(判示事項の要旨)主文被告人両名をそれぞれ禁錮10月に処する。 被告人両名に対し,この裁判が確定した日から各3年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 訴訟費用のうち,国選弁護人吉澤義則について生じた分は被告人Aの,国選弁護人石倉誠也について生じた分は被告人Bの,それぞれ負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人Aは,和歌山市ab番地のc所在のd1階の認可外保育施設であるC園の実質的な管理運営者として,C園における保育上の安全管理を掌理していたもの,その夫である被告人Bは,C園の保育従事者として,保育委託を受けた児童の保育業務に従事していたものであるが,平成15年9月20日午後4時45分ころ,Dから委託を受け,同人の長男であるE(平成14年5月30日生,当時1歳。)を,C園において保育するに当たり,第1被告人Aは,C園の主たる開所時間を午前8時から午後7時までと定めていたのであるから,委託を受けた1歳半未満の児童1名を,その主たる開所時間を超えて午後8時以降の夜間に保育させる際,保育士及び看護師の資格をいずれも有しない者1名のみをその保育に従事させるのであれば,児童の保護者が持たせ,あるいは飲食を許した物以外の物を児童に摂らせてはならないことをあらかじめその保育従事者に周知徹底すべき業務上の注意義務があるのに,これを怠り,児童の保護者が持たせ,あるいは飲食を許した物以外の物を児童に摂らせてはならないことを伝えないまま,同日午後10時30分ころから,同所において,保育士及び看護師の資格をいずれも有しない被告人Bを一人でEの保育に従事させ,よって,同月21日午前零時ころ,同所において,被告人Bをして,同児に対し,同被告人が夜食として食していたインスタントラーメ ン,チョコレート等をDの許諾なく摂らしめ,第2被告人Bは 従事させ,よって,同月21日午前零時ころ,同所において,被告人Bをして,同児に対し,同被告人が夜食として食していたインスタントラーメ ン,チョコレート等をDの許諾なく摂らしめ,第2被告人Bは,保育士及び看護師の資格をいずれも有しないのであるから,C園の主たる開所時間を超えて午後8時以降の夜間に一人で1歳半未満の児童1名の保育に従事する際は,児童の保護者が持たせ,あるいは飲食を許した物以外の物を児童に摂らせてはならない業務上の注意義務があるのに,これを怠り,同月21日午前零時ころ,同所において,一人でEの保育に従事中,同児に対し,自己の判断で,自ら夜食として食していたインスタントラーメン,チョコレート等をDの許諾なく摂らせ,もって被告人両名の前記各過失の競合により,同日午前2時5分ころ,睡眠中のEをして,吐物によって気道を閉塞させ,よって,同年10月1日午後4時ころ,同市de丁目f番地所在のF医療センターにおいて,同児を低酸素性脳障害により死亡させたものである。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明) 検察官及び弁護人らの主張等(1)検察官及び弁護人らの主張の概要検察官は,後述のとおり,平成17年12月27日付け公訴事実(第1回公判において訂正済みのもの)に係る訴因(以下「第1訴因」という。),平成18年11月28日付け公訴事実に係る予備的訴因(以下「第2訴因」という。)及び平成19年2月1日付け公訴事実に係る予備的訴因(以下「第3訴因」という。)について,それぞれ被告人両名に過失が認められるとし,また,Eの死亡との間の因果関係も肯定でき,その余の事実と相俟って被告人両名ともに業務上過失致死罪が成立すると主張する。なお,検察官は,第11回公判において,第2訴因及び第3訴因が選択的な関係に立つものと釈明している。 これ 関係も肯定でき,その余の事実と相俟って被告人両名ともに業務上過失致死罪が成立すると主張する。なお,検察官は,第11回公判において,第2訴因及び第3訴因が選択的な関係に立つものと釈明している。 これに対し,弁護人らは,後述のとおり,第1ないし第3訴因について,い ずれも被告人両名に過失はなく,被告人両名の行為とEの死亡との間の因果関係も欠いているから無罪であると主張する。 そこで,以下被告人両名につき業務上過失致死罪の成否を検討する。 (2)第1訴因についてア検察官の主張する過失の内容㨯被告人Aについて被告人Aの過失は,①不測の事態に備えて,委託を受けた児童の保育には複数の保育従事者を従事させ,②保育従事者をして,児童を寝かしつける直前には食事を摂らすことのないようにし,③食事を摂らせた場合には飲食物を嘔吐するおそれのないことを十分に確認してから寝かしつけさせるべき業務上の注意義務があるのに,これを怠り,C園において,被告人Bを一人で委託を受けた児童であるEの保育に従事させた上,被告人Bをして,Eに対し,インスタントラーメン等を摂らせて,そのまま同児を寝かしつけさせたというものである。 㨯被告人Bについて被告人Bの過失は,①不測の事態に備えて,複数人で児童の保育に従事し,②児童を寝かしつける直前には食事を摂らせないようにし,③食事を摂らせた場合には飲食物を嘔吐するおそれのないことを十分に確認してから寝かしつけるべき業務上の注意義務があるのに,これを怠り,C園において,一人でEの保育に従事した上,Eに対し,インスタントラーメン等を摂らせて,そのまま同児を寝かせたというものである。 イ過失に関する弁護人らの主張㨯被告人Aについて被告人Aは,刑法上の注意義務として,検察官が主張する前記①ないし③の義務を課せられていない。被 らせて,そのまま同児を寝かせたというものである。 イ過失に関する弁護人らの主張㨯被告人Aについて被告人Aは,刑法上の注意義務として,検察官が主張する前記①ないし③の義務を課せられていない。被告人Aに何らかの法的義務が課せられていたとしても,Eの死の結果の予見可能性及び義務違反行為とEの死亡と の間の因果関係についての予見可能性をいずれも欠くから,この意味でも刑法上の注意義務までは認められない(なお,後者の点について,弁護人らは,被告人両名に関しそれぞれ「仮に被告人に何らかの業務上の注意義務が存在したとしても,被告人においては,本件事故及びその因果関係につき予見可能性はなかった。」と主張しているが,結果の予見可能性を欠けば注意義務は存在しないのであるから,本文のとおりの趣旨と解される。 以下同様である。)。 㨯被告人Bについて被告人Bは,刑法上の注意義務として,検察官が主張する前記①ないし③の義務を課せられていない。被告人Bに何らかの法的義務が課せられていたとしても,Eの死の結果の予見可能性及び義務違反行為とEの死亡との間の因果関係についての予見可能性をいずれも欠くから,この意味でも刑法上の注意義務までは認められない。また,仮に検察官が主張するような注意義務を課せられていたとしても,被告人Bは,Eにインスタントラーメン等を摂らせた後,同児が眠りに就くのを確認し,それ以降も同児の傍で待機していたのであるから,飲食物を嘔吐するおそれのないことを十分に確認する義務を尽くしており,その注意義務に違反していない。 ウ弁護人らのその他の主張Eの嘔吐と気道閉塞との間の因果関係,更に検察官が訴因中で摘示する被告人Bの各行為とEの死亡との間の因果関係はいずれも認められない。 (3)第2訴因についてア検察官の主張する過失の内容㨯被告人 の嘔吐と気道閉塞との間の因果関係,更に検察官が訴因中で摘示する被告人Bの各行為とEの死亡との間の因果関係はいずれも認められない。 (3)第2訴因についてア検察官の主張する過失の内容㨯被告人Aについて被告人Aの過失は,①委託を受けた児童の夜間保育には,少なくとも保育士の資格を有する者1名を従事させ,②すぐに寝るかもしれない状態のときには児童に食物を摂らせてはならないこと及び親が持たせたもの以外 の食物を児童に摂らせてはならないことを保育従事者に周知徹底すべき業務上の注意義務があるのに,これを怠り,午後10時30分ころから,C園において,保育士の資格を有しない被告人Bを一人で委託を受けた児童であるEの保育に従事させた上,被告人Bに対し,すぐに寝るかもしれない状態の児童に食物を摂らせてはならないこと及び親が持たせた食物以外の物を摂らせてはならないことを周知徹底させなかったというものである。 㨯被告人Bについて被告人Bの過失は,①児童が既に食事を済ませており,すぐに寝るかもしれない状態のときには食事を摂らせず,②児童の親が持たせた食物以外の物を取らせてはならない業務上の注意義務があるのに,これを怠り,C園において,既に夕食を摂っており,すぐに寝るかもしれない状態であったEに対し,自己が夜食として食していたインスタントラーメン等を摂らせたというものである。 イ過失に関する弁護人らの主張㨯被告人Aについて被告人Aは,刑法上の注意義務として,検察官が主張する前記①及び②の義務を課せられていない。被告人Aに何らかの法的義務が課せられていたとしても,Eの死の結果の予見可能性及び義務違反行為とEの死亡との間の因果関係についての予見可能性をいずれも欠くから,この意味でも刑法上の注意義務までは認められない。 㨯被告人Bについて被告人 たとしても,Eの死の結果の予見可能性及び義務違反行為とEの死亡との間の因果関係についての予見可能性をいずれも欠くから,この意味でも刑法上の注意義務までは認められない。 㨯被告人Bについて被告人Bは,刑法上の注意義務として,検察官が主張する前記①及び②の義務を課せられていない。被告人Bに何らかの法的義務が課せられていたとしても,Eの死の結果の予見可能性及び義務違反行為とEの死亡との間の因果関係についての予見可能性をいずれも欠くから,この意味でも刑法上の注意義務までは認められない。 ウ弁護人らのその他の主張Eの嘔吐と気道閉塞との間の因果関係,更に検察官が訴因中で摘示する被告人Bの各行為とEの死亡との間の因果関係はいずれも認められない。 (4)第3訴因についてア検察官の主張する過失の内容㨯被告人Aについて被告人Aの過失は,①委託を受けた児童の夜間保育には,少なくとも保育士の資格を有する者1名を従事させるか,又は,②すぐに寝るかもしれない状態のときには食物を摂らせてはならないか,あるいは親が持たせた食物以外の物を児童に摂らせてはならないことのいずれかを保育士の資格のない保育従事者に周知徹底すべき業務上の注意義務があるのに,これを怠り,午後10時30分ころから,C園において,保育士の資格を有しない被告人Bを一人でEの保育に従事させ,被告人Bに対し,すぐに寝るかもしれない状態の児童に食物を摂らせてはならないこと及び児童の親が持たせた食物以外の物を摂らせてはならないことを周知徹底させなかったというものである。 㨯被告人Bについて被告人Bの過失は,自ら保育士の資格を有していないことから,①一人で児童の夜間保育に従事することを回避するか,又は,②児童が既に食事を済ませており,すぐに寝るかもしれない状態のときには食事を摂らせない 人Bの過失は,自ら保育士の資格を有していないことから,①一人で児童の夜間保育に従事することを回避するか,又は,②児童が既に食事を済ませており,すぐに寝るかもしれない状態のときには食事を摂らせないか,あるいは児童の親が持たせた食物以外の物を摂らせてはならない業務上の注意義務があるのに,これを怠り,午後10時30分ころから,C園において,一人でEの保育に従事し,既に夕食を摂っており,すぐに寝るかもしれない状態であったEに対し,自己の判断で,自ら夜食として食していたインスタントラーメン等を摂らせたというものである。 イ過失に関する弁護人らの主張 被告人Aについての主張及び被告人Bについての主張は,いずれも第2訴因におけるのと同一である。 ウ弁護人らのその他の主張第2訴因におけるのと同一である。 本件事実経過等(1)C園の運営状況等C園は,株式会社Gとフランチャイズ契約を結んだ認可外保育施設として,平成13年2月に開園した。C園は,フランチャイザーであるG本部に対し,毎月三,四万円程度のロイヤリティーを支払っていたが,同園の運営に関し,同本部と定期的に連絡を取り合ったり,同本部から指示等を受けたりはしていなかった。なお,C園の保育室は一室のみで,ベッドやテーブルも同室内に置かれていた。 被告人Aは,開園当初からC園の園長を務めていたが,その夫である被告人Bは,平成14年末にそれまで勤務していた設計事務所を辞めた後,同園で保育に従事するようになったもので,平成15年夏ころからは,運送会社のパート従業員となり,午後6時から午後9時まで荷物の運送配達の仕事を行っており,平成15年9月当時,同園の代表に就任していたものの,保育従事者の雇入れ,勤務時間の調整及び配置や経理全般については被告人Aが担当しており,同園の実質的な管理運営者は の運送配達の仕事を行っており,平成15年9月当時,同園の代表に就任していたものの,保育従事者の雇入れ,勤務時間の調整及び配置や経理全般については被告人Aが担当しており,同園の実質的な管理運営者は被告人Aであった。 平成14年9月,児童福祉法等の法令の改正を受けて,和歌山市役所から,C園に対し,認可外保育施設の届出義務に関する通知書が送付された。被告人Aは,これを受けて,同年10月31日,和歌山市に運営状況報告書を提出し,以後,平成15年9月及び平成16年8月にも和歌山市に同様の報告書を提出した。 平成15年9月当時,C園の保育従事者のうちで保育士資格を有する者はH一人であり,Hは非常勤の保育従事者として,平均して1日に三,四時間勤務 するにとどまっていた。また,その当時,保育従事者間の保育に関する引継ぎは口頭で行われ,保育日誌等の書面は利用されておらず,C園と園児の保護者らが情報交換を行うための連絡帳についても,そこに記載された情報が保育従事者間で共有される体制にはなっていなかった。 C園は,平成15年9月当時,和歌山市に提出した上記報告書において,平日及び土曜日の午前8時から午後7時までの11時間を「通常開所時間」すなわち主たる開所時間として報告していたが,この主たる開所時間を超えて保育を実施していることや,夜間保育(本件当時の基準では,午後8時を超えて保育を実施し,宿泊を伴わない保育サービスを提供するものをいう。以下同様である。)を実施していることは報告していなかった。また,C園は,園児募集のためのパンフレットにも,夜間保育について記載していなかった。しかし,被告人Aは,園児の保護者らの要望に応えるとともに,C園の保育料収入を増やそうと考え,被告人Bに事前に相談することなく,遅くとも平成15年春には,同園において夜間保育を実施 していなかった。しかし,被告人Aは,園児の保護者らの要望に応えるとともに,C園の保育料収入を増やそうと考え,被告人Bに事前に相談することなく,遅くとも平成15年春には,同園において夜間保育を実施するようになっており,同年9月当時も,E1名を夜間保育の対象として,週に三,四回は午後10時ころまで,更に週に1回程度は午前2時ころまで保育を実施していた。 (2)Eに対するC園の保育上の対応についてC園は,平成15年7月8日ころから,当時1歳1か月のEを預かって保育するようになり,書類上は一時預かりとして扱っていたが,実際にはほぼ毎日保育をしており,Eの実母であるDには月極め預かりとしての保育料を請求していた。 被告人Aは,本件の約2か月前である平成15年7月19日午後10時ころ,C園において,5センチメートル大のメンチカツを食べていた際,Eが物欲しそうな様子を見せたことから,そのメンチカツを約8分の1切れ与えたところ,Eが下痢を起こした。そのため,Dは,Hに対し,今後は油物等の刺激物はもちろん,家から持参した食物以外の物は一切食べさせないようにしてほしいと 口頭で申し入れたが,被告人Aは,その旨Hから報告を受けたものの,Eが下痢を起こした経緯や,Dから前記申入れがあった事実を被告人Bに伝えなかった。また,被告人Bも,保育中の児童に対してどのような食事を与えるのが適切かなどについて,被告人Aと相談あるいは協議をしたことはなかった。 (3)本件前日の被告人A等によるEの保育状況についてEは,平成15年9月20日午後4時ころ,ヨーグルトやさつまいもの焚き物等のおやつを食べた後,同日午後4時45分ころ,DとともにC園に登園した。Dは,その際,Eに弁当とビスケットを持たせていたが,弁当の内容は,ふりかけ入りの御飯,ふかしたさつまいも及びちくわ の焚き物等のおやつを食べた後,同日午後4時45分ころ,DとともにC園に登園した。Dは,その際,Eに弁当とビスケットを持たせていたが,弁当の内容は,ふりかけ入りの御飯,ふかしたさつまいも及びちくわとこんにゃくの煮物であった。Dは,当時C園で保育に従事していたHに対し,Eの健康面で特段注意を促しておらず,また,Eも鼻水を垂らすことはあったものの,咳はなく,平熱で,園内を走り回るなどしていたため,被告人Aは,Eに体調不良の様子はないものと判断した。なお,この日に至るまでEが保育中に嘔吐したことはなかった。 被告人Aは,同日午後6時30分ころ,Eに前記弁当を食べさせたが,その際,内容物が腐敗していないことを確認した上,さつまいもやちくわについては,Eが口に入れるには大きく,また,Eによく噛まず飲み込むようにして食べる癖があるとして,小さく切ってから口に運んだ。 Eは,前記弁当を全部食べた後,同日午後10時30分ころまで積み木や滑り台等で遊んでいたが,この間,同日午後8時ころ,被告人Aから前記ビスケット2枚を与えられて,うち1枚を食べたほかは,他に飲食した形跡は窺われない。なお,そのビスケットは,二,三センチメートル大の動物の形をしたもので,厚さは二,三ミリメートル程度であった。 被告人Aは,同日午後10時30分ころ,被告人BにEの保育を引き継いで帰宅したが,その際,Eが食事を済ませていることや,Dが午前2時ころEを迎えにくること等を伝えた。 (4)本件当夜の状況等被告人Bは,平成15年9月20日午後6時ころから同日午後9時ころまで,前記のとおり荷物の運送配達の業務に従事した後,同日午後10時30分ころから,C園において,前記のとおり被告人Aから引継ぎを受けてEの保育に従事するようになったが,その引継ぎの際,Eの体調に特段異常を感じな おり荷物の運送配達の業務に従事した後,同日午後10時30分ころから,C園において,前記のとおり被告人Aから引継ぎを受けてEの保育に従事するようになったが,その引継ぎの際,Eの体調に特段異常を感じなかった。 被告人Bは,C園の園内を清掃するなどした後,Eとともにテーブル付近の床に座り,Eに積み木遊びをさせていたが,同日午後11時30分ころ,Eが積み木遊びをしながらうとうとしだし,眠りそうな様子だったので,テーブルから1ないし1.5メートル離れた幼児用ベッド(以下単に「ベッド」という。)で寝かしつけようとしたところ,泣き出すなどして眠ろうとしなかったので,再びEをテーブル付近に移動させて積み木遊びをさせ,こうしたことを二,三回繰り返した。 被告人Bは,同月21日午前零時ころ,テーブル付近で自己の夜食としてカップ麵を食べ始めたところ,Eが物欲しそうな表情で,笑みを浮かべながら近づいてきたので,長さ約30センチメートルの麵を1本ずつ箸に巻き付けて一口大にしてから,順次,計5本くらいEに食べさせた。また,被告人Bは,引き続きチョコレートを食べた際も,Eが再び物欲しそうな様子を見せたことから,小豆大に砕いたチョコレートの一欠片をEに食べさせた。その際,被告人Bは,保育中の児童にチョコレートを与えることを快く思わない保護者もいると考え,更にチョコレートを与えるのを控えた。その後,被告人Bは,Eがまだ何かを食べたい様子であると思ったことから,前記のDがEに持たせたビスケットを5枚くらい,2つに割りながらEに食べさせた。そして,被告人Bは,オレンジジュースをコップに4分の1程度,更にEが持参した水筒からお茶を同量程度,Eに飲ませた。 その一,二分後,被告人Bは,眠そうにしていたEをベッドに仰向けに寝かせたが,枕は使わず,布団も掛けなかった。 被告 ップに4分の1程度,更にEが持参した水筒からお茶を同量程度,Eに飲ませた。 その一,二分後,被告人Bは,眠そうにしていたEをベッドに仰向けに寝かせたが,枕は使わず,布団も掛けなかった。 被告人Bは,Eがすぐに眠ったことから,時折Eの様子を確認しながら,テーブル上に写真を並べて整理したり,C園のパンフレットを製作したりしていたが,その間,部屋の窓は閉めており,テレビやラジオもつけていなかった。 同日午前2時ころ,被告人Bは,そろそろDがEを迎えにくるころだと考え,Eの水筒等をリュックサックに片付けてから,テーブルを前に再び写真を整理していたところ,同日午前2時5分ころ,あたかもプールで溺れて気管に水が入ったときのような,「ゼーゼー」「ヒーヒー」というEの呼吸音に気付いた。 被告人Bがベッドに駆け寄ると,Eは,仰向けのまま目を閉じて表情を歪め,息苦しそうな様子であった。被告人BがEを抱きかかえて上半身を起こしたところ,Eに意識はなく,全身から力が抜けていた。被告人Bは,ベッドの上に座り,Eを自己の膝の上で横向きにし,左手でその顔と首付近を下から抱え込み,右手でその背中を五,六回強く叩き,更に立ち上がってEの両太股を持って逆さ吊りにし,自己の腰付近でその顔部分を受け止めつつ,右手でEの背中を先ほどよりも強く叩くと,Eは,「オエッ」と声を上げてベッドの上に嘔吐した。また,被告人Bは,Eをベッドの上に仰向けに寝かせ,自己の指でEの口の中から米粒等を掻き出した。なお,Eの吐物には,長いままで未消化のカップ麵の麵と思われる物等が混入していた。 被告人Bは,Eの意識が戻らず,呼吸も弱くなっていたことから,Eに人工呼吸を行ったが,2回目くらいにEが「ガハッ」と息を吐いたにとどまり,また,人工呼吸を継続するとともに心臓マッサージも試みたが,Eの意識は戻 ,Eの意識が戻らず,呼吸も弱くなっていたことから,Eに人工呼吸を行ったが,2回目くらいにEが「ガハッ」と息を吐いたにとどまり,また,人工呼吸を継続するとともに心臓マッサージも試みたが,Eの意識は戻らなかった。そこで,被告人Bは,同日午前2時9分ころ,C園から119番通報した。その際,被告人Bは,右手でEを抱きかかえてその背中を押さえ,Eの顔を自己の右肩付近に乗せていたが,通話中にEが被告人Bの耳元で二,三回大きく息を吸い込んだときも,「ヒェー」という音がし,Eは呼吸困難の様子であった。 被告人Bは,前記通報後,被告人Aに電話をかけて,Dへの連絡を依頼し, また,Eを床に寝かせて人工呼吸と心臓マッサージを再度試みるなどしたが,Eの様子に変化はなかった。 同日午前2時18分ころ,和歌山東消防署の救急隊員3名が救急車でC園に臨場したところ,出入口に被告人Bが立っており,救急隊員らが近づくと,被告人Bが園内に入ってEを抱きかかえて出てきたが,その際のEの様子は,顔面が青白く,目が開き,意識は不明であった。また,前記救急隊員らが救急車内で心電図を確認したところ,Eの心臓は動いているものの,鼓動を停止し,血圧も測定不能であった。Eは,同日午前2時28分ころ,F医療センターに運び込まれたが,心肺停止状態であり,同日午前2時35分ころに蘇生した後も,自発呼吸ができない状態が続いた。 (5)Eの死因についてEの死因が低酸素性脳障害であり,低酸素性脳障害とは,脳全体に酸素が十分供給されないために生じる障害の総称であることは,関係証拠から明らかであるところ,その原因については,医師Iが,鑑定書において,法医学的観点から,吐物が気道を閉塞したことで窒息状態となり,その結果として生じた可能性が最も考えられるとの判断を示しているところである。 そこで,検 ,その原因については,医師Iが,鑑定書において,法医学的観点から,吐物が気道を閉塞したことで窒息状態となり,その結果として生じた可能性が最も考えられるとの判断を示しているところである。 そこで,検討するに,前記鑑定書によれば,Eの司法解剖時にみられた肺胞の拡張と無気肺は,人工呼吸器による不均一な換気により生じたものとしても矛盾しないこと,Eの諸臓器に低酸素性脳障害の原因となるような明らかな器質的疾患及び先天性奇形がなかったことがそれぞれ認められる。また,前記認定に係る本件事実経過に照らしても,被告人BがEの息苦しそうな呼吸音に気付いて,その背中を強く叩くと,Eが嘔吐したもので,吐物がその気道を閉塞していたことを相当強く窺わせるし,その後もEの意識不明状態が続いた点は,窒息状態に陥ったことで,心肺機能が著しく低下したためであると合理的に考えられる。さらに,本件当夜,Eの体調に低酸素性脳障害を招来するような異常は窺えず,何らかの疾病のため突然Eの心肺機能が不全に陥ったとも考え難 い。 そうすると,前記I医師の判断は,これを正当として是認することができ,関係証拠を精査しても,この判断を覆すに足る特段の事情は見当たらない。 以上により,Eは,平成15年9月21日午前2時5分ころ,C園で睡眠中に嘔吐し,吐物を気道に詰まらせて窒息状態となり,低酸素性脳障害に陥った結果,同年10月1日午後4時ころ,死亡するに至ったものと認められる。 次に,Eが睡眠中に嘔吐した原因についてみるに,前記のとおりEの諸臓器に明らかな器質的疾患及び先天性奇形はなく,本件当夜もEの体調に異常が認められなかったこと,Eが平成15年9月20日午後6時30分ころ,夕食として持参した弁当を全部食べ,その後同日午後8時ころにもビスケット1枚を食べているが,同月21日午前零時過ぎころ 体調に異常が認められなかったこと,Eが平成15年9月20日午後6時30分ころ,夕食として持参した弁当を全部食べ,その後同日午後8時ころにもビスケット1枚を食べているが,同月21日午前零時過ぎころに就寝するまで,Eの体調や様子に特に不審な点がみられなかったこと,被告人Bが同日午前零時ころ,前記のとおりEにカップ麵の麵やチョコレート等を飲食させていること(以下「本件飲食行為」という。),Eが本件飲食行為から一,二分後には眠りに落ち,嘔吐するまでの間に目を覚ました形跡がないこと,Eが嘔吐した吐物に未消化物が含まれていたこと等の事情を総合すれば,本件飲食行為が嘔吐の主たる原因であると認められる。 被告人Bの過失について(1)第1訴因について検察官が主張する本件第1訴因に係る被告人Bの過失については,前記1(2)ア㨯のとおりである。 ここで,本件においては,被告人両名の注意義務を考察するに当たり,認可外保育施設指導監督基準(以下「指導監督基準」という。)との関係が重要となることから,まずはこの基準につき検討する。 本件当時採用されていた指導監督基準は,前記2(1)のとおり児童福祉法等の法令の改正により,認可外保育施設について都道府県知事等への届出が義務 づけられるのを受けて発出された,平成14年7月12日付け各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長あて厚生労働省雇用均等・児童家庭局通知「『認可外保育施設に対する指導監督の実施について』の改正について」の別紙に定められたもので,同年10月1日から適用されていた。この指導監督基準は,地方自治法245条の4第1項に基づく技術的な助言であり,各地方自治体における認可外保育施設の監督者は,この基準を基に個別の認可外保育施設について適正な保育内容及び保育環境が確保されているか否かを確認し, 治法245条の4第1項に基づく技術的な助言であり,各地方自治体における認可外保育施設の監督者は,この基準を基に個別の認可外保育施設について適正な保育内容及び保育環境が確保されているか否かを確認し,改善指導,改善勧告,公表,事業停止命令等を実施するものである。 そして,中核市である和歌山市においても,C園の存在を把握していたことから,C園に対し,その設置に関する届出義務があることを通知し,その際,指導監督基準についてもその1冊を送付した。 指導監督基準によれば,主たる開所時間である11時間を超える時間帯において,保育従事者の数は,現に保育されている児童が一人である場合を除き,常時二人以上配置することとされ,さらに,前記時間帯に現に保育されている児童が一人の場合であっても,保育従事者は,一人以上が保育士又は看護師の資格を有する者であることとされている。すなわち,主たる開所時間を超える時間帯において,一人の児童のみを保育する際は,保育従事者一人のみを配置することでもよいが,その者は保育士又は看護師の資格がなければならないというのである。 すると,本件において,被告人Bは,C園の主たる開所時間を超えて午後10時30分ころからE一人を保育していたものであるところ,指導監督基準によっても,有資格者の存在という点では要件を充たしていないものの,保育従事者の人数という点に関しては,複数人で児童の保育に従事することまでは要求されていなかったのであり,同基準が,認可外保育施設の保育内容及び保育環境の適正を期するため,直接被保育児童の人身の安全に関わるとはいえないような事項も含む施設運営全般について指導監督を施そうとするものである以 上,保育従事者の人的体制について,一般的な人の生命,身体の安全確保を目的とする刑法の業務上過失致死傷罪により,この行政上 ような事項も含む施設運営全般について指導監督を施そうとするものである以 上,保育従事者の人的体制について,一般的な人の生命,身体の安全確保を目的とする刑法の業務上過失致死傷罪により,この行政上の基準以上に厳格な義務が課されているとみることは酷に失するというべきである(この点,検察官は,Eに対する主たる開所時間を超えての保育時間が約7時間(被告人Bに限れば約3時間半)に及んでいることを根拠として,上記のような人的体制に関する義務があると主張しているが,保育時間の長さは,上記の判断に影響を与えるものではないというべきである。)。したがって,被告人Bに,不測の事態に備えて,複数人で児童の保育に従事すべき注意義務が課せられていたとみることはできない。 また,高い信用性が認められることに争いのないJの当公判廷における供述によれば,満1歳から2歳までの幼児は,眠くなってくると我慢できないことから,公立保育所の保育士らは,食後すぐであっても,幼児の口の中に食物が残っていないことを確認したら,布団に寝かせてしまうというのである。そうすると,上記の実情は,昼食後の昼寝についてのものであって,本件のような夜間保育における就寝の場合と完全に同一視することはできないが,少なくともこのような保育が一般的に行われている状況の下で,一般的に児童を寝かしつける直前には食事を摂らせないようにすべき注意義務を課することはできないというべきであるし,また,食事を摂らせた場合には飲食物を嘔吐するおそれのないことを十分に確認してから寝かしつけるべき注意義務についても,このような漠然とした基準で注意義務を課することは行為規範の性質上許されないというべきである。 以上のとおりであって,被告人Bに対しては,第1訴因に係る注意義務を課すことができないのであるから,その余の点につ 漠然とした基準で注意義務を課することは行為規範の性質上許されないというべきである。 以上のとおりであって,被告人Bに対しては,第1訴因に係る注意義務を課すことができないのであるから,その余の点については検討するまでもなく,被告人Bの過失は,これを認めることができない。 (2)第3訴因について主位的訴因である第1訴因について,被告人Bに過失を認定することができ ないことから,予備的訴因を検討する必要があるが,第2訴因と第3訴因が選択的な関係に立つとし,特段順位を付していない検察官の釈明状況にかんがみ,便宜,第3訴因から先に検討することにする。 ア結果等の予見可能性に関する検討Eの死の結果の発生機序については,前記認定のとおりであるが,本件当時,Eがわずか約1歳4か月で,この年齢の幼児は,咀嚼力や消化力が弱く,咳をしたり,泣いたりしただけでも嘔吐することがあるなど,発達段階に照らして嘔吐しやすい状態にあったこと,被告人Bにおいて,本件飲食行為当時,Eが既に夕食を済ませていると認識していたこと,本件飲食行為が深夜午前零時というおよそ正規の食事時間とは言い難い時間帯に行われており,Eが飲食後間もなく就寝する可能性が高かったこと等の事情にかんがみれば,被告人Bは,Dの許諾の有無を意に介さず,Eが持参した物でもないカップ麵の麵やチョコレート等を独断でEに食べさせた本件飲食行為の時点で,Eが就寝中に嘔吐することを具体的に予見可能であったというべきである。そして,Eの年齢からみて,吐物を喉に詰まらせた場合も,自力で対処することはおろか,大人に助けを求めることも困難であったことも合わせ考慮すれば,Eが低酸素性脳障害により死亡するという経過までは具体的に予見することができなかったとしても,Eが吐物を喉に詰まらせ,気道の閉塞により窒息状態に陥っ 求めることも困難であったことも合わせ考慮すれば,Eが低酸素性脳障害により死亡するという経過までは具体的に予見することができなかったとしても,Eが吐物を喉に詰まらせ,気道の閉塞により窒息状態に陥って死亡することは,具体的に予見可能であったというべきである。 イ結果回避可能性に関する検討被告人Bは,本件飲食行為をしないという極めて容易な不作為によって,Eの死の結果を回避できたものと認められ,結果回避可能性は優に肯定できる。 ウ被告人Bの注意義務についてまず,被告人Bは,Eの死の結果及びこれに至る因果関係を具体的に予見 可能だったのであるから,C園の保育従事者として,当然この結果及び因果関係を予見すべき義務を負っていたものと解される。 次に,被告人Bの結果回避義務につき検討する。 被告人Bは,C園の保育従事者として,保護者から保育委託を受けた児童の保育をするに当たり,その生命,身体等の安全を保護すべき法的義務を有するのは当然である。とりわけ,本件で特に問題となる食事を与える場面に限っても,Hが,「1歳半までの乳幼児には与える食事の内容について特に気を遣う」,Kが,「2歳までの子供には喉に詰まりそうなものや刺激の強い物等を与えないようにする」,Jが,「2歳までの乳幼児には昼寝中に嘔吐する危険がある」などと述べ,保育士としての豊かな経験を有するこれらの者らが異口同音に低年齢ゆえの保育の難しさを指摘していることからも明らかなように,保育対象の児童が,少なくとも1歳半未満の幼児である場合には,同児が自己の生命,身体等に対する危険性を的確に判断して行動に及ぶことはおよそ期待できず,また,嘔吐しやすい状態にあるなど脆弱な存在なのであるから,前記の保護義務も高度のものとならざるを得ない。 ところで,指導監督基準によれば,前記のとおり,主たる開所 行動に及ぶことはおよそ期待できず,また,嘔吐しやすい状態にあるなど脆弱な存在なのであるから,前記の保護義務も高度のものとならざるを得ない。 ところで,指導監督基準によれば,前記のとおり,主たる開所時間を超える時間帯において,一人の児童を保育する際は,保育従事者が一人でもよいが,その者は保育士又は看護師の資格がなければならないとされている。このような基準が定められた趣旨は,保育士又は看護師の資格を有する保育従事者であれば,児童の身を危険に晒すような不適切な保育を行うことはなく,かえって児童をそのような危険から遠ざけるべく適切な保育を行うことが期待でき,また,たとえ保育従事者が一人であったとしても,保育対象の児童が一人であれば,その傷病等不測の事態にも適切に対処し得ることが期待できるが,前記資格を有しない者の場合,知識や技能の個人差が大きくならざるを得ないことから,一律に有資格者と同様の行動を期待することはできないというものであると考えられる。このような区別は,児童の生命,身体等 の安全を保護するという観点からみて,十分な合理性が認められる。 この点,Jは,同じ期間保育に従事した者であれば,保育資格の有無によって実務上の保育知識や技能に差はない旨証言するが,なるほど,上記J証言は,保育士の資格を有していなくても,実務経験を積めば保育士と同程度に実際的な保育知識や技能を身につける者も少なくないという意味においては正しいとしても,無資格者には保育知識や技能を全く欠く者も含まれる以上,資格の有無による差は看過し難いというべきである。なお,専門的な保育と一般的な子育てを同視することはできず,子育ての経験をもって保育知識や技能に代えることができないことはいうまでもない。そして,現実に本件における被告人Bの行動についてみると,夕食を済ませている 育と一般的な子育てを同視することはできず,子育ての経験をもって保育知識や技能に代えることができないことはいうまでもない。そして,現実に本件における被告人Bの行動についてみると,夕食を済ませている約1歳4か月の児童に対し,午前零時過ぎという深夜の時間帯に,自己の夜食として食べていた消化が余りよくないと思われるカップ麵の麵を食べさせ,さらに,刺激物であるチョコレートまで食べさせたというのであって,H,K及びJら保育経験豊かな者らは,被告人Bの上記行為について非常識とさえ評しており,常識的に考えてみても,児童は,たとえ空腹でなかったとしても,大人が夜食を摂ることに興味を示すことは想像するに難くないのであって,物欲しそうな様子で寄ってきたからといって,直ちに自己の夜食を分け与える行為が不適切であることは明らかであり,その上,被告人Bは,Eが積み木遊びをしながらうとうとし始めたことを認識したというのに,Eがすぐに寝るかもしれないとは思わなかったというのであり,以上のことだけをみても,被告人Bに保育士と同等の保育知識や技能がないことは明らかである。 それから,夜間保育の実施に当たっては,日中の保育とは異なる配慮が要求されるものと考えられるところ,夜間保育を扱う認可外保育施設が厚生労働省作成のパンフレットにおいても「ベビーホテル」と呼称されて他と区別されていることからみても,また,Hが,「夜間保育は子供に疲れが出て神経過敏になっているので昼間の保育とは全然違う」,Kが,「夜間保育はよ ほど母親からその子供の昼間の生活リズムや,行動パターンなどについてあらかじめ教えてもらっているのでない限り,できれば避けたい」などと述べ,これら保育士の経験が豊かな者らが夜間保育の特殊性を指摘していることからみても,この点は一般的に承認されているものとみられる あらかじめ教えてもらっているのでない限り,できれば避けたい」などと述べ,これら保育士の経験が豊かな者らが夜間保育の特殊性を指摘していることからみても,この点は一般的に承認されているものとみられる。 以上の検討を総合すると,保育士及び看護師の資格をいずれも有しない保育従事者が,主たる開所時間を超えて,一人で1歳半未満の幼児1名の夜間保育を行うに当たっては,児童の生命,身体等の安全保護のため,なし得る保育の内容には一定の制約があると解されるのであって,これを幼児の食事に関していえば,その保護者が持たせ,あるいは飲食を許した物については,保護者の判断を信頼して幼児に飲食させてよいとしても,当該保育従事者には,緊急性が認められるなどの特段の事情がない限り,それ以外の物を飲食させないようにすべき結果回避義務があるというべきである。 したがって,本件において,被告人Bは,業務上の注意義務として,以上の予見義務及び結果回避義務を負う。 なお,指導監督基準においては,その「考え方」として,「居宅等において少人数の乳幼児を保育する施設」に限っては,保育従事者が保育士又は看護師の資格を有していなくとも,「保育の実態を勘案して幼稚園教諭免許取得者や都道府県が実施している研修を受講している等の者について,都道府県知事が保育士に準じた専門性や経験を持っていると判断することも差し支えない」との見解が示されている。しかし,C園は,前記のとおりGのフランチャイジーとして保護者から保育料を得て児童を保育する施設であって,指導監督基準における上記の「居宅等」には到底含まれ得ないというべきであるし,「1日に保育する乳幼児が3人以下」という前記施設の基準にも当てはまらない(例えば,平成15年9月20日当時,C園は月極め保育の園児2名及び一時保育の園児7名を保育していた。ま というべきであるし,「1日に保育する乳幼児が3人以下」という前記施設の基準にも当てはまらない(例えば,平成15年9月20日当時,C園は月極め保育の園児2名及び一時保育の園児7名を保育していた。また,被告人Bが和歌山県知事等から保育士に準じた専門性や経験を持っていると認定された等の事情 も全く窺われない。したがって,C園及び被告人Bに指導監督基準の前記例外が適用される余地はないと解するのが相当である。 エ被告人Bの注意義務違反行為等について被告人Bは,前記のとおりの予見義務及び結果回避義務を負っていたにもかかわらず,保育士及び看護師の資格をいずれも有しない身でありながら,C園の主たる開所時間を超えて一人で夜間保育を行うに当たり,Eに対し,その母親であるDが持たせておらず,かつ,飲食も許していない物を含んでいるのに,本件飲食行為に及び,その際,緊急性が認められるなどの特段の事情も何ら窺われないのであるから,その業務上の注意義務に違反したものと認められる。 そして,前記認定のとおり本件飲食行為がEの死の結果の原因となっていることにかんがみれば,前記注意義務違反行為の危険性がEの死の結果に現実化したものと評価でき,被告人Bの注意義務違反行為とEの死亡との間の因果関係を肯定することができる。 オ(罪となるべき事実)と第3訴因との関係について本件第3訴因に係る被告人Bの過失が認められることについては,前記検討のとおりであるが,(罪となるべき事実)に記載したこの過失と,訴因に掲げられた過失(前記1(4)ア㨯)との関係について,若干付言しておく。 この点,検察官は,平成19年2月1日付け予備的訴因変更請求書の中で,①一人で児童の夜間保育に従事することを回避すべき注意義務と②児童が既に食事を済ませており,すぐに寝るかもしれない状態のときには食 この点,検察官は,平成19年2月1日付け予備的訴因変更請求書の中で,①一人で児童の夜間保育に従事することを回避すべき注意義務と②児童が既に食事を済ませており,すぐに寝るかもしれない状態のときには食事を摂らせないか,あるいは児童の親が持たせた食物以外の物を取らせないようにすべき注意義務の関係について,①及び②の注意義務の両方に違反した場合にのみ過失が認められると主張するものではないと説明しており,また,②の注意義務についても,2つの注意義務が選択的に主張されていることが明らかである。 そこで,当裁判所は,その選択的に主張された注意義務のうちの1つ,すなわち,保育士の資格を有しない保育従事者について,児童の親が持たせた食物以外の物を摂らせないようにすべき注意義務の存在を基本的に認定したものであるが,ただ,同注意義務は,看護師の資格の有無が考慮されていない上,保育士の資格を有しない保育従事者のみに課せられることを考慮しても,あらゆる状況において課せられるものとみるときは,いささか広きに失し,同様の保育従事者に対する萎縮的効果が生じることも懸念されることから,上記①の夜間保育という観点も考慮し,状況による限定を付したものである。 (3)第2訴因について前記のとおり,検察官は,共に予備的訴因である第2訴因及び第3訴因が選択的な関係に立つものと釈明しており,既に詳細に認定説示したとおり,第3訴因につき被告人Bの過失等を肯定できる以上,第2訴因に関する検討は不要であると考えられるが,弁護人らの所論にかんがみ付言するに,前記(1)のとおり,J証言に照らせば,児童が既に食事を済ませていたとしても,被告人Bに対し,「すぐに寝るかもしれない状態のときには食事を摂らせない」という一般的な注意義務を課することはできないのであって,被告人Bの過失を認 に照らせば,児童が既に食事を済ませていたとしても,被告人Bに対し,「すぐに寝るかもしれない状態のときには食事を摂らせない」という一般的な注意義務を課することはできないのであって,被告人Bの過失を認めることはできないというべきである。 被告人Aの過失について(1)第1訴因について検察官が主張する本件第1訴因に係る被告人Aの過失については,前記1(2)ア㨯のとおりである。 しかしながら,前記3(1)において検討したとおり,被告人Aに対しても,複数の保育従事者を従事させる注意義務を認めることはできないし,また,被告人Bに対し第1訴因に係る注意義務を課することができない以上,被告人Aが,C園の実質的な管理運営者であるからといって,被告人Aに対してのみ, 被告人Bが不適切な行動に出た場合の結果を回避すべき高度の管理義務を課すに足る理由を見いだすことも困難であるといわざるを得ない。 したがって,被告人Aに対しては,第1訴因に係る注意義務を課することができないのであるから,その余の点については検討するまでもなく,被告人Aの過失は,これを認めることができない。 (2)第3訴因について主位的訴因である第1訴因について,被告人Aに過失を認定することができないことから,予備的訴因を検討する必要があるが,被告人Bについてと同様に,第3訴因から先に検討することにする。 ア結果等の予見可能性に関する検討被告人Aは,本件当時,Eが1歳半に満たない幼児であり,突然の傷病等の事態に自力で対処することはおろか,大人に助けを求めることも困難であることを十分理解しながら,その夜間保育を,保育士資格及び看護師資格をいずれも有しない被告人B一人に任せきりにしていたものである。 また,被告人Bと同様に保育士資格及び看護師資格をいずれも有しない被告人A自身,前記のと がら,その夜間保育を,保育士資格及び看護師資格をいずれも有しない被告人B一人に任せきりにしていたものである。 また,被告人Bと同様に保育士資格及び看護師資格をいずれも有しない被告人A自身,前記のとおりEにメンチカツを食べさせて下痢をさせた経験があった上,Eが下痢を起こした経緯や,Dから今後は家から持参した食物以外の物は一切食べさせないようにしてほしいとの申出があったことを被告人Bに伝えておらず,保育中の児童に対してどのような食事を与えるのが適切かなどについて,被告人Bと相談あるいは協議をしたこともなかったのである。 そうすると,被告人Aは,保育に関するある程度の知識はあっても,保育士であれば当然有していることが期待できる専門的知識を欠いた被告人Bが,Eの身を危険に晒すような不適切な行動に出るおそれのあることを具体的に予見可能であったというべきである。 そして,本件当時のEに対する夜間保育の状況やC園の保育体制等にかん がみれば,被告人Aは,本件において現実化した発生機序までは具体的に予見することができなかったとしても,被告人Bの不適切な行動によりEが死亡するという結果及びこれに至る因果関係を具体的に予見可能であったというべきである。 イ結果回避可能性に関する検討前記3(2)において検討したように,保育士及び看護師の資格をいずれも有しない保育従事者は,少なくとも1歳半未満の幼児を一人で夜間保育するに当たっては,児童の保護者が持たせ,あるいは飲食を許した物以外の物を児童に摂らせてはならない義務があるものと認められるところ,被告人Aは,保育従事者らに適宜指示するなどの容易な手段により,このような義務の存在を保育従事者らに周知徹底することができたといえる。 そして,被告人Bは,本件当時,保育中の児童にチョコレートを与えることを快く思わ 従事者らに適宜指示するなどの容易な手段により,このような義務の存在を保育従事者らに周知徹底することができたといえる。 そして,被告人Bは,本件当時,保育中の児童にチョコレートを与えることを快く思わない保護者もいると考え,Eにチョコレート一欠片を与えるにとどめ,更にチョコレートを与えるのを控えており,このような事情にかんがみれば,被告人Aが前記の禁止事項を保育従事者らに周知徹底していれば,被告人Bにおいても,本件飲食行為に及ばなかったことはほぼ確実といえるから,被告人Aには結果回避可能性が認められる。 ウ被告人Aの注意義務についてまず,被告人Aは,Eの死の結果及びこれに至る因果関係を具体的に予見可能だったのであるから,C園の実質的な管理運営者として,当然この結果を予見すべき義務を負っていたものと解される。 次に,被告人Aの結果回避義務につき検討する。 被告人Aは,C園の実質的な管理運営者として,保護者から保育委託を受けた児童の保育をさせるに当たり,その生命,身体等の安全を保護すべき法的義務を当然有するというべきである。そして,前記3(2)においてみたように,保育対象の児童が,1歳半未満の幼児であれば,同児が自己の生命, 身体等に対する危険性を的確に判断して行動に及ぶことはおよそ期待できず,また,前記のとおり嘔吐しやすい状態にあるなど脆弱な存在なのであるから,前記の保護義務も高度のものとならざるを得ない。 以上に加え,指導監督基準に定められた内容や,夜間保育の特殊性も合わせ考慮すれば,認可外保育施設の実質的な管理運営者は,保育士及び看護師の資格をいずれも有しない保育従事者をして,主たる開所時間を超えて,一人で1歳半未満の幼児の夜間保育を行わせるに当たっては,たとえ同保育従事者が数年にわたり児童保育に従事してきたのだとしても,同保育従事 格をいずれも有しない保育従事者をして,主たる開所時間を超えて,一人で1歳半未満の幼児の夜間保育を行わせるに当たっては,たとえ同保育従事者が数年にわたり児童保育に従事してきたのだとしても,同保育従事者の行為を全面的に信頼することは許されないのであって,現に保育している児童が一人であっても,当該保育従事者に対し,その保護者が持たせ,あるいは飲食を許した物以外の物を摂らせてはならないことをあらかじめ周知徹底すべき結果回避義務があるというべきである。 したがって,本件において,被告人Aは,業務上の注意義務として,以上の予見義務及び結果回避義務を負うものと認められる。 エ被告人Aの注意義務違反行為等について被告人Aは,前記のとおりの予見義務及び結果回避義務を負っていたにもかかわらず,児童の保護者が持たせ,あるいは飲食を許した物以外の物を児童に摂らせてはならないことを伝えないまま,C園の主たる開所時間を超えて,保育士及び看護師の資格をいずれも有しない被告人Bに一人でEの夜間保育を行わせたのであるから,その業務上の注意義務に違反したものといえる。 そして,前記認定のとおり被告人Bの過失行為がEの死の結果の原因となっていることにかんがみれば,被告人Aによる前記注意義務違反行為の危険性がEの死の結果に現実化したものと評価でき,被告人Aの注意義務違反行為とEの死亡との間の因果関係を肯定することができる。 オ(罪となるべき事実)と第3訴因との関係について 本件第3訴因に係る被告人Aの過失が認められることについては,前記検討のとおりであるが,(罪となるべき事実)に記載したこの過失と,訴因に掲げられた過失(前記1(4)ア㨯)との関係については,被告人Bについて述べたところと基本的に同様であって,要するに,検察官が選択的に主張する注意義務のうちの1つを 実)に記載したこの過失と,訴因に掲げられた過失(前記1(4)ア㨯)との関係については,被告人Bについて述べたところと基本的に同様であって,要するに,検察官が選択的に主張する注意義務のうちの1つを認めた上,その注意義務に状況による限定を付したものである。 (3)第2訴因について前記3(3)において,被告人Bについて検討したのと同様に,第3訴因につき被告人Aの過失等を肯定できる以上,第2訴因に関する検討は不要であると考えられるが,弁護人らの所論にかんがみ付言するに,被告人Bについて,本件第2訴因に係る注意義務を課することができない以上,被告人Aにも被告人Bに義務のないことを行わせるべき義務を認めることはできず,被告人Aについても過失を認めることはできないというべきである。 結論 以上の次第であって,関係証拠によれば,予備的訴因である第3訴因について,被告人A及び被告人Bの各過失の競合によりEを死亡させたものと認められるから,被告人両名にはいずれも業務上過失致死罪が成立する。 (法令の適用)被告人A及び被告人Bの判示各所為は,いずれも行為時においては平成18年法律第36号による改正前の刑法211条1項前段に,裁判時においてはその改正後の刑法211条1項前段に該当するが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから,いずれも刑法6条,10条により軽い行為時法の刑によることとし,所定刑中禁錮刑をそれぞれ選択し,その所定刑期の範囲内で被告人両名をそれぞれ禁錮10月に処し,情状により同法25条1項を適用して被告人両名に対し各3年間,それぞれその刑の執行を猶予し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項本文により国選弁護人㨯澤義則について生じた分は被告人Aに,国選弁護人石 倉誠也について生じた分は被告人Bに,それぞれ負担させること れぞれその刑の執行を猶予し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項本文により国選弁護人㨯澤義則について生じた分は被告人Aに,国選弁護人石 倉誠也について生じた分は被告人Bに,それぞれ負担させることとする。 (量刑の理由)本件は,認可外保育施設の実質的な管理運営者であった被告人Aの監督過失と,その夫で同施設の保育従事者であった被告人Bの直接過失との競合により,委託を受けて同施設において保育していた約1歳4か月の幼児(以下「被害児童」という。)をして睡眠中に吐物によって気道を閉塞させ,低酸素性脳障害により死亡させたという業務上過失致死の事案である。 本件事案の経過は,前記認定のとおりであるが,被告人Aは,本件保育園の開園当初より園長を務めていたところ,保護者から夜間保育のニーズがあることを聞き知り,被告人両名において副業としてパートタイムの仕事をしなければならないほど経営が苦しかった同園の保育料収入を増やすため,被告人Bあるいはフランチャイザーにも事前に相談することなく,少数の児童を対象に,和歌山市に届け出ていた開所時間を超えて,夜間の保育を実施していたもので,被害児童に対しても午後10時ころまでの保育が常態化し,遅いときは午前2時ころまで保育がなされていたものである。ところが,本件保育園は,本件当時,通常の開所時間ですら常勤の保育士を一人も確保することができず,保育士を時間外保育に充てることは到底できない状況にあり,また,夜間保育のための特別な設備も何ら備えておらず,児童の体調管理等にとって重要な保育従事者間の情報の共有もなおざりにされており,そうした深夜の保育を実施できるだけの体制が全く整っていなかった。しかるに,被告人Aは,この重大な問題を解消しようと努力することさえしないまま,本件以前から,認可外保育施設指導監督基準に反して,保育 そうした深夜の保育を実施できるだけの体制が全く整っていなかった。しかるに,被告人Aは,この重大な問題を解消しようと努力することさえしないまま,本件以前から,認可外保育施設指導監督基準に反して,保育士等の資格を有しない被告人Bに一人で被害児童の夜間保育を担当させていた上,更に本件において,被告人Bに対し,保育中にしてはならない事項の周知徹底を怠ったものである。また,被告人Bは,保育従事者として,自己のそれまでの保育実務や子育ての経験を過信し,被告人Aからその保育方法等につき注意を受けないのをいいことに,本件以前から保育の常識を弁えずに児童の保育に当たっていたもので,本件において既に夕食を 済ませた被害児童に対し,深夜,さしたる考えもなく安易にインスタントラーメンやチョコレート等の不適切な物を与えているのも,そうした保育能力の欠如の表れというべきである。 以上のとおり,被告人両名による本件保育園における被害児童の保育方法等については,杜撰であるといわざるを得ない。 本件過失態様についてみても,被告人両名は,各自の注意義務違反行為の危険に気付いて結果を回避することが容易であったと認められるにもかかわらず,本件各行為に及んでいるのであるから,いずれもその注意義務違反の程度は重い。また,本件は,前記した保育園の杜撰な管理運営体制を背景として,起こるべくして起こった事件であると評価することも可能であると考えられ,保育上の瑕疵が保護者に委託された児童の生命すら危うくするという当然の認識を欠落させたまま漫然と保育を行っていた被告人両名は,児童保育という行為を軽んじていたといわざるを得ず,強い非難に値する。さらに,被告人Bが本件で被害児童の保育を実際に担当していたことや,被告人Aの夫であり,かつ,当時本件保育園の代表にも就任していて被告人Aと実質的 を軽んじていたといわざるを得ず,強い非難に値する。さらに,被告人Bが本件で被害児童の保育を実際に担当していたことや,被告人Aの夫であり,かつ,当時本件保育園の代表にも就任していて被告人Aと実質的には上下関係がなかったこと,本件以前から被告人両名が協力し合って同園を運営してきたこと等にかんがみれば,その過失態様は異なるものの,被告人両名の刑事責任に差を付けることが妥当とは思われない。 本件により被害児童の尊い一命が失われており,そのこと自体誠に重大な結果であることはいうまでもないが,本件事案の経過に照らすと,被害児童が死に至るまでに蒙った肉体的・精神的苦痛には甚大なものがあったというべきである。また,被害児童は,当然のことながら,本件のような被害に遭わなければならないようないわれは全くなかったのに,約1歳4か月という幼さで無限ともいうべき可能性を秘めた未来が被告人両名の過失の犠牲となったもので,哀れというほかない。 本件が被害児童の遺族ら,とりわけその実母に対し,強い衝撃と癒やされ難い深い悲しみを与えたことは,当公判廷における意見陳述の内容や様子からも明らかであるが,被告人両名は,当公判廷において,自分たちの不適切な行動を省みる様子 がなく,被害児童が不慮の事故により死亡したかのごとき発言もしているのであって,そこには真摯な反省の態度が窺われず,そのことが遺族らの神経を逆撫でしている状況にあり,遺族らが被告人両名に対する厳しい処罰を望んでいるのも無理からぬところである。 以上に照らせば,犯情は芳しくなく被告人両名の刑事責任は決して軽視することはできない。 しかしながら,他方で,前記のとおり被告人両名の保育への取り組みの杜撰さや,児童の生命,身体の安全を軽視する態度は,厳しい非難に値するとはいえ,被告人両名の行為自体が内包する生命,身体 はできない。 しかしながら,他方で,前記のとおり被告人両名の保育への取り組みの杜撰さや,児童の生命,身体の安全を軽視する態度は,厳しい非難に値するとはいえ,被告人両名の行為自体が内包する生命,身体への危険性は,例えば,飲酒運転等の悪質な違反を伴う自動車の運転行為等と比較すると,その危険の程度において相当低いものであり,被告人両名の過失の態様は,それ自体悪質とまでは断じ難い。また,このほか,被告人両名のために酌むべき事情として,遺族側に対し死亡保険金等として計1000万円余りが支払われ,一定程度の慰謝がなされていること,被告人両名が捜査段階の当初から事実関係を詳細に供述し,当公判廷において被害児童の冥福を祈る旨述べるなど,被告人両名なりに反省の態度を示していること,被告人両名に前科前歴はないこと,養育すべき未成年の実子がいること等も認められる。 これらの諸事情を総合勘案すると,被告人両名に対しては主文掲記の刑をもって臨むのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑)被告人両名につき禁錮10月平成19年6月27日和歌山地方裁判所刑事部裁判長裁判官成川洋司 裁判官田中伸一裁判官下和弘
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