平成15(行ウ)19等 公文書一部非開示決定処分取消請求事件(第1事件),裁決取消請求事件(第2事件)

裁判年月日・裁判所
平成16年7月12日 札幌地方裁判所 情報公開
ファイル
hanrei-pdf-14995.txt

判決文本文13,616 文字)

主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の請求 1 第1事件第1事件被告が原告に対し,別紙開示請求文書目録記載の文書について平成13年12月27日にした公文書一部非開示決定処分(違反者の氏名に係る部分を除く。)を取り消す。 2 第2事件第2事件被告が原告に対し,平成15年8月1日にした,別紙開示請求文書目録記載の文書につき第1事件被告がした平成13年12月27日付公文書一部非開示決定処分についての審査請求に係る裁決を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,第1事件被告北海道警察本部長(以下「被告本部長」という。)に対し,北海道情報公開条例(平成10年北海道条例第28号。以下「本件条例」という。)に基づき,公文書である交通事件原票の開示を求めたところ,被告本部長が,付属書類を含め,その一部を非開示とする決定(以下「本件原処分」という。)をしたため,原告が,第2事件被告北海道公安委員会(以下「被告委員会」という。)に対し,その非開示部分のうちの一部について開示を求める異議申立てをしたが,その申立てが棄却された(以下「本件裁決」という。)ことから,本件原処分のうち違反者の氏名に係る部分を除いた部分及び本件裁決の各取消しを求めた事案である。 1 前提となる事実(争いのない事実以外は証拠等を併記)(1) 本件条例本件条例のうち,本件に関連する規定は,以下のとおりである。(乙1)ア (定義)第2条この条例において「実施機関」とは,知事,教育委員会,公安委員会,選挙管理委員会,監査委員,人事委員会,地方労働委員会,収用委員会,連合海区漁業調整委員会,海区漁業調整委員会,内水面漁場管理委員会,公営企業管理者及び警察本部長をいう。 2 (省略) 3 (省略) 挙管理委員会,監査委員,人事委員会,地方労働委員会,収用委員会,連合海区漁業調整委員会,海区漁業調整委員会,内水面漁場管理委員会,公営企業管理者及び警察本部長をいう。 2 (省略) 3 (省略)イ (公文書の開示を請求する権利)第9条何人も,実施機関に対して,公文書の開示を請求することができる。 ウ (実施機関の開示義務)第10条実施機関(公安委員会及び警察本部長を除く。)は,公文書の開示の請求(以下「開示請求」という。)があったときは,開示請求に係る公文書に,次の各号に掲げる情報のいずれかが記録されている場合を除き,当該公文書に係る公文書の開示をしなければならない。 (1) 個人の思想,宗教,身体的特徴,健康状態,家族構成,学歴,職歴,住所,所属団体,財産,所得等に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,特定の個人が識別され得るもののうち,通常他人に知られたくないと認められるもの((2)ないし(7)を省略) 2 実施機関(公安委員会及び警察本部長に限る。)は,開示請求があったときは,開示請求に係る公文書に,次の各号に掲げる情報のいずれかが記録されている場合を除き,当該公文書に係る公文書の開示をしなければならない。 (1) 前項各号(第3号を除く。)のいずれかに該当する情報(2) (省略)(3) 前号に掲げるもののほか,開示することにより,人の生命,身体,財産又は社会的な地位の保護に支障が生ずるおそれのある情報 3 実施機関は,開示請求に係る公文書に,第1項各号又は前項各号に掲げる情報(以下「非開示情報」という。)とそれ以外の情報が記録されている場合において,非開示情報とそれ以外の情報とを容易に,かつ,開示請求の趣旨が損なわれない程度に分離することができるときは,前二項の規定にかかわらず,当該非開示情 う。)とそれ以外の情報が記録されている場合において,非開示情報とそれ以外の情報とを容易に,かつ,開示請求の趣旨が損なわれない程度に分離することができるときは,前二項の規定にかかわらず,当該非開示情報が記録されている部分を除いて,当該公文書に係る公文書の開示をしなければならない。 エ (公文書の開示の決定)第14条実施機関は,開示請求があったときは,その翌日から起算して14日以内に,公文書の開示をするかどうかの決定(以下「開示等の決定」という。)をしなければならない。ただし,やむを得ない理由により,その翌日から起算して14日以内に開示等の決定をすることができないときは,その期間を14日を限度として延長することができる。 2 前項ただし書の規定にかかわらず,実施機関は,開示請求に係る公文書が大量であるときは,同項本文に規定する開示等の決定をする期間を,開示請求があった日の翌日から起算して2月を限度として延長することができる。ただし,開示請求に係る公文書が著しく大量であって,その翌日から起算して2月以内に開示等の決定をすることができないことに相当の理由があるときは,北海道情報公開審査会の意見を聴いて,その期間を延長することができる。 3 (省略)オ (公文書の開示等の決定の通知)第15条実施機関は,開示等の決定をしたときは,速やかに開示請求者に書面により通知しなければならない。この場合において,実施機関は,公文書の開示をしないことと決定したときはその理由を,第10条第3項の規定により非開示情報が記録されている部分を除いて公文書の開示をすることと決定したときはその旨及び理由を記載して開示請求者に通知しなければならない。 2 (省略)カ (審査会への諮問等)第21条実施機関は,開示決定等について,行政不服審査法(昭和37年法律第 と決定したときはその旨及び理由を記載して開示請求者に通知しなければならない。 2 (省略)カ (審査会への諮問等)第21条実施機関は,開示決定等について,行政不服審査法(昭和37年法律第160号)の規定に基づく不服申立てがあったときは,当該不服申立てが不適法なものであるときを除き,北海道情報公開審査会に諮問して,当該不服申立てに対する決定又は裁決を行うものとする。この場合において,実施機関は,北海道情報公開審査会の答申を尊重するものとする。 2 (省略)キ (適用除外)第41条この条例の規定は,次に掲げる公文書については,適用しない。 (1) 刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第53条の2に規定する訴訟に関する書類及び押収物(2) (省略)(2) 交通切符アいわゆる交通切符は,①交通反則告知書・免許証保管証(以下「告知書」という。),②交通事件原票,道路交通法違反現認・認知報告書(以下「交通事件原票」という。),③交通反則通告書,④取締り原票,⑤告知報告書・交通法令違反事件簿(警察署等で保管する控えである。),⑥告知報告書・交通法令違反事件簿(通告センターへの送付用である。)の6枚綴りの複写式で構成される。 イこれら6枚の用紙の表面には,共通の記載事項欄として,最上段に告知・交付日時欄が,その下段に告知・交付者の所属,階級等及び氏名欄がある。このほか,共通の記載事項欄として,(1)反則者氏名欄(この欄は,交通事件原票では違反者氏名欄と表示されている。),(2)反則車両欄(同様に,違反車両欄と表示されている。),(3)反則日時欄(同様に,違反日時欄と表示されている。),(4)反則場所欄(同様に,違反場所欄と表示されている。),(5)反則事項・罰条欄(同様に,違反事項・罰条欄と表示されている。),(6)反則行為の種別欄 時欄(同様に,違反日時欄と表示されている。),(4)反則場所欄(同様に,違反場所欄と表示されている。),(5)反則事項・罰条欄(同様に,違反事項・罰条欄と表示されている。),(6)反則行為の種別欄,(7)反則金相当額欄(この欄は,取締り原票にのみ複写されない。)及び(8)出頭欄(この欄は,交通反則通告書のみ納付欄と表示されている。)がある。 ウ交通事件原票の表面には,前項の共通記載事項欄のほか,それらの下に,違反事実の状況等を報告する道路交通法違反現認・認知報告書欄及び違反者の供述書欄がある。裏面には,違反場所及び違反状況等の略図が記載される欄がある。 (3) 本件原処分ア原告は,平成13年12月20日,被告本部長に対し,本件条例9条に基づき,原告の息子(少年)を違反者とする交通事件に係る文書である別紙開示請求文書目録記載の文書(以下「本件公文書」という。)のうち,各交通事件原票(同目録記載1,2の各ア)の開示を請求した。 イ被告本部長は,同年12月27日,前項の原告の開示請求に対し,上記各交通事件原票の付属書類である別紙開示請求文書目録記載1のイ,2のイ,ウの各文書を加えた本件公文書のうち,違反者(交通事件原票及び「違反場所の訂正について」と題する書面においては違反者と呼称されるが,道路交通法違反被疑事件捜査報告書では被疑者,「交通反則告知書の訂正について」と題する書面では反則者と,それぞれ呼称される。)の氏名,生年月日,年齢,職業,本籍,住所,電話番号,免許証番号,登録(車両)番号,指印及び違反者の保護者の氏名,住所,年齢,職業,続柄(以下「違反者等の個人情報」という。),並びに本件公文書の記載に係る道路交通法(以下「道交法」と略記する。)違反事件の取締りに従事した警察官の氏名及び印影(以下「警察官の氏名等に関する情報」という (以下「違反者等の個人情報」という。),並びに本件公文書の記載に係る道路交通法(以下「道交法」と略記する。)違反事件の取締りに従事した警察官の氏名及び印影(以下「警察官の氏名等に関する情報」という。)を除いた部分を開示するとの本件原処分を行い,同日,原告に対し,開示決定に係る部分を開示した。 ウ本件原処分の通知書に記載された非開示の理由は,違反者等の個人情報は,本件条例10条2項1号において準用される同条1項1号に定める情報に該当し,警察官の氏名等に関する情報は,同条2項3号に定める情報に該当するというものであった。 (4) 本件裁決ア原告は,平成14年2月22日,被告委員会に対し,本件原処分のうち警察官の氏名等に関する情報を非開示とした部分の処分を不服として,行政不服審査法に基づく審査請求をした。 イ被告委員会は,原告の審査請求を受け,本件条例21条に基づき,同年3月7日,北海道情報公開審査会(以下「審査会」という。)に対し,諮問を行った。 ウ被告本部長は,審査会の審議に当たり,審査会に対し,本件公文書は本件条例41条1号において定める刑事訴訟法53条の2に規定する「訴訟に関する書類」に該当するから,本件条例は適用されないとの意見を述べた。 これに対し,審査会は,同年12月27日,本件公文書が条例の対象外の文書であるかについては判断しないとした上で,警察官の氏名等に関する情報を非開示としたことは妥当ではなく,開示すべきであるとの答申を行った。(甲7)エ被告委員会は,平成15年8月1日,本件公文書は刑事訴訟法53条の2に規定する「訴訟に関する書類」に該当するから,本件条例41条1号により本件条例は適用されないとして,本件審査請求を棄却するとの本件裁決を行った。 (5) 本件訴訟被告本部長は,本件第2回口頭弁論期日において,本 訟に関する書類」に該当するから,本件条例41条1号により本件条例は適用されないとして,本件審査請求を棄却するとの本件裁決を行った。 (5) 本件訴訟被告本部長は,本件第2回口頭弁論期日において,本件公文書が,刑事訴訟法53条の2に規定する「訴訟に関する書類」に該当し,本件条例41条1号に定める適用除外文書であると主張した。 2 争点① 被告本部長が,本件原処分の通知書に付記されていない処分理由を追加して主張することが許されるか(第1事件)。 ② 本件公文書が,刑事訴訟法53条の2に規定する「訴訟に関する書類」に該当し,本件条例の適用が排除されるか(第1事件)。 ③ 本件公文書が一般的に「訴訟に関する書類」に該当する場合であっても,なお,交通事件原票中警察官の氏名等に関する情報部分が本件条例の適用の対象となるか(第1事件)。 ④ 警察官の氏名等に関する情報が,本件条例10条2項3号に定める情報に該当するか(第1事件)。 ⑤ 本件裁決が,原告の開示請求から1年7か月を経過した後にされたことが裁決固有の瑕疵にあたるか(第2事件)。 ⑥ 本件裁決が,本件原処分において理由とされていない本件条例41条1号を理由として原告の審査請求を棄却したことが,裁決固有の瑕疵にあたるか(第2事件)。 3 争点に対する当事者の主張(1) 争点①(被告本部長が,本件原処分の通知書に付記されていない処分理由を追加して主張することが許されるか)について(原告の主張)原処分の取消訴訟において,処分当時に原処分庁が第1次的な判断権を行使したとは認められない処分理由を追加して主張することは,取消訴訟の訴訟物の範囲を超えるものであって許されない。本件では,原処分庁である被告本部長は,本件公文書を行政文書と判断しており,「訴訟に関する書類」であるか否かについては何らの判断も することは,取消訴訟の訴訟物の範囲を超えるものであって許されない。本件では,原処分庁である被告本部長は,本件公文書を行政文書と判断しており,「訴訟に関する書類」であるか否かについては何らの判断も行っていないから,本件公文書が「訴訟に関する書類」に該当するか否かについて,第1次的な判断権を行使していないことは明らかである。 したがって,本件公文書が「訴訟に関する書類」に該当するとの被告本部長の追加的な主張は許されない。 (被告本部長の主張)取消訴訟の訴訟物は,処分の違法性一般であるから,行政庁は,特段の事由のない限り,処分の効力を維持するため,一切の法律上及び事実上の主張をすることができる。本件において,被告本部長が,本件公文書が「訴訟に関する書類」に該当するとの主張を追加することは,本件原処分の理由付記を補強するものに過ぎず,取消訴訟の訴訟物を逸脱しない。 また,本件では,本件条例15条1項により非開示の理由が通知されているが,これは,開示請求者の不服申立てに便宜を与えることを目的とするものに過ぎず,また,同項に,通知書に記載された非開示の理由以外の理由の主張を禁ずる趣旨が包含されると解すべき根拠もない。 したがって,本件においては,上記特段の事由はなく,被告本部長が処分理由を追加して主張することは許される。 のみならず,そもそも,原処分庁である被告本部長は,本件公文書が,反則金の納付によって「訴訟に関する書類」から行政文書に変じたものと判断したのであるから,本件公文書の「訴訟に関する書類」該当性について第1次的な判断権を行使したことは明らかである。 (2) 争点②(本件公文書が,刑事訴訟法53条の2に規定する「訴訟に関する書類」に該当し,本件条例の適用が排除されるか)について(被告本部長の主張)本件公文書は,以下のアのとおり,いずれ ある。 (2) 争点②(本件公文書が,刑事訴訟法53条の2に規定する「訴訟に関する書類」に該当し,本件条例の適用が排除されるか)について(被告本部長の主張)本件公文書は,以下のアのとおり,いずれも刑事訴訟法53条の2に規定する「訴訟に関する書類」に該当する。また,原告の主張は,以下のイ及びウのとおり,理由がない。 ア道交法違反事件は,交通反則通告制度により,反則金の納付がされれば刑事事件として公訴を提起されないこととなるが,あくまで刑事事件であることに変わりはない。本件公文書は,このような刑事事件について作成された捜査書類であるから,「訴訟に関する書類」に該当する。 イ原告は,本件公文書は,反則金の納付の通告という行政目的から作成される文書であると主張する。しかし,反則金が納付されない場合は,公訴の提起があり得るのであって,その際に,本件公文書が,被疑事件の捜査書類として証拠となり得ることは自明である。 ウ原告は,反則金の納付によって,本件公文書が行政文書に変じたとも主張するが,反則行為事案の資料として用いられた,刑事事件の捜査過程で作成された文書が,行政文書に変化することはあり得ない。 (原告の主張)交通事件原票は,以下のとおり,「訴訟に関する書類」にあたらない。 すなわち,道交法違反事件では,違反者による反則金の納付により,公訴の提起又は家庭裁判所の審判といった刑事手続によることなく,行政上の手続として事件を終了させる制度である交通反則通告制度がある。同制度は,反則者に対し,反則金納付の通告をすることとしているが,同通告は,反則者が,反則金の納付を行うか否かの判断をするための資料を提供する目的から行われるものであり,行政上の措置である。そうであれば,交通事件原票は,反則金を納付すべきか否かの判断資料を反則者に提供するために作 反則金の納付を行うか否かの判断をするための資料を提供する目的から行われるものであり,行政上の措置である。そうであれば,交通事件原票は,反則金を納付すべきか否かの判断資料を反則者に提供するために作成される行政文書に過ぎないと解される。 また,本件条例41条1号が「訴訟に関する書類」を条例の適用除外文書と定めるのは,「訴訟に関する書類」の開示については,刑事訴訟法の制度に委ねるべきとの趣旨と解されるところ,交通反則通告制度に係る事案で反則金が納付された場合は,事件は行政手続として終了し,公訴提起の可能性は消滅する。そうすると,反則金が納付された事案に係る交通事件原票等が刑事訴訟法によって開示されることは,およそあり得ないことに帰する。しかし,交通事件原票等が,いかなる制度によっても開示されないとの結果は,憲法21条に定める知る権利に反する。さらに,被告本部長の主張を前提にすれば,反則金の納付後の交通事件原票等は,刑事確定記録と同様の性質を有することとなるのに,刑事確定訴訟記録法8条のような閲覧不許可決定に対する準抗告等の不服申立手続の保障はなく,制度として不十分である。そうであれば,交通事件原票等の開示の当否を,かかる不十分な制度に委ねることは,憲法21条及び31条に定める知る権利保護のための手続保障を欠くことになるから,本件公文書を行政文書と解すべきである。 (3) 争点③(本件公文書が一般的に「訴訟に関する書類」に該当する場合であっても,なお,交通事件原票中警察官の氏名等に関する情報部分が本件条例の適用の対象となるか)について(原告の主張)本件公文書が一般的に「訴訟に関する書類」にあたるとしても,交通事件原票中警察官の氏名等に関する情報は,それ自体として何ら「訴訟に関する書類」を構成するものではないから,これについては,なお,本件条 本件公文書が一般的に「訴訟に関する書類」にあたるとしても,交通事件原票中警察官の氏名等に関する情報は,それ自体として何ら「訴訟に関する書類」を構成するものではないから,これについては,なお,本件条例の適用があると解すべきである。そして,警察官の氏名等に関する情報は,違反事実等の非開示情報と,容易に,かつ開示請求の趣旨が損なわれない程度に分離することが可能であるから,警察官の氏名等に関する情報は,本件条例10条3項に基づき,「訴訟に関する書類」と分離して開示されるべきである。 (被告本部長の主張)原告は,交通事件原票に記載されている情報を,違反者の情報,違反行為の情報及び警察官の氏名等に関する情報とに分割することが可能であると主張する。しかし,一つの情報を細分化し,その個々の部分ごとに「訴訟に関する書類」への該当性を検討すべきではない。また,交通事件原票のうち,最上段の告知・交付日時欄から反則行為の種別欄に至るまでの記載は,特定の違反者が,特定の日時に,特定の場所において,特定の車両により,特定の反則行為に該当する道交法違反行為をし,これにつき,特定の警察官が違反者に対して,告知書類を交付したという情報を記録したものであるから,全体として一つの情報である。したがって,交通事件原票は,一体として「訴訟に関する書類」にあたるから,これを細分化し,個別に開示を検討すべきではない。 (4) 争点④(警察官の氏名等に関する情報が,本件条例10条2項3号に定める情報に該当するか)について(被告本部長の主張)警察官の氏名等に関する情報が開示されれば,道交法違反被疑事件の捜査に従事した警察職員が特定されることになる。そのような場合に,当該特定の警察職員及びその家族が,警察に反感を抱く者等からの非難あるいは誹謗中傷等を受けることが予想され,実際にも, 違反被疑事件の捜査に従事した警察職員が特定されることになる。そのような場合に,当該特定の警察職員及びその家族が,警察に反感を抱く者等からの非難あるいは誹謗中傷等を受けることが予想され,実際にも,嫌がらせや脅迫等が相当数発生している。そうであれば,警察官の氏名等に関する情報が開示されることにより,当該特定の警察職員の私生活の平穏が脅かされるおそれがあるから,警察官の氏名等に関する情報は,本件条例10条2項3号に該当し,開示の対象とはならない。 (原告の主張)警察官の氏名等に関する情報が開示され,その結果,道交法違反被疑事件の捜査に従事した警察職員が特定されることとなったとしても,当該警察職員が何らかの攻撃の対象となる可能性は低く,また,その実例も少ない。したがって,直ちに,当該警察職員の私生活の平穏が害されるおそれがあるとはいえない。また,本件での警察官の氏名等に関する情報は,行政警察活動に関する情報であるから,原則として開示されるべきであり,非開示とすべき明確な理由は見あたらない。このほか,警察官の氏名等に関する情報は,告知書によって,すでに公開されている。以上からすれば,警察官の氏名等に関する情報が,本件条例10条2項3号に該当しないことは明らかである。 (5) 争点⑤(本件裁決が,原告の開示請求から1年7か月を経過した後にされたことが裁決固有の瑕疵にあたるか)について(原告の主張)開示請求後公文書の開示等の決定までの期間を限定した本件条例14条1項,2項に照らすと,原告の開示請求から1年7か月を経過した後に本件裁決がされたことは,裁決固有の瑕疵にあたる。 (被告委員会の主張)本件条例14条1項,2項は,実施機関(原処分庁)の開示等の決定の期間に関する規定であって,被告委員会による本件裁決に適用されるものではない。そして,裁決 固有の瑕疵にあたる。 (被告委員会の主張)本件条例14条1項,2項は,実施機関(原処分庁)の開示等の決定の期間に関する規定であって,被告委員会による本件裁決に適用されるものではない。そして,裁決期間の遅延は,不作為の違法確認訴訟(行政事件訴訟法3条5項)の場合を除いては審理の対象となり得ず,裁決固有の瑕疵に該当しない。 また,被告委員会は,原告からの審査請求を平成14年2月22日に受理し,同年3月7日,審査会に諮問して,同年12月27日,審査会から答申を受け,その後,本件公文書が「訴訟に関する書類」に該当するかに関し,慎重な審理,調査等を重ね,答申を受けてから約7か月後の平成15年8月1日に本件裁決を行ったものであり,この程度の期間を要したことは何ら違法ではない。 (6) 争点⑥(本件裁決が,本件原処分において理由とされていない本件条例41条1号を理由として原告の審査請求を棄却したことが,裁決固有の瑕疵にあたるか)について(原告の主張)本件裁決が,本件原処分の理由とは全く別個の本件条例41条1号を理由として原告の審査請求を棄却したことは,公開を義務とした本件条例10条2項に違反し,公開を受ける原告の利益を一方的に奪うもので,憲法31条,21条1項,本件条例9条にも違反し,裁決固有の瑕疵にあたる。 (被告委員会の主張)原告の主張は争う。被告委員会のような審査庁は,独自の立場で独自に審査する機関であり,その審査の範囲は審査請求の全般に及ぶから,原処分と異なる理由によって審査請求を棄却することができる。また,行政不服申立制度は,国民の権利・利益の保護救済を図る制度であると同時に,行政の客観的な適正を確保する手段としての意義を有するから,理由を異にするにせよ,行政目的に照らして原処分を相当とするときは,原処分と異なる理由をもってこれを維持す 保護救済を図る制度であると同時に,行政の客観的な適正を確保する手段としての意義を有するから,理由を異にするにせよ,行政目的に照らして原処分を相当とするときは,原処分と異なる理由をもってこれを維持する裁決をしても違法ではない。 第3 当裁判所の判断 1 争点①(被告本部長が,本件原処分の通知書に付記されていない処分理由を追加して主張することが許されるか)について(1) 原処分に対する取消訴訟は,原処分の違法性一般の存否を判断するものであるから,原処分庁は,処分理由を差し替えることにより処分の同一性が失われ,あるいは理由付記制度の趣旨に著しく反するといった特段の事由のない限り,取消訴訟において,原処分の適法性を基礎づける一切の法律上及び事実上の主張をすることができると解される。 (2) 本件条例に基づく非開示決定は,当該1個の決定をもって,対象公文書につき完結的にその効果が及ぶと解され,これを基礎づける理由ごとに処分が異なるとは解されない。すなわち,本件原処分に付記された理由と異なる処分理由に差し替えることによって,本件原処分の同一性が失われるということはできず,このことは,追加主張された処分理由について,被告本部長が第1次的な判断権を行使したか否かによって左右されるものではない。 また,本件では,原処分庁である被告本部長が,本件条例15条1項に基づき,本件原処分の通知にあたって,その理由を付記しているが,かかる理由付記制度は,実施機関の判断の恣意を抑制し,開示請求者に対し不服申立ての便宜を与える趣旨のもので,この趣旨は,実施機関が理由付記を怠った場合に当該処分の取消事由となり得ることで一応担保されているといえ,取消訴訟において,付記理由とは異なる処分理由を追加的に主張することが本件条例15条1項の理由付記制度の趣旨に著しく反するとまでい 場合に当該処分の取消事由となり得ることで一応担保されているといえ,取消訴訟において,付記理由とは異なる処分理由を追加的に主張することが本件条例15条1項の理由付記制度の趣旨に著しく反するとまでいうことはできない。 (3) 以上のとおり,上記特段の事由は認められず,原処分に対する取消訴訟において,被告本部長が,本件原処分に付記されていない処分理由を追加的に主張することは許される。 2 争点②(本件公文書が,刑事訴訟法53条の2に規定する「訴訟に関する書類」に該当し,本件条例の適用が排除されるか)について交通事件原票及びその付属書類である本件公文書には,前記前提となる事実(2)のとおり,具体的な違反事実に加え,同違反事実の状況等に関する警察官等の報告及び違反者の供述が記載されているから,同公文書が,刑事事件である道交法違反事件の捜査書類として作成された書類であることは明らかである。そして,同公文書は,公判開廷前においては刑事訴訟法47条による開示が,公判係属中においては同法40条,270条等や犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律3条による開示が,刑事事件が確定した後においては,刑事訴訟法53条及び刑事確定訴訟記録法4条による開示が,それぞれ予定されている(以下,ここで掲げた法を「刑事訴訟法等」という。)。したがって,本件公文書は,刑事司法手続に関連して作成された「訴訟に関する書類」に該当するということができる。 本件のようないわゆる交通反則事案は,反則金の納付の通告を受けた違反者が,その反則金を納付すべき期間内に反則金を納付すれば,行政手続である交通反則事案として終了するのであるが,このことから,本件公文書が,もっぱら行政上の措置を目的として作成される行政文書であると解することはできないし,反則金の納付によっ を納付すれば,行政手続である交通反則事案として終了するのであるが,このことから,本件公文書が,もっぱら行政上の措置を目的として作成される行政文書であると解することはできないし,反則金の納付によって違反者が公訴の提起を確定的に免れても,このことにより,当初「訴訟に関する書類」であった公文書が,その性質を変じて行政文書になると解すべき根拠もない。反則金納付後の交通事件原票及びその付属書類の閲覧等については,刑事訴訟法等による立法政策に委ねられているというべきである。この争点に関する原告の前記第2,3(2)の主張は,違憲をいう点を含め,独自の見解に基づくものであって,採用できない。 よって,本件公文書は,本件条例41条1号により,本件条例による開示の対象とならない。 3 争点③(本件公文書が一般的に「訴訟に関する書類」に該当する場合であっても,なお,交通事件原票中警察官の氏名等に関する情報部分が本件条例の適用の対象となるか)について刑事訴訟法53条の2の文言からすれば,「訴訟に関する書類」とは,独立した一つの書類の全体を意味するものと解されるから,「訴訟に関する書類」にある個々の記載の開示については,当然に,刑事訴訟法等の規定によるべきであり,その記載を細分化し,個別に本件条例の適用の可否を検討すべきではない。したがって,本件公文書中の警察官の氏名等に関する情報それ自体が,およそ訴訟と関連性がないといえるかどうかはともかくとしても,それが「訴訟に関する書類」である交通事件原票に記載されている以上,その開示は,刑事訴訟法等の規定するところによるべきである。 原告は,交通事件原票にある記載を細分化した上で,個別の記載ごとに「訴訟に関する書類」に該当するか否かを検討し,本件条例10条3項により,警察官の氏名等に関する情報を他と分離して開示すべき である。 原告は,交通事件原票にある記載を細分化した上で,個別の記載ごとに「訴訟に関する書類」に該当するか否かを検討し,本件条例10条3項により,警察官の氏名等に関する情報を他と分離して開示すべきであると主張するが,上記のとおり,そもそも,警察官の氏名等に関する情報の記載部分も「訴訟に関する書類」に該当するのであり,原告の主張は採用できない。 4 争点⑤(本件裁決が,原告の開示請求から1年7か月を経過した後にされたことが裁決固有の瑕疵にあたるか)について原告は,本件条例14条1項,2項に照らし,本件裁決が原告の開示請求から1年7か月を経過した後にされたことが,本件裁決固有の瑕疵にあたると主張するが,上記各条項は,実施機関が原処分として行う開示等の決定につき期間を制限した規定であって,原告の主張はこの点において失当といわざるを得ない。のみならず,行政不服審査法に基づく裁決が遅延していることは,不作為の違法確認の訴え(行政事件訴訟法37条)の理由とはなり得ても,そのことが,裁決固有の瑕疵にあたると解することは困難である。なお,本件においては,前記前提となる事実(4)のとおり,被告委員会から審査会への諮問後答申まで9か月以上を要し,答申を受けてから約7か月後に本件裁決がされているところ,本件事案の難度に照らすと,本件裁決が不当に遅延してなされたと評価することもできない。 5 争点⑥(本件裁決が,本件原処分において理由とされていない本件条例41条1号を理由として原告の審査請求を棄却したことが,裁決固有の瑕疵にあたるか)について争点①に関する前記1の判示したところと同様,本件裁決が,本件原処分において理由とされていない本件条例41条1号に該当する事実(本件公文書が「訴訟に関する書類」に該たること)を理由として原告の審査請求を棄却したことは,何ら 示したところと同様,本件裁決が,本件原処分において理由とされていない本件条例41条1号に該当する事実(本件公文書が「訴訟に関する書類」に該たること)を理由として原告の審査請求を棄却したことは,何ら裁決固有の瑕疵にあたるものではない。この争点に関する原告の主張は,違憲をいう点を含め,採用できない。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,いずれも理由がないのでこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第1部裁判長裁判官原啓一郎裁判官澤井真一裁判官塚原洋一(別紙)開示請求文書目録 1 告知書番号70-○○○○○7に係る公文書ア交通事件原票イ 「違反場所の訂正について」と題する書面 2 告知書番号70-○○○○○8に係る公文書ア交通事件原票イ道路交通法違反被疑事件捜査報告書ウ 「交通反則告知書の訂正について」と題する書面

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る