主文 原判決を破棄し、本件を大阪高等裁判所に差し戻す。理由 上告代理人塩見米蔵の上告理由について。原審の確定するところによれば、第一審被告Dと訴外E信用組合との間に締結された本件物件に対する代物弁済予約は、右Dが右信用組合から借り受けた七〇〇万円の債務を担保するために締結されたものであつて、債務者が弁済期に債務の弁済をしないときは、債権者において、目的不動産を換価処分し、これによつて得た金員から債権の優先弁済を受け、残額があればこれを債務者に返還する趣旨の債権担保契約であり、上告人は、右代物弁済予約に基づく右信用組合の所有権移転請求権保全の仮登記経由後、本件物件について右Dに対する貸金債権のため、第一審判決別紙一覧表三記載のとおり代物弁済予約ならびに停止条件付賃貸借契約を締結したというのである。ところで、被上告人は、本訴において、右信用組合から右債権および代物弁済予約上の地位を譲り受け、Dに対して、債務の不履行を理由に代物弁済予約完結の意思表示をしたと主張し、同人に対して仮登記に基づく本登記手続を求めるとともに、上告人に対して石本登記につき承諾を求めているのに対し、上告人は、前記のような債権担保契約において、同人のような後順位権利者に対して本登記の承諾を求めるにあたつては、債権者たる被上告人は、目的不動産の評価額と自己の債権額との差額のうち、上告人の債権額にみつるまでの金員を上告人に支払うことを要し、上告人はその支払を受けるまで本登記承諾義務の履行を拒絶する旨主張して争つているものであるところ、原判決は、上告人の右抗弁に対し、この場合においても、目的不動産に対する後順位抵当権者が右残額のうち自己の被担保債権に相当する金員の支払を直接債権者に請求しうるものとは即断できないのみならず、そ ろ、原判決は、上告人の右抗弁に対し、この場合においても、目的不動産に対する後順位抵当権者が右残額のうち自己の被担保債権に相当する金員の支払を直接債権者に請求しうるものとは即断できないのみならず、そもそも右の- 1 -如き残額を生ずるか否か、およびその額は、代物弁済に基づく目的物件の換価処分がなされた後にはじめて確定するものであつて、右の換価処分のためには、まず、本件物件について所有権移転登記のなされることが先決であるから、右の残額の支払義務と上告人の本登記の承諾義務とが同時履行の関係に立つという上告人の抗弁は、それ自体理由がないとして、これを排斥し、被上告人の前記請求を認容しているのである。 そも右の- 1 -如き残額を生ずるか否か、およびその額は、代物弁済に基づく目的物件の換価処分がなされた後にはじめて確定するものであつて、右の換価処分のためには、まず、本件物件について所有権移転登記のなされることが先決であるから、右の残額の支払義務と上告人の本登記の承諾義務とが同時履行の関係に立つという上告人の抗弁は、それ自体理由がないとして、これを排斥し、被上告人の前記請求を認容しているのである。しかしながら、前記原判示の如き債権担保契約としての性格をもつ代物弁済の予約において、予約権者が登記上利害関係を有する第三者に対して本登記の承諾を求める場合には、その者らが目的不動産に対する後順位抵当権者その他債務者から右物件の交換価値よりその有する債権について優先弁済を受ける地位を取得したもの(以下これを後順位債権者という。)であるときは、予約権者は、それらの利害関係人の地位に応じて、それとの間に清算をなすべき義務を負うものであり、清算金は、それらの者の債権額および優先順位に応じて、それらの者にその一部または全部が交付されるべきであつて、このような登記上の利害関係人は、右本登記手続についての承諾請求に対しては、みずから清算金の支払を受けるべき地位を有し、その支払と引換えにのみ承諾義務の履行をすべき旨を主張しうるものと解すべきであつて、このことは既に当裁判所の判例とするところである(昭和四四年(オ)第一七五号、同四五年八月二〇日第一小法廷判決参照。)。しかして、原審の前記認定事実によれば、本件において、上告人は前記の後順位債権者に該当するものと 裁判所の判例とするところである(昭和四四年(オ)第一七五号、同四五年八月二〇日第一小法廷判決参照。)。しかして、原審の前記認定事実によれば、本件において、上告人は前記の後順位債権者に該当するものとみられるから、被上告人としては、本件物件に関する後順位債権者のうち、上告人より先順位の債権者があれば、それに対して清算金を順次支払つたうえ、なおその残額があれば、そのうち上告人の債権額に相当する金員を同人に直接支払うべく、上告人はその支払を受けるのと引換えにのみ本件本登記承諾義務の履行をすべきことを主張しうべきものといわなければならない。したがつて、これと異なる見解のもと- 2 -に、上告人の右抗弁を排斥した原判決は、右債権担保契約の清算に関する法令の解釈適用を誤つたものというべきであり、この違法は原判決の結論に影響することが明らかであるから、論旨はこの点において理由があり、原判決は破棄を免れない。 直接支払うべく、上告人はその支払を受けるのと引換えにのみ本件本登記承諾義務の履行をすべきことを主張しうべきものといわなければならない。したがつて、これと異なる見解のもと- 2 -に、上告人の右抗弁を排斥した原判決は、右債権担保契約の清算に関する法令の解釈適用を誤つたものというべきであり、この違法は原判決の結論に影響することが明らかであるから、論旨はこの点において理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、本件はさらに右の点について審理する必要があるから、これを原審に差し戻すのが相当である。よつて、民訴法四〇七条を適用して裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官岩田誠裁判官入江俊郎裁判官長部謹吾裁判官大隅健一郎裁判官藤林益三- 3 -
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