- 1 -令和3年12月23日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第15676号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和3年12月23日判決 原告日亜化学工業株式会社 同訴訟代理人弁護士牧野知彦同訴訟復代理人弁護士岡田健太郎同訴訟代理人弁理士田村啓 山尾憲人 玄番佐奈恵 被告ASUSJAPAN株式会社(以下「被告ASUS」という。) 被告シネックスジャパン株式会社(以下「被告シネックス」という。) 上記両名訴訟代理人弁護士伊藤真 平井佑希同訴訟代理人弁理士片山健一主文 1 被告ASUSは,原告に対し,95万0237円及びこれに対する平成30年6月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告シネックスは,原告に対し,62万6969円及びこれに対する平成3 - 2 -0年6月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告の被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,原告に生じた費用の9分の4と被告ASUSに生じた費用の合計の20分の19を原告の,20分の1を同被告の負担とし,原告に生じた費用の9分の5と被告シネックスに生じた費用の合計の40分の39を原告の, 40分の1を同被告の各負担とする。 5 この判決は,第1,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理 用の9分の5と被告シネックスに生じた費用の合計の40分の39を原告の, 40分の1を同被告の各負担とする。 5 この判決は,第1,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告ASUSは,原告に対し,1585万6000円及びこれに対する平成 30年6月5日(被告ASUSに対する訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告シネックスは,原告に対し,2000万円及びこれに対する平成30年6月5日(被告シネックスに対する訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,発明の名称を「発光装置と表示装置」とする特許発明に係る特許権を有する原告が,被告らが上記特許発明の技術的範囲に属するLEDを搭載したスマートフォンを輸入ないし譲渡して,上記特許権を侵害したと主張して,不法行為による損害賠償請求として,被告らに対し,次のとおりの支払を求め た事案である。 (1) 被告ASUSに対し,損害賠償金1585万6000円(特許法102条2項,3項の重畳適用により算定される損害額9815万5178円と弁護士費用相当額172万8000円の合計9988万3178円の一部請求,又は,特許法102条3項により算定される損害額7965万02 57円と弁護士費用相当額172万8000円の合計8137万8257 - 3 -円の一部請求)及びこれに対する平成29年法律第44号による改正前の民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払(2) 被告シネックスに対し,損害賠償金2000万円(特許法102条2項,3項の重畳適用により算定される損害額(主位的主張●(省略)●円,予備的主張●(省略)●円 分の割合による遅延損害金の支払(2) 被告シネックスに対し,損害賠償金2000万円(特許法102条2項,3項の重畳適用により算定される損害額(主位的主張●(省略)●円,予備的主張●(省略)●円)と弁護士費用相当額172万8000円の合計(主位的 主張●(省略)●円,予備的主張●(省略)●円)の一部請求,又は,特許法102条3項により算定される損害額●(省略)●円と弁護士費用相当額172万8000円の合計●(省略)●円の一部請求)及びこれに対する平成29年法律第44号による改正前の民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払 2 前提事実(末尾掲記の証拠等により認定したほかは,当事者間で争いがない か当裁判所に顕著である。以下,証拠番号を表記するときは枝番を省略することがある。)(1) 当事者ア原告は,半導体並びにその関連材料,部品及び応用製品の製造,販売及び研究開発などを業とする株式会社である。 イ被告ASUSは,携帯情報端末機器等の販売,輸出入等を業とする株式会社である。 ウ被告シネックスは,携帯情報端末機器等の販売等を業とする株式会社である。 (2) 原告の特許権 ア原告は,次の特許権(以下「本件特許権1」という。)を有していた(甲1,2)。 発明の名称発光装置と表示装置特許番号特許第5177317号登録日平成25年1月18日 出願番号特願2012-189084号(以下,「本件出願1」 - 4 -といい,その願書に添付された明細書を「本件明細書1」という。)出願日平成24年8月29日分割の表示特願2008-269号の分割原出願日平成9年7月29日 最先優先日平成8年7月29日(特願平8-19858 1」という。)出願日平成24年8月29日分割の表示特願2008-269号の分割原出願日平成9年7月29日 最先優先日平成8年7月29日(特願平8-198585号)イ原告は,次の特許権(以下「本件特許権2」といい,本件特許権1と併せて,「本件各特許権」という。)を有していた(甲3,4)。 発明の名称発光装置と表示装置特許番号特許第5610056号 登録日平成26年9月12日出願番号特願2013-265770号(以下,「本件出願2」といい,その出願の願書に添付された明細書を「本件明細書2」といい,本件明細書1と併せて「本件各明細書」という。) 出願日平成25年12月24日分割の表示特願2013-4210号の分割原出願日平成9年7月29日(3) 特許請求の範囲ア本件特許権1の特許請求の範囲のうち,訂正審決(訂正2017-39 0078)による訂正後の請求項1(以下「本件発明1」という。)は,「白色系を発光する発光ダイオードであって,該発光ダイオードは,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり,前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと,該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して,吸収した光の波長よりも長波 長の光を発光する,Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの - 5 -元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含むこと,を特徴とする発光ダイオード。」であり(甲2の4,乙14),これを構成要件に分説すると,次のとおりとなる。 1A 白色系を発光する発光ダイオードであっ ムで付活されたガーネット系蛍光体とを含むこと,を特徴とする発光ダイオード。」であり(甲2の4,乙14),これを構成要件に分説すると,次のとおりとなる。 1A 白色系を発光する発光ダイオードであって, 1B 該発光ダイオードは,発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり,1C 前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと,1D 該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して,吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する, 1EY及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体(以下「蛍光体1E」という。)とを含む,1F ことを特徴とする発光ダイオード。 イ本件特許権2の特許請求の範囲のうち,訂正審決(2018-390105)による訂正後の請求項2(以下,「本件発明2」といい,本件発明1と併せて「本件各発明」という。)は,「凹部内に配置された窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと,前記凹部に充填されて前記LEDチップを覆うコーティング樹脂とを有する発光ダイオードであって, 前記コーティング樹脂には,該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し,波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光する,Y,Lu及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付活されたガーネット系蛍光体が含有されており,前記LED チップは,その発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体で,420~4 - 6 -90nmの範囲にピーク波長を有するLEDチップであ 活されたガーネット系蛍光体が含有されており,前記LED チップは,その発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体で,420~4 - 6 -90nmの範囲にピーク波長を有するLEDチップであり,前記コーティング樹脂中の前記ガーネット系蛍光体の濃度が,前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップ側に向かって高くなっていることを特徴とする発光ダイオード。」であり(甲16の1,30),これを構成要件に分説すると,次のとおりとなる。 2A 凹部内に配置された窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと,2B 前記凹部に充填されて前記LEDチップを覆うコーティング樹脂とを有する発光ダイオードであって,2C 前記コーティング樹脂には,該LEDチップからの第1の光の少な くとも一部を吸収し,波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光する,2DY,Lu及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付活されたガーネット系蛍光体(以下「蛍光体2D」 という。)が含有されており,2E 前記LEDチップは,その発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体で,420~490nmの範囲にピーク波長を有するLEDチップであり,2F 前記コーティング樹脂中の前記ガーネット系蛍光体の濃度が,前記 コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップ側に向かって高くなっている2G ことを特徴とする発光ダイオード。 (4) 被告らの行為ア被告ASUSは,別紙被告製品目録記載の各スマートフォン(以下,同 目録記載の番号順に「被告製品1」,「被告製品2」といい,両製品を併 - 7 -せて「被告製品」という。)を輸入し ア被告ASUSは,別紙被告製品目録記載の各スマートフォン(以下,同 目録記載の番号順に「被告製品1」,「被告製品2」といい,両製品を併 - 7 -せて「被告製品」という。)を輸入した上,平成28年3月から平成29年7月までの間に,被告製品1を●(省略)●台,被告製品2を●(省略)●台販売した(乙73,74)。 イ被告シネックスは,平成28年3月から平成29年7月までの間に,被告製品1を●(省略)●台,被告製品2を●(省略)●台販売した(乙7 3,74)。 (5) 被告製品に搭載されたLEDの構成と本件各発明との対比ア被告製品1に搭載されているLED(以下「被告LED1」という。)は,本件発明1の構成要件に対応させて分説すると,少なくとも別紙被告LED1説明書(1)記載の構成を有しており(以下,元素については,元 素記号のみを用いて表記することがある。),少なくとも構成要件1Bないし1D及び1Fを充足している(弁論の全趣旨)。 イ被告LED1は,本件発明2に対応させて分説すると,少なくとも別紙被告LED1説明書(2)記載の構成を有しており,少なくとも構成要件2A,2E及び2Gを充足している(弁論の全趣旨)。 ウ被告製品2にはLED2台が上下2段になって搭載されており,このうち下段のもの(以下「被告LED2」という。)は,本件発明1の構成要件に対応させて分説すると,少なくとも別紙被告LED2説明書記載の構成を有しており,少なくとも構成要件1Bないし1D及び1Fを充足している(弁論の全趣旨)。 エ被告製品2に搭載されているLED2台のうちの上段のもの(以下「被告LED4」という。)は,本件発明1の構成要件に対応させて分説すると,少なくとも別紙被告LED4説明書記載の構成を有してお エ被告製品2に搭載されているLED2台のうちの上段のもの(以下「被告LED4」という。)は,本件発明1の構成要件に対応させて分説すると,少なくとも別紙被告LED4説明書記載の構成を有しており,少なくとも構成要件1Bないし1D及び1Fを充足している(弁論の全趣旨)。 (6) 同日出願及び先行出願の存在 ア特許第2927279号の特許権は,本件出願1の最先優先日と同じ日 - 8 -である平成8年7月29日を最先優先日とする特許出願(特願平9-218149号。以下,「乙1出願」といい,その願書に添付された明細書を「乙1明細書」という。)された発明(発明の名称は「発光ダイオード」。 以下,その特許請求の範囲のうち,訂正認容の審決(無効2011-800123)による訂正後の請求項1に記載された発明を「乙1発明」とい う。)について特許を受けたものである。 イ特開平5-152609号の特許公報(乙4。以下,「乙4公報」といい,乙4公報に開示された発明を「乙4発明」という。)は,本件出願1の最先の優先日より前の日である平成5年6月18日に出願公開されたものである。 3 争点(1) 被告LED1は構成要件1Aの「白色系を発光する」を充足するか(2) 被告LED1は構成要件1E及び2Dを充足するか(3) 被告LED1の構成2bは構成要件2Bの「前記凹部に充填されて」を充足するか (4) 被告LED1の構成2dのガーネット系蛍光体の濃度は構成要件2Fの「前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップ側に向かって高くなっている」との文言を充足するか(5) 被告LED2は構成要件1Aの「白色系を発光する」を充足するか(6) 被告LED2は構成要件1Eを充足するか (7) 被告LED4 向かって高くなっている」との文言を充足するか(5) 被告LED2は構成要件1Aの「白色系を発光する」を充足するか(6) 被告LED2は構成要件1Eを充足するか (7) 被告LED4は構成要件1Aの「白色系を発光する」を充足するか(8) 被告LED4は構成要件1Eを充足するか(9) 本件発明1は乙1発明と同一のものであり,同日出願要件(法39条2項)違反により無効にされるべきものか(10) 本件各発明はサポート要件違反により無効にされるべきものか (11) 本件発明1は乙4発明に基づいて進歩性を欠き無効にされるべきものか - 9 -(12) 原告の損害額 4 争点についての当事者の主張(1) 争点(1)(被告LED1は構成要件1Aの「白色系を発光する」を充足するか)について【原告の主張】 被告LED1は,構成要件1Aの「白色系を発光する」を充足する。 本件明細書1の記載,白色光という用語の通常の意味や技術常識によれば,白色光という用語は,可視光の発光スペクトルを幅広く含んだ光という意味として,幅広い色味を含む用語として使用されている。これを踏まえると,「白色系を発光する」とは,白色光源が使用される幅広い分野に用いること が可能な光を幅広く含む概念であるというべきであり,被告LED1は,これを満たしている。 なお,被告らは,被告第2準備書面において,被告LED1が構成要件1Aを充足していることを認めているから,これを争う旨の被告らの主張自体が認められない。 【被告らの主張】ア被告LED1の色度点・色度座標は,x=0.3261,y=0.3409であり,色温度は5784Kである。 しかしながら,本件明細書1の段落【0069】には,「白色領域」とは,図16中の斜線 ア被告LED1の色度点・色度座標は,x=0.3261,y=0.3409であり,色温度は5784Kである。 しかしながら,本件明細書1の段落【0069】には,「白色領域」とは,図16中の斜線を付した部分と明記されているから,構成要件1Aに 規定する「白色系を発光する発光ダイオード」とは,要するに,図16中に斜線を付した「白色領域」の光を発光する発光ダイオードの意味であると解するのが妥当である。 したがって,被告LED1は構成要件1Aを充足しない。 イなお,原告は,「白色光」とは「可視光の発光スペクトルを幅広く含ん だ光」を意味する旨主張する。 - 10 -しかしながら,発光ダイオード(発光素子)の技術分野では,「白色」は,「人間の色感覚上,好感の持てる色」であって,互いに補色関係にある複数の波長の光の混色により得られる色として理解されている。また,本件明細書1においても,色のばらつきや色むらが問題にされていることから,白色とは,「可視光の発光スペクトルを幅広く含んだ光」ではなく, 色味としての白色であることを意味している。 (2) 争点(2)(被告LED1は構成要件1E及び2Dを充足するか)について【原告の主張】ア被告LED1は,「YとAlを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」を含んでいるから,構成要件1E及び2Dを充足する。 イこれに対し,被告らは,本件各発明の発光ダイオードに含まれる蛍光体は蛍光体1E又は蛍光体2Dに限られ,これらの蛍光体以外の蛍光体と組み合わせられた構成は本件各発明の技術的範囲に含まれない旨主張する。 しかしながら,構成要件1Eの「含む」及び構成要件2Dの「含有」は,いずれも対象となる物質を成分や要素として含んでいれば良く,他の物質 が含 は本件各発明の技術的範囲に含まれない旨主張する。 しかしながら,構成要件1Eの「含む」及び構成要件2Dの「含有」は,いずれも対象となる物質を成分や要素として含んでいれば良く,他の物質 が含まれることを排除する意味を有していない。 また,本件各明細書に他の蛍光体を含んだ例が記載されていないのは,本件各発明の優先日当時,窒化ガリウム系化合物半導体発光素子からの強いエネルギーに耐え得る耐久性の高い蛍光体が発見されていなかったために,YAG系蛍光体とその他の耐久性の高いYAG系蛍光体以外の蛍光体 とを組み合わせる例を記載していなかったにすぎないから,色温度を調整するなどの目的でYAG系蛍光体以外の蛍光体を含有させたとしても,本件各発明の技術的範囲から外れることはないというべきである。 【被告らの主張】ア本件発明1の構成要件1Eは,蛍光体1E以外の蛍光体も含み得るかの ような記載になっている。 - 11 -しかしながら,本件明細書1には,「より高輝度で,長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することを目的とする」本件発明1の発光ダイオードに含まれる蛍光体として,蛍光体1E以外の蛍光体は開示されていないから,構成要件1Eには,蛍光体1E以外の蛍光体は含まれるべきではない。 しかるに,被告LED1には,蛍光体1E以外の蛍光体である「Ba及びCeを主要な構成元素とする粒子」や「N,O,Al,Si,Ca,Sr,Euを構成元素とする蛍光体」が含まれるから,被告LED1は構成要件1Eを充足しない。 イ本件発明2の構成要件2Dについても,同様に,蛍光体2D以外の蛍光 体は含まれるべきではない。 しかるに,被告LED1には,蛍光体2D以外の蛍光体である「B 構成要件1Eを充足しない。 イ本件発明2の構成要件2Dについても,同様に,蛍光体2D以外の蛍光 体は含まれるべきではない。 しかるに,被告LED1には,蛍光体2D以外の蛍光体である「Ba及びCeを主要な構成元素とする粒子」及び「N,O,Al,Si,Ca,Sr,Euを構成元素とする蛍光体」が含まれるから,被告LED2は構成要件2Dを充足しない。 (3) 争点(3)(被告LED1の構成2bは構成要件2Bの「前記凹部に充填されて」を充足するか)について【原告の主張】本件発明2は物の発明であるから,構成要件2Bの「充填されて」とは,「凹部」と「コーティング樹脂」との位置関係として,「凹部」の中に「コ ーティング樹脂」が充満していることを意味していると解すべきである。 そうすると,仮に被告LED1は樹脂が形成された後に凹部が形成されたものであったとしても,被告LED1は凹部の中に樹脂が充満していることに変わりがないのであるから,いずれにしても被告LED1は構成要件2Bを充足するというべきである。 【被告らの主張】 - 12 -被告LED1の「樹脂」は,予め設けられた「凹部」の内部に充填されたものではなく,樹脂を塗布等した後に凹部が形成されたものであるから,被告LED1は構成要件2Bの「前記凹部に充填されて」を充足しない。 (4) 争点(4)(被告LED1の構成2dのガーネット系蛍光体の濃度は構成要件2Fの「前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップ側に向かっ て高くなっている」との文言を充足するか)について【原告の主張】ア被告LED1は,蛍光体がLEDチップの周辺に高密度に存在し,コーティング樹脂中のガーネット系蛍光体の濃度がその表面側と比較してLEDチップ側に向かって高 足するか)について【原告の主張】ア被告LED1は,蛍光体がLEDチップの周辺に高密度に存在し,コーティング樹脂中のガーネット系蛍光体の濃度がその表面側と比較してLEDチップ側に向かって高くなっているから,構成要件2Fを充足する。 イ被告らは,被告LED1の凹部内の樹脂は2層に分割されており,このうち蛍光体を含有している層がコーティング樹脂であり,これを含有していない層はモールド樹脂であることを前提にして,被告LED1が構成要件2Fを充足しない旨主張する。 しかしながら,被告らが2層の分かれ目であると主張する線は,被告ら が恣意的に境界線としたものにすぎず,被告LED1の樹脂が当該線によって2層に分割されているとする根拠となるものではない。 また,仮に凹部内の樹脂が2層に分割されていたとしても,本件発明2は,対象とする「コーティング樹脂」が「前記凹部に充填されて前記LEDチップを覆う・・・樹脂」であるとしており,本件明細書2においても, 同様に,凹部に樹脂が形成されたものは,その全体として,モールド部材(樹脂)ではなく,コーティング樹脂としている。そして,本件発明2の作用効果は外部から侵入してくる水分の影響を防止することにあるところ,そのような作用効果を阻害するものではないから,本件発明2では,2分割されているか否かは問題とならないのであって,本件発明2は「凹部を 充填する・・・樹脂」が1層であるか,2層であるかを特定することなく, - 13 -「凹部を充填する・・・樹脂」における蛍光体の分布を問題にしているから,被告らの主張は成り立たない。 【被告らの主張】被告LED1は,LEDチップを覆って蛍光体を含む樹脂が設けられ,その上に蛍光体を含まない樹脂が形成されたものであるところ,前者の にしているから,被告らの主張は成り立たない。 【被告らの主張】被告LED1は,LEDチップを覆って蛍光体を含む樹脂が設けられ,その上に蛍光体を含まない樹脂が形成されたものであるところ,前者の樹脂が 本件発明2の「コーティング樹脂」に当たり,後者の樹脂が本件発明2の「モールド樹脂」に当たる。そして,前者の樹脂中において,蛍光体の濃度は実質的に均一であるから,被告LED1は本件発明2の構成要件2Fを充足しない。 (5) 争点(5)(被告LED2は構成要件1Aの「白色系を発光する」を充足す るか)について【原告の主張】ア本件発明1の発光色は,ある特定の技術分野において「白」といわれる色に限定されるものではなく,本件発明1が規定する青色発光素子とガーネット系蛍光体とを組み合わせることで得られる混色光を広く包含するも のであるといえる。このことは,本件発明1を含む一連の関連出願に係る発明の技術的な意義が,耐久性の高い「白色系LED」を得たことのみならず,その「白色系」についても,特定の技術分野において「白色」と定められている発光を得たことにあるのではなく,青色LEDと蛍光体という異種の技術の融合をしたことによって,多種多様な技術分野において 「白い光」として使用できるブロードな発光スペクトルを得た点にあることからも明らかである。また,本件明細書1の記載内容を見ても,「白色系」という文言は,単色性ピーク波長によって出すことができる「青色系の発光」などと対比された用語であり,青色系の発光素子と黄色系の蛍光体の混色によって発生させる,単色性ピーク波長によっては出すことので きないブロードな波長を有する白色の系統の色(混色)を広く包含するも - 14 -のとして用いられていることが明らかである。 よって発生させる,単色性ピーク波長によっては出すことので きないブロードな波長を有する白色の系統の色(混色)を広く包含するも - 14 -のとして用いられていることが明らかである。 さらに,JIS「航空標識の色」(甲36)においては,1900Kよりも低い色温度範囲の航空可変白を含めて白色としており,これによれば,「白色系」とは色温度の低い方向まで含まれるものである。 しかして,被告LED2は,目視で確認する限り,明らかに「白色」と 評価できる色である。また,被告LED2は携帯電話である被告製品2のフラッシュライトとして使用されているところ,フラッシュLEDの分野では,色温度が「2000~2500K」のものが「白色(white)」とされているから,色温度が2204Kである被告LED2は,その使用される技術分野における「白色」であるといえる。 イこれに対し,被告らは,本件明細書1の段落【0069】の「白色領域」が図16中の「斜線を付した部分」であるとし,それが本件発明1でいう「白色系」である旨主張する。しかしながら,図16中の斜線部分は,「表1に示した蛍光体とピーク波長465nmの青色LED(発光素子)とを組み合わせた白色系発光ダイオードで,実現できる色再現範囲」(段 落【0069】)を示すものにすぎないのであって,本件発明1の「白色系」を規定するものではない上,上記段落【0069】の記載内容に照らせば,本件明細書1では,「白色系発光ダイオード」の発光色が「色度図」上で「白色」とされる領域よりも幅広く,基本的には,青色発光素子とガーネット系蛍光体との組み合わせで実現できる色(混色)のことを示して いることが示されているといえる。したがって,段落【0069】に関する被告らの主張は誤りである。 ま は,青色発光素子とガーネット系蛍光体との組み合わせで実現できる色(混色)のことを示して いることが示されているといえる。したがって,段落【0069】に関する被告らの主張は誤りである。 また,被告らは,ANSI規格やJISZ9112規格に基づいて,被告LED2は「白色系」ではない旨主張している。しかしながら,被告らが示すこれらの規格は本件発明1の最先優先日当時の文献ではない上, これらの規格は本件発明1の「白色系」を規定するものではないから,被 - 15 -告らの主張は誤っている。 ウしたがって,被告LED2は構成要件1Aを充足する。 【被告らの主張】ア本件明細書1の段落【0069】には,「白色領域」とは,図16中の斜線を付した部分と明記されているから,構成要件1Aに規定する「白色 系を発光する発光ダイオード」とは,要するに,図16中に斜線を付した「白色領域」の光を発光する発光ダイオードの意味であると解するのが妥当である。 しかるに,被告LED2の発光スペクトル図を基に導き出した色度点・色度座標は,x=0.507,y=0.4179であり,色温度は220 4Kであるから,上記「白色領域」には当たらない。 イこれに対し,原告は,「白色光」とは「可視光の発光スペクトルを幅広く含んだ光」を意味する旨主張する。 しかしながら,前記のとおり,発光ダイオード(発光素子)の技術分野では,「白色」は,「人間の色感覚上,好感の持てる色」であって,互い に補色関係にある複数の波長の光の混色により得られる色として理解されている。また,本件明細書1においても,色のばらつきや色むらが問題にされていることから,白色とは,「可視光の発光スペクトルを幅広く含んだ光」ではなく,色味としての白色であることを意味している 解されている。また,本件明細書1においても,色のばらつきや色むらが問題にされていることから,白色とは,「可視光の発光スペクトルを幅広く含んだ光」ではなく,色味としての白色であることを意味している。 (6) 争点(6)(被告LED2は構成要件1Eを充足するか)について 【原告の主張】構成要件1Eの「含む」は,他の物質が含まれることを排除する意味を有しておらず,色温度を調整するなどの目的でYAG系蛍光体以外の蛍光体を含有させたとしても,本件発明1の技術的範囲から外れることはないというべきところ,被告LED2は,「YとAlを含んでなるセリウムで付活され たガーネット系蛍光体」を含んでいるから,構成要件1Eを充足する。 - 16 -【被告らの主張】本件明細書1には,「より高輝度で,長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することを目的とする」本件発明1の発光ダイオードに含まれる蛍光体として,蛍光体1E以外の蛍光体は開示されていないから,構成要件1Eには,蛍光体1E 以外の蛍光体は含まれるべきではない。 しかるに,被告LED2には,蛍光体1E以外の蛍光体である「Ba及びCeを主要な構成元素とする粒子」や「N,O,Al,Si,Ca,Sr,Euを構成元素とする蛍光体」が含まれるから,被告LED2は構成要件1Eを充足しない。 (7) 争点(7)(被告LED4は構成要件1Aの「白色系を発光する」を充足するか)について【原告の主張】被告LED4は,構成要件1Aの「白色系を発光する」を充足する。 前記のとおり,本件明細書1の記載,白色光という用語の通常の意味や技 術常識によれば,白色光という用語は,可視光の発光スペクトルを幅広く含んだ光という意味 の「白色系を発光する」を充足する。 前記のとおり,本件明細書1の記載,白色光という用語の通常の意味や技 術常識によれば,白色光という用語は,可視光の発光スペクトルを幅広く含んだ光という意味として,幅広い色味を含む用語として使用されている。これを踏まえると,「白色系を発光する」とは,白色光源が使用される幅広い分野に用いることが可能な光を幅広く含む概念であるというべきであり,被告LED1は,これを満たしている。 被告LED4の色温度は5395Kであるから,被告らの主張を前提にしても,被告LED4は「白色」である。 なお,被告らは,被告第18準備書面において,被告LED4が構成要件1Aを充足することを争っていないから,これを争う旨の被告らの主張自体が認められない。 【被告らの主張】 - 17 -ア本件明細書1の段落【0069】には,「白色領域」とは,図16中の斜線を付した部分と明記されているから,構成要件1Aに規定する「白色系を発光する発光ダイオード」とは,要するに,図16中に斜線を付した「白色領域」の光を発光する発光ダイオードの意味であると解するのが妥当である。 しかるに,被告LED4の色度点・色度座標は,x=0.333,y=0.352であり,色温度は5395Kであるから,上記「白色領域」には当たらない。 イなお,原告は,「白色光」とは「可視光の発光スペクトルを幅広く含んだ光」を意味する旨主張する。 しかしながら,発光ダイオード(発光素子)の技術分野では,「白色」は,「人間の色感覚上,好感の持てる色」であって,互いに補色関係にある複数の波長の光の混色により得られる色として理解されている。また,本件明細書1においても,色のばらつきや色むらが問題にされていることから,白色とは,「可 感の持てる色」であって,互いに補色関係にある複数の波長の光の混色により得られる色として理解されている。また,本件明細書1においても,色のばらつきや色むらが問題にされていることから,白色とは,「可視光の発光スペクトルを幅広く含んだ光」ではなく, 色味としての白色であることを意味している。 (8) 争点(8)(被告LED4は構成要件1Eを充足するか)について【原告の主張】構成要件1Eの「含む」は,他の物質が含まれることを排除する意味を有しておらず,色温度を調整するなどの目的でYAG系蛍光体以外の蛍光体を 含有させたとしても,本件発明1の技術的範囲から外れることはないというべきところ,被告LED4は,「YとAlを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」を含んでいるから,構成要件1Eを充足する。 【被告らの主張】本件明細書1には,「より高輝度で,長時間の使用環境下においても発光 光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することを - 18 -目的とする」本件発明1の発光ダイオードに含まれる蛍光体として,蛍光体1E以外の蛍光体は開示されていないから,構成要件1Eには,蛍光体1E以外の蛍光体は含まれるべきではない。 しかるに,被告LED4には,蛍光体1E以外の蛍光体である「Baを含む粒子」や「C,N,O,Al,Si,Ca,Sr,Euを構成元素とする 蛍光体」が含まれるから,被告LED4は構成要件1Eを充足しない。 (9) 争点(9)(本件発明1は乙1発明と同一のものであり,同日出願要件(法39条2項)違反により無効にされるべきものか)について【被告らの主張】ア本件発明1と乙1発明とを対比すると,①乙1発明ではLEDチップが マウント・リードのカップ内に配置されてい 法39条2項)違反により無効にされるべきものか)について【被告らの主張】ア本件発明1と乙1発明とを対比すると,①乙1発明ではLEDチップが マウント・リードのカップ内に配置されていると規定されているのに対し,本件発明1ではかかる規定がない点,②乙1発明ではLEDチップの発光スペクトルが450nmから475nmの単色性ピーク波長であるのに対し,本件発明1では発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲内にあるとされている点,③乙1発明ではLEDチップと導電性ワイヤー を用いて電気的に接続させたインナー・リードを備えると規定されているのに対し,本件発明1ではかかる規定がない点,④乙1発明ではLEDチップが発光した光によって励起され発光する蛍光体を含有する透明樹脂を前記カップ内に充填させたコーティング樹脂を備えると規定されているのに対し,本件発明1ではかかる規定がない点,⑤乙1発明ではコーティン グ部材,LEDチップ,導電性ワイヤー及びマウント・リードとインナー・リードの先端を被覆するモールド部材とを有すると規定されているのに対し,本件発明1ではかかる規定がない点,⑥乙1発明の蛍光体は「(RE1-xSmx)3(AlyGa1-y)5O12:Ce(ただし,0≦x<1,0≦y≦1,REは,Y,Gdから選択される少なくとも1種であ る)」のに対し,本件発明1の蛍光体は「Y及びGdからなる群から選ば - 19 -れた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」である点,⑦乙1発明では「LEDチップからの光及び蛍光体からの光はモールド部材を透過することによって」と規定されているのに対し,本件発明1では「LEDチップによ ムで付活されたガーネット系蛍光体」である点,⑦乙1発明では「LEDチップからの光及び蛍光体からの光はモールド部材を透過することによって」と規定されているのに対し,本件発明1では「LEDチップによって発光された光の一部を吸収して, 吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する」と規定されている点,⑧乙1発明では「高演色性」との規定があるのに対し,本件発明1ではかかる規定がない点において,一応,相違していると認定され得る。 イしかしながら,これらの相違点のうち,上記①,③,④,⑤及び⑦については,混色により白色系の光が発光可能なリードタイプの発光ダイオー ドにおいて,LEDチップがマウント・リードのカップ内に配置されている態様(上記①),上記LEDチップと導電性ワイヤーを用いて電気的に接続させたインナー・リードを備える態様(上記③),上記LEDチップが発光した光によって励起され発光する蛍光体を含有する透明樹脂を前記カップ内に充填させたコーティング部材を備える態様(上記④),上記コ ーティング部材,LEDチップ,導電性ワイヤー及びマウント・リードとインナー・リードの先端を被覆するモールド部材とを有する態様(上記⑤),「マウント・リードタイプの発光ダイオード」においてモールド部材を設けること(上記⑦)は,本件出願1及び乙1出願の最先優先日当時,周知・慣用なものであったから,いずれも課題解決のための具体的な手段 における微差でしかなく,実質的な相違点とはいえない。 次に,上記②については,乙1発明において,「420~490nm」の範囲に含まれる「450nmから475nm」の範囲を選択する程度のことは設計事項の範ちゅうにすぎず,課題解決のための具体的手段における微差でしかない。 また,上記⑥については,乙1発 」の範囲に含まれる「450nmから475nm」の範囲を選択する程度のことは設計事項の範ちゅうにすぎず,課題解決のための具体的手段における微差でしかない。 また,上記⑥については,乙1発明の蛍光体は「Sm」を組成として含 - 20 -まないものを包含するから,その場合には蛍光体組成は本件発明1の蛍光体と相違しないし,本件発明1の「YとAlを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」がこれら以外の組成が含有されていないという意味でないのであれば,本件発明1の蛍光体はSmを含み得るのであるから,本件発明1は,蛍光体に関し,単に,乙1発明の発明特定事項を上 位概念として表現したものにすぎず,「蛍光体の組成として異なる物質が規定されている」とはいえないから,相違点とはいえない。 さらに,上記⑧については,「高演色性」とは,単に,自然光を基準とした場合に,比較対象の光源がどのくらい基準から離れているかという光源としての性質(演色性)が「高い」というにすぎず,乙1発明において その程度が数値化されて規定されているわけではなく,しかも,本件発明1もLEDチップからの青色の光とYAG系蛍光体からの黄色系の光との混色により白色系発光する発光ダイオードである以上,乙1発明のいうところの「高演色性」であることは自明であるから,実質的な相違点とはいえない。 したがって,本件出願1を先願とし乙1出願を後願とした場合には,乙1発明は本件発明1と実質的に同一であり,乙1出願を先願とし本件出願1を後願とした場合,本件発明1は乙1発明と実質的に同一であるといえるから,本件出願1及び乙1出願は,「同一の発明について同日に二以上の特許出願があつたとき」に該当し,これらが既に特許を受けており, 「協議をすることができない 発明と実質的に同一であるといえるから,本件出願1及び乙1出願は,「同一の発明について同日に二以上の特許出願があつたとき」に該当し,これらが既に特許を受けており, 「協議をすることができないとき」に該当するから,本件発明1は,法39条2項に違反し,法123条1項2号により無効にされるべきものである。 【原告の主張】ア本件発明1と乙1発明との間には,前記①ないし⑧の各相違点があると ころ,両発明は,いずれも,白色系を発光する発光ダイオードであり,青 - 21 -色光のLEDチップと,Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とAl及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付括されたガーネット系蛍光体による構成であり,長時間の使用環境下において,熱・光・水分という複合的な要因に対する耐久性を持つ発光ダイオードであるから,両発明が実質同一であり,法3 9条1項の「同一の発明」に当たるといえるためには,前記の各相違点が両発明の属する技術分野にとっての周知技術・慣用技術であることが必要である。 しかしながら,長時間の使用環境下において,熱・光・水分という複合的な要因に対する耐久性を持ち,実用化が可能な白色系に発光する発光ダ イオードは,本件発明1や乙1発明を含む関連発明によって初めて実現されたものであり,前例のない新しい技術分野における発明であるから,そもそも周知技術や慣用技術というものが存しない分野である。 したがって,前記の各相違点が両発明の属する技術分野にとっての周知技術・慣用技術を付加したものであるとはいえないことが明らかである。 イ前記①,③,④,⑤及び⑦の各相違点については,乙1明細書には,蛍光体を含有するコーティング部の周囲にモールド部材を 技術・慣用技術を付加したものであるとはいえないことが明らかである。 イ前記①,③,④,⑤及び⑦の各相違点については,乙1明細書には,蛍光体を含有するコーティング部の周囲にモールド部材を設けることによる独自の効果が記載されているから,上記各相違点が周知技術・慣用技術を付加したものであると仮定したとしても,そのような技術を付加することによって新たな効果を奏することになっていることから,課題解決のため の具体化手段における微差とはいえない。 ウ前記②の相違点については,LEDチップの発光スペクトルは蛍光体に対する励起効率に大きく影響し,白色系発光ダイオードの輝度や光の色に直接影響する極めて重要な要素であるから,課題解決のための具体化手段における微差とはいえない。 エ前記⑥の相違点については,サマリウム(Sm)を含むことが要素とな - 22 -っているか否かであるところ,蛍光体の組成として異なる物質が規定されている以上,課題解決のための具体化手段における微差とはいえない。 オ前記⑧の相違点については,演色性は白色特有の概念であり,白色系発光ダイオードに関する発明についての差異であるから,実質的な差異である。 カ以上のとおり,本件発明1と乙1発明には相違点が8つもあり,これらはいずれも実質的な相違点であるといえるから,法39条1項にいう「同一の発明」に当たらないことは明らかである。 (10) 争点(10)(本件各発明はサポート要件違反により無効にされるべきものか)について 【被告らの主張】ア構成要件1E及び2Dは「Gd」のみがYAG系蛍光体のYサイトを占める態様を包含している点構成要件1E及び2Dは,その文言上,「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素」ない ア構成要件1E及び2Dは「Gd」のみがYAG系蛍光体のYサイトを占める態様を包含している点構成要件1E及び2Dは,その文言上,「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素」ないし「Y,Lu及びGdからなる群から 選ばれた少なくとも1つの元素」である「Gd」のみがYAG系蛍光体のY(イットリウム)サイトの全てを占める態様を包含する。 しかしながら,本件各明細書を参酌すれば,かかる組成のガーネット系蛍光体を用いた場合には,発光ダイオードの輝度は低いものとならざるを得ず,「より高輝度で,長時間の使用環境下においても発光光度及び発光 光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することを目的とする」本件各発明の保護範囲のものとはいえない。 したがって,本件各発明は,その文言上,発明の詳細な説明に記載されていない態様を包含し,サポート要件に違反するものというべきである。 イ構成要件1E及び2Dは「Ga」のみがYAG系蛍光体のAlサイトを 占める態様を包含している点 - 23 -構成要件1E及び2Dは,その文言上,「Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素」である「Ga」のみがYAG系蛍光体のAl(アルミニウム)サイトの全てを占める態様を包含する。 しかしながら,本件各明細書を参酌すれば,かかる組成のガーネット系蛍光体を用いた場合には,発光ダイオードの輝度は低いものとならざるを 得ず,「より高輝度で,長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することを目的とする」本件各発明の保護範囲のものとはいえない。 したがって,本件各発明は,その文言上,発明の詳細な説明に記載されていない態様を包含し,サポート要件に違反するものというべき 置を提供することを目的とする」本件各発明の保護範囲のものとはいえない。 したがって,本件各発明は,その文言上,発明の詳細な説明に記載されていない態様を包含し,サポート要件に違反するものというべきである。 【原告の主張】ア構成要件1E及び2Dは「Gd」のみがYAG系蛍光体のYサイトを占める態様を包含している点本件各発明は,従来の蛍光体との比較において,長時間使用しても高輝度な発光を維持できる発光ダイオードを得ることを目的とするものであり, 当該目的は,変換効率が高く,また,他の蛍光体と比べて耐久性・耐熱性に優れた特許請求の範囲に記載された蛍光体を使用することで達成可能であることは,当業者が当然に理解することである。しかも,本件各明細書の実施例8には,100%Gd置換蛍光体が開示されている。 したがって,構成要件1E及び2Dは「Gd」のみがYAG系蛍光体の Yサイトを占める態様を包含している点を理由とする被告らのサポート要件違反の主張は成り立たない。 イ構成要件1E及び2Dは「Ga」のみがYAG系蛍光体のAlサイトを占める態様を包含している点前記アと同様に,当業者であれば,本件各明細書の記載から,特許請求 の範囲に記載された蛍光体はいずれも耐久性等が高く,高輝度を維持する - 24 -ことができると理解するから,構成要件1E及び2Dは「Ga」のみがYAG系蛍光体のAlサイトを占める態様を包含している点を理由とする被告らのサポート要件違反の主張は成り立たない。 (11) 争点(11)(本件発明1は乙4発明に基づいて進歩性を欠き無効にされるべきものか)について 【被告らの主張】ア乙4発明は,数々の波長の光を変換することができる発光ダイオードではあるものの,「白色系」を発光す 1は乙4発明に基づいて進歩性を欠き無効にされるべきものか)について 【被告らの主張】ア乙4発明は,数々の波長の光を変換することができる発光ダイオードではあるものの,「白色系」を発光するものかどうか不明である点(相違点①),窒化ガリウム系化合物半導体の発光により励起されて蛍光を発するものではあるが,その組成等が特定されていない点(相違点②)を除き, 本件発明1に記載された構成を備えているところ,数々の波長の光を変換することができる発光ダイオードであれば,白色系を発光する発光ダイオードとすることができることは自明であるから,相違点①は実質的な相違点ではない。 この点,原告は,相違点①及び②に加えて,本件発明1が「該LEDチ ップによって発光された光の一部を吸収」するのに対し,乙4発明はこの点が不明である点(相違点③)においても相違している旨主張する。 しかしながら,乙4発明の明細書には,「GaPの半導体材料を有する緑色発光素子の樹脂モールド中に,赤色顔料を添加すれば発光色は白色とすることができる」(段落【0003】)との事例が開示されているとこ ろ,上記事例において,赤色顔料がGaPからの緑色光を全部吸収しているとすると,GaP発光素子からの緑色光は外部に射出して混色に寄与することはないので,赤色顔料それ自体が白色系発光していることになるが,技術常識に照らして,そのような事象は起こり得ないから,赤色顔料はGaPからの緑色光を一部のみ吸収していることになる。 したがって,相違点③は,乙4発明の明細書において事実上開示されて - 25 -いるから,実質的な相違点とはいえない。 イそうすると,本件発明1が特許要件としての進歩性を有するといえるか否かは,本件発明1で用いる蛍光体として蛍光体1E て事実上開示されて - 25 -いるから,実質的な相違点とはいえない。 イそうすると,本件発明1が特許要件としての進歩性を有するといえるか否かは,本件発明1で用いる蛍光体として蛍光体1Eを選択することが本件出願1の最先優先日前の当業者にとって容易想到であるといえるか否かという問題となるところ,長時間の使用環境下においても発光光度及び発 光効率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供するためには,劣化し難い蛍光体を用いればよいことは明らかである。 そして,YAG系蛍光体が劣化し難い蛍光体である程度のことは,本件出願1の最先優先日当時の当業者にとっての技術常識でしかなく,かかるYAG系蛍光体としての蛍光体1Eは,当業者にとって周知・慣用の蛍光 体であった。加えて,かかるYAG系蛍光体は,蛍光体の光励起を利用して白色を得るディスプレイや白色ランプに用いる好ましい蛍光体としても周知であった。 ウしたがって,乙4発明に触れた当業者が劣化し難い蛍光体としてYAG系蛍光体を用いることは容易想到であったから,本件発明1は,本件出願 1の最先優先日当時,当業者において,乙4発明と周知・慣用技術に基づいて容易に発明することができたものであって,進歩性を欠き無効とされるべきものである。 【原告の主張】ア本件発明1と乙4発明とは,相違点①及び相違点②のほかに,本件発明 1が「該LEDチップによって発光された光の一部を吸収」するのに対し,乙4発明はこの点が不明である点(相違点③)においても相違している。 この点,被告らは,相違点①は実質的な相違点ではない旨主張するが,乙4発明は単に「数々の波長の光を変換することができる」と抽象的に記載されているだけで,「数々の波長の光」なる光の中に白色系発光が含ま れるか ,相違点①は実質的な相違点ではない旨主張するが,乙4発明は単に「数々の波長の光を変換することができる」と抽象的に記載されているだけで,「数々の波長の光」なる光の中に白色系発光が含ま れるか否か不明であるから,相違点①も実質的な相違点である。 - 26 -しかるに,被告らは,相違点①及び③について容易想到性を何ら主張していないから,この点において乙4発明に基づく進歩性欠如の主張は成り立たない。 イまた,被告らは,相違点②について,本件出願1の最先優先日当時,YAG系蛍光体が劣化し難い蛍光体であることは周知・慣用技術であり,か かるYAG系蛍光体は,蛍光体の光励起を利用して白色を得るディスプレイや白色ランプに用いる好ましい蛍光体であることは周知であった旨主張する。 しかしながら,本件発明1は,青色LEDチップの光と蛍光体の光との混色による白色系LEDにおいては,光・熱・水分という複合的な要素に よる劣化という新規な課題が存在することを見出し,また,これまでのLED分野では検討されてこなかった「演色性」という課題を新たに設定し,これらの課題を総合的に解決する蛍光体として特許請求の範囲に記載された蛍光体を選択したものであるのに対し,乙4発明では,LEDチップからの発光の一部吸収(青色LEDからの光と蛍光体からの光の混色)とい う概念さえ開示されておらず,また,光・熱・水分という複合的な要素による劣化という課題の示唆もなく,さらに,「演色性」とは全く異なる「視感度の向上」が課題とされているのであるから,このような乙4発明に基づいて,本件発明1を想到できるものではない。 また,被告らは,本件発明1や乙4発明とは無関係の技術分野の文献に 基づいてYAG系蛍光体が周知である旨主張するが,蛍光体として周知な 4発明に基づいて,本件発明1を想到できるものではない。 また,被告らは,本件発明1や乙4発明とは無関係の技術分野の文献に 基づいてYAG系蛍光体が周知である旨主張するが,蛍光体として周知なものはほかにも無数に存在するのであるから,YAG系蛍光体がある技術分野において周知であったとしても,それを白色系LED分野に適用できる理由にはならない。 むしろ,乙4発明の発光素子のピーク波長である370nm付近の光 (紫外線)は人体に有害であるところ,乙4発明でガーネット系蛍光体を - 27 -用いると,このような有害な紫外線が蛍光体に吸収されずに放出されてしまうから,乙4発明にガーネット系蛍光体を採用することには,阻害事由があるとさえいえる。 ウしたがって,乙4発明から本件発明1を想到することはできない。 (12) 争点(12)(原告の損害額)について 【原告の主張】(被告ASUSに対する請求)ア特許法102条2項(3項の重畳適用)により請求できる損害額被告ASUSの被告製品1(被告LED1搭載)の販売による利益額は,●(省略)●円であり(乙67の1),被告製品2(被告LED2及び被 告LED4搭載)の販売による利益額は,●(省略)●円である(乙67の2)。そして,被告製品がスマートフォンであることを考慮しても,推定覆滅割合は85パーセントというべきであるから,原告が被告ASUSに対し特許法102条2項により請求できる損害額は,被告製品1について●(省略)●円,被告製品2について●(省略)●円である。 しかして,上記の推定覆滅により控除された分(85パーセント分)については,特許法102条3項の重畳適用が認められるべきであるから,原告の損害額としては,上記の額に,さらに,売上額 。 しかして,上記の推定覆滅により控除された分(85パーセント分)については,特許法102条3項の重畳適用が認められるべきであるから,原告の損害額としては,上記の額に,さらに,売上額に相当な実施料率と認められる1パーセントを乗じた額(被告製品1について●(省略)●円,被告製品2について●(省略)●円)を加算すべきである。 そうすると,特許法102条2項(3項の重畳適用)により算定される原告の損害額は,被告製品1について●(省略)●円,被告製品2について●(省略)●円であり,その合計は,●(省略)●円となる。 イ特許法102条3項により請求できる損害額被告ASUSの被告製品1(被告LED1搭載)の売上額は,●(省略) ●円であり(乙67の1),被告製品2(被告LED2及び被告LED4 - 28 -搭載)の売上高は,●(省略)●円である(乙67の2)。 そうすると,特許法102条3項により算定される原告の損害額は,上記の額に,相当な実施料率と認められる1パーセントを乗じた額であるから,被告製品1について●(省略)●円,被告製品2について●(省略)●円の合計額●(省略)●円である。 ウ上記ア又はイの額に,弁護士費用172万8000円を加算して得られる額が,原告の被った損害額であり(アについて●(省略)●円,イについて●(省略)●円),いずれについても,そのうちの1585万6000円及びこれに対する遅延損害金を,明示的一部請求として請求する(両請求の関係は,選択的請求の関係にあるものとして主張する。)。 (被告シネックスに対する請求)ア特許法102条2項(3項の重畳適用)等により請求できる損害額被告シネックスの被告製品1(被告LED1搭載)の販売による利益額は,● する。)。 (被告シネックスに対する請求)ア特許法102条2項(3項の重畳適用)等により請求できる損害額被告シネックスの被告製品1(被告LED1搭載)の販売による利益額は,●(省略)●円(売上額●(省略)●円から仕入額●(省略)●円を控除した額)である(乙73の1,74の1)。 また,被告シネックスの被告製品2(被告LED2及び被告LED4搭載)の販売による利益額は,●(省略)●円(主位的主張・仕入額ゼロ),又は,●(省略)●円(予備的主張,仕入額●(省略)●円)である。 そして,被告製品がスマートフォンであることを考慮しても,推定覆滅割合は85パーセントというべきであるから,原告が被告シネックスに対 し特許法102条2項により請求できる損害額は,被告製品1について●(省略)●円,被告製品2について●(省略)●円(主位的主張)又は●(省略)●円(予備的主張)である。 しかして,上記の推定覆滅により控除された分(85パーセント分)については,特許法102条3項の重畳適用が認められるべきであるから, 原告の損害額としては,上記の額に,さらに,売上額に相当な実施料率と - 29 -認められる1パーセントを乗じた額(被告製品1について●(省略)●円,被告製品2について●(省略)●円)を加算すべきである。 そうすると,特許法102条2項(3項の重畳適用)により算定される原告の損害額は,被告製品1について●(省略)●円,被告製品2について●(省略)●円(主位的主張)又は●(省略)●円(予備的主張)であ り,その合計は,●(省略)●円(主位的主張)又は●(省略)●円(予備的主張)となる。 イ特許法102条3項により請求できる損害額被告シネックスの被告製品1(被告LED1搭 張)であ り,その合計は,●(省略)●円(主位的主張)又は●(省略)●円(予備的主張)となる。 イ特許法102条3項により請求できる損害額被告シネックスの被告製品1(被告LED1搭載)の売上額は,●(省略)●円であり(乙73の1),被告製品2(被告LED2及び被告LE D4搭載)の売上高は,●(省略)●円である(乙73の2)。 そうすると,特許法102条3項により算定される原告の損害額は,上記の額に,相当な実施料率と認められる1パーセントを乗じた額であるから,被告製品1について●(省略)●円,被告製品2について●(省略)●円の合計額●(省略)●円である。 ウ上記ア又はイの額に,弁護士費用172万8000円を加算して得られる額が,原告の被った損害額であり(アについて●(省略)●円(主位的主張)又は●(省略)●円(予備的主張),イについて●(省略)●円),いずれについても,そのうちの2000万円及びこれに対する遅延損害金を,明示的一部請求として請求する(両請求の関係は,選択的請求の関係 にあるものとして主張する。)。 【被告らの主張】ア本件特許権侵害に基づく損害額を算定するに当たっては,スマートフォンである被告製品全体ではなく,被告LED1,4の譲渡により被告らが得た利益を基準とすべきである。 しかして,被告LED1,被告LED4の単価は,いずれも,●(省略) - 30 -●〔USD(USドル)〕である。 そうすると,被告製品1に占める被告LED1の部分構成比は,●(省略)●〔USD〕/●(省略)●〔USD〕=●(省略)●パーセントであり,被告製品2に占める被告LED4の部分構成比は, ●(省略)●〔USD〕/●(省略)●〔USD〕=●(省略)●パーセ ●〔USD〕/●(省略)●〔USD〕=●(省略)●パーセントであり,被告製品2に占める被告LED4の部分構成比は, ●(省略)●〔USD〕/●(省略)●〔USD〕=●(省略)●パーセントである(乙71)。 イ被告ASUSについて被告製品1(被告LED1搭載)の販売数量は●(省略)●台,被告製 品2(被告LED4搭載)の販売数量は●(省略)●台である。 そして,単位利益額に,販売数量を乗じた総利益額は,被告製品1につき●(省略)●円,被告製品2につき●(省略)●円となる(乙67)。 そうすると,被告LED1については,●(省略)●円に●(省略)●パーセントを乗じた額である34万4632円,被告LED4については, ●(省略)●円に●(省略)●パーセントを乗じた額である30万5605円が逸失利益の上限となる(合計65万0237円)。しかして,本件では,市場における他の競合品の存在や特許発明の寄与が低いという覆滅事由があり,上記のうち少なくとも90パーセントは推定が覆滅されるべきであるから,原告の損害額は,6万5024円を上回らない。 ウ被告シネックスについて被告製品1(被告LED1搭載)の販売数量は●(省略)●台,被告製品2(被告LED4搭載)の販売数量は●(省略)●台である。 そして,単位利益額に,販売数量を乗じた総利益額は,被告製品1につき●(省略)●円,被告製品2につき●(省略)●円となる(乙68,6 9,73,74)。 - 31 -そうすると,被告LED1については,●(省略)●円に●(省略)●パーセントを乗じた額である15万1839円,被告LED4については,●(省略)●円に●(省略)●パーセントを乗じた額である27万5130円が逸 被告LED1については,●(省略)●円に●(省略)●パーセントを乗じた額である15万1839円,被告LED4については,●(省略)●円に●(省略)●パーセントを乗じた額である27万5130円が逸失利益の上限となる(合計42万6969円)。しかして,本件では,市場における他の競合品の存在や特許発明の寄与が低いという覆滅 事由があり,上記のうち少なくとも90パーセントは推定が覆滅されるべきであるから,原告の損害額は,4万2697円を上回らない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告LED1は構成要件1Aの「白色系を発光する」を充足するか),争点(5)(被告LED2は構成要件1Aの「白色系を発光する」を充足 するか),争点(7)(被告LED4は構成要件1Aの「白色系を発光する」を充足するか)について(1) 構成要件1Aは,「白色系を発光する」との文言であるところ,当該文言の有する通常の意味をみると,証拠(甲48)によれば,「白色」光には,白色の光という,光の色を表す意味もあるほか,太陽光のように各波 長の光が混合している光という,可視光の発光スペクトルが幅広く含まれるという意味もあることが認められる。しかし,本件発明は,その特許請求の範囲の記載からみても,本件明細書1の記載(【0001】,【0093】~【0101】,【0139】)からみても,照明の用途に限られない,発光ダイオードという光源に係る発明であるといえる。そして,本 件明細書1には,「発光素子として,青色系の発光が可能な発光素子を用いて,該発光素子をその発光を吸収して黄色系の光を発光する蛍光体を含有した樹脂によってモールドすることにより,混色により白色系の光が発光可能な発光ダイオードを作製することができる。」(【0006】)との記載があり,青 の発光を吸収して黄色系の光を発光する蛍光体を含有した樹脂によってモールドすることにより,混色により白色系の光が発光可能な発光ダイオードを作製することができる。」(【0006】)との記載があり,青色系,黄色系,白色系というように白色が他の色と並べ て表記され,光の色を表すものとして扱われている。さらに,本件明細書 - 32 -1には,「発光ダイオードの色調を、白色を含め電球色など任意に設定できる。」(【0047】),「図1又は図2に示す白色系の発光ダイオード501が、筺体504にマトリクス状に配列され、白黒用のLED表示装置として使用される。」(【0093】),「RGBの組合せで白色を表示しようとすると、見る角度によってRGBのうちのいずれか1つ又は いずれか2つの色が強調され、純粋な白を表現することができないが、本表示装置のように白色の発光ダイオードを追加することにより、そのような問題を解決することができる。」(【0099】)などの記載もあり,これらも,「白色」という用語が光の色を表すものとして使用されていることに沿う記載であるといえる。 なお,本件明細書1の「該発光素子の青色光と該蛍光体の蛍光光との混色による光は、演色性のよい良質な白色となり,その点で極めて優れた発光装置を提供できる。」(【0022】)との記載は,特定の発光装置における光が演色性に優れていることを表していると解し得るものであり,これをもって直ちに「白色」という用語が光の色を表すものとして使用されている ことと矛盾する記載ともいい難い。 そうすると,本件発明1の「白色系」は,光の色を表すものであって,可視光の発光スペクトルを幅広く含んでいることを表すものではないと解するのが相当である。 (2) そこで,続いて,「白色系」の そうすると,本件発明1の「白色系」は,光の色を表すものであって,可視光の発光スペクトルを幅広く含んでいることを表すものではないと解するのが相当である。 (2) そこで,続いて,「白色系」の光の色の範囲について検討すると,「白 色系」は,「系」という語が付加されていることから,単なる「白色」よりも広い範囲を含んでいると解するのが通常の語句の解釈である。そうすると,構成要件1Aの「白色系」は,純粋な白色だけでなく,「黄緑色がかった白色の光」(【0118】)や「緑色がかった白色の光」(【0119】)などの白っぽい光をある程度の範囲で含むものと考えられる。 そして,その具体的範囲については,本件明細書1の記載内容及び当業者 - 33 -の技術常識に基づいて解釈すべきものであるところ,本件明細書1の「表1に示した蛍光体とピーク波長465nmの青色LED(発光素子)とを組み合わせた白色系発光ダイオードで、実現できる色再現範囲」(【0069】)(白色領域,図16中斜線を付した部分)は,その内容に照らし,「白色系」の範囲を画する上で参考になるものである。もっとも,同領域は,明らかに 白色でない領域も一部含むから,同領域全てを直ちに構成要件1Aの「白色系」に当たるものということは困難であるが,上記斜線部分内の黒体放射軌跡に概ね沿っており色度図上で白の近傍であれば,「白色系」に当たることは明らかであるといえる。また,当業者の技術常識としては,乙61(日本工業規格「光源色の色名」(JISZ 8110-1984))に「参考図系統色名の 一般的な色度区分」として示されたものは,その内容に照らし,本件発明の原出願日前における光源色の色名に関する当業者の一般的な認識(技術常識)を表したものと考えられるから,同参考図にお 色名の 一般的な色度区分」として示されたものは,その内容に照らし,本件発明の原出願日前における光源色の色名に関する当業者の一般的な認識(技術常識)を表したものと考えられるから,同参考図において「黄赤」などの「白」以外に該当するものは,「白色系」に当たらないというべきである。 (3) そこで,被告LED1,2,4につき,構成要件1Aの「白色系を発光す る」を充足するかについて検討する。 ア被告LED1について弁論の全趣旨によれば,被告LED1の色度座標は,x=0.3261,y=0.3409 であり,色温度は5784Kであると認められる。そして,これを,本件明細書1の図16と照合すると,被告LED1の色度は,同図 16中斜線を付した部分にあり,同斜線部分内の黒体放射軌跡に概ね沿っており,乙61(日本工業規格「光源色の色名」(JISZ 8110-1984))に「参考図系統色名の一般的な色度区分」として示されたものと照合しても,「白」に該当するものである。 そうすると,被告LED1は,構成要件1Aの「白色系を発光する」を 充足するというべきである。被告らは,これを争うが,上記説示に照らし, - 34 -採用できない。 イ被告LED2について弁論の全趣旨によれば,被告LED2の色度座標は,x=0.507,y=0.4179であり,色温度は2204Kであると認められる。そして,これを,乙61(日本工業規格「光源色の色名」(JISZ 8110-1984))に「参考図 系統色名の一般的な色度区分」として示されたものと照合すると,「黄赤」に該当し,「白」,「(黄みの)白」,「(うすい)黄赤」のいずれにも該当しないものである。また,これを,本件明細書1の図16と照合しても,被告LED2の 分」として示されたものと照合すると,「黄赤」に該当し,「白」,「(黄みの)白」,「(うすい)黄赤」のいずれにも該当しないものである。また,これを,本件明細書1の図16と照合しても,被告LED2の色度は,同図16中斜線部分内の黒体放射軌跡に概ね沿ってはいるが,色度図上で白の近傍であるということはできない。 そうすると,被告LED2は,構成要件1Aの「白色系を発光する」を充足しないというべきであるから,被告LED2は,本件発明1の技術的範囲に属さないこととなる。 原告は,JIS「航空標識の色」(甲36)で,1900Kよりも低い色温度範囲の航空可変白を含めて白色としていることに基づいて,「白色 系」とは色温度の低い方向まで含まれると主張する。しかし,甲36によれば,航空可変白は,航空灯火の運用面の実態から,航空白に含まれないような光色を含めて航空可変白として規定したものであり,原告の上記主張をもって,前記説示が左右されることにはならないというべきである。 そうすると,原告の上記主張は採用することができない。 ウ被告LED4について弁論の全趣旨によれば,被告LED4の色度座標は,x=0.333,y=0.352であり,色温度は5395Kであると認められる。そして,これを,本件明細書1の図16と照合すると,被告LED4の色度は,同図16中斜線を付した部分にあり,同斜線部分内の黒体放射軌跡に概ね沿っており,乙 61(日本工業規格「光源色の色名」(JISZ 8110-1984))に「参考図 - 35 -系統色名の一般的な色度区分」として示されたものと照合しても,「白」に該当するものである。 そうすると,被告LED4は,構成要件1Aの「白色系を発光する」を充足するというべきである。被告らは,これを争うが の一般的な色度区分」として示されたものと照合しても,「白」に該当するものである。 そうすると,被告LED4は,構成要件1Aの「白色系を発光する」を充足するというべきである。被告らは,これを争うが,上記説示に照らし,採用できない。 2 争点(2)(被告LED1は構成要件1E及び2Dを充足するか)について(1) 前記前提事実(5)ア及びイのとおり,被告LED1は,蛍光体として,「YとAlを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」を含んでいるところ,この蛍光体が蛍光体1E及び2Dに当たることは明らかであるから,被告LED1は構成要件1E及び2Dに記載された構成を備え ていると認められる。 (2) もっとも,前記前提事実(5)ア及びイによれば,被告LED1は,蛍光体として,「YとAlを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」のほかに,少なくとも「N,O,Al,Si,Ca,Sr,Euを構成元素とする蛍光体」を含んでいるところ,被告らは,本件各発明の発光 ダイオードに含まれる蛍光体は蛍光体1E又は蛍光体2Dに限られ,これらの蛍光体以外の蛍光体と組み合わせられた構成は本件各発明の技術的範囲に含まれない旨主張する。 しかしながら,被告らの上記主張は採用できない。その理由は,次のとおりである。 ア前記前提事実(3)ア及びイのとおり,構成要件1Eは,本件発明1の発光ダイオードが「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体(蛍光体1E)とを含む」ことを,構成要件2Dは,本件発明2の発光ダイオードに 「Y,Lu及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,A - リウムで付活されたガーネット系蛍光体(蛍光体1E)とを含む」ことを,構成要件2Dは,本件発明2の発光ダイオードに 「Y,Lu及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,A - 36 -l及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付活されたガーネット系蛍光体(蛍光体2D)が含有されて」いることをそれぞれ規定しているところ,上記両構成要件の各文言は,文理上,本件各発明の発光ダイオードが少なくとも蛍光体1E又は蛍光体2Dを含んでいることを規定しているものであって,その他の蛍光体を 含むことを排除していないと解するのが相当である。 イまた,証拠(甲2の1,4)によれば,本件各明細書の【技術分野】の欄では,本件出願1及び本件出願2に係る特許発明は「発光素子が発生する光の波長を変換して発光するフォトルミネセンス蛍光体を備えた発光装置及びそれを用いた表示装置に関する」(段落【0001】)も のであり,「発光素子として,青色系の発光が可能な発光素子を用いて,該発光素子をその発光を吸収して黄色系の光を発光する蛍光体を含有した樹脂によってモールドすることにより,混色により白色系の光が発光可能な発光ダイオードを作製することができる」(段落【0006】)と説明されていること,「従来の発光ダイオードは,蛍光体の劣化によ って色調がずれたり,あるいは蛍光体が黒ずみ光の外部取り出し効率が低下する場合があるという問題点があった」(段落【0007】)とされ,【発明が解決しようとする課題】の欄では,「本願発明は上記課題を解決し,より高輝度で,長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することを目的 とする」(段落【0010】)と説明され,さらに, は上記課題を解決し,より高輝度で,長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することを目的 とする」(段落【0010】)と説明され,さらに,同【課題を解決するための手段】の欄では,課題を解決するための手段の一つとして,「発光素子と蛍光体との関係としては,蛍光体が発光素子からのスペクトル幅をもった単色性ピーク波長の光を効率よく吸収すると共に効率よく異なる発光波長が発光可能であること,が必要であると考え,鋭意検討 した結果,本発明を完成させた」(段落【0011】)などの説明がさ - 37 -れていることが認められる。 これらの記載内容に照らせば,本件各発明は,発光光度及び発光効率の低下や色ずれという技術的課題を解決するため,発光素子からの光とその光を吸収した蛍光体1E,(2D)からの光との混色により白色系の光を発光する発光ダイオードという構成を採用することにより,当該 蛍光体が当該発光素子からの光を効率よく吸収して効率よく異なる波長の発光をすることを可能なものとするなどして,上記課題を解決した点に,従来技術と異なる技術的思想の特徴的部分があるものと認められる。 そうすると,蛍光体1E又は2D以外の蛍光体を含む発光ダイオードであったとしても,当該発光ダイオードが発光素子からの光とその光を 吸収した蛍光体1E,(2D)からの光との混色により白色系の光を発光するものであれば,上記課題が解決されることは明らかであるから,構成要件1E及び2Dは,蛍光体1E又は2D以外の蛍光体を含む構成を排除していないと解するのが相当である。 ウしたがって,被告らの主張は採用できない。 (3) 以上によれば,被告LED1は構成要件1E及び2Dを充足していると認められる。 を含む構成を排除していないと解するのが相当である。 ウしたがって,被告らの主張は採用できない。 (3) 以上によれば,被告LED1は構成要件1E及び2Dを充足していると認められる。 3 争点(3)(被告LED1の構成2bは構成要件2Bの「前記凹部に充填されて」を充足するか)について(1) 「充填」とは,一般的には,「あいた所につめてふさぐこと」(広辞苑 第七版)を意味するところ,被告らは,被告LED1の「樹脂」は,樹脂を塗布等した後に凹部が形成されたものであるから,被告LED1は構成要件2Bを充足しない旨主張する。 しかしながら,前記2(2)イで判示したとおり,本件発明2は,「凹部内に配置された窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと,前記 凹部に充填されて前記LEDチップを覆うコーティング樹脂とを有する発 - 38 -光ダイオード」において,発光光度及び発光効率の低下や色ずれという技術的課題を解決するため,発光素子からの光とその光を吸収した蛍光体1E,(2D)からの光との混色により白色系の光を発光する発光ダイオードという構成を採用することにより,当該蛍光体が当該発光素子からの光を効率よく吸収して効率よく異なる波長の発光をすることを可能なものと するなどして,上記課題を解決した点に,従来技術と異なる技術的思想の特徴的部分があるものと認められるところ,発光光度及び発光効率の低下や色ずれは,「前記凹部」が形成される前に前記「コーティング樹脂」が形成されたものであるか,「前記凹部」が形成された後に前記「コーティング樹脂」が詰められたものであるかに関わりなく生じ得る課題であるし, いずれの場合であっても,発光素子からの光とその光を吸収した蛍光体1E,(2D)からの光との混色により白色系 記「コーティング樹脂」が詰められたものであるかに関わりなく生じ得る課題であるし, いずれの場合であっても,発光素子からの光とその光を吸収した蛍光体1E,(2D)からの光との混色により白色系の光を発光する発光ダイオードという構成を採用することは可能である。 そうすると,本件発明2において,「前記凹部に充填されて前記LEDチップを覆うコーティング樹脂」とは,「前記凹部」を形成した後に詰め られたものに特定する趣旨とは解されず,「前記凹部」に詰められた状態にあることを特定したものであると解するのが相当である。 (2) これを被告LED1について見ると,前記前提事実(5)イのとおり,被告LED1においては,凹部内の樹脂が1層か2層か争いがあるものの,いずれにしろ樹脂が凹部内に充満している(構成2b)のであるから,「前記凹 部に充填されて」を充足することは明らかである。 被告らは縷々主張するが,その主張を検討しても,その内容に照らし,上記説示を左右するものはない。 4 そして,前記3の認定に加え,弁論の全趣旨によれば,被告LED1の構成2cは構成要件2Cを充足することが認められる。 5 争点(4)(被告LED1の構成2dのガーネット系蛍光体の濃度は構成要件 - 39 -2Fの「前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップ側に向かって高くなっている」との文言を充足するか)について(1) 前掲前提事実(5)イのとおり,被告LED1においては,凹部内に樹脂が充満しているところ,被告らは,被告LED1は,LEDチップを覆って蛍光体を含む樹脂が設けられ,その上に蛍光体を含まない樹脂が形成され たものであり,本件発明2の「コーティング樹脂」は前者の樹脂のみであり,後者の樹脂は「モールド樹脂」である旨主張する を覆って蛍光体を含む樹脂が設けられ,その上に蛍光体を含まない樹脂が形成され たものであり,本件発明2の「コーティング樹脂」は前者の樹脂のみであり,後者の樹脂は「モールド樹脂」である旨主張する。 そこで検討するに,前掲前提事実(5)イのとおり,被告LED1は,凹部内に配置されたLEDチップと上記凹部内に充填されて上記LEDチップを覆う樹脂とを有する,いわゆるチップタイプの発光ダイオードであるところ, 証拠(甲4)によると,本件明細書2の【発明を実施するための最良の形態】の欄において,チップタイプの発光ダイオードの実施形態については,「筐体204の凹部に発光素子(LEDチップ)202が設けられ,該凹部に所定のフォトルミネッセンス蛍光体を含むコーティング材が充填されてコーティング部201が形成されて構成される」(段落【0035】)と説明され ていること,他方,リードタイプの発光の実施形態については,「マウント・リード105のカップ部105a上に発光素子102が設けられ,カップ部105a内に,発光素子102を覆うように,所定のフォトルミネッセンス蛍光体を含むコーティング樹脂101が充填された後に,樹脂モールドされて構成される」(段落【0033】)と説明されていること,そして, 発光ダイオードの構成部材であるモールド部材について,「モールド部材104は,発光素子102,導電性ワイヤー103,フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部101などを外部から保護する機能を有する」(段落【0077】)と説明されていることが認められる。 そうすると,これらの記載に接した当業者(その発明の属する技術の分野 における通常の知識を有する者。以下同じ。)としては,構成要件2Bの - 40 -「コーティング樹脂」とは られる。 そうすると,これらの記載に接した当業者(その発明の属する技術の分野 における通常の知識を有する者。以下同じ。)としては,構成要件2Bの - 40 -「コーティング樹脂」とは,チップタイプの発光ダイオードにおいては,LEDチップが配置された凹部内に充填された樹脂のことを指すものと理解する一方,「モールド部材」とは,リードタイプの発光ダイオードにおいて,発光素子が配置され,蛍光体を含むコーティング樹脂が充填されたカップ部を外部から保護するために,上記カップ部を覆っている樹脂部分を指すもの と理解すると認めるのが相当である。 これを被告LED1について見ると,上記のとおり,被告LED1はチップタイプの発光ダイオードであって,構成2bの樹脂はLEDチップが配置された凹部内に充填されたものであるから,それが1層であるか,2層であるかにかかわらず,構成2bの樹脂は構成要件2Bの「コーティング樹脂」 に当たると解するのが相当である。 (2) そこで構成2bの樹脂が「表面側から前記LEDチップ側に向かって高くなっている」構成を備えるものか検討するに,証拠(甲4)によると,本件明細書2の【技術分野】の欄には,従来の発光ダイオードの問題点として,「蛍光体の劣化によって色調がずれたり,あるいは蛍光体が黒ずみ 光の外部取り出し効率が低下する場合がある」(段落【0007】)こと,「また,発光素子の近傍に設けられた蛍光体は,発光素子の温度上昇や外部環境(例えば,屋外で使用された場合の太陽光によるもの等)によって高温にもさらされ,この熱によって劣化する場合がある」(段落【0008】)ことのほかに,「蛍光体によっては,外部から侵入する水分や,製 造時に内部に含まれた水分と,上記光及び熱とによって,劣化が促進される れ,この熱によって劣化する場合がある」(段落【0008】)ことのほかに,「蛍光体によっては,外部から侵入する水分や,製 造時に内部に含まれた水分と,上記光及び熱とによって,劣化が促進されるものもある」(段落【0009】)ことが挙げられていること, そして,同【発明を実施するための最良の形態】の欄には,「フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部やモールド部材の表面側から発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高くした場合は,外部 環境からの水分などの影響をより受けにくくでき,水分による劣化を防止 - 41 -することができる。」(段落【0047】)と説明されていることが認められる。 これらの記載に照らせば,構成要件2Fの「前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップ側に向かって高くなっている」とは,コーティング樹脂に含有される蛍光体が外部から侵入する水分や太陽光の熱などの外部環 境から影響を受けにくくし,その劣化を防止するため,蛍光体をコーティング樹脂の表面側よりもLEDチップ側に偏らせて分布させることを規定したものであって,これは,コーティング樹脂中の蛍光体の含有分布を全体としてみたときに,蛍光体の含有分布がコーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に有意に偏っており表面側からLEDチップ側に向かって蛍光体濃度 が高くなることはあっても,有意に低くなることはない状態を意味するものと解するのが相当である。 これを被告LED1について見ると,前掲前提事実(5)イによれば,被告LED1においては,構成2bの樹脂中の蛍光体は,LEDチップの周辺に高密度に存在する一方,同樹脂の表面側にはほとんど存在していないと認め られる。そうすると,同樹脂中の蛍光体の含有分布を全体としてみる おいては,構成2bの樹脂中の蛍光体は,LEDチップの周辺に高密度に存在する一方,同樹脂の表面側にはほとんど存在していないと認め られる。そうすると,同樹脂中の蛍光体の含有分布を全体としてみると,蛍光体の含有分布が樹脂の表面側よりもLEDチップ側に有意に偏っており,表面側の方がLEDチップ側よりも蛍光体濃度が高くなっているといえるから,被告LED1は,構成要件2Fの「前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップ側に向かって高くなっている」構成を備えていると認めら れる。 被告らは縷々主張するが,その主張を検討しても,その内容に照らし,上記説示を左右するものはない。 6 争点(8)(被告LED4は構成要件1Eを充足するか)について前記前提事実(5)エによれば,被告LED4は,蛍光体として,「YとAl を含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」のほかに,少なくと - 42 -も「C,N,O,Al,Si,Ca,Sr,Euを構成元素とする蛍光体」を含んでいるところ,被告らは,本件発明1の発光ダイオードに含まれる蛍光体は蛍光体1Eに限られ,それ以外の蛍光体と組み合わせられた構成は本件発明1の技術的範囲に含まれない旨主張する。 しかしながら,前記2で判示したとおり,構成要件1Eは,蛍光体1E以外 の蛍光体を含む構成を排除していないと解するのが相当であるから,被告LED4は,構成要件1Eを充足すると認められる。 7 争点(9)(本件発明1は乙1発明と同一のものであり,同日出願要件(法39条2項)違反により無効にされるべきものか)について(1) 証拠(乙1の1,1の2)によれば,乙1発明は,「マウント・リード のカップ内に配置させた発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり発光スペクトルが45 にされるべきものか)について(1) 証拠(乙1の1,1の2)によれば,乙1発明は,「マウント・リード のカップ内に配置させた発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり発光スペクトルが450nmから475nmの単色性ピーク波長を発光するLEDチップと,該LEDチップと導電性ワイヤーを用いて電気的に接続させたインナー・リードと,前記LEDチップが発光した光によって励起され発光する蛍光体を含有する透明樹脂を前記カップ内に充填させたコーテ ィング部材と,該コーティング部材,LEDチップ,導電性ワイヤー及びマウント・リードとインナーリードの先端を被覆するモールド部材とを有する発光ダイオードであって,前記LEDチップは,InGaN発光層から青色発光し,前記蛍光体は(RE1-xSmx)3(AlyGa1-y)5O12:Ceであり,且つLEDチップからの光及び蛍光体からの光はモールド 部材を透過することによって白色系発光可能な高演色性発光ダイオード。 ただし,0≦x<1,0≦y≦1,REは,Y,Gdから選択される少なくとも1種である。」というものであると認められる。 (2) そうすると,本件発明1と乙1発明とは,次の点において相違していると認められる。 ア乙1発明ではLEDチップがマウント・リードのカップ内に配置されて - 43 -いると規定されているのに対し,本件発明1ではかかる規定がない点(相違点①)イ乙1発明ではLEDチップの発光スペクトルが450ないし475nmの単色性ピーク波長であるのに対し,本件発明1では発光スペクトルのピークが420ないし490nmの範囲内にあるとされている点(相違点②) ウ乙1発明ではLEDチップと導電性ワイヤーを用いて電気的に接続させたインナー・リードを備えると規定 発光スペクトルのピークが420ないし490nmの範囲内にあるとされている点(相違点②) ウ乙1発明ではLEDチップと導電性ワイヤーを用いて電気的に接続させたインナー・リードを備えると規定されているのに対し,本件発明1ではかかる規定がない点(相違点③)エ乙1発明ではLEDチップが発光した光によって励起され発光する蛍光体を含有する透明樹脂を前記カップ内に充填させたコーティング樹脂を備 えると規定されているのに対し,本件発明1ではかかる規定がない点(相違点④)オ乙1発明ではコーティング部材,LEDチップ,導電性ワイヤー及びマウント・リードとインナー・リードの先端を被覆するモールド部材とを有すると規定されているのに対し,本件発明1ではかかる規定がない点(相 違点⑤)カ乙1発明の蛍光体は「(RE1-xSmx)3(AlyGa1-y)5O12:Ce(ただし,0≦x<1,0≦y≦1,REは,Y,Gdから選択される少なくとも1種である)」のに対し,本件発明1の蛍光体は「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al及びGaからな る群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」である点(相違点⑥)キ乙1発明では「LEDチップからの光及び蛍光体からの光はモールド部材を透過することによって」と規定されているのに対し,本件発明1では「LEDチップによって発光された光の一部を吸収して,吸収した光の波 長よりも長波長の光を発光する」と規定されている点(相違点⑦) - 44 -ク乙1発明では「高演色性」との規定があるのに対し,本件発明1ではかかる規定がない点(相違点⑧)(3) これに対し,被告らは,これらの相違点はいずれも実質的な相違点では ) - 44 -ク乙1発明では「高演色性」との規定があるのに対し,本件発明1ではかかる規定がない点(相違点⑧)(3) これに対し,被告らは,これらの相違点はいずれも実質的な相違点ではない旨主張するが,少なくとも,相違点②及び④については,実質的な相違点というべきものである。その理由は,次のとおりである。 ア相違点②について前記(2)イのとおり,本件発明1においては,発光層の発光スペクトルが420ないし490nmとされているのに対し,乙1発明は,発光層の発光スペクトルを450ないし475nmに限定しているところ,証拠(乙1の1)によれば,乙1明細書には,「本願発明の発光ダイオードに おいて白色系を発光させる場合は,フォトルミネセンス蛍光体との補色関係や樹脂劣化等を考慮して発光素子の発光波長は400nm以上530nm以下が好ましく,420nm以上490nm以下がより好ましい。LEDチップとフォトルミネセンス蛍光体との効率をそれぞれより向上させるためには,450nm以上475nm以下がさらに好ましい。」(段落 【0039】)と記載されていることが認められる。 この記載内容に照らせば,乙1発明は,発光層の発光スペクトルについて,「LEDチップとフォトルミネセンス蛍光体との効率をそれぞれより向上させる」という観点から,本件発明1と同じ「420nm以上490nm以下」のものに比べて,「さらに好ましい」形態である「450nm 以上475nm以下」に限定した構成を採用したものであると認められるところ,前記2(2)イで判示したとおり,本件発明1は,発光光度及び発光効率の低下や色ずれという技術的課題を解決するため,発光素子からの光とその光を吸収した蛍光体1E,(2D)からの光との混色により白色系の光を発光 )イで判示したとおり,本件発明1は,発光光度及び発光効率の低下や色ずれという技術的課題を解決するため,発光素子からの光とその光を吸収した蛍光体1E,(2D)からの光との混色により白色系の光を発光する発光ダイオードという構成を採用することにより,当該 蛍光体が当該発光素子からの光を効率よく吸収して効率よく異なる波長の - 45 -発光をすることを可能なものとするなどして,上記課題を解決した点に,従来技術と異なる技術的思想の特徴的部分があるものと認められることに照らせば,相違点②における相違の程度(本件発明1と乙1発明との技術的な離隔の程度)は,相当程度に大きいものであるということができる。 したがって,相違点②が実質的な相違点ではない旨の被告らの主張は採 用できない。 イ相違点④について被告らは,本件出願1及び乙1出願の最先優先日当時,リードタイプの発光ダイオードにおいて,LEDチップが発光した光によって励起され発光する蛍光体を含有する透明樹脂をマウント・リードのカップ内に充填さ せたコーティング部材という構成を備える態様は周知・慣用な技術であった旨主張し,このような周知・慣用技術が開示された文献として,「第264回蛍光体同学会講演予稿」(以下「乙3文献」という。),乙4公報及び特開平7-99345号の特許公報(以下「乙5公報」という。)を提出する。 しかしながら,乙3文献については,平成8年11月29日に開催された第264回蛍光体同学会講演のために作成された予稿であるところ,本件出願1及び乙1出願の最先優先日である同年7月29日より前に作成されて公開されていたものであるか明らかでないから,本件出願1及び乙1出願の最先優先日当時の周知・慣用技術を認定するに当たって,乙3文献 を考慮する 最先優先日である同年7月29日より前に作成されて公開されていたものであるか明らかでないから,本件出願1及び乙1出願の最先優先日当時の周知・慣用技術を認定するに当たって,乙3文献 を考慮することはできない。また,乙4公報については,その記載内容を詳細に見ても,コーティング部材に関する記述は見当たらないから,乙4公報に相違点④に係る構成が開示されているとは認められない。そして,証拠(乙5)によれば,乙5公報には,リードタイプの発光ダイオードにおいて,LEDチップが発光した光によって励起され発光する蛍光体を含 有する透明樹脂をマウント・リードのカップ内に充填させる構成が開示さ - 46 -れていると認められるところ,その公開日は本件出願1及び乙1出願の最先優先日より前の平成7年4月11日ではあるものの,その特許出願人が原告自身であることを考慮すると,上記構成がその出願公開日当時,周知・慣用技術であったとは認め難いといわざるを得ない。 そうすると,乙3文献,乙4公報及び乙5公報によっては,本件出願1 及び乙1出願の最先優先日当時,リードタイプの発光ダイオードにおいて,LEDチップが発光した光によって励起され発光する蛍光体を含有する透明樹脂をマウント・リードのカップ内に充填させたコーティング部材という構成を備える態様は周知・慣用な技術であったとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 したがって,相違点④が実質的な相違点ではない旨の被告らの主張は採用できない。 (4) 以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,本件発明1は乙1発明と同一のものであり,同日出願要件(法39条2項)違反により無効にされるべきものであるとする被告らの主張は理由がない。 8 争点(10)(本件各発明はサポ るまでもなく,本件発明1は乙1発明と同一のものであり,同日出願要件(法39条2項)違反により無効にされるべきものであるとする被告らの主張は理由がない。 8 争点(10)(本件各発明はサポート要件違反により無効にされるべきものか)について(1) 被告らは,構成要件1E及び2Dについて,「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素」ないし「Y,Lu及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素」である「Gd」のみがYAG系蛍光体のY (イットリウム)サイトの全てを占める態様,あるいは,「Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素」である「Ga」のみがYAG系蛍光体のAl(アルミニウム)サイトの全てを占める態様を包含するものの,これらの態様は,「より高輝度で,長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することを 目的とする」本件各発明の保護範囲のものとはいえないから,本件各発明は, - 47 -その文言上,発明の詳細な説明に記載されていない態様を包含し,サポート要件に違反する旨主張する。 (2) しかしながら,前記2(2)イで判示したとおり,本件各発明は,発光光度及び発光効率の低下や色ずれという技術的課題を解決するため,発光素子からの光とその光を吸収した蛍光体1E,(2D)からの光との混色により白 色系の光を発光する発光ダイオードという構成を採用することにより,当該蛍光体が当該発光素子からの光を効率よく吸収して効率よく異なる波長の発光をすることを可能なものとするなどして,上記課題を解決した点に,従来技術と異なる技術的思想の特徴的部分があるものと認められるところ,本件各明細書において,「ガーネット構造を有するので,熱,光及び水分に強 ることを可能なものとするなどして,上記課題を解決した点に,従来技術と異なる技術的思想の特徴的部分があるものと認められるところ,本件各明細書において,「ガーネット構造を有するので,熱,光及び水分に強く」 (段落【0050】,【0083】参照)との記載があることに照らせば,ガーネット系蛍光体「A3B5O12」の「A」にGdのみが入り,「B」にGaのみが入ったとしても,本件各明細書の記載に接した当業者においては,蛍光体1E及び2Dについて,それがガーネット構造を有することに変わりはなく,本件各発明の課題(発光光度及び発光効率の低下や色ずれという技 術的課題)を解決できると認識できるものというべきである。 (3) したがって,「Gd」のみがYAG系蛍光体のY(イットリウム)サイトの全てを占める態様,あるいは,「Ga」のみがYAG系蛍光体のAl(アルミニウム)サイトの全てを占める態様によっては,本件各発明の課題を解決することができないとの理解を前提とする被告らの上記主張は,その前提 を欠くものであって理由がない。 9 争点(11)(本件発明1は乙4発明に基づいて進歩性を欠き無効にされるべきものか)について(1) 証拠(乙4)及び弁論の全趣旨によれば,乙4公報には,「数々の波長の光を変換することができる発光ダイオードであって,該発光ダイオードは発 光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり,発光層の発光スペクトルのピー - 48 -クが420~490nmの範囲にあるLEDチップと,該LEDチップが発光した光によって励起されてこれにより長波長光を発光する蛍光体を含む,発光ダイオード」との発明(乙4発明)が開示されていることが認められる。 (2) そうすると,乙4発明は,本件発明1と次の点において相違していると認めら てこれにより長波長光を発光する蛍光体を含む,発光ダイオード」との発明(乙4発明)が開示されていることが認められる。 (2) そうすると,乙4発明は,本件発明1と次の点において相違していると認められる。 ア本件発明1においては,発光ダイオードは「白色系」を発光するとされているのに対し,乙4発明においては,発光ダイオードは,数々の波長の光を変換することができるとされているものの,「白色系」を発光するものか明らかではない点(相違点①)イ本件発明1においては,蛍光体はLEDチップによって発光された光の 「一部」を吸収するとされているのに対し,乙4発明においては,蛍光体はLEDチップが発光した光によって励起されるとされているものの,当該光の「一部」のみを吸収するものか明らかではない点(相違点②)ウ本件発明1においては,発光ダイオードに含まれる蛍光体は蛍光体1Eに限定されているのに対し,乙4発明においては,発光ダイオードに含ま れる蛍光体は蛍光体1Eに限定されていない点(相違点③)(3) これに対し,被告らは,相違点①について,数々の波長の光を変換することができる発光ダイオードであれば,「白色系」を発光する発光ダイオードとすることができることは明らかであり,また,相違点②については,乙4公報の段落【0003】には,LEDチップによって発光された光の「一部」 を吸収することも事実上開示されているから,実質的な相違点ではない旨主張する。 しかし,相違点①について,乙4公報の記載から,「数々の波長の光」の中に白色系発光が含まれていることが明らかであるとは認められず,本件全証拠を精査しても,被告らの主張に係る,数々の波長の光を変換することが できる発光ダイオードであれば,「白色系」を発光する発光ダイオ 系発光が含まれていることが明らかであるとは認められず,本件全証拠を精査しても,被告らの主張に係る,数々の波長の光を変換することが できる発光ダイオードであれば,「白色系」を発光する発光ダイオードとす - 49 -ることができることが明らかであることをうかがわせる証拠は見当たらない。 そうすると,少なくとも相違点①が実質的な相違点ではない旨の被告らの主張は採用できない。 (4) しかるに,被告らは,かかる相違点について容易想到であることを主張立証しておらず,本件全証拠を精査しても,当業者において,かかる相違点が 容易に想到できるものであることをうかがわせる証拠は見当たらない。 (5) 以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,乙4公報に基づき本件発明1が進歩性を欠如する旨の被告らの主張は理由がない。 10 争点(12)(原告の損害額)について(1) 被告LED1,4に係る損害額の算定をすることについて 以上によれば,被告LED1は,本件各発明の特許に係る特許請求の範囲の記載文言を充足し,その特許発明の技術的範囲に属するものであり,また,本件各発明の特許には,無効理由があり特許無効審判により無効にされるべきものであるとはいえず,特許法104条の3第1項の規定により原告が被告らに対し本件各特許権を行使することができないとはいえないから,被告 らの被告LED1の輸入販売行為は,本件各特許権を侵害するものというべきこととなる。 また,被告LED4は,本件発明1の特許に係る特許請求の範囲の記載文言を充足し,その特許発明の技術的範囲に属するものであり,また,本件発明1の特許には,無効理由があり特許無効審判により無効にされるべきもの であるとはいえず,特許法104条の3第1項の規定によ 言を充足し,その特許発明の技術的範囲に属するものであり,また,本件発明1の特許には,無効理由があり特許無効審判により無効にされるべきもの であるとはいえず,特許法104条の3第1項の規定により原告が被告らに対し本件特許権1を行使することができないとはいえないから,被告らの被告LED4の輸入販売行為は,本件特許権1を侵害するものというべきこととなる。 そこで,原告の損害額として,被告LED1,4に係る損害額について検 討する。 - 50 -(2) 特許法102条2項により算定される損害額ア特許法102条2項は,特許権侵害行為という不法行為(民法709条)に因り特許権者が被った損害額(逸失利益)を事実上推定する規定であると解される。そうすると,前記前提事実(4)及び(5)のとおり,被告LED1は被告製品1に,被告LED4は被告製品2に搭載されて販売されたも のであることからすると,被告製品1,2の販売利益額の全額が,原告の損害額であると事実上推定されるというべきであるが,他方,被告らの特許権侵害行為と原告が被った逸失利益との相当因果関係を阻害する事情が認められれば,特許法102条2項の上記の推定は覆滅されると解される。 しかして,本件各証拠によれば,被告LED1,4は,被告製品1,2 に搭載される部品であって,その主な用途は,被告製品1,2を用いて写真を撮影する際のフラッシュライトであり,スマートフォン自体の機能の中での位置付けとしては,いわば付属品ともいうべきものであって,これが被告製品1,2の主要な特徴として位置付けられるものということはできないとの事情(以下「本件事情」という。)が存することが認められる。 これに照らせば,本件においては,上記の相当因果関係を阻害する事情があるといえ,上 として位置付けられるものということはできないとの事情(以下「本件事情」という。)が存することが認められる。 これに照らせば,本件においては,上記の相当因果関係を阻害する事情があるといえ,上記の推定は覆滅されるというべきであり,その覆滅の割合については,本件事情の性質内容に照らせば,被告製品1,2に対する被告LED1,4の部分構成比を超える部分について,上記推定が覆滅されるものというべきである。 この点,原告は,被告製品がスマートフォンであることを考慮しても,推定覆滅割合は85パーセントというべきであると主張するが,被告LED1,4についての上記事情に照らし,採用の限りでない。 イしかして,被告LED1,被告LED4の単価は,いずれも,●(省略)●〔USD(USドル)〕であると認められ,また,被告製品1に対する 被告LED1の部分構成比は, - 51 -●(省略)●〔USD〕/●(省略)●〔USD〕=●(省略)●パーセントであり,被告製品2に対する被告LED4の部分構成比は,●(省略)●〔USD〕/●(省略)●〔USD〕=●(省略)●パーセント であると認められる(乙71)。 そこで,以下,被告ごとに,原告の被った損害額を算定する。 ウ被告ASUSについて被告製品1(被告LED1搭載)の販売数量は●(省略)●台,被告製品2(被告LED4搭載)の販売数量は●(省略)●台であり,各単位利 益額に,販売数量を乗じた総利益額は,被告製品1につき●(省略)●円,被告製品2につき●(省略)●円であると認められるから(乙67),同額が,原告の被った損害額であると事実上推定される。 しかして,被告LED1については,●(省略)●円に●(省略)●パーセントを乗じた額で つき●(省略)●円であると認められるから(乙67),同額が,原告の被った損害額であると事実上推定される。 しかして,被告LED1については,●(省略)●円に●(省略)●パーセントを乗じた額である34万4632円,被告LED4については, ●(省略)●円に●(省略)●パーセントを乗じた額である30万5605円(合計65万0237円)を超える部分については,上記推定が覆滅されるというべきである。 したがって,結局,上記の額(被告LED1については34万4632円,被告LED4については30万5605円,合計65万0237円) が,特許法102条2項により算定される,被告ASUSの行為により原告の被った損害額であると認められる。 エ被告シネックスについて被告製品1(被告LED1搭載)の販売数量は●(省略)●台,被告製品2(被告LED4搭載)の販売数量は●(省略)●台であり,各単位利 益額に,販売数量を乗じた総利益額は,被告製品1につき●(省略)●円, - 52 -被告製品2につき●(省略)●円であると認められるから(乙68,69,73,74),同額が,原告の被った損害額であると事実上推定される。 しかして,被告LED1については,●(省略)●円に●(省略)●パーセントを乗じた額である15万1839円,被告LED4については,●(省略)●円に●(省略)●パーセントを乗じた額である27万513 0円(合計42万6969円)を超える部分については,上記推定が覆滅されるというべきである。 したがって,結局,上記の額(被告LED1については15万1839円,被告LED4については27万5130円,合計42万6969円)が,特許法102条2項により算定される,被告シネックスの行為により 原告の被っ 記の額(被告LED1については15万1839円,被告LED4については27万5130円,合計42万6969円)が,特許法102条2項により算定される,被告シネックスの行為により 原告の被った損害額であると認められる。 オ被告らの主張について被告らは,本件では,市場における他の競合品の存在や特許発明の寄与が低いという覆滅事由もあり,上記のうち少なくとも90パーセントは推定が覆滅されるべきである旨主張する。しかし,本件発明1,2の特許と の関係で,被告LED1,4と市場において競合する製品の存在することを具体的に認めるに足りる証拠はなく,また,本件発明1,2の寄与が,覆滅事由を構成するほどの低いものであることを合理的に認めるに足りる証拠もない。したがって,被告らの上記主張は採用することができない。 カ原告の主張について 原告は,特許法102条2項の推定が覆滅されることにより控除された分については,特許法102条3項の重畳適用が認められるべきである旨主張する。 しかし,特許法102条2項の推定覆滅により控除された分につき特許法102条3項の重畳適用が認められる場合があるとすれば,それは,特 許権者がその製品を,侵害製品の販売数量分,販売できたとはいえないも - 53 -のの,その分の実施権の許諾はし得たと認められる場合であると考えられる(特許法102条1項1号,2号参照)。しかして,上記説示のとおり,本件の推定覆滅は,被告LED1,4の被告製品1,2におけるいわば付属品との位置付けによるものであるから,このような限定的なパーツに対する特許発明をもって,当該パーツと必ずしも関連しない製品の他の大部 分(推定覆滅部分)に相当する販売数量分につき,実施権の許諾をし得たと評価することは困難というほ このような限定的なパーツに対する特許発明をもって,当該パーツと必ずしも関連しない製品の他の大部 分(推定覆滅部分)に相当する販売数量分につき,実施権の許諾をし得たと評価することは困難というほかない。 そうすると,原告の上記主張は採用することができない。 キ以上によれば,被告ASUSに対する特許法102条2項による損害金の額は,65万0237円と,被告シネックスに対する特許法102条2 項による損害金の額は,42万6969円とそれぞれ認められる。 (3) 弁護士費用本件事案の性質や内容,本件訴訟の審理経過など,本件に顕れた一切の諸般の事情を総合すると,被告らの上記侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用は,被告ASUSに対し30万円,被告シネックスに対し20万円と認 めるのが相当である。 11 結論その他,当事者双方は縷々主張するが,その主張内容を慎重に検討しても,上記説示を左右するに足りるものはない。 以上によれば,原告の本件各請求は,その余の点について判断するまでもな く,(1) 被告ASUSに対し,95万0237円及びこれに対する不法行為後の日である平成30年6月5日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定年5分の割合による金員の支払(2) 被告シネックスに対し,62万6969円及びこれに対する不法行為後 の日である平成30年6月5日から支払済みまで平成29年法律第44号 - 54 -による改正前の民法所定年5分の割合による金員の支払をそれぞれ求める限度で理由があり,その余は理由がないこととなる。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官田中 り,その余は理由がないこととなる。 よって,主文のとおり判決する。 主文 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官田中孝一 裁判官小口五大 裁判官稲垣雄大 (別紙被告LED1説明書省略) (別紙被告LED1説明書省略) (別紙被告LED2説明書省略) (別紙被告LED4説明書省略) 被告製品目録 1 ZenFoneGo(ZB551KL) 2 ZenFone2Laser(ZE500KL)以上
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