平成15(ネ)329 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成15年12月24日 広島高等裁判所 広島地方裁判所 福山支部 平成13(ワ)312
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判決文本文10,592 文字)

主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 控訴人は,被控訴人に対し,金74万0269円及びこれに対する平成13年9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審を通じて8分し,その1を被控訴人の,その余を控訴人の,各負担とする。 5 この判決の第2項は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 2 被控訴人の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,控訴人との間でコンピュータシステムの導入・保守管理契約を締結したとする被控訴人が,控訴人の債務不履行により損害を被ったとして損害金603万1000円及びこれに対する平成13年9月6日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は,請求の一部112万0250円と遅延損害金の限度で認容したところ,控訴人が請求の棄却を求めて控訴した。被控訴人からの控訴はない。 2 当事者の主張(1) 被控訴人(請求原因)ア被控訴人は,控訴人との間で,平成12年4月27日及び同年5月8日に,遅くとも同年5月15日までに,被控訴人への新たな社会福祉法人会計システムの導入及びその保守管理契約(契約期間は平成12年5月1日から同13年4月30日までで,その後は更新を原則とするもの。)を締結し,ハードウェア(コンピュータ2台)及びソフトウェアについてはA株式会社とのリース契約を締結した。上記の代金は以下のとおりである。 (ア) リース契約リース代金 201万6000円(イ) 保守管 ュータ2台)及びソフトウェアについてはA株式会社とのリース契約を締結した。上記の代金は以下のとおりである。 (ア) リース契約リース代金 201万6000円(イ) 保守管理契約代金年間合計30万円(消費税別)(内訳は,①基本,②財務会計,③固定資産管理,④職員俸給計算, ⑤栄養給食管理の各システムにつき,いずれも月額5000円)イ被控訴人は,控訴人に対し,遅くとも平成13年4月30日までに,同日までの保守管理料30万円及びこれに対する消費税1万5000円の合計31万5000円を支払った。 また,リース料についても,期限到来分は既に支払い,今後も上記金額に充つるまで支払を継続しなければならない。 ウ控訴人は,財務会計,固定資産管理,栄養給食管理の各システムについては全く役に立たないものしか作成できず,保守管理も全く役に立たない。基本及び職員俸給計算の各システムも,これらと一体となるもので独立に存在し得るものではない。 エ被控訴人は,控訴人に対し,不具合を直し,使用に堪えるものにするように何度も催告したが,誠意ある対応をしないのみならず,免責の確認承諾書に署名しないと作業しないと申し出たり,何の連絡もなしにフロッピーディスクのみを送付してくるなどの背信行為を重ねた。 オ被控訴人は,控訴人の信頼関係を破壊する債務不履行を理由に,平成13年5月1日に本件契約を解除した。 カ被控訴人は,控訴人の債務不履行によって,1年間手作業による社会福祉法人会計を余儀なくされ,更に,新しいコンピュータソフト会社を探して本件と同様のシステムの構築及び保守管理契約を締結することを余儀なくされ,精神的苦痛を受けた。その慰謝料として300万円が相当 福祉法人会計を余儀なくされ,更に,新しいコンピュータソフト会社を探して本件と同様のシステムの構築及び保守管理契約を締結することを余儀なくされ,精神的苦痛を受けた。その慰謝料として300万円が相当である。 キ被控訴人は,本件の解決のため,弁護士に訴訟を委任し,着手金として20万円を支払い,報酬として50万円を支払うことを約した。 クよって,上記リース代金201万6000円,保守管理料31万5000円,慰謝料300万円,弁護士費用70万円の合計603万1000円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。 (2) 控訴人ア契約について契約締結の事実は認めるが,控訴人が被控訴人と契約した保守管理契約の内容は,ソフトウェアの保守管理であり,ハードウェアを含むシステム全体の保守管理契約ではない。 イ履行について(ア) 栄養給食管理システムについては,被控訴人は同仕様のシステムを過去5年以上にわたって使用してきたものであって,全く役に立たないとの主張は事実に反する。 (イ) 財務会計システムについては,法律や省令等の改正が度々行われたためにシステムのプログラム改正をする必要が生じたものであり,一部控訴人の力不足により遅れたことは事実であるが,全面的な責任はない。仕訳入力ができれば8割ができたというべきであり,平成12年8月には入力できるようになっており,平成13年3月末までには使用可能なものを完成している。しかし,100%完全なソフトウェアを作成することはできず,そのために保守管理が必要となるのであり,固定資産管理システムについても同様である。 (ウ) システムの不具合の発生原因にはコンピュータそのものに起因する不具合,オペレイティングシステムに起因する不具合,操作者に起因する不 のであり,固定資産管理システムについても同様である。 (ウ) システムの不具合の発生原因にはコンピュータそのものに起因する不具合,オペレイティングシステムに起因する不具合,操作者に起因する不具合もあり,ソフトウェア作成に起因する不具合とは限らない。 (エ) 各システムは相互に独立したものである。したがって,仮に一部に問題があったとしても,全体に問題が及ぶものではない。 (オ) 控訴人は誠実に保守管理業務を履行している。 ウ解除について控訴人が解約の告知を受けた事実はない。 エ損害について(ア) 仮に一部のシステムに問題があったとしても,各システムは独立しており,代金全額が損害とはならない。保守管理費用も,各システム毎に個別に代金が定められており,全額が損害となるものではない。 (イ) また,各システムについては被控訴人に5年間の使用権限があり,これが返還されないのに損害の賠償を要求するは不当である。 (ウ) 法人に精神的苦痛はあり得ない。事務処理の遂行上精神的苦痛を受けたとの根拠はない。事務遅滞の後始末,交渉などと主張するが,その具体的根拠,金額の主張立証はない。 (エ) 控訴人には債務不履行はないにもかかわらず一方的に訴訟を提起したものであって,弁護士費用を損害とするのは不当である。 3 争点(1) 控訴人は債務の本旨に従った履行を行ったか。 (2) 控訴人に債務不履行があるとして,それと相当因果関係のある損害額はいくらか。 第3 当裁判所の判断 1 次項に補正するほかは,原判決「第3 当裁判所の判断」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 補正(1) 2頁24行目「(この点については後述する。)」の後に「及び各システムのソフトウェ 補正するほかは,原判決「第3 当裁判所の判断」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 補正(1) 2頁24行目「(この点については後述する。)」の後に「及び各システムのソフトウェアの保守管理(単価は各システム毎に月額5000円)をすること」を加える。 (2) 3頁3行目から6行目までを次のとおり改める。 「(5) 控訴人と被控訴人とは,ハードウェア及びソフトウェアについてはリース契約を利用することとし,被控訴人は,A株式会社との間で,上記製品の賃貸人をA株式会社とするリース契約(期間60カ月,リース料総額201万6000円)を締結し(甲3),控訴人は,A株式会社から上記の製品代金(ハードウェア代金73万4000円,ソフトウェア代金90万円(財務会計40万円,固定資産管理20万円,栄養給食管理30万円)及びこれらに対する消費税8万1700円の合計171万5700円)の支払を受けた。このほか,被控訴人は控訴人に対し,初年度の保守管理料30万円及びこれに対する消費税1万5000円の合計31万5000円(総合計203万0700円)を支払った。」(3) 4頁2行目から4行目までを次のとおり改める。 「 上記認定の事実によれば,ハードウェア及びソフトウェアの供給は,事実上は被控訴人と控訴人との間においてされたものであるが,その導入の法的技術としてはリース形式が採用され,控訴人がA株式会社に権利を移転し,その上で,A株式会社が被控訴人に賃貸しているものというべきであって,被控訴人とA株式会社,同社と控訴人との間においては契約が締結されているものの,被控訴人と控訴人との間において何らかの契約が締結されたものと認めるに足りる証拠はない。したがって,上記製品の製作供給自体について控訴人に被控訴人に対する何らかの義務があ 約が締結されているものの,被控訴人と控訴人との間において何らかの契約が締結されたものと認めるに足りる証拠はない。したがって,上記製品の製作供給自体について控訴人に被控訴人に対する何らかの義務があることを前提とする被控訴人の請求は理由がない。 しかし,控訴人と被控訴人との間においては,被控訴人が導入したソフトウェアについての保守管理契約が締結されていたものであり,前記認定のような経緯からすれば,当該保守管理の内容としては,自らが製作供給したソフトウェアが当初の目的通りに有効に作動する状態に置くことを控訴人の義務とするものと解すべきところ,前記認定のとおり,控訴人は財務会計及び固定資産管理のソフトウェアについては平成13年4月に至っても実務の使用に堪え得る状態にできなかったのであるから,この点において控訴人には債務の本旨に従った履行をしていないものというべきであり,これに基づく損害の賠償をすべき義務がある。 控訴人は,上記のソフトウェアに問題はなく,保守管理も誠実に履行していること,問題があるとすれば控訴人が供給したソフトウェアではなく,他の基本ソフトウェアに不可避的に存在する瑕疵ないし被控訴人の操作の問題であるなどと主張するが,上記のような保守管理義務の内容からすれば,控訴人は,自らが供給したソフトウェアが当初の目的通りに有効に作動する状態に置くべきものであって,保守管理行為を誠実に実施したことをもって足りるのではなく,したがって,また,仮に控訴人の供給したソフトウェア以外の問題に起因する不具合であったとしても,それがアプリケーションソフトの内容如何に関わらず一般的かつ不可避的に発現する不具合であるなどの特段の事情がない限り,なお,控訴人が供給したソフトウェアが有効に作動する状態に置くことを内容とする控訴人の義務に ケーションソフトの内容如何に関わらず一般的かつ不可避的に発現する不具合であるなどの特段の事情がない限り,なお,控訴人が供給したソフトウェアが有効に作動する状態に置くことを内容とする控訴人の義務に反することを否定することはできなものというべきところ,上記特段の事情を認めるに足りる証拠はない。また,被控訴人側の操作方法その他被控訴人側に起因する不具合であることを認めるに足りる証拠もない。」(4) 6頁1行目から25行目までを次のとおり改める。 「 控訴人の保守管理義務に関する債務不履行により,控訴人は,被控訴人に対し,上記義務が履行された場合において得べかりし利益ないし支出を免れ得べき利益についてこれを損害として賠償すべきである。 本件においては,被控訴人は,控訴人の供給に係るソフトウェアが使用できなかったために,被控訴人は,B株式会社に依頼してソフトウェア等を導入し,179万2000円を支払っている。しかし,この代金には,栄養給食管理に係るソフトウェアなど,控訴人が供給したソフトウェアで問題のなかったものの代金も含まれており,これが全体として発注し直さなければならない必要性があったと認めるに足りる証拠はなく,また,上記代金に占める財務会計システム及び固定資産管理の割合も明らかではない。したがって,本件においては,これらのソフトウェアを控訴人から導入するに際して要した費用をもって控訴人が賠償すべき損害と認めるのが相当である。 そして,前記認定のとおり,被控訴人は,ハードウェア代金73万4000円,ソフトウェア代金90万円(財務会計40万円,固定資産管理20万円,栄養給食管理30万円)及びこれらに対する消費税8万1700円の合計171万5700円との前提で,A株式会社との間でリース契約(期間60カ月,リース料総 円(財務会計40万円,固定資産管理20万円,栄養給食管理30万円)及びこれらに対する消費税8万1700円の合計171万5700円との前提で,A株式会社との間でリース契約(期間60カ月,リース料総額201万6000円)を締結したものであるから,上記リース料総額201万6000円のうち,製品代金総額163万4000円に占める財務会計及び固定資産管理の代金額(60万円)の割合である74万0269円(円未満四捨五入)をもって本来支出を免れ得べき損害と認めるのが相当である。 被控訴人は,保守管理費用についても損害であるとするが,ソフトウェアが有効に作動しないことに基づき二重に保守管理費用を要したなどの事情がない限り,控訴人との契約においても保守管理契約の対価として支払を免れなかったものであるから,これをもって損害ということはできないというべきところ,前記認定のとおり,被控訴人が別会社たるB株式会社との間で契約を締結したのは控訴人との契約が終了した後のことであり,他に上記特段の事情を認めるに足りる証拠はない。 また,被控訴人は慰謝料及び弁護士費用をも損害として主張するが,財産的損害の賠償によっても回復できない精神的損害が生じたと認めるに足りる証拠はなく,弁護士費用が控訴人の債務不履行と相当因果関係のある損害ということもできない。」 3 以上によれば,被控訴人の請求は,74万0269円及びこれに対する平成13年9月6日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余の請求は理由がない。 よって,これと一部異なる原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第3部裁判長裁判官下司正明裁判官能 れと一部異なる原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第3部裁判長裁判官下司正明裁判官能勢顯男裁判官齋藤憲次(原判決引用部分)第3 当裁判所の判断 1 事実の認定甲第1ないし第6号証,第11ないし第14号証,証人C,被告代表者本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば,次のとおり認めることができる。 (1) 原告は特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人である。被告は,原告が平成元年に特別養護老人ホームを開設して以来原告に財務会計,職員給与計算,預かり金管理及び栄養給食管理のソフトウェアを提供し,その使用指導,メンテナンスを行ってきた。 (2) 平成12年4月1日から介護保険制度が導入されたため,原告はその影響を大きく受け従前のコンピュータシステムを全面的に再構築する必要に迫られた。これを機会として,原告と被告間では,一旦は関係を解消し,新システムは被告以外の同業他社に発注することが検討されたが,原告側から被告代表者に対して引き続いて関与してもらいたい旨の依頼がされたため,平成12年5月,被告代表者はこれを承諾した。 (3) 契約内容は,監督官庁への報告資料としての使用に堪える新会計システムを構築することであり,具体的には,財務会計及び固定資産管理に関するソフトウェアを提供すること,栄養給食管理システムを新しいコンピュータ機種に対応させること(この点については後述する。)であった。完成期限の明示合意はなかったが,監督官庁への各種資料の提出期限が存在するため,その期限までには資料が整理できるようにシステム構築が完成することを契約当事者双方ともに予定 ては後述する。)であった。完成期限の明示合意はなかったが,監督官庁への各種資料の提出期限が存在するため,その期限までには資料が整理できるようにシステム構築が完成することを契約当事者双方ともに予定していた。 (4) 原告は本件契約と同時にコンピュータも更新しているが,これは,原告が従来使用してきたコンピュータでは新システムに対応することができなかったためである。 (5) 被告が本件契約に基づいて原告から受領した代金等は,コンピュータ等代金73万4000円,ソフトウェア代金90万円(財務会計40万円,固定資産管理20万円,栄養給食管理30万円),保守管理32万0250円の合計195万4250円である。 (6) 被告は契約の後ソフトウェアの製作にかかり,試作品を原告において利用してきたが,トラブルの発生が多く,その都度被告が担当者を派遣して個別の問題に対処してきた。しかし,被告は,財務会計と固定資産管理のソフトウェアについては平成13年4月に至っても実務の使用に堪えうるものを完成させることができず,原告の理事会に提出すべき経理関係書類を原告の従業員らが急遽手作業で作成するということもあった。 (7) 平成13年4月11日,善後策について,原告理事長,同施設長らと被告代表者とが協議した結果,被告は原告の経理システム構築から撤退し,原告が他の業者に改めて依頼する,被告は原告から受領済みの代金等のうち,財務会計及び固定資産管理のソフトウェア相当分並びに財務会計及び固定資産管理に関する年間保守管理料を返還する,被告が原告のコンピュータにインストールした財務会計と固定資産管理のソフトウェアは撤去するとの合意がされ,その旨の文書(甲6)が作成された。ただし,この時の協議では被告が原告に返還すべき具体的金額は明らかにされていない。 ( トールした財務会計と固定資産管理のソフトウェアは撤去するとの合意がされ,その旨の文書(甲6)が作成された。ただし,この時の協議では被告が原告に返還すべき具体的金額は明らかにされていない。 (8) ところが,被告の撤退手順に関して双方の意思疎通が円滑を欠いたために紛争が生じ,前記合意は実行されないまま平成13年8月に本訴が提起された。 (9) 原告は,平成13年4月以降において,B株式会社に財務会計,固定資産・減価償却管理,栄養給食,給与計算及び入所者管理・預かり金管理の各システムを発注して導入したが,その代金は合計で179万2000円であった。 2 判断(1) 被告は債務の本旨に従った履行を行ったか。 1において認定した事実経過からすると,被告が債務の本旨に従った履行をしていないことは明らかである。したがって,被告はこれにより原告が被った損害を賠償すべき義務がある。 (2) 被告の債務不履行と相当因果関係ある損害額① コンピュータ本体(ハードウェア)これを更新したのは,原告が従前有していたコンピュータでは新システムに対応できなかったためであり,いずれにせよ新たに購入する必要があって,ソフトウェア作成に当たってはハードウェアの機種に適合させればよく,被告との契約が解除されたとしても継続しての使用が可能なものである。したがって,これの購入代金は原告の損害とはならない。 ② ソフトウェア及び保守管理料<ア> 財務会計及び固定資産管理被告がこれらのソフトウェアを製作できなかったことは明らかである。したがって,これにより原告が被った損害は被告が賠償すべき義務がある。 <イ> 栄養給食乙第1号証によれば,昭和57年に作成された「四訂日本食品標準成分表」が「五 明らかである。したがって,これにより原告が被った損害は被告が賠償すべき義務がある。 <イ> 栄養給食乙第1号証によれば,昭和57年に作成された「四訂日本食品標準成分表」が「五訂日本食品標準成分表」に改訂されているところ,五訂版が公表されたのは平成12年11月22日であり,これに基づいて平成13年6月に厚生労働省健康局長から地方公共団体の長に対してこれを活用するようにとの通知がされたこと,これを受けてD地域保健所長が平成13年7月に給食施設長に対して五訂版に基づいて栄養価を算定するように指示したこと,このため,原告において栄養給食システムを変更する必要が生じたことがいずれも認められる。 原告は被告のソフトウェアでは一部の栄養素の分析表示が不能であると主張し,被告は五訂版に基づく栄養価算定が必要になるのは平成14年4月1日からであるから平成13年当時の栄養給食に関するソフトウェアとしては被告が提供したもので十分であると反論している。 五訂版が公表された時期からすると,本件契約が結ばれた平成12年4月時点では五訂版に対応する栄養給食ソフトウェアを作成するとの合意があったことまでは認められない。また,甲第1号証によれば,被告が作成して原告に提示した見積書中には,財務会計及び固定資産管理については何の注釈も付されていないのに,栄養給食については「栄養給食管理システム(forWIN)(バージョンアップ)」と記載され,被告の「栄養給食については従前のシステムはウィンドウズ機に対応していなかったのでこれを改めたもので,五訂版に沿うものにすることが合意されたわけではない。」との主張に符合する記載となっている。そして,平成13年4月11日にされた清算のための協議では栄養給食システムが問題とされていないことは先に ,五訂版に沿うものにすることが合意されたわけではない。」との主張に符合する記載となっている。そして,平成13年4月11日にされた清算のための協議では栄養給食システムが問題とされていないことは先に認定したとおりである。 以上の事実関係からすると,栄養給食システムについては被告が提供したソフトウェアに原・被告間の合意に反する不備が存したと認めることはできない。そして,平成13年4月にされた清算協議がスムースに実行されていたならば,このソフトウェアはそのまま使用され,四訂版から五訂版への変更は保守管理契約(法省令改正に伴うコンピュータプログラムの作成及びカスタマイズ,甲2号証)によって対応することが予定されていたものである。これらの事情からすると,このソフトウェア相当分については,原告が新たに他の業者から購入したとしても被告の債務不履行と相当因果関係ある損害ということは困難である。 <ウ> 職員給与計算甲第1号証及び弁論の全趣旨によれば,職員給与計算については平成12年4月以前に被告が原告に提供していたソフトウェア内容を変更する必要がなく,被告が作成して原告に提示した見積書にもそれに対応する記載は存在しないことが認められる。したがって,職員給与計算ソフトは本件契約の対象とはなっていないというべきである。 <エ> ソフトウェア及び保守管理料に関する損害ソフトウェア作成に関する債務不履行によって原告が被った損害については,それを原告が他の業者に依頼して製作した場合の費用が明らかであればそれを基準として算定することが可能である。そして,原告が被告に代わる業者として依頼したB株式会社に支払った費用明細は明らかになっている。しかし,原告が同社に依頼した業務費用の内訳と本件で問題となっているソフ として算定することが可能である。そして,原告が被告に代わる業者として依頼したB株式会社に支払った費用明細は明らかになっている。しかし,原告が同社に依頼した業務費用の内訳と本件で問題となっているソフトウェア区分が明確でなく,かつ,原告は,先に認定したとおりそれ自体としては納入時に瑕疵は存しなかったと認められるソフトウェアについても,一体として新業者に作成納入を依頼しており,原告が新業者に支払った代金を基礎として原告が被った損害を算定することは相当でない。 そこで,被告に支払った代金を基準として原告の損害を算定する。そうすると,ソフトウェア及び保守管理料に関して原告が被った損害は,財務会計及び固定資産管理のソフトウェア代金60万円並びに支払済みの保守管理費用32万0250円の合計92万0250円となる。 ③ 慰謝料法人について慰謝料を肯定することができるのは特段の理由と必要がある場合に限られるところ,本件においてこれを認めるべき証拠はない。 ④ 弁護士費用本件事案の内容,被告が財務会計等のソフトウェアを予定どおり完成させることができず,その旨の清算合意がいったんはされていたにもかかわらず,被告がその履行を怠ったために本訴に至ったことを勘案すると,本件が債務不履行事案であることを考慮しても,弁護士費用は被告の債務不履行と相当因果関係があるものと認めることができる。そして,認容額,事案の性質等本件に現れたすべてに事情を斟酌した上,その金額を20万円と認める。 (3) 結論以上によれば,原告の本訴請求は債務不履行による損害賠償金112万0250円及びこれに対する訴状送達の翌日である平成13年9月6日から支払済みまで民事法定利率年5%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが 訴請求は債務不履行による損害賠償金112万0250円及びこれに対する訴状送達の翌日である平成13年9月6日から支払済みまで民事法定利率年5%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は失当である。 よって,訴訟費用について民訴法64条本文を適用して,主文のとおり判決する。

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