平成22(ワ)992 未払賃金等請求事件(通称 中央タクシー割増賃金請求)

裁判年月日・裁判所
平成23年11月30日 大分地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-82218.txt

判決文本文15,472 文字)

平成23年11月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(ワ)第992号未払賃金等請求事件口頭弁論終結日平成23年9月28日判決 主文 1 被告は,原告Aに対し,116万6826円及びうち87万3734円に対する平成23年9月17日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,103万7758円及びうち85万0646円に対する平成22年10月27日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Aに対し,45万8855円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 4 被告は,原告Bに対し,48万9875円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 5 訴訟費用は,被告の負担とする。 6 この判決は,1及び2項につき仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求主文1ないし4項と同旨第2 事案の概要本件は,被告に雇用されていた原告らが,賃金の一部が未払であるとして,被告に対し,雇用契約に基づく賃金請求権に基づき,原告A(以下「原告A」という。)が未払賃金元金合計87万3734円,未払賃金に対する平成23年9月16日までの遅延損害金29万3092円(未払賃金に対する各賃金支 払期日の翌日から退職日である平成21年10月20日まで商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金,同日の翌日から平成23年9月16日まで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金合計額),上記未払 20日まで商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金,同日の翌日から平成23年9月16日まで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金合計額),上記未払賃金元金87万3734円に対する平成23年9月17日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14. 6パーセントの割合による遅延損害金の支払,原告B(以下「原告B」という。)が未払賃金85万0646円,未払賃金に対する平成22年10月26日までの18万7112円(未払賃金に対する各賃金支払期日の翌日から退職日である平成21年8月28日まで商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金,同日の翌日から平成22年10月26日まで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金合計額),上記未払賃金元金85万0646円に対する平成22年10月27日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,労働基準法114条に基づく付加金として,原告Aが45万8855円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払,原告Bが48万9875円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実又は証拠等により容易に認定できる事実である。証拠等により認定する場合には証拠等を掲げた。)(1) 当事者等ア原告らは,タクシー乗務員として,原告Aは,平成9年1月17日に被告に入社し,平成21年10月20日に退職した者,原告Bは,昭和56年11月24日に被告に入社し,平成21 (1) 当事者等ア原告らは,タクシー乗務員として,原告Aは,平成9年1月17日に被告に入社し,平成21年10月20日に退職した者,原告Bは,昭和56年11月24日に被告に入社し,平成21年8月28日に退職した者である。 イ被告は,C市内に本社を置き,一般乗用旅客自動車運送事業等を営む株式会社である。 (2) C県の最低賃金は時間額で,次のとおりである。 ア平成18年10月 1日効力発生 613円イ平成19年10月20日効力発生 620円ウ平成20年10月29日効力発生 630円エ平成21年10月 1日効力発生 631円(3) 被告の従業員の賃金は,就業規則(乙1)62条及びこれを受けた賃金規程(乙2)により,次のとおり定められている。 ア賃金の構成(ア) 時間給所定時間給+普通残業時間給+深夜残業時間給(イ) 歩合給基本歩合給+割増歩合給(ウ) 手当精勤手当,会議手当,役職手当,教育手当(エ) 調整給イ賃金の計算期間は各月21日から各翌月20日までとし,毎月20日締めの賃金が当月27日までに支払われる。 (4)ア被告が,別紙1原告A・未払賃金計算表(以下「別紙1」という。),別紙2原告B・未払賃金計算表(以下「別紙2」という。)の左端欄記載の各月の賃金として支払った金額は,別紙1,2の「支給賃金」の「総支給額」欄記載の金額のとおりである(ただし,別紙1の原告Aに対する平成20年6月分の賃金を除く。別紙1の原告Aに対する平成20年6月分の賃金については,後記イのとおりである。)。 イ原告Aに対する平成20年6月分の賃金についての,別紙1の「支給賃金」の「総支給額」欄記載の金額について被告は,平成20年6月の賃金として22万4142円を支払った。しか である。)。 イ原告Aに対する平成20年6月分の賃金についての,別紙1の「支給賃金」の「総支給額」欄記載の金額について被告は,平成20年6月の賃金として22万4142円を支払った。しかし,この金員のうちには調整給15万1686円が含まれている。 被告は原告らに対し,時間給,歩合給及び手当を合計した金額が,最低賃金を下回る場合には,その差額を調整給として支給していた。 しかし,上記の平成20年6月分の賃金のうちの調整給15万1686円のうちには,時間給,歩合給及び手当の合計額と,最低賃金との差額を支給したものではなく,従前,被告が「その他」名目で原告Aの賃金から控除していた金額を,労働基準監督署の指導により,平成20年6月分の賃金に加えて返還した返還金が含まれている(甲18の5枚目)。この調整給名目の返還金は,賃金に該当する性質のものではない(弁論の全趣旨[平成23年9月28日第3回口頭弁論調書])。 上記調整給名目の返還金額は,11万3549円とみるのが相当であり(弁論の全趣旨[調整給名目の返還金額が11万3549円であるとの平成23年9月16日付訴えの変更申立書記載の原告らの主張につき,被告は争っていない。]),被告が平成20年6月の賃金として支払った22万4142円から上記11万3549円を差し引いた11万0593円が,実際の平成20年6月分の賃金として,被告が原告Aに支給した金額とみるのが相当である。 (以上の点につき,甲4,18,弁論の全趣旨)ウ被告は,原告らに対し,「支給賃金」の「総支給額」欄記載の金額のうち,別紙1,2の「支給賃金」の「普残賃金」欄記載の金額を時間外労働割増賃金として支払い,別紙1,2の「支給賃金」の「深残賃金」欄記載の金額を深夜労働割増賃金として支払った(甲4,5,弁論の全 のうち,別紙1,2の「支給賃金」の「普残賃金」欄記載の金額を時間外労働割増賃金として支払い,別紙1,2の「支給賃金」の「深残賃金」欄記載の金額を深夜労働割増賃金として支払った(甲4,5,弁論の全趣旨)。 エ別紙1,2の「支給賃金」の「総支給額」欄記載の金額のうち,別紙1,2の「支給賃金」の「有給」欄の記載の金額は,原告らが取得した年次有給休暇に対応する手当であり,労働時間に対応する賃金ではない。 別紙1,2の「支給賃金」の「総支給額」欄記載の金額のうち,別紙1,2の「支給賃金」の「雑給」欄記載の金額も,最低賃金を考慮する際の労 働時間に対応する賃金ではない(弁論の全趣旨[平成23年9月28日第3回口頭弁論調書])。 2 争点(1) 原告らの労働時間数ア原告らの主張原告らの,別紙1,2の左端欄記載の各月の賃金の計算期間における,時間外労働及び深夜労働を除く労働時間数は,被告が作成した乗務員勤怠明細表(甲1,2)の勤務時間欄記載どおりとしても,別紙1,2の「労働時間」の「所定時間」欄記載のとおりであり,時間外労働に該当する労働時間数は,上記乗務員勤怠明細表の勤務時間欄記載どおりとしても,別紙1,2の「労働時間」の「普残時間」欄記載のとおりであり,深夜労働に該当する労働時間数は,上記乗務員勤怠明細表の勤務時間欄記載どおりとしても,別紙1,2の「労働時間」の「深残時間」欄記載のとおりである。 なお,原告らは,上記被告作成の乗務員勤怠明細表記載の労働時間以外にも,時間外労働,深夜労働をしており,本訴における原告らの未払賃金請求は一部請求である。 イ被告の主張(ア) 労働時間のカット被告は,30分を越える被告の指定場所以外での客待ち待機時間について,次のaないしe の基準に基づいて,その待機時間 金請求は一部請求である。 イ被告の主張(ア) 労働時間のカット被告は,30分を越える被告の指定場所以外での客待ち待機時間について,次のaないしe の基準に基づいて,その待機時間を労働時間からカットしている。労働時間のカットの対象となる待機時間は,被告の指揮命令に従った正当な労務提供とは認められず,正当な労務提供がないものとして労働時間からカットすることができる。 a 日曜,祭日の待機についてはカットはしない。 b 平日の出勤から午前12時までの待機についてはカットはしない。 c 待機場所が,Dホテル,E町周辺,タクシー協会が設置しているタクシーベイ(F会館,G町入口,H證券・Iホテル,市役所,県庁,J),Kの場合,及び婚礼待機,配車による待機,乗客の要請による待機については労働時間のカットはしない。 d 売上げ月額35万円以上の場合,労働時間はカットしない。 e 売上げ日額が,当直以外の勤務の場合2万7000円以上,当直勤務の場合3万円以上あれば当該日については労働時間はカットしない。 (イ) 労働時間カットの手続被告は,毎日,乗務員から提出される運行日報とタコグラフから,待機時間と待機場所を特定して,労働時間カットの対象となる待機を特定している。 運行日報とタコグラフから,労働時間カットの対象となる待機か否かがはっきりしないときは,タコグラフの該当場所に「?」を記入した上で,上長が当該従業員に確認するようにしており,そうでない場合でも,従業員がいつでも確認できる状態で,被告事務所に備え置き,当該従業員に異議のある場合には被告に申告できるようにしていたし,タコグラフの該当箇所に「?」を記載していない労働時間カットの対象となる待機についても,当該従業員に異議があれば,被告に申告できるようにしていた。 議のある場合には被告に申告できるようにしていたし,タコグラフの該当箇所に「?」を記載していない労働時間カットの対象となる待機についても,当該従業員に異議があれば,被告に申告できるようにしていた。 (ウ) 労働時間カットに対する労働協約の存在等a 被告は,(ア)のとおり,昭和40年代から,労働時間のうち正当な労働提供と認められない部分について労働時間カットを実施してきた。 また,いかなる場合が労働時間カットの対象となるかについては,被告と原告らも所属するj タクシー労働組合(以下「組合」という。)との間で協議を重ね,組合の勉強会においても労働時間カットの対象となる場合について組合員に周知徹底がなされていた。 b 被告は,昭和52年7月20日,組合との間で,労働協約(乙7)を締結し,この労働協約では,労働時間カットについて,次のとおり規定している。 「1 時間内のカットは対象外とするも早退,遅刻サボタージュ労務提供をしない者組合用務については対象になる」c 昭和54年4月4日開催の労使協議会に関する報告書(乙17)には,次の記載がある。 「議案3 時間内カットの件組合カットされた時間を給与明細書に記入して欲しい。 会社現在の条件下では無理で出来ない。尚,不明な点のある人は事務所にタコグラフ及び日報等の保管をしてあるので閲覧の上納得され度い。」d 被告は,昭和57年5月21日,組合との間で,労働協約(乙8)を締結し,この労働協約では,労働時間カットについて次のとおり規定している。 「1 カット条項確認の件水揚 1 拘束 23H 32,000〃 18H 25,00 の労働協約では,労働時間カットについて次のとおり規定している。 「1 カット条項確認の件水揚 1 拘束 23H 32,000〃 18H 25,000〃 13H 20,000 上記拘束時間内に水揚達したる時はカットの対象外とする。 但し遅刻,早退並正常な労務を提供していないと思われる者はこの限りにあらず」(エ) (ア)の労働時間カットの対象とされる時間は,信義則によっても債務の本旨に従った労務の提供がないものであり,ノーワーク・ノーペイの原則により賃金カットを行ったものである。労働時間と認められない部分について,原告らに賃金請求権がないことは明らかである。 被告は,原告らに対し,特にC駅構内での客待ち待機は,極めて非効率なのでしないように再三にわたり指導していたのに,原告らは,この指揮命令を無視して,これを繰り返していた。 ウ被告の主張に対する原告らの反論(ア) 被告から待機場所等についての指示を受けた事実はない。 30分を越える被告の指定場所以外での待機時間につき労働時間からカットする旨の労働協約が締結された事実もない。 仮に,待機場所等について被告から指示があったとしても,被告が労働時間として認めなかった,30分を越える指定場所以外での待機時間は,労働時間に該当する。 (イ) 被告が主張するイ(ア)の基準は不合理なものであり,最低賃金法違反の潜脱が目的である。 また,被告は,C駅構内での客待ち待機を黙認していた。 (2) 原告らの未払賃金額ア原告らの主張(ア) 原告らの労働時間数は,(1)アのとおりである。 C県の最低賃金は,時間額で1(2)のとおりであるが,計算の簡略化のため,賃金の計算期間の途中で最低賃金が変更された場合も ア原告らの主張(ア) 原告らの労働時間数は,(1)アのとおりである。 C県の最低賃金は,時間額で1(2)のとおりであるが,計算の簡略化のため,賃金の計算期間の途中で最低賃金が変更された場合も,その計算期間中は変更前の最低賃金で計算することとする。そうすると各計算期間における最低賃金は時間額で,別紙1,2の「最低賃金」の「最賃単 価」欄のとおりとなる。 別紙1,2の「最低賃金」の「最賃単価」欄記載の金額に,別紙1,2の「労働時間」の「所定時間」記載の時間を掛けた金額は別紙1,2の「最低賃金」の「所定賃金」欄の金額,別紙1,2の「最低賃金」の「最賃単価」欄の金額に,別紙1,2の「労働時間」の「普残時間」欄記載の時間を掛けて割増率25%を加えた金額は別紙1,2の「最低賃金」の「普残賃金」欄記載の金額,別紙1,2の「最低賃金」の「最賃単価」欄記載の金額に,別紙1,2の「労働時間」の「深残時間」欄記載の時間を掛けて割増率50%を加えた金額は別紙1,2の「最低賃金」の「深残賃金」欄記載の金額となる。 したがって,被告は,原告らに対し,賃金として,別紙1,2の「最低賃金」の「所定賃金」「普残賃金」「深残賃金」欄の金額を合計した金額である別紙1,2の「最低賃金」の「最賃合計」欄記載の賃金を支払わなければならないはずである。 (イ) しかしながら,被告が原告らに対し1(4)項のとおり支給した別紙1,2の「支給賃金」の「総支給額」欄記載の賃金から,1(4)エ項記載の理由で,別紙1,2の「支給賃金」の「有給」,「雑給」欄記載の賃金を控除した金額であるところの,別紙1,2の「支給賃金」の「純支給額」欄記載の金額は,別紙1,2の「最低賃金」の「最賃合計」欄記載の金額を下回っており,その差額は,別紙1,2の「不足額」の「総不足額」欄記載の金額の るところの,別紙1,2の「支給賃金」の「純支給額」欄記載の金額は,別紙1,2の「最低賃金」の「最賃合計」欄記載の金額を下回っており,その差額は,別紙1,2の「不足額」の「総不足額」欄記載の金額のとおりである。 したがって,被告は,原告らに対し,別紙1,2の「不足額」の「総不足額」欄記載の未払賃料を原告らに支払うべき義務があり,原告Aは被告に対し,未払賃金合計87万3734円,上記未払賃金に対する退職日である平成21年10月20日までの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金,及び同日の翌日から支払済みまで賃金の支払の確保等 に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求め,原告Bは被告に対し,未払賃金85万0646円,上記未払賃金に対する退職日である平成21年8月28日までの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金,及び同日の翌日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 よって,別紙3のとおり,原告Aは,未払賃金元金合計87万3734円,未払賃金に対する平成23年9月16日までの遅延損害金29万3092円(未払賃金に対する各賃金支払期日の翌日から退職日である平成21年10月20日まで商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金,同日の翌日から平成23年9月16日まで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金合計額),上記未払賃金元金87万3734円に対する平成23年9月17日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14. 6パーセントの割合による遅延損害金の支払,別紙4のとおり,原告Bは,未払賃金元金合計85万0646円,未払賃金に対する平成22年10月26日ま 済みまで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14. 6パーセントの割合による遅延損害金の支払,別紙4のとおり,原告Bは,未払賃金元金合計85万0646円,未払賃金に対する平成22年10月26日までの18万7112円(未払賃金に対する各賃金支払期日の翌日から退職日である平成21年8月28日まで商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金,同日の翌日から平成22年10月26日まで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金合計額),上記未払賃金元金85万0646円に対する平成22年10月27日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。 イ被告の主張(1)イのとおり労働時間カットをしており,原告らに対する未払の賃金は ない。 (3) 付加金ア原告らの主張(ア) 原告らは,本訴を提起した平成22年10月26日時点で,賃金支給日から2年を経過したものについては,2年の除斥期間が経過しているので付加金の請求をしない。 (イ) 賃金支給日から2年を経過していないものについては,次のとおりである。 別紙1,2の「最低賃金」の「普残賃金」欄記載の金額(1(4)ウ)と「深残賃金」の金額(1(4)ウ)を加えた金額から,別紙1,2の「支給賃金」の「普残賃金」欄記載の金額と「深残賃金」欄記載の金額を加えた金額を差し引いた金額は,別紙1,2の「不足額」の「付加金」欄記載の金額となり,同金額は未払の時間外,深夜の割増賃金であるから,原告らは,同金額を付加金として請求する。 (ウ) したがって,原告Aは,付加金45万8855円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支 告らは,同金額を付加金として請求する。 (ウ) したがって,原告Aは,付加金45万8855円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払,原告Bは,付加金48万9875円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。 イ被告の主張被告による労働賃金カットの実施状況,被告と組合間で労働賃金カットが合意事項となっていたこと,指揮命令違反の労務提供は債務の本旨に沿った労務の提供とは認められず,賃金請求権は存在しないとの判例も存在することなどの事情を総合考慮すれば,被告に付加金の支払を命じることは相当ではない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(原告らの労働時間数)について(1) 証拠(甲1,2,21,24,乙1,10,11,14,15,27,28)及び弁論の全趣旨によれば,原告らの,別紙1,2の左端欄記載の各月の賃金の計算期間における労働時間数は,少なくとも,時間外労働及び深夜労働を除く労働時間数が,別紙1,2の「労働時間」の「所定時間」欄記載のとおりであり,時間外労働に該当する労働時間数は,別紙1,2の「労働時間」の「普残時間」欄記載のとおりであり,深夜労働に該当する労働時間数は,別紙1,2の「労働時間」の「深残時間」欄記載のとおりであると認められる。 (2)ア被告は,原告らの運行日報,タコグラフから,待機時間と待機場所を推測して,30分を越える被告の指定場所以外の客待ち待機があると推測したときは,次の(ア)ないし(オ)の基準に該当する場合を除き,30分を越える待機時間を労働時間から控除していたことが認められる(甲1,2,4,5,乙10~16,25~29,弁論の全趣旨)。 測したときは,次の(ア)ないし(オ)の基準に該当する場合を除き,30分を越える待機時間を労働時間から控除していたことが認められる(甲1,2,4,5,乙10~16,25~29,弁論の全趣旨)。 (ア) 日曜,祭日の待機についてはカットはしない。 (イ) 平日の出勤から午前12時までの待機についてはカットはしない。 (ウ) 待機場所が,Dホテル,E町周辺,タクシー協会が設置しているタクシーベイ(F会館,G町入口,H證券・Iホテル,市役所,県庁,J),Kの場合,及び婚礼待機,配車による待機,乗客の要請による待機については労働時間のカットはしない。 (エ) 売上げ月額35万円以上の場合,労働時間はカットしない。 (オ) 売上げ日額が,当直以外の勤務の場合2万7000円以上,当直勤務の場合3万円以上あれば当該日については労働時間はカットしない。 イしかしながら,上記の30分を越える客待ち待機時間は,労働基準法上の労働時間に該当すると判断する。理由は次のとおりである。 (ア) 労働基準法上の労働時間とは,労働者が使用者の明示又は黙示の指 揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間をいうというべきである。 原告らがタクシーに乗車して客待ち待機をしている時間は,これが30分を超えるものであっても,その時間は客待ち待機をしている時間であることに変わりはなく,被告の具体的指揮命令があれば,直ちに原告らはその命令に従わなければならず,また,原告らは労働の提供ができる状態にあったのであるから,30分を越える客待ち待機をしている時間が,被告の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間であることは明らかといわざるを得ない。 (イ) 被告は,30分を越える被告の指定場所以外での客待ち待機は,営業上非効率であり,これをしないように 黙示の指揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間であることは明らかといわざるを得ない。 (イ) 被告は,30分を越える被告の指定場所以外での客待ち待機は,営業上非効率であり,これをしないように指揮命令をしていたから,この指揮命令に反する客待ち待機時間は,労働時間には該当しないと主張する。 しかし,仮に,被告が30分を越える被告の指定場所以外での客待ち待機をしないように命令していたとしても,その命令に反した場合に,労働基準法上の労働時間でなくなるということはできない。上記命令に反していたとしても,客待ち待機時間は,30分を超える時間であっても,その時間中には,被告の具体的指揮命令があれば,直ちに原告らはその命令に従わなければならず,また原告らは労働の提供ができる状態にあるのであるから,被告の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間であるというべきである。 もちろん,原告らが被告の30分を越える被告の指定場所以外での客待ち待機をしてはならないとの命令に従わないことを原因として,原告らが,適正な手続を経て懲戒処分を受けることがあるとしても,この命令に従わないことから,直ちに30分を越える客待ち待機時間が,労働基準法上の労働時間に該当しないということはできない。原告らが,30分を越えて客待ち待機をしたとしても,その時間は,争議行為中でも サボタージュでもなく,喫茶店等に入ってサボっている時間でもなく,労働提供が可能な状態である時間であるのであるから,被告の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間と認められる。 (ウ) 被告が原告らの労働時間のカットをした時間については,証拠(乙10,11,14,15,25~28)及び弁論の全趣旨によれば,被告によるタコグラフと運行日報の分析により,C駅構内等 られる。 (ウ) 被告が原告らの労働時間のカットをした時間については,証拠(乙10,11,14,15,25~28)及び弁論の全趣旨によれば,被告によるタコグラフと運行日報の分析により,C駅構内等での客待ち待機時間と推認できる時間,あるいは上記分析によっても不明な時間であることが認められる。しかし,C駅構内等での客待ち待機時間は,上記のとおり労働基準法上の労働時間と認められるし,その余の時間についても,その時間が,被告の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下になかった時間であると認める証拠はない。 (エ)a 被告は,被告の指定する場所以外の場所での30分を越える待機時間につき労働時間のカットを実施することについては,労働協約で規定されており,組合員に周知徹底がなされていたと主張する。 b 証拠(乙7,8,17)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (a) 被告は,昭和52年7月20日,組合との間で,労働協約(乙7)を締結し,この労働協約では次のとおりの規定がある。 「1 時間内のカットは対象外とするも早退,遅刻サボタージュ労務提供をしない者組合用務については対象になる」(b) 昭和54年4月4日開催の労使協議会に関する報告書(乙17)には,次の記載がある。 「議案3 時間内カットの件組合カットされた時間を給与明細書に記入して欲しい。 会社現在の条件下では無理で出来ない。尚,不明な点のある人は事務所にタコグラフ及び日報等の保管をしてあるので閲覧の上納得され度い。」(c) 被告は,昭和57年5月21日,組合との間で,労働協約(乙8)を締結し,この労働協約では次のとおりの規定がある。 「1 カット条項確認の件 の上納得され度い。」(c) 被告は,昭和57年5月21日,組合との間で,労働協約(乙8)を締結し,この労働協約では次のとおりの規定がある。 「1 カット条項確認の件水揚 1 拘束 23H 32,000〃 18H 25,000〃 13H 20,000 上記拘束時間内に水揚達したる時はカットの対象外とする。 但し遅刻,早退並正常な労務を提供していないと思われる者はこの限りにあらず」c しかし,上記aの主張が仮に認められるとしても,ある時間が労働基準法上の労働時間に該当するか否かは当事者の約定にかかわらず客観的に判断すべきであるから,労働協約の規定があったとしても,被告の指定する場所以外の場所での30分を越える客待ち待機時間が労働基準法上の労働時間に該当しなくなるわけではない。 また,b(a)ないし(c)の規定及び記載には,客待ち待機時間が労働時間のカットの対象となり得ることを明示した記載はなく,30分という数字の記載もなく,前記ア(ア)ないし(オ)記載の例外要件の記載もないものであることからすると,30分を越える被告の指定場所以外での客待ち待機時間があるときには,基準に該当する場合を除き,そ の待機時間を労働時間から控除することを労働協約等で規定したとは到底認められない。 被告は,労働時間のカットの基準については,被告と組合間で協議や勉強会が繰り返されており,どのような場合に労働時間カットになるのかにつき周知,徹底が図られていたと主張し,これに沿う元組合役員の陳述書(乙18)等があるが,労働時間のカットという従業員にとって極めて重要な事項につき,その基準についても被告と組合間で協議や勉強会が繰り返されて合意等され,従業員にも周知,徹底が図られていたの 陳述書(乙18)等があるが,労働時間のカットという従業員にとって極めて重要な事項につき,その基準についても被告と組合間で協議や勉強会が繰り返されて合意等され,従業員にも周知,徹底が図られていたのに,その基準が明確に文書化されていない状況は,到底考えられず,被告の上記主張は到底採用できるものではない。 (オ) 被告は,ノーワーク・ノーペイの原則からしても,30分を越える客待ち待機時間は,労働時間に該当しないと主張するが,被告の指定する場所以外の場所での30分を越える客待ち待機を,ノーワークということはできない。また,被告は,原告らのC駅構内等における30分を越える客待ち待機時間につき,信義則に反し,債務の本旨に従った労働と評価されないとも主張するが,労働時間として否定されるほど,あるいは,およそ労働と認められないほどの信義則違反が原告らにあることは認められず,被告の上記主張も採用できない。 2 争点(2)(未払賃金額)について(1) C県の最低賃金は,時間額で第2の1(2)のとおりである。原告らの主張するとおり,賃金の計算期間の途中で最低賃金が変更された場合も,その計算期間中は変更前の最低賃金で計算することとすると,各計算期間における最低賃金は時間額で,別紙1,2の「最低賃金」の「最賃単価」欄のとおりとなる。 (2) 被告が,別紙1,2の左端欄記載の各月の賃金として支払った金額(ただし,原告Aに対する平成20年6月分の賃金については,第2の1(4)イ のとおり,調整給名目の返還金を除く金額)は,別紙1,2の「支給賃金」の「総支給額」欄記載の金額のとおりである。 この「総支給額」欄記載の金額のうち,有給,又は雑給として支払われた金額は,別紙1,2の「支給賃金」の「有給」「雑給」欄に記載のとおりであるが,この金額は,労働時間 」欄記載の金額のとおりである。 この「総支給額」欄記載の金額のうち,有給,又は雑給として支払われた金額は,別紙1,2の「支給賃金」の「有給」「雑給」欄に記載のとおりであるが,この金額は,労働時間に対応する賃金,あるいは最低賃金を考慮する際の労働時間に対応する賃金ではないことから(第2の1(4)エ),これらの金額を,「総支給額」欄記載の金額から差し引くと,別紙1,2の「支給賃金」の「純支給額」欄記載の金額となる。 (3) 別紙1,2の「最低賃金」の「最賃単価」欄記載の金額に,別紙1,2の「労働時間」の「所定時間」記載の時間を掛けた金額は別紙1,2の「最低賃金」の「所定賃金」欄の金額,別紙1,2の「最低賃金」の「最賃単価」欄記載の金額に,別紙1,2の「労働時間」の「普残時間」欄記載の時間を掛けて割増率25%を加えた金額は別紙1,2の「最低賃金」の「普残賃金」欄記載の金額,別紙1,2の「最低賃金」の「最賃単価」欄記載の金額に,別紙1,2の「労働時間」の「深残時間」欄記載の時間を掛けて割増率50%を加えた金額は別紙1,2の「最低賃金」の「深残賃金」欄記載の金額となる。 別紙1,2の「最低賃金」の「所定賃金」「普残賃金」「深残賃金」欄の金額を合計すると別紙1,2の「最低賃金」の「最賃合計」欄記載の金額となる。 (4) 別紙1,2の「支給賃金」の「純支給額」欄記載の金額は,別紙1,2の「最低賃金」の「最賃合計」欄記載の金額を下回っており,その差額は,別紙1,2の「不足額」の「総不足額」欄記載のとおりとなる。 したがって,被告は,原告らに対し,別紙1,2の「総不足額」欄記載の未払賃金を原告らに支払うべき義務があり,被告は原告Aに対し未払賃金合計87万3734円,原告Bに対し未払賃金合計85万0646円を支払う 義務がある。 (5) 紙1,2の「総不足額」欄記載の未払賃金を原告らに支払うべき義務があり,被告は原告Aに対し未払賃金合計87万3734円,原告Bに対し未払賃金合計85万0646円を支払う 義務がある。 (5) 遅延損害金について被告は原告Aに対し,未払賃金につき,退職日である平成21年10月20日までの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金,及び同日の翌日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払義務があり,被告は原告Bに対し,未払賃金につき,退職日である平成21年8月28日までの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金,及び同日の翌日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払義務がある。 なお,被告が,支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し,被告に,賃金の支払の確保等に関する法律施行規則6条4号所定の裁判所で争ったことにつき合理的な理由が存したとは認められない。 3 争点(3)(付加金)について(1) 別紙1,2の「最低賃金」の「普残賃金」欄記載の金額(2(3)項)と「深残賃金」(2(3)項)の金額を加えた金額から,別紙1,2の「支給賃金」の「普残賃金」の金額と「深残賃金」の金額(第2の1(4)ウ)を加えた金額を差し引いた金額は,別紙1,2の「不足額」の「付加金」欄記載の金額となり,この金額が未払の時間外労働割増賃金,深夜労働割増賃金になる。 被告の原告Aに対する未払の時間外労働割増賃金,深夜労働割増賃金の合計額は45万8855円,原告Bに対する未払の時間外労働割増賃金,深夜労働割増賃金の合計額は48万9875円となる。 (2) 上記のとおり,被告は,時間外労働割増賃金,深夜労働割増賃金の支払 の合計額は45万8855円,原告Bに対する未払の時間外労働割増賃金,深夜労働割増賃金の合計額は48万9875円となる。 (2) 上記のとおり,被告は,時間外労働割増賃金,深夜労働割増賃金の支払を怠っており,1項で判示した事情に照らしても労働基準法114条所定の付加金の支払を免れることはできないと解するのが相当であり,被告に対し て,未払の割増賃金と同額の付加金の支払を命じることとする。 (3) したがって,被告に対し,付加金として,原告Aに対し45万8855円,原告Bに対し48万9875円の支払を命じる。 4 結論したがって,別紙3のとおり,原告Aは,未払賃金元金合計87万3734円,未払賃金に対する平成23年9月16日までの遅延損害金29万3092円(未払賃金に対する各賃金支払期日の翌日から退職日である平成21年10月20日まで商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金,同日の翌日から平成23年9月16日まで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金合計額),上記未払賃金元金87万3734円に対する平成23年9月17日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払,別紙4のとおり,原告Bは,未払賃金元金合計85万0646円,未払賃金に対する平成22年10月26日までの18万7112円(未払賃金に対する賃金支払期日の翌日から退職日である平成21年8月28日まで商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金,同日の翌日から平成22年10月26日まで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金合計額),上記未払賃金元金85万0646円に対する平成22年10月27日から支払済みまで賃金の支払の確保 月26日まで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金合計額),上記未払賃金元金85万0646円に対する平成22年10月27日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めることができ,また,原告Aは,付加金45万8855円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払,原告Bは,付加金48万9875円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 よって主文のとおり判決する。 大分地方裁判所民事第2部 裁判官宮武康 別紙1,2,3,4省略

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る