平成20(行ウ)45等 納税の猶予不許可処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年1月18日 名古屋地方裁判所 租税
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判決文本文24,712 文字)

- 1 -主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 処分行政庁が原告Aに対し平成18年11月21日付けでした平成17年1月1日から同年12月31日までの課税期間分の消費税及び地方消費税38万5700円のうち36万円についての納税の猶予の不許可処分を取り消す。 処分行政庁が原告Bに対し平成18年11月21日付けでした平成17年分の所得税10万1500円並びに平成17年1月1日から同年12月31日までの課税期間分の消費税及び地方消費税13万6700円についての納税の猶予の不許可処分を取り消す。 処分行政庁が原告Cに対し平成18年11月21日付けでした平成17年1月1日から同年12月31日までの課税期間分の消費税及び地方消費税41万5100円のうち37万3590円についての納税の猶予の不許可処分を取り消す。 処分行政庁が原告Dに対し平成18年11月21日付けでした平成17年分の所得税7万7800円並びに平成17年1月1日から同年12月31日までの課税期間分の消費税及び地方消費税20万6800円の合計28万4600円のうち27万6000円についての納税の猶予の不許可処分を取り消す。 第2事案の概要本件は,原告らが,それぞれ処分行政庁に対し,平成17年分の所得税並びに平成17年1月1日から同年12月31日までの課税期間分の消費税及び地方消費税(ただし,原告A及び原告Cについては同消費税及び地方消費税のみ)について,国税通則法(以下「通則法」という。)46条2項に基づき,納税の猶予の申請をしたところ,処分行政庁が各申請を不許可とする処分をしたことから,その取消しを求めた事案である。 - 2 - 関係法令等( ) 通則法46条2項は,税務署長等は,同項1号 き,納税の猶予の申請をしたところ,処分行政庁が各申請を不許可とする処分をしたことから,その取消しを求めた事案である。 - 2 - 関係法令等( ) 通則法46条2項は,税務署長等は,同項1号ないし5号のいずれかに該当 する事実がある場合において,その該当する事実に基づき,納税者がその国税を一時に納付することができないと認められるときは,その納付することができないと認められる金額を限度として,納税者の申請に基づき,1年以内の期間を限り,その納税を猶予することができる旨規定している。そして,その4号において「納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと」が,その5号において「前各号の一に該当する事実に類する事実があつたこと」が掲げられている(同項の全文は,別紙「関係法令等」1記載のとおりである。また,同項の納税猶予の申請手続について,国税通則法施行令15条2項は,別紙「関係法令等」2記載のとおり定めている。)。 ( ) 国税庁長官が発出した通達である昭和51年6月3日付け徴徴3-2,徴管 2-32「納税の猶予等の取扱要領の制定について」(以下「猶予取扱要領」という。)は,通則法46条2項4号にいう「事業につき著しい損失を受けた」とは,納税の猶予の始期の前日の前1年間(以下「調査期間」という。)の損益計算において,調査期間の直前の1年間(以下「基準期間」という。)の利益金額の2分の1を超えて損失が生じていると認められる場合(基準期間において損失が生じている場合には,調査期間の損失金額が基準期間の損失金額を超えているとき。)をいうものであるとし(第2章第1節1( )ニ(イ)),また,同項5号に関し,「事業 の休廃止又は事業上の著しい損失に類する事実」として,「下請企業である納税者が,親会社からの発注の減少等の影響を受けたこと,その とし(第2章第1節1( )ニ(イ)),また,同項5号に関し,「事業 の休廃止又は事業上の著しい損失に類する事実」として,「下請企業である納税者が,親会社からの発注の減少等の影響を受けたこと,その他納税者が市場の悪化等その責めに帰すことができないやむを得ない事由により,従前に比べ事業の操業度の低下又は売上の減少等の影響を受けたこと」(同節1( )へ(ハ))などを挙げて いる(猶予取扱要領のうち,本件に関係する部分は,別紙「関係法令等」3記載のとおりである。)。 争いのない事実- 3 -( ) 当事者 原告Aは,愛知県津島市内において,「E」の屋号で,料理飲食業を営む個人事業者である。 原告Bは,同県愛西市内において,「F」の屋号で,鉄筋圧接業を営む個人事業者である。 原告Cは,同県津島市内において,「G」の屋号で,鉄工業を営む個人事業者である。 原告Dは,同県弥富市内において,「H」の屋号で,家電小売業を営む個人事業者である。 ( ) 原告らに対する処分の経緯 ア原告Aについて(ア) 原告Aは,平成18年3月13日,処分行政庁に対し,平成17年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成17年課税期間」という。)分の消費税及び地方消費税の確定申告書を提出し,原告Aの平成17年課税期間分の消費税及び地方消費税額38万5700円の納税義務が確定した。 (イ) 原告Aは,平成18年4月10日,処分行政庁に対し,上記消費税及び地方消費税のうち,納期限内に納付した2万5700円を控除した36万円について,納税の猶予の申請(以下「原告Aの申請」という。)をした。 原告Aの申請に係る納税の猶予の申請書には,納税の猶予を受けようとする理由として,「国税通則法第46条第2項5号に該当ここ数年売上げと利益が減少している為」と記 「原告Aの申請」という。)をした。 原告Aの申請に係る納税の猶予の申請書には,納税の猶予を受けようとする理由として,「国税通則法第46条第2項5号に該当ここ数年売上げと利益が減少している為」と記載されていた。原告Aは,処分行政庁に対し,上記申請書と併せて,納税の猶予にかかわる営業・生活状況申立書及び延滞税の免除を求める請願書と題する書面を提出したほか,同年9月11日,原告Aの同年1月から同年4月までの各月別の売上げ,仕入れ,経費及び人件費の金額を記載した書面を提出し,また,同年9月12日,平成16年1月から平成17年12月までの各月別の売上金額を記載した書面を提出した。 - 4 -(ウ) 処分行政庁は,平成18年11月21日,原告Aに対し,通則法46条2項5号(4号類似)に該当する事実が認められないとして,原告Aの申請を不許可とする処分(以下「原告Aに対する処分」という。)をした。 イ原告Bについて(ア) 原告Bは,平成18年3月13日,処分行政庁に対し,平成17年分の所得税の確定申告書並びに平成17年課税期間分の消費税及び地方消費税の確定申告書を提出し,原告Bの平成17年分の所得税額10万1500円並びに平成17年課税期間分の消費税及び地方消費税額13万6700円の納税義務が確定した。 (イ) 原告Bは,平成18年3月27日,処分行政庁に対し,上記所得税額10万1500円並びに上記消費税及び地方消費税額13万6700円の全額について,納税の猶予の申請(以下「原告Bの申請」という。)をした。 原告Bの申請に係る納税の猶予の申請書には,納税の猶予を受けようとする理由として,「納税資金の紛失により,又,売上(利益)がダウンしており生活していくのがやっとです国税通則法第46条第2項5号該当」と記載されていた。原告Bは,処分行政庁に対し, 予を受けようとする理由として,「納税資金の紛失により,又,売上(利益)がダウンしており生活していくのがやっとです国税通則法第46条第2項5号該当」と記載されていた。原告Bは,処分行政庁に対し,上記申請書と併せて,納税の猶予にかかわる営業・生活状況申立書及び延滞税の免除を求める請願書と題する書面を提出したほか,同年6月28日,納税の猶予に関する請願書と題する書面を提出し,また,同年9月11日,原告Bの平成16年1月から平成18年7月までの各月別の売上金額を記載した書面を提出した。 (ウ) 処分行政庁は,平成18年11月21日,原告Bに対し,通則法46条2項5号(4号類似)に該当する事実が認められないとして,原告Bの申請を不許可とする処分(以下「原告Bに対する処分」という。)をした。 ウ原告Cについて(ア) 原告Cは,平成18年3月13日,処分行政庁に対し,平成17年課税期間分の消費税及び地方消費税の確定申告書を提出し,原告Cの平成17年課税期間分の消費税及び地方消費税額41万5100円の納税義務が確定した。 - 5 -(イ) 原告Cは,平成18年3月27日,処分行政庁に対し,上記消費税及び地方消費税のうち,納期限内に納付した4万1510円を控除した37万3590円について,納税の猶予の申請(以下「原告Cの申請」という。)をした。 原告Cの申請に係る納税の猶予の申請書には,納税の猶予を受けようとする理由として,「国税通則法第46条第2項5号に該当受注が昨年に比べ減少しており利益が減っています」と記載されていた。原告Cは,処分行政庁に対し,上記申請書と併せて,納税の猶予にかかわる営業・生活状況申立書及び延滞税の免除を求める請願書と題する書面を提出したほか,原告Cの妻において,同年9月11日,原告Cの平成17年及び平成18年の各年1月か 申請書と併せて,納税の猶予にかかわる営業・生活状況申立書及び延滞税の免除を求める請願書と題する書面を提出したほか,原告Cの妻において,同年9月11日,原告Cの平成17年及び平成18年の各年1月から5月までの各月別の売上金額と1か月分の経費を記載した書面を提出した。 (ウ) 処分行政庁は,平成18年11月21日,原告Cに対し,通則法46条2項5号(4号類似)に該当する事実が認められないとして,原告Cの申請を不許可とする処分(以下「原告Cに対する処分」という。)をした。 エ原告Dについて(ア) 原告Dは,平成18年3月13日,処分行政庁に対し,平成17年分の所得税の確定申告書並びに平成17年課税期間分の消費税及び地方消費税の確定申告書を提出し,原告Dの平成17年分の所得税額7万7800円並びに平成17年課税期間分の消費税及び地方消費税額20万6800円の納税義務が確定した。 (イ) 原告Dは,平成18年3月27日,処分行政庁に対し,上記所得税並びに消費税及び地方消費税の合計28万4600円のうち,27万6000円について,納税の猶予の申請(以下「原告Dの申請」という。)をした。 原告Dの申請に係る納税の猶予の申請書には,納税の猶予を受けようとする理由として,「国税通則法第46条第2項5号に該当大型店との競合で商品の値引きと消費税相当分の値引きにより売り上げ減少して利益が減っています」と記載されていた。原告Dは,処分行政庁に対し,上記申請書と併せて,納税の猶予にかかわる営業・生活状況申立書及び延滞税の免除を求める請願書と題する書面を提出した- 6 -ほか,同年7月20日,納税の猶予に関する請願書と題する書面を提出した。 (ウ) 処分行政庁は,平成18年11月21日,原告Dに対し,通則法46条2項5号(4号類似)に該当する事実が認められない -ほか,同年7月20日,納税の猶予に関する請願書と題する書面を提出した。 (ウ) 処分行政庁は,平成18年11月21日,原告Dに対し,通則法46条2項5号(4号類似)に該当する事実が認められないとして,原告Dの申請を不許可とする処分(以下「原告Dに対する処分」といい,原告Aに対する処分,原告Bに対する処分及び原告Cに対する処分と併せて「本件各処分」という。)をした。 争点及びこれに関する当事者の主張本件の争点は,原告らに対して納税の猶予を不許可とした本件各処分が,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであるか否かであり,これに関する当事者の主張は,次のとおりである。 (被告の主張)( ) 通則法46条2項5号の解釈 ア納税の猶予の許否の判断に関する裁量権納税の猶予の制度は,納税者が災害等を受けたこと等により,国税を一時に納付することができない場合等に,納税者の申請に基づき,1年以内の期間に限り,その納税を猶予することにより納税者の保護を図るものであるところ,通則法46条2項には「その納税を猶予することができる」と規定され,処分要件が存すると判断した場合にとるべき処分の内容の選択について,行政庁に裁量権(効果裁量)を付与する形式で定められている。このような行政庁の裁量処分については,裁量権の範囲を超え,又はその濫用があった場合に限り,裁判所がこれを取り消すことができるものである。 イ通則法46条2項5号の判断方法通則法46条2項5号(3号又は4号類似)の判断基準を定めた猶予取扱要領第2章第1節1( )ヘには,「損失」に類する事実として「売上の減少等」((ロ) 及び(ハ))が掲げられているところ,この「売上の減少等」については,数値的な基準が定められていない。しかし,これは売上金額の減少という数値の減少を指す事 する事実として「売上の減少等」((ロ) 及び(ハ))が掲げられているところ,この「売上の減少等」については,数値的な基準が定められていない。しかし,これは売上金額の減少という数値の減少を指す事由であり,通則法46条2項4号に類似する事由として定められているのであ- 7 -るから,「売上の減少」の判断は,同号の場合と同様に,調査期間と基準期間の売上金額を比較する方法によるのが相当である。 この点に関し,原告らは,「売上の減少」の判定を行う上での期間設定につき,猶予取扱要領第2章第1節1( )ニに規定されている基準期間及び調査期間の方法 にとらわれる必要はないとして,原告らにつき各々相違した基準期間の設定をしている。しかし,納税の猶予の判定に当たって考慮すべき基準期間は,調査期間の前年であることが原則である。仮に,原告らが主張するような判定方法が認められるのであれば,納税者自身が恣意的に任意の基準期間を設定できることになり,期限内納付の例外として,一定の要件を満たす納税者のみを保護する恩恵的な措置であるはずの納税猶予制度を形骸化させる結果となるから,原告らの主張は失当である。 ウ消費税の納税義務者となったこととの関係原告らは,従前消費税の納税義務者でなかったが,納税義務者となった者であるから,納税の猶予の要件が緩和されるかのような主張をする。しかし,原告らは,本来すべての物品とサービスの消費に課税される消費税について免税の恩恵が与えられていたのが,本来の納税義務者に戻ったにすぎないのであって,消費税の納税義務者になったことによって納税の猶予を受ける上での要件が緩和されることはない。 ( ) 原告らに納税の猶予を許可すべき事情が認められないこと 納税の猶予の要件充足性についての主張立証責任は,納税者側にあり,税務署長等は,納税の猶 を受ける上での要件が緩和されることはない。 ( ) 原告らに納税の猶予を許可すべき事情が認められないこと 納税の猶予の要件充足性についての主張立証責任は,納税者側にあり,税務署長等は,納税の猶予の申請についての決定までに納税者から提出された資料の範囲内で許可,不許可の決定を行えば足りる。 処分行政庁は,原告らから納税の猶予の申請書が提出されてから,納税の猶予の要件充足性の判定に必要な資料の提供を求めたが,原告らはこれに応じず,本件各処分時点において,ごく限られた資料を提出したにとどまっている。本件各処分後に原告らから提出された書面等は,処分行政庁が本件各処分時に知り得なかった事情であるから,これらの事情によって,本件各処分の適法性は左右されない。 - 8 -ア原告Aについて原告Aは,競合店の進出,競争激化,飲酒運転の取締り強化,生活状況,事業資金等の返済等の事情を主張するが,原告Aに対する処分当時,処分行政庁に提出された書面のみでは,数値的に著しい損失あるいはこれに類する事実を認めるに足りる客観的な資料があるとはいえない。本件訴訟において,原告Aが主張する売上金額も,原資料がなく,正確なものであるかは不明である。 また,仮に原告Aが本件訴訟に至ってはじめて主張した内容を前提としても,原告Aの調査期間の売上金額は2102万9560円,基準期間の売上金額は2356万2200円であり,その余の事情を考慮しても原告Aにおいて著しい損失あるいはこれに類する事実があったと認めることはできないから,原告Aの主張は失当である。 イ原告Bについて原告Bは,大口取引先からの受注の減少,生活状況,自身の病気,兄の障害,事業資金等の返済等の事情を主張するが,原告Bに対する処分当時,処分行政庁に提出された書面のみでは,数値的に著しい損失あるいはこれに類 は,大口取引先からの受注の減少,生活状況,自身の病気,兄の障害,事業資金等の返済等の事情を主張するが,原告Bに対する処分当時,処分行政庁に提出された書面のみでは,数値的に著しい損失あるいはこれに類する事実を認めるに足りる客観的な資料があるとはいえない。本件訴訟において,原告Bが主張する売上金額も,裏付ける証拠がなく,原告Bの供述も変遷していて,正確なものであるかは不明である。 また,仮に原告Bが本件訴訟に至ってはじめて主張した内容を前提としても,原告Bの調査期間の売上金額は957万1493円,基準期間の売上金額は818万5170円であり,その余の事情を考慮しても原告Bにおいて著しい損失あるいはこれに類する事実があったと認めることはできないから,原告Bの主張は失当である。 さらに,原告Bは,本件訴訟においてはじめて,兄の障害等の事実を主張し,通則法46条2項2号該当性を主張するが,猶予該当事実はそれぞれ独立した要素であり,同項4号又は5号該当を理由にされた本件においては,同項2号該当性が処- 9 -分の適法性を左右するものではないと解すべきである。仮に原告Bの主張を前提としても,原告Bの負担は毎月2万円程度にすぎないから,該当する事実に基づき納付することができないとはいえないので,同項2号にも該当しない。 ウ原告Cについて原告Cは,リース料の高額化,単価の切下げ,生活状況,事業資金等の返済等の事情を主張するが,原告Cに対する処分当時,処分行政庁に提出された書面のみでは,数値的に著しい損失あるいはこれに類する事実を認めるに足りる客観的な資料があるとはいえない。本件訴訟において,原告Cが主張する売上金額も,帳簿書類等の客観的な裏付けがなく,正確なものであるかは不明である。 また,仮に原告Cが本件訴訟に至ってはじめて主張した内容を前提として あるとはいえない。本件訴訟において,原告Cが主張する売上金額も,帳簿書類等の客観的な裏付けがなく,正確なものであるかは不明である。 また,仮に原告Cが本件訴訟に至ってはじめて主張した内容を前提としても,原告Cの調査期間の売上金額は2160万9756円,基準期間の売上金額は2098万8725円であり,その余の事情を考慮しても原告Cにおいて著しい損失あるいはこれに類する事実があったと認めることはできないから,原告Cの主張は失当である。 エ原告Dについて原告Dは,固定化した仕入価格,大規模小売店舗との競争激化,生活状況,事業資金等の返済等の事情を主張するが,原告Dに対する処分当時,処分行政庁に提出された書面のみでは,数値的に著しい損失あるいはこれに類する事実を認めるに足りる客観的な資料があるとはいえない。原告Dが主張する売上金額も,帳簿書類等の客観的な裏付けがなく,正確なものであるかは不明である。 また,仮に原告Dが本件訴訟に至ってはじめて主張した内容を前提としても,原告Dの調査期間の売上金額は2424万3320円,基準期間の売上金額は2482万7818円であり,その余の事情を考慮しても原告Dにおいて著しい損失あるいはこれに類する事実があったと認めることはできないから,原告Dの主張は失当である。 ( ) 本件各処分が適法であること - 10 -以上によれば,処分行政庁が本件各処分をするに当たり,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したと認め得る事情が存しないことは明らかであり,本件各処分は適法である。 (原告らの主張)( ) 通則法46条2項4号及び5号の解釈 ア通則法46条2項4号に関する猶予取扱要領第2章第1節1( )ニ(イ)は, 納税猶予の要件として「調査期間の損益計算において,基準期間の利益金額の2分の1を超えて損失 項4号及び5号の解釈 ア通則法46条2項4号に関する猶予取扱要領第2章第1節1( )ニ(イ)は, 納税猶予の要件として「調査期間の損益計算において,基準期間の利益金額の2分の1を超えて損失が生じている」という数値的な基準を設けているが,このような画一的な基準を設けることは,行政裁量の余地を封じ,納税者の実情にかんがみた柔軟な納税猶予制度の運用を妨げるものであるから,通則法の規定の趣旨に反するものである。 イ仮に,通則法46条2項4号に関する猶予取扱要領が,通則法の規定の趣旨に反するものでないとしても,同号にいう「損失」とは,損益計算において損失が生じていることを前提とする概念ではなく,基準期間と調査期間の「特前所得」(特別控除前所得。原告らが,純粋な利益の目安となる金額として主張する金額であり,事業専従者給与控除額及び青色申告特別控除額を控除する前の所得金額のことをいう。以下同じ。)の比較において,基準期間の「特前所得」から調査期間の「特前所得」が減少していることと解すべきである。したがって,猶予取扱要領第2章第1節1( )ニ(イ)本文は,基準期間の「特前所得」から調査期間の「特前所 得」への減少幅が基準期間の「特前所得」の2分の1を超える場合のことをいい,同括弧書きは,基準期間前1年間の「特前所得」から基準期間の「特前所得」が減少している場合であって,その減少幅よりも,基準期間の「特前所得」から調査期間の「特前所得」への減少幅が大きい場合のことをいうものである。もし,同号にいう「損失」とは損益計算において損失が生じていることであると解するならば,所得税の納税については,同号はおよそ適用されないこととなり,不当である。 ウまた,通則法46条2項5号に関する猶予取扱要領は,納税者の実情にかん- 11 -がみて個別具体的に妥 と解するならば,所得税の納税については,同号はおよそ適用されないこととなり,不当である。 ウまた,通則法46条2項5号に関する猶予取扱要領は,納税者の実情にかん- 11 -がみて個別具体的に妥当な納税猶予の判断を可能にするよう解釈すべきである。すなわち,猶予取扱要領は,同号につき,同項4号該当事実のような数値的基準を明示しておらず,「従前に比べ」として,「直前の1年間」のような年限の限定をしていないことからすれば,同項5号該当事実の判断に当たっては,売上げ又は利益の減少について,その減少の程度や期間にある程度の幅をもって判断すべきである。 ( ) 原告らが納税の猶予の要件に該当していること ア原告Aについて(ア) 原告Aの平成17年の「特前所得」は,461万6560円であり,平成16年の「特前所得」511万6000円より49万9440円減少しており,平成16年は,その前年である平成15年の「特前所得」521万5000円より9万9000円減少しているから,猶予取扱要領第2章第1節1( )ニ(イ)の「基準期 間において損失が生じている場合は,調査期間の損失金額が基準期間の損失金額を超えているとき」に当たり,通則法46条2項4号に該当する。 (イ) 原告Aは,平成17年に初めて消費税の納税義務者となったのであり,従前から納税義務者であった者を前提としている猶予取扱要領に従って判断すべきではない。 原告Aの平成17年の売上金額2074万1550円は,平成16年の売上金額2450万7340円から400万円近く減少しており,平成12年の売上金額2971万1360円及び平成13年の売上金額2815万9870円と比べれば更に減少しており,「特前所得」も最も高額であった平成14年の「特前所得」538万8000円と比べて平成17年は減少しているの 971万1360円及び平成13年の売上金額2815万9870円と比べれば更に減少しており,「特前所得」も最も高額であった平成14年の「特前所得」538万8000円と比べて平成17年は減少しているのであるから,原告Aは,ある程度の期間でみれば,売上げや利益が大きく減少している。また,その原因は,競合店の進出による競争激化や飲酒運転の取締り強化に伴う酒類の売上げ低下によるものであって,やむを得ないものである。そうすると,原告Aには,「事業の休廃止又は事業上の著しい損失に類する事実があった」というべきであり,通則法46条2項5号に該当する。 - 12 -(ウ) 原告Aは,売上げと利益が減少したこと及び生活状況の困窮を主張して納税の猶予を申請しており,納税の猶予の申請時に津島税務署の担当者から具体的な資料の提出を求められておらず,本件訴訟に至って補充的な資料を提出したのであり,処分時までにすべき主張立証は尽くしている。 イ原告Bについて(ア) 原告Bは,平成13年から平成16年までは消費税の納税義務者ではなかったのであり,従前から納税義務者であった者を前提としている猶予取扱要領に従って判断すべきではない。 原告Bの平成17年の売上金額1036万6629円は,平成13年の売上金額1400万8400円及び平成15年の売上金額1445万8699円と比べて大きく減少しており(なお,平成16年の売上金額は831万1618円である。),「特前所得」も平成15年の「特前所得」582万5000円と比べて,平成17年の「特前所得」341万5259円は半分程度にまで減少しているのであるから,原告Bは,ある程度の期間でみれば,売上げや利益が大きく減少している。また,その原因は,大口の取引先からの受注の減少によるものであって,やむを得ないものである。そうすると, 少しているのであるから,原告Bは,ある程度の期間でみれば,売上げや利益が大きく減少している。また,その原因は,大口の取引先からの受注の減少によるものであって,やむを得ないものである。そうすると,原告Bには,「事業の休廃止又は事業上の著しい損失に類する事実があった」というべきである。さらに,原告Bは,10年くらい前から糖尿病にり患しており,原告Bの兄は,4,5年前に○を患い,介護が必要な状態であるので,通則法46条2項2号に該当する。仮に該当しないとしても,同号類似として,同項5号に該当する。 (イ) 原告Bは,売上げと利益が減少したこと及び生活状況の困窮を主張して納税の猶予を申請しており,納税の猶予の申請時に津島税務署の担当者から具体的な資料の提出を求められておらず,本件訴訟に至って補充的な資料を提出したのであり,処分時までにすべき主張立証は尽くしている。被告は,原告Bの申請時に原告B及び兄の病気の事情を主張していなかったとして通則法46条2項2号該当性は問題にならないとするが,処分行政庁は,申請書に記載された理由に拘束されず,納税- 13 -者の実情を十分調査して猶予の要件に該当するか否かを判断すべきである。 ウ原告Cについて(ア) 原告Cは,平成17年に初めて消費税の納税義務者となったのであり,従前から納税義務者であった者を前提としている猶予取扱要領に従って判断すべきではない。 原告Cの平成17年の「特前所得」465万1980円は,平成14年の「特前所得」610万3038円と比べて,3分の2程度まで減少しているのであるから,原告Cは,ある程度の期間でみれば,利益が大きく減少している(なお,平成17年の売上金額は2180万0024円,平成16年の売上金額は2004万6038円である。)。また,その原因は,機械のリース料の高額化や ある程度の期間でみれば,利益が大きく減少している(なお,平成17年の売上金額は2180万0024円,平成16年の売上金額は2004万6038円である。)。また,その原因は,機械のリース料の高額化や加工単価の切下げを余儀なくされたことによるものであって,やむを得ないものである。そうすると,原告Cには,「事業の休廃止又は事業上の著しい損失に類する事実があった」というべきであり,通則法46条2項5号に該当する。 (イ) 原告Cは,利益が減少したこと及び受注の減少を主張して納税の猶予を申請しており,納税の猶予の申請時に津島税務署の担当者から具体的な資料の提出を求められておらず,本件訴訟に至って補充的な資料を提出したのであり,処分時までにすべき主張立証は尽くしている。 エ原告Dについて(ア) 原告Dは,平成16年は消費税の納税義務者ではなかったが,平成17年に消費税の納税義務者となったのであり,従前から納税義務者であった者を前提としている猶予取扱要領に従って判断すべきではない。 原告Dの平成17年の売上金額2544万6967円は,平成12年の売上金額3544万1761円及び平成13年の売上金額3372万4997円と比べて1000万円前後減少しており(なお,平成16年の売上金額は2571万6813円である。),「特前所得」も,最も高額であった平成13年の「特前所得」540万6415円と比べて,平成17年の「特前所得」315万6853円は半分程- 14 -度にまで減少しているのであるから,原告Dは,ある程度の期間でみれば,売上げや利益が大きく減少している。また,その原因は,仕入価格が高いことや大規模小売店との競争激化によるものであって,やむを得ないものである。そうすると,原告Dには,「事業の休廃止又は事業上の著しい損失に類する事実があった」という 。また,その原因は,仕入価格が高いことや大規模小売店との競争激化によるものであって,やむを得ないものである。そうすると,原告Dには,「事業の休廃止又は事業上の著しい損失に類する事実があった」というべきであり,通則法46条2項5号に該当する。 (イ) 原告Dは,売上げと利益が減少したこと及び大型店との競合や値引きを主張して納税の猶予を申請しており,納税の猶予の申請時に津島税務署の担当者から具体的な資料の提出を求められておらず,本件訴訟に至って補充的な資料を提出したのであり,処分時までにすべき主張立証は尽くしている。 ( ) 本件各処分が処分行政庁の裁量権の範囲を逸脱し違法であること 税務署長は,納税の猶予をするか否かの裁量権を有するが,それは自由裁量ではなく,通則法46条が納税の猶予の制度を規定した趣旨にかんがみれば,猶予該当事実が存在すれば,特段の事情のない限り納税の猶予を認めるべき義務がある。税務署長が,納税の猶予をするべき場合に該当するにもかかわらず,猶予を認めない場合は,裁量権の範囲を超え,違法となる。 本件において,処分行政庁は,原告らに対し納税の猶予をすべきであったにもかかわらず,その猶予を認めない本件各処分をしたのであるから,裁量権の範囲を逸脱した違法がある。 第3当裁判所の判断 税務署長等の納税の猶予の許否の判断について( ) 税務署長等の裁量権について 通則法46条2項の規定する納税の猶予の制度は,納税者がその財産につき災害を受けたこと等により,国税を一時に納付することができないと認められる場合において,その納付することができないと認められる金額を限度として,納税者の申請に基づき,1年以内の期間に限り,その国税の一部又は全部の納税を猶予するという納税者の救済のための例外的な制度である。このような制度の趣旨や納税 とができないと認められる金額を限度として,納税者の申請に基づき,1年以内の期間に限り,その国税の一部又は全部の納税を猶予するという納税者の救済のための例外的な制度である。このような制度の趣旨や納税の猶- 15 -予の要件等に関する同項の規定内容にかんがみれば,同項は,納税の猶予の申請をした納税者について,同項所定の要件の該当性を判断し,納税の猶予を許可するか否かを,税務署長等の裁量的判断にゆだねているものと解するのが相当である。したがって,納税の猶予を許可しない処分が違法と評価されるのは,当該処分をした税務署長等の判断に,裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると認められる場合に限られるというべきである。 ( ) 猶予取扱要領の定めについて 前示のとおり,納税の猶予の許否については,税務署長等の裁量的判断にゆだねられているものであるが,納税者間の負担の公平を図り,税務行政の適正妥当な執行を確保するためには,一定の基準ないし運用方針に基づいて,納税の猶予の許否の判断がされることは望ましいことであり,猶予取扱要領は,そのような趣旨の下に定められたものと解される。そして,こうした猶予取扱要領が定められた趣旨にかんがみれば,猶予取扱要領の定めが合理性を有するものである場合には,納税の猶予の許否に関する税務署長等の判断がその定めに従ってされたものであるか又はその定めに照らして相当なものであると認められる限り,当該税務署長等の判断は,裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるとの評価を受けることはないものと解するのが相当である。 そこで,まず,本件で問題となる通則法46条2項4号及び5号(4号類似)該当事実の判断についての猶予取扱要領の定めをみることとする。 ア通則法46条2項4号該当事実の判断について(ア) 猶予取扱要領第2章第1節1( )ニ(イ)は,通則 6条2項4号及び5号(4号類似)該当事実の判断についての猶予取扱要領の定めをみることとする。 ア通則法46条2項4号該当事実の判断について(ア) 猶予取扱要領第2章第1節1( )ニ(イ)は,通則法46条2項4号にいう 「事業につき著しい損失を受けた」とは,調査期間の損益計算において,調査期間の直前1年間である基準期間の利益金額の2分の1を超えて損失が生じていると認められる場合(基準期間において損失が生じている場合には,調査期間の損失金額が基準期間の損失金額を超えているとき。)をいうものとする旨定めている。同項の納税の猶予の制度が納税者に対する例外的な救済措置であることや,同項4号が- 16 -単なる損失ではなく「著しい損失」と限定していることに加え,同項5号が「前各号の一に該当する事実に類する事実」と規定しており,同項1号ないし4号に該当しない場合でも同項5号に該当する余地が残されていることを考慮すれば,猶予取扱要領が上記のような数値的な基準をもって同項4号該当性を判断することとしていることは,合理性を有するものということができる。 (イ) 原告らは,猶予取扱要領が上記のような数値的に画一的な基準を設けていることは,通則法の規定の趣旨に反する旨主張する。しかしながら,納税者間の負担の公平を図るためには,画一的な基準を定めることはやむを得ないことであり,通則法46条2項4号に該当しない場合であっても,同項5号に該当するものとして納税の猶予が認められる余地が残されていることを考えれば,猶予取扱要領の上記の定めが通則法の規定の趣旨に反するものということはできない。 また,原告らは,通則法46条2項4号にいう「損失」とは,損益計算において損失が生じていることを前提とする概念ではなく,基準期間と調査期間の「特前所得」の比較において,基準期間 いうことはできない。 また,原告らは,通則法46条2項4号にいう「損失」とは,損益計算において損失が生じていることを前提とする概念ではなく,基準期間と調査期間の「特前所得」の比較において,基準期間の「特前所得」から調査期間の「特前所得」が減少していることと解すべきであると主張する。しかしながら,「事業につき著しい損失を受けた」という同号の文言からみて,同号にいう「損失」が前年と比較したときの利益の減少を意味すると解するのは困難であり,原告らの主張は採用することができない。なお,原告らは,同号の「損失」を損益計算において損失が生じていることであると解するならば,所得税の納税にはおよそ同号が適用されないこととなり不当であると主張するが,同項は国税一般についての納税の猶予の要件等を定めたものであって,そのうち4号の規定が所得税の納税について適用の余地がないからといって,そのことは何ら不当なことではない。 イ通則法46条2項5号該当事実の判断について(ア) 猶予取扱要領第2章第1節1( )ヘは,通則法46条2項5号該当事実のう ち,同項3号又は4号該当事実に類する事実,すなわち,「事業の休廃止又は事業上の著しい損失に類する事実」とは,「おおむね次に掲げる事実をいう」として,- 17 -(イ)「納税者の経営する事業に労働争議があり,事業を継続できなかったこと」,(ロ)「事業は継続していたが,交通,運輸若しくは通信機関の労働争議又は道路工事若しくは区画整理等による通行路の変更等により,売上減少等の影響を受けたこと」,(ハ)「下請企業である納税者が,親会社からの発注の減少等の影響を受けたこと,その他納税者が市場の悪化等その責めに帰すことができないやむを得ない事由により,従前に比べ事業の操業度の低下又は売上の減少等の影響を受けたこと」,(ニ)「 会社からの発注の減少等の影響を受けたこと,その他納税者が市場の悪化等その責めに帰すことができないやむを得ない事由により,従前に比べ事業の操業度の低下又は売上の減少等の影響を受けたこと」,(ニ)「納税者がやむを得ない理由により著しい損失(事業に関するものを除く。)を受けたこと」の各事実を掲げている。これらの事実は,いずれも同項3号又は4号該当事実に類する事実と評価することができるものであり,猶予取扱要領の上記の定めは,内容的に相当なものであって合理性を有するものである。 (イ) 猶予取扱要領第2章第1節1( )ヘ(ロ)及び(ハ)には,上記のとおり, 納税者が売上げの減少の影響を受けたことが掲げられているが,これらは,「事業の休廃止又は事業上の著しい損失に類する事実」として掲げられたものなのであるから,そこでいう「売上げの減少」とは,単に従前に比べて売上げが減少したというだけでは足りず,事業の休廃止若しくは事業上の著しい損失があったのと同視できるか又はこれに準ずるような重大な売上げの減少があったことをいうものと解するのが相当である。 また,このような売上げの減少があったか否かは,事柄の性質上,一定の期間を設けて判断するのが相当であるところ,猶予取扱要領が「事業につき著しい損失を受けた」といえるかどうかを判断する際に用いている調査期間(納税の猶予の始期の前日前1年間)及び基準期間(調査期間の直前の1年間)という期間設定の方法は,上記のような売上げの減少があったか否かを判断する上でも適切なものであり,基本的には,これによって判断するのが相当である。 以上の点に関し,原告らは,猶予取扱要領が,通則法46条2項5号該当事実について,同項4号該当事実のような数値的な基準を明示していないことなどから,売上げの減少の程度や判断の期間につきある程度の幅を 以上の点に関し,原告らは,猶予取扱要領が,通則法46条2項5号該当事実について,同項4号該当事実のような数値的な基準を明示していないことなどから,売上げの減少の程度や判断の期間につきある程度の幅をもって判断すべきである旨- 18 -主張する。しかしながら,原告らの主張が,売上げの減少の程度について,事業の休廃止若しくは事業上の著しい損失があったのと同視できるか又はこれに準ずるような重大なものでなくとも,同項5号該当事実に当たるとする趣旨のものであるならば,そのような主張は採用することができない。また,上記のような売上げの減少があったか否かを判断する期間は,前述のとおり,基本的には猶予取扱要領が用いている調査期間及び基準期間によるのが相当であり,これによらずに任意の期間設定を認めることは,納税者の恣意的な期間設定を許す結果となり,納税者間の公平を害するものとして妥当でないというべきである。 原告ら各自についての検討以上のことを前提に,原告ら各自について,納税の猶予の要件に該当する事実が存するか否かなどを検討する。 なお,本件で検討すべき調査期間は,原告C及び原告Dについては,納税の猶予の申請書において,納税の猶予の始期を平成18年4月1日としているため(乙C3,乙D3),平成17年4月1日から平成18年3月31日までである。また,原告Aについては,納税の猶予の申請書において納税の猶予の始期を記載しておらず(乙A3),原告Bについては,納税の猶予の申請書において納税の猶予の始期を平成18年5月31日と記載しているが(乙B3),原告A及び原告Bが納税の猶予を申請した平成17年課税期間分の消費税及び地方消費税の納期限が平成18年3月31日であることからすれば,原告A及び原告Bにおいても同年4月1日から納税の猶予を受けようとしたものである が納税の猶予を申請した平成17年課税期間分の消費税及び地方消費税の納期限が平成18年3月31日であることからすれば,原告A及び原告Bにおいても同年4月1日から納税の猶予を受けようとしたものであると解される。そうすると,原告らの調査期間は,いずれも平成17年4月1日から平成18年3月31日までとなるから,原告らが主張する平成17年の売上金額と,原告らが主張する事実関係を前提として計算した場合の調査期間の売上金額との間に差異が生じ,原告らが主張する平成17年の「特前所得」は,原告らが主張する事実関係を前提として計算した場合の調査期間の「特前所得」と一致しないことになるが,原告らは,調査期間の売上金額及び「特前所得」を主張しないので,以下の検討においては,原告らの主張する- 19 -金額を前提としつつ,調査期間の売上金額についても検討することとする。 ( ) 原告Aについて ア原告Aの主張によると,原告Aの平成17年の「特前所得」は461万6560円であるというのであるから,平成17年において原告の事業につき損失は発生しておらず,原告Aの主張する事実関係を前提としても,原告Aについて,通則法46条2項4号に該当する事実が存しないことは明らかである。 イまた,原告Aの主張によると,原告Aの平成17年の売上金額は2074万1550円であり,平成16年の売上金額は2450万7340円であるから,平成17年において売上金額は376万5790円減少していることになるが,これは,売上げが前年比約15.4%減少したというにとどまる。原告Aの売上票(甲A11の4,5)記載の平成16年4月から平成17年12月までの各月別の売上金額及び原告Aが処分行政庁に提出した書面(乙A8)記載の平成18年1月から同年3月までの各月別の売上金額に基づいて計算すると, 1の4,5)記載の平成16年4月から平成17年12月までの各月別の売上金額及び原告Aが処分行政庁に提出した書面(乙A8)記載の平成18年1月から同年3月までの各月別の売上金額に基づいて計算すると,原告Aの調査期間の売上金額は2102万9560円であり,その前1年間(基準期間)の売上金額は2356万2200円であるから,調査期間における売上金額の減少は253万2640円,減少率も約10.7%にすぎない。 そうすると,原告Aの主張する事実関係を前提としても,平成17年及び調査期間において,事業の休廃止若しくは事業上の著しい損失があったのと同視できるか又はこれに準ずるような重大な売上げの減少があったということはできず,原告Aが同年に初めて消費税の納税義務者になったことなど原告Aの主張するその余の事情を考慮しても,原告Aについて,通則法46条2項5号(4号類似)に該当する事実が認められないとした処分行政庁の判断は,猶予取扱要領の定めに照らし,相当なものということができる。 ( ) 原告Bについて ア原告Bの主張によると,原告Bの平成17年の売上金額は1036万6629円であり,平成16年の売上金額は831万1618円であるから,平成17年- 20 -において売上げが増加していることは明らかである。原告Bの売上金額入金一覧表(甲B7の4ないし6)記載の平成16年4月から平成18年3月までの各月別の売上金額に基づいて計算すると,原告Bの調査期間の売上金額は957万1493円であり,その前1年間の売上金額は818万5170円であるから,調査期間において売上げは増加している。 そうすると,原告Bの主張する事実関係を前提としても,平成17年及び調査期間において,事業の休廃止若しくは事業上の著しい損失があったのと同視できるか又はこれに準ずるような重 て売上げは増加している。 そうすると,原告Bの主張する事実関係を前提としても,平成17年及び調査期間において,事業の休廃止若しくは事業上の著しい損失があったのと同視できるか又はこれに準ずるような重大な売上げの減少があったということはできず,原告Bが平成13年から平成16年まで消費税の納税義務者ではなかったことなど原告Bの主張するその余の事情を考慮しても,原告Bについて,通則法46条2項5号(4号類似)に該当する事実が認められないとした処分行政庁の判断は,猶予取扱要領の定めに照らし,相当なものということができる。 イ原告Bは,本件訴訟において,原告B及び兄の病気を挙げて通則法46条2項2号に該当する事実があると主張する。 しかしながら,原告Bに対する処分がされるまでに,原告Bから処分行政庁に対し通則法46条2項2号又は同号類似により同項5号に該当する旨の主張がされた事実は認められない。同項の規定による納税の猶予を受けようとする者は,当該猶予を受けようとする理由等を記載した申請書を税務署長等に提出しなければならず(国税通則法施行令15条2項),税務署長等は,納税の猶予を受けようとする者が主張しなかった猶予該当事実を職権で調査すべき義務を負うものではないから,原告Bの主張に係る事実の有無は,原告Bに対する処分の違法事由となるものではない。原告Bの主張は失当である。 ( ) 原告Cについて 原告Cの主張によると,原告Cの平成17年の売上金額は2180万0024円であり,平成16年の売上金額は2004万6038円であるから,平成17年において売上げが増加していることは明らかである。原告Cが処分行政庁に対し提出- 21 -した書面(乙C8)記載の平成18年1月から同年3月までの各月別の売上金額並びに原告Cの平成16年分及び平成17年分の所得税 増加していることは明らかである。原告Cが処分行政庁に対し提出- 21 -した書面(乙C8)記載の平成18年1月から同年3月までの各月別の売上金額並びに原告Cの平成16年分及び平成17年分の所得税青色申告決算書(乙C13,14)記載の平成16年4月から平成17年12月までの各月別の売上金額に基づいて計算すると,原告Cの調査期間の売上金額は2160万9756円であり,その前1年間の売上金額は2098万8725円であるから,調査期間において売上げは増加している。 そうすると,原告Cの主張する事実関係を前提としても,平成17年及び調査期間において,事業の休廃止若しくは事業上の著しい損失があったのと同視できるか又はこれに準ずるような重大な売上げの減少があったということはできず,原告Cが同年に初めて消費税の納税義務者となったことなど原告Cの主張するその余の事情を考慮しても,原告Cについて,通則法46条2項5号(4号類似)に該当する事実が認められないとした処分行政庁の判断は,猶予取扱要領の定めに照らし,相当なものということができる。 ( ) 原告Dについて 原告Dの主張によると,原告Dの平成17年の売上金額は2544万6967円であり,平成16年の売上金額は2571万6813円であるから,平成17年において売上金額は26万9846円減少していることになるが,これは,売上げが前年比約1.0%減少したというにとどまる。原告Dが処分行政庁に提出した書面(乙D8)記載の平成18年1月から同年3月までの各月別の売上金額並びに原告Dの平成16年分及び平成17年分の所得税青色申告決算書(乙D14,15)記載の平成16年4月から平成17年12月までの各月別の売上金額に基づいて計算すると,原告Dの調査期間の売上金額は2424万3320円であり,その前1年間の売 所得税青色申告決算書(乙D14,15)記載の平成16年4月から平成17年12月までの各月別の売上金額に基づいて計算すると,原告Dの調査期間の売上金額は2424万3320円であり,その前1年間の売上は2482万7818円であるから,調査期間における売上げの減少は58万4498円,減少率も約2.4%にすぎない。 そうすると,原告Dの主張する事実関係を前提としても,平成17年及び調査期間において,事業の休廃止若しくは事業上の著しい損失があったのと同視できるか- 22 -又はこれに準ずるような重大な売上げの減少があったということはできず,原告Dが平成16年には消費税の納税義務者でなかったが平成17年にはその納税義務者になったことなど原告Dの主張するその余の事情を考慮しても,原告Dについて,通則法46条2項5号(4号類似)に該当する事実が認められないとした処分行政庁の判断は,猶予取扱要領の定めに照らし,相当なものということができる。 結論 以上によれば,原告らについて納税の猶予を許可しないとした処分行政庁の判断に裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法があるということはできないから,本件各処分は適法と認められる。 よって,原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部増田稔裁判長裁判官前田郁勝裁判官杉浦一輝裁判官- 23 -(別紙)関係法令等 国税通則法46条2項税務署長等は,次の各号の一に該当する事実がある場合(前項の規定の適用を受ける場合を除く。)において,その該当する事実に基づき,納税者がその国税を一時に納付することができないと認められるときは,その納付することができないと認められる金額を限度として,納税者の申請に基づき,1年以内 く。)において,その該当する事実に基づき,納税者がその国税を一時に納付することができないと認められるときは,その納付することができないと認められる金額を限度として,納税者の申請に基づき,1年以内の期間を限り,その納税を猶予することができる。前項の規定による納税の猶予をした場合において,同項の災害を受けたことにより,その猶予期間内に猶予をした金額を納付することができないと認めるときも,また同様とする。 1号納税者がその財産につき,震災,風水害,落雷,火災その他の災害を受け,又は盗難にかかつたこと。 2号納税者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり,又は負傷したこと。 3号納税者がその事業を廃止し,又は休止したこと。 4号納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと。 5号前各号の一に該当する事実に類する事実があつたこと。 国税通則法施行令15条2項法第46条第2項又は第3項の規定による納税の猶予を受けようとする者は,次に掲げる事項を記載した申請書を国税局長,税務署長又は税関長に提出しなければならない。 1号前項第1号,第2号及び第4号に掲げる事項2号当該猶予を受けようとする理由3号分割納付の方法により当該猶予を受けようとする場合には,その- 24 -分割金額及び当該金額ごとの猶予期間4号猶予を受けようとする金額が50万円を超える場合には,提供しようとする法第50条各号(担保の種類)に掲げる担保の種類,数量,価額及び所在(その担保が保証人の保証であるときは,保証人の氏名及び住所又は居所)その他担保に関し参考となるべき事項(担保を提供することができない特別の事情があるときは,その事情)5号法第46条第3項の申請をやむを得ない理由によりその国税の納期限後にする場合には,その理由 昭和51年6月3日付け き事項(担保を提供することができない特別の事情があるときは,その事情)5号法第46条第3項の申請をやむを得ない理由によりその国税の納期限後にする場合には,その理由 昭和51年6月3日付け徴徴3-2,徴管2-32「納税の猶予等の取扱要領の制定について」第2章第1節1納税の猶予の要件( ) 要件 通常の納税の猶予を認めることができるのは,次に掲げる要件のすべてに該当する場合である。 イ納税者に猶予該当事実があること。 ロ猶予該当事実に基づき,納税者がその納付すべき国税を一時に納付することができないと認められること。 ハ納税者から納税の猶予の申請書が提出されていること。 ニ相当な損失を受けた場合の納税の猶予の適用を受ける場合でないこと。 ホ原則として,納税の猶予の申請に係る国税の額に相当する担保の提供があること。 ( ) (省略) ( )猶予該当事実 「猶予該当事実」とは,次に掲げる事実をいう。 - 25 -イ(省略)ロ(省略)ハ(省略)ニ納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと(通則法第46条第2項第4号)。 (イ)「事業につき著しい損失を受けた」とは調査日(納税の猶予の始期の前日をいう。以下この節において同じ。)前1年間(以下この項において「調査期間」という。)の損益計算において,調査期間の直前の1年間(以下この項において「基準期間」という。)の利益金額の2分の1を超えて損失が生じていると認められる場合(基準期間において損失が生じている場合には,調査期間の損失金額が基準期間の損失金額を超えているとき。)をいうものとする。 なお,調査期間以内において,例えば,購入予定の資材の高騰,在庫商品の価額の下落,取引先の都合による売買契約の解除等の損失発生の原因となるような事実(季節変動等による恒 るとき。)をいうものとする。 なお,調査期間以内において,例えば,購入予定の資材の高騰,在庫商品の価額の下落,取引先の都合による売買契約の解除等の損失発生の原因となるような事実(季節変動等による恒常的なものを除く。以下この項において「損失原因」という。)があり,当該事実の発生した日(損失原因が継続的に発生していたような場合には,最初にその事実が生じたと認められる日)の特定ができる場合には,その日以降調査日までの間に生じたと認められる損失金額と基準期間の利益金額(損失が生じている場合には,損失金額)のうち損失原因の生じた日以降調査日までの期間に対応する期間の利益金額(又は損失金額)とを比較して上記の判定を行っても差支えない。 (注)猶予期間の始期については,この節3の(1)《猶予期間》を参照する。 (ロ)(イ)に該当するかどうかの判定に当っては,調査期間及び基準期間のそれぞれについて仮決算を行うこととなるが,調査日又は基準期間の末- 26 -日に近接した時期において特定の損益計算期間が終了している場合には,その期間の損益計算の結果を基に,前記の利益金額又は損失金額を推計して差支えない。 なお,納税者が帳簿等を備えていない場合又は帳簿等による調査が困難である場合には,納税者からの聞き取りを中心にする等その状況に応じ,妥当と認められる方法により利益金額又は損失金額を算定して差支えない。 (ハ)(イ)及び(ロ)の損失の認定に当って,徴収上弊害があると認められるときは,資金計算上の立場から所要の調整を行っても差支えない。 ホ(省略)ヘ納税者に事業の休廃止又は事業上の著しい損失に類する事実があったこと(通則法第46条第2項第5号(第3号又は第4号類似))。 「事業の休廃止又は事業上の著しい損失に類する事実」とは,おおむね次に掲げる事 者に事業の休廃止又は事業上の著しい損失に類する事実があったこと(通則法第46条第2項第5号(第3号又は第4号類似))。 「事業の休廃止又は事業上の著しい損失に類する事実」とは,おおむね次に掲げる事実をいう(通則法基本通達第46条関係12の(2)参照)。 (イ)納税者の経営する事業に労働争議があり,事業を継続できなかったこと。 (ロ)事業は継続していたが,交通,運輸若しくは通信機関の労働争議又は道路工事若しくは区画整理等による通行路の変更等により,売上減少等の影響を受けたこと。 (ハ)下請企業である納税者が,親会社からの発注の減少等の影響を受けたこと,その他納税者が市場の悪化等その責めに帰すことができないやむを得ない事由により,従前に比べ事業の操業度の低下又は売上の減少等の影響を受けたこと。 (ニ)納税者がやむを得ない理由により著しい損失(事業に関するものを除く。)を受けたこと。 ( )猶予該当事実と納付困難との関係 - 27 -イ「猶予該当事実に基づき納付することができない」とは,納税者に(3)《猶予該当事実》に掲げる事実があったことにより,資金の支出又は損失があり,その資金の支出又は損失のあることが国税を一時に納付することができないことの原因となっていることをいう。 ロ「国税を一時に納付することができない」(以下「納付困難」という。)とは,納税者に納付すべき国税の全額を一時に納付する資金がないこと,又は資金があっても,それによって一時に納付した場合には,納税者の生活の維持若しくは事業の継続に著しい支障が生ずると認められることをいう。この場合において,納付困難であるかどうかは,第7章第2節《現在納付能力調査》に定める現在納付能力調査に基づいて判定する。 ( )納税の猶予の申請 納税者が納税の猶予を受けようとする場合 いう。この場合において,納付困難であるかどうかは,第7章第2節《現在納付能力調査》に定める現在納付能力調査に基づいて判定する。 ( )納税の猶予の申請 納税者が納税の猶予を受けようとする場合には,所要の事項を記載した納税の猶予申請書(様式1)を税務署長(国税局長及び沖縄国税事務所長を含む。 以下同じ。)に提出しなければならない(通則法第46条第2項,通則令第15条第2項)。 (注)通常の納税の猶予の申請期限,納税の猶予の申請書に記載すべき事項及び添付書類については,第4章第1節《猶予許可等に関する事務手続》に定めるところによる。 (以下省略)第2章第1節3納税の猶予をする期間( )猶予期間 納税の猶予をする期間は,1年以内で,納税の猶予の対象となる国税を納付することができると認められる最短期間とする(通則法基本通達第46条関係7)。この場合における猶予期間の始期は,納税の猶予の申請書に記載された日とする。ただし,その日を不適当と認めるときは,別にその始期を指定することができるものとする(通則法基本通達第46条関係8)。 - 28 -なお,具体的な猶予期間及び猶予期間中における毎月の納付予定金額等については,第7章第3節《見込納付能力調査》に定める見込納付能力調査の結果を基に定めるものとする。 (注)猶予期間の始期は,猶予該当事実が生じた日前にさかのぼることができないことに留意する。 (以下省略)

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