平成15(ワ)41 不当利得金返還請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年8月10日 青森地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-8505.txt

判決文本文9,340 文字)

主文 1 被告は,原告に対し,8113万0592円及びこれに対する平成15年2月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求の趣旨主文同旨第2 事案の概要本件は,訴外A(以下「A」という。)を契約者,受取人を原告とする保険契約に基づく自動車保険金及び労災保険金が,原告名義の銀行口座に入金されていたところ,Aが租税を滞納していたため,E税務署国税徴収官が当該預金をAの預金と認定して差押えをしたことについて,原告が,当該預金は原告に帰属するものであって,E税務署国税徴収官が行った差押えは違法であり,被告は法律上の原因なくして原告の金員を利得しているとして,不当利得の返還を求めた事案である。 1 前提となる事実(争いがないか,証拠により容易に認められる事実)(1) 平成11年11月17日,Aの従業員であった原告は,自動車を運転して勤務場所へ向かう途中,自損事故を起こして脳挫傷等の傷害を負い,重い後遺障害が残ることになった(甲2,6)。 (2) Aは,保険会社との間で,被保険者をA従業員とする普通傷害保険契約と,被保険自動車を原告の運転していた自動車とする自動車保険契約を締結していたところ,平成11年12月7日,原告は,妻であるBを代理人として,Aとの間で,「保険金受領に関する契約書」(乙6)による契約を締結した。 (3) 平成11年12月9日,Aの事務員は,株式会社C銀行に,口座名義人を原告とする普通預金口座(以下「本件口座」といい,本件口座にかかる預金債権を「本件預金債権」ないし「本件預金」という。)を開設した。 その後,本件口座には,自動車保険契約に基づく人身傷害補償保険金及び搭乗 通預金口座(以下「本件口座」といい,本件口座にかかる預金債権を「本件預金債権」ないし「本件預金」という。)を開設した。 その後,本件口座には,自動車保険契約に基づく人身傷害補償保険金及び搭乗者傷害保険金並びに労働者災害補償保険金,障害補償年金が定期的に振り込まれ,平成14年2月18日現在の預金残高は8152万6276円となっていた(甲4の1~3)。 (4) 平成14年2月18日,E税務署国税徴収官は,本件口座にかかる預金債権の差押えを行い(以下「本件差押え」という。),同月22日,C銀行から8113万0592円の支払を受け,同日,Aに対する租税債権に充当した(甲5)。 なお,E税務署長は,同月20日,差し押えた本件口座の預金残高8152万6276円のうち,同月15日付で労働基準監督署から振り込まれた労働者災害補償年金39万5684円の預金債権について差押解除をし(乙2),同月21日,これが本件口座に入金されている(甲4の3)。 2 争点本件預金債権が原告とAのいずれに帰属するか(被告は法律上の原因なくして利益を得たといえるか。)。 (原告の主張)E税務署国税徴収官は本件預金をAの預金と認定し,これを差し押えたが,原告名義の本件預金債権の権利者は原告である。 (被告の主張)ア滞納処分としての差押処分が適法とされるためには,差押えの対象となる財産が差押えをする時に滞納者に帰属していなければならないところ,本件預金債権はAに帰属する。 イ本件預金は普通預金であるところ,普通預金は,取引開始の際に,預金者と銀行との間で約定書を作成して払込み・払戻しの方法,利息等について契約を締結し,預け入れられた金額は,常に既存の残高と合計された1個の債権として扱われ,預入れごとに金額を区分け 開始の際に,預金者と銀行との間で約定書を作成して払込み・払戻しの方法,利息等について契約を締結し,預け入れられた金額は,常に既存の残高と合計された1個の債権として扱われ,預入れごとに金額を区分けして取り扱うことはおよそ予定されていないのであるから,一個の包括的な契約が成立していると解すべきものであり,個々の預入金ごとに格別の預金債権が成立するものではない。 ウ普通預金債権の帰属認定についても,自らの出捐によって,自らの預金とする意思で,銀行に対して,自ら又は使者・代理人を通じて預金契約を締結した者が預金者であると解すべきである(いわゆる客観説)ところ,本件預金はAに帰属する。すなわち,(ア) 本件口座は,Aの事務員が,Aの普通預金口座から引き落とした1000円をもって開設したものであるから,Aの出捐により開設されたものであることは明らかである。 (イ) また,Aは本件口座の預金通帳及び届出印鑑を保管しており,本件預金債権の払戻し及び払戻し後の金員の処理もAが行っていたこと,本件差押えの直後のAの損益計算書には,本件預金債権額が雑収入として計上されていることからすると,Aが本件口座にかかる預金をA固有の預金とする意思があったことも明らかである。 (ウ) そして,Aは自ら,あるいは事務員を使者・代理人として本件口座を開設したといえるから,本件預金債権はAに帰属するというべきである。 エ仮に,普通預金債権の帰属認定については,① 預金口座の開設者,② 預金口座の名義人,③ 通帳,届出印章の保管者及び,入金や払戻しの行為者,④ 預金の原資となった金銭の所有者などの諸点を総合的に判断するとの見解に立ったとしても,本件では,① 預金口座の開設行為者はAであり,② 本件口座の名義人 出印章の保管者及び,入金や払戻しの行為者,④ 預金の原資となった金銭の所有者などの諸点を総合的に判断するとの見解に立ったとしても,本件では,① 預金口座の開設行為者はAであり,② 本件口座の名義人は原告であるが,これは,「保険金受領に関する契約書」(乙6)により取り決められた保険金が,保険会社から円滑に支払われるように配慮したためであって,預金債権の帰属を判断する上での重要性は高くなく,③ 通帳,届出印章の保管者及び入金,払戻しの主体は,全てAであり,④ 本件口座開設の原資となった金銭もAの所有にかかるものであるから,以上を総合的に判断しても,本件預金債権はAに帰属する。 (原告の反論)ア預金債権の帰属認定について,自らの出捐によって,自らの預金とする意思で,銀行に対して,自ら又は使者・代理人を通じて預金契約をした者が預金者であるとの見解(いわゆる客観説)によっても,以下のとおり本件預金債権は原告に帰属する。すなわち,(ア) 本件口座に入金されたものは,原告が受領した保険金であるから,出捐者は原告である。被告は,口座開設の際にAが1000円を出捐したと主張するが,原告本人名義の口座でなければ各保険金が送金されてこないのであり,Aは原告本人名義の真正な口座を開設する必要があったのであるから,口座開設の際に入金したとする1000円は立替金である。 (イ) 原告は何度も通帳と印鑑の返還を求めており,自己の預金とする意思を有していた。 また,被告は,差押直後のAの損益計算書に,本件預金債権額が雑収入として計上されていたことをAが自己の預金とする意思を有していたことの根拠として主張するが,本件差押えがされる前までの本件口座への入金については雑収入としての記載が一切 債権額が雑収入として計上されていたことをAが自己の預金とする意思を有していたことの根拠として主張するが,本件差押えがされる前までの本件口座への入金については雑収入としての記載が一切されておらず,むしろAは本件口座の預金を自己の預金とする意思を有していなかったことになる。 (ウ) Aは,原告本人名義の真正な口座を開設する必要があり,当初,預金契約はあくまで原告に株式会社C銀行との間で締結してもらい,後日原告から通帳と印鑑を引き渡してもらい,これを手元において自由に払戻しをしようと意図していた。 したがって,AとC銀行が預金契約をしたというのは実態に合わず,Aが原告名義の口座を開設したのは,原告の代理人又は使者として開設したと考えるべきである(原告は無権限の行為を追認した上で,通帳と印鑑の返還を求めているのである。)。 イ仮に,口座の開設者や名義人などの諸事情を考慮して預金債権の帰属を決するという立場に立ったとしても,本件における事実関係からすれば,本件預金債権は原告に帰属すると解すべきである。 (被告の反論)ア原告は,本件口座に入金されたのが,原告が受領した保険金であることにより本件預金債権が原告に帰属することを基礎づけようとしているが,そもそも預金債権の帰属認定にあたって考慮すべき基礎事実は,契約当時に存在した事実のみのはずであり,契約締結後に生じた事情は,原則として,契約当事者確定にあたっての基礎事実とはなり得ない。 また,原告は,口座開設時の1000円はAが原告のために支払った立替金であるとするが,本件口座は原告の全く知らないところで開設されたものであり,そうだとすれば,原告がAに対し,本件口座の開設にあたってその原資を立て替えるよう依頼する事実など存在するは 支払った立替金であるとするが,本件口座は原告の全く知らないところで開設されたものであり,そうだとすれば,原告がAに対し,本件口座の開設にあたってその原資を立て替えるよう依頼する事実など存在するはずがないし,Aにおいて立て替えの意思も存在しない。 そもそも,金融機関にとっては預金者の個性はさほど重要ではなく,預金債権の帰属を認定する方法としては口座開設者の意思が重視されるところ,本件口座開設に係る事実関係,通帳・印章の管理・運用状況及びA代表者の認識等を総合的に考慮すれば,口座開設者たるAの意思としては,本件預金債権をAに帰属させる意図のあったことは明らかである。なお,原告が,Aに対して通帳と印鑑の返還を求めていた事実はない。 イ原告は,本件口座開設の目的は原告名義の口座においてのみ受領できる保険金の受領であり,本件預金債権の原資ともいうべき入金された保険金等はすべて原告に帰属する金銭であるから,本件預金債権は原告に帰属する旨主張するが,普通預金においては,開設された後の口座への入金如何を問わず,預金口座開設時の預金者が口座に入金となった金銭の所有者と解すべきである。 ウ Aは,原告の代理人又は使者として本件口座を開設したわけではない。 Aは自己に帰属させる意図で本件口座を開設したのであり,原告のために本件口座を開設したのではないから,原告に本件口座が帰属する余地はなく,追認をする余地もない。 第3 争点に対する判断 1 普通預金は,いったん預金契約を締結し,口座を開設すると,以後預金者がいつでも自由に預入れや払戻しをすることができる継続的取引契約であり,口座に入金があるたびにその額についての消費寄託契約が成立するが,その結果発生した預金債権は,口座の既存の預金債権と合算さ 金者がいつでも自由に預入れや払戻しをすることができる継続的取引契約であり,口座に入金があるたびにその額についての消費寄託契約が成立するが,その結果発生した預金債権は,口座の既存の預金債権と合算され,1個の預金債権として扱われるものと解される。 そして,このような性質を有する普通預金債権については,口座開設にあたり金銭を出捐した者が誰かということに加え,口座の開設者及びその意図,口座の名義人,口座の管理者等の諸事情を総合的に検討して,当該預金債権が誰に帰属するかを判断すべきである。 2 しかるところ,争いのない事実,証拠(甲1~15,乙1の1・2,2,6~9,11~15,24,27)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 (1) 前記のとおり,Aの従業員であった原告は,平成11年11月17日,自動車を運転して勤務場所へ向かう途中,自損事故を起こして脳挫傷等の傷害を負い,重い後遺障害が残ることになった(甲2,6)。 ところで,Aは当時青森県D村所在の核燃料再処理施設建設工事の孫請をしており,原告もD村の現場作業員として稼働していたが,再処理工場建設にあたっては労災事故が多発し,F労働基準監督署などから作業員の安全管理が強く要請されており,労災事故を起こした業者は請負契約を解除されるなどしていた。 原告の起こした上記交通事故は,通勤途上に発生したもので労災の適用事例ではあるが,原告の一方的な過失によるものであり,また原告がシートベルトを装着していなかったことから,Aの安全管理責任が問われる可能性のあるものであった。AはD村の現場工事を打ち切られれば倒産の危機に陥ることが必至であったため,当時Aが保険会社との間で被保険者をA従業員とする普通傷害保険契約及び事 Aの安全管理責任が問われる可能性のあるものであった。AはD村の現場工事を打ち切られれば倒産の危機に陥ることが必至であったため,当時Aが保険会社との間で被保険者をA従業員とする普通傷害保険契約及び事故車を被保険自動車とする自動車保険契約(搭乗者傷害保険)を締結していたことから,この保険を使って労災保険からの給付相当額を補填し,労災申請を回避する方法をとろうとした。 しかし,保険会社から,まず労災保険の適用を受けてからでなければ保険金の支払いはできないと指摘され,Aは労災保険の申請手続きをとることにした(甲10及び弁論の全趣旨)。 (2) Aは上記保険金の受領に関して,下記のような内容の「保険金受領に関する契約書」(乙6)を作成し,平成11年12月7日,原告の妻B(以下「B」という。)は原告の代理人として,上記契約書に署名押印した。 「1 Aでは,原告に対して次の契約をする。 (1) 入院,通院の補償として,今まで支払っている日当と同額の金銭を妻Bに贈与する。 (2) 退院した時点で補償額の20%を退院祝金として,妻Bに贈与する。 (3) 後遺症があった場合は,労災で認定する金額に準じた金銭を妻Bに贈与する。 2 保険金の実質上の受取人はAであることを確認し,上記給付金を受ける事を条件として,以後一切の異議を述べないものとする。 3 保険金を保険会社に支払いしてもらう為に,原告名義の口座を株式会社C銀行D支店に開設する。 4 口座開設後,その保険金の受け取りの為に必要な書類を原告はAに引き渡すものとする。」Aは,当初,原告自ら原告名義の口座を開設させた後,原告から通帳や届出印鑑など振込金の払戻しに必要な書類等を引き渡し 険金の受け取りの為に必要な書類を原告はAに引き渡すものとする。」Aは,当初,原告自ら原告名義の口座を開設させた後,原告から通帳や届出印鑑など振込金の払戻しに必要な書類等を引き渡してもらうつもりであった〔上記は,別件訴訟の準備書面(甲10)においてAが自ら主張している事実であり,本件訴訟中に被告が作成したA代表者の質問てん末書(乙7,24)中,上記認定に反する部分は,信用することができない。〕。 (3) 平成11年12月9日,Aは,A事務員をしてC銀行に赴かせ,同月6日にAの普通預金口座から引き落としていた1000円を入金して,本件口座が開設された(乙1,7,8)。 その後,本件口座には平成11年12月22日から平成14年2月18日までの間,自動車保険契約に基づく人身傷害補償保険金及び搭乗者傷害保険金並びに労働者災害補償保険金,障害補償年金が定期的に振り込まれた(甲3)。 Aは,本件口座の預金通帳及び届出印鑑をA事務室内の金庫に所持・保管しており,本件口座に振り込まれた上記金員から,原告との間の上記契約に従い,定期的にBの預金口座に送金をしていた(甲3,8,9)。ただし,平成13年10月16日以降に振り込まれた障害補償年金については,本件口座に振り込まれ次第,振り込まれた金額がBの口座に送金された(乙14)。 上記の本件預金債権の払戻し及び払戻し後の金員の処理は,A代表者の指示に基づき,A事務員が行っていた(乙12~14)。 (4) 平成13年5月21日,治療を続けてきた原告の症状が安定したとして,「 元請け企業である株式会社Eが,労働災害保険及び上乗せ保険として同社が掛け金を拠出している保険が原告に入金された時点で,Aの使用者責任を きた原告の症状が安定したとして,「 元請け企業である株式会社Eが,労働災害保険及び上乗せ保険として同社が掛け金を拠出している保険が原告に入金された時点で,Aの使用者責任を免除することとして,その責任を追及したり金員の支払を要求したりしないこととする。 又,Aがその他の保険会社との契約の分は全てAが受領することに一切の異議を述べないこととする。」との内容の「保険金の支給に関しての契約書」(乙27)が作成され,Bは原告の代理人としてこれに署名押印した(なお,原告は上記事実を争っているが,乙第6号証と乙第27号証に記載されたBの筆跡は酷似しており,乙第27号証はBによるものと認められる。原告の主張は採用することができない。)。 (5) その後,Bは平成14年1月24日,C銀行から本件口座の預金通帳の再発行を受けた(甲4)。 (6) 平成14年2月18日現在の本件口座の預金残高は8152万6276円となっていたところ(甲4),同日,E税務署国税徴収官は,本件口座にかかる預金債権の差押を行い,同月22日,同月15日付で労働基準監督署から振り込まれた労働者災害補償年金39万5684円分を除く8113万0592円について,C銀行より支払いを受け,Aに対する租税債権に充当した(甲5)。 (7) ところで,本件差押後のAの損益計算書(自平成13年7月1日至平成14年6月30日,乙9)には,本件預金債権が雑収入として計上されていたが,それ以前に作成された損益計算書には,本件預金債権は雑収入として計上されていない(甲11~15)。 (8) 平成14年7月1日,Bは原告の成年後見人に選任され,同月16日,上記後見開始の審判が確定した(甲6)。 には,本件預金債権は雑収入として計上されていない(甲11~15)。 (8) 平成14年7月1日,Bは原告の成年後見人に選任され,同月16日,上記後見開始の審判が確定した(甲6)。 3 そこで,検討する。 (1) 上記のとおり,原告名義である本件口座は,原告に対して支給される各保険金を実際にはAが受領する意図で,原告の知らないまま,Aによって開設されたものと認められる。 しかるところ,上記各保険金の受取人は原告であり,原告でなければ保険金を受領できないのであるから,Aは,単に原告名義の預金口座を開設するというのではなく,真実原告に帰属する預金口座を開設する意思の下,本件口座を開設したものと認めるのが相当である。 確かに,Aは本件口座に入金される金銭を自己のものとする意図を有していたと認められるが,保険金受領に関する契約(乙6)は,Aと原告との間の契約であり,その趣旨は,Aはあくまで原告との関係において本件口座に入金される各保険金相当額の金銭を取得することができるというに過ぎず,保険会社等との関係において,Aが保険金を受領する権限を有していたわけではない。しかも,Aは,当初は原告自ら口座を開設させ,後に振込金の払戻しに必要な書類を引き渡してもらうつもりであった(甲10)。そうであれば,上記のAの意図は本件口座開設の動機に過ぎず,Aは原告に帰属する口座を開設するとの意思で本件口座を開設したものと解すべきである。 そうすると,本件口座の開設は,Aにより原告のために事務管理として行われたものと解され,口座開設時に入金された1000円は,Aによって立て替えられたものというべきである。 そして,本件口座は,保険金受領に関する契約(乙6)に基づき,これを実行 て行われたものと解され,口座開設時に入金された1000円は,Aによって立て替えられたものというべきである。 そして,本件口座は,保険金受領に関する契約(乙6)に基づき,これを実行するために開設されたものであるところ,Bは,原告の代理人として,Aに本件口座を開設することの代理権を授与したものと認められる。その後,Bは原告の後見人に就任したことにより,本件口座の開設について追認を拒絶することができなくなり,その結果,本件口座は,Aが原告の代理人として開設されたものとなる。 (2) 被告は,通帳,届出印章の保管者及び入金,払戻しが,Aによって行われていることを,Aが本件預金債権を自己に帰属させる意思を有していたことの根拠とする。 しかし,Aが通帳等を管理し,預金の払戻し等を行っていたのは,原告とAとの間の約定に従って,原告に対して支払われる保険金を実質的に受領した上,Bに約定の金銭を送金するため,事実上管理等を行っていたに過ぎないものと認められ,Aが本件預金債権を自己に帰属させる意思を有していたことを裏付ける事情とはいえない。加えて,本件差押え時点においては,Bが本件口座の通帳や届出印章を管理していたものである。 (3) Aが本件差押後の損益計算書に,本件預金債権を雑収入として計上していたが,本件口座開設後本件差押えがされるまでの間は,これが雑収入として計上されていなかったことからすれば,むしろ,Aとしては,本件口座が原告に帰属するものと考えていたものと推認することができる。 (4) 以上のとおり,本件口座の名義は原告名義であること,本件口座は,Aにより,原告のために事務管理として開設されたものであり,その開設については原告が追認していると認められること,口座開設後,本件口座 以上のとおり,本件口座の名義は原告名義であること,本件口座は,Aにより,原告のために事務管理として開設されたものであり,その開設については原告が追認していると認められること,口座開設後,本件口座に入金された金銭は,原告を受取人とする保険金であること,原告の妻であるBが本件口座の預金通帳の再発行を受けており,原告自身も本件預金債権を自己に帰属させる意思を有していたことが推認されることといった本件事実関係の下においては,本件預金債権は,Aにではなく,原告に帰属すると認めるのが相当である。 したがって,本件差押えは,滞納者であるAに帰属しない財産に対してされたものであって違法であり,被告は法律上の原因なくして原告の金員を利得していると認められる。 第4 結論よって,原告の請求は理由があるからこれを認容し,主文のとおり判決する。 仮執行免脱宣言については,相当でないからこれを付さないこととする。 青森地方裁判所第2民事部裁判長裁判官河野泰義裁判官伊澤文子裁判官石井芳明

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る