ)のとおり,その製造工程において電波的力による処理は施されておらず,また,「所定の処理を施すこと」により「グラフェンが剥離し やすく,グラフェンを高濃度又は高分散させることができる」(本件各明細書【0007】)ものではないから,構成要件1C及び2Cを充足しない。 (ウ) 被告製品B6は,その製造工程において電波的力による処理を施されていない。 したがっ 明細書【0007】)ものではないから,構成要件1C及び2Cを充足しない。 (ウ) 被告製品B6は,その製造工程において電波的力による処理を施されていない。 したがって,被告製品B6は,構成要件1Cを充足しない。 (3) 小括以上のとおり,被告製品A1及び2並びにB6は本件発明1の構成要件1Cを充足せず,被告製品A3は構成要件1Aないし1Cを充足しないから,いずれも本件発明1の技術的範囲に属しない。また,被告製品B2は本件発 明1の構成要件1C及び本件発明2の構成要件2B及び2Cを充足せず,被告製品A4ないし11並びにB1及び3ないし5は構成要件1Aないし1C及び2Aないし2Cを充足しないから,いずれも本件各発明の技術的範囲に属しない。 2 争点2-1(乙A3公報を引用例とする新規性欠如)について (被告らの主張)(1) 乙A3公報に記載された発明乙A3公報には,非水電解液二次電池の正極部に導電材として含まれる黒鉛材料をX線広角回折法により測定したとき,菱面体晶に帰属される(101)回折線のピーク面積,六方晶に帰属される(101)回折線のピーク面積をそれぞれr(101),h(101)とし,黒鉛結晶全体に含まれる菱 面体晶系の存在割合を{r(101)×12/15}/{r(101)×15/12+h(101)}とすると,菱面体晶系の存在割合を30%以上55%以下とすることが記載されている。そして,乙A3公報には,実施例として,電池Dに使用された菱面体晶の存在割合が54%である黒鉛材料及び電池Iに使用された菱面体晶の存在割合が50%である黒鉛材料が記載され ている。 したがって,乙A3公報には,以下の発明が記載されているといえる(以下「 合が54%である黒鉛材料及び電池Iに使用された菱面体晶の存在割合が50%である黒鉛材料が記載され ている。 したがって,乙A3公報には,以下の発明が記載されているといえる(以下「乙A3発明」といい,分説した各構成要件につき,頭書の記号に従って「構成要件a」などという。)。 a 菱面晶体黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し, b {r(101)×12/15}/{r(101)×15/12+h(101)}に示される式(式①)で計算される菱面体晶黒鉛層の割合が30%以上55%以下である,(r(101)は菱面体晶に帰属される(101)回折線のピーク面積であり,h(101)は六方晶に帰属される(101)回折線のピーク 面積をいう。)c 黒鉛系炭素素材(2) 本件各発明と乙A3発明との対比ア乙A3発明の構成要件aは,構成要件1A及び2Aと一致する。 イ乙A3公報の【0015】ないし【0019】によれば,式①の補正係 数15/12の技術的な意味にかかわらず,式①は,X線広角回折法によって菱面体晶に帰属される(101)回折線のピーク面積であるr(101)と,同様に測定された六方晶に帰属される(101)回折線のピーク面積であるh(101)の合計に対するr(101)の比率を示し,乙A3公報に記載された黒鉛材料に含まれる黒鉛結晶全体に占める菱面体晶の割合を定義していることは明確である。そして,式①により算出される割 合が一意に定まれば,r(101)とh(101)との割合も一意に決まり,r(101)とh(101)はそれぞれRate(3R)を算出する基礎となるP3及びP4に対応することから,Rate(3R)も一意に定まるといえる。したがって, とh(101)との割合も一意に決まり,r(101)とh(101)はそれぞれRate(3R)を算出する基礎となるP3及びP4に対応することから,Rate(3R)も一意に定まるといえる。したがって,乙A3発明の構成要件bを充足する黒鉛系炭素素材は本件各発明の構成要件1B及び2Bも充足することになるので, 乙A3発明の構成要件bは,本件各発明の構成要件1B及び2Bと同一であるといえる。 ここで,式①により算出される割合が30%以上55%以下であるとすると,これをRate(3R)に換算すると,約41ないし83%となるので,この点からも,乙A3発明の構成要件bは,本件各発明の構成要件 1B及び2Bと一致するということができる。 また,乙A3公報に接した当業者は,式①の分子のr(101)に乗じている12/15が15/12の誤記であると理解することも考えられるが,そうであるとすると,乙A3発明の構成要件bは,{r(101)×15/12}/{r(101)×15/12+h(101)}に示される 式により算出される割合が30%以上55%以下であることとなり,これをRate(3R)に換算すると,約25ないし49%となる。したがって,式①に上記誤記があったとしても,乙A3発明の構成要件bは,構成要件1B及び2Bと一致するということができる。 ウ仮に,前記1(原告の主張)(2)アのとおり,構成要件1C及び2Cの 「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」とは,天然黒鉛に所定の処理を施すことで,グラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散することができる黒鉛系炭素素材として用いることができる黒鉛系炭素素材であると解した場合,上記「グラフェン前駆体」とは,黒鉛の種類や物性,用途を制限する が剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散することができる黒鉛系炭素素材として用いることができる黒鉛系炭素素材であると解した場合,上記「グラフェン前駆体」とは,黒鉛の種類や物性,用途を制限するものではなく,「グラフェンの材料になり得るもの」という程度の意味しか持たず,上記「グラフェン前駆体とし て用いられる」とは,(実用的か否かは問わず)グラフェンの材料として用いることができることを意味すると解される。 そうすると,乙A3公報が開示する黒鉛D及びIは,鱗片状の人造黒鉛を粉砕して得たものであり(【0042】),グラフェンの材料として用いることができるから,乙A3発明の構成要件cは,本件各発明の構成要 件1C及び2Cと一致する。 エ以上によれば,本件各発明は,乙A3発明と全て一致するから,乙A3公報にその全てが記載されていると認められる。 よって,本件各発明は,いずれも乙A3公報に記載されている発明であるから,新規性欠如の無効理由が認められる(法104条の3,123条 1項2号,29条1項3号)。 (3) 原告の主張に対する反論ア原告は,乙A3発明の式①が本件各発明の式1(構成要件1B及び2B)とは異なるものであり,式①において,分母のr(101)には15/12を乗じながら,分子のr(101)には12/15を乗じており,当該 補正係数が何を意味するのかも明らかではないため,それが誤記であるか否かを判別できず,これにより算出された数値がいかなるものかを把握できないから,その点で乙A3発明と本件各発明とが相違すると主張する。 しかし,乙A3公報には,「補正係数15/12(六方晶構造と菱面体晶構造における単位格子の体積比)」(【0018】)と記載されており, で乙A3発明と本件各発明とが相違すると主張する。 しかし,乙A3公報には,「補正係数15/12(六方晶構造と菱面体晶構造における単位格子の体積比)」(【0018】)と記載されており, その意味は明確である。また,本件特許出願当時,黒鉛結晶全体に含まれる菱面体晶系の存在割合という概念は,黒鉛材料の特性を示す指標として一般に用いられており,乙A3公報に接した当業者は,式①の分子のr(101)に乗じられている12/15が誤記であるか否かを直ちに判別することができなかったとしても,誤記であるとして,又は誤記ではないとして,式①からそれぞれ数値を算出し,Rate(3R)も算出するこ とが可能である。 したがって,原告の上記主張に係る点は本件各発明と乙A3発明との相違点ではない。 イ原告は,本件各発明は天然黒鉛を原料とするのに対し,乙A3発明は天然黒鉛を原料としないと主張する。 しかし,乙A3公報には,乙A3発明に係る黒鉛材料の出発原料として天然黒鉛が挙げられているから(【0021】),乙A3発明の黒鉛材料は当然に天然黒鉛を含むものである。 したがって,原告の上記主張に係る点は本件各発明と乙A3発明との相違点ではない。 ウ原告は,本件各発明では天然黒鉛のRate(3R)が31%以上又は40%以上であるが,乙A3発明において開示されている天然黒鉛のRate(3R)は31%以上又は40%以上ではないと主張する。 しかし,乙A3公報の【0019】,【0021】等の記載によれば,Rate(3R)が31%以上の天然黒鉛由来の黒鉛材料が開示されてい ることは明らかである。そして,欧州特許庁の審判体は,乙A3公報に関し,その特性により定義される対象物につ の記載によれば,Rate(3R)が31%以上の天然黒鉛由来の黒鉛材料が開示されてい ることは明らかである。そして,欧州特許庁の審判体は,乙A3公報に関し,その特性により定義される対象物について,当該黒鉛系炭素素材が何に由来するかは関係がなく,本件各発明に係る黒鉛系炭素素材と同じものであるとの見解を示しており,これは被告らの主張に沿うものである。 したがって,原告の上記主張に係る点は本件各発明と乙A3発明との相 違点ではない。 エ原告は,乙A3公報の記載(【0026】)を根拠に,乙A3発明は,黒鉛が薄片状に粉砕されてしまう状況,すなわち菱面体晶の割合が高い状況を好ましくないとするものであるから,菱面体晶の割合を高くして黒鉛がグラフェンに剥離しやすくなることを目指した本件各発明とは相違すると主張する。 しかし,乙A3公報には,「雰囲気中に酸素あるいは水分が存在すると,」「粒子は薄片状に粉砕され」,「粒子が立体的に且つ超微粉に粉砕され」る場合と比較して,「菱面体晶の生成量が大きくな」らないと記載され(【0026】),また,「菱面体晶を効率よく生成させることも可能である」(【0027】)とも記載されていることからすると,乙A3 発明は,本件各発明と同様の技術的思想に基づくものというべきであり,剥離しにくい黒鉛を好ましいものと捉えているものではない。 なお,乙A3発明において「劈開的な粉砕により粒子が薄片状に粉砕されてしまうのが好ましくない」のは,乙A3発明に係る黒鉛材料が,充放電サイクル特性に優れた非水電解液2次電池の正極合剤の導電剤の用途を 想定しているからである(【0006】ないし【0011】)。つまり,乙A3発明の黒鉛材料は,非水電解液2次電池の正極合剤の導電剤に用いら に優れた非水電解液2次電池の正極合剤の導電剤の用途を 想定しているからである(【0006】ないし【0011】)。つまり,乙A3発明の黒鉛材料は,非水電解液2次電池の正極合剤の導電剤に用いられた場合に初期充放電サイクルにおいて層間へのインターカレーションが抑制されてグラフェンの剥離が起こりにくいという意味で「剥がれにくい」のであって,機械的な剥離のしやすさとは無関係である。 したがって,原告の上記主張に係る点は本件各発明と乙A3発明との相違点ではない。 (原告の主張)本件各発明と乙A3発明との間には,以下の相違点が認められる。 (1) 乙A3公報の請求項1には,黒鉛結晶全体に含まれる菱面体晶系の存在割 合を求める式として,{r(101)×12/15}/{r(101)×15/12+h(101)}(式①)と記載されている。 しかし,式①は式1(構成要件1B及び2B)とは異なり,これにより算出される数値もRate(3R)とは異なるものである。 また,補正係数15/12が何を意味するのかが当業者にとって明らかではないため,式①において,分母のr(101)には15/12を乗じなが ら,分子のr(101)には12/15を乗じていることについても,誤記であるか否かを判別することができず,これにより算出された数値がいかなるものであるのかを把握することができない。 したがって,本件各発明は黒鉛のRate(3R)が31%以上又は40%以上であるのに対し,乙A3発明は黒鉛のRate(3R)が31%以 上又は40%以上であることが明らかでない。 (2) 前記1(原告の主張)(2)アのとおり,構成要件1C及び2Cの「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」とは,天 )が31%以 上又は40%以上であることが明らかでない。 (2) 前記1(原告の主張)(2)アのとおり,構成要件1C及び2Cの「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」とは,天然黒鉛に所定の処理を施すことで,グラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散することができる黒鉛系炭素素材として用いることができる黒鉛系炭素素材を 意味すると解される。 乙A3公報には,「人造黒鉛は有機材料を熱処理することで生成される。 この出発原料となる有機材料としては,各種ピッチなどが代表的である。ピッチとしては,コールタール,エチレンボトム油,原油などを高温熱分解,蒸留,抽出,熱重縮合,及び化学重縮合などの操作によってコールタールピ ッチ,石油ピッチなどが得られる。またナフタレン,フェナントレン,アントラセン,ピレン,ペリレン,アセナフチレンなどの縮合多環炭化水素化合物,その他,これらの誘導体,あるいは混合物及びポリ塩化ビニル樹脂などの有機高分子化合物もピッチの原料として使用可能である。これらのピッチ及びピッチの原料は,炭化過程の途中約350℃程度の温度で液相化し,そ の温度で保持することによって芳香環どうしが縮合・多環化したものが積層されて炭素前駆体を生成することにより,その後の炭素化の過程で容易に黒鉛化する易黒鉛化性炭素を与える状態となる。」(【0022】)との記載があり,乙A3公報に記載された「人造黒鉛」とは,この意味で用いられている。 そうすると,本件各発明は天然黒鉛を原料とするのに対し,乙A3発明は 天然黒鉛を原料とするものではない。 (3) 乙A3公報において実施例で用いられている黒鉛は,電池Eに用いられたもの以外人造黒鉛であるところ(【0042】),電池Eに用いられて A3発明は 天然黒鉛を原料とするものではない。 (3) 乙A3公報において実施例で用いられている黒鉛は,電池Eに用いられたもの以外人造黒鉛であるところ(【0042】),電池Eに用いられているマダガスカル産天然黒鉛粉末の菱面体晶の存在割合は35%とされる(【0047】)。 そして,「r(101)についてはより正確を期すために補正係数15/12(六方晶構造と菱面体晶構造における単位格子の体積比)を乗算」(【0018】)するとしていることを踏まえると,式①の分子のr(101)に12/15を乗じているのは誤記であり,15/12を乗ずべきものである。この修正した式により算出されたのが上記35%であるとすれば, これをRate(3R)に換算すると,約30.1%となる。 したがって,本件各発明は天然黒鉛のRate(3R)が31%以上又は40%以上であるが,乙A3発明は天然黒鉛のRate(3R)が31%以上又は40%以上ではない。 (4) 乙A3公報には,「この場合菱面体晶系黒鉛の生成量は雰囲気ガスの影響 を強く受けるので注意を要する。雰囲気中に酸素あるいは水分が存在すると,劈開的な粉砕になりやすく粒子は薄片状に粉砕されてしまう。ヘリウム,窒素,真空中では粒子は立体的に且つ超微粉に粉砕されて結晶子が立体的になり,菱面体晶の生成量が大きくなる。したがって,粉砕雰囲気に水分あるいは酸素の混入量を可能な限り低減させることが好ましい。」(【0026】) との記載があるところ,乙A3発明においては,劈開的な粉砕により,黒鉛の粒子が薄片状に粉砕されてしまうのが好ましくないということが示されている。また,乙A3公報に開示された黒鉛は,基本的には人造黒鉛であるところ,乙A3発明においていかなる人造黒鉛が用 砕により,黒鉛の粒子が薄片状に粉砕されてしまうのが好ましくないということが示されている。また,乙A3公報に開示された黒鉛は,基本的には人造黒鉛であるところ,乙A3発明においていかなる人造黒鉛が用いられているかは不明であるが,剥離しにくい黒鉛が好ましいとする乙A3発明の技術的思想からすると,当業者は,ここで開示されている人造黒鉛は少なくとも剥離しにくい性 質を持つ黒鉛であると認識する。 これに対して,本件各発明の黒鉛系炭素素材は,グラフェンに剥離しやすい性質を持つ黒鉛である。 したがって,本件各発明は黒鉛がグラフェンに剥離しやすいことを目指したものであるのに対し,乙A3発明は黒鉛が薄片状に粉砕されてしまうこと を好ましくないとするものである。 3 争点2-2(乙A10公報を引用例とする新規性欠如)について(被告らの主張)(1) 乙A10公報に記載された発明乙A10公報には,菱面晶系黒鉛層の増加を図ることができる黒鉛系炭素 素材の製造方法に関して,遠心前(入手時点)において,X線広角回折法により測定した菱面体晶系黒鉛層の(101)面のピーク強度(P’3)が253(cps)であり,六方晶系黒鉛層の(101)面のピーク強度(P’4)が248(cps)である比較炭素材料xが記載されているところ,この比較炭素材料xのP’3/(P’3+P’4)×100を計算すると,5 0.4%となる。 したがって,乙A10公報には,以下の発明が記載されているといえる(以下「乙A10発明」といい,分説した各構成要件につき,頭書の記号に従って「構成要件a」などという。)。 a 菱面晶体黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し, b 前記菱面晶系黒鉛層(3R) ,分説した各構成要件につき,頭書の記号に従って「構成要件a」などという。)。 a 菱面晶体黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し, b 前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の式(式②)により定義される割合が50.4%であることを特徴とするP’3/(P’3+P’4)×100・・・・(式②)(ここで,P’3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度(cps),P’4は六方晶系黒鉛層(2H)のX 線回折法による(101)面のピーク強度(cps)である。)c 黒鉛系炭素素材である遠心前及び遠心後の比較炭素材料x(2) 本件各発明と乙A10発明との対比ア乙A10発明の構成要件aは,構成要件1A及び2Aと一致する。 イ乙A10発明の構成要件bについて,P’3及び4はピークの高さから 見たピーク強度(単位cps)であり,構成要件1B及び2BにおけるP3及び4は積分強度から見たピーク強度(単位counts・deg)であるが,ピークの高さと積分強度は同一視できるし,仮に同一視することができないとしても,ピークの高さと積分強度との間には相関関係があり,前者は後者の1.3ないし1.5倍であるから,式②により算出された割 合が50.4%だとすると,これはRate(3R)の33.6ないし38.8%に相当する。 したがって,乙A10発明の構成要件bは,少なくとも構成要件1B(Rate(3R)が31%以上)と一致するといえる。 ウ前記2(被告らの主張)(2)ウのとおり,構成要件1C及び2Cの「グラ フェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」について,グラフェンの (3R)が31%以上)と一致するといえる。 ウ前記2(被告らの主張)(2)ウのとおり,構成要件1C及び2Cの「グラ フェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」について,グラフェンの材料として用いることができる黒鉛系炭素素材を意味するものと解した場合,それは,黒鉛の種類や物性,主な用途,グラフェンの材料としての適性等を問わないものと解される。乙A10公報には,「比較炭素材料x」の種類や物性について特に記載されていないが,非水電解質二次電池の負 極に用いられる炭素系材料であって,リチウムと層間化合物を形成することが記載されていること(【0003】)を踏まえると,これからグラフェンを剥がすことは物理的に可能であると解される。 したがって,比較炭素材料xはグラフェンの材料として用いることができるから,乙A発明10の構成要件cは,構成要件1C及び2Cと一致する。 エ以上によれば,少なくとも本件発明1は,乙A10発明と全て一致するから,乙A10公報にその全てが記載されていると認められる。 よって,少なくとも本件発明1は,乙A10公報に記載されている発明であるから,新規性欠如の無効理由が認められる(法104条の3,123条1項2号,29条1項3号)。 (3) 原告の主張に対する反論原告は,乙A10発明のピーク強度(P’3及び4)はピークの高さ(単位cps)を意味するのに対し,本件各発明におけるピーク強度(P3及び4)は積分強度(単位counts・deg)を意味するから,乙A10発明は本件各発明とは全く異なる発明であると主張する。 しかし,そもそも,本件各発明の特許請求の範囲においては,「ピーク強度」としか記載されておらず,Rate(3R)を算出する 10発明は本件各発明とは全く異なる発明であると主張する。 しかし,そもそも,本件各発明の特許請求の範囲においては,「ピーク強度」としか記載されておらず,Rate(3R)を算出する前提となるP3及びP4の単位を「counts・deg」に限定する記載はなく,本件各明細書の【表1】ないし【表3】において,ピーク強度の単位として「counts・deg」と記載されているだけである。 また,定量分析に用いるピーク強度をピークの高さから求めることは,一般的に行われている手法であるし,本件特許出願当時,ピークの高さから算出される菱面体晶割合とピークの面積(積分強度)から算出されるそれを技術的に同一視できることは技術常識であった。 さらに,仮に,本件各発明のピーク強度がピークの面積を意味するとして も,前記(2)イのとおり,ピークの高さとピークの面積(積分強度)には相関関係があるから,少なくとも本件発明1は乙A10公報に開示されているといえる。 したがって,本件各発明におけるP3及び4のピーク強度と乙A10発明におけるP’3及び4のピーク強度は相違点ではない。 (原告の主張) (1) 本件各発明と乙A10発明との間には,以下の相違点が認められる。 すなわち,Rate(3R)を算出する際のP3及び4のピーク強度の単位は「counts・deg」であり,積分強度(ピークの面積)を表すのに対し,乙A10発明におけるP’3及び4のピーク強度の単位は「cps」であり,ピークの高さを表すものであって,全く異なる数値である。 したがって,本件各発明はピーク強度が積分強度であるのに対し,乙A10発明はピーク強度がピークの高さである。 (2) 被告らは,ピークの高さと であって,全く異なる数値である。 したがって,本件各発明はピーク強度が積分強度であるのに対し,乙A10発明はピーク強度がピークの高さである。 (2) 被告らは,ピークの高さと積分強度は同一視できるし,仮に同一視できないとしても,両者の間には相関関係が認められると主張する。 しかし,本件各明細書において,P3及び4の単位は「counts・d eg」と記載されているし(【表1】ないし【表3】),X線回折法のピーク強度測定においては,結晶子径等に影響されないピークの面積を使用することが原則とされていることからすると,本件各発明におけるピーク強度が積分強度を意味することは明らかである。 また,被告らが参照したわずかな測定例から,ピークの高さと積分強度 (ピークの面積)との間の定量関係が算出されるものではないし,被告らが主張するような相関関係が本件特許出願当時の当業者において技術常識であったとも認められない。 したがって,被告らの上記主張は理由がない。 4 争点2-3(乙A11公報を引用例とする新規性欠如)について (被告らの主張)(1) 乙A11公報に記載された発明乙A11公報は,薄層黒鉛又は薄層黒鉛化合物の製造方法に関するものであるところ,その実施例4及び5(【0040】及び【0041】)は被告製品A1と,実施例6及び7(【0042】及び【0043】)は被告製品A7並びにB3及び5と同一の製品であり,乙A11公報には,これらに高 圧乳化処理工程を施すことにより,グラフェンが1ないし数10層積層した構造を有する薄層黒鉛を製造することが記載されている。そして,原告の主張によれば,被告製品A1のRate(3R)は34.3%,被告製品A7並びにB3及 とにより,グラフェンが1ないし数10層積層した構造を有する薄層黒鉛を製造することが記載されている。そして,原告の主張によれば,被告製品A1のRate(3R)は34.3%,被告製品A7並びにB3及び5のRate(3R)は67.0%,49.9%及び62. 0%である。 したがって,乙A11公報には,以下の二つの発明が記載されているといえる(以下「乙A11発明1」,「乙A11発明2」といい,分説した各構成要件につき,頭書の記号に従って「構成要件a」などという。)。 ア乙A11発明1a 菱面晶体黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)を有する, b 前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が約34%であることを特徴とするRate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)(ここで,P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(10 1)面のピーク強度,P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度である。)c 黒鉛系炭素素材である鱗片状黒鉛Z-5Fイ乙A11発明2a 菱面晶体黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)を有する, b 前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が約67%又は約50ないし62%であることを特徴とするRate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)(ここで,P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度,P4は六方 特徴とするRate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)(ここで,P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度,P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法に よる(101)面のピーク強度である。)c 黒鉛系炭素素材である膨張化黒鉛EC-1500(2) 本件各発明と乙A11発明1及び2との対比ア乙A11発明1及び2の各構成要件aは,いずれも構成要件1A及び2Aと一致する。 イ乙A11発明1の構成要件bは構成要件1Bと一致し,乙A11発明2の構成要件bは構成要件1B及び2Bと一致する。 ウ前記2(被告らの主張)(2)ウのとおり,前記1(原告の主張)(2)アを前提にすれば,構成要件1C及び2Cの「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」について,グラフェンの材料として用いることがで きる黒鉛系炭素素材を意味すると解される。そして,乙A11公報には,被告製品A1及び7並びにB3及び5がそれぞれ薄層黒鉛又は薄層黒鉛化合物の原料に用いられており,「薄層黒鉛はグラフェンが1~数10層積層した構造を有したものを指し,薄層黒鉛化合物は薄層黒鉛の層間に電子供与体あるいは電子受容体が挿入された層間化合物や科学的に官能基が結 合したものを指す」(【0003】)とある。 したがって,被告製品A1及び7並びにB3及び5は,いずれもグラフェンの材料として用いることができるから,乙A11発明1及び2の各構成要件cは,いずれも本件各発明の構成要件1C及び2Cと一致する。 エ以上によれば,本件発明1は乙A11発明1と,本件発明2は乙A11 発明1及び2と,それぞれ全て一致するから,乙A11公報に は,いずれも本件各発明の構成要件1C及び2Cと一致する。 エ以上によれば,本件発明1は乙A11発明1と,本件発明2は乙A11 発明1及び2と,それぞれ全て一致するから,乙A11公報にその全てが記載されていると認められる。 よって,本件各発明は,いずれも乙A11公報に記載されている発明であるから,新規性欠如の無効理由が認められる(法104条の3,123条1項2号,29条1項3号)。 (原告の主張) 乙A11公報の実施例4及び5の「Z-5」が被告製品A1と,実施例6及び7の「EC-1500」が被告製品A7と,いずれも同一であるとはいえない。検査成績表が示す評価項目が共通するというだけでは,製品としての同一性は認められないし,現在に至るまで,これらの製品名の製品につき,産地や輸入先,製造方法,保管方法等に変更がないといえることの証拠もない。 さらに,被告らの主張する事情については,争点2-6(公然実施に基づく新規性欠如)又は争点3(先使用権の成否)において議論するのならともかく,乙A11公報を新規性欠如の引用例として主張する合理的な理由は見当たらないというべきである。 したがって,乙A11公報に本件各発明が記載されているとはいえない。 5 争点2-4(甲A4文献を引用例とする新規性欠如)について(被告らの主張)(1) 甲A4文献に記載された発明甲A4文献には,鱗片状天然黒鉛を焼鈍したものをジェットミルにより粉砕すると,菱面体晶黒鉛αRhが40%を超える粉砕生成物が得られること, 菱面体晶黒鉛αRhは,X線回折線プロファイルにおける六方晶黒鉛の(101)Hと菱面体晶黒鉛の(101)Rhの積分強度比を理論強度比と比較することにより求められ る粉砕生成物が得られること, 菱面体晶黒鉛αRhは,X線回折線プロファイルにおける六方晶黒鉛の(101)Hと菱面体晶黒鉛の(101)Rhの積分強度比を理論強度比と比較することにより求められることが記載されている。 そして,前記1(被告らの主張)(2)ア(ウ)のとおり,菱面体晶黒鉛αRhはRate(3R)と同義であるといえる。 したがって,甲A4文献には,以下の発明が記載されているといえる(以下「甲A4発明」といい,分説した各構成要件につき,頭書の記号に従って「構成要件a」などという。)。 a 菱面晶体黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)を有する,b 前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が4 0%超であることを特徴とするRate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)(ここで,P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度,P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度である。) c 黒鉛粉砕生成物。 (2) 本件各発明と甲A4発明との対比ア甲A4発明の構成要件aは,構成要件1A及び2Aと一致する。 イ甲A4発明の構成要件bは,Rate(3R)が40%超の黒鉛粉砕生成物が記載されているとみなすことができるから,構成要件1B及び2B と一致する。 ウ前記2(被告らの主張)(2)ウのとおり,構成要件1C及び2Cの「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」がグラフェンの材料として用いることができる黒鉛系炭素素材を意味すると解した場合,上記「グラフェ らの主張)(2)ウのとおり,構成要件1C及び2Cの「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」がグラフェンの材料として用いることができる黒鉛系炭素素材を意味すると解した場合,上記「グラフェン前駆体」とは,黒鉛の種類や物性,主な用途,グラフェンの材料 としての適性等を問わないものと解される。そうすると,甲A4発明の黒鉛粉砕生成物は,天然黒鉛を所定の処理(ジェットミルによる粉砕処理)をしたものであり,グラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散することができるものと認められる。 したがって,甲A4発明の構成要件cは,構成要件1C及び2Cと一致 する。 エ以上によれば,本件各発明は,甲A4発明と全て一致するから,甲A4文献にその全てが記載されていると認められる。 よって,本件各発明は,いずれも甲A4文献に記載されている発明であるから,新規性欠如の無効理由が認められる(法104条の3,123条1項2号,29条1項3号)。 (3) 原告の主張に対する反論原告の主張に対する反論は,前記1(被告らの主張)(2)ア(ウ)のとおりである。 (原告の主張)前記1(原告の主張)(2)エ(イ)dのとおり,甲A4発明における菱面体晶黒 鉛αRhはRate(3R)と同義であるとはいえないから,本件各発明と甲A4発明は一致しない。 6 争点2-5(乙A82文献を引用例とする新規性欠如)について(被告らの主張)(1) 乙A82文献に記載された発明 乙A82文献には,一般的な黒鉛は六方晶からなるが,一部の黒鉛は六方晶に加えて菱面体晶を含み,粉砕や超音波処理により,菱面体晶の割合が30ないし40%に増加すること,実験方法について,菱面 乙A82文献には,一般的な黒鉛は六方晶からなるが,一部の黒鉛は六方晶に加えて菱面体晶を含み,粉砕や超音波処理により,菱面体晶の割合が30ないし40%に増加すること,実験方法について,菱面体晶の割合がX線回折法による(101)面の六方晶反射及び(101)面の菱面体晶反射の積分強度を比較することにより算出されること,マダガスカル産の天然黒鉛 を粉砕することで,粉砕前はほぼ0%であった菱面体晶割合が40%程度まで増加したこと,熱処理の影響を調べるために,菱面体晶割合が34%及び40%の黒鉛が用いられたこと,マダガスカル産の天然黒鉛を20分粉砕し,1800℃程度で熱処理することで,菱面体晶割合が42%程度の黒鉛が得られたことが記載されている。 上記のとおり,乙A82文献における菱面体晶の割合(%)は,X線回折法による(101)面の六方晶反射及びX線回折法による(101)面の菱面体晶反射の積分強度を比較することにより算出されるものであるところ,一般的に,菱面体晶は,六方晶がほぼ全体を占める黒鉛結晶構造に対して粉砕等を施すことにより導入されるものであるから,菱面体晶の割合(%)とは,黒鉛結晶全体,すなわち菱面体晶と六方晶の総和に対する菱面体晶の占 める割合を指すと解され,Rate(3R)と技術的に同義であるといえる。 したがって,乙A82文献には,以下の発明が記載されているといえる(以下「乙A82発明」といい,分説した各構成要件につき,頭書の記号に従って「構成要件a」などという。)。 a 菱面晶体黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し, b 前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が4 鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し, b 前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が40%以上であることを特徴とするRate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)(ここで,P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101) 面のピーク強度,P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度である。)c 天然黒鉛由来の黒鉛。 (2) 本件各発明と乙A82発明との対比ア乙A82発明の構成要件aは,構成要件1A及び2Aと一致する。 イ乙A82発明の構成要件bは,構成要件1B及び2Bと一致する。 ウ前記2(被告らの主張)(2)ウのとおり,構成要件1C及び2Cの「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」とは,「天然黒鉛に所定の処理を施すことでグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散することができる黒鉛系炭素素材として用いることができる黒鉛系 炭素素材」であると解するとすれば,乙A82発明の黒鉛粉砕生成物は,天然黒鉛に所定の処理をしたものであり,グラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散することができるものと認められる。 したがって,乙A82発明の構成要件cは,構成要件1C及び2Cと一致する。 エ以上によれば,本件各発明は,乙A82発明と全て一致するから,乙A 82文献にその全てが記載されていると認められる。 よって,本件各発明は,いずれも乙A82文献に記載されている発明であるから,新規性欠如の無効理由が認められる(法104条の3,123条 82文献にその全てが記載されていると認められる。 よって,本件各発明は,いずれも乙A82文献に記載されている発明であるから,新規性欠如の無効理由が認められる(法104条の3,123条1項2号,29条1項3号)。 (3) 原告の主張に対する反論 原告は,本件各発明のRate(3R)が積分強度の比を表すのに対し,乙A82発明において「最大30~40%まで増やすことができる」として論じられている数値は体積分率を表すと主張する。 しかし,体積分率(volumefraction)は,乙A82公報の参照文献に由来するものであり,乙A82公報において30ないし40% に増加させることができると記載されている数値を意味するものではない。 この数値は,黒鉛結晶中の菱面体晶相の量の割合を意味し,「(101)六方晶反射と(101)菱面体晶反射の積分強度を比較することにより」評価される旨の記載があることからすると,(101)六方晶反射と(101)菱面体晶反射の積分強度の和に対する(101)菱面体晶反射の積分強度の 割合であると解されるから,式1(構成要件1B及び2B)と実質的に同一であるといえる。 したがって,原告の上記主張に係る点は本件各発明と乙A82発明との相違点ではない。 (原告の主張) 本件各発明と乙A82発明との間には,以下の相違点が認められる。 すなわち,乙A82文献において,30ないし40%に増加させることができると記載されている数値は,体積分率(volumefraction)である。これに対して,Rate(3R)は,菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面の積分強度と六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面の積分強度に基づき fraction)である。これに対して,Rate(3R)は,菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面の積分強度と六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面の積分強度に基づき,式1(構成要件1B及び2B)によ り算出するものである。 したがって,本件各発明のRate(3R)が積分強度の比を表すのに対し,乙A82発明において「最大30~40%まで増やすことができる」として論じられている数値は体積分率を表す。 7 争点2-6(公然実施に基づく新規性欠如)について (被告らの主張)(1) 本件特許出願前から同一の製品を販売していることア被告伊藤について(ア) 被告伊藤は,本件特許出願前から,「Z-5F」,「W-5」等の被告製品Aの各名称を付した黒鉛製品を製造販売している。 (イ) 「天然黒鉛の工業分析及び試験方法 JISM8511」(乙A37。以下「JIS法」という。)は,天然黒鉛の分析項目として,固定炭素分,灰分,揮発分及び水分を挙げ,これらの定量方法を定めており,これらの項目の数値は,天然黒鉛の基本的な特性を表す指標を構成すると解されるところ,被告伊藤は,被告製品Aについて,これらの項目を JIS法に定める定量方法に従って測定し,さらに平均粒径を測定していた。この測定結果を記載した検査成績書(乙A8)によれば,本件特許出願の前後で評価項目の各数値は同等である。 上記検査成績書にはRate(3R)の記載はないが,被告伊藤は,同じ品番の製品について,製品の物理的特性を実質的に変えるような変 更は行っていない。 (ウ) 被告製品A1ないし6については,製品ごとに,製品別製造標準(乙A38)として製造工程を定め,そ の製品について,製品の物理的特性を実質的に変えるような変 更は行っていない。 (ウ) 被告製品A1ないし6については,製品ごとに,製品別製造標準(乙A38)として製造工程を定め,その中で最終検査における検査項目の規格値を定めており,特定の顧客との間で,一般に適用される規格とは異なる規格を定め,当該規格に従った製品を納入することはあるものの,それらを除けば,製品別製造標準として定めた規格は,本件特許出願前 から変更されていない。 そして,被告伊藤は,製品別製造標準において,最終検査における検査項目に係る規格値及び試験方法を定め,当該試験方法に従って規格値を満たすか検査し,規格を満たしたサンプルのみ当該規格が適用される製品と同一の製品として扱うこととしている。 (エ) 被告製品A7ないし11については,被告伊藤は自ら粉砕・分級せず,分級済みのものを購入し,受入検査を行った後,梱包して自社の品名のシールを貼付して出荷している。このため,被告伊藤は,黒鉛原料受入検査詳細(乙A39)に検査項目及び規格値を定め,受入検査において,検査項目に係る規格値を満たすか検査し,規格を満たしたサンプルのみ を当該規格が適用される製品と同一の製品として扱うこととしている。 黒鉛原料受入検査詳細については,本件特許出願前の平成23年8月22日以降,改訂等はされていない。 (オ) 文献(甲A4文献,乙A47)によれば,天然黒鉛を粉砕することによって生成される菱面体晶系の割合は,粉砕生成物の粒径や粉砕方法, 粉砕機構によって異なることが認められるところ,被告製品Aの規格のうち,粒径に対応する粒度と製造工程に含まれる粉砕の方法及び機構(粉砕に用いる粉砕装置)は,Rate(3R)と相関 粉砕方法, 粉砕機構によって異なることが認められるところ,被告製品Aの規格のうち,粒径に対応する粒度と製造工程に含まれる粉砕の方法及び機構(粉砕に用いる粉砕装置)は,Rate(3R)と相関関係にあると考えられる。 そして,被告製品A3ないし6については,製品別製造標準(乙A4 8)の「微粉砕」の工程欄に記載のとおり,●(省略)●を使用して微粉砕工程を行っているところ,上記製品製造標準の改訂履歴から明らかなとおり,本件特許出願の前後を通じて変更はないから,被告製品A3ないし6に使用されている超微粉砕機及び微粉砕工程に変更はなかった。 他方で,被告製品A1,2及び7ないし11については,そもそも被告伊藤において微粉砕工程を行っておらず,仮に粉砕生成物である製品 の形状・形態に影響を与え得るような粉砕方法の変更を行うとすれば,生産者は販売先の了解を得るのは当然であるところ,被告伊藤は,本件特許出願の前後を通じて,生産者から,粉砕方法を変更する旨の通知を受けたことはないから,被告製品A1,2及び7ないし11についても,本件特許出願の前後を通じて,粉砕方法に変更はないといえる。 (カ) 被告らは,本件特許出願前の平成24年2月2日に製造された被告製品A9のサンプル及び平成25年9月30日に製造された被告製品A10のサンプルについて,SmartLabで測定を行い,この測定結果をPDXLを用いて解析してRate(3R)を算出したところ,別紙3Rate(被告伊藤)の番号4の列記載のとおりの結果を得た(乙A 9。以下「サンプル結果①」という。)。 (キ) 以上によれば,被告伊藤は,本件特許出願の前後を通じて,被告製品Aの各名称と同一の名称を用い,固定炭素分,灰分,揮発分,水分 た(乙A 9。以下「サンプル結果①」という。)。 (キ) 以上によれば,被告伊藤は,本件特許出願の前後を通じて,被告製品Aの各名称と同一の名称を用い,固定炭素分,灰分,揮発分,水分及び粒径の各数値は同等で,同一の製造工程により,同一の規格を満たす製品の製造及び販売を続けてきたものであり,サンプル結果①によれば, 本件特許出願前の被告製品A9及び10の各サンプルのRate(3R)は31%以上又は40%以上であったことからすると,仮に,現時点において,被告製品Aが本件各発明の技術的範囲に属するのであれば,被告伊藤は,本件特許出願前から,本件各発明の技術的範囲に属する被告製品Aを製造販売していたといえる。 イ被告西村について(ア) 被告西村は,本件特許出願前から,「S微粉」,「特微粉」等の被告製品B1ないし3及び5の各名称を付した黒鉛製品を製造販売し,又は販売している。 (イ) 被告西村は,被告製品B1及び2について,JIS法に挙げられた固定炭素分,灰分,揮発分及び水分をJIS法に定める定量方法に従って 測定し,さらに粒度分布を測定していたところ,本件特許出願前の製品分析成績表(乙A42)及び製品試験成績表(乙B12の2)と近時の製品分析成績表(乙B12の1の2)及び分析試験報告書(甲B4)を比較すると,評価項目の各数値は同等である。 また,被告製品B3及び5についても,本件特許出願前の検査成績書 (乙B12の3)と平成31年3月11日に作成された分析試験報告書(甲B4)を比較すると,評価項目の各数値が同等である。 上記製品分析成績表等にはRate(3R)の記載はないが,被告西村は,同じ品番の製品について,製品の物理的特性を実質的に変えるよう 甲B4)を比較すると,評価項目の各数値が同等である。 上記製品分析成績表等にはRate(3R)の記載はないが,被告西村は,同じ品番の製品について,製品の物理的特性を実質的に変えるような変更は行っていない。 (ウ) 被告西村は,被告製品B1及び2に関して,定量分析(全水分,揮発分,灰分及び固定炭素)及び粒度分布につき規格を定めており,この規格は,本件特許出願の前後を通じて同じものであった。 被告製品B3及び5は,被告西村が被告伊藤から購入した被告製品A7であるところ,前記ア(エ)のとおり,本件特許出願の前後で,規格に変 更はない。 (エ) 被告西村において粉砕工程を行っているのは被告製品B1及び2であるところ,被告製品B1及び2に係るQC工程表(乙A51)には,工程ごとに,使用する設備,管理特性(管理項目,品質特性,基準・規格),管理方式及び確認頻度が記載されており,「粗粉砕」,「粉砕」 及び「微粉砕」の工程に使用する設備として,それぞれ「ハンマーミル」,「3号チューブミル」及び「AP-3」(ホソカワミクロン株式会社製微粉砕機「パルペライザーAP-3」)という粉砕機を使用している。そして,上記QC工程表は,平成19年3月30日に作成されて以降,改訂等がされたことはない。 したがって,被告製品B1及び2について,本件特許出願の前後を通 じて,粉砕機に変更はない。 (オ) 被告らは,本件特許出願前の平成20年に製造された被告製品B2のサンプルについて,SmartLabで測定を行い,この測定結果をPDXLを用いて解析してRate(3R)を算出したところ,別紙4Rate(被告西村)の番号3の列記載のとおりの結果を得た(なお,被 告製品B2につき令 rtLabで測定を行い,この測定結果をPDXLを用いて解析してRate(3R)を算出したところ,別紙4Rate(被告西村)の番号3の列記載のとおりの結果を得た(なお,被 告製品B2につき令和元年6月5日に行った2回目の測定では,菱面晶系黒鉛層(3R)の回折ピーク(101)と六方晶系黒鉛層(2H)の回折ピーク(101)を分離することができなかった。乙A17。 以下「サンプル結果②」という。)。 (カ) 以上によれば,被告西村は,本件特許出願の前後を通じて,被告製品 B1ないし3及び5の各名称と同一の名称を用い,固定炭素分,灰分,揮発分,水分及び粒度分布の各数値は同等で,同一の製造工程により,同一の規格を満たす製品の製造及び販売を続けてきたものであり,サンプル結果②によれば,本件特許出願前の被告製品B2のサンプルのRate(3R)は31%以上又は40%以上であったことからすると,仮 に,現時点において,被告製品B1ないし3及び5が本件各発明の技術的範囲に属するのであれば,被告西村は,本件特許出願前から,本件各発明の技術的範囲に属する被告製品B1ないし3及び5を製造販売していたといえる。 ウ日本黒鉛らについて (ア) 日本黒鉛工業は,本件特許出願前から,「青P」,「AP」等の日本黒鉛各製品の各名称を付した黒鉛製品を製造販売している。 (イ) 日本黒鉛工業は,日本黒鉛各製品について,製品ごとに,JIS法で分析項目として挙げられている固定炭素分,灰分,揮発分及び水分のほか,空気透過法秒数等の規格を定め(なお,SP-5030-αは,量産化されていないため,規格は定められていない。),特定の顧客との 間で定めた特別な基準が適用されるものを除き,適用される規格値を全て満たすものの 等の規格を定め(なお,SP-5030-αは,量産化されていないため,規格は定められていない。),特定の顧客との 間で定めた特別な基準が適用されるものを除き,適用される規格値を全て満たすもののみを日本黒鉛各製品として扱っている。 日本黒鉛各製品の規格は,いずれも本件特許出願前に定められたものであるが,平成27年1月5日に粒度を測定するレーザー測定機器が変更されたため,粒度規格(日本黒鉛製品1に係るレーザー50%累積径 及びレーザー平均体積径並びに日本黒鉛製品4に係るレーザー平均体積径)が改訂された。しかし,この改訂は,上記レーザー測定機器の変更に伴い,測定精度の向上及び解析プログラムの変更が生じ,同一のサンプルを旧機種と新機種で測定すると両者の間で数値に若干差異が生じたことから,旧機種で定めた規格を実質上維持するために新機種の仕様に 合わせて変更したものであって,実質的な変更を伴うものではない。 その他の規格の変更は,規格値の範囲を狭めるもの(日本黒鉛製品4に係る見掛密度)や規格値の定めがなかった項目についてこれを定めるもの(日本黒鉛製品3に係るレーザー平均体積径及びレーザーch70(累積5.044Mm以下)並びに日本黒鉛製品4に係る嵩比重)であ って,いずれも,このような限定を定める前に製造されていたものの範囲をより限定したものにすぎず,従前,製造されていたものの範囲に含まれないものを取り込むものではない。 したがって,日本黒鉛各製品の規格は,本件特許出願の前後を通じて,実質的な変更はなかった。 (ウ) 原告は,前記前提事実(7)アの日本黒鉛らに対する訴訟において,日本黒鉛各製品のRate(3R)は別紙5Rate(日本黒鉛)の番号1の列記載のとおりである 変更はなかった。 (ウ) 原告は,前記前提事実(7)アの日本黒鉛らに対する訴訟において,日本黒鉛各製品のRate(3R)は別紙5Rate(日本黒鉛)の番号1の列記載のとおりであると主張している(以下,この原告の主張に係る算出結果を「日本黒鉛製品結果」という。)。 また,日本黒鉛らは,令和元年5月28日,日本黒鉛各製品について,SmartLabを用いて測定し,PDXLにより測定結果を解析して Rate(3R)を算出したところ,別紙5Rate(日本黒鉛)の番号2の列記載のとおりの結果を得た(乙A18。以下「乙A18結果」という。)。 日本黒鉛製品結果及び乙A18結果によれば,日本黒鉛各製品のRate(3R)は31%以上又は40%以上である。 さらに,日本黒鉛らは,日本黒鉛製品1の平成20年のサンプル,日本黒鉛製品2の平成13年のサンプル,日本黒鉛製品4の平成20年のサンプル及び日本黒鉛製品5の平成20年のサンプルについて,SmartLabで測定を行い,この測定結果をPDXLを用いて解析してRate(3R)を算出したところ,別紙5Rate(日本黒鉛)の番 号3の列記載のとおりの結果を得た(乙A18。以下「サンプル結果③」という。)。 (エ) 以上によれば,日本黒鉛工業は,本件特許出願の前後を通じて,日本黒鉛各製品の各名称と同一の名称を用い,実質的な変更のない規格を満たす製品の製造及び販売を続けてきたものであり,日本黒鉛製品結果, 乙A18結果及びサンプル結果③によれば,日本黒鉛各製品のRate(3R)は31%以上又は40%以上であり,本件特許出願前の日本黒鉛製品1,2,4及び5の各サンプルのRate(3R)も31%以上又は40%以上であったことから ③によれば,日本黒鉛各製品のRate(3R)は31%以上又は40%以上であり,本件特許出願前の日本黒鉛製品1,2,4及び5の各サンプルのRate(3R)も31%以上又は40%以上であったことからすると,日本黒鉛工業は,本件特許出願前から,本件各発明の技術的範囲に属する日本黒鉛各製品を製造販売 していたといえる。 エ中越黒鉛について(ア) 中越黒鉛は,本件特許出願前から,「K5」,「AP-2000」等の中越黒鉛各製品の各名称を付した黒鉛製品を販売している。 (イ) 中越黒鉛は,中越黒鉛各製品について,試験成績表(乙A63)に記載された固定炭素,灰分,揮発分,水分及び-500mesh(%)を JIS法で定める定量方法に従って測定していた。 また,中越黒鉛は,中越黒鉛各製品について,製品ごとに,製品が生産工程を通して出荷されるまでの各段階において保証されるべき特性ごとに,検査,確認の方法及び基準を定めたQC工程図(乙A67ないし69)を作成し,この規格を全て満たす製品のみを当該製品として出荷 していた。 中越黒鉛各製品の製造工程は,原料検査,粉砕,製品検査及び秤量包装から構成されるところ,上記QC工程図においては,工程ごとに,使用する設備,管理項目,基準値,検査方法,頻度,検査数量,担当部門等が記載され,管理項目欄では,固定炭素,灰分,揮発分,水分及び- 500mesh(%)の規格が定められ,JIS法に従って検査をすることが定められていた。 そして,上記QC工程図は,本件特許出願以降,変更がない。 (ウ) 原告は,前記前提事実(7)イの中越黒鉛に対する訴訟において,中越黒鉛各製品のRate(3R)は別紙6Rate(中越黒鉛)の番号1の C工程図は,本件特許出願以降,変更がない。 (ウ) 原告は,前記前提事実(7)イの中越黒鉛に対する訴訟において,中越黒鉛各製品のRate(3R)は別紙6Rate(中越黒鉛)の番号1の 列記載のとおりであると主張している(以下,この原告の主張に係る算出結果を「中越黒鉛製品結果」という。)。 また,中越黒鉛は,令和元年6月7日,中越黒鉛各製品について,SmartLabを用いて測定し,PDXLにより測定結果を解析してRate(3R)を算出したところ,別紙6Rate(中越黒鉛)の番号 2の列記載のとおりの結果を得た(乙A19。以下「乙A19結果」という。)。 中越黒鉛製品結果及び乙A19結果によれば,中越黒鉛各製品のRate(3R)が31%以上又は40%以上である。 さらに,中越黒鉛は,原告の依頼を受けて,平成30年11月9日,原告に対し,中越黒鉛各製品のサンプルを送付した。中越黒鉛はこれ以 外に原告に対して中越黒鉛各製品を提供したことはないから,原告が中越黒鉛に対して前記前提事実(7)イの訴訟を提起するに当たり,中越黒鉛各製品のRate(3R)を算出するためにX線回折法による測定等をしたのは,上記サンプルである。そして,これらのサンプルのうち,中越黒鉛製品3のサンプルは,製品のロット番号(「90930」)から すると,本件特許出願前の平成21年9月30日に製造されたものであるところ,上記中越黒鉛製品3のサンプルに係るRate(3R)は,中越黒鉛製品結果のとおり,59.7%であった(乙A72)。 (エ) 以上によれば,中越黒鉛は,本件特許出願の前後を通じて,中越黒鉛各製品の各名称と同一の名称を用い,同一の製造工程により,同一の規 格を満たす製品の製造及び った(乙A72)。 (エ) 以上によれば,中越黒鉛は,本件特許出願の前後を通じて,中越黒鉛各製品の各名称と同一の名称を用い,同一の製造工程により,同一の規 格を満たす製品の製造及び販売を続けてきたものであり,中越黒鉛製品結果及び乙A19結果によれば,中越黒鉛各製品のRate(3R)は31%以上又は40%以上であり,本件特許出願前の中越黒鉛製品3のサンプルのRate(3R)も40%以上であったことからすると,中越黒鉛は,本件特許出願前から,本件各発明の技術的範囲に属する中越 黒鉛各製品を製造販売していたといえる。 オ小括以上のとおり,被告ら,日本黒鉛ら及び中越黒鉛は,本件特許出願前から,現在と同一の被告各製品,日本黒鉛各製品及び中越黒鉛各製品を製造販売しているから,被告各製品,日本黒鉛各製品及び中越黒鉛各製品のう ちのどれか一つでも本件各発明の技術的範囲に属するとすれば,本件特許出願前から本件各発明の技術的範囲に属する製品が製造販売され,本件各発明が公然と実施されていたといえる。 したがって,本件各特許は,公然実施により無効である(法104条の3,123条1項2号,29条1項2号)。 (2) 原告の主張に対する反論 ア第三者による本件各発明の実施可能性について(ア) 原告は,被告ら,日本黒鉛ら及び中越黒鉛の取引の相手方は秘密保持義務を負っていたから,本件特許出願前に本件各発明が公然と実施されたとはいえないと主張する。 しかし,日本黒鉛らが,黒鉛製品を販売する際,黒鉛の成分を解析し てはならないとか,解析した成分の結果を第三者に口外してはならないなどという条件を付していないことは,本件訴訟の証人である日本黒鉛工業のZ(以下「証人Z」という。)が明 ,黒鉛の成分を解析し てはならないとか,解析した成分の結果を第三者に口外してはならないなどという条件を付していないことは,本件訴訟の証人である日本黒鉛工業のZ(以下「証人Z」という。)が明確に証言したとおりである。 仮に秘密保持条項が存在したとしても,製品の物性を調べることは禁止されていないし,当該物性について開示してはならない理由はないから, 秘密保持義務を定めた契約書の存在をもって,公然実施の成立が妨げられるものではない。実際,日本黒鉛商事が取引先と締結した取引基本契約(乙A123)には,一般的な機密保持の条項が存在するものの,「相手方の業務上の機密」を対象とするにとどまり,黒鉛製品のリバースエンジニアリングや第三者への譲渡を禁ずる内容とはなっていない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (イ) 原告は,粉末X線回析法による測定及び測定データの解析を経なければ本件各発明のRate(3R)の値を知り得ない以上,被告ら,日本黒鉛ら及び中越黒鉛から本件各発明を実施した製品を取得した第三者は,本件各発明の構成ないし組成を知り得なかったから,本件各発明が公然 と実施されたとはいえないと主張する。 しかし,適切な解析条件を設定しさえすれば解を収束させることができるという原告の主張が正しければ,当業者は,Rate(3R)を算出することができるはずである。そして,X線回折法に関するJIS規格が存在する上,外部の機関に依頼するなどしてX線回折法による測定及び解析を行い,Rate(3R)を算出することも可能である。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 イ製品の規格,製造工程等について(ア) 原告は,品名・品番が同一であるからといって,製品としても同一であるとはいえないと主張する。 しかし,製 したがって,原告の上記主張は理由がない。 イ製品の規格,製造工程等について(ア) 原告は,品名・品番が同一であるからといって,製品としても同一であるとはいえないと主張する。 しかし,製品を製造販売する者は,一般的に,品名・品番に基づいて 製品を管理し,製品の管理に支障を来すため,製品として異なるものを同一の品名・品番で取り扱うという不合理なことはしない。 したがって,製品は,通常,品名・品番が同一であれば,同一の製品とみなされるというべきである。 (イ) 原告は,5つの評価項目(検査成績書では,固定炭素,灰分,揮発分, 水分及び平均粒径)の数値が同等であるからといって,製品としての同一性を判断することはできないし,どの程度近似していれば同一の製品と考えることができるかも不明であると主張する。 しかし,前記(ア)のとおり,品名・品番が同一であることは,同一の製品であることの有力な根拠となり,5つの評価項目の数値が同等である ことは,品名・品番が同一である製品が本件特許出願の前後を通じて粉体特性が変わっていないことを裏付けるというべきである。 また,規格は一定の幅を持たせて定められているため,同一の製品に属するサンプル間で,規格に定める範囲内で数値に差が生じることは,製品としての同一性の判断を妨げるものではない。原告が本件特許出願 前と近時とで数値に大きな差異が認められると指摘する評価項目についても,いずれも当該評価項目の規格の範囲内に収まるものである。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (ウ) 原告は,検査成績書(乙A8)等は,存在証明・非改ざん証明が一切行われていない文書であり,事後的に作成することができるものであるから,これらの文書によって,本件特許出願前から,現在と同一 (ウ) 原告は,検査成績書(乙A8)等は,存在証明・非改ざん証明が一切行われていない文書であり,事後的に作成することができるものであるから,これらの文書によって,本件特許出願前から,現在と同一の被告 各製品,日本黒鉛各製品及び中越黒鉛各製品が製造販売されていたとは認められないと主張する。 しかし,通常の取引や業務に用いる文書について,その作成の都度,存在証明・非改ざん証明を行っていないことは,簡易迅速性を特徴とする企業活動においてごく自然なことであり,そのことによって,上記各 文書が,それぞれに記載された作成年月日に作成されたものではないといえるものではない。原告は,被告らが提出した上記各文書が事後的に作成されたことを疑わせるような不自然な点を有することについて,何ら具体的な主張を行っておらず,改ざんのおそれがあることの抽象的な可能性を定型的に指摘しているにすぎない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 ウ日本黒鉛工業によるX線回折法による測定について原告は,日本黒鉛工業がX線回折装置を保有していたにもかかわらず,被告らにおいて,それによる測定データの存在を積極的に秘匿し続けたことは,日本黒鉛各製品のRate(3R)が40%未満又は31%未満で あったか,古い装置であったためRate(3R)を算出することができるような測定データが得られなかったからであると主張する。 しかし,日本黒鉛各製品が本件各発明の技術的範囲に属するとすれば,本件特許出願前から本件各発明を実施する日本黒鉛各製品が存在したといえることは,前記(1)ウのとおりであり,被告らにおいて,本件特許出願前 の日本黒鉛各製品の測定データを提出する必要性はない。また,本件各特許においてX線回折法による測定方法に限定はないから,い ることは,前記(1)ウのとおりであり,被告らにおいて,本件特許出願前 の日本黒鉛各製品の測定データを提出する必要性はない。また,本件各特許においてX線回折法による測定方法に限定はないから,いかなるX線回折装置を用いてもよいはずであるし,公然実施が成立するためには,実際に発明の内容が知られたことは必要ではないので,日本黒鉛工業の当時のRate(3R)の算出能力は,公然実施の成否とは何ら関係性がない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (原告の主張)(1) 第三者による本件各発明の実施可能性ア公然実施の成立要件について公然実施とは,発明の内容を不特定多数の者が知り得る状況でその発明が実施されることをいう。したがって,明示的な秘密保持契約(秘密保持 条項)がある場合はもちろんのこと,黙示ないし信義則上の秘密保持義務がある場合や,工場内等の狭い領域でしか認識できない場合には,公然実施は成立しない。 また,実施品を外から見たり入手したりしても,発明の内容を知り得ない場合には,公然実施に該当しない。例えば,発明の実施品が市場におい て販売されたものの,実施品を分析してその構成ないし組成を知り得ない場合には公然実施には当たらない。 イ秘密保持義務について被告各製品などの黒鉛粉末製品は,いずれも企業同士で取引されるものであり,一般消費者に販売されるような市販品ではない。企業同士の取引 では,通常,秘密保持契約を締結するか,基本契約等において秘密保持条項が設けられることは,周知の事実である。そして,原材料は製造業において営業秘密そのものであり,黒鉛製品のような原材料の売買契約等においては秘密保持条項が設けられている(甲A82)。取引当事者双方が 項が設けられることは,周知の事実である。そして,原材料は製造業において営業秘密そのものであり,黒鉛製品のような原材料の売買契約等においては秘密保持条項が設けられている(甲A82)。取引当事者双方がこれにつき秘密保持義務を負わない場面は通常は想定できない。 実際,原告と日本黒鉛工業が平成25年10月31日に締結した機密保持契約(甲A95)では,「受領者は,開示者の書面による承諾を事前に得ることなく,機密情報を分析または解析してはならない。また,機密情報の分析結果および解析結果も機密情報として取り扱うものとする。」(4条)と定められており,リバースエンジニアリングが禁じられていた。 また,被告らは,本件訴訟において,多くの主張書面や書証の一部につい て,営業秘密であることを理由に閲覧等制限の申立てをしている。 そうすると,被告ら,日本黒鉛ら及び中越黒鉛が本件特許出願前に本件各発明を実施した製品を製造販売していたとしても,取引の相手方は秘密保持義務を負っていたから,本件各発明が公然と実施されたとはいえない。 ウ本件各発明の実施能力について 取引の相手方は,たとえ被告らから黒鉛製品を入手したとしても,X線回折法による測定及び解析を行わなければ,Rate(3R)を内容とする本件各発明の内容を知り得ないから,公然実施が成立するためには,X線回折法による測定及び解析ができる者でなければならない。 しかし,企業が費用や労力,時間をかけてまで外部の専門機関に測定及 び解析を依頼するには,相応の必要性の説明の下,社内の相応の決裁を受ける必要があり,そのような手続を経ることなく依頼することはないから,専門機関にX線回折法による測定及び解析を依頼する具体的可能性はなかったというべき ,相応の必要性の説明の下,社内の相応の決裁を受ける必要があり,そのような手続を経ることなく依頼することはないから,専門機関にX線回折法による測定及び解析を依頼する具体的可能性はなかったというべきである。 したがって,第三者が被告ら,日本黒鉛ら及び中越黒鉛から本件各発明 を実施した製品を取得したとしても,当該第三者は,本件各発明の構成ないし組成を知り得なかったから,本件各発明が公然と実施されたとはいえない。 (2) 製品の規格,製造工程等ア品番・品名の同一性について 被告らは,本件特許出願前に販売された製品と近時に販売された製品の品番・品名が同一であるから,製品としても同一であると主張する。 しかし,原告は,被告製品A1については平成30年6月19日,被告製品A2及び4ないし11については同年8月9日,被告製品A3については同年7月21日,被告製品B1,2及び4ないし6については同年11月9日,被告製品B3については平成31年3月19日の各時点におい て販売されていたものを入手したところ,本件特許出願日である平成26年9月9日から4年前後の期間が空いており,被告らが,この期間,製品の内容に変更を加えていないことの証拠はない。 また,製品としての同一性は,侵害が問題となる特許との関係において判断すべきであるところ,Rate(3R)に変化をもたらす変更が加え られた場合には,たとえ品番又は品名が同一であっても,製品としての同一性は失われるというべきである。そして,被告らを含む黒鉛材料メーカーは,入手した黒鉛原料を顧客が求める性能に合致するように粉砕・精製し,規格によって区別された品番・品名でこれを販売するので,黒鉛の原料の産地や輸入元,粉砕や精製を行うた 被告らを含む黒鉛材料メーカーは,入手した黒鉛原料を顧客が求める性能に合致するように粉砕・精製し,規格によって区別された品番・品名でこれを販売するので,黒鉛の原料の産地や輸入元,粉砕や精製を行うための設備・機器,粉砕・精製の方 法等が変わっても,あらかじめ定められた一定の規格を満たす製品は同じ品番・品名で販売するということがあり得る。しかし,Rate(3R)との関係では,原料となる黒鉛の産地が変わればRate(3R)は変わり得るし,粉砕や精製を行うための設備・機器や粉砕・精製の方法が変わってもRate(3R)は変わり得るため,品番・品名が同一であること は,品番・品名が同じ製品であるという以上の意味はなく,製品としての同一性を裏付けるものではない。むしろ,被告らは,品番・品名が同一の製品について,特定の顧客との間で,一般に適用される規格とは異なる特別な規格を定めて販売するがあることを認めている。 さらに,被告らは,製品ごとに定められた規格を満たしてさえいれば, 同一の品番・品名の製品として販売しているところ,規格には一定の幅があるから,当該規格内においても性質に差異が生じ得る。 したがって,製品の品番・品名が同一であるからといって,製品としても同一であるとはいえない。 イ 5つの評価項目の数値の同等性について被告らは,本件特許出願の前後を通じて検査成績書(乙A8)等の5つ の評価項目(検査成績書では,固定炭素,灰分,揮発分,水分及び平均粒径)の数値が同等であるから,本件特許出願の前後において製品の粉体特性に変わりはないと主張する。 しかし,前記アのとおり,製品の同一性は,Rate(3R)との関係において判断されるべきものであるところ,検査成績書等に記載された5 前後において製品の粉体特性に変わりはないと主張する。 しかし,前記アのとおり,製品の同一性は,Rate(3R)との関係において判断されるべきものであるところ,検査成績書等に記載された5 つの項目とRate(3R)との関連性,すなわち,これら5つの項目が同等であればRate(3R)の数値も同等になることが証明されない限り,これらの項目の数値が同等であっても意味がなく,このような関係を認めるに足りる証拠はない。そして,JIS法に記載があるからといって,それが天然黒鉛の基本的な特性を表す指標であるとはいえない。 また,上記5つの評価項目の数値がどの程度近似していれば同一の製品と考えることができるかは不明であり,例えば,被告製品A4ないし6は,これらの数値の全てが近似しているにもかかわらず,異なる製品として扱われていることからすると,上記5つの評価項目が同等であるというだけでは,物として同一であると判断することはできない。 したがって,上記5つの評価項目の数値が同等であるからといって,製品の粉体特性に変わりがないとはいえない。 ウ検査成績書等の信用性について被告らは,本件特許出願前から現在と同一の被告各製品,日本黒鉛各製品及び中越黒鉛各製品を製造販売していたことの証拠として,検査成績書 (乙A8),製品別製造標準(乙A38,48),製品分析成績表(乙A42,43),QC工程表(乙A51),試験成績表(乙A63)等を提出する。 しかし,これらのいずれについても,第三者が当該書面が存在したことを担保するタイムスタンプを取得するなどの存在証明・非改ざん証明が一切行われていないから,事後的に作成することができる文書であるという ことができ,これらの文 も,第三者が当該書面が存在したことを担保するタイムスタンプを取得するなどの存在証明・非改ざん証明が一切行われていないから,事後的に作成することができる文書であるという ことができ,これらの文書に記載された作成年月日どおりの日に作成されたものとは認められない。また,これらの文書に記載された作成日又は改訂日以降に変更が加えられていないことも,新たな文書が作成されていないことも,明らかではない。 したがって,上記各文書によっては,本件特許出願前から現在と同一の 被告各製品,日本黒鉛各製品及び中越黒鉛各製品が製造販売されていたとは認められない。 (3) 本件特許出願前のサンプルのRate(3R)ア被告製品A9及び10のサンプルについて被告らは,本件特許出願前に製造された被告製品A9及び10のサンプ ルのRate(3R)が31%以上又は40%以上であったと主張する。 しかし,被告ら主張に係る上記サンプルが本件特許出願前に製造された被告製品A9及び10のサンプルであることを裏付ける証拠はない。被告製品A9及び10がサンプルとして紙袋に保管されていたとする写真(乙A40,41)があるが,同写真からは,紙袋に何と記載されているか判 読することができないし,同写真に写った黒鉛の紙袋が本件特許出願前から存在した黒鉛の紙袋であるかは不明であるから,この紙袋に入れられた黒鉛が本件特許出願前から存在した黒鉛であるかも明らかではない。 また,前記1(原告の主張)(1)のとおり,被告らは,再現性のあるRate(3R)を算出することができておらず,適切に解析条件を設定する ことができていない。このような適切に行われていない解析によって得られた結果は意味がない。 し 再現性のあるRate(3R)を算出することができておらず,適切に解析条件を設定する ことができていない。このような適切に行われていない解析によって得られた結果は意味がない。 したがって,本件特許出願前の被告製品A9及び10のサンプルであると主張する黒鉛の解析結果(サンプル結果①)によって,被告伊藤が本件特許出願前から現在の被告製品A9及び10と同一の製品を製造販売していたとはいえない。 イ被告製品B2のサンプルについて本件特許出願前の被告製品B2のサンプルであると主張する黒鉛の解析結果(サンプル結果②)については,否認ないし争う。 ウ日本黒鉛製品1,2,4及び5のサンプルについて被告らは,本件特許出願前に製造販売されていたとする日本黒鉛製品1, 2,4及び5のサンプルが存在すると主張する。 しかし,これらが本件特許出願前に製造販売されていた日本黒鉛製品1,2,4及び5のサンプルであることを裏付ける証拠はない。被告らは,日本黒鉛製品1,2,4及び5のサンプル及びその保管状況を撮影した写真(甲A54,乙A86)を提出するが,このような写真は,紛争が生じた 後からでも容易に作成することができるし,写真に写った黒鉛の瓶が本件特許出願前から存在した黒鉛の瓶であるのかは不明である上,瓶の中の黒鉛が他の黒鉛粉末と入れ替えられていないことの保証もない。 したがって,被告らが本件特許出願前の日本黒鉛製品1,2,4及び5のサンプルであると主張する黒鉛の解析結果(サンプル結果③)によって, 日本黒鉛らが本件特許出願前から現在の日本黒鉛製品1,2,4及び5と同一の製品を製造販売していたとはいえない。 エ中越黒鉛製品3のサンプルについて サンプル結果③)によって, 日本黒鉛らが本件特許出願前から現在の日本黒鉛製品1,2,4及び5と同一の製品を製造販売していたとはいえない。 エ中越黒鉛製品3のサンプルについて被告らは,平成30年11月9日に中越黒鉛が原告に対して送付した中越黒鉛製品3のサンプルは,本件特許出願前の平成21年9月30日に製 造されたものであると主張する。 しかし,原告において,平成30年11月9日に中越黒鉛から原告に送付された中越黒鉛製品3のサンプルを測定解析し,中越黒鉛製品結果を得たことは認めるが,同サンプルのロット番号が「90930」であるかはわからないし,「90930」が平成21年9月30日を意味するかもわからない。被告らの主張を前提とすると,中越黒鉛は,原告に対し,9年 以上も前に製造された製品のサンプルを送付したことになるが,9年以上も前に製造された製品の在庫が残っていたことは極めて疑わしいし,平成22年6月23日(乙A96),同年7月6日(乙A63の5)及び平成30年11月7日(乙A63の6)の3つの時点における試験成績表の固定炭素,灰分,揮発分,水分及び-500meshの各数値が全て同じで あることはあまりに不自然である。さらに,これらの数値は,原告が行った測定の結果(甲A74)とも大きく異なる。 したがって,本件特許出願前の中越黒鉛製品3のRate(3R)が中越黒鉛製品結果(59.7%)のとおりであるとはいえない。 オ日本黒鉛工業によるX線回折法による測定について 被告らは,従前,X線回折法による測定及び解析をしたことがなかったと主張したが,日本黒鉛工業の証人Zは,突然,日本黒鉛工業は,平成20年以前からX線回折装置を保有しており,黒鉛材料の産地 被告らは,従前,X線回折法による測定及び解析をしたことがなかったと主張したが,日本黒鉛工業の証人Zは,突然,日本黒鉛工業は,平成20年以前からX線回折装置を保有しており,黒鉛材料の産地が変わるごとに,X線回折装置による測定を行ってきたと証言した。 そうであるとすると,日本黒鉛各製品については,X線回折法による測 定データが存在したはずであるところ,被告らが,そのようなデータの存在を積極的に秘匿し続け,本件訴訟に提出せず,あえてRate(3R)との関係が不明な規格(固定炭素分,灰分,揮発分,水分等)といった間接的な事情をもって立証しようとした理由は,上記測定データにより算出したRate(3R)が40%未満又は31%未満であったからにほかな らない。 また,本件特許出願前にX線回折法により測定した測定データ(乙A124)について,被告らは日本黒鉛製品1に係るものであるとするが,その回折プロファイルの形状と,日本黒鉛製品結果や乙A18結果の回折プロファイルの形状とを比較すると,日本黒鉛らが現在製造販売する日本黒鉛製品1とは別の製品であるか,日本黒鉛製品1に関して,原料の産地の 変更等,Rate(3R)に変動を及ぼし得る変更があったことを裏付けるものである。 さらに,日本黒鉛工業がX線回折装置を購入したのは平成3年であって,30年以上も前の古い装置であるところ,本件特許出願当時の装置でなければ,Rate(3R)を算出するのに必要な回折線の角度43ないし4 4°付近の回折線の強度のピークを測定することは難しいと考えられるから,日本黒鉛工業は,本件特許出願前の日本黒鉛各製品につき,Rate(3R)が31%以上又は40%以上となるような解析結果を保有していない。 (4) ークを測定することは難しいと考えられるから,日本黒鉛工業は,本件特許出願前の日本黒鉛各製品につき,Rate(3R)が31%以上又は40%以上となるような解析結果を保有していない。 (4) 小括 以上のとおり,被告ら,日本黒鉛ら及び中越黒鉛が,本件特許出願前から,現在と同一の被告各製品,日本黒鉛各製品及び中越黒鉛各製品を販売していたとは認められず,本件各発明が公然と実施されていたとは認められない。 8 争点2-7(記載要件違反)について(被告らの主張) (1) 記載要件違反を判断する上での当業者とは,本件各特許の請求項に係る発明の属する技術分野の当業者と解すべきであるから,黒鉛の製造,精製に関する技術分野の出願時の技術常識を有する者であって,① 黒鉛に関する研究開発(文献解析,実験,分析,製造等を含む。)のための通常の技術的手段を用いることができ,② 黒鉛に関する材料の選択,設計変更等の通 常の創作能力を発揮できる者と理解すべきである。 (2) Rate(3R)にばらつきがあることア前記1(被告らの主張)(1)ウのとおり,被告各製品の多くのものについて,Rate(3R)に再現性がなく,定常的な測定ができなかった。このように,本件各明細書に記載されたX線回折法により黒鉛を測定し,Rate(3R)を求めようとしても,その値は測定ごとに大きくばらつき, 一意に定めることができない。 イそうすると,本件各明細書の記載によっても,前記(1)の当業者は,測定により一意に定まらないパラメータにより特定された黒鉛である本件各発明が,どのような発明であるかを明確に理解することができず,本件各発明を実施することができないというべきであるから,本件各特許 は実施可能要件に違 パラメータにより特定された黒鉛である本件各発明が,どのような発明であるかを明確に理解することができず,本件各発明を実施することができないというべきであるから,本件各特許 は実施可能要件に違反する(法36条4項1号)。 また,Rate(3R)に再現性がなく,パラメータとして機能していない結果,本件各明細書の記載に基づいて本件各特許の特許請求の範囲によって規定された発明の範囲を確定することができず,特許請求の範囲の記載が「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載し たものである」とはいえないから,本件各特許はサポート要件に違反する(法36条6項1号)。 さらに,本件各発明に含まれるRate(3R)は,測定ごとにばらつくものであり,本件各発明は,少なくとも特許請求の範囲の記載からは一意に定まらないパラメータにより発明を特定しようとするものであ るから,本件各特許は明確性要件に違反する(法36条6項2号)。 (3) 解析方法及び解析条件の記載がないことア PDXLにより解析した甲A5結果のRate(3R)とGGIndex(β)により解析した乙A1結果のRate(3R)との相違が,仮に解析するソフトウェアの違いのみによって生じたものであるとする と,例えば,被告製品A11について,乙A1結果では39%であるのに対し,甲A5結果では80.7%であり,使用するソフトウェアによって大きな相違が生ずることになる。 そうであるにもかかわらず,本件各明細書では,測定装置としてUltimaⅣを用いたことが記載されるのみで,測定結果を解析するのに用いたソフトウェアについては何ら特定がなされていない。また,本件 各明細書には,Rate(3R)の値を安定化させるための方策は何ら maⅣを用いたことが記載されるのみで,測定結果を解析するのに用いたソフトウェアについては何ら特定がなされていない。また,本件 各明細書には,Rate(3R)の値を安定化させるための方策は何ら記載されておらず,仮に特定の測定条件や解析条件を採用することによりRate(3R)の値のばらつきを抑えることができる可能性があったとしても,本件各明細書にはこのような条件が何ら開示されていない。 イそうすると,前記(1)の当業者は,本件各明細書を参酌したとしても, 本件各発明を実施することができないか,少なくともこれを実施するために過度な試行錯誤が必要であることは明らかであるから,本件各特許は実施可能要件に違反する(法36条4項1号)。 また,発明の特定事項であるRate(3R)を適切に測定するための手段が記載されていない以上,「特許を受けようとする発明が発明の 詳細な説明に記載したものである」ともいえないから,本件各特許はサポート要件に違反する(法36条6項1号)。 さらに,本件各発明に含まれるRate(3R)は,特許請求の範囲及び明細書に何ら記載されていない解析ソフトウェアに依存するものということであり,少なくとも特許請求の範囲の記載からは一意に定まら ないパラメータにより発明を特定しようとするものであるから,明確性要件に違反する(法36条6項2号)。 (原告の主張)(1) Rate(3R)にばらつきがあることについてア本件特許出願及び本訴提起の際にRate(3R)を算出するために使 用したPDXLは,式1(構成要件1B及び2B)中のピーク強度(積分強度)を算出する唯一のソフトウェアではなく,各人がより適切であると考えるソフトウェアで解析をすればよい。しかし,い めに使 用したPDXLは,式1(構成要件1B及び2B)中のピーク強度(積分強度)を算出する唯一のソフトウェアではなく,各人がより適切であると考えるソフトウェアで解析をすればよい。しかし,いかなるソフトウェアを用いようとも,ピーク強度(積分強度)やこれに基づくRate(3R)を算出するためには,解析結果が収束するように適宜解析条件を設定しなければならず,そうしなければ,解析結果が発散してしまう可能性がある。 具体的には,測定した回折プロファイルについて,いくつかの近似式から適切なものを選択し,測定対象の適切な回折パターン(ピーク位置)をデータベース(InternationalCentreforDiffractionData(ICDD))から参照し,一部のプロファイルパラメータを固定するなど,適切な条件を適宜選択する必要があ る(この工程をプロファイルフィッティングと呼ぶ。)。これらの解析条件の選択は,測定対象の特性や得られた回折プロファイルの特性等に応じて,プロファイルフィッティングの専門家が適宜行うことで可能となる。 被告らの主張する数値のばらつきは,上記条件の選択が適切に行われていないことに起因するものであると思われ,Rate(3R)が本件各発 明の構成を特定するパラメータとして機能していないことを意味するものではない。 また,回折プロファイルのプロファイルフィッティングに関する出願時の技術常識を有する者であって,① 回折プロファイルのプロファイルフィッティングに関する研究開発(文献解析,実験,分析,製造等を含む。) のための通常の技術的手段を用いることができ,② 回折プロファイルのプロファイルフィッティングに関する材料の選択,設計変更等の通常の創作能力を発 開発(文献解析,実験,分析,製造等を含む。) のための通常の技術的手段を用いることができ,② 回折プロファイルのプロファイルフィッティングに関する材料の選択,設計変更等の通常の創作能力を発揮できる者であれば,Rate(3R)の数値が収束するように,それらの解析条件の選択を適切に行うことが可能である。 イしたがって,本件各明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技 術常識に基づき,過度の試行錯誤を要することなく本件各発明を実施することができるから,本件各特許に実施可能要件違反は認められない。 また,当業者は,本件各明細書の記載から,Rate(3R)によって本件各特許の発明の範囲を確定することができ,本件各発明の課題を解決できると認識することができるから,本件各特許にサポート要件違反は認められない。 さらに,具体的にどのような黒鉛系炭素素材が請求項に係る発明の範囲に入るかを理解することができるから,特許請求の範囲の記載が第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとは認められず,本件各特許に明確性要件違反は認められない。 (2) 解析方法及び解析条件の記載がないことについて ア前記(1)アのとおり,PDXLは,ピーク強度(積分強度)やRate(3R)を算出する唯一の方法ではないから,Rate(3R)を適切に算出するためにPDXLを用いることを本件各明細書に記載することは必須ではない。 また,前記(1)アの条件を満たす専門家であれば,本件各明細書にPDX Lを用いるという記載がなくても,PDXLやその他の方法(ソフトウェア等)によってRate(3R)を算出することが可能であり,本件各特許の特許請求の範囲に含まれるものであれば,本件各発明の課題を解 Lを用いるという記載がなくても,PDXLやその他の方法(ソフトウェア等)によってRate(3R)を算出することが可能であり,本件各特許の特許請求の範囲に含まれるものであれば,本件各発明の課題を解決できると認識することができるといえる。 イしたがって,当業者は,本件各明細書の記載から,過度な試行錯誤をす ることなく,本件各発明を実施することが可能であるから,本件各特許に実施可能要件違反は認められない。 また,本件各明細書に解析方法及び解析条件の記載がないことがサポート要件違反であるとは認められない。 さらに,特許請求の範囲の記載が第三者の利益が不当に害されるほどに 不明確であるとはいえず,本件各特許に明確性要件違反は認められない。 9 争点3(先使用権の成否)について(被告らの主張)(1) 前記7(被告らの主張)(1)のとおり,本件特許出願前から,被告伊藤は被告製品Aを,被告西村は被告製品B1ないし3及び5を製造販売していた(被告西村は,被告製品B4及び6を販売したことがない。)。 (2) 原告は,知的財産高等裁判所平成30年4月4日判決によれば,先使用品たる被告製品A並びにB1ないし3及び5を製造販売する際,Rate(3R)を31%又は40%以上にするという技術的思想を持っていなかった被告らに先使用権は認められないと主張する。 しかし,被告らは,本件特許出願の前後を通じて,本件各発明との関係に おいて意味のあるような製造条件の変更は行っていないところ,仮に被告製品A並びにB1ないし3及び5が本件各発明の技術的範囲に属するのであれば,被告らは,積極的に意図しないまでも,複数想定され得る,本件各発明の技術的範囲に属する物を製造するために必要な製造条件の 告製品A並びにB1ないし3及び5が本件各発明の技術的範囲に属するのであれば,被告らは,積極的に意図しないまでも,複数想定され得る,本件各発明の技術的範囲に属する物を製造するために必要な製造条件の中から一つを選択し,当該製造条件に従って一貫して被告製品A並びにB1ないし3及び5 を製造販売していたものであるから,Rate(3R)が31%以上又は40%以上となるような製造条件を意図的に選択し,維持してきたと客観的に評価することができるというべきである。 したがって,本件特許出願の前後を通じて,被告製品A並びにB1ないし3及び5に本件各発明の技術的思想は具現されているといえる。 (3) 以上によれば,仮に被告製品A並びにB1ないし3及び5が本件各発明の技術的範囲に属するとすると,本件各発明の内容を知らずに,本件特許出願の際現に日本国内において本件各発明の実施である被告製品A並びにB1ないし3及び5の製造販売をしていた被告らには,先使用権(法79条)が認められる。 (原告の主張)(1) 前記7(原告の主張)のとおり,本件特許出願前から,被告らが現在と同一の被告製品A並びにB1ないし3及び5を製造販売しているとは認められない。 (2) 先使用権が認められるためには,先使用に係る発明の技術的思想(先使用品に具現された技術的思想)と特許発明の技術的思想が同じ内容でなければ ならない。本件においては,仮に被告らが本件特許出願前からRate(3R)が31%又は40%以上である被告製品A並びにB1ないし3及び5を製造販売していたとしても,これらに具現された技術的思想が本件各発明の技術的思想と同じ内容でなければならない。 しかし,本件各発明の技術的思想は,黒鉛のRate(3R)を31%又 3及び5を製造販売していたとしても,これらに具現された技術的思想が本件各発明の技術的思想と同じ内容でなければならない。 しかし,本件各発明の技術的思想は,黒鉛のRate(3R)を31%又 は40%以上にすることにより,グラフェンが剥離しやすくするというものであるところ,被告らは,本件特許出願前において,Rate(3R)を測定したことすらなかったのであるから,被告らが,先使用品たる被告製品A並びにB1ないし3及び5を製造販売する際,Rate(3R)を31%又は40%以上にするという技術的思想を持っていなかったことは明らかであ る。 したがって,被告らが本件特許出願前から製造販売していると主張する被告製品A並びにB1ないし3及び5に具現された技術的思想は,本件各発明の技術的思想と同じ内容であるとはいえない。 (3) 以上のとおり,被告らが被告製品A並びにB1ないし3及び5を製造販売 することにつき,先使用権(法79条)は認められない。 10 争点4(消尽の成否)について(被告西村の主張)被告製品B3及び5は,被告西村が被告伊藤から購入した被告製品A7であり,被告製品B4は,被告西村が被告伊藤から購入した被告製品A8である。 したがって,仮に被告製品B3ないし5が本件各発明の技術的範囲に属するとしても,これらの製品は,本件特許出願前から本件各発明の内容を知らないでこれらを販売した被告伊藤の先使用権の範囲に含まれるから,本件各特許権は消尽する。 また,被告製品B6は,被告西村が第三者から購入したものであり,仮にこれが本件発明1の技術的範囲に属するとしても,当該第三者は,本件特許 出願前から被告製品B6に対応する製品を販売しており,本件発明1の内容を知っていたとは が第三者から購入したものであり,仮にこれが本件発明1の技術的範囲に属するとしても,当該第三者は,本件特許 出願前から被告製品B6に対応する製品を販売しており,本件発明1の内容を知っていたとは考えられない。したがって,被告製品B6は,当該第三者の先使用権の範囲に含まれるから,本件特許1は消尽する。 (原告の主張)被告製品B3及び5が被告伊藤から購入した被告製品A7であり,被告製品 B4が被告伊藤から購入した被告製品A8であること,被告製品B6が第三者から購入したものであることはいずれも不知。 前記9(原告の主張)のとおり,被告伊藤に先使用権は認められず,被告西村に被告製品B6を販売した第三者にも先使用権は認められないから,本件各特許権は消尽しない。 11 争点5(損害の発生及びその額)について(原告の主張)(1) 被告伊藤の実施による損害ア被告伊藤の平成30年2月期の売上総額は約5億円であり,被告伊藤が販売している黒鉛製品は63種類であるので,各製品の売上額が等しいと 仮定すると,1種類の製品の年間売上額は,794万円(=5億円÷63)を下らない。 被告伊藤の黒鉛製品の利益率は,売上額の20%を下らないと考えられるから,被告伊藤が1種類の製品を販売することにより得る年間利益は,159万円(=794万円×0.2)を下らない。 被告伊藤は,少なくとも本件特許1の登録日である平成27年2月20日から提訴日である平成31年3月20日までの4年1月以上の間,製品を販売して利益を得たので,被告伊藤が1種類の製品をこの間に販売して得た利益は,649万円(=159万円×(4+1/12))を下らない。 イ被告製品A4ないし11は,本件特許権1 の間,製品を販売して利益を得たので,被告伊藤が1種類の製品をこの間に販売して得た利益は,649万円(=159万円×(4+1/12))を下らない。 イ被告製品A4ないし11は,本件特許権1のみならず本件特許権2も侵害するところ,本件特許権1と本件特許権2で利益に対する寄与度は同じ であるとすると,本件特許権1及び本件特許権2を侵害したことによる利益は,それぞれ324万5000円(=649万円÷2)となる。 ウしたがって,被告製品A1ないし3が本件特許権1を侵害したことにより原告が被った損害は,1製品当たり649万円であり,被告製品A4ないし11が本件特許権1を侵害したことにより原告が被った損害は1製品 当たり324万5000円,本件特許権2を侵害したことにより原告が被った損害は1製品当たり324万5000円である。 これらを合計すると,平成27年2月20日から被告伊藤に対する訴状送達日までの間に原告が被った損害額は,合計7139万円(=649万円×3+(324万5000円+324万5000円)×8)を下らない。 (2) 被告西村の実施による損害ア被告西村の直近の年間売上総額は約31億5000万円であり,このうち少なくとも5割は黒鉛製品の販売によるものと考えられるから,被告西村の黒鉛製品による年間の売上総額は,15億7500万円を下らない。 そして,被告西村は,製品カタログ(甲B3)に記載のある黒鉛製品14 種類に,これに記載のない被告製品B3及び6を加えた16種類の黒鉛製品を製造販売しているといえるので,各製品の売上額が等しいと仮定すると,1種類の製品の年間売上額は,9844万円(=15億7500万円÷16)を下らない。 被告西村の黒鉛製品の利益率は,売上額 造販売しているといえるので,各製品の売上額が等しいと仮定すると,1種類の製品の年間売上額は,9844万円(=15億7500万円÷16)を下らない。 被告西村の黒鉛製品の利益率は,売上額の20%を下らないと考えられ るから,被告西村が1種類の製品を販売することにより得る年間利益は,1969万円(=9844万円×0.2)を下らない。 被告西村は,少なくとも本件特許1の登録日である平成27年2月20日から提訴日である平成31年4月15日までの4年1月以上の間,製品を販売して利益を得たので,被告西村が1種類の製品をこの間に販売して得た利益は,8040万円(=1969万円×(4+1/12))を下ら ない。 イ被告製品B1ないし5は,本件特許権1のみならず本件特許権2も侵害するところ,この場合において,本件特許権1と本件特許権2で利益に対する寄与度は同じであるとすると,本件特許権1及び本件特許権2を侵害したことによる利益は,それぞれ4020万円(=8040万円÷2)と なる。 ウしたがって,被告製品B1ないし5が本件特許権1を侵害したことにより原告が被った損害は1製品当たり4020万円,本件特許権2を侵害したことにより原告が被った損害は1製品当たり4020万円であり,被告製品B6が本件特許権1を侵害したことにより原告が被った損害は804 0万円である。 これらを合計すると,平成27年2月20日から被告西村に対する訴状送達日までの間に原告が被った損害額は,合計4億8240万円(=(4020万円+4020万円)×5+8040万円)を下らない。 (被告らの主張) いずれも争う。 12 争点6(差止め等の必要性)について(原告の主張)被告 020万円+4020万円)×5+8040万円)を下らない。 (被告らの主張) いずれも争う。 12 争点6(差止め等の必要性)について(原告の主張)被告製品A1ないし3は,本件発明1の技術的範囲に属し,被告製品A4ないし11は,本件各発明の技術的範囲に属するから,被告伊藤が業として被告 製品Aを製造し,販売し,又は販売の申出をする行為は,本件特許権1を侵害するものである。 したがって,被告に対して,法100条1項に基づき,被告製品Aを製造し,販売し,又は販売の申出をする行為を差し止め,同条2項に基づき,被告製品Aの廃棄を求める必要性がある。 (被告伊藤の主張) 争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件各明細書の記載事項等(1) 本件明細書1についてア本件明細書1(甲A2の1,甲B2の1)の「発明の詳細な説明」には, 以下のとおりの記載がある(下記記載中に引用する図は,別紙7本件各特許図面記載のとおりである。)。 (ア) 【技術分野】【0001】本発明は,簡便な方法によりグラフェンを得ることができるグラフェ ン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材に関する。 【背景技術】【0002】近年,様々な分野で小型軽量化などを目的として,様々なナノマテリアルの添加が研究されている。特に,環境や資源の問題で,非金属のナ ノマテリアルとして,グラフェン,CNT(カーボンナノチューブ),フラーレン等の炭素素材に注目が集まっている。 例えばリチウムイオン電池などの導電助剤としてカーボンブラックが使用されてきたが,近年ではさらに導電性を担保するため,昭和電工 チューブ),フラーレン等の炭素素材に注目が集まっている。 例えばリチウムイオン電池などの導電助剤としてカーボンブラックが使用されてきたが,近年ではさらに導電性を担保するため,昭和電工株式会社製のカーボンナノファイバーVGCF(登録商標)などが検討さ れている(特許文献1)。 その中でもグラフェンは,性能的にはもちろん,量産性,ハンドリング性などの面からも他の炭素素材より優れており,様々な分野で期待されている。 【0003】グラファイトの層数の少ない等の高品質なグラフェンを得るために, 天然黒鉛を溶媒(NMP)中で弱い超音波を長時間(7〜10時間)与えた後,底に沈殿した大きな塊を取り除き,その後,上澄みを遠心分離して濃縮することにより,単層のフレークが20%以上,2層又は3層のフレークが40%以上,10層以上のフレークが40%未満の黒鉛材料が0.5g/L程度分散したグラフェン分散液を得る方法が検討されて いる(特許文献2)。 【発明が解決しようとする課題】【0006】しかしながら,特許文献2に開示される方法で得られた黒鉛材料(単層のフレークが20%以上,2層又は3層のフレークが40%以上,1 0層以上のフレークが40%未満)を溶媒に混ぜても,溶媒に分散するグラフェンの分散量が少なく,希薄なグラフェン分散液しか得られなかった。また,上澄みを集めて濃縮することも考えられるが上澄みを集めて濃縮する工程を繰り返すことは処理に時間がかかり,グラフェン分散液の生産効率が悪いという問題がある。特許文献2に開示されるように, 天然黒鉛を長時間,超音波処理しても表面の弱い部分のみが剥離し,他の大部分は剥離に寄与しておらず,剥離され ,グラフェン分散液の生産効率が悪いという問題がある。特許文献2に開示されるように, 天然黒鉛を長時間,超音波処理しても表面の弱い部分のみが剥離し,他の大部分は剥離に寄与しておらず,剥離されるグラフェン量が少ないことが問題であると考えられる。 【0007】本発明は,このような問題点に着目してなされたもので,天然黒鉛に 所定の処理を施すことでグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散させることができる黒鉛系炭素素材をグラフェン前駆体と呼び,このグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材を提供することを目的とする。 (イ) 【課題を解決するための手段】【0008】 前記課題を解決するために,本発明のグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材は,菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し,前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が31%以上 であることを特徴とするグラフェン前駆体としている。 Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)ここで,P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度 P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度である。 この特徴によれば,層が剥がれ易い菱面晶系黒鉛層(3R)が多く含まれるため,前駆体として用いたときにグラフェンが剥離しやすく,グ ラフェンを高濃度または高分散させることができるグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材が得ら 系黒鉛層(3R)が多く含まれるため,前駆体として用いたときにグラフェンが剥離しやすく,グ ラフェンを高濃度または高分散させることができるグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材が得られる。 【0009】また,グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材は,菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し,前記菱面晶系黒 鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が40%以上であることを特徴としている。 Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)ここで,P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピ ーク強度P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度である。 この特徴によれば,層が剥がれ易い菱面晶系黒鉛層(3R)が多く含 まれるため,前駆体として用いたときにグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度または高分散させることができるグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材が得られる。 また,グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材は,前記割合Rate(3R)が50%以上であることを特徴としている。 この特徴によれば,割合Rate(3R)が50%以上であれば,40%以上50%未満のときよりもグラフェンが剥離しやすいグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材を簡単に得ることができる。 【0011】上述に記載されたグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材 は,電波的力に ラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材を簡単に得ることができる。 【0011】上述に記載されたグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材 は,電波的力による処理と物理的力による処理とが真空または気中において施されて生成されたことを特徴としている。 この特徴によれば,真空または気中において天然黒鉛材料にマイクロ波,ミリ波,プラズマ,電磁誘導加熱(IH),磁場などの電波的力による処理とボールミル,ジェットミル,遠心力,超臨界などの物理的力 による処理とを併用することで,菱面晶系黒鉛層(3R)がより多く含まれる黒鉛系炭素素材が得られる。また,真空または気中において処理しているから後処理が簡単である。 【0016】また,グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材を製造する方法であって,天然黒鉛材料に対して,電波的力による処理と物理的力 による処理とを真空または気中において施すことを特徴としている。 この特徴によれば,天然黒鉛材料にマイクロ波,ミリ波,プラズマ,電磁誘導加熱(IH),磁場などの電波的力による処理と,ボールミル,ジェットミル,遠心力,超臨界などの物理的力による処理とを併用させることで,いずれか一方で処理するよりもグラフェンに分離しやすいグ ラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素材を短時間で得ることができる。 (ウ) 【発明を実施するための形態】【0020】本発明は,黒鉛の結晶構造に着目したものであり,この結晶構造に関 連する事項を先ず説明する。天然黒鉛は層の重なり方によって六方晶,菱面体晶及び無秩序の3種類の結晶構造に区別されることが知られている。図1に示されるように, したものであり,この結晶構造に関 連する事項を先ず説明する。天然黒鉛は層の重なり方によって六方晶,菱面体晶及び無秩序の3種類の結晶構造に区別されることが知られている。図1に示されるように,六方晶は,層がABABAB・・の順に積層された結晶構造であり,菱面体晶は層がABCABCABC・・の順に積層された結晶構造である。 【0021】天然黒鉛は,発掘された段階では菱面体晶が殆ど存在しないが,精製段階で破砕など行われるため,一般的な天然黒鉛系炭素素材中には,菱面体晶が14%程度存在する。また,精製時における破砕を長時間行っても,菱面体晶の比率は30%程度で収束することが知られている(非 特許文献1,2)。 また,破砕などの物理的力以外でも加熱によって黒鉛を膨張させて薄片化する方法も知られているが,黒鉛に1600K(摂氏約1300度)の熱をかけて処理を行っても菱面体晶の比率は25%程度である。(非特許文献3)。更に超高温の摂氏3000度の熱をかけても30%程度までとなっている(非特許文献2)。 このように,天然黒鉛を物理的力や熱によって処理することで,菱面体晶の比率を増加させることが可能であるがその上限は30%程度である。 【0022】天然黒鉛に多く含まれる,六方晶(2H)は非常に安定的で,そのグ ラフェン同士の層間のファンデルワールス力は,(式3)で示される(特許文献2)。この力を超えるエネルギーを与えることでグラフェンが剥離する。剥離に必要なエネルギーは厚さの3乗に反比例するため,層が無数に重なった厚い状態では非常に微弱で超音波などの弱い物理的な力でグラフェンは剥離するが,ある程度薄い黒鉛から剥離する場合に は非常に 離に必要なエネルギーは厚さの3乗に反比例するため,層が無数に重なった厚い状態では非常に微弱で超音波などの弱い物理的な力でグラフェンは剥離するが,ある程度薄い黒鉛から剥離する場合に は非常に大きなエネルギーが必要となる。つまり,黒鉛を長時間処理しても,表面の弱い部分のみが剥離し,大部分は剥離されないままになる。 【0023】Fvdw=H・A/(6π・t3)・・・・(式3)Fvdw:ファンデルワールス力 H :Hamaker定数A :黒鉛又はグラフェンの表面積t :黒鉛又はグラフェンの厚み【0024】本願の発明者らは,天然黒鉛に下記に示すような所定の処理を施すこ とで,粉砕や超高温に加熱する処理では30%程度までしか増えない菱面体晶(3R)の割合を,40%以上まで増加させることに成功した。 黒鉛系炭素材料の菱面体晶(3R)の含有率がより多くなると,特に40%以上の含有率であると,この黒鉛系炭素素材を前駆体として用いることで,グラフェンに剥離しやすくなる傾向があり,簡単に高濃度,高分散度されたグラフェン溶液などが得られることが実験・研究の結果と して知見として得られた。これは,菱面体晶(3R)にせん断などの力が加わった際に,層間に歪みが生じ,つまり黒鉛の構造全体の歪みが大きくなり,ファンデルワールス力に依存せずに,剥離しやすくなるためであると考えられる。このため,本発明においては,天然黒鉛に所定の処理を施すことでグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は 高分散させることができる黒鉛系炭素素材をグラフェン前駆体と呼び,以下,後述の実施例において,所定の処理を示すグラフェン前駆体の製 施すことでグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は 高分散させることができる黒鉛系炭素素材をグラフェン前駆体と呼び,以下,後述の実施例において,所定の処理を示すグラフェン前駆体の製造方法,グラフェン前駆体の結晶構造,グラフェン前駆体を用いたグラフェン分散液の順に説明する。 【0025】 ここで,本明細書においてグラフェンは,平均サイズが100nm以上の結晶であって平均サイズが数nm〜数十nmの微結晶ではなく,かつ層数が10層以下の薄片状又はシート状のグラフェンをいう。 なお,グラフェンは平均サイズが100nm以上の結晶であるため,天然黒鉛以外の非晶質(微結晶)炭素素材である,人造黒鉛,カーボン ブラックは,これらを処理してもグラフェンは得られない(非特許文献4)。 また,本明細書において,グラフェン複合体は,本発明に係るグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材,すなわちRate(3R)が40%以上の黒鉛系炭素材料(例えば後述する実施例1の試料4-7) を用いて作成した複合体を意味する。 (エ) 【実施例1】【0027】<グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材の製造について>図3に示されるジェットミルとプラズマとを用いた製造装置Aにより,グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材を得る方法について 説明する。製造装置Aは,電波的力による処理としてプラズマを施し,また,物理的力による処理としてジェットミルを用いた場合を例にしている。 【0028】図3において,符号1は5mm以下の粒子の天然黒鉛材料(日本黒鉛 工業製鱗片状黒鉛ACB-50),2は天然 てジェットミルを用いた場合を例にしている。 【0028】図3において,符号1は5mm以下の粒子の天然黒鉛材料(日本黒鉛 工業製鱗片状黒鉛ACB-50),2は天然黒鉛材料1を収容するホッパー,3はホッパー2から天然黒鉛材料1を噴射するベンチュリーノズル,4はコンプレッサ5から8箇所に分けて圧送された空気を噴射させて天然黒鉛材料をジェット噴流によりチャンバ内に衝突させるジェットミル,7はタンク6から酸素,アルゴン,窒素,水素などのガス9をノ ズル8から噴射させるとともに,ノズル8の外周に巻回されたコイル11に高圧電源10から電圧を付与し,ジェットミル4のチャンバ内でプラズマを発生させるプラズマ発生装置であり,チャンバ内に4カ所に設けてある。13はジェットミル4と集塵器14とを接続する配管,14は集塵器,15は収集容器,16は黒鉛系炭素素材(グラフェン前駆 体),17はブロアである。 【0029】次に製造方法について説明する。ジェットミル及びプラズマの条件は次のとおりである。 ジェットミルの条件は次のとおりである。 圧力:0.5MPa風量:2.8m3/minノズル内直径:12mm流速:約410m/sプラズマの条件は次のとおりである。 出力:15W 電圧:8kVガス種:Ar(純度99.999Vo1%)ガス流量:5L/min【0030】ベンチュリーノズル3よりジェットミル4のチャンバ内に投入された 天然黒鉛材料1は,チャンバ内で音速以上に加速され,天然黒鉛材料1同士や壁にぶつかる衝 【0030】ベンチュリーノズル3よりジェットミル4のチャンバ内に投入された 天然黒鉛材料1は,チャンバ内で音速以上に加速され,天然黒鉛材料1同士や壁にぶつかる衝撃で粉砕されると同時に,プラズマ12が天然黒鉛材料1に対して放電や励起することで,原子(電子)に直接作用し,結晶の歪みを増し粉砕を促すと考えられる。天然黒鉛材料1ある程度の粒径(1〜10μm程度)まで微粉になると,質量が減り,遠心力が弱 まることで,チャンバの中心に接続された配管13から吸い出される。 【0031】配管13から集塵器14のチャンバの円筒容器に流入された黒鉛系炭素素材(グラフェン前駆体)が混在した気体は旋回流となって,容器内壁に衝突した黒鉛系炭素素材16を下方の収集容器15に落下させると ともに,チャンバの下方のテーパ容器部によってチャンバの中心に上昇気流が発生し気体はブロワ17から排気される(所謂サイクロン作用)。 本実施例における製造装置Aによれば,原料となる1kgの天然黒鉛材料1から約800gのグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材(グラフェン前駆体)16を得た(回収効率:8割程度)。 【0032】次に,図4に示されるボールミルとマイクロ波とを用いた製造装置Bにより,グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材を得る方法について説明する。製造装置Bは,電波的力による処理としてマイクロ波を施し,また,物理的力による処理としてボールミルを用いた場合を例にしている。 【0033】図4(a)及び(b)において,符号20はボールミル,21はマイクロ波発生装置(マグネトロン),22は導波管,23はマイクロ波流入口,24は している。 【0033】図4(a)及び(b)において,符号20はボールミル,21はマイクロ波発生装置(マグネトロン),22は導波管,23はマイクロ波流入口,24はメディア,25は5mm以下の粒子の天然黒鉛材料(日本黒鉛工業製鱗片状黒鉛ACB-50),26は収集容器,27はフィ ルタ,28は黒鉛系炭素素材(グラフェン前駆体)である。 【0034】次に製造方法について説明する。ボールミル及びマイクロ波発生装置の条件は次のとおりである。 ボールミルの条件は次のとおりである。 回転数:30rpmメディアサイズ:φ5mmメディア種:ジルコニアボール粉砕時間:3時間マイクロ波発生装置(マグネトロン)の条件は次のとおりである。 出力:300w周波数:2.45GHz照射方法:断続的【0035】ボールミル20のチャンバ内に1kgの天然黒鉛系炭素原料25と, 800gのメディア24を投入し,チャンバを閉じ30rpmの回転数で3時間処理する。この処理中にチャンバにマイクロ波を断続的(10分おきに20秒)に照射する。このマイクロ波の照射により,原料の原子(電子)に直接作用し,結晶の歪みを増やすと考えられる。処理後,フィルタ27でメディア24を取り除くことで,10μm程度の粉体の黒鉛系炭素素材(前駆体)28を収集容器26に収集することができる。 【0036】<黒鉛系炭素素材(前駆体)のX線回折プロファイルについて>図5-図7を参照して,製造装置A,Bにより製造された黒鉛系天然 することができる。 【0036】<黒鉛系炭素素材(前駆体)のX線回折プロファイルについて>図5-図7を参照して,製造装置A,Bにより製造された黒鉛系天然材料(試料6,試料5)及び製造装置Bのボールミルのみを用いて得た10μm程度の粉体の黒鉛系天然材料(試料1:比較例)のX線回折プロ ファイルと結晶構造について説明する。各試料は,X線回折法(リガク社製試料水平型多目的X線回折装置UltimaⅣ)によれば,それぞれ六方晶2Hの面(100),面(002),面(101),及び菱面体晶3Rの面(101)にピーク強度P1,P2,P3,P4を示すことからこれらについて説明する。 【0037】ボールミルによる処理とマイクロ波処理を施す製造装置Bにより製造された試料5は,図5及び表1に示されるように,ピーク強度P3やピーク強度P1の強度の割合が高く,P3のP3とP4の和に対する割合を示す(式1)で定義されるRate(3R)が46%であった。また, 強度比P1/P2は0.012であった。 Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)ここで,P1は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(100)面のピーク強度 P2は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(002)面のピーク強度P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度 である。 【0038】【表1】 【0039】 同様に,ジ 系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度 である。 【0038】【表1】 【0039】 同様に,ジェットミルによる処理とプラズマによる処理を施す製造装置Aにより製造された試料6は,図6及び表2に示されるように,ピーク強度P3やピーク強度P1の強度の割合が高く,Rate(3R)が51%であった。また,強度比P1/P2は0.014であった。 【0040】 【表2】 【0041】また,ボールミルのみにより製造された比較例を示す試料1は,図7及び表3に示されるように,ピーク強度P3は試料5,6に比較してそ の割合が小さく,Rate(3R)は23%であった。また,強度比P1/P2は0.008であった。 【0042】【表3】 【0050】これらのことから,Rate(3R)が40%以上の場合に10層以下のグラフェンに剥離しやすくなり,さらに,Rate(3R)が50%,60%と多くなるにつれ,10層以下のグラフェンにさらに剥離し易くなり,逆に40%未満では10層以下のグラフェンに剥離しにくいと考えられる。また,強度比P1/P2について着目すると,試料2 -試料7は,比較的狭い0.012〜0.016の範囲内の値となっており,結晶構造にゆがみが生じグラフェンに剥離しやすいと考えられる0.01を超えるからいずれも好ましい。 【0051】さらにRate(3R)と10層以下のグラフェンが含まれる割合と の対比を行った結果を図14に示す。図14を参照すると,Rate(3R)は,25%以上となると10層 【0051】さらにRate(3R)と10層以下のグラフェンが含まれる割合と の対比を行った結果を図14に示す。図14を参照すると,Rate(3R)は,25%以上となると10層以下のグラフェンが増加し始め(右肩上がりの傾きとなり),また40%前後において,10層以下のグラフェンが急増し(10層以下のグラフェンの割合は,試料3を用いた分散液のRate(3R)が38%であるのに対し,試料4を用いた 分散液のRate(3R)が62%であり,Rate(3R)が4%増えることにより10層以下のグラフェンの割合は24%増えるように急増し)かつ全体に占める10層以下のグラフェンが50%以上となることが判明した。なお,図14中の黒四角の点は各々異なる試料であり,上述した試料1-7と,それ以外の他の試料も含まれている。 【0052】このことから,Rate(3R)が40%以上の試料をグラフェン前駆体として用いてグラフェン分散液を作成すると,10層以下のグラフェンが50%以上生成される。すなわち,グラフェンが高濃度かつ高分散のグラフェン分散液を得ることができる。また,上述したように,こ の分散液に含まれる黒鉛系炭素素材(前駆体)はほとんど沈殿しないから,簡単に濃いグラフェン分散液を得ることができる。この方法により,濃縮することなしに,グラフェンの濃度が10%を超えるグラフェン分散液を作成することもできた。なお,10層以下のグラフェンが分散する割合は50%未満と少ないものの,Rate(3R)が25%以上40%未満のものは,10層以下のグラフェンが分散される割合が増える という観点から好ましい。 イ前記アの記載事項によれば,本件明細書1には,本件発明1に関し,以下のとおりの開示 以上40%未満のものは,10層以下のグラフェンが分散される割合が増える という観点から好ましい。 イ前記アの記載事項によれば,本件明細書1には,本件発明1に関し,以下のとおりの開示があると認められる。 (ア) 近年,様々な分野で小型軽量化などを目的として,様々なナノマテリアルの添加が研究され,特に,環境や資源の問題で,非金属のナノマテ リアルとして,グラフェン,CNT(カーボンナノチューブ),フラーレン等の炭素素材に注目が集まっており,その中でもグラフェンは,性能的にはもちろん,量産性,ハンドリング性などの面からも他の炭素素材より優れ,様々な分野で期待されているところ,グラファイトの層数の少ない等の高品質なグラフェンを得るために,天然黒鉛を溶媒(NM P)中で弱い超音波を長時間(7〜10時間)与えた後,底に沈殿した大きな塊を取り除き,その後,上澄みを遠心分離して濃縮することにより,単層のフレークが20%以上,2層又は3層のフレークが40%以上,10層以上のフレークが40%未満の黒鉛材料が0.5g/L程度分散したグラフェン分散液を得る方法が検討されている(【0002】及び 【0003】)。 しかし,上記方法で得られた黒鉛材料(単層のフレークが20%以上,2層又は3層のフレークが40%以上,10層以上のフレークが40%未満)を溶媒に混ぜても,溶媒に分散するグラフェンの分散量が少なく,希薄なグラフェン分散液しか得られず,上澄みを集めて濃縮することも 考えられるが上澄みを集めて濃縮する工程を繰り返すことは処理に時間がかかり,グラフェン分散液の生産効率が悪いという問題があり,また,天然黒鉛を長時間,超音波処理しても表面の弱い部分のみが剥離し,他の大部分は剥離に寄与しておらず,剥離 程を繰り返すことは処理に時間がかかり,グラフェン分散液の生産効率が悪いという問題があり,また,天然黒鉛を長時間,超音波処理しても表面の弱い部分のみが剥離し,他の大部分は剥離に寄与しておらず,剥離されるグラフェン量が少ないという問題があった(【0006】)。 (イ) 「本発明」は,前記(ア)の問題点に着目し,天然黒鉛に所定の処理を施 すことで,グラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散させることができる黒鉛系炭素素材をグラフェン前駆体と呼び,このグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材を提供することを目的とするものであり,課題を解決するための手段として,グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材は,菱面晶系黒鉛層(3R)と六方 晶系黒鉛層(2H)とを有し,前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法によるP3/(P3+P4)×100(P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度を,P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度をそれぞれ指す。)と定義される割合Rate (3R)が31%以上であることを特徴とする構成を採用したものである(【0007】及び【0008】)。 天然黒鉛を物理的力や熱によって処理することにより菱面体晶の比率を増加させることが可能であるが,その上限は30%程度であったところ,「本発明」に係るグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素 材は,層が剥がれやすい菱面晶系黒鉛層(3R)が多く含まれるため,前駆体として用いたときにグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散させることができ,黒鉛系炭素材料の菱面体晶(3R)の含有率がより多くなり,特に40%以上の含有率で 多く含まれるため,前駆体として用いたときにグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散させることができ,黒鉛系炭素材料の菱面体晶(3R)の含有率がより多くなり,特に40%以上の含有率であると,この黒鉛系炭素素材を前駆体として用いることで,グラフェンに剥離しやすくな る傾向があり,簡単に高濃度,高分散度のグラフェン溶液などが得られるという効果を奏する(【0007】,【0021】及び【0024】)。 (2) 本件明細書2についてア本件明細書2(甲A2の2,甲B2の2)の「発明の詳細な説明」には,以下のとおりの記載がある(下記記載中に引用する図は,本件明細書1の 図と同じであり,別紙7本件各特許図面記載のとおりである。)。 (ア) 【技術分野】【0001】(本件明細書1【0001】に同じ)【背景技術】 【0002】及び【0003】(本件明細書1【0002】及び【0003】にそれぞれ同じ)【発明が解決しようとする課題】【0006】(本件明細書1【0006】に同じ) 【0007】本発明は,このような問題点に着目してなされたもので,天然黒鉛に所定の処理を施すことでグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散させることができる黒鉛系炭素素材をグラフェン前駆体と呼び,このグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材,これを 含有するグラフェン分散液及びグラフェン複合体並びにこれを製造する方法を提供することを目的とする。 (イ) 【課題を解決するための手段】【0008】前記課題を解決するために,本発明のグラフ グラフェン複合体並びにこれを製造する方法を提供することを目的とする。 (イ) 【課題を解決するための手段】【0008】前記課題を解決するために,本発明のグラフェン前駆体として用いら れる黒鉛系炭素素材は,菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し,前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が40%以上であることを特徴としている。 Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1) ここで,P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度 である。 この特徴によれば,層が剥がれ易い菱面晶系黒鉛層(3R)が多く含まれるため,前駆体として用いたときにグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度または高分散させることができるグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材が得られる。 【0009】本発明のグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材は,前記割合Rate(3R)が50%以上であることを特徴としている。 この特徴によれば,割合Rate(3R)が50%以上であれば,40%以上50%未満のときよりもグラフェンが剥離しやすいグラフェン 前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材を簡単に得ることができる。 【0011】(本件明細書1【0011】に同じ)【0016】この発明のグラフェン 前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材を簡単に得ることができる。 【0011】(本件明細書1【0011】に同じ)【0016】この発明のグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材を製造 する方法であって,天然黒鉛材料に対して,電波的力による処理と物理的力による処理とを真空または気中において施すことを特徴としている。 この特徴によれば,天然黒鉛材料にマイクロ波,ミリ波,プラズマ,電磁誘導加熱(IH),磁場などの電波的力による処理と,ボールミル,ジェットミル,遠心力,超臨界などの物理的力による処理とを併用させることで,いずれか一方で処理するよりもグラフェンに分離しやすいグ ラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素材を短時間で得ることができる。 (ウ) 【発明を実施するための形態】【0020】ないし【0025】(本件明細書1【0020】ないし【0025】にそれぞれ同じ) (エ) 【実施例1】【0027】ないし【0042】及び【0050】ないし【0052】(本件明細書1【0027】ないし【0042】及び【0050】ないし【0052】にそれぞれ同じ)イ前記アの記載事項によれば,本件明細書2には,本件発明2に関し,グ ラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材のRate(3R)が40%以上であることを特徴とするものであること(【0009】)のほかは,本件発明1と同様の開示があると認められる。 2 争点1(被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属するか)について(1) 認定事実 証拠(甲A3の1ないし4,6,7,甲A4の1,甲A5,8ないし10,15,1 れる。 2 争点1(被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属するか)について(1) 認定事実 証拠(甲A3の1ないし4,6,7,甲A4の1,甲A5,8ないし10,15,16,31,34,49,88,甲B3,4,6の1,甲B7,乙A1,3,9,17,28,83,103,104)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 ア黒鉛の種類について 黒鉛には,天然黒鉛と人造黒鉛があり,天然黒鉛は,結晶性の高い鱗状黒鉛と結晶性に劣る土状黒鉛に分類され,鱗状黒鉛は,鱗片状黒鉛と塊状黒鉛に分類される。膨張黒鉛は,鱗片状黒鉛の層間に硫酸等をインタカレートしたものであり,グラファイトシートの原料となり,膨張化黒鉛は,グラファイトシートを裁断して粉砕したものをいう。(甲A3の1ないし4,6,7,甲A15) イ X線回折法についてX線回折法とは,試料にX線を照射し,その物質中の電子を強制振動させることにより生じる干渉性散乱X線による回折線の強度を,各角度について測定する方法であり,回折線の角度及び強度により,結晶物質の結晶相の同定等の分析に用いられる。 黒鉛について,X線回折法により回折線の角度及び強度を測定すると,当該黒鉛が六方晶系黒鉛層(2H)を含む場合,その(101)面の回折線の強度のピークが回折線の角度44°付近に出現し,当該黒鉛が菱面晶系黒鉛層(3R)を含む場合,その(101)面の回折線の強度のピークが回折線の角度43°付近に出現することが知られている。 X線回折法は,1930年代から用いられていた結晶構造の解析手段であり,本件特許出願当時,当業者は,物質の結晶構造を解明するためにX線回折法による測定をし,これによ られている。 X線回折法は,1930年代から用いられていた結晶構造の解析手段であり,本件特許出願当時,当業者は,物質の結晶構造を解明するためにX線回折法による測定をし,これにより得られた回折プロファイルを解析することによって,ピークの高さやピークの面積(積分強度)を算出していた。 (甲A4の1,甲A16,88,甲B6の1,乙A3,83)ウリガク社製のX線回折装置及び解析ソフトウェアについて(ア) SmartLab及びUltimaⅣは,リガク社製のX線回折装置であり,X線回折法により,試料の回折線の角度及び強度を測定し,回折プロファイルを得るための機器である(甲A8,10,34,49, 乙A28)。 (イ) PDXLは,あらゆる結晶物質及びその混合物(粉末)の回折プロファイルを解析するためのソフトウェアである。 PDXLは,一般的に,回折プロファイルにおいてピークが明瞭に現れている場合(ピークが独立しており,幅が広がって隣接するピークと重なることがない場合),試料を考慮した解析条件を入力することなく, 自動的に条件を設定して回折プロファイルを解析し,ピーク情報(位置,強度,幅,形状等)を得ることができる。 しかし,ピークが不明瞭な場合(一般的に,結晶子サイズが小さいとピークの幅が広がり,そのようなピークの位置が隣接していると,これらの回折プロファイルが合成され,更に広がった形状となる。),PD XLの自動解析機能によっては不合理な解に収束したり,解が発散(同じ試料を測定したにもかかわらず,解析結果が異なること)したりする。 このような場合,PDXLに試料を考慮した解析条件を手動で入力することにより,不合理な解に収束したり,解が発散したり ,解が発散(同じ試料を測定したにもかかわらず,解析結果が異なること)したりする。 このような場合,PDXLに試料を考慮した解析条件を手動で入力することにより,不合理な解に収束したり,解が発散したりしないようにする。 (甲A9,34,49,乙A28)(ウ) GGIndex(β)は,黒鉛を含有する試料の回折プロファイルを解析するソフトウェアであり,黒鉛結晶について,適切な解析条件を自動的に設定し,解析結果を得ることができる。 GGIndex(β)はテスト段階のバージョンであるため,一部の サンプルでは,解が収束しないことがあった。 (甲A31,34,49,乙A103)エ被告製品Aについて(ア) 原告は,被告製品A1については平成30年6月19日に,被告製品A2及び4ないし11については同年8月9日に,被告製品A3につい ては同年7月21日に,それぞれ,被告伊藤が販売する被告製品Aを取得した(弁論の全趣旨)。 (イ) 原告代表者は,原告がSmartLabを用いて前記(ア)の被告製品Aを分析し,それによって得られた回折プロファイルを,GGIndex(β)を用いて解析して,菱面晶系黒鉛層の(101)面及び六方晶系黒鉛層の(101)面の各ピーク強度を計算した上,これを基に算出し たRate(3R)である乙A1結果(別紙3Rate(被告伊藤)の番号3の列)を記載したメモを作成して,平成31年2月初旬,被告伊藤代表取締役の親戚に対し,同メモを交付した(乙A1,弁論の全趣旨)。 (ウ) 原告は,平成30年4月5日から同年9月4日までの間に,Smar tLabを用いて前記(ア)の被告製品Aを分析し,それによって得られた回折プロファイルを,PDXLを用いて, (ウ) 原告は,平成30年4月5日から同年9月4日までの間に,Smar tLabを用いて前記(ア)の被告製品Aを分析し,それによって得られた回折プロファイルを,PDXLを用いて,自動解析機能によっては不合理な解に収束したり解が発散したりする場合には適宜の解析条件を手動で入力することによって解析して,菱面晶系黒鉛層の(101)面及び六方晶系黒鉛層の(101)面の各ピーク強度を計算し,これを基にR ate(3R)を算出したところ,甲A5結果(別紙3Rate(被告伊藤)の番号1の列)を得た(甲A5,34,49)。 (エ) 被告伊藤は,平成31年4月15日から令和元年5月27日までの間に,SmartLabを用いて被告製品Aを分析し,それによって得られた回折プロファイルを,PDXLの自動解析機能を用いて解析して, 菱面晶系黒鉛層の(101)面及び六方晶系黒鉛層の(101)面の各ピーク強度を計算し,これを基にRate(3R)を算出したところ,乙A9結果(別紙3Rate(被告伊藤)の番号2の列)を得た(乙A9,104)。 (オ) 被告製品A1及び2は鱗片状黒鉛であり,被告製品A3ないし6は土 状黒鉛であり,被告製品A7ないし11は膨張化黒鉛である(甲A3の1,3,6)。 オ被告製品Bについて(ア) 原告は,被告製品B1,2及び4ないし6については平成30年11月9日に,被告製品B3については平成31年3月19日に,それぞれ,被告西村が販売する被告製品Bを取得した(弁論の全趣旨)。 (イ) 原告は,平成30年11月13日から平成31年3月20日までの間に,SmartLabを用いて前記(ア)の被告製品Bを分析し,それによって得られた回折プロファイルを,PDXLを (イ) 原告は,平成30年11月13日から平成31年3月20日までの間に,SmartLabを用いて前記(ア)の被告製品Bを分析し,それによって得られた回折プロファイルを,PDXLを用いて,自動解析機能によっては不合理な解に収束したり解が発散したりする場合には適宜の解析条件を手動で入力することによって解析して,菱面晶系黒鉛層の(1 01)面及び六方晶系黒鉛層の(101)面の各ピーク強度を計算し,これを基にRate(3R)を算出したところ,甲B7結果(別紙4Rate(被告西村)の番号1の列)を得た(甲A34,49,甲B7)。 (ウ) 被告西村は,令和元年6月5日,SmartLabを用いて被告製品Bを分析し,それによって得られた回折プロファイルを,PDXLの自 動解析機能を用いて解析して,菱面晶系黒鉛層の(101)面及び六方晶系黒鉛層の(101)面の各ピーク強度を計算し,これを基にRate(3R)を算出したところ,乙A17結果(別紙4Rate(被告西村)の番号2の列)を得た(乙A17,104)。 (エ) 被告製品B1及び2は土状黒鉛であり,被告製品B3ないし5は膨張 黒鉛であり,被告製品B6は鱗状黒鉛である(甲B3,4)。 (2) 構成要件1A,2A,1B及び2Bの充足性ア構成要件1A,2A,1B及び2Bの解釈について(ア) 本件各発明の特許請求の範囲においては,「菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し」(構成要件1A及び2A),「P 3」を「菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度」と,「P4」を「六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度」としたときに,「前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方 系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度」と,「P4」を「六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度」としたときに,「前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)」の「Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100」「により定義される割合Rate(3R)が31%以上であることを特徴とする」もの(構成要件1B)又は「4 0%以上であることを特徴とする」もの(構成要件2B)との記載がある。 これらの記載によれば,被告各製品において,「菱面晶系黒鉛層(3R)」及び「六方晶系黒鉛層(2H)」の双方が存在すれば構成要件1A及び2Aを充足し,「Rate(3R)」の値が「31%以上」であ れば構成要件1Bを,「Rate(3R)」が「40%以上」であれば構成要件2Bを,それぞれ充足することになる。 (イ) 被告らは,算出されたRate(3R)にばらつきが存在することを根拠に,本件各発明の構成要件を特定するパラメータとして機能していないと主張する。 確かに,別紙3Rate(3R)(被告伊藤)及び別紙4Rate(3R)(被告西村)記載のとおり,被告らがPDXLの自動解析機能を使用して得た被告各製品に係る乙A9結果及び乙A17結果について,同じ製品につき複数回算出したRate(3R)にばらつきがあり,甲A5結果及び甲B7結果とも必ずしも一致していない上,原告がGGI ndex(β)を使用して得た被告製品Aに係る乙A1結果と甲A5結果とも一致していない。 しかし,前記(1)ウ(イ)のとおり,回折プロファイルにおいてピークが不明瞭な場合,PDXLの自動解析機能によっては不合理な解に収束したり,解が発散したりするので,このような場合,PDXLに試料を考 慮した解析 (イ)のとおり,回折プロファイルにおいてピークが不明瞭な場合,PDXLの自動解析機能によっては不合理な解に収束したり,解が発散したりするので,このような場合,PDXLに試料を考 慮した解析条件を手動で入力する必要があるところ,証拠(乙A122)によれば,一般的に,X線回折装置による測定により得られた回折プロファイルを解析するに当たっては,解が収束するように解析条件を設定することが行われていることが認められる。そして,被告製品A3ないし11に係る乙A9結果及び被告製品B1及び3ないし5に係る乙A17結果は,複数回算出されたRate(3R)にばらつきがあったり, 前記(1)エ(ウ)及びオ(イ)のとおり,必要に応じて適宜の解析条件を手動で入力して解析して得た甲A5結果及び甲B7結果と相当程度の差異があるが,これらの製品の各回折プロファイルにおける菱面晶系黒鉛層(3R)の(101)面及び六方晶系黒鉛層(2H)の(101)面の各ピークが出現するとされる回折線の角度43ないし44°付近のピークは 必ずしも明瞭ではない。他方,被告製品A1及び2に係る乙A9結果及び被告製品B6に係る乙A17結果は,複数回算出されたRate(3R)はほぼ一致しており,甲A5結果及び甲B7結果ともほぼ一致するが,これらの製品の上記各ピークは比較的明瞭である。そうすると,乙A9結果及び乙A17結果におけるRate(3R)のばらつきや甲A 5結果及び甲B7結果との相違は,PDXLの自動解析機能のみを使用し,解が収束するように解析条件を設定するという一般的な手法がとられなかったことによるものといえる。 さらに,前記(1)ウ(ウ)のとおり,GGIndex(β)は,一部のサンプルでは解が収束しないことがあったことから,甲A5結果及び甲B7 結果 手法がとられなかったことによるものといえる。 さらに,前記(1)ウ(ウ)のとおり,GGIndex(β)は,一部のサンプルでは解が収束しないことがあったことから,甲A5結果及び甲B7 結果と乙A1結果とで一致しないものがあるとしても,直ちにRate(3R)を一義的に算出することができないといえるものではなく,他にX線回折法による測定により得られた回折プロファイルにおけるピーク強度(積分強度)を一義的に算出することができないことをうかがわせる事情は見当たらない。 したがって,ピーク強度(積分強度)から算出するRate(3R)が本件各発明の構成要件を特定するパラメータとして機能していないとはいえないから,被告らの上記主張は理由がない。 イ被告製品Aについて(ア) 被告製品AのRate(3R)被告製品A1及び2に係る甲A5結果,乙A1結果及び乙A9結果は 近接していること,被告製品A1及び2に係る乙A9結果の各回折プロファイルにおいて,菱面晶系黒鉛層(3R)の(101)面及び六方晶系黒鉛層(2H)の(101)面の各ピークが出現するとされる回折線の角度43ないし44°付近のピークは比較的明瞭であり,前記(1)ウ(イ)のとおり,PDXLの自動解析機能を使用しても適切な解が得られる と考えられることからすると,被告製品A1及び2のRate(3R)については,甲A5結果,乙A1結果及び乙A9結果のいずれも採用することができるというべきである。 他方で,被告製品A3ないし9に係る乙A9結果については,同じ製品であるにもかかわらず,算出されたRate(3R)にかなりのばら つきがあり,また,被告製品A10及び11に係る乙A9結果については,ばらつきはほとんどないにもかかわ 結果については,同じ製品であるにもかかわらず,算出されたRate(3R)にかなりのばら つきがあり,また,被告製品A10及び11に係る乙A9結果については,ばらつきはほとんどないにもかかわらず,甲A5結果と大きく異なっており,被告製品A3ないし11に係る乙A9結果の各回折プロファイルにおける回折線の角度43ないし44°付近のピークは必ずしも明瞭ではない。そして,前記(1)ウ(イ)及び(ウ)のとおり,PDXLは,ピー クが不明瞭な場合,自動解析機能によっては不合理な解に収束したり,解が発散したりすることがあるため,このような場合,試料を考慮した解析条件を手動で入力する必要があり,GGIndex(β)も,一部のサンプルでは解が収束しないことがあるところ,前記(1)エ(ウ)及び(エ)のとおり,原告は,自動解析機能によっては不合理な解に収束したり, 解が発散したりする場合には適宜の解析条件を手動で入力することにより,PDXLを用いて解析を行い,甲A5結果を得たのに対し,被告伊藤は,PDXLの自動解析機能により,乙A9結果を得たものである。 そうすると,被告製品A3ないし11のRate(3R)については,PDXLの自動解析機能の問題点に適宜対処した上で取得された甲A5結果を採用することができ,そのような対処がうかがわれない乙A1結 果及び乙A9結果は採用することができないというべきである。 (イ) 充足性前記前提事実(6)アのとおり,被告製品A1及び2は,構成要件1A及び1Bを充足する。 また,前記(ア)のとおり,被告製品A3ないし11のRate(3R)は 甲A5結果を採用すべきであるところ,これによれば,被告製品A3のRate(3R)は31%以上,被告製品A4ないし11のRa た,前記(ア)のとおり,被告製品A3ないし11のRate(3R)は 甲A5結果を採用すべきであるところ,これによれば,被告製品A3のRate(3R)は31%以上,被告製品A4ないし11のRate(3R)は40%以上であるから,被告製品A3は構成要件1A及び1Bを充足し,被告製品A4ないし11は構成要件1A,2A,1B及び2Bを充足すると認められる。 ウ被告製品Bについて(ア) 被告製品BのRate(3R)被告製品B2及び6に係る甲B7結果及び乙A17結果は近接していること,被告製品B6に係る乙A17結果の回折プロファイルにおいて,菱面晶系黒鉛層(3R)の(101)面及び六方晶系黒鉛層(2H)の (101)面の各ピークが出現するとされる回折線の角度43ないし44°付近のピークは比較的明瞭であり,前記(1)ウ(イ)のとおり,PDXLの自動解析機能を使用しても適切な解が得られると考えられること,被告製品B2に係る乙A17結果の回折プロファイルにおける回折線の角度43ないし44°付近のピークは明瞭であるとはいい難いが,この ような場合に,PDXLの自動解析機能を使用して得られた解が常に誤っていることを認めるに足りる証拠はないことからすると,被告製品B2及び6のRate(3R)については,甲B7結果及び乙A17結果のいずれも採用することができるというべきである。 他方で,被告製品B1及び3ないし5に係る乙A17結果については,それぞれさほどばらつきはないものの,甲B7結果と大きく異なってお り,被告製品B1及び3ないし5に係る乙A17結果の各回折プロファイルにおける回折線の角度43ないし44°付近のピークは必ずしも明瞭ではない。そして,前記(1)ウ(イ)のとおり, く異なってお り,被告製品B1及び3ないし5に係る乙A17結果の各回折プロファイルにおける回折線の角度43ないし44°付近のピークは必ずしも明瞭ではない。そして,前記(1)ウ(イ)のとおり,PDXLは,ピークが不明瞭な場合,自動解析機能によっては不合理な解に収束したり,解が発散したりすることがあるため,このような場合,試料を考慮した解析条 件を手動で入力する必要があるところ,前記(1)オ(イ)及び(ウ)のとおり,原告は,自動解析機能によっては不合理な解に収束したり,解が発散したりする場合には適宜の解析条件を手動で入力することにより,PDXLを用いて解析を行い,甲B7結果を得たのに対し,被告西村は,PDXLの自動解析機能により,乙A17結果を得たものである。そうする と,被告製品B1及び3ないし5のRate(3R)については,PDXLの自動解析機能の問題点に適宜対処した上で取得された甲B7結果を採用することができ,そのような対処がうかがわれない乙A17結果は採用することができないというべきである。 (イ) 充足性 前記(ア)のとおり,被告製品B1及び3ないし5のRate(3R)は甲B7結果を採用すべきであるところ,これによれば,被告製品B1及び3ないし5のRate(3R)は40%以上であるから,被告製品B1及び3ないし5は構成要件1A,2A,1B及び2Bを充足すると認められる。 また,前記(ア)のとおり,被告製品B2のRate(3R)は甲B7結果及び乙A17結果のいずれも採用することができるところ,甲B7結果によればRate(3R)は40%以上であるが,乙A17結果によればいずれも31%以上ではあるものの,40%以上ではないものが含まれることからすると,被告製品B 用することができるところ,甲B7結果によればRate(3R)は40%以上であるが,乙A17結果によればいずれも31%以上ではあるものの,40%以上ではないものが含まれることからすると,被告製品B2のRate(3R)が40%以上であるとまでは認められないというのが相当である。したがって,前記前 提事実(6)イのとおり,被告製品B2は,構成要件1A,2A及び1Bを充足するが,構成要件2Bを充足するとは認められない。 さらに,前記前提事実(6)イのとおり,被告製品B6は,構成要件1A及び1Bを充足する。 (3) 構成要件1C及び2Cの充足性 ア構成要件1C及び2Cの解釈について(ア) 本件各発明の特許請求の範囲及び本件各明細書の各記載に基づく解釈についてまず,本件各発明の特許請求の範囲においては,「菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し」(構成要件1A及び2 A),「P3」を「菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度」と,「P4」を「六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度」としたときに,「前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)」の「Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100」「により定義される割合Rate (3R)が31%以上であることを特徴と」し(構成要件1B)又は「40%以上であることを特徴と」し(構成要件2B),「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」(構成要件1C及び2C)との記載がある。 これらの記載からは,構成要件1C及び2Cの「グラフェン前駆体と して用いられる黒鉛系炭素素材」について,菱面晶系黒鉛層(3R)及び六方晶系黒鉛層(2H)の双方を有するものであ 記載がある。 これらの記載からは,構成要件1C及び2Cの「グラフェン前駆体と して用いられる黒鉛系炭素素材」について,菱面晶系黒鉛層(3R)及び六方晶系黒鉛層(2H)の双方を有するものであり,かつ,Rate(3R)の値が31%以上であること又は40%以上であることを特徴とするものであると理解することができるが,それらに加えて何らかの限定があるものと理解することはできない。 次に,本件各明細書においては,「本発明は,このような問題点に着 目してなされたもので,天然黒鉛に所定の処理を施すことでグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散させることができる黒鉛系炭素素材をグラフェン前駆体と呼び,このグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材を提供することを目的とする。」(【0007】),「Rate(3R)が31%以上であることを特徴とするグラ フェン前駆体」又は「Rate(3R)が40%以上であることを特徴とするグラフェン前駆体」について,「この特徴によれば,層が剥がれ易い菱面晶系黒鉛層(3R)が多く含まれるため,前駆体として用いたときにグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度または高分散させることができるグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材が 得られる。」(【0008】及び【0009】),「このように,天然黒鉛を物理的力や熱によって処理することで,菱面体晶の比率を増加させることが可能であるがその上限は30%程度である。」(【0021】),「本願の発明者らは,天然黒鉛に下記に示すような所定の処理を施すことで,粉砕や超高温に加熱する処理では30%程度までしか増 えない菱面体晶(3R)の割合を,40%以上まで増加させることに成功した。黒鉛系炭素材料の菱面体晶(3R)の含有率がより多 理を施すことで,粉砕や超高温に加熱する処理では30%程度までしか増 えない菱面体晶(3R)の割合を,40%以上まで増加させることに成功した。黒鉛系炭素材料の菱面体晶(3R)の含有率がより多くなると,特に40%以上の含有率であると,この黒鉛系炭素素材を前駆体として用いることで,グラフェンに剥離しやすくなる傾向があり,簡単に高濃度,高分散度されたグラフェン溶液などが得られることが実験・研究の 結果として知見として得られた。これは,菱面体晶(3R)にせん断などの力が加わった際に,層間に歪みが生じ,つまり黒鉛の構造全体の歪みが大きくなり,ファンデルワールス力に依存せずに,剥離しやすくなるためであると考えられる。このため,本発明においては,天然黒鉛に所定の処理を施すことでグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散させることができる黒鉛系炭素素材をグラフェン前駆体と 呼び,以下,後述の実施例において,所定の処理を示すグラフェン前駆体の製造方法,グラフェン前駆体の結晶構造,グラフェン前駆体を用いたグラフェン分散液の順に説明する。」(【0024】),「このことから,Rate(3R)が40%以上の試料をグラフェン前駆体として用いてグラフェン分散液を作成すると,10層以下のグラフェンが5 0%以上生成される。すなわち,グラフェンが高濃度かつ高分散のグラフェン分散液を得ることができる。また,上述したように,この分散液に含まれる黒鉛系炭素素材(前駆体)はほとんど沈殿しないから,簡単に濃いグラフェン分散液を得ることができる。この方法により,濃縮することなしに,グラフェンの濃度が10%を超えるグラフェン分散液を 作成することもできた。なお,10層以下のグラフェンが分散する割合は50%未満と少ないものの,Rate(3 方法により,濃縮することなしに,グラフェンの濃度が10%を超えるグラフェン分散液を 作成することもできた。なお,10層以下のグラフェンが分散する割合は50%未満と少ないものの,Rate(3R)が25%以上40%未満のものは,10層以下のグラフェンが分散される割合が増えるという観点から好ましい。」(【0052】)との記載がある。 このような本件各明細書の記載に照らせば,構成要件1C及び2Cに ついて,次のように解釈するのが相当である。すなわち,「グラフェン前駆体」とは,一般的な用語であるとは認められないが,「前駆体」が一つ前の段階の物質を意味すると考えられることから,本件各明細書において定義されるように,「天然黒鉛に所定の処理を施すことでグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散させることができ る黒鉛系炭素素材」(【0007】)を意味すると理解することができる。そして,「Rate(3R)」が「31%以上」又は「40%以上」であるという特徴を備えることにより,「層が剥がれ易い菱面晶系黒鉛層(3R)が多く含まれるため,前駆体として用いたときにグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度または高分散させることができ」(【0008】及び【0009】),「用いられる」の「られる」は可 能を意味する助動詞であることからすると,「Rate(3R)」が「31%以上」又は「40%以上」であるという特徴を備えていれば(すなわち,構成要件1B又は2Bを充足すれば),「グラフェン前駆体」として用いることができる「黒鉛系炭素素材」ということができる。 したがって,「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」 (構成要件1C及び2C)とは,天然黒鉛に所定の処理を施すことでグラフェンが剥離しやす 素材」ということができる。 したがって,「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」 (構成要件1C及び2C)とは,天然黒鉛に所定の処理を施すことでグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散することができる黒鉛系炭素素材として用いることができる黒鉛系炭素素材を意味し,構成要件1B又は2Bを充足すれば,特段の事情(Rate(3R)が31%以上又は40%以上であるにもかかわらず,グラフェンが剥離し やすく,グラフェンを高濃度または高分散させることができない処置が施されるなどの事情)がない限り,「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」(構成要件1C及び2C)であると解するのが相当である。 (イ) 被告らの主張について a 被告らは,本件各発明は「天然黒鉛に所定の処理を施すことで,粉砕や超高温に加熱する処理では30%程度までしか増えない菱面体晶(3R)の割合を,40%以上まで増加させることに成功した」(【0024】)ものであり,ここにいう「所定の処理」とは物理的力による処理及び電波的力による処理を真空又は気中において施すこ とを意味するから(【0011】,【0016】及び【0027】ないし【0035】),「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」(構成要件1C及び2C)は天然黒鉛に物理的力による処理及び電波的力による処理を施すことにより生成されたものに限定して解釈すべきであると主張する。 しかし,本件各特許の特許請求の範囲において,「グラフェン前駆 体として用いられる黒鉛系炭素素材」の生成のために施す処理の内容を特定する記載はない。 また,本件各明細書には,「特許文献2に開示される方法で得られた黒鉛材料(単層のフレークが20%以上,2層又は3層のフレーク れる黒鉛系炭素素材」の生成のために施す処理の内容を特定する記載はない。 また,本件各明細書には,「特許文献2に開示される方法で得られた黒鉛材料(単層のフレークが20%以上,2層又は3層のフレークが40%以上,10層以上のフレークが40%未満)を溶媒に混ぜて も,溶媒に分散するグラフェンの分散量が少なく,希薄なグラフェン分散液しか得られな」いなどという課題(【0006】)を解決するために,本件各発明は,「天然黒鉛に所定の処理を施すことでグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散させることができる黒鉛系炭素素材をグラフェン前駆体と呼び,このグラフェン前駆 体として用いられる黒鉛系炭素素材を提供することを目的と」し(【0007】),構成要件1B及び2BのとおりにRate(3R)を定義した上で,「Rate(3R)が40%以上の試料をグラフェン前駆体として用いてグラフェン分散液を作成すると,10層以下のグラフェンが50%以上生成される。すなわち,グラフェンが高濃度 かつ高分散のグラフェン分散液を得ることができ」,「10層以下のグラフェンが分散する割合は50%未満と少ないものの,Rate(3R)が25%以上40%未満のものは,10層以下のグラフェンが分散される割合が増えるという観点から好ましい」(【0052】)との記載があることからすると,従前,上記課題を解決するものとし てRate(3R)が認識されていたものではなく,上記課題を解決するものを「グラフェン前駆体」と定義した上で,「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」として,Rate(3R)が31%以上又は40%以上であるものを提供することに本件各発明の技術的意義があるというべきであり,Rate(3R)を31%以上又は40%以上にするための る黒鉛系炭素素材」として,Rate(3R)が31%以上又は40%以上であるものを提供することに本件各発明の技術的意義があるというべきであり,Rate(3R)を31%以上又は40%以上にするための方法に技術的意義があるものとは認められ ない。 したがって,「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」を天然黒鉛に物理的力による処理及び電波的力による処理を施すことにより生成されたものに限定すべきであるとはいえないから,被告らの上記主張は理由がない。 b 被告らは,本件特許出願前から,Rate(3R)が40%以上の黒鉛系炭素素材は存在したから,本件各発明に新規性が認められるように解釈するためには,構成要件1C及び2Cは天然黒鉛に電波的力による処理と物理的力による処理を施すことにより生成されたものに限定して解釈すべきであると主張する。 しかし,前記(ア)のとおり,構成要件1C及び2Cを被告らの主張するとおりに限定して解釈すべき理由はないから,被告らの上記主張は理由がない。 c 被告らは,被告製品A3ないし6並びにB1及び2の原材料である土状黒鉛の原鉱石のRate(3R)は32.10ないし67.0 8%であり,本件各明細書には「天然黒鉛は,発掘された段階では菱面体晶が殆ど存在しない」(【0021】)との記載があることからすると,本件各発明に係る「黒鉛系炭素素材」の原料となる天然黒鉛には土状黒鉛の原鉱石は含まれておらず,上記「黒鉛系炭素素材」として土状黒鉛は想定されていないと主張する。 しかし,証拠(乙A9,104)によれば,被告伊藤は,平成31年4月25日及び令和元年5月20日に,SmartLabを用いて被告製品A3ないし6の原材料となる原鉱石を分析し,得られた回折プロ しかし,証拠(乙A9,104)によれば,被告伊藤は,平成31年4月25日及び令和元年5月20日に,SmartLabを用いて被告製品A3ないし6の原材料となる原鉱石を分析し,得られた回折プロファイルをPDXLの自動解析機能により解析して菱面晶系黒鉛層の(101)面及び六方晶系黒鉛層の(101)面の各ピーク強度を計算し,これを基にRate(3R)を算出したところ,4回の測 定のうち1回は菱面晶系黒鉛層の(101)面のピークと六方晶系黒鉛層の(101)面のピークを分離することができず,他の3回の測定において,32.10%,47.04%及び67.08%の結果を得たことが認められる。これによれば,同じ原鉱石であるにもかかわらず,算出されたRate(3R)にかなりのばらつきがあり,菱面 晶系黒鉛層の(101)面のピークと六方晶系黒鉛層の(101)面のピークを分離することができなかったこともあった上,上記原鉱石の回折プロファイルにおける菱面晶系黒鉛層(3R)の(101)面及び六方晶系黒鉛層(2H)の(101)面の各ピークが出現するとされる回折線の角度43ないし44°付近のピークは必ずしも明瞭で はないといえる。また,前記(1)ウ(イ)のとおり,PDXLは,ピークが不明瞭な場合,自動解析機能によっては不合理な解に収束したり,解が発散したりすることがある。そうすると,上記原鉱石に係るRate(3R)は直ちに採用することができないというべきである。 したがって,被告らの上記主張は前提を欠くといわざるを得ないか ら理由がない。 d 被告らは,「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」について,天然黒鉛に所定の処理を施すことでグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散することができる黒鉛系 由がない。 d 被告らは,「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」について,天然黒鉛に所定の処理を施すことでグラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散することができる黒鉛系炭素素材として用いることができる黒鉛系炭素素材と解するとすると,構成 要件1B及び2Bを充足するときは構成要件1C及び2Cも充足することとなり,発明を特定するための機能がほぼないに等しくなるから妥当でなく,また,グラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散することができるという判断基準は必ずしも明らかではないと主張する。 しかし,構成要件1B及び2Bを充足するときは構成要件1C及び 2Cも充足する結果となったとしても,そのことから直ちに前記(ア)の構成要件1C及び2Cに係る解釈が不当であるとはいえない。 また,前記(ア)のとおり,構成要件1C及び2Cは,グラフェンの剥離しやすさや濃度,分散性について基準を定めたものではなく,構成要件1A,2A,1B及び2Bを充足するものは,基本的に,グラフ ェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散することができるという特徴を持つと判断できるから,その判断基準が明確でないとはいえない。 したがって,被告らの上記主張は理由がない。 e 被告らは,被告製品A3ないし6並びにB1及び2は,一般的に結 晶性が低い土状黒鉛であり,これらの回折プロファイルにおいては菱面晶系黒鉛層に帰属されるピークがほとんど観察されないことからすると,グラフェン前駆体という用途に適さないと主張する。 しかし,前記(ア)のとおり,構成要件1B又は2Bを充足すれば,特段の事情がない限り,「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭 素素材」(構成要件1C及び2C)ということができるのであり, しかし,前記(ア)のとおり,構成要件1B又は2Bを充足すれば,特段の事情がない限り,「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭 素素材」(構成要件1C及び2C)ということができるのであり,被告製品A3ないし6並びにB1及び2について,Rate(3R)は31%以上又は40%以上であるものの,グラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散させることができないことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告らの上記主張は理由がない。 f 被告らは,土状黒鉛は層間のファンデルワールス相互作用力が全体として小さくなるため,はがれやすいという特徴を有し,膨張化黒鉛は酸化黒鉛を含む黒鉛層間化合物を出発原料としているため,グラフェンシートに剥離しやすい性質を受け継いでいることからすると,Rate(3R)が31%以上又は40%以上であることとグラフェン が剥離しやすいこととの間に因果関係は認められないと主張する。 しかし,被告らが指摘するような上記各性質を土状黒鉛及び膨張化黒鉛が有していたとしても,構成要件1B又は2Bを充足すれば,特段の事情がない限り,「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」(構成要件1C及び2C)という前記(ア)のとおりの関係を否 定することにはならず,土状黒鉛及び膨張化黒鉛において,Rate(3R)が31%以上又は40%以上であることが,グラフェンが剥離しやすく,グラフェンを高濃度又は高分散させることに寄与していないことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告らの上記主張は理由がない。 イ被告製品Aについて前記(2)イ(イ)のとおり,被告製品A1ないし3は構成要件1Bを充足し,これらの製品について,グラフェン前駆体として用いることができない特 ない。 イ被告製品Aについて前記(2)イ(イ)のとおり,被告製品A1ないし3は構成要件1Bを充足し,これらの製品について,グラフェン前駆体として用いることができない特段の事情は認められないので,構成要件1Cを充足すると認めるのが相当である。 また,前記(2)イ(イ)のとおり,被告製品A4ないし11は構成要件1B及び2Bを充足し,これらの製品について,グラフェン前駆体として用いることができない特段の事情は認められないので,構成要件1C及び2Cを充足すると認めるのが相当である。 ウ被告製品Bについて 前記(2)ウ(イ)のとおり,被告製品B2及び6は構成要件1Bを充足し,これの製品について,グラフェン前駆体として用いることができない特段の事情は認められないので,構成要件1Cを充足すると認めるのが相当であるが,被告製品B2は構成要件2Bを充足しないので,構成要件2Cを充足しない。 また,前記(2)ウ(イ)のとおり,被告製品B1及び3ないし5は構成要件 1B及び2Bを充足し,これらの製品について,グラフェン前駆体として用いることができない特段の事情は認められないので,構成要件1C及び2Cを充足すると認めるのが相当である。 (4) 小括以上によれば,被告製品A1ないし3並びにB2及び6は,構成要件1A ないし1Cを充足するから,本件発明1の技術的範囲に属すると認められ,被告製品A4ないし11並びにB1及び3ないし5は,構成要件1Aないし1C及び2Aないし2Cを充足するから,本件各発明の技術的範囲に属すると認められるが,被告製品B2は,構成要件2B及び2Cを充足しないから,本件発明2の技術的範囲に属するとは認められない。 C及び2Aないし2Cを充足するから,本件各発明の技術的範囲に属すると認められるが,被告製品B2は,構成要件2B及び2Cを充足しないから,本件発明2の技術的範囲に属するとは認められない。 3 争点2-6(公然実施に基づく新規性欠如)について(1) 認定事実証拠(甲A3,42,43,甲B3,4,乙A8の1の1,乙A8の2の1,乙A8の3の1,乙A8の4の1,乙A8の5の1,乙A8の6の1,乙A8の7の1,乙A9,17ないし19,38,39,42ないし44, 48,51ないし64,66ないし69,104,120,121,乙B12の1の1,2,乙B12の2,証人Z)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 ア被告伊藤について(ア) 被告製品Aの規格,製造工程等 a 被告伊藤は,被告製品A1については平成18年7月16日に,被告製品A2及び4ないし6については平成17年1月6日に,被告製品A3については平成21年6月1日に,分級,梱包方法,最終検査における項目(固定炭素分,灰分,揮発分,水分及び粒度),規格値及び試験方法,工程の流れ等を定めた製品別製造標準をそれぞれ作成した。上記の各製品別製造標準のうち,被告製品A2ないし6に係る ものは,本件特許出願当時から現在に至るまで,改訂されたことはなく,被告製品A1に係るものは,平成29年7月6日,粒度の規格値について●(省略)●とする改訂がされたが,本件特許出願当時から現在に至るまで,そのほかの点について改訂がされたことはなかった。 (乙A38,48) b 被告伊藤は,平成17年6月3日,被告製品A7ないし11のそれぞれについて,検査の項目(灰分,揮発分及び粒度)及び規格値等を定めた されたことはなかった。 (乙A38,48) b 被告伊藤は,平成17年6月3日,被告製品A7ないし11のそれぞれについて,検査の項目(灰分,揮発分及び粒度)及び規格値等を定めた黒鉛原料受入検査詳細を作成した。上記黒鉛原料受入検査詳細は,本件特許出願当時から現在に至るまで,改訂されたことはなかった。(乙A39) c 被告伊藤は,前記aの製品別製造標準及び前記bの黒鉛原料受入検査詳細作成以降現在に至るまで,顧客からの特段の要望がない限り,これらに定められた基準に従った被告製品Aを製造販売してきた(甲A3,乙A8の1の1,乙A8の2の1,乙A8の3の1,乙A8の4の1,乙A8の5の1,乙A8の6の1,乙A8の7の1,弁論の 全趣旨)。 (イ) 被告製品A9及び10のサンプルのRate(3R)被告伊藤は,平成31年4月15日から令和元年5月20日までの間に,同被告において保管していた被告製品A9及び10の各サンプルをSmartLabを用いて分析し,これにより得られた回折プロファイ ルをPDXLの自動解析機能により解析して,菱面晶系黒鉛層の(101)面及び六方晶系黒鉛層の(101)面の各ピーク強度を計算し,これを基にRate(3R)を算出したところ,サンプル結果①(別紙3Rate(被告伊藤)の番号4の列)を得た(乙A9,104)。 イ被告西村について(ア) 被告製品B1及び2の規格,製造工程等 a 被告西村は,平成19年3月30日,被告製品B1及び2の原料投入から梱包に至るまでの各工程について,使用する設備,管理特性(管理項目,品質特性及び基準・規格),管理方式等を定めたQC工程表を作成した。また,被告西村は,本件特許出願前に,被告 1及び2の原料投入から梱包に至るまでの各工程について,使用する設備,管理特性(管理項目,品質特性及び基準・規格),管理方式等を定めたQC工程表を作成した。また,被告西村は,本件特許出願前に,被告製品B1及び2について,全水分,揮発分,灰分,固定炭素及び粒度分布の 規格値を定めた。上記QC工程表及び規格値の定めは,本件特許出願当時から現在に至るまで,改訂されたことはなかった。(乙A42ないし44,51,乙B12の1の2,弁論の全趣旨)b 被告西村は,前記a のQC工程表を作成し,規格値を定めた以降現在に至るまで,顧客からの特段の要望がない限り,これらに定められ た基準に従った被告製品B1及び2を製造販売してきた(甲B3,4,乙A42ないし44,乙B12の1の1,2,乙B12の2)。 (イ) 被告製品B2のサンプルのRate(3R)被告西村は,令和元年6月5日に,同被告において保管していた被告製品B2のサンプルをSmartLabを用いて分析し,それによって 得られた回折プロファイルを,PDXLの自動解析機能を用いて解析して,菱面晶系黒鉛層の(101)面及び六方晶系黒鉛層の(101)面の各ピーク強度を計算し,これを基にRate(3R)を算出したところ,サンプル結果②(別紙4Rate(被告西村)の番号3の列)を得た(乙A17,104)。 ウ日本黒鉛らについて(ア) 日本黒鉛各製品の規格,製造工程等a 日本黒鉛工業は,日本黒鉛製品1,2,4及び5については平成18年1月5日に,日本黒鉛製品3については平成26年2月14日に,固定炭素分,灰分,揮発分,水分等の規格値や検査方法等を定めた文書を作成した。また,日本黒鉛工業は,平成27年1月,レーザー回 平成18年1月5日に,日本黒鉛製品3については平成26年2月14日に,固定炭素分,灰分,揮発分,水分等の規格値や検査方法等を定めた文書を作成した。また,日本黒鉛工業は,平成27年1月,レーザー回 折粒度分布測定装置を変更したことに伴い,日本黒鉛製品1に係る10%累積径,50%累積径及び平均体積径並びに日本黒鉛製品4に係る平均体積径の規格値を変更し,そのほかに,新たに平均体積径の規格値を定めたり,見掛密度の規格値の範囲を狭くしたりしたことがあったが,そのほかの規格値については,本件特許出願当時から現在に 至るまで,改訂されたことはなかった。(乙A57ないし62)b 日本黒鉛工業は,平成18年6月15日,日本黒鉛製品1,2,4及び5の乾燥から出荷に至るまでの各工程について,使用設備,材料名,設備条件,品質管理項目等を定めた生産工程表を作成した。上記生産工程表は,本件特許出願当時から現在に至るまで,改訂されたこ とはなかった。(乙A120,121,証人Z)c 日本黒鉛らは,前記aの文書及び前記bの生産工程表作成以降現在に至るまで,顧客からの特段の要望がない限り,これらに定められた基準に従った日本黒鉛各製品を製造販売してきた(乙A52ないし56,弁論の全趣旨)。 (イ) 日本黒鉛各製品のRate(3R)a 原告は,SmartLabを用いて日本黒鉛各製品を分析し,それによって得られた回折プロファイルを,PDXLを用いて,自動解析機能によっては不合理な解に収束したり解が発散したりする場合には適宜の解析条件を手動で入力することによって解析して,菱面晶系黒 鉛層の(101)面及び六方晶系黒鉛層の(101)面の各ピーク強度を計算し,これを基にRate(3R)を算出したと する場合には適宜の解析条件を手動で入力することによって解析して,菱面晶系黒 鉛層の(101)面及び六方晶系黒鉛層の(101)面の各ピーク強度を計算し,これを基にRate(3R)を算出したところ,日本黒鉛製品結果(別紙5Rate(日本黒鉛)の番号1の列)を得た(弁論の全趣旨)。 b 日本黒鉛工業は,令和元年5月28日に,SmartLabを用いて日本黒鉛各製品(ただし,日本黒鉛製品5については,製品名をS P-5030-αとするものであった。)を分析し,それによって得られた回折プロファイルを,PDXLの自動解析機能を用いて解析して,菱面晶系黒鉛層の(101)面及び六方晶系黒鉛層の(101)面の各ピーク強度を計算し,これを基にRate(3R)を算出したところ,乙A18結果(別紙5Rate(日本黒鉛)の番号2の列) を得た。また,日本黒鉛工業は,保管していた日本黒鉛製品1,2,4及び5(ただし,日本黒鉛製品5については,製品名をSP-5030-αとするものであった。)の各サンプルを,上記と同様に分析し,解析して,Rate(3R)を算出したところ,サンプル結果③(別紙5Rate(日本黒鉛)の番号3の列)を得た。(乙A18, 104)。 c 日本黒鉛製品1及び2は土状黒鉛であり,日本黒鉛製品3及び4は鱗状黒鉛であり,日本黒鉛製品5は人造黒鉛である(甲A42,乙A52,55,59,証人Z)。 エ中越黒鉛について (ア) 中越黒鉛各製品の規格,製造工程等a 中越黒鉛は,中越黒鉛製品1については平成23年2月28日に,中越黒鉛製品2及び3については平成20年12月15日に,各製品の原料検査から秤量包装に至るまでの工程について,使用する設備,管理項目,基準値,検査 中越黒鉛製品1については平成23年2月28日に,中越黒鉛製品2及び3については平成20年12月15日に,各製品の原料検査から秤量包装に至るまでの工程について,使用する設備,管理項目,基準値,検査方法,頻度等を定めたQC工程図を作成し, 固定炭素,灰分,揮発分,水分及び粒度(-500mesh)の規格値を定めた。上記QC工程図及び規格値は,本件特許出願当時から現在に至るまで,改訂されたことはなかった。(乙A67ないし69)b 中越黒鉛は,前記aのQC工程図作成以降現在に至るまで,顧客からの特段の要望がない限り,これに定められた基準に従った中越黒鉛各製品を製造販売してきた(乙A63,64,66)。 (イ) 中越黒鉛各製品のRate(3R)a 原告は,SmartLabを用いて中越黒鉛各製品を分析し,それによって得られた回折プロファイルを,PDXLを用いて,自動解析機能によっては不合理な解に収束したり解が発散したりする場合には適宜の解析条件を手動で入力することによって解析して,菱面晶系黒 鉛層の(101)面及び六方晶系黒鉛層の(101)面の各ピーク強度を計算し,これを基にRate(3R)を算出したところ,中越黒鉛製品結果(別紙6Rate(中越黒鉛)の番号1の列)を得た(弁論の全趣旨)。 b 中越黒鉛は,令和元年6月7日に,SmartLabを用いて中越 黒鉛各製品を分析し,それによって得られた回折プロファイルを,PDXLの自動解析機能を用いて解析して,菱面晶系黒鉛層の(101)面及び六方晶系黒鉛層の(101)面の各ピーク強度を計算し,これを基にRate(3R)を算出したところ,乙A19結果(別紙6Rate(中越黒鉛)の番号2の列)を得た(乙A19,104)。 び六方晶系黒鉛層の(101)面の各ピーク強度を計算し,これを基にRate(3R)を算出したところ,乙A19結果(別紙6Rate(中越黒鉛)の番号2の列)を得た(乙A19,104)。 c 中越黒鉛各製品は,いずれも土状黒鉛である(甲A43)。 (2) 公然実施該当性ア判断基準について法29条1項2号にいう「公然実施」とは,発明の内容を不特定多数の者が知り得る状況でその発明が実施されることをいい,本件各発明のよう な物の発明の場合には,商品が不特定多数の者に販売され,かつ,当業者がその商品を外部から観察しただけで発明の内容を知り得る場合はもちろん,外部からそれを知ることができなくても,当業者がその商品を通常の方法で分解,分析することによって知ることができる場合も公然実施となると解するのが相当である。 イ被告伊藤について (ア) サンプルのRate(3R)a 前記(1)ア(イ)のとおり,被告伊藤が保管していた被告製品A9及び10の各サンプルのRate(3R)は,サンプル結果①のとおりであるところ,証拠(乙A8,40,41)及び弁論の全趣旨によれば,上記各サンプルは,「EC500」及び「Lot 120202」と 記載された袋並びに「EC300」及び「Lot 130930」と記載された袋から取り出されたものであること,被告伊藤においては,黒鉛製品のロット番号を,製造開始日を6桁の数字で表示していたことが認められることからすると,上記各サンプルは,平成24年2月2日に製造された被告製品A9のサンプル及び平成25年9月30日 に製造された被告製品A10のサンプルであると認めるのが相当である。 b 被告製品A9に係るサンプル結果①につ 2月2日に製造された被告製品A9のサンプル及び平成25年9月30日 に製造された被告製品A10のサンプルであると認めるのが相当である。 b 被告製品A9に係るサンプル結果①については,同じ製品であるにもかかわらず,算出されたRate(3R)にかなりのばらつきがあること,サンプル結果①の回折プロファイルにおいて,菱面晶系黒鉛 層(3R)の(101)面及び六方晶系黒鉛層(2H)の(101)面の各ピークが出現するとされる回折線の角度43ないし44°付近のピークは必ずしも明瞭ではないこと,前記2(1)ウ(イ)のとおり,PDXLは,ピークが不明瞭な場合,自動解析機能によっては不合理な解に収束したり,解が発散したりすることがあり,このような場合, 試料を考慮した解析条件を手動で入力する必要があることからすると,被告製品A9のサンプルのRate(3R)について,サンプル結果①は採用することができないというべきである。 他方で,被告製品A10に係るサンプル結果①については,複数回算出したRate(3R)にばらつきがほとんどなく,回折プロファイルにおける回折線の角度43ないし44°付近のピークは必ずしも 明瞭ではないものの,このような場合に,PDXLの自動解析機能を使用して得られた解が常に誤っていることを認めるに足りる証拠はないことからすると,被告製品A10のサンプルのRate(3R)について,サンプル結果①を一応採用することができるというべきである。 (イ) 被告伊藤が本件特許出願前から本件各発明の技術的範囲に属する被告製品Aを製造販売していたか本件各明細書には,「真空または気中において天然黒鉛材料にマイクロ波,ミリ波,プラズマ,電磁誘導加熱(IH),磁場などの電 本件各発明の技術的範囲に属する被告製品Aを製造販売していたか本件各明細書には,「真空または気中において天然黒鉛材料にマイクロ波,ミリ波,プラズマ,電磁誘導加熱(IH),磁場などの電波的力による処理とボールミル,ジェットミル,遠心力,超臨界などの物理的 力による処理とを併用することで,菱面晶系黒鉛層(3R)がより多く含まれる黒鉛系炭素素材が得られる。」(【0011】)との記載があり,証拠(甲A4,乙A7,16,24,47,122)によれば,黒鉛を粉砕したり,黒鉛に熱を加えたりすることによって,当該黒鉛中の結晶のうち菱面晶系黒鉛層が増加することが認められるところ,これら の要素のほとんどは,黒鉛製品の製造工程及び製造された製品が満たすべき規格に関わるといえるが,具体的に,どのような条件の下,どのような操作をすることにより,単に菱面晶系黒鉛層が増加するだけでなく,六方晶系黒鉛層との総和における菱面晶系黒鉛層の割合であるRate(3R)がどの程度変動するかは,本件全証拠によっても確定すること ができない。 そして,前記(1)ア(ア)のとおり,被告伊藤は,本件特許出願前から,被告製品Aの各名称を付した黒鉛製品を製造販売しており,被告製品A2ないし11については,本件特許出願前から現在に至るまで,その製造工程及び出荷の基準となる規格値に変更はなく,被告製品A1についても,粒度の規格値が●(省略)●と改訂されたが,従前の規格値を限 定した内容になっており,そのほかの変更はない。 また,前記2(1)エ(ア)のとおり,原告が甲A5結果を得た被告製品Aは,平成30年6ないし8月頃に被告伊藤が販売していたものであり,平成26年9月9日の本件特許出願(前記前提事実(2))からそれほど長い年 2(1)エ(ア)のとおり,原告が甲A5結果を得た被告製品Aは,平成30年6ないし8月頃に被告伊藤が販売していたものであり,平成26年9月9日の本件特許出願(前記前提事実(2))からそれほど長い年月が経過しているものとはいえない。 以上によれば,被告伊藤は,本件特許出願前から現在に至るまで,被告製品Aの各名称を付した黒鉛製品を製造販売しており,この間,菱面晶系黒鉛層の増減に影響を与えると考えられるこれらの製品の製造工程及び規格値にほぼ変更はないことから,この間に製造販売された被告製品Aは,同じ製造工程を経て,同じ規格を満たすものであると認められ る。そして,他にこれらの製品に対してRate(3R)の増減に影響を及ぼす事情が存したとは認められず,前記2のとおり,現時点において,被告製品A1ないし3は本件発明1の,被告製品A4ないし11は本件各発明の各技術的範囲に属する。これらの事情に照らせば,被告伊藤は,本件特許出願前から,被告製品A1ないし3については本件発明 1の,被告製品A4ないし11については本件各発明の各技術的範囲に属する被告製品Aを製造販売していたと認めるのが相当である。 なお,被告製品A10に係るサンプル結果①は,乙A9結果と近接している。前記2(2)イ(ア)のとおり,乙A9結果は,被告製品A10のRate(3R)を示すものとしては採用することはできないが,乙A9 結果,サンプル結果①のいずれも,適宜の解析条件を手動で入力することなく,PDXLの自動解析機能により得たものであることからすると,これらのRate(3R)が近接していることは,被告伊藤が本件特許出願前から本件各発明の技術的範囲に属する被告製品A10を製造販売していたという上記認定と矛盾しないといえる。 とからすると,これらのRate(3R)が近接していることは,被告伊藤が本件特許出願前から本件各発明の技術的範囲に属する被告製品A10を製造販売していたという上記認定と矛盾しないといえる。 ウ被告西村について (ア) サンプルのRate(3R)a 前記(1)イ(イ)のとおり,被告西村が保管していた被告製品B2のサンプルのRate(3R)は,サンプル結果②のとおりである。 被告らは,上記サンプルは,被告西村が平成20年に販売していた被告製品B2のサンプルであると主張するところ,前記(1)イ(ア)のと おり,被告西村は,遅くとも平成19年3月30日には,被告製品B2を製造販売しており,サンプル結果②の回折プロファイルの形状と被告製品B2の甲B7結果及び乙A17結果の各回折プロファイルの形状は似通っていることからすると,上記サンプルは,被告西村が平成20年に販売していた被告製品B2のサンプルであると認めるのが 相当である。 b そして,サンプル結果②について,複数回算出したRate(3R)にばらつきはほとんどなく,サンプル結果②の回折プロファイルにおいて,菱面晶系黒鉛層(3R)の(101)面及び六方晶系黒鉛層(2H)の(101)面の各ピークが出現するとされる回折線の角度 43ないし44°付近のピークは必ずしも明瞭ではないものの,このような場合に,PDXLの自動解析機能を使用して得られた解が常に誤っていることを認めるに足りる証拠はないことからすると,被告製品B2のサンプルのRate(3R)について,サンプル結果②を一応採用することができるというべきである。 (イ) 被告西村が本件特許出願前から本件各発明の技術的範囲に属する被告製品Bを製造販売 プルのRate(3R)について,サンプル結果②を一応採用することができるというべきである。 (イ) 被告西村が本件特許出願前から本件各発明の技術的範囲に属する被告製品Bを製造販売していたか前記イ(イ)のとおり,菱面晶系黒鉛層の増加に影響を及ぼすと考えられる要素のほとんどは,黒鉛製品の製造工程及び製造された製品が満たすべき規格に関わるといえるが,具体的に,どのような条件の下,どのような操作をすることにより,単に菱面晶系黒鉛層が増加するだけでなく, 六方晶系黒鉛層との総和における菱面晶系黒鉛層の割合であるRate(3R)がどの程度変動するかは,本件訴訟に現れた全証拠によっても確定することができない。 そして,前記(1)イ(ア)のとおり,被告西村は,本件特許出願前から,被告製品B1及び2の各名称を付した黒鉛製品を製造販売しており,本 件特許出願前から現在に至るまで,その製造工程及び出荷の基準となる規格値に変更はない。 また,前記2(1)オ(ア)のとおり,原告が甲B7結果を得た被告製品Bは,平成30年11月ないし平成31年3月頃に被告西村が販売していたものであり,平成26年9月9日の本件特許出願(前記前提事実(2)) からそれほど長い年月が経過しているものとはいえない。 以上によれば,被告西村は,本件特許出願前から現在に至るまで,被告製品B1及び2の各名称を付した黒鉛製品を製造販売しており,この間,菱面晶系黒鉛層の増減に影響を与えると考えられるこれらの製品の製造工程及び規格値に変更はないことから,この間に製造販売された被 告製品B1及び2は,同じ製造工程を経て,同じ規格を満たすものであると認められる。そして,他にこれらの製品に対してRate(3R) 工程及び規格値に変更はないことから,この間に製造販売された被 告製品B1及び2は,同じ製造工程を経て,同じ規格を満たすものであると認められる。そして,他にこれらの製品に対してRate(3R)の増減に影響を及ぼす事情が存したとは認められず,前記2のとおり,現時点において,被告製品B1は本件各発明の,被告製品B2は本件発明1の各技術的範囲に属する。これらの事情に照らせば,被告西村は, 本件特許出願前から,上記のような被告製品B1及び2を製造販売していたと認めるのが相当である。 なお,被告製品B2に係るサンプル結果②は,乙A17結果と近接するところ,前記イ(イ)と同様に,これらのRate(3R)が近接していることは,被告西村が本件特許出願前から本件発明1の技術的範囲に属する被告製品B2を製造販売していたという上記認定と矛盾しないとい える。 エ日本黒鉛らについて(ア) 日本黒鉛各製品が本件各発明の技術的範囲に属するかa 日本黒鉛製品2,4及び5に係る日本黒鉛製品結果及び乙A18結果は近接していること,日本黒鉛製品4及び5に係る乙A18結果の 回折プロファイルにおいて,菱面晶系黒鉛層(3R)の(101)面及び六方晶系黒鉛層(2H)の(101)面の各ピークが出現するとされる回折線の角度43ないし44°付近のピークは比較的明瞭であり,前記2(1)ウ(イ)のとおり,PDXLの自動解析機能を使用しても適切な解が得られると考えられること,日本黒鉛製品2に係る乙A1 8結果の回折プロファイルにおける回折線の角度43ないし44°付近のピークは明瞭とはいい難いが,このような場合に,PDXLの自動解析機能を使用して得られた解が常に誤っていることを認めるに足りる証拠はないことからする ァイルにおける回折線の角度43ないし44°付近のピークは明瞭とはいい難いが,このような場合に,PDXLの自動解析機能を使用して得られた解が常に誤っていることを認めるに足りる証拠はないことからすると,日本黒鉛製品2,4及び5のRate(3R)については,日本黒鉛製品結果及び乙A18結果のいずれ も採用することができるというべきである。 他方で,日本黒鉛製品1及び3に係る乙A18結果については,同じ製品であるにもかかわらず,算出されたRate(3R)にかなりのばらつきがあること,日本黒鉛製品1及び3に係る乙A18結果の各回折プロファイルにおける回折線の角度43ないし44°付近のピ ークは必ずしも明瞭ではないこと,前記2(1)ウ(イ)のとおり,PDXLは,ピークが不明瞭な場合,自動解析機能によっては不合理な解に収束したり,解が発散したりすることがあり,このような場合,試料を考慮した解析条件を手動で入力する必要があること,前記(1)ウ(イ)aのとおり,原告は,自動解析機能によっては不合理な解に収束したり,解が発散したりする場合には適宜の解析条件を手動で入力するこ とにより,PDXLを用いて解析を行い,日本黒鉛製品結果を得たことからすると,日本黒鉛製品1及び3のRate(3R)については,日本黒鉛製品結果を採用することができ,乙A18結果は採用することができないというべきである。 b 日本黒鉛製品結果及び乙A18結果によれば,日本黒鉛製品2は本 件各発明の構成要件1B及び2Bを,日本黒鉛製品4及び5は構成要件1Bをそれぞれ充足し,日本黒鉛製品結果によれば,日本黒鉛製品1及び3は構成要件1B及び2Bを充足することとなり,前記2の本件各発明の解釈を前提とすると,日本黒鉛製品1ないし3は本件各発 構成要件1Bをそれぞれ充足し,日本黒鉛製品結果によれば,日本黒鉛製品1及び3は構成要件1B及び2Bを充足することとなり,前記2の本件各発明の解釈を前提とすると,日本黒鉛製品1ないし3は本件各発明の,日本黒鉛製品4及び5は本件発明1の各技術的範囲に属すると 認めるのが相当である。 (イ) サンプルのRate(3R)a 次に,前記(1)ウ(イ)bのとおり,日本黒鉛工業が保管していた日本黒鉛製品1,2,4及び5の各サンプルのRate(3R)は,サンプル結果③のとおりである。 そして,日本黒鉛工業の証人Zは,日本黒鉛工業においては,平成13年10月頃からおおむね10年に1回,製品のサンプルを保管するようになり,平成20年6月12日に採取した日本黒鉛製品1のサンプル,平成13年10月5日に採取した日本黒鉛製品2のサンプル,平成20年7月30日に採取した日本黒鉛製品4のサンプル及び同年 12月16日に採取した日本黒鉛製品5のサンプルを保管している旨証言し,Z証人作成の陳述書(乙A120)にも同旨の記載があるところ,証拠(乙A86,94,95)による裏付けがあることからすると,Z証人の上記証言は採用することができるというべきである。 したがって,上記日本黒鉛製品1,2,4及び5の各サンプルは上記各日に採取したものと認めるのが相当である。 b 日本黒鉛製品1に係るサンプル結果③については,同じ製品であるにもかかわらず,算出されたRate(3R)にかなりのばらつきがあること,サンプル結果③の回折プロファイルにおいて,菱面晶系黒鉛層(3R)の(101)面及び六方晶系黒鉛層(2H)の(101)面の各ピークが出現するとされる回折線の角度43ないし44°付近 ること,サンプル結果③の回折プロファイルにおいて,菱面晶系黒鉛層(3R)の(101)面及び六方晶系黒鉛層(2H)の(101)面の各ピークが出現するとされる回折線の角度43ないし44°付近 のピークは必ずしも明瞭ではないこと,前記2(1)ウ(イ)のとおり,PDXLは,ピークが不明瞭な場合,自動解析機能によっては不合理な解に収束したり,解が発散したりすることがあり,このような場合,試料を考慮した解析条件を手動で入力する必要があることからすると,日本黒鉛製品1のサンプルのRate(3R)について,サンプル結 果③は採用することができないというべきである。 他方で,日本黒鉛製品4及び5の各サンプルに係るサンプル結果③については,複数回算出したRate(3R)にばらつきはほとんどなく,サンプル結果③の回折プロファイルにおける回折線の角度43ないし44°付近のピークは比較的明瞭であり,前記2(1)ウ(イ)のと おり,PDXLの自動解析機能を使用しても適切な解が得られると考えられることからすると,日本黒鉛製品4及び5の各サンプルのRate(3R)について,サンプル結果③を採用することができるというべきである。 日本黒鉛製品2のサンプルに係るサンプル結果③については,複数 回算出したRate(3R)にばらつきはほとんどないこと,そして,サンプル結果③の回折プロファイルにおける回折線の角度43ないし44°付近のピークは必ずしも明瞭ではないものの,本件証拠上,このような場合に,PDXLの自動解析機能を使用して得られた解が常に誤っているとまでは認められないことからすると,日本黒鉛製品2のサンプルのRate(3R)について,サンプル結果③を一応採用 することができるというべきである。 して得られた解が常に誤っているとまでは認められないことからすると,日本黒鉛製品2のサンプルのRate(3R)について,サンプル結果③を一応採用 することができるというべきである。 (ウ) 日本黒鉛らが本件特許出願前から本件各発明の技術的範囲に属する日本黒鉛各製品を製造販売していたか前記イ(イ)のとおり,菱面晶系黒鉛層の増加に影響を及ぼすと考えられる要素のほとんどは,黒鉛製品の製造工程及び製造された製品が満たす べき規格に関わるといえるが,具体的に,どのような条件の下,どのような操作をすることにより,単に菱面晶系黒鉛層が増加するだけでなく,六方晶系黒鉛層との総和における菱面晶系黒鉛層の割合であるRate(3R)がどの程度変動するかは,本件訴訟に現れた全証拠によっても確定することができない。 そして,前記(1)ウ(ア)のとおり,日本黒鉛工業は,本件特許出願前から日本黒鉛各製品を製造しており,本件特許出願前から現在に至るまで,その製造工程及び出荷の基準となる規格値に大きな変更はない。 また,前記前提事実(2)及び(7)アのとおり,原告が日本黒鉛製品結果をもって日本黒鉛らに対して提訴したのは平成31年3月であり,平成 26年9月9日の本件特許出願からそれほど長い年月が経過しているものとはいえない。 以上によれば,日本黒鉛らは,本件特許出願前から現在に至るまで,日本黒鉛各製品の各名称を付した黒鉛製品を製造販売しており,この間,菱面晶系黒鉛層の増減に影響を与えると考えられるこれらの製品の製造 工程及び規格値に変更はないことから,この間に製造販売された日本黒鉛各製品は,同じ製造工程を経て,同じ規格を満たすものであると認められる。そして,他にこれらの製品 えられるこれらの製品の製造 工程及び規格値に変更はないことから,この間に製造販売された日本黒鉛各製品は,同じ製造工程を経て,同じ規格を満たすものであると認められる。そして,他にこれらの製品に対してRate(3R)の増減に影響を及ぼす事情が存したとは認められず,前記(ア)のとおり,現時点において,日本黒鉛製品1ないし3は本件各発明の,日本黒鉛製品4及び5は本件発明1の各技術的範囲に属する。これらの事情に照らせば,日 本黒鉛らは,本件特許出願前から,このような日本黒鉛各製品を製造販売していたと認めるのが相当であり,前記(イ)bのとおり,本件特許出願前の平成20年に採取した日本黒鉛製品4及び5のRate(3R)が31%以上であることも,この結論を裏付けるというべきである。 なお,日本黒鉛製品2に係るサンプル結果③は,乙A18結果と相違 しているが,日本黒鉛製品2は土状黒鉛であり,菱面晶系黒鉛層(3R)の(101)面及び六方晶系黒鉛層(2H)の(101)面の各ピークが出現するとされる回折線の角度43ないし44°付近のピークが必ずしも明瞭ではなく,前記2(1)ウ(イ)のとおり,PDXLは,ピークが不明瞭な場合,自動解析機能によっては不合理な解に収束したり,解が発 散したりすることがあり,同じく土状黒鉛である日本黒鉛製品1に係るサンプル結果③及び乙A18結果を見てもばらつきがあることからすると,日本黒鉛製品2に係るサンプル結果③と乙A18結果が相違することは,日本黒鉛らが本件特許出願前から本件各発明の技術的範囲に属する日本黒鉛製品2を製造販売していたという上記認定を左右するとはい えない。 オ中越黒鉛について(ア) 中越黒鉛各製品が本件各発明の技術的範囲に属するかa る日本黒鉛製品2を製造販売していたという上記認定を左右するとはい えない。 オ中越黒鉛について(ア) 中越黒鉛各製品が本件各発明の技術的範囲に属するかa 中越黒鉛各製品に係る乙A19結果については,同じ製品であるにもかかわらず,算出されたRate(3R)にかなりのばらつきがあ ること,中越黒鉛各製品に係る乙A19結果の各回折プロファイルにおいて,菱面晶系黒鉛層(3R)の(101)面及び六方晶系黒鉛層(2H)の(101)面の各ピークが出現するとされる回折線の角度43ないし44°付近のピークは必ずしも明瞭ではないこと,前記2(1)ウ(イ)のとおり,PDXLは,ピークが不明瞭な場合,自動解析機能によっては不合理な解に収束したり,解が発散したりすることがあ り,このような場合,試料を考慮した解析条件を手動で入力する必要があること,前記(1)エ(イ)aのとおり,原告は,自動解析機能によっては不合理な解に収束したり,解が発散したりする場合には適宜の解析条件を手動で入力することにより,PDXLを用いて解析を行い,中越黒鉛製品結果を得たことからすると,中越黒鉛各製品のRate (3R)については,中越黒鉛製品結果を採用することができ,乙A19結果は採用することができないというべきである。 b 中越黒鉛製品結果によれば,中越黒鉛製品1及び2は本件発明1の構成要件1Bを,中越黒鉛製品3は構成要件1B及び2Bをそれぞれ充足することとなり,前記2の本件各発明の解釈を前提とすると,中 越黒鉛製品1及び2は本件発明1の,中越黒鉛製品3は本件各発明の各技術的範囲に属すると認めるのが相当である。 (イ) サンプルのRate(3R)a 次に,証拠(乙A70ないし72)及 製品1及び2は本件発明1の,中越黒鉛製品3は本件各発明の各技術的範囲に属すると認めるのが相当である。 (イ) サンプルのRate(3R)a 次に,証拠(乙A70ないし72)及び弁論の全趣旨によれば,中越黒鉛は,平成30年11月8日,原告に対し,中越黒鉛各製品のサ ンプルを送付し,原告はこれを分析して中越黒鉛製品結果を得たことが認められる。 そして,証拠(乙A63の5,6,乙A70,73,96,97,119)によれば,中越黒鉛製品3の上記サンプルのロット番号は「90930」であったこと,中越黒鉛においては,黒鉛製品のロッ ト番号を,製造開始日を5桁の数字で表示したもの(2006年12月12日に製造したものであれば,「61212」)としていたことが認められ,これらによれば,中越黒鉛製品3の上記サンプルは,平成21年9月30日に製造されたものと認めるのが相当である。 b これに対して,原告は,9年以上も前に製造された製品の在庫が残っていたことは疑わしいし,3つの時点における試験成績表(乙A6 3の5,6,乙A96)の固定炭素等の数値が全て同じであることは不自然であり,原告が行った測定結果とも異なると主張する。 しかし,証拠(乙A119)によれば,中越黒鉛は,遅くとも平成22年3月頃以降,依頼があった顧客に対して中越黒鉛製品3のサンプルを送付する場合,ロット番号が「90930」の製品を継続して 使用していたものと認められることからすると,原告に送付された中越黒鉛製品3のサンプルが9年以上前に製造されたものであったとしても,不自然であるとまではいえない。また,被告らは,上記試験成績表の固定炭素等の数値は,平成21年10月1日に作成された分析日報(乙A97) 品3のサンプルが9年以上前に製造されたものであったとしても,不自然であるとまではいえない。また,被告らは,上記試験成績表の固定炭素等の数値は,平成21年10月1日に作成された分析日報(乙A97)に記載された数値を記載し,出荷ごとにサンプルを 抜き取って固定炭素等を測定することはしていなかったと説明するが,そのことが直ちに不合理であるとまではいえない。さらに,上記試験成績表の数値がこのような経緯で記載されたとすると,10年以上前に測定されたものであるから,これらが原告が現在測定した数値(甲A74)と異なるとしても,原告に送付されたサンプルが平成21年 9月30日に製造されたものではないことを直ちに意味するとはいえない。 したがって,原告の上記各主張はいずれも理由がない。 c そうすると,前記(ア)のとおり採用することができる中越黒鉛製品結果によれば,中越黒鉛が平成21年9月30日に製造した中越黒鉛製 品3のRate(3R)は59.7%であったことになる。 (ウ) 中越黒鉛が本件特許出願前から本件各発明の技術的範囲に属する中越黒鉛各製品を製造販売していたか前記イ(イ)のとおり,菱面晶系黒鉛層の増加に影響を及ぼすと考えられる要素のほとんどは,黒鉛製品の製造工程及び製造された製品が満たすべき規格に関わるといえるが,具体的に,どのような条件の下,どのよ うな操作をすることにより,単に菱面晶系黒鉛層が増加するだけでなく,六方晶系黒鉛層との総和における菱面晶系黒鉛層の割合であるRate(3R)がどの程度変動するかは,本件訴訟に現れた全証拠によっても確定することができない。 そして,前記(1)エ(ア)のとおり,中越黒鉛は,本件特許出願前から中 越黒鉛各製品 e(3R)がどの程度変動するかは,本件訴訟に現れた全証拠によっても確定することができない。 そして,前記(1)エ(ア)のとおり,中越黒鉛は,本件特許出願前から中 越黒鉛各製品を販売しており,本件特許出願前から現在に至るまで,その製造工程及び出荷の基準となる規格値に変更はない。 また,前記前提事実(2)及び(7)イのとおり,原告が中越黒鉛製品結果をもって中越黒鉛に対して提訴したのは平成31年4月であり,平成26年9月9日の本件特許出願からそれほど長い年月が経過しているもの とはいえない。 以上によれば,中越黒鉛は,本件特許出願前から現在に至るまで,中越黒鉛各製品の各名称を付した黒鉛製品を製造販売しており,この間,菱面晶系黒鉛層の増減に影響を与えると考えられるこれらの製品の製造工程及び規格値に変更はないことから,この間に製造販売された中越黒 鉛各製品は,同じ製造工程を経て,同じ規格を満たすものであると認められる。そして,他にこれらの製品に対してRate(3R)の増減に影響を及ぼす事情が存したとは認められず,前記(ア)のとおり,現時点において,中越黒鉛製品1及び2は本件発明1の,中越黒鉛製品3は本件各発明の各技術的範囲に属する上,前記(イ)cのとおり,本件特許出願前 の平成21年9月30日に製造された中越黒鉛製品3のRate(3R)は59.7%であった(中越黒鉛製品結果)これらの事情に照らせば,中越黒鉛は,本件特許出願前から,中越黒鉛製品1及び2については本件発明1の,中越黒鉛製品3については本件各発明の各技術的範囲に属する中越黒鉛各製品を製造販売していたと認めるのが相当である。 カ小括 以上によれば,本件特許出願前から,被告伊藤は,本件発明1の技 3については本件各発明の各技術的範囲に属する中越黒鉛各製品を製造販売していたと認めるのが相当である。 カ小括 以上によれば,本件特許出願前から,被告伊藤は,本件発明1の技術的範囲に属する被告製品A1ないし3及び本件各発明の技術的範囲に属する被告製品A4ないし11を,被告西村は,本件各発明の技術的範囲に属する被告製品B1及び本件発明1の技術的範囲に属する被告製品B2を,日本黒鉛らは,本件各発明の技術的範囲に属する日本黒鉛製品1ないし3並 びに本件発明1の技術的範囲に属する日本黒鉛製品4及び5を,中越黒鉛は,本件発明1の技術的範囲に属する中越黒鉛製品1及び2並びに本件各発明の技術的範囲に属する中越黒鉛製品3をそれぞれ製造販売していたものである。 そして,前記2(1)イのとおり,本件特許出願当時,当業者は,物質の結 晶構造を解明するためにX線回折法による測定をし,これにより得られた回折プロファイルを解析することによって,ピークの面積(積分強度)を算出することは可能であったから,上記製品を購入した当業者は,これを分析及び解析することにより,本件各発明の内容を知ることができたと認めるのが相当である。 したがって,本件各発明は,その特許出願前に日本国内において公然実施をされたものであるから,本件各特許は,法104条の3,29条1項2号により,いずれも無効というべきである。 (3) 原告の主張についてア原告は,被告ら,日本黒鉛ら及び中越黒鉛の取引の相手方は秘密保持義 務を負っていたから,本件特許出願前に本件各発明が公然と実施されたとはいえないと主張する。 しかし,証人Zは,日本黒鉛工業が黒鉛製品を販売するに当たり,購入者に対して当該製品の分析を 務を負っていたから,本件特許出願前に本件各発明が公然と実施されたとはいえないと主張する。 しかし,証人Zは,日本黒鉛工業が黒鉛製品を販売するに当たり,購入者に対して当該製品の分析をしてはならないとか,分析した結果を第三者に口外してならないなどの条件を付したことはないと証言するところ,この証言内容に反する具体的な事情は見当たらない。また,被告ら,日本黒 鉛ら及び中越黒鉛が,その全ての取引先との間で,黒鉛製品を分析してはならないことや分析結果を第三者に口外してはならないことを合意していたことをうかがわせる事情はない。 取引基本契約書(甲A82)には「甲および乙は,本契約および個別契約の履行により知り得た相手方の技術情報および営業上の秘密情報(目的 物の評価・検討中に知り得た秘密情報を含む)を,本契約の有効期間中および本契約終了後3年間,秘密に保持し,相手方の書面による承諾を得ることなく第三者に開示または漏洩せず,また本契約および個別契約の履行の目的以外に使用しないものとする。」(38条)との記載が,機密保持契約書(甲A95)には「受領者は,開示者の書面による承諾を事前に得 ることなく,機密情報を第三者に開示または漏洩してはならない。」(3条1項)との記載が,日本黒鉛商事が当事者となった取引基本契約書(乙A123)には「甲および乙は,相互に取引関係を通じて知り得た相手方の業務上の機密を,相手方の書面による承諾を得ないで第三者に開示もしくは漏洩してはならない。」(9条)との記載が,それぞれ存することが 認められる。しかし,「相手方の技術情報および営業上の秘密情報(目的物の評価・検討中に知り得た秘密情報を含む)」,「機密情報」及び「相手方の業務上の機密」に,購入した製品のRate(3R)が含ま 認められる。しかし,「相手方の技術情報および営業上の秘密情報(目的物の評価・検討中に知り得た秘密情報を含む)」,「機密情報」及び「相手方の業務上の機密」に,購入した製品のRate(3R)が含まれるかは明らかではないし,黒鉛製品をX線回折法による測定により得られた回折プロファイル,さらにはこれを解析して得た積分強度が,秘密として管 理されてきたことや有用な情報であることをうかがわせる事情は見当たらない。 したがって,本件特許出願当時,製造販売されていた被告製品A,被告製品B1及び2,日本黒鉛各製品並びに中越黒鉛各製品を分析することについて契約上の妨げがあったとはいえないから,原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は,第三者において,被告ら,日本黒鉛ら及び中越黒鉛から本件各発明を実施した製品を取得したとしても,本件各発明の構成ないし組成を知り得なかったと主張する。 しかし,前記2(1)イのとおり,本件特許出願当時,当業者は,物質の結晶構造を解明するためにX線回折法による測定をし,これにより得られた 回折プロファイルを解析することによって,ピークの面積(積分強度)を算出していた。このような分析を外部の専門機関に依頼するのに,費用や労力,時間がかかることは,本件各発明が公然と実施されていたことの認定判断の妨げになるものとは認められない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は,本件特許出願前に販売された製品と近時に販売された製品の品名・品番が同一であるからといって,製品として同一であるとはいえないと主張する。 しかし,品名・品番を基準として,製品の品質が管理されることが多いことは,当裁判所に顕著な事実である。そして ・品番が同一であるからといって,製品として同一であるとはいえないと主張する。 しかし,品名・品番を基準として,製品の品質が管理されることが多いことは,当裁判所に顕著な事実である。そして,このような事情に加えて, 前記(2)イないしオのとおり,被告ら,日本黒鉛ら及び中越黒鉛において,本件特許出願の前後を通じて,製品の製造工程に大きな変更はなく,製品の規格にも変更がなかったこと,本件特許出願前の製品のサンプルにRate(3R)が31%以上又は40%以上のものが含まれていることなどを考慮すると,前記(2)カのとおり,被告ら,日本黒鉛ら及び中越黒鉛は, 本件特許出願前から,本件発明1又は本件各発明の各技術的範囲に属する製品を製造販売していたものと認めるのが相当である。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 エ原告は,本件特許出願の前後を通じて,5つの評価項目(検査成績書では,固定炭素,灰分,揮発分,水分及び平均粒径)の数値が同等であるからといって,物としての同一性を判断することはできないし,どの程度近 似していれば同一の製品と考えることができるかも不明であると主張する。 前記(2)イ(イ)のとおり,本件各明細書には,「真空または気中において天然黒鉛材料にマイクロ波,ミリ波,プラズマ,電磁誘導加熱(IH),磁場などの電波的力による処理とボールミル,ジェットミル,遠心力,超臨界などの物理的力による処理とを併用することで,菱面晶系黒鉛層(3 R)がより多く含まれる黒鉛系炭素素材が得られる。」(【0011】)との記載があり,黒鉛を粉砕したり,黒鉛に熱を加えたりすることによって,当該黒鉛中の結晶のうち菱面晶系黒鉛層が増加することが知られているが,黒鉛に対して,具体的に,ど が得られる。」(【0011】)との記載があり,黒鉛を粉砕したり,黒鉛に熱を加えたりすることによって,当該黒鉛中の結晶のうち菱面晶系黒鉛層が増加することが知られているが,黒鉛に対して,具体的に,どのような条件の下,どのような操作をすることにより,当該黒鉛のRate(3R)がどれだけ変動するかは, 本件訴訟に現れた全証拠によっても確定することができず,上記5つの評価項目の数値とRate(3R)との関係も明らかではないといわざるを得ない。 もっとも,前記(2)イないしオのとおり,被告ら,日本黒鉛ら及び中越黒鉛は,本件特許出願前から現在に至るまで,製品の製造工程を大きく変更 することなく,製品の規格も変更することなく,被告製品A,被告製品B1及び2,日本黒鉛各製品並びに中越黒鉛各製品を製造販売してきており,これらの製品が,前記2のとおり,現時点において,本件発明1又は本件各発明の技術的範囲に属するのであるから,前記(2)カのとおり,被告ら,日本黒鉛ら及び中越黒鉛は,本件特許出願前から,本件発明1又は本件各 発明の各技術的範囲に属する製品を製造販売していたというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 オ原告は,検査成績書(乙A8)や製品別製造標準(乙A38,48)等には,存在証明・非改ざん証明が一切行われていない文書であり,事後的に作成することができるものであり,また,これらの文書に記載された作成日又は改訂日以降に変更が加えられていないことは明らかではないと主 張する。 しかし,存在証明・非改ざん証明が行われていない文書であるからといって,直ちにこれらを信用することができないということはできない。また,上記各文書が事後的に作成されたり,その内容に変更 しかし,存在証明・非改ざん証明が行われていない文書であるからといって,直ちにこれらを信用することができないということはできない。また,上記各文書が事後的に作成されたり,その内容に変更が加えられていたりすることをうかがわせる具体的な事情は見当たらない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 カ原告は,日本黒鉛工業はX線回折装置を保有していたにもかかわらず,測定データの存在を積極的に秘匿し続けたのは,当該測定データに基づき算出したRate(3R)が40%未満又は31%未満であったからにほかならないと主張する。 しかし,原告の指摘する事情を考慮しても,直ちに,日本黒鉛工業が過去にRate(3R)を算出し,その結果が31%未満又は40%未満であったと認めることはできないし,このRate(3R)がどのようなものであれ,日本黒鉛らが,本件特許出願前から,本件発明1又は本件各発明の各技術的範囲に属する製品を製造販売していた前記(2)カの認定判断を覆 すものとはいえない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 キ原告は,日本黒鉛工業が保有するX線回折装置では,Rate(3R)を算出するのに必要な回折線の角度43ないし44°付近の回折線の強度のピークを測定することは困難であり,日本黒鉛工業は,本件特許出願前 の日本黒鉛各製品につき,Rate(3R)が31%以上又は40%以上となるような解析結果を保有していないと主張する。 しかし,日本黒鉛工業が上記の解析結果を保有していなかったとしても,日本黒鉛らが,本件特許出願前から,本件発明1又は本件各発明の各技術的範囲に属する製品を製造販売していたとの前記(2)カの判断を左右する し,日本黒鉛工業が上記の解析結果を保有していなかったとしても,日本黒鉛らが,本件特許出願前から,本件発明1又は本件各発明の各技術的範囲に属する製品を製造販売していたとの前記(2)カの判断を左右するものとは認められない。したがって,原告の主張は採用することができない。 第5 結論 したがって,その余の点を判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 小川暁 裁判官 矢野紀夫 (別紙1) 被告伊藤製品目録 以下の製品名の黒鉛製品 1 Z-5F 2 W-5 3 CP2000M 4 HAC-6B 5 MAC-5 6 3000M 7 EC1500 8 EC1000 9 EC500 10 EC300 11 EC100 主文 被告西村製品目録 以下の製品名の黒鉛製品 1 土状黒鉛S微粉 2 土状黒鉛特微粉 3 膨張黒鉛7μm品 4 膨張黒鉛EC-1000 5 膨張黒鉛EC-1500 6 鱗状黒鉛超微粉(3μm)以上

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