平成29(行ウ)1 生活保護基準引下処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年3月24日 青森地方裁判所
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判決文本文98,743 文字)

主文 1 別紙処分一覧表1の各「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁が同表1の各「処分の名宛人」欄記載の各原告に対して同表1の各「処分日」欄記載の各年月日付けでした生活保護法25条2項に基づく各保護変更決定処分をいずれも取り消す。 2 別紙処分一覧表2の各「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁が同表2の各「処分の名宛人」欄記載の各原告に対して同表2の各「処分日」欄記載の各年月日付けでした生活保護法25条2項に基づく各保護変更決定処分をいずれも取り消す。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨主文同旨第2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、生活保護法(以下「法」という。)に基づく生活保護を受給している原告らが、「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号。以下「保護基準」という。)における生活扶助の基準(以下「生活扶助基準」という。)が平成26年3月31日厚生労働省告示第136号(以下「平成26年告示」という。)により改定されたことに基づき、別紙処分一覧 表1の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁から「処分の名宛人」欄記載の各原告に対して保護変更決定処分(以下「本件各処分1」という。)がなされ、また、生活扶助基準が平成27年3月31日厚生労働省告示第227号(以下「平成27年告示」といい、平成26年告示と併せて「本件各告示」という。)により改定されたことに基づき、別紙処分一覧表2の「処分行政庁」欄記載の 各処分行政庁から「処分の名宛人」欄記載の各原告に対して保護変更決定処分 (以下「本件各処分2」といい、本件各処分1と併せて「本件各処分」という。)がなされたことについて、本件各処分は憲法25条、 行政庁から「処分の名宛人」欄記載の各原告に対して保護変更決定処分 (以下「本件各処分2」といい、本件各処分1と併せて「本件各処分」という。)がなされたことについて、本件各処分は憲法25条、法1条、3条、8条2項等に違反するものであるなどと主張して、本件各処分の取消しを求める事案である。 2 関係法令等の定め等 ⑴ 法の定めア法の基本原理法は、憲法25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とし(法 1条)、法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない(法3条)。これらは、法の基本原理であって、法の解釈及び運用は、すべてこの原理に基づいてされなければならない(法5条)。 イ基準及び程度の原則 保護は、厚生労働大臣の定める保護基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする(法8条1項)。保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なも のであって、かつ、これをこえないものでなければならない(法8条2項)。 ウ必要即応の原則保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効かつ適切に行うものとする(法9条)。 エ保護の種類 保護の種類は、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産 帯の実際の必要の相違を考慮して、有効かつ適切に行うものとする(法9条)。 エ保護の種類 保護の種類は、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助とする(法11条1項)。 オ生活扶助生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、衣食その他日常の需要を満たすために必要なもの等の範囲内に おいて行われる(法12条)。 カ保護の変更保護の実施機関は、常に、被保護者の生活状態を調査し、保護の変更を必要とすると認めるときは、速やかに、職権をもってその決定を行い、書面をもって、これを被保護者に通知しなければならない(法25条2 項前段)。 キ不利益変更の禁止被保護者は、正当な理由がなければ、既に決定された保護を、不利益に変更されることがない(法56条)。 ⑵ 生活扶助基準の定め(乙1の1~1の3、弁論の全趣旨) 生活扶助基準(保護基準別表第1)は、衣食などのいわゆる日常生活に必要な基本的かつ経常的経費についての最低生活費を定めたものであり、基準生活費(第1章)と加算(第2章)に大別される。 居宅で生活する者の基準生活費は、飲食費、被服費等の個人単位に消費される経費に対応し、年齢別に定められた第1類費と、光熱水費、家具什器費 等の世帯全体としてまとめて支出される経費に対応し、世帯人員別に定められた第2類費の合計額のことをいう。 また、保護基準は、全国の市町村を1級地-1から3級地-2の6区分の級地に分類している(保護基準別表第9。なお、青森市の級地は「2級地-1」、八戸市の級地は「3級地-1」である。)ところ、第1類費及び第 2類費も級地別に定められ 1から3級地-2の6区分の級地に分類している(保護基準別表第9。なお、青森市の級地は「2級地-1」、八戸市の級地は「3級地-1」である。)ところ、第1類費及び第 2類費も級地別に定められている。(保護基準別表第1参照) ⑶ 生活扶助基準の設定方法生活扶助基準においては、標準世帯(昭和61年4月以降は、33歳、29歳、4歳の3人世帯)について最低生活に要する費用を具体的な額として設定し、これを、一般世帯の消費実態を踏まえて第1類費と第2類費に分解した上で、第1類費については、年齢別の栄養所要量を参考に定めた指数を 適用して、年齢階級別の基準額を設定し、第2類費については、世帯人員別の消費支出を参考に定めた指数を適用して、世帯人員別の基準額を設定し、また、1級地-1について設定した基準額に一定の比率(指数)を乗じて他の級地の基準額を設定している(このように、標準世帯について設定された第1類費及び第2類費を基準に、指数を適用して、年齢階級別、世帯人員別、 級地別の基準額を設定することを「展開」という。乙10、21、弁論の全趣旨)。 3 前提事実(争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) 平成25年5月16日厚生労働省告示第174号(以下「平成25年告示」 という。)及び本件各告示による保護基準の改定(以下「本件保護基準改定」という。)に至る経過並びに本件保護基準改定の概要ア従前の経緯生活扶助基準改定方式として、昭和40年度以降、格差縮小方式(政府経済見通しにおける個人消費の伸び率に格差縮小分を上乗せし、一般国 民の消費水準の伸び率以上に生活扶助基準を引き上げ、結果的に一般国民と生活保護受給世帯との消費水準の格差を縮小させよ 式(政府経済見通しにおける個人消費の伸び率に格差縮小分を上乗せし、一般国 民の消費水準の伸び率以上に生活扶助基準を引き上げ、結果的に一般国民と生活保護受給世帯との消費水準の格差を縮小させようとする方式)が採用されていた。その後、中央社会福祉審議会の下に設置された生活保護専門分科会において、生活扶助基準改定方式の在り方等について検討が行われ、昭和55年12月に「生活保護専門分科会審議状況の中間 的取りまとめ」(以下「昭和55年中間的取りまとめ」という。)を公 表し、また、同審議会は、同専門分科会の検討を踏まえ、昭和58年12月に「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」(以下「昭和58年意見具申」という。)を公表し、これに基づき、昭和59年度以降、水準均衡方式(一般国民の消費実態との均衡を図る観点から、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度 までの一般国民の消費実態との調整を図る方式)が採用された。(乙7の2、8~10、弁論の全趣旨)その後、平成15年に、保護基準の在り方を始めとする生活保護制度全般について検討することを目的として、厚生労働省の社会保障審議会福祉部会の下に「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」(以下「専 門委員会」という。)が設置され、専門委員会は、平成15年12月に「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ」(以下「平成15年中間取りまとめ」という。)を、平成16年12月に「生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書」(以下「平成16年報告書」という。)を公表した(以下では、専門委員会による生活扶助基準の検証を 「平成16年検証」という。)。(乙4、12の1、13、弁論の全趣旨)同報告書において、「生活扶 年報告書」という。)を公表した(以下では、専門委員会による生活扶助基準の検証を 「平成16年検証」という。)。(乙4、12の1、13、弁論の全趣旨)同報告書において、「生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要がある」とされたこと を受け、厚生労働省社会・援護局長の下に「生活扶助基準に関する検討会」(以下「生活扶助基準検討会」という。)が設置され、同検討会は、平成19年11月に「生活扶助基準に関する検討会報告書」(以下「平成19年報告書」という。)を公表した(以下では、生活扶助基準検討会による生活扶助基準の検証を「平成19年検証」という。)。(乙4、 5、14の1) イ社会保障審議会生活保護基準部会(以下「基準部会」という。)による検証(乙6、弁論の全趣旨) 社会保障審議会は、平成23年2月、学識経験者により構成された基準部会を設け、同部会において、生活扶助基準と一般低所得者世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否か等について検証(以下「平 成25年検証」という。)を行い、平成25年1月18日、社会保障審議会生活保護基準部会報告書(以下「平成25年報告書」という。)を公表した。 平成25年検証においては、平成21年全国消費実態調査の個票データを用い、年齢階級別、世帯人員別、級地別に、生活扶助基準額と消 費実態の乖離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数についての検証が行われた。その検証方針や検証方法等の概要は以下のとおりである。 a 平成21年全国消費実態調査の個票データを用いて、生活扶助基準と対比する一般低所得世帯とし に展開するための指数についての検証が行われた。その検証方針や検証方法等の概要は以下のとおりである。 a 平成21年全国消費実態調査の個票データを用いて、生活扶助基準と対比する一般低所得世帯として、年間収入階級第1・十分位層(年 間収入額順に10等分した場合の最も収入額が低い階層。以下、単に「第1・十分位」といい、他の階層についても同様に表現する。)を設定した上で、様々な世帯構成の基準額を算出する際に基本となる年齢階級別、世帯人員別及び級地別の基準額が第1・十分位の消費実態を十分反映しているかについて検証が行われた。その際には、仮に第 1・十分位の全世帯が生活保護を受給した場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして、年齢、世帯人員体系及び級地の基準額の水準への影響を評価する方法が採用された。 b 年齢階級別(第1類費)の検証に当たっては、統計的分析手法である回帰分析(「ある変数(説明変数)の大小が、他の変数(被説明変 数)の大小に結びついているか」を分析する統計的手法のこと。)が 用いられた。 そして、回帰分析の前提として、第1・十分位のデータを設定するに当たっては、世帯規模によるスケールメリットが最大・最小となる場合にそれぞれ対応するように、①「世帯の年間収入」を基に分位を設定したもの(以下「データ①」という。)と②世帯の年間収入を世 帯人員別で除した「世帯員1人当たりの年間収入」を基に分位を設定したもの(以下「データ②」という。)が用いられた。 なお、世帯人員別(第1類費・第2類費別)及び級地別の検証においては、検証結果の妥当性を補強するために、回帰分析を用いた結果との整合性が確認された。 平成25年報告書においては、平成25年検証の結果として、①第1類費にお 地別の検証においては、検証結果の妥当性を補強するために、回帰分析を用いた結果との整合性が確認された。 平成25年報告書においては、平成25年検証の結果として、①第1類費における年齢階級別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、各年齢階級間で乖離が認められ、②第1類費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、世帯人員が増えるにつれて乖離が拡 大する傾向が認められ(具体的には、世帯人員別の指数の差が生活扶助基準額よりも第1・十分位の消費実態の方が小さくなっている。)、③第2類費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、世帯人員が増えるにつれて乖離が拡大する傾向が認められ(具体的には、世帯人員別の指数の差が生活扶 助基準額よりも第1・十分位の消費実態の方が大きくなっている。)、④級地別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、地域差は消費実態の方が小さくなっていると報告された。 また、平成25年報告書においては、厚生労働省において生活扶助 基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、 その上で他に合理的説明が可能な経済指標等を総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたいこと、その際には現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重に配慮されたいことが付言された。 ウ本件保護基準改定の概要 厚生労働大臣は、平成25年告示(同年8月1日から適用)、平成26年告示(同年4月1日から適用)及び平成27年告示(同年4月1日から 言された。 ウ本件保護基準改定の概要 厚生労働大臣は、平成25年告示(同年8月1日から適用)、平成26年告示(同年4月1日から適用)及び平成27年告示(同年4月1日から適用)により、保護基準の改定(本件保護基準改定)を行った(乙3の1~3の3)。本件保護基準改定に当たっては、①平成25年検証の結果に基づき、第1・十分位の消費実態と生活扶助基準の年齢、世帯人 員、級地別の較差を是正する調整(以下「ゆがみ調整」という。)が行われるとともに、②近年デフレ傾向が続いてきた中、生活扶助基準額が据え置かれてきたことを踏まえ、消費者物価指数の近年の動向を勘案した調整(以下「デフレ調整」という。)が行われた。その概要は以下のとおりである。 ゆがみ調整平成25年検証の結果に基づき、①第1類費基準額については、各年齢階級間の基準額の差を小さくするとともに、その逓減率(世帯人員が1人増加するごとに第1類費基準額の合計額に乗じる割合)について、世帯人員の増加に応じた逓減割合を大きくし、②第2類費基準額につい ては、世帯人員の増加に応じた各世帯人員別の基準額の増額の幅を大きくし、③第1類費及び第2類費の基準額について、それぞれ各級地間の基準額の差が小さくなるように調整した。(乙17〔3~5頁〕、弁論の全趣旨) デフレ調整 a 消費者物価指数について 消費者物価指数とは、全国の世帯が購入する商品・サービスの価格変動を総合的に測定し、物価の変動を時系列的に測定するものである。 総務省から公表されている消費者物価指数(以下「総務省CPI」という。)は、「品目」と呼ばれる最小単位の価格指数を、各品目のウエイト(家計の消費支出全体に占める 動を時系列的に測定するものである。 総務省から公表されている消費者物価指数(以下「総務省CPI」という。)は、「品目」と呼ばれる最小単位の価格指数を、各品目のウエイト(家計の消費支出全体に占める各品目の支出金額の割合)で 加重平均することにより算出されている。具体的には、①互いに性質の似通った商品・サービスを「品目」としてグルーピングし、各品目に属する商品・サービスの価格の動きを代表するような商品・サービスを「指数品目」としてピックアップして、その価格を継続的に調査し、品目別の価格指数を作成し、②個々の指数品目の価格指数を、総 務省統計局が実施する家計調査に基づき算出した当該品目のウエイトで加重平均して「総平均」を算出するという計算手法を採っている。 総務省CPIにおいては、5年に1回、指数品目及びウエイトの改定(以下「基準改定」という。)が行われるとともに、指数を100とする時点も更新されており(以下では、消費者物価指数において、 ウエイトとして使用される数量や支出の時点を「ウエイト参照時点」、比較の基準となる価格の時点を「価格参照時点」、指数の値を100とする時点を「指数参照時点」といい、価格参照時点と指数参照時点が一致する場合には、単に「基準時」という。)、基準時をウエイト参照時点とするラスパイレス指数が採用されている。 具体的には、西暦年の末尾が「0」及び「5」の年に基準改定が行われており、平成17年及び平成22年にも基準改定が行われた(以下では、例えば平成17年に改定された指数品目及びウエイトを用いて算出された指数を「平成17年基準」の指数などという。)。(乙26〔2、6、7頁〕、27〔13~15頁〕、28〔1、6、32 頁〕、弁論の全趣旨) b デフレ調整の概要 算出された指数を「平成17年基準」の指数などという。)。(乙26〔2、6、7頁〕、27〔13~15頁〕、28〔1、6、32 頁〕、弁論の全趣旨) b デフレ調整の概要について厚生労働大臣は、総務省CPI(全国年平均)の価格指数及びウエイトを基に、その指数品目から、①生活扶助以外の他扶助で賄われる品目(家賃、教育費、医療費等)、②原則として保有が認められておらず又は免除されるため生活保護受給世帯において支出することが想 定されていない品目(自動車関係費、NHK受信料等)を除外して算出した消費者物価指数(以下「生活扶助相当CPI」といい、生活扶助相当CPIの算出に当たって除外された品目を「非生活扶助相当品目」、生活扶助相当CPIの算出の基礎とされた品目を「生活扶助相当品目」という。)を用いて、平成20年から平成23年までの物価 下落率を算出し、これを勘案してデフレ調整をすることとした。 具体的には、平成22年を基準時とし、平成22年基準のウエイトを用いて、平成20年の生活扶助相当CPI(104.5)と平成23年の年平均の生活扶助相当CPI(99.5)を算出し、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの下落率((99.5- 104.5)÷104.5×100=-4.78%)を算出した。なお、平成22年に総務省CPIの指数品目の改定が行われたことにより、生活扶助相当CPIの指数品目は、平成20年が485品目、平成23年が517品目となった。(乙18、29、30、弁論の全趣旨) 激変緩和措置厚生労働大臣は、本件保護基準改定に当たって、概要、以下のとおり、生活保護受給世帯に対する激変緩和措置を行った。 a ゆがみ調整を行うに当たって、平成2 激変緩和措置厚生労働大臣は、本件保護基準改定に当たって、概要、以下のとおり、生活保護受給世帯に対する激変緩和措置を行った。 a ゆがみ調整を行うに当たって、平成25年検証の結果について、一律に、その反映の程度を2分の1とする調整(以下「2分の1調整」 という。)を加えた(甲6の3〔5頁〕、弁論の全趣旨)。 b 平成25年度から3年間をかけて段階的に実施するとともに、現行基準からの増減幅がプラスマイナス10%を超えないように調整した(乙16〔30、75頁〕)。 具体的には、平成25年告示による改定においては、本件保護基準改定前の生活扶助基準により算出された金額に3分の2を乗じた金額 と同改定後の生活扶助基準により算出された金額に3分の1を乗じた金額の合計(ただし、かかる金額が同改定前の生活扶助基準により算出された金額に0.9を乗じて得た額よりも少ない場合は、同額)へと改定し、平成26年告示による改定においては、本件保護基準改定前の生活扶助基準により算出された金額に3分の1を乗じた金額と同 改定後の生活扶助基準により算出された金額に3分の2を乗じた金額の合計へと改定し、平成27年告示による改定においては、本件保護基準改定後の金額へと改定した(乙1の1~1の3)。 ⑵ 本件各処分及び提訴に至る経過(弁論の全趣旨)ア原告A及び同Bは青森市に、同Cは八戸市に、それぞれ本件各処分時に 居住し、生活保護を受給していた者である。 イ別紙処分一覧表1の「処分行政庁」欄記載の処分行政庁は、青森市長又は八戸市長から事務の委任を受け、原告らに対し、同表1の「処分日」欄記載の日に、平成26年告示による保護基準改定に伴い本件各処分1をした。原 一覧表1の「処分行政庁」欄記載の処分行政庁は、青森市長又は八戸市長から事務の委任を受け、原告らに対し、同表1の「処分日」欄記載の日に、平成26年告示による保護基準改定に伴い本件各処分1をした。原告らは、同表1の「処分のあったことを知った日」欄記載の 日に本件各処分1がされたことを知った。 原告らは、同表1の「審査請求日」欄記載の日に、青森県知事に対し、それぞれ審査請求をしたところ、青森県知事は、原告Aに対し、平成29年1月16日、これを棄却する旨の裁決をしたものの、その余の原告らに対する裁決は本件訴え提起時までされなかった。 ウまた、別紙処分一覧表2の「処分行政庁」欄記載の処分行政庁は、青森 市長又は八戸市長から事務の委任を受け、原告らに対し、同表2の「処分日」欄記載の日に、平成27年告示による保護基準改定に伴い本件各処分2をした。原告らは、同表2の「処分のあったことを知った日」欄記載の日に本件各処分2がされたことを知った。 原告らは、同表2の「審査請求日」欄記載の日に、青森県知事に対し、 それぞれ審査請求をしたが、原告らに対する裁決は本件訴え提起時までされなかった。 エ原告らは、平成29年1月27日、本件訴えを提起した。 なお、原告Dは、同日、原告の一人として、共に本件訴えを提起したが、その後の平成30年5月20日に死亡したため、これにより同人に係る 部分の訴訟は終了した。 第3 争点及びこれに関する当事者の主張本件の争点は、本件各処分について、憲法25条、法1、3、8条等に反する違憲・違法があるか否かである。 (原告らの主張の要旨) 1 判断枠組み保護基準は、法8条1項の委任に基づいて厚生労働大臣が設定する委任命令 憲法25条、法1、3、8条等に反する違憲・違法があるか否かである。 (原告らの主張の要旨) 1 判断枠組み保護基準は、法8条1項の委任に基づいて厚生労働大臣が設定する委任命令の性質を有しており、その命令の内容が法律による委任の趣旨・範囲を逸脱してはならず、委任命令の制定又は改定が違法か否かは、委任した法律の趣旨・目的、国民の権利義務の重大性や制限の程度等を考慮して、行政府に与えられ た裁量権を逸脱又は濫用したか否かという観点から判断されるべきである。 そして、保護基準の改定に当たって、厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落がある場合には、その裁量を逸脱又は濫用したものというべきところ、生存権が被保護者の生命・健康という生存に直結する重要な権利であること、老齢加算の廃止とは異なり、保護基準の中核たる生活扶助基準の改定は、 全ての被保護者の支給額に影響を与えるものであること、保護基準は、個人住 民税の非課税基準等の様々な制度と事実上連動しており、保護基準の引下げが国民の生活水準も引き下げる結果となること等からすれば、厚生労働大臣の裁量は極めて限定的なものとなり、以下の観点から制限されるものというべきである。 ⑴ 保護基準の引下げは原則として許されず、引下げを行う場合には、その正 当性を立証する事実上の責任が行政機関にあること①憲法25条は、国民の法的権利を保障するものであり、同条の趣旨からは、いったん具体化された給付水準を引き下げることについては、広範な立法・行政裁量はなく、羈束裁量論による統制が要請されること(制度後退禁止原則)、②経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下「社会 権規約」という。)は、締結国はすべての者に社会保障についての権利を認めるものとし による統制が要請されること(制度後退禁止原則)、②経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下「社会 権規約」という。)は、締結国はすべての者に社会保障についての権利を認めるものとし(同規約9条、11条)、締結国に、これらの権利の完全な実現を漸進的に達成するための措置を行うことを法的義務として課しており(同規約2条1項)、同規約の趣旨からは、社会保障に対する権利に関連してとられた後退的な措置は、規約に基づいて禁じられているとの推定が働き、 締約国には、締約国の利用可能な最大限の資源の完全な利用に照らして、後退措置が正当化されることを証明する責任があるとされている(同規約一般的意見19パラグラフ42)こと(社会権規約の規定は司法判断の直接の根拠となり得るものである。)、③法は、保護基準は、最低限度の生活の需要を確実に満たすに十分なものでなければならない(法8条2項)とした上で、 要保護者に強力な手続的権利を保障し、実施機関に職権保護義務を課すことにより、保護基準の下限を画した上で、それを権利として保障していること、④法56条は、いったん保護決定を受けた場合には、被保護者の生活保護受給権は、具体的権利として発生していることを定め、この具体的権利が正当な理由がない限り不利益に変更されることはないことを保障し、国に「正当 な理由」についての説明責任を負わせるものであり、保護基準の減額改定に 当たっても同条の趣旨は考慮されるべきこと等を踏まえると、厚生労働大臣が、合理的な理由のない保護基準の引下げをすることは許されず、被告らにおいて、厚生労働大臣の判断の過程及び手続を明らかにした上で、事実の調査方法が合理性を有することや必要な考慮要素を考慮し、適切な考慮バランスで考慮したこと等、同過程及び手続に過誤、 されず、被告らにおいて、厚生労働大臣の判断の過程及び手続を明らかにした上で、事実の調査方法が合理性を有することや必要な考慮要素を考慮し、適切な考慮バランスで考慮したこと等、同過程及び手続に過誤、欠落がないことを相当の根拠、 資料に基づき主張、立証する必要があるというべきであり、これを尽くさない場合には、厚生労働大臣の判断に不合理な点があることが事実上推認されるというべきである。 ⑵ 要保護者の生活状況に関する法定考慮事項を考慮せず、財政事情等の生活外的要素を考慮することは許されないこと 法8条1項は、保護は要保護者の需要を基礎として行うべきものとした上で、同条2項は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を義務的考慮事項として定め、これに加えて、法9条は、健康状態等及び個人又は世帯の実際の必要の相違を義務的考慮事項として定めており、これらの事項を考慮することなく設定された保護基準 は違法である。そして、これらの事項は形式に考慮するのでは足りず、要保護者の需要(生活上のニーズ)を調査把握し、その生活状態に応じて保護基準を設定しなければならない。 他方で、法8条及び9条で義務的考慮事項とされているのは、要保護者の生活上の属性に関わる事項のみであり、国の財政事情、国民感情等について は考慮事項とされていないことからすれば、法は、保護基準の設定に当たっては、このような生活外的要素を考慮することを禁止しているものと解するべきであり、仮に考慮を禁止まではしていないとしても、その考慮に当たっての優先順位や重みづけは、法8条及び9条で義務的考慮事項とされている事項と比べれば劣後するものというべきである。 ⑶ 保護基準は、政治的な色彩を排除し、審議会等の専 、その考慮に当たっての優先順位や重みづけは、法8条及び9条で義務的考慮事項とされている事項と比べれば劣後するものというべきである。 ⑶ 保護基準は、政治的な色彩を排除し、審議会等の専門機関における専門技 術的な意見に基づき、客観的資料で設定されなければならないこと保護基準の設定は、高度に専門技術的な判断を要するものであることから、専門機関による専門技術的な観点からの検討に基づくことが必要である。また、厚生労働大臣は、専門機関による知見を得るために、必要な事実調査を行うべき義務があるところ、専門機関による判断の基礎のために供されるべ きデータは、最新の調査手法を用いた最新のデータやその解析結果でなければならない。 保護基準が専門機関による検討に基づいて設定されることは、法の立法過程においても当然の前提とされていたものである。特に、昭和59年から導入された水準均衡方式は、専門機関による検証を不可欠とする方式であり (専門委員会による平成16年報告書においてもその旨が述べられている。)、実際にも、法令上の根拠をもつ専門機関による検証が行われ、専門的知見との整合性が確保されてきたのであって、明文の規定がないことは、専門機関による検討が不要であることの理由にはならない。 加えて、保護基準の引下げについては、憲法上の権利の侵害に直結するも のであり、法の立法過程においても、当時の厚生大臣が、保護基準の引下げを行わないことを明言していたことからしても、専門機関の検証はより厳格なものが要求されているというべきである。 2 ゆがみ調整の合理性⑴ 平成25年検証の合理性 ア第1・十分位の消費実態と生活扶助基準を比較したことの合理性以下のとおり、平 されているというべきである。 2 ゆがみ調整の合理性⑴ 平成25年検証の合理性 ア第1・十分位の消費実態と生活扶助基準を比較したことの合理性以下のとおり、平成25年検証において、生活扶助基準との比較対象を第1・十分位の消費実態としたことは、不合理である。 保護基準以下の生活を余儀なくされている漏給層(制度の利用資格のある者のうち現に利用していない者)が大量に存在する現状においては、 低所得層の消費実態が保護基準以下となるのは当然のことであるにもか かわらず、最下位層の消費実態との比較を根拠に保護基準を引き下げることを許せば、保護基準を際限なく引き下げていくことにつながるのであって、このような比較に合理性がないことは明らかである。この点については、平成25年報告書においても「現実には第1・十分位の階層には生活保護基準以下の所得水準で生活しているものも含まれることが 想定される点についても留意が必要」と指摘されている。 平成25年報告書は、従前の検証が、一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態に着目して行われてきたことを前提として、これを比較対象とすることが現実的であるとしている。 しかしながら、昭和58年まで採用されていた格差縮小方式において は、比較対象は「一般勤労者世帯の消費水準」とされていたのであり、これとの格差を縮小するための当面の目標として第1・十分位の消費動向に着目した改善を行うこととされていたにすぎず、昭和59年から水準均衡方式が採用された際に、比較対象として設定されたのも「一般国民生活における消費水準」(一般勤労者世帯平均を主軸に、第1~2・ 五分位の消費水準)であった。そして、その後20年にわたって保護基準の妥当性の検証は行われ 較対象として設定されたのも「一般国民生活における消費水準」(一般勤労者世帯平均を主軸に、第1~2・ 五分位の消費水準)であった。そして、その後20年にわたって保護基準の妥当性の検証は行われなかったにもかかわらず、専門委員会による平成15年中間取りまとめにおいて、突如として何らの根拠もなく第1・十分位の消費実態との比較が持ち出されたのであって、従前の検証において、第1・十分位の消費実態が比較対象とされていた事実はない。 平成25年報告書は、第1・十分位の平均消費水準が、中位所得階層(第3・五分位)の約6割に達したことを、第1・十分位の消費実態を比較対象とすることの根拠としている。 しかしながら、前記のとおり、水準均衡方式においては一般国民生活の消費水準が比較対象とされてきたのであり、このような経緯を踏ま えれば、第1・十分位の消費実態と比較すべきは、第3・五分位ではな く、一般国民生活における消費実態(全世帯の平均消費水準)である。 また、第3・五分位に相当する第5~6・十分位以下の階層の等価年収の構成割合は全体の30%以下に位置付けられており、しかも、第3・五分位の消費実態は全世帯平均を下回っていることから、第3・五分位が全世帯の平均的階層にあるということはできない。 平成25年報告書は、国民の過半数が必要と考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位の世帯が中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されている状況にあることを、第1・十分位の消費実態を比較対象とすることの根拠としている。 しかしながら、社会的必需品は、これが欠けたら貧困であるという もの(ネガティブリスト)であり、これを全て持っていれば貧困ではないと判別できるものではなく、平成25年報告書 としている。 しかしながら、社会的必需品は、これが欠けたら貧困であるという もの(ネガティブリスト)であり、これを全て持っていれば貧困ではないと判別できるものではなく、平成25年報告書は前提が誤っている。 また、平成22年の「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」の結果によれば、生活実態調査項目のうち、第3・五分位と比較した第1・十分位の普及率が90%を切る項目が全体の3分の2に及んでいる(6 0項目のうち40項目)のであり、平成25年報告書が依拠する数値は、上記調査項目のうちから社会的必需項目を限定し過ぎた結果によるものであって、本来的に社会的必需項目とすべき項目を適切に選別すれば、第1・十分位の世帯における社会的必需品(項目)の普及状況が中位所得階層と比べて遜色ないという結果にはならない。 平成25年報告書は、全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の構成割合が、高所得階層以外のその他十分位の割合と等しく減少しており、特に第1・十分位が減少しているわけでないことを、第1・十分位の消費実態を比較対象とすることの根拠としている。 しかしながら、これは、一般国民生活における消費実態(全世帯の平 均的消費水準)との対比で、第1・十分位が占める位置が相対的に低下 していることを意味するものにほかならないから、第1・十分位の消費実態を比較対象とする根拠とはならない。 平成25年報告書は、第1・十分位の世帯の大部分がOECDの基準では相対的貧困線以下にあることを、第1・十分位の消費実態と比較対象とする根拠としている。 しかしながら、相対的貧困線以下にあることは、あってはならない状態にあることを意味するものであり、第1・十分位があってはならない状態にあること 位の消費実態と比較対象とする根拠としている。 しかしながら、相対的貧困線以下にあることは、あってはならない状態にあることを意味するものであり、第1・十分位があってはならない状態にあることは、むしろ第1・十分位の消費実態を比較対象とすることが不適切であることを基礎づけるものである。 平成25年報告書は、第1・十分位と第2・十分位の間において消費 が大きく変化しており他の十分位と比べて消費動向が大きく異なることを、第1・十分位の消費実態を比較対象とする根拠としている。 しかしながら、これは、保護基準の検証に当たって、変曲点(大部分の国民が維持してきた生活様式が保たれる限界点)という概念が用いられてきたことを前提とするものと考えられるが、変曲点の概念が基準部 会を含めた各種検討会において採用されたという事実はない上に、変曲点以下の水準では最低生活を営むことは難しくなるのであるから、変曲点以下の水準にある第1・十分位の消費実態を比較対象とすることは、むしろ不適切である。 イ第1・十分位の消費実態と生活扶助基準との比較の方法の合理性 以下のとおり、平成25年検証において採用された第1・十分位の消費実態と生活扶助基準の比較の方法は、統計学的に不合理である。 平成25年検証における回帰分析に用いられた平成21年全国消費実態調査の個票データのうちデータ①は、収入の低い世帯から高い世帯へ順に並べ、世帯を10等分した十のグループのうち、1番収入の低いグ ループに属する世帯のデータであるから、回帰分析に用いられた平成2 1年全国消費実態調査の個票データの総数は、データ①のデータ数に10を乗じた数(31,250)に一致しなければならない。しかしながら、この数と、平成21年全国 回帰分析に用いられた平成2 1年全国消費実態調査の個票データの総数は、データ①のデータ数に10を乗じた数(31,250)に一致しなければならない。しかしながら、この数と、平成21年全国消費実態調査の「調査の概要」に記載されている調査対象世帯数(56,806)や第42表「年間収入階級・年間収入十分位階級1世帯当たり1カ月の収入と支出」に記載されてい る集計世帯数(55,089)には大きな差があり、平成25年検証において用いられた個票データは、恣意的に抽出して集計されたものと考えられる。 統計学においては、ある時点における二グループ間の比較をするためには、相互に独立したサンプル(構成メンバーの異なるサンプル)によ る比較でなければならないことが原則である。しかしながら、平成25年検証においては、生活扶助基準と第1・十分位の消費実態を比較するに際して、第1・十分位から生活保護受給世帯のサンプルが除外されていない可能性があり、一方で、生活扶助基準と生活保護受給世帯の消費実態は基本的に等しくなるはずであるから、比較しようとする二グルー プの一方に他方が含まれる場合が生じることとなっている。したがって、平成25年検証における手法は、上記の統計学の原則に明らかに反しており、社会常識に照らしても不合理である。そして、年齢別・世帯人員別・級地別の比較対象となる類型ごとの第1・十分位のサンプル数が少ないことからすれば、少数であっても生活保護受給世帯を除外すれば、 数値に大きな影響が出ることとなる。 また、生活扶助基準検討会による平成19年検証では、比較対象から生活保護受給世帯のサンプルは除外されており、基準部会においても、これを踏襲して、比較対象から生活保護受給世帯のサンプルは除外することを前提として 助基準検討会による平成19年検証では、比較対象から生活保護受給世帯のサンプルは除外されており、基準部会においても、これを踏襲して、比較対象から生活保護受給世帯のサンプルは除外することを前提として議論がなされていたにもかかわらず、その後、何ら議 論されることなく、生活保護受給世帯のサンプルは除外しないこととさ れたのであり、手続上の適正を欠くものである。 平成25年検証における年齢階級別(第1類費)の検証の回帰分析による推定結果において、決定係数(回帰モデルの方程式と現実のデータとの適合の良さを示す数値)が0.3程度と低く、統計学的には参考程度の域を超えないものであり、これによる推計値に基づいた検証は不合 理である。 平成25年検証における年齢階級別(第1類費)の検証の回帰分析の結果について、5%の有意水準でのt値による検定(t検定)を行った場合、地域差の影響を評価する説明変数において、帰無仮説が棄却されないものがあるにもかかわらず、当該説明変数を除いて改めて回帰モ デルの推定を行うこともしておらず、不合理である。 ⑵ 2分の1調整の合理性厚生労働大臣が行った2分の1調整は、基準部会で何ら議論が行われておらず、専門機関による検討を経ていないものであり、判断の過程及び手続に過誤、欠落がある。 また、本件保護基準改定に当たっては、引下げ幅を最大10%とする激変緩和措置が採られており、2分の1調整によって救済される世帯は少数であり、かつ、少額の救済にとどまり、その激変緩和措置としての効果は限定的であること、生活保護受給世帯の大半は、平成25年検証の結果がそのまま反映された場合には生活扶助基準額が増額するはずであった単身中高齢世帯 であったにもかかわらず、2分 置としての効果は限定的であること、生活保護受給世帯の大半は、平成25年検証の結果がそのまま反映された場合には生活扶助基準額が増額するはずであった単身中高齢世帯 であったにもかかわらず、2分の1調整によって、それらの世帯の増額幅が抑えられるなどの多大な不利益を被ること、2分の1調整の結果、ゆがみ調整は生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との乖離は半分しか是正されず、ゆがみ調整の趣旨を没却すると考えられることなどからすれば、2分の1調整を採用したこと自体が不合理である。 3 デフレ調整の合理性 ⑴ 審議会等の専門機関の検証等を経ずにデフレ調整をしたことの合理性昭和58年意見具申においては、水準均衡方式に基づく生活扶助基準の改定は、原則として、民間最終消費支出の伸びに準拠することが明示され、賃金や物価はそのまま消費水準を示すものではないことから、その伸びは参考資料にとどめるべきであるとされていた。したがって、生活扶助基準の改定 に当たって、物価動向を考慮するのであれば、重大な検証方法の変更に当たるのであるから、物価動向を考慮することの可否や考慮方法等について、専門機関による慎重な検討を経ることが必要であった。しかし、専門委員会や基準部会での議論においては、物価動向を考慮することに強い異論が出され、具体的な議論はされていなかった。 なお、平成25年報告書においては、「他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合には、それらの根拠についても明確に示されたい。」との記載があるが、これは、当初の案において、「他に合理的説明が可能な経済指標などがあれば、それらについても根拠を明確にして改定されたい。」、「合理的説明がつく要素については、それを勘案することは一つ 記載があるが、これは、当初の案において、「他に合理的説明が可能な経済指標などがあれば、それらについても根拠を明確にして改定されたい。」、「合理的説明がつく要素については、それを勘案することは一つ の考え方である。」との記載があったのに対し、委員から強い批判があったのを受けて、表現を改められたものであり、基準部会が物価動向を考慮することを認めたものではなく、むしろ、基準部会としては、何ら議論していない物価動向を考慮することに正当性があると認めるものではないことを明確にしたものと解するべきである。 そうであるにもかかわらず、厚生労働大臣は、物価動向を勘案してデフレ調整を行ったものであり、専門機関による検討を経ずに、考慮すべきでないものを考慮した点に、判断の過程及び手続の過誤、欠落がある。 ⑵ 本件保護基準改定に当たって物価動向を考慮することの合理性被告らの主張によれば、デフレ調整は、生活扶助基準検討会による平成1 9年報告書により、当時の生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比較 して高いと評価されていたにもかかわらず、平成20年度以降、物価動向等を反映せずに生活扶助基準が据え置かれてきたことを根拠に行われたものである。 しかしながら、生活扶助基準検討会は、厚生労働省社会・援護局長が何らの法令上の根拠もなく設置した私的諮問機関にすぎず、その検証期間も極め て短期間であり、その検証結果である平成19年報告書は水準均衡方式の不可欠の要素としての専門機関の検証と位置付けられるものではないこと、内容としても、平成19年報告書の検証結果は、むしろ生活扶助基準の引下げには慎重であるべきというものであること、平成19年報告書が第1・十分位の消費実態を比較対象としたことは適当ではないことから 、内容としても、平成19年報告書の検証結果は、むしろ生活扶助基準の引下げには慎重であるべきというものであること、平成19年報告書が第1・十分位の消費実態を比較対象としたことは適当ではないことからすれば、平成1 9年検証はデフレ調整の根拠となるものではない。 また、平成20年度以降、物価動向等を反映していなかったというのは事実に反しており、厚生労働大臣は、平成20年度から平成24年度までの間も、水準均衡方式に基づき、民間最終消費支出の動向を基礎としつつ、その参考として、原油価格の高騰、100年に1度といわれる経済危機、生活関 連物資を中心とした物価上昇、完全失業率の5%超え等、物価動向を含めたその時々の社会経済情勢等を総合的に勘案した上で、敢えて生活扶助基準を据え置くという判断を行っていたものである。したがって、平成20年度以降の生活扶助基準の改定(据置き)にも物価動向等は反映されていたのであるから、本件保護基準改定においてデフレ調整を行うことは、物価動向を二 重に考慮するものであり、不合理である。 なお、平成30年度の保護基準の改定(以下「平成30年改定」という。)に当たっては、平成23年から平成28年までのインフレ(総務省CPIは3.73%、生活扶助相当CPIは5.25%の上昇)を考慮せずに、消費水準均衡方式のみで改定し、保護基準の引下げを強行したものであり、この ことは、デフレ調整が、保護基準を引き下げるという目的のために、恣意的 に物価動向を考慮したことを裏付けるものである。 ⑶ 総務省による家計調査の結果を用いたこと等の合理性(生活扶助相当CPIと生活保護受給世帯の消費実態との乖離について)生活保護受給世帯の消費実態は、食費、光熱・水道費、被服費等の支出割合が大きい一方、 家計調査の結果を用いたこと等の合理性(生活扶助相当CPIと生活保護受給世帯の消費実態との乖離について)生活保護受給世帯の消費実態は、食費、光熱・水道費、被服費等の支出割合が大きい一方、教育、教養娯楽費(パソコン、テレビ等)等の支出割合は 小さいなど、一般世帯の消費実態とは大きく異なっているのであり、生活扶助相当CPIの算出に当たっては、生活保護受給世帯を対象とした社会保障生計調査の結果を分析して、生活保護受給世帯の消費実態を明らかにすることが必要不可欠であった(実際に、平成29年に基準部会により行われた検証(以下「平成29年検証」という。)においては、社会保障生計調査を用 いて生活保護の引下げの影響等を確認している。)。また、総務省による家計調査の結果を用いるとしても、第1・十分位又は第1・五分位の世帯の支出割合を用いるべきであった。 それにもかかわらず、生活扶助相当CPIを算出するに当たっては、総務省CPIと同様に、家計調査の結果における一般世帯(2人以上の世帯)の の品目別消費支出金額をもとにウエイトが作成された。 その上、生活扶助相当CPIを算出するに当たっては、非生活扶助相当品目を除外する操作が加えられたことにより、生活扶助相当品目の各ウエイトが相対的に大きくなることとなった。 その結果、テレビ、パソコン等の電化製品については、実際には、生活保 護受給世帯における支出割合が、一般世帯に比して相当低いにもかかわらず、生活扶助相当CPIにおける電化製品のウエイトが、総務省CPIにおける電化製品のウエイトよりも大きく評価されることとなった。そして、本来であれば、平成20年から平成23年にかけて、生活保護受給世帯における支出割合が高い食費、光熱・水道費等の物価下落率が低く、他方で、同世帯に エイトよりも大きく評価されることとなった。そして、本来であれば、平成20年から平成23年にかけて、生活保護受給世帯における支出割合が高い食費、光熱・水道費等の物価下落率が低く、他方で、同世帯に おける支出割合の低い電化製品の物価下落率が高かった(特に、パソコンに ついては著しい性能の向上を価格指数に反映させる品質調整の措置がとられた結果、大幅に物価指数が下落している。)ことから、生活保護世帯においては、上記期間の物価下落の影響は小さく、可処分所得の増加率も少なかったはずであるにもかかわらず、生活扶助相当CPIにおいて電化製品のウエイトが過大に評価されたことにより、電化製品の物価下落が過大に評価され た結果、生活扶助相当CPIの下落率が著しく大きく算出されたものである。 このように、生活扶助相当CPIのウエイトは生活保護受給世帯の消費実態から乖離したものとなっており、その結果、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの下落率(-4.78%)は、同期間の総務省CPIの下落率(-2.35%)よりも著しく大きくなっている。 ⑷ 物価動向の比較期間の合理性ア本件保護基準改定の直前に保護基準の引下げが行われたのは平成16年であったこと、本件保護基準改定の発表時点で公表されていた最新の総務省CPIのデータは平成24年のものであったことからすれば、本件保護基準改定に当たっても、物価動向を勘案する期間を平成16年から 平成24年とすることが合理的であり、平成20年から平成23年とする合理的理由はない。それにもかかわらず、厚生労働大臣は、生活保護費抑制を目的として、物価下落率が大きくなるように、平成20年から平成23年の物価動向を勘案することとしたものである。 すなわち、始期とされた平成20 。それにもかかわらず、厚生労働大臣は、生活保護費抑制を目的として、物価下落率が大きくなるように、平成20年から平成23年の物価動向を勘案することとしたものである。 すなわち、始期とされた平成20年は、前後の10年以上の時期のなか で唯一物価が有意に上昇した年であり、原油価格の高騰等により、総務省CPIが11年ぶりに1%を超える大幅な上昇となったのに対し、終期とされた平成23年は、酒類を除く食料品及びエネルギーを除く総合が1.2%の下落という昭和46年以来最大の下落となっており、平成20年と平成23年は、大きな物価変動を一時的に記録した異常な年で あったのであるから、参考資料とすべきものではない。他方で、平成2 3年から平成24年にかけて生活扶助で賄うべき基礎的な日常生活費である光熱・水道費の物価が上昇しており、平成24年を終期とすると生活扶助基準を引き下げる根拠を失うことから、恣意的に、平成20年から平成23年の期間を選択したとみるほかない。実際に、昭和45年から平成25年の間で平成20年から平成23年までの3年間の物価下落 率が最も大きくなっている。 イ被告らは、平成20年を始期とした理由について、平成19年度までの消費や物価等の経済動向については既に考慮する旨の改定が行われていたことから、平成20年以降の物価動向を用いた旨主張しているが、平成19年度の生活扶助基準の改定に際して考慮されたのは、平成18年 度までの物価動向であり、被告らの主張を前提とすると、平成19年度の物価動向は何ら考慮されていないこととなり、不合理である。そして、平成19年から平成20年にかけての物価上昇(インフレ)が考慮されないことにより、生活扶助相当CPIの下落率は少なくとも0.18%過剰に評価されている。 いないこととなり、不合理である。そして、平成19年から平成20年にかけての物価上昇(インフレ)が考慮されないことにより、生活扶助相当CPIの下落率は少なくとも0.18%過剰に評価されている。 ⑸ 生活扶助相当CPIの算出方法の統計学的合理性等ア平成22年を基準時及びウエイト参照時点としたこと等の合理性 生活扶助相当CPIの算出に当たっては、平成22年をウエイト参照時点として、平成20年及び平成23年の指数を算出し、この二時点の指数を比較する方法がとられている。 しかしながら、二時点の価格を比較するに際して、二時点のいずれでもない時点のウエイトを用いる方法は存在しない。また、この方法によれば、平成20年と平成22年の比較は、調和平均により行われ(平成22年から平成20年に遡って平均することとなるため。)、比較時のウエイトを使用して算出するパーシェ指数によることと同一の結果とな る一方、平成22年と平成23年の比較は、相加平均により行われ、基 準時のウエイトを使用して算出するラスパイレス指数によることとなるが、このように異なる方法により算出された指数を比較することは統計学的にはあり得ない。 また、総務省CPIにおいては、従前、諸外国やILO等が採用する国際的な計算方法であり、かつ国際的にも推奨されているラスパイレス 指数が採用されており、消費者物価指数についてパーシェ指数が採用されている例はない。特に、平成20年の生活扶助相当CPIの算出に用いられている固定基準年方式(ある特定の年を基準年として数年間固定する方式)パーシェ指数については、価格と数量が大幅かつ逆方向に変化し続けるIT関連財のような財が存在する場合、基準時から時間が経 過する 固定基準年方式(ある特定の年を基準年として数年間固定する方式)パーシェ指数については、価格と数量が大幅かつ逆方向に変化し続けるIT関連財のような財が存在する場合、基準時から時間が経 過するほど下方バイアスが大きくなるという問題点が指摘されていることから、従来固定基準年方式パーシェ指数が採用されていたGDPデフレーターの算出についても、連鎖方式(基準年を毎年更新する方式)パーシェ指数に切り替えられており、固定基準年方式パーシェ指数は歴史的にも淘汰された方法である。 総務省が採用するラスパイレス指数によるのであれば、①平成17年を基準時・ウエイト参照時点とした平成20年の生活扶助相当CPI、②平成22年を基準時・ウエイト参照時点とした平成23年の生活扶助相当CPI、③平成17年を基準時・ウエイト参照時点とした平成22年の生活扶助相当CPIをそれぞれ算出し、①と②の数値を接続するた めの接続係数を求めた上で、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIを比較すべきであったのであり、この方法により算出すれば、変化率は-2.26%となり、デフレ調整に際して算出された数値よりも小さくなる。 また、国際基準によれば、基準時(価格参照時点)は比較時よりも過 去の時点であり、基準時(価格参照時点)の指数を100としなければ ならないとされているところ、平成22年の指数を100として、平成20年の指数を算出していることは、比較時を基準時よりも過去におくものであり、国際基準に反するものである。 平成23年からの地上デジタル放送への移行や平成21年から始まったエコポイントの影響により、平成22年は一時的にテレビの需要が増 大したが、平成22年基準のウエイトを ものである。 平成23年からの地上デジタル放送への移行や平成21年から始まったエコポイントの影響により、平成22年は一時的にテレビの需要が増 大したが、平成22年基準のウエイトを使用して、平成20年の生活扶助相当CPIを算出したことにより、同年時点ではまだ経験していなかったテレビのウエイト増大の影響が先取りされる結果となっている。これに加え、生活保護受給世帯は、一般世帯と比較して、テレビの支出は小さく(前記⑶)、そもそもテレビのウエイト増大は、生活保護受給世 帯が経験していないものである。 また、パソコンやカメラについて、平成22年頃は、品質調整で大幅に価格指数が下げられているところ、パーシェ指数の場合には、品質調整により大幅に価格水準が低下すると、数量が増大したとみなされることとなるから、平成17年と平成22年の生活扶助相当CPIの比較に おいては、パソコン等のウエイトが大きく評価され、その価格指数の下落が大きく反映されることとなっており、パーシェ指数による下方バイアスによって、生活扶助相当CPIの下落率が大きく評価されることとなっている。 被告らは、ラスパイレス指数を採用する総務省CPIは、物価の長期 的な推移をみるものであり、平成20年から平成23年という短期間の物価の変動を測定するのには適さない旨の主張をするが、総務省CPIは、毎月作成、公表されていること等からして、長期的な推移のみをみることを目的としたものではないことは明らかである。また、ラスパイレス指数は、物価変動をみる期間が長くなるほど上昇バイアスを生じや すいという特徴があること等から、総務省CPIは5年ごとに品目及び ウエイトの改定を行っているのであり、むしろ短期間の推移をみる方が合理的である。 長くなるほど上昇バイアスを生じや すいという特徴があること等から、総務省CPIは5年ごとに品目及び ウエイトの改定を行っているのであり、むしろ短期間の推移をみる方が合理的である。 また、被告らは、直近の消費構造を反映するため、平成22年基準のウエイトを用いることとした旨主張するが、専門的知見というべき「指数の基準時に関する統計基準」(平成22年総務省告示第112号)に おいては、総務省CPIにおいてウエイトは基準時のウエイトによることとされ、指数算出の基準時である年以外のウエイトを用いると、指数が物価変動を適切に示すものにはならなくなるとされているのであり、前記のとおり、平成20年の生活扶助相当CPIを算出するためには、平成17年基準のウエイトを用いた上で、指数の接続を行うべきであっ たから、被告らの用いた手法は専門的知見との整合性を欠くものである。 イ指数品目が異なる物価指数を比較することの合理性統計学上、比較対象は同一の条件で作成されたものであることが原則である。また、消費者物価指数は、固定バスケット方式によって作成されなければならず、その結果、基準時と比較時の対象とする品目は完全に 同一でなければならないとするのが国際基準である。 しかしながら、平成22年基準では、平成17年基準から指数品目が変更されたことから、平成20年と平成23年の生活扶助相当CPIの指数品目はそれぞれ異なっており、平成20年は485品目、平成23年は517品目となっているが、これは統計学上の原則を逸脱するもので あり、国際基準にも反するものである。 固定バスケット方式に合致させるためには、平成17年を基準とする指数系列と平成22年を基準とする指数系列を作成した上で の原則を逸脱するもので あり、国際基準にも反するものである。 固定バスケット方式に合致させるためには、平成17年を基準とする指数系列と平成22年を基準とする指数系列を作成した上で接続を行うなどの処理や欠価格(欠測値)について類指数(欠価格品目の上位分類の指数)の代替による処理を行う必要があるが、生活扶助相当CPIの算 出に当たっては、こうした処理は行われていない。 被告らは、生活扶助相当CPIが、国際労働機構(ILO)等の編さんした「消費者物価指数マニュアル-理論と実践」(以下「ILOマニュアル」という。)に掲載されているロウ指数であり、国際基準に沿う適切な算出方法によるものであるなどと主張する。しかし、ロウ指数とは、固定バスケット方式を採用する指数全般を指すものであるところ、前記 のとおり、平成20年と平成23年の生活扶助相当CPIでは指数品目が異なっていること等から、ロウ指数ということができるものではない。 ⑹ 平成29年検証について被告らは、本件保護基準改定後の平成29年検証において、標準世帯の生活扶助基準額と第1・十分位の消費実態との間に均衡が図られていることを 理由に、デフレ調整は違法ではない旨主張するが、そもそも取消訴訟における処分の違法性判断の基準時は処分時であり、処分後に作成された資料等によって処分の適法性を基礎づけることはできないこと、標準世帯の検証結果のみによって、全ての生活保護受給世帯について一律に4.78%の減額をしたことを正当化することはできないこと、デフレ調整による絶対額として の減額幅は1万円に満たないものであり、また、消費税率の引上げを踏まえ、平成26年告示により一律2.9%の増額を行われており、本件保護基準改定後の生 きないこと、デフレ調整による絶対額として の減額幅は1万円に満たないものであり、また、消費税率の引上げを踏まえ、平成26年告示により一律2.9%の増額を行われており、本件保護基準改定後の生活扶助基準額が概ね均衡という幅に収まるのは当然であることからすれば、平成29年検証の結果は、デフレ調整による減額を正当化するものではない。 4 ゆがみ調整に加えてデフレ調整を行うことの合理性水準均衡方式において必要とされるのは、一般国民の消費実態と比較して生活扶助基準が妥当な水準にあるか否かの検証であり、絶対水準の検証が前提となっており、平成25年検証においても、生活保護受給世帯間での相対評価のみならず、一般世帯と比較しての絶対水準の検証とが一体的に行われ(平成2 5年検証に当たって用いられた平成21年全国消費実態調査の個票データも、 物価変動(デフレ)の影響を受けたものである。)、実際に行われたゆがみ調整も、本件保護基準改定前の生活扶助基準額そのものに対し、年齢階級別、世帯人員別、級地別の改定率を直接掛け合わせて、生活扶助基準額を算出しているが、これは、生活扶助基準の絶対水準の調整と年齢階級別、世帯人員別、級地別の展開を一体として行ったものである。ゆがみ調整が生活扶助基準の絶対 水準に影響を与えたことは、ゆがみ調整により約90億円の財政効果があったことからも明らかであり、したがって、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことは物価を二重に考慮することとなるものである。 また、本件保護基準改定前の生活扶助基準額にゆがみ調整の改定率を乗じたものに、年齢別、世帯人員別、級地別の消費実態を無視して一律に物価動向を 勘案したデフレ調整率を乗じることにより、ゆがみ調整の改定率は全く無意味なものとなりゆが 額にゆがみ調整の改定率を乗じたものに、年齢別、世帯人員別、級地別の消費実態を無視して一律に物価動向を 勘案したデフレ調整率を乗じることにより、ゆがみ調整の改定率は全く無意味なものとなりゆがみ調整の趣旨が没却される。 以上によれば、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行ったことは不合理である。 5 政権与党の公約等の不可考慮事項を考慮したこと自由民主党(以下「自民党」という。)は、保護基準の10%引下げを政権 公約として政権を掌握し、その後、厚生労働大臣は平成25年報告書が作成される前から保護基準の引下げを公言していたこと、厚生労働省内において、本件保護基準改定前に保護基準の見直しによる財政効果を考慮していたこと、本件保護基準改定により総額670億円もの大幅な引下げをしたこと等からすれば、本件保護基準改定は、自民党の政権公約の実現及びその背景にある国民感 情や国家の財政事情という本来考慮すべきでない事項を考慮して行われたものである。 6 まとめ以上によれば、ゆがみ調整及びデフレ調整については、厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるというべきであり、本件保護基準改定は、 同大臣の裁量権を逸脱又は濫用してなされた違法なもので、これに基づく本件 各処分は違法で取り消されるべきものである。 (被告らの主張の要旨) 1 判断枠組み⑴ 法により保障される最低限度の生活は健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならず(法3条)、また、保護基準は最低限度 の生活の需要を満たすに十分であり、かつ同需要を超えないものでなくてはならない(法8条2項)ところ、「最低限度の生活」は抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における経済的、社 の生活の需要を満たすに十分であり、かつ同需要を超えないものでなくてはならない(法8条2項)ところ、「最低限度の生活」は抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における経済的、社会的条件や一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断されるべきものであるから、これを保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的 な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする。そして、厚生労働大臣の保護基準の改定の判断は、国の財政状態や国民の一般的生活水準、被保護者がそうではない者よりも優遇されているのは不当であるという一部の国民感情などを含めた、異質かつ多元的な諸利益を評価して比較衡量するという、すぐれて専門技術的かつ政策的な判断であるから、厚生労働大臣には、要保 護者の需要の把握の方法も含め広範な裁量権が認められており、その判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると認められる場合にはじめて、法3条、8条2項の規定に違反し、違法となるものと解すべきである。 かかる裁量権の範囲を逸脱又は濫用しているか否かを判断するに当たっては、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を見 ることによって、最低限度の生活の具体化に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落等があったか否かが審査されるべきであり、その結論の適否を直接に判断するのが相当でないことはもとより、その判断の過程を事後的に、厳格に追試することも広範な裁量権を認めた法の趣旨を没却することとなるから相当ではない。 そして、行政事件訴訟法30条が、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があった 場合に限り、その処分を取り消すことができると規定していることからすれば、裁量処分の違法性を主張する原告らが、厚生労働大臣が裁量権の範囲 訴訟法30条が、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があった 場合に限り、その処分を取り消すことができると規定していることからすれば、裁量処分の違法性を主張する原告らが、厚生労働大臣が裁量権の範囲を逸脱し、又は濫用したことの主張立証責任を負うというべきである。 なお、以上の判断枠組みは、老齢加算の廃止についての判例においても確立されたものであり、生活扶助基準の改定も、健康で文化的な最低限度の生 活を保障する保護基準の改定である点で老齢加算と異なるものではなく、むしろ、生活扶助基準の改定は、資料の選択や評価等も踏まえた複雑かつ多岐にわたる非定型的なものであるから、その判断の過程及び手続に係る審査については、老齢加算の廃止と比較して、裁判所による審査になじみにくい性質を有すること、老齢加算は一定の年齢に達すれば必ず支給される性質のも のであり、被保護者が生活設計をする上での判断材料として強い信頼を置いていたであろうことは明らかであり、生活扶助基準についてはこれと同様に考えることはできず、給付内容の維持に関する信頼の要保護性が高くないことからすれば、生活扶助基準の改定についての審査が、老齢加算の廃止と比べて厳格になされるべきものであるともいえない。 ⑵ 原告らの主張についてア保護基準の引下げは原則として許されず、引下げを行う場合には、その正当性を立証する事実上の責任が行政機関にあるという主張について①憲法25条1項は、国民に具体的権利を付与したものではなく、前記⑴のとおり、「最低限度の生活」とは極めて抽象的で相対的な概念であ り、その具体的内容は、その時々における多数の不確定要素に応じて変化し得るもので、「最低限度の生活」の水準が上昇し続けるとも限らないこと、②法3条及び8条2項が、保 抽象的で相対的な概念であ り、その具体的内容は、その時々における多数の不確定要素に応じて変化し得るもので、「最低限度の生活」の水準が上昇し続けるとも限らないこと、②法3条及び8条2項が、保護基準が最低限度の生活需要を満たしつつこれを越えないものでなければならないとしていることからすれば、一度設定した保護基準であっても、その後の社会経済情勢の変化 等に応じて削減される場合があることを当然想定していること、③憲法 25条2項も、社会福祉、社会保障等の向上及び増進に「努めなければならない」と規定しているにとどまり、社会保障給付の水準を常に増進させなければならず、これを後退させることを原則として禁止することまでを定めるものではないこと、④社会権規約2条1項の文言からして、同規約9条は個人に対し具体的権利を付与すべきことを定めたものでは なく、その権利の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものにすぎず、一般的意見についても法的拘束力があるわけではないこと、⑤法56条は、法の定める変更の事由が生じ、保護の実施機関が法の定める変更の手続を正規に執るまでは、既に決定された内容の保護の実施を受ける法的地位を保障するというも のにとどまり、保護基準自体の引下げを禁止するものではないことからすれば、憲法及び法が、制度後退禁止原則を定めているということはできないのであり、被告らが、厚生労働大臣がその裁量権を逸脱し、又は濫用したか否かについての主張立証責任を負うことはない。 イ要保護者の生活状況に関する法定考慮事項を考慮せずに、財政事情等の 生活外要素を考慮することは許されないという主張について法8条1項の「要保護者の需要」とは、最低限度の生活の需要として再構成 状況に関する法定考慮事項を考慮せずに、財政事情等の 生活外要素を考慮することは許されないという主張について法8条1項の「要保護者の需要」とは、最低限度の生活の需要として再構成された客観的なものを意味するもので、各要保護者の個別的な需要を意味するものではなく、厚生労働大臣が最低限度の生活を保護基準において具体化するに当たって、個々の生活保護受給世帯の具体的な生活 状況について考慮する必要はなく、また、個々の生活保護受給世帯の具体的な生活状況を全て把握して、保護基準の改定に反映することは技術的に不可能でもある。前記⑴のとおり、厚生労働大臣は、専門的技術的かつ政策的見地からの広範な裁量が認められているのであるから、要保護者の需要を把握する方法についても、その裁量に基づいて選択をする ことが許されているものというべきである。 また、厚生労働大臣は、法8条2項に列挙されていない国の財政事情を含めた多方面にわたる複雑多様な要素を考慮すべきことは、確立された判例法理からも明らかであるし、各考慮要素の取捨選択や考慮方法等についても広範な裁量を有することから、同条に列挙されている要素を他の要素よりも優先しなければならないということもできない。 ウ保護基準は、政治的な色彩を排除し、審議会等の専門機関による専門技術的な意見に基づき、客観的資料で設定されなければならないという主張について保護基準は、法8条に基づき厚生労働大臣が定めるとされており、保護基準を策定するに際して、厚生労働大臣が審議会等の専門機関の意見を 聴くことが法令上の要件とはされておらず、審議会等の専門機関による検討結果が厚生労働大臣の判断を法的に拘束するものではない。 また、原告らが指摘する法の立法 会等の専門機関の意見を 聴くことが法令上の要件とはされておらず、審議会等の専門機関による検討結果が厚生労働大臣の判断を法的に拘束するものではない。 また、原告らが指摘する法の立法当時の厚生大臣の発言も、保護基準の引下げを行わずに制度を運用したい旨の希望を述べたものにすぎず、保護基準の引下げを絶対に行わないとの見解を述べたものとはいえず、前 記アのとおり、いかなる状況においても保護基準の引下げを行わないことが法の趣旨とはいえない。 2 ゆがみ調整の合理性ゆがみ調整は、基準部会における平成25年検証により、年齢階級別、世帯人員別、級地別に展開する指数について、生活扶助基準額による指数と第1・ 十分位の消費実態による指数との乖離が認められたことから、この乖離を相対的に調整することを目的として行われたものであり、合理的なものである。 そして、ゆがみ調整についての原告らの主張は、以下のとおり、いずれも理由がない。 ⑴ 平成25年検証の合理性 ア第1・十分位の消費実態と生活扶助基準を比較したことの合理性 生活保護制度は、国が生活に困窮する国民に対して最低限度の生活を保障することを目的とするものであり、法8条2項が、保護は最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならないと定めているとおり、最低限度の生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものである という考え方に立脚して定められるものであって、このような法の趣旨を踏まえて、生活扶助基準の妥当性については、従来から一貫して、低所得世帯の消費実態に着目して検証が行われてきた。すなわち、①格差縮小方式の導入のきっかけとなった昭和39年12月16日の社会福 趣旨を踏まえて、生活扶助基準の妥当性については、従来から一貫して、低所得世帯の消費実態に着目して検証が行われてきた。すなわち、①格差縮小方式の導入のきっかけとなった昭和39年12月16日の社会福祉審議会生活保護専門分科会による中間報告(以下「昭和39年中間報告」 という。)では、「第1・10分位階級における消費水準の最近の上昇率に加えて、第1・10分位階級と生活保護階層との格差縮小を見込んだ改善を行うべきである。」とされ、②格差縮小方式から水準均衡方式へ移行するきっかけとなった昭和58年意見具申では、変曲点における収入分位が2.99・五十分位とされ、そこでの生活扶助相当支出額と 生活扶助基準額との比較がされ、③平成15年中間取りまとめにおいても、第1・十分位の世帯の消費水準に着目することが適当であるとされ、④平成19年報告書においても、生活扶助基準の検証に当たり、第1・十分位における消費実態との比較がなされている。 このような経緯を踏まえ、平成25年検証においても、これまでの検証 に倣い、生活保護受給世帯と隣接した第1・十分位の消費実態を用いることが現実的であること、第1・十分位の消費実態が中位所得階層の約6割に達していること、国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されている状況にあること等を 踏まえて、第1・十分位を比較対象とすることが妥当であると判断され たものであり、第1・十分位の消費実態と生活扶助基準額を比較したことは合理的である。 原告らは、水準均衡方式においては、一般国民生活における消費水準を比較の対象とされてきたにもかかわらず、平成25年検証において、第1・十分位の 扶助基準額を比較したことは合理的である。 原告らは、水準均衡方式においては、一般国民生活における消費水準を比較の対象とされてきたにもかかわらず、平成25年検証において、第1・十分位の消費実態と生活扶助基準額を比較したことは不合理である 旨主張する。しかしながら、水準均衡方式は、昭和58年意見具申において妥当な水準に達していると評価された当時の生活扶助基準の水準を、一般国民の消費水準の動向に即して改定することによって維持していこうとする生活扶助基準の改定方式である一方、上記のとおり、生活扶助基準の妥当性の検証は、従来から一貫して低所得世帯の消費実態等に着 目して行われてきたものであって、生活扶助基準の改定方式と妥当性の検証方法とでは、そもそも目的も内容も異なるものであり、昭和58年意見具申においても、2.99・五十分位の生活扶助相当支出額と生活扶助基準額を比較した結果、一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているものとされたものである。また、平成25年検証にお いては、第1・十分位の消費実態と生活扶助基準額の年齢階級別、世帯人員別、級地別に展開する指数について検証を行ったものであり、第1・十分位の消費実態と生活扶助基準額を単純に比較したものではない。 イ第1・十分位の消費実態と生活扶助基準との比較の方法の合理性以下のとおり、平成25年検証は統計学的にも合理性を有するものであ る。 平成25年検証においてデータを用いた平成21年全国消費実態調査は、平成17年国勢調査を基に推計した世帯を母集団とし、その中から2人以上世帯5万2404世帯、単身世帯4402世帯を抽出して行われた抽出調査で、集計の際には、回答が得られた個票データに集計用乗 率(抽出率の逆数 を基に推計した世帯を母集団とし、その中から2人以上世帯5万2404世帯、単身世帯4402世帯を抽出して行われた抽出調査で、集計の際には、回答が得られた個票データに集計用乗 率(抽出率の逆数等)を乗じることによって、全国規模の消費実態を推 計するものであり、単身世帯は2人以上世帯と比べて調査票の回収が困難であること等の理由から、集計用乗率は単身世帯のほうが2人以上世帯よりも相当に大きな数値となっている。 そして、平成25年検証には、平成21年全国消費実態調査の個票データからデータ①を構成する個票データを選定するに当たって、世帯年 収が下位の世帯から個票データを並べた上で、それぞれの個票データに集計用乗率を乗じた実際の世帯数の累計が全体の実際の世帯の下位10%となるところまでの個票データを第1・十分位としてデータを構成しているものである。世帯年収が下位の世帯から個票を並べた場合には、下位の世帯には相対的に集計用乗率の大きい単身世帯が多く含まれるか ら、集計用乗率を乗じた世帯数の累計が全体の世帯数の下位10%となる個票データの数は、平成21年全国消費実態調査の調査世帯数又は集計世帯数(総数)を単純に10分の1にした数よりも少なくなる。 したがって、データ①のデータ数に10を乗じた数と、平成21年全国消費実態調査の調査世帯数又は集計世帯数が一致しないことは、デー タが恣意的に抽出されたことを基礎づけるものではない。 平成25年検証においては、生活扶助基準額と一般低所得世帯である第1・十分位の生活扶助相当支出額について、絶対水準の差を捨象した上で、年齢階級別、世帯人員別、級地別の総体的な乖離を把握するために、検証サンプルとなった第1・十分位の世帯構成に対応する生活扶助 基準額の平均と第1 当支出額について、絶対水準の差を捨象した上で、年齢階級別、世帯人員別、級地別の総体的な乖離を把握するために、検証サンプルとなった第1・十分位の世帯構成に対応する生活扶助 基準額の平均と第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額の平均が不変(同額)となるようにデータ処理して相対比較を行ったもので、生活扶助基準額と第1・十分位の生活扶助相当支出額を単純に比較したものではない。したがって、比較の対象である第1・十分位の世帯から生活保護受給世帯を除外しなかったことは不合理なものではない。 また、基準部会においても、絶対水準の検証を行うことについては異 論が出され、年齢階級別、世帯人員別、級地別の展開の仕方の乖離を検証することは確認されており、検証サンプルから生活保護受給世帯を除外しないと記載された部会資料に対しても、特段異論を出されなかったのであるから、比較の対象から生活保護受給世帯を除外しなかったことについて手続上の適正を欠くところはない。 平成25年検証の回帰分析(年齢階級別の第1類費)の決定係数の値は、データ①については0.28、データ②については0.36であったところ、回帰分析における決定係数は、どの程度の値であれば実態を近似したものとして妥当と評価されるかについては一般的な基準は存在せず、特定の決定係数の値以上でなければならないといった統計的知見 は存在しない。また、平成25年検証においては、平成21年全国消費実態調査の個票データを用いているが、このような個々の家計のデータ(クロス・セクションデータ)を被説明変数とする回帰分析においては、決定係数は0.3くらいしか得られない場合も多いとされ、0.5でも極めて良いと評価されており、上記数値は極端に低いものではなく、消 費実態に近似 データ)を被説明変数とする回帰分析においては、決定係数は0.3くらいしか得られない場合も多いとされ、0.5でも極めて良いと評価されており、上記数値は極端に低いものではなく、消 費実態に近似するものとして、妥当な数値と評価できるものである。 回帰分析におけるt検定とは、推定係数をその標準誤差で割ることで求められるt値を用いて、一定の有意水準を設定した上で、それを前提に「説明変数の被説明変数への真の効果が0である」という帰無仮説を検定し、これが否定されることで、説明変数の被説明変数への効果があ る(0ではない)という対立仮説を採択するというものであり、帰無仮説が棄却された場合には、反対内容である対立仮説を受け入れることを目的とするものであり、帰無仮説が棄却されない場合に、これを積極的に支持することを目的とするものではない。したがって、有意水準を5%とした場合に帰無仮説を棄却できないとしても、その説明変数を除 かなければ、回帰分析の結果を採用できないというものではない。 ⑵ 2分の1調整の合理性平成25年検証の結果は、保護基準改定に当たっての厚生労働大臣の考慮要素にはなるものの、それを踏まえた改定の要否及び内容に係る同大臣の判断を拘束するものではなく、それを用いて改定を行うか否か、どのように用いて改定を行うかなどの判断は、同大臣の高度の専門技術的考察に基づく政 治的裁量に委ねられているものである。 そして、厚生労働大臣は、平成25年検証の結果により判明したゆがみをそのまま是正した場合には、特に子供がいる世帯への減額率が大きくなることが想定され、平成25年検証も「今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には(略)とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子供 の には、特に子供がいる世帯への減額率が大きくなることが想定され、平成25年検証も「今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には(略)とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子供 のいる世帯への影響も配慮する必要がある」としていたことから、平成25年検証の結果を可能な限り公平に反映しつつ、生じる影響につき可能な限り配慮し、生活保護受給世帯の現行の生活扶助基準によって具体化されていた期待的利益を保護するという目的から、2分の1調整を行ったものである。 平成25年検証の反映の程度を一律に2分の1としたのも、生活扶助基準の 展開の指数については、平成25年検証において初めて詳細な分析が行われたものであり、その手法は平成25年検証において採られた方法が唯一のものではなく、特定のサンプル世帯に限定して分析する際にサンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界が認められ、平成25年検証後も更なる検証が予定されていたこと(現に、平成29年検証においては展開のため の指数について平成25年検証の手法を踏襲した検証が行われている。)によるものであり、2分の1調整は合理的なものである。 したがって、厚生労働大臣がゆがみ調整を行うにあたって2分の1調整を講じたことは、同大臣に与えられた裁量権の範囲を逸脱し、又は濫用したものであるということはできない。 3 デフレ調整の合理性 生活扶助基準検討会による平成19年報告書において、当時の生活扶助基準が第1・十分位の生活扶助相当支出額より高いという検証結果が得られたことから、生活扶助基準を一般低所得世帯との消費実態に適合したものとするよう見直されるべきところであった。しかしながら、平成20年度の予算編成当時、原油価格が高騰しており、その消費に与える影響等 たことから、生活扶助基準を一般低所得世帯との消費実態に適合したものとするよう見直されるべきところであった。しかしながら、平成20年度の予算編成当時、原油価格が高騰しており、その消費に与える影響等を見極めるため、生活扶助 基準の見直しは平成21年度予算編成過程で適切に対処することとされ、平成20年度は、平成19年報告書に基づく検証結果を踏まえた生活扶助基準の見直しは行われなかった。また、平成21年予算編成時においても、平成20年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民の家計へ大きな影響を与えていたこと、「100年に1度」と言われる平成20年9月以降の世界金融 危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼしており、国民の将来不安が高まっている状況にあると考えられたことから、平成21年度も生活扶助基準の見直しは行わないこととして据え置くこととされ、その後も国民生活の安心が優先されるべき状況にあったことから、平成25年告示による保護基準の改定(以下「平成25年改定」という。)に至るまで、生活扶助基準の見直しは行われなかっ た。 他方で、平成20年9月の世界金融危機によって、デフレ傾向が続き、一般低所得世帯の消費水準等が下落しているにもかかわらず、生活扶助基準額が据え置かれていたことは、実質的に見れば生活扶助基準の引上げと同視することができ、これにより生活保護受給世帯の可処分所得は相対的、実質的に増加し ている状況にあり、一般国民との均衡は更に崩れた状況にあった。そうすると、保護基準は「最低限度の生活の需要」を超えている場合であっても、法8条2項に反するものとなることから、生活保護受給世帯における可処分所得の実質的増加を勘案して生活扶助基準の適正化を図る必要があったところ、ゆがみ調整は生活扶助基準額の絶対水準を調整するも ても、法8条2項に反するものとなることから、生活保護受給世帯における可処分所得の実質的増加を勘案して生活扶助基準の適正化を図る必要があったところ、ゆがみ調整は生活扶助基準額の絶対水準を調整するものではなかったことから、厚生労 働大臣は、平成20年以降の消費者物価指数の動向を考慮して生活扶助基準に 反映させるために、デフレ調整を行ったものであり、デフレ調整は合理的なものである。 そして、デフレ調整についての原告らの主張は、以下のとおり、いずれも理由がない。 ⑴ 審議会等の専門機関の検証等を経ずにデフレ調整をしたことの合理性 前記1⑵ウのとおり、厚生労働大臣が保護基準を改定するに当たって、審議会等の専門機関の意見を聴くことが法令上の要件とされているものではなく、保護基準を決定する際に用いる手法や考慮要素についても、厚生労働大臣の合目的的裁量に委ねられているというべきであり、本件保護基準改定においても、消費者物価指数の動向を勘案することとしたのも、政策的判断の 下、このような厚生労働大臣の合目的的裁量の範囲内で行ったものである。 基準部会はあくまで当時の生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているかなどの定期的な検証を行うにすぎず、その検証結果を踏まえた保護基準の改定自体は厚生労働大臣の政策的判断に委ねられているのであるから、基準部会の審議を経てないことをもって、本件保護基 準改定が違法となるものではない。 また、専門委員会においては、保護基準を改定するに際して物価を考慮することについて慎重な意見が出されたにすぎず、同委員会による平成15年中間取りまとめでは、消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることも考えられるとされており、専門委員会は、生活扶 考慮することについて慎重な意見が出されたにすぎず、同委員会による平成15年中間取りまとめでは、消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることも考えられるとされており、専門委員会は、生活扶助基準の改定のあ り方として、消費者物価指数の動向を考慮することを否定したものではない。 基準部会においても、平成25年報告書の当初の案において、「他に合理的説明が可能な経済指標などがあれば、それらについても根拠を明確にして改定されたい。」とされていたことにつき、一部の委員から、基準部会において物価の議論をしていないことを理由に「改定されたい」との文言の削除を 求める意見はあったものの、物価等の経済指標等を活用する趣旨そのものを 削除すべきとの意見はなく、最終的には、両論併記や少数意見の付記等がされることなく、平成25年報告書において「他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい」との意見が取りまとめられたことからすると、厚生労働大臣が根拠を明示して物価等の経済指標を活用すること自体については、基準部会の了承を 得たものとみることができるのである。 したがって、厚生労働大臣が、審議会等の専門機関による検討結果によらなかったことによって、デフレ調整につき、判断の過程及び手続に過誤、欠落があったものとはいえない。 ⑵ 本件保護基準改定に当たって物価動向を考慮することの合理性 生活扶助基準検討会は、国家行政組織法に基づく審議会等ではないものの、厚生労働省社会・援護局長の下に、行政運営上の参考に資するため、有識者の参集を求め意見聴取を行った会合であり、級地を含む生活扶助基準の見直しについて専門的な分析・検討を行うことを目的とし学識経験者を参集 労働省社会・援護局長の下に、行政運営上の参考に資するため、有識者の参集を求め意見聴取を行った会合であり、級地を含む生活扶助基準の見直しについて専門的な分析・検討を行うことを目的とし学識経験者を参集して、生活扶助基準の水準、体系、地域差の妥当性等について全国消費実態調査の 結果等を用いて専門的かつ客観的に評価、検証を実施したもので、専門委員会や基準部会と遜色がない検証機関といえるのであって、厚生労働大臣が、生活扶助基準の見直しに当たって、生活扶助基準検討会の検証結果である平成19年報告書を考慮することが妨げられるものではない。原告らは、生活扶助基準検討会が、法令上の根拠もなく設置した私的諮問機関にすぎず、そ の検証期間も極めて短期間であることから、その検証結果が専門機関の検証として位置づけられるものではないと主張するが、法令上の根拠をもつ組織による検証結果でなければ考慮できないとの理由はなく、単に検証期間の長短で検証が不十分であるなどということができないことも明らかである。また、生活扶助基準検討会の委員は生活扶助基準の引下げに慎重であるべきと 述べているにすぎず、むしろ、最終的には、生活扶助基準引下げの要否の判 断を、同検討会における検討結果を踏まえた厚生労働大臣の総合的な判断に委ねていたのであり、実質的にみても、平成19年報告書は、第1・十分位における生活扶助相当支出額と比較して、生活扶助基準額が高いなどとの検証結果を指摘しているのであるから、厚生労働大臣が、平成19年報告書を含む各種検討結果等を踏まえて、生活扶助基準の引下げを行ったことは、生 活扶助基準検討会の意見を無視したものではない。さらに、専門委員会による平成15年中間取りまとめ、生活扶助基準検討会による平成19年検証、基準部会による平成2 助基準の引下げを行ったことは、生 活扶助基準検討会の意見を無視したものではない。さらに、専門委員会による平成15年中間取りまとめ、生活扶助基準検討会による平成19年検証、基準部会による平成25年検証のいずれにおいても、生活扶助基準の妥当性については、第1・十分位を比較対象として検証することが相当である旨を各会の委員が判断しているのであり、平成19年報告書において、第1・十 分位の消費実態を比較対象としたことは適当である。 また、前記のとおり、平成20年度から平成24年度までは、消費等の経済動向を踏まえた改定は行われておらず、当時の物価変動は反映されていなかったのであるから、デフレ調整を行ったことは物価下落を二重に考慮したものではない。 なお、本件保護基準改定においては、消費、物価等の経済指標が一致して大きく減少傾向にあったにもかかわらず、平成25年検証においては、生活扶助基準の水準の検証、評価が行われなかったことから、厚生労働大臣は、平成25年改定において、デフレ調整による生活扶助基準の水準の適正化を図ることにしたのに対し、平成30年改定においては、消費、物価等の経済 動向が一致した動向を示していなかったこと(平成26年から平成28年までの間においては、消費は減少傾向又はほぼ横ばいであったが、物価及び賃金は僅かに上昇傾向にあり、平成29年検証における基準部会では、社会経済情勢の反映について判断は見送られた。)、平成29年検証においては、本件保護基準改定後の生活扶助基準の水準が妥当なものであるか否かについ ても評価、検証が行われ、その結果、本件保護基準改定後の水準は第1・十 分位の消費実態と均衡する妥当なものと評価されたことを踏まえ、物価等の経年的な動向を生活扶助基準の水準に つい ても評価、検証が行われ、その結果、本件保護基準改定後の水準は第1・十 分位の消費実態と均衡する妥当なものと評価されたことを踏まえ、物価等の経年的な動向を生活扶助基準の水準に反映させることはしなかったものである。したがって、平成30年改定で、物価動向を根拠とした生活扶助基準の見直しを行われなかったことが、デフレ調整において、恣意的に物価動向を考慮したことを基礎づけるものではない。 ⑶ 総務省による家計調査の結果を用いたこと等の合理性(生活扶助相当CPIと生活保護受給世帯の消費実態の乖離について)ア平成25年改定当時、生活扶助による支出が想定される品目の価格指数及びウエイトを網羅した信頼性の高い客観的なデータとしては、総務省CPI以外にはなかったが、総務省CPIの指数品目には、生活扶助による 支出がおよそ想定されない品目が多数含まれており、生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加の程度を正確に把握するためには、このような品目を含めて算出することは相当ではないことから、デフレ調整に当たっては、総務省CPIの指数品目から非生活扶助相当品目を除外した生活扶助相当品目の価格指数及びウエイトのデータを用いて物価を算出 することとされたものであり、厚生労働大臣が、生活扶助相当CPIにより物価下落率を算出してデフレ調整を行ったことは合理的なものである。 イ原告らは、物価動向を勘案するに当たっては、生活保護受給世帯の消費実態を明らかにするために、総務省CPIで用いられている家計調査による一般世帯のウエイトデータではなく、社会保障生計調査の結果等を用 いるべきであったと主張する。 しかしながら、複数の統計資料のうちどの資料を用いて改定を行うかの判断も、高度の専門技術的考察に基 般世帯のウエイトデータではなく、社会保障生計調査の結果等を用 いるべきであったと主張する。 しかしながら、複数の統計資料のうちどの資料を用いて改定を行うかの判断も、高度の専門技術的考察に基づく政策的判断で、厚生労働大臣の広範な裁量に委ねられているものであり、当該資料と比べて他の資料を用いることが合理的、合目的的であるか否かが直接審査されるべきでは なく、他の統計資料があることを踏まえつつも、当該資料を用いた判断 の過程自体に過誤、欠落があると認められるかが審査されるべきである。 そして、家計調査は、調査対象世帯の選定は居住地域等による偏りを避けるように選定された約9000世帯を対象にしており、統計資料としての精度が高い上に、詳細な品目ごとの支出額等の把握を目的とした調査であるから、ウエイトを把握するのに最も適したデータである。一方 で、社会保障生計調査は、調査対象世帯の選定において地域等による偏りが生じる可能性があることや、サンプル数が合計約1100世帯と必ずしも多くないことなど生活保護受給世帯の家計支出の状況を推測する精度に一定の限界がある上に、調査の手法としても、個別品目の消費支出の割合等を正確かつ詳細に記載させるための措置が講じられていない ため、大まかなウエイトは把握できても、詳細な品目ごとのウエイトを把握することはできないこと、生活扶助基準の水準は、水準均衡方式等によって一般国民の消費実態との均衡を図る観点から改定が行われてきており、一般国民の消費実態を表す家計調査のウエイトデータを用いることは従来の改定手法とも適合するものであったことからすれば、統計 資料としての精度や適格性、従来の改定手法との整合性等を総合的に勘案し、総務省CPIのウエイトデータを用いることとした厚生労働 ことは従来の改定手法とも適合するものであったことからすれば、統計 資料としての精度や適格性、従来の改定手法との整合性等を総合的に勘案し、総務省CPIのウエイトデータを用いることとした厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえない。 なお、平成29年検証において、基準部会が社会保障生計調査を用いたのは、本件保護基準改定が生活保護受給世帯に与えた影響を把握し、事 後に検証するための資料の一つとして適当と判断されたことから用いられたにすぎず、目的等に応じて統計資料を使い分けているにすぎないものである。 ウまた、原告らは、総務省CPIの指数品目から非生活扶助相当品目を除外して生活扶助相当CPIを算出したことにより、生活扶助相当品目の ウエイトが高くなることによって、生活保護受給世帯がほとんど購入する ことができない電化製品のウエイトが大きくなり、物価下落率が過大に評価されたと主張する。 しかしながら、総務省CPIや生活扶助相当CPI等の指数は、どのような目的で使用するかによって作成方法が異なるものであり、実際に、総務省においても、総務省CPIの指数品目から一部の品目を除外して 算出された物価指数(コアコアCPI等)を作成しているのであるから、生活扶助相当CPIの算出過程で、指数品目の一部を除外することが不合理なものではない。 また、ウエイトを構成する指数品目のうち特定の品目を除外した場合には、残りの品目のウエイトが相対的に増加するものの、残りの品目全て のウエイトがその比率に応じて等しく増加するのであり、物価が下落した品目のみならず、物価が上昇した品目も等しくウエイトが相対的に増加するのであるから、これにより物価下落のみが大きく評価されるものではない。仮に非生活扶助相 じて等しく増加するのであり、物価が下落した品目のみならず、物価が上昇した品目も等しくウエイトが相対的に増加するのであるから、これにより物価下落のみが大きく評価されるものではない。仮に非生活扶助相当品目を除外することによって、生活扶助相当CPIの下落が他の物価指数よりも相対的に大きくなっていたとし ても、これは、生活保護受給世帯には、それ以外の世帯と異なり、支出することをおよそ想定しない品目が存在することに起因するものであり、生活保護受給世帯において支出することが想定される品目の物価下落が、指数品目全体の物価下落よりも相対的に大きかったことを意味するにすぎず、生活扶助相当CPIの算出方法の合理性を左右するものではない。 なお、平成22年の生活保護受給世帯の電化製品の普及率は、一般世帯と比較しても相当程度に達していたのであり、テレビ、パソコンを含む電化製品は生活扶助により購入することが想定される品目であるから、これらを生活扶助相当品目から除外することも、かえって恣意的な算出方法となり妥当ではない。 ⑷ 物価動向の比較期間の合理性 アデフレ調整において、物価動向の比較期間の始期を平成20年としたのは、平成16年報告書では、勤労3人世帯の生活扶助基準の水準は基本的に妥当と評価されていたのに対し、平成19年報告書では、生活扶助基準が高いとの評価を受けていたことから、本来であれば、この時点で生活扶助基準の見直しの検討を行わなければならなかったにもかかわら ず、当時の社会経済情勢を考慮して、平成20年度以降、生活扶助基準額が据え置かれてきたという経緯によるものであり、本来、生活扶助基準の見直しが行われるべきであった平成20年を始期としたことは不合理なものではない。 原告らは、直近で保護基準 度以降、生活扶助基準額が据え置かれてきたという経緯によるものであり、本来、生活扶助基準の見直しが行われるべきであった平成20年を始期としたことは不合理なものではない。 原告らは、直近で保護基準の引下げがなされた平成16年を始期とすべ きであったと主張するが、平成16年報告書において、生活扶助基準額は基本的に妥当とされたところ、平成16年から平成19年の総務省CPIがほぼ横ばいの状態であったところから、平成19年度までの据置きは理由があるのに対し、平成20年度以降は、平成19年報告書において基準が高いと評価されながら、据え置くこととされものであり、平 成19年度までとは事情が異なるのであって、平成16年を始期とすることは、平成19年検証よりも前の妥当とされた期間の考慮要素まで勘案することになるのであり、妥当ではない。 また、物価動向の比較期間の終期を平成23年としたのは、平成25年改定当時の最新の総務省CPIのデータが、平成24年1月27日に公 表された平成23年のものであったことによるものであり(なお、平成24年のデータの公表は平成25年1月25日であり、平成25年度の予算編成時に、同データを用いることはできなかった。)、終期を平成23年としたことは不合理なものではない。 イ原告らは、平成19年から平成20年にかけてのインフレを考慮しなか ったことが不合理である旨主張するが、仮に、デフレ調整の始期を平成 19年とした場合であっても、実際のデフレ調整率とはわずか0.18%しか異ならず、平成19年から平成20年のインフレがデフレ調整率の算出に重大な影響を及ぼすものではないことは明らかである(なお、平成19年報告書では、生活扶助基準が、第1・十分位の生活扶助相当支出額よりも1.1%高いと評 から平成20年のインフレがデフレ調整率の算出に重大な影響を及ぼすものではないことは明らかである(なお、平成19年報告書では、生活扶助基準が、第1・十分位の生活扶助相当支出額よりも1.1%高いと評価されている。)。 ⑸ 生活扶助相当CPIの算出方法の統計学的合理性等ア平成22年を基準時及びウエイト参照時点としたこと等の合理性 物価指数の算出において、どのような指数を用いるかは、その算出目的に従って政策的な判断として選択されるべきものである。デフレ調整に当たっては、平成22年基準のウエイトを用いて、平成20年及び平 成23年の生活扶助相当CPIを算出し、この二時点の指数を比較する方法によった。これは、消費者物価指数は、基準時から離れれば離れるほど、消費構造の変化による物価指数への影響(ラスパイレス指数では上方バイアス、パーシェ指数では下方バイアス)が大きくなるが、平成20年から平成23年という非常に短い期間であれば、その間の消費構 造の変化による影響が比較的小さいと考えられることに照らし、消費構造の変化による物価指数への影響を最小限に抑えるべく、ウエイトを固定するのが最も合理的であったこと、最新の国民の消費構造を反映するという観点からすれば、本件保護基準改定の直近のウエイトである平成22年基準のウエイトを用いることが適当であったことによるものであ る。したがって、平成22年を基準時及びウエイト参照時点として生活扶助相当CPIを算出したことは、その算出目的に照らして、不合理なものではない。 生活扶助相当CPIの算出方法は、ILOマニュアルの国際基準にも沿うものである。すなわち、デフレ調整に当たっては、①平成20年 の価格指数に平成22年基準のウエイトを乗じて加重平均することに 生活扶助相当CPIの算出方法は、ILOマニュアルの国際基準にも沿うものである。すなわち、デフレ調整に当たっては、①平成20年 の価格指数に平成22年基準のウエイトを乗じて加重平均することによ って平成20年の生活扶助相当CPI(104.5)を算出し、②平成23年の価格指数に平成22年基準のウエイトを乗じて加重平均することによって平成23年の生活扶助相当CPI(99.5)を算出し、③平成20年から平成23年までの物価変動率(99.5÷104.5(≒0.952)-1≒-4.78%)を算出したが、これは平成20 年を基準時として平成23年の生活扶助相当CPI(95.2)を算出し、その変動率(95.2÷100-1≒-4.78%)を計算したことを意味するものである。 そして、ILOマニュアルにおいて、非常に普及した一般的な物価指数の種類の1つである等と評価されているロウ指数は、比較される時点 間において、一般に「買い物かご」と言われるある一定量の数量を購入するために要する全費用の割合の変化を示す指数であり、ロウ指数においては、買い物かごは、比較される二時点のいずれかで購入される数量に限られる必要はなく、いつの時点でもよいなどとされており(基準時と比較時の間にウエイトを置いたロウ指数を中間ロウ指数という。)、 ロウ指数の算式は次のような定義式で表される(pは価格、qは数量、iは品目、Iは品目の集合であり、pi0は基準時での品目iの価格、pitは比較時での品目iの価格、qibはウエイト参照時点での品目iの数量を示し、分母は基準時での一定の買い物かご(I)を購入するための全費用、分子は比較時での一定の買い物かご(I)を購入するための全費用 を指す。)。 P=∑pitqibi 示し、分母は基準時での一定の買い物かご(I)を購入するための全費用、分子は比較時での一定の買い物かご(I)を購入するための全費用 を指す。)。 P=∑pitqibi∈I∑pi0qibi∈I 平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIの算式は次のとおりである。 (平成20年の生活扶助相当CPI) ∑pi20qi i∈I∑pi22qi i∈I (平成23年の生活扶助相当CPI) ∑pi23qi i∈I∑pi22qi i∈I また、平成20年を基準時とする平成23年の生活扶助相当CPIの算式は次のとおりである。 ∑pi23qi i∈I∑pi20qi i∈I このように生活扶助相当CPIは、いずれも一定の買い物かごを購入するのに必要な全費用の変化を表したものであり、ロウ指数(中間ロウ指数)そのものということができる。 原告らは、平成22年基準のウエイトを用いて平成20年及び平成2 3年の生活扶助相当CPIを算出することは、二時点の価格を比較するに際して、二時点のいずれでもない時点のウエイトを用いる点、ラスパイレス指数とパーシェ指数を混合して用いる点で統計学的にあり得ないものである旨主張する。 しかしながら、前記のとおり、生活扶助相当CPIの算出方法は、 国際基準にも沿うものである。総務省で採用されているラスパイレス指数においても、5年ごとにウエイトを改定して物価指数を算出しているのであり、必ずしも比較する両年度のいずれかのウエイトで固定して物価指数を算出 も沿うものである。総務省で採用されているラスパイレス指数においても、5年ごとにウエイトを改定して物価指数を算出しているのであり、必ずしも比較する両年度のいずれかのウエイトで固定して物価指数を算出しているものではない(例えば、平成23年と平成26年の物価指数を比較する場合には平成22年基準のウエイトを用いること となる。)。また、平成22年基準のウエイトを用いた結果として、平成20年の生活扶助相当CPIはパーシェ指数、平成23年の生活扶助相当CPIはラスパイレス指数で算出した結果と同じ結果になるにすぎ ず、平成20年から平成22年までと、平成22年から平成23年までとで異なる計算原理を混合して用いたものではない。ILOマニュアルのロウ指数についても、二つの指数に分解して表現することができるのであり(ILOマニュアルにおいて「ロウ指数は変遷的」と記載されているのは、そのことを示している。)、その場合には、基準時及び比較 時を置く時点によっては、二つの指数はラスパイレス指数、パーシェ指数の定義に合致することになる(基準時をウエイト参照時点に設定すればラスパイレス指数、比較時をウエイト参照時点に設定すればパーシェ指数となる。)が、これは基準時等を置き換えたにすぎず、買い物かごは同じであり、分解された二つの指数がロウ指数であることには変わり ない。したがって、平成20年の生活扶助相当CPIをパーシェ指数により、平成23年の生活扶助相当CPIをラスパイレス指数により算出した結果となることをもって、生活扶助相当CPIが、一定の買い物かごを購入するために必要な全費用の割合の変化を表したロウ指数であることを否定するものとはならない。 また、原告らは、生活扶助相当CPIを算出するに当たっては、総務省で採用されてい 買い物かごを購入するために必要な全費用の割合の変化を表したロウ指数であることを否定するものとはならない。 また、原告らは、生活扶助相当CPIを算出するに当たっては、総務省で採用されているラスパイレス指数を用い、平成17年基準のウエイトを用いて平成20年の生活扶助相当CPIを算出した上で指数の接続を行うべきであったなどと主張する。 しかしながら、物価指数の算出方法にはそれぞれ特徴があり、ラスパ イレス指数には上方バイアスがあるとの指摘がなされているところであって、ラスパイレス指数が通常の方式で、それ以外の方法で物価指数を算出することが誤りであるというものではない。また、平成17年基準のウエイトを用いることとなれば、平成20年から3年も過去の時点のウエイトを基礎として生活扶助相当CPIを算出することとなり、消費 構造の変化による影響を最小限に抑えることができず、平成20年から 平成23年までの物価変動を可能な限り正確に抽出するという目的に反し、不合理であることは明らかである。 原告らは、国際基準によれば、基準時(価格参照時点)は比較時よりも過去の時点であり、基準時(価格参照時点)の指数を100としなければならないとされているところ、平成22年の指数を100として、 平成20年の指数を算出していることは、比較時を基準時よりも過去におくものであり、国際基準に反するものであると主張する。しかしながら、基準時(価格参照時点)は、相対的な価格変化をみる基準となる時点であるから、比較時よりも新しい時点を基準時(価格参照時点)とすることも可能であり、ILOマニュアルにおいても、基準時(価格参照 時点)を比較時よりも過去の時点としなければならないことを示す記載はなく、むしろ、「t( しい時点を基準時(価格参照時点)とすることも可能であり、ILOマニュアルにおいても、基準時(価格参照 時点)を比較時よりも過去の時点としなければならないことを示す記載はなく、むしろ、「t(比較時)から0(基準時)へと過去に遡って計算されようとも」と新しい時点t(比較時)を価格参照時点として選択できることが当然の前提となった記載がある。また、指数参照時点とはその時点の指数の値が100とされる時点にすぎず任意に設定できるの であるから、基準時(価格参照時点)の指数値が100でなければならないともいえず、生活扶助相当CPIの算出手法が国際基準に反するものとはいえない。 イ指数品目が異なる指数を比較することの合理性 総務省CPIの平成22年基準において新たに追加された32品目に ついては、平成20年の価格指数のデータが存在しないため、デフレ調整に当たっては、平成20年の生活扶助相当CPIは485品目、平成23年の生活扶助相当CPIは517品目の価格指数のデータを用いて算出した。 物価指数の算出において、欠価格が生じた場合の処理としては、欠価 格品目を計算上除外して物価指数を作成することも可能であり、この場 合には、欠価格品目の価格動向については他の全ての品目の価格動向と同じと仮定したこととなるのであり、買い物かごの内容を変えることを意味するものではない。そして、デフレ調整においては、新たに追加された32品目については、他の485品目の価格動向と同じであった(-4.78%)と仮定して算出の根拠となっているのであり、平成2 0年を基準とする平成23年生活扶助相当CPIは、固定された同じ買い物かご(517品目)を購入するために必要な全費用の変化を表したロウ指数であるといえる。 そ 拠となっているのであり、平成2 0年を基準とする平成23年生活扶助相当CPIは、固定された同じ買い物かご(517品目)を購入するために必要な全費用の変化を表したロウ指数であるといえる。 そして、このような処理は、総務省CPIにおける処理方法(欠価格品目の価格動向について類似品目の価格動向と同一と仮定する方法)と は異なるものであるが、①生活扶助相当CPIでは、総務省CPIの品目の一部だけを対象に算出しているため、上位分類が同一でも生活扶助相当品目と非生活扶助相当品目が混在することとなり、類似品目の特定が困難であり、総務省CPIにおける処理方法では処理できないこと、②欠価格は、その性質から正解となる価格の動向は観察不能であり、ど のような処理をするにしても真の価格動向との差は避けられないこと、③欠価格品目は32品目のみであり、その支出ウエイトは約3%にすぎず、その影響は限定的と予想されることなどからすれば、このような処理は不合理なものではない。 原告らは、固定バスケット方式と合致させるためには、指数の接続を 行うべきであったと主張するが、前記のとおり、デフレ調整に用いた物価指数は固定バスケット方式によるものであり、原告らの上記主張は前提を欠く上、接続は長期的な物価動向を継続的に見るために、基準改定前後の数値を数学的、形式的につなぐものにすぎないから、接続によって適切な物価指数の算出が可能になるものではなく、原告らの上記主 張は接続の意義、目的を誤解するものである。 ⑹ 平成29年検証について平成29年検証における基準部会の議論の過程では、平成20年から平成23年の消費の動向が本件保護基準改定におけるデフレ調整率(-4.78%)と大差ないことが示されていること、同検証で 検証について平成29年検証における基準部会の議論の過程では、平成20年から平成23年の消費の動向が本件保護基準改定におけるデフレ調整率(-4.78%)と大差ないことが示されていること、同検証では、本件保護基準改定後の平成27年の生活扶助基準の水準が、第1・十分位の消費実態と均衡す る妥当なものと評価されたことは、デフレ調整が不合理なものではなかったことについて事後的に裏付けるものである。 4 ゆがみ調整に加えてデフレ調整を行うことの合理性生活扶助基準は、①水準(高さ)を設定した上、②展開するという方法で設定されるものであり、水準と展開がいずれも適正でなければ、適正な生活扶助 基準は設定することはできない。 そして、デフレ調整は、生活扶助基準の水準を調整するものである一方、ゆがみ調整は、標準世帯における生活扶助基準を展開するに当たって、年齢別、世帯人員別、級地別という観点から、第1・十分位の消費実態の各指数の分布と生活扶助基準額による各指数の分布の均衡を図ることによって、世帯構成等 が異なる様々な生活保護受給世帯相互間における均衡を図ることを目的とするものであり、生活扶助基準額の絶対的な適正化を図るものではなく、相対的な適正化を図るものにすぎない。したがって、ゆがみ調整とデフレ調整が重複することはないから、ゆがみ調整に加えてデフレ調整を行ったとしても不合理ではない。 5 政権与党の公約等の不可考慮事項を考慮したこと本件保護基準改定は、平成25年検証の結果に基づき、第1・十分位の消費実態と、生活扶助基準の年齢別、世帯人員別、級地別の格差を是正するとともに、近年デフレ傾向が続いてきた中で生活扶助基準が据え置かれてきたことを踏まえ、消費者物価指数の近年の動向を勘案して適切な生活扶助基準額を 活扶助基準の年齢別、世帯人員別、級地別の格差を是正するとともに、近年デフレ傾向が続いてきた中で生活扶助基準が据え置かれてきたことを踏まえ、消費者物価指数の近年の動向を勘案して適切な生活扶助基準額を再考 する必要性が生じたことから、必要な適正化をしたものである。当時の厚生労 働大臣も、生活扶助基準の見直しについては、生活扶助基準検討会や基準部会による報告等を踏まえて、その内容を検討する必要性があることを強調して、生活保護費の10%引下げという自民党の政権公約に盲従するものではないことを明らかにしており、その結果行われた生活扶助基準の見直しの程度も3年間で生活保護費全体の2.3%を削減するにとどまっているのであるから、本 件保護基準改定が、政治的な意図等を考慮して行われたものではないことは明らかである。 6 まとめ以上によれば、ゆがみ調整及びデフレ調整については、厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落はなく、同大臣の判断に裁量権の逸脱又は濫用は ない。 第4 当裁判所の判断 1 本件保護基準改定に関する経過等について前記前提事実に加え、後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができる。 ⑴ 生活扶助基準改定方式としての水準均衡方式の採用に至る経過等ア生活扶助基準改定方式として、昭和23年から昭和35年までは、マーケットバスケット方式(最低生活を営むために必要な飲食物費や衣類、家具什器、入浴料といった個々の品目を一つ一つ積み上げて最低生活費を算出する方式)が、昭和36年から昭和39年までは、エンゲル方式 (栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて計算し、別に低所得世帯の実態調査から、この飲食物費を支出 する方式)が、昭和36年から昭和39年までは、エンゲル方式 (栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて計算し、別に低所得世帯の実態調査から、この飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め、これから逆算して総生活費を算出する方式)が採用されていた。 その後、中央社会福祉審議会の下に設置された生活保護専門分科会によ る昭和39年中間報告において、当面の生活保護水準改善の方途として、 第1・十分位階級における消費水準の最近の上昇率に加えて、第1・十分位階級と生活保護階層との格差縮小を見込んだ改善を行うべきであるなどとされたことを受け、昭和40年度以降、生活扶助基準改定方式として、低所得世帯との消費支出水準格差を縮小することを目的とした格差縮小方式が採用された。(前提事実⑴ア、乙7の2、9、33) イ生活保護専門分科会において、当時の生活扶助基準の評価や生活扶助基準改定方式の在り方等について検討が行われ、同分科会は昭和55年中間的取りまとめを公表し、また、同分科会による検討を踏まえ、中央社会福祉審議会は昭和58年意見具申を公表した(前提事実⑴ア、乙8、9)。 ウ昭和55年中間的とりまとめにおいては、当時の生活保護受給世帯の消 費支出水準について、今後更に改善を要するものではあるが、昭和40年度以降、格差縮小方式により生活扶助基準が改定されてきた結果、昭和40年当時の水準に比して相当の改善が図られた点は評価されるべきであるなどとされた(乙9)。 エ昭和58年意見具申においては、①生活扶助基準の評価について、現在 の生活扶助基準は、一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとの所見を得たとされた(なお、生活扶助基準の検証に当たっては、変曲点 においては、①生活扶助基準の評価について、現在 の生活扶助基準は、一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとの所見を得たとされた(なお、生活扶助基準の検証に当たっては、変曲点における収入分位が2.99・五十分位とされ、そこでの生活扶助相当支出額と生活扶助基準額との比較がなされた。)上で、国民の生活水準は今後も向上すると見込まれるため、生活保護受給世帯及び低所得世帯 の生活実態を常時把握しておくことはもちろんのこと、生活扶助基準の妥当性についての検証を定期的に行う必要があるなどとされた。 また、②生活扶助基準改定方式について、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民生活における消費水準との比較における相対的なものとして設定すべきものであるとされた上で、生活扶助基準の 改定に当たっては、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえ ると同時に、前年度までの一般国民の消費水準との調整が図られるよう適切な措置をとることが必要であり、当該年度に予想される国民の消費動向に対応する見地から、政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠することが妥当であるとされ、賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは参考資料にとどめるべきである とされた。(乙8、32、弁論の全趣旨)オ昭和58年意見具申を踏まえ、昭和59年以降、生活扶助基準改定方式として、水準均衡方式が採用された(前提事実⑴ア、乙7の2〔10頁〕、10)。 ⑵ 専門委員会における生活扶助基準の検証に至る経過等 ア平成12年5月の社会福祉事業法等一部改正法案に対する衆議院及び参議院の附帯決議により、生活保護制度の在り方について十分検討を行うこととされたこと等を踏まえ、厚生労働 至る経過等 ア平成12年5月の社会福祉事業法等一部改正法案に対する衆議院及び参議院の附帯決議により、生活保護制度の在り方について十分検討を行うこととされたこと等を踏まえ、厚生労働省設置法6条及び7条に基づき設置される厚生労働省の審議会である社会保障審議会は、社会保障審議会運営規則8条に基づき、平成15年に、同審議会福祉部会の下に、保 護基準の在り方を始めとする生活保護制度全般について検討することを目的して、専門委員会を設置した。専門委員会は、生活扶助基準の検証(平成16年検証)等を行い、平成15年中間取りまとめ及び平成16年報告書を公表した。(前提事実⑴ア、乙4、12の1・2、13、弁論の全趣旨) イ平成15年中間取りまとめにおいては、生活扶助基準の評価について、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なものであり、具体的には、第1・十分位の消費水準に着目することが適当であるとされた上で、第1・十分位の勤労者3人世帯の消費水準について詳細に分析して3人世 帯(勤労)の生活扶助基準額と比較した結果が示された。 また、生活扶助基準改定方式の在り方について、①毎年度の政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びを基礎とする水準均衡方式は概ね妥当であると認められてきたが、最近の経済情勢はこの方式を採用した当時と異なることから、例えば5年間に一度の頻度で、生活扶助基準の水準について定期的に検証を行うことが必要である、②定期的な検証を行うま での毎年の改定については、近年、民間最終消費支出の見通しがプラス、実績がマイナスになるなど安定しておらず、実績の確定も遅いため、これによる生活保護受給世帯への影響が懸念されることから、改 ま での毎年の改定については、近年、民間最終消費支出の見通しがプラス、実績がマイナスになるなど安定しておらず、実績の確定も遅いため、これによる生活保護受給世帯への影響が懸念されることから、改定の指標の在り方についても検討が必要であり、この場合、国民にとってわかりやすいものとすることが必要なので、例えば、年金の改定と同じように 消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられるなどとされた。 なお、上記②の記載は、原案では「(略)懸念されることから、例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びを用いるなど、国民にとってわかりやすいものとすることが適当である。」とされていたのに対 し、専門委員会での議論において、委員から、民間最終消費支出によらず物価動向を勘案することは、国民の生活の質の向上に見合ったものを担保しないこととなり、従来行われてきた相対性の追及から相当に外れることとなることから、相当慎重にやってもらいたい、消費者物価指数の伸びを用いることが適当であるという表記は、これまでの思想を非常 に大きく変えるものであるなどとの意見が出され、最終的に上記のとおり記載が改められた。(甲71〔14~17頁〕、88、乙13)ウ平成16年報告書においては、生活扶助基準の評価・検証等について、概要、以下のとおり、報告された(乙4)。 平成15年中間取りまとめで報告したとおり、水準均衡方式を前提 とする手法により、勤労3人世帯の生活扶助基準について、低所得世帯 の消費支出額との比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であった。 今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基 の比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であった。 今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要があり、これらの検証に際しては、 地域別、世帯類型別等に分けるとともに、調査方法及び評価手法についても専門家の知見を踏まえることが妥当である。 現行の生活扶助基準は、3人世帯を基軸としており、世帯人員数分を単純に足し上げて算定される第1類費と、スケールメリットを考慮し、世帯人員数に応じて設定されている第2類費とを合算する仕組みとされ ているため、世帯人員別に見ると必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっておらず、特に①多人数世帯基準の是正、②単身世帯基準の設定、③第1類費の年齢別設定の見直しについて改善が図られるよう、設定及び算定方法について見直しを検討する必要がある。 現在の一般世帯の生活扶助相当支出額をみると、地域差が縮小する 傾向が認められたため、市町村合併の動向に配慮しつつ、さらに今後詳細なデータによる検証を行った上、級地制度全般について見直しを検討することが必要である。 前記の定期的な評価を次回行う際には、今回行われた基準の見直しに係る事項についても評価の対象とし、専門家による委員会等におい て詳細な分析や検証を行い、生活保護受給世帯の生活への影響等も十分調査の上、必要な見直しを検討することが求められる。 ⑶ 生活扶助基準検討会における検証に至る経過等ア平成16年報告書において、生活扶助基準の定期的な検証の必要性が指摘されていたこと等を受けて、平成19年に、厚生労働省社会・援護局 長の下に、級地を含む生活扶助基準の見直しにつ 等ア平成16年報告書において、生活扶助基準の定期的な検証の必要性が指摘されていたこと等を受けて、平成19年に、厚生労働省社会・援護局 長の下に、級地を含む生活扶助基準の見直しについて専門的な分析・検 討を行うことを目的として、学識経験者等による生活扶助基準検討会が設置された。同検討会は、同年10月19日から同年11月30日までの間、計5回の検討会を実施し、平成16年全国消費実態調査の結果等に基づき、生活扶助基準の検証(平成19年検証)等を行い、同日、平成19年報告書を公表した。(前提事実⑴ア、乙5〔1~3頁〕、14 の1)イ平成19年検証においては、①生活扶助基準の水準が、保護を受給していない低所得世帯における消費実態との均衡を適切に図ったものかどうか(水準の妥当性)、②第1類費と第2類費の合算によって算出される生活扶助基準額が消費実態を反映しているかどうか(体系の妥当性)、 ③現行の級地制度においては、最も高い級地と最も低い級地の基準額の較差が地域間における生活水準の差を反映しているかどうか(地域差の妥当性)等に関する評価・検証が行われた(乙5〔2頁〕)。 ウ平成19年報告書においては、検証結果として、概要、以下のとおり、報告された(乙5)。 生活扶助基準の水準についてa 生活扶助基準の水準は、健康で文化的な最低限度の生活を維持することができるものでなければならないが、その具体的内容は、その時代の経済的・文化的な発達の程度のほか、国民の公平感や社会通念などに照らして総合的に決まるものである。実際の生活扶助基準の設定 に当たっては、水準均衡方式が採用されていることから、その水準は、国民の消費実態との関係、あるいは本人の過去の消費水準との関係で相対的 して総合的に決まるものである。実際の生活扶助基準の設定 に当たっては、水準均衡方式が採用されていることから、その水準は、国民の消費実態との関係、あるいは本人の過去の消費水準との関係で相対的に決まるものと認識されており、生活扶助基準の水準に関する評価・検証を行うに当たっては、これらの点を総合的にみて妥当な水準となっているかという観点から行うことが必要である。 人々が必要とする消費水準は、過去の消費水準の影響を受けており、 そうした意味で、時系列でみた相対的な性格もある。 b 夫婦子1人の勤労3人世帯の第1・十分位の消費水準及び生活扶助基準額を比較し、均衡が図られているかどうかの検討が行われた結果、第1・十分位における生活扶助相当支出額は世帯当たり14万8781円であったのに対し、それらの世帯の平均の生活扶助基準額は世帯 当たり15万0408円であり、生活扶助基準額がやや高めとなっていた。 また、単身世帯(60歳以上)についても同様の比較・検討が行われた結果、第1・十分位における生活扶助相当支出額は世帯当たり6万2831円であったのに対し、それらの世帯の平均の生活扶助基準 額は世帯当たり7万1209円であり、生活扶助基準額が高めとなっていた。 c 生活扶助基準額は、これまで第1・十分位の消費水準と比較することが適当されていたが、第1・十分位の消費水準は、平均的な世帯の消費水準に照らして相当程度に達していること、第1・十分位に属す る世帯における必需的な耐久消費財の普及状況は、平均的な世帯と比べて大きな差はなく、また、必需的な消費品目の購入頻度は、平均的な世帯と比較しても概ね遜色ない状況にあることから、これを変更する理由は特段ないと考える。ただし、これまで比較の対象としてきた夫婦子1人 て大きな差はなく、また、必需的な消費品目の購入頻度は、平均的な世帯と比較しても概ね遜色ない状況にあることから、これを変更する理由は特段ないと考える。ただし、これまで比較の対象としてきた夫婦子1人世帯の第1・十分位の消費水準は、第3・五分位の7割に 達しているが、単身世帯(60歳以上)については、その割合が5割(第1・五分位でみると約6割)にとどまっている点に留意する必要がある。 なお、これまでの給付水準との比較も考慮する必要がある。 生活扶助基準の体系について a 生活扶助基準の体系に関する評価・検証に当たっては、世帯構成な どが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要である。 b 世帯人員別に設定された生活扶助基準額の評価・検証を行うため、第1・五分位における世帯人員別の生活扶助相当支出額と比較すると、 世帯人員が1人の世帯の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額を、それぞれ1とした場合の比率は、4人世帯及び5人世帯では生活扶助相当支出額に比べて生活扶助基準額が相対的にやや高めとなっており、世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であり、世帯人員が少ない世帯に不利になっている実態が見られる。 c 年齢階級別に設定された生活扶助基準額の評価・検証を行うため、単身世帯の第1~第3・五分位における年齢階級別の生活扶助相当支出額と比較すると、60歳台の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額を、それぞれ1とした場合の比率は、20から39歳及び40歳から59歳では生活扶助相当支出額と比べて生活扶助基準額が相対的に やや低めとなっている一方、70歳以上 基準額及び生活扶助相当支出額を、それぞれ1とした場合の比率は、20から39歳及び40歳から59歳では生活扶助相当支出額と比べて生活扶助基準額が相対的に やや低めとなっている一方、70歳以上では生活扶助相当支出額と比べて生活扶助基準額が相対的にやや高めであるなど消費実態からやや乖離している。 生活扶助基準の地域差について現行の級地制度における地域差を設定した当時の消費実態と、直近の 消費実態を比較すると、地域差が縮小している傾向が見られる。 エ平成19年報告書の取りまとめ後、平成19年12月11日、生活扶助基準検討会の委員5名全員による連名により、「『生活扶助基準に関する検討会報告書』が正しく読まれるために」という文書が発表された。 同文書においては、概要、以下のとおりとされた。(甲89) 夫婦子一人の三人世帯に関しては、第1・十分位の消費支出は第3・ 五分位の消費額の7割に達しているのに対し、単身世帯(60歳以上)では、この割合が5割程度にとどまっていることから、単身世帯の生活扶助基準額について検討する場合は、第1・十分位を比較基準とすることが適当であるかどうかは、その消費支出が従来よりも相対的に低くなってしまうことに留意する必要があることが、全委員の総意により確認 された。 経済学においては、最低生存費(必要消費額)は過去の消費に基づき習慣が形成されることにより、これまでの消費水準からも影響を受けることが示されてきたところであり、この考え方に従うと、同じ生活扶助基準額であっても、それが引き下げられることによってその水準にな った場合、最低生存費は高くなり、受給者の被る痛手は大きいと判断される。平成19年報告書においては、この点を踏まえ、全員の賛同を得 準額であっても、それが引き下げられることによってその水準にな った場合、最低生存費は高くなり、受給者の被る痛手は大きいと判断される。平成19年報告書においては、この点を踏まえ、全員の賛同を得て、「なお、これまでの給付水準との比較も考慮する必要がある」と加筆されたところである。このことは、第5回検討会でも述べられたように、「生活扶助基準額の引き下げについては、慎重であるべき」との考 えを意図し、全委員の総意により、確認されたところである。 ただし、こうした政策的判断は、全国消費実態調査等の客観的データに基づき、統計分析を実施することにより評価・検証を行うという生活扶助基準検討会の目的の範囲を超えており、今後、行政当局、あるいは政治の場において、総合的に判断されるべきものであると考える。 ⑷ 平成25年検証までの経済状況等ア水準均衡方式に基づき、生活扶助基準は、昭和59年度から平成12年度までは増額改定、平成13年及び平成14年度は据え置き、平成15年及び平成16年度は減額改定がなされた。 その後、生活扶助基準は、当該年度の政府経済見通しにおける民間最終 消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの一般国民の消費水準との調 整を行った結果、平成17年度から平成19年度まで据え置くこととされた。(乙10、59~61、弁論の全趣旨)イ平成19年報告書において、生活扶助基準は、一般低所得世帯の消費実態と比べて高いという結果が得られたが、①平成20年度予算編成当時は原油価格が高騰しており、その消費に与える影響等を見極めるため、平成 20年度は、平成19年報告書における検証結果を踏まえた生活扶助基準の見直しは見送られ、生活扶助基準は据え置くこととされ、②平成20年2月以降の生活関連物資を中心 る影響等を見極めるため、平成 20年度は、平成19年報告書における検証結果を踏まえた生活扶助基準の見直しは見送られ、生活扶助基準は据え置くこととされ、②平成20年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民の家計へ大きな影響を与えていたことや、同年9月以降の世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼしており、国民の将来不安が高まっている状況にあると考えられ たことから、平成21年度も生活扶助基準は据え置くとされ、③完全失業率が5%を超え高水準で推移するなど、現下の厳しい経済・雇用状況を踏まえ、国民生活の安心が確保されるべき状況にあることに鑑み、平成22年度も生活扶助基準は据え置くこととされた。さらに、平成23年度及び平成24年度も、経済、雇用情勢等を総合的に勘案した結果、生活扶助基 準の見直しは行われず、生活扶助基準は据え置くこととされた。(甲205~209、乙7の1、15、62~66)ウ平成17年から平成24年までの完全失業率並びに一般勤労世帯の賃金(事業者規模5人以上の調査産業計の1人平均月間現金給与総額)、総務省CPI(全国・総合)及び家計消費支出(2人以上の世帯のうち勤労者 世帯のものの名目値)の前年比の割合は以下のとおりである(乙11)。 (単位 %) 完全失業率一般勤労世帯の賃金総務省CPI家計消費支出平成17年4.40.6-0.3-0.6 平成18年4.10.30.3-2.8平成19年3.8-1.00.01.0平成20年4.0-0.31.40.5平成21年5.1-3.9-1.4-1.8平成22年5.0 .8平成19年3.8-1.00.01.0平成20年4.0-0.31.40.5平成21年5.1-3.9-1.4-1.8平成22年5.00.5-0.7-0.2平成23年4.6-0.2-0.3-3.0平成24年4.3-0.70.01.6エ高齢化や厳しい社会経済情勢も相まって、生活保護受給者は平成23年7月に過去最高の205万人となり、このような状況の下、生活保護制度の見直しの必要性が引き続き指摘され、また、平成16年報告書において生活扶助基準の定期的な検証の必要性が指摘されていたことを踏まえ、平成19年検証に引き続き、生活扶助基準の定期的な評価・検証を 行うことを目的として、平成23年2月、社会保障審議会運営規則2条に基づき、社会保障審議会の下に常設部会として、学識経験者らによる基準部会が設置された。 また、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法(平成24年法律第64号)の附則2条1号において、生活扶助、医療扶助等の給付水 準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこととされた。(前提事実⑴イ、乙6〔1~2頁〕、22、弁論の全趣旨)⑸ 平成25年検証の概要ア基準部会は、平成25年検証を行い、平成25年1月18日、平成25 年報告書を公表した。 平成25年検証では、①平成16年検証において、世帯人員別にみると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したスケールメリットとなっていないため、体系の設置及び算定方法について見直しを検討する必要 があるとの指摘があったこと、②平成19年報告書においても、世帯構成などが異なる生活 実態を反映したスケールメリットとなっていないため、体系の設置及び算定方法について見直しを検討する必要 があるとの指摘があったこと、②平成19年報告書においても、世帯構成などが異なる生活保護受給者間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から、必要な見直しを行っていくことが必要であるとの考え方が示され、具体的には、生活扶助基準の評価・検証を適切に行うためには、国民の消費実態を詳細に分析する必要 があり、そのためには、全国消費実態調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当とされたことを踏まえ、基準部会は、年齢階級別、世帯人員別、級地別に基準額と消費実態の乖離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行った。(前提事実⑴イ、乙6〔1~ 2頁〕)イ平成24年10月5日の第10回基準部会においては、平成25年検証における基本的な考え方として、体系・級地の検証は、水準の検証と一体的に行うとの考え方が示された(甲81の1〔2頁〕、81の2〔3頁〕、乙23〔4頁〕)。 ウ平成25年報告書の原案では「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮した上で、他に合理的説明が可能な経済指標などがあれば、それらについても根拠を明確にして改定されたい。」、「合理的説明がつく要素については、それを勘案することは一つの考え方である。」との記載があったのに対し、 平成25年1月16日の第12回基準部会において、委員から、消費者物価指数や賃金の動向については何も議論していないということは明確にしてもらいたい旨、物価指数は地域、世帯類型、所得階級によっても異なっ 25年1月16日の第12回基準部会において、委員から、消費者物価指数や賃金の動向については何も議論していないということは明確にしてもらいたい旨、物価指数は地域、世帯類型、所得階級によっても異なっている可能性があり、消費品目で物価指数は全く変わってくることも留意する必要がある旨、全国一律の物価指数を当てはめるというこ とになれば、非常に慎重に考えなくてはならない旨等の意見が出された。 そして、最終的には、上記記載は、「(略)他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。」との記載に改められ、「合理的説明がつく要素については、それを勘案することは一つの考え方である。」との記載は削除された。(甲83の1・3、乙6、25) ⑹ 平成25年報告書の概要(乙6)ア基準部会の役割等法の目的は最低限度の生活を保障することともに、「自立」を助長することとされているが、その生活扶助基準の水準はその時々の経済的・文化的な生活状況や国民の社会通念などの影響を受けるものである。 また、現在、生活扶助基準額の設定に当たっては、水準均衡方式が採用されていることから、その水準は国民の消費実態との関係で相対的に決まるものと認識されている。 今回、基準部会としては、年齢階級別、世帯人員別、級地別に基準額と消費実態の乖離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための 指数について検証を行った。 イ検証方針と検証概要 平成25年検証においては、生活保護において保障すべき健康で文化的な最低限度の生活の水準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なものとされてきたことから、生活扶助基準と対 する一般低所得世帯とし 生活保護において保障すべき健康で文化的な最低限度の生活の水準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なものとされてきたことから、生活扶助基準と対 する一般低所得世帯として、第1・十分位を設定した。 その上で、様々な世帯構成の基準額を算出する際に基本となる年齢、世帯人員及び地域別の基準額が第1・十分位の消費実態を十分反映しているかについてより詳細な検証を行うこととした。その際には、仮に第1・十分位の全ての世帯が生活保護を受給した場合の1世帯当たりの平 均受給額が不変となるようにして、年齢、世帯人員体系及び級地の基準 額の水準への影響を評価する方法を採用した。 ウ検証に使った統計データ 検証では国民の消費実態を世帯構成別に細かく分けて分析する必要があるため、平成21年全国消費実態調査の個票データを用いた。 平成25年検証は、様々な世帯構成に対する基準の展開の妥当性を 指数によって把握しようとするものである。この指数は第1・十分位の世帯の生活扶助相当支出を用いて算出した。第1・十分位の世帯を用いた理由は以下のとおりである。 a 生活扶助基準を国民の健康で文化的な最低限度の生活水準として考えた場合、指数を全分位の所得階層(全世帯)あるいは中位所得階層 (第3・五分位)等から算出することも可能だが、これまでの検証に倣い、生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが今回の検証では現実的であると判断したことb 第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること c 国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足 位所得階層の約6割に達していること c 国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されている状況にあることd 全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、高所得階層を除くそ の他の十分位の傾向をみても等しく減少しており、特に第1・十分位が減少しているわけではないことe 第1・十分位に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあることf 第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化してお り、他の十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なると考えられ ることエ検証手法 年齢階級別(第1類費)の基準額の水準a 検証の考え方年齢階級別の生活扶助基準額(第1類費)の比率(指数)が、一般 低所得世帯の消費支出のうち第1類費相当支出額の年齢階級別の比率(指数)と合っているかを検証する。 b 検証に用いるデータ第1・十分位のデータを設定するに当たっては、①「世帯の年間収入」を基に分位を設定したもの(データ①)と②世帯の年間収入を世 帯人員別で除した「世帯員1人当たりの年間収入」を基に分位を設定したもの(データ②)を用いる。データ①とデータ②は世帯規模によるスケールメリットに関してそれぞれ最大・最小のケースに対応しており、これらの間のどこかに平均的な傾向が見いだされると想定される。 c 検証の方法年齢階級ごとの1人当たり消費の推計値(第1類費相当支出)を算出して60代を1とした指数にし、各年齢階級の第1類費基準額の指数と比較する。 全国消費実態 る。 c 検証の方法年齢階級ごとの1人当たり消費の推計値(第1類費相当支出)を算出して60代を1とした指数にし、各年齢階級の第1類費基準額の指数と比較する。 全国消費実態調査には10代以下の単身世帯のデータがほとんどな く、平成19年検証の考え方(各年代の単身低所得世帯の平均消費をみる)では10代以下の者の消費を計測できない。そのため、様々な年代の世帯人員からなる世帯の消費のデータから年齢階級別の世帯員1人当たりの消費額を推計するため、回帰分析を用いる。 世帯の消費支出に影響を与える主な要素として、年齢階級別の世帯 人員数、居住地域、世帯の貯蓄等が考えられること、世帯の住宅資産 の状況は世帯の家賃地代支出に反映され、結果的に消費にも影響を及ぼすと考えられることを考慮し、生活扶助基準の設定に用いられている(年齢階級別の)世帯人員数、級地のほか、住宅資産、貯蓄の状況を表す変数を用いて世帯の消費を表す回帰モデルを推定する。 世帯人員別(第1類費・第2類費別)の基準額の水準 a 検証の考え方平成19年検証の基本的考え方に沿って、生活扶助基準額(第1類費、第2類費別)の世帯人員別の比率(指数)が、一般低所得世帯の生活扶助相当支出額(第1類費相当支出、第2類費相当支出別)の世帯人員別の比率(指数)と合っているかを検証する。 b 検証に用いるデータ世帯人員ごとの世帯(単身世帯、・・・、5人世帯)の年収第1・十分位のデータとする。 c 検証の方法世帯人員ごとの世帯の消費の平均値(第1類費相当支出、第2類費 相当支出別)を算出して単身世帯を1とした指数にし、各世帯人員の世帯の基準額の する。 c 検証の方法世帯人員ごとの世帯の消費の平均値(第1類費相当支出、第2類費 相当支出別)を算出して単身世帯を1とした指数にし、各世帯人員の世帯の基準額の指数と比較する。なお、第1類費相当支出のスケールメリットについては、前記で求められた年齢階級に応じた消費の指数を用いて世帯人員全員が実際の年齢にかかわらず平均並みの消費をする状態に補正することにより年齢の影響を除去し、世帯人員による 影響のみを評価できるようにした。 級地別の基準額の水準a 検証の考え方平成19年検証の基本的考え方に沿って、生活扶助基準額の級地別の比率(指数)が、一般低所得世帯の生活扶助相当支出の級地別の比 率(指数)と合っているかどうかを検証する。 b 検証に用いるデータ世帯人員体系の検証の過程で得られる、第1類費相当(年齢の影響を除去したもの)と第2類費相当合計の世帯人員に応じた指数によって世帯年収を除して得られる世帯員1人当たり実質年収に関する第1・十分位のデータを用いる。 c 検証の方法各級地に居住する世帯の第1類費相当支出と第2類費相当支出の合計の生活扶助相当支出の平均値を算出して全級地平均を1とした指数にし、各級地の基準額の指数と比較する。 オ検証結果と留意事項 年齢階級別(第1類費)の基準額の水準0~2歳の生活扶助相当支出額を1としたときの各年齢階級別の指数は、生活扶助基準額では0~2歳が0.69、3~5歳が0.86、6~11歳が1.12、12~19歳が1.37、20歳~40歳が1. 31、41~59歳が1.26、60~69歳が1.19、70歳以上 が1 助基準額では0~2歳が0.69、3~5歳が0.86、6~11歳が1.12、12~19歳が1.37、20歳~40歳が1. 31、41~59歳が1.26、60~69歳が1.19、70歳以上 が1.06となっている一方、生活扶助相当支出額では同じ順に1.00、1.03、1.06、1.10、1.12、1.23、1.28、1.08となっており、年齢階級別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、各年齢階級間の指数に乖離が認められた。 世帯人員別(第1類費及び第2類費)の基準額の水準第1類費の場合、単身世帯の生活扶助相当支出額を1としたときの各世帯人員別の指数は、生活扶助基準額では単身世帯が0.88、2人世帯が1.76、3人世帯が2.63、4人世帯が3.34、5人世帯が3.95となっている一方、生活扶助相当支出額では同じ順に1.00、 1.54、2.01、2.34、2.64となっており、第1類費にお ける世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、世帯人員が増えるについて乖離が拡大する傾向が認められた。 第2類費の場合、単身世帯の生活扶助相当支出額を1としたときの各世帯人員別の指数は、生活扶助基準額では単身世帯が1.06、2人世 帯が1.18、3人世帯が1.31、4人世帯が1.35、5人世帯が1.36となっている一方、生活扶助相当支出額では同じ順に1.00、1.34、1.67、1.75、1.93となっており、第2類費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、世帯人員が増えるにつれて乖離が拡大する傾向 が認められた。 級地別の基準額の水準1級地-1の生活扶助相当支出額を1とした 基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、世帯人員が増えるにつれて乖離が拡大する傾向 が認められた。 級地別の基準額の水準1級地-1の生活扶助相当支出額を1としたときの各級地別の指数は、生活扶助基準額では1級地-1が1.02、1級地-2が0.97、2級地-1が0.93、2級地-2が0.88、3級地-1が0.84、 3級地-2が0.79となっている一方、生活扶助相当支出額では同じ順に1.00、0.96、0.90、0.90、0.87、0.84となっており、級地別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、消費実態の地域差の方が小さくなっている。 年齢・世帯人員・地域の影響を考慮した場合の水準 前記ないしの検証結果を踏まえ、年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数を反映した場合の影響は、以下のようになった。 例えば、現行の基準額(第1類費、第2類費、冬季加算、子どもがいる場合は児童養育加算、1人親世帯は母子加算を含む)と検証結果を完全に反映した場合の平均値を個々の世帯構成ごとにみると、夫婦と18 歳未満の子1人世帯では、年齢による影響が現行の基準額に比べて△2. 9%、世帯人員による影響が△5.8%、地域による影響が0.1%、これらを合計した影響が計△8.5%となった。同様に、夫婦と18歳未満の子2人世帯では順に△3.6%、△11.2%、0.2%、計△14.2%となった。60歳以上の単身世帯では順に2.0%、2. 7%、△0.2%、計4.5%となった。ともに60歳以上の高齢夫婦 世帯では順に2.7%、△1.9%、0.7%、計1.6%となった。 20~50代の若年単身世帯では順に△3.9%、2.8%、△0. 4%、計△1.7%となった。 なった。ともに60歳以上の高齢夫婦 世帯では順に2.7%、△1.9%、0.7%、計1.6%となった。 20~50代の若年単身世帯では順に△3.9%、2.8%、△0. 4%、計△1.7%となった。母親と18歳未満の子1人の母子世帯では順に△4.3%、△1.2%、0.3%、計△5.2%となった。 このように世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組合せにより、 各世帯への影響は様々である。 厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、平成25年報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標等を総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。なお、その際には現在生活保護を受給している世帯及 び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重に配慮されたい。 検証結果に関する留意事項a 今回試みた検証手法は、平成19年検証の報告書において指摘があった年齢階級別、世帯人員別、級地別に、生活扶助基準の展開と一般 低所得世帯の消費実態の間にどの程度乖離が生じているかを詳細に分析したものである。これにより、個々の生活保護受給世帯を構成する世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の様々な組み合わせによる生活扶助基準の妥当性について、よりきめ細やかな検証が行われたことになる。 b しかし、年齢、世帯人員の体系、居住する地域の組み合わせによる 基準の展開の相違を消費実態に基づく指数に合わせたとしても、なお、その値と一般低所得世帯の消費実態との間には、世帯構成によってさまざまに異なる差が生じうる。こうした差は金銭的価値観や将来見込みなど、個々人や個々の世帯により異なりかつ消費に影響を及ぼす極めて多様な要因により生ずると考えられる 態との間には、世帯構成によってさまざまに異なる差が生じうる。こうした差は金銭的価値観や将来見込みなど、個々人や個々の世帯により異なりかつ消費に影響を及ぼす極めて多様な要因により生ずると考えられる。しかし、具体的にどのよ うな要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは現時点では明確に分析できないこと、また、特定の世帯構成等に限定して分析する際にサンプルが極めて少数となるといった統計上の限界があることなどから、全ての要素については分析・説明に至らなかった。 c 基準部会で採用した年齢、世帯人員、地域の影響を検証する手法に ついても委員による専門的議論の結果得られた透明性の高い一つの妥当な手法である一方、これまでの検証方法との継続性、整合性にも配慮したものであることから、これが唯一の手法ということでもない。 さらに基準部会の議論においては、国際的な動向も踏まえた新たな最低基準についての探索的な研究成果の報告もあり、将来の基準の検証 手法を開発していくことが求められる。今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある。 d 全所得階層における年間収入総額に占める各所得五分位及び十分位の年間収入総額の構成割合の推移をみると、中位所得階層である第 3・五分位の占める割合及び第1・十分位の占める割合がともに減少傾向にあり、その動向に留意しつつ、これまで生活扶助基準検証の際参照されてきた一般低所得世帯の消費実態については、なお今後の検証が必要である。 とりわけ第1・十分位の者にとっては、全所得階層における年間収 入総額に占める当該分位の年間収入総額の構成割合にわずかな減少が あっても、その ては、なお今後の検証が必要である。 とりわけ第1・十分位の者にとっては、全所得階層における年間収 入総額に占める当該分位の年間収入総額の構成割合にわずかな減少が あっても、その影響は相対的に大きいと考えられることに留意すべきである。 また、現実には第1・十分位の階層には生活扶助基準以下の所得水準で生活している者も含まれることが想定される点についても留意が必要である。 e 今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある。 f さらに、基準額の見直しによる影響の実態を把握し、今後の検証の 際には参考にする必要がある。 ⑺ 本件保護基準改定の内容等アゆがみ調整について平成25年検証において、生活扶助基準の展開部分が一般低所得世帯の消費実態と乖離しているとされたことを踏まえ、厚生労働大臣は、生活 扶助基準の展開部分に、一般低所得世帯の消費実態を反映させることにより、生活扶助基準の展開部分を適正化し、生活保護受給世帯間の均衡を図ることを目的として、上記検証の結果を反映させる改定(ゆがみ調整)を行い、その際、激変緩和措置として、上記検証の結果の反映の程度を、一律に2分の1とする調整(2分の1調整)を行った(前提事実 ⑴ウ、甲6の3、乙16、弁論の全趣旨)。 イデフレ調整について平成19年検証において生活扶助基準額が一般低所得世帯と比較して高いとされていたが、当時の社会経済情勢等から生活扶助基準が据え置かれることとされた一方で、平成20年以降、賃金、物価及び家計消費が いずれも下落するデ 活扶助基準額が一般低所得世帯と比較して高いとされていたが、当時の社会経済情勢等から生活扶助基準が据え置かれることとされた一方で、平成20年以降、賃金、物価及び家計消費が いずれも下落するデフレ状況が継続していたことから、厚生労働大臣は、 生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加している状況にあると判断して、生活扶助基準の水準を適正化し、一般国民の生活実態との均衡を図ることを目的として、総務省CPIを基に生活扶助相当CPIを算出し、平成20年から平成23年の物価下落率を-4.78%と評価し、これを一律に生活扶助基準に反映させる改定(デフレ調整) を行った(前提事実⑴ウ、前記⑷イ及びウ、乙16、18、弁論の全趣旨)。 ウ本件保護基準改定の公表等厚生労働省は、平成25年1月27日、生活扶助基準の改定を公表し、改定内容を盛り込んだ平成25年度予算案は、同月29日に閣議決定さ れ、国会審議を経て、同年5月15日に成立した。 また、厚生労働省が、同年2月19日、全国厚生労働関係部局長会議において交付した資料には、生活扶助基準の見直しにより、3年間で約670億円の財政効果があること(ゆがみ調整分が90億円、デフレ調整分が580億円)等が記載されていた。(乙18、弁論の全趣旨) なお、平成25年報告書の公表に先立って、厚生労働省幹部と当時の内閣官房副長官との協議のための内部資料として作成された「生活保護制度の見直しについて」と題する文書によれば、本件保護基準改定前の生活扶助基準額(①)と、平成25年検証の結果を完全に反映した場合の基準額(②)を比較した場合の影響(②/①)は、夫婦子1人世帯が9 2%、夫婦子2人世帯が86%、高齢単身世帯が105%、高齢夫婦世帯が102%、単身世帯 5年検証の結果を完全に反映した場合の基準額(②)を比較した場合の影響(②/①)は、夫婦子1人世帯が9 2%、夫婦子2人世帯が86%、高齢単身世帯が105%、高齢夫婦世帯が102%、単身世帯が98%、母子世帯が95%であるのに対し、平成25年検証の結果の影響の調整を2分の1とし(2分の1調整)、平成20年から平成23年の物価動向を勘案した場合(世帯ごとの増減幅は最大10%とする。)の基準額(③)を比較した場合の影響(③/ ①)は、同順に、92%、91%、97%、97%、94%、93%と されていた。また、同文書は、取扱厳重注意とされ、基準部会にも提供されず、平成28年8月4日に行政文書開示決定がなされるまで公表されていなかったものであり、2分の1調整の存在は、その他の公表文書には記載されていなかった。(甲6の2・3、弁論の全趣旨)⑻ 平成29年検証の概要(甲168、乙48) ア基準部会は、平成28年5月から平成29年12月まで、本件保護基準改定による影響の検証を行った上で、生活扶助基準に関する検証(平成29年検証)等を行い、同年12月14日、社会保障審議会生活保護基準部会報告書(以下「平成29年報告書」という。)を公表した。 イ平成29年検証においては、本件保護基準改定による影響の検証のため に、生活保護受給世帯のデータについては、平成25年度被保護者調査(年次調査)及び平成24年度から平成26年度の社会保障生計調査の個票データが用いられた。 平成29年報告書においては、その検証結果として、以下のとおり報告された。 本件保護基準改定に伴う生活扶助基準額の影響額について、影響額の割合を世帯類型毎にみてみると、高齢者世帯では「-1%以上-2%未満 の検証結果として、以下のとおり報告された。 本件保護基準改定に伴う生活扶助基準額の影響額について、影響額の割合を世帯類型毎にみてみると、高齢者世帯では「-1%以上-2%未満が」が約4割を、母子世帯では「-6%以上-7%未満」が約4割を、傷病者・障害者世帯及びその他の世帯では「-1%以上-2%未満」が約3割を占めた。特に、母子世帯への影響は大きく、また、多人数の世 帯についても影響が大きい傾向が見られた。 生活保護受給世帯の家計に与えた影響の把握について、生活保護受給世帯と一般世帯における平成24年度から平成26年度にかけての各支出費目の比較については、支出割合が生活保護受給世帯と一般世帯との間では異なるものの、経年の支出割合の推移は大きな差が見られず、本 件保護基準改定による家計への影響を評価するまでには至らなかった。 ウ平成29年検証においては、生活扶助基準の検証として、平成26年全国消費実態調査の個票データを用いて、生活扶助基準の給付水準の検証を行うとともに、平成25年検証を踏襲して、年齢、世帯人員別、級地別にみた一般低所得世帯の消費実態との関係について検証が行われた。 平成29年報告書においては、その検証の方法及び結果等として、以下 のとおり報告された。 生活扶助基準の水準の検証についてa 生活扶助基準の水準の検証に当たっては、変曲点の理論を用いて、消費支出階級別の分析及び年収階級別の分析の両面から、消費支出の変動について分析を行い、生活扶助基準の比較対象として適切な一般 低所得世帯を設定することとした。 b モデル世帯として、夫婦子1人世帯及び高齢夫婦世帯を設定した。 c 消費支出階級別及び年収階級別の消費支出 行い、生活扶助基準の比較対象として適切な一般 低所得世帯を設定することとした。 b モデル世帯として、夫婦子1人世帯及び高齢夫婦世帯を設定した。 c 消費支出階級別及び年収階級別の消費支出の変動の分析を総合的に勘案すると、夫婦子1人世帯の生活扶助基準については、夫婦子1人世帯の第1・十分位の世帯を比較対象とする所得階層と考えることが 適当であり、夫婦子1人世帯においては、現行の生活扶助基準額と第1・十分位の生活扶助相当支出額は概ね均衡していた。 d 高齢夫婦世帯については、消費支出階級別と年収階級別の消費支出の変動の分析結果に乖離が見られ、課題が残る結果となった。 生活扶助基準の年齢、世帯人員、級地別の検証について a 展開の基軸として用いるモデル世帯としては、夫婦子1人世帯を設定し、高齢夫婦世帯については、夫婦子1人世帯を基軸として展開を行った上で、展開後の高齢夫婦世帯の基準額との乖離がないか確認を行った。 b 指数の算出に当たって、実データによる場合と回帰分析による場合 とで結果に違いが見られたが、今回の検証では、その原因等について 十分に解明には至らなかった。 検証結果に対する留意事項今回は、夫婦子1人世帯について、生活扶助基準額と第1・十分位の生活扶助相当支出額の均衡を確認しただけであり、そこから展開した様々な世帯類型における生活扶助基準額と一般低所得世帯の生活水準の 均衡を確認するまでには至らず、この意味することは、単に消費水準との均衡を図ることが最低生活保障水準を満たすものと言えるのか、水準均衡方式のあり方が問われる本質的な課題であることに留意する必要がある。 2 デフレ調整について 前記前提事実に加え、後掲各証 を図ることが最低生活保障水準を満たすものと言えるのか、水準均衡方式のあり方が問われる本質的な課題であることに留意する必要がある。 2 デフレ調整について 前記前提事実に加え、後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると、デフレ調整に関して、以下の事実等が認められる。 ⑴ 各種物価指数の特徴等アロウ指数国際労働機構(ILO)、国際金融基金(IMF)等の6国際機関が共 同責任の下で作成した「消費者物価指数マニュアル-理論と実践」(ILOマニュアル)において、ロウ指数とは、非常に普及した、一般的な物価指数の種類の1つで、比較される時点間において、一般に「買い物かご」と言われるある一定量の数量を購入するために要する全費用の割合の変化を表す指数とされており、ロウ指数においては、買い物かごは、 比較される二時点のいずれかで購入される数量に限られる必要はなく、いつの時点でもよい(基準時(価格参照時点)を0、比較時をt、ウエイト参照時点をbとした場合、bは0より先行する可能性が高いが、指数がtより後に計算されるならば、bは0とtの間の1つを含むいつの時点でもよい)とされている。 ロウ指数の算式は次のような定義式で表される(pは価格、qは数量、 iは品目、Iは品目の集合であり、pi0は基準時での品目iの価格、pitは比較時での品目iの価格、qibはウエイト参照時点での品目iの数量を示し、分母は基準時での一定の買い物かご(I)を購入するための全費用、分子は比較時での一定の買い物かご(I)を購入するための全費用を指す。)。(甲178〔1~5頁〕、乙75、弁論の全趣旨) P=∑pitqibi∈I∑pi0qibi∈I イラスパイレス指数及び を購入するための全費用を指す。)。(甲178〔1~5頁〕、乙75、弁論の全趣旨) P=∑pitqibi∈I∑pi0qibi∈I イラスパイレス指数及びパーシェ指数ラスパイレス指数は、ロウ指数のうち、基準時(価格参照時点)のウエイトを用いる(b=0)指数であり、比較時において数量情報を調査する必要がないため、速報性に優れているが、商品の代替性がある下では、 価格上昇を過大に評価し、上方バイアスが生じることが指摘されている。 パーシェ指数は、ロウ指数のうち、比較時のウエイトを用いる(b=t)指数であり、経済の変化に応じて常に最新のウエイトが反映されるが、そのための調査コストが大きく、価格上昇を過少に評価し、下方バイアスが生じることが指摘されている。内閣府によるGDPデフレーターに おいては、パーシェ指数が採用されている。(甲178〔5頁〕、乙26〔2~3頁、図表2・3〕)⑵ 総務省CPIについてア総務省CPIは、総務省統計局が作成している消費者物価指数で、全国の世帯が購入する財及びサービスの価格変動を総合的に測定し、物価 の変動を時系列に測定するものであり、公的年金の給付額等の算出基準の一つとされている。基準時のウエイトを用いて、一定の数量の商品(買い物かご)を購入するための全費用の変化を指数で表すラスパイレス指数を採用しており、次の算式で表される。(前提事実⑴ウa、甲104〔1頁〕、乙27〔3~5、19、20頁〕、28〔1頁〕、弁 論の全趣旨) ∑pitqi i∈I∑pi0qi i∈I×100 総務省CPIの作成は毎月行われており、毎月26日を含む週の金曜日に全国の前月分が公表される。12月 ∑pitqi i∈I∑pi0qi i∈I×100 総務省CPIの作成は毎月行われており、毎月26日を含む週の金曜日に全国の前月分が公表される。12月分公表時には、年平均指数が公表されており、平成23年の年平均指数は平成24年1月27日に、平 成24年の年平均指数は平成25年1月25日にそれぞれ公表された。 (前提事実⑴ウa、甲104〔3頁〕、乙27〔24頁〕、28〔4頁〕、69、弁論の全趣旨) 指数品目は、家計調査において消費者が実際に記入した家計簿を集計した結果を基に、家計の消費支出の中で重要度が高いこと、価格変動の 面で代表性があること、継続調査が可能であること等の観点から選定されている。各品目は、10大費目(食料、住居、光熱・水道、家具・家事用品、被服及び履物、保健医療、交通・通信、教育、教養・娯楽、諸雑費)、中分類(食料であれば、穀類、魚介類、肉類等)、小分類(穀類であれば、米類、パン、麺類等)により分類される。 各指数品目のウエイトは、家計調査による平均1か月の1世帯当たり品目別消費支出額を用いて作成され、1万分比で表される。(乙27〔8~10頁〕、28〔1~2、111~115頁〕) 指数品目の価格には、原則として小売物価統計調査によって得られた市町村別、品目別の小売価格を用いる。 消費者物価指数は純粋な物価変動を測定することを目的としていることから、同一の商品の価格を継続して追跡することを原則としているが、品質改良された後継商品が出て、追跡していた商品が製造中止になり、調査する対象を入れ替える場合には、新旧の商品の間にある機能・特性等の品質やパッケージ容量の違いによって生じる価格差が、指数に入り 込ま が出て、追跡していた商品が製造中止になり、調査する対象を入れ替える場合には、新旧の商品の間にある機能・特性等の品質やパッケージ容量の違いによって生じる価格差が、指数に入り 込まないようにするために、品質調整を行い、品質変化等の物価変動以外による価格差を除去して、比較時価格を算出する。 品質向上が著しく、製品サイクルが極めて短いパソコン及びカメラについては、POS情報を用いたヘドニック法により、品質調整済みの価格変動が求められる。(甲104〔6頁〕、乙26〔11頁〕、28 〔2、9、14、16頁〕)指数の算出は、各品目の比較時価格を基準時価格で除して、品目別価格指数を算出した上で、各品目別価格指数をそれぞれ品目別のウエイトで加重平均して類指数を算出し、類指数を各類のウエイトで順次加重平均して総合指数を算出する。 ある品目が一時的に出回りが途切れるなど、比較時価格がやむを得ず「欠」となった場合は、その品目の指数及びウエイトは除外して計算する。比較時価格が「欠」となった品目の価格変動は、品目から類への合算段階では、結果として類内の他の品目より求められた類指数によって代替されることになる。 また、年平均指数は、品目及び類ごとに1月から12月までの月別指数を単純平均して算出されている。(乙28〔2頁〕、74〔26~27頁〕、75〔7頁〕) 5年に1回、西暦年の末尾が0と5の年に、指数品目及びウエイトの改定(基準改定)が行われ、基準時も更新されており、平成22年の基 準改定に当たっては、28品目を追加、22品目を廃止、15品目を4品目に統合等をした結果、指数品目は588品目とされた。 基準改定の都度、新たな基準時に合わせて、過去の指数を換算し、新・旧指数の接続を行 に当たっては、28品目を追加、22品目を廃止、15品目を4品目に統合等をした結果、指数品目は588品目とされた。 基準改定の都度、新たな基準時に合わせて、過去の指数を換算し、新・旧指数の接続を行っており、具体的には、総合、類、品目ごとに、各基準の指数を次の基準時に当たる年の年平均指数で除した結果を10 0倍するという方法により行っており、接続した指数による上位類指数 の再計算は行っておらず、ウエイトの変化については捨象されている。 (前提事実⑴ウa、乙27〔7、28頁〕、28〔6~7、35~36頁〕、弁論の全趣旨) ある時点の指数をA、それより前の時点の指数をBとした場合、それら二時点間の変化率は、次の計算式によって求めることができる(乙2 7〔29~31頁〕)。 変化率(%)=A−BB×100=(AB-1)×100イ平成22年基準での各年度の総務省CPI(全国年平均)のうち、総合並びに10大費目のうち食料、光熱・水道及び教養娯楽の指数は以下のとおりである(甲187〔表1〕、乙29)。平成20年から平成23 年にかけての総合指数の変化率は、-2.35%(=(99.7-102.1)÷102.1×100)となる。 総合食料光熱・水道教養娯楽平成16年100.797.793.7108.8平成17年100.496.894.4107.9平成18年100.797.397.8106.3平成19年100.797.698.6104.9平成20年102.1100.1104.5104.3平成21年100.7100.3100.2101.7平成22年 97.698.6104.9平成20年102.1100.1104.5104.3平成21年100.7100.3100.2101.7平成22年 平成23年99.799.6103.3 平成24年99.799.7107.394.5また、教養娯楽のうち教養娯楽用耐久財に属するテレビ、ビデオレコーダー、パソコン(デスクトップ型)、パソコン(ノート型)、カメラについては、以下のとおりである(甲187〔表1〕、乙29)。 テレビビデオレコーダーパソコン(デスクトップ型)パソコン(ノート型)カメラ平成16年 638.41119655.9平成17年 446.4335.6448.4 588.2平成18年 332.1269.8377.1626.4459.4平成19年 260.3234.6306.3459.2318.8平成20年 205.8191.6237.2281.6224.7平成21年 146152.7146.6145.6151.8平成22年 100 平成23年 69.1 60.1 平成24年 66.147.247.263.557.7ウ総務省統計局が公表する「平成23年平均消費者物価指数の動向」においては、総務省CPIの動向について、以下のとおり説明されている(甲210)。 平成20年は、世界的な原油価格や穀物価格の高騰を受けて、石油製品を始め、多くの食料品目が上昇したことに 」においては、総務省CPIの動向について、以下のとおり説明されている(甲210)。 平成20年は、世界的な原油価格や穀物価格の高騰を受けて、石油製品を始め、多くの食料品目が上昇したことにより、11年ぶりに1%を超え る上昇となった。 平成21年は、平成20年に高騰した原油価格が下落したため、ガソリン及び灯油が大きく下落、耐久消費財が引き続き下落したこと等により、1.4%の下落と、比較可能な昭和46年以降最大の下落幅となった。 平成22年は、ガソリン、灯油、たばこ、傷害保険料等が上昇したもの の、4月から公立高等学校の授業料無償化・高等学校等就学支援金制度が導入されたため、公立高校授業料及び私立高校授業料が大幅に下落したこと、耐久消費財が引き続き下落したこと等により、総合指数は0.7%の下落となった。食料(酒類を除く。)及びエネルギーを除く総合は1. 2%の下落と比較可能な昭和46年以降最大の下落幅となった。 平成23年は、原油価格の値上がり等により、ガソリン、電気代等が上昇したものの、耐久消費財が下落していること等により、総合指数は0. 3%の下落となった。耐久消費財については、地上デジタル放送の移行で需要が減ったこと等により、テレビは30.9%の下落、技術革新や性能 向上等により、パソコン(デスクトップ型)は39.9%、パソコン(ノート型)は24.0%、カメラは28.0%の下落となった。 ⑶ 家計調査及び社会保障調査ア家計調査は、総務省統計局が実施する基幹統計調査(基幹統計(国勢調査その他国の行政機関が作成する統計のうち総務大臣が指定する特に重 要な統計等)の作成を目的とする統計調査(統計法2条4項、6項))であり、国民生活における家計収支の実態を把握して、景 国勢調査その他国の行政機関が作成する統計のうち総務大臣が指定する特に重 要な統計等)の作成を目的とする統計調査(統計法2条4項、6項))であり、国民生活における家計収支の実態を把握して、景気動向の需要な要素である個人消費の動向など、国の経済政策・社会政策の立案のための基礎資料を提供することを目的とするものである。 全国の一般世帯のうち約9000世帯を調査対象とする。調査対象の選 定は、調査世帯が全国の世帯の縮図となるよう、統計理論に基づいて世帯を選定しており、具体的には、①全国の市町村を色々な特性によりグループ(層)に分け、それぞれのグループから一つずつ合計168市町村を選び、②各市町村から調査地区を不作為に選び、③調査地区内のすべての世帯のリストを調査員が作成し、その中から乱数表を用いて調査 世帯を無作為に選んでいる。 調査対象世帯に対して、調査票(家計簿等)の記入を依頼しており、調査票には、詳細な品目ごとに支出数量、金額を記載することとされている。(乙27〔8~9頁〕、71、72、弁論の全趣旨)イ社会保障生計調査は、厚生労働省が実施する一般統計調査(行政機関が 行う基幹統計調査以外の調査(統計法2条7項))であり、生活保護受 給世帯の生活実態を明らかにすることによって、保護基準の改定等の生活保護制度の企画運営のために必要な基礎資料を得るとともに、厚生労働行政の企画運営に必要な基礎資料を得ることを目的とするものである。 全国の生活保護受給世帯のうち約1100世帯を対象とする。調査対象の選定は、全国を10ブロックに分け、ブロック毎に都道府県・指定都 市・中核市のうち1~3か所を調査対象自治体として選定し、選定した自治体から調査対象世帯を抽出する。 調査対象世 象の選定は、全国を10ブロックに分け、ブロック毎に都道府県・指定都 市・中核市のうち1~3か所を調査対象自治体として選定し、選定した自治体から調査対象世帯を抽出する。 調査対象世帯に対して、家計簿の記入を依頼しているが、詳細な品目ごとの支出割合を把握することは想定されておらず、10大費目、中分類程度の分類ごとの支出金額は明らかになるが、詳細な品目ごとの支出金 額は明らかとならない。(甲193、235、乙73、弁論の全趣旨)ウ 10大費目について、平成22年度社会保障生計調査に基づく生活保護受給世帯の支出割合及び平成22年家計調査に基づく一般世帯の支出割合を比較すると、以下のとおりとなる(なお、平成22年の家計調査に基づく一般世帯の支出割合は平成22年基準のウエイトを%で表したも のである。)(甲193、197~200、乙29、73)。 (%(括弧内は実数)) 生活保護受給世帯(2人以上世帯)生活保護受給世帯(単身)家計調査食料29.9(51,912 円)29.3(31,535 円)25.25住居17.7(30,766 円)31.3(33,732 円)21.22光熱・水道10.2(17,718 円)8.5(9,190 円)7.04 家具・家事用品4.9(8,511 円)3.9(4,221 円)3.45被服及び履物4.8(8,333 円)2.6(2,790 円)4.05保健医療2.1(3,602 円)2.0(2,156 円)4.28交通・通信9.6(16,700 円)6.8(7,319 円)14.21教育3.4 保健医療2.1(3,602 円)2.0(2,156 円)4.28交通・通信9.6(16,700 円)6.8(7,319 円)14.21教育3.4(5,838 円)―3.34教養娯楽6.4(11,030 円)5.6(6,057 円)11.45諸雑費(その他)11.1(19,210 円)9.9(10,619 円)5.69合計 (173,620 円) (107,618 円) ⑷ 生活扶助相当CPIの算出方法平成23年の生活扶助相当CPIの算出に当たっては、①平成22年基準の指数品目588品目から非生活扶助相当品目71品目を除外し、生活扶助相当品目517品目を300項目(品目又は類)にまとめた上で、②各項目の価格指数は、平成22年基準による平成23年の総務省CPI(全国年平 均)の指数を用い、③ウエイトは、家計調査における平成22年の一般世帯の支出割合を用いて(ウエイトは計6393)、④各項目の価格指数を各項目のウエイトで加重平均(各項目の価格指数に各項目のウエイトを乗じたものを合計した数値635973.1をウエイトの合計6393で除する。)して、総合指数(99.5)を算出した。 平成20年の生活扶助相当CPIの算出に当たっては、①平成22年基準の指数品目から非生活扶助相当品目を除外し、さらに、欠測値となっている32品目(平成22年の基準改定における指数品目の改廃のために、平成20年の価格指数が存在しないもの。)を除外して、生活扶助相当品目485品目を268項目(品目又は類)にまとめた上で、②各項目の価格指数は、 平成17年基準による平成20年の総務省CPI( 平成20年の価格指数が存在しないもの。)を除外して、生活扶助相当品目485品目を268項目(品目又は類)にまとめた上で、②各項目の価格指数は、 平成17年基準による平成20年の総務省CPI(全国年平均)を平成22年基準に合わせて接続した指数を用い、③ウエイトは、家計調査における平成22年の一般世帯の支出割合を用いて(ウエイトは計6189)、④各項目の価格指数を各項目のウエイトで加重平均(各項目の価格指数に各項目のウエイトを乗じたものを合計した数値646627.9をウエイトの合計6 189で除する。)して、総合指数(104.5)を算出した。(甲185〔12~15頁〕、212〔13頁〕、234〔1~3頁〕、235〔23~24頁〕、乙29、30) 3 争点(本件各処分について、憲法25条、法1、3、8条等に反する違憲・違法があるか否か)について ⑴ 判断枠組みア憲法25条1項は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定し、いわゆる福祉国家の理念に基づき、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るよう国政を運営すべきことを国の責務として宣言したものであるとともに、同条2項は、「国 は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定して、同じく福祉国家の理念に基づき、社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきことを国の責務として宣言したものであって、このような社会的立法及び社会的施設の創造拡充により個々の国民の具体的・現実的な生活権が設定充実されて ゆくものであると解される(最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年 7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁参照)。法は、上記憲法25条 体的・現実的な生活権が設定充実されて ゆくものであると解される(最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年 7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁参照)。法は、上記憲法25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とし(法1条)、法3条によれば、法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を 維持することができるものでなければならないところ、法8条2項によれば、保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならない。 そうすると、仮に、保護基準が、上記の最低限度の生活の需要を超えてい るというのであれば、これに応じて保護基準を改定することは、同項の規定に沿うところであるといえる。もっとも、これらの規定にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等の相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、これを保護基準におい て具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである(前記最高裁判決参照)。したがって、保護基準中の生活扶助基準を改定するに際し、その改定が必要であるか否か及び改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維 持することができるものであるか否かを判断するに当たっては、厚生労働大臣に上記 扶助基準を改定するに際し、その改定が必要であるか否か及び改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維 持することができるものであるか否かを判断するに当たっては、厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである。 イまた、生活扶助基準を改定すべき必要性が認められる場合であっても、生活扶助基準の改定により生活扶助費が減額することは、従前の基準によ り生活扶助費が支給されることを前提として現に生活設計を立てていた被 保護者に関しては、生活扶助基準によって具体化されていたその期待的利益の喪失を来す側面があることも否定し得ないところである。そうすると、上記のような場合においても、厚生労働大臣は、生活扶助基準の改定の必要性を踏まえつつ、被保護者のこのような期待的利益についても可及的に配慮するため、改定の具体的方法等について、激変緩和措置の要否等を含 め、上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているものというべきである。 ウそして、生活扶助基準の改定の前提となる最低限度の生活の需要に係る評価や被保護者の期待的利益についての可及的な配慮は、前記ア及びイのような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であって、生活扶助基準の 算出方法やその額等については、それまでも各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて検討がされてきた経緯等に鑑みると、生活扶助基準の改定については、①当該改定を行う必要があり、当該改定後の生活扶助基準の内容が被保護者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであり、かつ、これを超えないものであるとした厚生労働大臣の判断に、最 低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみ 化的な生活水準を維持するに足りるものであり、かつ、これを超えないものであるとした厚生労働大臣の判断に、最 低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、または、②激変緩和等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸 脱又はその濫用があると認められる場合に、法3条、8条2項の規定に違反し、違法となるものというべきであって、上記①又は上記②の場合に該当するか否かについては、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等の観点から審査されるべきものと解される(最高裁平成22年(行ツ)第392号同年(行ヒ)第416号同24年 2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁、最高裁平成22 年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁参照)。 ⑵ ゆがみ調整についてア前記前提事実及び前記認定事実によれば、ゆがみ調整に関する経過として、①平成16年報告書において、生活扶助基準は、世帯人員別にみる と、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したスケールメリットとなっておらず、体系の設定及び算定方法について見直しを検討する必要があり、また、一般世帯の生活扶助相当支出額をみると、地域差が縮小する傾向が認められるため、級地制度全般について見直しを検討する必要があるとの指摘がなされたこと(前記1⑵ウ及び、⑸ア)、②平 成19年報告書において、生活扶助基準の体系に関する評価・検証に当たって、世帯構成などが異なる生活保護 いて見直しを検討する必要があるとの指摘がなされたこと(前記1⑵ウ及び、⑸ア)、②平 成19年報告書において、生活扶助基準の体系に関する評価・検証に当たって、世帯構成などが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から、必要な見直しを行っていくべきとの指摘がなされ、また、現行の級地制度における地域差を設定した当時の消費実態と、直近の消費実態を比較すると、地 域差が縮小している傾向が見られるとの指摘がなされたこと(前記1⑶ウ及び、⑸ア)、③平成16年報告書及び平成19年報告書による指摘を受けて、基準部会による平成25年検証においては、生活扶助基準の展開部分と一般低所得世帯の消費実態との乖離を検証することとしたこと(前提事実⑴イ、前記1⑸ア)、④平成25年検証においては、 比較対象とする一般低所得世帯を第1・十分位の世帯と設定した上で、平成21年全国消費実態調査の個票データを用いて、第1・十分位の世帯の生活扶助相当支出額を年齢階級別、世帯人員別及び級地別に指数化したものと、生活扶助基準額を同様に指数化したものとの比較検証を行い、その結果、年齢階級別、世帯人員別及び級地別のいずれについても 両者間に乖離がみられたこと(前提事実⑴イ及び、前記1⑸ア及び ⑹)、⑤厚生労働大臣は、平成25年検証の結果を踏まえ、生活扶助基準の展開部分に一般低所得世帯の消費実態を反映させ、生活保護受給世帯間の均衡を図ることを目的として、激変緩和措置として2分の1調整を行った上で、ゆがみ調整を行ったこと(前提事実⑴ウ及び、前記1⑺ア)が認められる。このような経過に照らせば、ゆがみ調整を行っ た厚生労働大臣の判断については、統計等の客観的数値との合理的関連性や専 で、ゆがみ調整を行ったこと(前提事実⑴ウ及び、前記1⑺ア)が認められる。このような経過に照らせば、ゆがみ調整を行っ た厚生労働大臣の判断については、統計等の客観的数値との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等の観点から、その判断の過程及び手続に過誤、欠落があるものとは直ちには認められない。 以下では、原告らが、厚生労働大臣によるゆがみ調整の判断の過程及び手続に過誤、欠落があると主張する点について検討する。 イ平成25年検証について 第1・十分位の消費実態と生活扶助基準額を比較としたことについて前記認定事実によれば、基準部会が、平成25年検証において、第1・十分位の消費実態を生活扶助基準額との比較対象としたのは、①従前の検証に倣い、生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実 態を用いることが現実的であると判断したこと(理由①)、②第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層(第3・五分位)の約6割に達していること(理由②)、③国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位の属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されている状況にあること (理由③)、④全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、高所得階層を除くその他の十分位の傾向をみても等しく減少しており、特に第1・十分位が減少しているわけではないこと(理由④)、⑤第1・十分位に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあること を示していること(理由⑤)、⑥第1・十分位と第2・十分位の間にお いて消費が大きく変化しており、他の十分位の世帯に比べて消費の動向が大 ECDの基準では相対的貧困線以下にあること を示していること(理由⑤)、⑥第1・十分位と第2・十分位の間にお いて消費が大きく変化しており、他の十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なると考えられること(理由⑥)を理由とするものと認められる(前記1⑹ウ)。 然るところ、原告らは、最下位層の消費実態との比較を生活扶助基準の引下げの根拠とすることは、生活扶助基準を際限なく引き下げていく ことにつながるなどとして、平成25年検証において、生活扶助基準額との比較対象を第1・十分位の消費実態としたことは不合理である旨主張する。 しかしながら、平成25年検証においては、生活扶助基準の展開部分と一般低所得世帯の消費実態との均衡を図ることを目的として、両者の 比較がなされたものであり、その際には、検証のサンプルとなった第1・十分位の世帯構成に対応する生活扶助基準額の平均と第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額が不変(同額)となるようにされた(前提事実⑴イa、前記1⑹イ)のであって、生活扶助基準の絶対的水準と一般低所得世帯の生活扶助相当支出額とを比較して、生活扶助基準を引 き下げようとするものではないから、生活扶助基準の際限ない引下げにつながるものとはいえない。そして、平成25年検証の上記目的に照らせば、比較対象となる一般低所得世帯は、生活保護受給世帯の消費実態と類似性を有するものが望ましいことからすれば、平成25年検証において生活扶助基準額との比較対象を、最低限度の生活水準にある第1・ 十分位の世帯としたことが不合理なものとはいえない。 また、原告らは、理由①ないし⑥がいずれも失当であると主張するが、以下のとおり、基準部会が一般低所得世帯(第1・十分位)を比較対象とすることとした検証結果に事実誤認 とが不合理なものとはいえない。 また、原告らは、理由①ないし⑥がいずれも失当であると主張するが、以下のとおり、基準部会が一般低所得世帯(第1・十分位)を比較対象とすることとした検証結果に事実誤認等があるものということはできず、原告らの主張はいずれも理由がない。 a 理由①について、原告らは、従前、生活扶助基準と比較対象とされ てきたのは一般勤労者世帯の消費水準であり、一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態が比較対象とされてきたという事実はない旨主張する。 しかしながら、前記認定事実によれば、水準均衡方式が採用されるきっかけとなった昭和58年意見具申においては、2.99・五十分 位の世帯の生活扶助相当支出額と生活扶助基準額との比較がなされていること(前記1⑴エ)、平成15年中間取りまとめにおいては、生活扶助基準の評価について、第1・十分位の消費水準に着目することが適切であるとされ、第1・十分位の世帯の消費水準と生活扶助基準額の比較がなされていること(前記1⑵イ)、平成19年検証におい ても、第1・十分位の消費水準と生活扶助基準額を比較し、均衡が図られているかどうかの検討が行われていること(前記1⑶ウ)が認められ、平成25年検証の以前も、生活扶助基準の検証に当たっては、一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態に着目して行われたものということができるのであって、原告らの上記主張を採用することは できない。 b 理由②について、原告らは、第3・五分位以下の等価年収の構成割合が全体の30%以下であること等から、第3・五分位が全世帯の平均階層にあるということはできず、第3・五分位を比較対象とすることが誤りである旨主張する。また、理由④について、原告らは、第 合が全体の30%以下であること等から、第3・五分位が全世帯の平均階層にあるということはできず、第3・五分位を比較対象とすることが誤りである旨主張する。また、理由④について、原告らは、第 1・十分位の構成割合が減少していることは、第1・十分位が占める位置が相対的に低下していることを意味するものであり、高所得階層を除くその他の十分位の構成割合が等しく減少しているからといって、第1・十分位を比較対象とすることを正当化するものではない旨主張する。 しかしながら、基準部会は、第1・十分位や第5・十分位等の構成 割合が低くなっていることについても議論を経た上(甲82の1、82の2〔3~6頁〕)、平成25年報告書においても、検証結果に関する留意事項として、「全所得階層における年間収入総額に占める各所得五分位及び十分位の年間収入総額の構成割合の推移をみると、中位所得階層である第3・五分位の占める割合及び第1・十分位の占め る割合がともに減少傾向にあり、その動向に留意」が必要としながらも(前記1⑹オd)、最終的には、第1・十分位の世帯を比較対象として用いることとしたのであって、その検証の前提に事実誤認があるなどその検証過程に不合理な点は認められない。そして、原告らの上記主張は、比較対象とするデータ選定手法の当不当をいうものにす ぎないというべきであって、採用することはできない。 c 理由③について、原告らは、平成22年の「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」の結果によれば、生活実態調査項目のうち、第3・五分位と比較した第1・十分位の普及率が90%を切る項目が全体の3分の2に及んでいること等から、社会的必需品を適切に選定す れば、第1・十分位における社会的必需品の普及状況が中位 うち、第3・五分位と比較した第1・十分位の普及率が90%を切る項目が全体の3分の2に及んでいること等から、社会的必需品を適切に選定す れば、第1・十分位における社会的必需品の普及状況が中位所得階層を比べて遜色ないとはいえない旨主張する。 しかしながら、基準部会においては、「2011年社会的必需品調査」によって、回答者の50%以上が「必要であり、入手することができるべきである」と答えた16項目のうち、年金保険料の支払等を 除く15項目について、第1・十分位と第3・五分位における普及率を比較して、「国民の過半数が必要と考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位が中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されている状況にある」と判断したものと認められる(甲82の1〔2頁〕、82の2〔7~8頁〕)。そして、「2011年社会必需品調 査」においては、上記の15項目について、第1・十分位における普 及率(X)と第3・五分位における普及率(Y)との比率(X/Y)が、夫婦子1人世帯では、全ての項目について0.9以上であり(1以上の項目もある。)、総世帯でみても、12項目について0.9以上であったことが認められる(甲82の2〔7~8頁〕)のであって、基準部会の上記検証結果について、その前提に事実誤認があるなどそ の検証過程に不合理な点は認められない。これに対し、原告らの上記主張は、社会的必需品目の選定手法等の当不当をいうものにすぎないのであって、原告らの上記主張を採用することはできない。 d 理由⑤及び理由⑥について、原告らは、第1・十分位が相対的貧困線以下にあることや、第1・十分位と第2・十分位の間で消費が大き く変化していることは、むしろ第1・十分位の消費実態を比較対象とすることが不適切で について、原告らは、第1・十分位が相対的貧困線以下にあることや、第1・十分位と第2・十分位の間で消費が大き く変化していることは、むしろ第1・十分位の消費実態を比較対象とすることが不適切であることを基礎づけるものであるなどと主張する。 しかしながら、前記で説示したとおり、平成25年検証の目的に照らせば、比較対象を最低限度の生活水準にある第1・十分位の世帯の消費実態を比較対象としたことが不合理なものとはいえず、原告らの 上記主張は採用できない。 回帰分析に用いられたデータについて原告らは、回帰分析に用いられたデータ①は、平成21年全国消費実態調査の個票データを、収入の低い世帯から並べ、世帯を10等分したグループのうち1番収入の低いグループに属する世帯のデータであるか ら、データ①のデータ数に10を乗じた数と平成21年全国消費実態調査の個票データの総数が一致しなければならないにもかかわらず、これらが一致していないことから、平成25年検証に用いられた個票データは、恣意的に抽出されたものであると主張する。 しかしながら、証拠(乙51〔2頁〕、52の1~4)及び弁論の全 趣旨によれば、平成21年全国消費実態調査は、平成17年国勢調査を 基に推計した世帯を母集団とし、その中から2人以上世帯5万2404世帯、単身世帯4402世帯を抽出して行われた抽出調査であること、調査対象世帯の抽出に当たっては、調査対象である市町村の人口密度や分布等によって決められた抽出率が用いられ、集計の際には、回答が得られた個票データに、抽出率の逆数等で算出される集計用乗率を乗じる ことによって、全国規模の消費実態の推計が行われること、平成21年全国消費実態調査においては、平均集計用乗率は、 には、回答が得られた個票データに、抽出率の逆数等で算出される集計用乗率を乗じる ことによって、全国規模の消費実態の推計が行われること、平成21年全国消費実態調査においては、平均集計用乗率は、二人以上世帯が692、単身世帯が3483と大きく異なっていたこと(世帯数分布(抽出率調整)を集計世帯数で除した値が平均的な集計用乗率となる。)が認められる。 被告らは、平成25年検証においては、データ①については世帯年収が、データ②については世帯員1人当たりの年収が、下位の世帯から個票データを順に並べ、それぞれの個票データに集計用乗率を乗じた実際の世帯数の累計が全体の実際の世帯の世帯数の下位10%となるところまでの個票データの集団をデータ①又はデータ②を構成する個票データ としたというのであり、このような選定方法が不合理なものとはいえない。そして、これを前提とした場合には、上記で説示したとおり、単身世帯と二人以上世帯で集計用乗率が異なっていることから、平成21年全国消費実態調査の個票データの総数を単純に10分の1としたものが、データ①又はデータ②を構成する個票データの数と一致するものではな い(なお、データ①及びデータ②が、単純に全体の個票データの個数から下位10%を選定したものであれば、データ①及びデータ②を構成する個票データの個数は一致するものと考えられるが、平成25年報告書において公表されている個票データの個数は、データ①は3125、データ②は6697と一致しておらず(乙6)、これは被告らの主張に沿 う事情といえる。)。 したがって、データ①を構成する個票データの個数に10を乗じた数が、個票データの総数と合致していないことをもって、直ちに平成25年検証において用いられたデータが恣 う事情といえる。)。 したがって、データ①を構成する個票データの個数に10を乗じた数が、個票データの総数と合致していないことをもって、直ちに平成25年検証において用いられたデータが恣意的に抽出されたものということはできず、この他に、恣意的なデータの抽出が行われたことを窺わせる事情は認められないから、原告らの上記主張を採用することはできない。 比較対象である第1・十分位の世帯から生活保護受給世帯を除外しなかったことについて原告らは、平成25年検証において、生活扶助基準額と第1・十分位の消費実態を比較するに際して、第1・十分位から生活保護受給世帯のサンプルを除外しなかったことが、比較する集団は相互に独立したもの でなければならないとする統計学の原則に反するものであり、また、生活保護受給世帯のサンプルを除外しなかった経過が手続上の適正を欠く旨主張する。 しかしながら、前記で説示したとおり、平成25年検証においては、生活扶助基準の展開部分と一般低所得世帯の消費実態との比較がなされ たものであり、生活扶助基準の絶対的水準と一般低所得世帯の生活扶助相当支出額とを比較したものではないから、比較する集団の一方である第1・十分位の世帯から生活保護受給世帯を除外しないことが、手法として不合理なものとはいえない。 また、基準部会において、同部会の資料に「体系及び級地の検証にお いては、消費同士の相対比較であり生活保護受給かどうかは無関係であることから、生活保護受給世帯と考えられるサンプルは特段除去しない。」と記載されていたのに対し、特段異論も出されていなかった(甲82の1・3〔9頁〕、乙94〔9頁〕)のであるから、比較対象とする第1・十分位の世帯から生活保護受 考えられるサンプルは特段除去しない。」と記載されていたのに対し、特段異論も出されていなかった(甲82の1・3〔9頁〕、乙94〔9頁〕)のであるから、比較対象とする第1・十分位の世帯から生活保護受給世帯を除外しなかったことにつ いて手続上の適正を欠くともいえない。 したがって、原告らの上記主張を採用することはできない。 回帰分析における決定係数が低いことについて原告らは、平成25年検証における年齢階級別(第1類費)の検証の回帰分析による推定結果において、決定係数が、データ①が0.28、データ②が0.36と低く、統計学的には参考程度の域を超えないもの であり、これによる推計値に基づいた検証は不合理である旨主張する。 しかしながら、証拠(甲138、乙55〔30~31頁〕、56〔41~43頁〕)及び弁論の全趣旨によれば、決定係数とは、回帰分析の当てはまりの良さを示す指標で、0から1の値をとり、1の値は「完全な当てはまり」(説明変数が被説明変数の変動を完全に説明でき ていること)、0の値は「完全なはずれ」(説明変数に被説明変数の変動を説明する力が全くないこと)を示すものであること、マクロ経済分析等における時系列のデータの分析の場合には、決定係数が0.8程度であれば「あてはまりはまあまあ良い」、0.9以上であれば「良い」とされているのに対し、個々の家計のデータのようなクロス・セクショ ン(横断面)データの分析においては、決定係数が0.5でも極めて良いと評価され、0.3程度しか得られない場合も多いとされていることが認められる。 そうすると、平成25年検証においては、平成21年全国消費実態調査の個票データである個々の家計のデータ(クロス・セクションデー タ)を用いた回帰分析 多いとされていることが認められる。 そうすると、平成25年検証においては、平成21年全国消費実態調査の個票データである個々の家計のデータ(クロス・セクションデー タ)を用いた回帰分析が行われたのであるから、決定係数がデータ①では0.28、データ②では0.36であることが極めて低いと評価することはできず、これを用いた平成25年検証が不合理なものとはいえないのであって、原告らの上記主張を採用することはできない。 t検定について 原告らは、平成25年検証における年齢階級別(第1類費)の検証の 回帰分析の結果について、5%の有意水準でのt値による検定(t検定)を行った場合に、帰無仮説を棄却できない説明変数が含まれており、このような説明変数を除いて回帰分析を行わなかったことが不合理である旨主張する。 しかしながら、証拠(乙49〔20~24頁〕、57)及び弁論の全 趣旨によれば、回帰分析によるt検定とは、帰無仮説(効果がないこと等を主張する仮説)を介在させる手法の一つであり、推定係数をその標準誤差で割ることで求められるt値を用いて、一定の有意水準を設定した上で、それを前提に「説明変数の被説明変数への真の効果が0である」という帰無仮説を検定し、これが否定(棄却)されることで「説明変数 の被説明変数への効果がある(0ではない)」という対立仮説を採択するものと認められ、帰無仮説が棄却されない場合に、帰無仮説を積極的に支持することを意味するものではない。 そうすると、回帰分析の結果が有意水準を5%とした場合に帰無仮説を棄却できないとしても、これは回帰分析の結果が、説明変数に効果が ないとする帰無仮説と矛盾しないことを意味するにすぎず、帰無仮説が真であ 、回帰分析の結果が有意水準を5%とした場合に帰無仮説を棄却できないとしても、これは回帰分析の結果が、説明変数に効果が ないとする帰無仮説と矛盾しないことを意味するにすぎず、帰無仮説が真であることが積極的に証明されたものではないから、これにより、回帰分析が統計学的に不合理なものとはいえず、原告らの上記主張を採用することはできない。 ウ 2分の1調整について 原告らは、厚生労働大臣が、基準部会で何ら議論を行わずに、専門機関による検討を経ないで、2分の1調整を行ったこと、2分の1調整が激変緩和措置としての効果が限定的であること、2分の1調整により本来は増額するはずの世帯の増額幅が抑えられること、2分の1調整によりゆがみ調整の趣旨が没却されることから、2分の1調整が不合理である 旨主張する。 しかしながら、基準部会の役割は生活扶助基準の評価・検証であり(前記1⑷エ)、その検証結果は、生活扶助基準の改定に当たって重要な意義を有するものではあるが、法的拘束力を有するものではなく、これをどのように生活扶助基準の改定に反映させるかについては、最終的には厚生労働大臣が判断するものであって、激変緩和措置の要否等も含め、 その判断には専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものである。 そして、平成25年報告書では、検証結果を反映させた場合の各世帯への影響は、世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組合せにより様々であり、厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には現 在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重配慮されたい旨が付言されていたこと、生活扶助基準の見直しによる影響については今後も検証を行うことが予定されてい 在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重配慮されたい旨が付言されていたこと、生活扶助基準の見直しによる影響については今後も検証を行うことが予定されていたこと(前記1⑹オ、e及びf)からすれば、厚生労働大臣が、平成25年報告書を踏まえ、基準部会の検証結果をそのままではなく、激 変緩和措置として、2分の1の割合で反映させたことは、平成25年報告書の趣旨にも沿うものであって、その判断自体が不合理とはいえない。 また、前記⑵イで説示したとおり、ゆがみ調整は、生活保護受給世帯間の均衡を図ることを目的とするものであるから、ゆがみ調整により生活扶助基準額が増額となる世帯も含めて、2分の1調整を行ったことも 不合理なものとはいえず、その他の原告らの主張についても、いずれも厚生労働大臣の判断の当不当をいうものにすぎないというべきである。 したがって、原告らの上記主張を採用することはできない。 エ以上によれば、厚生労働大臣が、ゆがみ調整及び2分の1調整を行ったことは、統計等の客観的な数値との合理的関連性や専門的知見との整合 性を欠くものとはいえず、その判断の過程及び手続に過誤、欠落があっ たとはいえないから、同大臣の判断に裁量権の逸脱又は濫用があったとは認められない。 ⑶ デフレ調整についてア前記前提事実及び前記認定事実によれば、デフレ調整に関する経過として、①平成19年報告書において、夫婦子1人世帯及び単身世帯(60 歳以上)の第1・十分位における生活扶助相当支出額よりも、それらの世帯の生活扶助基準額の方がやや高め又は高めとなっているとされたこと(前記1⑶ウb)、②しかし、厚生労働大臣は、平成20年度予算編成当時、原油価格が高騰しており、そ 扶助相当支出額よりも、それらの世帯の生活扶助基準額の方がやや高め又は高めとなっているとされたこと(前記1⑶ウb)、②しかし、厚生労働大臣は、平成20年度予算編成当時、原油価格が高騰しており、その消費の影響等を見極めるため、平成20年度は生活扶助基準額は据え置くこととし、その後も、平成2 1年度から平成24年度まで、経済・雇用情勢等を踏まえ、生活扶助基準額を据え置くこととしたこと(前記1⑷イ)、③一方で、平成20年以降、賃金、物価及び家計消費がいずれも下落する状況が継続していたこと(前記1⑷ウ)、④厚生労働大臣は、このような状況を踏まえ、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加しているものと判 断し、生活扶助基準の水準と一般国民の生活実態との均衡を図ることを目的として、デフレ調整を行うこととしたこと(前記1⑺イ)、⑤デフレ調整においては、総務省CPIを基に、その指数品目から非生活扶助相当品目を除外した上で、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの下落率を算出したこと(前記1⑺イ、2⑷)が認められる。 イ審議会等の専門機関による検証等を経なかったことについてデフレ調整は、平成25年検証の結果に基づくものではなく、専門家により構成される審議会等による検討を経たものではないところ、厚生労働大臣が生活扶助基準の改定を行うに当たって、審議会等による検討を経ることは法令上の要件とはされておらず、これを経なかったことによ り、直ちにその判断の過程又は手続に過誤、欠落があるとされるもので はない。 しかしながら、生活扶助基準の改定に係る従前の経緯として、①中央社会福祉審議会の下に設置された生活保護専門分科会による昭和39年中間報告を踏まえ、格差縮小方式が採用され(前 はない。 しかしながら、生活扶助基準の改定に係る従前の経緯として、①中央社会福祉審議会の下に設置された生活保護専門分科会による昭和39年中間報告を踏まえ、格差縮小方式が採用され(前記1⑴ア)、その後、同分科会による検討を踏まえ、同審議会により、昭和58年意見具申が取 りまとめられ、これを踏まえ、水準均衡方式が採用されたのであって(同イ)、生活扶助基準改定方式の決定については、専門家の会議体による検討を経て行われてきたこと、②このようにして採用された水準均衡方式の下においては、専門委員会による平成16年報告書において、生活扶助基準と一般低所得世帯との消費実態との均衡が適切に図られて いるか否かを見極めるために、5年に一度の頻度で検証を行う必要があり、検証に際しては専門家の知見を踏まえることが妥当であるとされ(前記1⑵ウ)、これを踏まえ、生活扶助基準検討会による平成19年検証、基準部会による平成25年検証が行われたのであって(前記1⑶ア、⑸ア)、専門家の会議体による検証が定期的に行われることが想 定されていたことが認められる。 生活扶助基準の改定は高度の専門技術的な判断が伴うものであり、それ故に、厚生労働大臣に専門技術的な見地からの裁量権が認められているところ、このように、生活扶助基準の改定に関して専門家の会議体による検討が行われてきたことは、高度の専門的知見に基づき、複合的、多 角的観点からの検討を行うという点で重要な意義を有するとともに、内部的な検討に留まらず、外部の機関による検討を経ることで透明性を確保するという点でも重要な意義を有するものと解される。 特に、デフレ調整は物価動向(物価指数)を勘案して生活扶助基準の改定を行うものであるところ、昭和59年度以降採用されていた水準均衡 を確保するという点でも重要な意義を有するものと解される。 特に、デフレ調整は物価動向(物価指数)を勘案して生活扶助基準の改定を行うものであるところ、昭和59年度以降採用されていた水準均衡 方式においては、政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠する ものとされていたのであり、物価は消費に影響を及ぼすものではあるものの消費そのものではなく(昭和58年意見具申においても、物価はそのままでは消費水準を示すものではないことから参考資料にとどめるべきとされていた(前記1⑴エ)。)、実際にも物価動向を直接に勘案した改定が行われてきたものとは認められず、物価動向を勘案して生活扶 助基準の改定を行うことは、それまでの生活扶助基準改定方式を大きく変更するものというべきである。それにもかかわらず、物価動向を勘案することについては、専門委員会や基準部会の議論において消極的な意見も出されていたところであり(前記1⑵イ、⑸ウ)、物価動向を勘案することの是非や物価動向を勘案する場合の具体的な手法等については、 これまで十分な議論がなされてきたものということはできない。 その上、ゆがみ調整による財政効果が90億円とされているのに対し、デフレ調整による財政効果は580億円とされており(前記1⑺)、その影響は重大なものというべきである。 以上を踏まえると、専門家の審議会等による検討を経ずにデフレ調整を 行ったことについて、それ自体で直ちに厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があったものとはいえないが、生活扶助基準の改定に関して専門家の会議体による検討が行われてきた経緯等に加え、デフレ調整が従前の生活扶助基準改定方式を変更するものであることやデフレ調整の影響が重大であること等に鑑みると、デフレ調整については、物 して専門家の会議体による検討が行われてきた経緯等に加え、デフレ調整が従前の生活扶助基準改定方式を変更するものであることやデフレ調整の影響が重大であること等に鑑みると、デフレ調整については、物 価動向を勘案することの是非や物価動向を勘案する場合の具体的な手法等に関する判断が専門的知見に基づく高度の専門技術的な考察を経て合理的に行われたことにつき、被告らにおいて十分な説明をすることを要するものというべきであり、これを踏まえ、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等について審理すべきも のというべきである。 以下では、このような観点から、被告らが主張するデフレ調整の具体的手法等に関する判断が、専門的知見に基づく高度の専門技術的な考察を経て合理的に行われたか否かについて検討する。 ウ物価動向の比較期間の始期についてデフレ調整において、物価動向の比較期間の始期を平成20年と設定し た点について、被告らは、平成19年報告書により、一般低所得世帯の消費実態よりも生活扶助基準額が高いと評価されたことから、本来であれば、この時点で生活扶助基準の見直しの検討を行わなければならなかったにもかからず、当時の社会経済情勢を考慮して、平成20年度以降生活扶助基準額が据え置かれてきたという経緯を踏まえ、本来、生活扶 助基準の見直しを行うべきであった平成20年を始期とした旨主張する。 しかしながら、平成19年報告書は、夫婦子1人の勤労3人世帯と単身世帯(60歳以上)について消費実態と生活扶助基準額の比較・検証を行ったのみであり、しかも、その結果としても、生活扶助基準額のほうが、夫婦子1人の勤労3人世帯については1627円、単身世帯(60 歳以上)については83 費実態と生活扶助基準額の比較・検証を行ったのみであり、しかも、その結果としても、生活扶助基準額のほうが、夫婦子1人の勤労3人世帯については1627円、単身世帯(60 歳以上)については8378円高かったにすぎず(前記1⑶ウb)、これを踏まえ、生活扶助基準の見直しを行うか否かの判断については、当時の厚生労働大臣に裁量権があったところ、平成20年度は、原油価格が高騰していること等も踏まえ、生活扶助基準額を据え置くという判断をしたのであるから、平成19年報告書をもって、本来、平成20年 に生活扶助基準の見直しを行うべきであったということはできず、被告らの上記主張はその前提を欠くものである。 この点を措くとしても、平成19年報告書は、平成16年全国消費実態調査の結果等を用いて、一般低所得世帯の消費実態と生活扶助基準額との均衡について検証した結果を示すもの(前記1⑶ア)であり、ここで 示された結果が平成20年における一般低所得世帯の消費実態と生活扶 助基準額との均衡に関する状況に直ちに合致するものではない。とりわけ、平成20年度は、水準均衡方式に基づいた消費支出を基礎とする改定は行われていなかったところ(前記1⑷イ)、総務省CPI(総合・年平均)は、平成16年から平成19年にかけてはほぼ横ばいであったのに対し、平成19年から平成20年にかけては1.4%上昇していた (前記1⑷ウ、前記2⑵イ)のであり、物価は消費そのものではないとしても、消費にも影響を及ぼすものと考えられることから、平成20年においては、平成19年報告書で示された検証結果から、一般低所得世帯の消費実態に変化が生じていた可能性が十分に考えられる。 以上によれば、平成19年報告書において生活扶助基準額が高いとされ 、平成19年報告書で示された検証結果から、一般低所得世帯の消費実態に変化が生じていた可能性が十分に考えられる。 以上によれば、平成19年報告書において生活扶助基準額が高いとされ たことと、平成20年を物価動向の比較期間の始期とすることに合理的関連性は認められない。むしろ、総務省CPIは、平成20年は世界的な原油価格や穀物価格の高騰により、11年ぶりに1%を超える上昇となったのに対し、平成21年は平成20年に高騰した原油価格が下落したこと等により昭和46年以降最大の下落幅となり、平成22年及び平 成23年も下落が続いた(前記2⑵ウ)ところ、平成20年を物価動向の比較期間の始期とすることは、平成19年から平成20年にかけての物価上昇については考慮せずに、平成20年以降の物価下落のみを考慮するものであり、不合理なものといわざるを得ない。 したがって、デフレ調整において物価動向を勘案する始期を平成20年 としたことにつき、被告らにおいて、専門的知見に基づく高度の専門技術的な考察を経て合理的に行われたことについての十分な説明がなされているものとは認められない。 エ物価下落率(物価変化率)の算出方法について デフレ調整においては、①総務省CPIと同様、一般世帯を対象とし た家計調査の結果に基づくウエイトを用い、②総務省CPIの指数品目 から非生活扶助相当品目を除外した上で、生活扶助相当CPIを算出し、平成20年から平成23年からの物価下落率を-4.78%と算出している(前提事実⑴ウb、前記2⑷)。 この点について、被告らは、①総務省CPIは信頼性の高い統計資料であり、これに用いられている家計調査のデータは、統計資料としての 精度が高い上に詳細な品目ごとの支出額を把握す b、前記2⑷)。 この点について、被告らは、①総務省CPIは信頼性の高い統計資料であり、これに用いられている家計調査のデータは、統計資料としての 精度が高い上に詳細な品目ごとの支出額を把握することができることから、ウエイトを把握するのに最も適したデータであり、家計調査の結果に基づくウエイトを用いたことは合理的である旨、②生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加の程度を把握するために、総務省CPIの指数品目から非生活扶助相当品目を除外したことは合理的であ る旨主張する。 この点、デフレ調整は、物価下落により生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加があったとして、物価下落率を生活扶助基準額に反映させるものである(前記1⑺イ)から、その前提となる物価下落率の算出に当たっては、生活保護受給世帯の消費構造が十分に考慮さ れていることが必要というべきであり、以下では、この観点から、デフレ調整における物価下落率の算出方法の判断が、専門的知見に基づく高度の専門技術的な考察を経て合理的に行われたか否かについて検討する。 一般に、低所得世帯においては、日常生活の維持に必要不可欠な食料や光熱・水道等の費目の消費支出の割合が大きくなる一方、教養娯楽等 の日常生活の維持に必要不可欠とまでいえない費目の支出割合は小さくなるものといえる。 このことは、生活保護受給世帯を対象とする社会保障生計調査において、平成22年度における消費支出の割合が、2人以上世帯では食料29.9%、光熱・水道10.2%、教養娯楽6.4%、単身世帯では食 料29.3%、光熱・水道8.5%、教養娯楽5.6%となっているの に対し、一般世帯を対象とする家計調査においては、平成22年における消費支出の割合が、食料25 、単身世帯では食 料29.3%、光熱・水道8.5%、教養娯楽5.6%となっているの に対し、一般世帯を対象とする家計調査においては、平成22年における消費支出の割合が、食料25.25%、光熱・水道7.04%、教養娯楽11.45%となっている(前記2⑶ウ)ことにも表れている。 このように、生活保護受給世帯の消費構造は、一般世帯の消費構造とは異なっており、特に教養娯楽については、生活保護受給世帯における 支出割合は、一般世帯と比較して小さいものとなっているといえる。 そして、平成22年を100とする平成20年と平成23年の総務省CPIを比較すると、10大費目のうち食料が100.1から99. 6、光熱・水道が104.5から103.3となっているのに対し、教養娯楽が104.3から96と下落幅が大きくなっており、特に教養娯 楽の中でも、テレビは205.8から69.1、パソコン(デスクトップ型)は237.2から60.1、パソコン(ノート型)は281.6から76となるなど大幅に下落しており(前記2⑵イ)、平成20年から平成23年にかけての生活扶助相当CPIの下落には、テレビ、パソコン等の価格指数の下落が大きな影響を与えたものといえる。 その上、生活扶助相当CPIの算出に当たっては、総務省CPIの指数品目から非生活扶助相当品目が除外されたことによって、ウエイトの総数が減少し、除外されなかったテレビ、パソコン等の品目のウエイトは、総務省CPIにおけるウエイトよりも大きく評価されることとなり(例えば、平成22年基準の総務省CPIにおけるテレビのウエイト は10000分の97であるのに対し、生活扶助相当CPIにおけるテレビのウエイトは、平成20年が6189分の97、平成23年が6393分の97となる(乙 総務省CPIにおけるテレビのウエイト は10000分の97であるのに対し、生活扶助相当CPIにおけるテレビのウエイトは、平成20年が6189分の97、平成23年が6393分の97となる(乙30)。)、総務省CPIよりも、テレビ、パソコン等の価格指数の下落による影響が大きく評価されることとなったものといえる。平成20年から平成23年にかけての総務省CPIの下 落率は-2.35%である(前記2⑵イ)のに対し、生活扶助相当CP Iの下落率は-4.78%と高い下落率になったのも、このことが一つの要因となったものと考えられる。 以上によれば、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの下落率についてはテレビ、パソコン等の価格指数の下落による影響が大きいものといえるところ、生活保護受給世帯におけるテレビ、パソ コン等を含む教養娯楽の消費支出の割合は、一般世帯と比較して小さいにもかかわらず、生活扶助相当CPIにおいては、テレビ、パソコン等のウエイトがむしろ一般世帯よりも大きく評価されたとものといえ、生活扶助相当CPIを算出するに当たって前提とされた消費構造は、生活保護受給世帯の消費構造とは大きく乖離したものというべきである。 なお、この点に関して、被告らは、生活保護受給世帯におけるテレビ、パソコン等の電化製品の普及率が一般世帯と比較して相当程度に達しているなどと主張するが、生活保護受給世帯においては、通常、テレビ、パソコン等を保有していたとしても、一般世帯と比較して、それらを長期間使用し続けることが想定され、頻繁に買い替えることは想定さ れないというべきであり、生活保護受給世帯におけるテレビ、パソコン等の普及率が一般世帯と比較して相当程度に達していたとしも、それらの消費支出の割合が生活保 され、頻繁に買い替えることは想定さ れないというべきであり、生活保護受給世帯におけるテレビ、パソコン等の普及率が一般世帯と比較して相当程度に達していたとしも、それらの消費支出の割合が生活保護受給世帯と一般世帯とで同程度ということはできない。 したがって、デフレ調整において物価下落率を-4.78%と評価 したことにつき、被告らにおいて、専門的知見に基づく高度の専門技術的な考察を経て合理的に行われたことについての十分な説明がなされているものとは認められない。 オゆがみ調整と併せて行ったことについて被告らは、ゆがみ調整は、生活保護受給世帯間の均衡を目的として、生 活扶助基準の展開部分を適正化するものであるのに対し、デフレ調整は、 生活扶助基準の水準を適正化するもので、両者は重複するものではないから、両者を併せて行ったことは不合理ではない旨主張する。 しかしながら、デフレ調整は、平成19年報告書において、生活扶助基準額が一般低所得世帯の消費実態よりも高いとされたことを根拠として行われたものであるところ、ゆがみ調整は、生活扶助基準の展開部分を 調整するものであるものの、これにより、生活扶助基準額に変動が生じるのであるから、ゆがみ調整後においても、平成19年報告書で示された生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態の均衡に関する状況が直ちに妥当するものということはできない。 然るに、ゆがみ調整後の生活扶助基準と一般低所得世帯との消費実態の 均衡については、何ら検討が行われたものとは認められず、ゆがみ調整と併せてデフレ調整を行ったことにつき、被告らにおいて、専門的知見に基づく高度の専門技術的な考察を経て合理的に行われたことについての十分な説明がなされているものとは認められない。 ず、ゆがみ調整と併せてデフレ調整を行ったことにつき、被告らにおいて、専門的知見に基づく高度の専門技術的な考察を経て合理的に行われたことについての十分な説明がなされているものとは認められない。 カ平成29年検証に関する被告らの主張について 被告らは、①平成29年検証において基礎とされた統計資料によれば、デフレ調整において検討対象とされた平成20年から平成23年までにおける経済指標が消費、物価、賃金ともに全て変化率がマイナスを示していたこと、②平成29年検証において、本件保護基準改定後の平成27年の生活扶助基準の水準が、第1・十分位の消費実態と均衡する妥当 なものと評価されたことから、デフレ調整が不合理ではなかったことは事後的に裏付けられている旨主張する。 しかしながら、デフレ調整における判断の過程に過誤、欠落があると認められる場合においては、事後的な検証によりその過誤、欠落が直ちに治癒されることとなるものではない。 また、①について、前記で説示したところによれば、デフレ調整につい ては、物価動向の比較期間、物価下落率の算出方法、ゆがみ調整と併せて行うこと等のその具体的手法の判断が、専門的知見に基づく高度の専門技術的な考察を経て合理的に行われたことについて十分に説明できているとはいえないのであり、平成20年から平成23年までの消費、物価、賃金等の経済指標の変化率がマイナスであることをもって、それら の合理性が裏付けられるものとはいえない。②についても、平成29年検証においては、夫婦子1人世帯についてのみ生活扶助基準の水準と第1・十分位の消費実態の均衡が確認されたにとどまり、他の世帯類型における均衡を確認するまでには至らなかったのであり(前記1⑻ウ)、これをもって、デフレ 婦子1人世帯についてのみ生活扶助基準の水準と第1・十分位の消費実態の均衡が確認されたにとどまり、他の世帯類型における均衡を確認するまでには至らなかったのであり(前記1⑻ウ)、これをもって、デフレ調整の合理性が裏付けられるということはできな い。 したがって、被告らの上記主張を採用することはできない。 ⑷ まとめ以上によれば、デフレ調整に関する厚生労働大臣の判断は、統計等の客観的数値等との合理的関連性を欠き、または、専門的知見との整合性を有しな いものであり、その判断の過程に過誤、欠落があるものといわざるを得ない。 そして、本件保護基準改定は、ゆがみ調整及びデフレ調整を一体的に行うものであり、本件保護基準改定のうち、ゆがみ調整に係る部分とデフレ調整に係る部分とを明瞭に区分することはできないから、本件保護基準改定は、厚生労働大臣の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとして、法3 条、8条2項の規定に違反し、違法なものというべきである。 そうすると、本件保護基準改定を根拠に行われた本件各処分はいずれも違法であるから、本件各処分は取り消されるべきものである。 4 結論以上によれば、本件各処分の取消しを求める原告らの請求は、いずれも理由 があるから、これを認容することとして、主文のとおり判決する。 青森地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官鈴木義和 裁判官佐々木大慧 裁判官鈴木祥平 別紙当事者目録は、掲載省略 (別紙) 処分一覧表 1 番号 処分行政 慧 裁判官鈴木祥平 別紙当事者目録は、掲載省略 (別紙) 処分一覧表 1 番号 処分行政庁 処分の名宛人 処分日 処分のあったことを知った日 審査請求日 裁決日 青森市福祉事務所長A 平成26年3月13日 平成26年3月28日 平成26年5月26日 平成29年1月16日 青森市福祉事務所長B 平成26年3月13日 平成26年3月29日 平成26年5月26日 八戸市福祉事務所長C 平成26年3月25日 平成26年3月30日 平成26年5月26日 以上 (別紙) 処分一覧表 2 番号 処分行政庁 処分の名宛人 処分日 処分のあったことを知った日 審査請求日 裁決日 青森市福祉事務所長A 平成27年3月12日 平成27年3月31日 平成27年5月19日 青森市福祉事務所長B 平成27年3月12日 平成27年3月31日 平成27年5月19日 八戸市福祉事務所長C 平成27年3月25日 平成27年3月26日 平成27年5月19日 以上

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