平成16(わ)16 強盗殺人

裁判年月日・裁判所
平成16年9月13日 長野地方裁判所 松本支部
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判決文本文5,126 文字)

被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中120日をその刑に算入する。 主文 理由 (犯行に至る経緯) 1 被告人は,昭和48年2月長野市で出生し,昭和63年3月に中学校を卒業し,長野県松本市内の寿司店に就職して,約5年間稼働したが,同店を退職した後は,土木作業員,飲食店従業員等の仕事に就いていた。 2 本件犯行の被害者A(以下「被害者」ともいう。)は,昭和60年ころ,当時松本市で貸金業をしていた妹夫婦を頼って松本市に来て,飲食店で稼働するようになったが,昭和63年ころからは,後記の本件被害場所であるビルの一室を自宅兼貸金業事務所として貸金業を営むようになった。 3 被告人は,中学校卒業後に就職した寿司店で被害者がアルバイトをしていたことから,被害者と知り合い,被害者が同店でのアルバイトの他に貸金業もしていることを知った。被害者はその後同店でのアルバイトを辞めたが,被告人は,平成5年ころ,被害者から合計18万円くらいを借り受け,この借金は母親から援助を受けて1年くらいで返済したが,その後,遊興のために消費者金融業者から金を借りたり,クレジットで高額の物品を購入するなどして多額の債務を負担するようになり,平成12年8月,約1350万円もの多額の債務を抱え,長野地方裁判所松本支部で破産宣告を受けた。 4 被告人は,平成14年春ころ,松本市内のキャバレーでホステスをしていたBと知り合い,同年10月ころから,B,その連れ子の女児と一緒に被告人の実家で生活するようになった。 しかし,被告人の母親とBの折り合いが悪くなったことから,被告人は,同年11月末ころ,Bらとともに実家を出て,同県塩尻市内のアパートを借りようとしたが,そのためには敷金等の入居費用が必要であるところ,破産宣告を受けていたために一般消費者金融業者から金銭を借り入れること 11月末ころ,Bらとともに実家を出て,同県塩尻市内のアパートを借りようとしたが,そのためには敷金等の入居費用が必要であるところ,破産宣告を受けていたために一般消費者金融業者から金銭を借り入れることはできず,知り合いから借り入れることもできなかった。そこで,被告人は,かつて一緒に働いたことがあり,金を借りたこともある被害者から金を借りようと思い,同年12月2日ころ,被害者方を訪ね,同人から利息天引きの上で50万円を借り入れ,これで敷金等を支払って,アパートに入居した。 被告人は,その後,水道設備工事作業員,宅配業者アルバイトなどとして稼働し,Bも短期間稼働したが,パチンコや外食等に相当額を費やすなど浪費を続け,被害者から更に合計約21万円を借り入れ,別の金融業者からも借入れをした。 被告人は,平成15年6月から,同月7日に開店した塩尻市内のディスコ店の警備員の仕事を始めたが,給料は翌月支給であった上,同店は開店間もない時期から客が入らず,給料が支給されそうもない状態であった。被告人は,借金の返済に追われ,アパートの家賃や生活費等の支払も滞納しがちとなり,日々の生活費にも困窮するようになったが,母親と喧嘩の末に実家を飛び出したという経緯から,今更実家を頼ることもできないと思い,何とかしてまとまった金を手に入れて,Bとの生活を立て直したいと考えるようになった。 5 そうした中,被告人は,上記ディスコ店で働いていたブラジル人から,窃盗等の犯罪によって金品を得たという話を聞き,自分も何らかの犯罪を犯してでもまとまった金を手に入れられないかと考え始めた。 そして,被告人は,貸金業を営む被害者であれば自室に多額の現金を保管しているものと推測し,同人方から金を取ろうと思ったが,留守宅に侵入することは困難なので,被害者にドアを開けさせて入るしかないが,被害者は, 被告人は,貸金業を営む被害者であれば自室に多額の現金を保管しているものと推測し,同人方から金を取ろうと思ったが,留守宅に侵入することは困難なので,被害者にドアを開けさせて入るしかないが,被害者は,ドアチェーンをした状態で相手の顔を確認してからでないとドアを開けてくれないので,自分が直接被害者方に赴いてドアを開けさせて入るしかなく,被害者が被告人を知っている以上,犯行の発覚を防ぐためにはその場で被害者を殺害するほかはないと考えるに至った。 そして,被告人は,自分の手で直接被害者を殺害するのは嫌だったことから,平成15年6月21日ころ,上記ディスコ店で警備員をしていたCにこの計画を持ちかけ,奪った現金は半額ずつ分けるなどと言って,同人を誘ったところ,同人はこれを承諾した。被告人は,以後数回にわたってCと具体的な犯行方法について相談し,同年7月10日に計画を実行に移すこと,最初に被告人が被害者に顔を見せて,ドアを開けてもらい,被害者方に入ること,Cが被害者の背後から腕で首を絞めること,その後,確実に殺害するためにロープで首を絞めて,被害者の口と鼻にガムテープを巻くこと,指紋を残さないために手袋を用意すること,体毛を現場に残さないように長袖の服を着ることといったことを取り決め,同年7月7日早朝に2人で被害者宅の下見も行った。 そして,被告人とCは,同月10日夜,Cの運転する車で被害者方に向かい,その途中でCが犯行に用いるガムテープを購入し,被害者方付近に車を停めた。被告人とCは,車を降りて,被害者方に行き,被告人が被害者方のドアブザーを押して,被害者にドアを開けさせた。そして,被告人は,室内に入り,その後からCが室内に入った。 (罪となるべき事実)被告人は,Cと共謀の上,A(当時59歳)を殺害して金員を強取しようと企て,平成15年7月10日午後9時3 けさせた。そして,被告人は,室内に入り,その後からCが室内に入った。 (罪となるべき事実)被告人は,Cと共謀の上,A(当時59歳)を殺害して金員を強取しようと企て,平成15年7月10日午後9時30分ころ,長野県松本市・・・所在のA方において,同人に対し,殺意をもって,Cがその背後から頸部を腕で締め付け,さらに,被告人及びCの両名がその頸部に自動車配線コード様のものを巻き付けてその両端を引っ張り締め付けるなどし,よって,そのころ,同所において,Aを絞頸により窒息死させて殺害した上,同人所有の現金約41万6000円を強取したものである。 (証拠の標目)※省略(法令の適用)罰条刑法60条,240条後段刑種の選択無期懲役刑選択未決勾留日数の算入刑法21条訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由) 1 本件は,被告人が,貸金業を営む知人を殺害して金員を強取することを企て,ブラジル国籍で現在母国に帰国して逃亡中のCと共謀の上,被害者方に赴き,Cとともに被害者を殺害し,現金約41万6000円を強取したという強盗殺人の事案である。 2 本件の犯行に至る経緯は,既に説示したとおりであり,被告人は,一度破産宣告を受けたにもかかわらず,平成14年12月以降の女性やその連れ子との生活において,収入に見合った暮らしをすることができず,浪費を続けて生活に行き詰まったものであり,女性の側にもパチンコで浪費するなどの問題があったことは窺われるが,被告人自身が生活態度を真剣に改めようとしなかったものであり,その経緯に酌量の余地はない。そして,被告人は,貸金業を営む被害者であれば,多額の現金を所持しているものと推測し,前記のような考えを巡らせた結果,被害者を殺害して現金を強取しようと企て,また,それによって被害者 量の余地はない。そして,被告人は,貸金業を営む被害者であれば,多額の現金を所持しているものと推測し,前記のような考えを巡らせた結果,被害者を殺害して現金を強取しようと企て,また,それによって被害者からの借金の返済も免れることができるとも考えて,Cを誘って本件犯行に及んだものであるが,余りにも身勝手で自己中心的な発想というほかなく,その犯行動機に酌量の余地は全くない。 3 次に犯行態様を見ると,まず,本件は高度に計画的な犯行であり,被告人らは,あらかじめ殺害の具体的な方法を綿密に相談し,絞頸に使うコード,被害者の口と鼻を塞ぐガムテープ,指紋を残さないための手袋等を用意し,ほぼ計画したとおりに遂行したものである。 その具体的な方法をみても,被告人がまず被害者に顔を見せて,被害者にドアを開けさせると,被告人に続いてCが被害者方に入り込み,巨漢のCが小柄な被害者の背後から腕でその頸部を締め付け,そのまま前のめりに押し倒して,被害者をうつぶせにした状態でなお腕で頸部を絞め続け,その際,被告人も被害者がばたつかせていた足を押さえ付けるなどし,被害者が動かなくなってからも,さらに,持参したコードを被害者の首に巻き付けて2人でその両端を引っ張って首を絞めたものであり,死因からするとこの時点で被害者は絶命したとみられるが,被告人らは,なおも,被害者の頭部にその場にあったビニール袋を被せ,その上からガムテープを幾重にも巻き付けて口と鼻を塞いだものであって,こうした殺害の方法は,強固な殺意に基づく極めて執拗かつ残忍なものである。被告人は,アパートに入居するための金がないというときに,被害者に金を貸してもらったのであり,無論それが被害者の生業であり,利息も高利であるとはいえ,被害者に世話になっていたのであって,そのような被害者に対する仕打ちとしては余りにも非道なもの いうときに,被害者に金を貸してもらったのであり,無論それが被害者の生業であり,利息も高利であるとはいえ,被害者に世話になっていたのであって,そのような被害者に対する仕打ちとしては余りにも非道なものというほかない。 なお,被害者の殺害に際しては,Cが重要な役割を果たしたものであるが,被告人は,犯行を計画し,Cにこれを持ちかけた上,犯行当日も,何喰わぬ顔で被害者方を訪れて無警戒の被害者にドアを開けさせ,Cとともにコードで被害者の首を絞めて殺害したものであり,本件の中心的な役割を果たしたものといえる。 4 本件犯行の結果は,言うまでもなく,余りにも重大である。 被害者は,本件当日,被告人を何ら疑うことなく自室に入れたところ,突然襲われ,頸部を絞められて,苦しみながら息絶えたものであり,その苦痛や恐怖は想像を絶するものがある。 被害者は,本件当時,人工透析のために通院しながらも,独力で貸金業を営み,一人暮らしではあったが,親族と親しく交際し,離婚後しばらく途絶えていた実子との交流も復活して,穏やかに生活を送っていたものであって,そうした中で理不尽にも突然にその人生を絶たれた無念の心情は察するに余りある。 被害者の親族らは深い悲しみに沈むとともに,激しい憤りを覚えており,被害者の長男は公判廷でその心情を語り,妹夫婦らも捜査官に対してその心情を述べているが,いずれも被告人に対する極刑を望むとしており,遺族の処罰感情は峻烈であって,それは十分理解できるところである。 さらに,本件強取に係る財産的被害も軽視できない。 以上のとおり,本件犯行による被害は重大であるところ,被害弁償や金銭的な慰謝の措置は講じられておらず,今後それが実現する見込みもない。 加えて,本件は,店舗や住宅の集まる市街地で敢行された凶悪犯罪であって,近隣住民など社会に与えた衝撃も多大である。 ,被害弁償や金銭的な慰謝の措置は講じられておらず,今後それが実現する見込みもない。 加えて,本件は,店舗や住宅の集まる市街地で敢行された凶悪犯罪であって,近隣住民など社会に与えた衝撃も多大である。 5 以上によれば,被告人の刑事責任は誠に重大であるというほかない。 そうすると,被告人が捜査段階から一貫して事実を認め,犯行状況等を詳細に供述し,捜査及び公判を通じて反省と謝罪の態度を示していること,被告人には道路交通法違反による罰金前科1件以外の前科はなく,これまでの稼働先の関係者の評価も特に悪いものではなく,被告人に強い犯罪性向は窺えないことなどの被告人に有利な事情を十分斟酌しても,これまで述べたような本件犯行に至る動機・経緯,犯行態様の悪質さ,結果の重大性等に照らすと,被告人を無期懲役に処するのが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑 - 無期懲役)平成16年9月13日長野地方裁判所松本支部裁判長裁判官峯俊之裁判官梶智紀裁判官岡田龍太郎

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