【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 被告人を懲役一〇月に処する。 原審における未決勾留日数中一〇〇日を右本刑に算入する。 但し五年間右刑の執行を猶予する。
主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役一〇月に処する。 原審における未決勾留日数中一〇〇日を右本刑に算入する。 但し五年間右刑の執行を猶予する。 原審並びに当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理由 弁護人鶴田常道が陳述した控訴趣意は、記録に編綴の同弁護人及び弁護人堤千秋、同鶴和夫各自提出の控訴趣意書(控訴趣意補充書共)に記載のとおりであるから、これを引用する。 弁護人鶴田常道の控訴趣意第一点第二点、弁護人堤千秋の控訴趣意第一点第二点、弁護人鶴和夫の控訴趣意第一点について。 しかし、原判決挙示の関係各証拠によれば原判示第一事実は優に認められ、右証拠に原審において取調べたA1、A2の検察官に対する各供述調書、Bの司法警察員に対する供述調書、当審証人A3、A1の各証言を参酌して更に敷衍すれば次の各事実が認められる。すなわち、一、 被告人の長男A3、次男A2、長女A1は昭和二七年京都市に大阪穀物取引所仲買人C1株式会社を設立し、A3が代表取締役社長に、A2が専務取締役に、A1が監査役に就任して同会社を運営して来たが、昭和三〇年初頃名古屋市に同会社C2出張所を開設したので爾来A3は同会社C3本社の経営一切をA1に一任し自らは右出張所に赴いてその営業に専念して来たのである。 二、 一方、被告人は極端に投機を好み途方もない相場に手を出すので、これを警戒するA3と折合が悪く、昭和三〇年四月頃炭坑経営を思い立ち、同人より一五〇万円の資金を貰つて福岡市に来たのであるが、投機好きの被告人は炭坑経営に興味を覚えず、同年六月初頃同市a町に大阪穀物取引所仲買人C1株式会社出張所の看板を掲げ穀物清算取引の取次を始め、次いで小倉、熊本その他に同出張所や連絡所を設けて右営 、投機好きの被告人は炭坑経営に興味を覚えず、同年六月初頃同市a町に大阪穀物取引所仲買人C1株式会社出張所の看板を掲げ穀物清算取引の取次を始め、次いで小倉、熊本その他に同出張所や連絡所を設けて右営業を営んで来たのである。 三、 しかし、被告人がC1株式会社の名義を用いて右営業をなすことは同会社代表取締役A3の意思に反し同人の許容しないところであり、従つてまた同人の右真意を知つていたC3本社の経営担当者A1の本意にも副わないものであつて、このことはまた被告人において当時これを察知していたのである。 四、 ところで、被告人は大阪穀物取引所仲買人C1株式会社C4出張所等の名義を以て多数の顧客より取引の取次方依頼を受け委託証拠金及び充用証券を受取つたのであるから、依頼を受けた取引の委託をすべて各顧客別にC3本社に取次ぎ、委託証拠金等も顧客別に同本社に送付すべく、本社はこれを正規の手続により受けいれ、同会社名義を以て顧客別に大阪穀物取引所に取引の委託をした上、損益の計算をなしてこそ被告人の右業務が同会社の営業に属するものと目し得るところ、被告人は多数の顧客から依頼を受けた右取引委託につき、その一部を顧客の氏名を明示しないで一括して漫然次々にC3本社に取次いだため、A1はこれを被告人個人の思惑と見てA2名義を以て仲買人D商店に取次方を依頼し或は全然取次がないで取引所に上場せず、また他の一部を顧客の氏名を用いず、被告人自ら自己の別名A4等の名義を以て一括して直接仲買人E株式会社に取次方を依頼し、しかもC4出張所等における備付の帳簿には顧客別に取引の損益計算をなし、また顧客から受取つた委託証拠金等も殆んどすべて顧客別に本社に送付しないで、被告人自らこれを保管するか自己名義を以て本社或はE株式会社等に送付し、かくて被告人が多数の顧客から取次方依頼を受 をなし、また顧客から受取つた委託証拠金等も殆んどすべて顧客別に本社に送付しないで、被告人自らこれを保管するか自己名義を以て本社或はE株式会社等に送付し、かくて被告人が多数の顧客から取次方依頼を受けた取引の殆んど全部がC1株式会社の営業として処理されなかつたのである。 五、 尤も、A1が同会社の印鑑、資格証明書、委任状、登記簿抄本、帳簿その他の書類を被告人に送付していることは所論のとおりであるが、これは同女が父親である被告人の強い要求を断りきれず、不用意且つ不本意乍らこれに応じたものであつて、被告人の前示業務を同会社の営業として容認する意図に出でたものではなく、さればこそ同女は被告人経営の店舗をC1株式会社の出張所として正規の登録をなさず、また被告人が依頼した取引委託の取次をすべて被告人個人の思惑と見て正規の手続により同会社に受けいれなかつたのである。しかしまた、同女は本社の運営全般を代表取締役A3から委任された地位にありながら被告人に対し前示各種書類を送付し或は被告人の取引委託の取次を受けいれ、因つて以て外形的には恰も被告人がC1株式会社の名により営業することを容認する如き所為に出でたことも窺われないでもないから、情況によつては同会社が被告人のなした取引につき商法第二三条により善意の顧客に対して民事上の責任を負う場合があり得るとしても、また所論のごとくA3がF、G、H、I、J等と和解契約をなし、K等と債務の分割弁済契約をして被告人が顧客となした取引委託の取次により生じた債務につき、同会社において責任を負う旨を表明した事実は明らかであるけれども、右はC1株式会社の社長たる同人において被告人が自己の実父である情義上、且つC1株式会社の取引所に対する信用を憂慮して、被告人の取引上の債務を決済しようとする意図に出たに過ぎないものと認むべき も、右はC1株式会社の社長たる同人において被告人が自己の実父である情義上、且つC1株式会社の取引所に対する信用を憂慮して、被告人の取引上の債務を決済しようとする意図に出たに過ぎないものと認むべきであることからしても、これ等の事実を以て被告人の営業が真実同会社の業務としてなされたものであるという証左とはなし難い。 <要旨第一>かようなわけで、被告人が仲買人C1株式会社名義を用いてなした本件営業はその内容において毫も同</要旨第一>会社の業務としての実体を具備するものでなく、また同会社代表取締役A3或は同人より経営一切を委任されたA1においてこれを同会社の営業として正式に承認したものでないのは勿論、被告人においてもこれを同会社の業務と信じ或は同人等の承認を得たものと誤信してなしたものではなく、(右C4出張所が本社において登録されていないことはその金看板を有しないことから被告人は充分承知していた)被告人が同会社名義に仮託し自ら大阪穀物取引所における穀物清算取引委託の取次依頼を受け、これを更に他の仲買人に取次依頼をなし、以て業として売買取引委託の取次をしたものであつて、商品取引所法第九三条に違反して登録をした正規の仲買人でない者が商品仲買人の業務を行つたものと断ずべきであり、同法第四九条に違反して本店において出張所の登録を怠つた場合には該当しないものであるそれ故、所論のように被告人が当初C1株式会社の本社の事務を手伝い、C2出張所等の開設に立働き、A3から資金を得て九州に来たこと、被告人の店で本社の書類、印鑑等が使用されていたこと、被告人から京都市所在の本社に一部取引が取次がれていること、及び昭和三一年一月より以前に被告人の取引について本社名義で訴訟がなされていること、その他その後において社長たるA3において被告人の取引上の債務について決 市所在の本社に一部取引が取次がれていること、及び昭和三一年一月より以前に被告人の取引について本社名義で訴訟がなされていること、その他その後において社長たるA3において被告人の取引上の債務について決済をしていること等からして、A3及び本社の事務を一任されたA4が、仮りに被告人が社長から正式に承認されていないのに勝手に「C1株式会社C4出張所」名義で商品仲買人としての業務を行つていることを察知していたとしても前示の結論に消長を来たすものではない。記録を精査しても原判決に所論の如き事実誤認、法令適用の誤は存しない。論旨は理由がない。 弁護人鶴田常道の控訴趣意第三点第四点、同補充控訴趣意について。 思うに、商品取引所法が第九二条において、商品仲買人は委託者から預託を受けて、又はその者の計算において自己が占有する物をその者の書面による同意を得ないで、委託の趣旨に反して担保に供し、貸し付け、その他処分してはならない、と規定した所以は、商品仲買人の取扱う取引の大量性と顧客の大衆性とに鑑み、仲買人が取引に関し占有する物について委託の趣旨に反する処分の同意の如き顧客に不利な契約は、これを安固且つ明確にしておき以て顧客の利益を保護することが同法第一条の目的に副うものと認めた趣旨と解されるか<要旨第二>ら、右第九二条の規定は苟も仲買人が委託を受けた取引に関して自ら占有する顧客の物である限りすべてその</要旨第二>適用あるものと解すべく、従つて仲買人が顧客に対する債権の担保として預託を受けて占有する有価証券を包含するものと解するを相当とし、これを除外すべき理由は全く存しない。このことは、同条と同趣旨を以て設けられ類似の立言形式がとられている証券取引法第五一条第一項についてもまた同様に解すべきことに徴し疑をいれないところであつて、同条第二項は第一項の制限を更 く存しない。このことは、同条と同趣旨を以て設けられ類似の立言形式がとられている証券取引法第五一条第一項についてもまた同様に解すべきことに徴し疑をいれないところであつて、同条第二項は第一項の制限を更に強化し証券業者が顧客に対する債権の担保として占有している有価証券については書面による同意を得ても当該債権の額を超える額の債務の担保に供することを許さない趣旨と解すべきもので、所論の如く第二項の規定があるからといつて第一項の証券業者の占有する有価証券中より顧客に対する債権の担保として占有する有価証券を除外すべき根拠とはなし得ないのである。 そして、商品取引所法には証券取引法第五一条第二項に相当する規定がなく、その第九七条第一項において、商品仲買人は受託契約準則の定めるところにより、商品市場における売買取引の受託について委託者から担保として委託証拠金を徴しなければならないと規定し、また大阪穀物取引所受託契約準則第一八条第一項によれば、委託者の預託する委託証拠金は市場性のある有価証券を以て充用することができると規定しているに止まるからというて、証拠金充用証券を委託の趣旨に反し、担保に供し、貸し付ける等の処分については何等の規制もなされていないものと見ることはできない。却つて前記受託契約準則第一一条で「仲買人は委託者から委託を受けて又はその者の計算において自己が占有する物件」を委託者の同意なくして委託の趣旨に反して担保に供し、貸し付け、その他処分することができない旨規定したのは前記法第九二条の規定を受けたものであると見るべきであつて、法第九二条は、証拠金充用証券についても、これを規制しようとした趣旨であることが明白である。なんとなれば、右委託証拠金充用証券の性質を考察するに、右準則第一四条第一項第二項に原審証人L、M、Nの各証言を参酌すれば、清算 充用証券についても、これを規制しようとした趣旨であることが明白である。なんとなれば、右委託証拠金充用証券の性質を考察するに、右準則第一四条第一項第二項に原審証人L、M、Nの各証言を参酌すれば、清算取引において商品仲買人(証券業者も同様)は顧客の委託に基いて売買取引を当該取引所で行うものであつて、その清算取引の代金債権又は取引により生ずる損害金請求権について顧客よりその債権を担保するために証拠金又はその代用として有価証券の預託を受けこれを保管するものであるから、取引所に当該取引の証拠金として一定の割合を差入れ、委託者に損失を生じた時には追証拠金を請求し、又は建玉の処分をすることもあり、なお、損失が出たときは、委託者にその清算を求め、これに応じないときに始めて委託者に通知した上で該充用証券を以てその弁済に充当される関係にあるので、これが一種の質権設定たる性質を有することは自ら明白であるが、債権の発生と同時に当然に換価してその債務の弁済に充当し得るものでなく、且つその担保権設定の当時に債権の発生及びその額は未だ確定しておらず、その存続期間の定めがあるというものではないのであるから、根担保たる性質を具有し、その委託の趣旨からしてその回収を確保する必要性が高いものであることが明らかである。それで、叙上の事由からして、前記同法第九二条においては証拠金充用証券についても、仲買人は当該委託者以外の売買取引にかゝる売買の証拠金として預託し乃至は値洗差金納入のため担保に供し、又は売却し、その他委託者と関係なく自己の運営資金調達のためこれを処分する等委託の趣旨に反して処分するには委託者の同意を要すること及びその同意は必ず書面によつて明確になされるべきことを規定する必要があつた(これに反するときは同法第一五五条に罰則がある)のは当然の理であるというべきであ して処分するには委託者の同意を要すること及びその同意は必ず書面によつて明確になされるべきことを規定する必要があつた(これに反するときは同法第一五五条に罰則がある)のは当然の理であるというべきである。 そして、元来民法第三四八条の規定する責任転質の場合においては質権者は設定者の承諾なくとも自己の債務のためその質権の上にその権利の存続期間内である限り質権を設定しても法律上許された権利の行使に外ならないから、担保として自己の占有する他人の株券を転質したとしても、これに対する不法領得の意思実行であるとして横領罪を以て論ずべきものでないこと所論のとおりであるが、前示のとおり本件のごとき担保権については民法の転質の規定はそのまゝ適用し得ないのであつて、本件において、原判決挙示の証拠によれば、被告人が売買取引委託の取次について、顧客から受取つた委託証拠金充用証券は記名株券であり、これに対する質権は顧客が取引上将来負担することあるべき債務を担保するものであるところ、昭和三一年八月二七、八日の処分当時原判示顧客の債務は存在しなかつたことが認められるから、被告人が右株券を自己の借入金のため担保に差し入れることは、被告人の有する質権の範囲を超え質権設定者である判示顧客に不利な結果を齎すものであつて委託の趣旨に反する処分行為であるのみならず、被告人が委託証拠金充用証券として顧客から預託された本件株券を自己の借入金の担保に供することにつき顧客の承諾を得たことは到底肯認し難く、また所論の如く右株券を被告人自身の取引所に対する売買証拠金代用証券として差し入れることにつき承諾を得た事実も認められないので、被告人が前示証拠金充用の株券を処分した行為がその権限外の行為であることは毫も疑を存しない。それで、たとえ、右株券に添付されている白紙委任状や株券の裏書譲渡欄にお 承諾を得た事実も認められないので、被告人が前示証拠金充用の株券を処分した行為がその権限外の行為であることは毫も疑を存しない。それで、たとえ、右株券に添付されている白紙委任状や株券の裏書譲渡欄における捺印があつたとしても、これ等は、仲買人が顧客から債務の支払を受けない場合弁済に充当するため株券を処分するためのものであつて(準則第一八条三項参照)、これを以て顧客が被告人の借入金の担保に供することを承諾したものと認めることはできない。 以上のとおりであるから、被告人が当時顧客の債務が存しないのに、委託証拠金充用証券として顧客から預託を受けた原判示株券をその書面による同意を得ないで自己の借入金の担保に供したことは委託の趣旨に反し、その権限外の行為に属し、その行為は業務上横領罪を構成するものというべきである。記録を精査しても原判決に所論の如き法律解釈の誤、理由不備、事実誤認は存しない。論旨は理由がない。 弁護人鶴田常道の控訴趣意第五点、弁護人堤千秋の控訴趣意第三点第四点第五点について。 原判決挙示の関係証拠によれば、昭和三一年八月二五日頃小倉地区の債権者多数が集りC1株式会社代表取締役A3と交渉して、右債権者が被告人に預託していた委託証拠金充用証券についても当日の時価に換算した金額につき支払期日を同年一二月一〇日とした同人振出の約束手形の交付を受けることとし、O、P、Qがこれを受取つていることは所論のとおり認められるが、RとSは右約束手形を受取ることを承諾していないのみならず、原審並びに当審証人T、A3の各証言によれば、右約束手形の振出交付により被告人に預託されていた委託証拠金充用証券が売買によりC1株式会社の所有に帰したものとは認め難く、右約束手形の交付は単に右証券又は当時既に処分済の証券に代る金員の支払を同年一二月一〇日まで延期する趣 被告人に預託されていた委託証拠金充用証券が売買によりC1株式会社の所有に帰したものとは認め難く、右約束手形の交付は単に右証券又は当時既に処分済の証券に代る金員の支払を同年一二月一〇日まで延期する趣旨であつて、被告人の手許に残存する証券については右手形金額が支払われた時これを同会社の所有に帰せしめる趣旨であつたと認めるのが相当である。 そして、被告人において当時預託を受けていた委託証拠金充用証券を、それが担保たるの性質上当然に、或は約束手形の交付により同会社の所右に帰したものと考えたため自己の債務の担保に供する権限があると誤信していたとしても、それは畢竟法律の錯誤に帰するものであるから横領の犯意の成立を阻却するものとはいわれない。 また、原判決挙示の証拠によれば昭和三一年八月二七、八日当時所論の如くU、V、W、Xの取引上の計算尻が赤字となつていたものとは認められないのみならず、仮りに赤字の分があつたとしても、被告人は該債務の支払を受けるため正規の手続により委託証拠金充用証券を処分したものではなくして、他の証券と一括して自己の借入金の担保に供したものであるから、横領罪の成立は否み得ないところである。 また、被告人がY、Zから預託を受けていた本件委託証拠金充用証券を自己の債務の担保に供したことにつき、所論の如く後日本人の承諾を得て示談し、或はそれが極めて短期間の融資を受けるためでしかも他の顧客の債務の弁済に充てる趣旨であつたとしても、かくの如きは毫も被告人の不法領得の意思の成立を否定すべき資料とはなし難い。 なおまた、原判決挙示の証拠によれば所論の如く商品仲買人において顧客から預託を受けた委託証拠金充用証券を担保に供して自己の金融を受けることが業界の慣習となつている事実は到底肯認し得ないところである。そして、被告人においてかかる慣習 所論の如く商品仲買人において顧客から預託を受けた委託証拠金充用証券を担保に供して自己の金融を受けることが業界の慣習となつている事実は到底肯認し得ないところである。そして、被告人においてかかる慣習が存在するものと誤信し充用証券の担保差入が許されるものと信じていたとしても、これまた法律の錯誤に過ぎないから不法領得の意思の成立を阻却するものとはいわれない。 記録を精査しても原判決に所論の如き事実誤認は存しない。論旨は理由がない。 弁護人鶴田常道の控訴趣意第六点、弁護人堤千秋の控訴趣意第六点、弁護人鶴和夫の控訴趣意第二点について。 よつて記録を精査するに、原判決当時の事情によれば原審の被告人に対する科刑は相当である。しかし、当審における事実取調の結果に徴すれば被告人は原判決後更に被害弁償として一〇〇万円を支払っていることが認められ、原審当時二〇〇万円の被害弁償をしていること、被告人は齢既に六五才を越えていること、被告人には二〇年以上以前の公正証書原本不実記載による懲役刑執行猶予の前科あるに過ぎないことその他諸般の情状を考察すれば、被告人が本件により多数の顧客に対し多大の損害を与えた点を考慮にいれても刑の執行猶予が相当であり、原判決を破棄しなければ明らかに正義に反すると認められるから、原判決は破棄を免れない。 論旨は理由がある。 そこで、刑事訴訟漢第三九七条第二項に則り原判決を破棄し、同法第四〇〇条但書に従い更に判決する。 原判決の確定した事実に法律を適用すれば、被告人の原判示所為中仲買人でないのに業として取引委託の取次をした点は商品取引所法第九三条第一五五条第三号に(懲役刑選択)、業務上横領の点は刑法第二五三条に当るところ、右は同法第四五条前段の併合罪であるから同法第四七条第一〇条により重い判示第二の業務上横領の刑に法定の加重をした上 三条第一五五条第三号に(懲役刑選択)、業務上横領の点は刑法第二五三条に当るところ、右は同法第四五条前段の併合罪であるから同法第四七条第一〇条により重い判示第二の業務上横領の刑に法定の加重をした上被告人を懲役一〇月に処し、同法第二一条を適用して原審における未決勾留日数中一〇〇日を右本刑に算入し、なお同法第二五条に則り五年間右刑の執行を猶予し、原審並びに当審における訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文により全部被告人に負担させることとする。 よつて主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官岡林次郎裁判官中村荘十郎裁判官臼杵勉)
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