令和5年7月26日判決言渡 令和4年(行ケ)第10080号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和5年5月24日判決 原告 天昇電気工業株式会社 同訴訟代理人弁理士 田辺恵 被告 特許庁長官 同指定代理人 里村利光 同井口猶二 同井上千弥子 同清川恵子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 特許庁が不服2021-415号事件について令和4年6月27日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告による出願と拒絶理由通知の受領 原告は、平成31年4月17日、名称を「樹脂加飾物品および物品表面の凸部加飾加工方法」とする発明につき特許出願(特願2019-78341号。請求項の数8。以下「本願」という。甲15)をしたが、令和2年8月13日付け拒絶理由通知書(以下「本件拒絶理由通知」という。甲16)を受領した。本件拒絶理由通知には、本願は新規性欠如(拒絶理由1)及び進歩性欠如(拒絶理由2)により拒絶すべきものとし、以下の理由がそれぞれ示され、後記引用文献1ないし6に記載された発明事項が示されていた。 ① 本願の請求項1ないし8の発明につき、引用文献1(特開昭57-32940号公報(発明の名称「成形品の製造方法」、出願人松下電器産業株式会社、公開日昭和57年2月 た発明事項が示されていた。 ① 本願の請求項1ないし8の発明につき、引用文献1(特開昭57-32940号公報(発明の名称「成形品の製造方法」、出願人松下電器産業株式会社、公開日昭和57年2月22日。以下この文献に記載された 発明を「引用発明」という。甲8)に記載された発明であるか、その記載に基づき当業者が容易に発明をすることができた② 本願の請求項1ないし4の発明につき、引用文献2(特開平2-299803号公報、甲9)に記載された発明であるか、その記載に基づき当業者が容易に発明をすることができた ③ 本願の請求項1ないし4の発明につき、引用文献3(特開平9-124043号公報、甲10)に記載された発明であるか、その記載に基づき当業者が容易に発明をすることができた④ 本願の請求項1、2、4の発明につき、引用文献4(特開平4-62099号公報、甲11)に記載された発明であるか、その記載に基づき当 業者が容易に発明をすることができた⑤ 本願の請求項1、5の発明につき、引用文献5(特開昭58-42424号公報、甲12)に記載された発明であるか、その記載に基づき当業者が容易に発明をすることができた⑥ 本願の請求項1ないし4の発明につき、引用文献6(特公昭49-2 4578号公報、甲13)に記載された発明であるか、その記載に基づき 当業者が容易に発明をすることができた⑦ 本願の請求項3の発明につき、引用文献4に記載された発明に引用文献1ないし3、6に記載された周知の構成を適用することにより容易に発明をすることができた⑧ 本願の請求項4の発明につき、引用文献1ないし6に記載された発明 に周知の構成を適用することは設計的事項に過ぎないから容易に発明をすることができた⑨ 本願の請求項 明をすることができた⑧ 本願の請求項4の発明につき、引用文献1ないし6に記載された発明 に周知の構成を適用することは設計的事項に過ぎないから容易に発明をすることができた⑨ 本願の請求項5の発明につき、引用文献2ないし4、6に記載された発明に引用文献1、5に記載された周知の構成を適用することにより容易に発明をすることができた ⑩ 本願の請求項6ないし8の発明につき、引用文献2に記載された発明に引用文献1に記載された発明の構成を採用することにより容易に発明をすることができた⑪ 本願の請求項8の発明につき、引用文献1、2に記載された発明に周知の構成を適用することは設計的事項に過ぎないから容易に発明をする ことができた(2) 原告による意見書の提出と手続補正、拒絶査定原告は、令和2年10月1日に意見書(以下「本件意見書」という。甲17)を提出し、同日、手続補正(請求項の数5。以下「第1次補正」という。 甲18)をしたが、同月6日付けで拒絶査定(以下「本件拒絶査定」という。 甲19)を受けた。 (3) 本件拒絶査定の内容本件拒絶査定には、本件拒絶理由通知に記載した理由1(新規性欠如)、同2(進歩性欠如)により本件出願を拒絶すべきものとし、以下の①ないし③の内容が示され、各引用文献に記載された発明の内容と進歩性の欠如につ いては相違点に係る構成につき容易想到とする理由等が記載されていた。 ① 本願の請求項1ないし3の発明につき、引用文献1に記載された発明であるか、その記載に基づき当業者が容易に発明をすることができた② 本願の請求項1ないし3の発明につき、引用文献2、1の記載に基づき当業者が容易に発明をすることができた③ 本願の請求項3の発明につき、引用文献1、2の記載に基づき当業 発明をすることができた② 本願の請求項1ないし3の発明につき、引用文献2、1の記載に基づき当業者が容易に発明をすることができた③ 本願の請求項3の発明につき、引用文献1、2の記載に基づき当業者 が容易に発明をすることができたその上で、「以下に記載する事項は本願拒絶査定を構成するものではないが、現在存在している拒絶理由である。」として、請求項5の発明につき引用文献1に記載された発明に基づく新規性、進歩性欠如、請求項4、5の発明につき、引用文献1及び後記引用文献7に基づく進歩性欠如、請求項4、5の 発明につき、引用文献2、1、7に基づく進歩性欠如、請求項5の発明につき明確性要件違反の拒絶理由がある旨が示され、引用文献等一覧として、引用文献1、同2のほか、「7.特開平11-42749号公報(周知技術を示す文献、新たに引用された文献)」(甲14)と記載されていた。 (4) 原告による不服審判請求と手続補正 原告は、令和3年1月5日、特許庁審査官との面接を受けた(甲4)。 原告は、令和3年1月12日、本件拒絶査定に対し不服の審判請求(甲20)をするとともに、同日付けで手続補正(第2次補正、以下「本件補正」という。請求項の数4。発明の名称を「樹脂材表面の凸部加飾加工方法」と変更。甲21)をした。 (5) 審決と原告による本件訴訟提起特許庁は、同請求を不服2021-415号事件として審理し、令和3年3月19日付け(作成日)前置報告書(甲22)が起案されたが、令和4年6月27日、特許庁は、本件補正を却下した上、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は令和 4年7月12日原告に送達された。 原告は、令和4年8月8日、本件訴訟 した上、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は令和 4年7月12日原告に送達された。 原告は、令和4年8月8日、本件訴訟を提起した。 2 発明の内容(1) 第1次補正時第1次補正時(令和2年10月1日)の請求項は前記のとおり1ないし5から成るが、そのうち請求項1に係る発明の内容(以下「本願発明」という。) は、以下のとおりである。 「樹脂材表面に所望の嵩高構成部品を貼着した樹脂材を受け治具に載置した後、前記樹脂材の上方に樹脂フィルムを配置し、前記樹脂材および前記樹脂フィルムの周囲を負圧状態にするとともに前記樹脂フィルムを加熱、軟化させ、前記受け治具を前記樹脂フィルムに向けて上昇させて軟化状態の前記 樹脂フィルムに前記樹脂材およびその表面の前記嵩高構成部品を密着させた後、前記受け治具の周囲を開放し、樹脂加飾物品を取り出すことを特徴とする樹脂材表面の凸部加飾加工方法。」(2) 本件補正時本件補正時(令和3年1月12日)の請求項は前記のとおり1ないし4か ら成るが、そのうち請求項1に係る発明の内容(以下「本願補正発明」という。)は、以下のとおりである(下線は本件補正における補正箇所である。)。 「樹脂材表面に凹凸加飾すべき凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された所望の嵩高構成部品を貼着した樹脂材を受け治具に載置した後、前記樹脂材の上方に樹脂フィルムを配置し、 前記樹脂材および前記樹脂フィルムの周囲を負圧状態にするとともに前記樹脂フィルムを加熱、軟化させ、前記受け治具を前記樹脂フィルムに向けて上昇させて軟化状態の前記樹脂フィルムに前記 を配置し、 前記樹脂材および前記樹脂フィルムの周囲を負圧状態にするとともに前記樹脂フィルムを加熱、軟化させ、前記受け治具を前記樹脂フィルムに向けて上昇させて軟化状態の前記樹脂フィルムに前記樹脂材およびその表面の前記嵩高構成部品を密着させた後、前記受け治具の周囲を開放し、樹脂加飾物品を取り出すことを特徴とする樹脂材表面の凸部加飾加工方法。」 3 本件審決の内容 (1) 本件審決の内容は、別紙審決書(写し)のとおりである。 その理由の要点は、①本願補正発明は、引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから、特許法29条1項3号ないし同条2項により特許出願の際に独立して特許を受けることができない、②本願発明も、同様に特許法29 条1項3号ないし同条2項により特許を受けることができない、というものである。 (2) なお、本件審決は、上記判断をするに当たり、引用発明の内容、本願補正発明と引用発明との一致点及び一応の相違点を、次のとおり認定した。 [引用発明の内容] 「ポリスチレン樹脂である樹脂基材1の突出部分の上に発泡体2を接着し、発泡体2および露出した樹脂基材1の部分上に接着剤4によって塩ビシートである化粧シート5を接着した成形品の製造方法であって、下層成形体6の内部に上下動自在な台7が設けられ、この台7に空気の通る孔8a、8bが設けられていて、この孔8a、8bの上に補助台9a、9bが設けられ、 空気はこの補助台9a、9bの下面に設けられた通路を通り、発泡体2が取付けられた樹脂基材1は補助台9a、9bによって位置決めされて、台7上に載置され、一方接着剤4が塗布された化粧シート5は下層成 空気はこの補助台9a、9bの下面に設けられた通路を通り、発泡体2が取付けられた樹脂基材1は補助台9a、9bによって位置決めされて、台7上に載置され、一方接着剤4が塗布された化粧シート5は下層成形体6と上層成形体10との間に張られていて、上層成形体10内にはヒータ11が設けられこのヒータ11によって化粧シート5を軟化させておき、上層成 形体10の孔12と下層成形体6の孔13から同時に空気を抜いて内部を1~3torr程度の真空状態に保持し、このとき、化粧シート5は軟化しているので少し下方に湾曲していて、次に台7を上方に移動させて発泡体2の上面が化粧シート5の下面の接着剤4に接触する手前まで達したところで台7の上昇を停止させ、孔12から1~5Kg/cm2の圧力で空気を 入れ、この空気圧によって化粧シート5を発泡体2および樹脂基材1の露 出部分に密着させることができる、成形品の製造方法。」[一致点]いずれも、「樹脂材表面に構成部品を貼着した樹脂材を受け治具に載置した後、前記樹脂材の上方に樹脂フィルムを配置し、前記樹脂材および前記樹脂フィルムの周囲を負圧状態にするとともに前記樹脂フィルムを加熱、軟 化させ、前記受け治具を前記樹脂フィルムに向けて上昇させて軟化状態の前記樹脂フィルムに前記樹脂材およびその表面の前記構成部品を密着させた後、前記受け治具の周囲を開放し、樹脂物品を取り出すことを特徴とする樹脂材表面の凸部加工方法。」である点。 [相違点] (一応の相違点1)「構成部品」が、本願補正発明は、「凹凸加飾すべき凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された所望の嵩高」であるのに対して、引用発明の「発泡体2」 の相違点1)「構成部品」が、本願補正発明は、「凹凸加飾すべき凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された所望の嵩高」であるのに対して、引用発明の「発泡体2」は、この点が一応明らかでない点。 (一応の相違点2)「樹脂物品」が、本願補正発明は、「加飾」であるのに対して、引用発明の「成形品」は、加飾であるかどうかが一応明らかでない点。 (一応の相違点3)「凸部加工方法」が、本願補正発明は、「加飾」であるのに対して、引用 発明の「成形品の製造方法」は、加飾であるかどうかが一応明らかでない点。 4 本件審決で示された資料(甲5ないし7)の記載事項本件審決の9頁30行目ないし10頁2行目で示された資料(甲5ないし7)には、以下の記載がある。 (1) 甲5(「プラスチック(表面)加飾技術の最新動向」、2016年7月3 1日、MTO技術研究所)「加飾の本来の目的は、見栄え、外観等の視覚的な心地よさ、高級感を付与することであるが、最近は、本来の加飾と同時に表1に示すような各種の機能を付与する『機能性付与加飾』へと展開が進んでいる。」とし、表1の「表面保護性能付与」の「主要な例」として、「クッション性」が挙げられ ている。 (2) 甲6(「プラスチック加飾技術の動向」、2014年5月13日、秋元技術士事務所)「4.ソフトタッチ加飾技術人は柔らかい物を持ったときに心地よさを感じる。おそらく人と人とのス キンシップを連想するからであろう。プラスチック製品に柔らかさを付与して付加価値をつける方法には多くの技術的手法がある。」(3) 甲7(特開2004-142347号公報)「また、クッション性のある加飾シート3を基 からであろう。プラスチック製品に柔らかさを付与して付加価値をつける方法には多くの技術的手法がある。」(3) 甲7(特開2004-142347号公報)「また、クッション性のある加飾シート3を基材2に張り付けることにより、ソフト感を有する高級仕様の自動車内装品1を形成できる。・・・」(段 落【0021】) 5 原告の主張する本件審決の取消事由(1) 取消事由1本件審決の手続違背(2) 取消事由2 独立特許要件についての判断の誤り第3 当事者の主張 1 取消事由1(本件審決の手続違背)〔原告の主張〕(1) 特許法159条2項は、拒絶査定不服審判において、審判官は、拒絶査定 と異なる拒絶理由を発見した場合、これを審判請求人に通知し意見を述べる 機会を与えなければならない旨が規定されている。 しかし、本件拒絶理由通知では、引用文献1ないし6の計6個の引用文献が引用された上で、これら6個の引用文献のそれぞれを、論理付けに最も適した引用発明である主引用発明とした場合の新規性及び進歩性の判断がされている。また、本件拒絶査定では、引用文献1に加え、新たに引用された引 用文献(特開平11-42749号公報、甲14)の計2個の引用文献が引用された上で、これら2個の引用文献のそれぞれを主引用発明とした場合の新規性及び進歩性の判断がされている。すなわち、本件拒絶理由と本件拒絶査定とでは主引用発明としている引用文献が同一ではなく、新規性及び進歩性の判断内容も異なる。 しかし、1個の主引用発明があってその他は副引用発明となるからこそ、動機付け、有利な効果、阻害要因の議論が生じるものであり、主引用発明の選択は、事後分析的判断つまり後知恵の判断を回避するという観点からも、進歩 の主引用発明があってその他は副引用発明となるからこそ、動機付け、有利な効果、阻害要因の議論が生じるものであり、主引用発明の選択は、事後分析的判断つまり後知恵の判断を回避するという観点からも、進歩性審査において重要な認定事項の一つである。そうであるからこそ、主引用発明の選択は特許・実用新案審査基準(甲23)に明示されているので ある。これに対し、6個の引用発明の全てがそれぞれ主引用発明であるとの本件拒絶理由通知における認定及び2個の引用発明の全てがそれぞれ主引用発明であるとの本件拒絶査定における認定は、技術分野の関連性、課題の共通性、作用・機能の共通性及び引用発明の内容中の示唆を考慮した上で6個若しくは2個の引用発明から最も適した一つの引用発明を選択するという認 定手順を放棄するとともに、上記審査基準を否定することと同義であり、誤りである。 (2) そして、このような進歩性の判断手法は、上記のとおり、不当な事後分析的判断つまり後知恵の判断による進歩性の否定につながるものである。してみれば、本願発明の審査の手法は、法目的に照らして妥当とはいえず、し たがって、当該審査の手法により本願発明における進歩性が否定されること は妥当ではない。 (3) 本件審決においては、本願補正発明の独立特許要件の判断において、引用文献1に加え、本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定では示されなかった新たな引用刊行物である甲5ないし7の計3個からなる引用刊行物を引用した上で、新規性及び進歩性の判断がされている。 (4) また、原告が、審判請求書(甲20)の「6.原査定における相違点の認定と評価に関する誤り」で示したように、原査定においては更に相違点の認定と評価に関しても重大な誤りがあったが、本件審決では、これらの誤りに一切触れ 判請求書(甲20)の「6.原査定における相違点の認定と評価に関する誤り」で示したように、原査定においては更に相違点の認定と評価に関しても重大な誤りがあったが、本件審決では、これらの誤りに一切触れることなく、本願補正発明は引用文献1に記載された発明であるか、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとした。 (5) 以上のとおり、本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定ではそれぞれ主引用発明が6個若しくは2個存在し、本件拒絶理由通知と本件拒絶査定との間で主引用発明が同一ではなく、進歩性の判断手法も異なるという重大な誤りがあるのみならず、本件審決では、本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定では引用されなかった引用刊行物を更に引用して本願補正発明の新規性及び進歩性 の判断を行っている。 したがって、本件審決では、本件拒絶理由通知や本件拒絶査定と異なる理由によって判断しているにもかかわらず、審判請求人に意見を述べる機会を与えることなく審決をしている。このような手続は、特許法159条2項の規定に違反する違法なものである。 〔被告の反論〕(1) 本件拒絶理由通知には、引用文献1による新規性欠如、進歩性欠如の理由が示されている。また、本件拒絶査定の備考欄にも、引用発明の認定を説示した後に「請求項1-3に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、仮にそうでないとしても、引用 文献1に記載の発明に基づいて当業者であれば容易に発明をすることができ たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」と明確に記載されており、本件拒絶査定でも、引用文献1による新規性欠如、進歩性欠如の理由が示されている。 そして、本件審決の理由は、引 法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」と明確に記載されており、本件拒絶査定でも、引用文献1による新規性欠如、進歩性欠如の理由が示されている。 そして、本件審決の理由は、引用文献1による新規性欠如と進歩性欠如であるところ、引用文献1は、本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定を通じて、 一貫して、主引用発明を認定するために引用された引用文献(以下「主引用例」という。)であって、新規性及び進歩性の拒絶の理由の根拠として提示された文献である。 したがって、本件審決が、本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定と異なる理由でされたということはない。 原告は、本件拒絶理由通知後の本件意見書において、本件拒絶理由通知で引用された引用文献2ないし6とともに、引用文献1について、その開示内容を摘示した上で本願発明と対比し、これらの引用文献のいずれにも本願発明の特徴及び効果についての記載又は示唆がないから、本願発明は引用文献1ないし6に記載の発明又は当該発明に基づいて容易に発明をすることがで きたものとはいえず、特許法29条1項3号に該当せず、同条2項の規定に該当しない旨の意見を述べた。さらに、本件拒絶査定後の審判請求書においても、引用文献1に記載された発明について、本件意見書に記載した上記意見と同旨の主張を繰り返した。 以上のとおり、原告は、本件拒絶理由通知に対する意見書の提出期間内及 び本件拒絶査定に対する審判請求期間内に、本件審決で主引用例として引用した引用発明の内容、並びに、本願発明と引用文献1に記載された発明との一致点及び相違点について十分検討した上で、引用文献1に基づく新規性欠如及び進歩性欠如に対して反論を行うための十分な機会が与えられたものといえる。 したがって、本件審決と本件拒絶理 明との一致点及び相違点について十分検討した上で、引用文献1に基づく新規性欠如及び進歩性欠如に対して反論を行うための十分な機会が与えられたものといえる。 したがって、本件審決と本件拒絶理由通知、本件拒絶査定の新規性及び進 歩性の判断内容が異なるものではなく、しかも、本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定に対する原告による反論の機会も十分であったから、本件手続において、特許法159条2項に違反する手続違背はない。 ちなみに、原告は、本件拒絶査定では、引用文献1に加えて、新たに引用された引用文献(甲14)を主引用例とした場合の新規性及び進歩性の判断 がされている旨主張している。しかし、本件拒絶査定において、甲14とされる引用文献7は、「周知技術を示す文献」として引用されているため主引用例ではなく、しかも、「本願拒絶査定を構成するものではないが、現在存在している拒絶理由」において引用されているため、本件拒絶査定の理由と何ら関係がない文献である。よって、引用文献7(甲14)に関する原告の 主張は、本件拒絶査定の理由を正解するものではなく、その前提において誤りである。 (2) 原告は、6個若しくは2個の引用発明から最も適した一つの引用発明を選択するという認定手順を行わない進歩性の判断手法は、後知恵の判断による進歩性の否定につながるとするが、最も適した一つの引用発明を選択する ことと、後知恵の判断による進歩性の否定とは、以下に示すように何ら関係がない。 すなわち、いわゆる後知恵とは、主引用発明から出発して、当業者が請求項に係る発明に容易に到達する論理付けができるか否かを判断する際に、請求項に係る発明の知識を得た上で行うことから、当業者が請求項に係る発明 に容易に想到し得たように見えてしまうことであって、主 項に係る発明に容易に到達する論理付けができるか否かを判断する際に、請求項に係る発明の知識を得た上で行うことから、当業者が請求項に係る発明 に容易に想到し得たように見えてしまうことであって、主引用例が一つであるか否か(最も適した一つの引用発明を選択するか否か)は、後知恵とは何ら関係がない。 加えて、本件審決の拒絶の理由は、後述するように新規性欠如を含むから、そもそも、進歩性の判断手法に関する原告主張は、新規性欠如を理由とした 本件審決の取消事由にはなり得ない。 したがって、原告の主張は当を得たものではなく、特許法159条2項に違反する手続違背は存在しない。 (3) 原告は、原告主張のような進歩性の判断手法への対応によって本来対応に注力すべき新規性及び進歩性の論点が曖昧かつ分散され、その結果として特許出願人が不利益を受ける可能性が高くなったとするが、本件拒絶理由通知 でも本件拒絶査定でも複数の主引用例に基づいた拒絶の理由に対して、主引用例ごとに記載された技術内容を整理して、引用文献1による新規性欠如、進歩性欠如の理由を明確に示しており、また、原告は、引用文献1について、その開示内容を摘示した上で本願発明と対比し、これらの文献のいずれにも本願発明の特徴や効果が記載も示唆もされていないことを本件意見書及び審 判請求書において実際に反論している事実を踏まえれば、原告が主張するような、本来対応に注力すべき新規性及び進歩性の論点が曖昧かつ分散され、その結果として特許出願人が不利益を受けるような事態には至っていなかった。したがって、原告の主張は誤りである。 (4) 原告は、審判請求書の「6.本件拒絶査定における相違点の認定と評価に 関する誤り」で示したように、本件拒絶査定においては相違点の認定と評価に関 。したがって、原告の主張は誤りである。 (4) 原告は、審判請求書の「6.本件拒絶査定における相違点の認定と評価に 関する誤り」で示したように、本件拒絶査定においては相違点の認定と評価に関して重大な誤りがあったとするが、本件審決の拒絶の理由は、引用文献1を主引用例としたものであって、引用文献2を主引用例とした理由ではないところ、上記「6.本件拒絶査定における相違点の認定と評価に関する誤り」における主張は、もっぱら引用文献2に記載された発明を主引用発明と した場合の進歩性の判断における相違点の認定と評価についての主張である。 したがって、上記主張の当否は、そもそも、本件審決の結論に影響を与えるものではない。 (5) 原告は、本件審決が本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定では引用されなかった引用刊行物(甲5ないし7)を更に引用して、本件拒絶理由通知及び本 件拒絶査定と異なる理由によって新規性及び進歩性の判断を行っているとす るが、本件審決において新たに提示された引用刊行物(甲5ないし7)は、「加飾とは、クッション性等の機能性を付与したものも含むものであることは技術常識である」ということを示すために引用された文献である。 つまり、これらの引用刊行物(甲5ないし7)は、本願補正発明の発明特定事項である「加飾」という技術用語の意味する範囲を明らかにすることで、 本件出願時の当業者であれば、引用発明の「成形品の製造方法」が、本願補正発明の「凸部加飾加工方法」に該当すると理解することを示すために引用された文献であって、加飾加工分野の当業者であれば当然に心得ている技術常識を示す文献にすぎない。 したがって、このような文献が審判段階で新たに引用されたからといって、 本件審決が、本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定と異 工分野の当業者であれば当然に心得ている技術常識を示す文献にすぎない。 したがって、このような文献が審判段階で新たに引用されたからといって、 本件審決が、本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定と異なる理由によって新規性及び進歩性の判断を行っているとはいえない。 2 取消事由2(独立特許要件についての判断の誤り)〔原告の主張〕(1) 本件審決は、本願補正発明と引用発明との間の上記の一応の相違点1に 関し、引用発明の「発泡体2」は、本願補正発明の「凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された所望の嵩高」といえるとしたが、引用発明では、塩ビ発泡体、発泡ウレタンである「発泡体2」と、スチレン系樹脂である「樹脂基材1」とを素材の観点で明確に区別している。これは、引用発明の目的が、スチレンを主成分とする硬質な樹 脂素材の上に発泡部分を含む柔質な素材である塩ビやウレタンを設けてクッション性のある成形品を製造することにあるからである。 したがって、本願補正発明と引用発明との間の一応の相違点1に関する判断は、本願補正発明の目的と引用発明の目的とがそもそも異なるものであるのに、両者を同一であるとしたものであって、誤りである。 (2) 前記のとおり、引用発明は、塩ビ発泡体、発泡ウレタンである「発泡体2」 と、スチレン系樹脂である「樹脂基材1」とを素材の観点で明確に区別しており、これは、引用発明の目的が、スチレンを主成分とする硬質な樹脂素材の上に発泡部分を含む柔質な素材である塩ビやウレタンを設けてクッション性のある成形品を製造することにあることによる。したがって、「発泡体2」を「樹脂基材1」と同様の素材にすることには阻害要因が存在する。 一方、本願補正発明は、従来金型等を使用 設けてクッション性のある成形品を製造することにあることによる。したがって、「発泡体2」を「樹脂基材1」と同様の素材にすることには阻害要因が存在する。 一方、本願補正発明は、従来金型等を使用した射出成型で凹凸表現を実現しようとするとその都度凹凸に合わせた金型を製作、或いは、既存の金型を修正もしくは交換駒を製作する必要性があったが、それでは高コストとなり、また、金型を削ってしまえば溶接など容易に元に戻せず、金型の形状を変更した場合には、樹脂の流路が変わってしまい、成形条件などの見直しが必要 になり、場合によっては綺麗な成形ができない、という成形コストに係る課題を技術的課題とし、この課題に対して、金型の製作を不要とし、あたかも一体的な樹脂成形を行ったかのような加飾処理が可能になるという格別な効果を奏することを目的としている。 本願補正発明は、その目的のために、樹脂材表面に樹脂成形によって製作 された嵩高構成部品を貼着させたものである。すなわち、本願補正発明中の「樹脂成形によって製作された」は、金型の製作が不要となるという本願発明特有の効果や引用発明との差異を明確化する上で、非常に重要な発明特定事項の一つである。 したがって、本件審決の一応の相違点1に関する認定及び判断は誤りであ る。 (3) 本件審決の一応の相違点1ないし3に関する認定は、「加飾」という文言のみを切り取って行った判断であって、誤りである。 確かに、「プラスチック(表面)加飾技術の最新動向」(甲5)では、「加飾」が、例えばクッション性等の表面保護性能を付与することが記載されて いる。また、「プラスチック加飾技術の動向」(甲6)では、「加飾」が、 プラスチック製品に柔らかさを付与して付加価値をつけるソフトタッチ加飾を含むことが記 付与することが記載されて いる。また、「プラスチック加飾技術の動向」(甲6)では、「加飾」が、 プラスチック製品に柔らかさを付与して付加価値をつけるソフトタッチ加飾を含むことが記載されている。更に、「特開2004-142347号公報」(甲7)の段落【0021】等では、クッション性のある加飾シート3を基材2に貼り付けることにより、ソフト感を有する高級仕様の自動車内装品1を形成できる点が記載されている。 しかしながら、これらの引用刊行物では、あくまで「加飾」という文言がクッション性等の機能を付与することを含むことを言っているに過ぎない。 一方の本願補正発明中の「凹凸加飾すべき凹部及び凸部のうちの加飾すべき凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された所望の嵩高構成部品」の構成要素は、上記(2)のとおり、成形コストに係る課題を技術的 課題とした上で金型の製作が不要となるという課題を解決する観点から、「凹凸加飾すべき凹部及び凸部のうちの加飾すべき凸部に対応する部品で構成され」と「樹脂成形によって製作された」とを接続詞「且つ」によって接続して両技術的特徴を兼ね備えることを明確化した上で、「嵩高構成部品」がこれらの各特徴を兼ね備えたものであることを特定している。つまり、「(前 略)・・加飾すべき凸部に対応する部品で構成され」と「樹脂成形によって製作された」とはまとまりのある構成単位として認定されるべきものである。 (4) 本件審決は、「加飾」と「凹凸加飾すべき凹部及び凸部のうちの加飾すべき凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された所望の嵩高構成部品」とを分けて一応の相違点1ないし3を認定した上で、各相違 点の容易想到性を個々に判断した点で適切を欠くものである。 このことは、 品で構成され且つ樹脂成形によって製作された所望の嵩高構成部品」とを分けて一応の相違点1ないし3を認定した上で、各相違 点の容易想到性を個々に判断した点で適切を欠くものである。 このことは、裁判例において、「本件発明と主引用発明との間の相違点を認定するに当たっては、発明の技術的課題の解決の観点から、まとまりのある構成を単位として認定するのが相当である。かかる観点を考慮することなく、相違点をことさらに細かく分けて認定し、各相違点の容易想到性を個々 に判断することは、本来であれば進歩性が肯定されるべき発明に対しても、 正当に判断されることなく、進歩性が否定される結果を生じることがあり得るものであり、適切でない。」(甲2)、「本願補正発明の進歩性の有無を判断するに当たり、審決は、本願補正発明と引用発明との相違点を認定したが、その認定方法は著しく適切を欠く。すなわち、審決は、発明の解決課題に係る技術的観点を考慮することなく、相違点を、ことさらに細かく分けて、 認定した上で、それぞれの相違点が、先の先行技術を組み合わせることによって、容易であると判断した。このような判断手法を用いると、本来であれば、進歩性が肯定されるべき発明に対しても正当に判断されることなく、進歩性が否定されることがあり得る。相違点の認定は、発明の技術的課題の解決の観点からまとまりのある構成を単位として認定されるべきでありこの点 を逸脱した審決における相違点の認定手法は、適切を欠く。」(甲3)などと判断されたものあることからも明らかである。 したがって、本件審決における一応の相違点1ないし3は、いずれも実質的な差異ではないとした認定は誤りである。 (5) 本件審決は、[A]「引用文献1に記載の発明における『発泡体』はあく までクッション 、本件審決における一応の相違点1ないし3は、いずれも実質的な差異ではないとした認定は誤りである。 (5) 本件審決は、[A]「引用文献1に記載の発明における『発泡体』はあく までクッション性のある成形品を製造するためのものである。一方、本願発明の『嵩高構成部品』は、凹凸加飾すべき凸部つまり最終的な出来上がり品たる凹凸加飾物品の凸部を製造するためのものである。」点、及び[B]「本願発明は、この構成を採用することにより、従来、金型等を使用した射出成型で凹凸表現をしようとするとその都度凹凸に合わせた金型を製作せねばな らなかったのに対し、このような金型の製作が不要となり、あたかも一体的な樹脂成型を行ったかのような加飾処理が可能となる」との格別な作用効果の主張について、いずれも採用できないとした(審決10頁19行目ないし同頁32行目)。しかし、本件審決の上記認定はいずれも誤りである。 本件審決では、引用発明(甲8)及び引用刊行物(甲5ないし7)が引用 されているが、これらの全てにおいて、本願補正発明が解決しようとしてい る課題である「成形コストに係る課題を技術的課題とした上で金型の製作が不要となるという課題」については一切触れられていない。 また、本件審決は、本願補正発明の効果のうちの「本発明に係る樹脂加飾物品は、物品基材と樹脂フィルムとの間に所定の嵩高構成部品を介在させて一体化することにより凸部を有する加飾外観が得られる。」のような効果は、 引用発明が具備する効果であると述べている。 すなわち、本件審決の上記判断においては、[B](特に、金型の製作が不要となる点)については一切触れられていない。そうすると、本件審決の上記認定は誤りである。 以上のとおり、本願補正発明についての審決の判断は誤りであって、本 においては、[B](特に、金型の製作が不要となる点)については一切触れられていない。そうすると、本件審決の上記認定は誤りである。 以上のとおり、本願補正発明についての審決の判断は誤りであって、本件 審決は取り消されるべきものである。 また、本願補正発明における補正の却下をした上で、補正前の本願発明も、同じく引用発明であるか、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項3号に該当し、また、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした判断も誤りであ るから、本件審決は取り消されるべきものである。 〔被告の反論〕(1) 原告は、一応の相違点1に関し、引用発明の「発泡体2」は、本願補正発明の「凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された所望の嵩高」といえるとの判断につき、引用発明では、塩ビ発泡 体、発泡ウレタンである「発泡体2」と、スチレン系樹脂である「樹脂基材1」とを素材の観点で明確に区別しており、これは、引用発明の目的が、スチレンを主成分とする硬質な樹脂素材の上に発泡部分を含む柔質な素材である塩ビやウレタンを設けてクッション性のある成形品を製造することにあるからで、本願補正発明の目的と引用発明の目的とがそもそも異なるのに、両者を同一で あるとしたものであって、誤りであると主張する。 本件審決は、一応の相違点1ないし3について、引用発明において凸部に対応する位置に「発泡体2」が配置された結果、最終的な出来上がり製品たる成形体は少なくとも「発泡体2」の高さの分だけ嵩高になるという点を根拠にして、「構成部品」である引用発明の「発泡体2」は、本願補正発明の「凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹 たる成形体は少なくとも「発泡体2」の高さの分だけ嵩高になるという点を根拠にして、「構成部品」である引用発明の「発泡体2」は、本願補正発明の「凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作さ れた所望の嵩高」であると判断し、これを前提とした上で、さらに「発泡体2」がクッション性を有し、クッション性を付与するものも「加飾」に含まれるという、本件出願時の加飾技術に関する技術常識(甲5ないし7)に照らせば、引用発明も「凹凸加飾すべき」ものであって、引用発明の「成形品」及び「成形品の製造方法」は、本願補正発明の「樹脂加飾物品」及び「凸部加飾加工方 法」にほかならないと判断したものであるから、本件審決の判断に誤りはない。 (2) 原告は、引用発明で「発泡体2」を「樹脂基材1」と同様の素材とすることについて、阻害要因が存在すると主張する。 しかし、本件審決は、引用発明の「発泡体2」が、本願補正発明の「凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作さ れた所望の嵩高」であると述べているのであって、引用発明の「発泡体2」を「樹脂基材1」と同様の素材にするとは述べていない。原告の主張は、本件審決の内容を正解しない主張である。 そもそも、本願補正発明は、特許請求の範囲の記載からも明らかなように、「樹脂材」の樹脂と、「樹脂成形によって製作された嵩高構成部品」の樹脂と が同様の素材であることは特定されていない。言い換えれば、本願補正発明は、嵩高構成部品が樹脂材と比較してクッション性を有する素材で形成された態様を包含するから、原告の上記主張は、特許請求の範囲に基づいた主張ではない。 したがって、原告の上記主張は、審決の結論を左右しない。 (3) 原告は、本願補正発明の「嵩高 材で形成された態様を包含するから、原告の上記主張は、特許請求の範囲に基づいた主張ではない。 したがって、原告の上記主張は、審決の結論を左右しない。 (3) 原告は、本願補正発明の「嵩高構成部品」が「樹脂成形によって製作された」 という要件は、金型の製作が不要となるという本願補正発明特有の効果や引用発明との差異を明確化する上で重要な発明特定事項であるにもかかわらず、これを周知慣用技術であるとした本件審決の判断は誤りであると主張する。 しかし、本件審決は、引用発明の「発泡体2」が「樹脂成形によって製作された」ものであるから、本願補正発明と引用発明とは「樹脂成形によって製作 された」という要件において、相違しないと判断したものである。すなわち、本件審決では、「樹脂成形によって製作された」との要件が周知慣用技術であると認定する以前に、そもそも、本願補正発明と引用発明は相違せず、新規性欠如の理由があると判断したのである。したがって、周知慣用技術に関する原告主張は、本件審決のうちの主位的な拒絶の理由(新規性欠如)に対する取消 事由にはなり得ず、原告の上記主張は当を得たものではない。 次に、本件審決のうちの予備的な拒絶の理由(進歩性欠如)については、以下に示すとおりである。 仮に、引用発明の「発泡体2」が「樹脂成形によって製作された所望のもの」であるとは限らなかったとしても、本件審決で述べたとおり、樹脂成形によっ て製作された発泡体は周知慣用技術である。そして、原告が主張する、金型の製作が不要となるという効果は、「発泡体2」が「樹脂成形によって製作された」か否かにかかわらず、引用発明において「発泡体2」により凸部を構成するときには金型が不要なのであるから、「樹脂成形によって製作された」という要件が、 は、「発泡体2」が「樹脂成形によって製作された」か否かにかかわらず、引用発明において「発泡体2」により凸部を構成するときには金型が不要なのであるから、「樹脂成形によって製作された」という要件が、金型の製作が不要となるという本願補正発明特有の効果や引用発明 との差異を明確化する上で重要な発明特定事項である、という原告の上記主張は誤りである。そして、金型の製作が不要であるという効果は、当業者が予測することができた範囲内の効果であることは明らかである。 (4) 原告は、まとめて判断すべきものを一応の相違点1ないし3を認定した上で、各相違点の容易想到性を個々に判断した点は適切でないとする。 しかし、既に述べたとおり、本件審決における一応の相違点1ないし3につ いての判断は、実質的にみて、新規性が否定されるべきことを順序立てて説示したものであって、各相違点の容易想到性を個々に判断したものではない。 したがって、原告の上記主張は、その前提に誤りがある。 そして、発明の解決課題に係る技術的観点を考慮することなく各相違点の容易想到性を個々に判断することが適切でないとして原告が提出した判決(甲2、 3)は、いずれも進歩性における容易想到性の判断手法に関して判示するものであるから、本件審決における新規性欠如の理由とは関係しない。 本件審決は、一応の相違点1ないし3を形式的に列挙しているものの、個々の構成単位の技術的関連性に鑑み、一応の相違点1ないし3をまとめて考慮し総合的に判断したものであるから、いずれにせよ、原告主張は理由がない。 すなわち、本件審決は、引用発明の「発泡体2」が「樹脂成形によって製作された」ものであると判断したことは上記⑶で述べたとおりであるし、引用発明の「発泡体2」は、クッション性のある成形 い。 すなわち、本件審決は、引用発明の「発泡体2」が「樹脂成形によって製作された」ものであると判断したことは上記⑶で述べたとおりであるし、引用発明の「発泡体2」は、クッション性のある成形品を製造するための部品であるとともに、最終的な出来上がり製品たる成形体の凸部に対応して配置するための部品でもあるから、「構成部品」である引用発明の「発泡体2」は、本願補 正発明の「凹凸加飾すべき凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された所望の嵩高」であると判断したものである(審決6頁17行目ないし同頁26行目、同9頁1行目ないし10頁9行目)。 つまり、本件審決は、引用発明の「発泡体2」が、最終的な出来上がり品たる成形品の製造方法において、凹凸の付与及びクッション性の付与という両方の 機能付与を「樹脂基材1」の表面に対して行うための加飾用の構成部品であるから、この点で、引用発明の「発泡体2」と本願補正発明の「嵩高構成部品」とは相違しないと判断したものである。 以上のとおり、本件審決は、「加飾」及び「凹凸加飾すべき凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された」をま とまりのある構成単位として検討しているのであるから、本件審決が形式的に 一応の相違点1ないし3を認定していても、そのことから本件審決が取り消されるべきことにはならない。したがって、原告の上記主張は理由がない。 (5) 原告は、「金型が不要である効果」については本件審決で触れられていないとするが、本願補正発明は引用発明と構成において相違しないのであるから、そもそも新規性が欠如しているものである。 また、上記効果について検討しても、金型が不要であるという効果は当業者が予想すること 本願補正発明は引用発明と構成において相違しないのであるから、そもそも新規性が欠如しているものである。 また、上記効果について検討しても、金型が不要であるという効果は当業者が予想することができた範囲内の効果であるから、本件審決の判断に何ら誤りはない。 以上のとおり、本件審決における独立特許要件の判断についても誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(手続違背)について(1) 原告は、本件審決では、審査過程とは実質的に異なる論理によって進歩性の判断を行っており、その上で審判請求人に意見を述べる機会を与えることなく審決をしているから、本件審決は、特許法159条2項の規定に違反する違法なものである旨を主張する。 (2) 前記第2の1のとおり、本件拒絶理由通知には、本願は新規性欠如(拒絶理由1)及び進歩性欠如(拒絶理由2)により拒絶すべきものとし、①本願の請求項1ないし8の発明につき、引用文献1に記載された発明であるか、その記載に基づき当業者が容易に発明をすることができた、②本願の請求項1ないし4の発明につき、引用文献2に記載された発明であるか、その記 載に基づき当業者が容易に発明をすることができた、③本願の請求項1ないし4の発明につき、引用文献3に記載された発明であるか、その記載に基づき当業者が容易に発明をすることができた、④本願の請求項1、2、4の発明につき、引用文献4に記載された発明であるか、その記載に基づき当業者が容易に発明をすることができた、⑤本願の請求項1、5の発明につき、 引用文献5に記載された発明であるか、その記載に基づき当業者が容易に 発明をすることができた、⑥本願の請求項1ないし4の発明につき、引用文献6に記載された発明であるか、その記載に基づき当業 引用文献5に記載された発明であるか、その記載に基づき当業者が容易に 発明をすることができた、⑥本願の請求項1ないし4の発明につき、引用文献6に記載された発明であるか、その記載に基づき当業者が容易に発明をすることができた、⑦本願の請求項3の発明につき、引用文献4に記載された発明に引用文献1ないし3、6に記載された周知の構成を適用することにより容易に発明をすることができた、⑧本願の請求項4の発明につき、引 用文献1ないし6に記載された発明に周知の構成を適用することは設計的事項に過ぎないから容易に発明をすることができた、⑨本願の請求項5の発明につき、引用文献2ないし4、6に記載された発明に引用文献1、5に記載された周知の構成を適用することにより容易に発明をすることができた、⑩本願の請求項6ないし8の発明につき、引用文献2に記載された発明 に引用文献1に記載された発明の構成を採用することにより容易に発明をすることができた、⑪本願の請求項8の発明につき、引用文献1、2に記載された発明に周知の構成を適用することは設計的事項に過ぎないから容易に発明をすることができた、との理由が示され、引用文献1のほか、引用文献2ないし6及びそれらに記載された発明の内容が示されている。 これに対し原告は、第1次補正を行うとともに本件意見書を提出しているところ、原告は、本件意見書において、引用文献1ないし6に開示された内容を踏まえても、いずれも第1次補正後の本願発明に係る内容については記載も示唆もされていないと主張した。 その上で、本件拒絶査定には、本件拒絶理由通知に記載した理由1(新規 性欠如)、同2(進歩性欠如)により本件出願を拒絶すべきものとし、備考として、①本願の請求項1ないし3の発明につき、引用文献1に記載された発明で には、本件拒絶理由通知に記載した理由1(新規 性欠如)、同2(進歩性欠如)により本件出願を拒絶すべきものとし、備考として、①本願の請求項1ないし3の発明につき、引用文献1に記載された発明であるか、その記載に基づき当業者が容易に発明をすることができた、②本願の請求項1ないし3の発明につき、引用文献2、1の記載に基づき当業者が容易に発明をすることができた、③本願の請求項3の発明につき、引 用文献1、2の記載に基づき当業者が容易に発明をすることができたとし、 本件拒絶査定を構成するものではないが、現在存在している拒絶理由として、請求項5の発明につき引用文献1に記載された発明に基づく新規性、進歩性欠如、請求項4、5の発明につき、引用文献1、7に基づく進歩性欠如、請求項4、5の発明につき、引用文献2、1、7に基づく進歩性欠如、請求項5の発明につき明確性要件違反がある旨が記載されている。 これらによれば、本件拒絶査定は、本件拒絶理由通知に記載した新規性欠如(理由1)及び進歩性欠如(同2)の各理由により本件出願を拒絶すべきとしたものであり、本願発明は引用文献1に記載された発明であるか、その記載に基づき当業者が容易に発明をすることができたとする本件拒絶理由通知記載の新規性欠如及び進歩性欠如の拒絶理由を維持するものである。 本件審決が示した新たな刊行物等(甲5ないし7)も、同審決において、「加飾とは、クッション性等の機能性を付与したものも含むものであることは技術常識である。このことは、・・・の各資料からも確認できる。」(9頁30行目ないし10頁2行目)とし、その「各資料」として甲5ないし7が示されているところから明らかなとおり、本件出願当時において、加 飾加工分野の当業者であれば当然知っている技術常識 」(9頁30行目ないし10頁2行目)とし、その「各資料」として甲5ないし7が示されているところから明らかなとおり、本件出願当時において、加 飾加工分野の当業者であれば当然知っている技術常識の裏付けとして示されたものであって、引用文献1から主引用発明を認定する場合における、本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定の拒絶理由の内容を変更するものではない。 したがって、これらは特許法159条2項に規定する査定の理由と異なる 拒絶の理由を発見した場合に当たるものではないから、拒絶査定不服審判の手続において、審判請求人である原告に意見を述べる機会を与えることが必要とされるものではない。 よって、本件審判に手続違背はなく、審判の手続に誤りはない。 (3) 原告の主張に対する判断 ア原告は、本件拒絶理由通知と本件拒絶査定とでは主引用発明としている 引用文献が同一ではなく、新規性及び進歩性についての判断も異なると主張する。 しかし、本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定には、引用文献1による新規性欠如及び進歩性欠如の理由が示されており、本件審決においても、引用文献1による新規性欠如と進歩性欠如の判断理由が示されているから、 本件審決が、本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定と異なる理由でされたということはない。また、原告が本件拒絶査定で新たに引用されたとする引用文献(甲14)は、前記第2の1(3)のとおり、本件出願当時の周知技術を示す文献として引用されたものであり、本件拒絶査定において拒絶理由を構成するものとされているものではない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は、6個若しくは2個の引用発明から最も適した一つの引用発明を選択するという認定手順を行わない進歩性の判 のではない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は、6個若しくは2個の引用発明から最も適した一つの引用発明を選択するという認定手順を行わない進歩性の判断手法は、後知恵の判断による進歩性の否定につながると主張する。 しかし、進歩性判断に当たり複数の論理付けが可能な場合にそれぞれの 論理付けを行うことについて問題があるものとは認めらないほか、前記(2)のとおり、審決の判断には法に定める手続の違背もない。また、いわゆる後知恵の問題とは、主引用発明から出発して当業者が発明に容易に想到し得る論理付けができるか否かの判断を行う際には、請求項に係る発明の知識を得た上で行うことから、当業者が請求項に係る発明に容易に想到し 得たかのように見えてしまう問題をいうところ、主引用例が一つであるか否かの問題と、いわゆる後知恵の問題とは直接には関係がない。加えて、本件審決の判断は、本願補正発明が新規性を欠如する旨も含むものであるから、進歩性の判断手法に関する原告の主張は、直ちに審決の取消事由となり得るものではない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は、本件出願に対する進歩性の判断手法への対応によって本来対応に注力すべき新規性及び進歩性の論点が曖昧かつ分散され、その結果として出願人である原告が不利益を受けた旨を主張する。 しかし、前記第2の1(1)及び(3)のとおり、本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定では複数の主引用例に基づいた拒絶の理由に対し、主引用例ごと に各発明の技術内容が記載されるとともに、引用文献1による新規性及び進歩性を欠如する旨の理由が示されているから、原告の主張はそもそもその前提を欠くばかりか、原告は、これらを踏まえて本件意見書及び審 に各発明の技術内容が記載されるとともに、引用文献1による新規性及び進歩性を欠如する旨の理由が示されているから、原告の主張はそもそもその前提を欠くばかりか、原告は、これらを踏まえて本件意見書及び審判請求書において反論しているのであるから、本来対応に注力すべき新規性及び進歩性の論点が曖昧かつ分散されて、その結果として原告が不利益を受 けたとの事実は認められないというべきである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 エ原告は、審判請求書で指摘したように、本件拒絶査定においては相違点の認定と評価に関して重大な誤りがあったとする。 しかし、原告の上記に係る「6.原査定における相違点の認定と評価に 関する誤り」(甲20の13頁以下)の主張は、もっぱら引用文献2に記載された発明を主引用発明とした場合の進歩性の判断における相違点の認定と評価についての主張であり、審決の理由付けは、引用文献1を主引用例としたものであって、引用文献2を主引用例としたものではないから、本件拒絶査定につき原告の主張するところは、審決の結論に影響を与える ものではない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 オ原告は、審決は、本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定では引用されなかった引用刊行物(甲5ないし7)を更に引用して、本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定と異なる理由によって新規性及び進歩性の判断を行ったと 主張する。 しかし、これらの引用刊行物(甲5ないし7)は、前記(2)のとおり、本願補正発明の「加飾」について技術用語の意味を明らかにすることで、本件出願時の当業者の技術常識によれば、引用発明の「成形品の製造方法」が、本願補正発明の「凸部加飾加工方法」に該当すると理解することを示す資料として提示さ ついて技術用語の意味を明らかにすることで、本件出願時の当業者の技術常識によれば、引用発明の「成形品の製造方法」が、本願補正発明の「凸部加飾加工方法」に該当すると理解することを示す資料として提示された文献であって、審決は、本件拒絶理由通知及び本 件拒絶査定と異なる理由によって本願補正発明の新規性及び進歩性の判断を行ったものではない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 2 取消事由2(独立特許要件についての判断の誤り)について(1) 原告は、本件審決の本願補正発明と引用発明との間の一応の相違点に関 する判断は誤りである旨を主張する。 ア引用発明の記載された引用文献1(甲8)には、以下の記載がある。 (ア) 特許請求の範囲「凹凸を有する樹脂基材の突出部分の上に発泡体を設け、この発泡体を設けた樹脂基材の上より、全体を覆うように、接着剤が設けられた 化粧シートを真空成形法によりラミネートしたことを特徴とする成形品の製造方法。」(第1頁左下欄第5~9行)(イ) 発明の詳細な説明(下線は判決で付記)「本発明はクッション性のある成形品の製造方法に関するものであり、高級感のある成形品を容易に製造しようとするものである。 以下本発明の実施例について図面を参照して説明する。 第1図に示すものは完成した成形品を示しており、まず用いる材質と構造について説明する。樹脂基材1としてはスチレン樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂を用いる。この樹脂基材1の突出部分の上に発泡体2を接着する。この接着は発泡体2と樹脂基材1を両面接着テ ープで固定してもよいし、樹脂基材1上にスプレー法、はけ塗り法で 接着剤を塗布 用いる。この樹脂基材1の突出部分の上に発泡体2を接着する。この接着は発泡体2と樹脂基材1を両面接着テ ープで固定してもよいし、樹脂基材1上にスプレー法、はけ塗り法で 接着剤を塗布してもよく、さらに発泡体2の片面に接着剤をスプレー法、はけ塗り法で接着剤を塗布して接着してもよい。3は接着剤である。発泡体2としては塩ビ発泡体、発泡ウレタンを用いることができ、発泡倍率は必要なクッション性により低発泡から高発泡のうち適切なものを選択すればよい。発泡体2および露出した樹脂基材1の部分上 に接着剤4によって化粧シート5を接着する。この化粧シート5としては無可塑の塩化ビニール樹脂中に可塑剤の働きをするEVA(エチレン-酢ビ)樹脂、強化材の働きをするABS樹脂、スチレン系樹脂の接着性を向上するためのスチレン樹脂の三種の熱可塑性樹脂を配合した新殊熱可塑性樹脂から成る樹脂シートが用いられる。化粧シート 5には木目模様等任意の模様を付しておく。 化粧シート5によってラミネートするには真空成形法を用いることによって良好な成形品を得ることができる。 真空成形法の一方法である真空圧空成形法を用いて成形品を作る場合について説明する。第2図に示すように下層成形体6の内部に上下 動自在な台7が設けられ、この台7に空気の通る孔8a、8bが設けられている。この孔8a、8bの上に補助台9a、9bが設けられ、空気はこの補助台9a、9bの下面に設けられた通路を通る。発泡体2が取付けられた樹脂基材1は補助台9a、9bによって位置決めされて、台7上に載置される。一方接着剤4が塗布された化粧シート5 は下層成形体6と上層成形体10との間に張られている。上層成形体10内にはヒータ11が設けられこのヒータ11によって化粧シート5を軟化させてお 置される。一方接着剤4が塗布された化粧シート5 は下層成形体6と上層成形体10との間に張られている。上層成形体10内にはヒータ11が設けられこのヒータ11によって化粧シート5を軟化させておく。 今、第2図の状態において、上層成形体10の孔12と下層成形体6の孔13から同時に空気を抜いて内部を1~3torr程度の真空 状態に保持する。このとき、化粧シート5は軟化しているので少し下 方に湾曲している。次に台7を上方に移動させて発泡体2の上面が化粧シート5の下面の接着剤4に接触する手前まで達したところで台7の上昇を停止させ、孔12から1~5Kg/cm2の圧力で空気を入れる。この空気圧によって第3図に示すように化粧シート5を発泡体2および樹脂基材1の露出部分に密着させることができる。 具体的には下記の材料、条件で実施することができる。 塩ビシート:大日本印刷(株)製接着剤(M-2アクリル系樹脂):コニシ(株)製ポリスチレン樹脂(492/683=50/50wt%):旭ダウ(株)製 ヒータ電圧:100~110ボルト塩ビシート表面温度:140~155℃真空度:1~1.5torr圧空圧:2~3Kg/cm2シート加熱時間:30~40秒 圧空成形時間:10~15秒以上のように本発明によれば複雑な凹部のある部分にまで化粧シートを密着させることができ、しかも突出部分には発泡体が収納されているのでクッション性のあるものが得られ、高級感のある成形品を得ることができる。この成形品はたとえばテレビジョン受像機のセット台の扉 などに用いることができる。」(第1頁左下欄第11行~第2頁左下欄第4行)(ウ) 図面・【第1図】 品はたとえばテレビジョン受像機のセット台の扉 などに用いることができる。」(第1頁左下欄第11行~第2頁左下欄第4行)(ウ) 図面・【第1図】 ・【第2図】 ・【第3図】 (エ) 上記(ア)ないし(ウ)によれば、引用文献1の第1図から、「樹脂基 材1」における凹部及び凸部のうちの凸部に対応する位置に「発泡体2」が配置されており、その結果、最終的な出来上がり製品たる成形体は少なくとも「発泡体2」の高さの分だけ嵩高になることが明らかである。 そして、引用発明の「発泡体2」については、前記(イ)で下線部を付した記載のとおり、「発泡体2としては塩ビ発泡体、発泡ウレタンを用い ることができ」ると例示されるところの、塩ビ発泡体や発泡ウレタンのような樹脂であることや、接着する「樹脂基材1」の突出部分に合わせた形状に「成形」されたものであることが当業者にとって明らかであるから、引用発明の「発泡体2」は、本願補正発明の「凹部及び凸部のう ちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された所望の嵩高」であるといえる。 イそして、引用文献1の第1頁右欄に「発泡体2としては・・・、発泡倍率は必要なクッション性により低発泡から高発泡のうち適切なものを選択すればよい。」と記載されており、引用発明の「発泡体2」はクッショ ン性を有するといえるところ、加飾がクッション性等の機能性を付与したものを含むことについては、前記第2の4のとおりの甲5ないし7の記載に示されている本件出願当時の技術常識である。 ウ以上の検討によれば、引用発明の「成形品」及び「成形品の製造方法」は、いずれも本願補正発 むことについては、前記第2の4のとおりの甲5ないし7の記載に示されている本件出願当時の技術常識である。 ウ以上の検討によれば、引用発明の「成形品」及び「成形品の製造方法」は、いずれも本願補正発明の「凹凸加飾すべき」ものであるから、本願補 正発明の「加飾」であるといえる。 したがって、一応の相違点1ないし3は、いずれも実質的な差異ではなく、あるいは、引用発明において、一応の相違点1ないし3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであると認められるから、本願補正発明は、新規性ないし進歩性を欠如するものである。 (2) 原告の主張に対する判断ア原告は、一応の相違点1に関し、引用発明の「発泡体2」は、本願補正発明の「凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された所望の嵩高」といえるとの判断につき、引用発明では、塩ビ発泡体、発泡ウレタンである「発泡体2」と、スチレン系樹脂で ある「樹脂基材1」とを素材の観点で明確に区別しており、これは、引用発明の目的が、スチレンを主成分とする硬質な樹脂素材の上に発泡部分を含む柔質な素材である塩ビやウレタンを設けてクッション性のある成形品を製造することにあるからで、本願補正発明の目的と引用発明の目的とがそもそも異なるのに、両者を同一であるとしたものであって、誤りであ ると主張する。 本件審決は、一応の相違点1ないし3について、引用発明において凸部に対応する位置に「発泡体2」が配置された結果、最終的な出来上がり製品たる成形体は少なくとも「発泡体2」の高さの分だけ嵩高になるという点を根拠として、構成部品である引用発明の「発泡体2」は、本願補正発明の「凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且 がり製品たる成形体は少なくとも「発泡体2」の高さの分だけ嵩高になるという点を根拠として、構成部品である引用発明の「発泡体2」は、本願補正発明の「凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形 によって製作された所望の嵩高」であるとし、これを前提とした上で、さらに「発泡体2」がクッション性を有し、クッション性を付与するものも「加飾」に含まれるとの本件出願時の加飾に関する技術常識(甲5ないし7)に照らせば、引用発明も「凹凸加飾すべき」ものであって、引用発明の「成形品」及び「成形品の製造方法」は、本願補正発明の「樹脂加飾物 品」及び「凸部加飾加工方法」にほかならないと判断したものであり、この点については、前記(1)アないしウのとおり、審決の判断に誤りはない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は、引用発明で「発泡体2」を「樹脂基材1」と同様の素材とすることについて、阻害要因が存在すると主張する。 しかし、本件審決は、引用発明の「発泡体2」が、本願補正発明の「凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された所望の嵩高」であるとしているのであって、引用発明の発泡体2を樹脂基材1と同様の素材にするとは判断していない。したがって、原告の上記主張は前提を欠くものである。 この点を措くとしても、本願補正発明は、特許請求の範囲の記載からも明らかなように、「樹脂材」の樹脂と、「樹脂成形によって製作された嵩高構成部品」の樹脂とが同様の素材であると特定されているものではなく、本願補正発明は嵩高構成部品が樹脂材と比較してクッション性を有する素材で形成された態様を包含するものであるから、原告の上記主張は、特 許請求の範囲の記載に基づいた主張とはいえない。 ではなく、本願補正発明は嵩高構成部品が樹脂材と比較してクッション性を有する素材で形成された態様を包含するものであるから、原告の上記主張は、特 許請求の範囲の記載に基づいた主張とはいえない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は、本願補正発明の「嵩高構成部品」が「樹脂成形によって製作された」という要件は、金型の製作が不要となるという本願補正発明特有の効果や引用発明との差異を明確化する上で重要な発明特定事項であるにもかかわらず、これを周知慣用技術であるとした本件審決の判断は誤りで あると主張する。 しかし、本件審決は、引用発明の「発泡体2」が「樹脂成形によって製作された」ものであるから、本願補正発明と引用発明とは「樹脂成形によって製作された」という点において相違しないと判断したものである。すなわち、本件審決では「樹脂成形によって製作された」との点が周知慣用 技術であると認定する以前に、そもそも、本願補正発明と引用発明は相違せず、新規性欠如の理由があると判断したものである。したがって、周知慣用技術に関する原告の主張は、本件審決のうちの主位的な拒絶の理由である新規性欠如に対する取消事由とはなり得ないものであるから、原告の上記主張は前提を欠くものである。 次に、本件審決のうちの予備的な拒絶の理由である進歩性欠如については、仮に引用発明の「発泡体2」が「樹脂成形によって製作された所望のもの」であるとは限らなかったとしても、本件審決の述べるとおり、樹脂成形によって製作された発泡体は周知慣用技術である。そして、原告主張の金型の製作が不要となるという効果は、「発泡体2」が「樹脂成形によ って製作された」か否かにかかわらず、引用発明において「発泡体2」により凸部を構成するとき 慣用技術である。そして、原告主張の金型の製作が不要となるという効果は、「発泡体2」が「樹脂成形によ って製作された」か否かにかかわらず、引用発明において「発泡体2」により凸部を構成するときには金型が不要なのであるから、「樹脂成形によって製作された」という要件が、金型の製作が不要となるという本願補正発明特有の効果や引用発明との差異を明確化する上で重要な発明特定事項であるとの原告の主張は誤りというほかない。そして、金型の製作が不 要であるという効果は、当業者であれば予測することができた範囲内の効 果であることは明らかである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 エ原告は、まとめて判断すべきものを一応の相違点1ないし3と認定した上で、各相違点の容易想到性を個々に判断した点は適切でないとする。 しかし、既に述べたとおり、本件審決における一応の相違点1ないし3 についての判断は、実質的にみて、新規性が否定されるべきことを順序立てて説示したものであって、各相違点の容易想到性を個々に判断したものではない。 したがって、原告の上記主張は、その前提に誤りがある。 そして、発明の解決課題に係る技術的観点を考慮することなく各相違点 の容易想到性を個々に判断することが適切でないとして原告が提出した判決(甲2、3)は、いずれも進歩性における容易想到性の判断手法に関して判示するものであるから、本件審決における新規性欠如の理由とは関係しない。 本件審決は、一応の相違点1ないし3を形式的に列挙しているものの、 個々の構成単位の技術的関連性に鑑み、相違点1ないし3をまとめて考慮し総合的に判断したものであるから、いずれにせよ、原告の主張は理由がない。 すなわち、本件審決は、引用発明の「発泡体2」が「樹 個々の構成単位の技術的関連性に鑑み、相違点1ないし3をまとめて考慮し総合的に判断したものであるから、いずれにせよ、原告の主張は理由がない。 すなわち、本件審決は、引用発明の「発泡体2」が「樹脂成形によって製作された」ものであるとし、引用発明の「発泡体2」は、クッション性 のある成形品を製造するための部品であるとともに、最終的な出来上がり製品たる成形体の凸部に対応して配置するための部品でもあるから、構成部品である引用発明の「発泡体2」は、本願補正発明の「凹凸加飾すべき凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された所望の嵩高」であると判断したものである(審決6頁17 行目ないし同頁26行目、同9頁1行目ないし10頁9行目)。つまり、 本件審決は、引用発明の「発泡体2」が、最終的な出来上がり品たる成形品の製造方法において、凹凸の付与及びクッション性の付与という両方の機能付与を「樹脂基材1」の表面に対して行うための加飾用の構成部品であるから、この点で、引用発明の「発泡体2」と本願補正発明の「嵩高構成部品」とは相違しないと判断したものである。 以上のとおり、本件審決は、「加飾」及び「凹凸加飾すべき凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された」をまとまりのある構成単位として検討しているのであるから、本件審決が形式的に一応の相違点1ないし3を認定していても、そのことから本件審決が取り消されるべきことにはならない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 オ原告は、「金型が不要である効果」については本件審決で触れられていないと主張する。 しかし、本願補正発明は引用発明と構成において相違しないのであるから、そもそも新規性欠 することができない。 オ原告は、「金型が不要である効果」については本件審決で触れられていないと主張する。 しかし、本願補正発明は引用発明と構成において相違しないのであるから、そもそも新規性欠如の無効理由があるものである。また、上記効果に ついて検討しても、金型が不要であるという効果は当業者において予想することができた範囲内の効果であるということができるから、本件審決の判断に誤りはない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 カ原告は、仮に本件補正が却下されたとしても、本願発明は引用発明及び 周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではないから進歩性を有すると主張する。 しかし、本願補正発明は、前記第2の2(2)の下線部分の構成を本願発明に付加したものであるところ、本願発明を限定的に減縮することを目的とした本願補正発明が特許を受けることができないとされたのと同様の 理由により、本願発明も、引用文献1に記載された発明であるか、引用文 献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえるから、本願発明につき特許法29条1項3号ないし同条2項の規定により特許を受けることができないとした本件審決の認定判断に誤りはない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 3 結論以上のとおり、本件審決の認定及び判断に誤りは認められず、原告主張の取消事由1及び2には、いずれも理由がない。 よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官東海林 保 主文 のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官東海林保 裁判官今井弘晃 裁判官水野正則 (別紙審決書写し省略)
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