昭和52(行ス)6 済生会中央病院緊急命令取消

裁判年月日・裁判所
昭和53年11月16日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主   文 本件抗告を却下する。        理   由  抗告申立の趣旨及び理由は、別紙記載の通りである。  労働組合法第二十七条第八項の規定に則り、受訴裁判所が当該労働委員会の申立 により発した

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判決文本文4,787 文字)

主文 本件抗告を却下する。 理由 抗告申立の趣旨及び理由は、別紙記載の通りである。 労働組合法第二十七条第八項の規定に則り、受訴裁判所が当該労働委員会の申立により発した所謂緊急命令に対して、使用者は抗告を申立てる事が出来ないものと解されているが、それは労働組合法上かかる緊急命令に対して抗告権を認めた規定がなく、受訴裁判所は、当事者の申立により又は職権で一旦発した緊急命令を取消変更することが出来るので、特に抗告の申立を認める必要がないからである。 ところで、本件におけるごとく、使用者がなした緊急命令取消の申立を却下した決定に対しても、抗告を申立てる事が出来ないものと解すべきである。蓋し、この場合に抗告申立を認めれば、緊急命令に対して抗告を認めるのと同一の結果になるからである(本件においても抗告人は緊急命令の違憲、違法を主張している。)。 よつて、本件抗告は不適法であるからこれを却下する事として、主文の通り決定する。 (裁判官高津環横山長三井哲夫)(別紙)抗告の趣旨原決定を取消す。 東京地方裁判所が昭和五二年(行ク)第七号緊急命令申立事件につき、同年二月二二日付でなした緊急命令を取消す。 旨の裁判を求める。 抗告の理由一原決定に至る経過(一) 申立外全済生会労働組合中央病院支部は、抗告申立人を相手どり、被申立人東京都地方労働委員会に不当労働行為救済申立を行い、同委員会昭和五一年(不)第八一号事件として審査されたところ同年一一月一六日付救済命令が発せられた。 (二) 抗告申立人は、右救済命令が明らかに違法な内容の命令であるので、被申立人を相手どり東京地方裁判所に救済命令取消の行政訴訟を提起し、現在同庁昭和五一年(行ウ)第二〇六号事件として係属中である。 (三) 而して東京地 右救済命令が明らかに違法な内容の命令であるので、被申立人を相手どり東京地方裁判所に救済命令取消の行政訴訟を提起し、現在同庁昭和五一年(行ウ)第二〇六号事件として係属中である。 (三) 而して東京地方裁判所は、右救済命令に関し、東京都地方労働委員会よりの申立に基き、昭和五二年二月二二日付を以て同年(行ク)第七号事件の緊急命令を発した。(主文左記の通り) 主文 被申立人及び被申立人の支部東京都済生会中央病院を原告とし、申立人を被告とする当庁昭和五一年(行ウ)第二〇六号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決確定まで、被申立人は、申立人が被申立人の支部東京都済生会中央病院に対して昭和五一年一一月一六日付でなした都労委昭和五一年(不)第八一号事件の不当労働行為救済命令主文第一項に従い、全済生会労働組合中央病院支部所属の組合員に対し、昭和五一年度賃金引上を昭和五一年四月一日に遡つて実施しなければならない。 (四) 然しながら右緊急命令は、後記の如く種々の点で違法なこと明白な救済命令の内容を、そつくり全面的に履行するよう命令されているが、いかに緊急命令が暫定的処分であるとはいえ、このような重大・明白な違法(しかも単なる事実誤認でなく、憲法及び労働法に牴触する違法)を含む救済命令は、たとえ緊急命令の形でも、これが履行を命令されるべきものではないので、抗告申立人は直ちに緊急命令の取消申立を東京地方裁判所(原審)に行つたが、原審は別紙添付の加き、理由にならぬ理由を掲げて取消申立を却下した。そこで本件即時抗告申立に及ぶ次第である。 二原決定の違憲・違法(一) 救済命令の違憲・違法(1) 東京都地方労働委員会の救済命令(別紙添付)は、違憲・違法な内容である。その詳細は後に抗告理由補充書を以て詳述するが、端的にいえば使用者たる抗告申立人 憲・違法(一) 救済命令の違憲・違法(1) 東京都地方労働委員会の救済命令(別紙添付)は、違憲・違法な内容である。その詳細は後に抗告理由補充書を以て詳述するが、端的にいえば使用者たる抗告申立人の意思によらず、又はその意思表示を無視して抗告申立人の財産を奪う内容の救済命令である。即ち、昭和五一年度賃金引上要求をめぐる交渉過程に於て、抗告申立人は前提条件(妥結日より実施という条件)が充たされる場合には或る金額の賃金引き上げを実施するという回答を為した。斯かる場合前提条件と賃金引き上げ金額とが一体をなす不可分一個の意思表示であることは、一般的にも自明であるのみならず、実施時期の不明の金員支払いというものはありえないから両者が不可分一体の内容であることは一層明確である。而して賃金引き上げは、引き上げが実施されるならば、引き上げられた差額分だけ使用者からの金員出捐が増大するのであり、金員の支出は使用者の有する財産の処分行為であるから、いかなる場合でも労使の合意(使用者の承諾)があつてはじめて実施され得るものであることは自明の理である。 (2) 然るに本件の場合、使用者からの右前提条件つき金額回答に対し、労働組合は回答金額の方は妥当としたが、前提条件は承知できないものとし、右前提条件を除く無条件で右金額を支出すべきであるという態度を表明した。このように偶々金額面では双方の主張が一致しているように見えても使用者は条件付でその金額を出すと意思表示し、労働組合は無条件でその金額を出せと意思表示しているのであるから、両者の間に意思の合致が存在しないのは明白である(ちなみに東京都地方労働委員会の救済命令書も、「今日に至るも全面的妥結に至つていない」(命令書七頁(イ))と認定している。)。 (3) それにも拘らず驚くべきことに、東京都地方労働委員会の救済命 る(ちなみに東京都地方労働委員会の救済命令書も、「今日に至るも全面的妥結に至つていない」(命令書七頁(イ))と認定している。)。 (3) それにも拘らず驚くべきことに、東京都地方労働委員会の救済命令は、右労使の応答の中から、偶々金額部分のみ合致した点を切離して取り出し金額に於て合致しているのだから、この金額通りの賃金引き上げを実施せよという救済命令を発したのである。斯くして本件救済命令は、使用者が労働組合の要求(無条件支払い)に合意をしていないにも拘らず、使用者の意思によらずしてその財産中から右賃金引き上げ額の支給を命ずるという使用者の意思の自由と、財産権不可侵の自由とを侵害する命令なのである(換言すれば、使用者の表示した条件付での金員支払のうち、条件の部分に関する使用者の意思を、全く無視したとも云える。)。 (4) 更にいえば、このように使用者の承諾の意思表示をまつことなしに、使用者の懐中から勝手に金員を引き出させるものであるならば、賃金引き上げは労働組合の要求だけあれば、それで足りることとなり、本来労使間の合意に到達する為に行われる団体交渉も不必要に帰するに等しく、これでは団結権・団体交渉権の軽視とすらいえるものである(ちなみに、労働委員会における不当労働行為救済申立事件に於て、使用者が賃上げ要求に何らの応答もせず要求を無視したような、極端な団体交渉拒否の不当労働行為が認定された場合でも、救済命令の内容は、使用者が労働組合と誠実に団交を行い、合意に達するような努力することを命令するのみであり、直ちに労働組合の要求額通り支払うよう使用者に命令するようなことは全くありえない。これを本件と対比すれば、本件救済命令がいかに破格、異常な命令であるかが容易に看取されるであろう。)。 (二) 緊急命令の違憲・違法右の如く本件救済命令は、憲法第 するようなことは全くありえない。これを本件と対比すれば、本件救済命令がいかに破格、異常な命令であるかが容易に看取されるであろう。)。 (二) 緊急命令の違憲・違法右の如く本件救済命令は、憲法第二九条及び第一九・一三条に定められている使用者の財産権不可侵及び意思表示の自由を、正面から侵害した点で、単なる労働組合法違反・権限踰越の違法に止らず、違憲の命令である。 斯様に違憲という重大且明白な瑕疵のある救済命令は、行政処分が本来有すべき適法性の推定その他の効力を有するものではなく、従つて緊急命令にも親しまないものというべきである。 そこで本件緊急命令申立に対し、抗告申立人は右の理由をあげて不当を主張したが、原審は緊急命令を発せられた。右緊急命令は、救済命令の内容を全面的に履行を命じた点で、結局右救済命令のもつ違憲・違法性をそのまゝ継承したものといえる。 (三) 原決定の違憲・違法(1) 原審が、右の如き違憲・違法の救済命令を全面的に支持する違憲・違法の緊急命令を発したので、抗告申立人は直ちに原審に緊急命令取消申立(昭和五二年(行ク)第三二号)を行つた。これに対し原審は、抗告申立人の「主張は違憲をいう部分も見受けられるが、その実質は本件救済命令と、これに従うことを命じた緊急命令の違法をいうに帰するものと解せられる」と為した上、本件の実体に関しては「今後本案の審理判断に俟つべきものというほかはない」「現段階においては……救済命令の主文が一応理由づけられると見得る」との判断に立つて、取消申立を却下している。 (2) 取消申立の却下決定は、「救済命令の主文が一応理由づけられると見得る」と判断することにより、前掲した救済命令及び緊急命令の違憲・違法な内容をそのまま容認し継承したという点が第一の問題である。即ち原決定は、本件五一年度賃金引上交渉 の主文が一応理由づけられると見得る」と判断することにより、前掲した救済命令及び緊急命令の違憲・違法な内容をそのまま容認し継承したという点が第一の問題である。即ち原決定は、本件五一年度賃金引上交渉において労働組合が「額について同申立人の提案を受諾したにも拘らず、賃上実施時期についての提案を受諾しなかつたとして、同申立人が賃上げを認めなかつた」という点につき、斯かる明白な意思の不合致という客観的事実を、何ら顧慮することなく(「そのことの合理性、その時期について従来の慣行を変えることの合理性等が問題となり得ると考えられる」などと、全く焦点の外れた論議をするのみで)、それにより使用者の財産権と意思の自由が侵される事態を容認したのは、前記憲法の法条に牴触するものである。 (3) そもそも却下決定は、抗告申立人の主張に対し、「違憲をいう部分も見受けられるが、その実質は……違法をいうに帰するものと解せられる」などという解釈をしているが、これは抗告申立人の主張の誤解でなければ、憲法判断の逃避であるという他はない。使用者の意思(処分行為)によらずして、又は使用者の表明した意思を無視して、金員支出を強いられその財産を奪われることは、単なる違法たるに止まらず、まさに憲法第二九条の規定そのものに牴触する行為であり、その点の指摘は決して単なる違法主張に帰するということはできない筈である。 のみならず本件は、地方労働委員会という行政庁、公務員の行政命令行為によつて、右の如き使用者の財産権の侵害が生じた事案である。従つて民法第九〇条等を介し間接的にしか憲法と結合されない一般私法関係におけると異り、行政庁、公務員は憲法第九九条に基き、直接憲法遵守の義務を負うものであるから、本件がまさに違憲そのものの問題であるのは明白である。原決定の判断はこの点で、スタートから誤つ 般私法関係におけると異り、行政庁、公務員は憲法第九九条に基き、直接憲法遵守の義務を負うものであるから、本件がまさに違憲そのものの問題であるのは明白である。原決定の判断はこの点で、スタートから誤つているという他はない。御庁に於て斯かる実体に即した御判断を仰ぎたく、本抗告に及ぶものである。

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