- 1 -平成30年12月6日判決言渡平成30年(行コ)第97号怠る事実の違法確認等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成27年(行ウ)第436号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人が原判決別紙記載1(1)から(10)までの各相手方に対しそれぞれ同記載の各金額及びこれに対する平成27年11月20日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払請求を怠ることが違法であることを確認する。 3 被控訴人が原判決別紙記載2(1)及び(2)の各相手方に対しそれぞれ同記載の各金額及びこれに対する平成27年11月20日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償命令を怠ることが違法であることを確認する。 4 被控訴人は原判決別紙記載1(1)から(10)までの各相手方に対しそれぞれ同記載の各金額及びこれに対する平成27年11月20日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。 5 被控訴人は原判決別紙記載2(1)及び(2)の各相手方に対しそれぞれ同記載の各金額及びこれに対する平成27年11月20日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償命令をせよ。 第2 事案の概要 1 本件は,高槻市の住民である控訴人が,同市交通部芝生営業所及び緑が丘営業所(以下,併せて「本件各営業所」という。)において,職員の遅刻を有給休暇に振り替えるなどの取扱い(以下「本件取扱い」という。)が行われてきたことに関し,平成22年4月以降,① 高槻市自動車運送事業管理者(以下- 2 -「本件事業管理者」という。)の職にあったA,B及びC(以下,併せて「歴代管理者」という。),② 「職員の出勤状況を把握し,出勤表を整理 2年4月以降,① 高槻市自動車運送事業管理者(以下- 2 -「本件事業管理者」という。)の職にあったA,B及びC(以下,併せて「歴代管理者」という。),② 「職員の出勤状況を把握し,出勤表を整理すること」及び「定例的な給与等の支給並びに所得税その他法令に基づく事務を処理すること」について専決権限を有する総務課長又は総務企画課長の職にあったD及びE(以下,併せて「歴代課長」という。)並びに③ 「所属職員の休暇,早退及び欠勤を許可し,又は承認すること」について専決権限を有する本件各営業所の所長の職にあったF,G,H,I,J及びK(以下,併せて「歴代所長」という。)は,高槻市に対し,それぞれ不法行為に基づく損害賠償責任又は地方自治法243条の2第1項の賠償責任を負っているなどと主張して,同法242条の2第1項3号及び4号に基づき,前記第1の2ないし5記載のとおり,被控訴人が歴代管理者,歴代課長及び歴代所長に対し損害賠償請求又は賠償命令を怠ることが違法であることの確認を求めるとともに,被控訴人に対する当該損害賠償請求又は賠償命令の義務付け(各請求における遅延損害金の起算日は被控訴人に対する本件訴状送達の日の翌日)を求める住民訴訟の事案である。 2 原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したので,これを不服として,控訴人が本件控訴を提起した。 3 関係法令等の定め,前提事実,争点及び争点に対する当事者の主張は,後記4に当審における控訴人の補充主張を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中「第2 事案の概要」の1ないし4に記載のとおりであるから(ただし,原判決6頁18行目以下の各「F」をいずれも「F」に改める。),これを引用する。 4 当審における控訴人の補充主張以下の点に照らして,歴代所長による本件取扱いは違法というべきである。 ( し,原判決6頁18行目以下の各「F」をいずれも「F」に改める。),これを引用する。 4 当審における控訴人の補充主張以下の点に照らして,歴代所長による本件取扱いは違法というべきである。 (1) 本件覚書について歴代課長の1人であるD(在任期間平成21年4月1日から平成27年- 3 -7月31日まで)が,テレビ局のインタビューに対し,本件取扱いについて知らない旨答えていたこと,本件就業規則には本件取扱いの内容を反映した改正がされていないことからすると,本件覚書は存在しなかったか,又は違法なヤミ協定であったということができる。 (2) 企業職員の勤務条件についての本件事業管理者の裁量権について給与条例16条1項は,職員が正規の勤務日又は勤務時間中に勤務しないときは,その勤務しないことにつき管理者の承認があった場合を除くほか,その勤務しない1時間につき,勤務1時間当たりの給与額をその者に支給すべき給与の額から減額するとして,ノーワーク・ノーペイの原則を定めているのであるから,この趣旨を本件事業管理者の裁量によって没却することはできない。 (3) 3回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いについて「労働者自身が休暇をとること(すなわち,就労しないこと)によって始めて,休暇の付与が実現されることになる」ところ(最高裁昭和48年3月2日第二小法廷判決・民集27巻2号210号〔以下「最高裁昭和48年判決」という。〕参照),実際には休暇を取らせず勤務をさせたのに,有給休暇を取得させたとすることは違法であるから,仮に本件覚書が存在したとしても,それは違法な労使協約であり,また,事業遂行のための合理性もない。したがって,上記取扱いは違法・無効である。 (4) 1回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いについて前記( したとしても,それは違法な労使協約であり,また,事業遂行のための合理性もない。したがって,上記取扱いは違法・無効である。 (4) 1回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いについて前記(3)のとおり,実際には休暇を取らせず勤務をさせたのに,有給休暇を取得させたとすることは違法であるから,欠勤扱いとしてその分の給与は減額すべきところ,本件事業管理者には,その減額を免ずるまでの裁量はないから,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求はいずれも理由がないと判断する。 - 4 -その理由は,当審における控訴人の補充主張に対する判断を後記2のとおり加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当審における控訴人の補充主張に対する判断控訴人は,(1) 歴代課長の1人であるDがテレビ局のインタビューに対し本件取扱いについて知らない旨答えていたことや,本件就業規則に本件取扱いの内容を反映した改正がされていないことからすると,本件覚書は存在しなかったか,又は違法なヤミ協定であった,(2) 本件事業管理者の裁量によってノーワーク・ノーペイの原則を定める給与条例16条1項の趣旨を没却することはできない,(3) 3回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いは,違法な労使協約に基づくものであり(最高裁昭和48年判決参照),事業遂行のための合理性もないから,違法・無効である,(4) 1回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いは違法であり(最高裁昭和48年判決参照),欠勤扱いとしてその分の給与は減額すべきところ,本件事業管理者には,その減額を免ずるまでの裁量はないから,裁量権の範囲の逸脱又はその 日分に振り替える取扱いは違法であり(最高裁昭和48年判決参照),欠勤扱いとしてその分の給与は減額すべきところ,本件事業管理者には,その減額を免ずるまでの裁量はないから,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり,歴代所長による本件取扱いは違法というべきである旨主張する(前記第2の4)。 しかしながら,歴代所長による本件取扱いが高槻市との関係で違法であるといえないことは,控訴人の上記主張についての以下の説示を加えるほかは,前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」中の2(原判決29頁ないし38頁)に説示のとおりであって,控訴人の上記主張は,採用することができない。 (1) 本件覚書についてDがテレビ局のインタビューに対し本件取扱いについて知らない旨答えた平成27年7月16日頃の時点(甲5)においては,本件覚書は発見されておらず,その引継ぎもされていなかったものである(原審証人G調書6頁な- 5 -いし7頁)。また,地公労法9条は,地方公共団体の長その他の地方公共団体の機関は,地方公営企業において,当該地方公共団体の長その他の地方公共団体の機関の定める規則その他の規程に抵触する内容を有する協定が締結されたときは,速やかに,その協定が規則その他の規程に抵触しなくなるために必要な規則その他の規程の改正又は廃止のための措置をとらなければならない旨規定するが(前記引用に係る原判決の「事実及び理由」中「第2事案の概要」の1(1)イ〔原判決3頁ないし4頁〕),本件覚書は本件就業規則に抵触する内容のものではない。したがって,Dがテレビ局のインタビューに対し本件取扱いについて知らない旨答えたことや,本件就業規則に本件取扱いの内容を反映した改正がされていないことをもって,本件覚書が存在しなかったか又は違法なヤミ協定であったなどということはで ビューに対し本件取扱いについて知らない旨答えたことや,本件就業規則に本件取扱いの内容を反映した改正がされていないことをもって,本件覚書が存在しなかったか又は違法なヤミ協定であったなどということはできない。 (前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」中の2(1)ア〔原判決29頁ないし30頁〕)(2) 企業職員の勤務条件についての本件事業管理者の裁量権についてノーワーク・ノーペイの原則は私法上の契約解釈における原則にすぎず,労働契約においてこれと異なる定めをすることも許容されるところ,企業職員の給与については,一定の範囲内において,管理者がその合理的な裁量によって定め得るものであるから,ノーワーク・ノーペイの原則から直ちに本件取扱いが違法になるものではない。(前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」中の2(2)ア〔原判決32頁ないし33頁〕及び同エ〔原判決37頁〕)(3) 3回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いについて本件覚書は,その内容が地方公営企業法38条2項や給与条例の規定等の趣旨に違反するなどの事情がない限り,労働協約として有効であって,いわゆる規範的効力を有するところ(労働組合法16条参照),① 1時間単位の有給休暇も認められていなかったという当時の事情の下で,事後申請によ- 6 -る半日単位の有給休暇の取得が行われて乗務員が業務に従事しないこととなった場合には,市バスの定時運行の確保という公共交通機関としての事業目的の達成に相応の支障が生じるものと考えられ,このような支障を避ける現実的要請があったこと,② 自動車運送事業の遂行を図るための方法として,本来の規律に従った厳格な運用をするのではなく,一定程度柔軟な対応をしていたとしても,直ちに不合理であるとはいい難く,少なくとも,企業職員に対す と,② 自動車運送事業の遂行を図るための方法として,本来の規律に従った厳格な運用をするのではなく,一定程度柔軟な対応をしていたとしても,直ちに不合理であるとはいい難く,少なくとも,企業職員に対する過度の優遇措置であるとか,不注意で欠勤した者に対する不要の救済措置であるといった評価をするのが相当であるとはいえないこと,③1回目及び2回目の遅刻については,事前かつ包括的に,給与条例16条1項の勤務しないことについての承認をすることとしていたものと位置付けることができることなどに照らせば,本件覚書の内容は,交通部における経営の状況や団体交渉の経緯等を踏まえた一定の合理性を有するものと評価することができ,地方公営企業法38条2項や給与条例の規定等の趣旨に違反するとまでいうことはできないから,歴代所長が本件覚書に基づき3回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いをしたことが,高槻市との関係で違法であるとは解されない。(前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」中の2(2)イ〔原判決33頁ないし36頁〕)なお,上記取扱いの下においては,有給休暇が承認されているにもかかわらず勤務に従事した職員との関係で,有給休暇を与えたことにはならないという問題が生じる余地があるが(最高裁昭和48年判決参照),そのような有給休暇の承認をしたことが高槻市との関係において地方自治法上違法になるか否かはこれとは別の問題であり,上記に認定した本件覚書の内容及び上記取扱いに係る経緯に照らすと,上記取扱いが直ちに高槻市との関係で違法になるとまで評価することはできないというべきである。(前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」中の2(2)エ〔原判決37頁〕)(4) 1回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いについて- 7 -有給休暇が承認されてい うべきである。(前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」中の2(2)エ〔原判決37頁〕)(4) 1回の遅刻を有給休暇半日分に振り替える取扱いについて- 7 -有給休暇が承認されているにもかかわらず勤務に従事した職員との関係で,有給休暇を与えたことにならないという問題が生じる余地があるとしても,そのような有給休暇の承認をしたことをもって直ちに高槻市との関係で違法になるとまで評価することができないことは,前記(3)に説示したとおりである。(前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」中の2(2)エ〔原判決37頁〕)第4 結論以上によれば,控訴人の請求はいずれも理由がないから棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当である。 よって,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第5民事部 裁判長裁判官藤下 健 裁判官黒野功久 裁判官木太伸広
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