主文 被告ら及び承継参加人は,原告に対し,連帯して224万7200円及びこれに対する平成10年11月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,これを1000分し,その965を原告の負担とし,その余を被告ら及び承継参加人の負担とする。 この判決は1項に限り仮に執行することができる。 事実 第1当事者の求めた裁判 請求の趣旨(1)被告ら及び承継参加人は,原告に対し,連帯して5932万0751円及びこれに対する平成10年11月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)訴訟費用は被告ら及び承継参加人の負担とする。 (3)仮執行宣言 請求の趣旨に対する被告ら及び承継参加人の答弁(1)原告の請求を棄却する。 (2)訴訟費用は原告の負担とする。 第2当事者の主張本件は,被告A(以下「被告会社」という)の従業員である原告が,勤務。 中,同じく被告会社従業員である被告B(以下「被告B」という)から暴行。 を受けるとともに,その後の労災申請手続などにおいて被告会社従業員から不当な対応を受け,これによって外傷後ストレス障害(以下「PTSD」という)に罹患したなどと主張して,被告ら及び承継参加人に対し,不法行為に。 基づく損害賠償を求めた事案である。 請求原因(1)当事者等ア原告は,被告会社の従業員であり,平成10年10月から,千葉市中央区a所在のC千葉中央店において店長代行として勤務していた。 イ被告会社は,衣料品の販売等を目的とする株式会社であり,平成10年当時,Cの名称で衣料品販売店舗を全国に展開していた。 ウ被告Bは,平成10年当時,被告会社の従業員であり,C千葉中央店で店長として勤務していた。 エ承継参加人は,衣 る株式会社であり,平成10年当時,Cの名称で衣料品販売店舗を全国に展開していた。 ウ被告Bは,平成10年当時,被告会社の従業員であり,C千葉中央店で店長として勤務していた。 エ承継参加人は,衣料品及び衣料雑貨品の企画,製造,販売を目的とする株式会社であり,平成17年11月1日,会社分割により,被告会社の権利義務を承継した。 (2)不法行為ア被告Bの不法行為被告Bは,平成10年11月17日午後5時30分ころ,C千葉中央店内において,原告に対し,その胸倉を掴んで同人の頭部,背部等を板壁等に多数回打ちつけた上,同人の顔面に頭突きをするなどの暴行を加え,よって,同人に加療約4週間を要する頚部挫傷の傷害を負わせた(以下「本件事件」という。 。)イその他の不法行為(ア)労災隠し等a平成10年11月18日午後2時ころ,被告会社従業員であるD(以下「D」という)は,原告からの労災申請の依頼に対し「加害。 者がいるので,加害者に直接請求するように。医療費は立て替えて支払っておけ」と命じた。 。 これに対して,原告は,Dに対し「どうして労災ではないのか」。 と質問したところ,Dは「第三者行為なので,認められない。労災で はない」と答えるのみであった。そして,現に原告からの申し出に。 もかかわらず,被告会社は労災申請を行おうとしなかった。 b同日午後4時15分ころ,被告Bからの形式的な謝罪の言葉が告げられた後,Dは,原告に対し「Bの将来もあるので,警察に届けないでほしい。会社内のことでもあるので,警察に届けないでほしい」。 等と命じられた。 原告は,Dに対し「Bは加害者なので,罪を償ってほしい。今回の件はけんかではない。警察に届けるのが市民の義務だと思います」。 と答えたところ,Dは「会社の名が外へ出ると困る。今後,人事の希望 た。 原告は,Dに対し「Bは加害者なので,罪を償ってほしい。今回の件はけんかではない。警察に届けるのが市民の義務だと思います」。 と答えたところ,Dは「会社の名が外へ出ると困る。今後,人事の希望を聞くから。本社がいいか地元がいいか」と述べ,重ねて原告の。 被害届提出を強行に妨げようとした。 (イ)労災手続遅延等a原告は,被告会社による労災申請を求めていたが,上記のように被告会社から拒否されたため,やむなく平成10年11月下旬,知人の社会保険労務士に相談し,申請用紙を受領し,同年12月11日,自ら療養補償給付申請書を労働基準監督署へ提出した。 bその後,平成11年11月末ころ,被告会社管理部長であるE(以下「E」という)は,原告に対し,電話で「会社の手続上,診断書。 の提出と面談をする必要がある。また,会社から頻繁に連絡させてもらう。もし,それがいやなら,休業補償に切り替える。もう長いからくぎりをつけた方がいい」と命じた。原告は,診断書の提出自体は。 よいが,この間の経過から平穏な面談は不可能と判断し「面談には,応じない」旨返答した。これに対し,Eは「休業補償に切り替える。 ,しかない」と告げ,やむなく原告としてもそれを受入れざるを得な。 くなった。 しかし,まず,労災の休業補償の申請は原告の方で行う意向を述べ ていたにもかかわらず,被告会社は,原告をして申請書類の所定の欄に記入して返送させて被告会社側で申請する前提で書類を郵送した。 また,被告会社は,その書類のうち,労働できなかった期間の始期を「12年1月1日」と一方的に記載していた。原告がそれをもとにF病院に診療担当者の証明を求めに行ったところ,療養期間の始期と食い違いがあるので被告会社に確認をとらないと証明できないと言われた。そこで,原告は,被告会社に確認を求めた ていた。原告がそれをもとにF病院に診療担当者の証明を求めに行ったところ,療養期間の始期と食い違いがあるので被告会社に確認をとらないと証明できないと言われた。そこで,原告は,被告会社に確認を求めたところ,担当者に連絡がとれないなどと言われて確認できないまま時が経過していった。 さらに,原告としては,労災の休業補償を事件発生日に遡及させて適用するよう被告会社へ求めていたが,被告会社からはすぐに返答がないまま経過し,最終的にはできない旨の返答が平成13年5月になってようやくされた。 その結果,同年7月になってようやく原告は,休業補償給付支給申請書を提出することができた。 cまた,平成11年6月8日に,原告は,被告会社へ年金加入証明書等各種証明書発行を依頼したところ,被告会社は,通常は1週間以内に処理され郵送されるべき各種証明書を棚上げにし,1か月以上経過してようやく郵送した。 dさらに,平成11年4月に原告は結婚したので,直ちに被告会社へ健康保険被扶養者届を提出したところ,被告会社は,3か月間,手続を放置し,同年7月になってようやく処理した。 原告は,上記の被告会社の過失により手続を遅延され,経済的精神的損害を被った。 (ウ)本社呼び出しと社宅明渡し命令被告会社は,平成11年6月10日付け書面(甲11)において,原告に対し,同月18日までに診断書の提出等を命じた。 しかし,原告は,当時,精神科へは2週間に1回受診していたところ,被告会社もそれを承知していながら,あえて1週間もない期間を指定して提出を命じた。 また,被告会社は,原告が当時「神経症」との診断を受け,体調が思わしくなかったことを承知しながら,原告に対し,懲戒処分の脅しの下で本社への出社を強制した。 さらに,原告の意見を聞くことなく,一方的に社宅の明渡しを期限を指定して 神経症」との診断を受け,体調が思わしくなかったことを承知しながら,原告に対し,懲戒処分の脅しの下で本社への出社を強制した。 さらに,原告の意見を聞くことなく,一方的に社宅の明渡しを期限を指定して求めてきた。 原告は,このような被告会社の行為により,著しい精神的苦痛を被った。 (エ)Eからの脅迫Eは,平成13年7月30日,原告がPTSDに罹患していたことを十分承知していながら,原告に対し,電話で「いいかげんにせいよ,お前。おー,何考えてるんかこりゃあ。ぶち殺そうかお前。調子に乗るなよ,お前」などと脅迫した(以下「本件発言」という。 。 。)その結果,原告は,この電話の直後,気分が悪くなり,救急車でG病院に運ばれた。 その後も,Eは,原告に対して,脅迫的な文言で一方的な示談を強要した。 (3)原告の入通院と後遺障害ア入通院(ア)原告は,本件事件があった平成10年11月17日,H病院に救急車で搬送された。原告は,同病院脳外科において頭部打撲及び髄液漏疑の診断を受けて緊急入院し,翌18日,退院した。 原告は,同月19日,I病院整形外科で診療を受け,頚部挫傷と診断され,同月29日まで同病院において通院治療を受けた。 なお,原告は,同月19日,G病院脳外科でも診療を受けた。 (イ)原告は,平成10年12月7日,F病院整形外科で診療を受け,中心性脊髄損傷と診断された。 原告は,同日,同病院理学診療科でも診療を受け,平成11年5月27日まで,同科においてリハビリ治療を受けた。同科においては,中心性脊髄損傷による左手指機能障害と診断され,平成12年6月13日に症状固定とされた。 (ウ)原告は,平成10年11月30日,F病院精神科で診療を受け,平成12年3月27日まで通院治療を受けた。原告は,平成11年6月14日,同科医師J(以下「 12年6月13日に症状固定とされた。 (ウ)原告は,平成10年11月30日,F病院精神科で診療を受け,平成12年3月27日まで通院治療を受けた。原告は,平成11年6月14日,同科医師J(以下「J医師」という)によりPTSDとの診断。 を受けた。 原告は,同年6月12日,K病院に救急車で搬送され,同病院内科で診療を受けた。同科では精神的要因による蕁麻疹と診断された。 原告は,F病院精神科に通院していたが,平成12年3月をもって同科が一旦廃止されたため,同年4月12日からはG病院精神科において通院治療を開始した。原告は,同科医師L(以下「L医師」という)。 により,PTSDとされ「精神障害を認め,日常生活又は社会生活に一定の制限を受ける」等と診断された。 イ後遺障害(ア)本件事件又はこれとその後のEの本件発言等被告従業員による不法行為とが相まって,原告にはPTSDによる後遺障害が残った。その程度は,自賠法施行令2条別表後遺障害別等級表第9級10号「神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されること」に該当する。 aJ医師の診断原告は,J医師からPTSDの診断を受けている。 原告代理人がJ医師に意見を聴取したところ「遅くとも平成11,年6月14日に原告がPTSDに罹患していたことに医学上間違いはない。診断は,DSM-Ⅳ基準により行った」とのことであり,そ。 の詳細は以下のとおりである。 基準A(外傷的出来事)は,殺されるかもしれないと感ずるような暴行により頚部挫傷の傷害を受けた本件事件を体験したこと等からすれば,危うく死ぬ又は重症を負うような出来事又は自分の身体の保全に迫る危険をその人が体験したといえるし(基準A①,原告が殺さ)れるかもしれないと述べていたこと等からすれば,その人の反応 と等からすれば,危うく死ぬ又は重症を負うような出来事又は自分の身体の保全に迫る危険をその人が体験したといえるし(基準A①,原告が殺さ)れるかもしれないと述べていたこと等からすれば,その人の反応が強い恐怖に関するものといえる(基準A②。 )基準B(再体験症状)は,Cの夢を見ること,体の方で反応してしまうこと,うなされていたことがあること等からすれば,外傷的出来事の1つの側面を象徴し,又は類似している内的又は外的きっかけに暴露された場合に生じる強い心理的苦痛(基準B④)又は生理学的反応性(基準B⑤)を再体験され続けている。 基準C(持続的回避と反応性の麻痺)は,本件事件のことを忘れたいと考え,できるだけ考えないようにしていること(基準C①,被)告会社の本社がある山口県や本件事件の場所である干葉県を避けようとしていること(基準C②,社会生活が十分行えず,頭がぼーっと)して家で寝ている状況で,母によれば老人のようになってしまったこと(基準C④)等から,3つによって示されている。 基準D(持続的な覚醒完遂症状)は,不眠や寝付きが悪いこと(基準D①,加害者には会わないようにしていること(基準D④)等か)ら,2つによって示されている。 bL医師の診断原告は,L医師からもPTSDの診断を受けている。 L医師による原告をPTSDであるとして認定した根拠は同医師による多数の診断書や意見書に記載されているとおりであり,この点は原告代理人も同医師から聴取して確認済みである。 例えば,平成12年6月11日付け意見書(甲19の2・19頁)では,出社時足がすくむ,冷や汗が出て暴行時の記憶がリアルに思い出され恐怖心が出る。会社との交渉時,全身蕁麻疹が出るとの主訴,そして不眠・食欲不振,勤務先(C)と同じ店をみるだけで暴行時の事が苦痛を伴って想起さ がすくむ,冷や汗が出て暴行時の記憶がリアルに思い出され恐怖心が出る。会社との交渉時,全身蕁麻疹が出るとの主訴,そして不眠・食欲不振,勤務先(C)と同じ店をみるだけで暴行時の事が苦痛を伴って想起される等の初診時所見をもとにして認定している。 平成13年8月21日付け意見書(甲19の2・46頁)でも,勤務先へ行ったり,手紙が来ると蕁麻疹が出る,暴行を受けた人と同じような容貌の人を見ると恐怖心が出てくる,自宅で週1回程突然何の予期なく暴行を受けた時のことをついさっき起きたことのように想起してしまい,体が硬くなってしまう,そうなると横になって閉眼していると少しは楽になる,その他頭の鈍痛がほぼ毎日あるとの主訴及び自覚症をもとにして認定している。 同年11月21日付け診断書(甲19の2・54頁)でも,現在症としては,週に1回程の誘因のないフラッシュバックが続いていること,またC関係のものをみると外傷時の記憶がよみがえり恐怖感におそわれる,また暴行を受けた人と同じ様な体型の人をみると同じくその時の恐怖感がよみがえるなどの症状があり,その他にも自律神経系の症状も多数出現していることをもとに認定している。 その後も,原告は,フラッシュバックも1日1回出てくる,具体的には恐怖はもちろん体が動かなくなってしまうような,相手の顔が浮かんできたり,閉じこめられ,トイレも戸を閉められない,突然襲われる驚愕発作があること等の症状を呈しており,定期的な診断結果を もとにして認定している。 c本件事件とPTSDの発症との因果関係本件事件と原告のPTSDの症状との間の因果関係は,カルテや診断書等から明らかである。 例えば,平成12年6月11日付けのL医師による意見書(甲19の2・19頁)には,被告会社との交渉時や会社を連想させるものに接したときに症状が悪化する 果関係は,カルテや診断書等から明らかである。 例えば,平成12年6月11日付けのL医師による意見書(甲19の2・19頁)には,被告会社との交渉時や会社を連想させるものに接したときに症状が悪化すると記載されているし,カルテにも,原告の訴えとして本件事件や被告会社に関する記載が継続的に多数記載されている。 また,原告代理人がJ医師に意見を聴取したところ,本件事件の前後の仕事・生活ぶりの比較,原告の診断時の話の中に本件事件やその後の会社の対応やフラッシュバック等が多く述べられていたこと,社宅の片づけに行った後体調を崩していること,電話で被告会社の人と話をした後に一気に蕁麻疹が発生したこと,他の原因が見あたらないこと等から,本件事件との因果関係は明らかであるとしている。 (イ)鑑定によれば,原告は妄想性障害に罹患しているとのことであるが,仮にそうであるとしても,かかる疾患は後遺障害である。 この点,鑑定においても「改善の可能性もある,今後の予測につい」ては「不可能「従来は難治といわれており,少なくとも妄想に焦点を」,絞った治療を集中的に行わない限りは難治といってよい」と指摘する程に精神学上も確立したものはないというのが現状である。 また,原告が主治医に意見を求めたところ,鑑定人が勧める治療は試しており,原告には成果が出ておらず,7年以上も慢性化していること等から治る見込みはないと回答された。 (4)責任原因ア被告Bの責任原因 被告Bは,原告に対し,請求原因(2)アのとおり本件事件において暴行を加えた。 したがって,被告Bは,原告に対し,不法行為に基づく損害賠償責任を負っている。 イ被告会社の責任原因(ア)請求原因(2)イ記載のEによる本件発言など被告会社の従業員による原告に対する行為は,被告会社の従業員が一体となって組 し,不法行為に基づく損害賠償責任を負っている。 イ被告会社の責任原因(ア)請求原因(2)イ記載のEによる本件発言など被告会社の従業員による原告に対する行為は,被告会社の従業員が一体となって組織的に行ったものであり,損害発生との間に因果関係が認められるので,被告会社は民法709条に基づく不法行為責任を負う。 (イ)上記(2)アの本件事件における被告Bの暴行及び上記(2)イ(エ)のEの本件発言は,いずれも被告会社の被用者がその事業の執行のために行ったものであるから,被告会社は,かかる不法行為により原告が被った損害を賠償する責任を負う。 (ウ)上記の被告らの共同の不法行為により,原告は以下の損害を被ったのであるから,被告らは原告に対して共同不法行為責任を負う。 (5)損害額ア入院付添看護費5000円原告が入院した翌日,原告の母が付き添った。 入院付添看護費は,1日につき5000円を下らない。 イ入院雑費3000円原告は2日間の入院中,諸雑費の支出を余儀なくされた。 入院雑費は1日につき1500円を下らない。 ウ通院交通費28万2180円(ア)G病院通院日数は100日である。 交通費は往復860円である(市バス・片道200円,地下鉄・片道 230円。処方薬局への交通費も同額である。 )(200円+230円)×2×2×100=17万2000円(イ)I病院通院日数は4日である。 通院にはタクシーを利用せざるを得ず,タクシー代金は片道3000円を下らない。 3000円×2×4=2万4000円(ウ)F病院通院日数は69日である。 タクシーを利用せざるを得ず,タクシー代金は片道610円であった。 610円×2×69=84,180円(エ)K病院通院日数は1日である。 救急車で運ばれた帰りにタクシーを利用せざるを得ず である。 タクシーを利用せざるを得ず,タクシー代金は片道610円であった。 610円×2×69=84,180円(エ)K病院通院日数は1日である。 救急車で運ばれた帰りにタクシーを利用せざるを得ず,タクシー代金は2000円を下らない。 2000円×1=2000円(オ)まとめ以上より,通院交通費は,合計28万2180円となる。 エ文書料2万1240円原告は,被告会社等へ診断書等を提出する必要が生じたため,診断書等を各病院に請求し,合計20枚の交付を受けた。そのうち,8枚の文書料(1360円×8=1万0880円)については,被告会社から代金を受領済みである。 したがって,原告が支出した文書料は,F病院及びG病院(1360円×9,H病院,K病院及びI病院(3000円×3)の2万1240円)である。 オ休業損害636万7634円原告は,本件事件により現在も休業を余儀なくされている。 原告は,平成11年12月分までの賃金を被告会社から支給されていたが,それ以降今日まで賃金の支給を受けていない。 原告の本件事件前3か月間の平均日額賃金は7709円であるから,上記金額に同年12月26日から平成14年3月末日までの休業日数826日を乗じた636万7634円が休業損害となる。 カ入院慰謝料200万円原告は,本件事件により多大な精神的苦痛を受けた。とりわけ,被告Bによる本件事件の結果,PTSDの障害を受け,これまで3年以上にもわたって通院を余儀なくされてきたばかりでなく,今後も全快するまでの目処すら不明のまま,治療を継続しなければならないこと,一家の生計を支えなければならない地位にあること等を考慮するならば,入院期間2日間,通院実日数173日(平成10年11月19日は2つの病院に通院した)の入通院による慰謝料は,少なくとも200 こと,一家の生計を支えなければならない地位にあること等を考慮するならば,入院期間2日間,通院実日数173日(平成10年11月19日は2つの病院に通院した)の入通院による慰謝料は,少なくとも200万円を下回ることはな。 い。 キ後遺症慰謝料616万円原告は,PTSDないし妄想性障害の後遺障害があり,これは「神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されること」として自賠法施行令2条別表後遺障害別等級表第9級10号に該当する。 このように,原告の被った後遺症による精神的苦痛の大きさは察するに余りある多大なものであり,その慰謝料は616万円を下らない。 ク逸失利益4069万0278円上記のとおり,原告にはPTSDないし妄想性障害の後遺障害があり,これは後遺障害第9級10号に該当するから,労働能力喪失率は35パー セントである。 PTSDないし妄想性障害は,未だ症状固定に至っていないが,逸失利益の起算点は,便宜上,本訴を提起した平成14年3月末日(原告は29歳)とする。 そうすると,原告は昭和48年1月19日生まれの男子であり,29歳から67歳までの38年間働き,この間少なくとも大卒の男子労働者の平均賃金額に等しい収入を得たはずであるから,本件事件当時の賃金を賃金センサス産業計・企業規模計・男子労働者大卒全年齢平均年収額689万2300円を基礎とし,ライプニッツ方式により逸失利益を求めると,4069万0278円となる。 6892300×0.35×16.8678=4069万0278円ケ弁護士費用500万円原告は,被告らの不法行為により,本訴の提起を弁護士に委任せざるを得なかった。その弁護士費用は500万円を下らない。 (6)よって,原告は,被告ら及び承継参加人に対し,被告Bに対しては民法 0万円原告は,被告らの不法行為により,本訴の提起を弁護士に委任せざるを得なかった。その弁護士費用は500万円を下らない。 (6)よって,原告は,被告ら及び承継参加人に対し,被告Bに対しては民法709条,719条に基づき,被告会社及び承継参加人に対しては同法709条,715条,719条に基づき,連帯して5932万0751円及びこれに対する不法行為の日である平成10年11月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 請求原因に対する認否,反論(被告B)(1)当事者等請求原因(1)の事実は認める。 (2)不法行為ア被告Bの不法行為請求原因(2)アの事実は,傷害の程度を除き,認める。 本件事件における被告Bの暴行行為は,①左手で原告の胸倉を掴んで原告の背中を板壁に2,3度叩きつけた,②頭突きを1回し,原告の唇から血がにじみ出た,③左手で原告の胸倉を掴んで,原告の頭・背中・腰を板壁に各1度打ち付けたという程度であり,その暴行の程度は,原告が大けがをするようなものではない。 イその他の不法行為請求原因(2)イの事実は知らない。 (3)原告の入通院及び後遺障害請求原因のうち,H病院における診療内容は認め,その余は知らない。 (4)責任原因請求原因(4)は争う。 (5)損害額請求原因(5)の事実は否認する。 (被告会社及び承継参加人)(1)当事者等請求原因(1)の事実は認める。 (2)不法行為ア被告Bの不法行為請求原因(2)アのうち,被告Bが平成10年11月17日午後5時30分ころ,C千葉中央店内において,原告に対し,その胸倉を掴んで同人の頭部,背部等を板壁等に打ちつけた上,同人の顔面に頭突きをするなどの暴行を加え,よって,同人に加療約4週間を要する頚部挫傷の傷害を負わせ ,C千葉中央店内において,原告に対し,その胸倉を掴んで同人の頭部,背部等を板壁等に打ちつけた上,同人の顔面に頭突きをするなどの暴行を加え,よって,同人に加療約4週間を要する頚部挫傷の傷害を負わせたことは認め,その余の事実は知らない。 イその余の不法行為(ア)労災隠し等a請求原因(2)イ(ア)aの事実は否認する。 Dは,本件事件の翌日である平成10年11月18日,本件事件の調査と原告の見舞いのため,H病院に行き原告と面会したが,当日に原告から労災申請手続の依頼を受けたことはなかったし,Dから医療費や労災の話をしたこともない。 本件事件の翌日の時点ではD自身が本件事件の概要を客観的に把握しておらず,Dが原告からの労災申請手続の依頼を拒絶するなどいうことはあり得ないし,そのようなことを独断で決定する権限も有していなかった。また,本件事件の翌日,事件の状況も十分確認していない中で,被告会社が組織的にこのような決定を行い,これを実行することなどできるはずもない。 b同bのうち,被告Bが原告に対して謝罪したことは認め,その余は否認する。 Dは,原告が警察に被害届を提出することを妨害したこともない。 実際,原告は警察に被害届を提出している。 (イ)労災手続遅延等a請求原因(2)イ(イ)aのうち,原告が労災の療養補償給付申請書を労働基準監督署へ提出したことは認め,その余は否認する。 この労災申請は,原告が被告会社に相談なく単独で行ったものであり,被告会社は原告から労災申請手続を求められたことも,これを拒否したこともない。 b同bのうち,平成11年11月末ころ,Eが原告に電話し,診断書の提出及び面談を求めたこと,原告が面談に応じない旨返答したこと,被告会社が被告会社側で申請することを前提として休業補償給付支給申請書等の書類を原告に 成11年11月末ころ,Eが原告に電話し,診断書の提出及び面談を求めたこと,原告が面談に応じない旨返答したこと,被告会社が被告会社側で申請することを前提として休業補償給付支給申請書等の書類を原告に郵送したこと,その書類には労働できなかった期間の始期として「平成12年1月1日」と記載されていたこと,原告が被告会社に休業補償を本件事件発生日に遡及させて適用するよ う求めたこと,被告会社が最終的にはこれを拒絶したことは認め,その余は否認する。 Eは,原告に対し,直接会って原告の病状や将来の職場復帰等について話し合いをしたい旨申し入れたが,原告に対して強制的ないし高圧的に面談等を強要したことはない。 被告会社は,原告から休業補償の申請を原告が行うという考えを聞いたことはない。被告会社は,休業補償申請をするには専門的知識が必要であることから,申請が滞りなく円滑に行えるよう,便宜を図ったものである。 被告会社は,原告に対し,平成11年12月末日まで給与を支払っていたのであるから,休業補償の支給開始日を「平成12年1月1日」と記載したのは正当な処理である。 また,休業補償の支給開始日を遡及させるためには,被告会社が支給した本件事件発生日以降の給与を返還してもらい,意図的に給与が支給されていない状態を作り出さなければならなかったが,そのような処理は休業補償のあるべき姿ではなかったことから,遡及させることができない旨原告に回答したものである。 c同cのうち,平成11年6月8日,原告が被告会社に対して年金加入証明書等各種証明書の発行を依頼したこと,被告会社が原告に各種証明書を郵送したことは認め,その余は否認する。 d同dのうち,平成11年4月に原告が結婚し,被告会社へ健康保険被扶養者届を提出したところ,被告会社は,同年7月に同届出を処理したこと が原告に各種証明書を郵送したことは認め,その余は否認する。 d同dのうち,平成11年4月に原告が結婚し,被告会社へ健康保険被扶養者届を提出したところ,被告会社は,同年7月に同届出を処理したことは認め,その余の事実は否認する。 (ウ)本社呼び出しと社宅明渡し命令請求原因(2)イ(ウ)のうち,被告会社が原告に対して平成11年6月10日付け書面(甲11)において診断書の提出と状況説明のための本 社への出社,社宅の明渡しを求めたことは認め,その余は否認する。 当時,原告は名古屋の実家に戻っており,千葉市所在の社宅を全く使用していなかったことなどから,被告会社は,原告に対し,上記社宅の明渡しを求めたのである。被告会社は,翌月の平成11年7月から,名古屋市内に新しく社宅を借り受けて原告に提供している。 (エ)Eからの脅迫請求原因(2)イ(エ)のうち,平成13年7月30日,Eが原告に対して電話で,原告が主張する文言と同旨の発言をしたことは認めるが,その余は否認する。 この発言は,原告が被告会社の批判を繰り返し,原告に前向きな姿勢が見受けられないことや,原告が逐一Eの発言の揚げ足をとって絡んでくることにEが激情し,思わず失言をしてしまったものにすぎない。また,原告は長時間に及ぶ電話による話し合いの中の一部の発言のみを抜き出して主張しているにすぎない。 (3)原告の入通院及び後遺障害請求原因(3)の事実は否認する。 アPTSDの診断は,代表的な診断基準であるDSM-Ⅳ基準(別紙1記載の診断基準)によって行うべきであるところ,以下のとおり,原告の症状は同基準を満たしていないから,原告はPTSDに罹患していない。 (ア)外傷的出来事(基準A)以下の2つが共に認められる外傷的な出来事に暴露されたことが必要である。 ①実際にまたは危うく死ぬ 状は同基準を満たしていないから,原告はPTSDに罹患していない。 (ア)外傷的出来事(基準A)以下の2つが共に認められる外傷的な出来事に暴露されたことが必要である。 ①実際にまたは危うく死ぬまたは重傷を負うような出来事を,1度または数度,または自分または他人の身体の保全に迫る危険を,その人が体験し,目撃し,または直面した(基準A①)②その人の反応は強い恐怖,無力感または戦慄に関するものである (基準A②)この診断項目は,PTSD診断における必須要件であり,かつ,最重要の項目である。また,この例外的に強い外傷的出来事は,客観的にも,主観的にもその存在が必要であり,主観的体験の強度を強調すべきものではないとされている。 a基準A①本件事件における暴行は,原告の背中を板壁に3回程,頭や背中等をロッカーに3回程打ち付けたほか,原告の顔に1回頭突きをし,また,原告の頭,背中,腰等を板壁に1回打ち付けたという程度のものである。壁やロッカーへは,7分くらいの力で打ち付けたに過ぎない。 この暴行により原告は「頭部外傷」の傷害を受けたが,CT検査では異常はなく,髄液鼻漏の疑いも否定され,1日限りの観察入院を経て退院する際にも特に他覚的異常や自覚症状は認められていない。原告の上記外傷は,本件事件翌日の診断書(甲15の1・13頁)によれば「数日間の安静を要する見込み」という程度の軽度なものであ,る。 以上からすれば,本件事件は,到底「実際にまたは危うく死ぬまたは重傷を負うような」外傷的出来事に該当するものではない。 b基準A②原告は,休憩室に自分を呼び出した被告Bに対し「二回目でしょう。 どうしようもない人だ」等と言って鼻で笑う態度を示し,被告Bを。 挑発している。また,被告Bから一連の暴行を受ける中,自ら被告Bに詰め寄って「店長, に自分を呼び出した被告Bに対し「二回目でしょう。 どうしようもない人だ」等と言って鼻で笑う態度を示し,被告Bを。 挑発している。また,被告Bから一連の暴行を受ける中,自ら被告Bに詰め寄って「店長,謝って下さい」等と言い,さらに,被告Bと。 睨み合った状態で「それって脅迫ですか,辞めさせられるものなら,辞めさせてみなさい。そんなことをしたら,あなたは首ですよ」な。 どと言っている。 また,被告Bが原告を休憩室に呼び出し,原告に暴力を振った後,パート従業員のMに止められて休憩室から出るまでの時間は,僅か3,4分程度に過ぎず,しかも,その殆どが言い争いであり,実際に暴行を加えた時間は数秒程度である。また,被告Bは,原告の背中を板壁に3回程,頭や背中等をロッカーに3回程打ち付けたところで原告か。 。 ら「離して下さい」と言われ,一旦,手を離して暴行を止めているさらに,原告は,本件事件の翌日,入院先のH病院で被告Bと1時間近く面談している。その際,原告が被告Bに怯えている様子は全くなかった。また,本件事件から2週間後には,F病院精神科J医師に対して「店長はサルなのであんなことをする「ひどいですよ」。」,。 と明るい口調で本件事件のことを語っている。 以上からすれば,原告が本件事件により「強い恐怖,無力感または戦慄」を覚えた様子は全く見られない。 したがって,外傷的出来事(基準A)を満たさない。 (イ)再体験症状(基準B)再体験症状とは,外傷的出来事を継続的に再体験することであり,外傷的出来事を今現実に体験しているかのように体感する,いわゆる「フラッシュバック」が特徴的な症状といえる。 この点,原告の診療録には「Cの夢は見る,うなされていたことはある」等の記載があるが,こうした想念はいずれも極めて曖昧,漠然としたものであり,現実にそ 「フラッシュバック」が特徴的な症状といえる。 この点,原告の診療録には「Cの夢は見る,うなされていたことはある」等の記載があるが,こうした想念はいずれも極めて曖昧,漠然としたものであり,現実にその場に連れ戻されて暴行を受けているような現実感を伴ったものではない。 また,原告は,Cから危害を加えられる,つけ狙われている,殺される等の感覚を抱いているようである。しかし,PTSDのフラッシュバックは,過去の外傷的出来事の再体験症状であるところ,原告の上記意識は,現在又は将来における迫害の不安(確信)であり,両者は,精神 医学の上では明確に区別される。 以上からすれば,原告には,再体験症状(基準B)は見られない。 (ウ)持続的回避と反応性の麻痺(基準C)外傷と関連した刺激の持続的回避と全般的反応性の麻痺は,PTSDの基本的症状である。 原告は,事件現場となったC千葉中央店を始めとして,Cの店舗を頻繁に訪れている。その際,原告には怯えた様子などは全くなく,平気で買い物等しており,不安症状が見られていない。また,原告は,千葉の社宅に留まることに固執し,結局,名古屋の実家近くに被告会社が用意した社宅に移り住んでいる。 被告会社の用意した社宅に移り,その近くのCの店舗に買い物等に出かけるなどという行動は,およそ回避行動とは懸け離れたものである。 また,原告は,F病院精神科のJ医師が初めてPTSDと診断した平成11年6月14日の約2か月前の平成11年4月に結婚し,平成12年4月からは大学院にも通っている。 原告には「重要な活動への関心又は参加の著しい減退」もない。 以上からすれば,原告には,持続的回避と反応性の麻痺(基準C)は見られない。 イ原告がPTSDに罹患していないのは以上のとおりである。 仮に,原告が何らかの精神疾患に罹患していたとしても, もない。 以上からすれば,原告には,持続的回避と反応性の麻痺(基準C)は見られない。 イ原告がPTSDに罹患していないのは以上のとおりである。 仮に,原告が何らかの精神疾患に罹患していたとしても,それは,自己中心的な原告が,原告の性格的要因や環境要因からのストレス反応として生じた精神症状を,本件事件のせいであるとして正当化したものに過ぎない。 この点,鑑定人Nは,原告の症状を妄想性障害であり,現時点での就労はほぼ不可能であり,妄想的不安のために他人と接することが著しく制限されているために,後遺障害等級9級に相当するとする。 (ア)しかし,そもそも妄想性障害は,特殊な性格傾向がなければ発症せず,一般的に暴行によって妄想性障害が発症することはなく,その有病率は極めて低く妄想性障害は極めて希な病気である。精神科医ですら妄想性障害の診断は困難であり,妄想性障害が慢性化したことは被告にとってはいかんともし難いものであり,本件事件と原告が妄想性障害を発症したこととの間には相当因果関係が認められないというべきである。 (イ)鑑定人Nが「原告の病状はなお不安定であり,一部には改善の可能性もあるので,後遺障害という見方はできない「心因性妄想による。」,妄想性障害という診断は,原告を精神的に援助,治療することによってその不安が軽減される可能性があり,原告は現実には自分が思っているほどの恐怖には直面していないという意味である。原告がこうした意味を適切に理解するならば,妄想性障害の治療が進行し,生活機能ならびに就労能力が改善する可能性がある」と指摘するように,原告には後。 遺障害があるとはいえない。 (ウ)妄想性障害は職業的及び社会的機能が障害されるものではなく,後遺障害等級9級に相当するようなものではない。仮に,現時点での就労はほぼ不可能 ように,原告には後。 遺障害があるとはいえない。 (ウ)妄想性障害は職業的及び社会的機能が障害されるものではなく,後遺障害等級9級に相当するようなものではない。仮に,現時点での就労はほぼ不可能であるのならば,それは原告の極めて特殊な性格,思考,意欲等に由来するものであり,被告らがそれについて責任を負うべきことではない。 (エ)鑑定人Nが「妄想性障害の治療が進行し,生活機能ならびに就労能力が改善する可能性がある「妄想性障害の治療予後は,かつて考え。」,られていたよりも良く,半数程度は治療可能であることが,文献上,指摘されている「原告の)発症の原因が明確であり,発症が若年で。」,(あり,病前の適応がよいこと,精神科治療に通い続けていることは,治療にとって有利な点である「妄想性障害は,基本的に妄想対象以外。」,に関する思考,行動については目立った症状を示さないことが多いので, 妄想が消失するか,実生活に支障にならない程度に軽快すれば,労働能力は本件暴行前と同程度に回復する可能性がある「妄想性障害に関。」,する治療対応が集中的に行われたと仮定すれば,治癒する率は50%程度である「妄想性障害が今日まで慢性化したのは,妄想に対して適。」,切な注意関心が向けられず,治療対応がなされなかった結果である,。」「鑑定人の経験的な判断としては,病状の改善に1年,病前の労働能力の回復までにさらに1年程度が見込まれると予想する」と指摘するよ。 うに,原告の妄想性障害は十分治癒するものであり,相当な治療期間は上記の程度である。したがって,万一,本件事件と原告が妄想性障害を発症したこととの間に相当因果関係が認められるとしても,相当因果関係が認められる損害の期間は,上記に限定されるべきである。 (4)責任原因請求原因(4)は争 て,万一,本件事件と原告が妄想性障害を発症したこととの間に相当因果関係が認められるとしても,相当因果関係が認められる損害の期間は,上記に限定されるべきである。 (4)責任原因請求原因(4)は争う。 (5)損害額請求原因(5)の事実は否認する。 なお,被告会社は,原告に対し,平成11年12月26日から同月31日までの給料を同年12月分の給料として支払済みである。 被告ら及び承継参加人の抗弁(1)過失相殺本件事件では,原告は被告Bに対し挑発するように「二回目でしょう。 どうしようもない人だ」と鼻で啜り笑うような態度をとったり,自己の上。 司である被告Bに対し「やれるものならやってみなさい。でも出来ないでしょう。情けないやつだ・・・」などと挑発しており,その結果,被告B。 は,その言を借りれば「生まれて初めてこのような屈辱を受けた」と感じ,。 暴行に及んだ。 このような経緯からすれば,被害者である原告には被告Bを言葉や態度 等によって侮辱・挑発するなどして刺激興奮させ,その暴力行為を誘発したと見られるところが相当程度にあるから,相当程度の過失相殺がされるべきである。 (2)素因減額暴行及び受傷の程度からして異常に長期にわたり神経症状が残存していること,5年以上にわたり継続的治療を続けているにもかかわらず,原告の症状には何ら改善の兆しが見えないこと,原告の言動等から偏向した性格が窺われることなどの事情からすると,原告の神経症状については原告固有の心因的要因が大きく影響していることは明白である。 したがって,その損害賠償額の算定に当たっては,相当程度の素因減額が認められるべきである。 (3)損害の填補ア被告会社は,原告に対し,平成10年11月17日から平成11年12月31日までの給料として292万3446円を支払った。 っては,相当程度の素因減額が認められるべきである。 (3)損害の填補ア被告会社は,原告に対し,平成10年11月17日から平成11年12月31日までの給料として292万3446円を支払った。 イ原告は,平成11年12月29日より平成18年2月22日まで,本件事件による労働者災害補償保険の休業補償給付金として合計1038万3125円の支払を受けた。 ウ原告は,平成18年2月23日以降分についても療養・休業補償給付金として日額4625円(7709円×0.6)の割合による給付金を受領し得るから,仮に原告に本件事件による逸失利益が認められる場合でも,この金額が控除されるべきである。 (4)相殺ア被告会社は,原告に代わって,健康保険共済組合等に対し,平成12年2月1日から平成14年12月末日までの間,健康保険料,厚生年金料,雇用保険料,社宅家賃,共済会費として合計171万8170円を支払った。 イ被告会社は,原告に対し,平成15年1月24日の第5回弁論準備期日において,上記立替金請求債権と本訴訟において原告が被告会社に請求する損害賠償請求債権とを対当額にて相殺する旨の意思表示をした。 抗弁に対する認否,反論(1)過失相殺抗弁(1)は否認ないし争う。 原告の挑発行為が本件事件の契機となったものではないし,精神障害が暴行発生直後に発症するわけでもない。 (2)素因減額抗弁(2)は否認ないし争う。 原告の性格として鑑定人Nが指摘するのは「正義感が強く,不正を見過ごすことはできない」というもので,同人も,こうした性格は「病的なものなのではなく,社会的に不適応を起こしているわけではない「日常生活や業」,務において特に支障となったり,予め精神医学的な症状と結びつくようなものではない」と断定している。すなわち,原告の性格は, のではなく,社会的に不適応を起こしているわけではない「日常生活や業」,務において特に支障となったり,予め精神医学的な症状と結びつくようなものではない」と断定している。すなわち,原告の性格は,真面目で先輩の不正を見逃さず,堂々と指摘できる優れた社会的正義感と自立心の持ち主と判断しているのであり,このような性格は,社会的に美徳とされることはあっても「特殊な性格傾向」と非難されるべき筋合いのものではなく,少なくとも労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものとは到底いえない。 (3)損害の填補抗弁(3)ア,イの事実は認め,ウは争う。 (4)相殺抗弁(4)アのうち,被告会社が,原告に代わって,健康保険共済組合等に対し,平成12年2月1日から平成14年12月末日までの間,健康保険料,厚生年金料,雇用保険料,社宅家賃(ただし,平成13年11月から平成1 4年2月までの社宅家賃9万3600円を除く,共済会費として合計16。)2万4570円を支払ったことは認め,その余の事実は否認する。 理由 請求原因(1)の事実,被告会社が,原告に代わって,健康保険共済組合等に対し,平成12年2月1日から平成14年12月末日までの間,健康保険料,厚生年金料,雇用保険料,社宅家賃(ただし,平成13年11月から平成14年2月までの社宅家賃9万3600円を除く,共済会費として合計162万。)4570円を支払ったことは当事者間に争いがなく,原告が労災の療養補償給付申請書を労働基準監督署へ提出したこと,平成11年11月末ころ,Eが原告に電話し,診断書の提出及び面談を求めたこと,原告が面談に応じない旨返答したこと,被告会社が被告会社側で申請することを前提として休業補償給付支給申請書等の書類を原告に郵送したこと,その書類には労働できなかっ ,診断書の提出及び面談を求めたこと,原告が面談に応じない旨返答したこと,被告会社が被告会社側で申請することを前提として休業補償給付支給申請書等の書類を原告に郵送したこと,その書類には労働できなかった期間の始期として「平成12年1月1日」と記載されていたこと,原告が被告会社に休業補償を本件事件発生日に遡及させて適用するよう求めたこと,被告会社が最終的にはこれを拒絶したこと,平成11年6月8日,原告が被告会社に対して年金加入証明書等各種証明書の発行を依頼したこと,被告会社が原告に各種証明書を郵送したこと,平成11年4月に原告が結婚し,被告会社へ健康保険被扶養者届を提出したところ,被告会社は,同年7月に同届出を処理したこと,被告会社が原告に対して平成11年6月10日ころ,書面で診断書の提出と状況説明のための本社への出社,社宅の明渡しを求めたこと,平成13年7月30日,Eが原告に対して電話で,原告が主張する文言と同旨の発言をしたことは,原告と被告会社及び承継参加人との間で争いがない。 本件事件の発生とその後の経緯について上記争いのない事実に証拠(甲1の1~11,2ないし5,6の1~3,11ないし14,15の1~3,16の1・2,17の1・2,18の1~4,19の1~4,28,29,33,34,35の1・2,36ないし38,乙 イ11ないし17,19,23ないし25,乙ロ1,証人D,同O,同E,原),告本人(第1,2回,被告B,鑑定の結果)及び弁論の全趣旨を総合すれば次の事実が認められる。 (1)本件事件ア原告(昭和48年1月19日生)は,平成9年3月1日,被告会社に入社し,その後,被告会社の経営する衣料品販売店舗であるC学園東大通り店他2店舗の勤務を経て,平成10年10月26日から,千葉市中央区所在のC千葉中央店に店長代行 )は,平成9年3月1日,被告会社に入社し,その後,被告会社の経営する衣料品販売店舗であるC学園東大通り店他2店舗の勤務を経て,平成10年10月26日から,千葉市中央区所在のC千葉中央店に店長代行として勤務していた。 被告Bは,平成7年4月,被告会社に入社し,C東大阪長田店店長,関東千葉エリアのマネージャー職等を経て,平成10年9月からC千葉中央店に店長として勤務していた。 被告Bは,原告が通常よりも店長の資格を取得するのが遅れていたこともあり,同人に対し,日頃から他の従業員よりも厳しく接していた。 イ原告は,平成10年11月17日,C千葉中央店において勤務中,従業員間の連絡事項等を記載する「店舗運営日誌」に「店長へ」として,前,日の陳列商品の整理,売上金の入金などに関する被告Bの仕事上の不備を指摘する記載をし,その横に「処理しておきましたが,どういうことですか?反省してください。P」と書き添えた(甲1の9。 )上記記載を見た被告Bは,原告にさらし者にされたと感じ,同日午後5時30分ころ,原告を休憩室に呼びつけ「これ,どういうこと「感情的」,になっていただけやろ」などと説明を求めた。 。 これに対して原告は「事実を書いただけです「感情的になっていない。 。」2回目でしょう」と答えた上,右手を握りしめ殴るような仕草を見せた。 被告Bに対し「2回目でしょう。どうしようもない人だ」と言い,鼻で。 笑う態度を示した。 被告Bは,この原告の態度に激高し,原告の胸倉を掴み,同人の背部を 板壁に3回ほど打ち付けた上,側にあったロッカーに同人の頭部や背部を3回ほど打ち付けた。 原告が,被告Bに詰め寄り,謝罪を求めたところ,被告Bは,原告に向かって「ご免なさい」と言って謝る素振りをしながら同人の顔面に1回頭突きをした。 その後も口論が続き, や背部を3回ほど打ち付けた。 原告が,被告Bに詰め寄り,謝罪を求めたところ,被告Bは,原告に向かって「ご免なさい」と言って謝る素振りをしながら同人の顔面に1回頭突きをした。 その後も口論が続き,原告が「それって脅迫ですか,辞めさせられるものなら,辞めさせてみなさい。そんなことをしたら,あなたは首ですよ」と言ったのに対し,被告Bは「首になったって関係ねえよ,お前を。 辞めさせてから俺も辞めてやる」と申し向けた。 。 そこで原告が「もう,あなたと話しても無駄です」と言いながら休憩。 室を出ようとしたところ,被告Bは「まだ,話しは終わっていない」と。 言いながら,原告の首のあたりを両手で掴み,板壁に同人の頭部,背中等を1回打ち付けた。そのとき,パート従業員であるMが仲裁に入り,暴行は収まった。 原告と被告Bは売場に戻ったが,原告は「気分が悪い」などと言い,。 トイレに行った。被告Bが,様子を見に行ったところ,原告は洗面台の前にしゃがみ込み,救急車を呼ぶよう申し出た。このとき,原告は鼻水を出していた。 被告Bは,原告の態度は大げさに過ぎると思ったが,上司のQに電話で相談の上,救急車を呼んだ。原告は,救急車で千葉県若葉区所在のH病院に搬送された。 ウ原告は,平成10年11月17日,H病院において,頭部外傷,髄液鼻漏疑と診断され,経過観察のため入院した。原告は,後頭部痛,背部痛,吐き気,めまい等を訴えていた。髄液鼻漏疑の診断は,原告が透明な鼻水を出していたことによるものであったが,頭部CT検査等の結果,異常は見られなかった(甲15の1~3。 ) 原告及び被告Bの上司に当たるDは,同月18日午後2時ころ,H病院を訪れ,病室で原告と面談した。その際,原告は,まだ気分が優れない旨話した。 Dは,同病院院長から原告の容態について問題ない旨の説明 原告及び被告Bの上司に当たるDは,同月18日午後2時ころ,H病院を訪れ,病室で原告と面談した。その際,原告は,まだ気分が優れない旨話した。 Dは,同病院院長から原告の容態について問題ない旨の説明を受けたが,念のため再検査をするよう依頼した。そのため,再度,頭部CT検査が行われたが異常はなく,髄液鼻漏の疑いは否定された。院長は,Dに対し,このまま退院しても支障がない旨説明した。 また,Dは,同病院に被告Bを呼び出し,本件事件の経緯を聴取した上で,病室の外の談話スペースにおいて,同日午後4時ころ,原告と被告Bを引き合わせた。Dの立ち会いの下,原告と被告Bは30分程度面談した。 その際,被告Bは,原告に対し,何度も頭を下げて謝ったが,原告は取り合わなかった。Dは,原告に対し「被告Bの将来もあるので,警察に届,け出ないでほしい」旨を述べたが,原告は「警察に届け出る」旨を答。 ,。 えた。 原告は,同日午後6時20分ころ,母親に付き添われて退院し,そのまま,名古屋の実家に向かった。 被告Bは,同日午後11時ころ,謝罪するため,原告の実家に電話したが,やはり原告は取り合わなかった。 (2)その後の経緯ア原告は,平成10年11月19日,気分が悪いなどと訴え,G病院脳外科を受診したが,同科医師は調子が悪ければ翌日も来院することとして帰宅させた(甲19の1・4。 )原告は,同日,その足で,I病院整形外科を受診した。原告は,後頭部痛,吐き気及びめまいを訴えて入院を希望したが,レントゲン,頭部CT及び頸部MRIによる検査の結果,異常は見られなかったため,同科医師は原告を帰宅させた。同医師は,原告の病名を「頸部挫傷」とし,同日よ り約4週間の加療を要する旨の診断書を交付した(甲1の4。 )その後も原告は,同月24日,26日,29日と同病院整形 同科医師は原告を帰宅させた。同医師は,原告の病名を「頸部挫傷」とし,同日よ り約4週間の加療を要する旨の診断書を交付した(甲1の4。 )その後も原告は,同月24日,26日,29日と同病院整形外科に通院を続け,後頭部痛,吐き気,嘔吐,めまい,右手違和感等を訴えて入院を希望したが,特段の異常は見られず,入院には至らなかった。同病院医師は,原告の症状の主因は頭部の外傷であると考え,F病院脳神経外科に原告の診療を依頼した(甲17の1・2。 )イ原告は,平成10年11月30日,F病院脳神経外科を受診し,平成11年2月ころまで通院治療を受けた(甲19の2・7頁。 )また,原告は,平成10年12月7日から,背中の痛み,動きの悪さ,左手のしびれ等を訴え,同病院整形外科及び理学診療科にも通院を開始し,平成11年5月ころまで投薬,リハビリ治療等を受けた。同病院整形外科医師は,原告の病名を「中心性脊髄損傷「中心性頚髄損傷による左手指」,機能障害」とし,平成12年6月13日に症状固定した旨診断している(甲2,12。 )ウ原告は,平成10年12月2日,千葉中央警察署に本件事件について被害届を出した(甲1の4。 )原告は,同年11月下旬ころ,知人の社会保険労務士に相談し,同年12月ころ,労働基準監督署に対し,療養補償給付申請書を提出することとなった。 被告会社では,原告の療養中,給与全額分を支給することとし,被告会社管理部労務・給与担当のO(以下「O」という)は,平成11年1月。 9日ころ,原告に対し,診断書の提出を求めた。原告は,同月25日,F病院脳神経外科医師より,原告の病名を「頭部外傷Ⅱ型後」とする診断書の交付を受け,被告会社に送付した(乙イ23・添付資料①。 )被告会社は,原告に対し,給与全額分の支給を開始した。Oは,同年3月から 院脳神経外科医師より,原告の病名を「頭部外傷Ⅱ型後」とする診断書の交付を受け,被告会社に送付した(乙イ23・添付資料①。 )被告会社は,原告に対し,給与全額分の支給を開始した。Oは,同年3月から同年4月にかけて,原告に対し,この支給を継続するためには毎月 1回診断書を提出する必要があるとして,口頭ないし書面により再三診断書の提出を求めたが,原告はこの求めに応じないでいた(乙イ23・添付資料②~⑤。 )被告会社は,同年3月分から原告の給与全額分の支給を停止した。 エ原告は,平成10年12月1日,睡眠障害,頭痛,頭がぼーっとする等訴えてF病院精神科を受診した,同科J医師は睡眠導入剤を処方した。 その際,原告は明るくやや多弁な状態にあり,J医師に対し「店長はサルなのであんなことをする。ひどいですよ」と明るい口調で話した。 。 「性格」欄には「おっとり型,几帳面,気が強い」との記載がある。 その後,原告は同科へ通院を中止していたが,平成11年4月19日,再び頭痛を訴えて受診した。その後,原告は,概ね2週間に1回の頻度で同科に通院するようになった(甲18の2,19の2。 )原告は,平成11年5月10日,同科を受診し,J医師に対し,後頭部痛,頭痛,吐き気,めまい,身体に対する違和感等を訴えたほか「会社,に行ったがその後両手にバーと蕁麻疹が出た。一度も出たことはなかったが,皮膚科には行かなかった。首のリハビリの医師から精神的なものではと言われた」旨話した。J医師は,同日,原告に対し,原告について。 「神経症」と診断し,病名を「神経症」とし「上記により本日より1ヶ月間の休養加療を要する」旨付記した診断書を交付した(乙イ19,乙2。 3・添付資料⑥。 )原告は,被告会社に上記診断書を送付した。 オOは,同年6月10日ころ,原告に対し「上記診断 本日より1ヶ月間の休養加療を要する」旨付記した診断書を交付した(乙イ19,乙2。 3・添付資料⑥。 )原告は,被告会社に上記診断書を送付した。 オOは,同年6月10日ころ,原告に対し「上記診断書では,疾病と本件事件との因果関係が判断できない。同月18日までに因果関係についての記載のある診断書を提出してもらいたい。これが確認できるまでは給与の支払はできない。このまま期限までに,因果関係が明記された診断書の提出をせず,正当な理由なき無断欠勤が続く場合は,もはや,退社したもの と見做さざるを得ず,あるいは,当社就業規則に従って対応し,やむなく懲戒処分を検討せざるを得ない。本社に出社の上,これまでの状況の説明を求める。C千葉中央店の任務を6月10日付けをもって解くので千葉市内の社宅を1週間以内に明け渡してもらいたい」旨記載した書面を送付。 した(甲11,乙イ23・添付資料⑦。 )原告は,同年6月12日午後5時ころ,被告会社から送付された上記書面を見たところ蕁麻疹を呈し,救急車にて名古屋市昭和区所在のK病院に搬送された。原告は,同病院内科にて,精神的要因による蕁麻疹と診断された(甲3,16の1・2。 )原告は,同年6月14日,F病院精神科を受診し,J医師に対し,被告会社から上記書面が送付されたこと,K病院に救急車で搬送されたことを話したほか「Cの夢は見る,身体の方で反応してしまう,うなされてい,たことはある,考えないようにはしている」と話した(甲18の2。 。 )J医師は,同日,原告について,DSM-Ⅳの基準(別紙1記載の診断基準)に基づき「外傷後ストレス障害(神経症」と診断し,病名を「外)傷後ストレス障害(神経症」に改め「H10.11.17の事件に関連)して上記病名の状態を呈している。引き続きH11.6.10.より2ヶ月 づき「外傷後ストレス障害(神経症」と診断し,病名を「外)傷後ストレス障害(神経症」に改め「H10.11.17の事件に関連)して上記病名の状態を呈している。引き続きH11.6.10.より2ヶ月間の休養加療を要する」旨付記した診断書を交付した(甲4,乙23。 ・添付資料⑧。 )原告は,上記診断書を被告会社に送付した。 Oは,上記診断書の送付を受けた同月18日ころ,原告との対応を当時,管理部部長であったEに引き継いだ。 カ原告は,平成11年4月に結婚し,被告会社に対し,健康保険被扶養者届を提出したが,直ちには処理されなかった。 原告は,同年6月8日に,被告会社に対し,年金加入証明書等の各種証明書の発行を依頼したが,直ちには処理されなかった。 キEは,原告との対応をOから引き継いで間もなく,原告に対し,3月分以降の給与全額分支給,傷病見舞金,結婚祝い金の支給,原告の結婚に伴う健康保険証発行手続,年金加入証明書等の各種証明書の発行の処理をしたほか,原告の求めに応じ,使用されていなかった千葉市所在の社宅に代えて名古屋市千種区に社宅を用意することとした。 原告は,平成11年7月中旬ころ,千葉市所在の社宅を引き払い,名古屋の実家から名古屋市千種区所在の社宅に転居した。 J医師は,他の病院の診断書が必要である旨の原告の求めに応じ,同年7月12日,G病院精神科に対し,自らの所見を示した上で原告の診断を依頼した。 原告は,同月15日,G病院精神科L医師の診察を受けた。原告は,L医師に対し「被告会社に行ったときは,冷汗,足がすくむ,恐怖があり,被告会社に行かないときは,頭痛,吐き気,めまいなどがある「会社。」,に行くと本件事件を思い出す。思い出そうとしなくても,ごくまれに日常生活で起きることもある。Cの店に入ると起きる「そうゆう場所はで。 行かないときは,頭痛,吐き気,めまいなどがある「会社。」,に行くと本件事件を思い出す。思い出そうとしなくても,ごくまれに日常生活で起きることもある。Cの店に入ると起きる「そうゆう場所はで。」,きれば避けている。でもまだ社員だから手続のために行かねばならない「被告会社が診断書の提出を求めるのは,なるべく軽い診断書を使。」,って「もう治ってる」とあればくびにしてしまう。まだ社員なので上司。 の命令には従う必要があるから,蕁麻疹が出るようになった」などと話。 した。 L医師は,同日,原告が本件事件により外傷後ストレス障害となった旨診断し,原告に対し,その旨の診断書を交付した(甲19の2・9頁。 )原告は,平成12年3月27日まで,F病院精神科に通院したが,同年3月をもって同科が一旦廃止されることになったため,J医師から紹介を受けてG精神科に通院することになった。 原告は,F病院精神科に通院中,J医師に対し,不眠,頭痛,めまい, 吐き気等を訴えるほか「やる気ないなら辞めろと言われている感じ」,。 (平成11年6月21日「追いつめられた感じです「上司が横領し),。」,ていて,それを見つけて辞めていただきたいとこそっと言ったら殴られた「殴られたときのことを思い出すかとの問いに対し)会社に行く。」,(と思い出す。イメージとして連想するものとあうとフラッシュバック」(同年7月12日「フラッシュバックがある「体内で電気が走って),。」,いるような,皮膚の下に虫がいるような(同年8月9日「会社から。」),電話があったりすると,ガタッとくるんです(同年9月6日「スト。」),レスがくると皮膚に出ます「被告会社等の人と会ったりすると蕁麻疹。」,が出ます(同月27日「会社で話すと暗い方向に引きずり込 たりすると,ガタッとくるんです(同年9月6日「スト。」),レスがくると皮膚に出ます「被告会社等の人と会ったりすると蕁麻疹。」,が出ます(同月27日「会社で話すと暗い方向に引きずり込まれる。」),ので,Rの電話みたいで… (同年11月8日「殴られたときのこと」),(を思い出すことはあるか,との問いに対し)そういうこともある。何か恐怖感,追い込まれた感じ(平成12年1月17日「仕事の方から電。」),話が入るとすごくいやな気分になる「会社に行かなければ少しいいけ。」,ど,Cのことが新聞によく出ていて社長のコメントとかあると頭痛が出ます(同年2月14日)などと話している(甲18の2。 。」)クEは,同年11月ころ,原告に電話し,診断書の提出及び面談を求めるとともに,それに応じられないなら労災の休業補償に切り替える必要がある旨申し向けたが,原告はこれに応じなかった。原告は,Eに対し,面談,,に応じられない理由として「医者から,被告会社の関係者と面談したり仕事の話しをしてはいけないと言われている」旨伝えたが,Eは,その。 後も複数回にわたり,原告に面談を求めた。 Eは,平成12年1月5日ころ,原告に対し,労災の休業補償に切り替えるよう求める書面を送付し,同月26日に電話でその意向を確認したところ,原告はこれに応じる旨回答した。このとき,Eは,原告に対し,被告会社が医療機関関係者から原告の治療に係る記録の提供や説明を受ける ことを同意する旨の同意書の提出を求めた(甲35の1・2。しかし,)原告は,被告会社に対し,同年5月17日までその同意書を提出しなかった。 また,Eは,同年1月ころ,被告会社側で手続を進める前提で,原告に対し,労働できなかった期間の始期が「平成12年1月1日」と記載された労 会社に対し,同年5月17日までその同意書を提出しなかった。 また,Eは,同年1月ころ,被告会社側で手続を進める前提で,原告に対し,労働できなかった期間の始期が「平成12年1月1日」と記載された労災の休業補償給付申請に係る書類を郵送した。原告は,同書類を自ら労働基準監督署に提出しなければならないと考え,同書類をもとにF病院に診療担当者の証明を求めに行ったところ,療養期間の始期と食い違いがあるので被告会社に確認をとらないと証明できないと言われた。そこで,原告は,労災の休業補償を事件発生日に遡及させて適用するようEに求めたが,Eは,平成13年5月ころに至って初めて休業補償は会社から給料が支給されていないことを前提とした制度であるからそのような扱いはできないと回答をした。 ケ原告は,平成12年4月12日からG病院精神科に通院を開始した。通院の頻度は,概ね2週間に1回であった(甲19の2・4。また,原告)は,同年5月10日から,蕁麻疹の治療のため,同病院皮膚科にも通院を開始した(甲19の3・4。 )原告は,同月17日ころ,被告会社に対し,F病院から原告の治療に係る記録の提供や説明を受けることを同意する旨の同意書を提出した。しかし,このとき既に,同病院精神科は閉鎖され,被告会社は,記録の提供や説明を受けることができなかった。 Eは,同年10月2日ころ,再度,G病院から原告の治療に係る記録の提供や説明を受けることを同意する旨の同意書の提出を求めたが,原告はこれに応じなかった(乙イ24。 )コ原告は,G病院精神科に通院した際,L医師に対し,不眠,頭痛,めまい,吐き気,記憶力の低下を訴えるほか「フラッシュバック,きっかけ, があることが多い。通常は忘れている。会社関係のことですね。会社の上司から問い合わせてきたときなどはいかんです。一 痛,めまい,吐き気,記憶力の低下を訴えるほか「フラッシュバック,きっかけ, があることが多い。通常は忘れている。会社関係のことですね。会社の上司から問い合わせてきたときなどはいかんです。一度,電話きたとき,蕁麻疹がきて救急車で運ばれたことがある。町中でC見るとダメですね」。 (平成12年4月12日「会社とのやり取りがあるとストレスが出るの),か蕁麻疹が出て。暴力連想させるものがあるとよくないです。会社のことが話題になるとよくないですね。会社から解雇の通告きたとき,一気に気分が悪くなって救急車で運ばれた(同年5月24日「フラッシュバ。」),ックは,頻度がかつてと比べれば減ってはいる。勤務中呼び出されて個室で被害にあったので,近い状況になると起こることが多い。例えばトイレにはいるようなときとか,狭い室内にはいるときですね「状況と無。」,(関係に出てくることは,との問いに対し)ふっと出ることはあります,。」「頻度的には,週に2,3回,一度でると消えるのに時間がかかる,。」「外出したときに近い背格好の人がいるとつらいものがある(同年7月」19日「会社との交渉時に蕁麻疹が出ました(同年10月4日,),。」)「暴力シーンがあると怖いのでいまはテレビは見ていません(同月18。」日「会社と交渉していたが,そしたら蕁麻疹が本当に出てしまって」),。 (同年11月29日「会社がいろいろ言ってくる。一人の医者じゃ駄目),だから,ほかの医者にもかかれとか言ってくる。他の医者にも診断書をもらった。PTSDと言われた「フラッシュバックは会社と連絡をとる。」,と出る。外傷の時の場面というかその時の恐怖感が出てくる。頭痛がひどくなる。店舗に行くとイメージが出てきますね(同年12月27日,。」)「フ れた「フラッシュバックは会社と連絡をとる。」,と出る。外傷の時の場面というかその時の恐怖感が出てくる。頭痛がひどくなる。店舗に行くとイメージが出てきますね(同年12月27日,。」)「フラッシュバックは,4,5日は誘因なくあった。柄の悪いやつを見たりするとありますね。テレビも封印しているのであまり見ないですけどね。 時間的には2,3分で,そうなったら気分転換はかるために他のことを考えたりしている。そういう意味では問題ない(平成13年3月14日,。」)「いま一番困っていることは,との問いに対し)1番には,突然蕁麻疹( が出くること,会社に行く,手紙が来ること,2番には,突然恐怖心が出てくる,外出中似た人が来ると,3番には,突然思い出されてしまう,ついさっき見たみたいな感じで。週一回くらいの割合である(同年7月4。」日「テレビや新聞を見ない理由は,との問いに対し)ふいに会社名が出)(るとか,暴力場面出るとフラッシュバックが出るため「フラッシュ。」,(バックはこれを避ければ出ないですか,との問いに対し)頻度は減ったがいまも出る「家の中より外にいた方がいろいろなもの買っている人が。」,目に入ってフラッシュバックの頻度は増えますね。今回の加害者の体格に似た人を見て怖かったですね「一番きついのは会社関係ですね(同。」,。」年11月7日)などと話している(甲19の2。 )サ原告は,平成13年7月30日,Eに電話し,被告会社内における本件事件の報告書の開示などを求めた。この電話は2時間以上に及んだが,その会話の中で,Eは原告に対し「いいかげんにせいよ,お前。おー,何考えてるんかこりゃあ。ぶち殺そうかお前。調子に乗るなよ,お前」など。 と声を荒げながら申し向けた(本件発言。 )原告は,この電話の直後,気分 で,Eは原告に対し「いいかげんにせいよ,お前。おー,何考えてるんかこりゃあ。ぶち殺そうかお前。調子に乗るなよ,お前」など。 と声を荒げながら申し向けた(本件発言。 )原告は,この電話の直後,気分が悪くなり,嘔吐したとして,母親に付き添われて救急車でG病院に搬送された。原告は,医師の問診を受け,30分程休んで帰宅した(甲19の2・41頁。 )シEは,原告との上記電話のやり取りの中で,原告が原告自身で休業補償給付支給申請をするものと誤解していることに気付き,部下のTに対し,原告から休業補償給付支給申請書を受け取り,原告の休業補償の手続を進めるよう指示した。Tは,原告から休業補償給付支給申請書を受け取り,平成13年8月6日に労働基準監督署に同申請書を提出することとなった。 原告は,同月23日ころ,平成11年12月29日を始期とする労災の休業補償給付金を受給することとなった(甲6の1~3,36,38。 )ス原告は,平成14年4月1日,名古屋地方裁判所に,本訴訟を提起した。 原告は,G病院精神科に通院した際,L医師に対し「訴訟がマスコミに報道されて,それから蕁麻疹がひどくなっている。全身に出てくる。体中風船のようになってしまった(平成14年4月「フラッシュバック。」),も1日1回出てくる。具体的には,恐怖もちろん,身体が動かなくなってしまうような,何かに睨まれているような(同月24日)などと話した。」(甲19の2。 )被告会社は,調査会社に原告の行動調査を依頼し,同年5月1日,同社による原告の行動調査がされた(乙イ17。 )原告は,名古屋市から,L医師の診断に基づき,同年6月5日,障害等級3級とする精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた(甲13,14。 )原告は,本件事件後,在職証明書,福利厚生倶楽部の入会申込書,ギヤ 告は,名古屋市から,L医師の診断に基づき,同年6月5日,障害等級3級とする精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた(甲13,14。 )原告は,本件事件後,在職証明書,福利厚生倶楽部の入会申込書,ギヤマンカード(クレジット機能付きの社員証,出産祝い金給付申請証を作)成したり,診断書等の提出物を定期メール便で本社に送るため,8回ほど名古屋市所在のCの店舗を訪れている。 違法行為(1)被告Bは,原告に対し,本件事件において暴行を加えたというのであるから,その違法性は明らかであり,これにより原告が被った損害を賠償すべき責任を負う。 なお,本件事件において仲裁に入ったMの刑事事件の供述調書(甲1の7)には,最後の暴行態様について首を絞めながら板壁に打ち付けた旨の記載があるが,被告Bの刑事事件の供述調書(甲1の10・11)に首ないし首のあたりを掴んでと記載されているほかは,原告の供述調書も含めて「胸倉を掴み」と記載されていること,本件事件後,受診時に首を絞められた旨訴えたり,絞首による傷害も見受けられないことからすれば,首を絞めたとは認定できない。また,原告は,本件事件後,意識喪失があった旨供述するが,刑事記録にもそのような記載はなく,本件事件直後にH病院において 「受傷後,意識消失はなかった」旨記載されていることからすれば(甲15の2・14頁,意識喪失があったとは認め難い。 )(2)Eは,原告に対し「いいかげんにせいよ,お前。おー,何考えてるんかこりゃあ。ぶち殺そうかお前。調子に乗るなよ,お前」と声を荒げながら。 原告の生命,身体に対して害悪を加える趣旨を含む発言をしており(本件発言,Eが,原告がPTSDないし神経症である旨の診断を受け,担当医か)ら,被告会社の関係者との面談,仕事の話しをすることを控える旨告知されていたことを 害悪を加える趣旨を含む発言をしており(本件発言,Eが,原告がPTSDないし神経症である旨の診断を受け,担当医か)ら,被告会社の関係者との面談,仕事の話しをすることを控える旨告知されていたことを認識していたことからすれば,本件発言は違法であって,不法行為を構成するというべきである。 (3)原告は,本件事件の翌日,上司のDから,本件事件は労災には該当しないと言われたほか,本件事件を警察へ通報しないように命令された旨主張し,同主張に沿う原告本人の供述(第1,2回)及び同人作成の陳述書(甲28,37)はある。確かに,原告自ら労働者災害補償保険の療養補償給付の手続を行っていることをも勘案すると,証人Dの反対趣旨の供述にもかかわらず,Dが原告に対し,本件事件を警察へ通報しないように要請すると共に,治療費は被告Bに請求するように述べたことは窺えるものの,これ以上に「本,件事件は労災には該当しない「本件事件を警察へ通報しないように命令す。」る」とまで述べたとまでは認め難い。そして,Dが,本件事件を警察へ通。 報しないように要請すると共に,治療費は被告Bに請求するように述べたとしても,被告会社の担当者として必ずしも不当な処置であるとは言い難く,それが原告の病状を悪化させた可能性は否定できないものの,不法行為を構成するとはいえない。 また,原告は,被告会社が労災手続を遅延させた旨主張し,確かに,Eが原告の病状にもかかわらず面談を強く要請したことや,原告がEに対し労災の休業補償を事件発生日に遡及させて適用するよう求めたことに対するEの回答が遅れたことがその休業補償給付金申請の手続に遅延が生じた一因であ るとは認められる。しかし,その手続が遅れた原因として,被告会社が本件事件後再三にわたり被告会社が医療機関関係者から原告の治療に係る記録の提 その休業補償給付金申請の手続に遅延が生じた一因であ るとは認められる。しかし,その手続が遅れた原因として,被告会社が本件事件後再三にわたり被告会社が医療機関関係者から原告の治療に係る記録の提供や説明を受けることを同意する旨の同意書や本件事件との因果関係を明らかにする診断書の提出を求めたのに原告がこれに応じなかったことをも挙げられることからすると,それが原告の病状を悪化させた可能性は否定できないものの,Eが原告の病状にもかかわらず面談を強く要請したことや,原告がEに対し労災の休業補償を事件発生日に遡及させて適用するよう求めたことに対するEの回答が遅れたことをもって,直ちに不法行為を構成するとはいえない。 さらに,原告は,年金加入証書等各種書類の発行を1か月以上放置された,健康保険被扶養者届の処理を3か月間放置されたとも主張し,確かに,年金加入証書等各種書類の発行や健康保険被扶養者届の処理が遅れてはいる。それが原告の病状を悪化させた可能性は否定できないものの,この程度の遅れをもって直ちに不法行為を構成するとはいえない。 原告は,診断書の提出,本社への出頭,一方的な社宅の明け渡しを求められたなどとも主張し,確かに被告会社担当者Oは,平成11年6月10日ころ,原告に対し,診断書の提出,本社への出頭,一方的な社宅の明け渡しを求めている。しかし,被告会社が本件事件後再三にわたり社内手続に必要な診断書の提出を求めたのに原告がこれに応じなかったなどの経緯からすれば,それが原告の病状を悪化させた可能性は否定できないものの,原告の主張にかかる被告会社担当者Oの行為が不法行為を構成するとはいえない。 原告の障害,(1)上記2の認定事実に加えて,証拠(甲4,5,13,19の2,乙イ210,19,22,27ないし30,鑑定の結果)によれば,次の事 Oの行為が不法行為を構成するとはいえない。 原告の障害,(1)上記2の認定事実に加えて,証拠(甲4,5,13,19の2,乙イ210,19,22,27ないし30,鑑定の結果)によれば,次の事実が認められる。 アPTSDの知見(乙イ2,10,22,鑑定の結果) 外傷後ストレス障害(PTSD)とは,強烈な恐怖体験により心に大きな傷を負い,再体験症状,回避・麻痺症状,覚醒亢進症状等が発生し,そのため社会生活,日常生活の機能に支障を来すという疾患である。 米国精神医学界の診断基準であるDSM-Ⅳによれば,別紙1記載の診断基準によりPTSDの診断を行うこととされている。 ただし,極端なストレス因子に暴露された者に起こる精神病理をすべてPTSDとするべきではない。極端なストレス因子に対する症状の反応様式が他の精神疾患(例えば,短期精神病性障害,転換性障害,大うつ病性障害)の基準を満たしている場合には,これらの診断をPTSDの代わりに,又はそれに追加して下さなければならないとされている。 イ妄想性障害の知見(乙イ28ないし30,鑑定の結果)(ア)妄想性障害とは,妄想を主要症状とする疾患群の総称である。 妄想性障害の妄想は,実際に生じたことや生じても不思議ではないことを核にして妄想が形成され,ひとたび妄想が生じ,適切な対応がなされなかった場合には,相手の些細な言動の背後に妄想に従って悪意を読み取り,現実的な不満,不手際があると,自分が被害的に思っていたことが証明されたと納得するが,他方で,被害妄想を打ち消すような肯定的な情報は受け入れようとはしないとされている。 被害型が最も多く見られる病型であり,被害型は,妄想の中心主題が,陰謀を企てられる,だまされる,監視される,追跡される,毒を盛られたり薬を飲まされる,悪意をもって中傷される,いや ないとされている。 被害型が最も多く見られる病型であり,被害型は,妄想の中心主題が,陰謀を企てられる,だまされる,監視される,追跡される,毒を盛られたり薬を飲まされる,悪意をもって中傷される,いやがらせをされる,長期目標の遂行を邪魔されるという確信に関する場合に適用される。些細なことが誇張され,妄想体系の焦点となることがある。妄想の焦点が,法的措置によって償わなければならない不正におかれること(好訴パラノイア)もしばしばあるとされている。 (イ)米国精神医学界の診断基準であるDSM-Ⅳによれば,別紙2記載 の診断基準により妄想性障害の診断を行うこととされている。 (ウ)生涯罹病危険率は,0.05パーセントから0.1パーセントの間と推測され,非常にまれな疾患であるとされている。 妄想性障害に関しては,常に本人の特徴的な病前性格が論じられており,被害妄想を特徴とする場合には,他人との関係に特に敏感であったり,正義感などの主張が強いといった特徴が指摘されている。 発症年齢は,思春期から晩年までにわたっており,多様である,経過は様々であり,特に,被害型においては,障害は慢性的であるが,妄想的確信へのとらわれがしばしば強くなったり弱くなったりする,他の例では,完全寛解の期間があった後に再発が続くこともあれば,疾患が数か月のうちに寛解し,再発を認めないこともしばしばあることが指摘されている。 一方,被害型が発症の誘因となった出来事やストレス因子と関連している場合は予後がよいかもしれない,妄想性障害の予後はかつて考えられていたよりもよく半数程度は治療可能である,妄想性障害では基本的に妄想対象以外に関する思考,行動については目立った症状を示さないことが多いので,妄想が消失するか実生活に支障にならない程度に軽快すれば労働能力は回復する可能性があ 可能である,妄想性障害では基本的に妄想対象以外に関する思考,行動については目立った症状を示さないことが多いので,妄想が消失するか実生活に支障にならない程度に軽快すれば労働能力は回復する可能性があるとの指摘もある。 ウ診断書による原告の症状原告は,平成11年4月19日から平成12年3月27日まではF病院精神科に,平成12年4月12日以降はG病院精神科にそれぞれ通院し,担当医師から以下の診断を受けた。 (ア)平成11年5月10日付け診断書(乙イ19)(病名)神経症(付記)1か月間の休養加療を要する。 (イ)平成11年6月14日付け診断書(甲4) (病名)外傷後ストレス障害(神経症)(付記)本件事件に関連して上記病名の状態を呈している。引き続き平成11年6月10日より2か月間の休養加療を要する。 (ウ)平成11年7月15日付け診断書(甲19の2・9頁)(病名)外傷後ストレス障害(付記)本件事件を受けたことを契機として疾患が発症した。 (エ)平成12年6月11日付け意見書(甲19の2・19頁)(病名)外傷後ストレス障害(主訴)出社時に足がすくむ。冷汗が出て暴行時の記憶がリアルに思い出され恐怖心が出る。会社との交渉時,全身蕁麻疹が出る。頭痛,めまい,吐き気,頚部痛(初診時所見)不眠,食欲不振,勤務先(C)と同じ店を見るだけで暴行時のことが苦痛を伴って想起される。主訴の症状。 (現在の症状)頭痛,浮遊感,会社と関係のある事柄に接すると蕁麻疹が出る。同時に暴行時の体験が想起される。 (現在の治療)根治療法は困難であるため,対症療法として抗不安薬,睡眠導入剤などを使用している。最近1,2か月で微熱が治まり,全身の倦怠感が少なくなった。症状が悪化するのは,会社との交渉時や会社を連想させるものに接したときである。 今後の症状の推移につ 不安薬,睡眠導入剤などを使用している。最近1,2か月で微熱が治まり,全身の倦怠感が少なくなった。症状が悪化するのは,会社との交渉時や会社を連想させるものに接したときである。 今後の症状の推移については不明。症状の改善の見込みはあると思うが,急速なものではないと考える。治癒の可能性はある。時期は不明。 (オ)平成13年9月ころの意見書(甲19の2・46頁)(病名)外傷後ストレス障害(主訴及び自覚症)勤務先へ行ったり手紙が来ると蕁麻疹が出る。暴行を受けた人と同じような容貌の人を見ると恐怖心が出てくる。自宅で 週1回ほど突然何の予期もなく暴行を受けたときのことをついさっき起きたことのように想起してしまい,体が硬くなってしまう。そうなると横になって閉眼していると少しは楽になる。その他,頭の鈍痛がほぼ毎日ある。 (治療内容)抗うつ薬,抗不安薬などの向精神薬による薬物療法が中心である。行動療法や認知行動療法がある程度有効とされているが当院を含めPTSDに系統的にこの治療が行われている医療施設が日本では少ないのが現状である。治癒見込みについては不明ですが,可能性はあります。時期は不明。ただ,症状が6か月以上続いていることからすると,予後は不良と考えます。 (カ)平成13年11月21日付け診断書(甲19の2・54頁)(病名)外傷後ストレス障害(付記)上記にて加療中である。現在症としては,週に1回程の誘因のないフラッシュバックが続いていること,また,C関係のものを見ると,外傷時の記憶がよみがえり恐怖感におそわれる。また,暴行を受けた人と同じような体型の人を見ると同じくその時の恐怖感がよみがえるなどの症状がある。その他にも,自律神経系の症状も多彩に出現している。これらの症状があるため,多くの行動が制限を受けている。 テレビを見たり新聞を見 な体型の人を見ると同じくその時の恐怖感がよみがえるなどの症状がある。その他にも,自律神経系の症状も多彩に出現している。これらの症状があるため,多くの行動が制限を受けている。 テレビを見たり新聞を見ることもできない状況である。 (キ)平成14年2月13日付け診断書(甲5)(病名)外傷後ストレス障害(付記)上記にて加療中である。薬物療法は行ってはいるが,不眠,感覚過敏,フラッシュバック,全身倦怠,記銘力障害などの症状があり,就労不能と考えます。 治癒に要する期間は不明である。ただ,症状が6か月以上続いており,予後不良であることが想定されます。 (ク)平成14年5月31日付け診断書(甲13)(病名)外傷後ストレス障害(疾患の状態)憂うつ気分,不眠,外傷時のフラッシュバック,外傷と関係することに出会うと蕁麻疹などが出る,記銘力の若干の低下。 外傷と関係することを避けて生活している。テレビや新聞はそのため見ない。ただ,自宅にいてもフラッシュバックなどが誘因なしでも起こるため,苦痛を伴いながらでも大学院に通って気を紛らわしている。 (生活能力の状態)適切な食事摂取,身辺の清潔保持,金銭管理と買物,通院と服用,他人との意思伝達・対人関係,身辺の安全保持・危機対応,社会的手続や公共施設の利用,趣味・娯楽への関心,文化的社会的活動への参加については,いずれも適切にできる。 精神障害を認め,日常生活又は社会生活に一定の制限を受ける。 エ精神科医Sの意見書(乙イ10,22,27)被告会社提出の上記意見書によれば,精神科医Sは,DSM-Ⅳの基準(別紙1記載の診断基準)によれば,本件事件は,外傷的出来事(基準A①,②)に該当するほど重大なものではない,原告のいうフラッシュバックは表現が非常に曖昧であり,再体験症状(基準B)には当たらない,外傷と 記載の診断基準)によれば,本件事件は,外傷的出来事(基準A①,②)に該当するほど重大なものではない,原告のいうフラッシュバックは表現が非常に曖昧であり,再体験症状(基準B)には当たらない,外傷と関連した刺激の持続的回避・反応性の麻痺(基準C,持続的な覚醒)亢進症状(基準D)の症状も認められないとして,原告はPTSDに罹患していないとする。 オ鑑定意見鑑定人Nは,本件事件の刑事記録,F病院及びG病院における原告の診療録等の鑑定資料を検討した上,平成17年9月22日,原告と面接して同人を診察した結果,以下のとおり判断した。 (ア)心的外傷体験があったからといって,常にPTSDが生じるわけではなく,反応性抑うつ,恐怖症,全般性不安障害,パニック障害,妄想反応等の反応が生じうるところ,(a)上記面接の結果,原告は,被告会社が現在若しくは将来において,原告に対して危害を加えようとする意図を持ち,継続的に監視をし,迫害を受けているという被害感情を有しており,この感情は心因性の被害妄想と判断される,(b)DSM-Ⅳの妄想性障害の診断基準(別紙2記載の診断基準)に照らせば,本件事件及びEの本件発言等その後の被告会社とのやり取りや被告会社の依頼による調査会社の行動調査を受けており,原告が,被告会社に危害を加えられる,つけ狙われている,殺される,監視されている等の被害妄想を抱くことは,完全にあり得ないことではなく,妄想の内容は奇異とはい),えない(基準A,原告には,非常に奇異な妄想,幻覚,解体した会話解体した行動,思考感情の平板化などの陰性症状はない(基準B,社)会的に不適応の状態にあるが,会話,身辺自立,日常生活には支障はない(基準C,軽噪状態という診断がされたことがあるが,明らかに妄)想の持続期間よりも短い(基準D,この妄想 状はない(基準B,社)会的に不適応の状態にあるが,会話,身辺自立,日常生活には支障はない(基準C,軽噪状態という診断がされたことがあるが,明らかに妄)想の持続期間よりも短い(基準D,この妄想を生じさせるような薬物)の使用,身体疾患は認められない(基準E,(c)原告は妄想性障害の)被害型に罹患している。 PTSDについては,(a)本件事件における暴行は,DSM-Ⅳの基準における外傷的出来事の基準A①に相当し,これに対する原告の反応は,程度として非常に軽いが外傷的出来事の基準A②にも相当し,L医師の診察期間中,発作的に暴行のことを思い出して身動きが取れなくなるなど,PTSD様の症状が認められているが,(b)PTSDというのは,暴行被害時の恐怖が,自然に緩解することができずに遷延するものであるのに対して,原告のPTSD様症状は,妄想性障害の増悪と共に出現し,当初は白日夢程度の現実感のない想起であったのが,次第に現 実味を帯びたフラッシュバックへと移行したものであり,過去の暴行に対する原告の恐怖は過去に連れ戻されてしまうかのような想起に由来するものではなく,被告会社から,現在と将来にわたって危害を加えられていることを確信することによって日常的に不安が増強し,その原因となった本件事件のことが想起されたものと考えられる,(c)原告は,本件事件によってPTSDに罹患したことはない。 (イ)原告は,本件事件によって,被告Bが原告に意図的な殺意を抱いているとの妄想反応を生じ,この妄想反応の影響下で,H病院での被告会社の対応が原告の心情を十分に酌むものではなかったため,妄想反応の対象が会社にも拡大し,当夜の被告Bからの電話により,危害を加えるためにやってくるとの恐怖を抱き,被害妄想が強化され,さらに,その後の被告会社との交渉過程におい 酌むものではなかったため,妄想反応の対象が会社にも拡大し,当夜の被告Bからの電話により,危害を加えるためにやってくるとの恐怖を抱き,被害妄想が強化され,さらに,その後の被告会社との交渉過程において,原告の心理的反応が十分に被告会社担当者に理解されず,意思の疎通の不良に対して担当者が原告に苛立ちをぶつけるような対応が見られたため,原告はこれを被告会社の悪意と受け取り,妄想を強化させてきた。 (ウ)原告は,正義感が強く不正を見過ごすことができず,不当な事柄に対して憤り,論理的に相手を問いつめるため,相手がそれを攻撃と受け取りかねないという性格傾向があった。そのような性格傾向がなければ,妄想性障害を生じたとは思われないが,本件事件を体験しなければ,日常的な対人葛藤などで妄想性障害を生じる可能性は生涯にわたって極めて低かったものと考えられる。原告の妄想は,その内容において本件事件と密接に結びついており,それ以外には妄想などの精神病理は広がっておらず,原告に妄想性障害の素因があったとしても,その程度は非常に弱いものであったと考えられる。ただ,こうした関係を,性格傾向の寄与率という数値で表すことは困難である。 (エ)原告の病状は,なお不安定であり,一部には改善の可能性もあるの で,後遺障害という見方はできない。 労働能力については,妄想による不安が活発であるため,現時点での就労はほぼ不可能である。平成15年8月に厚生労働省から示された非器質性精神障害の等級に従えば,妄想的不安のために他人と接することが著しく制限されているために,第9級「対人業務につけない」に相当する。 今後の予測については,発症から数年を経て,これまで治療対象となってこなかった妄想性障害について,今後の治療によってどの程度妄想や社会機能が改善されるのか,どの程度の症状 につけない」に相当する。 今後の予測については,発症から数年を経て,これまで治療対象となってこなかった妄想性障害について,今後の治療によってどの程度妄想や社会機能が改善されるのか,どの程度の症状が固定されたまま残るのか,労働能力がどの程度回復するのかを予測することは不可能である。 治療のためには,発症後早期に適切な対応をすることが重要であるところ,被告会社との交渉過程は逆に妄想を強める結果となっており,治療はもとより自然治癒の可能性も妨げられたと考えられる一方,発症の原因が明確であり,発症が若年であり,病前の適応がよいこと,精神科治療に通い続けていることは,治療にとって有利な点である。抗精神病薬も使用されているが,これを主剤として積極的に増量する余地もまだ残されている。 原告の恐怖を考慮し,精神医療の専門家の助言の下に,C側からも安心の保証が与えられることが望ましい。今後の治療の成否,原告の労働能力の改善は,このような安心感の保証がどの程度に得られるかに依拠しているところが大きい。 労働能力が本件事件前と同程度に回復する見込みを数値化することは現時点では難しいが,今後の原告の治療にとっての有利,不利な点が相殺されると考えた場合,妄想性障害に関する治療対応が集中的に行われたと仮定すれば,治癒する率は50パーセント程度である。治癒に要する期間については,鑑定人の経験的な判断としては,病状の改善に1年, 病前の労働能力の回復までにさらに1年程度が見込まれると予想する。 (2)そこで,本件事件ないしその後のEの本件発言による原告の障害につき検討する。 本件事件は故意による暴行であり,必ずしも軽微なものではないこと,被告Bは同一店舗内で働く原告の直属の上司であり,被告Bは日頃から原告を一人前にするため厳しく接していたことからすれば,本件 討する。 本件事件は故意による暴行であり,必ずしも軽微なものではないこと,被告Bは同一店舗内で働く原告の直属の上司であり,被告Bは日頃から原告を一人前にするため厳しく接していたことからすれば,本件事件がPTSDにおける外傷的出来事に該当することは直ちに否定できず,また,原告は,J医師ないしL医師に対し,フラッシュバックが生じている旨何度も話している。 しかし,その具体的内容は「殴られたときのことを思い出すか,との問(いに対し)会社に行くと思い出す。イメージとして連想するものとあうとフラッシュバック「殴られたときのことを思い出すことはあるか,との問」,(いに対し)そういうこともある。何か恐怖感,追い込まれた感じ「フラッ」,シュバックは会社と連絡をとると出る。外傷の時の場面というかその時の恐怖感が出てくる。頭痛がひどくなる。店舗に行くとイメージが出てきますね」などというものであり,本件事件ないし被告会社それ自体に対する忌。 避感,不安感ないし嫌悪感から生じた反応ではあるかもしれないが,暴行が再現されているような現実感を伴う再体験症状に該当するとは認め難いし,休職に関する手続のためとはいえ,原告は,被告会社と長期間にわたり交渉を続けていたほか,C店舗にも度々訪れており,本件事件それ自体を想起させる会話を意図的に避ける等の症状も認め難い。 その一方で,原告は,本件事件後,以前見られなかった頭痛,吐き気,蕁麻疹等を呈しているほか,被告会社担当者との折衝を通じて,被告会社に対する忌避感,不安感,嫌悪感を抱くようになっており,被告会社からの書面を見たり,本件発言を受けた際,蕁麻疹等を呈して救急車で搬送されるなど,その程度は過剰といっても妨げないまでに達している。 これらからすれば,原告が本件事件ないしその後のEの本件発言によりPT を見たり,本件発言を受けた際,蕁麻疹等を呈して救急車で搬送されるなど,その程度は過剰といっても妨げないまでに達している。 これらからすれば,原告が本件事件ないしその後のEの本件発言によりPTSDに罹患したとは認め難いが,原告は,几帳面で気が強く,正義感が強く不正を見過ごすことができず,不当な事柄に対して憤り,論理的に相手を問いつめるという性格傾向を有していたところ,その原告が,日頃から厳しくあたられていた被告Bから暴行を受けたこと,その後の休職に関する被告会社担当者との折衝のもつれを通じ,担当者ひいては被告会社自体に対して,次第に,忌避感,不安感,嫌悪感を感じるようになり,Eによる「ぶち殺そうかお前」などという本件発言を受けたこと,本訴訟の提起により被告会。 社との対立関係が鮮明化し,また,調査会社による行動調査を受けたことなどが相まって,被告会社が原告に危害を加えようとしているという類の被害妄想を焦点とする妄想性障害に罹患し,今日までその症状を維持,増減させてきたものと認めるのが相当である。 そして,妄想性障害は,常に本人の特徴的な病前性格が論じられており,被害妄想を特徴とする場合,他人との関係に特に敏感であったり,正義感などの主張が強いといった特徴が指摘されるほか,その生涯罹病危険率は0. 05パーセントから0.1パーセントの間と推測される非常にまれな疾患であるとされるところ(上記4(1)イの認定事実,原告の障害の発生及び維持)には,不当な事柄に対して憤り,論理的に相手を問いつめるという性格的傾向が不可欠の素地となり,その後の被告会社担当者との折衝のもつれもこの性格的傾向が相当程度影響を及ぼしているとはいえるが,本件事件が原告の妄想性障害発症の端緒となっており,Eによる本件発言も当時の被告会社担当者との折衝状況と相まって, 社担当者との折衝のもつれもこの性格的傾向が相当程度影響を及ぼしているとはいえるが,本件事件が原告の妄想性障害発症の端緒となっており,Eによる本件発言も当時の被告会社担当者との折衝状況と相まって,その症状に影響を及ぼしたことは否定し難く,本件事件及び本件発言と原告の障害との間には相当因果関係があるというべきである。 妄想性障害の予後は様々であり,被害型においては,障害は慢性的であるが,妄想的確信へのとらわれがしばしば強くなったり弱くなったりする,他 の例では,完全寛解の期間があった後に再発が続くこともあれば,疾患が数か月のうちに寛解し,再発を認めないこともしばしばあるとされる一方,被害型が発症の誘因となった出来事やストレス因子と関連している場合は予後がよいかもしれない,妄想性障害の予後はかつて考えられていたよりもよく半数程度は治療可能である,妄想性障害は,基本的に妄想対象以外に関する思考,行動については目立った症状を示さないことが多いので,妄想が消失するか,実生活に支障にならない程度に軽快すれば,労働能力は本件事件前と同程度に回復する可能性があるとの指摘もあるところ(上記4(1)イの認定事実,鑑定では,原告については,未だ病状が不安定であり,妄想によ)る不安が活発である,今後の治療によってどの程度妄想や社会機能が改善されるのか,どの程度の症状が固定されたまま残るのか,労働能力がどの程度回復するのかを予測することは不可能である,精神医療の専門家の助言の下に,C側からも安心の保証が与えられることが望ましく,今後の治療の成否,原告の労働能力の改善は,このような安心感の保証がどの程度に得られるかに依拠しているところが大きいとしつつも,原告の場合,発症の原因が明確である,発症が若年である,病前の適応がよい,精神科治療に通い続けていると の改善は,このような安心感の保証がどの程度に得られるかに依拠しているところが大きいとしつつも,原告の場合,発症の原因が明確である,発症が若年である,病前の適応がよい,精神科治療に通い続けているという治療に有利な点があること,抗精神病薬を主剤として積極的に増量する余地がある,妄想性障害に関する治療対応が集中的に行われたと仮定すれば,治癒する率は50パーセント程度であり,病状の改善に1年,病前の労働能力の回復までにさらに1年程度が見込まれるとされている。 そして,被告会社や承継参加人において,上記鑑定意見の趣旨を理解し,被告会社や承継参加人が本訴の判決確定後に,原告に対し上記安心の保証をすることが期待できないではない。 以上からすると,原告の障害は,本訴判決言渡後の平成20年12月31日ころには治癒する見込みが高いというべきである。 責任原因 以上によれば,妄想性障害に起因する原告の損害は,それぞれ独立する不法行為である本件事件における被告Bの暴行とその後のEの本件発言が順次競合したものといい得るから,かかる2個の不法行為は民法719条所定の共同不法行為に当たると解される。 したがって,被告Bは,本件発言以降の原告の損害についてもEと連帯して責任を負うから,民法709条,719条に基づき,本件事件及び本件発言によって原告が被った損害の全部について賠償責任を負う。 また,被告会社は,被告B及びEの使用者であり,本件事件及び本件発言はその事業の執行に付き行われたものであると認められるから,715条,719条に基づき,本件事件及び本件発言によって原告が被った損害の全部について賠償責任を負う。 損害額(1)治療費及び入通院費等11万8000円ア入院付添看護費0円原告が,H病院から退院する際,原告の母が付き添っている(弁論の全 原告が被った損害の全部について賠償責任を負う。 損害額(1)治療費及び入通院費等11万8000円ア入院付添看護費0円原告が,H病院から退院する際,原告の母が付き添っている(弁論の全趣旨)が,当時,付き添いが必要であったとは認められない。 イ入院雑費2600円原告は,平成10年11月17日から翌18日までの2日間入院した(甲15の1・2)が,入院雑費は,1日当たり1300円と認めるのが相当であるから,2600円となる。 ウ通院交通費11万5400円証拠(甲16の1・2,17の1・2,18の1~4,19の1~4)及び弁論の全趣旨によれば,原告のG病院への通院回数は100回を下らず,交通費として1回の通院につき片道430円(市バス・200円,地下鉄・230円)を要したこと,I病院,F病院及びK病院の通院回数の合計は74回を下らず,少なくとも1回の通院に付き片道200円を要し たこと(ただし,K病院には救急車により搬送されたから,交通費は復路のみ)が認められるから,下記の計算式により,原告の通院交通費は11万5400円となる。 なお,原告は,F病院の処方薬局への交通費並びにI病院,F病院及びK病院へのタクシー代金を請求するが,これを認めるに足りる証拠はない。 (計算式)430×2×100=86000200×{2×74)-1}=29400(86000+29400=115400エ文書料0円かかる損害が発生したことを認めるに足りる証拠がない。 (2)休業損害1904万7636円ア上記4の認定事実に証拠(鑑定の結果)及び弁論の全趣旨を総合すれば,原告は,本件事件及び本件発言を原因とする妄想性障害により,本件事件から1年以上経過した平成12年1月1日から平成20年12月31日まで休業を余儀なくされるものと 果)及び弁論の全趣旨を総合すれば,原告は,本件事件及び本件発言を原因とする妄想性障害により,本件事件から1年以上経過した平成12年1月1日から平成20年12月31日まで休業を余儀なくされるものと認められる。 イ原告の本件事件当時の平均収入は,日額7709円であった(争いがない)から,これを基礎として,ライプニッツ方式により中間利息を控除して9年間の休業損害の本件事件時の現価を求めると1904万7636円となる。 (計算式)7709円×365×(7.7217-0.9523)=1904万7636円なお,原告は,平成11年12月26日からの休業損害の請求をしているが,証拠(乙イ24,証人E)によれば,被告会社は,原告に対し,平成11年12月31日までの給料を支払っているから,休業損害は,上記 認定のとおり平成12年1月1日から生ずるというべきである。 (3)慰謝料500万円本件事件及び本件発言の態様,原告の傷病の内容・程度,治療経過,通院状況等本件に現れた一切の事情を斟酌すると,原告の慰謝料は500万円が相当である。 (4)後遺障害による逸失利益及び慰謝料0円上記4(2)の認定事実からすると,原告の障害は治癒が見込まれるから,後遺障害とはいえない。したがって,後遺障害による逸失利益及び慰謝料は認められない。 (5)素因減額加害行為と発生した損害との間に因果関係が認められる場合であっても,その損害が加害行為によって通常生じる程度や範囲を超えるものであり,かつ,その損害の拡大について被害者側の心因的要素等が寄与している場合には,損害の公平な分担の見地から,民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用し,損害の拡大に寄与した被害者側の過失を斟酌することが相当であると解される。 妄想性障害は,本人の特徴的な病前性格が論じられて 損害の公平な分担の見地から,民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用し,損害の拡大に寄与した被害者側の過失を斟酌することが相当であると解される。 妄想性障害は,本人の特徴的な病前性格が論じられており,被害妄想を特徴とする場合,他人との関係に特に敏感であったり,正義感などの主張が強いといった特徴が指摘される(上記4(1)イの認定事実)ところ,原告の障害の発生及びその持続には,不当な事柄に対して憤り,論理的に相手を問いつめるという性格的傾向による影響が大きいと認められる。 そうすると,上記認定の損害額合計2416万5636円から60パーセントを減額するのが相当であるから,損害額は966万6254円となる。 (6)過失相殺被告ら及び承継参加人は,原告が侮辱・挑発するなどして被告Bを刺激興奮させて暴力行為を誘発したとして,相当程度の過失相殺をすべき旨主張す るが,本件事件に至る経緯及びその暴行態様等に照らせば,この過失相殺は相当ではない。 (7)損害の填補原告は,平成11年12月29日より平成18年2月22日までの労働者災害補償保険法の休業補償給付金として合計1038万3125円の支払を受けた(争いがない。 )労働者災害補償保険法による休業補償給付金は,上記原告の損害のうち休業損害のみから控除すべきところ(最高裁昭和62年7月10日第二小法廷判決・民集41巻5号1202頁,原告の損害966万6254円のうち)素因減額後の休業損害額全額に相当する761万9054円が控除されるから,原告の損害額は204万7200円となる。 なお,被告ら及び承継参加人は,原告が平成18年2月23日以降も療養・休業補償給付金の支払を受けているとして,その控除を主張するが,既に上記控除により休業補償給付金の控除対象となる損害は存在しないから,かかる被告 承継参加人は,原告が平成18年2月23日以降も療養・休業補償給付金の支払を受けているとして,その控除を主張するが,既に上記控除により休業補償給付金の控除対象となる損害は存在しないから,かかる被告ら及び承継参加人の主張については判断しない。 また,被告ら及び承継参加人は,平成10年11月17日から平成11年12月31日までの給料の支払をもって損害の填補としているが,給料の支払により休業損害が発生しないとはいえても,損害の填補とはいえないから,被告ら及び承継参加人の同主張は採用できない。 (8)弁護士費用20万円本件事件と相当因果関係のある弁護士費用は,20万円と認めるのが相当である。 相殺(抗弁(4))について不法行為に基づく損害賠償請求権を受動債権とする相殺は許されない(民法509条)から,抗弁(4)は失当である。 結論 以上によれば,原告の請求は,被告ら及び承継参加人に対し,連帯して224万7200円及びこれに対する不法行為の日である平成10年11月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し,その余はいずれも理由がないから棄却すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第6部裁判長裁判官内田計一裁判官安田大二郎裁判官高橋貞幹 (別紙1)外傷後ストレス障害の診断基準Aその人は,以下の2つが共に認められる外傷的な出来事に暴露されたことがある。 ①実際にまたは危うく死ぬまたは重症を負うような出来事を,1度または数度,または自分または他人の身体の保全に迫る危険を,その人が体験し,目撃し,または直面した。 ②その人の反応は強い恐怖,無力感または戦慄に関するものである。 注:子供の場合はむしろ,まとま 度または数度,または自分または他人の身体の保全に迫る危険を,その人が体験し,目撃し,または直面した。 ②その人の反応は強い恐怖,無力感または戦慄に関するものである。 注:子供の場合はむしろ,まとまりのないまたは興奮した行動によって表現されることがある。 B外傷的な出来事が,以下の1つ(またはそれ以上)の形で再体験され続けている。 ①出来事の反復的で侵入的で苦痛な想起で,それは心像,思考,または知覚を含む。 注:小さい子供の場合,外傷の主題または側面を表現する遊びを繰り返すことがある。 ②出来事についての反復的で苦痛な夢。 注:子供の場合は,はっきりとした内容のない恐ろしい夢であることがある。 ③外傷的な出来事が再び起こっているかのように行動したり,感じたりする(その体験を再体験する感覚,錯覚,幻覚,および解離性フラッシュバックのエピソードを含む,また,覚醒時または中毒時に起こるものを含む)。 注:小さい子供の場合,外傷特異的な再演が行われることがある。 ④外傷的出来事の1つの側面を象徴し,または類似している内的または外的きっかけに暴露された場合に生じる,強い心理的苦痛。 ⑤外傷的出来事の1つの側面を象徴し,または類似している内的または外的きっかけに暴露された場合の生理学的反応性。 C以下の3つ(またはそれ以上)によって示される(外傷以前には存在していなかった)外傷と関連した刺激の持続的回避と,全般的反応性の麻痺。 ①外傷と関連した思考,感情または会話を回避しようとする努力。 ②外傷を想起させる活動,場所または人物を避けようとする努力。 ③外傷の重要な側面の想起不能。 ④重要な活動への関心または参加の著しい減退。 ⑤他の人から孤立している,または疎遠になっているという感覚。 ⑥感情の範囲の縮小(例:愛の感情を待つことができない)。 ⑦未来が短縮し な側面の想起不能。 ④重要な活動への関心または参加の著しい減退。 ⑤他の人から孤立している,または疎遠になっているという感覚。 ⑥感情の範囲の縮小(例:愛の感情を待つことができない)。 ⑦未来が短縮した感覚(例:仕事,結婚,子供,または正常な一生を期待しない)。 D(外傷以前には存在していなかった)持続的な覚醒亢進症状で,以下の2つ(またはそれ以上)によって示される。 ①入眠または睡眠維持の困難②易刺激性または怒りの爆発③集中困難④過度の警戒心⑤過剰な驚愕反応E障害(基準B,C及びDの症状)の持続期間が1か月以上。 F障害は,臨床上著しい苦痛または,社会的,職業的または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。 ・該当すれば特定せよ:急性症状の持続期間が3か月未満の場合慢性症状の持続期間が3か月以上の場合・該当すれば特定せよ:発症遅延症状の始まりがストレス因子から少なくとも6か月の場合 (別紙2)妄想性障害の診断基準A奇異でない内容の妄想(すなわち現実生活で起こる状況に関するもの,例えば,追跡される,毒をもられる,病気をうつされる,遠く離れた人に愛される,配偶者や恋人に裏切られる,病気を持っている,など)が少なくとも1か月持続。 B統合失調症の基準A(非常に奇異な妄想,幻覚,解体した会話,解体した行動,思考感情の平板化などの陰性症状)を満たしたことがないことC妄想またはその発展の直接的影響以外に,機能は著しく障害されておらず,行動にも目立った風変わりさや奇妙さはない。 D気分エピソードが妄想と同時に生じていたとしても,その持続期間の合計は,妄想の持続期間と比べて短い。 Eその障害は物質(例:乱用薬物,投薬)や一般身体疾患による直接的な生理学的作用によるものではない。 ・病型を特定せよ(以下の各病型は としても,その持続期間の合計は,妄想の持続期間と比べて短い。 Eその障害は物質(例:乱用薬物,投薬)や一般身体疾患による直接的な生理学的作用によるものではない。 ・病型を特定せよ(以下の各病型は優勢な妄想主題に基づいてのものである)色情型妄想が他の誰か,通常社会的地位が高い人が自分と恋愛関係にあるというもの誇大型妄想が,肥大した価値,権力,知識,身分,あるいは神や有名な人物との特別なつながりに関するもの嫉妬型妄想が,自分の性的伴侶が不実であるというもの被害型妄想が,自分(もしくは身近な誰か)が何らかの方法で悪意をもって扱われているというもの身体型妄想が,自分に何か身体的欠陥がある,あるいは自分が一般身体疾患にかかっているというもの混合型妄想が上記の病型の中の2つ以上によって特徴づけられるが,どの主題 も優勢ではないもの特定不能型
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