平成14年6月28日判決言渡平成8年(ワ)第12476号損害賠償請求事件 主文 1 被告は,原告に対し,金60万円及びこれに対する平成8年7月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その9を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 ただし,被告が40万円の担保を供したときは,上記仮執行を免れることができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成8年7月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,Kに懲役受刑者として拘禁されていた原告が,同刑務所の職員から集団的暴行を受け,違法に革手錠及び金属手錠を使用されたうえ,保護房に拘禁され,虚偽又は軽微な規律違反事実により違法に懲罰を科せられたうえ,仮出獄の機会を奪われ,さらに,違法に昼夜独居拘禁の処遇を受け,極端に低廉な作業賞与金による刑務作業を強いられたとして,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,上記各行為により原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料及び弁護士費用についての賠償並びに遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 法令の定め等(1) 手錠の使用についてア監獄法は,在監者に逃走,暴行若しくは自殺のおそれがあるとき又は監外にあるときには戒具の使用を許容しており(同法19条1項),その使用については,緊急を要する場合のほかは所長(刑務所,少年刑務所及び拘置所の長をいう。 施行規則3条。以下,「法令の定め等」において,同じ。)の命令によるべきこと 許容しており(同法19条1項),その使用については,緊急を要する場合のほかは所長(刑務所,少年刑務所及び拘置所の長をいう。 施行規則3条。以下,「法令の定め等」において,同じ。)の命令によるべきこととされ,所長の命令によらず緊急に使用した場合には,使用後直ちにその旨を所長に報告すべきこととされている(監獄法施行規則(以下「施行規則」という。)49条1項及び2項)。 イ監獄法19条2項は,戒具の種類について,命令をもって定めることとしており,施行規則48条1項は,鎮静衣,防声具,手錠,捕縄の4種類を規定している。 ウ戒具の製式については,法務大臣が別に定めることとされているところ(施行規則48条2項),「戒具製式改定ノ件」(昭和4年5月14日司法大臣訓令行甲第740号)は,戒具のうち手錠について,「金属手錠」と「革手錠」とにその製式を分けて定めている。 エ手錠は,暴行,逃走若しくは自殺のおそれがある在監者又は護送中の在監者で必要があると認められるものに限って使用することができるとされている(施行規則50条1項)。 「手錠及び捕じょうの使用について」(昭和32年1月26日矯正局長通牒矯正甲第65号。以下「本件通牒」という。)は,「戒具は,法律に定められた事由のある場合に限り,各その使用目的に従って使用せられるべきであり,かつ,目的達成のための最少限度でなければならない。」と規定したうえで,手錠及び捕縄の使用上の心得として,次の①ないし⑤のとおり規定する(本件通牒記の一)。 ① 著しく苦痛を伴うような不自然な姿勢を強いる等の方法で使用しないこと。 ② 戒具以外の物と連結し,又は戒具以外の物を併せ用いないこと。 ③ 必要以上に緊度を強くし,使用部 しく苦痛を伴うような不自然な姿勢を強いる等の方法で使用しないこと。 ② 戒具以外の物と連結し,又は戒具以外の物を併せ用いないこと。 ③ 必要以上に緊度を強くし,使用部位を傷つけ,又は著しく血液の循環を妨げることがないようにすること。 ④ 使用中は徒に放置することなく,視察をひんぱんに行うとともに進んで面接指導をなし,精神の安定をはかるようつとめること。 ⑤ 使用した場合は,時間の長短を問わず,使用の事由,手錠又は捕じょうの種類,使用方法,使用日時及び解除日時は一定の帳簿に,使用中の特異な動静は視察表に記録すること。 また,本件通牒は,手錠の使用方法として,次の①ないし④のとおり規定する(本件通牒記の二)。 ① 手錠及び腕輪は手くびに,バンドは腰部(下腹部及び下背部を含む。 以下同じ。)に使用し,それ以外の部位には使用しないこと。 ② 手錠を使用した場合の手の位置は,腰部においてそれぞれ,両手前,両手後,片手前片手後及び両手各横とし,手くび,前腕部又は上腕部を交錯させないこと。 ③ 1個の手錠を2人以上に使用しないこと。 ④(1) 被使用者の食事及び用便等にあたっては,施錠を一時はずして用を便ぜしめること。 (2) 右により難い場合は,できるだけ次のような配慮をすること。 イ革手錠のバンドをゆるくする。 ロ片手の施錠をはずす。 ハ両手を前にする。 (2) 保護房について監獄法は,懲役に処せられた者を拘禁する場所を懲役監とし(同法1条1項),心身の状況により不適当と認めるものを除くほか,在監者を ハ両手を前にする。 (2) 保護房について監獄法は,懲役に処せられた者を拘禁する場所を懲役監とし(同法1条1項),心身の状況により不適当と認めるものを除くほか,在監者を独居拘禁に付すことができると定めており(同法15条),施行規則は,戒護のため隔離する必要がある在監者を独居拘禁に付すことができるとしている(同規則47条)。 そして,「保護房の使用について」(昭和42年12月21日矯正局長通達矯正甲第1203号。以下「保護房通達」という。)は,次の①ないし⑤のいずれかに該当するものであって,普通房に拘禁することが不適当と認められる場合に限り,保護房(被拘禁者の鎮静及び保護に充てるため設けられた相応の設備及び構造を有する独居房)に拘禁すると定めている(保護房通達記の一)。 ① 逃走のおそれがある者② 職員又は他の収容者に暴行又は傷害を加えるおそれがある者③ 自殺又は自傷のおそれがある者④ 制止に従わず,大声又は騒音を発する者⑤ 房内汚染,器物損壊等異常な行動を反復するおそれがある者(3) 懲罰についてア監獄法59条は,在監者が監獄内の紀律に違反した場合には,懲罰を科すべきことを規定している。そして,在監者が遵守すべき事項については,冊子の形にして監房内に備え置くべきこととされている(施行規則22条2項)。 イ Kにおいては,在監者が同刑務所で生活する上での一般的注意事項及び動作要領をまとめた冊子とともに,在監者が遵守すべき事項を記載した「被収容者遵守事項」(乙7。以下「本件遵守事項」という。)を各居房に備え付けている。 本件遵守事項には,「他人に暴行を加え,又は加えることを企ててはならない 守すべき事項を記載した「被収容者遵守事項」(乙7。以下「本件遵守事項」という。)を各居房に備え付けている。 本件遵守事項には,「他人に暴行を加え,又は加えることを企ててはならない」(19項),「他人と喧嘩若しくは口論し,又はすることを企ててはならない。」(20項),「他人をひぼうし,中傷し,又は侮辱するような言動をしてはならない。他人に対し粗暴な言動をしてはならない。」(21項),「作業を拒否し,怠け,又は妨害してはならない。」(28項),「許可なく定められた方法以外の方法で衣類を洗濯し,又は身体を洗ってはならない。」(35項),「建物,備品等に落書きをしてはならない。」(37項),「職員の職務上の指示,命令に対し抗弁,無視などの方法により職員の職務を妨害してはならない。」(39項)等の事項が定められている。 ウ懲罰の種類については,監獄法60条1項がこれを定めており,このうち,同項11号に定める軽屏禁の実施方法については,同条2項が,「受罰者ヲ罰室内ニ昼夜屏居セシメ情状ニ因リ就業セシメサルコトヲ得」と規定している。 (4) 独居拘禁について前記(2)のとおり,監獄法15条は,心身の状況により不適当と認めるものを除くほか,在監者を独居拘禁に付すことができるとし,施行規則47条は,戒護のため隔離する必要がある在監者を独居拘禁に付すことができるとしている。 また,施行規則23条は,独居拘禁に付された者について,他の在監者と交通を遮断し,召喚,運動,入浴,接見,教晦,診療又はやむを得ない場合を除くほか,房内に独居させることと定めている。 (5) 作業賞与金について懲役受刑者は,監獄において定役に服さなければならない(刑法12条2項)。在監者の作業による収 い場合を除くほか,房内に独居させることと定めている。 (5) 作業賞与金について懲役受刑者は,監獄において定役に服さなければならない(刑法12条2項)。在監者の作業による収入は,すべて国庫の所得とされるが,作業に就いた在監者には,法務省令の定めにより,作業賞与金を支給することができる(監獄法27条1項,2項)。作業賞与金の額は,行状,作業の成績等を斟酌して定めることとされており(同条3項),これを受けて,施行規則は,作業賞与金を,行状,性向,作業の種類,成績,科程の了否を斟酌し,法務大臣の定めたところによって計算することとしている(同規則71条)。 (6) 仮出獄について懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは,有期刑についてはその刑期の3分の1,無期刑については10年を経過した後,行政官庁の処分によって仮出獄を許すことができる(刑法28条)。 そして,仮釈放及び保護観察等に関する規則(昭和49年法務省令第24号。 以下「仮釈放等に関する規則」という。)32条は,仮出獄の具体的な判断基準として,悔悟の情が認められること,更生の意欲が認められること,再犯のおそれがないと認められること及び社会の感情が仮出獄を是認すると認められることを総合的に判断し,保護観察に付することが本人の改善更生のために相当であると認められる場合にこれを許可するものと規定している。 仮出獄については,地方更生保護委員会が,監獄の長から仮出獄の申請があった場合に,仮出獄の許否の決定をするため,委員を指名して,審理を行わせ,その結果に基づき,仮出獄を相当と認めるときは,決定をもってこれを許さなければならない。また,監獄の長から刑法28条の期間を経過した旨の通告があった受刑者については,上記の申 名して,審理を行わせ,その結果に基づき,仮出獄を相当と認めるときは,決定をもってこれを許さなければならない。また,監獄の長から刑法28条の期間を経過した旨の通告があった受刑者については,上記の申請がない場合においても,仮出獄の許否の決定をするため,委員を指名して,審理を行わせることができるが,この場合には,あらかじめ,監獄の長の意見を求めなければならない(犯罪者予防更生法28条,29条1項及び2項,31条1項及び2項)。 2 前提となる事実(末尾に証拠を掲記した事実は当該証拠により認定した事実であり,証拠を掲記しない事実は当事者間に争いがない事実である。なお,以下,K長を「所長」といい,その他の職員の肩書については,特段の記載がない限り,「K処遇部処遇部門」を省略する。)(1) 原告は,アメリカ合衆国の国籍を有する者であって,平成4年11月19日,大麻取締法違反の被疑事実により逮捕され,新東京国際空港警察署,千葉刑務所拘置監に拘禁された後,平成5年3月10日,千葉地方裁判所において,大麻取締法違反,関税法違反の罪により,懲役4年6月の刑を言い渡され,同月25日,同刑が確定したことに伴い,同月31日にKに移送され,同刑務所で同刑の執行を受けたものである。 (2) 原告は,Kに入所後,平成5年6月12日に至るまでの間は,その行為が規律違反容疑に問われるようなことはなかったが,同日,被拘禁者回覧用新聞紙「ジャパンタイムス」の未配達郵便物欄中,同刑務所の在監者であるIの氏名が記載された箇所に赤色ボールペンで書き込みをしたことについて,規律違反容疑行為に該当するとして取調べを受け,同月22日,注意処分を受けた。 (3)ア原告は,平成5年7月22日,Kの外国人用食堂(以下,同刑務所内の施設については,単にそ ことについて,規律違反容疑行為に該当するとして取調べを受け,同月22日,注意処分を受けた。 (3)ア原告は,平成5年7月22日,Kの外国人用食堂(以下,同刑務所内の施設については,単にその施設名をもって,「外国人用食堂」というように表示する。)において,原告が目を開けていると判断して注意を与えた同刑務所の職員(以下,同刑務所の職員を単に「職員」という。)に対して反抗したことが,本件遵守事項39項に定める「抗弁」に該当する規律違反行為であるとして,同年8月17日,軽屏禁10日(文書図画閲読禁止併科)の懲罰を科す旨告知された(以下,この懲罰の対象となった事件を「第1事件」という。)。 イ原告は,平成5年8月17日午後,職員から,革手錠を両手後ろの方法により装着されたうえ,金属手錠を併用され(以下,この革手錠及び金属手錠の使用を「本件戒具使用」という。),さらに,原告が着用していたズボン及び下着を,股の部分が切れているズボン(以下「股割れズボン」という。)及びパンツ(以下,「股割れズボン」と併せて,「股割れズボン等」という。)に替えられたうえで,保護房第4室(以下「本件保護房」という。)に拘禁された(以下,原告の本件保護房における拘禁を「本件保護房拘禁」という。)。 その後,原告は,同月18日,本件戒具使用を解除され,同月19日,本件保護房拘禁を解除された。 ウ原告は,平成5年8月17日午後,原告の居房において,職員に対して暴行をしようとしたことを理由として,同年9月7日,軽屏禁25日(文書図画閲読禁止併科)の懲罰を告知され,その執行を受けた(以下「平成5年9月7日の懲罰」という。)。 (懲罰理由につき乙46)エ革手錠は,革製の腕輪を両手首に装着し,腕輪に 禁止併科)の懲罰を告知され,その執行を受けた(以下「平成5年9月7日の懲罰」という。)。 (懲罰理由につき乙46)エ革手錠は,革製の腕輪を両手首に装着し,腕輪に付いた金具にベルトを通した上,ベルトを胴体に締めることによって,両手首を胴体に固定する拘束具である。 Kにおいて使用されていた革手錠は,1本のベルト及び2個の腕輪から構成されており,表面材質は牛革である。 上記ベルトは,規格寸法が長さが140センチメートル以内,幅が4・5センチメートル以内であり,二重構造となっていて,各層の間に銅線を入れることで強度を保っている。 上記ベルトには,数個の穴が開けられており,このベルトの穴に,バックルの留め金を入れることにより,腹部ないし腰部にベルトを回して固定することができる。また,バックルとバックルの留め金には,ねじ穴が開けられており,この穴にらせん状ねじを入れることにより,施錠される構造となっている。 腕輪には,上記用ベルトに装着させるための,かすがい型の鉄棒が装着され,この鉄棒を通せる穴が異なった位置に平行して3つ開いており,腕輪の内径を腕の太さに応じて調節できるようになっている。 (検証の結果)(4) 原告は,平成7年12月14日,第28工場でシャープペンシルの組立作業に従事していた際にわき見をし,そのことを注意した職員に対して,暴言を吐いたとして,同月22日,軽屏禁15日(文書図画閲読禁止併科)の懲罰を告知され,その執行を受けた(以下,この懲罰の対象となった事件を「第2事件」という。)。 (5) 原告は,平成8年2月13日,職員の許可なく洗髪をしたことを理由として,同月20日,軽屏禁5日(文書図画閲 の執行を受けた(以下,この懲罰の対象となった事件を「第2事件」という。)。 (5) 原告は,平成8年2月13日,職員の許可なく洗髪をしたことを理由として,同月20日,軽屏禁5日(文書図画閲読禁止併科)の懲罰を告知され,その執行を受けた(以下,この懲罰の対象となった事件を「第3事件」という。また,原告が同刑務所において受けた上記の各懲罰を併せて「本件各懲罰」という。)。 (6)ア原告は,平成8年3月14日,独居拘禁とする旨を告知され,同日以降,平成9年12月27日に出所するまで,昼夜独居拘禁の処遇を受けた(以下「本件独居拘禁」という。)。 (原告の出所時期及び出所までの処遇につき乙21,63)イ Kにおける昼夜独居拘禁の処遇は,東4舎又は東5舎の各居室において行われる。 昼夜独居拘禁者の居房は,一般の独居房と広さや基本的な設備に大差はないが,鏡がないほか,居室の窓の外には,外部から被拘禁者が誰か判明しないようにすること及び他の被拘禁者と不正に連絡することを防止することを目的として,覆いが設けられている。 昼夜独居拘禁中は,工場で集団作業をすることや,集団で行われるレクリエーション行事に参加することが認められず,紙細工等の居室内で可能な作業を行う扱いとされている。運動は週3回各30分間単独で実施され,入浴も原則として単独で行われる。面会,手紙の発受の扱いは,集団処遇の場合と同様である。 (乙15,16) 3 当事者双方の主張(原告の主張)(1) 原告がKにおいて受けた不法行為ア不法行為に至る経緯原告は,Kに入所後,約2か月間は,他の在監者と特に異なることなく所内生活を送っていた。 (1) 原告がKにおいて受けた不法行為ア不法行為に至る経緯原告は,Kに入所後,約2か月間は,他の在監者と特に異なることなく所内生活を送っていた。 ところが,平成5年6月中旬ころ,原告が外国人在監者に対する本の配給の方法についての改善策を願せんの形で提出したころから,職員の原告への対応が微妙に変化し始め,原告は,職員に行進の仕方がおかしいとして部屋の外で15分間足踏みを命ぜられたり,配給本の願せんを提出したところ,職員に目の前でもみくちゃにして捨てられるなどの扱いを受けるようになった。 原告は,自分が差別的に取り扱われているのではないかと感じ,事態の改善への助言を求めるために,職員との面会を希望する旨の願せんを提出した。 イ第1事件a 第1事件の経緯原告は,平成5年7月22日,昼食時に外国人用食堂にて,ドアから最も離れたテーブルで窓を背にして,ドアの方を向いて座っていた。食堂には,約80名の外国人受刑者がいた。 食堂では,全員が中に入って着席するまで,目を閉じて待っている規則になっており,原告は,命ぜられたとおり目を閉じていたが,ドアの付近の方から名前を呼ばれたので,目を開けた。すると,ドアの付近で監視していた職員が,原告を指差して,目を閉じるよう指示した。原告は,指示に従って目を閉じたが,原告が目を閉じていたうえに,多数の外国人受刑者の中から原告が選ばれて注意されたことが不思議で,落ち着かなくなった。このとき原告は,前歯で舌をなめ回したことはあっても,舌を外に出したことはない。 その直後,原告は,再び大きな声で呼ばれたため,もう一度目を開けたところ,職員が大きな足音 った。このとき原告は,前歯で舌をなめ回したことはあっても,舌を外に出したことはない。 その直後,原告は,再び大きな声で呼ばれたため,もう一度目を開けたところ,職員が大きな足音をさせ,大声で叫んで後ろまで来た。原告は,どう対応してよいのかわからず,前を向いて目を閉じていたが,その職員はそのまま叫んで足踏みをし,壁を拳で叩いて窓を振るわせていた。原告は,職員の突然の荒々しい態度に完全に動揺し,「アイ・ドント・アンダースタンド・ホワット・ユー・アー・トーキング・アバウト」(“Idon'tunderstandwhatyouaretalkingabout.”「何を言っているのかわかりません。」という意味)と呟いたが,返答はなかった。 原告は,立ち去りながら後について来るよう指示した職員に従って,外国人用食堂の25メートルほど先にある第1区の事務室に連行された。そこでは,職員が,興奮しながら大げさな動きで何かを説明し,食堂での原告の行為を説明するそぶりで舌を突き出して,あたかも原告が舌を突き出したかのような説明をしていた。 b 取調べのための独居拘禁原告は,同日,独居房に連行され,同年8月16日まで,取調べのための独居に付されたが,その理由について,連行の際には何の説明もなく,取調べを受けた際,初めて,目を開けたことと反抗的態度により罰せられているという説明を受けた。 c 懲罰手続原告は,同月1日ころ,東5舎3階の部屋の部屋に連行され,懲罰審査会に出席した。そこで原告は,10名以上の受刑者と共に壁に向かって並ばされ,1人ずつ審査会室に連れて行かれ,通訳を通じて,口頭で容疑事実を告知された。原告は,これらの事実をすべ に連行され,懲罰審査会に出席した。そこで原告は,10名以上の受刑者と共に壁に向かって並ばされ,1人ずつ審査会室に連れて行かれ,通訳を通じて,口頭で容疑事実を告知された。原告は,これらの事実をすべてを否定し,自分がしたことは,名前を呼ばれた後に目を開けたことと,職員に対して何を言っているのかわからないと言ったことだけであると述べた。 原告は,同月16日,再び同じ部屋に連行され,上記と同様の手続を経て,同じ回答をした。 原告は,以上の手続に際し,弁護士を依頼する権利や,証拠を閲覧したり証人を喚問する権利を認められなかった。 原告は,同月17日にも同じ部屋に連行され,「10日間」とだけ言い渡された。原告は,「10日間」が懲罰10日という意味であることを理解できず,また,言渡しの理由や不服申立ての可否を職員に尋ねても,回答を得ることができなかった。 ウ本件戒具使用及び本件保護房拘禁a 原告は,上記懲罰告知の後,平成5年8月17日午後1時すぎ,東5舎3階から自己の居房である東4舎1階第129室に連行された。原告は,今後の手続について一切告知されていなかったため,不安を感じていたほか,懲罰の理由が目を開けたことに対するものか,反抗に対するものかも理解できず,その両者について自分は無実であり,犠牲者にされたと考えていた。 原告は,東4舎1階の担当職員である法務事務官看守部長A(以下「A部長」という。)に対し,懲罰10日がどういう意味かを尋ね,自分が当惑し,事態が理解できていないことを説明した。しかし,A部長は,これに回答せず,一方的にいらだって命令的に,「ブックス・アウト」(“Booksout.”「本を出せ」という意味)と何度も叫ん 分が当惑し,事態が理解できていないことを説明した。しかし,A部長は,これに回答せず,一方的にいらだって命令的に,「ブックス・アウト」(“Booksout.”「本を出せ」という意味)と何度も叫んだため,原告は,質問を続けることを諦め,房内の棚にある本を移動しろと指示しているものと理解して,これに従い,できるだけ速く棚からドアの前の床に本を下ろした。このとき,原告が本を投げた事実はない。 この作業を完了した後,原告は,外にいる職員に,本を移動する際に使用できる袋はあるのかを尋ねたが,答えはなかった。さらに原告は,すべての本をドアの前に積み上げ,看守が他に何を出すことを要求しているのか考えながら房内を見回していた際,法務事務官副看守長主任矯正処遇官B(以下「B主任」という。)が房外に立っていたので,パジャマを持って行くべきかといった質問をしたが,A部長もB主任も,これに回答しなかった。 b すると,突然房のドアが開き,3人の職員が飛び込んで来て,原告をつかんで立たせ,外に連れ出し,原告の両腕を後ろに回し,手錠を掛けた。この間,原告は,全く抵抗しなかった。 原告は,取調室の中へ連行され,うつ伏せに倒され,8ないし10名の職員に上から座られ,腕を捻られ,洋服をはぎ取られた。原告は,裸にされ,倒されたまま足を挙げられ,股割れズボン等をはかされ,きついシャツを着せられた。 その上,原告は,金属手錠をいったん外された後,革手錠の腕輪をはめられ,革手錠のベルトを腰の周りにはめられた上,職員に背中の上に乗られ,ベルトを可能な限りきつく引っ張り締め付けられた。そして,金属手錠を二重に掛けられた。 c さらに,原告は,腕をつかまれて立たされ,8フィート(約2・4メー ,職員に背中の上に乗られ,ベルトを可能な限りきつく引っ張り締め付けられた。そして,金属手錠を二重に掛けられた。 c さらに,原告は,腕をつかまれて立たされ,8フィート(約2・4メートル)四方くらいの本件保護房内に拘禁された。この間,原告は,一切抵抗をしていない。 原告の革手錠は,胴に食い込むほどきつく締められており,息を吸うたびに腹部に激痛が走った。また,手錠も手首に食い込み,激しく痛んだため,原告は,ついにほとんど麻痺してしまった。原告は,なぜこのような扱いを受けるのか,房をのぞき込む職員に尋ねたが,応答はまったくなかった。 原告の革手錠の装着による痛みは,本件保護房内での時間の経過により激化した。また,原告には,本件保護房拘禁中,もともと持病として有していたぜん息の発作が生じた。原告には夕食が支給されたが,看守がスプーンで革手錠を装着したままの原告の口元に食事を運んだものの,原告は苦痛でほとんど喫食することができなかった。 原告は,職員に対し,革手錠の解除を再三にわたり懇願したが,まったく聞き入れられなかった。 d 平成5年9月7日の懲罰に関する手続原告は,第1事件による懲罰の終了後,本件遵守事項19項違反の規律違反容疑行為である「暴行しようとした件」について,懲罰の取調べを受けた。その際,原告は,本を投げたとの容疑について,自己の無実を訴えた。取調べに当たった職員は,原告に懲罰事由が存することについて確信が持てず,無実の可能性があることを認めていた。 原告は,同年9月6日,上記規律違反容疑行為に関する懲罰審査会に出席した。その際,第5区(東4舎,東5舎,保護房及び病舎を受持区域とする。)の区 能性があることを認めていた。 原告は,同年9月6日,上記規律違反容疑行為に関する懲罰審査会に出席した。その際,第5区(東4舎,東5舎,保護房及び病舎を受持区域とする。)の区長であった法務事務官看守長上席統括矯正処遇官C(以下「C区長」という。)は,無実を訴えた原告に対し,原告の胸を強く小突き続けながら「嘘つきだ」と言うなどして非難したが,審査会の出席者は,原告の状況説明を信用していた。 しかしながら,原告は,同月7日,軽屏禁25日の懲罰を告知され,即時にその執行を受けた。 エ第2事件原告は,平成5年12月14日,第28工場で作業に従事していた際,ひげが気になって顎を掻いた。すると,職員が,原告がわき見をしていたとして,ひどい剣幕で叫び続けた。原告は,これを否定したものの,無駄だと思い,何度も謝ったが,職員は怒り続け,懲罰の手続を開始するため原告を壁に向かって立たせ,連絡を取りに電話の方へ向かった。そこで原告は,その職員が立ち去った後,小さな声で,「クレージー」(“Crazy.”)と呟いた。すると,その職員は,即座に戻って来て,原告を取調室へ連行した。 原告は,軽屏禁7日の懲罰を告知されたが,その1時間後,何の取調べを受けないまま,一方的に軽屏禁の期間を15日と告知され,その執行を受けた。 オ第3事件原告は,平成8年2月13日,髪の毛の寝ぐせが気になって,手で水をすくって髪につけて整髪をしたところ,入浴時以外に許可なく身体を洗ったという理由で軽屏禁5日の懲罰を告知され,その執行を受けた。 カ本件独居拘禁原告は,平成8年3月4日,日本弁護士連合会に対し,自らの事件についての法的手段を相 洗ったという理由で軽屏禁5日の懲罰を告知され,その執行を受けた。 カ本件独居拘禁原告は,平成8年3月4日,日本弁護士連合会に対し,自らの事件についての法的手段を相談するため,弁護士の派遣を依頼する手紙を書いたことから,同月14日以降,厳正独居拘禁(昼夜独居拘禁)処遇を受け,終日独居房に拘禁された。 この独居房には,鏡がなく,窓にはプラスチックの覆いが施され,ほとんど光や風が入らなかった。また,原告には,週に3回30分ずつ,コンクリートの庭に出て運動することを認められたが,工場に出ることや,レクリエーションの機会は認められなかった。 また,原告は,本件独居拘禁中,一日中室内で紙を折って貼るなどの作業を強いられ,この作業に対して原告に与えられた作業賞与金は,平成8年5月現在,月額約900円にすぎなかった。 (2) 各加害行為における違法性及び故意,過失の存在ア集団的暴行について原告は,本件戒具使用及び本件保護房拘禁に際し,職員に対して実力による制圧の必要性を生じさせるような行動を一切していないにもかかわらず,多数の職員により突然一方的に暴行を加えられた。このような職員の行為は,特別公務員暴行凌虐罪に該当するものであって,違法であることが明らかである。 イ本件戒具使用及び本件保護房拘禁についてa 革手錠を使用することに関する一般的な違法性刑務所における革手錠の使用は,そもそも監獄法及び施行規則の予定している範囲を超える拘束具の使用であって,違法である。 (a) 監獄法及び施行規則には,革手錠に関する規定はなく,施行規則48条2項に基づく前掲司法大臣訓令が,「戒具の製式 予定している範囲を超える拘束具の使用であって,違法である。 (a) 監獄法及び施行規則には,革手錠に関する規定はなく,施行規則48条2項に基づく前掲司法大臣訓令が,「戒具の製式」を定める中で,「手錠」の一種として革手錠を規定しているにすぎない。 しかしながら,革手錠は,形式的には上記のとおり手錠の一種とされているものの,通常の手錠である金属手錠と比べ,可動域の制限は著しく,両腕の自由を奪うのみならず,上体を前後左右に動かすことすら困難にするなど,「手錠」が予定している拘束を量的にも質的にも超える拘束をもたらすものであり,その形態及び機能に照らし,およそ施行規則48条1項に定める「手錠」の範疇に入るとはいい難い。 (b) のみならず,国際連合被拘禁者処遇最低基準規則(1955年犯罪防止及び犯罪人取扱いに関する第1回国際連合会議採択,1957年国際連合経済社会理事会決議第633にて承認。以下「国連最低基準規則」という。)33条は,「手錠,鎖,枷,拘束服のような拘束具は,懲罰の手段として絶対に用いられてはならない。さらに,鎖または枷は,拘束具としても用いられてはならない。」と規定しているところ,革手錠は,同条において絶対的に使用が禁止されている「枷」に当たるか,あるいは「枷」よりも数段強度な拘束具である。そして,国連最低基準規則は,法形式上厳格に条約として起草されてはいないものの,採択後40年を経過し,その遵守,履行に関する制度が整備されており,少なくとも現在は国際的な慣習法であることに照らせば,このような国際法規の規定に反する形で法律の拡大解釈をすることは,日本国憲法(以下「憲法」という。)前文及び98条2項に反して許されない。 したがって,この点か に照らせば,このような国際法規の規定に反する形で法律の拡大解釈をすることは,日本国憲法(以下「憲法」という。)前文及び98条2項に反して許されない。 したがって,この点からしても,革手錠が施行規則48条1項にいう「手錠」に当たると解釈することは許されない。 (c) 以上のとおり,革手錠は,監獄法及び規則が予定しない違法な戒具であるから,これを原告に対して使用したことは違法である。 b 本件における戒具の具体的な使用に関する違法性(a) 手錠の使用要件の欠如施行規則50条1項は,手錠の使用要件として,在監者に「暴行,逃走若クハ自殺ノ虞」があることを定めている。 しかし,原告は,本件戒具使用に先立ち,看守の指示に従い,房内の書物及び日用品の整理をして座っていただけであり,看守らに突然つかまれた後も,戸惑いと驚きにより,体の力がすっかり抜けてしまい,全く抵抗しなかったのであって,暴行のおそれはなかった。 したがって,本件では,原告に手錠を使用する実体的要件が認められないから,原告に対して金属手錠及び革手錠を使用したことは違法である。 (b) 革手錠を使用したことの違法性仮に,本件戒具使用に際し,被告が主張するような事実が存したとしても,原告は,房内で数冊の本と日用品を投げたにすぎず,独居房の中では他の受刑者に危害を及ぼすおそれもないのであるから,職員としては,原告に対し,そのまま原告が房内にいる状態で,通訳を介して,「どうした,落ち着け。」とでも指示すればよかったのである。 にもかかわらず,職員は,その後も右腕を振り払っ ては,原告に対し,そのまま原告が房内にいる状態で,通訳を介して,「どうした,落ち着け。」とでも指示すればよかったのである。 にもかかわらず,職員は,その後も右腕を振り払って英語で詰め寄ったにすぎない原告に対し,その両腕をつかんで金属手錠を使用するという暴力的な行為に出たうえ,さらに取調室に連行して革手錠を装着したものであって,後ろ手に金属手錠を使用された者に対し,さらに革手錠の装着を必要とする危険性が認められないことは明らかである。 したがって,原告には,拘束力の強い革手錠を使用する必要性はまったく認められない。 (c) 両手後ろの方法による使用その他革手錠の使用態様に関する違法性i 東京高等裁判所平成10年1月21日判決(判例時報1645号67頁,判例タイムス980号292頁)は,革手錠及び金属手錠を両手後ろの方法により併用した場合,排便,食事,就眠における被使用者の身体的,精神的苦痛が,両手前の方法より強度である一方,両手前の方法によっても十分に戒護の目的を果たし得ることとして,革手錠及び金属手錠を両手後ろの方法により併用することが,原則として違法であるとしている。 本件戒具使用の場合,両手後ろの方法により革手錠及び金属手錠が併用されている点は,上記東京高等裁判所判決の事案と同様であるが,本件戒具使用において原告が受けた苦痛は,生理的行動の困難に加えて,きつく後ろに腕を固定された痛み,ぜん息の発作もあいまって,上記東京高等裁判所判決において違法とされた事案を上回るものであるから,本件における両手後ろの方法による革手錠及び金属手錠の併用が違法であることは明らかである。 ⅱ また,本件通牒は 高等裁判所判決において違法とされた事案を上回るものであるから,本件における両手後ろの方法による革手錠及び金属手錠の併用が違法であることは明らかである。 ⅱ また,本件通牒は,革手錠が強度な拘束具であり,本質的な危険性を有し,違法な使用実績のあることにかんがみ,前記のとおり,その使用方法を厳格に定めており,特に,被使用者の食事及び用便等にあたっては,施錠を一時外して用を弁ぜしめることとし,そのような方法により難い場合でも,できるだけ革手錠のバンドを緩めたり,片手の施錠を外したり,両手を前にするといった配慮をすることを規定している。 しかし,原告は,本件保護房拘禁中も,革手錠及び金属手錠を両手後ろの方法により併用されたままであり,食事の際にも革手錠を外したり緩めたりするなどの配慮をいっさい受けることがなかったものである。 このように,革手錠を使用したままで食事を強いられた場合,被使用者は,首を突き出して口のみで喫食する,いわゆる犬食いの方法か,又は職員の介添えにより喫食する方法の選択を余儀なくされるのであって,このように,被使用者の自尊心を傷つけ,強度の精神的苦痛を与える非人道的な処遇は,前記通牒にも明らかに違反している。 さらに,原告は,排泄時においても革手錠を外したり緩めたりするといった配慮を受けることがないのみならず,革手錠を外さないことを前提として,股割れズボン等を着用させられた。この着衣は,用便のたれ流しを予定しているものであり,このような着衣を強いることは,被使用者の自尊心を傷つけ,強度の肉体的,精神的苦痛を与える非人道的な処遇であるから,本件通牒にも明らかに違反するものである。 そして, ,このような着衣を強いることは,被使用者の自尊心を傷つけ,強度の肉体的,精神的苦痛を与える非人道的な処遇であるから,本件通牒にも明らかに違反するものである。 そして,上記のような態様による本件戒具使用が本件通牒に違反することは,Kにおける実務運用方針の変更を受けてこれを全国化する目的で発出されたと推測される,「戒具の使用及び保護房への収容について」(平成11年11月1日矯正局長通達法務省矯保第3329号)の解説において,食事及び用便の際には革手錠を外すことが原則であり,外せないというのはまさに例外であることを強く認識するよう注意していることに照らして,より明白になったということができる。 (d) 金属手錠併用の違法性原告に対する革手錠の使用に際しては,併せて両手首に金属手錠も使用されているところ,原告は,両手後ろの方法による革手錠の使用により,両腕の自由を完全に奪われていたうえ,革手錠の腕輪の部分は両手首に跡が残るほど緊縛されており,腕輪が抜けるおそれも皆無であって,金属手錠を併用する必要がないことは明白であった。 しかも,本件では,金属手錠は原告の手首に食い込むように使用されていたのであり,必要もないのにあえて原告に金属手錠を併用したことは,原告の苦痛を増すこと以外の理由によるものではないから,本件における金属手錠の併用は,戒具使用の目的を逸脱した違法な措置である。 (e) 本件保護房拘禁中における革手錠使用の違法性i 本件では,原告に対する革手錠の使用は,本件保護房拘禁中も解除されていない。 保護房拘禁の要件と,これに革手錠を併用する要件とは,明確に区別して論じ i 本件では,原告に対する革手錠の使用は,本件保護房拘禁中も解除されていない。 保護房拘禁の要件と,これに革手錠を併用する要件とは,明確に区別して論じられるべきであり,在監者が保護房に拘禁されることによって,少なくとも逃走や他者に対する暴行を防ぐことができることからすれば,保護房に拘禁された場合の革手錠の使用は,仮に認められるとしても,自己の生命,身体を害する行為に及ぶおそれのあるような極めて限定された場合にのみ認められるというべきである。 しかしながら,原告については,自殺や自傷行為に及ぶおそれが一切存在しないのであるから,原告を保護房に拘禁したうえに,革手錠を併用しなければならない理由は認められない。 ⅱ また,原告は,本件保護房拘禁中にぜん息の発作を起こしているところ,このような場合にまで革手錠を使用するような戒護の必要性が存したとは到底考えられず,かかる措置は拷問ともいうべきであって,その違法性は重大である。 (f) 本件戒具使用が警察比例の原則に反することi そもそも,戒具の使用については,警察比例の原則により,暴行,逃走若しくは自殺の具体的なおそれがある在監者について,手錠を使用することが必要であると認められる場合に限り,かつ,戒護の目的達成のための最小限度の範囲,方法に使用されなければならない(前掲東京高等裁判所判決)。 ⅱ しかしながら,本件戒具使用では,原告について,両手前の方法による手錠の使用により,暴行抑制効果が不足したという具体的事情はなく,保護房に拘禁した原告に対し,両手後ろの方法により革手錠及び金属手錠を併用しなければならないような,暴行,逃走若 ,両手前の方法による手錠の使用により,暴行抑制効果が不足したという具体的事情はなく,保護房に拘禁した原告に対し,両手後ろの方法により革手錠及び金属手錠を併用しなければならないような,暴行,逃走若しくは自殺の具体的なおそれは存在しない。 したがって,本件において,原告に対し,両手後ろの方法により革手錠及び金属手錠を使用したことは,戒護の目的を達するために必要最小限度の範囲を超えた方法による拘束であり,違法である。 さらに,原告に対する革手錠の使用は,本件保護房拘禁中も継続されているところ,これが必要最小限度の範囲を超えた戒具の使用であることは,上記のとおり明らかである。 以上に加え,原告が股割れズボン等の使用に伴い,精神的苦痛を受けたこと,ぜん息の発作が生じた後も両手後ろの方法により革手錠及び金属手錠が併用されていたこと等も併せ考慮すれば,本件戒具使用が戒護の目的達成のための最小限度の範囲,方法を超えたものであることは,明らかというべきである。 ⅲ これに対し,被告は,原告が一般の日本人より体格がはるかに大柄で体力的にも優っており,原告の暴行を制圧することが困難であったことや,原告に対して両手前の方法により革手錠を装着することが困難であったことから,本件戒具使用はやむを得ない措置であって,違法とはいえない旨主張する。 しかしながら,原告は,身長は高いものの,特に力が強かったわけではなく,他方で,身長180センチメートル,体重85キログラムの柔道経験者であるC区長をはじめとする屈強の看守が7人以上も原告を取り囲んで制圧していたのであるから,職員側が原告に対して圧倒的に優位な力関係に立っていたことは明らか メートル,体重85キログラムの柔道経験者であるC区長をはじめとする屈強の看守が7人以上も原告を取り囲んで制圧していたのであるから,職員側が原告に対して圧倒的に優位な力関係に立っていたことは明らかであり,実際にも,原告に対する革手錠の装着は,3分以内という短時間で完了しているのであるから,原告に対して両手前の方法により革手錠を装着することが困難であったということはできないのであって,被告の上記主張は理由がない。 ⅳ なお,革手錠の使用が全国的に激減していることは,統計上明らかであり,Kにおいても,革手錠が使用された件数は,平成2年から平成7年までは年間200件前後であったのに対し,平成11年には僅か3件に激減しており,しかもそのすべてが「自殺のおそれ」を使用事由とした,両手前の方法によるものであって,「暴行のおそれ」を使用事由としたものは1件もない。また,同年において,暴行傷害のおそれを理由とした保護房拘禁は33件であるが,その中で革手錠を使用した事例はない。 したがって,「暴行のおそれ」があるとして保護房に拘禁した場合には革手錠を使用する必要がないこと,また,革手錠を片手前片手後ろや両手後ろなど,被使用者に著しい苦痛を与える方法により使用する必要もないことは,上記の事実からも明らかとなったというべきである。 ⅴ したがって,本件戒具使用は,警察比例の原則に照らしても違法である。 c 本件保護房拘禁の違法性保護房の使用については,監獄法に明確な規定はなく,保護房通達により運用されているのが実態であり,保護房通達によれば,保護房への拘禁が認められるのは,前記1(2)①ないし⑤の場合に限られている。 しかしな 法に明確な規定はなく,保護房通達により運用されているのが実態であり,保護房通達によれば,保護房への拘禁が認められるのは,前記1(2)①ないし⑤の場合に限られている。 しかしながら,原告は,本件保護房拘禁に先立ち,暴行を行ったり,大声を発したりしたことはないのであるから,原告には,本件保護房拘禁の時点で,保護房に拘禁すべき要件は何ら認められないし,革手錠を装着された原告を保護房に拘禁する必要性もない。 したがって,本件保護房拘禁は違法である。 さらに,原告は,本件保護房拘禁中にぜん息の発作を起こしているのであるから,保護房拘禁の要件を欠いたまま原告の保護房拘禁を継続した措置には,重大な違法性が存する。 d 本件戒具使用及び本件保護房拘禁がB規約に違反すること原告は,職員から何らの説明を受けないまま制圧され,金属手錠をはめられて組み伏せられ,さらには枷ともいうべき革手錠を腹部に食い込むほどきつく締められ,そのまま何人もの職員に囲まれた状態で下半身の服をはぎ取られ,股割れズボン等を装着された後,身動きのとれない状態でカメラで監視されている房に入れられ,しかもこのズボンがカメラで監視されている状態のまま途中で脱げてしまい,さらには,食事の際も革手錠を外してもらえず,革手錠が食い込んで,苦痛の余り食事をとることもできず,このような状態のまま一昼夜置かれ,革手錠を外された後も,まる1日,なおも非人間的な構造の本件保護房に放置されたものである。 このような原告に対する扱いは,人間の尊厳を完全に無視したものであって,市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和54年条約第7号。以下「B規約」という。)7条が禁じる「非人道的な若しく このような原告に対する扱いは,人間の尊厳を完全に無視したものであって,市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和54年条約第7号。以下「B規約」という。)7条が禁じる「非人道的な若しくは品位を傷つける取扱」に該当し,違法である。 ウ本件各懲罰についてa 本件各懲罰に共通する違法性について(a) 監獄法に基づく懲罰は,刑事拘禁に伴う自由の剥奪に加えて,新たに被拘禁者の法益を剥奪する処分であり,その要件については,憲法31条及び13条の適用又は準用により,刑罰と同様,法令によって明確にされなければならない。 しかしながら,監獄法は,59条において,在監者が紀律に違反したときは懲罰を科すことを定めるのみであって,懲罰要件については具体的な規定を置かず,懲罰要件はすべて刑務所長の定める遵守事項によっているのが実情である。 このように,懲罰要件について具体的な定めのない監獄法の規定に基づき遵守事項違反を理由として懲罰を科すことは,憲法31条及び13条に反し,違憲というべきである。 また,そもそも懲罰要件について具体的な定めのない監獄法59条自体が,その不明確性ゆえに違憲である。 (b) 監獄法に基づく懲罰が,仮出獄の機会を奪い,身柄拘束期間の短縮を受けるという重要な法益の剥奪を伴うものである以上,その適用手続においても,対象者の防御の機会を保障した公正な手続でなければならないことは,憲法31条の要請するところである。 また,国連最低基準規則30条も,「いかなる被拘禁者も,自己が犯したとされる違反事実の告知を受け,かつ自己の弁護を申し立てる適当な機会を与えられるので 請するところである。 また,国連最低基準規則30条も,「いかなる被拘禁者も,自己が犯したとされる違反事実の告知を受け,かつ自己の弁護を申し立てる適当な機会を与えられるのでなければ,懲罰を科せられない。」と規定しており,「自己の弁護を申し立てる適当な機会」として,本人による有利な証拠の提出,施設側の収集した証拠に対する弾劾の機会及び本人が弁護人を依頼していればその同席する場での審理が含まれるものと解される。 しかしながら,監獄法には,懲罰手続に関する規定はなく,懲罰審査会も施設職員のみによって構成され,弁護士はもちろん補佐人の立会いも認められず,懲罰事由は本人に口頭で告知されるだけで文書は交付されず,証拠の閲覧,証人尋問権も一切認められず,およそ審査の実質をもたない形式的なものにすぎない。しかも,実際には懲罰審査に先立って,「取調べのため」と称して対象者を独居拘禁に付し,事実上何の手続も経ないうちから懲罰を先取りする行為が公然と行われている。 したがって,本件各懲罰は,適切な懲罰手続に基づいて科されたものとはいえないから,違憲,違法であることを免れない。 (c) さらに,原告は,日本語を理解できない外国人であるところ,本件各懲罰の手続は,原告が手続自体の意味及び内容をほとんど理解できないまま進行しており,原告には実効的な自己弁護の機会が与えられていないに等しい。したがって,このような公正でない手続に基づいて科された本件各懲罰は違法である。 (d) 監獄法60条2項は,軽屏禁の内容として,「受刑者ヲ罰室内ニ昼夜屏居セシメ情状ニヨリ就業セシメルコトヲ得」と規定するにとどまり,施行規則にもこの点に関する定めが設けられていないところ, (d) 監獄法60条2項は,軽屏禁の内容として,「受刑者ヲ罰室内ニ昼夜屏居セシメ情状ニヨリ就業セシメルコトヲ得」と規定するにとどまり,施行規則にもこの点に関する定めが設けられていないところ,現行の軽屏禁は,長時間一定の姿勢を固定させることにより,腰痛,肩こり等の肉体的苦痛はもとより,対象者から一切の精神的慰安を奪い去り,拘禁反応等の精神疾患を招く危険すらあるものであるから,B規約7条が禁ずる非人道的な扱いに該当し,絶対的に許されない。 b 原告に対する本件各懲罰の違法性(a) 第1事件に関する懲罰についてi 原告は,第1事件について,前記(1)イaのとおり,名前を呼ばれるまで目を開けていなかったにもかかわらず注意を受け,引き続き日本語で怒鳴られたため,何を言われているか分かりませんと静かに答えただけであって,反抗的な態度をとったことはなく,懲罰事由に該当する行為をしていない。 仮に,原告が「目を閉じていました」と言っていたとしても,そのことが懲罰事由である「反抗」に該当するとはいえない。 ⅱ また,そもそも,原告は,目を開けていなかったのであるから,目を閉じる旨の職員の指示は,本件遵守事項39項に定める「職務上の指示」とはいえず,これに対する抗弁を理由とした懲罰は,違法といわざるを得ない。 ⅲ 監獄法に基づく懲罰は,刑事施設の規律秩序を維持するため,必要やむを得ない限度において科すべきものである。そして,職員の職務上の指示,命令に対する抗弁等を禁止する本件遵守事項39項の規定自体には合理的な理由があるとしても,職務上の指示,命令には,例えばその法的根拠一つをとってみても,多種多様であるはずであり,そ の職務上の指示,命令に対する抗弁等を禁止する本件遵守事項39項の規定自体には合理的な理由があるとしても,職務上の指示,命令には,例えばその法的根拠一つをとってみても,多種多様であるはずであり,その指示,命令の遵守されるべき重要性についても千差万別であることからすれば,同項違反の事実がある場合であっても,直ちに懲罰を科すべきであるとは限らない。 第1事件の場合,本件遵守事項違反の前提となるのは,外国人用食堂において目を閉じていなければならないという「指導」であり,この「指導」が遵守事項ではなく,単なる心得事項にすぎないことは明らかである。そして,監獄法改正に関する法制審議会監獄法部会における部会決議も,このような心得事項が遵守事項と明確に区別され,違反があっても懲罰を科すべきでないことを承認しているものと解されることからすれば,心得事項違反に関する職員の指示,命令に従わなかった場合については,そもそも懲罰は科し得ないというべきである。 したがって,上記「指導」違反についての指示,命令に対する抗弁を理由とする懲罰は,違法である。 ⅳ そもそも,外国人用食堂において,目を閉じていなければならないとされていた趣旨は,目配せによる被拘禁者間の不正な連絡を防止する点にあると解されるところ,目配せだけで交換できる情報には限度があり,目を閉じる扱いの必要性がさほど重大なものでないことは明らかである。 このように,刑事施設内の秩序,規律の維持について,さほどの重要性も持たない事項が規律の対象とされた場合に,被拘禁者がこのような規律を根拠にした職員の指示,命令に無条件に従わなければならないとは考え難く,このような実害のない軽微な事案に対して,軽屏 ほどの重要性も持たない事項が規律の対象とされた場合に,被拘禁者がこのような規律を根拠にした職員の指示,命令に無条件に従わなければならないとは考え難く,このような実害のない軽微な事案に対して,軽屏禁10日という厳罰に処したことは,刑務所長による懲罰権の濫用である。 (b) 平成5年9月7日の懲罰について原告は,職員に暴行をしようとしたことを理由として科された,平成5年9月7日の懲罰に関しても,前記(1)ウaのとおり,本を投げつけたり,職員に暴行しようとしたりしたことはなく,懲罰事由に該当する行為をしていないから,上記懲罰は違法である。 (c) 第2事件に関する懲罰についてi 被告は,そもそも第2事件に関する懲罰事由について,当初はわき見を禁止した本件遵守事項28項に対する違反及び職員の指示に対する抗弁を禁止した本件遵守事項39項に対する違反により懲罰を科した旨主張していたが,その後,他人に対する粗暴な言動を禁止した本件遵守事項21項に対する違反により懲罰を科した旨,主張を変更している。 しかし,第2事件に関する懲罰は,実際には本件遵守事項28項及び39項違反として科されたものであるから,被告の上記主張は虚偽である。 そして,被告が懲罰表に基づいて本件遵守事項違反の主張を行っているはずであるにもかかわらず,それが変更されたことからすれば,被告にとって当初の懲罰表が不都合であることから,本件訴訟の途中において別の懲罰表を作成し,乙52号証として提出したものと考えられる。 ⅱ そこで,第2事件について,本件遵守事項28項及び39項違反により懲罰が科せられたことを前提とすると, いて別の懲罰表を作成し,乙52号証として提出したものと考えられる。 ⅱ そこで,第2事件について,本件遵守事項28項及び39項違反により懲罰が科せられたことを前提とすると,この懲罰は,次の理由により,違法というべきである。 本件遵守事項28項がわき見を禁止する趣旨は,受刑者を作業に専念させ,労働意欲を喚起し,作業中のわき見による事故を防止することにあるところ,懲役が「監獄に拘置して所定の作業を行わせる」ものとされている以上,作業を怠るなどの行為を禁止するのはともかく,わき見自体を禁止することには合理性がない。 実質的にも,現在の我が国の行刑施設において,わき見の禁止は,それに違反した場合,職員から注意を受け,その注意に抗弁することが許されないということによって,事実上被拘禁者に対して強制されていることにかんがみれば,このような非人間的状況を改善するためにも,作業懈怠に当たらない程度のわき見及びこれに対する注意に従わなかったことを理由とする懲罰が禁止される必要がある。この点,平成9年9月29日法務省において開催された被収容者処遇対策協議会の協議経過等を取りまとめた「被収容者の動作要領について」も,作業懈怠に至らない程度のわき見について,物理的強制をもってこれをしないよう確保することや,そのようなわき見をもって直ちに懲罰を科すことが相当でないとしている。 したがって,わき見を禁止した本件遵守事項28項に対する違反により,原告に懲罰を科すことは,違法というべきである。 次に,職員の指示に対する抗弁を禁止した本件遵守事項39項に対する違反による懲罰の許否については,そもそも抗弁の前提である職員の指示の性質 とは,違法というべきである。 次に,職員の指示に対する抗弁を禁止した本件遵守事項39項に対する違反による懲罰の許否については,そもそも抗弁の前提である職員の指示の性質が問題となるところ,前記(a)ⅲのとおり,心得事項についての指示であれば,それに対する抗弁を懲罰をもって禁ずることは相当でない。 そして,本件において原告が抗弁をしたとされる職員の指示は,わき見を禁止するものであって,この指示は単なる心得事項に関するものにすぎず,そもそもわき見を禁止すること自体,上記のとおり合理性がないというべきであるから,このような指示に対する抗弁を理由とする懲罰は違法である。 ⅲ 仮に,被告が主張するとおり,原告が本件遵守事項21項違反により懲罰を科されたとしても,前記(1)エの「クレージー」というつぶやきは,「アンビリーバブル」という程度の意味であり,あきれた気持ちの発露としての独り言にすぎないものであるから,原告がこのようにつぶやいたことは,本件遵守事項21項に定める「粗暴な言動」には該当せず,懲罰事由に該当しない。 ⅳ また,「クレージー」とつぶやく程度の,実害のない些末な事案に対して,軽屏禁15日という重い懲罰を科すことは,均衡を失しており,かかる懲罰自体が,様々な提案,不服申立て等をした原告に対する報復として科されたものであるから,第2事件に関する懲罰処分には,刑務所長の裁量権を著しく逸脱又は濫用した違法がある。 (d) 第3事件に関する懲罰についてi そもそも,第3事件に関する懲罰の根拠となった,「許可なく定められた方法以外の方法で衣類を洗濯し,又は身体を洗ってはならない」と規定する本件遵守事項 に関する懲罰についてi そもそも,第3事件に関する懲罰の根拠となった,「許可なく定められた方法以外の方法で衣類を洗濯し,又は身体を洗ってはならない」と規定する本件遵守事項35項については,このような事項を遵守事項とする合理的な理由を見いだすことは困難であり,同項の規定は,必要やむを得ない限度を超えて,所内生活における心得事項にまで懲罰を及ぼすこととなるものであって,違法であるから,これに基づく懲罰も違法である。 ⅱ 仮に,本件遵守事項35項自体が違法でないとしても,原告は,寝ぐせを直すために水を頭になでつけたにすぎず,洗面器に水をためて頭を洗っていたことはない。仮に,看守である証人が供述するとおり,原告が両手一杯分の水で頭を洗ったとしても,本件遵守事項第35項に規定する「身体を洗う」ことには該当しない。 ⅲ また,仮に原告が本件遵守事項35項に違反する規律違反容疑行為を行ったとしても,洗面所の水を多少多く利用したにすぎず,このような実害のない些末な事案に対し,軽屏禁5日という重い懲罰を科すことは均衡を失しており,第3事件に関する懲罰も,原告に対する報復として行われたものであるから,上記懲罰は,刑務所長の裁量権を著しく逸脱又は濫用したものとして,違法である。 エ厳正独居拘禁についてa 独居拘禁には,受刑者を夜間のみ独居房に拘禁する夜間独居拘禁と,昼夜にわたって独居房に拘禁するいわゆる厳正独居拘禁(昼夜独居拘禁)がある。 そして,厳正独居拘禁の昼間における拘禁は,独居房の特定位置に受刑者を正座させて決められた姿勢を維持させ,足を屈伸することはおろか首を曲げることすら許さないという非人間的処遇であって,被拘禁者が長期間このような処遇を受けた場 おける拘禁は,独居房の特定位置に受刑者を正座させて決められた姿勢を維持させ,足を屈伸することはおろか首を曲げることすら許さないという非人間的処遇であって,被拘禁者が長期間このような処遇を受けた場合,肉体的,精神的苦痛が極めて大きいことは明らかである。 厳正独居拘禁は,このように非常な苦痛をもたらすものであり,また,これが例外的な処遇形態であることは,監獄法制定時における議会答弁や,行刑累進処遇令(昭和8年司法省令第35号)29条及び30条の規定等からも明らかであるから,仮に刑務所において受刑者を独居拘禁に処するべきと判断する場合であっても,当該・Y者の言動が刑務所内の規律秩序を著しく損なう差し迫ったおそれが明白に現在する等,特別の事情のない限り,原則として夜間独居拘禁を実施すべきである。 そして,本件独居拘禁に関し,原告にこのような特別の事情が認められないことは明らかであるから,所長による本件独居拘禁に処する旨の決定は違法である。 b また,本件独居拘禁が,原告による本件訴訟の準備及び提起に対する報復として行われたものであることは,原告がKの処遇が不当であることについて日本弁護士連合会に手紙を書いた時期と本件独居拘禁の開始時期との関係や,本件独居拘禁の理由に関する被告の主張自体から明らかである。 国際連合被拘禁者保護原則(1988年国際連合総会採択。以下「国連保護原則」という。)33項4号は,被拘禁者が「要求または苦情申立を行ったことを理由に不利益を蒙ることがあってはならない」と規定しているところ,本件独居拘禁が上記規定に反していることは明らかである。さらに,裁判を受ける権利は,憲法32条及びB規約14条1により保障された人権であり,本件独居拘禁は,これら てはならない」と規定しているところ,本件独居拘禁が上記規定に反していることは明らかである。さらに,裁判を受ける権利は,憲法32条及びB規約14条1により保障された人権であり,本件独居拘禁は,これらの人権を侵害する点においても違法である。 オ厳正独居拘禁下における刑務所労働についてa 作 ニ賞与金が低廉にすぎること原告は,本件独居拘禁下において作業を強いられており,そもそも厳正独居拘禁下において労働を強いられたこと自体が違法であるが,さらに,その労働に対して,極端な低賃金しか支払われていない。 (a) そもそも,被告は,作業賞与金の金額を決定する裁量権を有しているが,作業賞与金といえども,作業に対する報酬としての性格を否定できない以上,作業との関係において一定程度の対価性を有していなければならないというべきであって,賞与金額が対価性を有するといえないほど低廉にすぎる場合には,裁量の範囲を逸脱又は著しく濫用したものとして,違法になるというべきである。また,行刑制度の重要な目的の一つが受刑者の社会復帰にある以上,作業賞与金の額は,出所時に社会生活を営むための経済的な基盤となる程度の水準に達していることも必要である。 この点,作業賞与金の額が低廉にすぎるか否かを決すべき基準としては,国際連合による各国の調査結果(甲36)とともに,平均賃金の5パーセントという刑務所労働に対する報酬額が,ドイツ連邦共和国基本法(ボン基本法。以下「ドイツ憲法」という。)2条1項等から導かれる「社会復帰の要請」に適合しないと判断した,ドイツ連邦憲法裁判所の平成10年(1998年)7月1日判決が重要な指針となる。 しかるところ,原告の本件独居拘禁下 等から導かれる「社会復帰の要請」に適合しないと判断した,ドイツ連邦憲法裁判所の平成10年(1998年)7月1日判決が重要な指針となる。 しかるところ,原告の本件独居拘禁下における作業に対する作業賞与金の額は,月額約900円であり,平均賃金(賃金センサス平成9年男子労働者学歴計によれば,年額575万円)の0・2パーセント程度にすぎない。これは,欧米その他の諸国における水準や,前掲ドイツ憲法裁判所判決で違憲とされた5パーセントという値と比較して著しく低いのみならず,我が国の明治,大正時代における,通常賃金の約10パーセント程度の水準と比較しても甚だしい後退であって,低廉にすぎることは明らかである。 (b) また,このような厳正独居拘禁下における極端な低賃金労働は,被拘禁者に対する人道的かつ人間の固有の尊厳を尊重した取扱いを義務付けるB規約10条1の規定,及び,受刑者に対する処遇が矯正,社会復帰を目的とするものであることを定める同条3の規定にそれぞれ違反するのみならず,受刑者の作業について公正な報酬制度が存在しなければならないことを規定する,国連最低基準規則76条1項にも違反する。 iB規約の解釈に当たっては,条約法に関するウィーン条約(昭和56年条約第16号,以下「条約法条約」という。)の内容が,遡及効を持たないために直接の適用はないものの,国際慣習法を成文化したものとして適用されると解されるところ,条約法条約31条及び32条は,条約の解釈基準として,①文脈によりかつその趣旨及び目的に照らして与えられる用語の通常の意味による解釈,②解釈の補足手段として,条約準備段階の記録,条約に基づく判例法,同種の他の条約の同一又は類似の条項に関する判例法のみを認めている。 び目的に照らして与えられる用語の通常の意味による解釈,②解釈の補足手段として,条約準備段階の記録,条約に基づく判例法,同種の他の条約の同一又は類似の条項に関する判例法のみを認めている。 そうすると,前掲ドイツ連邦憲法裁判所判決は,直接にはドイツ憲法2条1項により帰結される「行刑における社会復帰」の解釈に係わるものであるが,同条項は,B規約10条3類似の条項ということができるから,上記判決は,判例法に類似するものとして,B規約の解釈に当たっての我が国の裁判所の解釈基準としても参酌されるべきである。 したがって,上記判決に照らせば,原告に対する上記作業賞与金の額は,B規約10条3の規定に違反して違法であり,また,同条1の規定にも違反するというべきである。 ⅱ また,国連最低基準規則が,重要な部分においては国際慣習法になっていることは,前記イa(b)のとおりであるところ,B規約10条を起草した国際連合人権委員会が,国連最低基準規則がB規約の締約国によって斟酌されるべきものであり,B規約10条が国連最低基準規則の適用を何ら妨げるものではない旨,特に注意を喚起していることや,規約人権委員会がB規約10条の解釈に当たって国連最低基準規則を参照していることに照らせば,国連最低基準規則に定められた内容は,国際慣習法の存在についての有力な解釈の証拠となるのみならず,B規約の解釈に当たって十分尊重されなければならないという意味においても,法的規範性を有しているというべきである。 したがって,本件における原告に対する作業賞与金の額は,国連最低基準規則76第1項に違反し,違法である。 b ILO第29号条約違反「 したがって,本件における原告に対する作業賞与金の額は,国連最低基準規則76第1項に違反し,違法である。 b ILO第29号条約違反「強制労働ニ関スル条約」(昭和7年条約第10号,以下「ILO第29号条約」といい,国際労働機関を「ILO」という。)は,1条において,一切の「強制労働」を禁止し,2条1において,「強制労働」を「或者ガ処罰ノ脅威ノ下ニ強制セラレ且右ノ者ガ任意ニ申出デタルニ非ザル一切ノ労務」と定義している。これに対し,2条2は,例外的に許容される労働として,裁判所による有罪判決の結果としてなされる労働を定めているが,例外的に許容される条件として,その労働が公の機関の監督と管理の下に行われなければならず,かつ,労働する者が,私人,会社,団体に雇用され,又はそれらの者の利用に供されてはならない旨規定している。 そして,ILO条約の適用につき検討するため設置されているILO専門家委員会は,オーストリア共和国の刑務所内で民間企業が運営する作業場での受刑者の労働に関して行われた調査に関する条約適用報告書において,①受刑者の同意及び②賃金等労働条件が民間労働者と同一であることの2条件が満たされている場合にのみ,私人,会社,団体に雇用され,又はそれらの者の利用に供されてはならないとする上記ILO第29号条約2条2の規定に違反しないとする見解を採ることを明らかにしている。 したがって,Kにおいて,原告の同意なしに,賃金(作業賞与金)等の労働条件が民間労働者より著しく劣った民間企業製品の製作に従事することを原告に義務付けることは,ILO第29号条約2条2に反し,違法である。 カ仮出獄を受ける機会の不当な剥奪について 間労働者より著しく劣った民間企業製品の製作に従事することを原告に義務付けることは,ILO第29号条約2条2に反し,違法である。 カ仮出獄を受ける機会の不当な剥奪についてa 刑法28条は,受刑者に改悛の状があるときは,一定の条件の下に,行政官庁の処分によって仮出獄を許すことができる旨規定し,仮出獄の許否に関して行政官庁に裁量権を与えている。しかしながら,仮出獄には,実質的には刑期の短縮という面があり,身柄の拘束に係わるものであるから,実体的・手続的公正さが要請される。とりわけ,強制送還が予想される外国人受刑者の場合,仮出獄を認め,母国へ帰し,当人が今後生活を営むことになる社会の中で,家族等の協力の下に自力更生の努力をする機会を与えることが必要であり,実際にもそのような考慮の結果,外国人受刑者の場合,刑の執行率も比較的低く,概ね刑期の2分の1程度が終了した時点で仮出獄を受けているのが実態である。 b 以上の実情を踏まえれば,仮出獄は,特に外国人受刑者にとって,法的にも保護されるべき合理的な期待ないし利益というべきであるから,仮出獄の機会を奪う場合には,実体的にも手続的にも,刑事手続に準ずべき保護が与えられなければならない。 したがって,受刑者が懲罰を受けたことを理由としてその者から仮出獄の機会を奪う場合には,実体的要件として,非常に重大で反復される違法行為があった場合に限定されることが,刑法28条の解釈として要請されるというべきである。また,手続的にも,懲罰手続に際して,受刑者に対して弁護士等から法的援助を受ける機会をはじめ,刑事手続に準じた形での十分な防御権が与えられなければ,抑留及び拘禁の要件等を規定した憲法34条並びに刑事被告人の権利を規定した憲法37条及びB規約14 て弁護士等から法的援助を受ける機会をはじめ,刑事手続に準じた形での十分な防御権が与えられなければ,抑留及び拘禁の要件等を規定した憲法34条並びに刑事被告人の権利を規定した憲法37条及びB規約14条3に違反するものといわなければならない。 c 本件において,原告は,仮に懲罰を基礎付ける行為を行ったとしても軽微な違反行為を行ったにすぎないものであって,このような行為に対する懲罰の積み重ねにより,原告の仮出獄の機会を奪ったことは,刑法28条の趣旨に反して違法である。 また,原告は,十分な防御の機会を与えられない懲罰手続によって,不当な懲罰を受けた結果,仮出獄の機会を得ることができず,外国人の平均的な取扱いに比して約2年にも及ぶ刑期につき不利益を受けたものである。このような重大な不利益が科される手続において,司法的手続の保障もなく,法的援助の機会も与えられないことは,B規約14条3の規定,とりわけ弁護人選任権を定める同条3b,弁護人を通じて防御することができることを定める同条3d及び証人尋問の権利を定める同条3eの各規定に反し,違法である。 キ故意,過失原告は,以上のとおり,刑務所内での処遇改善を求めたことから,職員らに疎まれ,事実無根又は極めて些細な規律違反を理由に,多数回の懲罰を受けた上,本件戒具使用により,著しく人間の品位を傷つけ,辱め,その尊厳を奪われた状況の下で,長時間にわたり著しい精神的苦痛を被ったほか,本件の訴訟準備を直接の契機として本件独居拘禁を受けて,一切の人間的接触を奪われ,さらには仮出獄の機会を奪われて,外国人の平均的取扱いと比較して約2年も拘禁期間を延長されたものである。 したがって,原告に対する上記の各違法行為は,いずれも国の公務員 触を奪われ,さらには仮出獄の機会を奪われて,外国人の平均的取扱いと比較して約2年も拘禁期間を延長されたものである。 したがって,原告に対する上記の各違法行為は,いずれも国の公務員であるKの職員の故意又は過失によるものであることが明らかである。 (3) 国家賠償法6条の「相互の保証」についてア原告は,国家賠償法に基づく損害賠償を請求しているところ,同法6条は,「この法律は,外国人が被害者である場合には,相互の保証があるときに限り,これを適用する。」と規定しており,原告がアメリカ合衆国の国籍を有する外国人であることから,上記規定の適用が問題となる。 イしかしながら,国家賠償法6条は,憲法17条,98条2項及び14条1項に反して,無効である。 a 憲法17条は,「何人も,公務員の不法行為により,損害を受けたときは,法律の定めるところにより,国又は公共団体に,その賠償を求めることができる。」と規定して,公の賠償請求権を保障している。 ところで,憲法に規定された基本的人権については,権利の性質上我が国の国民のみを対象としていると解されるものを除き,我が国に在留する外国人についても等しく保障されていると考えるべきであるところ,憲法17条が保障する公の賠償請求権は,国家の存在を前提としているものの,いわゆる前国家的権利を補完するものとして,それと一体的に解すべき性質の権利であって,その性質上我が国の国民のみを対象としているものではないから,我が国に在留する外国人に対しても等しく保障されているものと解すべきである。このことは,憲法17条が,権利の主体について,「何人も」と規定して,何らの制限も設けていないことからも認められるところである。 し も等しく保障されているものと解すべきである。このことは,憲法17条が,権利の主体について,「何人も」と規定して,何らの制限も設けていないことからも認められるところである。 しかしながら,国家賠償法6条は,外国人が公の賠償を請求できる場合を,相互の保証がある場合に制限しているのであるから,同条の規定は,憲法17条に明らかに違反している。 b(a) 被告は,憲法17条が「法律の定めるところにより」と規定していることを捉えて,国家賠償法6条の規定が憲法17条に違反しないとするが,ここにいう「法律の定めるところにより」とは,故意,過失等の賠償責任要件や手続要件等,権利行使の態様についてのみ法律にゆだねる趣旨にすぎず,憲法が保障した権利の享有主体の範囲を制限することまでをゆだねる趣旨ではないから,被告の上記主張は失当である。 (b) また,我が国の国民の被害について外国を相手に賠償を請求できない場合にまで,我が国が外国人の被害に対し賠償責任を負う理由はないとして,国家賠償法6条が合理的な制限として憲法17条に違反するとまではいえないとする見解もある。 しかしながら,このような見解が,単に「日本人が救済を得られない場合に救済を与える必要はない」というものであるとすれば,極めて国家主義的・排外的な思想であり,個人の権利侵害があった場合にまでこのような国家主義的立場をとることは,人権の国際的保障の潮流を無視し,被害を受けた外国人個人の救済をないがしろにするものであって,何ら合理的な制限ということはできない。 そもそも,相互の保証の要請を支持する実質的理由は,在外自国民の保護にあると思われるところ,国際人権規約をはじめ,基本的人権の国際的保護に関 な制限ということはできない。 そもそも,相互の保証の要請を支持する実質的理由は,在外自国民の保護にあると思われるところ,国際人権規約をはじめ,基本的人権の国際的保護に関する様々な条約が締結され,国家主義的な枠組みを超えて,個人の尊厳に基づく人権保護の制度が機能している現在においては,自国民の保護の要求も,こうした人権の国際的保障の場で行われていくべき問題というべきであって,この点を根拠に国家賠償法6条を合理的な制限であるとすることもできない。 c さらに,国家賠償法6条は,外国人の権利を何らの合理性もなく制限するものとして,国際協調主義を定めた憲法98条2項及び法の下の平等の原則を定めた憲法14条1項に違反している。 ウまた,国家賠償法6条は,B規約にも違反しており,無効である。 a そもそも,B規約に国内法的効力があるか否かが問題となるところ,日本政府は,B規約を昭和53年に署名し,昭和54年8月4日に批准し,同年9月21日に効力を生ぜしめているものであり,上記批准に際し,B規約22条について解釈宣言をした以外,何らの留保もしていないのであるから,B規約については,我が国が締結した条約である以上,一般原則に従って,日本国内において,国内法としての効力が認められる。 また,B規約2条1は,各加盟国に対して即時実施義務を課していることから,そのままの形で国内的に適用が可能であり,判例も,傍論においてではあるが,B規約が自動的執行力を有することを認めている(最高裁判所昭和56年10月22日第1小法廷判決・刑集35巻7号696頁)。 このように,B規約に国内法としての効力が認められ,かつ,その効力が法律に優位することからすれば,B規 高裁判所昭和56年10月22日第1小法廷判決・刑集35巻7号696頁)。 このように,B規約に国内法としての効力が認められ,かつ,その効力が法律に優位することからすれば,B規約に反する国内法又は具体的な処分は無効である。 b また,前記のとおり,B規約の解釈については,条約法条約が適用されるところ,同条約31条3(a)は,条約締結後に生じた事情であっても,「条約の解釈または適用につき当事国の間で後にされた合意」は,条約の解釈において考慮されると規定しており,また,同条約32条は,同条約31条に規定された解釈方法を用いても意味が曖昧であるなどの場合には,「解釈の補足的手段」を用いて解釈することができると規定しており,条約の準備作業段階の事情,条約に基づく判例法及び同種の他の条約又は類似の条項に関するものが含まれるとされている。 そして,規約人権委員会がB規約40条4の規定に基づき採択した「一般的意見」は,B規約の有権的解釈というべきものであり,同委員会がB規約第一選択議定書5条4の規定に基づいて発している「見解」は,B規約の解釈に関する判例法としての価値を有するものであるから,条約法条約31条3(a)に規定する「条約の解釈または適用につき当事国の間で後にされた合意」に該当する。加えて,上記一般的意見及び見解がB規約の解釈の補足手段として依拠すべきものと解されるとする裁判例が存在しており,これらの裁判例は,一般的意見及び見解が,解釈の補足的手段のうち,条約に基づく判例法に該当することを認めたものと解される。 したがって,B規約締約国の裁判所は,B規約の解釈に当たって,規約人権委員会の一般的意見及び見解を尊重しなければならない。 c ところで,原告に ものと解される。 したがって,B規約締約国の裁判所は,B規約の解釈に当たって,規約人権委員会の一般的意見及び見解を尊重しなければならない。 c ところで,原告に対する本件の各不法行為が,B規約7条により禁じられている「拷問」及び「残虐な,非人道的な若しくは品位を傷つける取扱」に該当し,同条に違反していることは,前記(2)で主張したことにより明らかであるところ,B規約2条3(a)は,各締約国に対して,「この規約において認められる権利又は自由を侵害された者が,公的資格で行動する者によりその侵害が行われた場合にも効果的な救済措置を受けることを確保する」義務を課しており,一般的意見20は,「(B規約)7条は(B規約)2条3とともに読まれるべきである。締約国は,・・・その法制度が7条で禁じられたあらゆる行為を直ちにやめさせることならびに適正な補償について,いかに効果的な補償措置を取っているかを示すべきである」としているのであるから,日本政府は,原告が本件の各不法行為に関して「効果的な救済措置」を受けることを保障しなければならない。 したがって,このような効果的な救済措置を受けることを妨げる国家賠償法6条の規定は,B規約7条及び2条3(a)に違反する。 d また,外国人が,法の下の平等を定めたB規約26条により保護されることは,外国人の地位に関する一般的意見15でも確認されているところ,その本国法において相互の保証が行われていない外国人に対してのみ国家賠償を認めないという国家賠償法6条の規定が,B規約26条に違反していることは明らかである。 さらに,国家賠償法6条の規定は,差別を禁止したB規約2条1の規定にも違反している。 e 以上のとおり 条の規定が,B規約26条に違反していることは明らかである。 さらに,国家賠償法6条の規定は,差別を禁止したB規約2条1の規定にも違反している。 e 以上のとおり,国家賠償法6条は,B規約2条1及び3,7条並びに26条に違反し,無効であるところ,我が国がB規約を批准する32年前である昭和22年10月27日に同法が制定,施行されたことにかんがみれば,同法6条は,日本政府によるB規約の批准によって,効力を失ったと考えるべきである。 エ仮に,国家賠償法6条の効力が認められるとしても,本件では同条に規定する「相互の保証」が存在する。 a 憲法が国際協調主義を理念としていること,憲法17条が公務員の不法行為につき「何人」にも賠償請求権を認めていること,B規約が締約国に公務員による権利侵害に対する効果的な救済措置を行うべき義務を課していること,国家賠償法6条が,私法上の権利義務についての内外人平等主義を定めた民法2条の例外的規定であること等にかんがみれば,国家賠償法6条は,むしろ,原則的には外国人にも国家賠償請求権を認め,例外的に,国又は公共団体において相互の保証のないことを立証した場合に限り,同法の適用を排除するものと解すべきである。 このような解釈は,同法6条について,加害者が私人であった場合と比較して不均衡が生じることや,運用上形式的な相互保証にとどまらざるを得ないため意義が乏しいこと等,その合理性に根本的な疑問が呈されている現状において,可能な限り被害者の救済を図る方向で運用すべきであるとする実質的な要請に合致していることに加え,証拠との距離及び証明の難易の観点から,国又は公共団体の側に相互の保証に関する立証責任を分配することが公平の要請に適うことからも,相 向で運用すべきであるとする実質的な要請に合致していることに加え,証拠との距離及び証明の難易の観点から,国又は公共団体の側に相互の保証に関する立証責任を分配することが公平の要請に適うことからも,相当というべきである。 したがって,本件においても,被告がアメリカ合衆国について相互の保証が存在しないことを立証しない限り,原告の国家賠償請求権は排除されないとすべきであるところ,被告は,相互の保証が存在しないことについて,何ら積極的な主張立証をしていないのであるから,この点を理由に原告の国家賠償請求を排斥することはできない。 b また,上記のとおり,国家賠償法6条は,種々の意味で極めて不合理な規定であり,憲法の国際協調主義,憲法17条の文言,B規約上の義務等,前記aの諸事情にも照らせば,仮に国家賠償法6条の規定を個々の事例に適用する場合には,相互の保証の有無及び程度について,憲法やB規約との整合性を図り,外国人が効果的な救済措置を受けられるよう解釈したうえで適用すべきである。 そこで,本件について検討すると,アメリカ合衆国は,判例法国であるうえ,連邦制により裁判権が複雑に構成されているなど,我が国とまったく異なる法制度を有する国であり,すべての場合に適用される国家賠償法の存否は不明であるが,アメリカ合衆国憲法の修正条項は,刑務所内の処遇に関して,我が国よりもはるかに詳細に受刑者の権利を保障しており,この保障については,国籍による法律上の差別は存しない。また,アメリカ合衆国においては,受刑者が連邦,州,郡,市等に対し,刑務所内の処遇について損害賠償を支払っている事例が多数存在しているほか,そのような支払を前提として,行政府が保険料を税金から支払う賠償保険まで発達しており,損害賠償の法律構成 州,郡,市等に対し,刑務所内の処遇について損害賠償を支払っている事例が多数存在しているほか,そのような支払を前提として,行政府が保険料を税金から支払う賠償保険まで発達しており,損害賠償の法律構成についても明確にされている。 したがって,アメリカ合衆国において,職員の暴行等の違法行為について,刑務所を運営する連邦,州,郡,市等に損害賠償責任が認められていることが明らかであるから,原告の請求に関して,我が国とアメリカ合衆国との間に,相互の保証があることが認められる。 オ以上によれば,原告に対する本件の各不法行為には,国家賠償法1条1項が適用されることとなる。 (4) 損害原告が前記の各不法行為によって受けた精神的苦痛を金銭で慰謝するとすれば,その額は少なくとも900万円を下らない。 また,原告は,本件訴訟の追行を原告代理人弁護士らに委任したところ,文書の翻訳等の手数を要したこと,意思疎通に英語を使用せざるを得なかったこと等を考慮すれば,その費用としては,100万円が相当である。 (5) 結論よって,原告は,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償金1000万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成8年7月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)(1) 本件に関する事実経緯についてア第1事件についてa 事件発生の経緯(a) Kにおいては,収容中の外国人受刑者を各工場に分けて就業させているが,食事については,平成5年当時,日本食を食することのできない外国人を外国人用食堂に集めて食事させざるを得ない状況に (a) Kにおいては,収容中の外国人受刑者を各工場に分けて就業させているが,食事については,平成5年当時,日本食を食することのできない外国人を外国人用食堂に集めて食事させざるを得ない状況にあったところ,これによって,各工場に分けられていた顔見知りや,共犯関係にあった外国人などが一堂に会することとなることから,自由な会話,目配せ等による不正な連絡及びにらみ合いによる興奮等の事故を防止するため,各工場から集まって食堂に入った外国人に対し,食事が始まるまでの間,目を閉じて待たせる扱いとしていた。 (b) 外国人用食堂において勤務していた法務事務官看守D(以下「D看守」という。)は,平成5年7月22日午前11時58分ころ,ドアから約7メートル離れた席に着席していた原告が薄目を開けて,食堂に入ってくる外国人受刑者の様子を窺っていたのを認めたため,目を閉じるよう注意した。しかしながら,原告は,これに素直に従おうとせず,なおも同様に薄目を開けつつ,少し舌を突き出すようにしながら,首を2,3回左右に振る行動を示したため,D看守は,再度原告を注意するとともに,原告の左斜め後方に近づいた。これに対し,原告は,顔を紅潮させ顎を突き上げるようにD看守をにらみつけながら,声を荒げて英語で不満を申し立てた。 (c) 同日,Kでは,原告が職員の指示に素直に従わず,注意されたことに対して不満を申し立てた規律違反容疑行為について,その事情や背景を詳細に調査するため,原告を取調べのための独居拘禁とした。そして,同月26日,同月30日,同年8月6日,同月10日及び同月12日,原告から上記行為について任意に事情を聴取したところ,原告は,目を開けていた事実及び反抗した事実を否認した。しかし,参考人として原告の近くに座っていた被収容 ,同年8月6日,同月10日及び同月12日,原告から上記行為について任意に事情を聴取したところ,原告は,目を開けていた事実及び反抗した事実を否認した。しかし,参考人として原告の近くに座っていた被収容者3名から任意に事情を聴取したところ,前記3名は,原告が職員から目を閉じるように注意されたことに対し,「目を閉じていますよ。」などと言い返していた旨申し述べた。 (d) Kでは,同月16日,原告の規律違反容疑行為を懲罰審査会に付議し,原告を同席させて弁解の機会を与えた上で,原告の行為が規律違反に該当するか否かを検討した。その結果,同会は,原告自身は規律違反容疑行為を否認したものの,職員2名が原告の前記行為を現認していたこと及び参考人である外国人受刑者3名が前記のような供述をしていたことから,原告が目を開けていたことにつき,職員から注意を受け,さらに,職員の注意に対して反抗したものと認定した。そして,懲罰審査会は,所長の決定を経て,同月17日,原告が抗弁により職員の職務を妨害したことにつき,本件遵守事項39項に定める「抗弁」に該当するとして,軽屏禁10日(文書図画閲読禁止併科)を執行することとし,原告にその旨告知した。 b 本件戒具使用及び本件保護房拘禁について(a) A部長は,平成5年8月17日,原告が上記a(d)の懲罰の告知を受けて自己の居房に戻った後,この懲罰を執行するため,同日午後1時21分ころ,原告に対し,日本語で居房内の本,筆記具等を出すように指示したところ,原告は,いきなり立ち上がり,扉を叩いた後,奥にある私物棚の所へ行き,置いてある物を扉に向かって放り投げ始めた。 (b) そこで,舎房担当職員から連絡を受けたB主任ほか2名の職員は,同舎房へ駆け付け,原告に対 を叩いた後,奥にある私物棚の所へ行き,置いてある物を扉に向かって放り投げ始めた。 (b) そこで,舎房担当職員から連絡を受けたB主任ほか2名の職員は,同舎房へ駆け付け,原告に対し,手のひらを下にして上下に動かし,止めろ,静かにしろという意味の動作をしたが,原告は,これに従わず,断続的に物を投げる行為を続けた。 B主任は,原告を取調室へ連行するために扉を開け,原告に房から出るように指示したが,原告はこれを無視し無言のまま動こうとしなかったため,B主任が剖屋の中に入り,原告の左肩付近の上着を右手で引っ張ったところ,原告は,突然,英語で怒鳴り声をあげながらB主任の右腕を振り払って同人に詰め寄った。 そこで,B主任が原告の左腕を,A部長が原告の右腕を,それぞれつかんで原告を制したが,原告は,大柄であるうえ,うつ伏せになった状態から起き上がろうとしたり,押さえつけられている腕を逃れようともがいたり,足をばたつかせたり,体をひねったりする等して,激しく暴れた。このため,B主任は,職員の手のみで原告を制圧することは困難と判断し,同日午後1時22分,B主任が携帯していた金属手錠を両手後ろの方法により緊急に使用した。 (c) 原告は,B主任及びA部長が原告の両手を抱えながら取調室へ連行した際も,怒鳴り声をあげ,体を激しく揺さぶるなど激しく興奮し,取調室に入った時点においても,大声をあげながら職員が押さえていた手を振りほどこうとして上半身を激しく揺り動かして暴れ続け,激昂した状態であったことから,複数の職員で原告を床の上にうつ伏せにして制圧した。その際,B主任は,取調室の前にいたC区長に対し,原告を取調室に連行するに至った経緯を簡単に報告すると,C区長は,金属手錠を 状態であったことから,複数の職員で原告を床の上にうつ伏せにして制圧した。その際,B主任は,取調室の前にいたC区長に対し,原告を取調室に連行するに至った経緯を簡単に報告すると,C区長は,金属手錠を両手後ろに使用されていた原告の様子を確認し,戒具とそのかけ方について金属手錠から革手錠両手後ろに変更すべき旨を指示した。 そして,同日午後1時25分,原告に対する戒具が,金属手錠から革手錠に変更され,さらに,原告の手首が細く革手錠の腕輪から原告の手首が離脱するおそれがあったことから,これを予防するために,原告の右手首及び左手首に金属手錠各1個をそれぞれ二輪にして,革手錠腕輪の手首側に併用した。 その後,革手錠を使用した状態で用便が行えるようにするため,原告のパンツ及びズボンを脱がせ,股割れズボン等に替えた。 (d) しかし,原告は,その後も顔面を紅潮させ,全身を揺さぶって暴れ続けながら意味不明の奇声を発し続けており,大声・騒音及び暴行の継続のおそれが顕著に認められたことから,同日午後1時28分,本件保護房に収容された。 (e) 原告については,同月18日午前7時25分ころ,意味不明の大声を発するなど依然精神的に不安定な状況が認められたものの,戒具を使用した当初の極度の興奮状態から脱しており,暴行のおそれが薄らいだものと認められたことから,本件戒具使用が解除された。 また,同月19日午前9時50分ころ,原告の精神状態が平静に復し,大声・騒音及び暴行のおそれが消失したものと認められたことから,本件保護房拘禁が解除された。 イ第2事件についてaKにおいては,作業実施中,作業に専念させること及び作業中のけがを防 行のおそれが消失したものと認められたことから,本件保護房拘禁が解除された。 イ第2事件についてaKにおいては,作業実施中,作業に専念させること及び作業中のけがを防止することを目的として,わき見を禁止し,日ごろから収容者に対して告知していた。 原告は,平成7年12月14日,第28工場において,シャープペンシルの組立作業に従事していたところ,同日午後2時36分ころ,同工場担当台に立っていた同工場副担当職員である法務事務官看守部長E(以下「E部長」という。)の方を見るわき見をしたことから,E部長は,原告に対し,日本語で「J,どこを見ているんだ。作業中は,手元をしっかり見て作業しろ。」と注意した。しかし,原告がE部長から注意を受けてもじっと見つめていただけであったため,E部長は,担当台を下り,原告の作業席に行き,再度注意したところ,原告が顎を掻きながら英語で何か言ったことから,同工場就業中の外国人受刑者を通訳として,原告を再度注意した。その際,原告は,上記外国人受刑者に対し,英語で何か話したあと,E部長の顔を見ようとせず,日本語で「すいません。」と言ったが,原告の態度が不満そうであったことから,E部長が上記外国人受刑者に対し,原告の発言内容を確認したところ,原告が,わき見はしていない,顎を掻いていたと言っているという説明を受けた。 b 上記事実を確認したE部長は,原告に対し,わき見の危険性及び作業に専念する義務等について再度注意する必要があると判断し,原告に対し,担当台前に来るように指示したが,原告がなかなかこれに従わなかったことから,担当台の前に来るように手で合図し,起立するように指示した。すると原告は,しぶしぶ起立してE部長の方を見た直後,前記外国人受刑者の方を見て,吐 に指示したが,原告がなかなかこれに従わなかったことから,担当台の前に来るように手で合図し,起立するように指示した。すると原告は,しぶしぶ起立してE部長の方を見た直後,前記外国人受刑者の方を見て,吐き捨てるように「クレージー」と放言した。そこで,E部長は,原告の上記言動が暴言事犯の規律違反容疑行為に当たると判断し,第3区にその旨電話連絡した。 cKは,同日,原告がE部長に対して粗暴な言動を行った規律違反容疑行為について,詳細に事情を調査するため,原告を取調べのための独居拘禁とした。 dKの職員が,同日,原告から上記規律違反容疑行為について任意に供述を求めたところ,原告は,わき見をしてやろうとしてしたわけではなく,職員を侮辱したわけでもないのに,職員から注意を受け,ばかばかしいと思ったが,「クレージー」という言葉は,人をばかにしたり,侮辱した言葉であり,そのようなことを自分が言ったことは反省している旨述べて,発言の事実を認めたeKは,同月21日,原告を懲罰審査会に出席させた上,上記規律違反容疑行為について審査したところ,現認した職員の報告書,原告及び参考人の供述に基づき,原告の規律違反容疑行為が本件遵守事項21項の禁止する他人に対する粗暴な言動(暴言)に該当すると認定し,所長の決定を経た後,同月22日,原告に対し,軽屏禁15日(文書図書閲覧禁止併科)の懲罰を告知して執行した。 なお,原告は,「クレージー」が「アンビリーバブル」という意味で使われた旨主張するが,上記事実経過のとおり,「クレージー」という言葉は,注意を与え指示していたE部長に対し,通訳者を介して吐き捨てるように発語されたものであり,通訳者も,原告が「先生(E部長のこと)はばかだと言っているように聞こえま おり,「クレージー」という言葉は,注意を与え指示していたE部長に対し,通訳者を介して吐き捨てるように発語されたものであり,通訳者も,原告が「先生(E部長のこと)はばかだと言っているように聞こえました。」と述べていることからも,これがE部長に対する粗暴な言動であることは明らかであって,原告の上記主張は採用できない。 ウ第3事件についてKでは,国の予算(光熱水料費)の適正な執行を図る目的から,被収容者に対して節水を義務付け,入浴場以外の場所において,許可なく身体を洗ってはならないこととし,被収容者に告知していた。 東2舎3階の舎房担当職員である法務事務官看守部長G(以下「G部長」という。)は,平成8年2月13日午前7時20分ころ,東2舎3階第369室に収容されていた原告が,居房内の洗面台に向かい洗面器にためた水を両手ですくい,前かがみになって指で頭をごしごし洗っていたところを現認した。 G部長は,しばらく立ち止まり原告が頭を洗っていたことを確認した後,原告に対し,「何をしている。」と声を掛けたところ,原告は,一瞬,G部長の方を見て,頭を洗うのを止め,タオルで頭を拭きながらG部長のところまで歩いてきた。そこで,G部長は,原告に対し,「なぜ頭を洗っている。」と問い質したところ,原告は,頭が汚れていたことから洗っていたと返答したため,G部長は,許可なく髪を洗ってはならない旨を注意した。 その後,G部長がその旨を上司に報告したところ,副監督当直者が,原告の居室まで来て,事実を確認した後,原告を取調べに付した。 原告は,同日,任意に供述を求めた職員に対し,水を勝手に使用してはならないことは承知していたこと,水を洗面器にためて,頭にかけて洗っていると 実を確認した後,原告を取調べに付した。 原告は,同日,任意に供述を求めた職員に対し,水を勝手に使用してはならないことは承知していたこと,水を洗面器にためて,頭にかけて洗っているところを職員に発見されたこと及び頭を洗ったことは宗教上の行為であることを申し立てた。 Kは,同月19日,原告を懲罰審査会に出席させた上,原告の規律違反容疑行為について審査し,その結果,現認した職員の報告書及び原告の供述に基づき,原告の規律違反容疑行為が,本件遵守事項35項の禁止する「許可なく定められた方法以外の方法で身体を洗うこと」に該当すると認定し,所長の決定を経た後,同月20日,原告に対して軽屏禁5日(文書図画閲読禁止併科)の懲罰を告知して執行した。 (2) 上記各行為に違法性がないことア集団的暴行の主張について原告は,本件保護房に収容された際,何ら示威行為もせず,暴行の気勢すら示していなかったのに,突然多数の職員が暴行を加えたことは,特別公務員暴行凌虐罪に当たり,違法であると主張する。 しかしながら,原告は,第1事件における規律違反行為により軽屏禁10日の懲罰を告知され,その後,自己の居房に戻ってから,房扉をたたいたり,扉に本や衣類等を投げつける等の行為をし,職員の指示にも従わずに物を投げ続け,興奮して怒鳴り声をあげながら職員に詰め寄る等の行動を取り,腕をつかんで原告を制しようとした職員に対し,満身の力を込めて身体を左右に激しく揺さぶるなどして暴れ続けたものである。 このような原告の行為に対し,職員がこれを制圧するために有形力を行使したことは,必要やむを得ないものであって,違法でない。 イ本件戒具使用及び本件保護房収容について このような原告の行為に対し,職員がこれを制圧するために有形力を行使したことは,必要やむを得ないものであって,違法でない。 イ本件戒具使用及び本件保護房収容についてa 革手錠を使用することに関する一般的な違法性の主張について原告は,革手錠が監獄法及び施行規則の予定しない違法な戒具であり,国連最低基準規則33条に規定する枷よりも強度な拘束具であって絶対的に使用が禁じられるべきであることを理由として,革手錠を使用すること自体が違法である旨主張する。 (a) しかしながら,前記1(1)ウのとおり,監獄法19条2項及び施行規則48条2項を受けて,前掲「戒具製式改定ノ件」が,手錠の種類を「金属手錠」と「革手錠」とに分けて定めているから,革手錠が監獄法及び施行規則の予定しない戒具であるとする原告の主張は理由がない。 さらに,在監者に暴行のおそれがある状況の下で,腕の可動域の制限が少ない金属手錠では当該暴行を抑止する効果が少なく,逆に暴行を継続する被収容者としても鉄製の腕輪により負傷するおそれが高い場合には,革手錠は,暴行の制圧及び被収容者の身体の保護の観点から合理的な戒具ということができる。 したがって,革手錠が手錠の範疇に入るとはいい難いとする原告の主張は失当である。 (b) また,国連最低基準規則は,そもそも批准,発効された条約ではなく,法的な拘束力はないから,国連最低基準規則に基づく原告の主張は,その前提において失当である。 この点を措くとしても,国連最低基準規則33条は,「被拘禁者が自己もしくは他人に危害を加え・・・他の手段によって目的を達することができない場合において において失当である。 この点を措くとしても,国連最低基準規則33条は,「被拘禁者が自己もしくは他人に危害を加え・・・他の手段によって目的を達することができない場合において,施設の長の命令によるとき。」を,手錠等の使用要件の一つとして定めており,監獄法19条の要件の下に革手錠を戒具とすることは,同条に照らして非難されるものではない。 加えて,革手錠は,被収容者の暴行の制圧及び身体の保護の観点から使用されるものであって,「枷」に当たらないことは明らかである。 b 本件における戒具の具体的な使用が違法でないこと(a) そもそも,監獄法19条1項及び施行規則50条1項は,戒具の使用要件を前記1(1)ア及びエのとおり規定しているところ,本件では,B主任は,A部長とともに原告をうつ伏せに制したが,大柄な原告が激しく暴れて抵抗していたのであるから,監獄法19条1項及び施行規則50条1項に定める戒具を使用する要件に該当する。また,B主任は,原告の暴行が急迫目前の状況にあると判断して,緊急に金属手錠を使用したものであって,原告がB主任の指導に従わず,現に同人の右手を振り払い詰め寄るという行為に出た一連の経緯をも総合すれば,この判断は正当である。 (b) また,革手錠も手錠の一種であるから,その使用に当たっては,金属手錠の場合と同様,監獄法19条1項及び施行規則50条1項所定の各要件を具備することが必要である。 しかし,革手錠の使用は,他人に対する暴行などの結果に対する制裁ではなく,暴行,逃亡等を防止するために必要な措置として認められているものであり,暴行,逃亡等の「おそれ」が認められた段階で使用ができないとすれば,被収容者の 他人に対する暴行などの結果に対する制裁ではなく,暴行,逃亡等を防止するために必要な措置として認められているものであり,暴行,逃亡等の「おそれ」が認められた段階で使用ができないとすれば,被収容者の身柄の確保,規律秩序の維持等,行刑施設における収容目的も達成できないことになりかねないというべきであり,革手錠は,あくまでも暴行などの「おそれ」が認められた段階で,適正に使用されるべきである。 この点,本件戒具使用の場合,原告が金属手錠を使用されて取調室に連行された後も,職員に制されている上体を激しく揺さぶったり,起き上がろうと抵抗するなどの著しい興奮状態にあったことから,暴行のおそれが顕著に認められると判断し,革手錠を使用したものであって,原告の上記状況及びそれまでの一連の経緯からみても,この判断は正当というべきである。 (c) 原告は,革手錠の使用方法について,両手後ろで使用したことが不当であると主張する。しかし,本件において,革手錠を両手後ろの方法により使用したことは,何ら違法とはいえない。 i 本件通牒は,革手錠について,両手前,両手後,片手前片手後及び両手横の4種類の使用方法を定めているものの,その使用要件を各別には規定していないし,他にもこれを定めた法令その他の規定は存しないのであるから,革手錠を前記4種類のいずれの方法で使用するかの判断は,職員の専門的知識及び経験に基づく合理的裁量にゆだねられていると解すべきである。 そして,本件における原告のように,暴行のおそれなどを示し極度の興奮状態にある被収容者に対し,革手錠を両手前に使用した場合,被収容者の両手首は,腰部前側で身体に接着して固定され,その結果,被収容者の両腕は上腕部から手首まで全 うに,暴行のおそれなどを示し極度の興奮状態にある被収容者に対し,革手錠を両手前に使用した場合,被収容者の両手首は,腰部前側で身体に接着して固定され,その結果,被収容者の両腕は上腕部から手首まで全体としてその自由な運動が制限されるものの,うつ伏せの状態から起き上がるバランスを取りやすく立ち上がりやすいため,時間的余裕が与えられ,他害のおそれがあり,また,両手指を自由に動かすことができ,自己の両手指等を見ることもできるため,革手錠の破損を企てたり,手首などに自傷を企てる危険が存する。 これに対し,原告は,革手錠の装着に多数の職員が関与しており,短時間のうちに革手錠を装着していることから,職員が圧倒的に優位に立っていたとし,両手前の方法により革手錠を使用することが困難ではなかった旨主張する。しかし,多数の職員が革手錠の装着に関与したのは,一般の日本人と比べてはるかに大柄で体力的にも優っていた原告に革手錠を装着することが困難であったからである。また,職員が革手錠の装着に短時間しか要していないのは,両手後ろの方法であったからであって,革手錠の装着に時間を要した場合,被使用者の抵抗によって職員が負傷の危険にさらされるのであるから,多少時間がかかっても両手前で使用すべきであったということは失当である。 したがって,原告に対し,革手錠を両手後ろの位置で使用したことには合理性があり,これを行った職員らの行為は適法であるというべきである。 ⅱ また,原告に使用する戒具を金属手錠から革手錠に変更した際,両手後ろのままとしたのも,やむを得ない措置であって,違法とはいえない。 すなわち,前記(1)アb(b)及び(c)のとおり,原告がB主任らによってうつ 手錠に変更した際,両手後ろのままとしたのも,やむを得ない措置であって,違法とはいえない。 すなわち,前記(1)アb(b)及び(c)のとおり,原告がB主任らによってうつ伏せに制圧された後もなお暴れ続けていたため,B主任らは,金属手錠を両手後ろの方法で使用したが,その後も原告は,大声を張り上げて全身を激しく揺さぶって暴れるなど,暴行のおそれが顕著に認められたことから,原告に対する戒具を革手錠に変更したものである。 しかしながら,原告は,戒具を変更する際もひどく暴れており,金属手錠を外して革手錠を装着することが危険な状態であり,足を押さえつけながら,革手錠の腕輪の部分を左手に装着し,それから同じく腕輪を右手に装着し,さらに革手錠のベルトを通したあと,金属手錠を外すという手順にしなければならなかった。 このような原告の戒具を両手前に変更すれば,うつ伏せの状態から起きあがる際に立ち上がりやすく,時間的余裕が与えられ,他害のおそれが増大する。また,片手前,片手後ろに変更するには,原告の片手からいったん金属手錠を外し,片手を後ろ手にして腕輪を装着しなければならないが,その際,他方の手首に金属手錠がはめられていたとしても,原告の両腕は,手錠で左右が緊縛された場合より自由になり,興奮した原告が,片手首に金属手錠を装着して更に激しく腕を振り動かすことが予想され,職員が傷害を負ったり,原告自身がはずみで傷害を負うおそれがある。さらに,いったん両手首から金属手錠を完全に外して革手錠の腕輪を装着する手順にしたとしても,片手を後ろ手に革手錠の腕輪にはめた後,次に残りの手首を革手錠の前の腕輪にはめるには,原告の身体をうつ伏せから仰向けにする必要があるが,そのために原告の足を押 の腕輪を装着する手順にしたとしても,片手を後ろ手に革手錠の腕輪にはめた後,次に残りの手首を革手錠の前の腕輪にはめるには,原告の身体をうつ伏せから仰向けにする必要があるが,そのために原告の足を押さえつけていた手を緩めれば,全身を激しく振って暴れるおそれが大きく,身長190センチメートル,体重87キログラムの原告がこのように暴れれば,足が自由になり,職員の腕を容易に振り切ってしまうおそれが大きい。 (d) 原告は,革手錠の使用に伴い,股割れズボンを着用させられたことについても,違法であると主張している。 しかしながら,股割れズボンは,足を開いて屈んだ場合にのみ排泄可能な状態となるものの,普段は当該部分が閉じており,陰部が常に露出する状態となるわけではない。 他方,股割れズボンを着用していない場合,革手錠の被使用者は,用便の都度,職員に声をかけてズボンを下ろすことを求めざるを得ず,職員が申出に気付くのが遅れたり,夜間で配置された職員数が少なく,申出に応じることが危険なためにそのまま放置した場合には,衣服が汚れ,その屈辱感は股割れズボン着用の場合とは比較にならない。 このように,股割れズボンの着用は,革手錠の被使用者の羞恥心に配慮しつつ,独力での用便を可能とするものであり,代替手段は考えられないのであって,革手錠の使用が必然的に股割れズボンの着用を伴うことを理由として,革手錠の使用が違法であるということは失当である。 (e) 原告は,革手錠及び金属手錠を併用したことが違法である旨主張する。 しかしながら,原告については,手首が細く,革手錠の腕輪から手首が離脱するおそれがあったことから,これを予防するために 錠及び金属手錠を併用したことが違法である旨主張する。 しかしながら,原告については,手首が細く,革手錠の腕輪から手首が離脱するおそれがあったことから,これを予防するために金属手錠が併用されたものである。そして,原告に革手錠及び金属手錠を併用するについては,人差し指が金属手錠と本人の手首に差し込める状態であることを確認し,それ以上締まらないようにロックもきちんと掛けており,きつくもなく緩くもなく,適正な緊度で併用されていたのであって,原告に対して必要以上の苦痛を与える態様により使用されたものではなかった。 したがって,原告に対し,革手錠及び金属手錠を併用したことが違法であるということはできない。 (f) 原告は,革手錠を本件保護房拘禁中に使用したことが違法であると主張する。 しかし,保護房に収容される者は,興奮状態又は心身の状況が極めて不安定な状態にあるから,どのような行動に及ぶか予測困難な面が多く,平静かつ沈黙を装いながらも,職員の警備が手薄となる時間帯や食事の給与,寝具の出し入れ,医師の診察等で開扉する際を狙い,突如として逃走を試みたり,職員に対する暴挙に及ぶことがあり得るのであって,実際にも,戒具を使用されていない保護房の被収容者による暴行の事例は相当数存在する。したがって,保護房内での革手錠の使用は,保護房収容のみでは必ずしも被収容者の鎮静保護を期し得ないような場合に,戒護の措置の一つとして許されるというべきである。 本件の場合,原告は,革手錠を使用されて本件保護房に収容された後も,直ちに鎮静せず,大声を発し,安座ないし寝た姿勢を取るようになった後も独語を発したり,本件保護房内を徘徊するなどしており,保護房に収 本件の場合,原告は,革手錠を使用されて本件保護房に収容された後も,直ちに鎮静せず,大声を発し,安座ないし寝た姿勢を取るようになった後も独語を発したり,本件保護房内を徘徊するなどしており,保護房に収容したのみで直ちにその鎮静保護を期待できる状態になく,また戒具を変更し得る状況ではなかったことが明らかであるから,本件保護房内における原告への革手錠の使用は,原告の鎮静保護のため,特に必要なものであったといわざるを得ず,前記各通達に照らしても,職務上の義務に違反するものではなく,違法又は不当な点はない。 (g) 原告は,本件戒具使用中にぜん息の発作を起こしていたのであるから,このような場合に革手錠を使用する必要はない旨主張する。 しかしながら,保護房動静記録簿には,原告がぜん息の発作により苦しんでいることを窺わせる記載はなく,東4舎の係長として原告への革手錠装着,本件保護房拘禁中の食事の給与,寝具の出し入れ等を行ってきたB主任も,原告がぜん息発作を起こしているところをまったく見ていない。 また,本件保護房拘禁を解除した後に,原告に対してテオドールが処方されているが,テオドールは原告のぜん息の発作を抑制するため,かねてから原告に継続的に投与されており,これを本件保護房拘禁の解除後に投与されたことをもって,直ちに原告が本件保護房拘禁中に重篤なぜん息発作を起こしていた事実を認めることはできない。 したがって,仮に原告が本件保護房拘禁中にぜん息発作を起こしていたとしても,重篤とはいえない程度のものであったにすぎず,そもそもぜん息発作の存在も疑わしいというべきである。 (h)i 原告は,前掲東京高等裁判所判決において,およそ両手後ろの方法によ も,重篤とはいえない程度のものであったにすぎず,そもそもぜん息発作の存在も疑わしいというべきである。 (h)i 原告は,前掲東京高等裁判所判決において,およそ両手後ろの方法により革手錠及び金属手錠を併用することが原則として違法であると判示されたように主張する。 しかしながら,同判決は,手錠の使用の要否及び使用方法が刑務所長の合理的裁量にゆだねられており,具体的な場合にその裁量判断が合理性を有しない場合に,裁量権の逸脱又は濫用により違法の評価を受けると判示したものであり,具体的な事案を離れて,一般的に上記のような手錠の使用方法が違法であると判示したものではない。 そして,本件戒具使用の場合,同判決の事案と比較して,排便の始末が容易であったこと,両手前で金属手錠及び革手錠を装着することが困難であったこと,被収容者が一般の日本人より大柄で体力も強く,少しでも暴行抑制効果の高い戒具を使用して,被収容者の暴行による危険を回避する必要があったこと等に照らせば,原告に対して保護房内において両手後ろの方法により革手錠及び金属手錠を併用したことは,本件の具体的状況の下において合理性が認められるのであって,違法であるとはいえない。 ⅱ また,原告は,本件における両手後ろの方法による革手錠及び金属手錠の併用によって,前掲東京高等裁判所判決の事案を上回る苦痛を受けたことから,本件戒具使用が違法である旨主張する。 しかし,本件戒具使用の違法性を判断するに当たっては,本件事案において原告が受けた具体的な苦痛の程度と,本件事案において暴行抑制のために採られた手段の必要性とを相関的に検討することが必要であって,事情の異なる事案との間で,苦 を判断するに当たっては,本件事案において原告が受けた具体的な苦痛の程度と,本件事案において暴行抑制のために採られた手段の必要性とを相関的に検討することが必要であって,事情の異なる事案との間で,苦痛の程度を比較しても,そこから違法性についての結論が導かれるものではない。 また,本件においても,革手錠を両手後ろの方法により使用したことにより,原告が独力で食事をとろうとした場合に,いわゆる犬食いの方法によらざるを得なかったこと,就眠に一定の困難が伴った可能性があることは認められるが,原告は,自ら排便の始末をすることは可能であったのであるから,上記判決の事案とは異なる事情が存在しており,上記判決の場合と同様に,原告が両手後ろの方法により革手錠及び金属手錠を使用された場合に排便の始末ができなかったことを前提として,原告の肉体的,精神的苦痛の程度を評価することは相当でない。 (i) 原告は,革手錠の使用に関する統計上の事実関係を前提として,「暴行のおそれ」があるとして保護房に収容された場合に革手錠を使用することは必要がなく,また,片手前片手後ろや両手後ろの使用態様も必要ないとし,本件当時の実務が過剰な戒具の使用であり,警察比例の原則に反する旨主張する。 しかしながら,戒具の使用及びその方法の是非は,個別の案件ごとに具体的事実に基づいて判断されるべきものであるから,革手錠使用や保護房収容に関する統計的データをもって,具体的事案における革手錠使用の是非を論ずること自体,失当であることは明らかである。 なお,近時,革手錠の使用件数が全国的に減少傾向にあるという統計上の事実は存するが,これは,全国的に,行刑施設の規律秩序が厳正に保持されるとともに,各種処遇技 らかである。 なお,近時,革手錠の使用件数が全国的に減少傾向にあるという統計上の事実は存するが,これは,全国的に,行刑施設の規律秩序が厳正に保持されるとともに,各種処遇技術の向上等により衆情が安定していることによるところが大きいと考えられる。しかしながら,施設によっては革手錠の使用件数が増加した例もあることから明らかなとおり,革手錠の使用は,個別の案件ごとに,具体的事実に基づいて必要性が判断されているところであって,全国的な使用件数の減少傾向をもって,従前の革手錠の使用が過剰であったといえないことはいうまでもない。 c 本件保護房拘禁について(a) 監獄法は,保護房への収容に関する明文の規定を設けていないものの,行刑施設においては,被収容者の目前急迫の規律及び秩序侵害行為を除去するために,被収容者の鎮静及び保護に当てるために設けられた特別な設備及び構造を有する独居房である保護房を設置しており,保護房通達が規定する要件に基づいて収容が行われているところ,保護房通達は,一般の居房に拘禁することが不適当であると認めるべき合理的理由が存する場合に限り,保護房への収容を認めるものであって,それに基づく運用には合理性が存するというべきである。 そして,本件においては,原告が居房内で本や日用品を投げつけ,職員の制止にもかかわらず,大声をあげて身体を激しく揺さぶるなどして暴れ続け,さらに,取調室に連行された後も,大声をあげながら職員が押さえていた手を振りほどこうとして上半身を激しく揺り動かして暴れ続け,激昂した状態にあり,一般の居房に拘禁した場合,房内で暴れ,大声を発するなど,自傷他害のおそれ,刑務所内の静穏を害するおそれ等が存在したから,保護房への収容の要件を具備 を激しく揺り動かして暴れ続け,激昂した状態にあり,一般の居房に拘禁した場合,房内で暴れ,大声を発するなど,自傷他害のおそれ,刑務所内の静穏を害するおそれ等が存在したから,保護房への収容の要件を具備していたことは明らかである。 (b) また,原告は,原告がぜん息の発作を起こしたにもかかわらず,保護房収容を継続した措置が違法である旨主張するが,原告が本件保護房拘禁中にぜん息の発作を起こしていたとしても,重篤とはいえない程度のものであったにすぎないことは,前記b(g)のとおりであるから,原告の上記主張は理由がない。 d 本件戒具使用及び本件保護房拘禁がB規約に違反する旨の主張について原告は,本件戒具使用及び本件保護房拘禁における原告に対する扱いが,B規約7条が禁じる非人道的な若しくは品位を傷つける取扱に該当し,違法である旨主張する。 しかし,本件戒具使用及び本件保護房拘禁がいずれも適法であることは前記のとおりであって,原告に対する扱いがB規約に違反する旨の原告の主張も理由がない。 ウ本件各懲罰について原告に対する本件各懲罰は,次のとおり,いずれも原告の規律違反行為に対する適正,妥当な処分であって,これらを違法とする原告の主張は,いずれも失当である。 a 本件各懲罰に共通する違法性の主張について(a) 原告は,懲罰要件について具体的な規定のない監獄法に基づき,遵守事項違反を理由として本件各懲罰を科したこと,本件各懲罰が適正手続に基づいて科されたものでないこと等から,本件各懲罰が憲法31条,13条等に反して違法である旨主張する。 i しかしながら,監獄法上の懲罰は,行政上の制 ,本件各懲罰が適正手続に基づいて科されたものでないこと等から,本件各懲罰が憲法31条,13条等に反して違法である旨主張する。 i しかしながら,監獄法上の懲罰は,行政上の制裁である秩序罰であって,多種多様な内容の規律違反に対し,応報の目的にとどまらず,矯正,教育の目的をもって,行政機関により裁量的に科されるものであり,刑罰とは異なるものであるから,刑法,刑事訴訟法等におけるような厳格な罪刑法定主義及び適正手続が適用されるものではなく,監獄法上の懲罰に関して,規律違反行為及び科罰手続につき具体的規定を欠くことや,被収容者に弁護人選任権や審判の公開が認められないことをもって,直ちに違憲,違法ということはできない。 ⅱ また,懲罰の手続については,刑事裁判におけるほど厳格な審理手続が要求されているわけではないものの,懲罰が被収容者にとって相当の不利益を科すものであることからすれば,懲罰の手続は,慎重かつ適正に行われるべきである。 この点,Kにおいては,規律違反容疑行為があった場合,まず事実関係を明らかにするために取調べが行われ,その後職員により構成される合議体の審査会が当該行為者の審査を行い,これを踏まえ,審査会の議長が審査会の意見をとりまとめて所長に報告し,これに基づいて所長が懲罰を決定しているものである。他方,当該行為者は,審査会に出席するほか,書面を提出して弁解する機会を与えられている。さらに,所長は,審査会の委員とは別に職員の中から当該行為者を補佐する者を指名し,その者が審査会の審査において当該行為者の立場に立って意見陳述等の活動をするものとされている。 このように,Kにおける懲罰の手続は,慎重かつ適正に行われており,本件各懲罰 の者が審査会の審査において当該行為者の立場に立って意見陳述等の活動をするものとされている。 このように,Kにおける懲罰の手続は,慎重かつ適正に行われており,本件各懲罰の手続に違法な点はない。 (b) 原告は,日本語を理解できない外国人であり,本件各懲罰の手続において,手続の意味及び内容をほとんど理解できないまま懲罰手続が進行したことから,実効的な自己弁護の機会が与えられていないに等しい旨主張する。 しかしながら,Kは,供述調書の作成,懲罰審査会の開催等,いずれの懲罰手続においても,英語の通訳人を介し,原告に説明等を行っているから,原告の上記主張は失当である。 (c) 現行の軽屏禁がB規約7条の禁ずる非人道的な扱いに該当する旨の原告の主張は争う。 b 本件各懲罰の個別的な違法事由の主張について(a) 監獄法に基づく懲罰は,刑務所における規律秩序の維持を目的とする行政上の秩序罰であり,監獄法59条は,在監者による規律違反行為に対し,懲罰を科すこととしているところ,在監者の規律違反行為に対してどのような懲罰を科すかについては,刑務所長の権限であり,その判断に裁量権の逸脱又は濫用が認められない限り,懲罰が違法とは認められないというべきである。 (b) 第1事件に関する懲罰についてi 前記(1)アa(a)のとおり,Kでは,外国人用食堂において,外国人受刑者が全員揃うまでの間,目を閉じて待つよう指導していたが,これは,各工場に就業している多数の外国人受刑者を一室に集めるという特殊な処遇場面において,不仲の者同士のけんか,争論,共犯者による不正連絡等の規律違反行為を未然に防止するた つよう指導していたが,これは,各工場に就業している多数の外国人受刑者を一室に集めるという特殊な処遇場面において,不仲の者同士のけんか,争論,共犯者による不正連絡等の規律違反行為を未然に防止するため,一層厳格な行動規制をとる必要があったことに基づく措置である。 また,Kでは,職員の職務上の指示,命令に対するいかなる反抗をも禁止しているが,これは,職員の適正な職務執行を確保するためにとられている措置である。 原告は,外国人用食堂内において,目を閉じて待つべき時間帯に目を開け,入室する他の受刑者の様子を窺っていたため,職員がこれを注意したのに対し,これに素直に従おうとせず抗弁したものであり,その態様も,英語でいえば「ファック・ユー」(“Fuckyou.”「ちくしょう」の意味)に当たるように感じられるものであって,職員の職務上の指示,命令に対する抗弁を禁止した本件遵守事項39項に違反することが明らかであったことから,Kでは原告に懲罰を科したものである。 ⅱ この点,原告は,原告が目を開けていた事実が存しない以上,目を閉じる旨の職員の指示は「職務上の指示」とはいえず,原告に対する懲罰は違法となると主張する。 しかしながら,上記懲罰においては,原告が目を開けていると判断して注意を与えた職員に対し,原告が反抗したことが懲罰の根拠とされたのであり,原告が目を開けていた事実の存否は,情状に関する事情の一つにすぎない。そして,仮に原告が目を開けていた事実が存しないとしても,原告としては,単に注意に従い目を閉じた状態を維持すれば足りたのであり,職員をにらみつけながら声を荒げて反抗することが正当化される理由はない。とりわけ,多数の被収容者を少数 事実が存しないとしても,原告としては,単に注意に従い目を閉じた状態を維持すれば足りたのであり,職員をにらみつけながら声を荒げて反抗することが正当化される理由はない。とりわけ,多数の被収容者を少数の職員が戒護する外国人用食堂において,不正連絡の防止が無視できない問題であったところ,被収容者に対して目を閉じるよう指示した職員に対し,被収容者が声を荒げて抗弁することを許せば,職員が正常な職務を遂行できなくなることは明らかである。 したがって,たとえ仮に原告が目を開けていなかったとしても,その事実が原告の職務妨害に関する情状に影響するとはいえないから,原告に対して軽屏禁10日の懲罰を科したことは違法でない。 ⅲ 原告は,刑事施設の職員が被収容者に対し,心得事項の遵守を指示,命令し,被収容者がこれに従わなかったことを理由に懲罰を科し得るとすれば,結局,心得事項違反について懲罰を科し得ないとした趣旨が没却されてしまう旨主張する。 しかし,本件遵守事項39項の規定からすれば,単に職員の職務上の指示,命令に従わないことが遵守事項違反となるのではなく,職員の職務上の指示,命令に対して抗弁,無視などの方法により,職員の職務を妨害することが遵守事項違反となるものというべきである。換言すれば,被収容者が平穏に職員の指示,命令に対して質問をすること,意見や希望を申し述べること等には何の問題もないのであって,それらの行為の態様が職務妨害と認定されるに至ったときに,初めて同項に違反した行為となるのである。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 ⅳ また,Kは,犯罪傾向の進んだ累犯受刑者及び日本語を理解する能力に乏しい外国人受刑者 なるのである。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 ⅳ また,Kは,犯罪傾向の進んだ累犯受刑者及び日本語を理解する能力に乏しい外国人受刑者を収容しており,暴力団関係者,薬物中毒患者,精神病患者等のいわゆる処遇困難者の割合が非常に大きく,工場,舎房等,処遇の現場では,1名ないし2名の職員が,数十名に及ぶ被収容者を刑務作業に従事させたり,平穏な生活を送らせるよう指導したりしているものである。 このような状況下において,被収容者が不満を勝手気ままに表明し,職員の職務を妨害することまで認めれば,刑務所が無秩序状態に陥り,暴力団関係者など,一部の被収容者によって支配される危険性が極めて高く,仮にそのような事態に至れば,刑務所は,職員のみならず被収容者にとっても生命の安全すら保障されない危険な場と化すばかりでなく,贖罪の場としての信頼が失墜する結果,出所者の社会復帰が著しく困難になり,刑務所の社会復帰訓練機能が停止することとなる。 そうすると,監獄法がこのような事態を容認するものとは到底考えられない以上,心得事項違反についての指示,命令に対する抗弁に懲罰を科すことが違法であるとする原告の主張には理由がない。 ⅴ なお,原告は,目配せだけで交換できる情報には限度があるから,目を閉じる扱いの必要性はそれほど重大ではないと主張する。 しかし,この主張も,Kにおける不正連絡防止の実務及び外国人受刑者の特殊性を無視したものである。すなわち,Kの受刑者は,約40の工場にそれぞれ所属し,夜間に収容される舎房も工場単位で指定されているため,所属工場が変わらない限り工場を越える受刑者間の交流は一切ない の特殊性を無視したものである。すなわち,Kの受刑者は,約40の工場にそれぞれ所属し,夜間に収容される舎房も工場単位で指定されているため,所属工場が変わらない限り工場を越える受刑者間の交流は一切ないところ,このことを前提に,暴力団関係者など集団を形成する可能性が高い受刑者や,対立関係にある受刑者が相互に接触しないよう留意して工場の指定を行い,これらの者が不正に連絡を取り合うことを防止している。しかしながら,外国人用食堂及び外国人用入浴場においては,例外的に所属工場を越えて外国人受刑者が交流することが可能であり,このような外国人受刑者の交流を介して,暴力団関係者などが不正に連絡を取り合い,刑務所内において隠然たる勢力となるおそれがあることから,これを防止するため,目配せによる不正連絡も防止することが必要である。 したがって,原告の主張は,このような外国人受刑者を介した不正連絡のおそれに対する認識や,その防止がKの規律秩序維持のため極めて重要であることについての認識を欠いているものであって,失当である。 ⅵ 以上のとおり,第1事件における原告の動静及び抗弁は,到底放置し得るものではなく,懲罰は適法であったというべきである。 (c) 平成5年9月7日の懲罰について平成5年9月7日の懲罰は,原告が本件戒具使用に先立ち,原告に出房を促したB主任に対し,突然怒鳴り声をあげながら右腕を振り払って詰め寄った行為が,暴行をしようとした行為に該当し,本件遵守事項19項に違反することにより科されたものであるから,この懲罰も適法である。 (d) 第2事件に関する懲罰についてiKにおいては,受刑者を作業に専念させるとともに 違反することにより科されたものであるから,この懲罰も適法である。 (d) 第2事件に関する懲罰についてiKにおいては,受刑者を作業に専念させるとともに,わき見による作業事故を防止する観点から,作業中のわき見を禁止しており,また,良好な人間関係を確保するために,他人に対する粗暴な言動を禁止している。 そして,原告は,作業中に正当な理由なくわき見をしていたことから,職員がこれを注意したところ,その職員に対して暴言を吐いたものであって,本件遵守事項21項に明らかに違反する行為であったことから,原告に対し懲罰を科したものであり,原告が上記懲罰の違法事由として主張するところは,いずれも理由がない。 したがって,原告に対する第2事件に関する懲罰は,適法である。 ⅱ ところで,Kにおいては,作業専念義務違反及び職員の職務上の指示,命令に対する反抗をも懲罰の対象としているところ(本件遵守事項28項,39項),第2事件に関する懲罰についての被告の当初の主張は,これを作成した指定代理人において,誤解に基づき,実際の懲罰は暴言事犯のみを対象として科されたものであった事実を見落とし,誤った答弁をしたにすぎない。 これに対し,原告は,被告の訂正後の主張に沿う懲罰表(乙52)が,本件訴訟の提起後に作成されたものであり,オリジナルの懲罰表が別途存在する旨主張する。 しかし,被告が第2事件に関する懲罰事由についての主張を変更したことから,直ちに懲罰表が本件訴訟の途中で作成,提出されたものということはできない。そして,乙第52号証として提出された懲罰表以外に,オリジナルの懲罰表が存在する る懲罰事由についての主張を変更したことから,直ちに懲罰表が本件訴訟の途中で作成,提出されたものということはできない。そして,乙第52号証として提出された懲罰表以外に,オリジナルの懲罰表が存在することはあり得ず,その信頼性にも疑問はない。 (e) 第3事件に関する懲罰についてiKにおいては,被収容者に対して節水を義務付けることにより,国の予算(光熱水料費)の適正な執行を図る目的で,入浴場以外の場所において許可なく身体を洗うことを禁止している(本件遵守事項35項)。 しかるところ,原告は,居室内の洗面所において,職員の許可なく不正に頭髪を洗っていたものであり,同行為が本件遵守事項35項に違反することから,原告に対し懲罰を科したものである。 ⅱ 原告は,仮に原告が両手一杯分の水で頭を洗っていたとしても,本件遵守事項35項に定める「身体を洗う」には該当しない旨主張する。 しかし,問題は,「許可なく」頭を洗った事実にあるのであって,頭を洗ったといえるか否か,身体を洗ったといえるか否かという原告の行為の評価ではなく,洗髪を許可に係らしめていたにもかかわらず,許可を得ずにそのような行為をした点が,規律違反行為の核心というべきであるから,原告の上記主張は理由がない。 また,原告が第3事件に関する懲罰の違法事由として主張するその他の点も理由がない。 ⅲ したがって,第3事件に関する懲罰も,適法であったというべきである。 エ本件独居拘禁についてa 施行規則47条は,「在監者ニシテ戒護ノ為メ隔離ノ必要アルモノ」について,独居拘禁に付すことができる旨規定 ,適法であったというべきである。 エ本件独居拘禁についてa 施行規則47条は,「在監者ニシテ戒護ノ為メ隔離ノ必要アルモノ」について,独居拘禁に付すことができる旨規定しているところ,「戒護ノ為メ隔離ノ必要アルモノ」とは,逃亡,職員及び被収容者間の殺傷,自殺,火災,暴動等,刑務所内の安全及び秩序を維持するため,これに反する行為を予防,制止し,また既に侵害が生じた場合にこれを鎮圧するために,当該被収容者を他の収容者と隔離する必要があることをいうものと解すべきである。そして,被収容者について戒護の必要上独居拘禁に付するかどうか,また独居拘禁に付するとして,昼夜独居拘禁と夜間独居拘禁のいずれを選択するかの判断は,刑務所長の合理的な裁量にゆだねられているところ,刑務所長は,当該被収容者の刑期,犯歴,行状,性格,他囚との関係等の諸事情を考慮し,刑務所内における紀律の維持及び被収容者の処遇についての科学的,専門的知識と経験に基づいてこれを決定すべきであって,その判断は,合理的な基礎を欠くなど妥当性を著しく損なう事実がない限り,違法となるものではないと解すべきである。 また,Kにおける独居拘禁の処遇内容は,前記2(6)イのとおりであって,昼夜独居拘禁者に限らず,雑居拘禁者においても,居室内では,座席位置を定め,勝手に寝転んだり,寝具にもたれかかったり腰掛けたりしないこととされているが,一定の時間帯において特定の姿勢を維持しなければならないことはない。 b 原告は,平成8年3月当時,昼間は第23工場において就業し,夜間は東2舎3階第371室に独居拘禁されていたが,同月13日,Kにおいて,原告の処遇を決定する分類審査会を開催して検討したところ,次の実情が認められた。 ( 工場において就業し,夜間は東2舎3階第371室に独居拘禁されていたが,同月13日,Kにおいて,原告の処遇を決定する分類審査会を開催して検討したところ,次の実情が認められた。 (a) 原告は,同年2月7日,購入した図書が削除・抹消されることがある旨を告知され,これを承認していたにもかかわらず,私本の削除,抹消を不満とし,その購入代金の支払を拒絶するなど,独善的,利己的な要求をしていること(b) 原告は,同年3月2日,原告が在日本Fあてに発信した信書において,Kが外国人に対して差別的懲罰を行っており,原告に対する懲罰が外国人に対する差別に基づくものであるばかりか,原告のほかにもこの種の差別により外国人収容者の20パーセント以上が影響を受けており,何百人もの被収容者が賠償の対象となるとして,Kに対して集団で訴訟を提起する意思がある旨を明確にしていたこと(c) 原告が同月5日に日本弁護士連合会あてに発信することを願い出た信書に,職員が,被収容者に対し,盗み,暴力及び名誉毀損行為を当然の権利のように行っており,外国人受刑者に対してはその傾向が特に強いこと,外国人受刑者にとって1回の懲罰が数か月数年の刑期加算となり,差別的で過酷であること等の,虚偽,わい曲した記載があったことc そして,上記分類審査会の審査の結果,原告を工場において他の被収容者と共に就業させれば,原告の行動に同調する者,原告を英雄視する者等によって集団が形成された場合や,原告に反感を抱く者により原告に危害が加えられた場合,施設の規律秩序の維持に支障が生じるおそれが顕著に認められ,原告を集団で処遇することが困難であると認められたことから,同月14日以降,原告を処遇のための独居拘禁とすることとし,同日,原告 れた場合,施設の規律秩序の維持に支障が生じるおそれが顕著に認められ,原告を集団で処遇することが困難であると認められたことから,同月14日以降,原告を処遇のための独居拘禁とすることとし,同日,原告にその旨告知した。 d 以上のとおり,Kでは,原告の行状,他の被収容者との関係等の諸事情を勘案した結果,原告を集団で処遇することが不適当であるとの結論に至ったことから,原告を昼夜独居拘禁に付したものであり,日本弁護士連合会への発信や,本件訴訟の準備及び提起を問題としたものではなく,その判断が合理的基礎を欠くなど妥当性を著しく損なうものでないことは明らかであるから,本件独居拘禁に何ら違法な点はない。 オ昼夜独居拘禁下における刑務所労働についてa 原告は,本件独居拘禁下において,紙細工の作業に従事していたものであるが,作業賞与金の額は,作業内容に関係なく,次のとおり計算される。 (a) 作業等級の設定見習工から1等工までの10段階の等級があり,新たに就業する被収容者及び職種を変更した場合には,原則として見習工に決定する。 その後,各等級の定められた標準期間を経過した後,技能及び作業成績(作業能率,製品の状況,努力の程度,安全態度,材料・器具の取扱い等)を審査し,適当と認められた場合に上位の等級に昇等させる。 (b) 作業賞与金は,各等工別の基準額(就業時間1時間当たりの金額)に1か月の就業時間数を掛けたものを基本とし,作業成績や行状による加算又は減額をして計算する。 b 原告に対する作業賞与金の支給が違法でないことについて(a) 懲役受刑者が従事する刑務作業は,刑務所に収容されて自由を拘束されるとともに,一定の労務作業に従事することを b 原告に対する作業賞与金の支給が違法でないことについて(a) 懲役受刑者が従事する刑務作業は,刑務所に収容されて自由を拘束されるとともに,一定の労務作業に従事することを要求される労働力の提供であって,これに対する対価を当然に予定すべきものではない。 また,刑務作業は,自由刑の受刑者に対し,刑罰の内容として義務的に課される強制的教育手段であって,矯正処遇の一環としての役割を担うものであり,経済的有用性の追求を目的するものではないから,一般社会における労働と同様に,報酬としての賃金を請求することができるとすることは正当ではない。実際にも,刑務作業に報酬制を採用するとすれば,従事する作業によって賞与金に格差が生じ,就業希望職種の偏り,職業訓練希望者の減少,養護工場就業者の意欲低下等の問題が生じることが予想されるのであって,これらが望ましい事態でないことはいうまでもない。 (b) この点,原告は,作業賞与金が報酬性を有している以上,その金額が低廉にすぎる場合は違法となる旨主張するが,原告が作業賞与金に報酬性があるとする根拠は,賞与金額が零ということがないことに尽きるのであって,金額の多寡はともあれ一定の金額は計上されているという意味で「報酬性」を定義しておきながら,報酬性が認められる以上,一定金額以上でなければ違法と主張することは失当である。 (c) そもそも,作業賞与金は,作業奨励という刑事政策上の考慮に基づき,その作業収益及び生産性とは無関係に,一定の基準に従って恩恵的に与えられる国家財産の公法的な配分であり,作業収入とは独立した予算に基づく独立した支出であるから,その基準額や具体的な決定方法は,国の政策の問題として,法務大臣が刑事政策上の目的を勘 従って恩恵的に与えられる国家財産の公法的な配分であり,作業収入とは独立した予算に基づく独立した支出であるから,その基準額や具体的な決定方法は,国の政策の問題として,法務大臣が刑事政策上の目的を勘案しつつ,許された予算の枠内で,過不足なく一定の基準で受刑者に支給されるよう決定すれば足りるものである。 そして,刑事政策的側面から見た場合,作業賞与金の額は,受刑者の社会復帰に資するか否かのみならず,刑罰の威嚇力,被害者感情,社会感情,国家の財政状況等をも勘案して決定する必要があり,しかも我が国の受刑者の場合,食費をはじめ生活費の一切を負担することなく生活しているのであるから,この点を考慮せずに,作業賞与金の額を平均賃金や諸外国における同種の金員の額と比較することは相当とはいえない。 (d) したがって,原告に対する作業賞与金の額が低廉に失する旨の原告の主張は理由がなく,作業賞与金の額について,違法は存しない。 c ILO第29号条約の主張について原告は,Kの刑務作業において民間企業製品の製作を義務付けることが,ILO第29号条約2条2の規定に反し,違法である旨主張する。 しかしながら,ILO第29号条約2条2の規定は,裁判所の判決の結果,懲役受刑者として定役に服すべき者が,刑務作業を実施する際に国の監督及び管理下において就業し,かつ,私企業に直接雇用され又は私企業の指揮下にないことを要するとしているものであるところ,我が国の刑務作業の場合は,国と民間企業との契約関係に基づき実施されており,懲役受刑者と私企業との間に直接の契約関係は存在しないから,Kの刑務作業は,同条約に違反するものではない。 カ仮出獄についてa 企業との契約関係に基づき実施されており,懲役受刑者と私企業との間に直接の契約関係は存在しないから,Kの刑務作業は,同条約に違反するものではない。 カ仮出獄についてa 仮出獄の判断基準については,前記1(6)のとおりであるところ,Kにおける仮出獄の申請に関する審査は,仮釈放等に関する規則の規定等に基づき,職員で構成される合議体の仮釈放審査会において,受刑者各人の毎日の所内生活における行状や作業成績,引受人の状態,出所後の生活の見通し,犯罪の内容,被害者に対する誠意,更生への決意等を細かく検討したうえで行われており,原告についても,同様の扱いをしたものである。 したがって,懲罰の有無が仮出獄の対象から除外するに当たって重大で決定的な要因であるとし,また,懲罰を仮出獄の審査に当たって考慮できるのは,非常に重大で反復される違法行為があった場合に限定されるとする原告の主張は,理由がない。 b そして,原告については,たびたび職員に反抗するなどの不良な態度が改まらず,およそ「改悛の状」を認めるべき行状ではなかったことが明らかであるから,原告が仮出獄の要件を満たしていなかったことは明白である。 したがって,原告が仮出獄を受けられなかったのは,上記審査会の審査結果に基づく合理的な結果であって,このことに何ら違法な点はない。 c また,憲法上,行政手続である仮出獄の審査に,刑事手続に準ずる保護が要請されるとはいえない以上,現行法令上,刑事手続に準する保護がないことをもって,違憲,違法であるということはできず,原告の仮出獄審査に関する憲法34条,37条,B規約14条3違反の主張も理由がない。 キなお,被告の公務員である職員に故意又は過失が存す とをもって,違憲,違法であるということはできず,原告の仮出獄審査に関する憲法34条,37条,B規約14条3違反の主張も理由がない。 キなお,被告の公務員である職員に故意又は過失が存する旨の原告の主張は否認する。 (3) 国家賠償法6条の「相互の保証」についてア原告は,国家賠償法6条が憲法17条,98条2項及び14条1項に違反する旨主張する。 しかし,憲法17条のように文言上「何人も」と規定されている場合,必ずしも無条件に外国人にもその権利を保障したものと解さなければならない理由はなく,憲法第3章に規定する基本的人権が外国人に保障されるか否かは,個々の人権の性質に着目して,個別に判断されるべきである。そして,同条が「法律に定めるところにより」と規定していることからすれば,法律によって外国人について特別の定めを設けることは可能であり,国家賠償法6条の趣旨が,我が国の国民に保護を与えない国の国民に対し,我が国が積極的に保護を与える必要はないという衡平の観念に基づくものであることからすれば,同条が国家賠償請求について相互主義を採用していることは,憲法17条に反するとはいえない。 また,憲法14条の趣旨は,特段の事情の認められない限り,外国人に対しても類推されるべきものと解するのが相当であるものの(最高裁判所昭和39年11月18日大法廷判決・刑集18巻9号579頁),同条は,不合理な差別的取扱いを禁止しているのであって,合理的な理由に基づく区別が同条に違反しないことは明らかである。そして,現在の世界が国家という単位を法的,経済的,社会的体制の基礎に置いている以上,外国人はすべての権利,自由について,我が国の国民と同等に取り扱われるものではないのであって,外国人の国家賠償請求に して,現在の世界が国家という単位を法的,経済的,社会的体制の基礎に置いている以上,外国人はすべての権利,自由について,我が国の国民と同等に取り扱われるものではないのであって,外国人の国家賠償請求について,上記の趣旨から我が国の国民と異なる取扱いがされたとしても,合理的な理由に基づく区別として,同条に違反せず,憲法98条2項にも反しないというべきである。 イまた,原告は,国家賠償法6条が,B規約2条1及び3,26条等に違反し,無効であると主張する。 すなわち,差別の禁止を規定したB規約2条1及び26条は,いずれも,あくまで合理的な理由のない差別を禁止する趣旨であり,合理的な理由に基づくあらゆる処遇の差異を禁ずるものではない。したがって,これらの規定は,結局,憲法14条1項と同趣旨の規定であるということができる。 以上を前提とすると,国家賠償法6条は,外国人に対する同法に基づく保護を一律に拒否するものではなく,相互の保証がある限り,あらゆる外国人に対し,同法に基づく保護を認めようとするものであり,また,公権力の違法な行使に基づく損害賠償制度による被害者の救済の国際的な普遍化を促進する効果を有するものであって,それ自体不合理なものではなく,むしろ,B規約2条3の規定の要求を実質的に満たすものというべきである。 したがって,国家賠償法6条は,B規約2条1及び3,26条等に反するものではなく,国家賠償法6条がB規約に違反する旨の原告の主張は失当である。 ウアメリカ合衆国における「相互の保証」の有無についてa 本件における「相互の保証」の意味国家賠償法6条は,外国人が日本国内において同法1条又は2条に規定する損害を受けた場合,その外国 相互の保証」の有無についてa 本件における「相互の保証」の意味国家賠償法6条は,外国人が日本国内において同法1条又は2条に規定する損害を受けた場合,その外国人の本国で日本人が同様の損害を受けたときに被害者である日本人がその国又は公共団体に対して損害賠償を請求する権利が認められているときに限り,その外国人に対して国又は公共団体が同法1条又は2条に規定する損害賠償責任を負う旨を明らかにしたものである。 したがって,米国人の受刑者による国家賠償事件について,「相互の保証」が認められるには,アメリカ合衆国内で日本人受刑者が同様の損害を受けたときに,当該日本人が我が国で国家賠償法に基づく損害賠償を受けられるのと同等以上の損害賠償請求権が存することが必要というべきである。 これに対し,原告は,憲法17条が公務員の不法行為につき「何人」にも損害賠償請求権を認めていることや,憲法の国際協調主義にかんがみ,相互の保証の要件が緩やかに解されるべきであると主張する。しかし,アメリカ合衆国において,日本人の受刑者が原告と同様の損害を受けた場合に,我が国の国家賠償法に基づく損害賠償と同等以上の損害賠償を国家から受けることができず,単に何らかの救済を得る方法が存在しているというだけで相互保証があると解するならば,アメリカ合衆国内の日本人受刑者が我が国内の米国人受刑者よりも不利な立場に置かれることを許容し,その状態を放置することになり,公務員の公権力の行使に基づく損害の賠償制度の国際的な普遍化を促進するという国家賠償法6条の趣旨を没却する結果となるから,原告の上記主張は相当でない。 b 「相互の保証」の立証責任が原告にあること国家賠償法6条は,「 を促進するという国家賠償法6条の趣旨を没却する結果となるから,原告の上記主張は相当でない。 b 「相互の保証」の立証責任が原告にあること国家賠償法6条は,「相互の保証があるときに限り,これを適用する。」と規定しており,外国人が被害者の場合,相互の保証の存在が国家賠償請求権を取得するための権利根拠事実とされていることが明らかであるから,法律要件分類説に従って,原告が相互の保証の存在について立証責任を負うべきである。 また,証拠との距離や立証の難易という実質的観点から考慮しても,外国人たる原告は,その本国の法制を知る手段,方法が豊富であるのに対し,被告としては,外務省等の機関を通じてこれを照会するしか調査の手段がないうえに,そのような調査によっても必ずしも的確な回答が得られないのが実情であって,原告の方が証拠への距離も近いといわざるを得ない。 さらに,国家賠償法6条の相互主義は,事実上の相互主義であって,外国人が国家賠償法の適用を受けるためには,当該外国において,日本人の権利が国内法の規定により認められている場合のみならず,判例,行政先例等によって権利救済が事実上認められていれば十分であるから,原告が立証責任を負うとすれば,原告はその本国において我が国の国家賠償法と同様の法律,判例,行政先例等が一つでも存在することを立証すれば足りるのに対し,被告が立証責任を負うとすれば,当該外国の法律,判例,行政先例等,あらゆる可能性を検討した上で,相互の保証が存在しないことを立証しなければならない。したがって,証明の難易の点からも,原告が立証責任を負うとすることが合理的である。 c 本件において「相互の保証」が存しないこと原告は,アメリ なければならない。したがって,証明の難易の点からも,原告が立証責任を負うとすることが合理的である。 c 本件において「相互の保証」が存しないこと原告は,アメリカ合衆国では,アメリカ合衆国憲法の修正条項において,刑務所内の処遇に関して我が国よりもはるかに詳細に受刑者の権利が保障されており,この保障には国籍による差別は存しないところ,連邦市民権法等によってこれらの権利につき救済が認められていること,その場合,国と同視すべき州,郡等が被告とされている例があること,実際にも,他の受刑者の行為により負傷した受刑者に対し,政府に損害賠償の支払を命じた裁判例や,刑務所内の処遇について損害賠償が支払われている事例が存在すること等から,アメリカ合衆国には,受刑者の国家賠償請求について,相互の保証があるとする。 しかしながら,原告の主張からは,アメリカ合衆国憲法修正条項のどの条項によって受刑者の権利が我が国よりもはるかに詳細に保障されているのか明らかでない。アメリカ合衆国憲法修正条項において,権利保障が受刑者に及ぶことが明らかな条項は,残虐で異常な刑罰を禁止した修正8条のみであり,かえって修正13条1項は,奴隷的拘束及び苦役からの自由の保障について「適法に有罪判決を受けた犯罪に対する処罰の場合」を明示的に除外している。 また,アメリカ合衆国憲法及び連邦市民権法に基づく裁判上の救済例については,そのほとんどが,公務員個人に対し適法な職務の執行を命じ又は違法な職務の執行の差止めを命ずるものであって,原告提出の証拠に掲げられた裁判例にも,国家に対して損害賠償の支払を命じたものは存しない。 さらに,他の受刑者の行為により負傷した受刑者に対しアメリカ合衆国政府に損害 であって,原告提出の証拠に掲げられた裁判例にも,国家に対して損害賠償の支払を命じたものは存しない。 さらに,他の受刑者の行為により負傷した受刑者に対しアメリカ合衆国政府に損害賠償の支払を命じた裁判例についても,原告の主張によれば,いわゆる安全配慮義務違反を理由として損害賠償請求を認めた事例であるところ,安全配慮義務は,我が国においても,公法,私法に通ずる一般的法原理に基づく義務であり,この義務違背に基づく損害賠償義務を公法上の義務ということはできないのであって,公務員の違法な公権力の行使に基づく国家賠償責任とは明らかに異質なものであるから,安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権が存在する事実は,公務員の違法な公権力の行使を理由とする国家賠償請求権の有無とは直接関係するものではなく,相互の保証の有無を論ずるに当たり参考となるものではない。アメリカ合衆国における刑務所内の処遇について受刑者に損害賠償が支払われているとする事例についても,アメリカ合衆国内で日本人受刑者が原告と同様の損害を受けたときに,当該日本人が我が国で国家賠償法に基づく損害賠償を受けられるのと同等以上の損害賠償請求権が存することの立証となるものとはいえない。 むしろ,我が国において,国家賠償法が受刑者に対しても全面的に適用され,公務員の違法な公権力の行使により損害を被った受刑者が国に損害賠償請求権を行使することが認められるとの法理が確立しているのに比べ,アメリカ合衆国においては,今日なお受刑者の権利保障のあり方に関して基本的な考え方の対立が残存しており,受刑者の拘禁状況に対する措置についても,国家に対する損害賠償請求が避けられる傾向にあるのであるから,我が国におけると同様の権利保障がなされているとはいえない。 立が残存しており,受刑者の拘禁状況に対する措置についても,国家に対する損害賠償請求が避けられる傾向にあるのであるから,我が国におけると同様の権利保障がなされているとはいえない。 したがって,アメリカ合衆国において,日本人の受刑者が公務員の違法な公権力の行使により損害を被った場合に,我が国の国家賠償法と同様又は同程度以上の金銭的救済が行われているということはできず,相互の保証は存しないというべきである。 (4) 損害について原告が前記「原告の主張」(4)記載の各損害を被ったことは,いずれも否認する。 (5) 結論以上のとおり,原告の主張はいずれも失当であるから,原告の請求は棄却されるべきである。 4 争点以上によれば,本件の争点は,次のとおりである。 (1) 原告が,本件保護房拘禁に際し,違法な集団的暴行を受けたか否か。 (争点1)(2) 本件戒具使用及び本件保護房拘禁が違法か否か。 (争点2)(3) 本件各懲罰が違法か否か。 (争点3)(4) 本件独居拘禁が違法か否か。 (争点4)(5) 本件独居拘禁中の原告の作業賞与金額に関して,違法な点が存するか否か。 (争点5)(6) 原告が仮出獄を受ける機会を得られなかったことが違法か否か。 (争点6)(7) (上記(1)ないし(6)のいずれかについて,違法であることが認められた場合)職員に故意又は過失が存したか否か。 (争点7)(8) 原告の本件請求について,国家賠償法6条の適用により,同条に規定する「相互の保証」が必要とされるか否か。ま られた場合)職員に故意又は過失が存したか否か。 (争点7)(8) 原告の本件請求について,国家賠償法6条の適用により,同条に規定する「相互の保証」が必要とされるか否か。また,必要とされるとして,「相互の保証」の存在が認められるか否か。 (争点8)(9) (上記(7)について故意又は過失が認められ,上記(8)について「相互の保証」が認められた場合)原告が被った損害の有無及び損害額(争点9) 第3 争点に対する判断 1 本件に関する事実経緯について各項末尾に掲記した証拠等によれば,次の事実を認めることができる。 (1) 第1事件についてア Kにおいては,平成5年当時,同刑務所内でF級受刑者(受刑者分類規程(昭和47年矯正医訓557法務大臣訓令)10条1項ーイにおいて,「日本人と異なる処遇を必要とする外国人」と定義されている受刑者)とされている外国人受刑者のうち,日本人受刑者と同じ食事を希望する者を除いた約80名について,平日の昼食の際,外国人用食堂に集めて食事をさせる扱いとしていた。外国人用食堂においては,被拘禁者同士の目と目が合ってにらみ合いとなるなどのトラブルや,目配せによる不正な連絡を防止するため,全員の着席が完了するまでの間,目を閉じて待たせる扱いとしていた。 (甲23,乙11,証人D,原告本人,弁論の全趣旨)イaKの外人処遇係に勤務していたD看守は,平成5年7月22日午前11時40分ころから,第1区の外国人受刑者を昼食のため外国人用食堂に連行する業務に就き,連行後,同食堂の洗い場の前で,外国人受刑者を戒護していた。すると,同日午前11時58分ころ,約7メートル離れた位置にある席に着 ら,第1区の外国人受刑者を昼食のため外国人用食堂に連行する業務に就き,連行後,同食堂の洗い場の前で,外国人受刑者を戒護していた。すると,同日午前11時58分ころ,約7メートル離れた位置にある席に着席していた原告が,顔を左右に動かしていたことから,注意して見ていたところ,原告が薄目を開けながら周りをちらちら見ているのを発見した。そこで,D看守は,原告に対し,原告の名前を呼んで目を閉じる旨注意するとともに,原告に近寄って,両手を目の横に挙げて,手のひらを閉じる状態を繰り返す方法で合図した。原告は,名前を呼ばれていったん目を開けたため,D看守は,原告の近くに来て,再度口頭で目を閉じるよう注意するとともに,手振りでその旨合図した。 これに対し,原告は,舌を突き出す感じで,また唇の辺りをなめすような感じで,少し薄目を開けながら,首を左右に振っていた。そこで,D看守がさらに注意をしたところ,原告は英語で早口に大きな声でまくし立て,D看守が注意を繰り返したところ,原告は椅子に座ったまま,あごを突き上げるようにD看守をにらみつけるような態度で,さらに顔を紅潮させて早口でまくし立ててきた。原告は,このようにまくし立てる間に,「私の目は閉じている。」という趣旨の発言をした。 D看守は,このようなやりとりの後,原告に注意を続けることに危険を感じ,上司である法務事務官看守部長H(以下「H部長」という。)の方を見たところ,H部長は,原告を第1区の事務室に連行するよう指示した。そこで,D看守は,上記事務室に原告を連行し,原告は,ふてくされた態度で事務室へ歩いてきた。 (乙4,11,33,35,36,証人D)b(a) これに対し,原告は,外国人用食堂にて着席し,原告の名前が叫ばれたの ,ふてくされた態度で事務室へ歩いてきた。 (乙4,11,33,35,36,証人D)b(a) これに対し,原告は,外国人用食堂にて着席し,原告の名前が叫ばれたので目を開けたが,その前に薄目を開けた事実はなく,その後も,原告のみが名指しで目を閉じるよう注意されたことから神経質になり,口を結んで,歯の上から舌を回すような動作をしたものの,舌を口から突き出すようなことをしたことはなく,さらに,職員が立腹して原告の背後に向かい,壁を殴りつけてわめくなどしたので,「何を言っているのかわかりません」という意味の英語を言ったものの,「私の目は閉じている。」という趣旨の発言をしたことはない旨主張し,原告もその旨供述している(甲9の2,乙37ないし41,原告本人)。また,D看守と原告との間には,当初少なくとも7メートルの距離があり,D看守がこのような距離から原告が薄目を開けていることを現認することはできないとして,原告が薄目を開けていたとするD看守の供述が信用できない旨主張する。 (b) そこで,原告が薄目を開けていたとするD看守の上記供述の信用性について検討すると,証人Dの尋問中,法廷で同人から約7メートルの距離に複数の原告代理人を立たせ,うち1人が薄目を開け,証人Dに指摘させる実験をした際,同人が薄目を開けている者を言い当てられなかったことは,当裁判所に顕著である。 しかしながら,D看守は,原告が顔を左右に動かしていたため,これを注視していたところ,薄目を開けて周りをちらちら見ているところを発見できた旨供述しているのであり(乙11,証人D),目を閉じたまま顔を左右に動かす動作をすることが不自然であることにもかんがみれば,上記の実験結果を考慮しても,なお原告が薄目を開けて いるところを発見できた旨供述しているのであり(乙11,証人D),目を閉じたまま顔を左右に動かす動作をすることが不自然であることにもかんがみれば,上記の実験結果を考慮しても,なお原告が薄目を開けていたとするD看守の上記供述は,信用することができるというべきである。 もっとも,証人Dは,同人が目を閉じろと注意した後に原告が首を左右に振っていた記憶があるとも供述しており(証人D),原告が顔を左右に動かしたのが注意される前であったとする上記供述との整合性が問題となるものの,証人Dは,原告が首を左右に振っていた挙動が何度かあったとも供述しており,その内容に相違や変遷があるとはいえないから,同人の前記供述に基づいて,原告が注意される前にも顔を左右に動かした事実を認めるのが相当である。 (c) 次に,原告の前記(a)の供述について検討すると,証拠(乙11,証人D)によれば,原告の名前が最初に呼ばれたのは,原告が注意された際であることが認められるところ,それ以前に原告が顔を左右に振っており,薄目を開けていたことが認められるのは上記(b)のとおりであり,自分の名前が叫ばれるまで目を閉じていた旨の原告の供述は採用できない。 また,原告は,自分だけが名指しで注意されて神経質になったことから,歯の上から舌を回すような動作をした旨供述するが,その供述内容は不自然といわざるを得ず,その前後の原告の言動に照らしても,原告があえて舌を出したものと考えるのが相当である。 さらに,原告は,「私の目は閉じている。」という趣旨の発言をしていない旨供述するが,第1事件当時,外国人用食堂で原告の近くに着席していた複数の外国人受刑者が,原告の「私の目は閉じている。」という趣旨の発言を聞い は,「私の目は閉じている。」という趣旨の発言をしていない旨供述するが,第1事件当時,外国人用食堂で原告の近くに着席していた複数の外国人受刑者が,原告の「私の目は閉じている。」という趣旨の発言を聞いていること(乙42,43)に照らせば,これを否定する原告の上記供述は信用することができない。 したがって,前記aの認定に反する原告の上記(a)の供述は,採用できないというべきである。 (d) そして,他に,前記aの認定を覆すに足りる主張及び証拠はない。 ウ Kでは,前記イのとおり,原告が職員の指示に素直に従わず,注意されたことに対して不満を申し立てた件について,規律違反容疑行為として取り調べるため,原告を取調べのための独居拘禁に付すこととした(乙33)。そして,同月26日,同月30日,同年8月6日,同月10日及び同月12日,原告から上記行為について任意に事情を聴取したところ(乙37ないし41),原告は,目を開けていた事実及び反抗した事実を否認した。しかし,第1事件当時,外国人用食堂において原告の近くに着席していた外国人受刑者3名に対し,参考人として任意に事情を聴取したところ,上記3名は,原告が職員から目を閉じるように注意されたことに対し,「目を閉じていますよ。」などと言い返していた旨申し述べた。 (乙33,34,37ないし41)エ同月16日,原告の上記規律違反容疑行為に関する懲罰審査会が,原告出席のうえ開かれた。懲罰審査会は,原告の上記行為が規律違反行為に該当するか否かを検討した結果,原告自身は規律違反容疑行為を否認するものの,原告の上記行為を現認していたD看守及びH部長の各報告書及び参考人である上記外国人受刑者3名の各供述調書に基づき,原告が目を開けてい 否かを検討した結果,原告自身は規律違反容疑行為を否認するものの,原告の上記行為を現認していたD看守及びH部長の各報告書及び参考人である上記外国人受刑者3名の各供述調書に基づき,原告が目を開けていたことにつき職員から注意を受たのに対し,本件遵守事項39項が禁ずる「抗弁」を行ったことを認定し,軽屏禁10日(文書図画閲読禁止併科)の懲罰が相当である旨の意見を所長に提出した。これを受けて,所長は,同月17日,原告に対し,上記意見のとおりの懲罰を科す旨決定し,この懲罰は,同日,原告に告知され,執行が開始された。 (乙34)(2) 本件戒具使用及び本件保護房拘禁についてア Kの第5区は,東5舎及び東4舎の2つの舎房と,保護房及び病舎を受持区域としており,職員30名以上が勤務していた。東5舎及び東4舎は,各3階建の建物であり,収容定員は各204名であり,平成5年当時,各180名程度の受刑者が拘禁されていた。第5区には,新たにKに拘禁される受刑者のほか,懲罰中や取調べ中の者,精神変調を来している者,自殺,逃走のおそれのある者,粗暴癖のある者等,Kの一般的な処遇方法である集団処遇を昼夜実施することが困難と判断された者が拘禁されており,そのうち,処遇上特に注意を要する者については,東5舎1階に拘禁して,厳重な視察を行っていた。 (乙9,10,16,証人C,A)イa 原告は,平成5年8月17日,前記(1)エの懲罰の告知を受けた後,午後1時すぎ,東5舎3階西側の懲罰審査会室から,原告の居房である東4舎1階第129室に連行された。 Kにおいては,文書図画閲読禁止が併科されている軽屏禁の執行の際,被拘禁者に所持品をいったん提出させ,執行中は担当職員がこれを保管する扱い 東4舎1階第129室に連行された。 Kにおいては,文書図画閲読禁止が併科されている軽屏禁の執行の際,被拘禁者に所持品をいったん提出させ,執行中は担当職員がこれを保管する扱いであった。そこで,東4舎1階の舎房担当職員であったA部長は,同日午後1時21分ころ,前記(1)エの懲罰を執行するため,原告に対し,原告の居房の外から,居房に付いている小さな窓を通して,居房内の本と筆記具を出すように指示した。これに対し,原告は,立ち上がって居房の扉を数回叩いた後,居房の奥にある私物棚の所へ行き,置かれていた本,物等を,扉に向かって放り投げ始めた。 そこで,A部長は,第5区の事務室に,原告が居房の中で物を投げて暴れている旨,電話で連絡し,これを受けた東4舎の副看守長であるB主任は,事務室にいたC区長に対し,直ちにその旨報告した。C区長は,B主任ほか事務室で勤務していた職員に対し,原告の居房に急行して状況を確認するよう指示し,B主任ほか2,3名の職員が直ちに原告の居房に駆け付けた。他方,C区長は,B主任の報告から判断して,原告が取調室に連行されるものと予想されたことから,東5舎にある取調室に向かった。 (乙9,10,21ないし23,28,46,47,証人C,A,B)b(a) これに対し,原告は,居房内で本やその他の物を投げた事実はないと主張する。そして,原告は,B主任らが居房に来るに至った経緯について,原告が懲罰の告知を受けて居房に戻った際,自分がこのような扱いを受ける理由や,不服を訴える可能性等について,A部長に説明を求めたにもかかわらず,同人が本を居房から出すよう指示するのみであったことから,「オーケー」と言い,両手を挙げて降参した趣旨の姿勢をとって質問を諦め,房内の本を片 える可能性等について,A部長に説明を求めたにもかかわらず,同人が本を居房から出すよう指示するのみであったことから,「オーケー」と言い,両手を挙げて降参した趣旨の姿勢をとって質問を諦め,房内の本を片付け始め,所持していた本を全部扉の前に置いたのであって,不注意で本を1冊トイレ付近に落としたことや,本の山を10ないし15センチメートルの高さから落として,ドサッという音がしたことはあったものの,本を投げたことはない旨供述する(甲9の2,10の2,乙49,原告本人)。 (b) しかしながら,証拠(乙25,28)によれば,A部長が電話連絡をした直後に,B主任ら複数の職員が原告の居房に急行し,C区長が取調室に向かい,原告に金属手錠が使用されており,その間わずか1分程度しか経過していないことが認められ,この事実から判断すれば,A部長が電話連絡した内容は,迅速な対応を要する異常な事態であったと考えるのが合理的であるところ,原告が居房内で本等を投げたとすれば,このような事態は刑務所内の規律及び秩序を維持するために迅速な対応を要する異常な事態であって,上記事実について合理的な説明が可能であるのに対し,原告が上記供述のとおり,単に居房内で本の片付けをしたにすぎないとすれば,著しく不自然,不合理であるといわざるを得ない。 また,本件では,原告が本件保護房に連行された後,原告の居房内の写真(乙22,23)が撮影されているところ,拘禁者が物を壊したとき等に写真撮影が行われること(証人B)に照らしても,原告の上記供述は信用できない。 加えて,上記各写真に撮影された居房内の状況からは,原告がその供述どおり本を整然と扉の前に置いていたとは認め難いのであって,この点からも,原告の上記供述は信用できない。 。 加えて,上記各写真に撮影された居房内の状況からは,原告がその供述どおり本を整然と扉の前に置いていたとは認め難いのであって,この点からも,原告の上記供述は信用できない。 したがって,前記aの認定に反する原告の上記供述は,採用することができない。 (c) さらに,原告は,①原告が居房から連行された後の現場に,本や日用品を投げた痕跡がないこと,②懲罰を告知した直後,居房に入った原告が本を投げ始めたとするA部長の供述が不自然であること,③その後の職員の対応が,本等を投げただけの者に対する対応としてはあまりに敏速で不自然であることからも,原告が居房内の本その他の物を投げた事実はない旨主張する。 しかしながら,原告は,上記①に関して,前記居房内の写真(乙22,23)に本等を投げた痕跡が認められないことや,現場の本がちぎれたような痕跡がなかった旨の証人Cの供述を挙げているところ,上記写真においては,数冊の本がそれぞれ居房の扉付近に不規則に存在しており,本と扉の間に10センチメートル程度の間隔があることや,本に傷がないことを考慮しても,原告が扉に向かって本を投げた事実を排斥するに足りるとはいえないし,本がちぎれた痕跡がなかった旨の証人Cの供述が正しいとしても,このことから直ちに本が投げられた可能性を否定することはできないから,上記①の理由により,原告が本等を投げた事実を否定することはできないというべきである。 また,上記②についても,原告は不本意な懲罰を告知された直後であり,そのような状況における被拘禁者が,居房内の物を房外に出すよう指示を受けた場合,不満を感じて物を扉に向かって投げたとしても,必ずしも不自然であるということはで は不本意な懲罰を告知された直後であり,そのような状況における被拘禁者が,居房内の物を房外に出すよう指示を受けた場合,不満を感じて物を扉に向かって投げたとしても,必ずしも不自然であるということはできず,実際にも,原告がふてくされた態度で投げていたことが窺われるのであって(証人A),この点に関するA部長の供述が不自然であるとはいえない。 さらに,上記③については,前記のとおり,居房内での異常な事態に職員が迅速に対応することはむしろ合理的な行動というべきであるから,原告の主張は採用できない。 (d) そして,他に,前記aの認定を覆すに足りる主張及び証拠はない。 ウa 原告の居房に駆け付けたB主任は,原告が居房内の物を投げていたのを見て,繰り返し制止を促すよう口頭及び手振りで指示をしたが,原告は,これに従わず,断続的に居房内の物を投げる行為を続けた。そこで,B主任は,原告を取調室へ連行するため,居房の扉を開け,原告に出房するよう口頭及び手招きの動作で指示したが,原告は,これを無視し,出房しようとしなかった。このため,B主任は,居房内に入り,原告の左肩付近を右手でつかんで出房を促したところ,原告は,突然,怒鳴り声をあげながら,左腕でB主任の右腕を振り払い,同人に詰め寄る態度を示した。 B主任は,原告のこのような態度に危険を感じ,とっさに原告の左腕を抱え,A部長も同様に原告の右腕を制したが,原告がこれを振り払おうとして,身体を激しく揺さぶって暴れたため,B主任及びA部長は,原告をその場でうつ伏せに押さえ付けた。しかしながら,原告の身体が大柄であるうえ,うつ伏せの状態から起き上がろうとしたり,押さえ付けられている腕を逃れようともがいたり,足をばたつかせたり,体をひねったり その場でうつ伏せに押さえ付けた。しかしながら,原告の身体が大柄であるうえ,うつ伏せの状態から起き上がろうとしたり,押さえ付けられている腕を逃れようともがいたり,足をばたつかせたり,体をひねったりするなど,激しい興奮状態の下で暴れたため,B主任は,このままの状態で原告を制圧することは困難と判断し,同日午後1時22分,原告に対し,B主任が携帯していた金属手錠を両手後ろの方法により緊急に使用した。 (乙10,21,25,28,46ないし48,証人C,A,B)b(a) これに対し,原告は,居房内の物を投げたことや,職員に対して暴れたり抵抗したりしたことはないと主張する。そして,本を全部片付けた後,パジャマをどうしたらよいかと思い,窓を見たら,別の看守がいたので,パジャマも出した方がよいのか聞いたら,この看守は頭を横に振り,その後石けんや歯ブラシを選り分けようとしたところ,突然扉が開いて,複数の看守が房内に入り,原告の両肩をそれぞれつかみ上げ,房外に連れ出し,後ろ手に手錠をして前屈みにさせられたが,看守がそのような行動をとる理由が理解できず,抵抗もしなかった旨供述する。 (b) しかしながら,原告が同日午後1時21分ころに居房内で本等を投げたことは,前記イaのとおりであるところ,原告がその直後,金属手錠を装着されるまでの1分程度の間に,原告の上記供述のように冷静に職員と応答していたとは考え難い。また,原告の上記供述は,原告が平常の対応をしているにもかかわらず,複数の職員が原告を一方的に押さえ付けて金属手錠を使用している点でも,不自然,不合理といわざるを得ない。さらに,原告が居房内で本等を投げていたことや,その後原告に革手錠が使用され,本件保護房に拘禁された一連の経緯にかんがみれば,原告が 金属手錠を使用している点でも,不自然,不合理といわざるを得ない。さらに,原告が居房内で本等を投げていたことや,その後原告に革手錠が使用され,本件保護房に拘禁された一連の経緯にかんがみれば,原告が金属手錠の使用に対し,何ら抵抗しなかったとは考えられず,この点でも,原告の上記供述はにわかに信用できない。 したがって,前記aの認定に反する原告の上記供述は,採用することができない。 (c) また,原告は,B主任及びA部長の各供述において,B主任らが原告の居房に駆け付けた後も原告が物を投げ続けたとしているところ,居房内に投げ続けるほどの物が存在しなかったことに照らして,これらの供述は信用できない旨主張する。 そこで検討するに,証拠(乙22,23)によれば,原告が同人の居房を出房した当時,居房内には本数冊程度,歯ブラシ,タオル等の日用品,袋,ちり紙,パジャマが存したことが認められる。 他方,B主任及びA部長は,いずれも陳述書(乙10,乙21)において,原告が「手当たり次第に物を投げつけていました。」,「(B主任が注意した後も)なおも物を投げ続けていました。」と供述している。しかし,A部長は,証人尋問において,原告が断続的に本等の物を投げた旨供述しており(証人A),また,同人の証人尋問における供述からは,原告が断続的に物を投げていた状態を,陳述書において「手当たり次第」あるいは「投げ続けてい」たと表現していたことが窺われる。また,B主任は,証人尋問において,実際に原告が投げたのを見たのは1,2回である旨供述しており(証人B),このことからすれば,B主任の陳述書における上記供述部分は,現認したところを正確に述べていない疑いがあるというべきであるから,この点 原告が投げたのを見たのは1,2回である旨供述しており(証人B),このことからすれば,B主任の陳述書における上記供述部分は,現認したところを正確に述べていない疑いがあるというべきであるから,この点に関するB主任の供述としては,証人尋問における上記供述を採用すべきである。 そうすると,B主任及びA部長の各供述によれば,原告は,最初に本等を投げ始めてから,B主任が制止に入るまで,断続的に居房内の物を投げていたことになるところ,前記のとおり,A部長が電話連絡をしてから金属手錠の使用までわずか1分程度であったことや,B主任が連絡を受けてから5秒ないし10秒で原告の居房に到着したこと(証人B)に照らせば,上記のような居房内に存した物の分量を勘案しても,この間に原告が断続的に居房内の物を投げていたことが不自然であるということはできない。 したがって,原告の上記主張は,採用できないというべきである。 (d) そして,他に,前記aの認定を覆すに足りる主張及び証拠はない。 エaB主任は,原告を東5舎1階西側の取調室に連行する旨A部長に指示し,B主任及びA部長は,B主任が原告の左腕を,A部長が原告の右腕をそれぞれ抱えるようにし,さらにその後ろにも3,4名の看守が付き添う形で,金属手錠を両手後ろの状態で使用したまま原告を上記取調室へ連行した。原告は,上記取調室まで連行される間も,怒鳴り声をあげ,上半身を激しく揺さぶったり,ひねったり,原告を制圧している職員にぶつかってくるなど,激しい興奮状態にあった。 C区長は,B主任,A部長らが原告を連行してきたので,直ちに取調室に入室させた。B主任は,C区長に対し,原告を取調室に連行した経緯を説明した。また,原告は,取調 状態にあった。 C区長は,B主任,A部長らが原告を連行してきたので,直ちに取調室に入室させた。B主任は,C区長に対し,原告を取調室に連行した経緯を説明した。また,原告は,取調室に入室後も激しい興奮状態にあり,奇声を発しながら上体を激しく揺さぶるなどして,職員による制圧から逃れようと暴れ続けた。C区長は,このままでは原告が同人を制圧,戒護している職員に暴行を加える危険が高いと判断し,原告に使用していた戒具を,金属手錠から革手錠に変更すべき旨指示した。 そこで,B主任及びA部長は,原告をその場でうつ伏せの状態で押さえつけ,B主任が左腕,A部長が右腕を制圧した状態で,さらに複数の職員の補助を得て,原告の背中に膝を付けて原告を固定したうえで,原告に対し,金属手錠を装着したままの状態で,革手錠の腕輪を装着し,その中にベルトを通し,金属手錠を外してから,ベルトの穴に留め具を入れ,革手錠を固定させる方法により,原告に対して革手錠を装着し,平成5年8月17日午後1時25分ころ,革手錠の装着が完了した。 C区長は,原告の暴れ方がひどく,金属手錠をかけたままの状態で革手錠を装着する必要があったことから,革手錠の使用方法を両手後ろの方法にするよう指示し,原告に対する革手錠がこの方法により使用された。 革手錠の締まり具合については,C部長が,革手錠のベルトと本人の腰部の間に右手を差し込んで確認した。 さらに,原告の手首が細く,革手錠の腕輪から原告の手首が離脱するおそれがあった。革手錠の腕輪には,穴が3箇所あって,その緊縛度を調整できる仕組みになっていたが,原告が大声を発して激しく暴れており,穴を選ぶ余裕がなかったこともあって,C区長は,金属手錠の併用を指 おそれがあった。革手錠の腕輪には,穴が3箇所あって,その緊縛度を調整できる仕組みになっていたが,原告が大声を発して激しく暴れており,穴を選ぶ余裕がなかったこともあって,C区長は,金属手錠の併用を指示し,原告の右手首及び左手首に金属手錠各1個をそれぞれ二輪にして,革手錠腕輪の手首側に併用した。 その後,革手錠を使用した状態で用便が行えるようにするため,うつ伏せの状態にあった原告のパンツ及びズボンを脱がせ,股割れズボン等に替えた。 (乙9,10,21,25,29,証人A,C,B(上記認定に反する部分を除く。))b(a) これに対し,原告は,取調室に連行され,床の上にうつ伏せに倒された後,C区長が原告の背中の上に立ち,革手錠のベルトを力一杯締め上げたうえ,手首に手錠を掛けて非常にきつく締めたのであって,革手錠及び金属手錠の緊度が非常な苦痛を与える不適切なものであったと主張したうえで,この主張に沿う供述をしている(甲9の2,甲10の2,原告本人)。 しかしながら,原告の上記供述内容を裏付ける証拠はなく,かえってC区長及びB主任が,C区長が原告に上記のような有形力を行使したことを否定する旨供述していること(証人C,B),革手錠及び金属手錠の緊度についても,C区長が,革手錠と原告の腰部の間に右手を差し込んで,革手錠の使用が適正であることを確認したほか,金属手錠と原告の手首の間に人差し指が差し込める状態であることを確認し,金属手錠が装着後更に締まることがないよう,手錠を固定する装置(ロック)もきちんと掛けていた旨供述していること(証人C),金属手錠のロックを掛けなかった可能性を認めるに足りる証拠がないこと,本件保護房拘禁開始時及び同日午後4時54分こ う,手錠を固定する装置(ロック)もきちんと掛けていた旨供述していること(証人C),金属手錠のロックを掛けなかった可能性を認めるに足りる証拠がないこと,本件保護房拘禁開始時及び同日午後4時54分ころにおいて,原告の身体及び戒具の状況にいずれも特段の異常が認められなかったこと(乙27)に照らせば,原告の上記供述は採用できず,上記主張も理由がないといわざるを得ない。 (b) また,原告は,取調室で床の上にうつ伏せに倒された後,8名ないし10名の職員が原告の腕をねじ上げ,原告の服をはぎ取りながら座り,床に頭を押し付けられた状態で裸にされた後,足を持ち上げられ,股割れズボン等を履かされ,その後革手錠を装着された旨供述する(甲9の2,10の2,原告本人)。 しかしながら,取調室に在室した職員が総勢6,7名であったこと(乙10,証人A),原告には金属手錠又は革手錠が一貫して使用されており,上着を着替えさせることが不可能なことから,原告を裸にしたことはあり得ないことに照らして,上記供述には誇張や不正確な点が見られることや,股割れズボン等への変更と,革手錠の装着との順序についても,証人Cが革手錠の装着が先であることを明確に証言しており,かつ,不自然,不合理な点はうかがわれないことにかんがみれば,前記aの認定に反する上記供述は,採用できないというべきである。 (c) そして,他に前記aの認定を覆すに足りる主張及び証拠はない。 オ原告は,その後も全身を揺さぶるなどして暴れながら,大声を発し続け,著しい興奮状態にあったことから,C区長は,原告を一般房に拘禁した場合,舎房全体に響きわたる大声,騒音を発して舎房の静穏を著しく害し,また,暴行のおそれも顕著に認められることから,原告を一般房 け,著しい興奮状態にあったことから,C区長は,原告を一般房に拘禁した場合,舎房全体に響きわたる大声,騒音を発して舎房の静穏を著しく害し,また,暴行のおそれも顕著に認められることから,原告を一般房に拘禁することはできないと判断し,B主任ら職員に対し,原告を保護房に拘禁するよう指示した。 これを受けて,B主任とA部長は,両側から抱えるようにして原告を保護房に連行し,複数の職員がこれに付き添って来た。原告は,その間も大声を発しながら,身体を揺さぶり,職員に体当たりするように暴れ続けるなど,極度の興奮状態にあった。このため,取調室から本件保護房までの距離は,10メートル弱であったが,原告が本件保護房に拘禁されたのは,同日午後1時28分であった。原告が本件保護房に拘禁された際,C区長は,原告の革手錠の腕輪の部分やベルトの締まり具合等を再び確認した。 (乙9,10,21,26,30,証人B)カa 原告は,本件保護房拘禁の開始後も,視察に来た職員をにらみつけたり,うなるような声を発したり,房内中央に立って視察用のカメラに向かうなどして大声を発したり,ズボンを脱いで房内を徘徊しながら独り言を言ったり,歌を歌いながら房内を徘徊したりする等の挙動を示し,依然として精神的に著しく不安定な状況にあった。 同日午後4時15分ころ,B主任ほか3名の職員が本件保護房内に入り,革手錠を外したり緩めたりしないまま,食事を原告の口元にレンゲで運んで喫食させたが,原告は,B主任をにらみ付け,主食を口にせず,副食を3分の1程度喫食したにとどまった。 その後,B主任ほか3名の職員は,同日午後4時54分ころ,本件保護房内に寝具を入れ,これを敷いたが,その際,原告の身体の状況及び原告に使用 を3分の1程度喫食したにとどまった。 その後,B主任ほか3名の職員は,同日午後4時54分ころ,本件保護房内に寝具を入れ,これを敷いたが,その際,原告の身体の状況及び原告に使用されている戒具の状況を確認したものの,特段の異常を認めなかった。 原告は,その後,同日午後5時30分,8時45分及び11時4分から同月18日1時56分の間,独り言を頻繁に発したり,同月17日5時45分,8時30分及び同月18日午前4時5分から35分までの間,房内を徘徊し,午前3時20分には房内を徘徊しながら房扉をのぞき込んだりしていたが,それ以外は,房内に安座したり,寝たりしている状況にあった。 他方,本件保護房拘禁開始後,時間の経過とともに,革手錠のベルトが食い込むことにより腹部が痛み,背部では前腕が革でこすれ,血行が止められたことにより左手の感覚が乏しくなり,肩が引っ張られて脈打つたびに痛むなど,本件戒具使用による原告の肉体的苦痛は増大した。また,同月17日夜には,原告にぜん息の発作が生じ,同日午後10時50分,3名の職員が本件保護房を開房し,原告に気管支ぜん息を適応症とする薬剤であるメジヘラーが投与された。 (甲10の2(上記認定に反する部分を除く。),17,乙9,10,27,65,証人C,B,原告本人(上記認定に反する部分を除く。))b これに対し,原告は,革手錠のベルトが腹部に強く食い込んで痛んだため,夕食を喫食できなかった旨供述するほか,金属手錠により手首がすりむけ,2センチメートル程度の水膨れができ,傷となって残った旨供述する(甲10の2,原告本人)。 しかしながら,原告が夕食を喫食できなかった理由が,本件戒具使用 により手首がすりむけ,2センチメートル程度の水膨れができ,傷となって残った旨供述する(甲10の2,原告本人)。 しかしながら,原告が夕食を喫食できなかった理由が,本件戒具使用及び本件保護房拘禁に対する精神的抵抗によるものでもあったことは,原告の供述(甲10の2,原告本人)からも明らかなこと,夕食後寝具を用意した際,職員が原告の身体及び戒具の状況を確認した際,特段の異常を認めなかったこと,同日夕方の時点で既に原告が喫食を困難とするような身体的苦痛を受けていたと認められる客観的な証拠がないこと等に照らせば,原告が同日の夕食時までに,喫食を困難にするほどの激しい痛みを腹部に感じていた事実を認めることはできない。 また,金属手錠による受傷の点についても,同月18日午後5時及び19日の本件保護房拘禁が解除された時点において,原告の身体に異常がなかった旨記録が存すること(乙27),仮に原告が本件戒具使用に起因して原告が主張するような傷害を負ったとしても,その受傷の時期は,本件保護房拘禁開始前に暴れた際であった可能性があることも否定できないことに照らせば,原告が本件保護房拘禁中に金属手錠により手首に傷を負ったものと認めることはできない。 c 他方,B主任は,原告にぜん息の発作が生じたのを見ていない旨供述するが(証人B327項~),上記認定のとおり,原告に気管支ぜん息を適応症とする薬剤であるメジヘラーが投与されていることや,本件保護房解禁直後に気管支拡張薬であるテオドールが投与されていること(乙65,弁論の全趣旨)からすれば,この供述をもって,原告にぜん息の発作が生じた事実を覆すに足りるとはいえない。 キ原告は,同月18日朝も,視察に来たC区長の顔をにらみ付けて大声を発したり,泣き 論の全趣旨)からすれば,この供述をもって,原告にぜん息の発作が生じた事実を覆すに足りるとはいえない。 キ原告は,同月18日朝も,視察に来たC区長の顔をにらみ付けて大声を発したり,泣きながら独り言を発するなど,依然として精神的に不安定な状況にあったものの,C区長が視察するまでは房内中央で安座したことや,原告の前夜からの動静に関する担当職員の報告を勘案した結果,原告が戒具を使用した当初の興奮状態から脱したものと判断されたことから,同日午前7時25分ころ,所長の指示に基づいて,C区長の指揮の下,B主任ほか3名の職員が,原告の革手錠及び金属手錠を解除した。 (乙9,10,25,27,31)ク原告は,同月18日朝以降,本件保護房内において,主に徘徊,安座,横臥等を繰り返していたが,視察する職員をにらみ付けたり,大声を発したりすることもあった。しかしながら,原告は,C区長が同月19日朝に原告を視察した際,房内中央で寝具の上に安座して,うつむいている状態にあった。C区長は,今しばらく原告の動静を視察したうえで,本件保護房拘禁の解除を検討しようと考え,担当職員に原告の動静について細かく報告するよう指示したところ,同日午前9時30分ころには,職員が原告に房内で座るよう指示したのに対し,素直に従って座ったことが報告され,C区長及びB主任が房内を視察した際にも,にらみ付けるような行動をとらなかったことから,原告の精神状態が安定し,大声・騒音及び暴行のおそれが消失したものと判断し,所長の指示に基づき,同日午前9時50分ころ,本件保護房拘禁を解除した。その際,身体に特段の異常は確認されなかった。 (乙9,10,26,27)ケ本件保護房拘禁が解除された後,原告に対する第1事件の懲罰 ころ,本件保護房拘禁を解除した。その際,身体に特段の異常は確認されなかった。 (乙9,10,26,27)ケ本件保護房拘禁が解除された後,原告に対する第1事件の懲罰が執行され,同月28日にその執行が終了した後(乙34,44,45),原告が同月17日に居房内で暴れ,職員に暴行をしようとした規律違反容疑行為に関する取調べが開始された。原告は,上記容疑行為を否認したものの,B主任及びA部長の報告に基づき,懲罰審査会に付することとされた。 同年9月6日,上記規律違反容疑行為に関する懲罰審査会が,原告出席のうえ開かれた。原告は,その際も上記容疑事実を否認したが,懲罰審査会は,A部長の報告書等に基づき,原告が,同年8月17日,居房内で自己の私物を扉に向かって投げ付け,B主任に詰め寄って暴行をしようとした事実を認定し,軽屏禁25日(文書図画閲読禁止併科)の懲罰が相応である旨の意見を所長に提出した。所長は,これを受けて,同年9月7日,上記意見のとおりの懲罰を科す旨決定し,この懲罰は,同日,原告に告知され,執行が開始された。 (乙9,10,21,34,44ないし46,50)(3) 第2事件についてア Kでは,工場における作業の実施中,就業者を作業に専念させ,作業中の事故を防止するために,わき見を禁止し,このことを日ごろから被拘禁者に告知していた。 (証人E)イa 第3区の管轄する第28工場では,平成7年12月14日,外国人受刑者20名を含む58名が,シャープペンシルの組立て, (証人E)イa 第3区の管轄する第28工場では,平成7年12月14日,外国人受刑者20名を含む58名が,シャープペンシルの組立て,カーテンレールの組立て又は破魔矢作成に就業しており,原告は,シャープペンシルの組立作業に従事していた。 同日午後2時36分ころ,同工場の副担当職員であるE部長が,同工場の担当台に立ち,就業者の動静を監視していたところ,約4メートル先で作業をしていた原告が同人より向かって左側を向き,E部長と目線が合った。そこで,E部長は,原告がわき見をしているものと判断し,日本語で「J,どこを見ているんだ。 作業中は,手元をしっかり見て作業しろ。」と注意した。 原告は,E部長から注意を受けても,同人をじっと見ていたことから,E部長は,担当台を下り,原告の作業席に行き,再度わき見をしないよう注意した。これに対し,原告は,身振りを交え,あごをかいていたのであってわき見をしていたわけではない旨英語で説明した。E部長は,原告が作業をしている机の前に座っていたパキスタン国籍を有する外国人受刑者を呼び寄せ,通訳をさせたうえ,原告にわき見をしないよう再度注意した。その際,原告は,上記外国人受刑者に対し,英語で話したあと,日本語で「すいません。」と言ったものの,不満そうな態度であったことから,E部長が,上記外国人受刑者に対し,原告が何を言ったのかを確認したところ,わき見はしていない,あごをかいていただけだと言っている,という説明を受けた。 そこで,E部長は,原告を再度厳重に注意する必要があると判断し,原告に対し,担当台の前に来るよう指示したが,原告がなかなか起立しなかったことから,担当台の前に来るよう手で合図し,起立 そこで,E部長は,原告を再度厳重に注意する必要があると判断し,原告に対し,担当台の前に来るよう指示したが,原告がなかなか起立しなかったことから,担当台の前に来るよう手で合図し,起立するように指示した。すると原告は,起立した後にE部長の方を見た直後,前記外国人受刑者の方を見て「クレージー」と言った。 (乙5,12,51ないし54,証人E)b(a) これに対し,原告は,作業中にあごをさすったところ,担当台の上の職員が原告の名前を叫び,原告の背後に荒々しく来て再び日本語で叫んだので,「すいません。」と言ったが,わき見をしたわけではないと供述する(乙5,原告本人)。 しかしながら,原告がわき見をしていた旨のE部長の供述(乙12,証人E)は,具体的かつ合理的であり,特段不自然な点を認めることができないのに対し,この点に関する原告の供述は,同日付け供述調書(乙5)においては,顔を左に向けてあごをかいたため,わき見をしたように見えたかも知れないとしているのに対し,本人尋問においては,目は自分のやっている仕事から離さなかったとしており,不自然な相違が認められることに照らせば,E部長の供述と異なり,わき見をしなかったとする原告の供述は採用できない。 (b) また,原告は,本人尋問において,上記職員が通訳をさせた外国人受刑者に向かってさんざん怒鳴ったあげく,同人が通訳をする前にその場を去ってしまい,電話を始めた際,原告が「クレージー」と言った旨供述する(原告本人)。しかしながら,上記供述は,原告の同日付け供述調書(乙5)における供述と異なるほか,通訳をした外国人受刑者の供述(乙54)とも相違しているというべきであって,採用することができない。 かしながら,上記供述は,原告の同日付け供述調書(乙5)における供述と異なるほか,通訳をした外国人受刑者の供述(乙54)とも相違しているというべきであって,採用することができない。 (c) そして,他に前記aの認定を覆すに足りる証拠はない。 ウ E部長は,原告の上記発言が,本件遵守事項21項に反する規律違反容疑行為に当たると判断し,第3区に対し,電話で,事実関係について報告するとともに,原告を第3区の事務室に連行するよう依頼し,その後第3区から派遣されて来た職員に対し,原告を引き渡した。 所長は,同日,上記規律違反容疑行為について詳細に事情を調査するため,原告を取調べのための独居拘禁に付することした。 原告は,同日,上記規律違反容疑行為について任意に供述を求めた職員に対し,原告としては,わき見をしようとしてしたわけではなく,悪いことをしていないのに,職員に注意され,ばかばかしいと思って「クレージー」と言ったが,「クレージー」という言葉は,人をばかにしたり侮辱した言葉であり,そのような言葉を言ったことは反省している旨述べた。 (乙5,12,51,証人E)エ同月21日,原告の上記規律違反容疑行為に関する懲罰審査会が,原告出席のうえで開かれた。懲罰審査会は,審議の結果,E部長の報告書,原告及び参考人の供述調書に基づき,原告の上記規律違反容疑行為が本件遵守事項21項の禁止する他人に対する粗暴な言動(暴言)に該当する旨認定し,軽屏禁15日(文書図書閲覧禁止併科)の懲罰が相当である旨の意見を所長に提出した。これを受けて,所長は,同月22日,原告に対し,上記意見のとおりの懲罰を科す旨決定し,この懲罰は,同日,原告に告知され,執行が開始された。 )の懲罰が相当である旨の意見を所長に提出した。これを受けて,所長は,同月22日,原告に対し,上記意見のとおりの懲罰を科す旨決定し,この懲罰は,同日,原告に告知され,執行が開始された。 (乙52,55)(4) 第3事件についてア Kでは,国の予算の適正な執行を図るため,被拘禁者に対し,節水を義務付けており,本件遵守事項35項において,「許可なく定められた方法以外の方法で衣類を洗濯し,又は身体を洗ってはならない。」と規定し,被拘禁者に告知しており,入浴場以外の場所において身体を洗う必要が生じた場合には,職員に申し出たうえ,汚物が付着しているなどの特別な事情が存する場合には,許可する扱いとしていた。原告も,平成8年2月13日当時,勝手に水を使用してはならないことを職員から聞いて知っていた。 (乙6,7,13,証人G)イa 東2舎3階の舎房担当職員であるG部長は,平成8年2月13日午前7時20分ころ,舎房を巡回中,原告の居房である東2舎3階第369室を,居房の扉に付いているのぞき窓を通して視察した際,原告が居房内の洗面台に向かいながら腰をかがめるようにして,洗面器にためた水を両手ですくい,頭にかけて,両手で頭皮をこするように洗っていたのを,約10秒間にわたり現認した。 G部長は,原告の上記行為を確認した後,原告に対し,「何をしている」という趣旨の声を掛けたところ,原告は,一瞬,G部長の方を見て,すぐに頭を洗うのを止め,タオルで頭を拭きながらG部長の方へ歩いて来た。そこで,G部長は,原告に対し,なぜ頭を洗っていたのか問い質したところ,原告は,頭が汚れていたので洗っていた旨返答した。これに対し,G部長は,職員の許可を得ずに髪を洗ってはならない旨注意し て来た。そこで,G部長は,原告に対し,なぜ頭を洗っていたのか問い質したところ,原告は,頭が汚れていたので洗っていた旨返答した。これに対し,G部長は,職員の許可を得ずに髪を洗ってはならない旨注意し,原告も「すみません」と言った。 (乙13,56ないし58,証人G)b(a) これに対し,原告は,本人尋問において,当日朝,髪の毛が立っていたので,工場に行くのに見苦しくないよう,水を髪の毛に付けてなでつけたにすぎず,髪を洗ったことはない旨供述する。 (b) しかしながら,原告は,同日付け供述調書(乙6)において,後記ウのとおり,髪に癖がついていたことと,髪が汚れていたことから,気持ちが悪く洗いたかったので,洗面器に水をためて両手で水をすくい,頭にかけて洗った旨供述しており,この供述内容は,G部長の供述(乙13,証人G)とも一致し,信用することができる。 また,原告は,本人尋問において,上記供述調書の供述内容が原告の記憶に反しており,調書の作成の際,何度も異議を唱えたものの,最終的には懲罰が怖くて不本意な調書に署名した旨供述するが,本件各懲罰に至る経緯等から窺える原告の言動等に照らし,この供述を採用することはできない。 (c) したがって,原告の本人尋問における髪を洗っていない旨の供述(上記(a))は,採用することができない。 ウ G部長は,原告の上記イaの行動が本件遵守事項に反することから,東2舎の保安監督者に対し,電話で連絡した。これを受けて,副監督当直者は,原告の居室に来て,事実を確認した後,同日午前7時27分ころ,原告に対し,工場就業のまま取調べに付する旨告知した。 原告は,同日,任意に供述を求めた職員に対し, て,副監督当直者は,原告の居室に来て,事実を確認した後,同日午前7時27分ころ,原告に対し,工場就業のまま取調べに付する旨告知した。 原告は,同日,任意に供述を求めた職員に対し,水を勝手に使用してはならないことはよく職員から聞いて承知していたこと,同日朝は,髪に癖がついていたことと髪が汚れていたことから,気持ちが悪く洗いたかったので,洗面器に水をためて両手で水をすくい,頭にかけて洗っているところを職員に発見されたこと,頭を洗ったことは宗教上の行為であること等を供述した。 (乙6,56,証人G)エ同月19日,原告の上記規律違反容疑行為に関する懲罰審査会が,原告出席のうえ開かれた。懲罰審査会は,G部長の報告書及び原告の供述調書に基づき,原告の規律違反容疑行為が本件遵守事項35項の禁止する「許可なく定められた方法以外の方法で身体を洗うこと」に該当する旨認定し,軽屏禁5日(文書図書閲覧禁止併科)の懲罰が相当である旨の意見を所長に提出した。これを受けて,所長は,同月20日,原告に対し,上記意見のとおりの懲罰を科す旨決定し,この懲罰は,同日,原告に告知され,執行が開始された。 (乙57,59)(5) 本件独居拘禁についてア Kでは,原告に対し,同刑務所における拘禁開始後,平成8年3月14日までの約3年間,原則として,同刑務所における外国人受刑者に対する一般的処遇方法に従って,昼間は工場で集団作業を実施させ,夜間は独居房に拘禁する処遇を行ってきた。 しかしながら,原告は,上記の期間に,規律違反容疑行為による取調べを7回受けたほか,本件各懲罰を含め,懲罰を6回科されており,その行状は著しく不良といわざるを得ない状況であった。 しかしながら,原告は,上記の期間に,規律違反容疑行為による取調べを7回受けたほか,本件各懲罰を含め,懲罰を6回科されており,その行状は著しく不良といわざるを得ない状況であった。 (乙15,16,21)イさらに,原告については,次のような事情が存在した。 a 原告は,購入した図書が削除,抹消されることがある旨告知を受け,かつ,原告自身もこれを承知した上で図書の購入を申し込んでいたにもかかわらず,同年2月7日ころ,図書が削除,抹消されていた場合は代金を支払わない旨申し立て,図書購入代金の支払を拒絶した。 b 原告は,同年3月2日,Fあてに発信した信書において,Kが外国人に対して差別的懲罰を行っており,原告に対する懲罰が外国人差別によるものであり,この種の差別により外国人受刑者の20パーセント以上の者が影響を受けているとして,同刑務所に対し,差別的待遇を受けている受刑者の間で集団訴訟を提起したい旨記載した。 c 原告は,同月5日,日本弁護士連合会あてに特別発信を願い出た信書において,Kの職員が被拘禁者に対して盗み,暴力及び名誉毀損行為を当然の権利のように行い,外国人受刑者に対してはなおさらその傾向が強く,また,外国人受刑者にとって1回の懲罰が数か月から数年の刑期加算となり,差別的で苛酷である等の記載をした。 (乙15,24,61,原告本人)ウ同月13日,分類委員会が開催され,前記ア及びイの事実を踏まえ,原告をこのまま工場で就業させた場合,原告が他の受刑者を扇動することにより,所内の規律秩序が乱れるおそれが顕著に認められることや,原告に反感を抱く者によって原告に危害が加えられる可能性が高いことから,原告を集団で処遇すること せた場合,原告が他の受刑者を扇動することにより,所内の規律秩序が乱れるおそれが顕著に認められることや,原告に反感を抱く者によって原告に危害が加えられる可能性が高いことから,原告を集団で処遇することは困難であると判断した。所長は,分類委員会による上記の判断に基づいて,原告を昼夜独居拘禁に付することを決定し,同月14日,原告にその旨を告知したうえ,原告の居房を東4舎2階の独居房に移した。そして,原告は,同日以降,平成9年12月27日に出所するまで,集団処遇を行うことが困難な在監者として,昼夜独居拘禁の処遇を受けた。 (乙15,16,21,63) 2 原告の主張する各加害行為における違法性の有無(争点1ないし6)について前記「前提となる事実」及び前記1により認定した事実を前提として,争点1ないし6について判断する。 (1) 争点1(違法な集団的暴行の有無)について原告が本件において職員から受けたと主張する集団的暴行は,職員による原告の制圧から本件保護房拘禁に至るまでの間,複数の職員によって原告に加えられた一連の有形力の行使を指すものと解される。 しかしながら,前記1(2)ウaのとおり,B主任及びA部長が原告の居房内において原告をうつ伏せに押さえ付けたのは,原告が居房内で物を投げ付けたうえ,出房を促すために原告の左肩付近をつかんだB主任の右腕を振り払い,同人に詰め寄る態度を示し,これに危険を感じて原告の両腕を制したB主任及びA部長に対し,原告がこれを振り払おうとして暴れたことによるものであるところ,このような原告の行為を放置した場合,職務を遂行するために居房内にいる職員に対し,原告が危害を加えるおそれが強いことは明らかである。 そうすると,原告の行為に危険を感じ のであるところ,このような原告の行為を放置した場合,職務を遂行するために居房内にいる職員に対し,原告が危害を加えるおそれが強いことは明らかである。 そうすると,原告の行為に危険を感じた複数の職員が,前記のとおり原告をうつ伏せに押さえたことは,当該状況において必要かつ相当と認められる程度及び範囲を超えない有形力の行使であって,適法というべきである。 また,その後,職員が本件保護房拘禁に至るまでの間に原告に加えた有形力についても,前記1(2)ウないしオの事実に照らせば,戒具の使用及び保護房に拘禁する目的を達するために必要かつ相当と認められる程度及び範囲にとどまるものというべきであり,このような程度及び範囲を超えた有形力が行使されたことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,これらの有形力の行使は,本件保護房拘禁に至るまでの間における戒具の使用及び原告を保護房に拘禁したこと自体が違法でない限り,違法でないというべきである。 (2) 争点2(本件戒具使用及び本件保護房拘禁の違法性の有無)についてア革手錠の使用一般に関する違法性の有無についてa 原告は,革手錠が施行規則48条1項に定める「手錠」の範疇に入るとはいい難く,監獄法及び施行規則の予定した範囲を超える違法な拘束具である旨主張する。 しかしながら,前記「法令の定め等」(1)イ及びウのとおり,監獄法19条2項は,「戒具ノ種類ハ法務省令ヲ以テ之ヲ定ム」と規定し,施行規則48条1項は,戒具の種類について,鎮静衣,防声具,手錠,捕縄の4種類を定めているところ,戒具の製式については,同条2項により,法務大臣が別に定めることとされており,「戒具製式改定ノ件」(昭和4年5月14日司法大臣訓令行甲第740 ,鎮静衣,防声具,手錠,捕縄の4種類を定めているところ,戒具の製式については,同条2項により,法務大臣が別に定めることとされており,「戒具製式改定ノ件」(昭和4年5月14日司法大臣訓令行甲第740号)は,手錠の製式について,金属手錠及び革手錠を規定している。 以上の各規定によれば,革手錠は,現行法上戒具の一種として認められていると解されるから,原告の上記主張は理由がない。 b また,原告は,革手錠が国連最低基準規則33条に規定する「枷」に当たるか,又は「枷」よりも強度な拘束具であって,絶対的に使用が禁じられるべきであるとして,革手錠の使用が違法である旨主張する。 しかしながら,同規則は,我が国において批准,発効された条約ではないし,既に確立された国際慣習法であるということもできないから,革手錠の使用が同規則に反することを理由として直ちに違法であるということはできないし,仮にこの点を措くとしても,革手錠が同規則33条の「枷」に当たると解することはできず,また,革手錠の運動制限が「枷」よりも強度であったとしても,そのことから直ちに革手錠の使用が同条に違反すると解することもできないから,原告の上記主張は採用できない。 イ本件における戒具使用の違法性の有無についてa 違法性の有無の判断基準について(a) 前記「法令の定め等」(1)ア及びエのとおり,監獄法19条1項は,在監者に逃走,暴行又は自殺のおそれがあるとき等に,戒具の使用を許容しており,施行規則50条1項は,暴行,逃走若しくは自殺のおそれがある在監者又は護送中の在監者で必要があると認められるものに限って,手錠を使用することができる旨を定めている。また,前記「法令の定め等」(1)アのと 規則50条1項は,暴行,逃走若しくは自殺のおそれがある在監者又は護送中の在監者で必要があると認められるものに限って,手錠を使用することができる旨を定めている。また,前記「法令の定め等」(1)アのとおり,施行規則49条1項及び2項は,刑務所における手錠の使用が原則として刑務所長の命令によるべきこととしたうえで,緊急を要するときは職員の判断で手錠を使用することができるものの,その場合,職員は,手錠の使用後,直ちにその旨を所長に報告して,その承認を得なければならない旨規定している。 以上のような手錠の使用要件及び使用手続に関する監獄法及び施行規則の各規定に照らせば,刑務所内における手錠の使用については,刑務所長(緊急を要するときは当該職員。以下,刑務所長と当該職員を併せて「刑務所長等」という。)がその専門的知識及び経験に基づき,具体的な状況に応じてその必要性を判断したうえでこれを命ずるものとされているのであって,手錠を使用する必要性の有無,使用する必要がある場合の手錠の種類,手錠の使用方法等の判断は,刑務所長等の合理的な裁量にゆだねられているというべきである。 (b) しかしながら,手錠の使用は,被拘禁者の身体を直接かつ相当程度の強度により拘束し,これによって被拘禁者は,重大な身体的,精神的苦痛を受けるものであって,本件通牒も,このような手錠の特質を踏まえて,前記「法令の定め等」(1)エのとおり,手錠が法律に定められた事由のある場合に限り,その使用目的に従って,目的達成のための最少限度において使用されなければならない旨明らかにしているところである。 したがって,以上を踏まえれば,刑務所における手錠の使用は,被拘禁者について暴行,逃走若しくは自殺のおそれがあり,これに手錠を使 ばならない旨明らかにしているところである。 したがって,以上を踏まえれば,刑務所における手錠の使用は,被拘禁者について暴行,逃走若しくは自殺のおそれがあり,これに手錠を使用することが必要であると認められる場合に限り,このような被拘禁者の戒護という目的を達成するために必要な種類,使用方法等において行われなければならないというべきであって,手錠の使用に関して行われる刑務所長等の裁量判断も,上記の限度内において合理的に行われなければならないというべきである。そして,被拘禁者に対する手錠の使用の必要性,種類,使用方法等に関する刑務所長等の具体的な判断が,上記の限度内における合理的なものといえない場合には,このような手錠の使用は,刑務所長等の裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したものとして,違法となるものというべきである。 b そこで,以上の見地から,本件戒具使用の違法性の有無について検討する。 (a) 原告に対して金属手錠を使用したことについて原告は,本件において,そもそも原告に施行規則50条1項が定める手錠の使用要件である「暴行,逃走若クハ自殺ノ虞」が認められないことから,原告に対して手錠を使用したこと自体が違法である旨主張する。 しかし,本件において,原告が居房内で本,日用品等を投げたうえ,出房を促した職員に怒鳴り声をあげながら詰め寄り,さらに制圧を試みた複数の職員に激しく抵抗して暴れ続けたことは,前記1(2)イ及びウのとおりであって,これらの事実によれば,原告には,同項の定める手錠の使用要件である暴行のおそれが認められることは明らかであるから,原告の上記主張は理由がない。 そして,以上の状況に照らせば,原告 らの事実によれば,原告には,同項の定める手錠の使用要件である暴行のおそれが認められることは明らかであるから,原告の上記主張は理由がない。 そして,以上の状況に照らせば,原告に対して金属手錠を両手後ろの方法により使用することが合理的に必要であったと認められるから,これを違法ということはできない。 (b) 原告に対して革手錠を使用したことについてiKにおいて使用されている革手錠の構造については,前記「前提となる事実」(3)エのとおりであるところ,このような革手錠の構造に加え,証拠(検証の結果,乙8)及び弁論の全趣旨を総合すれば,革手錠の使用に関して,次のような特質が存することが認められる。 革手錠を使用した場合,その使用方法により程度の相違はあるものの,被使用者の両手首が腰部で体に接着する形で固定され,被使用者の両腕の運動は,上腕部分から手首に至るまで著しく制限され,上体や全身の自由な運動にも制約が加えられるため,金属手錠を使用した場合に比べ,可動域が高度に制限され,より強度に身体の運動の自由が奪われる。 このため,特に革手錠を両手後ろの方法により使用した場合,被使用者は,手を使うことができないため,食事の際には,首を突き出して口のみで喫食する,いわゆる犬食いの方法によるか,又は職員の介助を得て喫食する方法によることを余儀なくされ,また,自分で排便の始末をすることが難しくなり,さらに,睡眠の際にも,仰向けになることができず,うつ伏せの状態を維持することも困難であり,横臥の状態であっても一方の腕が身体の下となるため長時間これを維持することは難しく,苦痛で就眠が著しく困難になることが認められ,食事,用便,睡眠といった ,うつ伏せの状態を維持することも困難であり,横臥の状態であっても一方の腕が身体の下となるため長時間これを維持することは難しく,苦痛で就眠が著しく困難になることが認められ,食事,用便,睡眠といった,人間が生存するために不可欠な生理的行動の局面において,被使用者に著しい肉体的な苦痛を与えるのみならず,自尊心を著しく傷つけることにより,強度の精神的苦痛を与えることが明らかである。 この点,革手錠を両手前の方法により使用した場合には,手首の可動域が広がり,ベルトも多少上下に動くことから,食事を自ら摂食することは一応可能であり,自ら排便の始末することも両手後ろの方法による場合と比べれば容易であって,仰向けに休息することも可能であり,横臥することも比較的容易であるものの,生理的行動を自由に行うことができるとは到底認められず,両手後ろの方法より緩和されるものの,やはり被使用者に相当程度の肉体的,精神的苦痛を与えることは否定できない。 以上のことから,本件通牒も,手錠の使用方法について,被使用者の食事や用便の際には,施錠を一時外すべきこと,これにより難い場合でも,できるだけ,革手錠のベルトを緩くする,片手の施錠を外す,両手を前にするなどの配慮をすべきことを明らかにしているところである。 他方において,革手錠は,上記のとおり,両腕の運動の自由を著しく制限することから,被使用者の暴行を抑制,予防する効果が金属手錠より高く,また,かかる効果は,両手前よりも両手後ろの方法により使用した方が高いということができるものの,以上のような被使用者が受けるおそれのある強度の肉体的,精神的苦痛を考慮すれば,革手錠の使用に当たっては,戒護の目的を達成するために必要な範囲を超えた使用に 用した方が高いということができるものの,以上のような被使用者が受けるおそれのある強度の肉体的,精神的苦痛を考慮すれば,革手錠の使用に当たっては,戒護の目的を達成するために必要な範囲を超えた使用によって,被使用者に対して著しい肉体的,精神的苦痛を与えないように留意することが必要である。 ⅱ そこで,原告の手錠を金属手錠から革手錠に変更したことについて,刑務所長等の裁量権の逸脱又は濫用が認められるか否かについて,以上の点を踏まえて検討すると,前記1(2)エaのとおり,原告は,金属手錠を両手後ろの方法で使用され,複数の職員により制圧されている状況であったにもかかわらず,取調室に連行された後も,激しい興奮状態の下で,奇声を発しながら上体を激しく揺さぶるなどして,職員による制圧から逃れようと暴れ続けていたことが認められる。 以上によれば,原告は,金属手錠を両手後ろの方法により装着されたにもかかわらず,激しく興奮して暴れ続けており,金属手錠により両腕の運動の自由が著しく制限を受けていることを考慮しても,なおも暴行のおそれが顕著であったというべきであって,このような状態が継続すれば,原告を制圧している職員が暴行を受ける危険が高いことは明らかというべきである。 したがって,上記のとおり,金属手錠を使用してもなお原告の職員に対する暴行を十分に抑制,予防することができない状況の下で,戒護の目的を達成するためにより拘束度の強い革手錠を使用することが必要であったことが認められるから,原告の手錠を革手錠に変更したことが刑務所長等の裁量権を逸脱又は濫用したものということはできない。 (c) 革手錠を両手後ろの方法により使用したことについてi の手錠を革手錠に変更したことが刑務所長等の裁量権を逸脱又は濫用したものということはできない。 (c) 革手錠を両手後ろの方法により使用したことについてi 前記「法令の定め等」(1)エのとおり,本件通牒記の二は,革手錠の使用方法について,腰部においてそれぞれ,両手前,両手後ろ,片手前片手後及び両手各横の4種類を定めているものの,それぞれの使用方法により手錠を使用すべき要件を規定していないし,他にこれを定めた法令その他の規定が存在することは認められない。そうすると,革手錠を上記4種類のいずれの方法により使用するかの判断についても,刑務所長等の専門的知識及び経験に基づく合理的な裁量にゆだねられていると解される。 しかしながら,革手錠を両手後ろの方法により使用した場合,両手首が腰部の背中側で腕輪を通してベルトに固定されることから,両手前の方法により使用した場合に比べ,被使用者がより強度に身体の運動の自由を制限されること,また,このために,用便,食事,睡眠といった,生存のために不可欠な生理的行動の局面において,強度の身体的,精神的苦痛を与えるおそれがあることは,前記(a)のとおりである。 したがって,革手錠を両手後ろの方法により使用することは,そのような方法によることが戒護の目的を達成するために必要な場合においてのみ許容されるというべきであって,刑務所長等による前記の裁量判断も,上記の限度において合理的に行われなければならないと解される。 ⅱ そこで,原告に対して革手錠を両手後ろの方法により使用したことについて,この点を検討すると,原告は,上記のとおり,金属手錠を両手後ろの方法により使用されていたにもかかわらず,激しく興奮 ⅱ そこで,原告に対して革手錠を両手後ろの方法により使用したことについて,この点を検討すると,原告は,上記のとおり,金属手錠を両手後ろの方法により使用されていたにもかかわらず,激しく興奮して暴れ続け,なおも暴行のおそれが顕著であり,このような状態が継続すれば,原告を制圧している職員が暴行を受ける危険性が高い状況にあったことが認められる。そして,証拠(検証の結果)及び弁論の全趣旨によれば,原告が制圧されていた状態にある場合,革手錠が両手前の方法により使用されている方が,両手後ろの方法により使用されている場合よりも,起き上がることが容易になり,抵抗も容易となることが認められる。 のみならず,原告は,革手錠を使用されるまでは,金属手錠を両手後ろの方法により使用されていたのであり,このような原告に対し,革手錠を両手前又は片手前,片手後ろの方法により装着するには,金属手錠を原告の片手又は両手からいったん外すことが必要となるところ,その際,原告の片腕又は両腕の運動が手錠による拘束から解放されるため,手錠の着脱に従事する職員に対する暴行の危険が著しく増大することは否定できず,実際にも,前記1(2)エaのとおり,B主任らが原告に革手錠を装着した際,まず革手錠の腕輪の部分を両手に装着し,革手錠のベルトを通した後,金属手錠を外すという手順に従っていることに照らしても,本件においては,両手後ろの方法により使用していた金属手錠から連続的に革手錠を使用することはやむを得なかったというべきである。 これに対し,原告は,革手錠の装着に際し,多数の職員が関与し,短時間のうちに装着が完了していることから,職員が圧倒的に優位に立っていたとし,革手錠を両手前の方法により使用することが困難ではなかった旨主張 に対し,原告は,革手錠の装着に際し,多数の職員が関与し,短時間のうちに装着が完了していることから,職員が圧倒的に優位に立っていたとし,革手錠を両手前の方法により使用することが困難ではなかった旨主張する。しかし,金属手錠を両手後ろの方法により装着した状態から革手錠を両手前の方法により装着することが不可能ではないとしても,その間に手錠の着脱に従事する職員に対する暴行の危険が著しく増大することは上記のとおりであるから,かかる作業が困難ではないということは相当でない。 ⅲ 以上によれば,本件の場合,革手錠の使用に先立つ金属手錠の使用状況,原告の態様等の具体的な状況に照らして,原告による暴行を抑制,防止するためには,革手錠を両手後ろの方法により使用することが必要であったと認めることが相当であるから,革手錠を両手後ろの方法により使用したことが,刑務所長等の裁量権を逸脱又は濫用したものということはできない。 (d) 革手錠と金属手錠を併用したことについて証拠(乙8)によれば,一般に,革手錠のみを使用した場合,手首が革手錠から抜ける可能性がないとはいえないことに加え,前記1(2)エaのとおり,原告の手首が細かったこと,革手錠の腕輪には,穴が3箇所あって,その緊縛度を調整できる仕組みになっていたが,原告が大声を発して激しく暴れており,革手錠の腕輪の穴を選んで緊縛度を調整する余裕がなかったことを考慮すれば,戒護の目的を達成するために,金属手錠を併用することが必要であったことが認められる。また,前記1(2)エbのとおり,本件で併用された金属手錠には,手首がさらに締まらないよう,ロックが掛けられており,不適正な使用態様であったとは認められないから,この点においても,本件における金属手錠の併用 記1(2)エbのとおり,本件で併用された金属手錠には,手首がさらに締まらないよう,ロックが掛けられており,不適正な使用態様であったとは認められないから,この点においても,本件における金属手錠の併用は,戒護の目的を達成するために必要な範囲のものであったというべきである。 (e) 股割れズボン等の使用について本件の事情の下においては,革手錠を使用することにより戒護の目的を達しようとした場合,一定時間以上の革手錠の使用を前提とせざるを得ないことが認められるところ,革手錠の被使用者が股割れズボン等を着用しない場合,用便の都度職員にズボン等を下ろすことを求めなければならず,場合によっては衣服が汚れるような事態が生ずることも避けられないというべきである。 そうすると,股割れズボン等を着用すること自体が精神的な苦痛を与えるものであることや,原告のようにこのような着衣の存在を知らない者が十分な説明もなく着替えをさせられた場合,恐怖感をも禁じ得ないことを考慮しても,なお本件において原告に股割れズボン等を使用したことは,戒護の目的を達するため必要な範囲を逸脱した措置であるとはいえないから,これを違法ということはできない。 (f) 保護房拘禁中における革手錠及び金属手錠の使用について原告は,本件保護房拘禁中にも,革手錠及び金属手錠を両手後ろの方法により使用されているところ,このような戒具の使用が,刑務所長等の裁量権を逸脱又は濫用したものに当たるか否かについて検討する。 i 前記「法令の定め等」(2)のとおり,保護房は,被拘禁者に逃走,暴行,自殺又は自傷のおそれがある等の場合に,被拘禁者の鎮静及び保護に充てるために設けら について検討する。 i 前記「法令の定め等」(2)のとおり,保護房は,被拘禁者に逃走,暴行,自殺又は自傷のおそれがある等の場合に,被拘禁者の鎮静及び保護に充てるために設けられた特別の設備及び構造を有する独居房を指すものである。そして,保護房拘禁中に手錠を使用することについては,これを禁止する規定がないところ,保護房拘禁により直ちに手錠を使用する要件である逃走,暴行又は自殺のおそれがなくなるとは限らず,実際にも,拘禁中の者による逃走,暴行等の事例が存すること(乙81,82)に照らしても,保護房拘禁中であっても手錠を使用することが必要な場合が認められるから,保護房拘禁中における手錠の使用が許されないものということはできない。 しかしながら,保護房の被拘禁者に対して,革手錠を両手後ろの方法により使用した場合,上記bのとおり,食事の際,いわゆる犬食いの方法によるか,職員の介助を得て喫食する方法によることを余儀なくされ,自分で排便の始末をすることが困難となり,仰向けの姿勢がとれないこと等により,就眠が著しく困難になることなど,食事,用便,睡眠といった,人間が生存するために不可欠な生理的行動の局面において,被使用者に強度の肉体的,精神的苦痛を与えることが明らかであり,革手錠を両手前の方法により使用した場合であっても,相当程度の肉体的,精神的苦痛を与えることは否定できない。また,革手錠を長時間使用し続けた場合には,両腕が腰部に固定され,身体の運動の自由が著しく制限されることによる肉体的苦痛が激しくなることも看過できない。 したがって,保護房拘禁中における革手錠の使用については,被使用者が受ける精神的,肉体的苦痛を考慮しても,なお被使用者について,逃走,暴行,自殺等の とも看過できない。 したがって,保護房拘禁中における革手錠の使用については,被使用者が受ける精神的,肉体的苦痛を考慮しても,なお被使用者について,逃走,暴行,自殺等のおそれが顕著に認められ,保護房内における革手錠の使用が戒護の目的を達するために必要であり,かつ,革手錠がそのような目的を達するために必要最少限の範囲において使用されたものであるか否かについて,その使用方法,緊縛の程度,使用時間,金属手錠の併用の有無,食事や用便に対する配慮の有無,使用時間等にわたり,慎重に検討することが必要である。そして,このような観点から革手錠の使用がやむを得ないものとして是認されない場合には,当該革手錠の使用が刑務所長等に与えられた裁量権を逸脱又は濫用したものというべきである。 ⅱ そこで,本件保護房拘禁についてこの点を検討すると,原告は,前記1(2)オのとおり,本件保護房に連行される際も,大声を発しながら,身体を揺さぶり,職員に体当たりするように暴れ続けるなど,極度の興奮状態にあり,本件保護房拘禁の開始後,職員が喫食のため本件保護房内に入るまでの間も,前記1(2)カaのとおり,職員をにらみつけたり,大声を発したり,ズボンを脱ぐなどして房内を徘徊する等の挙動を示していたことが認められる。 以上のような状況を踏まえると,原告は,本件保護房拘禁開始後も,しばらくの間,著しい興奮状態にあり,その後も精神的に極めて不安定な状態が継続していたというべきであって,本件保護房への連行の際における抵抗の激しさを考慮すれば,職員が何らかの用件で保護房を開扉した場合,当該職員に暴行を加えるおそれが顕著であったといわざるを得ず,革手錠を使用することは必要であったというべきである。また,この段階で 抗の激しさを考慮すれば,職員が何らかの用件で保護房を開扉した場合,当該職員に暴行を加えるおそれが顕著であったといわざるを得ず,革手錠を使用することは必要であったというべきである。また,この段階で,原告の革手錠の使用方法を両手前の方法に変更しようとした場合,原告が手錠による拘束からいったん解放される機会に,上記作業に従事する職員に暴行を加える危険性が高いものと考えられることに照らせば,原告に対して革手錠を両手後ろの方法により使用し続けたことも,やむを得なかったというべきであって,本件保護房拘禁開始後夕食時までの間,原告に食事及び就眠の機会もなかったことをも勘案すれば,この段階における両手後ろの方法による革手錠の使用は,戒護の目的を達成するために必要最少限の範囲にとどまるものとして,是認されるべきものということができる。 したがって,本件保護房拘禁の開始後,職員が喫食のため本件保護房内に入るまでの間における原告に対する革手錠の使用について,刑務所長等の裁量権の逸脱又は濫用を認めることはできない。 ⅲ また,原告は,前記1(2)カaのとおり,平成5年8月17日午後4時15分ころ,B主任ほか3名の職員が本件保護房内に入り,原告に食事をさせようとした際,B主任をにらみ付け,副食を3分の1程度喫食したにとどまったことが認められるところ,それまでの原告の動静をも考慮すれば,この時点においても,原告は,依然として,革手錠を緩めたり外したりした場合に,暴行を加えるおそれが相当程度存したものと認めることができる。 もっとも,この時点では,原告が大声をあげたり暴れたりするなど,職員に対して実際に暴行を加えかねないような挙動をしたことを認めるに足りる証拠はなく,他方において, る。 もっとも,この時点では,原告が大声をあげたり暴れたりするなど,職員に対して実際に暴行を加えかねないような挙動をしたことを認めるに足りる証拠はなく,他方において,本件通牒も要請するとおり,食事という人間の生存に不可欠な生理的行動の場面においては,施錠を一時外すことが困難な場合であっても,できるだけ革手錠のベルトを緩めたりする等の配慮が払われるべきであったことは否定できない。しかしながら,原告が本件保護房拘禁前に激しく暴れていたこと,食事中もB主任をにらみ付け,主食を喫食しなかったこと等に照らせば,上記食事の間に革手錠のバンドを緩めることにより,原告が再び暴れるおそれがあることが否定できない以上,職員が上記のような配慮をしなかったことをもって,裁量権の逸脱又は濫用があるとまで評価することはできない。 ⅳ その後,B主任ほか3名の職員は,同日午後4時54分ころ,本件保護房内に入り,寝具を用意し,原告の身体や戒具の使用状況を確認しているところ,その際,原告が暴行のおそれを示すような言動をしたことを認めるに足りる証拠はなく,また,上記食事から寝具を用意するまでの間の原告の動静についても,証拠(乙27)によれば,房内をゆっくり徘徊していることが認められるにとどまり,暴行の具体的なおそれを示すような挙動をしたことや,逃亡,自殺等のおそれを示すような挙動をしたことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,原告は,激しく暴れて本件保護房に拘禁されてから約3時間を経過した同日午後4時15分ころの時点では,上記のとおり,それまでの動静等に照らし,暴行のおそれがなくなったとまではいえないものの,実際には暴行を加えかねないような挙動をしたことはなかったのであり,その後,午後 午後4時15分ころの時点では,上記のとおり,それまでの動静等に照らし,暴行のおそれがなくなったとまではいえないものの,実際には暴行を加えかねないような挙動をしたことはなかったのであり,その後,午後4時54分ころに職員が本件保護房内に入るまでの約40分間,暴行,逃亡,自殺等のおそれを示すような挙動をしたことはなく,職員が本件保護房内に入った際にも,暴行のおそれを示すような言動が認められなかったことに照らせば,上記午後4時54分ころの時点において,原告について,本件保護房内に入った職員に暴行を加えるおそれがなお存在することを窺わせるような客観的な事情,又は,逃亡,自殺等のおそれが存在することを窺わせるような客観的な事情は,認められないというべきである。 他方,職員が本件保護房内に寝具を用意した時点で,原告が革手錠を両手後ろの方法により使用したまま就眠することが想定されているところ,原告がこのような体勢のまま就眠しようとした場合,仰向けになることができず,うつ伏せの姿勢を維持することも困難であり,横臥しても一方の腕が身体の下となるため,苦痛で就眠が困難になることにより,著しい肉体的,精神的苦痛を受けることが明らかなことは前記b(b)のとおりであって,現に,原告自身も,同日夜,一睡もできなかった旨供述しているところである(原告本人)。また,職員が本件保護房内に寝具を用意した時点で,本件保護房拘禁の開始後約3時間半が経過しており,その後,前記1(2)カaのとおり,原告の身体的苦痛が増大したことが認められるほか,同日夜には,原告にぜん息の発作が生じ,薬剤が投与されていることも認められる。これらのことからすれば,原告に対する両手後ろの方法による革手錠の使用及び金属手錠の併用が長時間継続したことによる肉体的,精神的苦痛 原告にぜん息の発作が生じ,薬剤が投与されていることも認められる。これらのことからすれば,原告に対する両手後ろの方法による革手錠の使用及び金属手錠の併用が長時間継続したことによる肉体的,精神的苦痛は甚大であり,しかも時間の経過とともに増大しているというべきであって,同月18日朝,原告が泣きながら独り言を発していたことは,このような苦痛の激しさを裏付けるものということができる。 これらの事情を総合勘案すれば,原告に対し,本件保護房内において,少なくとも同月17日午後4時54分ころ寝具の用意を済ませた後も,なお革手錠の使用を継続したことについては,原告が受ける精神的,肉体的苦痛が甚大であるのに対し,原告に暴行等のおそれを窺わせる客観的な事情が存在したということはできず,原告に革手錠を使用することが,戒護の目的を達するために必要不可欠であったということはできないから,戒具の使用について刑務所長等に与えられた合理的な裁量の範囲を逸脱したものとして,違法であるといわざるを得ない。 そして,原告に対して上記のとおり革手錠の使用を継続したことの違法性は,革手錠が両手後ろの方法により使用されたこと,金属手錠が併用されたこと,革手錠が同月18日午前7時25分ころまで,約18時間にわたり継続して使用されたことをも考慮すると,より重大なものであったというべきである。 c さらに,本件戒具使用に関して原告が主張するその他の違法事由について検討する。 (a) 原告は,原告に対する革手錠の使用が,両手後ろの方法のまま長時間に及んでいること,金属手錠が併用されていること等から,原告に苦痛を与える目的で行われたものであり,戒具使用の目的を逸脱した違法な措置である旨主張する。 手錠の使用が,両手後ろの方法のまま長時間に及んでいること,金属手錠が併用されていること等から,原告に苦痛を与える目的で行われたものであり,戒具使用の目的を逸脱した違法な措置である旨主張する。 しかし,原告に対する革手錠の使用が,本件保護房拘禁中に至るまで,その使用方法,緊縛の程度,金属手錠の併用等を含め,戒護の目的を達するため必要な限度におけるものであったことは,前記のとおりであり,その後の革手錠の使用についても,前記1(2)キのとおり,C区長が同日朝,原告の現在の状況及び原告の前夜の動静に関する報告を考慮して,戒具を使用する必要性がないと判断したことにより,革手錠の使用が解除されたことに照らせば,原告に対する革手錠の使用が,原告に苦痛を与えることを目的として行われたものと認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は採用できない。 (b) また,原告は,革手錠の使用が統計上全国的に著しく減少している事実を指摘したうえで,このことから,革手錠を保護房拘禁中に使用することや,被使用者に著しい苦痛を与える両手後ろ等の方法により使用することも必要ないことが明らかになったとして,原告に対する革手錠の使用が違法である旨主張する。 しかしながら,戒具を使用した場合において,使用した戒具の種類や使用方法が違法であるか否かについては,前記a(b)の観点から,個々の事案ごとに具体的事実を踏まえて判断されるべきであって,上記のような統計上の事実から,直ちに保護房拘禁中の革手錠使用や,両手後ろの方法による革手錠使用等が,一律に違法となるということはできないから,原告の上記主張は理由がない。 d 結論以上によれば,本件戒具 禁中の革手錠使用や,両手後ろの方法による革手錠使用等が,一律に違法となるということはできないから,原告の上記主張は理由がない。 d 結論以上によれば,本件戒具使用のうち,本件保護房拘禁中に職員が房内に寝具を用意した平成5年8月17日午後4時54分ころ以降における使用については違法であるというべきであるが,それ以前における使用についてはこれを違法と認めることができない。 ウ本件保護房拘禁の違法性の有無についてa 監獄法及び施行規則には,保護房拘禁を直接規定する条項は存しないものの,在監者についてはその心身の状況により不適当と認めるものを除くほか,独居拘禁に付することが認められており(監獄法15条,施行規則47条),在監者に逃走,自殺又は自傷,職員又は他の収容者に対する暴行又は傷害等のおそれがあるなど,一般の居房に拘禁することが不適当と認められる場合には,戒護の措置として,当該在監者を鎮静及び保護に充てるために適した特別な設備及び構造を有する独居房に拘禁することも,独居拘禁の一形態として許容されるというべきである。 保護房通達は,上記のような事由が存在することにより,一般の居房に拘禁することが不適当と認められる合理的な理由が存する場合に,このような在監者の鎮静及び保護に充てるための特別の設備及び構造を有する独居房である保護房に拘禁することを認めるものであって,Kにおいても,このような保護房が設置されているところである。 そして,保護房に在監者を拘禁する要件,手続等について,監獄法及び施行規則に規定が設けられていないことからすれば,保護房拘禁の要否に関する判断は,監獄における施設及び在監者の管理について責任を有する刑務所長の専門的知 者を拘禁する要件,手続等について,監獄法及び施行規則に規定が設けられていないことからすれば,保護房拘禁の要否に関する判断は,監獄における施設及び在監者の管理について責任を有する刑務所長の専門的知識及び経験に基づく合理的な裁量にゆだねられているというべきである。 しかしながら,保護房拘禁は,被拘禁者を他の在監者から隔離したうえ,刑務所職員の監視下に常時置いて管理するものであり,通常の居房における拘禁と比較して,被拘禁者に対して強度の肉体的,精神的な影響を及ぼすことが避け難いことにかんがみれば,保護房拘禁は,戒護の措置として必要な場合に限り,抑制的に行われるべきものである。そして,保護房通達は,前記「法令の定め等」(2)のとおり,保護房拘禁の要件を規定しているところ,その内容は,保護房拘禁が抑制的に行われるべきとする上記の観点に照らし,合理性を有すると考えられることからすれば,刑務所長が,保護房通達の定める要件が存しないにもかかわらず,保護房拘禁の必要性を認める判断を行った場合には,この判断は,刑務所長にゆだねられた合理的な裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したものとして,違法となるものというべきである。 b そこで,本件保護房拘禁について,上記の点を検討する。 (a) 原告が居房内で本,日用品等を投げたうえ,出房を促した職員に詰め寄り,制圧を試みた複数の職員に抵抗して激しく暴れ続け,さらに,取調室に連行され,革手錠を装着された後も,大声をあげながら激しい興奮状態の下に暴れ続けていたことは,前記認定のとおりである。 このような原告を一般の居房に拘禁した場合,房内で暴れて他の在監者や居房内に入った職員に傷害を負わせたり,大声を発することにより刑務所内の静穏を害するお 定のとおりである。 このような原告を一般の居房に拘禁した場合,房内で暴れて他の在監者や居房内に入った職員に傷害を負わせたり,大声を発することにより刑務所内の静穏を害するおそれがあることは明らかであるから,原告は,保護房通達に定める「職員又は他の収容者に暴行又は傷害を加えるおそれがある者」及び「制止に従わず,大声又は騒音を発する者」に該当したものと認められる。 したがって,原告を本件保護房に拘禁したことが,所長の合理的な裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したものということはできない。 (b) また,原告は,前記1(2)カないしクのとおり,本件保護房拘禁が開始された後,同月19日朝に至るまで,大声や独語を発したり,房内を徘徊したり,視察する職員をにらみ付けたりするなど,精神的に不安定な状況にあったことが認められる。この点に加え,原告が本件保護房拘禁前に激しい興奮状態の下で暴れ続けていたことを考慮すれば,この段階で原告を一般の居房に拘禁した場合,職員又は他の収容者に暴行を加えるおそれがなかったとはいえないから,原告を同日午前9時50分ころまで本件保護房に拘禁したことが,所長による裁量権の逸脱又は濫用に該当するということはできない。 (c) さらに,原告は,本件保護房拘禁中にぜん息の発作を起こしていることから,その後も保護房拘禁を継続した違法性が重大である旨主張する。しかし,原告について,本件保護房拘禁開始後も,保護房通達に定める保護房拘禁の要件がないとはいえないことは上記のとおりであり,前記1(2)カaのとおり,本件保護房拘禁中,原告にぜん息の発作が生じたことは認められるものの,これによって保護房拘禁の要件がなくなるわけではないから,本件保護房拘禁が違法となる 上記のとおりであり,前記1(2)カaのとおり,本件保護房拘禁中,原告にぜん息の発作が生じたことは認められるものの,これによって保護房拘禁の要件がなくなるわけではないから,本件保護房拘禁が違法となるとはいえない。 (d) なお,本件では,原告に対する革手錠の使用が違法と評価されるに至った後も,原告に対する保護房拘禁が継続しているが,保護房拘禁の要件と手錠の使用要件とは個別に検討されるべきであって,革手錠を使用する必要性が認められない場合であっても,保護房拘禁の必要性が認められる場合があり得るから,革手錠の使用が違法であることをもって,本件保護房拘禁が違法となるものではない。 c 以上によれば,本件保護房拘禁については,その必要性を認める判断につき,刑務所長にゆだねられた合理的な裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したものと認めることはできないから,本件保護房拘禁が違法であるということはできない。 エ本件戒具使用及び本件保護房拘禁がB規約に違反する旨の主張について原告は,本件戒具使用及び本件保護房拘禁における原告に対する一連の扱いが,「非人道的な若しくは品位を傷つける取扱」を禁止するB規約7条に違反する旨主張する。 しかしながら,手錠の使用及び保護房拘禁の違法性については,前記のとおり,個々の事案ごとに具体的事実に即して,戒護の目的を達成するための必要性と,手錠の使用及び保護房拘禁による肉体的,精神的苦痛の程度とを勘案して判断されるべきであるところ,手錠の使用及び保護房拘禁がこのような限定的な要件の下に許容される場合においては,これらの措置がB規約7条に反して違法であると解することは相当でないというべきであるから,本件戒具使用及び本件保護房拘禁がB規約7条に違 拘禁がこのような限定的な要件の下に許容される場合においては,これらの措置がB規約7条に反して違法であると解することは相当でないというべきであるから,本件戒具使用及び本件保護房拘禁がB規約7条に違反する旨の原告の主張は,結局,前記のような手錠の使用及び保護房拘禁の違法性に関する判断基準の下において,これらの措置が違法である旨の主張に帰着するものと解される。 したがって,前記のとおり,本件戒具使用及び本件保護房拘禁のうち,前記イdのとおり違法とされた部分を除く措置については,いずれも違法とはいえない以上,「非人道的な若しくは品位を傷つける取扱」を禁止するB規約7条に違反するということはできない。 (3) 争点3(本件各懲罰の違法性の有無)についてア本件各懲罰に共通する違法性の有無についてa 原告は,懲罰の要件について具体的な定めのない監獄法の規定に基づき,遵守事項違反を理由として懲罰を科すことが,憲法31条及び13条に反する旨主張する。 そこで検討すると,監獄法59条は,在監者が「紀律」に違反した場合には懲罰に処する旨規定しているものの,同法及び施行規則には,懲罰の要件に関する具体的な規定が設けられていないことは原告の指摘するとおりであり,監獄法に基づく懲罰が,監獄内の規律秩序に違反した在監者に対して不利益を科すものであることに照らせば,人権保障の観点からは,法令において懲罰の対象となるべき規律秩序違反の行為を明示することが望ましいということができる。 しかしながら,監獄法に基づく懲罰が,刑務所内の規律秩序の維持を目的として,多種多様な内容の規律違反に対して科される行政上の秩序罰であって,刑罰とは異なるものであることにかんがみれば,同法59 しかしながら,監獄法に基づく懲罰が,刑務所内の規律秩序の維持を目的として,多種多様な内容の規律違反に対して科される行政上の秩序罰であって,刑罰とは異なるものであることにかんがみれば,同法59条にいう「紀律」は,必ずしも法令で定められたものに限られる必要はなく,在監者が遵守しなければならない監獄内の規則,生活規範等もこれに該当する場合があるというべきである。 そして,施行規則22条2項により監房内に備え置くべきこととされている在監者遵守事項も,それが適正なものである限り,監獄法59条にいう「紀律」に含まれるというべきであり,Kにおいては,前記「法令の定め等」(3)のとおり,本件遵守事項が各居房に備え付けられているところである。 したがって,本件各懲罰が,懲罰の要件を具体的に規定していない監獄法の規定に基づき,本件遵守事項違反を理由として科されたことをもって,直ちに違憲,違法ということはできないというべきである。 b また,原告は,懲罰の要件を定めない監獄法59条自体が,その不明確性ゆえに違憲であると主張するが,多種多様な内容の規律違反に対する行政上の秩序罰という懲罰の性格に照らせば,同条が懲罰要件を具体的に規定していないことをもって,これを違憲,違法ということはできない。 c さらに,原告は,本件各懲罰の手続において,対象者の防御の機会等が保障されていないことから,本件各懲罰が適正な手続に基づいて科されたものではないとして,憲法31条,国連最低規準準則30条に反し,違法である旨主張するので,この点について検討する。 (a) 監獄法には,懲罰の手続に関する具体的な規定はなく,施行規則にも,懲罰事犯につき取調中の者を独居拘禁等に付することができること(施行規則158条 この点について検討する。 (a) 監獄法には,懲罰の手続に関する具体的な規定はなく,施行規則にも,懲罰事犯につき取調中の者を独居拘禁等に付することができること(施行規則158条),懲罰の言渡しを所長が行うこと(施行規則159条)が規定されているほか,懲罰の手続に関する具体的な規定はない。 (b) また,証拠(乙9,証人C)及び弁論の全趣旨によれば,Kにおける懲罰の手続について,次のとおりであることが認められる。 iKにおいては,被拘禁者に規律違反容疑行為があった場合,容疑者の所属する区の長である看守長が,その行為を認知した職員の報告に基づき,取調べの必要の有無についての意見を付して所長に具申し,所長が取調べを実施する旨判断した場合には,これを容疑者に告知する。 ⅱ 取調べは,首席矯正処遇官(処遇担当)の指揮監督の下に実施され,その期間は,原則14日間であるが,最大14日間の延長をすることができる。取調べの終了後,取調担当者の判断を基に,容疑者を懲罰審査会に付するか否かが決定される。 ⅲ 懲罰審査会は,処遇部長を議長とし,首席矯正処遇官(処遇担当,企画担当),統括矯正処遇官(審査担当),各区長,警備隊長によって運営される。懲罰審査会においては,まず,容疑者に対し,容疑事実を告知し,次に,容疑者から弁解を聴取する。その後,統括矯正処遇官(教育担当)が,容疑者の補佐人として,容疑者のために意見を陳述し,必要に応じて,関係人を出席させて説明を求める。 ⅳ 議長は,懲罰審査会における委員の意見を取りまとめ,その結果を所長に報告し,所長は,懲罰を科すか否か,また懲罰を科す場合にはその種類及び内容を決定する。上記決定の める。 ⅳ 議長は,懲罰審査会における委員の意見を取りまとめ,その結果を所長に報告し,所長は,懲罰を科すか否か,また懲罰を科す場合にはその種類及び内容を決定する。上記決定の結果については,容疑者に口頭で告知される。 (c) そこで,以上に基づいて,原告の上記主張について判断する。 i 監獄法に基づく懲罰は,監獄内の規律秩序に違反した在監者に対して不利益を科すものであるから,人権保障の観点からは,このような懲罰に関する科罰手続についても,法令において具体的な規定を設けることが一般に望ましいということができる。 ⅱ しかしながら,監獄法に基づく懲罰が,刑務所内の規律秩序の維持を目的として,多種多様な内容の規律違反に対して科される行政上の秩序罰であって,刑罰とは異なるものであることにかんがみれば,同法に基づく懲罰について,刑事訴訟手続におけるような厳格な適正手続が保障されるものということはできない。 そうすると,同法に基づく懲罰に関し,法令上科罰手続についての具体的規定がないことをもって,直ちに本件各懲罰が違憲,違法ということはできない。 ⅲ また,Kにおける懲罰の手続において,懲罰審査会に先立って取調べのための独居拘禁が認められていること,懲罰審査会が職員のみによって構成されていること,懲罰事由及び懲罰の内容が文書により明らかにされないことを考慮しても,上記のとおり,監獄法に基づく懲罰について,厳格な適正手続が保障されるものではないことからすれば,これらの事情をもって,直ちに本件各懲罰が違憲,違法ということはできない。 同様に,懲罰の手続において,規律違反行為の容疑者に弁護 保障されるものではないことからすれば,これらの事情をもって,直ちに本件各懲罰が違憲,違法ということはできない。 同様に,懲罰の手続において,規律違反行為の容疑者に弁護人の立会い及び証人尋問の権利が認められていないとしても,これをもって,本件各懲罰が違憲,違法であるということはできない。 ⅳ そして,上記(b)のとおり,規律違反容疑行為の容疑者が審査会に出席する機会を認められていること,補佐人による意見の陳述が認められていること等に照らせば,Kにおける懲罰の手続においては,容疑者に防御の機会が保障されていないということはできず,他に同刑務所における懲罰の手続が,適正な手続を欠くことにより,違憲,違法であることを認めるに足りる証拠はない。 (d) さらに,原告は,本件各懲罰の手続が国連最低基準規則30条に反し,違法である旨主張する。しかし,同規則が我が国の批准した条約ではなく,既に確立された国際慣習法でもないことは前記のとおりであるから,同規則に反することを理由に本件各懲罰が違法であるとする原告の主張は,採用することができない。 (e) したがって,本件各懲罰が適正手続によるものでないことを理由に違憲,違法であるとする原告の主張は,理由がないというべきである。 d 原告は,日本語を解さないため,本件各懲罰の手続において,その意味や内容をほとんど理解できないまま,実効的な防御の機会を与えられずに本件各懲罰を科された旨主張する。 しかし,証拠(乙9,13,14,37ないし41,68,証人C)によれば,Kにおいては,規律違反容疑行為の容疑者が日本語を解さない場合には,容疑者の取調べ,懲罰審査会及び懲罰の告知の際,通訳が立 しかし,証拠(乙9,13,14,37ないし41,68,証人C)によれば,Kにおいては,規律違反容疑行為の容疑者が日本語を解さない場合には,容疑者の取調べ,懲罰審査会及び懲罰の告知の際,通訳が立ち会うこととされていること,原告に対する本件各懲罰に関する上記の各手続においても,外人処遇係の職員等が通訳として付されていることが認められる。 以上の事実に照らせば,原告が日本語を解さないことにより,本件各懲罰の手続において特段の不利益を受けたとは認められないから,原告の上記主張は理由がない。 e このほか,原告は,現行の軽屏禁がB規約7条の禁じる「非人道的な扱い」に該当する旨主張する。 この点,刑務所内における規律秩序を維持する目的のために必要かつ合理的な内容の懲罰を実施することは,B規約7条の禁じる行為には該当しないというべきであるところ,証拠(証人C)によれば,Kにおける軽屏禁が,受罰者を一人で罰室内の中央付近にある指定された場所において,起床時から仮就寝時まで壁側に向かって座らせて反省させるものであること,原告のような外国人の被拘禁者の場合は,椅子なしで座ることが困難であることを考慮して,椅子に座らせる扱いとしていること,受罰者について,面会及び信書が禁止され,運動及び入浴も制限されることが認められる。 そうすると,本件各懲罰における軽屏禁は,被拘禁者の運動や入浴を制限し,一定の姿勢をとることを要請すること等の点において,受罰者に精神的,肉体的な苦痛を与えるものであることが認められるものの,軽屏禁が刑務所内の規律に違反した者を外界から隔離して謹慎させることにより,規律違反行為に対して制裁を加えるとともに,反省,改悛を促すものであり,その実施態様が上記のとお ることが認められるものの,軽屏禁が刑務所内の規律に違反した者を外界から隔離して謹慎させることにより,規律違反行為に対して制裁を加えるとともに,反省,改悛を促すものであり,その実施態様が上記のとおりであることからすれば,受罰者に上記の目的を達するために必要かつ合理的な内容を超える苦痛を与えるものとはいえない。 したがって,Kにおける軽屏禁が,B規約7条の禁じる「非人道的な扱い」に該当して違法であるとは解されない。 イ本件各懲罰に関する個別的な違法性についてa 第1事件に関する懲罰の違法性について(a) 前記1(1)イのとおり,原告は,平成5年7月22日午前11時58分ころ,外国人用食堂において,全員の着席が完了するまでは目を閉じて待つこととされていたにもかかわらず薄目を開けていたことをD看守に注意され,同人から目を閉じるよう指示されたことから,同人に対し,「私の目は閉じている。」という趣旨の発言を含め,早口でまくし立て,別室に連行されている。そして,証拠(乙34)によれば,原告による上記対応の態様は,反抗的で,穏便でないものであったことが認められる。 したがって,原告の上記発言及び対応は,本件遵守事項39項にいう「職員の職務上の指示」である,目を閉じる旨のD看守の指示に素直に従おうとせず,あからさまな反抗的態度によって不満を表明したものというべきであり,このことによって,外国人用食堂の規律秩序を維持して円滑に昼食を実施しようとする職員の職務を妨害したこと ヘ明らかであるから,「職員の職務上の指示,命令に対し抗弁,無視などの方法により職員の職務を妨害してはならない」と規定する本件遵守事項39項に反するものと認めることができる。 こと ヘ明らかであるから,「職員の職務上の指示,命令に対し抗弁,無視などの方法により職員の職務を妨害してはならない」と規定する本件遵守事項39項に反するものと認めることができる。 (b) これに対し,原告は,原告が目を開けていなかった以上,目を閉じる旨のD看守の指示は,本件遵守事項39項にいう「職員の職務上の指示」に該当しない旨主張する。 しかし,原告が薄目を開けていたのをD看守が現認したのは前記1(1)イのとおりであって,原告の上記主張は,その前提を欠くものであるが,仮に原告が薄目を開けていた事実がなかったとしても,原告としては,D看守の注意に従って目を閉じていれば足りたのであり,仮に不服があったとしても,上記のような反抗的態度によってこれを表明することが正当であるとは認め難いから,いずれにせよ,原告の上記主張は,失当といわざるを得ない。 (c) また,原告は,外国人用食堂において目を閉じていなければならないといった「指導」は,遵守事項ではなく,単なる心得事項であり,心得事項に対する違反については,そもそも懲罰をもってこれを強制すべきでないところ,職員が心得事項の遵守を指示したのに対し,これに従わなかったことを理由として懲罰を科し得るとすれば,心得事項違反に対して懲罰を科すべきでないとした趣旨が没却される旨主張する。 しかしながら,懲罰が監獄内の規律秩序の維持を目的とした制裁であって,このような目的を達するために相当な範囲において科すべきであることからすれば,単なる心得事項違反について懲罰を科すことが相当でないとしても,本件遵守事項39項によれば,単に職員の職務上の指示,命令に従わないことにとどまらず,そのことにより職員の職務を妨害するものと認め れば,単なる心得事項違反について懲罰を科すことが相当でないとしても,本件遵守事項39項によれば,単に職員の職務上の指示,命令に従わないことにとどまらず,そのことにより職員の職務を妨害するものと認められるに至った場合に,はじめて同項に違反した行為となるものというべきであって,職務妨害に該当するような態様の指示違反のみが,同項違反として懲罰の対象となるものである。 したがって,心得事項違反の遵守を指示したことに従わなかったことにより職員の職務を妨害するものと認められる場合に,懲罰を科したとしても,単なる心得事項違反に対して懲罰を科すべきでないとした趣旨を没却するものとはいえない。 (d) さらに,原告は,外国人用食堂において全員が着席するまで目を閉じる扱いが,さほど重要でないにもかかわらず,第1事件のような実害のない軽微な事案で,原告に対して軽屏禁10日という厳罰を科したことは,懲罰権の濫用である旨主張する。 そこで検討するに,そもそも監獄法に基づく懲罰は,刑務施設における規律秩序の維持を目的とする行政上の秩序罰であって,刑務所の受刑者による規律違反行為に対し,どのような懲罰を科すかの判断は,刑務所長の権限にゆだねられており,その判断に裁量権の逸脱又は濫用が認められない限り,懲罰は違法とならないというべきである。 しかるところ,外国人用食堂における上記の扱いは,前記1(1)アのとおり,被拘禁者間のトラブルの防止のほか,目配せによる不正な連絡の防止を目的とするものであるところ,証拠(乙69ないし75)及び弁論の全趣旨によれば,Kにおいては,受刑者が相互に不正連絡を行う可能性があり,同刑務所内の各工場に分属している受刑者が例外的に相互交流する可能性の するものであるところ,証拠(乙69ないし75)及び弁論の全趣旨によれば,Kにおいては,受刑者が相互に不正連絡を行う可能性があり,同刑務所内の各工場に分属している受刑者が例外的に相互交流する可能性のある外国人用食堂においては,目配せなどの方法により不正連絡を行うことを防止する必要性が高いことが認められるから,外国人用食堂における上記の扱いが重要でないということはできない。 のみならず,第1事件における懲罰は,外国人用食堂における上記の扱いに反したことに対するものではなく,これに反したことにより職員から指示を受けたことに対し,原告が抗弁の方法により職員の職務を妨害したことに対して科せられたものであって,刑務所における規律秩序を維持する観点に照らして,このような態様による規律違反行為が,実害のない軽微なものということはできない。 したがって,原告の第1事件に関する懲罰の判断が,所長に与えられた懲罰権に関する裁量を濫用したものということはできないから,原告の上記主張は理由がない。 (e) 以上によれば,原告に対する第1事件に関する懲罰が違法であるということはできない。 b 平成5年9月7日の懲罰の違法性について原告は,平成5年9月7日の懲罰について,そもそも職員に対して暴行しようとしたことがなく,懲罰事由に該当する行為をしていない旨主張する。 しかし,原告が同年8月17日午後1時21分ころ,出房を促したB主任に対し,突然怒鳴り声をあげながら,左腕で同人の右腕を振り払い,同人に詰め寄る態度を示したことは,前記1(2)ウaのとおりであって,このような原告の行為は,「他人に暴行を加え,又は加えることを企ててはならない。」と規 声をあげながら,左腕で同人の右腕を振り払い,同人に詰め寄る態度を示したことは,前記1(2)ウaのとおりであって,このような原告の行為は,「他人に暴行を加え,又は加えることを企ててはならない。」と規定する本件遵守事項19項に違反するものと認められるから,原告の上記主張は採用できない。 なお,証拠(乙46)によれば,上記懲罰の懲罰表においては,本件遵守事項20項違反と記載されているものの,規律違反容疑行為名は「暴行しようとした件」であり,その件について審査,科罰が行われたものであるから,懲罰表における違反条項の記載が誤っていたものというべきである。そして,このような誤った違反条項の記載が不適切であることは論を待たないが,このことをもって,上記懲罰が違法であるとまではいうことができない。 そして,他に,原告に対する上記懲罰が違法であることを認めるに足りる主張及び証拠はないから,上記懲罰が違法ということはできない。 c 第2事件に関する懲罰について(a) 第2事件に関する懲罰について,被告が当初,本件遵守事項28項及び39項違反の事実を対象として科されたものと主張していたが,その後,本件遵守事項21項違反の事実を対象として科されたものであると主張を変更したことは,当裁判所に顕著であるところ,原告は,被告が当初主張していた本件遵守事項28項及び39項違反が実際の懲罰事由であり,被告にとって,この懲罰事由を主張することが不都合であることから,本件遵守事項21項違反という虚偽の主張に変更したものである旨主張する。 しかしながら,被告は,当初の主張が,本件の指定代理人において,実際の懲罰が本件遵守事項21項違反である暴言事犯のみを対象として科されたも 変更したものである旨主張する。 しかしながら,被告は,当初の主張が,本件の指定代理人において,実際の懲罰が本件遵守事項21項違反である暴言事犯のみを対象として科されたものであることを見落とし,誤って行ったものである旨主張しており,その証拠として,変更後の主張に合致する懲罰表(乙52)を提出している。 これに対し,原告は,そもそも上記懲罰表自体が,被告に好都合な変更後の主張に合致するように,本件訴訟が提起された後に作成されたものである旨主張するが,そのような事実を客観的に窺わせるに足りる証拠がない以上,上記主張を採用することはできない。そして,他に上記懲罰表の信用性に合理的な疑いを抱かせるに足りる証拠はない。 そうすると,上記懲罰表の第2事件に関する懲罰が,そもそも本件遵守事項21項違反の事実を対象として科されたものであって,被告が当初誤って異なる懲罰事由を主張した合理的な可能性があることは否定できないから,第2事件に関する懲罰が,実際には本件遵守事項28項及び39項違反の事実を対象として科された旨の原告の主張は,採用することができない。 (b) そこで,以下,第2事件に関する懲罰については,上記懲罰表に記載のとおり,本件遵守事項21項違反の事実を対象として科されたものであることを前提として,その違法性の有無を検討する。 i 原告は,前記1(3)イaのとおり,平成7年12月14日午後2時36分ころ,第28工場において作業中,わき見をしたことを注意したE部長が,担当台の前に来るために起立するように指示したのに対し,起立して同人の方を見た直後,通訳をした外国人受刑者の方を見て「クレージー」と発言したものである。 をしたことを注意したE部長が,担当台の前に来るために起立するように指示したのに対し,起立して同人の方を見た直後,通訳をした外国人受刑者の方を見て「クレージー」と発言したものである。 この「クレージー」という発言について,原告は,「アンビリーバブル」(信じられない)という意味で発言されたものであって,あきれた気持ちの発露にすぎず,本件遵守事項21項にいう「暴言」には該当しない旨主張し,原告本人も,ばかばかしい話だと思って言ったのであって,職員を侮辱したわけではない旨供述する(乙5)。 しかしながら,証拠(証人E,乙54)及び弁論の全趣旨によれば,原告の「クレージー」という発言は,注意,指示を与えたE部長に対し,上記受刑者を介して吐き捨てるように発語されたものであり,上記受刑者も,E部長をばかだと言っているように聞こえた旨述べていることが認められ,これらに照らせば,仮に原告の上記発言が原告の主張するような意味で発言されたとしても,これがE部長に対する侮蔑ないし反感の念を示すものであることは否定できず,本件遵守事項21項に規定する「粗暴な言動」に当たるものといわざるを得ない。 したがって,原告の「クレージー」という発言は,「他人をひぼうし,中傷し,又は侮辱するような言動をしてはならない。他人に対し粗暴な言動をしてはならない。」と規定する本件遵守事項21項に違反するものと認められる。 ⅱ また,原告は,第2事件に関する懲罰が,事案との均衡を失した重い懲罰であり,原告に対する報復として科されたものであって,刑務所長に与えられた裁量権の著しい逸脱又は濫用に当たる旨主張する。 しかしながら,第2事件における原告の「 重い懲罰であり,原告に対する報復として科されたものであって,刑務所長に与えられた裁量権の著しい逸脱又は濫用に当たる旨主張する。 しかしながら,第2事件における原告の「粗暴な言動」は,工場において受刑者の作業を監督していた職員が原告を注意したことに対するものであり,刑務所の規律秩序を維持する観点からすれば,些細な事案であるということはできない。また,上記懲罰が原告に対する報復として科されたものであることを認めるに足りる証拠はない。 したがって,上記懲罰が,所長の裁量権を逸脱又は濫用したものとはいえないから,原告の上記主張も理由がない。 (c) 以上によれば,原告に対する第2事件に関する懲罰が違法であるということはできない。 d 第3事件に関する懲罰について(a) 原告は,そもそも第3事件に関する懲罰の根拠となった,「許可なく定められた方法以外の方法で洗濯し,又は身体を洗ってはならない。」と規定する本件遵守事項35項自体,遵守事項とすべき合理的な理由がなく,心得事項に懲罰を及ぼすこととなるものであるから,違法である旨主張する。 しかし,前記1(4)アのとおり,Kでは,国の予算の適正な執行を図るため,被拘禁者に対し,節水を義務付ける趣旨から,許可なく定められた方法以外の方法で洗濯し,又は身体を洗うことを禁じたうえで,入浴場以外の場所において身体を洗う必要が生じた場合には,職員に申し出たうえ,汚物が付着しているなどの特別な事情が存する場合には,許可する扱いとしていたのであって,このような許可を得ずに洗濯したり,身体を洗うことを遵守事項として規定することには,刑務所における規律秩序を維持するために合理的な理由 の特別な事情が存する場合には,許可する扱いとしていたのであって,このような許可を得ずに洗濯したり,身体を洗うことを遵守事項として規定することには,刑務所における規律秩序を維持するために合理的な理由があるというべきであるから,原告の上記主張は理由がない。 (b) また,前記1(4)イaで認定した事実によれば,原告は,平成8年2月13日午前7時20分ころ,少なくとも約10秒間にわたり,居房内の洗面台に向かいながら腰をかがめるようにして,洗面器にためた水を両手ですくい,頭にかけて,両手で頭皮をこするように洗っていたことが認められる。 そうすると,原告の上記行為は,本件遵守事項35項に規定する,身体を洗う行為に該当するものと認めることができる。 そして,証拠(乙13)及び弁論の全趣旨によれば,原告が上記行為を行うに当たり,職員から許可を得ていないこと,上記の方法により頭髪を洗うことが,Kにおいて定められた身体を洗う方法ではないことが認められるから,原告の上記行為は,本件遵守事項35項の禁止する行為に該当し,同項に違反するものと認められる。 (c) これに対し,原告は,第3事件に関する懲罰が,事案との均衡を失した重い懲罰であり,原告に対する報復として科されたものであって,刑務所長に与えられた裁量権の著しい逸脱又は濫用に当たる旨主張する。 しかしながら,上記懲罰の対象となった原告の規律違反行為は,被拘禁者に節水を義務付ける観点からは,些細な違反行為というべきであるものの,前記1(4)アのとおり,原告は,許可なく身体を洗う行為が規律違反行為に当たることを承知していながら,同イaのとおり,あえてこれに該当する行為を行っていたものである。そし 為というべきであるものの,前記1(4)アのとおり,原告は,許可なく身体を洗う行為が規律違反行為に当たることを承知していながら,同イaのとおり,あえてこれに該当する行為を行っていたものである。そして,以前にも原告による規律違反行為が度重なっており,原告による規律違反行為に厳重に対処することについて一定の合理性が認められることをも勘案すると,第3事件に関して軽屏禁5日(文書図画閲読禁止併科)の懲罰を科した所長の判断が,裁量権を逸脱又は濫用したものとまではいうことができない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (d) 以上によれば,原告に対する第3事件に関する懲罰が違法であるということはできない。 ウ結論以上によれば,原告に対する本件各懲罰は,いずれも違法であるということができない。 (4) 争点4(本件独居拘禁の違法性の有無)についてア前記「法令の定め等」(4)のとおり,監獄法15条,施行規則47条によれば,戒護のため隔離する必要がある在監者を独居拘禁に付すことが認められているところ,施行規則47条に規定する「戒護ノ為メ隔離ノ必要アルモノ」とは,逃亡,暴行,自殺等,在監者による監獄内の安全及び規律に反する行為を予防,制圧するために,当該在監者を他の在監者と隔離する必要がある場合をいうものと解すべきである。 そして,刑務所において,受刑者を戒護の必要上独居拘禁に付するかどうか,また,独居拘禁に付する場合に,昼夜独居拘禁又は夜間独居拘禁のいずれを選択するかの判断は,刑務所における施設及び受刑者の管理について責任を負う刑務所長が,その専門的知識及び経験に基づき,独居拘禁を認めた法令の趣旨に照らして,当該事案において必要であ 居拘禁のいずれを選択するかの判断は,刑務所における施設及び受刑者の管理について責任を負う刑務所長が,その専門的知識及び経験に基づき,独居拘禁を認めた法令の趣旨に照らして,当該事案において必要であるか否かという見地から合理的に判断して行うべきであって,この範囲において刑務所長の裁量にゆだねられているものと解されるから,この点に関する刑務所長の判断は,合理的な基礎を欠くなど,著しく妥当性を損なう事実が認められない限り,上記裁量権の範囲内にあるものとして,違法とはならないというべきである。 もっとも,本件独居拘禁に使用された独居房の構造及び独居拘禁中における原告の処遇の態様については,前記「前提となる事実」(6)イのとおりであって,原告が主張するように,昼間の拘禁において,独居房の特定位置に被拘禁者を正座したり,足を屈伸することはおろか首を曲げることすら許されなかった事実は証拠上認められないものの,被拘禁者が長期にわたり本件独居拘禁のような処遇を受けた場合,肉体的,精神的苦痛により心身に影響を及ぼすことは否定し難いところであり,規則27条1項も,独居拘禁の期間は,特に継続の必要ある場合を除いて,6か月を超えることができないと規定しているものである。これらの点にかんがみれば,刑務所長が独居拘禁に関する判断について上記の裁量権を行使するに当たっては,独居拘禁により被拘禁者が受ける心身の影響をも考慮したうえで,なお当該処遇が必要か否かを合理的に検討して行うことが必要というべきである。 イそこで,本件独居拘禁に関する所長の判断に裁量権の濫用又は逸脱が認められるかについて検討する。 本件独居拘禁に関しては,前記1(5)アのとおり,原告について,Kに入所後,本件独居拘禁に至るまでの行状が著しく不良であっ 断に裁量権の濫用又は逸脱が認められるかについて検討する。 本件独居拘禁に関しては,前記1(5)アのとおり,原告について,Kに入所後,本件独居拘禁に至るまでの行状が著しく不良であったことに加え,平成8年2月以降,前記1(5)イaないしcのとおりの各事情が存したこと,前記1(5)ウのとおり,上記各事実を踏まえた分類委員会の判断に基づいて,所長が原告を昼夜独居拘禁に付することを決定したことが認められる。 そして,前記1(5)ア及びイの諸事情に照らせば,原告を雑居拘禁に付した場合はもとより,夜間独居拘禁に付した場合でも,原告を工場において他の受刑者と共に就業させれば,原告の意見や行動に影響された他の受刑者が,原告と同様の行動に及んだり,集団を形成してその意思を表明する行動を起こしたりする可能性があるといわざるを得ず,現に原告が他の受刑者に刑務所の処遇に関する訴訟の提起をことさらに促す行動をとっていること(乙69ないし75)からも,このような可能性が現実的なものであることが認められるところ,このような事態が生じた場合,Kにおける規律秩序の維持に支障が生じるおそれが認められることは明らかといわざるを得ない。 したがって,原告については,K内の安全及び規律に違反する行為を予防,制圧するために,他の受刑者と隔離して処遇する合理的な必要性が存するというべきであるから,昼夜独居拘禁の処遇により原告が受ける精神的,肉体的苦痛や,これによる心身への影響を考慮しても,原告を昼夜独居拘禁の処遇に付すこととした所長の判断が,合理的な基礎を欠くなど,著しく妥当性を損なう事実を認めることができない以上,所長に与えられた裁量権の範囲を濫用又は逸脱したものということはできない。 ウa これに対し,原告は,本件 が,合理的な基礎を欠くなど,著しく妥当性を損なう事実を認めることができない以上,所長に与えられた裁量権の範囲を濫用又は逸脱したものということはできない。 ウa これに対し,原告は,本件独居拘禁が,本件訴訟の準備及び提起に対する報復として行われたことが明らかであるとしたうえで,本件独居拘禁が,被拘禁者が要求又は苦情申立てを行ったことを理由に不利益を与えてはならないとする国連保護原則に違反するほか,憲法32条及びB規約14条1が保障する裁判を受ける権利を侵害し,違法である旨主張する。 b そこで,まず,本件独居拘禁が本件訴訟の準備及び提起に対する報復として行われたか否かについて検討する。 (a) 原告が平成8年3月2日にFあてに信書を発信し,その中で,Kに対して訴訟を提起する意思があることを明確にしていたこと,同月5日に日本弁護士連合会あてに信書の発信を願い出ており,その中で,K内における職員の執務状況や外国人受刑者の処遇に関する原告の認識が記載されていたことからすれば,日本弁護士連合会あての信書発信の願出は,本件訴訟を提起するための準備行為として行われたものというべきである。 そして,その直後の同月13日に分類委員会が開催され,上記の各事情をも考慮した結果,原告を昼夜独居拘禁に付す旨の判断が行われたことからすれば,本件独居拘禁が,原告による本件訴訟を提起するための準備行為を判断事情の一つとして決定されたものであるということができる。 (b) しかしながら,前記のとおり,原告については,従前の行状が著しく不良であったことや,図書の購入代金の支払を拒絶したことなど,本件訴訟の提起とは無関係な事情も勘案して,昼夜独居拘禁に付す旨の判断が行われていることや 記のとおり,原告については,従前の行状が著しく不良であったことや,図書の購入代金の支払を拒絶したことなど,本件訴訟の提起とは無関係な事情も勘案して,昼夜独居拘禁に付す旨の判断が行われていることや,原告が単に自ら訴訟を提起するのではなく,他の受刑者に刑務所の処遇に関する訴訟の提起をことさらに促す行動をとっていたことに照らせば,所長において,前記1(5)ア及びイの諸事情を考慮したうえで,同刑務所内の安全及び規律に違反する行為を予防,制圧するために,他の受刑者と隔離して処遇する合理的な必要性が存するとして,原告を昼夜独居拘禁に付した判断には,一応の合理性が認められるのであって,これをもって,直ちに本件独居拘禁が原告による本件訴訟を提起するための準備行為に対する報復として行われたものということはできない。 (c) そして,他に本件独居拘禁が,原告による本件訴訟の準備及び提起に対する報復として行われたことを認めるに足りる証拠はないから,そのような事実を認めることはできない。 c 以上を前提として,原告の前記aの主張について判断すると,国連保護原則違反の主張については,そもそも同原則自体,我が国の批准した条約でないし,このことを措いたとしても,前記bにおいて判断したことからすれば,本件独居拘禁が,被拘禁者が要求又は苦情申立てを行ったことを理由に不利益を与えたものとは評価できないから,理由がないといわざるを得ない。 また,憲法32条及びB規約14条1違反の主張について判断すると,本件独居拘禁は,刑務所内の安全及び規律に違反する行為を予防,制圧するために,他の受刑者と隔離して処遇する合理的な必要性が認められることから行われた措置であり,受刑者が刑務所による措置を不服とした訴えを提起することを抑制 内の安全及び規律に違反する行為を予防,制圧するために,他の受刑者と隔離して処遇する合理的な必要性が認められることから行われた措置であり,受刑者が刑務所による措置を不服とした訴えを提起することを抑制する目的で行われたものではないし,このような措置により,受刑者が上記のような訴えを提起することに対して抑止的な効果が事実上生じたとしても,訴えの提起自体を不可能とするものではないことや,刑務所における施設及び受刑者の管理について責任を負う刑務所長において,このような措置をとる合理的な必要性が認められることにもかんがみれば,本件独居拘禁が原告の裁判を受ける権利を侵害するものとして,違憲,違法であるということはできない。 エ以上のとおりであるから,本件独居拘禁が違法であるとする原告の主張は,理由がないといわざるを得ない。 (5) 争点5(本件独居拘禁中の労働に関する違法性の有無)についてア作業賞与金の計算方法及び金額についてa 前記「法令の定め等」(5)のとおり,懲役受刑者に対して支給される作業賞与金の額については,監獄法27条3項,施行規則71条により,行状,作業の成績等を斟酌して,法務大臣の定めたところにより計算することとされているところ,証拠(乙9,16)及び弁論の全趣旨によれば,作業賞与金の計算方法について,次のとおり認めることができる。 (a) 各職種について,見習工から1等工までの10段階の作業等級が設定されており,当該職種に初めて就業する被拘禁者については,作業等級を原則として見習工とし,その後,分類審査会の部会である等工審査会において,作業技能,作業能率,安全態度等を審査したうえ,適当と認められた場合に上位の等級に昇給させる。なお,等工審査会の構成員は,首席矯 として見習工とし,その後,分類審査会の部会である等工審査会において,作業技能,作業能率,安全態度等を審査したうえ,適当と認められた場合に上位の等級に昇給させる。なお,等工審査会の構成員は,首席矯正処遇官(作業担当),作業部門統括矯正処遇官(第2担当),被拘禁者を担当する統括矯正処遇官,主任矯正処遇官,工場・舎房担当職員である。 (b) 作業賞与金は,各作業等級別の基準額(就業1時間当たりの金額)に,1か月の就業時間数を掛けたものを基本とし,作業成績や行状による加算又は減額をして計算する。また,軽屏禁執行中は,作業に従事させないことから,作業就業時間が短くなり,その分作業賞与金が少なくなる。 b また,証拠(乙64,原告本人)によれば,平成7年11月当時,原告の職種は雑工であり,作業等級は3等工とされ,作業賞与金が月額合計4743円であったこと,同年12月には職種が紙細工となり,懲罰による減額があったことから,同月の作業賞与金額が合計2658円とされたこと,その後原告の作業賞与金額が減少され,平成8年3月には職種が紙細工,作業等級が見習工となったこともあり,同月の作業賞与金額が合計887円,同年4月の作業賞与金額が合計733円であったこと,その後,原告は,同年5月には9等工に,同年12月以降は8等工に昇級し,平成9年12月の出所に至るまでの間,月額614円ないし1328円の作業賞与金を得ていたことが認められる。 イ作業賞与金額が低廉にすぎることに関する違法性の有無についてa 裁量権の濫用又は逸脱による違法性の有無について(a) 作業賞与金の額については,施行規則71条により,法務大臣の定めたところにより計算することとされており,法務大臣がこれを定めるにつ の濫用又は逸脱による違法性の有無について(a) 作業賞与金の額については,施行規則71条により,法務大臣の定めたところにより計算することとされており,法務大臣がこれを定めるについて,一定の裁量権を有することが前提とされているところ,原告は,本件独居拘禁下において原告に支給された作業賞与金の額が,作業に対する一定程度の対価性を有するといえないほど低廉にすぎること,出所時に社会生活を営むための経済的な基盤となる程度の水準に達しない額であること,平均賃金より極端に低いのみならず,欧米諸国等の水準や我が国の過去における水準に照らしても低廉にすぎること等から,裁量権の範囲を逸脱又は著しく濫用したものとして,違法である旨主張するので,この点について検討する。 (b) そもそも,懲役受刑者が従事する刑務作業は,刑の執行自体を構成するものであり(刑法12条2項),受刑者には,本来これに対して何らかの対価を請求する権利はないというべきである。また,懲役受刑者が従事する刑務作業は,懲役刑の内容として強制的に課される教育手段であり,矯正のための処遇の一環としての役割を担うものであって,一般社会における労働と同様の意味において,作業に対する報酬としての賃金を請求することを認めることはできない。 そして,作業賞与金は,懲役受刑者に対して上記のような作業を奨励するという刑事政策上の考慮に基づき,作業従事者に対し,その作業収益及び生産性とは無関係に,一定の基準に従って支給される金員であるから,その基準額の定め方及びその範囲内における作業賞与金の具体的な決定方法は,あくまでも,被告の立法政策の問題であり,法務大臣が刑事政策上の目的を勘案しつつ,許容された予算の範囲内で,一定の基準に従って受刑者に支給され 方及びその範囲内における作業賞与金の具体的な決定方法は,あくまでも,被告の立法政策の問題であり,法務大臣が刑事政策上の目的を勘案しつつ,許容された予算の範囲内で,一定の基準に従って受刑者に支給されるように決定すれば足りるのであって,その決定は,上記の範囲内において,法務大臣の合理的な裁量にゆだねられていると解するのが相当である。 また,法務大臣が上記の裁量権を行使するに当たっては,刑事政策上の目的を勘案することが必要であるところ,刑事政策の見地からすれば,作業賞与金の額は,受刑者の社会復帰における経済的な必要性のみならず,刑罰の威嚇力による犯罪の一般的予防や再発防止の効果,被害者や社会の感情,刑務作業としての教育的効果等を勘案したうえで,国家の財政状況等を考慮して決定する必要があるというべきである。 (c) そうすると,作業賞与金は,受刑者による作業労働の対価として支払われるものではないから,その金額が一定程度の対価性を認め難いほどに低廉であるとしても,そのことを理由として,金額の決定に当たり,法務大臣による裁量権の濫用又は逸脱を認めることはできない。 また,受刑者の社会復帰における経済的な必要性は,裁量権の行使に当たり刑事政策上考慮されるべき事情の一つにすぎないというべきであるから,作業賞与金の額が出所時の生活の経済的な基盤となる程度の水準に達しないことをもって,裁量権の濫用又は逸脱に当たるということはできない。 さらに,上記(b)で述べた裁量権の行使のあり方からすれば,具体的な作業賞与金の額は,当該国家の当該時点における財政及び経済状況,社会感情等を勘案して決せられるべきであり,殊に我が国の懲役受刑者においては,生活費の一切を負担せずに生活 のあり方からすれば,具体的な作業賞与金の額は,当該国家の当該時点における財政及び経済状況,社会感情等を勘案して決せられるべきであり,殊に我が国の懲役受刑者においては,生活費の一切を負担せずに生活していることにもかんがみれば,本件独居拘禁下における原告の作業賞与金の額を,平均賃金,諸外国における同種の金員の額,我が国の過去における水準等と比較して,その多寡及び割合をもって直ちに裁量権の濫用又は逸脱の有無を論じることは相当でないというべきである。 そして,証拠(乙16,64)及び弁論の全趣旨によれば,原告については,軽屏禁の執行により就業時間が短くなったことに加え,行状が悪く,職種変更を繰り返しているほか,作業等級の昇級期間も長いことから,他の受刑者よりも作業賞与金額が少なく,平成9年3月の作業賞与金の額をみると,原告が月額合計1194円であったのに対し,同月の最高額が1万6280円,平均額が2877円であったことが認められるのであって,このような事情も併せ考えるならば,原告の本件独居拘禁下における作業賞与金の額が低廉にすぎることから裁量権の濫用又は逸脱があったものと認めるに足りるだけの主張,立証は尽くされていないというべきである。 (d) 以上のとおりであるから,原告に対する作業賞与金の額の決定につき,裁量権の濫用又は逸脱がある旨の原告の上記主張は,理由がないというべきである。 bB規約及び国連最低基準規則違反の主張について(a) 原告は,原告の厳正独居拘禁下における極端な低賃金労働が,被拘禁者に対する人道的かつ人間の固有の尊厳を尊重した取扱いを義務付けるB規約10条1の規定及び受刑者に対する処遇が矯正,社会復帰を目的とするものであることを定める同条3の規 る極端な低賃金労働が,被拘禁者に対する人道的かつ人間の固有の尊厳を尊重した取扱いを義務付けるB規約10条1の規定及び受刑者に対する処遇が矯正,社会復帰を目的とするものであることを定める同条3の規定にそれぞれ違反し,また,受刑者の作業について公正な報酬制度を要請する国連最低基準規則76条1項の規定にも違反するから,違法であると主張する。 (b) しかしながら,そもそも受刑者が刑務作業に対する報酬としての賃金を請求できないことは前記a(b)のとおりであるから,原告の作業賞与金の額が低廉であることをもって,「低賃金労働」ということは相当でない。 また,この点を措くとしても,原告は,本件独居拘禁下における作業賞与金の額が上記各規定に違反する理由として,①条約法条約を通じてB規約の解釈基準となるドイツ憲法裁判所判決に照らして,上記各規定に反すると考えられることと,②B規約の解釈基準として尊重されるべき国連最低基準規則76条1項の規定に反することを主張しているものであるが,①の主張については,前記a(c)のとおり,具体的な作業賞与金の額が当該国家の当該時点における財政及び経済状況,社会感情等を勘案して決せられるべきであり,金額や賃金との比率に関する諸外国との比較のみをもってその適否を論じることは相当でないこと等からすれば,この主張を採用することはできないし,②についても,原告の主張するところを前提としても,国連最低基準規則の規定が直ちにB規約の解釈基準として法的規範性を有しているとは認められないから,この主張も採用することができない。 したがって,本件独居拘禁下における作業賞与金の扱いが,B規約10条1及び3の各規定に違反するものということはできない。 (c も採用することができない。 したがって,本件独居拘禁下における作業賞与金の扱いが,B規約10条1及び3の各規定に違反するものということはできない。 (c) また,原告は,国連最低基準規則76条1項違反による違法も主張するが,前記のとおり,同規則が我が国の批准した条約でなく,その内容を国際慣習法と認めることもできないことや,上記のとおり,B規約の解釈基準として法的規範性を有するということもできないことにかんがみれば,原告の上記主張は,理由がないといわざるを得ない。 (d) したがって,原告に対する本件独居拘禁下における作業賞与金の取扱いが,B規約等に反して違法であるということはできない。 ウ ILO第29号条約違反の主張についてa 原告は,Kの刑務作業において民間企業製品の製作を義務付けることが,ILO第29号条約2条2に反し,違法であると主張する。 b そこで検討するに,ILO第29号条約2条1は,同条約1条において禁止される強制労働につき,「或者ガ処罰ノ脅威ノ下ニ強制セラレ且右ノ者ガ任意ニ申出デタルニ非ザル一切ノ労務」と定義するところ,同条約2条2は,例外的に許容される労働の一つとして,「裁判所ニ於ケル判決ノ結果トシテ或者ガ強制セラルル労務」を規定しており,有罪判決の結果懲役受刑者に課せられる刑務作業は,これに該当するものの,同条約2条2は,上記の労働が例外的に許容される条件として,「右労務ハ公ノ機関ノ監督及管理ノ下ニ行ハルベク且右ノ者ハ私ノ個人,会社若ハ団体ニ雇ハレ又ハ其ノ指揮ニ服セザル者タルベシ」と規定しており,Kにおける労務作業が,この条件を満たすか否かが問題となる。 この点,上記条件は,懲役受刑者につ 私ノ個人,会社若ハ団体ニ雇ハレ又ハ其ノ指揮ニ服セザル者タルベシ」と規定しており,Kにおける労務作業が,この条件を満たすか否かが問題となる。 この点,上記条件は,懲役受刑者について,刑務作業を実施する際に国の監督及び管理下において就業し,かつ,民間企業に直接雇用され又は民間企業の指揮下にないことを要するとしているものであるところ,我が国の刑務作業について,民間企業製品の製作を行うことがあるとしても,懲役受刑者が民間企業に直接雇用されているものとは認められず,また,原告は本人尋問において,刑務作業中に民間人が来ていたことがあった旨供述するものの,作業の監督は看守が行っていたとも供述しており,他にKの刑務作業が民間企業の指揮下に置かれていたことを認めるに足りる証拠はない。 c これに対し,原告は,ILO専門家委員会がオーストリア共和国の刑務所内で民間企業が運営する作業場での受刑者の労働に関して行われた調査に関する条約適用報告書において,受刑者の同意と,賃金等の労働条件が民間労働者と同一であることの2条件が満たされている場合にのみ,ILO第29号条約2条2の規定に違反しないとする見解を採っているところ,Kにおける労務作業においては,原告の同意なしに,賃金等の労働条件によって民間労働者より著しく劣った民間企業製品の製作に従事することを原告に義務付けており,同条約2条2の規定に違反する旨主張する。しかし,原告の主張によれば,ILO専門家委員会による上記見解は,民間企業が運営する作業場における受刑者の労働に関するものであって,Kにおける工場の場合とは同視できないから,上記見解を原告の刑務作業に適用することは相当ということはできず,原告の上記主張は採用できない。 d したがって,原告のKにおける作 って,Kにおける工場の場合とは同視できないから,上記見解を原告の刑務作業に適用することは相当ということはできず,原告の上記主張は採用できない。 d したがって,原告のKにおける作業がILO第29号条約2条2の規定に違反し,違法であるということはできない。 (6) 争点6(仮出獄の機会を受けられなかったことの違法性の有無)についてアa 仮出獄については,前記「法令の定め等」(6)のとおり,刑法28条が「懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるとき」に,一定の刑期等を経過した後に許すことができることとしており,その具体的な判断基準については,仮釈放等に関する規則32条に定められているところである。 b そして,証拠(乙9,16)によれば,Kにおける,仮出獄の申請を行うか否かに係る具体的な審査手続について,次のとおり認めることができ,これに反する証拠はない。 (a) 地方更生保護委員会に対する仮出獄の申請に際しては,職員で構成される分類審査会の部会である仮釈放審査会において,受刑者の精神状況,生活歴,家庭環境,犯罪の動機及び原因,被害弁償の状況,被害者感情,所内生活における行状,作業成績,遵法精神,責任観念及び勤労意欲の有無,引受人の状態,出所後における生活等の見通し等を審査したうえで,所長が仮出獄の対象者を決定している。 (b) Kの仮釈放審査会は,分類審議室長,首席矯正処遇官(処遇担当),首席矯正処遇官(作業担当),教育部首席矯正処遇官,分類審議室首席矯正処遇官,関係部門の統括矯正処遇官等の職員から構成される。仮釈放審査会は,毎月3回開催され,有期懲役の場合,刑期の執行期間の3分の1を経過した時点から審査し,審査の際に仮出獄の申請をしないこととな 処遇官,関係部門の統括矯正処遇官等の職員から構成される。仮釈放審査会は,毎月3回開催され,有期懲役の場合,刑期の執行期間の3分の1を経過した時点から審査し,審査の際に仮出獄の申請をしないこととなった場合には,6か月後に再度審査するが,受刑者の状況に応じて,再審査までの期間を短縮して審査することとしている。 (c) 仮釈放審査会においては,暴力団組織に所属して離脱の見込みのない者,犯罪の常習性が著しく高い者,引受人から引受けを拒否されている者,再犯期間の短い者,重大な規律違反のある者等については,原則として仮出獄の対象としない扱いである。 c また,証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,原告の仮出獄に係る仮釈放審査会の開催状況について,次の事実が認められ,これに反する証拠はない。 (a) 原告の刑期の約3分の1を執行した平成7年2月1日に,原告の仮出獄に係る初めての審査が行われたが,仮出獄の申請には時期尚早とされた。同年8月2日,2回目の審査が行われたが,刑期の2分の1を経過してから再審査を行うこととされた。 (b) 原告の仮出獄に係る3回目の審査は,刑期の約2分の1の執行が終了した同年10月4日に行われ,懲罰を受けた回数が多いことから,次回の審査を行うこととされたが,その際に原告の生活態度等が良好に推移すれば,仮出獄申請書を関東地方更生保護委員会に発出することの可否を詳細に検討する予定とされた。 (c) 平成8年4月3日,4回目の審査が行われたが,第2事件に関する懲罰を受けたことにより,所内生活の行状が良好でないとされ,再審査とされた。しかし,同年7月3日の5回目の審査においても,その直前に懲罰が科されたことから,再審査とされた。さらに,同 2事件に関する懲罰を受けたことにより,所内生活の行状が良好でないとされ,再審査とされた。しかし,同年7月3日の5回目の審査においても,その直前に懲罰が科されたことから,再審査とされた。さらに,同年10月2日の6回目の審査においても,懲罰事犯が繰り返され,行状が良好でないことから再審査とされ,平成9年4月9日の7回目の審査においても,同年2月に懲罰が科されたことから再審査とされた。 イ以上を前提として,原告が仮出獄の機会を受けられなかったことが,刑法28条に反して違法であるか否かについて判断する。 a 仮出獄を認めるか否かについては,仮釈放等に関する規則32条の判断基準に照らして,刑法28条に規定する「改悛の状」が認められるか否かを判断して決すべきであるところ,仮出獄の申請を行うか否かの審査に当たっても,このような基準に照らして合理的な審査が行われる限りにおいて,適法というべきであり,仮釈放委員会においても,このような観点から,前記アb(a)の諸要素を総合考慮して,申請を行うこととするか否かの判断を行っているものと解される。 しかるところ,原告は,前記1で認定したとおり,Kに入所して以来,職員に反抗するなどの規律違反行為を繰り返しており,所内生活の行状が著しく不良であって,「改悛の状」を認めることが到底困難な状況にあったといわざるを得ないのであるから,仮出獄の要件を満たしていないことは明らかである。 したがって,このような原告について,仮釈放委員会が前記アcの各審査において,仮出獄の申請を行うこととせず,所長も申請を行うこととしなかったことは,適正かつ合理的な判断であって,刑法28条に反して違法ということはできない。 b これに対し,原告は,外国人受刑者 出獄の申請を行うこととせず,所長も申請を行うこととしなかったことは,適正かつ合理的な判断であって,刑法28条に反して違法ということはできない。 b これに対し,原告は,外国人受刑者の刑の執行率が比較的低い実情を踏まえれば,仮出獄は,特に外国人受刑者にとって,法的に保護されるべき合理的な利益であり,その機会を奪うには,刑事事件に準ずべき保護が与えられる必要があるとしたうえで,懲罰を理由に仮出獄の機会を奪うことは,非常に重大で反復される違法行為があった場合に限定されるとし,原告の場合,仮に懲罰事由が存したとしても軽微な違反行為にすぎないから,このような懲罰の積み重ねにより原告に仮出獄の機会が認められなかったことは,刑法28条の趣旨に反して違法である旨主張する。 確かに,証拠(甲23,乙16,証人G,原告本人)によれば,原告が服役していた当時,外国人受刑者,特に日本人と異なる処遇を必要とする外国人であるF級受刑者については,一般的傾向として,他の受刑者と比較して,仮出獄を受ける割合が高いほか,刑の執行率も平均して低いことが認められる。 しかし,仮出獄の申請を行うか否は,前記のとおり,仮釈放委員会が関連諸事情を総合考慮したうえで仮出獄の申請の当否を審査し,所長がこれに基づいて決定するものであり,その判断が個々の受刑者における事情に応じて異なることは当然であって,外国人受刑者の刑の執行率等について上記のような一般的傾向が認められ,外国人受刑者の仮出獄が比較的早期に行われるという運用が行われていることが窺われるとしても,そのことから,仮出獄を受ける機会を得ることが法的に保護されるべき利益であるということはできない。 また,仮出獄の申請をするか否かの審査及び決定については ことが窺われるとしても,そのことから,仮出獄を受ける機会を得ることが法的に保護されるべき利益であるということはできない。 また,仮出獄の申請をするか否かの審査及び決定については,前記aのとおり,「改悛の状」の有無について,仮釈放等に関する規則32条の判断基準に照らして合理的な判断を行うべきであって,懲罰を理由として仮出獄の申請を行わない場合に限り,対象となる懲罰を一定の重大な違法行為に対するものに限定すべき合理的理由は見当たらないというべきであるから,原告が懲罰を理由として仮出獄の申請を受けられなかったとしても,刑法28条の趣旨に反するとはいえない。 したがって,原告の上記主張は,いずれも理由がないというべきである。 ウさらに,原告は,上記のとおり,仮出獄の機会を奪うには刑事手続に準ずべき保護が与えられる必要があるとしたうえで,弁護人選任権や刑事事件に準じた十分な防御の機会を与えられない懲罰手続によって,不当な懲罰を受けた結果,仮出獄の機会を奪われたことが,抑留,拘禁の要件等を規定した憲法34条,刑事被告人の権利を規定した憲法37条及びB規約14条3の各規定に違反し,違法である旨主張する。 しかしながら,仮出獄の審査に係る手続は行政手続であって,上記各規定が適用対象とする刑事手続とは異なる手続であり,実質的にも,仮出獄の機会が法的に保護されるべき利益とはいえない以上,仮出獄の申請に関する手続について,刑事手続に準ずべき厳格な手続保障が要請されていると解することはできないから,弁護人選任権や刑事事件に準じた防御の機会が与えられない手続によって懲罰が科されたとしても,そのことによって,懲罰を理由として仮出獄の申請が行われなかったことが上記各規定に反して違憲,違法となる ら,弁護人選任権や刑事事件に準じた防御の機会が与えられない手続によって懲罰が科されたとしても,そのことによって,懲罰を理由として仮出獄の申請が行われなかったことが上記各規定に反して違憲,違法となるものということはできない。また,原告に対する本件各懲罰が手続的にも実体的にも違法又は不当でないことは前記(3)ウのとおりであり,その他の原告に対する懲罰についても違法又は不当であることを認めるに足りる証拠はないから,これらの懲罰を理由に仮出獄の申請が行われなかったことが,違憲,違法であるということはできない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 3 争点7(故意又は過失の有無)について前記2(1)ないし(6)において検討したところによれば,原告が不法行為として主張する各行為については,本件戒具使用のうち,平成5年8月17日午後4時54分ころ,本件保護房内に寝具を用意した時点以降における革手錠及び金属手錠の使用についてのみ,違法であることが認められるところ,当時における原告の状況にかんがみれば,担当職員において,このような手錠の使用が違法であることを認識したうえで,手錠を解除することが可能であったということができる。 したがって,上記行為については,国の公権力の行使に当たる公務員であるKの職員が,その職務を行うについて,少なくとも過失によって違法に他人に損害を加えたときに該当するというべきである。 4 争点8(国家賠償法6条の「相互の保証」の要否及び有無)について(1) 国家賠償法6条の憲法適合性についてア国家賠償法6条は,「この法律は,外国人が被害者である場合には,相互の保証があるときに限り,これを適用する。」と規定し,外国人による国家賠償請求について相互主義の立場を明ら についてア国家賠償法6条は,「この法律は,外国人が被害者である場合には,相互の保証があるときに限り,これを適用する。」と規定し,外国人による国家賠償請求について相互主義の立場を明らかにしており,原告がアメリカ合衆国の国籍を有する外国人であることから,この規定の適用が問題となるところ,原告は,そもそも外国人による国家賠償請求を相互の保証がある場合に限定する同条の規定は,公の賠償請求権を定めた憲法17条に違反するほか,外国人の権利を何らの合理性もなく制限するものとして,法の下の平等を定めた憲法14条1項及び憲法98条2項の国際協調主義の精神に違反し,無効である旨主張する。 そこで,原告の上記主張について検討する。 イ憲法17条は,「何人も,公務員の不法行為により,損害を受けたときは,法律の定めるところにより,国又は公共団体に,その賠償を求めることができる。」と規定しており,同条の規定がその性質上我が国の国民のみを対象とするものということは相当でないものの,同条が「法律の定めるところにより」損害賠償を請求できる旨規定しており,同条に基づいて直ちに具体的な賠償請求権が生ずるものではないことからすれば,同条は,外国人による国家賠償請求について,必ずしも我が国の国民による国家賠償請求と同一の保障をしなければならないことを要請するものではなく,外国人による国家賠償請求について,我が国の国民による国家賠償請求とは異なる事情が認められる場合に,法律により特別の定めを設けて制約を加えることも,その内容が不合理なものでない限り,同条の規定に反しないものと解される。 そこで検討すると,国家賠償法6条が外国人による国家賠償請求を相互の保証のある場合に限定しているのは,我が国の国民に対して国家賠償によ ない限り,同条の規定に反しないものと解される。 そこで検討すると,国家賠償法6条が外国人による国家賠償請求を相互の保証のある場合に限定しているのは,我が国の国民に対して国家賠償による救済を認めない国の国民に対し,我が国が積極的に救済を与える必要がないという,衡平の観念に基づくものであり,外国人による国家賠償請求について相互の保証を必要とすることにより,外国における我が国の国民の救済を拡充することにも資するものということができる。 そうすると,外国人による国家賠償請求について相互の保証を要することとした国家賠償法6条の規定は,外国人による国家賠償請求に関する特有の事情に基づくものであり,その趣旨及び内容には,一定の合理性が認められるというべきである。 そして,今日の国際社会において,基本的人権の国際的な保障が重要となっていることにかんがみれば,立法政策における当否の問題としては,外国人による国家賠償請求について,我が国の国民と平等の保障を及ぼすものとすることも,十分検討に値するというべきであるが,このことから,国家賠償法が外国人による国家賠償請求について相互主義を採用したことが,直ちに不合理であるとまでは解することができないというべきである。 したがって,外国人による国家賠償請求を相互の保証のある場合に限定した国家賠償法6条の規定が,憲法17条に違反するものということはできない。 ウまた,憲法14条1項は,「すべて国民は,法の下に平等であって,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない。」と規定しているところ,この規定の趣旨は,特段の事情の認められない限り,外国人に対しても類推されるべきものと解される(最高 的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない。」と規定しているところ,この規定の趣旨は,特段の事情の認められない限り,外国人に対しても類推されるべきものと解される(最高裁判所昭和39年11月18日大法廷判決・刑集18巻9号579頁)。 しかしながら,憲法14条1項は,合理的理由のない差別を禁止する趣旨の規定であって,法律の規定において,各人に存する経済的,社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは,その立法趣旨が合理的根拠を欠くとか,立法趣旨に照らして合理的な内容とはいえない区別であって,不合理な差別であると認められる場合でない限り,同項の規定に違反しないというべきである。 そして,国家賠償法6条が外国人による国家賠償請求について相互の保証を要することとした趣旨は,前記イのとおりであり,その趣旨及び内容に一定の合理性が認められることからすれば,同条の規定が憲法14条1項に違反するということはできない。 エさらに,原告は,国家賠償法6条の規定が,国際協調主義の精神に反する旨主張するが,同条の規定が外国人による国家賠償請求について一定の制限を加えることに合理的な理由のあることは前記のとおりであって,直ちに上記国際協調主義の精神に反するものとはいえないから,上記主張は失当である。 (2) 国家賠償法6条のB規約適合性についてア原告は,外国人による国家賠償請求を相互の保証のある場合に限定した国家賠償法6条が,B規約2条1及び3,7条並びに26条に違反し,無効である旨主張する。 イしかしながら,我が国は,憲法の秩序の下においてB規約を批准し,B規約が国内法としての効力を有することを受容したものであっ 1及び3,7条並びに26条に違反し,無効である旨主張する。 イしかしながら,我が国は,憲法の秩序の下においてB規約を批准し,B規約が国内法としての効力を有することを受容したものであって,法の下の平等ないし差別を禁止したB規約2条1及び26条の規定の文言は,いずれも憲法14条1項の規定よりも具体的かつ詳細ではあるものの,B規約の上記各規定が保障する権利の性質,内容及び範囲自体は,憲法14条1項の規定が保障するものと異なるものではなく,その範囲を超えるものでもないと解される。 したがって,前記(1)ウのとおり,国家賠償法6条が憲法14条1項に違反しない以上,国家賠償法6条の規定は,B規約2条1及び26条に違反しないというべきである。 ウまた,B規約2条3(a)は,「この規約において認められる権利又は自由を侵害された者が,公的資格で行動する者によりその侵害が行われた場合にも,効果的な救済措置を受けることを確保すること。」と規定しているところ,上記のとおり,国家賠償法6条の規定は,B規約2条1及び26条に違反しないから,この点を理由として,「この規約において認められる権利又は自由を侵害された」場合に該当するということはできず,B規約2条3(a)に違反するということもできない。 さらに,B規約7条は,「何人も,拷問又は残虐な,非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。」と規定しているところ,原告に対する革手錠及び金属手錠の使用のうち,前記のとおり違法と認められる一部について,同条の規定に該当するとしても,外国人である原告による国家賠償請求について,相互の保証の存在を条件とすることが,直ちにB規約2条3(a)に違反するということはできず,B規約7条に違反するということ ,同条の規定に該当するとしても,外国人である原告による国家賠償請求について,相互の保証の存在を条件とすることが,直ちにB規約2条3(a)に違反するということはできず,B規約7条に違反するということもできない。 エ以上によれば,国家賠償法6条がB規約に違反するということはできず,無効であるということもできない。 (3) アメリカ合衆国における「相互の保証」の有無について以上のとおり,国家賠償法6条の規定は,憲法及びB規約に違反して無効であるとはいえないから,原告が国家賠償法の適用を受けるためには,アメリカ合衆国と我が国の間において,同条に規定する「相互の保証」が存することが必要である。そこで,その存否について検討する。 ア証拠(甲16,31,40の1・2,乙18)及び弁論の全趣旨によれば,次のとおり認めることができ,これに反する証拠はない。 a アメリカ合衆国においては,連邦制が採用され,刑務所の運営主体も連邦,州,郡,市等,多岐に分かれているところ,連邦市民権法(42 U.S.CodeSection 1983)は,連邦及び州の公務員による憲法上の権利の侵害に対する民事的請求を認めており,公務員による過度の強制力の行使は,憲法上の権利の侵害に該当することから,同法による救済の対象となる。 b 連邦市民権法の下では,公務員の故意による権利侵害行為についての責任のみが認められており,過失による行為の責任は,そのような責任を認める州の法律の存在を前提として認められるにすぎないものの,公務員が民事責任を問われた際,善意による免責の抗弁が認められ,過度の有形力の行使が主張された場合における善意による免責の抗弁は,公務員が当該状況下において必要な有形力しか行使していなかっ ものの,公務員が民事責任を問われた際,善意による免責の抗弁が認められ,過度の有形力の行使が主張された場合における善意による免責の抗弁は,公務員が当該状況下において必要な有形力しか行使していなかったと主張することを意味しており,かかる立証ができない場合には,善意による免責が認められないこととなる。 c また,上記の責任は,公務員個人に対する責任であって,各州においては,主権免責の概念が認められている場合もあるが,主権免責を放棄したり,免責制限を図る州も存在する。また,公務員個人が責任を負う場合においても,政府が通常当該公務員に弁償することとされており,公務員の行動の原因が政府によって十分な指導,監督等が行われていなかったことにあると証明された場合には,政府自体の法的責任が認められる可能性もある。 そして,実際にも,市の刑務所で暴行を受けた受刑者に対して,市や郡が賠償金を支払った事例が存在する。 イまた,アメリカ合衆国憲法修正14条が,法の平等な保護を保障していること(甲16)からすれば,上記の保護は,これを制限する旨の特別の規定がない限り,外国人に対しても及ぶものと推認されるところ,このような特別の規定が存することを認めるに足りる証拠はない。 ウa 以上によれば,我が国の国民がアメリカ合衆国において,本件で違法と認められた行為と同様の加害行為を公務員から受けた場合には,当該公務員に損害賠償を請求することが可能であるほか,刑務所の運営者である州,市等に対して直接損害賠償を請求できる場合もあり,これらの運営者に対して直接損害賠償を請求できない場合であっても,最終的にはこれらの運営者の拠出により損害賠償金の支払を受けることができる点で,我が国における国家賠償請求と同等の効果の救済を あり,これらの運営者に対して直接損害賠償を請求できない場合であっても,最終的にはこれらの運営者の拠出により損害賠償金の支払を受けることができる点で,我が国における国家賠償請求と同等の効果の救済を得ることができることが一応認められるところ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 b そして,各国の法制のあり方に差異があり,民事上の請求に関する要件,効果,請求手続等について,我が国の場合と比較することには必ずしも容易でない面が存する以上,相互の保証を厳密に求めた場合には,国際的な人権保障の観点から不合理,弊害が生じるおそれがあることは否定できないのであって,特に本件の場合,アメリカ合衆国が連邦制を採用している国家であり,かつ,いわゆる判例法国であって,我が国とは著しく異なる法制度を有する国であることにもかんがみれば,被告が主張するとおり,憲法及び連邦市民権法に基づく裁判上の救済について,損害賠償よりも適法な職務の執行や違法な職務執行の差止めを求める例が多いこと,上記アcの損害賠償に関する実例が安全配慮義務に基づくものであること等の事実が認められたとしても,上記aの事情が認められることをもって,国家賠償法6条に規定する「相互の保証」が存するものと解することが相当というべきである。 エよって,原告による本件請求は,国家賠償法1条1項の適用を受けるものといわなければならない。 5 争点9(損害の有無及び額)について原告は,前記の行為によって,革手錠及び金属手錠を両手後ろの方法により併用されたまま,保護房内で一晩を過ごすことを余儀なくされたものであり,相当の精神的,肉体的苦痛を被ったことは推察するに難くないところ,上記の苦痛に対する慰謝料の額としては,本件に現れた諸般の事情を考慮し,50万円をもって相当と 過ごすことを余儀なくされたものであり,相当の精神的,肉体的苦痛を被ったことは推察するに難くないところ,上記の苦痛に対する慰謝料の額としては,本件に現れた諸般の事情を考慮し,50万円をもって相当とすべきである。 また,原告は,本件訴訟の追行を原告訴訟代理人弁護士らに依頼したところ,本件訴訟における認容額及び追行の難易,とりわけ原告が日本語を十分に理解しないことによる意思疎通や文書の翻訳における手数等を考慮すれば,上記不法行為と相当因果関係のある原告の損害としての弁護士報酬の額は,10万円と認めるのが相当である。 第4 結論以上の次第で,原告の請求は,主文記載の限度で理由があるが,その余は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官市村陽典裁判官森英明裁判官馬渡香津子
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