令和7年11月26日判決言渡 令和6年(行ケ)第10112号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和7年9月8日判決 原告ズーム・コミュニケーションズ・インコーポレイテッド(審決時の商号ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ・インコーポレイテッド) 同訴訟代理人弁護士城山康文 同大石裕太 同佐々木公樹 同訴訟復代理人弁護士早田尚貴 同訴訟代理人弁理士横川聡子 同高橋友和 被告株式会社ズーム 同訴訟代理人弁護士林いづみ 同堀籠佳典 同服部謙太朗 同訴訟代理人弁理士豊崎玲子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由 第1 請求 特許庁が取消2022-300479号事件について令和6年8月30日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 被告は、別紙1「本件商標目録」記載の商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である。本件商標の指定商品には第9類「電子計算機用プログラム」が含まれる。 1 特許庁における手続の経緯等⑴ 被告は、別紙1「本件商標目録」記載の商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である。本件商標の指定商品には第9類「電子計算機用プログラ ム」が含まれる。(甲1、2)⑵ 原告は、令和4年、本件商標の指定商品中、第9類「電子計算機用プログラム(音響機器用の電子計算機用プログラム,ビデオレコーダーの操作用の電子計算機用プログラム,動画の撮影・編集又は音響・音楽の制作・録音・編集のための電子計算機用プログラム,動画の撮影・編集のためのスマート フォン用電子計算機用プログラム,音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラムを除く)」(以下「本件指定商品」という。)について、登録を取り消す、審判費用は被請求人(被告)の負担とする、との審決を求め、商標登録取消審判を請求した(取消2022-300479号。以下、この審判請求を「本件審判請求」といい、本件審判請求に基づく 手続を「本件審判手続」という。)。本件審判請求の予告登録日は同年6月20日である。 ⑶ 特許庁は、令和6年8月30日、「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は同年9月9日に原告に送達された(附加期間90日)。 ⑷ 原告は、令和6年12月26日、本件訴えを提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由の要旨は、後記⑴ないし⑸とおりである。 なお、被告(被請求人)は、本件審判手続において、本件商標の指定商品中に「電子計算機用プログラム」はあるものの、本件指定商品の記載はなく、特許庁における過去の登録事例や商品・役務審査基準、商品・サービス国際分類 表等にも本件指定商品は見当たらず、本件指定商品は明らかに政令で定める商品及 」はあるものの、本件指定商品の記載はなく、特許庁における過去の登録事例や商品・役務審査基準、商品・サービス国際分類 表等にも本件指定商品は見当たらず、本件指定商品は明らかに政令で定める商品及び役務の区分に従ったものではなく、本件指定商品の記載が内容及び範囲において不明確であるため、被告において、対象商品を特定することができず、使用の立証が困難であると主張したが、特許庁は、本件審判手続の途中の段階において、合議体の暫定的な見解として、本件指定商品の内容は明確であると 容易に判断できるとの見解を示し、本件審決においては、被告の上記主張に対する判断を示さなかった。 ⑴ 被告(被請求人)が提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。 ア審判段階の乙7(本件訴訟の甲61)は、被請求人が、AppStoreプレビューのウェブページの令和4年(2022年)1月8日におけるアーカイ ブと主張するものであり、1葉目の右上に「JAN」、「08」及び「2022」の記載、左上に「AppStoreプレビュー」の記載、その下に、「このAppは、iPhoneおよびiPadのAppStoreでのみご利用いただけます。」の記載、その下に、別紙使用商標目録記載の商標(以下「使用商標」という。)の記載、その右に、「HandyRecorderPRO」の記載、その下に、「ZOOM Corporation」の記載がある。 また、同号証の2葉目の下部において、「販売元」の欄に「ZOOMCORPORATION」の記載、「互換性」の欄に「iPhone」及び「iPad」の記載、「価格」の欄に「¥250」の記載がある。 ここで、「ZOOMCorporation」及び「ZOOMCORPORATION」は、商 標権者の社名を欧文字で表記した 及び「iPad」の記載、「価格」の欄に「¥250」の記載がある。 ここで、「ZOOMCorporation」及び「ZOOMCORPORATION」は、商 標権者の社名を欧文字で表記したものと解される。 そうすると、「HandyRecorderPRO」(以下「使用商品」という。)は、被告が販売するiPhone又はiPad用のアプリであり、被告は、令和4年1月8日に、AppStoreプレビューのウェブページにおいて、使用商標を付して、使用商品に関する情報を公開した。 イ審判段階の乙9(本件訴訟の甲63)は、使用商品のオペレーションマ ニュアルを抜粋したものとされ、1葉目(1頁)の上部に、「HandyRecorderPROforiOS/iPadOSVersion 1.0 オペレーションマニュアル」の記載があり、8葉目(33頁)に、「ファイルをメールに添付して送信する」のタイトルの下に、「録音したファイルをメールに添付して送ることができます。 HandyRecorderPROでは、iOS/iPadOSの共有機能を使用してメールなど 様々なアプリケーションにファイルを共有することができます。(→P36)」の記載、及び、「1.SHARE画面で[Email]をタップする 2.composeをタップするメッセージが作成され、録音ファイルが添付されます。3. 宛先、件名、本文を入力し、[送信]をタップする録音ファイルを添付されたメッセージが送信されます。」の記載がある。 これらの記載から、使用商品は、「録音したファイルをメールに添付し」、「宛先、件名、本文を入力」して、「録音ファイルを添付されたメッセージ」を「送信」するための機能、すなわち電子メールを送信するための機能を有す 使用商品は、「録音したファイルをメールに添付し」、「宛先、件名、本文を入力」して、「録音ファイルを添付されたメッセージ」を「送信」するための機能、すなわち電子メールを送信するための機能を有することが理解できる。 ⑵ 使用商品について 使用商品は、被告が販売するiPhone又はiPad用のアプリ、すなわち、コンピュータプログラムであり、iPhone、iPadは、それぞれ、スマートフォン、タブレット型コンピュータであって、いずれも電子計算機に含まれる。 また、上記⑴イのとおり、使用商品は電子メールを送信するための機能を有する。 そうすると、使用商品は、電子メール用の電子計算機用プログラムであ るといえる。 そして、電子メール用の電子計算機用プログラムは、本件指定商品から除外されている「音響機器用の電子計算機用プログラム」、「ビデオレコーダーの操作用の電子計算機用プログラム」、「動画の撮影・編集又は音響・音楽の制作・録音・編集のための電子計算機用プログラム」、「動画の撮影・ 編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」、「音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」のいずれとも明らかに異なるものである。 よって、使用商品は、本件審判請求に係る指定商品の範ちゅうに属する商品であると認められる。 ⑶ 使用商標について使用商標は、波形状の図形及びその右下の「PRO」の欧文字からなる部分(以下「波図形部分」という。)の下に、形状が本件商標と同様であって、文字色が青色の文字(以下「文字部分」という。)を配してなるものであるといえる。 そして、前記⑴アのとおり、使用商標は、その右の「HandyRecorderPRO」の記載及びその下の「ZOOMCor 字(以下「文字部分」という。)を配してなるものであるといえる。 そして、前記⑴アのとおり、使用商標は、その右の「HandyRecorderPRO」の記載及びその下の「ZOOMCorporation」の記載を伴って使用されているから、波図形部分は、アプリの名称である「HandyRecorderPRO」を表し、文字部分は、「ZOOMCorporation」に由来する「ZOOM」の欧文字であると理解できる。 そうすると、文字部分は波図形部分から独立した部分として認識されるといえる。 よって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一であると認められる。 ⑷ 使用行為、使用時期について前記⑴アのとおり、被告は、令和4年1月8日に、AppStoreプレビュー のウェブページにおいて、使用商標を付して、自らが販売するiPhone又は iPad用のアプリである使用商品に関する情報を公開したことが認められる。 そして、当該情報は、使用商品に関する広告であり、被告は、これを電磁的方法により提供する行為を行ったといえる。 また、当該行為を行った令和4年1月8日は、要証期間(令和元年6月 20日~令和4年6月19日)(本件審判請求の登録前3年以内)に含まれる。 ⑸ 結論前記⑵ないし⑷によれば、本件商標の商標権者である被告は、要証期間に日本国内において、本件指定商品の範ちゅうに属する使用商品に関する 広告を、本件商標と社会通念上同一の商標を付して、電磁的方法により提供した行為を行ったことが認められ、この使用行為は、商標法2条3項8号に該当する。 したがって、被告は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件指定商品の範ちゅうに属する商品について、本件商標と社会通 念上同一の 使用行為は、商標法2条3項8号に該当する。 したがって、被告は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件指定商品の範ちゅうに属する商品について、本件商標と社会通 念上同一の商標と認められる商標を使用したことを証明した。 したがって、本件商標の登録は、その請求に係る指定商品について、商標法50条の規定により、取り消すことはできない。 3 取消事由原告が主張する取消事由は、商標の使用に関する本件審決の判断の誤りであ るが、具体的には、以下の点を取消事由として主張している。 ⑴ 取消事由1本件指定商品についての使用に該当するとの判断の誤り⑵ 取消事由2使用商標が本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当するとの 判断の誤り 第3 当事者の主張 1 取消事由1(本件指定商品についての使用に該当するとの判断の誤り)について〔原告の主張〕⑴ 使用商品は電子メールを送信するための機能を有していないこと ア本件審決は、被告のソフトウェア商品である「HandyRecorderPRO」を使用商品として、これが本件指定商品の範ちゅうに属する商品であると判断しており、被告も他の商品に関する使用の主張立証はしていない。 甲63(審判段階の乙9。甲63は使用商品に係るオペレーションマニュアル(取扱説明書)の抜粋であり、その全体は甲31である。以下、こ のオペレーションマニュアルを「本件マニュアル」という。)には、「HandyRecorderPRO」とともに「HandyRecorder」の商品名も表示されており、これらは別個の商品である。 本件審決は、前記第2の2⑴イのとおり、本件マニュアルの33頁の記載を、使用商品(HandyRecorderPRO)が電子メ corder」の商品名も表示されており、これらは別個の商品である。 本件審決は、前記第2の2⑴イのとおり、本件マニュアルの33頁の記載を、使用商品(HandyRecorderPRO)が電子メール送信機能を有して いることの根拠として挙げているが、同頁に掲載されている3枚のキャプチャ画像は、使用商品ではなく、「HandyRecorder」のものである。使用商品の説明は本件マニュアルの36頁に記載されているところ、同頁に掲載されている使用商品の画像には「Email」の項目は存在しない。 したがって、本件審決には事実誤認があり、本件マニュアルの33頁の 記載からは、使用商品が電子メール送信機能を有していることは証明されていない。 イ本件マニュアルの33頁の「録音したファイルをメールに添付して送ることができます。HandyRecorderPROでは、iOS/iPadOSの共有機能を使用してメールなど様々なアプリケーションにファイルを共有することが できます。(→P36)」との記載からも明らかなとおり、使用商品は、あ くまでメールアプリなどの他のアプリにファイルを共有する機能を有するにすぎないのであって、実際にファイルが添付されたメールを送信するのは、ファイルを渡す側である使用商品ではなく、ファイルを共有された側である他のアプリである。 本件マニュアルの36頁に掲載されている使用商品のキャプチャ画像 に示されているとおり、使用商品において録音したファイルを電子メールに添付して送信しようとする場合、当該アプリ内の「Others」の項目をタップし、画面下半分に表示される複数の共有先のアプリの候補からメールアプリを選択してから、当該メールアプリにおいてファイルが添付された電子メールを送信することになる リ内の「Others」の項目をタップし、画面下半分に表示される複数の共有先のアプリの候補からメールアプリを選択してから、当該メールアプリにおいてファイルが添付された電子メールを送信することになるのであって、使用商品の機能によって電 子メールを送信するのではないことが明らかである。 また、本件マニュアルの33頁の下部の「MEMO」欄の記載にあるとおり、使用商品がインストールされている端末内にメーラー(電子メールの作成・閲覧や送受信を行うためのソフトウェア、アプリ)が存在しなければ、そもそも電子メールを一切送信することができないのであって、この ことからも、使用商品は、それ単体では電子メールを送信することができない、すなわち電子メール送信機能を有していないことが分かる。 ウ被告は、後記〔被告の主張〕⑵イのとおり、使用商品が電子メールを送信するための機能を有する根拠として、使用商品のユーザーが使用商品の操作画面から退出することなく、使用商品を操作するだけで録音したファ イルをメールに添付して送ることができると主張する。 しかし、電子メールを送信する際、使用商品のユーザーは、使用商品の操作画面内で送信の操作が完結することはなく、この点で被告の主張は前提の事実関係から誤っている。すなわち、使用商品により録音されたファイルを電子メールに添付して送信する際、iOS/iPadOSの共有機能により、 使用商品の操作画面とは別に、iPhoneのメールアプリの操作画面が呼び出 され、ユーザーは当該メールアプリの操作画面を操作してメールを送信する。そして、これによって送信された添付ファイル付きのメールは、送信後、iPhoneのメールアプリ内の送信済みメールボックスに保存される。 使用商品は、録音されたファイルを、iOS てメールを送信する。そして、これによって送信された添付ファイル付きのメールは、送信後、iPhoneのメールアプリ内の送信済みメールボックスに保存される。 使用商品は、録音されたファイルを、iOS/iPadOSの共有機能によりメールアプリへ渡しているにすぎず、当該メールアプリにおいて、録音ファイ ルがメールに添付されて送信されるのであり、録音ファイルをメールに添付するプロセスも、当該メールを第三者に送信するプロセスも、全てデータが渡された先のメールアプリが実行しているのであり、使用商品が録音ファイルをメールに添付して送信する機能を有していると評価することはできない。 エなお、本件審決においては明示的に判断されていないが、被告が本件審判手続段階で主張していた、使用商品が「iCloud」や「SoundCloud」等のクラウドサービスへのファイルアップロード機能を有するとの点についても、使用商品がインターネットその他の通信ネットワークのユーザー間で行われる通信用の機能を有していることの根拠にはならない。 使用商品において録音されたファイルが「iCloud」にアップロードされるためには、「iCloudDrive」が必要不可欠となるのであって、使用商品のみによって「iCloud」へのファイルのアップロードが可能となるものではなく、アップロード後のユーザー間のファイルの共有も、使用商品によって実現される機能ではない。 また、「SoundCloud」とはSoundCloud社が運営する音声ファイル共有サービスであるところ(甲41、42)、本件マニュアルの31頁の記載によれば、使用商品において録音されたファイルが「SoundCloud」にアップロードされるためには、SoundCloudのアカウントを取得する必要があ (甲41、42)、本件マニュアルの31頁の記載によれば、使用商品において録音されたファイルが「SoundCloud」にアップロードされるためには、SoundCloudのアカウントを取得する必要があるのであって、当該アカウントを利用してファイルがクラウドにアップロー ドされる。そして、ユーザー間の当該ファイルの共有は、SoundCloud社が 提供するアカウントを通じて、同社のアプリケーションやサービスにより実現されるのであって、使用商品の機能により実現されるものではない。 したがって、使用商品自体は、「iCloud」や「SoundCloud」におけるユーザー間の通信用の機能を有していない。 オ以上のとおり、使用商品は、電子メールを送信するための機能を有さず、 また、その他の「音響機器用の電子計算機用プログラム」、「ビデオレコーダーの操作用の電子計算機用プログラム」、「動画の撮影・編集又は音響・音楽の制作・録音・編集のための電子計算機用プログラム」、「動画の撮影・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」、「音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」以外のプ ログラムに該当するような機能も有していない。 ⑵ 使用商品は、「音響・音楽の制作・録音・編集のための電子計算機用プログラム」及び「音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」に該当する商品であること使用商品は、音声などを録音する携帯型の機器を表す「ハンディレコーダ ー」(甲28)の語を欧文字で表した語を名称に使用しており、AppStoreにおいても、冒頭で「HandyRecorderPROは拡張性を大幅に拡大したオーディオレコーディングアプリです。」と記載されており(甲48 文字で表した語を名称に使用しており、AppStoreにおいても、冒頭で「HandyRecorderPROは拡張性を大幅に拡大したオーディオレコーディングアプリです。」と記載されており(甲48、61)、録音用のアプリであると理解される。また、AppStoreにおける使用商品に関する説明の記載(甲48、61)、被告のウェブサイトにおける使用商品の特徴に 関する記載(甲30)からしても、使用商品は、音楽の録音や編集のために用いられる商品であることが分かる。 また、AppStoreでは、使用商品は「ミュージック」の分類に該当するアプリとされており(甲61)、被告自身が、使用商品の主たる機能が「音楽の検索、視聴、録音、演奏、作曲などをインタラクティブに行えるApp(アプリ)」 であると認識し、これを「ミュージック」のカテゴリに分類し、使用商品を 提供している。 さらに、取引者・需要者等によるウェブサイト記事等における使用商品の紹介(甲49、50、83、84)においても、使用商品は音楽の録音のアプリである旨の記載がされている。 したがって、使用商品の機能や販売態様、需要者等による認識からすれば、 使用商品は、本件指定商品から除外されている「音響・音楽の制作・録音・編集のための電子計算機用プログラム」及び「音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」に該当する商品であるから、本件指定商品の範ちゅうに属するものではない。 なお、作成したファイルをクラウドストレージや他のアプリと共有する機 能は、「録音」、「音楽制作」、「編集」のためのアプリと称するものに広く備わっている機能であるから、使用商品が、他のアプリやクラウドサービスとファイルを共有する機能があったとしても、使用商品は「 能は、「録音」、「音楽制作」、「編集」のためのアプリと称するものに広く備わっている機能であるから、使用商品が、他のアプリやクラウドサービスとファイルを共有する機能があったとしても、使用商品は「音響・音楽の制作・録音・編集のための電子計算機用プログラム」及び「音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」に含まれるものであ る。 〔被告の主張〕⑴ 取消対象商品についてア取消対象商品が不明確であるため、本件審判請求は却下されるべきであること 本件審決が本件審判請求を認めなかったことは正当であるが、被告が本件審判手続において主張したとおり、本件指定商品は、「電子計算機用プログラム」から除かれるかっこ書きの中の商品の範囲が明らかでないから、本件指定商品の範囲も明らかでなく、原告は本件指定商品を具体的に特定しておらず、取消対象商品が不明確であるから、本件審判請求は却下され るべきであった。 商標法50条1項に基づき取り消すことについて審判を請求できる商標登録は、「その指定商品又は指定役務に係る商標登録」であるから、請求人は、取消審判を請求する商標登録の指定商品又は役務を具体的にかつ特定し明確に記載しなければならない。 しかし、本件審判請求に係る請求書において、原告が取消しを求める指 定商品として記載した本件指定商品については、本件商標の指定商品中に「電子計算機用プログラム」はあるものの、本件審判請求に係る限定的な指定商品の記載はない。そのため、原告が取消を望む商品が「電子計算機用プログラム」の一種であることは理解できるものの、本件審判請求に係る指定商品がいかなる商品なのか、その商品範囲が不明である。被告は、 特許庁における過去の登録事例や商品・役務審査基準 計算機用プログラム」の一種であることは理解できるものの、本件審判請求に係る指定商品がいかなる商品なのか、その商品範囲が不明である。被告は、 特許庁における過去の登録事例や商品・役務審査基準、商品・サービス国際分類表、TM5 IDリスト、審査において採択された商品・役務名、WIPOMadridGoodsandServiceManager、さらには原告の登録商標の指定商品までをも検索し確認したが、これらにも、本件指定商品は見当たらない。 参考となる事例も見当たらず、被告(被請求人)は本件審判請求に係る指 定商品が何を指すのか理解することができない。 したがって、本件指定商品中のかっこ書き記載の各商品が不明確であり、それに伴って本件指定商品は不明確であるから、本件審判請求は却下されるべきであった。 イ取消対象商品のかっこ書き記載の関係について 本件指定商品中のかっこ書き記載には、「音響機器用の電子計算機用プログラム」、「ビデオレコーダーの操作用の電子計算機用プログラム」、「動画の撮影・編集又は音響・音楽の制作・録音・編集のための電子計算機用プログラム」、「動画の撮影・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」、「音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計 算機用プログラム」が「,」を介して並列記載されている。 指定商品又は指定役務を複数記載する際、商品・役務の区切りは、「,」(カンマ)を使用し、「、」(読点)や「・」(ナカグロ)などカンマ以外の記号は使用せず、反対に、一つの商品・役務を表示する際には、その表示中に「,」を使用しないものとされている。 そうすると、本件指定商品中のかっこ書き記載は、指定商品又は指定役 務を複数記載したものであり、「・・・を除く」は「 品・役務を表示する際には、その表示中に「,」を使用しないものとされている。 そうすると、本件指定商品中のかっこ書き記載は、指定商品又は指定役 務を複数記載したものであり、「・・・を除く」は「音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」のみにかかるものであり、「音響機器用の電子計算機用プログラム」、「ビデオレコーダーの操作用の電子計算機用プログラム」、「動画の撮影・編集又は音響・音楽の制作・録音・編集のための電子計算機用プログラム」、「動画の撮影・編集の ためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」は、「電子計算機用プログラム」を例示したものであると理解するほかはない。 したがって、前記アの点を措いたとしても、本件の取消対象商品は、「電子計算機用プログラム」から「音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」を除いたものであるというべきである。 ⑵ 〔原告の主張〕⑴の主張についてア本件マニュアルは、使用商品及び「HandyRecorder」のオペレーションマニュアルであるところ、原告が〔原告の主張〕⑴イにおいて挙げている本件マニュアルの33頁の記載にもあるとおり、使用商品では録音したファイルを電子メールに添付して送ることが記載されている。この機能は、 使用商品と「HandyRecorder」のいずれもが備える機能であるため、同頁では「HandyRecorder」の画像を用いたにすぎない。使用商品は「HandyRecorder」にいくつかの機能を追加したアプリケーションであり、「HandyRecorder」に搭載されている機能は使用商品にも搭載されている(本件マニュアルの2頁)。 イ原告は、〔原告の主張〕⑴イのとおり主張しており、i プリケーションであり、「HandyRecorder」に搭載されている機能は使用商品にも搭載されている(本件マニュアルの2頁)。 イ原告は、〔原告の主張〕⑴イのとおり主張しており、iOS/iPadOSの共有 機能を使用した部分については使用商品の機能から除かれると主張するようであるが、このような原告の主張は誤りである。 使用商品(アプリ)は、iOS/iPadOSの機能と連携してメール送信機能を完結させたものであり、ユーザーは、使用商品(アプリ)のメール送信機能を利用する場合には、使用商品(アプリ)から退出することなく、使用 商品(アプリ)を操作するだけで録音したファイルをメールに添付して送ることができるのであって、需要者・取引者の認識において、メール送信機能は使用商品(アプリ)の機能に含まれる。 そもそも、アプリケーションソフトウェア(アプリ)は、その機能を実現するに当たって、オペレーティングシステム(OS)の機能を利用するこ とが前提となっており、アプリがiOSやiPadOSの共有機能を利用しているとの事実だけをもって、当該アプリに機能が備わっていないと評価するのは適切でない。使用商品(アプリ)は、iOS又はiPadOSの機能と連携することにより、使用商品(アプリ)から退出することなく、使用商品(アプリ)を操作するだけで、使用商品(アプリ)が録音したファイルをメール に添付して送る機能を有しているのであって、このような機能は使用商品(アプリ)があって初めて実現されるものである。 商標の出所表示機能は、商標が、標章をある者の商品に対し、あるいは、役務の提供に当たって用いることにより、その商品・役務の出所を表示する機能である。そして、上記のとおり、録音したファイルをメールに添付 して送 は、商標が、標章をある者の商品に対し、あるいは、役務の提供に当たって用いることにより、その商品・役務の出所を表示する機能である。そして、上記のとおり、録音したファイルをメールに添付 して送る機能の全体が使用商品の機能に含まれることは明らかであるから、使用商品に商標が付されて使用される場合には、当該商標の出所表示機能は、録音したファイルをメールに添付して送る機能全体にも及ぶ。 ウ録音したファイルをメールに添付して送る機能全体は、使用商品が実現した機能であって、Apple社が提供するiOS/iPadOSの共有機能のみで当然 に実現されるものではない。本件マニュアルの33頁に記載された操作手 順及び画面構成は、使用商品に内在する機能の一部を構成するものであり、使用商品の機能性を基礎づける資料である。 エ使用商品が録音したファイルをiCloudにアップロードするために、iCloudDriveサービスを使用することが、使用商品が録音したファイルをiCloudにアップロードする機能を有することを否定する理由とはならな いことは、前記イと同様である。この点は、SoundCloudについても同様である。 また、iCloudDriveでは、共有するファイル又はフォルダを共有する相手方を選択できるのであるから、これにより、他のユーザーにファイルを共有することができる(SoundCloudについても同様である。)。 したがって、使用商品は、録音したファイルをiCloudやSoundCloudのクラウドサービスにファイルアップロードする機能を有している。 オ以上のとおり、使用商品が電子メールを送信するための機能を有するとした本件審決の認定に誤りはない。さらに、使用商品は、録音したファイルをiCloudやSou アップロードする機能を有している。 オ以上のとおり、使用商品が電子メールを送信するための機能を有するとした本件審決の認定に誤りはない。さらに、使用商品は、録音したファイルをiCloudやSoundCloudのクラウドサービスにファイルアップロードす る機能を有している。 ⑶ 〔原告の主張〕⑵の主張について上記⑵オの認定によれば、使用商品は、電子メール用及びファイルシェアリング用の電子計算機用プログラムである。 そして、電子メール用の電子計算機用プログラムは、本件指定商品から除 外されている「音響機器用の電子計算機用プログラム」、「ビデオレコーダーの操作用の電子計算機用プログラム」、「動画の撮影・編集又は音響・音楽の制作・録音・編集のための電子計算機用プログラム」、「動画の撮影・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」、「音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」のいずれとも明らか に異なるものである。これは、ファイルシェアリング用の電子計算機用プロ グラムについても同様である。 原告は、〔原告の主張〕⑵のとおり主張するが、原告の主張は、いわゆるアプリケーションプログラム等が多くの機能を有する電子計算機用プログラムの集合であることを失念したものであって、失当である。使用商品が録音したファイルを電子メールに添付して電子メールを送信する機能を有すること は使用商品の主要な機能の一つであるから、使用商品は「動画の撮影・編集又は音響・音楽の制作・録音・編集のための電子計算機用プログラム」や「音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」を除いた「電子計算機用プログラム」に該当するのであり、このことは、使用商品が他にどのような機能を有するか 機用プログラム」や「音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」を除いた「電子計算機用プログラム」に該当するのであり、このことは、使用商品が他にどのような機能を有するかとは直接かかわりのないことである。 その他、原告が〔原告の主張〕⑵において指摘する事項は、使用商品が電子メール用及びファイルシェアリング用の電子計算機用プログラムであって、「動画の撮影・編集又は音響・音楽の制作・録音・編集のための電子計算機用プログラム」や「音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」を除いた「電子計算機用プログラム」に該当すること を否定するものではない。 2 取消事由2(使用商標が本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当するとの判断の誤り)について〔原告の主張〕使用商標は、別紙2のとおり、角の丸い四角形状の図形内に、波形のような 図と、PROの文字、及び本件商標からなる図を配してなるものであり、視覚上、全体としてアイコンを表す一体的な構成からなるものとの印象を強く与える。 かかるアイコンとしての一体的な構成は、本件商標の構成とは明らかに相違するものであるから、本件商標と使用商標とは、外観において相違する。 また、本件商標は、語頭の文字が算用数字の2であるか欧文字のZであるか、 これに続く2文字が横文字にした砂時計若しくは音さ又はアイマスクを表した図形であるか、それとも二つの対面した「C」の文字であるのか、理解することが難しく、特定の観念が生ずるものではない。 他方、使用商標は、その構成要素より直ちに特定の観念が生ずるとはいえないものの、一見してアイコンの図形として理解し得るものであるから、想起さ れる観念においても相違する。 さらに、 はない。 他方、使用商標は、その構成要素より直ちに特定の観念が生ずるとはいえないものの、一見してアイコンの図形として理解し得るものであるから、想起さ れる観念においても相違する。 さらに、使用商標は「PRO」の文字部分より「プロ」の称呼が生ずるが、本件商標の構成からは、かかる称呼は生じない。 以上より、使用商標と本件商標は、外観・称呼・観念において相違し、社会通念上同一の商標ということはできず、これらが社会通念上同一であるとした 本件審決の判断は誤っている。 〔被告の主張〕商標法50条に基づき、使用された商標が登録商標と社会通念上同一であるか否かは、個々の構成要素の位置、大きさ、配色、独立性、商標の使用態様(例:付された商品名・会社名との関連表示)等を総合的に考慮して判断されるべき ものである。 本件においては、「ZOOM」の文字部分が明確に視認可能な形で独立しており、商品の出所表示機能を果たしていることから、社会通念上同一と評価する妨げはない。 したがって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一であると認められ、こ の点に関する本件審決の判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(本件指定商品についての使用に該当するとの判断の誤り)について⑴ 認定事実 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ア被告は、iPhone(スマートフォン)及びiPad(タブレット型コンピュータ)用のアプリケーション(アプリ)である使用商品(「HandyRecorderPRO」)を販売している。(甲30、31、60~63)イ被告は、令和4年(2022年)1月8日の時点で、AppStoreプレビューのウェブページに、使用商品に関する情報を公開していた( rPRO」)を販売している。(甲30、31、60~63)イ被告は、令和4年(2022年)1月8日の時点で、AppStoreプレビューのウェブページに、使用商品に関する情報を公開していた(以下、使用 商品に関する情報が掲載されたAppStoreプレビューのウェブページを「本件ウェブページ」という。)。本件ウェブページには、使用商品の商品名の左横に使用商標が掲載されており、これらの下には使用商品をiPadで使用した画面のスクリーンショットが掲載され、さらに、使用商品を紹介する文章や、使用商品の特長、使用商品の価格等に関する記載が存在して いた。使用商品を紹介する文章中には、「HandyRecorderPROは拡張性を大幅に拡大したオーディオレコーディングアプリです。無料版のHandyRecorderの機能に加えてファイルブラウザーアプリとiOS標準の共有機能をサポートし他のアプリや各種クラウドサービス、パソコンとの連携作業の利便性を強化しました。」との記載がある。AppStoreは、iPhone及びiPad 用のアプリをダウンロードすることのできるサービスである。(甲37、61)ウ本件マニュアルの28頁には、「録音したファイルをシェアする」との見出しの下、「iCloud、SoundCloudに録音したファイルをアップロードしたり、メールで送信することで共有できます。」との記載があり、同33頁に は、「ファイルをメールに添付して送信する」との見出しの下、「録音したファイルをメールに添付して送ることができます。HandyRecorderPROでは、iOS/iPadOSの共有機能を使用してメールなど様々なアプリケーションにファイルを共有することができます。」との記載がある。 実際の具体的な操 きます。HandyRecorderPROでは、iOS/iPadOSの共有機能を使用してメールなど様々なアプリケーションにファイルを共有することができます。」との記載がある。 実際の具体的な操作としては、使用商品により作成された録音ファイル が保存されている状態において、特定のファイルを選択した上で、使用商 品の画面上にある「SHARE」のアイコンをタップする(押す)と、ファイルシェア用画面に移る(後掲の画像1)。この画像1において、「Others」と記載された部分をタップすると、画面の下半分に、選択されているファイルのファイル名等の情報とともに、メールアイコン「」を含む複数のアイコンが表示される(後掲の画像2。画像2の黄色の矢印は強調のため に加えたものである。)。このメールアイコンをタップすると、電子メール作成画面が現れる(後掲の画像3。画像3の黄色の矢印も強調のために加えたものである。)。電子メール作成画面では、選択されているファイルが添付ファイルとして添付された状態となっており、「宛先」「件名」及びメッセージを入力することができる。これらの入力を完了し、メール送信ボ タンをタップすると、選択されているファイルが添付された電子メールが入力されたメールアドレス宛に送信される。この送信が完了すると、使用商品の画像1の画面に戻る。(乙11) 画像1 画像2 画像3⑵ 検討ア使用商品は、被告が販売するiPhone及びiPad用のアプリである。iPhone はスマートフォン、iPadはタブレット型コンピュータであって、いずれも電子計算機に含まれるから、iPhone及びiPad用のアプリである使用商品は、電 iPad用のアプリである。iPhone はスマートフォン、iPadはタブレット型コンピュータであって、いずれも電子計算機に含まれるから、iPhone及びiPad用のアプリである使用商品は、電子計算機用プログラムに当たる。 そして、上記⑴ウの認定事実によれば、使用商品は、電子メールを送信するための機能を有していると認められるから、電子メール用の電子計算 機用プログラムであるということができる。 電子メール用の電子計算機用プログラムは、本件指定商品から除外されている「音響機器用の電子計算機用プログラム」、「ビデオレコーダーの操作用の電子計算機用プログラム」、「動画の撮影・編集又は音響・音楽の制 作・録音・編集のための電子計算機用プログラム」、「動画の撮影・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」、「音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」のいずれにも該当しないといえる。 そうすると、使用商品は、「電子計算機用プログラム(音響機器用の電子 計算機用プログラム,ビデオレコーダーの操作用の電子計算機用プログラム,動画の撮影・編集又は音響・音楽の制作・録音・編集のための電子計算機用プログラム,動画の撮影・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム,音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラムを除く)」に該当すると認められる。 イ被告は、上記⑴イのとおり、本件審判請求の登録前3年以内の令和4年(2022年)1月8日の時点で、AppStoreプレビューのウェブページに、使用商標を付して、被告が販売する使用商品に関する情報を掲載していた。 この情報は、商標法2条3項8号にいう広告を内容とする情報に当たり、 被告は、上記ウェブペー レビューのウェブページに、使用商標を付して、被告が販売する使用商品に関する情報を掲載していた。 この情報は、商標法2条3項8号にいう広告を内容とする情報に当たり、 被告は、上記ウェブページに当該情報を掲載することで、広告を内容とする情報に使用商標を付して電磁的方法により提供したといえる。 したがって、被告は、令和4年1月8日、使用商標について商標法2条3項8号の「使用」をしたものと認められる。 ウ上記ア及びイの事実によれば、被告が、AppStoreプレビューのウェブペ ージに、使用商標を付して、被告が販売する使用商品に関する情報を掲載したことは、使用商標の本件指定商品についての使用に該当すると認められる。 ⑶ 原告の主張に対する判断ア原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑴アのとおり、使用商品が電子メ ール送信機能を有することの根拠として本件審決が挙げた本件マニュア ルの33頁の記載は、上記事実の根拠とならず、本件審決の認定には誤りがあると主張する。 この点、証拠(甲31)によれば、本件マニュアルは、使用商品(HandyRecorderPRO)と、被告が販売する別の商品(アプリ)である「HandyRecorder」の両方の取扱説明書であると認められるところ、本件マニュア ルの33頁の「録音したファイルをメールに添付して送ることができます。」との記載に関し、これが「HandyRecorder」のみの機能であるとの記載はない。そして、乙11(被告代理人名義の報告書)には、使用商品を用いて、録音ファイルを電子メールに添付して送信する操作を行ったことが記載されている。 これらの事情によれば、本件マニュアルの33頁の記載が「HandyRecorder」のみに関するものであるとは認 ファイルを電子メールに添付して送信する操作を行ったことが記載されている。 これらの事情によれば、本件マニュアルの33頁の記載が「HandyRecorder」のみに関するものであるとは認められず、本件審決が同頁の記載を基に行った使用商品に関する事実認定に誤りがあるとも認められない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑴イ及びウのとおり、使用商品は、他のアプリにファイルを共有する機能を有するにすぎず、実際にファイルが添付されたメールを送信するのは、使用商品ではなく、ファイルを共有された側である他のアプリであることなどからして、使用商品が電子メール送信機能を有するものではないと主張する。 本件マニュアルの33頁には、「HandyRecorderPROでは、iOS/iPadOSの共有機能を使用してメールなど様々なアプリケーションにファイルを共有することができます。」との記載があるところ、この記載からすると、使用商品とは別のメールに関するアプリが存在することが前提とされていると窺われる。また、使用商品によって作成された録音ファイルを電子 メールに添付して送信する際の操作は、前記⑴ウのとおりであるが、使用 商品のメールアイコンをタップして現れる電子メール作成画面は、前記⑴ウの画像3のとおりであり、その画面の背景の色は白色であって、使用商品の画面の背景の色が黒色であること(前記⑴ウの画像1及び2参照)と異なっている。これらの事情を考慮すると、使用商品のメールアイコンをタップすると、使用商品以外のメールアプリが起動し、このメールアプリ の操作によって電子メールの送信が行われるものである可能性は否定できない。 しかし、前記⑴ウのとおり 商品のメールアイコンをタップすると、使用商品以外のメールアプリが起動し、このメールアプリ の操作によって電子メールの送信が行われるものである可能性は否定できない。 しかし、前記⑴ウのとおり、使用商品の画面の中にメールアイコンが現れ、使用商品が作成して保存されているファイルを選択した状態で上記メールアイコンをタップすると、電子メール作成画面が現れるとともに、上 記ファイルが電子メールに添付された状態となっているのであって、上記電子メール作成画面に相手方のメールアドレスや本文等を入力すれば電子メールの送信が可能となる。このような使用商品の機能及び操作の内容を総合すれば、仮に、使用商品のメールアイコンをタップすると使用商品以外のメールアプリが起動し、このメールアプリの操作によって電子メー ルの送信が行われるものであるとしても、使用商品は電子メール送信機能を有しているといえ、使用商品が本件指定商品、すなわち「電子計算機用プログラム(音響機器用の電子計算機用プログラム,ビデオレコーダーの操作用の電子計算機用プログラム,動画の撮影・編集又は音響・音楽の制作・録音・編集のための電子計算機用プログラム,動画の撮影・編集のた めのスマートフォン用電子計算機用プログラム,音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラムを除く)」に該当するとの結論は左右されない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑴エのとおり、被告が本件審判手 続段階で主張していた、使用商品が「iCloud」や「SoundCloud」等のクラ ウドサービスへのファイルアップロード機能を有するとの点についても、これらの機能は「iCloud」や「SoundCloud」の 使用商品が「iCloud」や「SoundCloud」等のクラ ウドサービスへのファイルアップロード機能を有するとの点についても、これらの機能は「iCloud」や「SoundCloud」の機能であって、使用商品の機能ではないから、使用商品が本件指定商品に該当することの根拠とならない旨主張する。 しかし、前記⑵ア及び⑶ア、イのとおり、使用商品が電子メール送信機 能を有すると認められ、これにより使用商品が本件指定商品に該当すると認められるのであるから、原告の上記主張は、使用商品が本件指定商品に該当するとの判断を左右しない。 エ原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑵のとおり、使用商品の機能や販売態様、需要者等による認識からすれば、使用商品は、「音響・音楽の制作・ 録音・編集のための電子計算機用プログラム」及び「音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」に該当する商品なのであって、本件指定商品に該当するものではないと主張する。 しかし、使用商品の機能により、使用商品が電子メール送信機能を有すると認められ、これにより使用商品が本件指定商品に該当すると認められ ることは、前記⑵ア及び⑶ア、イのとおりである。原告が、使用商品の販売態様や需要者等による認識に関連するものであるとして、前記第3の1〔原告の主張〕⑵のとおり挙げる事情は、使用商品が有する機能に基づく上記判断を左右しない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ⑷ 被告の主張について被告は、前記第3の1〔被告の主張〕⑴アのとおり、本件指定商品について、「電子計算機用プログラム」から除かれるかっこ書きの中の商品の範囲が明らかでないことから、本件指定商品の範囲も明らかでないとし、取消対象商品が不明確であるから 〕⑴アのとおり、本件指定商品について、「電子計算機用プログラム」から除かれるかっこ書きの中の商品の範囲が明らかでないことから、本件指定商品の範囲も明らかでないとし、取消対象商品が不明確であるから、本件審判請求は却下されるべきであったと主張し、 同イのとおり、本件の取消対象商品は、「電子計算機用プログラム」から「音 響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」を除いたものであると主張する。 しかし、本件指定商品は、「音響機器用の電子計算機用プログラム」,「ビデオレコーダーの操作用の電子計算機用プログラム」,「動画の撮影・編集又は音響・音楽の制作・録音・編集のための電子計算機用プログラム」,「動画の 撮影・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」,「音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム」のいずれをも除いたそれら以外のすべての電子計算機用プログラムを指すことは明らかであり、前記⑵及び⑶のとおり、本件指定商品の内容を前提として、使用商品が本件指定商品に該当すると判断することができるから、本件指定商 品の範囲は明確であり、本件審決が本件審判請求を却下しなかったことに不当な点はなく、被告の上記主張はいずれも採用することができない。 ⑸ 取消事由1に関する結論以上によれば、AppStore プレビューのウェブページに、使用商標を付して、使用商品に関する情報を公開したことが、本件指定商品についての使用 に該当するとの本件審決の判断に誤りがあるとは認められず、取消事由1には理由がない。 2 取消事由2(使用商標が本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当するとの判断の誤り)について⑴ 商標法50条にいう「登録商標」には、書体のみに変更を れず、取消事由1には理由がない。 2 取消事由2(使用商標が本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当するとの判断の誤り)について⑴ 商標法50条にいう「登録商標」には、書体のみに変更を加えた同一の文 字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む(同法38条5項)。 ⑵ 本件商標は、「ZOOM」の欧文字を、「OO」を図案化して横書きしてな る商標であり、「ズーム」の称呼を生じ、「(カメラなどの)ズーム」の観念を 生じる。 使用商標は、別紙2使用商標目録記載のとおりであり、波形状の図形及びその右下の「PRO」の欧文字からなる部分(以下「波図形部分」という。)の下に、「ZOOM」の欧文字を、「OO」を図案化して横書きしてなる青色の文字(以下「文字部分」という。)を配してなるものである。 使用商標のうちの文字部分と本件商標を比較すると、これらは、「ZOOM」の欧文字を、「OO」を図案化して横書きしてなる文字からなり、それらの外観はほぼ同じであり、いずれも「ズーム」の称呼を生じ、「(カメラなどの)ズーム」の観念を生じると認められるから、外観、称呼、観念を通じてほぼ同一と認められる。そして、使用商標において、波図形部分と文字部分は、 形態が大きく異なるとともに、両部分の間には空白部分があり、視覚的に独立した印象を与えるものである。これらを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。そうすると、登録商標と社会通念上同一と認められる商標(商標法50条、38条5項)に該当するかどうかに関して して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。そうすると、登録商標と社会通念上同一と認められる商標(商標法50条、38条5項)に該当するかどうかに関しては、使用商標が使用される場合には、波 図形部分が存在するものの、それとは独立した印象を与える文字部分が商標として使用されているとみることもでき、文字部分は、外観、称呼、観念を通じて本件商標とほぼ同一であるから、本件商標が使用されていると評価することもでき、このような点を考慮すると、使用商標は本件商標と社会通念上同一であると認められる。 ⑶ 原告の主張に対する判断原告は、前記第3の2〔原告の主張〕のとおり、使用商標は、全体としてアイコンを表す一体的な構成からなるものであって本件商標とは外観、観念が異なり、「PRO」の文字より「プロ」の称呼を生じるから称呼も異なるとし、使用商標と本件商標は社会通念上同一ではない旨主張する。しかし、使 用商標が波図形部分と文字部分から成り、波図形部分から「プロ」の称呼を 生ずるとしても、波図形部分と文字部分は、形態が大きく異なるとともに、両部分の間には空白部分があり、視覚的に独立した印象を与えるものであり、これらを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとも認められないことからすれば、登録商標と社会通念上同一と認められる商標(商標法50条、38条5項)に該当するかどうかに関 しては、文字部分が本件商標とほぼ同一であることに基づいて、使用商標が本件商標と社会通念上同一であると認めることは妨げられないというべきである。したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ⑷ 取消事由2に関する結論以上によれば、使用商標が本件商標と社会通念上同 と社会通念上同一であると認めることは妨げられないというべきである。したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ⑷ 取消事由2に関する結論以上によれば、使用商標が本件商標と社会通念上同一であると認められる との本件審決の判断に誤りがあるとは認められず、取消事由2には理由がない。 3 結論以上のとおり、取消事由1及び2はいずれも理由がなく、被告が、本件審判請求の登録前3年以内に、本件商標と社会通念上同一の商標である使用商標に ついて、商標法2条3項8号の使用をしたと認められるから、本件商標の登録の取消請求は理由がなく、同旨の本件審決の判断に誤りはなく、本件審決に、これを取り消すべき違法はない。 よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 中平健 裁判官今井弘晃 裁判官水野正則 別紙1本件商標目録登録番号第4940899号商標の構成 指定商品第9類理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く。),救命用具,電気通信機械器具,録音済みの磁気カード・磁気シート・磁気 テ 電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く。),救命用具,電気通信機械器具,録音済みの磁気カード・磁気シート・磁気 テープ・コンパクトディスク・その他のレコード,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,メトロノーム,電子計算機用マウスパッド,電子計算機用マウス,コンピュータプログラムを記憶させた磁気ディスク・磁気テープ・その他の記録媒体,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,電子出版物,オゾン 発生器,電解槽,ロケット,業務用テレビゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・光ディスク・光磁気ディスク・CD-ROM・デジタルバーサタイルディスク-ROM及び磁気テープ,業務用テレビゲーム機,スロットマシン,運動技能訓練用シミュレーター,乗物運転技能訓練用シミュレーター,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気 ブザー,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,鉄道用信号機,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,事故防護用手袋,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,消防艇,消防車,自動車用シガーライター,保安用ヘルメット,防火被服, 防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,磁心,抵抗線,電極,新聞・雑誌・書籍・地図・図面・写真の画像・文字情報を記録させた電子回路・ROMカートリッジ・光ディスク・磁気ディスク・光磁気ディスク・磁気カード・磁気テープ,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,ガソリンステー ション用装置,自動販売機,駐車場用硬貨作動式ゲート,金銭登録機,硬貨の計数 録画済みビデオディスク及びビデオテープ,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,ガソリンステー ション用装置,自動販売機,駐車場用硬貨作動式ゲート,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,計算尺,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,運動用 保護ヘルメット,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,潜水用機械器具,アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,家庭用テレビゲームおもちゃ専用のプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・光ディスク・光磁気ディスク・CD-ROM・デジタルバーサタイルディスク-ROM及び磁気テープ,家庭用テレビゲームおもちゃ専用のコントロー ラ・ジョイスティック・メモリーカード・ボリュームコントローラ・マウス,その他の家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,検卵器,電動式扉自動開閉装置,磁石,永久磁石,標識用ブイ,二輪自動車用シガーライター,耳栓但し、計算尺を除く、但し、電子計算機用マウスパッド,電 子計算機用マウスを除く、但し、コンピュータプログラムを記憶させた磁気ディスク・磁気テープ・その他の記録媒体を除く第15類調律機,楽器,演奏補助品,音さ出願日平成17年8月8日設定登録日平成18年3月31日 以上 別紙2使用商標目録 以上 以上 別紙2 使用商標目録 以上
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