平成16(行ケ)191 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年10月20日 東京高等裁判所 判決 審決取消
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平成16年(行ケ)第191号審決取消請求事件(平成16年9月6日口頭弁論終結)判決原告シャープ株式会社訴訟代理人弁護士永島孝明同伊藤晴國同明石幸二郎同山本光太郎同弁理士中尾俊輔同伊藤高英同磯田志郎被告ベンキュージャパン株式会社訴訟代理人弁護士高橋隆二同櫻井彰人同弁理士高野昌俊 主文 特許庁が無効2003-35181号事件について平成16年3月23日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文と同旨第2 当事者間に争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯(1) 原告は,名称を「表示体ユニット接続装置」とする特許第1865580号発明(昭和59年1月13日特許出願,平成3年2月5日出願公告をすべき旨の決定〔以下「本件出願公告決定」という。〕,平成4年2月12日付け手続補正書及び平成5年7月9日付け手続補正書〔以下,これらを「本件各補正」という。〕各提出,平成6年8月26日設定登録,以下「本件発明」といい,この特許を「本件特許」という。)の特許権者である。 被告は,平成15年5月8日,本件特許を無効にすることについて審 いう。〕各提出,平成6年8月26日設定登録,以下「本件発明」といい,この特許を「本件特許」という。)の特許権者である。 被告は,平成15年5月8日,本件特許を無効にすることについて審判の請求をし,同請求は,無効2003-35181号事件として特許庁に係属したところ,原告は,同年7月29日,本件特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の記載等を訂正(以下「平成15年訂正」という。)する旨の訂正請求をした。 特許庁は,同特許無効審判事件について審理した結果,平成16年3月23日,「特許第1865580号発明の特許を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年4月2日,原告に送達された。 (2) 原告は,同年5月6日,本件審決の取消しを求める本件訴えを提起した後,同年6月4日,本件明細書の特許請求の範囲の記載等の訂正(以下「本件訂正」という。)をする訂正審判の請求をし,特許庁は,同請求を訂正2004-39124号事件として審理した結果,同年7月1日,本件訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,その謄本は,同年7月13日,原告に送達された。 2 特許請求の範囲の記載(1) 本件各補正前の本件明細書の特許請求の範囲の記載複数の接続端子を有する多ドットの表示体と,表面に前記多ドットの表示体を駆動するためのLSIチップがボンディングされ,且つ前記接続端子との接続のためのチップ端子と他のLSIチップとの接続のための共通端子とを含む前記LSIチップの配線が形成された複数のフィルム基板と,該各フィルム基板上の共通端子と接続するための配線が形成された回路基板とから成り,前記表示体と 端子とを含む前記LSIチップの配線が形成された複数のフィルム基板と,該各フィルム基板上の共通端子と接続するための配線が形成された回路基板とから成り,前記表示体と前記複数のフィルム基板と前記回路基板とを電気的に接続して前記多ドットの表示体を複数のLSIチップにより駆動することを特徴とする表示体ユニット接続装置。 (2) 本件訂正に係るもの(訂正部分には下線を付す。)複数の接続端子を有する多ドットの表示体と,表面に前記多ドットの表示体を駆動するための,同一構成を有するLSIチップがボンディングされ,且つ表面に前記接続端子との接続のためのチップ端子と他のLSIチップとの接続のための共通端子とを含む前記LSIチップの配線が形成された複数のフィルム基板と,該各フィルム基板上の共通端子と接続するための配線が形成され且つ前記表示体の背面位置で前記表示体の端面より内側に配置された回路基板とから成り,前記表示体と前記複数のフィルム基板とを電気的に接続すると共に,前記LSIチップが前記表示体の背面位置で前記表示体の端面と前記回路基板との間に位置し,前記回路基板が前記フィルム基板面の前記表示体側に位置するように前記複数のフィルム基板を前記回路基板に重合させ且つその重合した領域内で前記共通端子と前記回路基板の配線とを接続して,前記複数のフィルム基板と前記回路基板とを電気的に接続することで前記LSIチップの前記共通端子の相互間を共通して接続し,電源信号とデータ信号を送ると共に,同一構成を有する両隣の前記LSIチップを相互に接続して,前記多ドットの表示体を複数のLSIチップにより駆動することを特徴とする表示体ユニット接続装置。 3 本件審決の理由の要旨 送ると共に,同一構成を有する両隣の前記LSIチップを相互に接続して,前記多ドットの表示体を複数のLSIチップにより駆動することを特徴とする表示体ユニット接続装置。 3 本件審決の理由の要旨本件審決は,本件各補正は,特許法(平成6年法律第116号附則6条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法〔以下「平成6年改正前特許法」という。〕の趣旨と解される。)64条,17条の3において準用する同法126条2項の規定に適合しないので,同法(平成5年法律第26号附則2条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法〔以下「平成5年改正前特許法」という。〕の趣旨と解される。)42条の規定により,本件各補正がされなかった特許出願について特許がされたものとみなされ,平成15年訂正は,本件各補正を含むものであり,特許法134条5項(平成15年法律第47号附則2条7項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法の趣旨と解される。)において準用する平成6年改正前特許法126条2項の規定に適合しないので認められないとし,本件発明の要旨を,本件各補正前の本件明細書の特許請求の範囲の記載(上記2の(1))のとおりと認定した上,本件発明は,特開昭58-122586号公報記載の発明(以下「引用発明」という。)及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,同法(平成5年改正前特許法の趣旨と解される。)123条1項1号の規定により無効とすべきものであるとした。 第3 原告主張の本件審決取消事由 1 本件審決が,本件発明の要旨を本件各補正前の本件明細書の特許請求の範囲の記載(上記第2の2の(1))のとおりと認定した により無効とすべきものであるとした。 第3 原告主張の本件審決取消事由 1 本件審決が,本件発明の要旨を本件各補正前の本件明細書の特許請求の範囲の記載(上記第2の2の(1))のとおりと認定した点は,本件訂正審決の確定により特許請求の範囲が上記第2の2の(2)のとおり訂正されたため,誤りに帰したことになるから,本件審決は,本件発明の要旨の認定を誤った違法があり,取り消されなければならない。 2 被告は,本件審決の判断の一部である本件各補正の適法性の判断,すなわち,本件発明の要旨を認定する必要があると主張するが,失当である。本件訴訟の審理の対象は,本件審決の取消原因の有無であるところ,本件審決は,本件発明の要旨を本件各補正前の本件明細書の特許請求の範囲の記載(上記第2の2の(1))のとおりと認定した上,本件発明は,引用発明及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると判断したが,本件訂正審決の確定により特許請求の範囲が上記第2の2の(2)のとおり訂正されたため,誤りに帰したことになり,この誤りが本件審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,最高裁平成11年3月9日第三小法廷判決・民集53巻3号303頁(以下「平成11年3月最判」という。)に従い,本件審決は取り消されるべきである。 したがって,本件審決の本件発明の要旨の認定は,本件訂正審決の確定に伴い,それ自体が誤りであったことになるから,本件各補正の適法性を判断する必要はない。 第4 被告の反論 1 本件訂正審決の確定により,本件発明に係る特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正されたことは認める。 2 本件訴訟においては,本件審決を,単に本件訂正審決が確定したことのみを理由に取り消すのではなく,本件審決の判断の前提となった本件発明の要旨 の範囲の記載が上記のとおり訂正されたことは認める。 2 本件訴訟においては,本件審決を,単に本件訂正審決が確定したことのみを理由に取り消すのではなく,本件審決の判断の前提となった本件発明の要旨を認定した上で判決すべきである。本件審決は,本件出願公告決定後にした本件各補正がいずれも特許請求の範囲を実質上変更するものであって特許法(平成6年改正前特許法の趣旨と解される。)64条,17条の3において準用する同法126条2項の規定に適合しないので,同法(平成5年改正前特許法の趣旨と解される。)42条の規定により,本件各補正がされなかった特許出願について特許がされたものとみなされ,本件発明の要旨は本件出願公告決定時の明細書の特許請求の範囲に記載されたものと認定した上,本件発明と引用発明とを対比し,本件発明は特許法29条2項に違反するとの判断をしたが,本件審決のした本件発明の要旨の認定は,本件訴えの提起により確定しておらず,原告も本件訴状においてその認定を争っているところである。このような状況において,本件訂正審決がされたが,その請求の対象が不確定のままでは,本件訂正審決の確定により,特許請求の範囲を減縮したものか否かの判断はできない。 平成11年3月最判及び最高裁平成11年4月22日第一小法廷判決・裁判集民事193号231頁(以下「平成11年4月最判」という。)は,明細書の特許請求の範囲が訂正審決の確定により減縮された場合には,減縮後の請求の範囲に新たな要件が付加されているから,他の公知事実との対比を行わなければ,発明が特許を受けることができるかどうかの判断をすることができず,このような判断は特許庁の審判手続によって行うべきことを理由として,減縮を目的とする訂正審決が確定した場合は当該審決を取り消すべきものとした。しかし,上記両最高 きるかどうかの判断をすることができず,このような判断は特許庁の審判手続によって行うべきことを理由として,減縮を目的とする訂正審決が確定した場合は当該審決を取り消すべきものとした。しかし,上記両最高裁判決は,訂正前の発明の要旨が争いなく認定された事案であり,訂正審判の請求の対象も明確であったため,当該訂正が特許請求の範囲の減縮であることが判断できたものである。これに対し,本件訴訟においては,本件訂正前の本件発明の要旨が,本件審決の認定のとおり本件各補正前の明細書に記載されたものであるか,又は原告が主張する本件各補正を経た後の明細書に記載されたものであるのかについて,司法判断がされていないから,本件訴訟において,本件審決が取り消されるとしても,取消し後に再開される審判における本件訂正前の発明の要旨を,判決の拘束力をもって認定しておく必要がある。前者であれば,特許権者である原告は,本件出願公告決定時の明細書を対象として,訂正審判請求を行うべきであるのに対し,後者であれば,本件各補正後の明細書を対象として,訂正審判請求を行うべきであり,これを誤ることは,訂正要件を欠き,無効原因となる(特許法123条1項8号,126条2項及び3項)。 本件訴訟の審理の対象は,訴え提起時の本件特許に関する取消原因の有無であり,本件訂正審決の適法性は,別途,無効審判の手続において判断すればよいとして,本件訴訟において本件訂正前の本件発明の要旨の認定を怠ることは許されない。 第5 当裁判所の判断 1 本件訂正審決の確定により,本件発明に係る特許請求の範囲の記載が上記第2の2(2)のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく,この訂正によって,特許請求の範囲が減縮されたことは明らかである。 そうすると,本件審決が,本件発明の要旨を,本件各補正前の本件明細 第2の2(2)のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく,この訂正によって,特許請求の範囲が減縮されたことは明らかである。 そうすると,本件審決が,本件発明の要旨を,本件各補正前の本件明細書の特許請求の範囲の記載(上記第2の2(1))のとおり認定したことは,結果的に誤りであったことに帰し,これが本件審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,本件審決は,瑕疵があるものとして取消しを免れない。 2 被告は,本件審決のした本件発明の要旨認定は,本件訴えの提起により確定しておらず,原告も本件訴状においてその認定を争っているところであり,このような状況において,本件訂正審決の請求の対象が不確定のままでは,本件訂正審決の確定により特許請求の範囲を減縮したものか否かの判断はできないと主張する。 しかしながら,本件審決が,本件発明の要旨を,本件各補正前の本件明細書の特許請求の範囲の記載(上記第2の2(1))のとおり認定したことは,上記第2の3のとおりである(なお,原告が,本件各補正の不適法を理由に上記のとおり本件発明の要旨認定をした本件審決の認定の誤り等をいう本件訴状記載の取消事由の主張を,本件第2回弁論準備手続期日においてすべて撤回し,取消事由の主張を上記第3の1の主張に限定したことは,記録上明らかである。)ところ,本件発明に係る特許請求の範囲の記載が上記第2の2(2)のとおり訂正されたこと,この訂正によって,特許請求の範囲が減縮されたことは上記1のとおりであるから,本件訂正審決の確定により特許請求の範囲を減縮したものか否かの判断ができないとの被告の主張が失当であることは明らかである。 被告は,平成11年3月最判及び平成11年4月最判は,訂正前の発明の要旨が争いなく認定された事案であり,訂正審判の請求の対象も明確であったため, の被告の主張が失当であることは明らかである。 被告は,平成11年3月最判及び平成11年4月最判は,訂正前の発明の要旨が争いなく認定された事案であり,訂正審判の請求の対象も明確であったため,当該訂正が特許請求の範囲の減縮であることが判断できたものであるのに対し,本件訴訟においては,本件訂正前の本件発明の要旨が,本件審決の認定のとおり本件各補正前の明細書に記載されたものであるか,又は原告が主張する本件各補正を経た後の明細書に記載されたものであるのかについて,司法判断がされていないから,本件訴訟において,本件審決が取り消されるとしても,取消し後に再開される審判における本件訂正前の本件発明の要旨を,判決の拘束力をもって認定しておく必要があるとも主張する。しかしながら,本件訂正前の本件発明の要旨が,本件審決の認定するとおり本件各補正前の本件明細書に記載されたものであることについては,原告も争っていないこと,本件訂正によって特許請求の範囲が減縮されたことは,上記1のとおりであり,無効審決取消訴訟の係属中に当該特許権について特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には,当該無効審決は取り消されなければならないと解すべきである(平成11年3月最判及び平成11年4月最判参照)から,被告の上記主張も理由がない。 また,被告は,①本件訂正前の本件発明の要旨が,本件各補正を経た後の明細書に記載されたものであれば,本各補正後の明細書を対象として,訂正審判請求を行うべきであり,これを誤ることは,訂正要件を欠き,無効原因となる(特許法123条1項8号,126条2項及び3項),②本件訴訟の審理の対象は,訴え提起時の本件特許に関する取消原因の有無であり,本件訂正審決の適法性は,別途,無効審判の手続において判断すればよいとして,本件訴訟にお 1項8号,126条2項及び3項),②本件訴訟の審理の対象は,訴え提起時の本件特許に関する取消原因の有無であり,本件訂正審決の適法性は,別途,無効審判の手続において判断すればよいとして,本件訴訟において本件訂正前の本件発明の要旨の認定を怠ることは許されないとも主張するが,いずれも,その前提において失当であることは,上記判示に照らして明らかである。 以上のとおり,被告の主張はいずれも採用の限りではない。 3 よって,原告の請求は理由があるから認容することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所知的財産第2部裁判長裁判官篠原勝美裁判官岡本岳裁判官早田尚貴

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