昭和54(オ)1386 損害賠償

裁判年月日・裁判所
昭和57年3月30日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 名古屋高等裁判所 昭和49(ネ)221
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。      上告費用は上告人らの負担とする。          理    由  上告代理人平田省三の上告理由第一点、第二点及び第七点について  所論の点に関

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判決文本文1,957 文字)

主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人らの負担とする。 理由 上告代理人平田省三の上告理由第一点、第二点及び第七点について所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、是認することができ、右事実関係のもとにおいて、被上告人の不法行為責任及び債務不履行責任は認められないとした原審の判断は正当であつて、その過程に所論の違法はない。論旨は、いずれも採用することができない。 同第三点について原審が認定した事実の要旨は、(1) 上告人Aが出生した昭和四四年一二月当時、新生未熟児の観護療養に当たる小児科、産科、眼科医としては、未熟児網膜症(以下「本症」という。)の治療のためにはその活動期の初期(オーエンスの分類のⅠ期、Ⅱ期)に酸素濃度の適正管理を行い、副腎皮質ホルモン剤、ビタミン剤等を投与することが臨床医家の間でのほぼ共通した方法であつたが、オーエンスⅣ期以上に進行した場合には右の治療法も効果はなく、病状の進行を確実に阻止する方法は存しないとされていた、(2) 原審口頭弁論終結の昭和五三年六月当時においては、本症の治療法としての副腎皮質ホルモン剤等の薬物療法は、副作用を伴う危険の方が大きいこと及び自然治癒との区別がつきにくいところから積極的な治療効果があると確認されるに至つていないこと等の理由により、本症の研究者ないし臨床医家の間では殆ど支持されなくなつていた、というのであり、右事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして、肯認することができる。 右事実関係のもとにおいては、被上告人の経営する総合病院D病院の眼科医Eのステロイドホルモン剤投与の時期が遅きに失したか杏かについて論ずるまでもなく、- 1 -右の点に関する同医師の診療上の過失責任を認めなかつた原審の判断 、被上告人の経営する総合病院D病院の眼科医Eのステロイドホルモン剤投与の時期が遅きに失したか杏かについて論ずるまでもなく、- 1 -右の点に関する同医師の診療上の過失責任を認めなかつた原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。 同第四点、第五点及び第六点について原審が認定した事実の要旨は、(1) E医師が上告人Aの診療に当たつていた昭和四五年初めにおいては、光凝固法は、本症についての先駆的研究家の間で漸く実験的に試みられ始めたという状況であつて、一般臨床眼科医はもとより、医療施設の相当完備した総合病院ないし大学医学部附属病院においても光凝固治療を一般的に実施することができる状態ではなく、患児を光凝固治療の実施可能な医療施設へ転医させるにしても、転医の時期を的確に判断することを一般的に期待することは無理な状況であつた、(2) 光凝固治療の実施時期を的確に判断するためには眼底検査が必要であるところ、未熟児の眼底検査は、眼底の未熟性という検査対象の特殊性からいつても特別の訓練を要する特殊作業であつて、本件当時における未熟児の眼底検査についてのE医師の技術水準は、平均的眼科医のそれよりは進んでいたとはいうものの、本症の専門的研究者には到底及ばなかつた、(3) 上告人Aの本症の病変は、当時の専門家にも未知な複雑な臨床経過を示した、(4) E医師が上告人Aの眼底検査をしたのは、光凝固治療を目的とするものではなく、副腎皮質ホルモンの投与の時期を見はからうために実施したものである、というのであり、右事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして肯認することができる。 思うに、人の生命及び健康を管理すべき業務に従事する者は、その業務の性質に照らし、危険防止のため実験上必要とされる最善の注 あり、右事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして肯認することができる。 思うに、人の生命及び健康を管理すべき業務に従事する者は、その業務の性質に照らし、危険防止のため実験上必要とされる最善の注意義務を要求されるが(最高裁昭和三一年(オ)第一〇六五号同三六年二月一六日第一小法廷判決・民集一五巻二号二四四頁参照)、右注意義務の基準となるべきものは、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準であるから、前記事実関係のもとにおいて、所論の- 2 -説明指導義務及び転医指示義務はないものとしたうえ、被上告人の不法行為責任及び債務不履行責任は認められないとした原審の判断は正当であつて、その過程に所論の違法はない。論旨は、いずれも採用することができない。 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官横井大三裁判官環昌一裁判官伊藤正己裁判官寺田治郎- 3 -

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