平成29年10月11日判決言渡平成29年(行ウ)第453号選挙権確認請求事件 主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求原告が,次回の衆議院小選挙区選出議員選挙につき,予定された選挙区である東京都第8区において,その価値が平成28年及び平成29年に改正された公職選挙法が定めるところより,より全国平均に近い選挙権を有することを確 認する。 第2 事案の概要本件は,次回の衆議院小選挙区選出議員選挙(本件訴えの提起の日である平成29年9月29日の直近の同年10月22日に施行される予定の衆議院議員総選挙における衆議院小選挙区選出議員の選挙のことをいうものと解される。 以下「本件選挙」という。)において自らが東京都第8区の選挙人となることが予定されているとする原告が,衆議院小選挙区選出議員(以下,単に「議員」という場合がある。)の選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定める公職選挙法13条1項及び別表第1(平成28年法律第49号及び平成29年法律第58号による改正後のもの。平成29年7月16日施行)は,各都 道府県の人口に比例して議員の数を配分する内容とはなっておらず代議制民主主義(憲法前文,1条,43条1項),選挙権の平等の保障(憲法15条1項,14条1項,44条)に反し違憲であり,また東京都内の選挙区割りに関しても各区人口が東京都の基準人数(東京都の人口÷配分議員数)に限りなく近づくように区割りされておらず違憲であるなどとして,原告が,本件選挙につき, 東京都第8区において,その価値が上記公職選挙法が定めるところより,より 全国平均(人口43万9774人に議員1人の割合で代表者を選 らず違憲であるなどとして,原告が,本件選挙につき, 東京都第8区において,その価値が上記公職選挙法が定めるところより,より 全国平均(人口43万9774人に議員1人の割合で代表者を選出し得る価値)に近い選挙権を有することの確認を求める事案である。 第3 当裁判所の判断1(1) 原告は,本件訴えを公法上の法律関係に関する確認の訴え(行政事件訴訟法4条)として提起しているものと解されるところ,かかる訴えが適法であ るというためには,その対象が,裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる「法律上の争訟」であることを要する(裁判所法3条1項)。 そして,法律上の争訟とは,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,それが法令の適用によって終局的に解決することができるものをいうと解するのが相当である(最高裁昭和39年(行 ツ)第61号同41年2月8日第三小法廷判決・民集20巻2号196頁,最高裁昭和51年(オ)第749号同56年4月7日第三小法廷判決・民集35巻3号443頁等参照)。 (2) ところで,憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば投票価値の平等を要求しているものと解されるが,他方で,投票価値の平等は,選挙制度の仕組 みを決定する絶対の基準ではなく,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであると解されるところ,国会の両議院の議員の選挙については,憲法上,議員の定数,選挙区,投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(43条2項,47条),選挙制度の仕組みの決定について国会に広 範な裁量が認められている(最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷判決・民集69巻 法律で定めるべきものとされ(43条2項,47条),選挙制度の仕組みの決定について国会に広 範な裁量が認められている(最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷判決・民集69巻7号2035頁参照)。 したがって,衆議院小選挙区選出議員の選挙における選挙区の区割り及び各選挙区において選挙すべき議員の数については,上記のような観点から,国会がその裁量により適切に決定することが要請されているというべきであ り,これらについては,公職選挙法13条1項及び別表第1において具体的 に定められているところ,原告が,本件選挙で,上記公職選挙法が定めるところと異なる選挙区の区割り及び議員の数の配分の下で選挙権を行使できるようにするためには,国会において新たに立法を行うほかないというべきである。結局,本件訴えは,原告の主張する内容の選挙権を原告が有することの確認を求める前提として,国会がその裁量権を行使して具体的な選挙制度 を決定する前に,裁判所が,あるべき内容の選挙制度を定めた法規範の存在を措定することを求めるものにほかならず,そのような裁判所による選挙制度に関する法規範の措定は,憲法43条2項,47条の趣旨に反するものとして許されないというべきである。 この点につき原告は,最高裁平成13年(行ツ)第82号,第83号,同 年(行ヒ)第76号,第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁(在外選挙権判決)を引用して,本件訴えについても法律上の争訟を対象とするものである旨主張するようである。しかしながら,上記の大法廷判決は,具体的な選挙につき選挙権を行使する権利の有無につき争いがある場合にこれを有することの確認を求める訴えが法律上の争訟に当た ることを判示したものである ある。しかしながら,上記の大法廷判決は,具体的な選挙につき選挙権を行使する権利の有無につき争いがある場合にこれを有することの確認を求める訴えが法律上の争訟に当た ることを判示したものであるのに対し,本件訴えは,原告が本件選挙につき選挙権を行使する権利を有することを前提として,その権利の内容が公職選挙法の定めるところと異なるものであることの確認を求めるものであるから,上記大法廷判決とは事案を異にしており,当該原告の主張は採用し得ない。 (3) よって,本件訴えは,法令の適用によって終局的に解決することができる 紛争を対象とするものであるとはいえず,裁判所がその固有の権限に基づいて審判することができる「法律上の争訟」を対象とするものとはいえないというべきである。 2 以上によれば,本件訴えは不適法であり,その不備を補正することができないから,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法140条により,口頭弁論を経ない でこれを却下することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官古田孝夫 裁判官大畠崇史 裁判官古屋勇児
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