令和6(わ)28 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害被告事件

裁判年月日・裁判所
令和6年10月28日 佐賀地方裁判所
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判決文本文3,608 文字)

- 1 - 令和6年10月28日宣告令和6年(わ)第28号入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害被告事件 主文 被告人を懲役2年に処する。 この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 (犯罪事実)被告人は、佐賀県a市長として、同市を代表し、同市が発注する入札、契約の締結等の事務の管理・執行を統括するなどの職務に従事していたもの、分離前の相被告人Aは、地域開発事業の企画及びコンサルティング業務、各種メディアの企画、制作等を業とする株式会社Bの代表取締役として、同社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は、a市が令和5年2月21日に第1次審査、同年3月4日に第2次審査を行った公募型プロポーザル方式(以下「本件プロポーザル」という。)による「a市ふるさと納税PR強化事業業務委託」の契約の締結に関し、前記Bを同契約の受託候補者に特定させようと考え、Aと公契約関係競売入札妨害の限度で共謀の上、前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに、その職務に反し、同年2月8日頃から同年3月3日頃までの間に、佐賀県内又はその周辺において、Aに対し、職務上知り得た本件プロポーザルの秘密事項である審査委員会評価部会評価委員の所属・氏名等の情報を教示し、さらに、同年2月16日頃、佐賀県内又はその周辺において、Aに対し、職務上知り得た本件プロポーザルの秘密事項である他の参加表明事業者の提案書を提供するなどし、もって入札等に関する秘密を教示することにより入札等の公正を害すべき行為を行うとともに、偽計を用いて、公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした。 - 2 - するなどし、もって入札等に関する秘密を教示することにより入札等の公正を害すべき行為を行うとともに、偽計を用いて、公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした。 - 2 - (法令の適用)罰条入札に関する秘密を教示した点 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(以下「官製談合防止法」という。)8条公契約関係競売入札妨害の点刑法60条、96条の6第1項科刑上一罪の処理 刑法54条1項前段、10条(重い官製談合防止法違反の罪の刑で処断。ただし、罰金刑の任意的併科については、公契約関係競売入札妨害罪について定めたそれによる。)刑種の選択 懲役刑を選択刑の執行猶予刑法25条1項(量刑の理由) 1 本件は、当時a市長であった被告人が、a市が実施した公募型プロポーザル方式によるふるさと納税関連業務の委託契約の締結に関し、同プロポーザルの参加表明事業者である判示会社の代表者である共犯者と共謀の上、共犯者に対し、秘密事項を教示したという官製談合防止法違反、公契約関係競売入札妨害の事案である。 2(1) 被告人は、共犯者に対し、a市において秘密事項として厳しく管理され、限られた内部関係者しか知り得ないはずの評価委員に関する情報や他の事業者の提案書といった秘密事項を教示した。本件プロポーザルは、事業者から提出される提案書等や、事業者によるプレゼンテーションの内容を基に、見積額等の価格の多寡の点だけでなく、事業者の実効性や業務遂行能力及び企画力などを総合的に審査することによって、より質の高い事業者との委託契約の締結を目的として行われたものであって、このような総合的、多角的な審査が行われるに当たって、一部の事業者に 業務遂行能力及び企画力などを総合的に審査することによって、より質の高い事業者との委託契約の締結を目的として行われたものであって、このような総合的、多角的な審査が行われるに当たって、一部の事業者に対してのみ、審査を行う評価委- 3 - 員に関する情報が教示され、他の事業者の提案内容が分かる提案書が提供されるとすれば、事業者の間の公平性が大きく損われることは明らかである。 実際に、共犯者は、被告人から提供を受けた情報等を会社内で共有し、他の事業者が時間と労力をかけて作成した提案書の内容を参考にしつつ、第2次審査に向けた対策を講じただけでなく、評価委員やその関係者に接触して、自社を売り込むといった行為にまで及んでおり、このような行為を可能にした本件犯行は、参加事業者間の自由な競争を阻害し、公の入札等の公正を害する程度が高い悪質なものといわざるを得ない。 弁護人は、公共工事の一般入札で最低入札価格が漏示された場合と比較して、本件の秘密事項の教示は、受託候補者を選定する目的との関係で間接的な影響を与えたにすぎず、市政に実害も生じていないなどと指摘し、本件は入札の公正さが現実に害された程度が低い旨を主張している。しかし、そもそも、競売入札妨害罪(官製談合防止法上の職員による入札等妨害の罪も含む。)は、入札等における参加者間の自由な競争それ自体を保護しようとするものであって、本来、必ずしもその犯罪行為は、入札等の施行者の側の経済的な損失や、受託候補者の選定といった入札等の結果と直接結びつくものに限られるわけではない。そして、上記のとおり、総合的、多角的な視点から審査をすることにより質の高い事業者の選定を目的とする公募型プロポーザル方式において、そのような審査の過程で重要となる秘密事項を教示することが、参加者間の自由な競争を阻害する程度が高 角的な視点から審査をすることにより質の高い事業者の選定を目的とする公募型プロポーザル方式において、そのような審査の過程で重要となる秘密事項を教示することが、参加者間の自由な競争を阻害する程度が高いことは明らかである。そうすると、本件犯行により実害が生じていないなどとはおよそいえないし、一般競争入札において価格が漏示されるような場合と本件とを、受託候補者の選定結果との直接的な結びつきの有無の点につき単純に比較して、本件の悪質性がより低いかのようにいう弁護人の立論にも直ちには賛同できない。 (2) 被告人は、a市の現役の市長として、担当の市職員を適切に監督するなどして、適正に入札等に関する職務を行うべき義務があったにもかかわらず、- 4 - 市長として秘密事項を知り得る立場にあったことを利用して犯行に及んでおり、その職務違背の程度は著しく、また、本件は、被告人の関与がなければ実現困難な犯行であったといえる。 そして、このような職務違背の程度の大きさや、被告人の果たした役割の重要性から考えると、共犯者において、被告人に対し、ふるさと納税関連の業務実績がない判示会社に業務を受託させようと強く働き掛けたことが犯行のきっかけとなったことを考慮しても、被告人は、共犯者と比較してより重い責任をとるべき立場にあるというべきである。 (3) 本件犯行の動機について、被告人は、被告人の選挙時の公約であるふるさと納税の目標寄付金額の達成にあり、私的利益の追求にあったわけではない旨を述べている。しかし、被告人は、結局のところ、入札等の実施に際して参加事業者間の自由な競争を確保することの価値や重要性を顧みることなく、長年親密な関係にあった共犯者からの私的な依頼に応じて、市長としての職責に明確に反する違法行為に手を染めたものにほかならない。直接的な金銭 間の自由な競争を確保することの価値や重要性を顧みることなく、長年親密な関係にあった共犯者からの私的な依頼に応じて、市長としての職責に明確に反する違法行為に手を染めたものにほかならない。直接的な金銭的見返り等を得たわけではないにせよ、本件は、独善的で身勝手な犯行といわざるを得ず、犯行に至る経緯や動機に大きく酌むべき事情があるとはいえない。 3 以上の犯情によれば、本件は、同種事案の中で決して軽い部類に属する事案ではないといえる。 その上で、被告人に対する具体的な刑期を定めるに当たって、以上の点に加えて、犯情以外の点を見ると、被告人が、事実を認めた上で、法廷でも、a市の職員や市議会の関係者、市民に対し多大な迷惑と心配を掛けたことに対する真摯な謝罪の言葉を述べるなど、反省の態度を示したこと、前科前歴がないこと、本件によりa市長を辞任するなど、一定の社会的な制裁を受けたことなど、被告人にとって斟酌すべき事情も認められる。そこで、それらの事情をも考慮し、被告人に対しては、今回に限り、その刑の執行を猶予し、社会内での更生の機会を与- 5 - えるのが相当と判断した。 (求刑・懲役2年)令和6年10月29日佐賀地方裁判所刑事部 裁判長裁判官岡 﨑 忠之 裁判官松村一成 裁判官秋山慎悟

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