令和7年3月12日宣告令和6年(わ)第156号判決被告人に対する殺人幇助、死体損壊幇助、死体領得幇助、死体遺棄幇助被告事件について、当裁判所は、裁判員の参加する合議体により、検察官沼前輝英、同園麻 美、私選弁護人吉田康紀(主任)及び同小林加弥各出席の上審理し、次のとおり判決する。 主文 被告人を懲役1年4月に処する。 未決勾留日数中120日をその刑に算入する。 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、娘である分離前の相被告人Aが、⑴令和5年7月1日夜に殺害した上その死体の胴体から切り離し、同月2日午前3時頃、札幌市a区bc丁目d番e号の被告人方(当時)に運搬してきたBの頭部を、その頃から同月24日午前8時45分頃までの間、前記被告人方で継続して隠匿し、もって死体を遺棄し、⑵その間の同月7日午後8時18分頃から同日午後8時24分頃までの間、多機能ナイフを使用するなどして、前記頭部から右眼球を摘出し、もって死体を損壊した際、 1 Aが、前記⑴のとおり、被告人が所有し、かつ居住地である前記被告人方にお いて前記死体を遺棄することを知りながら、前記⑴の間、同所において、これを容認し 2 同月7日午後7時32分頃から同日午後7時43分頃までの間に、妻である分離前の相被告人Cから、Aが、Bの頭部を置いている被告人方浴室においてビデオ撮影するよう求めているので、被告人においてビデオ撮影してほしい旨依頼されて、 Aが同頭部を損壊するかもしれないと認識しながら、これを容認するとともに同依 頼を応諾し、前記⑵の間、同所において、Aによる前記⑵の場面を自らビデオ撮影しもってAの前記各犯行を容易にさせて幇 Aが同頭部を損壊するかもしれないと認識しながら、これを容認するとともに同依 頼を応諾し、前記⑵の間、同所において、Aによる前記⑵の場面を自らビデオ撮影しもってAの前記各犯行を容易にさせて幇助した。 (争点に対する判断)※ 以下、月日についてはいずれも令和5年のそれを指す。 第1 本件の争点等本件の公訴事実は、要旨以下のとおりである。 「被告人は、Aが、⑴7月1日午後11時14分頃、札幌市f区gh丁目i番地j所在のDk号室において、Bに対し、殺意をもって、その右頸部を折りたたみナイフ(刃体の長さ約8.2センチメートル)で複数回突き刺し、よって、即時同所 において、同人を頸部右下方から右胸部上方の刺創による右鎖骨下動静脈損傷及び右肺上葉損傷等に基づく出血性ショックにより死亡させて殺害し、⑵ア)同日午後11時40分頃、同所において、のこぎり等を使用して同人の頸部を切断し、イ)同月2日午前2時頃、離断した同人の頭部をキャリーケース内に隠匿して前記ホテルから運び出した上、同日午前2時11分頃から同日午前2時14分頃までの間に、 被告人が同市l区mn丁目o番地p先路上に停車させていた普通乗用自動車内に同キャリーケースを積み込み、ウ)同日午前2時14分頃から同日午前3時5分頃までの間、被告人が運転し自己が同乗する同自動車で、同所から被告人方まで同キャリーケースを運搬した上、その頃から同月24日午前8時45分頃までの間、同居宅内において、Bの頭部を隠匿し、エ)同月2日午前3時5分頃から同月24日午 前8時45分頃までの間に、同所において、刃物を使用するなどして、同人の頭部から皮膚を剥ぎ取り、左右の眼球、舌及び食道気管を摘出し、もって死体を損壊、領得、遺棄した際、これらの情を知りながら、 1 6月19日午前0時46分頃から7 いて、刃物を使用するなどして、同人の頭部から皮膚を剥ぎ取り、左右の眼球、舌及び食道気管を摘出し、もって死体を損壊、領得、遺棄した際、これらの情を知りながら、 1 6月19日午前0時46分頃から7月1日午後8時1分頃までの間、7回にわたり、同市q区rs丁目t番u号株式会社E「F」ほか2か所において、のこぎり 2本、斧1本及びキャリーケース1個ほか8点を購入してAに提供し 2 同日午後10時33分頃、前記⑴記載の折りたたみナイフ、前記⑵ア記載ののこぎり等在中の同キャリーケースを携えたAを、Bとの待ち合わせ場所付近である同市l区mn丁目o番地p先路上まで自己の運転する普通乗用自動車で送り届け 3 同月2日午前2時11分頃から同日午前2時14分頃までの間に、Bの頭部を同キャリーケース内に隠匿して持ち帰ってきたAを、同所に停車させていた同自動 車に乗車させて同所から走り去り 4 同日午前2時14分頃から同日午前3時5分頃までの間、同キャリーケースを携えたAを、自己が所有し、かつ、居住地としている被告人方に自己の運転する同自動車で連れ帰った上、その頃から同月24日午前8時45分頃までの間、被告人方において、AがBの頭部を隠匿することを容認し 5 同月7日午後7時32分頃から同日午後7時43分頃までの間に、Cから、Aが、Bの頭部を同所においてビデオ撮影しながら損壊することを計画し、同ビデオ撮影をするよう求めているので、被告人においてビデオ撮影してほしい旨依頼された際、同計画の実行を容認するとともに同依頼を応諾し、同日午後8時18分頃から同日午後8時24分頃までの間、同所において、AがBの頭部から右眼球を摘出 する場面を自らビデオ撮影しもってAの各犯行を容易にさせて幇助した。」(なお、検察官は、公判前整理手続において、Aの前 日午後8時24分頃までの間、同所において、AがBの頭部から右眼球を摘出 する場面を自らビデオ撮影しもってAの各犯行を容易にさせて幇助した。」(なお、検察官は、公判前整理手続において、Aの前記⑵の各行為については、ア、エが死体損壊、イが死体領得、ウが死体遺棄に当たると釈明した。)検察官は、被告人は、Aが6月18日に「ディスカッション」と称して行った話 合いの場で同人から本件殺人等に及ぶことを打ち明けられて、これを事前に認識・認容した上で、各幇助行為に及んだなどと主張する。これに対し、弁護人は、⑴被告人は、Aが7月2日未明にBの頭部を被告人方浴室に置いた後に初めてAの殺人等の情を知ったから、公訴事実1ないし4のうち同時点までの被告人の行為には幇助の故意がないと主張し、さらに、⑵死体遺棄罪の解釈によれば、Aに係る公訴事 実⑵ウの死体遺棄は死体を被告人方に持ち込んだ時点で終了すること等から、同時 点以降の公訴事実4(すなわち判示1)の行為が死体遺棄を幇助したとはいえない、⑶公訴事実5(すなわち判示2)の行為は、Aによる死体損壊行為を容易に又は促進していない、などとして被告人は無罪であると主張する。 当裁判所は、⑴の争点につき、被告人は、Aが被告人方にBの頭部を持ち帰って浴室に置いた頃までAの前記意図を知らず、幇助の故意がなかったとの合理的疑い が残るが、他方、⑵の争点については、Aによる死体遺棄は7月24日午前8時45分頃まで継続しており、かつ、被告人は前記頭部が自宅に置かれたのを認識して以降、それを容認するなどして犯行を促進したと認定評価できるから、その点で死体遺棄幇助罪が成立し、⑶の争点についても、被告人がAの右眼球摘出行為をビデオ撮影することで心理的に促進したと認定評価でき、これに対する幇助罪が成立す ると判 したと認定評価できるから、その点で死体遺棄幇助罪が成立し、⑶の争点についても、被告人がAの右眼球摘出行為をビデオ撮影することで心理的に促進したと認定評価でき、これに対する幇助罪が成立す ると判断した。以下順に補足して説明する。 第2 争点⑴(幇助の故意があったか)について 1 検察官は、大要、以下の理由で、被告人が6月18日にAから本件殺人等の計画を明かされたと主張する。すなわち、Aが遅くとも同日未明にBを発見したときには、Bを殺害し、その死体を被告人方に持ち帰った上、解体するなどして弄ぶ ことを計画していたことを前提に、Aの計画には特に被告人の協力が必要不可欠であるから、事前にAが本件殺人等の計画を告げ、被告人の協力を取り付けていたとみるのが自然であり、現にその翌日以降、被告人と共にその準備が進められていることに加え、被告人がAの計画をとん挫させようとしたり犯行の発覚を免れようとするなど、殺人等の計画を知っていたとうかがわせる動きがあること、被告人の犯 行後の行動は被告人が計画を知らなかったとすれば不合理であること等からすれば、6月18日になされた「ディスカッション」の内容は、この単語が犯行直前にしか使われていないこと等にも鑑み、Aが被告人らと殺人等の計画を共有するものであったと推認できる、というのである。 2 そこで、まず、被告人の幇助の故意を検討する前提として、Aが、いかなる 犯意をどの時点から有していたかをみる。 ⑴ Aの行動経過として、以下の事実が容易に認められる。すなわち、ア)Aは、5月28日未明、札幌市内のクラブのイベントに被告人と共に参加し、そこでBと知り合い、同人にカラオケに誘われたが、結局Dに連れ込まれ、さらに、同人に避妊具を着けること等を条件に性交を承諾したのに、数度の性交の最後に避妊具なしに ブのイベントに被告人と共に参加し、そこでBと知り合い、同人にカラオケに誘われたが、結局Dに連れ込まれ、さらに、同人に避妊具を着けること等を条件に性交を承諾したのに、数度の性交の最後に避妊具なしに性交された。イ)Aは、同日午前11時頃、車で迎えに来た被告人にこの出来事 を告げ、婦人科医院を受診した上、被告人に頼んでインターネットサイトで折りたたみナイフを購入してもらった。ウ)Aは、遅くとも6月8日頃までに、被告人及びCにBを捜し出して再会したい旨告げ(なお、AはBの氏名も連絡先も知らなかった。)、被告人と共にクラブに出入りするなどした結果、同月18日にクラブでBを発見し、7月1日午後10時30分に再会することを約束した。エ)なお、こ の間の6月17日、Aは、Cをして、被告人に対し、Bを探したいという趣旨で、「鹿がいるかどうかクラブに短時間潜入捜査するのは可能ですか?」とのLINEメッセージを送信させたほか、Bを「鹿」と呼称する直前には「獲物」と呼んだこともあった。オ)他方、Aは、被告人にインターネットで注文してもらったり量販店に同道して買ってもらったりして、①6月2日にペティナイフ等を、②同月4日 にスカルペルナイフ、折りたたみのこぎり等を、③同月6日に手錠やマスク付きゴーグルを入手し、Bを探し出した後には、④同月19日に別の折りたたみのこぎり、ペティナイフ等を、⑤同月21日に斧を、⑥同月25日に大型のキャリーケース、瓶、別の折りたたみナイフ等を、⑦同月27日にレインコートを、⑧同月30日に強力カビハイターを、⑨7月1日に更に折りたたみのこぎり、アイマスク等を入手 した。また、被告人及びCにエタノールの購入を求め、両名は6月30日までに合計15本のエタノール(いずれも500ml入り)を購入した。カ)Aは、6月21日にはホラー映 こぎり、アイマスク等を入手 した。また、被告人及びCにエタノールの購入を求め、両名は6月30日までに合計15本のエタノール(いずれも500ml入り)を購入した。カ)Aは、6月21日にはホラー映画(人の首を切断する場面等が含まれている。)のDVDをレンタルし、これを鑑賞した。キ)その上で、Aは、7月1日夜、キャリーケース等の前記入手した物の多くを持参してBと合流した上、同日午後10時42分頃、Dに 入館し、Dk号室の浴室において、自らは前記レインコート及び前記マスク付きゴ ーグル等を装着し、Bには前記アイマスクで目を隠し、前記手錠等で両手首を後ろ手に拘束して座らせた。そして、Bに対し、「一番人生でちょっと反省したことは、私の約束破ったことでしょ。」と告げ、Bが「あーそうね、だってあんなに怒られたことないもん、だってゴム付けなかっただけで。」などと答えると、その直後の同日午後11時14分頃、Bの右頸部を折りたたみナイフで突き刺して即死させ、 前記公訴事実⑴の殺人に及び、さらに、その死体に対し、D内ないし被告人方において、前記公訴事実⑵の各行為に及んだ上、摘出した眼球や舌をエタノールを入れた瓶に収めて保管するなどした(以下、前記公訴事実⑴及び⑵のAの行為を併せて「本件殺人等」という。)。 ⑵ア前記事実関係からすると、Aは、Dにおいて、5月28日のトラブルの内 容に合致する会話をした直後にBを殺害しており、Bとの間に同トラブル以外の揉めごとは認められないことからすれば、病的な精神状態や趣味嗜好も影響していると思われるとはいえ、AがBを殺そうと考えたきっかけは、同トラブルであったとしか考えられない。そして、Aは、婦人科医院で診察を受けた直後に、殺害時に持参した折りたたみナイフを被告人に依頼して購入し、その後も、6月18日までの 殺そうと考えたきっかけは、同トラブルであったとしか考えられない。そして、Aは、婦人科医院で診察を受けた直後に、殺害時に持参した折りたたみナイフを被告人に依頼して購入し、その後も、6月18日までの 間に、ペティナイフのほか、殺害等において使用したマスク付きゴーグルや手錠等を入手し、遅くとも同月17日にはBを「獲物」、「鹿」などと狩りや加害意図をうかがわせる呼び方をし、被告人及びCに協力させてBを捜索し、同月18日に同人を発見し再会を約束すると、さらに犯行に用いた道具を買いそろえて、本件殺人等に至っている。そうすると、6月18日以前はBと再会できる可能性が高くなか ったため漠然とした考えにとどまっていた可能性はあるものの、遅くとも同日にBと再会を約束した時点で、同人を殺すことについては、これを現実的なものとして計画したと認められる。 イさらに、Aは、6月18日から本件殺人等までの間に、被告人やCにエタノールや瓶を順次購入させているが、同エタノールの合計本数はCが使用する分等を 考慮しても大量に過ぎ、現にAは被告人方で瓶にエタノールを満たしてBの頭部か ら摘出した眼球等を保存していた。また、大型のキャリーケースを入手してDに持参し、Bを殺害して頸部を切断した後、その胴体をキャリーケースに入れようとし、これが入らないと分かるやなお頭部を入れて被告人方に持ち帰っており、Aにおいて被告人が供述するようなドールを自宅内で保存する目的でキャリーケースを購入したとは考え難い。これらの事実等からすると、Aは、Bの死体を切断するなどし て自宅に持ち帰り、場合によっては解体するなどして弄ぶこと、すなわち、死体の損壊・領得・遺棄をすることも事前に計画していたと認められる。 ウもっとも、Aは、6月4日や19日にのこぎりを購入しているとはいえ、の 帰り、場合によっては解体するなどして弄ぶこと、すなわち、死体の損壊・領得・遺棄をすることも事前に計画していたと認められる。 ウもっとも、Aは、6月4日や19日にのこぎりを購入しているとはいえ、のこぎりで生きている人間を切りつけること等も想定し得るから、その時点で死体を切断することを企図したと断定することまではできない。むしろ、6月18日以降 も、Aは、7月1日までの間に、犯行に向けて五月雨式に用具を購入している上、その中には6月21日に購入した斧等、実際にDに持参したかすら不明な刃物もある。また、本件殺人等の内容に類似するホラー映画を借りて見たのも同日以降である。そうすると、Aは、殺人の詳細な態様もさることながら、死体損壊・領得・遺棄に及ぶかどうかについては、6月18日時点で必ずしも確定しておらず、本件殺 人等に及ぶまでにいろいろと考えながら決めていった可能性があり、とりわけ、死体を運搬する上で必要不可欠なキャリーケースを購入したのが同月25日であることからすると、死体領得及びその後の遺棄を決意した時期については、同日頃である合理的疑いがあるというべきである。この点において、6月18日に本件殺人等の計画のすべてを被告人に話していたとの検察官の主張はそもそも成り立たない。 3 そこで、さらに、Aが6月18日にBとの再会の約束を取り付けた後、被告人やCと行ったと認められる、「ディスカッション」と称する話合いにおいて本件殺人等の計画を被告人に伝えたかを検討する。 ⑴ア始めに、犯行全体の経験則に関する検察官の主張をみると、まず、本件殺人等は前記のとおり計画的犯行である上、Aは無職で長年自宅に引き籠もっており、 一人では外出もままならないことから、本件殺人等を実行するには被告人に必要な 物を購入してもらったり、犯行現場まで送 等は前記のとおり計画的犯行である上、Aは無職で長年自宅に引き籠もっており、 一人では外出もままならないことから、本件殺人等を実行するには被告人に必要な 物を購入してもらったり、犯行現場まで送迎してもらったりなどすることが必要不可欠であったと認められる。もっとも、このことから、直ちにAが本件殺人等の計画を被告人と共有した上で協力を取り付けていたということにはならない。 イ検察官の主張の要点は、Aにとって被告人が事前に相談・指示できない間柄ではない上、Aにとっては、本件殺人等の計画に被告人らを巻き込まなければ、事 前に情報が漏れたり、計画をとん挫させられたり、自宅に持ち帰った死体の隠匿を拒絶されたりするなどのリスクが高いから、事前に被告人らに事情を明かしてその協力を取り付けなければ計画を実行できない、というものである。 確かに、被告人及びCは、Aは18歳頃から「Aは死んだ」と言い始め、被告人らから親として接されたり、気に食わないことがあったりすると、怒るようになっ た、また、Aは、自殺願望を有し、実際にこれを企てたこともあった、そのため、Aの発言や価値観を否定することで同人の精神状態が悪化しないよう、同人の現実的でないような発言に対しては肯定も否定もしないように努めるとともに、Aの望みには可能な限り応え、欲しいというものは買い与えていた、Aの物に触れると怒るので、家の中は物であふれかえり、5月中旬頃には被告人の居住スペースがなく なり、被告人はネットカフェでの寝泊まりを余儀なくされていた、将来の社会復帰のためという考えもあり、Aが、深夜、買物やゲームセンター等へ行くことを希望した際には、日中勤務をしている被告人が車を出して付き合っていたなどと述べている。被告人方内の状況等に照らし、これらは概ね事実であると認められる。そう 、深夜、買物やゲームセンター等へ行くことを希望した際には、日中勤務をしている被告人が車を出して付き合っていたなどと述べている。被告人方内の状況等に照らし、これらは概ね事実であると認められる。そうすると、Aが、被告人らが自己の大半の望みを聞いてくれ、叱られたり苦言を呈さ れたりすることはないとの思いから、本件殺人等の計画について打ち明けたとも考えられなくはない。 しかし、Bの殺害等は日常の生活とは全く異なる極めて重大な犯罪であるから、Aが、これを被告人らに打ち明けても当然反対されず、計画をやめさせられることもないとまで認識していたと強く推認することはできない。かえって、被告人らに そのような重大犯罪の計画を打ち明ければ打ち明けたで、これを阻止されるおそれ があり、Aがそのように考えて、被告人らに内緒で計画を断行し既成事実を作ってしまおうと考えても不自然ではない。したがって、前記のような家族関係があるとしても、Aが、被告人らに目的を明かさず、あるいは適当な目的を言いながら、犯行用具を購入させたり、送迎させたりなどした可能性を否定できるものではない。 ウなお、Aは、前記ホラー映画やAが過去に興味を示し6月26日にも他の男 性と興じたと認められるSM等から本件殺人等の着想を得ることが可能であったといえるから、被告人から助言を得なければ同犯行の具体的なやり方を練れなかったともいえない。むしろ、Aは、成人男性(なお、Bの身長は166.6cm、体重は66.3kgである。)の死体を女性一人で運搬するという、相当困難であることが想像に難くない計画を立て、案の定、Dで殺害後にBの死体を持ち上げようと したが持ち上がらず、キャリーケースに胴体を入れようとして入らず、結局胴体をそのまま置いて行くといった失敗を犯しており、事前に被告人と相談し 画を立て、案の定、Dで殺害後にBの死体を持ち上げようと したが持ち上がらず、キャリーケースに胴体を入れようとして入らず、結局胴体をそのまま置いて行くといった失敗を犯しており、事前に被告人と相談したとみるにはやや不自然な点も残る。 エ以上からすると、本件殺人等を全体としてみた経験則から、Aが被告人に同犯行の計画を明かしていたと断定することはできない。 ⑵ 次に、被告人が本件殺人等の計画を知らされていた証左であると特に検察官が主張する個別の事実についても検討する。 アまず、被告人が、6月20日、職場のパソコンで、「ハイターで指紋は消せる?」、「ワイドハイター塩素系浴室」などと検索した上、同月30日に強力カビハイターを購入してAに提供し、Aが実際に強力カビハイターで殺害現場の浴 室を清掃したことが認められるところ、検察官は、被告人はAから本件殺人等の痕跡を消す旨を聞いた上で前記検索をし、その結果に基づいて強力カビハイターを購入したものである旨主張する。 この点、確かに、検察官が指摘する事情から、A自身は、本件殺人等の際に血痕や指紋を除去することを考えついて、被告人に前記検索をさせたものと推認でき、 そのことは、Aが被告人にも検索等の目的を告げた可能性をうかがわせなくもない。 もっとも、被告人は、前記検索の当初、「皮脂汚れ重曹とクエン酸どちらがいい」などと検索し、その後もセスキ水、ドメスト、ワイドマジックリン、キッチンハイター、ワイドハイターといった様々な種類の掃除、洗濯用洗剤等について検索しており、血痕等を消す目的と伝えられていたにしては、「血痕」といった検索ワードがないし、すぐに強力な掃除用品を検索してもおらず、具体的な目標が定ま っていない回りくどい検索であるように思われる。また、「指紋」という単 目的と伝えられていたにしては、「血痕」といった検索ワードがないし、すぐに強力な掃除用品を検索してもおらず、具体的な目標が定ま っていない回りくどい検索であるように思われる。また、「指紋」という単語は、被告人が自ら文字入力して検索したものではあるが、Aから指紋を消したいと言われたにしては一度しか入力されておらず、その検索後も再び複数の掃除、洗濯用洗剤等の検索を続けており、指紋を消すことが目標であったとは必ずしもうかがわれない。さらに、一連の検索は、浴室用のハイターを検索したところで終わっている ものの、実際に被告人が強力カビハイターを購入したのは検索から10日後であり、強力カビハイターがAの求める用途に最も合致しこれを購入しようと考えて検索を終えたとも必ずしも断定できない。検察官は、被告人が「浴室」という、本件殺人が行われた具体的な場所に合致する語句を入れて検索している点を強調するが、その間にキッチンに着目したアクセス履歴もあり、この検索が本件殺人等を念頭に置 いたものであったと強くはいえない。 以上からすると、被告人の前記検索内容は、本件殺人等の際に血痕や指紋を除去したいとAから言われて行ったものとは認められず、かえって、そのような説明を受けずに、繰り返し検索されている「皮脂汚れ」を広く落とす方法等について調べるようにAから言われたものとみるのが自然であって、その後実際に強力カビハイ ターを購入した際にも、Aの真の購入目的を知らされていなかった疑いは残る。 なお、被告人は、Aがドールをきれいにするのにハイターを使ってもいいかどうかを聞かれて調べようとしたと述べている。しかし、被告人の供述は、検索にドールに関する単語が一つもないなど、各種掃除用洗剤とドールの相性を調べた形跡が全くないことと整合しない上、被告人自身、樹脂製の かを聞かれて調べようとしたと述べている。しかし、被告人の供述は、検索にドールに関する単語が一つもないなど、各種掃除用洗剤とドールの相性を調べた形跡が全くないことと整合しない上、被告人自身、樹脂製のドールの汚れを落とすのに塩 素系のカビハイターを用いるのは不適当であることを認識していたというのに、A の前記質問にそのまま応じたというのは不自然であることから、信用できない。もっとも、その点を踏まえても、なお前記検索内容から被告人がAから血痕等を除去したい旨を明かされていたとまでは推認できないことは変わらない。 イ次に、被告人は、6月25日に量販店で前記大型キャリーケースを購入する直前に、「スーツケース耐荷重 100kg」などと検索していることが認めら れるところ、検察官は、このことから被告人がAから死体をキャリーケースに入れることを聞いていたと推認できると主張する(前記のとおり、そもそもこのキャリーケースの購入事実から、Aが6月18日の時点で死体領得・遺棄を決意していたとまでは認められないが、検察官の主張に鑑みここで検討を加える。)。 この点も、確かに、A自身は、キャリーケースを死体を運搬する目的で入手した ことが明らかである。加えて、検索の内容等からして、Aは、被告人に対し、実際に店内でキャリーケースを目の前にして、重いものを入れられるキャリーケースを要望し、耐荷重やそれに基づく壊れやすさを調べるよう依頼したものと推認できる(なお、検察官は、前記検索時にAと被告人は別行動だったと主張するが、別行動となる前に前記依頼をしたと考えるのが自然である。)。そして、Aが通常分かれ ば足りるはずのキャリーケースの容量だけでなく耐荷重等まで知ろうとしていることに被告人が特段疑問を抱いた様子がないことからすると、被告人はAから購入の るのが自然である。)。そして、Aが通常分かれ ば足りるはずのキャリーケースの容量だけでなく耐荷重等まで知ろうとしていることに被告人が特段疑問を抱いた様子がないことからすると、被告人はAから購入の目的を知らされていたのではないかともうかがわれる。 もっとも、被告人は、「スーツケース耐荷重 100kg」に続いて、「スーツケース耐荷重 50kg」とも検索しており、耐荷重50kgでは一般の成人 男性の体重に満たないことからすると、このことは、被告人が、Aから死体を運搬する計画を告げられていなかった疑いを残すものといえる。これに加え、キャリーケースが他の日用品と併せて合計30点の商品の一つとして購入されたことも併せ考えると、前記検索もまた、被告人がAから本件殺人等の計画を知らされず、同人に言われるがままに検索したとして説明がつかないものとはいえない。 なお、被告人は、Aから室内でキャリーケースにドールを収納して運びたいとの 説明を受け、これを信じて前記検索をしたと供述している。しかし、キャリーケースは、引くなどして物を運ぶものであり、ドールを収納して家の1階から3階まで階段で持ち運ぶという趣旨のAの説明をそのまま受け止めたというのは不自然である。また、ドールをキャリーケースに入れて運べば高価で繊細なドールを破損させる危険があることは明らかであり、少なくともドールを大事にしているAから前記 説明を受けてこれを信じたというのも不自然である。さらに、概ね1体2kg弱程度のドールを運ぶためだけに、耐荷重を気にするほどに頑丈さを求めるのも不自然であるから、被告人の供述は直ちには信用できない。もっとも、その点を踏まえても、前記検索結果からは、被告人がAから本件殺人等の計画を知らされていたことを間違いなく推認できるものではない。 自然であるから、被告人の供述は直ちには信用できない。もっとも、その点を踏まえても、前記検索結果からは、被告人がAから本件殺人等の計画を知らされていたことを間違いなく推認できるものではない。 ⑶ その他、検察官は、ア)被告人とCが、AがBと再会しようとするに当たり、やくざを装ってでも会わせないようにしたいと考えたこと、イ)被告人が、7月1日午後8時15分頃に、スマートフォンで「殺人時効」と検索したといえること、ウ)Cが、被告人に対し、同日午後9時30分頃、「そういえば車のGPS記録残りますか」とのメッセージを送信していること等から、被告人とCが本件殺人の直 前に車の位置情報が残ることを気にしていたといえること、エ)被告人は、6月17日、LINEで、Cから、Aの質問であるとして、「鹿がいるかどうかクラブに短時間潜入捜査するのは可能ですか?」とのメッセージを受信している上、Cのスマートフォンには「鹿」の前に「獲物」という文字入力履歴が残っていることから、AがBを「獲物」、「鹿」と呼んでいることを知っていたこと、オ)「ディスカッ ション」が、AがBと会う約束を取り付けた日に行われている上、これ以前に「ディスカッション」という言葉は使われておらず、その話合いからほどない買物でのこぎりやペティナイフを購入していること等からも、この「ディスカッション」が本件殺人等の計画についての話合いであったと推認できると主張する。 このうち、アないしウの点については後に詳述するが、ア及びウに関する事実か ら、被告人が、遅くとも7月1日午後9時30分頃までに、AがBと再会した際に 何らかの犯罪に及ぶ可能性があることを認識していたとはいえるものの、Aが本件殺人等の計画を明かし、被告人がそれを認識していたことを強くうかがわせるとまではいえない。 、AがBと再会した際に 何らかの犯罪に及ぶ可能性があることを認識していたとはいえるものの、Aが本件殺人等の計画を明かし、被告人がそれを認識していたことを強くうかがわせるとまではいえない。 次に、エの点については、そもそもCの「獲物」という入力は削除され、被告人に送信されていないから、AがBを「獲物」と呼んでいると被告人が認識していた かどうかは不明である。そして、このことは、Aが、内心ではBを「獲物」とみて加害意図を有していることを積極的に被告人に伝えるつもりがなく、むしろ隠そうとしていたとも考えられるから、検察官主張のメッセージの受信等があるからといって、AがBを殺したいなどと被告人に明言していたとは推認できない。 オの点についても、Aが普段から英語交じりで会話していたことからすれば、そ れが6月18日以降にしか用いられていないことを踏まえても、本件殺人等とは無関係に「ディスカッション」という単語を言い出したとして不自然ではない。かえって、「その後は小樽ではなく、色々なことについてのディスカッションであったり、買い物かもしれません。」というメッセージ内容からは、ディスカッションが外出や買物といった日常的な話題と同列にあることから、それを特別視しているよ うにも読めない。また、「ディスカッション」後の6月19日にのこぎり等を購入しているからといって、「ディスカッション」で本件殺人等の計画が明かされたとみることまではできないことは前記2⑵ウのとおりである。 したがって、これらの事実もまた、6月18日の「ディスカッション」でAが本件殺人等の計画を話したことを強くうかがわせるとはいえない。そうすると、被告 人の供述には信用できない部分もあるが、前記の限りにおいては虚偽として排斥することまではできない。 ⑷ 以上からする 件殺人等の計画を話したことを強くうかがわせるとはいえない。そうすると、被告 人の供述には信用できない部分もあるが、前記の限りにおいては虚偽として排斥することまではできない。 ⑷ 以上からすると、検察官が主張する事実関係は、本件を全体としてみても、また特徴的な事実を個別に取り上げてみても、Aが6月18日の「ディスカッション」において本件殺人等の計画を話したことを強く推認させるようなものとは考え られず、かえって、ハイターに関する検索内容のようにそのような話があったとは 思われないことをうかがわせる事実もあるといえるのであって、前記事実を総合しても、Aが同「ディスカッション」において前記計画を明かさなかったとして説明が極めて困難であるとはいえない。よって、この点に関し検察官の立証が合理的な疑いを容れない程度に達しているとまではいえない。 なお、検察官は、関連して、6月21日に被告人方でAが「デモンストレーショ ン」と称して被告人らを集めて行った演習は、直後にAが前記ホラー映画を借りていることや、よく練られた殺害方法を考えていた時期と整合的であることから、正に本件殺人等の予行演習であったと推認できると主張する。しかし、この点も、Aにおいては本件殺人等に向けて被告人をBに見立てて思案したとも考えられるものの、本件殺人の態様がSMプレイを装ってBに目隠しをし、その不意をついて行っ たものであることからすると、Aが、殺害時のイメージをつかむためとして、被告人が述べるように被告人にも目をつぶらせ、かつ演習の意図を伝えずに行ったとも考えられなくはないから、やはりAがこのときに本件殺人等の意図を被告人に伝えたとまでは認められない。 4 もっとも、前記「ディスカッション」においてAが本件殺人等の計画を明か さなかったとしても、その れなくはないから、やはりAがこのときに本件殺人等の意図を被告人に伝えたとまでは認められない。 4 もっとも、前記「ディスカッション」においてAが本件殺人等の計画を明か さなかったとしても、その後のいずれかの時点で被告人がAの言動等から殺人等を企図していることを認識したかについては別途検討する必要がある。 ⑴アまず、被告人は、前記2⑴オのとおり、5月28日以降本件殺人等が実行されるまでの間に、Aに頼まれて多数のナイフや複数ののこぎりを順次買い与えており、とりわけ、6月19日以降は10日余りの短期間のうちに複数種類の刃物類 を買わされている。 この点につき、被告人は、Aから、のこぎりについては枝切りや工作に使うと言われ、ナイフについては、お守りやその追加と言われたり、特に用途を言われないまま、不審に思うことなく買ったなどと述べている。そして、Aにドールやガレージキットの趣味があり、その工作用にかねてからのこぎりを使っていたこと自体は 否定できないし、被告人方から発見されたナイフの本数・種類等から、Aが趣味で ナイフを購入していたことも否定はできず、刃物類を他の日用品と一緒に購入していることも併せ考えると、Aが前記のような用途を説明するなどしたとの被告人の供述自体は排斥できない。しかし、Aによる前記刃物類の買い集めは、すべて従前のような理由で購入するにしては頻度が高く、本数も多いのであって、被告人は、7月1日のBとの再会が近づくにつれて、Aがこうした刃物類を買いあさることの 不自然さを認識していたとみるのが自然である。 イまた、被告人は、6月28日及び同月30日に、Aに言われて前記エタノール合計7本を買い、少なくともそのほとんどをAに提供したものと認められる上、これに先立つ同月23日には、Cから「エタノール3本買いま た、被告人は、6月28日及び同月30日に、Aに言われて前記エタノール合計7本を買い、少なくともそのほとんどをAに提供したものと認められる上、これに先立つ同月23日には、Cから「エタノール3本買いまして玄関に置きました」というLINEメッセージを受信して閲読しており、Aが大量のエタノールを 必要としていることを認識していたと認められる。この点、被告人は、Aから特に用途を言われず、エタノールを買えるだけ買ってと言われて買っただけであるなどと供述するが、これについても、その量の多さからして、被告人が不自然さを認識していなかったとは考えられない。 ウそして、被告人は、本件殺人等の直前である7月1日午後9時30分頃、C から、LINEで、「そういえば車のGPS記録残りますか」とのメッセージを受信し、これに対する返信をした上、AをD付近で回収した後には、被告人車両のカーナビゲーションの履歴を消去したものと認められる。そして、前記メッセージは、その文脈からして位置情報を残さないようにする趣旨と認められるが、そのような情報を残さない目的としては、捜査機関に位置情報を知られないようにすることし か考えられず、被告人は前記メッセージを受信した頃には、捜査機関に自己らの行動が知られないようにしようと思っていたものと推認できる。 加えて、関係証拠によれば、被告人使用のスマートフォンは、同日午後8時53分頃から同月2日午前3時59分頃までの間、すなわち、被告人が、被告人方でAを迎えるために待機を始め、その後Bとの待ち合わせ場所との間を送迎し、自宅か らクラブへAを送り届けるまでの間、被告人方に放置されていたことも認められる。 そして、前記検討を踏まえた上で、AがBと会うことを心配していた(そのこと自体は疑いがない。)被告人が、Cとやり取りを ラブへAを送り届けるまでの間、被告人方に放置されていたことも認められる。 そして、前記検討を踏まえた上で、AがBと会うことを心配していた(そのこと自体は疑いがない。)被告人が、Cとやり取りをするための前記スマートフォンを家に忘れる状況が容易には想定できないことからすれば、被告人はあえて前記スマートフォンを自宅に置いておき、そのGPS記録が動かないようにしていたと推認してよい。そうすると、かかる被告人の行動も、被告人が、AをD付近に送迎する時 点で、捜査機関に自己らの行動が知られないようにしようとしていたものとみるのが自然である。 これに対し、被告人は、前記メッセージを受信した際にどのように思ったのかや、前記スマートフォンの所持状況についてあいまいな説明しかできておらず、また、Cも、同メッセージを送信した際の認識について合理的な説明ができておらず、い ずれも信用できない。また、弁護人は、被告人は自車でAを送迎しており、これが犯罪への協力だとすれば、公道上の防犯カメラ等から被告人の関与がすぐに明らかになるから、GPSの履歴に関するやり取りがあるからといって証拠隠滅を意図したものとはいえないと主張する。しかし、Aが普段から専ら被告人車両で移動していたことからすれば、被告人車両を使用することは両者にとって所与の前提であり、 その上で可能な限りの証拠隠滅を図ろうとしていたと考えて特に不自然ではない(他方、検察官は、被告人が6月29日にパーソナルコンピュータからショートメッセージを送る方法を検索していること等も前記推認をいっそう補強すると主張するが、検索内容のみからは誰にショートメッセージを送ることを想定したのか不明であり、そのような推認まではできない。)。 エこのように、被告人がAが不自然に刃物類やエタノールを入手している 張するが、検索内容のみからは誰にショートメッセージを送ることを想定したのか不明であり、そのような推認まではできない。)。 エこのように、被告人がAが不自然に刃物類やエタノールを入手している状況を認識しつつ、捜査機関に自己らの動きを知られないようにしたとしか考えられない行動を取っていることからすれば、被告人は、前記ウの時点で、AがBと再会した際に刃物を用いた脅迫、暴行、傷害といった何らかの犯罪に及ぼうとしている可能性を認識していたことが強く推認できる。 ⑵ もっとも、ナイフ類やのこぎりはAがBと再会をする可能性が必ずしも高く なかった6月18日より前にも購入しており、また、同様のナイフ類の購入本数が増えたからといって殺意まで抱いていることがうかがわれやすくなるわけでも必ずしもなく、Aに本件以前に特段の粗暴癖がなかったことも併せ考えれば、それらの購入からAが殺人に及ぼうとしているとまで被告人が推知できたとはいい難い。また、エタノールは消毒が主な用途であることからすれば、これを多量に入手してい ることによってAが殺意を抱いていると被告人が推知できたともいえない。そして、前述した一連の不審な購入履歴を振り返ってみても、被告人が、Aが殺人を犯すと分かったであろうと推認することはできない。GPSを気にするような行動についても、それのみでAが殺人を犯そうとしていると被告人が知っていたとまで推認できるものではない(なお、以上の推認は、AがBを「鹿」と呼んでいることを被告 人が認識していたことを踏まえても動かない。)。 そうすると、前記⑴の事実関係からは、Aが殺人まで犯そうとしていると被告人が推知していたとはいえず、ましてや、殺害後に死体の損壊や遺棄等に及ぼうとしているとまで思い至ったとは到底いえない。 ⑶ 被告人が、Aが殺人 ⑴の事実関係からは、Aが殺人まで犯そうとしていると被告人が推知していたとはいえず、ましてや、殺害後に死体の損壊や遺棄等に及ぼうとしているとまで思い至ったとは到底いえない。 ⑶ 被告人が、Aが殺人等を犯そうとしているとまで推知していたと認められる かに関してとりわけ問題となるのは、ア)被告人が、Bに電話をかけ、Aとの会合に来ないよう説得しようとしたこと、イ)被告人使用のスマートフォンから「殺人時効」という検索がなされていること、ウ)被告人が、Aを被告人方に送った際、大量の氷を躊躇なく購入したこと、エ)AがBの頭部を自宅に置いた後の被告人の行動の各点である。 アまず、Cは、6月27日頃、BがAと会わないよう、やくざを装ってBに電話をかけて脅すことを思いついた上、同月30日頃までにこれを被告人に持ち掛けて相談し、被告人は、7月1日午後2時頃、Bに電話をかけたが、Bに対し、Cが考えたストーリーは用いずに、Aの関係者であると告げて、再度のトラブルが心配なのでできればAに会わないでほしい旨を求めたが、Bに拒絶されたものと認めら れる(Cから相談を受けた後の被告人の具体的な行動については、被告人の供述に よるものであるが、検察官も同供述に依っている。)。そして、検察官は、犯罪歴のないCがやくざを装うのはよほど同人が切迫した心境にあったことを推認させ、C及び被告人がAが殺害を企図していることを知っていたと推認できると主張する。 確かに、前記のとおりAが不審な買物を種々していることを知る中で被告人がBに前記電話をしたことからすると、この電話は、AがBに危害を加えるなどする可 能性があることを恐れてしたものであるように思われる。被告人及びCは、AがBに再度嫌なことをされ傷付けられることを懸念したと述べているが、それのみだとみるのは は、AがBに危害を加えるなどする可 能性があることを恐れてしたものであるように思われる。被告人及びCは、AがBに再度嫌なことをされ傷付けられることを懸念したと述べているが、それのみだとみるのは不自然である。 しかし、父親である被告人が、Aが殺害等に及ぶと分かってこれを食い止めようとしたのであれば、Bに対し、例えばAは来られなくなったとうそを付くとか、知 人を装って殺される危険がある旨を伝えるなど、あらゆる方法で待ち合わせ場所に来ないよう必死に説得するのが自然ともいえ、被告人が、Cがやくざを装う方法を考えたにもかかわらずこれを使わず、抽象的な関係者を装い、できれば会ってほしくないなどと伝えるにとどめたというのは、そうした必死さに欠けている。そうすると、前記の事実も、AがBに多少の危害を加えるなどする可能性があることを被 告人が認識していたとはいえるが、他方で同人を殺害する可能性があることまでは認識していなかった疑いを抱かせる。 イ次に、7月1日午後8時15分頃に、被告人が普段使用しているスマートフォンから「殺人時効」という検索がなされており、検察官は、これは被告人が検索したものであって、被告人がAの殺人等の意図を知っていたことを推認させると 主張する。これに対し、弁護人はAが被告人使用のスマートフォンを借りて検索した可能性があると主張しており、そもそも被告人が当該検索をしたかどうかが争点となっている。 この点、前記検索は、被告人がAと共にゲームセンター「G」に滞在中になされているところ、Aのスマートフォンのヘルスケアデータとして、同ゲームセンター に滞在していた間に1階分上ったこと等の履歴があることから、Aは、同ゲームセ ンターに自分のスマートフォンを持ち込んでいたと認められる。そして、Aのスマートフォンでイ て、同ゲームセンター に滞在していた間に1階分上ったこと等の履歴があることから、Aは、同ゲームセ ンターに自分のスマートフォンを持ち込んでいたと認められる。そして、Aのスマートフォンでインターネット検索をすることは可能であったし、Aが被告人に殺人等の計画を伝えていなかったとすると、被告人使用のスマートフォンで「殺人時効」と検索すれば怪しまれる可能性もあるから、自分のスマートフォンで検索するのが自然であって、被告人使用のスマートフォンで検索された履歴は被告人が検索 したとも考えられる。 もっとも、被告人は、前記検索をした記憶はなく、Aが被告人使用のスマートフォンを借りることもあったなどと述べている。そして、証拠によれば、実際、Aと被告人が一緒に「F」で買物をしていた6月19日午前0時19分頃に、被告人使用のスマートフォンで「天然毛メイクブラシ」と検索されたことが認められると ころ、検索内容からして、これはAが被告人使用のスマートフォンを借りて検索したものである可能性が否定できない。加えて、A使用のスマートフォンは被告人いわく約10年前に購入した機種で、実際に記録されたウェブ履歴は約2か月半で27件と同年代の女性としては相当少なく、動作も重いと思われること、「殺人時効」との検索履歴が被告人使用のスマートフォンに残ることをAがさほど意に介し ていなかった可能性もあること等も併せると、他の点で被告人が不自然・不合理な供述をしていることを踏まえても、この点に限っては、Aが普段から被告人のスマートフォンを借りることがあったとの被告人供述は裏付けがあって排斥できず、前記検索の際にもAがこれを借りて検索した可能性がないとはいえない。 なお、検察官は、被告人使用のスマートフォンで「殺人時効」の検索がなされ た1分29秒後 人供述は裏付けがあって排斥できず、前記検索の際にもAがこれを借りて検索した可能性がないとはいえない。 なお、検察官は、被告人使用のスマートフォンで「殺人時効」の検索がなされ た1分29秒後に、被告人がLINEを使い、書類のデータを送ってきた仕事関係者に返信していることから、前記検索時も被告人が同スマートフォンを使用していたはずであるとも主張する。しかし、「殺人時効」という検索ワードで知りたいと思われる事項(殺人罪には時効がないこと)は、検索してすぐに把握できるとうかがわれるし、被告人の返信は簡単な一言のみで、わずかな時間で送信できる内容 であり、さらに、被告人が翌7月2日午前11時57分に「内容確認しました」と のメッセージを送っていて、詳しく書類を確認したのはこの頃である可能性も否定できないことからすれば、Aが被告人に被告人使用のスマートフォンを返した後に被告人が前記LINEメッセージを送信したとしても説明がつく。そうすると、この点は被告人が検索した根拠とは必ずしもならない。 よって、前記「殺人時効」の検索は、Aがした合理的疑いが残り、被告人がこ れを検索したとは認定できない。 (なお、検察官は、Aが被告人使用のスマートフォンを借りていないことを専らの立証趣旨として、Aの証人尋問及び録音・録画記録媒体(甲166)の取調べを請求した。しかし、その点に関するAの供述が信用できるかどうかは、本件全体に対するAの供述内容や態度を踏まえなければ判断できないはずであり、その点が判 然としない以上、当裁判所は、検察官が求めるような前記証人尋問を行うのは相当でないか重要ではないと認めて、これを却下した。また、検察官は、被告人が本件犯行に際して前記検索をしたことを自認する供述をしたとして、被告人の検察官調書(乙17)及び うな前記証人尋問を行うのは相当でないか重要ではないと認めて、これを却下した。また、検察官は、被告人が本件犯行に際して前記検索をしたことを自認する供述をしたとして、被告人の検察官調書(乙17)及びその取調べに係る録音・録画記録媒体(甲200)の採用も求めたが、被告人質問に現れた同供述の内容による限り、検察官が主張するような自認 を被告人がしたものとまでは認められないため、これらも必要性がないものとして却下した。)ウまた、被告人は、キャリーケースを持ったAをD付近から回収して被告人方に到着する前の7月2日午前2時52分頃、Aの頼みで、自宅付近のコンビニエンスストアにおいて、1kg入りの氷を4袋購入し、被告人方で、Aがキャリーケー スから黒色ビニール袋(実際にはBの頭部が在中していたもの)を浴室に置くなどするのを見ながら同人に氷を渡し、更にAから氷を追加で買ってくるよう頼まれて、前記コンビニエンスストアに戻り、同様の氷4袋を追加購入したことが認められるが、この間、被告人がAに氷の用途を確認したり、あるいはその頼みに驚いたり、躊躇したりした様子は何らうかがわれない。 そして、被告人やC自身、一度にこれほどの量の氷を普段購入することはないと 述べているし、Aは帰宅後さらにクラブに行く予定があったから、このときに大量の氷を必要とする理由もない。この点、被告人は、AがBとのSMプレイで痛めた部位を冷やすのかと思ったと述べるが、体を冷やすのに大量の氷は不要であるし、被告人はAの負傷状況の確認もしておらず、不合理で信用できない。 そうすると、前記のような被告人の行動や態度は、被告人が、最初の氷4袋の購 入時点で、Aがすぐに冷やす必要があるそれなりに大きなものを持ち帰ってきたことをあらかじめ知っていたことをうかがわせ、ひいてはAが と、前記のような被告人の行動や態度は、被告人が、最初の氷4袋の購 入時点で、Aがすぐに冷やす必要があるそれなりに大きなものを持ち帰ってきたことをあらかじめ知っていたことをうかがわせ、ひいてはAがBを殺害し、その死体を持ち帰ることを事前に認識していたともいえそうである。 もっとも、既にみたとおり、AがDで本件殺人等に及ぶ前の事実関係には、被告人がAのそうした意図を認識していたと強くうかがわせるものがないことからすれ ば、その直後の氷の購入状況のみをもって、被告人がAの同意図を事前に認識していたと推認することは困難であり、被告人がAが多量の氷を買う不可解さを感じつつも、もはやどうしようもないなどと思ってその要求に従ったと考えることもできないとまではいえない。 エ最後に、被告人は、前記のとおり被告人方に戻った直後の7月2日午前3時 9分頃、CにLINEメッセージ(ただし送受信履歴が削除されているため、内容は不明である。)を送信するなどし、その頃、前記のとおりAが浴室にビニール袋を置いて氷で冷やしている様子を目にしたが、午前3時33分頃には、これからAをクラブに連れて行く旨の簡単なメッセージを送信し、Cも、午前3時34分頃、これに「了解」とだけ返信し、被告人がそのままAをクラブに連れて行き、また、 その後もAが頭部を浴室に置くなどしていることについて、Cと込み入った話をしなかったことが認められる(なお、被告人は、AがBの頭部を持ち帰ったことが分かったのは7月3日の夕方であったとも受け取れる供述をしているが、同月2日午後4時14分頃には、Aに頼まれて「ホルマリン購入」と検索しており、これはその頃までにAが頭部を持ってきたことを被告人が現実のことと認識していたとみ なければ説明がつかないから、遅くとも前記のとおりAが黒色ビニール袋 に頼まれて「ホルマリン購入」と検索しており、これはその頃までにAが頭部を持ってきたことを被告人が現実のことと認識していたとみ なければ説明がつかないから、遅くとも前記のとおりAが黒色ビニール袋を取り出 し、これを浴室に持って行って氷で冷やしていること等を目にするとともに、その頃、Aからそれが人の頭部である旨を説明された頃には、AがBを殺害し、その死体の一部である頭部を持ってきたことを認識していたことは明らかといえる。)。 そして、被告人がAが殺害等に及ぶことを想定していなかったのであれば、通常は、Aが頭部を所持していることを認識した時点で、何が起きたのかを尋ね、多少 なりともこれを被告人方に置くことに難色を示すとともに、家族にとって一大事であるその対処方法について妻であるCとの間で何としても深い話をするのが自然であるといえる。そうすると、そのような行動に出ていない被告人の前記態度から、AがBを殺害しその死体を持ち帰ることを事前に認識していたのではないかとも疑われる。 しかし、これまでみてきた他の間接事実に照らせば、このような被告人の態度のみから被告人が前記のような認識を事前に有していたと断定することもまた困難である上、被告人らが、Aが帰宅後に頭部を持ち帰ってきたことを初めて認識したとしても、余りに異常かつ重大な事態にどう対処したらいいか分からないことや、Aの異常な精神状態をこれ以上悪化させないようにとの配慮等から、その対処行動に 出なかったり、家族と深く話し合うに至らないことがおよそあり得ないとまではいえず、その限りにおいては、やはり被告人及びCの供述を虚偽として排斥することまではできない。 5 小括以上からすると、被告人は、遅くとも7月1日午後9時30分頃には、AがBに 会えば何らかの犯罪に及ぶ可能性 いては、やはり被告人及びCの供述を虚偽として排斥することまではできない。 5 小括以上からすると、被告人は、遅くとも7月1日午後9時30分頃には、AがBに 会えば何らかの犯罪に及ぶ可能性があると認識したことは認められるが、すべての事実関係を総合しても、被告人がAが殺人等に及ぶことまでは事前に認識していなくとも説明することが極めて困難であるとまではいえず、その認識が合理的な疑いなく立証されたとまではいえない。 また、被告人及びCの供述には、すでにみたとおり、少なからず信用できない部 分もあるが、そうであるとしても、Aが何らかの犯罪に及ぶことを認識していたこ とを否定するために虚偽の弁解をしているとも考えられなくはないから、そのような供述部分があるからといって、Aが本件殺人等に及ぶことを事前に知らなかったとの供述部分までおしなべて虚偽であるということまではできない。 したがって、本件の証拠上は、被告人が、7月2日午前3時頃に被告人方に戻り、AがBの頭部を浴室に置くなどした頃には、Aがその頭部を被告人方に置くこと、 すなわち死体遺棄の情を知ったとの限度でしか事実を認定することはできず(被告人がAから人の頭部を持ち帰った旨説明されたのは、被告人が1度目に氷を購入した同日午前2時52分から2度目に氷を購入した同日午前3時4分の間であるから、被告人が死体遺棄の情を知ったのは午前3時頃と特定した。)、それ以前の公訴事実1ないし4(4については一部)の被告人の行為については、幇助の故意を認定 できず、各幇助の事実は認められない(なお、検察官は、公訴事実1ないし5を1罪として起訴したものであるから、主文において無罪の言渡しはしない。また、7月1日午後9時30分頃の時点で、被告人は、Aが何らかの犯罪に及ぶことを認識していたとま 、検察官は、公訴事実1ないし5を1罪として起訴したものであるから、主文において無罪の言渡しはしない。また、7月1日午後9時30分頃の時点で、被告人は、Aが何らかの犯罪に及ぶことを認識していたとまでは認定できるものの、いかなる犯罪を認識していたかを特定することはできないから、訴因変更等の手続を求めることはしなかった。)。 第3 争点⑵(死体遺棄幇助の成否)について1⑴ 弁護人は、本件が、継続犯といえる葬祭義務者による不作為形態の死体遺棄とは事案を異にし、死体を場所的に移動した時点で遺棄は終了するというべきであるから、本件死体遺棄は、Bの頭部を自宅に持ち帰った時点(すなわち7月2日午前3時頃の時点)で終了すると主張する。これに対し、検察官は、死体遺棄罪の 保護法益からすれば、正犯が葬祭義務者か否かのみによって犯罪の成否が必ず分かれるわけではない、「遺棄」に該当する行為のうち、死体を隠匿し続けて葬祭義務者による死体の葬祭を困難にする行為は、継続的に保護法益を侵害するものであるから、本件でも死体の隠匿が継続した同月24日午前8時45分頃まで遺棄は終了しないと主張する。 ⑵ そこで検討すると、まず、法令の解釈として、犯罪の終了する時点は、当該 犯罪の保護法益の性質やその侵害の程度から、状態犯か継続犯かを類型的に区分して決せられるものではなく、個別具体的に、実行行為や保護法益の侵害が継続しているかという観点からも判断すべきものと解される(最高裁平成18年12月13日第3小法廷決定等参照)。そして、刑法190条の保護法益は、死者に対する一般的な宗教的感情や敬けん感情であるところ、これらは、社会が習俗に従って死体 の埋葬等を行うことで保護されることを前提としており、そのような前提から、死体遺棄罪における「遺棄」は、習俗上の埋葬 一般的な宗教的感情や敬けん感情であるところ、これらは、社会が習俗に従って死体 の埋葬等を行うことで保護されることを前提としており、そのような前提から、死体遺棄罪における「遺棄」は、習俗上の埋葬等とは認められない態様で、死体等を「放棄」する行為に加え、他者が死体を発見することを困難にして死体を「隠匿」する行為も含むものであり(最高裁令和5年3月24日第2小法廷判決参照)、死体の隠匿については、葬祭義務者でなくとも継続的に法益を侵害するような態様も 想定することができる。これらを考え併せれば、死体の隠匿行為が故意に継続されている場合には、習俗上の埋葬が困難にされ続け、保護法益の侵害が継続しているといえるから、その間死体遺棄罪は継続して成立すると解するのが相当であり、弁護人の主張は採用できない。 ⑶ これを本件死体遺棄の事実の認定及び法令適用についてみると、Aは、前記 のとおり、7月2日午前3時頃、Bの頭部を損壊する目的をもって自宅に運び入れた上、頭部の皮膚を剥ぎ取った上、眼球や舌を摘出し、また時期は特定できないものの食道気管も摘出するなどの損壊行為に及んだ後、摘出したものをエタノールで満たした瓶に詰め、剥いだ皮膚を球状にしたザルにかぶせて自ら入浴に使う浴室に吊るし、残りの頭部も同浴室に置いておくなどしており、死体を相応の期間保持・ 保管する意図で、このような状態を続けていたものと認められる。以上の隠匿状況からすれば、Aは、捜査機関が被告人方に臨場するまで、Bの頭部を自己の物として自らの支配下に置き続け、故意に隠匿行為を継続させたと認定できる。 ⑷ したがって、Aによる死体遺棄は、死体を被告人方に運び入れた時点をもって終了したとみるべきでなく、7月24日午前8時45分頃にその隠匿が終了する までの間成立する。 2⑴ きる。 ⑷ したがって、Aによる死体遺棄は、死体を被告人方に運び入れた時点をもって終了したとみるべきでなく、7月24日午前8時45分頃にその隠匿が終了する までの間成立する。 2⑴ そこで、被告人が、Aによる死体遺棄(前記第2で認定した、被告人がこれを認識した以降の犯行に限る。)を容易にして幇助したといえるかを検討する。 ⑵ 本件公訴事実によって画された前記死体遺棄の幇助行為は、検察官の冒頭陳述及び論告等の内容も踏まえると、被告人がAの死体遺棄を容認したこと(公訴事実4)及びAが頭部から右眼球を摘出する様子をビデオ撮影したこと(公訴事実5) である。 ⑶ そして、前記死体遺棄の「容認」とは、被告人が、①頭部の隠匿場所として被告人方を提供したこと、②Aから眼球や舌が入った瓶等を見せられて「すごいね。」などと発言したこと、③Aが頭部を隠匿するに当たり、それを阻止するような行動に出なかったこと、といった一連の行為や態度を総合評価したもの(その点 で、弁護人が主張するような単なる不作為ではない)と解されるところ、①Aが死体を隠匿するためにはそのための場所が必要不可欠であり、被告人方の所有者である被告人が、家族の共用部分である浴室をAがその隠匿場所として専有することを黙認したことは、Aの死体遺棄行為を物理的、心理的に容易にしたといえる。②また、Aにとって実の父親であり、少なくとも現実世界での生活上依存する関係にあ る被告人が、眼球等が入った瓶をAから見せられて「すごいね。」などと言ったことも、仮にAに調子を合わせたものであるとしても、Aに対して死体遺棄行為を積極的に肯定したと伝わる発言というほかなく、③の頭部を保管することをとがめたり警察に通報したりするなどの態度に出なかったことと併せて、死体遺棄を継続しようというAの心理 、Aに対して死体遺棄行為を積極的に肯定したと伝わる発言というほかなく、③の頭部を保管することをとがめたり警察に通報したりするなどの態度に出なかったことと併せて、死体遺棄を継続しようというAの心理を強めたものといえる。 また、Aが頭部から右眼球を摘出する様子をビデオ撮影したことについても、これがAの死体遺棄行為を精神的に支えるものであったことは後述するとおりである。 ⑷ したがって、被告人の以上のような行為や態度は、Aの前記死体遺棄の犯行を容易にしたものと認定評価でき、被告人の幇助の故意に欠けるところもないから、被告人には死体遺棄幇助罪が成立する。 第4 争点⑶(死体損壊幇助の成否)について 1 検察官は、Aが右眼球を摘出した際、被告人がその様子をビデオ撮影した行為は、Aの犯行を心理的に幇助しただけでなく、Aが考えていた死体損壊はビデオ撮影をしながら行うというものであるから、被告人の撮影によりAが両手を使えるなど作業しやすくなった点で、直接的(物理的の意味と解される。)にも幇助したと主張する。これに対し、弁護人は、被告人のビデオ撮影行為がAの右眼球を摘出 する行為を物理的に容易にすることはあり得ないし、犯行時の被告人及びAの言動等からして、心理的に容易にしたともいえないと主張する。 2 そこで検討すると、まず、物理的幇助の点については、右眼球摘出の際、仮に被告人が撮影しなかった場合にAがどのような損壊態様を想定していたかは明らかでなく、D内での犯行時はハンディカメラを置いて撮影していたことのほか、被 告人方における右眼球摘出以外の死体損壊行為は撮影しておらず、Aがあらゆる損壊行為を撮影しなければならないと考えていたとも認められないことからすると、ハンディカメラを置いて両手で摘出したり、ビデオ撮影をせずに両手で摘出 摘出以外の死体損壊行為は撮影しておらず、Aがあらゆる損壊行為を撮影しなければならないと考えていたとも認められないことからすると、ハンディカメラを置いて両手で摘出したり、ビデオ撮影をせずに両手で摘出したなどの可能性も十分考えられるから、被告人が撮影したことで前記死体損壊それ自体を物理的に幇助したとはいえない。 3 しかし、心理的幇助の点については、Aにとってビデオ撮影が損壊行為に必須であったとはいえないまでも、Aが、Dでの犯行の場面をビデオ撮影し、右眼球摘出後にその映像を被告人に見せたこと、また、被告人方において、解体した頭部をインスタントカメラ(チェキ)で撮影した写真や摘出した眼球等の入った瓶をCらが見える位置に置いていたこと等からすると、Aは、Bの頭部を損壊する行為や その成果物を保存して、ときにそれらを被告人らに示すことに一定の充足感を抱いていたと推認できる。その上で、Aが、右眼球摘出に際しても自らCや被告人に撮影を依頼し、撮影後も被告人に対して「ちゃんと撮れた?」と確認していることからすれば、ビデオで撮影をされながら右眼球を摘出することを積極的に望んでいたといえ、被告人が現に撮影してくれたことで、より損壊の意思が高まったといえる。 なお、Aは、自分でビデオ撮影をしながら損壊するよりも、被告人に撮影してもら うことで、よりよい映像が残せるであろうことも当然考えていたと推認できる。 4 そうすると、弁護人が主張する、被告人がAの損壊行為そのものには助言も含め何らの手助けをしていないこと、Aがビデオ撮影に多少先立って右眼球摘出行為を始めていたこと等を踏まえても、被告人によるビデオ撮影は、Aの前記死体損壊の犯意を増強させこれを心理的に幇助したと認定評価でき、被告人の幇助の故意 に欠けるところもないから、被告人には死体損 為を始めていたこと等を踏まえても、被告人によるビデオ撮影は、Aの前記死体損壊の犯意を増強させこれを心理的に幇助したと認定評価でき、被告人の幇助の故意 に欠けるところもないから、被告人には死体損壊幇助罪が成立する(さらに、以上からすれば、前記ビデオ撮影が前記死体遺棄を心理的に促進しこれを幇助したことも明らかである。)。弁護人のその余の主張を検討しても、以上の判断は動かない。 (なお、⑴本件の証拠上は、被告人がCからAが浴室で撮影することを望んでいる旨伝えられた際、頭部を損壊する旨まで伝えられたとは認めることができないが、 被告人は、前記伝達を受ける以前に、Aが眼球の1つや舌を摘出したことを既に認識していた上、静止画でなく動画の撮影を依頼されたことから、少なくともAが頭部を更に損壊しようとしているのかもしれないとの認識は抱いたものと認めた。⑵本件公訴事実は、被告人が、Aが被告人方においてBの頭部の皮膚を剥ぎ取り、左眼球、舌及び食道気管を摘出した死体損壊行為も幇助したと主張するもののように も思われるが、これまで関係証拠から認定した事実からは、被告人が、AがBの頭部を領得してきたことを認識した時点では、Aがその頭部を更に損壊する可能性を認識していたとは認められない上、AがBの頭部の皮膚を剥ぎ取り、左眼球、舌及び食道気管を摘出した行為は、被告人が右眼球摘出のビデオ撮影を依頼される前であった疑いが残り、結局被告人がそれらの行為の前にAが死体損壊に及ぶ可能性が あると認識していたとは認められないから、幇助の故意を認めることはできない。)(量刑の理由) 1 まず、被告人が幇助したAの犯行は、自らが殺害・切断して自宅に持ち帰ったBの頭部を、そのまま隠し持ち続けたのみならず、眼球を摘出までしたという、常軌を逸する犯行であり、死者に対する の理由) 1 まず、被告人が幇助したAの犯行は、自らが殺害・切断して自宅に持ち帰ったBの頭部を、そのまま隠し持ち続けたのみならず、眼球を摘出までしたという、常軌を逸する犯行であり、死者に対する一般の宗教的感情等を害した程度は著しい。 動機のうちには約束を破ったBへの怒りや仕返しもあったと考えられるが、一連の 行動に照らすと、自身の興味や嗜好を満足させる目的も相当程度うかがわれ、前記感情に大きく反している。しかも、いずれも計画的犯行である。そうすると、Bが約束を破ったことが犯行のきっかけとなったことや、病的な生命観・倫理観の歪みを踏まえても、刑法190条に係る犯行の中で犯情は非常に悪い。 その上で、被告人の幇助行為をみると、当裁判所の認定では被告人はAが死体遺 棄を開始してからこれを容認したとまでしか認められず、また、同遺棄に対して積極的な幇助行為には出ておらず、死体損壊も物理的な幇助をしたとはいえない。しかし、自宅浴室を隠匿する場所として容認したことは、Aが望む死体遺棄等にとって本質的な場所を与えた重要な行為であったといえ、また、被告人は、AにとってCと共に実の親であり、少なくとも現実世界の生活上依存する存在であった上、A の犯行を阻止できる唯一の立場にあったから、被告人が死体遺棄・損壊を黙認したのみならず賛辞とも取れる発言をしたこと等がAの犯意を心理的に促進した程度も決して小さくなかったとみるべきである。なお、被告人は、Aの精神状態のこともあり、警察に突き出すことはできなかったなどと述べるが、そうであったとしても、斟酌することはできない。 このように、Aの犯情の悪さを前提に、被告人の寄与度の大きさを併せ考えれば、被告人の犯情は刑法190条の幇助犯の中でも重いものがある。 2 しかも、被告人は、本件に関するL ことはできない。 このように、Aの犯情の悪さを前提に、被告人の寄与度の大きさを併せ考えれば、被告人の犯情は刑法190条の幇助犯の中でも重いものがある。 2 しかも、被告人は、本件に関するLINEメッセージ等を大量に削除する証拠隠滅行為もしている(この点、被告人は、Aの行為が分かった後に本件に関するやり取りが目に入るのが嫌だったと述べるが、画面に表示される以上の相当以前の メッセージにまで労力をかけて遡り、通話履歴まで削除していることに照らせば、それのみが目的であったとは到底いえず、主として証拠隠滅の目的で前記行為に出たものと推認できる。)上、当裁判所が認定した各幇助については事実を概ね認めて後悔の態度を示しているものの、その経緯等については自己に都合のいい供述をしている点も少なくなく、死者のことを真摯に思って反省しているとはいい難い。 3 もっとも、処断刑からうかがわれる犯罪全体の中での死体遺棄等幇助の位置 付けを基に、被告人に前科がなく、Aとの関係が元に戻らない限り再犯のおそれはないこと等を踏まえると、前記犯情及び一般情状をもってしても、被告人を実刑に処すべきであるとまではいい難く、主刑及び猶予期間は長期としつつ、刑の執行を猶予するのが相当である。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑懲役10年)令和7年3月19日札幌地方裁判所刑事第3部 裁判長裁判官渡邉史朗 裁判官加島一十 裁判官畑中胡春 中胡春
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