【DRY-RUN】主 文 被告人A1同A2に関する各原判代を破棄する。 被告人A1同A2を各懲役一〇月に処する。 ただし、被告人両名に対し、この裁判確定の日から三年間、いずれも右 刑
主文 被告人A1同A2に関する各原判代を破棄する。 被告人A1同A2を各懲役一〇月に処する。 ただし、被告人両名に対し、この裁判確定の日から三年間、いずれも右刑の執行を猶予する。 被告人A2から金七五、〇〇〇円を追徴する。 被告人A1の事件に関する原審訴訟費用の全部及び当番証人A2、当番国選弁護人南出一雄に支給した分は被告人A1の負担とし、被告人A2の事件に関する原審訴訟費用の全部及び当審証人A1に支給した分は被告人A2の負担とし、当審証人B1同土B2同B3に支給した分は被告人両名の負担とする。 理由 検察官吉安茂雄の陳述した控訴趣意は、記録に編綴の名盛岡地方検察庁一関支部検察官事務取扱検事佐藤鶴松名義の控訴趣意書の記載と同じであり、これに対し被告人A1の弁護人南出一雄、被告人A2の弁護人吉田政之助の陳述した答弁は同じく各同弁渡人名義の答弁書の記載と同じであるから、いずれもこれを引用する。 被告人A1に関する控訴趣意について。 原判決は、被告人A1に対する公訴事実中、被告人A1はa村の役場庁舎の新改築、分教場の増築、診療所の新築等の工事を請負つたが、同工事に関しa村村長として工事請負人の銓衡指定、請負契約の締結、工事の監督、出来高証明の承認、工事代金支出の決裁、及び工事に使用する村有林の特売等右各工事施行に関する事務全般を処理していた被告人A2に対し、昭和二八年八月一六日頃同役場旧庁舎宿直室で、お盆につき工事請負代金内金を早く且つ多額に支払つれたい旨依頼し、その報酬として二万円、同年九月二二日頃同役場構内石造倉庫裏で、診療所工事の特命請負人に指定したことに対する謝札及びその建築資材として同村村有林の特売につき便宜な取扱をされたい旨依頼しその報酬を含めて二万 酬として二万円、同年九月二二日頃同役場構内石造倉庫裏で、診療所工事の特命請負人に指定したことに対する謝札及びその建築資材として同村村有林の特売につき便宜な取扱をされたい旨依頼しその報酬を含めて二万五千円、同年一一月一七日頃前記宿直室で、右村有林の特売をうけたこと及びこれまで右各工事につき便宜な取扱をうけたことに対する謝礼として三万円を各供与し、もつて被告人A2の職務に関し贈賄したとの事実につき、無罪の言渡しをしている。その理由とするところは、右事実につき被告人A1は頭初から自白しているが、被告人A2は極力否認するところで、その補強証拠としてC、D、B1の各検察官に対する供述調書等があるが、C以外のものはA1の発言を内容とするもので、Cの供述を加えても到底補強証拠を具備する自白とは認められず、他に補強証拠の実をみたす証拠なく、結局犯罪の証明がないことに帰するというにある。 ところで自白を補強すべき証拠は必ずしも自白にかかる犯罪構成事実の全部にわたつてもれなくこれを裏付けするものでなければならぬことはなく、自白にかかる事実の真実性を保障し得るものであれば足りるのであり、かつそれは情況証拠で差支なく、また自白と補強証拠と相まつて全体として犯罪事実を認定し得られれば十分であつて、被告人の自白した犯罪事実が架空のものではなく、現実に行われたものであることを証するものであれば足りるのである。 <要旨>本件において、被告人A1は捜査から公判を通じて終始一貫して公訴事実のとおり被告人A2に贈賄した</要旨>ことを自白しており、その捜査から原審公判更には当審公判終結に至るまでの長い過程において、その供述内容に矛盾するところなく、虚偽の事実を無理に作為して述べていることを疑わしめるものは存しない。そして、その自白に対する補強証拠としては、本件授受金員が 公判終結に至るまでの長い過程において、その供述内容に矛盾するところなく、虚偽の事実を無理に作為して述べていることを疑わしめるものは存しない。そして、その自白に対する補強証拠としては、本件授受金員が賄賂であることにつき、被告人A1や代理人E等が被告人A2に対し役場庁舎新築工事請負代金内金の早期且つ多額の支払方を何回も頼み、本件お盆の下金も被告人A1が同様頼み込んだ事実、被告人A2が被告人A1に対し工事監督者の忠告を受けながら敢て出来高証明なしに役場庁舎新築工事請負代金下金を前後数回に亘り支払い、本件お盆の下金も早期かつ多額に計百五十万円支払つた事実、被告人A1は被告人A2に対し本件診療所工事の特命請負及び村有林の特売を頼みこんだ事実、被告人A2は診療所工事を被告人A1に請負わせることが無理であると知りながら敢てこれを被告人A1に対し特命で請負わせ、又被告人A1に対し安い単価で村有林の特売をなした事実、右特命請負が付議会で問題となり、被告人A2は右請負契約の解約を論議させる協議会を招集しながら、自らはその間出張留守にして被告人A1を旅館に招き村議会の空気を教えて工事の促進をはかつた事実、被告人A1側の工事関係者の間に当時贈賄しなければ仕事にならないという空気が満ちていて、被告人A1は部下に対しF、Gの両有力議員に適当にやつておけと言つていた事実、被告人A2が村長として工事請負人の銓衡指定、請負契約の締結、工事の監督、出来高証明の承認、工事代金支出の決裁、及び工事に使用する村有林の特売等右各工事施行に関する事務全般を処理していた事実、以上の各事実をそれそれ証明する証拠があり、本件金員の授受につき、右金員の出所は当時被告人A1がH鉱業所工事及びb村診療所工事を請負つていて、その各工事代金が支払われこれを人夫賃、建築資材等に支払つた残りを妻C それそれ証明する証拠があり、本件金員の授受につき、右金員の出所は当時被告人A1がH鉱業所工事及びb村診療所工事を請負つていて、その各工事代金が支払われこれを人夫賃、建築資材等に支払つた残りを妻Cに預けておき、本件各a村に赴く時妻から貰つて行つたものである事実、本件各金員授受の日時及び場所で被告人A1が被告人A2に会つていた事実、被告人A2が昭和二八年一一月頃から翌年五月頃にかけ屋根替え及び台所改造工事を行つた事実、以上の各事実を証する証拠が存するのである。右に徴すれば、被告人A1の自白にかかる犯罪事実の真実性を保障するに足る補強証拠があるものと認められる。 そこで、右補強証拠の内容を概観するに(一) 本件授受金員が賄賂であることにつき(1) 被告人A1や代理人E等が被告人A2に対し役場庁舎新築工事請負代金下金の早期且つ多額の支払方を何回も頼み、本件お盆の下金も被告人A1が同様頼みこんだ事実被告人A1の自白は、「工事下金の早期支払をうけるについては、六月一〇日頃(昭和二八年)私とEとIの三人で村長の自宅にお願いに行き、その後Eが何度も村長にお願いしたが、私が直接再びお願いに行つたのはお盆の持で(四五三丁裏)、八月一六日頃で旧七月の山車の出た翌日役場旧庁舎に村長を訪ね、宿直室へ行き、誰もいないところで、『いつもお世話になつているが、お盆でもあるし、出来高の百パーセント見て貰いたい』と頼むと、村長は『俺も心得ている』と言つたので、これを機会に『お孫さんにやつてくれ』と言つて、二万円の裸の札束を村長の上衣の横ポケツトに押しこんでやつた(四二五丁裏乃至四二七丁裏)」というのである。 これに対し、Iの検察官に対する供述調書に、「右の如く三人で村長宅へ下金のことで頼みに行き、その外EやA1が何度も役場に村長を訪ねて頼んだ」旨(二九八 二五丁裏乃至四二七丁裏)」というのである。 これに対し、Iの検察官に対する供述調書に、「右の如く三人で村長宅へ下金のことで頼みに行き、その外EやA1が何度も役場に村長を訪ねて頼んだ」旨(二九八丁ノ一)、J(助役)の検察官に対する供述調書に「八月一五日上棟式があり、その頃お盆で、人夫賃の支払を責められて困つているからなんとか出してくれと、A1自身も私と机を並べている村長のところへお願いに来たのを知つており、お盆の下金で二、三回来たと覚えている」旨(二六三丁表裏)の供述記載がある。被告人A2も、検察官に対する供述調書謄本で、A1から工事下金につき再三懇願があつたことを認めている(五一七丁表乃至五一八丁表)。 (2) 被告人A2が被告人A1に対し工事監督者の忠告を受けながら敢て出来高証明なしに役場庁舎新築工事請負代金下金を前後数回に亘り支払い、本件お盆の下金も早期かつ多額に計百五十万円支払つた事実被告人A1の自白は「八月二〇日工事下金三〇万円出たとの知らせを聞いてa村へ赴き、人夫賃等経費を支払い、翌二一日役場へ行つて村長から更に下金五〇万円(一五〇万円だが、立替金や山代金を差引かれた手取金)を受取つてお盆の会計一切をすませたが、工事進捗の状況は三割程度で、その前に二回に一〇〇万円の下金を貰つており、合わせて一八〇万円の下金は出来高の百パーセントを上廻つていることは確かで、いかに贈つた二万円が役立つたかわかる(四二八丁表裏、四二九丁表、四四七丁表)」というのである。 これに対し、K(収入役)の検察官に対する供述調書(二六六丁裏、二六七丁表)及び請求受領証綴(証九号)によれば、昭和二八年六月一五日六〇万円、同年七月一日六〇万円、八月三日六〇万円、八月一九日三〇万円、八月二一日一五〇万円、九月一四日二方六〇〇〇円、九月二二日一三三万二六八 び請求受領証綴(証九号)によれば、昭和二八年六月一五日六〇万円、同年七月一日六〇万円、八月三日六〇万円、八月一九日三〇万円、八月二一日一五〇万円、九月一四日二方六〇〇〇円、九月二二日一三三万二六八九円、一一月二日二〇万八四二七円、一二月二九日二八万二八八四円、計九回合計五四〇万円のうち、八月三日、一九日、二一日の三回計二二〇万円は一応の出来高証明があるが、他の六回計三二〇万円は出来高証明なしで支払つた事実が明瞭である。しかも、工事監督者であつたLからA2村長宛の手紙(証六号)によれば、七月三日附で村長に対し、工事下金を絶対過払いしないようした方がよい旨忠告がなされているのである。被告人A2も、検察官に対する供述調書謄本で、右事実を大体自認しており、契約よりも早期にしかも出来高の八割以上も支払つてやる必要はなかつたが、A1に余り懇願されたので支払つたと述べ、A1の場合かかる前払いすることは危険だと忠告されたことも認めているのである(五三〇丁表乃至五三三丁表、五四二丁裏、五四三丁表)。 (3) 被告人A1が被告人A2に対し本件診療所工事の特命請負及び村有林特売を頼みこんだ事実被告人A1の自白は「診療所の特命請負についても、九月一〇日頃F議員を訪ねて同人から一応村長が提案者になるのだから渡りをつけておけといわれたので、村長のところへ行つてお願いすると、村長は一応歎願書を出してくれれば合法的にうまくゆくという話で、その時村長が君の考えようで俺だつてどうにもなるのだと暗にほのめかしたのであり(四六一丁裏乃至四六二丁裏)、九月一九日か二〇日頃の村議会で診療所工事の特命請負が自分にきまつたので、特に診療所建築資材として村有林の払下げを受けたいと考え、九月二二日頃役場庁舎工事現場を私と村長で視察していた時、診療所工事の請負を特命にして貰つたお礼 会で診療所工事の特命請負が自分にきまつたので、特に診療所建築資材として村有林の払下げを受けたいと考え、九月二二日頃役場庁舎工事現場を私と村長で視察していた時、診療所工事の請負を特命にして貰つたお礼を述べ、その建築資材として村有林を払下げて貰いたいと願つたところ、村長は歎願書を出してみたらよかろうと言つてくれ、その時石造倉庫の裏の誰もいない所へ誘つて、二方五〇〇〇円の札束を村長の上衣のポケツトに押しこんでやると、村長はいやあと言つて受取つてくれた(四三〇丁裏乃至四三二丁表)」というのである。 これに対し、昭和二八年度村会議事録(証八号)によれば、九月一九日開かれた一六回臨時村議会議事録に、議長からA1より診療所工事の特命請負に関する請願書が出ている旨、F議員から右請願につき特命請負が適当である旨及び特命請負が議決された旨、一〇月一九日開催の一八回臨時村議会議事録に、A2村長から村有林特売につきA1請負人よりの要請もあつて云々の発言、及び特売が議決された旨の各記載がある。被告人A2も、検察官に対する供述調書謄本で、A1を九月二〇日頃診療所工事の特命請負人にしたが、それは同人から執拗な懇願があつたため断りきれず、自分から村議会に提案して議決して貰い(五一八丁表)、村有林の払下もA1の方から要求されて払下げることにした(五一八丁裏)と述べている。 (4) 被告人A2が診療所工事をA1に請負わせることが無理であると知りながら敢てこれを被告人A1に対し特命で請負わせ、又村有林を被告人A1に対し安い単価で特売した事実被告人の自白は前記自白及び「村長に前記二方五〇〇〇円を贈つた結果一〇月中旬頃の村議会で村有林の払下が議決され、しかも予定の五百石以上に三百石も多く八百石近く払下になつたが、診療所の木材もタツプリ払下をうけたほかすべて自分の思うとお 記二方五〇〇〇円を贈つた結果一〇月中旬頃の村議会で村有林の払下が議決され、しかも予定の五百石以上に三百石も多く八百石近く払下になつたが、診療所の木材もタツプリ払下をうけたほかすべて自分の思うとおり行つたので、それについて村長に今まで便宜をはかつてくれたお礼をしなければならないし、将来の工事下金についても便宜な取扱をうけたい気持もあつて、一一月一七日頃前記役場旧庁舎宿直室で村長に対し世間話やお札を言つたあとで、村長か診療所の特命請負や村有林の特売で村会の反対派から色々文句を言われて困つたというような話をはしめた機会に『えらい目に遭つて大変でしょう、なにもないから』と言つて、用意の三万円の裸の札束を村長の前に差出すと、いやあそんなことをしていいのかと言つたが、別に断りもせず、手を出して受取つた(四三二丁裏乃至四三四丁裏)」というのである。 これに対し、前記LのA2村長宛手紙(証六号)には「組の内容は悪く、特に金銭的には資力もないし頼りにならないよう話されている」旨の記載があり、J(助役)の検察事務官に対する供述調書に「A1は前述のような業者なので、診療所工事にはとても駄目だと私は考えていたが、三日ばかり出張して帰ると、村長が診療所工事をA1に特命で請負わしており意外に思つた次第で、A1から村長と議長宛に請願書が出されてあつた」旨(二五六丁裏、二五七丁表)、M(議長)の検察事務官に対する供述調書に「A1は資本のない者で本来ならば診療所工事を引続きA1に請負わせられない事情にあつた」旨(二三三丁表)の供述記載がある。被告人A2自身も、検察官に対する供述調書謄本によれば、A1は余りよい業者ではないと判つていたが、余りA1に懇願されたので、診療所工事の特命請負人にすることに決心して、歎願書を村議会に提出するよう話し、自分から村議会に提案して議決 供述調書謄本によれば、A1は余りよい業者ではないと判つていたが、余りA1に懇願されたので、診療所工事の特命請負人にすることに決心して、歎願書を村議会に提出するよう話し、自分から村議会に提案して議決して貰つたものであること(五一七丁裏、五二九丁裏)を認めており、特命請負というのは随意契約のことで、それは村長の一存で請負人をきめ村議会の承認を得て契約するもので(五二七丁表)、請負人の信用と技術を第一に考えねばならないが、A1に資力がなく信用のないことが既に判つていたのに、役場庁舎の工事で損をしたからその埋合わせをさせてくれというA1の懇願に乗つたのが悪かつた旨(五四二丁表乃至五四三丁表)認めているのである。そして、前記村議会議事録(証八号)によれば、一〇月一九日開催の一八回臨時村会議事録に、杉立木約四三〇石、松立木約五〇〇石を特売、価格石当り二千円で可決された旨の記載があり、M(議長)の検察事務官に対する供述調書に「村有林の特売は村長の提案で議会で議決したが、これに対し村民から公売にすべきであつて特売にすべきでないという非難はあつた」旨(二三四丁裏)、K(収入役)の検察事務官に対する供述調書に、「村有林払下の単価がむやみに安いので変に思い、村長に対しこんな安い単価で大丈夫かときくと、議会で議決したことたと言つたが、自分は余りにも安い単価だと不審に思つた」旨(二六八丁表裏)の供述記載がある。 (5) 右特命請負が村議会で問題となり、被告人A2は右請負契約の解約を論議させる協議会を招集しながら、自らはその間出張留守にして被告人A1を旅館に招き村議会の空気を教えて工事の促進をはかつた事実被告人A1の自白は「一二月六日私は盛岡のN旅館に呼出されて、村長とF、G両議員のいる所で、村長から『役場や診療所の工事をはやくやつて貰いたい、診療所の方は の空気を教えて工事の促進をはかつた事実被告人A1の自白は「一二月六日私は盛岡のN旅館に呼出されて、村長とF、G両議員のいる所で、村長から『役場や診療所の工事をはやくやつて貰いたい、診療所の方は議員達が解約するとかなんとか騒いでいるから、八日が村会だからよく話してこい』といわれたが、あとで判つたところによると、村長はその時助役等に対してはA1を解約したい意向だと言つていた由で、いかに村長が立廻りの上手な人であるかに驚いた(四四二丁表裏、四五一丁表裏)」というのである。 これに対し、Gの検察官に対する供述調書には、「議会でもあんな者を診療所に請負わせたのは間違いだと騒ぎ出す事件があり、村会の協議会で今後は下金の支出を厳重にして村が工事の全部にタツナしてやらせることにした」旨(二四八丁表)、Fの検察官に対する供述調書に、「一二月初頃村長や私がA1を盛岡のN旅館に呼んで工事の能率をあげるよう責めたことがあり、そこで解約のことまで話したような記憶はない」旨(二四二丁表)、Jの検察官に対する供述調書に「一二月八日診療所工事解約の協議会については同月四日頃招集状を出した記憶があり、村長も出席する筈であつたが、急に青森への出張て出席せずに、協議事項を書いて置いて行き、診療所工事を解約するよう協議会を導いて貰いたいと言つており、それは監査委員から役場庁舎や診療所の工事を急ぐよう言われていたためである」旨(二六四丁表裏)、Mの検察官に対する供述調書に「一二月八日村会協議会でA1の診療所工事の請負解約が協議された時、村長が何のためか出張不在で、考えようによつては村長が逃出したともみられ、村長が本当に解約の肚であつたか疑わしいとも考えられ、その際A1とEが特に議会で呼んだわけでもないのに、何処から聞いて来たか協議会に顔を出した」旨(二三八丁表裏)の各供述 は村長が逃出したともみられ、村長が本当に解約の肚であつたか疑わしいとも考えられ、その際A1とEが特に議会で呼んだわけでもないのに、何処から聞いて来たか協議会に顔を出した」旨(二三八丁表裏)の各供述記載がある。 (6) 被告人A1側の工事関係者の間に当時贈賄しなければ仕事にならないという空気か満ちていて、被告人A1は部下に対しF、G両有力議員に適当にやつておけと言つていた事実被告人A1の自白は「Iからここの村会議員や村長には何か贈らなければ工事の下金等も仲々出してくれないと言われたので、Iに適当にやつておいてくれと頼み(四二四丁表裏)、私もF議員が農耕機が欲しいというので金を贈る約束をし(四三〇丁表)、山林の検収に当つた役場山林係Oに一万円贈り(四三三丁表)、F、G議員に現金を贈つたということは帳簿類をあとからみて判つたものである(四三九丁表裏)」というのである。 これに対し、Iの検察官に対する供述調書に「私はA1にFは面倒な男だといい、村長は事務屋上りのしつかりした人だと言つたが、A1をはじめEやP等幹部の間に贈賄しなければ仕事にならないといつた空気が満ちていたことは確かである」旨(二九八丁表裏)、Pの検察官に対する供述調書に「F、G両議員に金でも贈らなければならんという話はIから言出して話合つており、A1は適当にやつておけと言つていたと思う」旨(二九四丁表裏)の各供述記載がある。 (7) 被告人A2がa村村長として工事請負人の銓衡指定、請負契約の締結、工事の監督、出来高証明の承認、工事代金支出の決裁、及び工事に使用する村有林の特売等右各工事施行に関する事務全般を処理していた事実については、被告人A1の検察官に対する供述調書に同趣旨の供述記載(四四九丁裏、四五〇丁表)があるに対し、被告人A2の検察官に対する供述調書謄本にこれに照 各工事施行に関する事務全般を処理していた事実については、被告人A1の検察官に対する供述調書に同趣旨の供述記載(四四九丁裏、四五〇丁表)があるに対し、被告人A2の検察官に対する供述調書謄本にこれに照応する供述記載(五二五丁裏乃至五二七丁裏)がある。 (二) 本件金員の授受につき(1) 金員の出所は当時被告人A1がH鉱業所工事及びb村診療所工事を請負つていて、その工事代金が支払われこれを人夫賃、建築資材等に支払つた残りを妻Cに預けておき、本件各a村に赴く時妻から貰つて行つたものである事実被告人A1の自白は「本件の金はH鉱山から請負つている仕事の収入から人夫賃や資材費に支払つた残りが四万、五方と入つたものを妻Cに渡しておき、a村へ行く時妻から貰つて行つたもので、一回目に贈つた時は三万円位持つて行き、二回目も三万円位で、三回目だけは当時b村診療所の二度目の工事下金三〇万円のうち支払つた残りを妻に預けておいた中から三万七、八千円持つて行つたもので(四三五丁表裏)、二回目の九月二二日頃のものはその頃H鉱山から四、五十万の金が下つていたので、その中から三万位を妻から出して貰い、三回目のものはb村診療所の工事下金三〇万を貰つた直後、一一月一五日に経費を支払つた残金のうち三万七、八千円を持つて行つた(四四七丁裏、四四八丁裏)」というのである。 これに対し、H鉱業株式会社H鉱業所の報告書(三一三丁、三一四丁)中に、昭和二八年七月中に四五万六〇〇円八月一五日に三八万円、八月二二日に一四万二五〇〇円、九月一四日に四一万二〇〇〇円、一〇月二八日に八万一一七五円の各工事金がA1に支払われている旨の記載があり、b村役場収入役Qの司法巡査に対する供述調書に「b村診療所の工事費の支払につき、その二回目は三〇万円を昭和二八年一〇月三〇日にA1に支払つた」旨(三一 各工事金がA1に支払われている旨の記載があり、b村役場収入役Qの司法巡査に対する供述調書に「b村診療所の工事費の支払につき、その二回目は三〇万円を昭和二八年一〇月三〇日にA1に支払つた」旨(三一六丁表裏)の供述記載がある。被告人A1の妻Cの検察官に対する供述調書に「主人はaに行くとき私から少いときで一万円位から多いときは三万円から五万円持つて行つたことがあり、同年(昭和二八年)八月半頃お盆の前頃もaの現場へ行く時三万円位持つて行き、一週間位滞在していたようで、同年九月半頃もaへ行き半月も滞在したが、鉱山にはもう蚊がいないのに、aは蚊が多くて困つたという話をしたのを思出したが、その時は幾ら持つて行つたか覚えていない、同年一〇月頃b診療所の二回目の工事下金三〇万円が下り、そのうち人夫賃に一〇万円位払つた残りを家に置いたが、一一月半頃主人がその金の中からaに行く費用として三万円か四万円位持つて行つたことが確かにあつた」旨(三二〇丁表乃至三二一丁裏)の供述記載がある。 (2) 本件金員授受の各日時場所で被告人A1が被告人A2に会つていた事実被告人の自白は前記(一)の(1)(3)(4)に記載したとおりである。 これに対し、Rの検察事務官に対する供述調書中に「役場旧庁舎の宿直室は応接室に使用し、そこで村長とA1が話合つたりしたが、八月一六日頃、一一月一七日頃A1が役場へ来た時村長と右宿直室で話合つたかどうか判然した記憶はない」旨(三四八丁裏、三四九丁表)、Sの検察事務官に対する供述調書中に「八月一六日宿直勤務に服したが、同日は上棟式のあつた翌日でA1が役場に来ていた、村長は午前中役場へ来て現場を見廻るなどして、正午バスでc町へ行つた、当日村長とA1が宿直室に二人で入つていたことがあるかどうかは大分前のことなので記憶しない」旨(三四四丁裏乃至 が役場に来ていた、村長は午前中役場へ来て現場を見廻るなどして、正午バスでc町へ行つた、当日村長とA1が宿直室に二人で入つていたことがあるかどうかは大分前のことなので記憶しない」旨(三四四丁裏乃至三四六丁表)、Tの検察事務官に対する供述調書中に「九月二二日と一一月一七日宿直勤務に服したが、九月二二日A1と村長が現場を見廻つたことは知つているが、石造倉庫の方に行つたかどうかまでは判らない(三四三丁裏)、一一月一七日A1が役場に来た時村長が役場に在庁しているが、その日二人が宿直室で話合つたことは判らない(三四三丁表)」旨、の各供述記載がある。 被告人A2の検察官に対する供述調書謄本中に「八月一六日の朝役場でA1と会つたことにつき宿直員が二人で会つていたというのであればそのとおり間違いないと思う(四三七丁裏)、九月二二日の朝にはA1が役場に来て自分に特命請負のお礼を述べたことは覚えているが、その日二人で現場を見廻つた記憶はないけれども、その他の日は時々現場を見廻つていた(四三八丁表裏)、一一月一七日役場で事務を執つたことは間違いない(四三八丁裏、四三九丁表)」旨の供述記載がある。 (8) 被告人A2が昭和二八年一一月頃から翌年五月頃にかけて屋根替え及び台所改造工事を行つた事実については、被告人A2の検察官に対する供述調書謄本(五二三丁裏乃至五二四丁表、五四六丁表乃至五四七丁表)にその旨の供述記載がある。 以上に徴すれば、右各補強証拠は少くとも、自白と相まつて全体として犯罪事実を肯認するに十分であつて、被告人A1の自白にかかる犯罪事実の貞実性を保障し得るものと認められる。 されば、補強証拠の実をみたす証拠がなく、犯罪の証明がないことに帰するとして、A2に対する贈賄の公訴事実につき無罪の言渡をした原判決は、採証の法則を誤り、ひいて事実を誤認し 得るものと認められる。 されば、補強証拠の実をみたす証拠がなく、犯罪の証明がないことに帰するとして、A2に対する贈賄の公訴事実につき無罪の言渡をした原判決は、採証の法則を誤り、ひいて事実を誤認したものというべく、その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかである。そして、右公訴事実と有罪部分の原判示事実とは併合罪として起訴されたものであるから、原判決は全部破棄を免れない。論旨は理由がある。 被告人A2に関する控訴趣意について。 原判決は、a村村長として役場庁舎に新改築、分教場の増築、診療所の新築の各工事に関し、工人請負人の銓衡指定、請負契約の締結、工事の監督、出来高証明の承認、工事代金支出の決裁及び工事に使用する村有林の特売等右工事施行に関する事務全般を処理していた被告人A2が、右工事を請負つた土建業A1から、昭和二八年八月一六日頃役場旧庁舎宿直室で、お盆につき工事代金下金を早く且つ多額に支払われたい旨依頼を受け、その報酬たることの情を諒して二万円、同年九月二二日頃役場構内石造倉庫裏で、診療所工事の特命請負人に指定したことに対する謝礼及びその建築資材として村有林の特売につき便宜をはかられたい旨依頼をうけ、その報酬を含めたことの情を諒して二万五千円、同年一一月一七日頃前記宿直室で、右村有林の特売をうけたこと及びこれまで右各工事につき便宜な取扱をうけたことに対する謝礼たることの情を諒して三万円の各供与をうけ、もつて自己の職務に関し収賄したとの公訴事実につき、これを確認するに足る証拠なく、犯罪の証明がないとして無罪の言渡をしている。その理由とするところは、本件は被告人A2の極力否認するところで、贈賄したという原審証人A1の証言と原審証人D同B1同Uの三人の証言を総合すれば、被告人A2の犯行たるに疑なき観があるが、後の三証人の証言はA1の発言 ろは、本件は被告人A2の極力否認するところで、贈賄したという原審証人A1の証言と原審証人D同B1同Uの三人の証言を総合すれば、被告人A2の犯行たるに疑なき観があるが、後の三証人の証言はA1の発言を内容とするもので、結局本件はA1の証言の真否如何により決せられるところ、取調べた各証拠によれば被告人A2は性几帳面で、右工事監督は非常に厳格であつたこと、A1との工事請負契約を解和しようとし、解約に至らなかつたが、診療所新築工事は実質上村の直営で完成したこと、これに対しA1が非常に不満を持つていたことが認められ、これらの点にA1の証言を照合すると、A1の証言は一切信用に価しないのみでなく、却つて村長たる被告人A2に対する反感の余りA1がDに対する貸借金債務不履行の申訳の必要下に強いて無根の事実を流布したに過ぎないものとさえ認められるというにある。 しかし、記録を精査し、当審における事実取調の結果に徴するに、当裁判所はたやすく原判決の如き結論には到達し難いのであつて、原判決は証拠の価値判断を誤り事実を誤認したものといわざるを得ない。以下その説明をする。 (一) 本件犯罪の成否がA1の証言の真否如何にかかつていることは原判決のいうとおりであるが、A1の証言はその内容に矛盾不自然なところなく、虚偽の事実を無理に作為して述べていると疑わせるものは見出せないのである。そして、A1の証言を裏付けるものとして、A1やその代理人E等が被告人A2に対し役場庁舎新築工事請負代金下金の早期かつ多額の支払方を何回も頼み、本件お盆の下金もA1が同様頼みこんだ事実、被告人A2がA1に対し工事監督者の忠告をうけながら敢て出来高証明なしに役場庁舎工事請負代金下金を前後数回に亘り支払い、本件お盆の下金も早期かつ多額に計百五十万円支払つた事実、A1は被告人A2に対しd診療所 がA1に対し工事監督者の忠告をうけながら敢て出来高証明なしに役場庁舎工事請負代金下金を前後数回に亘り支払い、本件お盆の下金も早期かつ多額に計百五十万円支払つた事実、A1は被告人A2に対しd診療所工事の特命請負及び村有林の特売を頼みこんだ事実、被告人A2は診療所工事をA1に請負わせることが無理であると知りながら敢てこれをA1に対し特命で請負わせた事実、右特命請負の問題につき被告人A2は右請負契約の解約を論議させる協議会を招集しながら、自らはその間出張留守にしてA1を旅館に招き村議会の空気を教えて工事の促進をはかつに事実、A1側工事関係者の間に当時贈賄しなければ仕事にならないという空気が満ちていて、A1は部下に対しF、Gの両有力議員に適当にやつておけと言つていた事実、本件各金員授受の日時場所でA1が被告人A2に会つていた事実等につき、A1の証言の真実性を担保するに足る証拠が存するのである。更に、当裁判所が親しくA1及び被告人A2を取調べた結果に徴しても、A1の証言の真実性を否定すべき心証は惹起し得ないのである。 成程、A1が診療所工事を村の準直営の形にされたこと及び村有林特売契約を解約されたことから、被告人A2に対し不平不満を抱くに至つたことは事実であるが、両者の従来の関係等からみて、被告人A2を無実の罪に陥れねばならぬほどの事情にあつたものとは到底認め難いのであつて、A1が被告人A2に対する反感の余りDに対する借金債務不履行の申訳の必要下に強いて無根の事実を述べたものとは認め得られない。 (二) そこで、A1の証言を裏付ける証拠を概観するに(1) A1やその代理人E等が被告人A2に対し役場庁舎新築工事請負代金下金の早期かつ多額の支払方を何回も頼み、本件お盆の下金もA1が同様頼みこんだ 事実 右については、原審証人J(助役)同Pの各 (1) A1やその代理人E等が被告人A2に対し役場庁舎新築工事請負代金下金の早期かつ多額の支払方を何回も頼み、本件お盆の下金もA1が同様頼みこんだ 事実 右については、原審証人J(助役)同Pの各証言及びI、Pの各検察官に対する供述調書によれば、昭和二八年六月一二日A1がI、P、Eと被告人A2村長宅に行つて、工事下金をなんとか早く出して貰いたいと頼み、そのほかにもA1とEが役場に村長を訪ねて同様願い、又A1がお盆使いだから下金してくれと頼みこんだことが認められる(六四丁表乃至六六表裏、一〇八丁表、一〇九丁裏、三六九丁裏、三八四丁裏)。被告人A2も、検察官に対する供述調書で、工事下金につきA1から再三の懇願が盛んにあつたことを認めている(四一三丁裏、四一四丁表)。 (2) 被告人A2がA1に対し工事監督の忠告をうけながら敢て出来高証明なしに役場庁舎工事請負代金下金を前後数回に亘り支払い、本件お盆の下金も早期かつ多額に百五十万円支払つた事実右については、原審証人Jの証言(六八丁裏乃至七〇丁表)及び請求受領書綴(証六号)によれば、昭和二八年六月一五日大〇万円、同年七月一日六〇万円、八月三日六〇万円、八月一九日三〇万円、八月二一日一五〇万円、九月一四日二万六〇〇〇円、九月二二日一三三万二六八九円、一一月二日二〇万八四二七円、一二日二九日二八万二八八四円、計九回合計五四〇万円のうち、八月三日、一九日、二一日の三回計二二〇万円は一応の出来高証明があるが、他の六回計三二〇万円は出来高証明なしに支払つた事実が明らかであり、しかも、工事監督者LよりA2村長宛の手紙(証一号)によれば、七月三日附で村長に対し、工事下金を絶対過払いしないようした方がよい旨忠告がなされていることが認められる。被告人A2も、検察官に対する供述調書で、右事実を大体認めており、 の手紙(証一号)によれば、七月三日附で村長に対し、工事下金を絶対過払いしないようした方がよい旨忠告がなされていることが認められる。被告人A2も、検察官に対する供述調書で、右事実を大体認めており、契約よりも早期にしかも出来高の八割以上も支払つてやる必要はなかつたが、A1に余り懇願されて支払つた旨述べ、A1の場合かかる前払いすることは危険だと忠告されたことも認めている(四三三丁表乃至四三七丁表、四四六丁表裏、四四七丁表)(3) A1は被告人A2に対し本件診療所工事の特命請負及び村有林の特売を願みこんだ事実右については、昭和二八年度村会会議録(証五号)によれば、九月一九日開催の一六回臨時村会会議録に、A1から診療所工事の特命請負に関する請願書が出ている旨、一〇月一九日開催の一八回臨時村会会議録に、A2村長から村有林特売につきA1請負人よりの要請があつた云々の発言の記載がある。被告人A2も、検察官に対する供述調書で、診療所工事の特命請負もA1から余り懇願され(四一五丁表)、村有林の払下もA1から要求されて(四一五丁裏)、いずれもこれに応じたことを認めている。 (4) 被告人A2が診療所工事をA1に請負わせることが無理てあることを知りながら敢てこれをA1に対し特命で請負わせ、又村有林約九三〇石を単価石当り二千円でA1に対し特売した事実右については、前記LのA2村長宛手紙(証一号)で、被告人A2に対しA1が資力なく頼りにならない旨忠告しており、原審証人J(助役)の証言によつても、A1に特命請負させたことが無理であつたことが認められる(六七丁表)。被告人A2も、検察官に対する供述調書で、A1は余りよい業者ではないと判つていたが、余りA1に懇願されたので、診療所工事の特命請負人にすることに決心して、歎願書を村議会に提出するよう話し、自分 )。被告人A2も、検察官に対する供述調書で、A1は余りよい業者ではないと判つていたが、余りA1に懇願されたので、診療所工事の特命請負人にすることに決心して、歎願書を村議会に提出するよう話し、自分から村議会に提案して議決して貰つたものであることを認めており(四一四丁裏、四三二丁裏)、特命請負というのは随意契約のことで、それは村長の一存で請負人をきめ村議会の承認を得て契約するもので(四三〇丁裏)、請負人の信用と技術を第一に考えねばならないが、A1に資力がなく信用のないことが既に判つていたのに、役場庁舎の工事で損をしたから、その埋合わせをさせてくれというA1の懇願に乗つたのが悪かつた旨認めているのである(四四五丁裏乃至四四六丁裏)。 そして、前記村会会議録(証五号)中一〇月一九日開催の一八回臨時村会議事録に、杉立木約四三〇行、松立木約五〇〇石を特売、価格石当り二千円で可決された旨の記載がある。 (5) 右特命請負の問題につき被告人A2は右請負契約の解約を論議させる協議会を招集しながら、自分はその間出張留守にしてA1を旅館に招き、村議会の空気を教えて工事の促進をはかつた事実右については、J(助役)の検察官に対する供述調書謄本によれば、一二月八日診療所工事解約の協議会については同月四日頃招集状を出した記憶があり、村長も出席する筈であつたが、急に青森への出張で出席せずに、協議事項を書いて置いて行き、診療所工事を解約するよう協議会を導いて貰いたいと言つており、それは監査委員から役場庁舎や診療所の工事を急ぐように言われていたためであることが認められ(三七六丁裏、三七七丁表裏)、Fの検察官に対する供述調書謄本によれば、一二月初めFがA1を盛岡のN旅館に呼び、工事の能率をあげるよう責めたことはあつたが、そこで解約のことまで話した記憶はないことが認 三七六丁裏、三七七丁表裏)、Fの検察官に対する供述調書謄本によれば、一二月初めFがA1を盛岡のN旅館に呼び、工事の能率をあげるよう責めたことはあつたが、そこで解約のことまで話した記憶はないことが認められる(三八〇丁表)。 (6) A1側工事関係者間に当時贈賄しなければ仕事にならないという空気が満ちていて、A1は部下に対しF、G両有力議員に適当にやつておけと言つていた 事実 右については、I、Pの各検察官に対する供述調書謄本によれば、IはA1に対し、Fは面倒な男で村長は事務屋上りのしつかりした人だといい、A1をはじめEやP等幹部の間に贈賄しなければ仕事にならないといつた空気が満ちていて、F、G両議員に金でも贈らなければならないという話はIから言出して話合い、A1は適当にやつておけと言つたことが認められる(三六八丁表乃至三七〇丁裏、三八六丁表)。 (7) 本件各金員授受の日時場所でA1が被告人A2に会つていた事実右については、R、S、Tの各検察事務官に対する供述調書謄本によれば、役場旧庁舎宿直室は応接室に供用し、そこで村長とA1が話合つたりしたこと、本件八月一六日はA1が役場に来て村長も午前中は役場に在庁したこと、九月二二日は村長とA1が工事現場を見廻つたこと、一一月一七日はA1が役場に来た時村長も役場に在庁していたことが認められる(四三七丁裏、四〇八丁裏乃至四〇九丁表、四〇七丁表)。被告人A2も、検察官に対する供述調書で、八月一六日朝A1に会つていると宿直員がいうのであれば間違いないと思う旨(四三七丁裏)、九月二二日朝役場でA1から特命請負のお礼を言われたことは覚えているが、二人で現場を見廻つた記憶はない旨(四三八丁表裏)、一一月一七日役場で執務したことは間違いない旨(四三八丁裏、四三九丁表)述べているのである。 以上各証拠に徴 負のお礼を言われたことは覚えているが、二人で現場を見廻つた記憶はない旨(四三八丁表裏)、一一月一七日役場で執務したことは間違いない旨(四三八丁裏、四三九丁表)述べているのである。 以上各証拠に徴すれば、A1の証言の真実性を肯認するに十分である。 (三) 成程、A1の証言に徴しても、A1は特売をうけえ村有林を伐採しはじめると、村長とG議員に金も支払わずに伐採しては駄目だと言われ、村長とG議員等がA1を信用せずに建築資材の工事金をA1に渡さずに直接業者へ支払うようになつたので、不平不満を持つようになつたことは認められるが(一三〇丁表裏、一六〇丁表裏)、原審証人Jの証言によれば、A1は診療所工事を村の準直営の形ですることを諒解したのであり(二四二丁裏)、証一九号(樹木売買契約破棄に関する誓約書)によれば、村有林特売契約の解約されたのは、昭和二九年二月一二日となつており、A1が右の不平不満を外部にもらしたのは同年四月七日役場へどなりこんだ時が最初であるが、この程度も、原審訴人U(当時の収人役)の証言によれば、A1が酒を飲んで役場に来て、「立木の契約を履行しないで解約されたが、俺は騙された、その時の書類を見せてくれ」」収入役はいつも金をくれない」などと言つたが、村長のことについては、「俺はいくら酔払つてきても、村長の顔をみると頭が上らない、ただ契約書を見せろ、俺に見せないで判を押したのだ」「俺がやつた工事だから叩き毀してしもうと思うが、村長の顔を見ると、思つて来たこともできない感じになる」と言つたものであることが認められる(三〇〇丁表、三〇一丁裏、三〇二丁表)。被告人A2は村長として相当の勢力を持つていて村議会に引きずられるような人物でなく(六七丁表、三六九丁表)、そのことはIからも聞知つていたA1であり、前叙説明の如く被告人A2の方から二、 〇二丁表)。被告人A2は村長として相当の勢力を持つていて村議会に引きずられるような人物でなく(六七丁表、三六九丁表)、そのことはIからも聞知つていたA1であり、前叙説明の如く被告人A2の方から二、三の有力議員の諒解を得て出来高証明なしにA1に工事下金の前払いをやつていたのであり、被告人A2の方から村議会にはたらきかけてA1を診療所工事の特命請負人にしてやつたのであり、特命請負解約の問題も被告人A2がA1に事情を伝えて村議会の諒解を得るようにさせたもので、村有林の特売も同様被告人A2の助力によるものであつて、A1としては大いに被告人A2の厚意に感謝すべき立場にあつたのであるから、診療所工事を遅延させた等のために村の準直営の形になり、特売をうけた村有林をDに対する負債のためDに伐らせたこと等から解約になつて、不平不満を持つようになつたとしても、これがために当時A1が自己が罪になるばかりでなく、村長の被告人A2を無実の罪に陥れねばならないほどの強い反感ないし恨みを抱く事情にあつたものとは到底認め得られないのであつて、昭和二九年三月二五日頃酒を飲んだA1がV巡査部長の同席するところで、Dから借金債務不履行を責められてその言訳の際本件贈賄の事実を、他のF議員等に対する贈賄の事実とともに、はじめてもらしたことをもつて、村長の被告人A2に対する反感の余り借金債務不履行の申訳の必要下に強いて無根の事実を言出したものとは認め得られない。 (四) 原判決は、被告人A2が性几帳面で、工事塩督に極めて厳格であつたというけれども、被告人A2は県の農業団体の会計課長をやつたもので(三〇二丁表)、そういう意味では金銭に几帳面で、個人的出納簿に金銭の出納をこと細かに記帳していることは事実であるが(証三号)、前叙の如く出来高証明なしに工事下金を早期かつ多額に支払つた つたもので(三〇二丁表)、そういう意味では金銭に几帳面で、個人的出納簿に金銭の出納をこと細かに記帳していることは事実であるが(証三号)、前叙の如く出来高証明なしに工事下金を早期かつ多額に支払つたり、信用のないA1を診療所工事の特命請負人にしたりし、又、村の準直営の形にしてから予算外の支出をして昭和二九年一二月被告人A2の退職金中から二九万円を弁償しているのであつて(四四四丁表、二八〇丁裏、二八一丁表)、被告人A2の工事監督が厳格であつたとはいえない。 弁護人は被告人A2が金銭出納簿に公私の別を立て私事をも一々記帳しているのに本件賄賂を収受したと認むべき記載が全然ない旨、被告人は清廉で給料も辞退したほどである旨主張するけれども、通常の場合自己の収賄した事実を出納簿に記載するということは到底考えられないところであり、給料を辞退したというのは、村長が組合長を兼ねていて組合長は片手間の仕事だからと言つて組合長の給料を辞退したのである(二七二丁表、二七七丁裏)。弁護人はA1は人夫賃も払えず他から借金していたもので、本れ賄賂の金などある筈がない旨主張するけれども、当時A1はH鉱業所の工事を請負つていて、その工事代金が手に入つていたものであることが認められる(一三三丁裏、一三五丁表)。なお、弁護人所論の村有林特売の話は昭和二八年九月二二日頃には既に出ていたものであり(四一六丁裏)、弁護人所論のA1が村有林特売をうけたことに対する謝礼として贈賄したという一一月一七日頃は右村有林をDに売却していてA1に利害関係がないから、これに関し贈賄するということは信じ難いとの主張の理由のないことはその主張の内容自体から説明するまでもなく、又弁護人所論のA1が反村長派と結びついて村長を陥れるため虚偽の供述をしたものとは認められないし、弁護人所論の宿直室も倉庫裏も見 いとの主張の理由のないことはその主張の内容自体から説明するまでもなく、又弁護人所論のA1が反村長派と結びついて村長を陥れるため虚偽の供述をしたものとは認められないし、弁護人所論の宿直室も倉庫裏も見通しがきくから、かかる人目のつくところて賄賂の授受はなし得ないとの点は、A1は人目のつかないところでやつたというのであつて、原審及び当審の検証の結果に徴しそのようにすることが不可能とは認められない。 以上説明の次第で、原判決がA1の証言を一切信用に価しないとして、本件公訴事実につき犯罪の証明がないものとして無罪の言渡をしたのは、証拠の価値判断を誤り事実を誤認したものというべく、その誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。 そこで、刑訴法三九七条三七九条三八一条により被告人A1同A2に関する各原判決を破棄し、同法四〇〇条但書により当裁判所において更に次のとおり判決することとする。 (罪となるべき事実及び証拠の標目)一、 被告人A1に関する当裁判所の認定した事実は、同被告人に関する原判示事実の末尾の「たものである。」を削除し「第四、同村々長として、同村において施行した同村役場庁舎の新築、同村W1小学校W2分教場校舎増築、同村X1及びX2両診療所の新築等の工事に関し、工事請負人の銓衡指定、請負契約の締結、工事の監督、出来高証明の承認、工事代金支出の決裁及び工事に使用する村有林の特売等右各工事施行に関する事務全般を管掌していたA2に対し(一) 昭和二八年八月一六日頃同村字ef番地同村役場構内にある旧庁舎階下宿直室において、右役場新庁舎建築工事請負代金内金をお盆につき速に且つ多額に支払われたい旨の依頼をし、その報酬の趣旨で、現金二万円を供与し、(二) 同年九月二二日頃同役場構内石造倉庫裏 旧庁舎階下宿直室において、右役場新庁舎建築工事請負代金内金をお盆につき速に且つ多額に支払われたい旨の依頼をし、その報酬の趣旨で、現金二万円を供与し、(二) 同年九月二二日頃同役場構内石造倉庫裏において、前記両診療所建築に関し自己を特命請負人に指定して工事を請負わしめたことに対する謝礼、及ひ診療所建築資材用として同村村有林を自己に特売することにつき便宜な取扱を受けたい旨の依頼をしその報酬を含めた趣旨で、現金二万五千円を供与し(三) 同年一一月一七日頃前記宿直室において、、前記村有林の特売を決定したこと及び前記各工事につき前記の如き便宜な取扱をうけたことに対する謝礼の趣旨で、現金三万円を供与しもつて、それぞれ同人の職務に関し贈賄したものである。 を附加するほか、すべて原判決適示の事実と同じであり、これに対する証拠は「第四につき(その証拠説明については、前段被告人A1に関する控訴趣意に対する判断における補強証拠についての説明参照) 1 被告人A1の検察官に対する昭和三〇年一月二六日附、二月三日附、二月六日附、二月九日附、二月一七日附、六月一八日附各供述調書 2 A2の検察官に対する同年二月一日附、二月一〇日附、二月一二日附、二月四日附各供述調書謄本 3 Iの検察官に対する同年二月二日附供述調書 4 Jの検察官に対する同年二月一九日附供述調書、検察事務官に対する同年二月三日附供述調書 5 請求受領証綴(証九号) 6 LよりA2宛封書(証六号) 7 村会会議録(証八号) 8 Mの検察官に対する同年二月一九日附供述調書、検察事勢官に対する同年二月二日附供述調書 9 Kの検察事務官に対する同年二月一日附供述調書 10 Gの検察官に対する同年二月一一日附供述調書 11 Fの検察官に対する同年二月一一日附供述調書 12 P に対する同年二月二日附供述調書 9 Kの検察事務官に対する同年二月一日附供述調書 10 Gの検察官に対する同年二月一一日附供述調書 11 Fの検察官に対する同年二月一一日附供述調書 12 Pの検察官に対する同年三月一日附供述調書 13 H鉱業株式会社H鉱業所所長報告書 14 Qの司法巡査に対する供述調書 15 Cの検察官に対する同年一月二七目附供述調書 16 R、S、Tの各検察事務官に対する供述調書を附加するほか、すべて原判決摘録の証拠と同じであるから、いずれもこれを引用する。 二、 被告人A2に関する当裁判所の認定した事実は次のとおりである。 「被告人A2は昭和二二年頃から同二九年一二月三一日まで岩手県気仙郡a村村長として、同村において施行した同村役場庁舎の新築、同村W1小学校W2分教場校舎の増築、同村X1及び下a両診療所の新築等の工事に関し、工事請負人の詮衡指定請負契約の締結、工事の監督、出来高証明の承認、工事代金支出の決裁及び工事に使用する村有林の特売等右各工事施行に関する事務全般を管掌していたものであるが、右各工事を請負つた土木建築請負業Y建設工業所所長A1から(一) 昭和二八年八月一六日頃同村字ef番地同村役場構内にある旧庁舎階下宿直室において、右役場新庁舎建築工事請負代金内金をお盆につき速に且つ多額に支払われたい旨依願され、その報酬の趣旨の下に供与されるものであることを諒知の上、現金二万円の供与をうけ(二) 同年九月二二日頃同村役場構内石造倉庫裏において、前記両診療所建築に関し右A1を特命請負人に指定しその工事を請負わせたことに対する謝礼、及び同診療所建築資材用として村有林を同人に特売することにつき便宜な取扱をされたい旨依頼され、その報酬を含めた趣旨の下に供与されるものであることを諒知の上、現金二万五千円 負わせたことに対する謝礼、及び同診療所建築資材用として村有林を同人に特売することにつき便宜な取扱をされたい旨依頼され、その報酬を含めた趣旨の下に供与されるものであることを諒知の上、現金二万五千円の供与をうけ(三) 同年一一月一七日頃前記宿直室において、右A1に村有林の特売を決定したこと及び前記各工事につき前記の如き便宜な取扱をしたことに対する謝礼の趣旨の下に供与されるものであることを諒知の上、現金三万円の供与をうけもつて、その職務に関し収賄したものである。」右に対する証拠は次のとおりである。 「1 原審第二回、第三回公判調書中証人A1の各供述記載 2 被告人A2の検察官に対する昭和三〇年二月一日附、二月四日附、二月一四日附各供調書 3 原審第二回公判調書中証人B1の供述記載、証人Dに対する原審尋問調書 4 証人Jに対する各原審尋問調書、Jの検察事務官に対する同年二月三日附供述調書謄本 5 請求受領書綴(証六号)、LよりA2宛書翰(証一号) 6 F(同年二月一一日附)、I(同年二月二日附)、Pの各検察官に対する供述調書謄本 7 R、S、Tの各検察事務官に対する供述調書謄本」(法令の適用)被告人A1の判示所為は各刑法一九八条(第二、第三には同法六〇条をも適用)罰金等臨時措置法三条二条に該当するので、所定刑中各懲役刑を選択し、被告人A2の判示所為は各刑法一九七条一項前段に該当し、いずれも以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文一〇条により犯情の最も重いと認める被告人A1については第一の罪、被告人A2については(三)の罪の刑に併合罪の加重を施した刑期範囲内で、被告人両名を各懲役一〇月に処し、被告人両名に対し諸般の情状刑の執行を猶予するのを相当と認め、同法二五条一項を適用して本裁判確定の日から三年間、いずれも の罪の刑に併合罪の加重を施した刑期範囲内で、被告人両名を各懲役一〇月に処し、被告人両名に対し諸般の情状刑の執行を猶予するのを相当と認め、同法二五条一項を適用して本裁判確定の日から三年間、いずれも右刑の執行を猶予することとし、被告人A2が収受した各賄賂は全部没収することができないので、同法一九七条ノ四後段に従いその価額金七五、〇〇〇円を同被告人から追徴すべく、なお被告人両名に対する原審及び当審における訴訟費用の負担につき刑訴法一八一条一項本文を適用して主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官門田実裁判官細野幸雄裁判官山田瑞夫)
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