【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 本件を原裁判所に差し戻す。 理 由 被告人Aの弁護人徳永升夫の控訴趣意の要領は、 (一) 本件は判決に影響を及ぼすべき
主文 原判決を破棄する。 本件を原裁判所に差し戻す。 理由 被告人Aの弁護人徳永升夫の控訴趣意の要領は、(一) 本件は判決に影響を及ぼすべき事実の誤認がある。 即ち本件脅迫の程度は未だ被害者の自由意思を抑圧する程度のものでなく、財物は被害者が交付したものであつて、強盗罪ではなく恐喝罪である。 (二) 原審が被告人に懲役五年の言渡をなしたのは刑の量定が不当でおる即ち被告人の年令(当十八才と二ケ月余に過ぎぬ)と被害者が百万円(一口五百円の定額郵便貯金による)くじに当つた者であつて、世人の言辞に刺戟され飲酒酩酊が作用して常軌を逸した行動となつたものであるから心神耗弱者であつた。又本件に於て被告人は眞実領得の意思がなかつたものである。その後悔悟して眞面目に稼働している。 被告人Bの弁護人岩成自助の控訴趣意の要領は、第一点 (イ)原判決は被告人の公判廷に於ける供述によれば強盗の犯意もなく又相被告人Aが拳銃を所持したことを知つていなかつたのに被告人を強盗罪に問擬したのは審理不盡である。 (ロ) 原判決は被害者に対し拳銃を突付けてと認定しておるが審理不盡又は事実誤認である。 第二点被害者等の供述を吟味すれば同人等は本件被害当時決して抗拒不能の状態には陷つて居らぬ。にも拘らず強盗罪における脅迫の程度に達したものとして強盗罪に問擬したのは擬律錯誤の違法がある。 第三点相被告人AとBとの性質境遇資産関係犯罪の情状及その後の情況、従来よりの家庭の交際関係には格段の差がある。Bの坑内作業に於ける特殊の技術的優秀なることと、その収人は実父に提供して貯蓄して貰ひ長兄次兄の結婚費用に充当したる等兄弟愛に燃えていること、被害の弁償もその貯蓄より為したこと等将来ある青年に原審の如き刑を科することは刑 の技術的優秀なることと、その収人は実父に提供して貯蓄して貰ひ長兄次兄の結婚費用に充当したる等兄弟愛に燃えていること、被害の弁償もその貯蓄より為したこと等将来ある青年に原審の如き刑を科することは刑政の本義に反し著しく不当である。 と謂うのである。 当裁判所は被告人両名に対する原判決認定の強盗の事実につき、その動機犯情等に関し稍々不明瞭な点があり、これらの諸点を明かにすることによつて、その量刑についてもなお考慮の余地があるように考えて事実の取調べをなしたのであるが、翻つて本件起訴状の記載を見ると、起訴状には、その公訴事実の第一として「被告人両名は共謀の上昭和二十四年二月二十五日午後十二時頃嘉穂郡a町大字b製靴業C方倉庫に於て、同人所有の(1)靴甲革五足分(2)靴中底革二十一足半分(3)屑革五百匁位(4)小供用黒編上靴一足(5)風呂敷一枚時価九千八百円位相当を窃取し更に引続き同人方に侵入して強盗をしようと決意の上、同家炊事場の格子窓を破壊して屋内に侵入し、主人夫婦が就寝している四疊半の部屋に至りAが所持していた拳銃(壊れて機能なきもの)を突きつけながら「金を貸しない」と申向け同人等を畏怖せしめて其の反抗を抑圧し同人等所有の現金五千八百円を強取し」と記載してある尤も罪名としては強盗罪(刑法第二百三十六条)の表示だけしかないのであるが、果して検事は原判示強盗事実のみを起訴して、右窃盗や住居侵入の事実については、その審理処罰を求むる意思はなく、単に情状として<要旨>記載したに過ぎないものであろうか。言う迄もなく、何が起訴されたか即ち起訴によつて何が裁判所の審判の</要旨>対象とされたかは起訴状に明示された犯罪事実(訴因)そのものを基本として観察せらるべきものであり、罪名、罰条の如きはむしろ犯罪事実の記載と相待つて起訴の対象を明確ならしめる補助 判所の審判の</要旨>対象とされたかは起訴状に明示された犯罪事実(訴因)そのものを基本として観察せらるべきものであり、罪名、罰条の如きはむしろ犯罪事実の記載と相待つて起訴の対象を明確ならしめる補助的なものと為すべきものであろう。本件起訴状の前記の記載の事実から観れば検事は、被告人両名がC所有の革靴等を窃取した事実及び同人方に侵入した事実につき審判を求めたものと認定するのが相当ではなかろうか。窃盗住居侵入についての起訴状の記載は単なる情状の記載としては余りに明白に犯罪事実を記載している。元来起訴状には裁判官に予断を生ぜしめる虞のある記載をすることは禁ぜられていること(刑訴法第二百五十六条末項)も留意すべぎである。然るに原判決は判示第一に於て単に強盗の事実のみを認定している。原審は窃盗の事実や住居侵入の事実につき検事に審理裁判を求むる意思がないものと認められたのかも知れないが、もし然りとすれば何が故に検事に対しその点を釈明して刑訴法第三百十二条所定の訴因の撤回をなさしむるか、罰条を追加させなかつたのであろうか。一件記録を精査するも原審裁判官が釈明権を行使して叙上の措置をとつたような事跡はこれを看出し得ないのであるから、いずれにしろ原審は審判の請求を受けた事件について判決をしなかつたと言うの外はないのである。 よつて刑訴法第三百九十二条、第三百九十七条、第三百七十八条第三号、第四百条本文に則り原判決を破棄し事件を原裁判所に差戻すこととし主文の通り判決する。 (裁判長判事森靜雄判事高原太郎判事吉田信孝)
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