令和5年(わ)第207号入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害被告事件令和7年12月10日宮崎地方裁判所刑事部宣告 主文 被告人は無罪。 理由 第1 公訴事実本件公訴事実の要旨は、次のとおりである。 被告人は、令和2年4月1日から、宮崎県串間市副市長として、串間市長を補佐し、串間市長の命を受け政策及び企画をつかさどり、串間市発注の設計業務等の入札及び契約等に関する事務を監督するとともに、串間市指名競争入札参加者指名審査会会長として、指名競争入札参加者を審査する職務に従事していたもの、分離前の相被告人Aは、被告人と親交を有し、被告人に対し、建築等の設計監理等を業とする株式会社BC支社を紹介したもの、分離前の相被告人Dは、BC支社長として同支社の業務全般を統括していたもの、分離前の相被告人Eは、BC支社の営業担当者として同社における入札業務等に従事していたもの、Fは、都市計画のコンサルタント等を業とするG株式会社H事務所の従業員として同社における入札業務等に従事していたものであるが、被告人は、令和5年4月21日に串間市が入札を執行した串間市消防庁舎新築工事設計業務委託(以下「本件業務委託」という。)の指名競争入札に関し、Bに本件業務委託を落札させようと考え、A、D、E及びFと共謀の上、被告人において、上記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに、その職務に反し、①令和5年3月31日、宮崎県串間市(住所省略)串間市役所において、串間市役所財務課契約担当主幹兼契約管財係長Iに、B及び同社が希望する業者を指名業者に加えた同社に有利な指名業者選出案(以下「本件選出案」とい 月31日、宮崎県串間市(住所省略)串間市役所において、串間市役所財務課契約担当主幹兼契約管財係長Iに、B及び同社が希望する業者を指名業者に加えた同社に有利な指名業者選出案(以下「本件選出案」という。)を作成させるなどし(以下「①の事実」とい う。)、②同日、串間市又はその周辺において、電話等の方法で、Aに対し、上記入札に関する秘密事項である本件選出案を教示した上、Aをして、Eに対し、本件選出案を教示させる(以下「②の事実」という。)とともに、③令和5年4月6日、上記串間市役所において、同所で開催された上記入札に係る令和5年度第1回指名審査会をして本件選出案のとおり指名することが適当であると認めさせ、その頃、串間市長Jに本件選出案どおりに指名業者を決定させ(以下「③の事実」という。)、もって偽計を用いるとともに入札等に関する秘密を教示すること又はその他の方法により入札等の公正を害すべき行為をした。 第2 争点等公判前整理手続において、本件の争点は、⑴動機(被告人がBに本件業務委託を落札させようと考えていたか)、⑵「公正を害すべき行為」の有無・該当性(本件公訴事実の①ないし③の事実が認められるか、認められるとして入札等の「公正を害すべき行為」に当たるか)と整理された。この点、証拠調べの結果に基づく検察官及び弁護人の主張も踏まえると、被告人に公訴事実の罪が成立するかどうかの判断に当たっては、検察官が入札等の「公正を害すべき行為」と主張する①ないし③の事実に関して、被告人がどのような認識をもってどういった行為に及んだのかという点と、それらの事実を踏まえた法的評価(故意及び共謀を含む。)の点が問題となると考えられる。 当裁判所は、これらの点について検討し、公訴事実の①及び②の事実は認められず、①ないし③の事実に関して被告人がし らの事実を踏まえた法的評価(故意及び共謀を含む。)の点が問題となると考えられる。 当裁判所は、これらの点について検討し、公訴事実の①及び②の事実は認められず、①ないし③の事実に関して被告人がしたと認められる行為は、A、Dらの意図や行動と併せて評価すれば入札等の「公正を害すべき行為」に当たるものの、被告人には故意及び共謀が認められないと判断したので、以下、その理由を説明する。 第3 前提事実次の事実は、おおむね争いがなく、関係証拠から問題なく認定することができる(以下、括弧内に認定に用いた主な証拠を掲記する。括弧内の証人の姓又は被告人の表記とこれに続く頁数は、証人尋問調書又は被告人供述調書に引用された反訳書 の該当頁数である。)。 1 関係者について関係者の所属や立場等は、公訴事実のとおりである。ただし、Iは、串間市役所財務課契約管財係長であったが、令和5年4月1日から同課契約担当主幹も兼ねることになった(I1頁)。また、Aは、串間市内で木質バイオマス発電事業を営んでいた(A1頁、40頁)。 2 本件業務委託について指名競争入札を行うことになった経緯等⑴ 串間市では、消防庁舎が老朽化していることや洪水浸水想定区域にあることから、以前から、消防庁舎の移転を含む防災事業が議論になっていた(甲3、被告人10頁)。 ⑵ Aは、令和2年6月、以前から親交のあった国会議員秘書のKから、串間市の防災事業を手伝うことのできる業者として、BのDを紹介され、Dから、防災事業の基本構想の策定を行うことができる業者として、Gを紹介された(A15~16頁、D4頁、F2頁)。 ⑶ Aは、令和2年6月25日、DやGのFらを串間市役所に連れていき、J市長や被告人に紹介した(甲25、甲34・添付資料3、甲40・添付資料2、D6~7 た(A15~16頁、D4頁、F2頁)。 ⑶ Aは、令和2年6月25日、DやGのFらを串間市役所に連れていき、J市長や被告人に紹介した(甲25、甲34・添付資料3、甲40・添付資料2、D6~7頁、F3~4頁、24頁、被告人6頁)。 ⑷ Gは、令和3年6月11日、串間市事前防災まちづくり構想策定業務委託及び串間市立地適正化計画策定業務委託を落札した。その中で、令和3年中には、串間市において、消防庁舎の建て替えが現実的に検討されるようになり、Gは、令和4年4月20日、串間市新消防庁舎整備基本計画策定業務委託を落札した。その後、被告人を委員長とする串間市新消防庁舎整備検討委員会が設置されて種々の協議が行われるとともに、新消防庁舎については、令和7年度末までに完成させる必要のある緊急防災減災事業債で事業費の大部分を賄うことから、令和4年11月頃には、その設計業務について、時間の掛かるプロポーザル方式(設計案の優劣によって業者を選定するもの)ではなく、指名競争入札によることが決まった。(甲3、31、 32、被告人11~15頁) 3 指名競争入札に係る指名業者の推薦等⑴ 被告人は、令和5年1月11日、Aが営む発電所の事務所(以下、単に「Aの事務所」という。)を訪れ、その場で、新年の挨拶に訪れていたBのD及びEと会い、その際、両名に、新消防庁舎を具体的にどのような建物にすべきかなどといった話をした(甲46・添付資料2、E20~21頁、25~26頁、被告人9~10頁、21~22頁)。被告人がAの事務所を立ち去った後、Aは、D及びEに対し、本件業務委託の指名競争入札に係る指名業者として、Bが8社を推薦するよう指示した(甲36・添付資料2、甲46・添付資料1、2、E21~25頁、27頁)。 ⑵ Aは、令和5年1月13日頃、Dに対し、 件業務委託の指名競争入札に係る指名業者として、Bが8社を推薦するよう指示した(甲36・添付資料2、甲46・添付資料1、2、E21~25頁、27頁)。 ⑵ Aは、令和5年1月13日頃、Dに対し、電話で、指名業者の推薦案をGを通して串間市に提出するよう伝えた(甲42・添付資料4、D21頁)。 ⑶ Eは、指名業者の推薦案が記載されたリストを作成し、令和5年1月18日、Fにメールで送信した。同リストに記載された業者は、株式会社L、株式会社M、株式会社N、株式会社O、B、株式会社P、株式会社Q及び株式会社Rであり、いずれも福岡市にC支社等のある、売上高が全国上位8社の大手の設計業者(以下「県外業者」ともいう。)である。(甲26、甲29・添付資料1〔1、2枚目〕、甲46・添付資料5〔1、2枚目〕、E28~29頁、31頁、F14~16頁、D17頁)⑷ Eは、同日、Gの事務所を訪れ、上記リストについてFらと話し合った結果、消防関連の業務実績の記載を追加することになった。Eは、上記リストに消防関連の業務実績を追加し(いずれの業者にも同実績があった。)、同月19日、Fにそのデータを送信した。(甲27、甲29・添付資料1〔3~5枚目〕、甲46・添付資料4、5〔3~5枚目〕、E32~33頁、F15~17頁)⑸ Fは、令和5年1月23日、Aの事務所を訪れ、消防関連の業務実績が追加された上記リストを、Aに渡した(甲29・添付資料2、3、甲37・添付資料2、 F16~19頁。以下、同日に交付されたリストを、便宜「1回目のリスト」という。)。 ⑹ Aは、令和5年3月31日までに、被告人に1回目のリストを渡した(渡した日やその経緯には争いがある。)。 4 指名業者選定に至るまでの経過⑴ 令和5年3月31日、串間市役所財務課契約担当主幹で は、令和5年3月31日までに、被告人に1回目のリストを渡した(渡した日やその経緯には争いがある。)。 4 指名業者選定に至るまでの経過⑴ 令和5年3月31日、串間市役所財務課契約担当主幹であったSは、本件業務委託の指名競争入札に係る指名業者の選出案が記載された指名審査会資料(以下「素案」という。)を作成した。素案に記載された業者は、株式会社T、株式会社U、株式会社V、有限会社W、有限会社X、有限会社Y、株式会社Z、株式会社a、株式会社b、有限会社cの10社であり、いずれも宮崎県内の業者(以下、単に「県内業者」ともいう。)であった。Sは、翌4月1日から契約担当主幹の役職を引き継ぐことになっていたIと共に、副市長室を訪れ、慣例に従い、指名審査会の委員長である被告人に素案の事前確認を求めたところ、被告人は、素案を了承しなかった。(甲9・添付資料7、S5~6頁、10~11頁、I3~4頁、被告人29~30頁)⑵ 被告人は、同日、Iに対し、大手の設計業者が記載されたリストを渡し(そこに記載されていた業者の数やリストの体裁等には争いがある。)、O、B、P、Q、Rの5社及び県内業者であるT、V、Zの3社の合計8社からなる指名業者選出案(本件選出案)の作成を指示した(甲8・添付資料6、I5~10頁、被告人29~33頁)。 ⑶ 被告人は、同日午後3時45分頃、Aに対し、通話時間1分4秒の電話をした。Aは、同日午後3時47分頃、Eに対し、通話時間1分24秒の電話をした。 Dは、同日午後3時51分以降、本件選出案に記載された業者のうち、BとVを除く6社の事務所やその代表者等に電話をした。(甲15、甲37・添付資料4、甲44・添付資料1、D29頁)⑷ 令和5年4月6日、令和5年度第1回指名審査会が開催され、本件業務委託 の指名競争入札 社の事務所やその代表者等に電話をした。(甲15、甲37・添付資料4、甲44・添付資料1、D29頁)⑷ 令和5年4月6日、令和5年度第1回指名審査会が開催され、本件業務委託 の指名競争入札について、本件選出案のとおり指名業者を指名することが適当であると認められた(甲6)。その後、J市長は、本件選出案のとおり指名業者を決定した(甲2)。 5 指名業者決定後の経過⑴ Dは、令和5年4月10日、指名業者のうち、Bを除く7社の事務所やその代表者等に電話をしたところ、Tは受注意欲を示した(甲15、甲44・添付資料1、D33~34頁)。 ⑵ 令和5年4月21日、本件業務委託の入札が執行され、Bは1億0200万円の応札をしたが、8400万円の応札をしたTが落札した(甲1)。 第4 争点に関する当事者の主張の骨子 1 検察官の主張検察官は、前記の前提事実に加え、要旨、次の事実を主張し、被告人が行った公訴事実の①ないし③の事実は、入札等の「公正を害すべき行為」に当たると主張する。 被告人は、1回目のリストの作成者がB側(D若しくはE又はその両名。以下同じ)であり、それがBが希望する指名業者のリストであることを認識していた。被告人は、令和5年1月23日頃に1回目のリストをAから受領した後、Aに、県内業者も入れる必要があると言ったので、Aは、B側に、再度リストを作成するよう指示した。B側は、本件選出案と同じ県内業者3社及び県外業者5社からなるリスト(以下、便宜「2回目のリスト」という。)を作成し、Aを介して被告人に渡した。本件選出案は、被告人が、Bに有利となるよう、2回目のリストに基づいてIに作成させたものである。令和5年3月31日の電話(前提事実4⑶)で、被告人は、Aに対し、本件選出案を教示するとともに、Aをして、Eに対 案は、被告人が、Bに有利となるよう、2回目のリストに基づいてIに作成させたものである。令和5年3月31日の電話(前提事実4⑶)で、被告人は、Aに対し、本件選出案を教示するとともに、Aをして、Eに対し本件選出案を教示させた。 2 被告人の供述及び弁護人の主張⑴ これに対し、被告人は、要旨、次のとおり供述する。 新消防庁舎の設計は実績のある大手業者にしてもらいたいと思っていたことから、GのFに業者の調査を依頼した。令和5年1月23日にFがAの事務所に届けた1回目のリストを見たが、同リストはその調査結果であると思っており、その作成者がB側であるとは認識していなかった。 本件選出案の作成経緯は、次のとおりである。令和5年3月31日にAに持ってきてもらった1回目のリストをIに示し、同リスト記載の業者から指名願いが出ているか確認させたところ、8社のうち3社から指名願いが出ていなかった。そのため、指名願いが出ていた5社に加え、Sが作成した素案の中から、串間市で規模の大きい設計業務の実績があった県内業者3社を自ら選んで、Iに本件選出案を作成させた。したがって、2回目のリストを受け取ったという事実はない。 令和5年3月31日の電話でAに伝えた内容は、1回目のリストに記載された業者のうち3社から指名願いが出ていなかったので、代わりに、串間市で実績のある県内業者3社を選ぼうと思っている旨であり、具体的な業者名は伝えていないし、Aがそれを他人に伝えるとは思わなかった。(被告人17~19頁、24~35頁、45~47頁、64~66頁、68頁、70頁、80~81頁)⑵ こうした被告人の供述を踏まえ、弁護人は、次のとおり主張する。 被告人が、Aらと共謀して、Bに本件業務委託を落札させようと考え、B側に2回目のリストを作成させ、これに基づき本件 0~81頁)⑵ こうした被告人の供述を踏まえ、弁護人は、次のとおり主張する。 被告人が、Aらと共謀して、Bに本件業務委託を落札させようと考え、B側に2回目のリストを作成させ、これに基づき本件選出案を作成させたという事実はない。 被告人が、Gに対し、消防庁舎の設計業務の実績がある大手業者の紹介(1回目のリスト)を求めた行為は、正当な業務の範囲内である。被告人は、Aに電話で具体的な指名予定業者名を伝えておらず、これを入札等の公正を害すべき行為ということはできない。 第5 当裁判所の判断 1 A及びDの証言の信用性⑴ 2回目のリストに関するA及びDの証言の信用性検察官の主張は、B側が2回目のリストを作成してAを介して被告人に渡したと いう事実関係を中核に据えたものであり、これらは、主としてA及びDの証言に依拠するものである。しかし、次のとおり、2回目のリストに関するA及びDの証言は、いずれも信用することができない。 ア 2回目のリストに関して、A及びDは、それぞれ、概要、次のとおり証言する。 (ア) Aの証言令和5年1月23日、Fから1回目のリストを受け取り、その日のうちに被告人に渡した。その後、被告人から、地元の業者も除外するわけにはいかないといった話を聞いたので、D又はEに対し、地元の業者が入ったリストをもう一度提出するよう指示した。その後、おそらくEから、封筒に入った2回目のリストを受け取り、中身を見ないで、そのまま被告人に渡した。(A29~34頁、49~51頁、55~56頁、85頁)(イ) Dの証言1回目のリストを提出した後、AからEに対し、県内業者を3社入れて合計8社になる形でリストを作り直すよう指示があった。そこで、Dは、Eと話し合い、1回目のリスト記載の8社のうち、売上高が上位3 1回目のリストを提出した後、AからEに対し、県内業者を3社入れて合計8社になる形でリストを作り直すよう指示があった。そこで、Dは、Eと話し合い、1回目のリスト記載の8社のうち、売上高が上位3社のL、M、Nを除くとともに、県内業者で売上高が上位のZ、V、Tを加えることとし、1回目のリストに鉛筆でその旨の記載をし、同書類は未決の書類棚に入れた。修正後のリストの内容は、Eが清書してAに渡したと思うが、そのリスト(2回目のリスト)は見ておらず、Aに渡されたかどうかも確認していない。(D23~28頁、48~51頁、92~94頁)イこのA及びDの証言の信用性について検討する。 (ア) そもそも、2回目のリスト自体や同リストに係るデータは、どこからも発見されておらず(D52頁、E57頁、59頁参照)、Dが証言する1回目のリストを鉛筆で修正したという書類も残っていない(D52頁)。 また、Eは、自身の日々の行動をメモアプリに記録しており、同アプリには、箇 条書きではあるものの、会った人物、出来事の概要等が事細かに記録されているが、その中には、EやDが2回目のリストを作成したことや、EがAに2回目のリストを渡したことをうかがわせるような記載は一切ない(E58頁等参照)。Aは、日々の訪問者等を日報に記録しているが、その中にも、1回目のリストの作成指示があった令和5年1月11日より後に、DやEがAの下を訪れた記録はない(A52~53頁、D53頁参照)。AがEに2回目のリスト作成を指示したことや、Eが2回目のリストの内容をAに提示したことをうかがわせるような通話履歴もない(A54~55頁、D53~54頁参照)。 このように、2回目のリストの存在をうかがわせるような客観証拠は何一つ存在せず、このことは、1回目のリストについては、そのデ がわせるような通話履歴もない(A54~55頁、D53~54頁参照)。 このように、2回目のリストの存在をうかがわせるような客観証拠は何一つ存在せず、このことは、1回目のリストについては、そのデータや受渡しの記録を含む多くの客観証拠があることと比較すると、不自然というほかなく、むしろ、2回目のリストはなかったと考える方が自然ともいえる。 (イ) A及びDの証言を前提としても、両名とも、2回目のリストの現物を見たことすらない上、2回目のリストの作成や交付の具体的な時期については、全く明らかになっておらず(A55頁、D49頁)、2回目のリストに関する両名の証言は曖昧であるし、Eが2回目のリストを作成したことやそれをAに交付したことを確認もしなかったというDの証言も不自然である。 しかも、A及びDの証言によれば2回目のリストの作成や交付に深く関わったはずのEは、1回目のリスト記載の県外業者8社のうち3社が県内業者に代わった経緯は分からないと証言するとともに、Aから県内業者をリストに入れるように言われた事実、県内業者3社を加えたリストを作成した事実、それをAに渡した事実はいずれもない、Dと2人で県内業者3社を加える話合いをした事実もない、1回目のリストが渡った令和5年1月23日以降、同年3月31日までの間に串間市に行ったこともないなどと証言して、2回目のリストの存在自体を明確に否定し、その理由として、県内業者を入れると価格競争でかなわないなどと考えていたことや、県内業者を選ぶのであれば、付き合いの薄いTを選ぶはずがない旨も証言する(E 57~60頁)。こうしたEの証言は、2回目のリストに関する客観証拠が全く存在しないという証拠状況とよく整合する。また、Eが説明する理由も、県内業者に価格競争でかなわないことやTとの付き合いが薄いこ 57~60頁)。こうしたEの証言は、2回目のリストに関する客観証拠が全く存在しないという証拠状況とよく整合する。また、Eが説明する理由も、県内業者に価格競争でかなわないことやTとの付き合いが薄いことはDも認めるところであるし(D2頁、54頁)、実際に県内業者であるTの落札により談合が崩れたという事実経過にも照らし、合理的で納得のいくものである。 (ウ) 検察官は、A及びDの証言の信用性を支える事情として、Iの証言との整合性を挙げる。すなわち、Iは、令和5年3月31日、本件選出案を決定するに当たり、被告人から県外業者5社が記載された紙を示され、そこから業者を選定するよう指示された、指名願いが出ていない業者はなかったなどと証言しており(I5~7頁、10頁、29~30頁、39頁)、このことが、令和5年3月31日より前に、Bが希望する業者が県外業者5社及び県内業者3社に決まっていたとするA及びDの証言と整合すると主張する。 そこで検討すると、Iは、串間市職員として関与した業務について証言しており、本件に利害を有さないから、その証言は基本的には信用することができる。もっとも、被告人から示された紙に記載された業者が5社であったという点は、公判では明確に5社という記憶であると証言するが、捜査段階では、証言と同旨の供述もする一方で、「(指名願いが出ていない業者が)何か1か所くらいあったような気もしなくはないんですけど、でもそれよりも、ああここも出ちょんね、ていうのがちょっと強いのは強いので。あっても1、2社、まあでも、そこがちょっとはっきり覚えていないんですよ。」(弁3添付BD-R・2023年11月18日18時23分57秒~18時24分38秒)などとも供述しており、記憶がより鮮明であるはずの捜査段階でもこの点の記憶は曖昧であったことがうかがわれ んですよ。」(弁3添付BD-R・2023年11月18日18時23分57秒~18時24分38秒)などとも供述しており、記憶がより鮮明であるはずの捜査段階でもこの点の記憶は曖昧であったことがうかがわれる。そうした記憶が、特段の事情もなく後に明確になるということは考えにくいところ、Iはそうした事情を説明していないし、5社という点を裏付ける証拠もないから、Iの証言のうち、被告人が示した紙に記載された業者が5社であり、指名願いが出ていない業者はなかったという点までは信用することができない。 また、Iは、被告人が示した紙には県外業者のみが記載されており、被告人が、Sが作成した素案に記載された県内業者3社に丸印を付けて、県外業者と併せて指名業者を組み直すよう指示したと証言している。このように、Iが証言する紙は、2回目のリストそのものでないことは明らかであり、また、2回目のリストの存在を示すものともいえない。 そうすると、Iの証言がAやDの証言と整合するとはいえない。他方で、被告人は、前記第4の2⑴のとおり、2回目のリストの存在を否定し、Iに1回目のリストを示して指名願いが出ているかを確認させ、指名願いが出ていた5社に加え、素案の中から県内業者3社を自ら選んだ旨供述するところ、この供述は、細かい部分で齟齬はあるものの、被告人が示したリストに県外業者のみが記載されていたこと、同リストを示した際に指名願いが出ているかを確認したこと、被告人が同リストとは別に県内業者3社を選定したことといった点で、Iの証言と一致しており、Iの証言は、むしろ被告人の供述と整合的であるということもできる。 (エ) なお、2回目のリストが存在しないという点に関連して、被告人は、令和5年1月23日にAの事務所に行き、Fが持参した1回目のリストをAから見せられたが、 と整合的であるということもできる。 (エ) なお、2回目のリストが存在しないという点に関連して、被告人は、令和5年1月23日にAの事務所に行き、Fが持参した1回目のリストをAから見せられたが、まだ必要な時期ではないと考えたことや、G以外の人物がその場にいると思い、誤解を受ける可能性があると考えたことから、同年3月31日まで1回目のリストを受け取らなかったと供述する(被告人25~28頁、55~57頁)。被告人が1回目のリストを直ちに受け取らなかった理由には、やや納得し難い面があるといわざるを得ないが、被告人とAが近距離にあるAの事務所と串間市役所を互いに頻繁に行き来していたこと(被告人78頁、A9頁)等の事情も踏まえると、不合理とまではいえない。 (オ) このようにみると、2回目のリストに関するA及びDの証言は、事実に反する可能性が高いというべきであり、信用することができない。 ⑵ A及びDの証言全体の信用性ア検察官の主張において、2回目のリストの存在は中核部分であり、本件の一 連の経緯に関するA及びDの証言においても、2回目のリストの作成・交付に関する証言は核心的な部分である。A及びDの証言は、そうした非常に重要な部分について事実に反する可能性が高いのであり、この点は、当然に、両名の証言全体の信用性に影響するというべきである。 イまた、被告人の関与に関するAの証言には、次のような疑問もある。 Bが本件業務委託の受注を希望していたこと、AがBによる落札を容易にするためにB側に対して様々な指示をしたり便宜を図ったりしていたことは、争いがなく、証拠上も明らかである。本件で問題となるのは、被告人が、Aを介してこれらに関与していたかである。しかし、そもそも、本件への被告人の関与に関するAの証言は、全体として非常に曖 いたことは、争いがなく、証拠上も明らかである。本件で問題となるのは、被告人が、Aを介してこれらに関与していたかである。しかし、そもそも、本件への被告人の関与に関するAの証言は、全体として非常に曖昧な内容にとどまっている。 すなわち、Aは、指名業者を業者から推薦させることを被告人に話したと証言する一方で、そうした話をいつどこでしたのか分からないと証言し(A23~24頁)、その際の被告人の対応についても、話をした際の被告人の反応は「分かった分かった」というようなものであった(A23頁)、被告人との間でしっかりと話をしたことはなく、おそらく被告人も自身と同じ思いであろうと考えていた(A73~74頁)などと証言するにとどまっており、非常に曖昧である。それどころか、Aは、被告人らが、Bの作成したリストのとおりではなく、串間市にとって実績のあるZ、T等を加えたと思っている(A36頁)、自身の気持ちとしては、被告人は何もしていないと思っている(A39頁)などとも証言しているのであり、被告人の関与の有無を直接証言する立場にある唯一の人物であるAの証言は、そもそも事実関係を認定するだけの具体性を伴っていないというべきである。 ウ加えて、次のとおり、むしろ、Aが、被告人の意向等と関係なく、B側への指示等をしていたのではないかと疑わせる事実も存在する。 (ア) Aは、衆参両院の秘書会長まで務めた有力者であるKから、バイオマス発電事業の立ち上げについて協力を受けたことがあった(A42頁、被告人3頁)。また、Dは、Bの宮崎県関係の業務に関連して、Kと数年来の付き合いがあったとこ ろ、Kとの関係を維持して、本件業務委託の数倍の規模があるd市庁舎の設計業務に携わりたいという思いがあった(D42~47頁、81頁)。AにBを紹介したのは、そのKである 付き合いがあったとこ ろ、Kとの関係を維持して、本件業務委託の数倍の規模があるd市庁舎の設計業務に携わりたいという思いがあった(D42~47頁、81頁)。AにBを紹介したのは、そのKである。そして、Kは、Bが本件業務委託を落札した場合の外注関係についてAと相談していた上(D46頁)、Tが本件業務委託を落札した後には、Dに「先ほどAさんから連絡ありましたがダメだったようですね。何が起こったのか理解できませんが…手が打てなかったんですかね。」とのショートメールを送信している(甲44・添付資料3、D37頁)。 このように、Kは、本件業務委託について、Bが落札することを希望し、一定の関与をしていたことがうかがわれるのであり、AやDには、Kの意向を汲んでBが本件業務委託を落札することについて、共通の利害があったといえる。 (イ) 他方で、被告人に、一設計業者であるBに本件業務委託を落札させる動機があったことをうかがわせる事情は、ほとんど見当たらない。 Bは、以前から串間市の消防事業に関わっていたが、それは、Gが落札した業務委託について正規に外注を受けて関与したものである(甲31、甲32、甲41・添付資料1、D8~9頁、F8頁)。被告人は、BがGの業務に関わっていることは認識していなかったと供述しているし、そうした関与について一定の認識があったとしても、被告人が、受注業者の外注先にすぎないBに特別な思いを抱いていたとは考えにくい。 また、被告人とB側との間で直接何らかのやり取りがあったのは、前提事実のとおり、令和2年6月25日に串間市役所で挨拶を受けた時と、令和5年1月11日にAの事務所で会った時に加え、令和4年3月8日に串間市役所でD及びEと偶然出会って挨拶した時(甲45・添付資料1、E3~6頁、50~51頁、D75~76頁 所で挨拶を受けた時と、令和5年1月11日にAの事務所で会った時に加え、令和4年3月8日に串間市役所でD及びEと偶然出会って挨拶した時(甲45・添付資料1、E3~6頁、50~51頁、D75~76頁)の3回しかない。ましてや、本件業務委託についての会話がされたのは、令和5年1月11日にAの事務所で会った時しかないところ、これについても、新年の挨拶に訪れたAの事務所で偶然出会った際に(Dらが来る際に被告人に来てもらったというAの証言〔A26頁、67頁〕は、曖昧であり、捜査段階供述からの 変遷もあって〔A88頁〕、信用することができない。)、共通の話題について言葉を交わした程度のことともいえるものであり、この一度の会話程度では、被告人がBに特別な思いを抱いていたことがうかがわれるとはいい難い。 客観証拠をみても、被告人がBに関心を有しているとうかがわせるものは、ほとんど見当たらない。僅かに、Eが使用していたメモアプリに、①令和4年11月18日のAの発言として「副市長もBを分かっている」という記載(甲45・添付資料2)が、②令和5年1月24日のFの発言として「副市長よりBの指導宜しく」という記載(甲46・添付資料6)があるくらいである。しかし、①については、Aの発言にすぎないし、Eの証言によっても文脈が不明である(E18頁)。②については、Fが、被告人から直接聞いたのか、Aから伝え聞いたのかについて、FとEの証言が分かれている上、両名の証言によっても、その時期や文脈は非常に曖昧であり、発言の趣旨も不明である(E38頁、F21頁、31~32頁、37~40頁)。そうすると、そもそも、被告人が上記①や②のような発言をしたという事実は認められず、メモアプリの上記各記載は被告人がBに関心を有していたことの裏付けになるとはいえない。 被告人に 7~40頁)。そうすると、そもそも、被告人が上記①や②のような発言をしたという事実は認められず、メモアプリの上記各記載は被告人がBに関心を有していたことの裏付けになるとはいえない。 被告人には、個人的にも、副市長としても、Bに対し、不正を働いてまで便宜を図るような動機があったことはうかがわれない。 (ウ) このように、AやDには本件業務委託をBに落札させる共通の利害があるとうかがわれる一方で、被告人にそうした動機がうかがわれないことを踏まえると、Aが、本件業務委託について、Bが望んでいたプロポーザル方式ではなく、指名競争入札となったことを受けて、被告人の意向等と関係なく、独断で、Bに落札させるべく行動した可能性も相応にあるというべきである。 このようにみると、AやDには、自己の刑事責任を軽減するために被告人が主導した官製談合であるかのような供述をしたり、そうした見立てを有する捜査機関に迎合的な供述をしたりする動機があることも否定することはできない。 エ以上の点も踏まえると、A及びDの証言は、2回目のリストに関する部分を 信用することができないというにとどまらず、前提事実で認定したような争いのない点や客観証拠による明確な裏付けがある点、設計業務等に関する一般的な事項といった点を除き、基本的に疑わしく、およそ信用することができないというべきである。 2 被告人の行為や認識についての認定以上の点を踏まえ、更に進んで、検察官の主張する被告人の行為及び被告人の認識について検討する。 ⑴ 被告人が1回目のリストの作成者がB側であると認識していたかア検察官は、被告人が、B側が1回目のリストを作成したことを認識していたと主張する。しかし、そのことを示す直接的な証拠は、リストを業者に出させる旨を被告人に話したとい 側であると認識していたかア検察官は、被告人が、B側が1回目のリストを作成したことを認識していたと主張する。しかし、そのことを示す直接的な証拠は、リストを業者に出させる旨を被告人に話したというAの証言しかないところ、このAの証言がおよそ信用することができないことは、既に説示したとおりである。 イもっとも、被告人がAの事務所でB側に新消防庁舎に関する話をした直後に、AがB側に1回目のリストの作成を指示し、B側が作成した1回目のリストがAを介して被告人に渡り、それを参考に本件選出案が作成されたという客観的な経過を踏まえると、被告人が1回目のリストの作成者がB側であると認識していたことを疑う余地がないではない。 これに関して、被告人は、前記第4の2⑴のとおり、1回目のリストはGのFに依頼した調査結果であると認識していた旨供述するので、その信用性について検討する。 本件業務委託は、串間市における入札事業の中では設計金額が1億円を超える規模の大きいものであり(甲3・添付資料、S18頁、I23頁)、また、消防庁舎の設計は、機能が複雑で難易度が高いものであって(E8頁、49~50頁、D81~82頁、I26~27頁)、串間市としても慎重に業者を選択する必要があったといえる。また、Gは、通常業務として、自治体に設計業務の委託先についての情報を提供しており(F22~23頁)、被告人も、そうした業務がコンサルタン ト会社であるGの通常の業務に含まれると認識していた(被告人20頁、54頁)。 そうすると、串間市新消防庁舎整備検討委員会の委員長であった被告人が、将来の適切な指名業者の選出のために、Fに上記のような調査を依頼することは、自然なことといえる。さらに、1回目のリストの作成に係る経緯は、Eが作成した当初のリストには消防関連の業務実 った被告人が、将来の適切な指名業者の選出のために、Fに上記のような調査を依頼することは、自然なことといえる。さらに、1回目のリストの作成に係る経緯は、Eが作成した当初のリストには消防関連の業務実績がなかったところ、GのFらとの打合せを経て、上記業務実績が追記されたというものである。Fが、新消防庁舎の整備基本計画策定業務を受託して上記検討委員会にも出席し、串間市側と業務上のやり取りをしていたことも踏まえると、こうした経緯は、Fに消防庁舎の設計ができる大手業者の調査を依頼していたという被告人の供述を裏付けているということもできる。検察官は、被告人の供述では、1回目のリストの提出がAを介して行われた合理的理由がないと主張するが、Aが1回目のリストの作成を指示した約2日後に、その提出経路をG経由とするよう指定されたという経緯にも照らすと、例えば、被告人のGに対する依頼を何らかの事情で認識したAが、Bの落札を容易にしようと考え、B側にリストの作成を指示した上、これをG経由で提出させることにしたといった可能性も十分に考えられる。被告人がGに依頼したリストをAを介して受け取ったことについても、被告人とAとの関係性等にも照らせば、特段不自然とはいえない。 この点、Fは、被告人から消防庁舎の設計実績がある業者の調査を依頼された記憶がない旨証言する(F21~22頁)。しかし、Fは、被告人の依頼が存在しないと断定しているわけではない。また、Fは、串間市側が消防庁舎の設計ができる業者の情報を必要としていたことを認識していた旨の証言もしている(F15頁、28頁、34~35頁、41頁)。こうした点に加え、Fが、1回目のリストをAに渡した日である令和5年1月23日に被告人と会った場所について、公判では上記検討委員会の場と証言するが、捜査段階当初には、Aの事務所 4~35頁、41頁)。こうした点に加え、Fが、1回目のリストをAに渡した日である令和5年1月23日に被告人と会った場所について、公判では上記検討委員会の場と証言するが、捜査段階当初には、Aの事務所と、被告人の供述と整合する供述をする(F31~32頁、38~39頁)など、関連する記憶に曖昧な点がみられることにも照らすと、Fの証言には、これと整合しない被告人の供述を排斥し得るほどの信用性があるとはいえない。 そうすると、被告人の供述の信用性を否定することはできず、被告人が1回目のリストの作成者がB側であると認識していたとは認められない。 ⑵ 令和5年3月31日の電話の内容及び被告人の認識ア令和5年3月31日の電話に関する関係者の証言をみると、Aの証言は、被告人から、電話で、ほぼそのとおり(2回目のリストのとおり)でいく旨言われ、それをそのままEに電話で伝えた、具体的な業者名は聞いておらず、ZやTは、Bが選んだのではなく、被告人が選んだものと認識しているというもの(A34~36頁、74~75頁、87頁)、Eの証言は、Aから、電話で、指名業者の候補8社の業者名を伝えられてメモし、それをそのままDに伝えたというもの(E39頁、60~61頁)、Dの証言は、Eから、AからBが選んだ県内3社と県外5社になったという連絡があったと聞いたというもの(D28頁)である。 イ検察官は、上記3名の供述が主要部分で完全に一致すると主張する。しかし、そもそも、A及びDの証言は、2回目のリストの存在を前提とするものであるのに対し、Eはその不存在を前提として証言しているのであって、A及びDの証言とEの証言は、根本的に異なるものであるし、それに伴い、具体的な業者名を伝えられたかどうかといった点を含め、食い違いが生じている。AとDの証言の間でも、2 として証言しているのであって、A及びDの証言とEの証言は、根本的に異なるものであるし、それに伴い、具体的な業者名を伝えられたかどうかといった点を含め、食い違いが生じている。AとDの証言の間でも、2回目のリストに記載のない業者が含まれるか否かといった点で食い違いが生じている。そして、A及びDの証言を信用することができないことは、既に説示したとおりであり、取り分け、2回目のリストの存在と密接に結び付いている令和5年3月31日の電話に関するA及びDの証言は、到底信用することができない。 ウ Eの証言についてみると、Eは、電話を受けた際のメモは警察に提出したなどと証言する(E66~67頁)。しかし、Eが警察に提出したと述べるメモは、証拠上その存在が全くうかがえない。また、Eは、記憶がより鮮明であったはずの捜査段階において、記憶が薄れていたが、警察官から、Aとの間で1分20秒(正しくは1分24秒)の通話があることや、その後にDが他の業者に電話をしていることを指摘されて考えてみると、Aから電話で指名業者を教えてもらってDに報告 したと思う旨(弁2添付BD-R・2023年11月17日16時56分04秒~47秒)、推測にとどまる供述をしていた。したがって、具体的な記憶があるかのようにいう証言との間では変遷があるところ、そのように後から記憶が明確になることは通常は考え難く、供述の変遷について合理的な理由の説明もない。したがって、こうした供述経過は不合理なものといわざるを得ない。そうすると、後記エの通話履歴と整合する面があることを踏まえても、Eの証言も信用することができないというべきである。 エもっとも、前提事実のとおり、被告人がAに電話をした後、即座にAからEへの電話があり、その直後に、Dが本件選出案に記載された指名候補の業者8社のうち 用することができないというべきである。 エもっとも、前提事実のとおり、被告人がAに電話をした後、即座にAからEへの電話があり、その直後に、Dが本件選出案に記載された指名候補の業者8社のうち、BとVを除く6社に電話をしている。このことは、本件選出案に関する何らかの情報が、被告人からAを通してEに伝わったことを強く推認させるものといえる。 しかし、こうした通話履歴は、被告人が供述するような発言内容であっても、一定程度説明が可能である。すなわち、県外業者については、Dが、1回目のリストの上位3社は財閥系であってグループ会社から仕事が来るなどの理由から、串間市に指名願いを「出していなかったと言われれば、さもありなんという形、感じに取ります。」と証言していること(D25頁)も考慮すると、「3社から指名願いが出ていなかった」という発言から、残りの5社を推測することは可能であったと考えられる。県内業者3社についても、DやEが業務において宮崎県内の設計業者の実績をある程度把握していれば、推測することも可能であったと考えられるし、串間市で実績のある県内業者を把握していたAが、それをEに伝えたという可能性もある。 また、D及びEは、B以外の県外業者は、遠方で、かつ、大手業者にとっては規模の小さい本件業務委託の落札に興味を示さないと思っていたと証言しており(D18~19頁、E17頁)、実際の応札状況に照らしても、談合に当たって重要となるのは県内業者であったというべきであるが、Dは、EがAからの電話を受けた 直後には、県内業者3社のうちVには電話をかけていないのであり、この点からは、むしろ、被告人が供述するように、指名業者を直接示すような教示がなかったと考える方が自然ともいえる(Dは、Vに電話をかけるのを忘れていたと証言するが〔D31頁 をかけていないのであり、この点からは、むしろ、被告人が供述するように、指名業者を直接示すような教示がなかったと考える方が自然ともいえる(Dは、Vに電話をかけるのを忘れていたと証言するが〔D31頁〕、納得のいく説明とはいい難い。)。 被告人は、Aに電話をした理由について、これまでも串間市のことについて取り組んでいたAが預かっていて、中身も見ている1回目のリストを、Aに持ってきてもらったことから、余り深く考えずに、伝えることが必要であると感じたと供述しており(被告人35頁、68~69頁)、必ずしも納得のいく説明とはいえないが、Aとの関係性等にも照らすと、不合理とまではいえない。 オさらに、被告人が、Aに電話で伝えた内容がB側に伝わると認識していたかについて検討する。既に説示したとおり、被告人には、Bに本件業務委託を落札させる動機はうかがわれず、被告人が、1回目のリストの作成者がB側であると認識していたとも認められない。そして、被告人がAに伝えた内容は、上記のとおり、1回目のリストに記載された8社から5社を選び、代わりに県内業者を3社選ぶ旨を伝えたという程度である。こうした被告人の認識や発言内容に照らすと、被告人が、Aに電話をかけた際、その内容がBを含む業者側に伝わると認識していたとは認められない。 3 認定を踏まえた法的評価以上のとおり、検察官が主張する公訴事実の①及び②の事実については、いずれも認定することができず、被告人が供述するとおりである合理的な疑いが残る。そこで、前提事実に加え、被告人が供述する事実(前記第4の2⑴)を踏まえて、犯罪の成否を検討する。 ⑴ 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)8条及び刑法(令和4 まえて、犯罪の成否を検討する。 ⑴ 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)8条及び刑法(令和4年法律第67号2条による改正前のもの)96条の6第1項にいう「公正を害すべき行為」とは、いずれも、入札等が公正に行われることに客観的に 疑問を抱かせる行為ないしその公正に正当でない影響を与える行為をいうと解される。 ⑵ 公訴事実の①及び③の事実(Bに有利な本件選出案を作成・決定させたとされる点)について被告人は、1回目のリストに記載された8社のうち5社を含める形で、Iに本件選出案を作成させている。そして、1回目のリストは、実際には本件業務委託の受注を希望していたB側が作成したものであったから、こうした行為は、Bによる談合を容易にさせる行為であるといえる。そうすると、県内業者3社はBの希望と関係なく被告人が選んだことを考慮しても、1回目のリストに記載された8社のうち5社を含める形で本件選出案を作成させ、そのとおりに指名業者を決定させた行為は、Bに有利な業者を指名業者に選出し、Bに落札させようとしたA、Dらの意図や行動と併せて評価すれば、入札等の「公正を害すべき行為」に当たる。 しかし、既に説示したとおり、被告人には、そうした意図はなく、また、1回目のリストの作成者がB側であるという認識はなく、同リストは被告人がGに依頼をして消防関連の業務実績のある業者を調査してもらったものであると認識していたのであるから、「公正を害すべき行為」であるとの評価を基礎づける事実についての故意を欠く。また、このような認識を欠く被告人と、A、D、E及びFとの間の共謀も認められない。 ⑶ 公訴事実の②の事実(Aらに本件選出案を教示したとされる点)につ の評価を基礎づける事実についての故意を欠く。また、このような認識を欠く被告人と、A、D、E及びFとの間の共謀も認められない。 ⑶ 公訴事実の②の事実(Aらに本件選出案を教示したとされる点)について被告人は、Aに対し、1回目のリストに記載された8社のうち3社に指名願いが出ていなかったため、その代わりに、串間市での実績のある県内業者を3社選ぶ旨を伝えている。その結果、Aを介してB側に指名業者に関する情報が伝えられ、これによって実際にBによる談合を誘発していることからすると、こうした被告人の行為は、指名業者に関する情報をB側に提供し、Bに落札させようとしたA、Dらの意図や行動と併せて評価すれば、入札等の「公正を害すべき行為」に当たる。 しかし、被告人は、指名業者がはっきり分かる形でAに伝えたものではなく、ま た、既に説示したとおり、Aに教示した内容がB側に伝わると認識していたとは認められない。被告人の認識としては、指名業者の選出に当たって参考にした資料を持参してくれた親しい知人であるAに対し、その選出方針の概要を伝えたにすぎない。もちろん、指名競争入札参加者の決定等については、串間市建設工事指名審査会要綱において、厳に秘密を保持しなければならないとされているから(甲13、48)、こうした被告人の行為は、行政上、軽率との誹りを免れないが、被告人の認識する事実を前提とすれば、指名業者ではないAに、上記程度の情報を伝えることが、入札等の公正を害する具体的危険を生じさせるとは認め難い。そうすると、被告人は、「公正を害すべき行為」であるとの評価を基礎づける事実について認識を欠くから、故意がない上、被告人とA、D、E及びFとの間に共謀が認められず、Aをして、BのEに対し、何らかの事項を教示させたとも認められない。 ⑷ 小括よっ 価を基礎づける事実について認識を欠くから、故意がない上、被告人とA、D、E及びFとの間に共謀が認められず、Aをして、BのEに対し、何らかの事項を教示させたとも認められない。 ⑷ 小括よって、検察官が入札等の「公正を害すべき行為」と主張する公訴事実の①ないし③に関して被告人がしたと認められる事実は、A、Dらの意図や行動と併せて評価すれば入札等の「公正を害すべき行為」に当たるものの、被告人に故意やA、Dらとの間の共謀は認められない。 なお、検察官は、論告において、被告人がB側に1回目のリストを作成させて受領した点も、入札等の「公正を害すべき行為」に当たると主張する。しかし、この点が明らかに訴因を逸脱していることはおくとしても、これまで検討したところによれば、被告人がB側にリストを作成させるなどした事実が認められないことは明らかであるから、検察官の主張は採用することができない。 第6 結語以上のとおり、本件公訴事実については犯罪の証明がないから、刑訴法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。 (求刑懲役1年6月)令和7年12月15日 宮崎地方裁判所刑事部裁判長裁判官設樂大輔 裁判官古川翔 裁判官寺島大貴
▼ クリックして全文を表示