1 令和3年第3812号 収賄被告事件主 文被告人を懲役3年に処する。 未決勾留日数中150日をその刑に算入する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 被告人から金529万9676円を追徴する。 理 由(罪となるべき事実)被告人は、A市等がごみ焼却施設の設置並びにこれに伴う財産の取得及び管理運営に関する事務を共同で処理するために設立した特別地方公共団体B組合(以下単に「組合」という。)において、組合議会議員として同議会における予算審議等で質疑及び表決等の職務に従事していたもの、C(以下「C」という。)は、清掃施設施工業者等との間で業務委託契約を締結し、顧問等として営業業務に関する助言及び情報収集等を業としていたものである。 被告人は、内縁関係にあるDと共謀の上、Cから、組合が発注する一般廃棄物処理施設の工事等に関して、Cが顧問等として関与する清掃施設施工業者等に受注させるため有利便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨又はそのような有利便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、別表記載のとおり、平成30年3月12日から平成31年3月12日までの間、15回にわたり、大阪市(住所省略)所在のE銀行F支店に開設され、Cの意を受けたGが管理する同人名義の普通預金口座から奈良県A市(住所省略)所在のH銀行I支店に開設され、前記Dが管理する「J D」名義の普通預金口座に振込送金を受けるなどの方法により、現金合計529万9676円の供与を受け、もって自己の前記職務に関して賄賂を収受した。 (証拠の標目)(括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す けるなどの方法により、現金合計529万9676円の供与を受け、もって自己の前記職務に関して賄賂を収受した。 (証拠の標目)(括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。)2 (省略)(事実認定の補足説明)第1 本件においては、被告人がCから公訴事実記載の現金を受け取ったこと(以下「本件現金収受」という。)に争いはなく、証拠上も明らかであるが、弁護人及び被告人は、その趣旨は公訴事実記載のものではない旨主張して、本件現金収受と被告人の組合議会議員の職務との対価性及びこれについての被告人の認識を争うので、以下、当裁判所が対価性及びその認識が認められると判断した理由を補足して説明する(以下、公判調書中の証人尋問調書及び被告人供述調書を引用する場合は、人名、公判期日の回数〔複数回にわたる場合に限る。〕、頁数を用いて、「C第2回24」のように示す。なお、証人の人名については原則として姓のみを示すが、Kは「K」、Lは「L」と示す。)。 第2 証拠上明らかな前提事実以下の事実は、弁護人がその信用性を強く争っているCの証言部分を除いても、関係証拠により明らかに認定することができる。 1 被告人の経歴について被告人は、平成27年4月13日から令和3年3月31日まで、連続して組合議会議員の職に就いており、この間奈良県A市議会議員も務めていた(甲1、6)。 2 「M」の建替事業及び定修工事について組合は、一般廃棄物処理施設「M」を管理運営する特別地方公共団体であるが、Mについては、施設が老朽化したために新施設を建設する事業(以下「建替事業」という。)の計画が進められていた(甲4、7)。建替事業には、当初、株式会社N(以下「N」という。)が参入を目指しており、Cは、Nが受注できるように活動す めに新施設を建設する事業(以下「建替事業」という。)の計画が進められていた(甲4、7)。建替事業には、当初、株式会社N(以下「N」という。)が参入を目指しており、Cは、Nが受注できるように活動するとともに、Cが顧問を務めていたO株式会社(以下「O」という。)及び株式会社P(以下「P」という。)を、Nの下請として建替事業に参入させようとしていた。 しかし、平成29年5月末頃から6月初め頃、Nは、建替事業への参入を断念したため、以降、Cは、OとPの下請での参入を目指すこととなった(Q7、L6、C 第2回24)。 そして、平成30年2月1日、建替事業の入札が1度不調となった以降は、建替事業への下請参入まで期間が空くこともあって、Pは、組合が発注するMの定期修繕工事(以下「定修工事」という。)の一部を受注することも目指すようになったが(Q13)、定修工事は、それまで、その全てが随意契約によりR株式会社1社に発注されていた。 3 被告人が、Cらからの依頼に応じて、組合議会議員の職務行為又は職務に密接に関連する行為を行うなどしたことについて⑴ 定修工事に関する予算明細書の提供について平成30年3月13日、被告人は、被告人の事務所において、C、Q(P)及びL(O)と会合を持ったが、その際、Cらに対して、定修工事に関する一般会計予算(甲49別添2の17頁)を示した。そして、Cから、定修工事の一部を受注したいという話を聞かされ、定修工事について詳細な金額の記載のある見積書を交付してほしいと依頼されると、自ら組合の事務局局長であったSに連絡して、定修工事に関する予算明細書(甲49別添1)を用意させ、これを入手すると、Qに渡した(甲91別添2の5~8頁、S1~3、Q19、20、被告人第7回1)。 この被告人の行為は、予算明細書が公開され 定修工事に関する予算明細書(甲49別添1)を用意させ、これを入手すると、Qに渡した(甲91別添2の5~8頁、S1~3、Q19、20、被告人第7回1)。 この被告人の行為は、予算明細書が公開されていないこと、予算明細書を入手する行為は、組合議会における予算の審議、議決への参加、質疑、討論及び表決等の組合議会議員としての職務行為を行うために必要不可欠であり、当然に付随する性質の行為であることに照らせば、被告人の組合議会議員の職務と密接に関連する行為というべきである。 また、被告人は、その場でさらに、①仕事を取ってくる自信はあるので、現段階では自分に「投資」をしてほしい、②自分の「取り分」が少なくならないよう、色々な手を使って仕事を取ってくるという趣旨の発言をした(甲91別添2の10頁)。 なお、別表番号1の20万円の収受がされた同年3月12日はこの前日であり、同番号2の50万円の収受がされた同月26日はこの13日後である。 4 ⑵ 建替事業の入札予算の総額及びその内訳の教示について被告人は、Cから、平成30年2月1日に不調となった建替事業の再入札における入札予算の総額及びその内訳を聞かれていたことから、同年4月25日、C、Q及びKに対し、同価格を、それが公表される前に教示した(甲89別添8、Q10~14、K9~11、被告人第7回20、21)。 この被告人の行為は、入札予算の総額及びその内訳はこの時点ではいまだ公表されていないこと、これらを知ることが、組合議会において質疑等をするために必要な準備的行為の性質を有する行為であることに鑑みると、被告人の組合議会議員としての職務と密接に関連する行為というべきである。 ⑶ 組合議会における定修工事に関する質問についてア Cは、平成30年8月6日、組合がこれまで随意契約により定 鑑みると、被告人の組合議会議員としての職務と密接に関連する行為というべきである。 ⑶ 組合議会における定修工事に関する質問についてア Cは、平成30年8月6日、組合がこれまで随意契約により定修工事の発注をしていることについて、これを批判する趣旨の文章(以下「本件反論書」という。)を作成し、Qに送付し(甲89別添4、Q24~26)、その頃、被告人は、これを受け取り、被告人の事務所において、Sに対し、本件反論書を交付しながら、随意契約を批判する話をした(S10~13)。 イ その後、被告人は、同年9月19日、S及び組合事務局の主幹であるTに対し、定修工事が随意契約で発注されていることを批判する話をし、その際、「俺らは俺らで、Pってあんねん、な。」などと発言し、同年10月4日にもS及びTに対して同様に随意契約を批判する話をし、同月18日には、S及びTに対し、定修工事が随意契約で発注されていることについて、入札であったり見積もりを取るべきことを議会で質問する旨伝えた(S13~16、T3~9、甲86別添1、甲92別添2の7頁)。 ウ 他方、被告人とC及びQとは、同年10月18日、同月29日に被告人の事務所で会合をしているところ、時期は定かではないものの、何度か、Cが、被告人に対して、定修工事の発注を入札にすることは不当なことではない、入札にすることによって組合や税金の支出が減るので、やっていることとしては正当だという説5 明をして、議会での発言を依頼していた(Q28~30、33~38、甲89別添6、甲90別添6)。 エ そして、被告人は、同月30日の組合議会において、質問として、「5年、6年からずっとR1本でこの金額、R1本では納得、私らもできないんで、他社からも是非見積もりをとるようにして今後発注していただくようよろしくお 人は、同月30日の組合議会において、質問として、「5年、6年からずっとR1本でこの金額、R1本では納得、私らもできないんで、他社からも是非見積もりをとるようにして今後発注していただくようよろしくお願いして、よろしいよりも必要あると思いますんで、是非とってください。」と発言した(甲85別添4)。 オさらに、被告人は、平成31年2月21日の組合議会においても、質問として、「ほかからのメーカーの見積も取って工事価格、やっぱり毎年することなんで、何業者からのメーカーの予算と、見積もりを取ってもらって、ほんでまたこれから今年、また来年ということもあるので、しっかりと、また把握した中で工事価格を精査し、またできる限り、管理者がいつもおっしゃるとおり、コストを削減してもらいたいと思いますが、そういう考えはあるんですか。」と発言した(甲85別添5)。 これらの組合議会における被告人の発言が、被告人の組合議会議員としての職務行為であることは明らかである。 なお、別表番号5の50万円の収受がされた平成30年8月9日と、同番号6の30万円の収受がされた同月17日は、上記アの本件反論書が作成された時期に近接しており、同番号7の70万円の収受がされた同年9月7日は、上記イの同月19日に被告人がS及びTに対して話をした時期に近接しており、同番号8の30万円の収受がされた同年11月9日は、上記エの質問の時期に近接しており、同番号13の30万円の収受がされた平成31年2月12日と、同番号14の20万円の収受がされた同月26日は、上記オの質問の時期に近接している。 ⑷ 建替事業に関する図面の交付について建替事業については、平成30年8月の再入札でU株式会社(以下「U」という。)が落札したが、同年12月頃、建替事業について測量ミスがあることが発覚し、施 ⑷ 建替事業に関する図面の交付について建替事業については、平成30年8月の再入札でU株式会社(以下「U」という。)が落札したが、同年12月頃、建替事業について測量ミスがあることが発覚し、施設の配置や内容が変更される可能性が生じ、工事が日程より遅れることとなったが (L21、被告人第7回25)、Cは、被告人に対し、Uが組合に提出する建替事業の新たな図面等の提供を依頼していた。被告人は、平成31年2月21日の組合の特別委員会において、Uが提供する図面を自身を含む各委員に配付するよう促し、Uが入札時に提案した測量ミス発覚前の図面(以下「本件旧図面」という。)を受け取って、同年3月頃、これをCに交付した(甲50、K13、被告人第7回25、26)。本件旧図面は、Cが被告人に対して提供を求めていたものではないが、被告人としては、Cから提供を求められていたことから渡したものであった。 この被告人の行為は、本件旧図面は公開されていないこと、本件旧図面を入手することは、議会の審議において質疑等をするために必要な準備的行為であることに鑑みれば、被告人の組合議会議員としての職務と密接に関連する行為というべきである。 なお、別表番号14の20万円の収受がされた平成31年2月26日と、同番号15の30万円の収受がされた平成31年3月12日は、上記被告人の行為の時期に近接している。 4 本件現金収受の態様について本件現金収受15回のうち14回は、Cの交際相手であるGの口座かから、又は同人名義で、被告人の内妻であるD名義の口座に振込送金を受ける方法で行われた(甲93、G1)。 第3 第2認定の事実関係からは、本件現金収受と被告人の組合議会議員の職務に対価性があることが強く推認されることについて 1 第2で認定した事実関係に照らすと、 方法で行われた(甲93、G1)。 第3 第2認定の事実関係からは、本件現金収受と被告人の組合議会議員の職務に対価性があることが強く推認されることについて1 第2で認定した事実関係に照らすと、本件現金収受は、被告人がCから依頼されて、被告人の組合議会議員としての職務行為あるいは職務と密接に関連する行為を行う中で、それらの行為と近い時期に、それらの行為と並行して行われており、そのこと自体から、被告人の組合議会議員の職務と対価性があることが強く推認されるというべきである。 さらに、前記第2の4のとおり、本件現金収受のほとんどが、Cや被告人以外の7 名義によって行われていることは、本件現金収受を表立って行うことを避ける意図でされたことを示すものであり、上記推認を支えるものというべきである。もちろん、本件においては、被告人は議員歳費の差押えを受けていたことから、賄賂であろうとなかろうと、被告人名義の口座に振込送金を受けることを避ける必要があったといえるが、それだけではCがGの名義を使用したことを説明できないから、上記の事実は、やはり本件現金収受を表立って行うことを避けたいという被告人及びCの意思の表れというべきである。 しかも、被告人は、前記のとおり、平成30年3月13日にC、Q及びLと面談した場で、仕事を取ってくる自信はあるので、自分に「投資」をしてほしい、自分の「取り分」が少なくならないよう、色々な手を使って仕事を取ってくるといった趣旨の発言をしているところ、この発言は、被告人がCらに便宜を図ることを積極的に述べたものといえる。もちろん、ここでの「仕事」やこれを取るための手段が直ちに組合議会議員の職務に関連するものを意味するとはいえないものの、被告人は、この場において、「俺、組合、えらいさん、ちゃう、組合の役持ってるってこれ ん、ここでの「仕事」やこれを取るための手段が直ちに組合議会議員の職務に関連するものを意味するとはいえないものの、被告人は、この場において、「俺、組合、えらいさん、ちゃう、組合の役持ってるってこれくれよとか言えるやん。これは何すんねんって言うたら、自分に見せんねんって言ったら向こう絶対あかんわけやん。そこは組合の方で見んねんと、あぁこれちょっとあれやとかいうことはやな、いうことで今してんねんけどや。やっぱりそれには、俺にも中も置いとかなあかんいうことでな。いうことやねん。ほんで今から言うように、金額、少なかったら俺は儲けは少ないということはもうよく分かりました。」と、組合議会議員の地位との関連を意識した発言をしていること(甲91別添2の10頁)からすれば、「仕事」として組合議会議員の職務と関連しないもののみが念頭に置かれていたとは到底考えられない。この事実もまた、上記の推認を強めるものである。 2 これに対し、弁護人及び被告人は、①第1の3⑴の予算明細書は、Pにとって必要な、特許部分以外の工事項目がどれかが正確には分からないものであったし、同⑵の入札予算の総額及び内訳の教示や同⑷の本件旧図面の提供は、Cらの役に立 つものではなく、これらの被告人の行為は、Cらの便宜を図ったといえるものではない、②第1の3⑴の予算明細書は、被告人は、組合が定修工事を長年随意契約により発注しているため、定修工事の価格が高いという問題意識を持っていたことから、CやQに検討してもらうための資料として交付したものである、③第1の3⑶の組合議会での質問としての発言は、被告人がもともと持っていた上記問題意識によるものであって、本件現金収受とは関連しないものである旨主張し、あるいは供述する。 しかし、①の点については、単純収賄罪の成立には、職務と対価関係のあ は、被告人がもともと持っていた上記問題意識によるものであって、本件現金収受とは関連しないものである旨主張し、あるいは供述する。 しかし、①の点については、単純収賄罪の成立には、職務と対価関係のある金銭の収受がされれば十分であって、金銭の収受者が供与者に対して有効な便宜を図ったことはそもそも必要ではないが、本件においては、その実効性はともかくとして、被告人は、Cらの依頼に応じて職務行為又は職務と密接に関連する行為を行ったことは既に説示したとおりであって、このことこそが本件現金収受と被告人の組合議会議員の職務との対価性を本質的に基礎付けるものというべきである。 ②の点については、確かに、Cは、被告人から、定修工事が随意契約により1社で行われているため、予算が高すぎる旨相談を受けたことがあると証言していることや(C第3回34)、定修工事が随意契約により発注されていることについては、平成25年頃から、組合議会の間でも賛否両論が分かれていたこと(V20)からすれば、被告人が従前から随意契約であるために定修工事の価格が高すぎるという問題意識を持っていなかったとはいえない。しかし、Cは、平成30年3月13日の会合の際、被告人に対し、定修工事の一部を受注したいと述べた上で予算明細書の交付を依頼していることや、被告人は同会合の中で随意契約に関する問題について一切述べていないことからすれば、予算明細書の交付の趣旨が、CやQに定修工事の価格を検討してもらうための資料の提供にあったとは到底考えられない。 ③の点についても、上記のとおり被告人が従前から随意契約に問題意識を持っていたとしても、そのことと、その問題意識に従って組合議会で質問をしたことの対価として現金を収受することとは、もとより両立しないものではない。しかも、被9 告人自身は、前記各質問以 意識を持っていたとしても、そのことと、その問題意識に従って組合議会で質問をしたことの対価として現金を収受することとは、もとより両立しないものではない。しかも、被 告人自身は、前記各質問以前には組合議会で随意契約に関する質疑をしたことはなかったこと(T10)、定修工事の価格が高いことについて具体的に調査や比較まではしておらず、定修工事が一部入札になった後も、実際にどのような仕事が入札に切り替わり価格が抑えられたかも把握していないこと(被告人第8回40~46)、被告人は、Qが定修工事に関して組合に営業に行くに際して、いつ営業に行くのがいいかQに対して助言をするなど、Qと直接連絡を取り合っていたことが認められるところ(Q21~24、甲90別添4)、随意契約という発注形態を問題視しているのであれば、一業者であるQの営業行為に関して連絡を取り合う必要性はないこと等に照らせば、被告人が本件現金収受と無関係に前記各質問をしたとは到底考えられないというべきである。 上記の弁護人の主張及び被告人の供述はいずれも採用することができない。 第4 Cの証言は基本的に信用することができることについて 1 以上の検討を踏まえて、被告人への本件現金供与(本件現金収受に対応する供与のことをいう。)の趣旨について、賄賂である旨述べるCの証言について検討すると、以下のとおり、基本的に信用することができるというべきである。 2 すなわち、Cは、前記第2認定の事実に沿う証言をするほか、①平成29年6月2日、被告人と会食した際、被告人に、受注メーカーの下請をしたいので、OとPをよろしくお願いしますと伝え、下請参入が成功すれば報酬を支払うことも伝えたところ、被告人は、協力をするので金銭的な援助をしてほしい、毎月50万円を継続的に支払ってほしい旨言ってきたので、成功 とPをよろしくお願いしますと伝え、下請参入が成功すれば報酬を支払うことも伝えたところ、被告人は、協力をするので金銭的な援助をしてほしい、毎月50万円を継続的に支払ってほしい旨言ってきたので、成功報酬の前払いとして支払おうと考えた、②平成30年3月1日、被告人及びDを和歌山県Wのホテル「X」への宿泊を伴う旅行に招待し、L及びQも同行したが、その際、同人らも同席する場で、被告人に対し、建替事業に関する資料や見積明細書の入手を依頼するとともに、定修工事に関しては、Pが参入できる工事があるかを確認するために予算明細書の入手が必要であるなどと伝えた、③同月26日、奈良県Y町Y駅前のレストランで被告人と会った際、建替事業の下請受注の成功報酬として約5000万円を支払える10 旨を話し、持参した現金50万円をテーブルの下を通して被告人に手渡した、④本件現金供与をしたのは、建替事業の受注やそれ以外のものを含めて仕事の受注などをしたいと考え、こちらのお願いすることを聞いてもらうために良い関係を作りたい、ギブアンドテイクの関係を作りたい、という趣旨であった旨証言する。 3 上記証言は、①前記第2認定の事実や第3の推認に沿うものであること、②Q、L及びKらの証言とも符合すること、③Cは、自身が一週間の予定を組み、実際の行動に沿って修正していた「週間行動予定表」ないし「週間行動予定表/後に週刊行動実績表」(甲94)や、被告人と会うに当たって被告人に対して依頼する事項等を自身の覚書きとして作成していた「本日の議題事項一覧」(甲82。以下単に「議題事項一覧」という。)といった書面を残しており、これに沿う証言をしているところ、これらの書面は、Cが用事の都度書き留めていたものであり、その内容には一定程度信用がおけること、④「議題事項一覧」については、記憶に いう。)といった書面を残しており、これに沿う証言をしているところ、これらの書面は、Cが用事の都度書き留めていたものであり、その内容には一定程度信用がおけること、④「議題事項一覧」については、記憶に基づいて、実際に依頼した事項と、議題事項一覧に記載したものの依頼しなかった事項とを分けて証言するなど、供述態度にも問題は見られないこと、⑤その他客観的事実関係や関係証人の証言との間に矛盾や不整合もないこと等から、基本的に十分信用することができる。 4 前記第3の推認に、上記Cの証言を併せれば、本件現金収受と被告人の組合議会議員の職務に対価性があることが十分認定できるというべきである。 第5 上記認定に疑いを差し挟むような事情はないことについて1 金銭消費貸借契約書の作成等について本件現金収受を含め、被告人がCから収受した現金については、実際に金銭消費貸借契約書が作成されているほか(甲83)、Cが被告人に対して貸金の返還請求をしていること(弁書2)が認められる。そうすると、本件現金収受が被告人の組合議会議員の職務と対価性のない純粋な貸付金であった可能性について検討する必要がある。 しかし、①ⓐ被告人からただの一度も返済がないまま、ある程度まとまった金額11 の現金の供与が続いているにもかかわらず、供与のたびごとに金銭消費貸借契約書が作成されることはなかったという不自然さ、ⓑそもそも仮に純粋な貸付であったとすると、Cは、被告人が何ら返済をしないにもかかわらず、継続的に合計約2000万円もの金額を、担保もなしに貸し続けたことになるが(甲83別添2、弁書2、C第2回7)、下記2で述べるとおり、被告人とCとの間に、そのような経済合理性に疑問のある貸付をするような人的関係があったことはうかがわれないという不自然さ、ⓒ貸主の名義が実際 83別添2、弁書2、C第2回7)、下記2で述べるとおり、被告人とCとの間に、そのような経済合理性に疑問のある貸付をするような人的関係があったことはうかがわれないという不自然さ、ⓒ貸主の名義が実際に金銭を供与したCではなくGとなっているという不自然さ(そもそもGの口座又は名義を使用して振込送金がされていること自体が、現金収受を表立って行うことを避ける意図でされたことを示すものであることは、既に述べたとおりである。)、ⓓ被告人自身も、貸付であると述べながらも、利息についてCとの間で合意があったとは述べていないという不自然さ(被告人第8回68)がある一方、②Cの、金銭消費貸借契約書を作成した主目的は、自身の所得税の確定申告の際、税務署から使途不明金である旨の指摘を受けるのを避けるためである、被告人に供与した現金については、建替事業への下請参入の成功報酬で精算する予定であったが、参入を断念したことから、貸倒損失として損金算入することにし、最終的には、GからCへ債権譲渡をした上で損金算入する予定であった旨の証言(C第2回1~4、26~28、第3回67)には合理性があることからすると、金銭消費貸借契約書の作成やCの被告人に対する貸金の返還請求の事実は、本件現金収受が純粋な貸付であったことをうかがわせる事情とはいえず、前記認定に疑いを差し挟むものとはいえない。 2 その他の被告人の供述や弁護人の主張について⑴ 被告人は、既に検討した点のほか、①Cから収受した現金は、初めに平成29年3月に被告人の選挙資金の応援という趣旨で200万円を借りて以降、本件現金収受を含め、全て被告人の人柄を気に入ってくれたCからの貸付金である、②平成30年3月1日の「X」での接待について、議題事項一覧は見ていないし、QやLはその場にいたものの建替事業や定修工事に関する 金収受を含め、全て被告人の人柄を気に入ってくれたCからの貸付金である、②平成30年3月1日の「X」での接待について、議題事項一覧は見ていないし、QやLはその場にいたものの建替事業や定修工事に関する依頼は受けていない、Cは、12 自身が被告人と知り合いであることをQやLに自慢するのみであったなどと供述し、被告人がCの依頼に応じて組合議会議員の職務行為又は職務と密接に関連する行為を行ったことと本件現金収受とは関係がない旨供述する。 しかし、①の点については、既に述べたとおり、金銭消費貸借契約書が作成されていることやCが被告人に対して貸金の返還請求をしていることは、本件現金収受を含め、被告人がCから収受した現金が純粋な貸付であることをうかがわせる事情とはいえない。加えて、Cはそもそも被告人の市議会議員の選挙区の住民ではないこと(被告人第8回12)、被告人は市議会議員選挙の選挙運動費用収支報告書にCからの現金収受を記載したことはなく、かえってCに対してこれを拒絶していること(被告人第8回58、C第3回61)、Cが被告人の政治的信条等に共鳴したといったような事実も認められないことに照らせば、到底信用することができないものである。Cが、被告人の組合議会議員の職務から離れて、被告人の人柄を気に入ったとか、その政治的信条に共鳴したといった理由から本件現金収受が行われたとは考えられない。 ②の点についても、被告人の供述は、相互に信用性を補強するC、Q及びLの各証言に反するものである上、内容的にも、PやOが費用を拠出して被告人を旅行に接待したにもかかわらず、Cが被告人に対して建替事業や定修工事に関する話をせず、QやLもCに話すよう促すこともなかったというのは不自然であって、到底信用することができない。 ⑵ 弁護人は、①Cが被告人に対して貸付とし ず、Cが被告人に対して建替事業や定修工事に関する話をせず、QやLもCに話すよう促すこともなかったというのは不自然であって、到底信用することができない。 ⑵ 弁護人は、①Cが被告人に対して貸付として現金を供与していた趣旨は、Cが被告人から有力者を紹介してもらう等、組合議会議員の職務とは無関係な便宜を図ってもらうことにあった、②Cの思惑は、PやOに建替事業等への参入が可能であると見せかけ、両社から顧問料を得ることにあり、具体的に被告人に便宜を図ってもらうことにはなかった旨主張する。 しかし、①の点については、Cは、被告人に対し、有力者の紹介等も依頼しており、本件現金収受には、その紹介等に対する謝礼の趣旨も含まれていたと認めるこ13 とができる(C第2回6、13、第3回41~47、甲82)。しかし、これは、本件現金収受と被告人の組合議会議員の職務に対価性があることと両立するものであるし、既に検討したとおり、この対価性は明らかに認定することができる。②の点についても、CがP及びOに対し、自身が建替事業等への参入に向けて仕事をしている旨アピールすることは、Cと両社との間の顧問契約に照らして当然というべきことであり、そのことと本件現金収受と被告人の組合議会議員の職務に対価性があることとはやはり両立するから、対価性の存在に疑いを入れるものではない。 弁護人の主張は採用することができない。 第6 以上のとおりであるから、本件現金収受と被告人の組合議会議員の職務には対価性があると認められる。また、既にみたとおり、被告人は、Cからの依頼を受け、これに応じる過程で現金を収受していたのであるから、被告人に対価性についての認識(故意)があったことにも疑いはないと認められる(被告人が本件現金収受の趣旨を誤解したような状況は一切うかがわれない。)。 そ じる過程で現金を収受していたのであるから、被告人に対価性についての認識(故意)があったことにも疑いはないと認められる(被告人が本件現金収受の趣旨を誤解したような状況は一切うかがわれない。)。 そして、被告人とDとの共謀についても、Dは、前記の平成30年3月13日の被告人とCらとの会合の場に同席して会話にも加わったこと(甲91の別添2)、前記のとおり本件現金収受のための口座を被告人に提供していたが、収受した現金も被告人と共に費消していたこと(甲93)、被告人と共にCらから接待を受けていたこと(C第2回15~39等)等に照らし、容易に認めることができる。 (法令の適用)1 罰条 包括して刑法60条、197条1項前段2 未決勾留日数の算入 刑法21条3 刑の執行猶予 刑法25条1項4 追徴 刑法197条の5後段(被告人が判示犯行により収受した賄賂は没収することができない。)5 訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書(量刑の理由)14 被告人は、自ら供与者に対して資金援助を求めた上で、約1年の間、15回にわたり合計約530万円の賄賂を収受したのであり、本件は、要求型の高額収賄事案として厳しい非難に値する。 しかし、他方で、被告人は、組合議会議員であると同時に市議会議員でもあったところ、供与者が被告人に現金を供与した趣旨には、組合議会議員の職務に関するものに加えて、市議会議員としての被告人から有力者の紹介等を受けるという、違法とはいえない便宜を受ける趣旨も多分に含まれていたと認められる。また、供与者側が希望していた建替事業への下請参入を実現するために被告人が組合議会議員の立場からできることはそもそも限られていたと考えられるし、定修工事についても、被告人に期待されていた められる。また、供与者側が希望していた建替事業への下請参入を実現するために被告人が組合議会議員の立場からできることはそもそも限られていたと考えられるし、定修工事についても、被告人に期待されていたのは、発注形態を随意契約から入札に切り替えるという、それ自体は不当といえない主張をすることにとどまっていた。実際にも、供与者側企業は建替事業及び定修工事に参入できておらず、この点で公務がゆがめられたことはなかったが、上記各点に鑑みると、そもそも被告人がゆがめる可能性のあった公務の範囲自体が相当に限られたものであったといえる。 以上の犯情に照らすと、被告人の刑事責任は相当程度重いものの、実刑に処すほかない事案とまではいえない。 一般情状についてみると、被告人は、本件現金収受と被告人の組合議会議員の職務に対価性があることを否認し、不合理な弁解をしており、定修工事の予算明細書の交付について軽率な点があったと認めていることを考慮しても、十分な反省の態度はうかがわれないが、やや高齢であること、長期の身柄拘束により健康面にも支障をきたしていると見受けられること、前科が認められないこと等は被告人のために酌むべき事情であり、これらを考慮すれば、被告人に対しては、今回はその刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 (求刑―懲役3年6月、主文同旨の追徴)令和5年4月24日大阪地方裁判所第13刑事部15 裁判長裁判官 岩 﨑 邦 生 裁判官梅澤利昭は転補のため、裁判官北岡佑太は差支えのため、いずれも署名押印することができない。 裁判長裁判官 岩 﨑 邦 生 裁判長裁判官 岩 﨑 邦 生
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