昭和52(オ)903 損害賠償

裁判年月日・裁判所
昭和54年5月31日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所 昭和50(ネ)1024
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。      上告費用は上告人の負担とする。          理    由  上告代理人坂根徳博の上告理由について  原審の確定した事実によれば、(一) 被

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判決文本文2,558 文字)

主    文      本件上告を棄却する。      上告費用は上告人の負担とする。          理    由  上告代理人坂根徳博の上告理由について  原審の確定した事実によれば、(一) 被上告人とDとの間に締結されていた原判 決判示の本件保険契約は、D所有の自動車につき被上告人を保険者、Dを被保険者、 保険金額を一〇〇〇万円とし、昭和四〇年一〇月に改訂され昭和四七年まで存在し た自動車保険普通保険約款(以下「本件約款」という。)に基づく自動車対人賠償 責任保険契約であつて、保険者である被上告人において被保険者であるDに対し同 人が前記所有自動車によつて他人の生命又は身体を害することにより法律上損害賠 償義務を負担することによつて被る損害を填補することをその内容とするものであ つたところ、本件保険契約で定められた保険期間内に前記D所有の自動車を加害車、 上告人を被害者とする原判決判示の本件事故が発生した、(二) 本件約款第三章第 一四条第一項には、「被保険者がこの保険契約に基づいて損害のてん補を受けよう とするときは、事故発生の日から六十日以内または当会社が書面で承認した猶予期 間内に保険金請求書、損害額を証明すべき書類および当会社が特に必要と認める書 類または証拠を保険証券に添えて、当会社に提出しなければならない。」と、また、 同第一五条には、「当会社は前条の書類または証拠を受領した日から三十日以内に 保険金を支払う。当会社が前項の期間内に必要な調査を終了することができないと きは、その終了後遅滞なく保険金を支払う。」とそれぞれ定められていた、(三)  本件事故を原因とするDの上告人に対する損害賠償については、両者間に争いがあ り、示談が成立しないで訴訟に発展し、右訴訟においてDが上告人に対し損害賠償 として四一五〇万円と遅延損害金を支払うべき旨の第一審の判決が 因とするDの上告人に対する損害賠償については、両者間に争いがあ り、示談が成立しないで訴訟に発展し、右訴訟においてDが上告人に対し損害賠償 として四一五〇万円と遅延損害金を支払うべき旨の第一審の判決が言い渡され、右 - 1 - 判決は昭和五〇年五月二八日確定するに至つた、(四) 被上告人は、右判決の確定 前Dに対し約定の保険金一〇〇〇万円を支払つた、というのである。  右(一)の事実によれば、Dは、本件保険契約所定の保険期間内に所定の本件事故 が発生したことにより、被上告人に対し、所定の保険金額の範囲内において保険金 請求権を取得し、これを行使しうるに至つたものといわなければならないが、しか し、このことから直ちに、右保険金請求権の取得と同時に、あるいはその請求をし た時ないしはその時から一定の期間を経過した時に、債務の履行期が到来するもの とすることはできない。一般に、損害保険契約は、保険事故の発生により被保険者 が被る損害の填補を目的とし、その場合における填補額は、被保険者が現実に被つ た具体的損害の額に限られるものであるところ、本件保険契約のような責任保険契 約においては、被保険者が事故により第三者に対して損害賠償責任を負うことによ つて被る損害を填補することを目的とし、したがつて、被保険者が現実に第三者に 対し損害賠償責任を負担するに至つたときでも、その賠償額が具体的に確定されな い限り、契約上填補すべき損害額も確定せず、保険契約者としては現実に支払うべ き保険金の額を確認することができない関係にあるから、それより前の段階におい て保険金支払債務の履行期が到来したとし、その後における履行遅滞の責任を保険 契約者に負わしめることは妥当とはいえない。それ故、保険契約上右と異別の約定 が存するときは格別、そうでない限り、損害賠償額が確定されるまでは、保険契約 者の保険金支 その後における履行遅滞の責任を保険 契約者に負わしめることは妥当とはいえない。それ故、保険契約上右と異別の約定 が存するときは格別、そうでない限り、損害賠償額が確定されるまでは、保険契約 者の保険金支払債務の履行期は到来しないものと解するのが相当である。そして、 本件保険契約における前記(二)の諸条項は、右の趣旨を前提とするものと解されこ そすれ、これと異なる特段の定めをした趣旨のものとは認められない。  ところで、前記(三)、(四)の事実によれば、本件においては、責任関係の当事者 であるDと上告人との間でDが上告人に対して負担すべき損害賠償の額につき争い があり、上告人においてDを被告として損害賠償請求の訴を提起し、右訴訟の第一 - 2 - 審係属中に被上告人がDに対して約定の保険金全額を支払つたというのであり、右 の事情のもとにおいては、被上告人による右保険金支払当時、被保険者であるDが 被害者である上告人に対して負担すべき損害賠償の額は未だ確定していなかつたと いわざるをえないから、被上告人は、その保険金支払債務の履行期到来前にこれを 履行したものというべく、いかなる意味においても被上告人は右保険金支払債務に つき履行遅滞があつたものということができないことは明らかである。  以上と同趣旨の原判決の判断は正当であり、論旨は、右と異なる独自の見解に立 つて原判決を論難するものであつて、採用することができない。  よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主 文のとおり判決する。      最高裁判所第一小法廷          裁判長裁判官    中   村   治   朗             裁判官    団   藤   重   光             裁判官    藤   崎   萬   里             裁判官      中   村   治   朗             裁判官    団   藤   重   光             裁判官    藤   崎   萬   里             裁判官    本   山       亨             裁判官    戸   田       弘 - 3 -

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