- 1 -主文 原判決を次のとおり変更する。 (1)紋別市長がA民間移管受託事業候補者への審査の結果について「決定に至らない」旨を平成20年5月2日付けで通知することによってした処分を取り消す。 (2)紋別市長に社会福祉法人B(予定)に対しA民間移管受託事業候補者として決定したことの通知を義務付ける請求に係る訴えを却下する。 (3)控訴人らのその余の請求を棄却する。 訴訟費用は第1,2審を通じて3分し,その2を控訴人らの負担とし,その余を被控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判 控訴人ら(1)原判決を取り消す。 (2)紋別市長が平成20年8月22日付けでした,控訴人らのA民間移管受託事業候補者への審査結果に係る異議申立てを却下した決定(以下「本件却下決定」という。)を取り消す。 (3)紋別市長が平成20年5月2日付けでした,A民間移管受託事業候補者への審査の結果について,「決定に至らない」との通知(以下「本件通知」という。)を取り消す。 (4)紋別市長は,社会福祉法人B(予定)に対し,A民間移管受託事業候補者として決定したことの通知をせよ。 (5)訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 被控訴人(1)本件控訴を棄却する。 (2)控訴費用は控訴人らの負担とする。 - 2 -第2事案の概要被控訴人は,老人福祉施設「紋別市立A」を設置し,管理していたところ,この施設を民間に移管することとし,施設の譲渡先として運営を引き継ぐ社会福祉法人(以下「受託事業者」という。)を公募した。控訴人らは,社会福祉法人B(以下「B」という。)を設立する予定であるとして,これに応募し,被控訴人の設置した紋別市立A民間移管受託事業候補者選定委員会(以下「選定委員会」という。)は,Bを受託 。控訴人らは,社会福祉法人B(以下「B」という。)を設立する予定であるとして,これに応募し,被控訴人の設置した紋別市立A民間移管受託事業候補者選定委員会(以下「選定委員会」という。)は,Bを受託事業候補者に選定したが,紋別市長は,平成20年5月2日付けで,本件通知をした。これに対し,控訴人らは,本件通知が不当であるとして,紋別市長に対し,行政不服審査法6条に基づく異議申立てをしたところ,紋別市長は,同年8月22日付けで,本件却下決定をした。 そこで,控訴人らは被控訴人に対し,①行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条3項に基づき本件却下決定の取消し,②同条2項に基づき本件通知の取消し,③同条6項1号に基づき,受託事業候補者としてBが決定された旨の通知をすることの被控訴人への義務付け,を求めて訴えを提起した。 原審は,本件通知には処分性がないとして,上記②及び③の請求に係る訴えを却下し,異議申立手続に違法はないとして,上記①の請求を棄却した。 控訴人らは,これを不服として,控訴を提起した。 前提事実,争点及び当事者の主張は,次の2のとおり補正するほか,原判決書「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「1前提事実(証拠を摘示した部分を除き,争いがない。)」及び「2本件の主な争点」のとおりであるから,これを引用する。 原判決の補正(1)原判決書9頁21行「争点)」の次に,「,処分性がある場合における本件通知の違法性」を加える。 (2)原判決書9頁25行「の有無」を,「及び違法性」と改める。 (3)原判決書11頁6行の次に,改行して次のとおり加える。 - 3 -「ウ本件通知は違法な処分である。 紋別市長は,選定委員会がBを受託事業候補者として選定したにもかかわらず,Bに対し「決定に至らない」との本件通知をしたのは,裁量権 次のとおり加える。 - 3 -「ウ本件通知は違法な処分である。 紋別市長は,選定委員会がBを受託事業候補者として選定したにもかかわらず,Bに対し「決定に至らない」との本件通知をしたのは,裁量権の範囲を逸脱し,裁量権を濫用したものであるから,違法である。」(4)原判決書11頁25行の次に,改行して次のとおり加える。 「仮に,本件通知に処分性が認められた場合において,本件通知が行政処分として適法である理由は,本件通知の記載事項(前記1(4))及び紋別市議会(平成20年度第2回定例会)における紋別市長の答弁(甲第21号証の1)のとおりであり,要するに,①1法人の応募では市民に理解されず,公平な応募の準備機会が損なわれることとなり,これらを含め,更に総合的に判断をした結果,市の説明責任や今後の行政改革推進の観点から,このまま手続を進めることがAの民間移管に当たり,好ましくないこと,②紋別市長が申し出た役員の変更を受け入れなかったこと,である。」第3当裁判所の判断 当裁判所は,本件通知には処分性があり,本件通知によってされた処分(以下「本件処分」という。)は,紋別市長が裁量権の範囲を逸脱し,又は裁量権を濫用したものであるから,違法なものとして取り消すべきであり,本件異議申立手続に違法はなく,義務付けの訴えは不適法である,と判断する。その理由は,次のとおり補正するほか,原判決書「事実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」の1及び2(原判決書12頁19行から17頁17行まで)のとおりであるから,これを引用する。 (1)原判決書12頁19行「の有無」を,「及び違法性」と改める。 (2)原判決書13頁17行「ということができ」から14頁1行「解される」までを削る。 (3)原判決書15頁4行「ということが」から10行までを,「。したがっ の有無」を,「及び違法性」と改める。 (2)原判決書13頁17行「ということができ」から14頁1行「解される」までを削る。 (3)原判決書15頁4行「ということが」から10行までを,「。したがって,- 4 -Bは,今後新たな募集に応じて選定されない限り,本件移管契約の相手方とはなり得ないことが確定するものである。」と改める。 (4)原判決書15頁11行「これに対し」から16頁18行までを,次のとおり改める。 「甲第1号証によれば,Aの民営化に当たっては,指定管理者方式と施設譲渡方式とが検討された上で,3年から5年の指定管理期間ごとに事業者が変わる可能性のある前者の方式を避け,長期的に同じ事業者がAの経営を継続することができる効果を期待して,後者が選択されたことが認められる。指定管理者方式については,地方自治法244条から同条の4までに規定があり,これを受けて制定された紋別市公の施設に係る指定管理者の指定手続に関する条例(甲第25号証)及び紋別市公の施設に係る指定管理者の指定手続に関する条例施行規則(甲第26号証)によれば,市長等が指定管理者に公の施設の管理を行わせようとするときは,原則としてその候補者を公募することとされている。したがって,本件募集要綱を定め,これに従って平成20年2月25日9時から同年3月24日17時まで募集(以下「本件募集」という。)を行ったのは,地方自治法に規定のある指定管理者方式を参考にして,施設譲渡方式における適切な受託事業者を選定するためであると推認される。また,上記のとおり,指定管理者方式では,3年から5年の指定管理期間を管理する事業者として適切な者を選定するために公募を行うのに対し,本件募集は,公の施設の無償譲渡を受け,指定管理期間よりも長い期間事業を継続することが予定されている受託事業者, 5年の指定管理期間を管理する事業者として適切な者を選定するために公募を行うのに対し,本件募集は,公の施設の無償譲渡を受け,指定管理期間よりも長い期間事業を継続することが予定されている受託事業者,すなわち,指定管理者よりも利権が大きく,かつ,重い責任を負う事業者を選定するために公募を行うものである。被控訴人においては,民営化の一手法である指定管理者方式においてすら公募を原則としていることに鑑みれば,同じ民営化のために,より慎重に受託事業者を選定する必要のある施設譲渡方式においては,公募によることが地方自治法- 5 -の解釈上要求されているものと解することができる。 以上によれば,本件募集は,法令の定めに基づいてされたものということができ,被控訴人が私人と同じ立場で,本件移管契約の相手方を選定するために任意に行ったものということはできない。したがって,本件募集に応募した者には,本件募集要綱等に従って適正に受託事業者の選定を受ける法的利益があり,紋別市長がBを受託事業者として選定しないことを通知する本件通知は,この法的利益を制限するものであるから,処分性があり,控訴人らは,本件処分の違法性を行政訴訟において争うことができる。 (5)被控訴人は,本件通知に処分性が認められた場合において,本件通知が行政処分として適法である理由は,本件通知の記載事項(甲第15号証。 前記第2の1(4))及び紋別市議会(平成20年度第2回定例会)における紋別市長の答弁(甲第21号証の1)のとおりであると主張する。 本件通知には,「先般開催いたしました『紋別市立A民間移管受託事業候補者選定委員会』におきまして、社会福祉法人B(予定)が受託事業候補者として選定されました。しかしながら、当方の事務的に拙速なスケジュールにより公募期間が短かったことにより、1法人のみの 受託事業候補者選定委員会』におきまして、社会福祉法人B(予定)が受託事業候補者として選定されました。しかしながら、当方の事務的に拙速なスケジュールにより公募期間が短かったことにより、1法人のみの応募となり、このことにより、公平な応募の準備機会が損なわれることとなり、これらを含め、更に総合的に判断をした結果、市の説明責任や今後の行政改革推進の観点から、このまま手続きを進めることがAの民間移管に当たり、好ましくないと判断いたしましたので、社会福祉法人B(予定)の紋別市立A民営化移管に係わる提案について、決定に至らなかったことでご理解願います。」との記載がある(甲第15号証)。また,紋別市議会(平成20年度第2回定例会)において,紋別市長は,「Bに対する回答書の中で、事務的に拙速なスケジュールで1法人のみの応募では市民に理解されないとみずから申し述べられたことから、私どもの反省点も踏まえ、記述し、- 6 -理解を得たものと考えております。また、私の役員変更についての申し出を受けていただけるということになれば、受託事業者の決定について再検討する考えでありました。」と答弁している(甲第21号証の1)。 しかし,1法人しか応募しなかったことは,本件募集の募集期間の満了時である平成20年3月24日(甲第4号証)には判明することであるが,紋別市長は,その時点で募集期間を延長して追加募集を実施する挙に出ていない。また,唯一の応募者であるBに対する選定委員会の審査手続は延期されることなく,同月28日には,控訴人らによるプレゼンテーションが行われ,選定委員会によるヒアリング審査が実施されている(甲第9号証)。さらに,本件募集は本件募集要綱に従って行われているところ,本件募集要綱の案は,同年2月8日に市長まで決裁が完了している(甲第1号証)から,募集 によるヒアリング審査が実施されている(甲第9号証)。さらに,本件募集は本件募集要綱に従って行われているところ,本件募集要綱の案は,同年2月8日に市長まで決裁が完了している(甲第1号証)から,募集開始(同月25日)まで十分な期間があり,「事務的に拙速なスケジュール」とは認められない。被控訴人は,紋別市長が控訴人らに対して申し出た役員の変更が受け入れられなかったことを本件処分の理由とするが,Bの役員予定者に欠格事由があるなどの具体的問題点の指摘はなく,本件通知には役員について全く記載がない(甲第15号証)。 甲第16号証によれば,被控訴人の主張する役員の変更とは,同年4月9日に,紋別市長と副市長が控訴人Cのもとを訪れて,「二人の理事を変更できないか。」と申し入れ,同月11日には,紋別市長が再度Cに「D前市長とE前助役を理事からはずせないか。」と述べたが,控訴人Cがこの申入れを断ったことを指すものと認められる。Bの理事予定者に,法令や本件募集要綱に定める欠格事由があることなどにより,これを変更しなければ受託事業者とすることができなかったのであれば,そのことを理由として本件処分を行うべきである。したがって,役員の変更が受け入れられなかったことは,何ら本件処分の適法性を基礎づけるものではない。 甲第10及び第11号証によれば,選定委員会は,審査の結果,Bが被- 7 -控訴人が求めている要求水準を満たしているとして,受託事業候補者に決定し,紋別市長に報告していたことが認められる。紋別市長は,選定委員会が出した結論に拘束されるものではないが,本件募集要綱の記載に鑑みれば,紋別市長が選定委員会の結論と異なる処分をするときは,それだけの合理的理由が必要である。ところが,上記のとおり検討したところによれば,被控訴人の挙げる理由は,いずれも合理的でなく の記載に鑑みれば,紋別市長が選定委員会の結論と異なる処分をするときは,それだけの合理的理由が必要である。ところが,上記のとおり検討したところによれば,被控訴人の挙げる理由は,いずれも合理的でなく,選定委員会が出した結論を覆すに足りるものではない。したがって,紋別市長がした本件処分は,紋別市長がその裁量権の範囲を逸脱し,又は裁量権を濫用して行ったものであるから,違法なものとして取り消されるべきである。」(5)原判決書16頁19行の次に,改行して「上記のとおり,本件通知には処分性が認められるから,その違法性は,原処分について判断され,本件異議申立手続については,その手続に固有の瑕疵のみが問題となる。」を加える。 (6)原判決書17頁17行「訴え」を,「請求」と改める。 (7)原判決書17頁17行の次に,改行して次のとおり加える。 「3控訴人らの義務付けの訴えについて控訴人らは,行訴法3条6項1号に基づき,受託事業候補者としてBが決定された旨の通知をすることの被控訴人への義務付けを請求する。 しかし,義務付けの訴えは,一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり,かつ,その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り提起することができるものであるところ,控訴人らに上記の事情があると認めるに足りる証拠はないから,上記請求に係る訴えは不適法である。」 以上によれば,本件通知には処分性があり,本件処分は,紋別市長が裁量権の範囲を逸脱し,又は裁量権を濫用してしたものであるから,違法なものとして取り消すべきであり,本件異議申立手続に違法はなく,義務付けの訴えは不- 8 -適法である,と判断する。よって,これと異なる原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。 札幌高等裁判所第2民事部裁判長裁判官末永進裁 手続に違法はなく,義務付けの訴えは不- 8 -適法である,と判断する。よって,これと異なる原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。 札幌高等裁判所第2民事部裁判長裁判官末永進裁判官古閑裕二裁判官住友隆行
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