主文 1 被告Bは,原告甲に対し,8万2500円,原告乙及び原告丙に対し,各1万3750円並びにこれら各金員に対する平成25年8月17日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らの被告Bに対するその余の請求及び被告熊本県に対する請求をい ずれも棄却する。 3 訴訟費用は,原告らの負担とする。 4 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 被告熊本県は,原告甲に対し,3688万1055円,原告乙及び原告丙に対し,各532万1842円並びにこれら各金員に対する平成25年8月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Bは,原告甲に対し,825万円,原告乙及び原告丙に対し,各137万5000円並びにこれら各金員に対する平成25年8月17日から支払済み まで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要熊本県立E高等学校(以下「本件高校」という。)の1年生であった亡Aが,平成25年8月17日,自宅で自死したところ,本件は,相続により亡Aの権利義務を承継した亡Aの母ないしきょうだいである原告らが,①亡Aは, 被告Bの違法な権利侵害行為(いじめ)により精神的苦痛を負ったとして,被告Bに対し,民法709条に基づき,亡Aの損害及びこれに対する不法行為の後の日である平成25年8月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,②被告県に対し,亡Aは,本件高校の教職員らの安全配慮義務違反により自死に至ったとして,国家賠償法1条 1項に基づき,亡Aの損害及び原告甲の固有の損害並びにこれらに対する亡 Aの死亡の日である平成25年8月17日から支払済 員らの安全配慮義務違反により自死に至ったとして,国家賠償法1条 1項に基づき,亡Aの損害及び原告甲の固有の損害並びにこれらに対する亡 Aの死亡の日である平成25年8月17日から支払済みまで前同様の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 以下に記載する日付は,別の記載がない限り,いずれも平成25年の日付を指す。 1 前提事実(争いのない事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定 できる事実)⑴ 当事者等ア亡Aは,熊本県上天草市F町の出身であり,4月1日に本件高校に入学し,本件高校の設置する女子寮であるG寮(以下「本件寮」という。)に入寮した者であるが,8月17日,自殺により死亡した。 原告甲は,亡Aの母である。 亡Dは,亡Aの父であるが,平成26年7月15日に死亡した。 原告乙と原告丙は,それぞれ,原告甲及び亡Dの二女と長男であり,亡Aのきょうだいである。 原告甲と亡Dは,8月17日,亡Aの死亡により,それぞれ,その権 利義務を法定相続分(それぞれ2分の1)に従い相続したが,平成26年7月15日に亡Dが死亡したため,原告らは,それぞれ,その権利義務(亡Dが亡Aから相続した同人の権利義務を含む。)を法定相続分(原告甲が2分の1,原告乙,丙がそれぞれ4分の1)に従い相続した。 イ被告B及びCは,いずれも,4月1日に本件高校に入学し,本件寮に入 寮した亡Aの同級生である。 被告Bは,熊本県上天草市H町の出身,Cは同県天草市I町の出身である(乙イ11,弁論の全趣旨)。 ウ被告県は,本件高校を設置する地方公共団体である。 エ Jは,平成20年4月1日から平成28年3月末まで本件高校の教諭で あり 天草市I町の出身である(乙イ11,弁論の全趣旨)。 ウ被告県は,本件高校を設置する地方公共団体である。 エ Jは,平成20年4月1日から平成28年3月末まで本件高校の教諭で あり,平成24年4月1日から平成27年3月末まで,本件寮の舎監長を 務めていた者である(乙イ23)。 オ Kは,平成21年4月1日から平成26年3月末まで本件高校の教諭であり,平成25年4月1日から,亡Aのクラスの担任を務めていた者である。 ⑵ 本件寮の概要 本件寮は本件高校の敷地(熊本市L区)内に設置された定員56名の寮である(乙ロ3)。 平成25年度1学期当時の寮生の数は30名(3年生8名,2年生7名,1年生15名〈乙イ1・15頁〉)であり,9室に振り分けられていた。各部屋は,3年生1名,2年生1名,1年生2名が基本の構成とされていた。 本件寮の寮生は,弁当当番(主として弁当箱の洗浄等を行う。)及び食事当番(主として食器の洗浄等を行う。)を分担して担当しており,これらの当番を担当する生徒は午前5時に起床しなければならなかったが,事実上,1年生のみが,これらの当番を日替わりのローテーションで担当するものとされていた。 平成25年度当時,本件寮の寮生の指導監督及び宿直は,舎監長であるJを含む,本件高校の教諭9名で行われていた。 ⑶ 亡Aの死亡に至る経緯ア本件高校は,平成25年度に初めて,大阪心理出版の提供する生徒理解のためのマークシート記入式の調査である「Σ教育相談のための綜合調査」 (以下「シグマテスト」という。)を導入し,亡Aを含む生徒らは,6月6日,これを受検した。 イ被告Bは,6月28日,Cのスマートフォンを利用して,亡Aに対し,メールや電話ができるアプリ (以下「シグマテスト」という。)を導入し,亡Aを含む生徒らは,6月6日,これを受検した。 イ被告Bは,6月28日,Cのスマートフォンを利用して,亡Aに対し,メールや電話ができるアプリケーションである「LINE」(以下「ライン」という。)上で別紙3記載の各メッセージ(以下「本件ライン」という。) を,短時間のうちに順に連続して送信した。ただし,冒頭の「おいて」,「電 話でろて」というメッセージはCが送信した(証人C・21,22頁)。 ウ Jは,7月8日,本件ラインの送信を中核とする亡Aと被告B,C間の問題について,亡A,被告B及びCを呼び出し,同人らを指導した。 エ亡Aは,7月23日,夏季休暇により実家に帰省した。 オ Kは,8月1日,亡Aの実家を家庭訪問し,亡Aの両親及び亡Aと面談 した。 カ亡Aは,夏季休暇中の8月17日,実家において縊死により自殺した。 遺書などは残されていなかった。 キ本件高校の平成25年の夏季休暇は8月29日までであり,亡Aは,同月19日に本件寮に戻る予定であった(乙イ3の3)。 ⑷ 亡Aの死亡後の経緯ア亡Aの遺族は,平成26年3月頃,亡Aに対する脅迫罪で被告Bを刑事告訴した。被告Bは,本件ラインの送信につき脅迫の非行事実をもって熊本家庭裁判所において審判開始決定を受けたが,同裁判所は,平成27年1月頃,本件ラインの送信について脅迫の非行事実を認定した上で,被告 Bに対し不処分の決定をした(乙イ1・1頁,被告B本人)。 イ本件高校の校長は,平成27年2月22日,本件について,いじめ防止対策推進法28条1項に基づく調査に準じた調査を行う組織としての学校調査委員会(以下,単に「学校調査委員会」という。)を本件高校に設置し,同委員会の委員を,学識経験者 2日,本件について,いじめ防止対策推進法28条1項に基づく調査に準じた調査を行う組織としての学校調査委員会(以下,単に「学校調査委員会」という。)を本件高校に設置し,同委員会の委員を,学識経験者(臨床心理士),弁護士,社会福祉士,校長 及び本件高校の保護者会会長に委嘱した。同委員会は,平成28年2月,調査結果を記載した報告書(乙イ1)を,熊本県教育委員会を通じて,熊本県知事に提出した。 ウ熊本県は,12月に熊本県いじめ調査委員会条例を制定し,同条例に基づき,いじめ防止対策推進法30条2項に基づく再調査を行う機関として 熊本県いじめ調査委員会(以下「県いじめ調査委員会」という。)を設置し, 同委員会の委員として,弁護士,精神科医,臨床心理士,社会福祉士及び学識経験者の5名に委嘱した。 熊本県知事は,上記イの調査結果につき,亡Aの遺族から第三者による再調査の要望があったことも踏まえて,県いじめ調査委員会に対し,調査審議するよう諮問し,同委員会による再調査が行われた。同委員会は,平 成29年7月14日,再調査の結果を記載した報告書(甲7の1)を作成した。 エ独立行政法人日本スポーツ振興センターは,平成30年5月1日,亡Aの死亡が,「学校の管理下において発生した事件に起因する死亡」に該当すると認定して,原告甲に対し,独立行政法人日本スポーツ振興センター法 15条1項7号,16条に基づく災害共済給付として,死亡見舞金2800万円の支給を行う旨決定し,原告甲は,同年6月14日,同額の給付を受けた(甲14)。 2 争点⑴ 被告Bに対する請求 ア被告Bの不法行為責任の有無イ損害の額ウ損害賠償請求権の放棄の有無⑵ 被告県に対する請求ア J及びKの安全配慮義務違反の 2 争点⑴ 被告Bに対する請求 ア被告Bの不法行為責任の有無イ損害の額ウ損害賠償請求権の放棄の有無⑵ 被告県に対する請求ア J及びKの安全配慮義務違反の有無 イ J及びKの安全配慮義務違反と亡Aの自殺との因果関係ウ損害の額 3 争点についての当事者の主張⑴ 被告Bに対する請求ア被告Bの不法行為責任の有無 (原告らの主張) 被告Bは,亡Aに対し,以下の各「いじめ」行為を行った。 a 弁当当番の押し付け本件寮の弁当当番は,事実上,1年生のうち部活動に未加入である亡A,被告B及びCを含む4名が担当することが常となっていたが,特に,5月頃以降,被告B及びCが亡Aに弁当当番を押し付け,亡A が弁当箱を洗う様子を監視したため,亡Aは,毎日寮生全員分の弁当箱を1人で洗わなければならなかった。 b 身体的特徴についての揶揄5月中旬頃より,被告Bは,1人で又はCとともに,亡Aに対し,「たらこ唇」等と身体的特徴を揶揄する言葉を日常的に言っていた。 c 本件寮のライングループのアイコンの変更及びグループ名の書き換え5月頃,被告Bは,ライン上で作成されていた本件寮の寮生のグループのアイコンに,無断で亡Aの写真を使用し,グループ名を「死んだ魚の煮付け」と変更した。 d 強い口調での文句被告Bは,5月から6月頃,本件高校内で,亡Aに対し,強い口調で文句を言った。その際,Cと他1名が被告Bのそばにいた。 e お風呂セット隠し6月頃,被告Bは,本件寮内で亡Aのお風呂セットを隠した。 f スマートフォンの無断使用6月頃,被告Bは,本件寮で,亡Aのスマートフォンを無断で使 た。 e お風呂セット隠し6月頃,被告Bは,本件寮内で亡Aのお風呂セットを隠した。 f スマートフォンの無断使用6月頃,被告Bは,本件寮で,亡Aのスマートフォンを無断で使用した。 g ラインへの「ブス」との書き込み6月頃,被告Bは,ライン上で,亡Aに対し,「ブス」という内容の 書き込みを送信した。 h 寮及び校内での悪口6月頃,被告Bは,友人に対し,亡Aを見ながら「なんあいつ。」などの陰口を言ったり,亡AがF町の出身であることを知りながら「Fて最悪ね。」と発言したり,亡Aが被告Bの嫌がらせ行為について指摘すると,「被害妄想じゃ。」と返答したりするなどの悪口を言った。 i 本件ラインの送信6月28日,被告Bは,Cのスマートフォンを借りて,亡Aに対し本件ラインを送信した。 j 卒業アルバムへの落書き具体的な時期は不詳だが,被告Bは,亡Aの中学校の卒業アルバム に,「ばーか。」などと落書きした。 k 一方的な謝罪の強要7月8日,被告Bは,Jからの指示により亡A,被告B及びCの3人で話合いをした際,Cとともに,亡Aを一方的に責め立て,謝罪を強要した。 l 夏季休暇前の状況被告Bは,7月8日以降もCとともに亡Aに対して悪口を言う等しており,夏季休暇になるまでの間,まだもめている状況にあった。 上記eは窃盗罪又は器物損壊罪,同iは脅迫罪,同jは器物損壊罪にそれぞれ該当する行為であってそれ自体明らかに違法であり,それ以 外の行為も,複数対1人の構造を利用して行われ,亡Aが強い精神的苦痛を被るであろうことが容易に想定できる行為である。 したがって,上記一連の各「いじめ」行為は,亡Aに強い精神的苦痛を与える違法な行為で も,複数対1人の構造を利用して行われ,亡Aが強い精神的苦痛を被るであろうことが容易に想定できる行為である。 したがって,上記一連の各「いじめ」行為は,亡Aに強い精神的苦痛を与える違法な行為であり,不法行為に該当する。 (被告Bの主張) a 弁当当番の押し付け否認する。被告Bは,亡Aに弁当当番の負担を押し付けていない。 弁当当番だけでなく,寮の仕事全体が著しく亡Aに偏っていたわけではない。現に,部活動に加入している生徒の中には,亡Aの別の仕事を引き受け,亡Aの負担を軽減していた生徒もいた。また,亡Aは 自ら率先して寮の仕事をしていた。 b 身体的特徴についての揶揄被告Bが,亡Aに対して,「タラコ」と言ったことは認める。 しかし,これは,亡Aが被告Bに対し,「デブ」,「豚」などと言って身体的特徴を揶揄したため,その反撃として言ったものであり,口げ んかにすぎない。 c 本件寮のライングループのアイコンの変更及びグループ名の書き換え被告Bが,寮生のライングループのアイコンに無断で亡Aの写真を使用したことは認めるが,グループ名を「死んだ魚の煮つけ」と変更 したことについては不知(記憶にない。)。 亡Aは,上記bのとおり,被告Bと口げんかをしていた。また,亡Aは,4月頃,亡Aの出身中学校の同級生とのライングループに,Cの写真を無断で送信したことがあった。被告Bは,亡Aのこれらの行為を受けて,単発的な反撃として上記行為を行ったにすぎない。 d 強い口調での文句被告Bは,亡Aが出身中学校のライングループに被告Bの悪口を書いたことの抗議として文句を言ったにすぎない。なお,C 記行為を行ったにすぎない。 d 強い口調での文句被告Bは,亡Aが出身中学校のライングループに被告Bの悪口を書いたことの抗議として文句を言ったにすぎない。なお,Cと他1名は,被告Bの文句に気がついてそばに来ただけである。 e お風呂セット隠し 被告Bは,1年生が共用していた部屋に置いてあった亡Aのお風呂 セットを,亡Aが見つけやすい同部屋の別の場所に置いたにすぎず,現に,亡Aはすぐにお風呂セットを発見した。 また,被告Bは,上記b,cの亡Aの各行為に対する反撃という形で上記行為に及んだものである。 したがって,上記行為は,けんかの渦中で起きた単発的な反撃行為 にすぎない。 f スマートフォンの無断使用不知(記憶にない。)。 仮に亡Aのスマートフォンを無断使用したとしても,上記b,cの亡Aの各行為に対する単発の反撃行為にすぎない。また,亡Aのスマ ートフォンにはパスワードによるロックがかかっていたので,スマートフォンのデータを見ることはできなかったし,亡Aもスマートフォンのデータを見られた可能性が高いと認識したとはいえないから,亡Aに強い精神的苦痛が生じたわけでもない。 g ラインへの「ブス」との書き込み 不知(記憶にない。)。 仮に上記行為に及んでいたとしても,被告B,Cと亡Aとの間のけんかの渦中で起きたものにすぎない。 h 寮及び校内での悪口不知(記憶にない。)。 仮に被告Bが亡Aの悪口を言ったとしても,被告B,Cと亡Aとの間のけんかの渦中で起きたものにすぎない。 寮及び校内での悪口不知(記憶にない。)。 仮に被告Bが亡Aの悪口を言ったとしても,被告B,Cと亡Aとの間のけんかの渦中で起きたものにすぎない。 i 本件ラインの送信被告Bが,亡Aに対し,本件ラインを送信したことは認める。 亡Aは,6月下旬頃に亡A及びその複数名の知人が参加しているラ イングループにおいて,被告Bのことを「おい,まじH人うざいなー」, 「しねばいい」,「あがんカスいらんわ」などと中傷する書き込みをしていた。被告Bは,同月28日にこのことを知り,亡Aに対して怒りを覚えたために,反撃として本件ラインを送信したものである。本件ラインは,それ自体直接的かつ攻撃的な表現とまではいえず,女子高校生であり,これまで亡Aに身体的な攻撃を加えたこともない被告B が「レスキュー隊よんどけよ」などという文言を用いたからといって,亡Aが生命,身体等に対する恐怖心を抱いたとは考えにくい。また,本件ラインは,被告Bの人格を著しく侵害するような強烈な文言を複数人が閲覧することができる状態に置いた上記亡Aの書き込みがきっかけとなったものであること,被告Bが亡Aに対し恐怖心を抱かせ ると疑われるような文面を送信したのはこの1度にとどまることも考慮すれば,被告Bの行為は一方的ないじめなどと評価できるものではない。 j 卒業アルバムへの落書き被告Bが,亡Aの中学校の卒業アルバムに,「ばーか。」などと書き 込んだことは認めるが,被告Bは亡Aとじゃれ合う中で上記文面を書き込んだにすぎず,亡Aはこれを許容していた。 k 一方的な謝罪の強要7月8日に被告B,C及び亡Aの間でこれまでのけんかに関する話合いが行われたが,その際3人 合う中で上記文面を書き込んだにすぎず,亡Aはこれを許容していた。 k 一方的な謝罪の強要7月8日に被告B,C及び亡Aの間でこれまでのけんかに関する話合いが行われたが,その際3人は泣きながら本音を言い合い,互いに 悪いところがあったので反省すること,性格的に合わないところはあるが,もうこのようなぶつかり合いはしないことを話したうえ,話合いが終わるころには3人で笑いながら話すまでの状態になり,仲直りをした。 したがって,被告BやCが亡Aを一方的に責め立てて謝罪を強要し たとは認められない。 l 夏季休暇前の状況被告Bは,7月8日以降,亡Aを害する行為を行っていない。 以上のとおり,亡Aと被告Bは,4月頃より,互いにけんかをするようになったが,けんかのきっかけになる行為を先に行っていたのは亡Aであり,亡Aが被告Bから一方的な形でいじめ行為を受けていた事実は ない。被告Bが原告らの主張するような行為をしていたとしても,主として亡Aによる加害行為に対する反撃行為として行っていた上,ほとんどの反撃行為は単発的であり,行為の継続性がない。したがって,被告Bが,亡Aに対し,損害賠償請求権を発生させるほどの社会通念上の許された限度を超えた客観的に違法な不法行為に及んだと評価することは できない。 イ損害の額(原告らの主張)被告Bの行為により,亡Aに以下のとおり合計1100万円の損害が生じた。 慰謝料 1000万円 弁護士費用 100万円(被告Bの主張)争う。 上記ア(被告Bの主張)のとおり,被告Bの行為は,亡Aと被告Bとの けんかの渦中で起きた反撃行為であり,亡 弁護士費用 100万円(被告Bの主張)争う。 上記ア(被告Bの主張)のとおり,被告Bの行為は,亡Aと被告Bとの けんかの渦中で起きた反撃行為であり,亡Aも被告Bに対して刑罰法規に該当する重大な権利侵害やプライバシー侵害を犯していることからすれば,被告Bの行為に不法行為が成立するとしても,その大部分について過失相殺をすべきである。 ウ損害賠償請求権の放棄の有無 (被告Bの主張) 亡Aは,7月8日,被告B及びCと仲直りをしたから,亡Aは,同日,被告Bに対する損害賠償請求権を放棄したと評価すべきである。 (原告らの主張)争う。 ⑵ 被告熊本県に対する請求 ア J及びKの安全配慮義務違反の有無(原告らの主張) 県立高校における教職員には,高校における教育活動及びこれに密接に関連する生活関係における生徒の安全の確保に配慮すべき義務があり,特に,生徒の生命,身体,精神,財産等に大きな悪影響ないし危害 が及ぶおそれがあるようなときには,その現実化を未然に防止するため,その事態に応じた適切な措置を講じる一般的な義務(安全配慮義務)がある。 そして,学校の管理下で発生したいじめは,教育活動及びこれに密接に関連する生活関係における生徒の安全を害する行為であり,いじめを 受けた生徒の健全な成長及び人格形成に重大な影響を与えるのみならず,その生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであるから,学校は,いじめを認識した場合には,直ちに,被害生徒をその精神的苦痛から解放すべく,その事態に応じた適切な措置を行うべき義務を負う。 亡Aの置かれていた状況亡Aは,以下の るから,学校は,いじめを認識した場合には,直ちに,被害生徒をその精神的苦痛から解放すべく,その事態に応じた適切な措置を行うべき義務を負う。 亡Aの置かれていた状況亡Aは,以下のとおり,7月上旬までの時点において,被告Bらから重大ないじめ行為を受けるなどして精神的に著しい悪影響を受けた状況にあった。 a 本件寮の環境 亡Aは,4月以降,日常生活のほとんど全てを本件高校又は本件寮 のいずれかで過ごしていたが,本件寮は,上級生らと同室で日常生活を行わなければならない上,1年生が当番を担当する等の暗黙のルール(「裏寮則」)が存在し,同ルールは上級生からの指導(「シメ」)によって下級生に強制されていたのであり,1年生である亡Aらにとって,非常に負荷が大きいストレスのかかる閉塞的な環境であり,また, 寮生らの不満感,不公平感を増強させ,寮内におけるいじめや紛争を誘発させる環境であった。 亡Aは,不合理・不適切な上記「裏寮則」に適応できず,上級生の「シメ」において強い叱責を受けたり,1年生から注意を受けたりすることがあり,「寮生活が嫌だ。」と口にしたり,泣いたりすることも あった。また,寮内で唯一1年生が自由に会話を行うことができる場所であった休養室は,被告BやCが頻繁に利用していたため,亡Aは,気軽に利用することができず,孤独を募らせた。 b 被告Bら周囲の生徒とのトラブル亡Aは,4月から7月8日までの間,被告Bから,前記⑴ア(原告 らの主張)で記載したとおりの各「いじめ」行為を受けていた(なお,被告Bの行為の多くは,いじめ防止対策推進法2条にいう「いじめ」の定義に該当する上,本件当時,文部科学省が定めていた「いじめ」の定義にも 主張)で記載したとおりの各「いじめ」行為を受けていた(なお,被告Bの行為の多くは,いじめ防止対策推進法2条にいう「いじめ」の定義に該当する上,本件当時,文部科学省が定めていた「いじめ」の定義にも該当するものである。)。また,Cと亡Aとの関係も5月頃から悪化しており,6月下旬頃,Cが亡Aにラインで悪口を送信した ことがあったほか,被告Bが亡Aに強い口調で文句を言った際や本件ライン送信の際に被告Bのそばにいたことがあった。遅くとも5月以降は,被告B及びC対亡Aという2対1の構造の下で,弱者の立場にある亡Aが,継続的に複数の権利侵害行為を受けていたものと評価されるべきであり,被告Bらの亡Aに対する言動は,対等な立場でのけ んかということはできない。そして,Jによる指導がされた7月8日 以降も,被告BがCとともに亡Aの悪口を言うなど,同人らとの確執は解消しなかった。 c シグマテストの結果シグマテストには,生徒の普段の生活状況や,悩み事や気がかりなことについての質問項目が設けられており,受検する生徒は,各質問 項目に対し,マークシートに記入する方法で回答をするところ,亡Aは,シグマテストにおいて,「身近に悪友がいるので困っている」,「今の生活は自分の理想とはまるで違っている」,「将来に希望がもてない」,「死んでしまいたいと本当に思う時がある」といった項目にマークをしており,亡Aの所属していたクラスでただ1人「対話不足」と の判断が下されていた。 Jの安全配慮義務違反aJの認識Jは,4月当初より,本件寮の「裏寮則」の存在や,その違反を理由とする上級生による「シメ」の存在を認識しながら黙認していた。 また,Jは,6月28日から7月8日にAとの面談が終了するまでの間 月当初より,本件寮の「裏寮則」の存在や,その違反を理由とする上級生による「シメ」の存在を認識しながら黙認していた。 また,Jは,6月28日から7月8日にAとの面談が終了するまでの間に,亡Aや原告甲からの相談により,本件ラインの具体的内容など被告Bによる主要な権利侵害行為の内容,亡Aは,本件寮の多くの人が被告B側であると認識していたこと,亡Aの両親が亡Aを退寮させる意向を固めていたこと等を認識していた。 以上によれば,Jは,被告Bによる重大ないじめが発生しており,亡Aが追い詰められた精神状態にあることについて容易に認識し得た。 bJの安全配慮義務上記の認識を持ったJとしては,7月8日の時点で,被告Bから亡 Aに対するいじめが行われているという認識の下,①事件の全体像の 正確な把握に努めるべき義務(具体的には,亡A,被告B及びCや周囲の生徒からの十分な事情聴取や,他の教員との情報共有等),②亡Aをいじめから解放すべき義務(具体的には,教職員らと情報を共有し,役割分担をした上,亡Aに寄り添いその心理的負荷を除去するとともに,中長期的な対策を立てて観察を継続し,一方で,被告BやCに対 する教育的指導を行う等),③亡Aと離れて暮らす亡Aの両親に,適切な情報を提供すべき義務(具体的には,亡Aの生命や心身の安全を保護するために必要なときには退寮を含めた選択肢があることを伝達する等)を負っていた。 cJの上記義務違反 しかしながら,Jは,上記義務を怠り,そもそも被告Bの亡Aに対する行為をいじめと認識せず,亡Aから心理的負荷について丁寧な事情聴取をしたり,他の寮生からの聞き取りをしたりするなどの調査をしないまま,亡Aも加害者であるとの前提のもとで指導をし,亡Aが被 に対する行為をいじめと認識せず,亡Aから心理的負荷について丁寧な事情聴取をしたり,他の寮生からの聞き取りをしたりするなどの調査をしないまま,亡Aも加害者であるとの前提のもとで指導をし,亡Aが被告B及びCとの関係解消を希望しているにもかかわらず,形式的な 和解を強制した上,原告甲にも亡Aも加害者であるとの指導をした上で全て解決した旨伝え,本件に関する対応を7月8日で終了した。また,Jは,本件に関し,舎監以外の教職員と連携せず,校長にも報告しなかった。 Kの安全配慮義務違反 aKの認識Kは,7月9日までに,Jから,本件ラインの送信を中核とする事実の経過について報告を受け,Jと同様の認識を有していた。また,6月14日及び7月5日には,亡Aから退寮の意向を聞いていた上,7月上旬には,亡Aのシグマテストの回答結果を受領していた。 以上によれば,Kは,被告Bによる重大ないじめが発生しており, 亡Aが追い詰められた精神状態にあることについて容易に認識し得た。 bKの安全配慮義務Kも,Jと同様の認識を有している以上,上記bの各義務を負っていた。 また,Kは,亡Aの退寮の意向やシグマテストの回答結果に係る認識も有していたのであるから,8月1日の家庭訪問の時点において,亡Aをいじめから解放するために,亡Aが深刻な心理的負荷を抱えていることを認識し,その緊急的な保護を図るとともに,観察を継続する義務や,亡Aの両親に適切な情報を提供し,必要なときには退寮を 含めた選択肢があることを伝達すべき義務を特に尽くすべきであった。 cKの上記義務違反Kは,J同様,上記bの各義務を怠った上, を提供し,必要なときには退寮を 含めた選択肢があることを伝達すべき義務を特に尽くすべきであった。 cKの上記義務違反Kは,J同様,上記bの各義務を怠った上,亡Aの心理的負荷を十分確認することも,亡Aの両親に亡Aの抱えている心理的負荷につ いて情報提供することも全くせず,上記義務を怠った。 以上のとおり,J及びKら本件高校の教職員の行為は,上記の本件事態に応じた適切な措置を講じる義務(安全配慮義務)に著しく違反するものである。 (被告県の主張) 原告らの主張は争う。本件の事実経過に照らせば,J及びKの適切な対応により,亡Aら3人においては夏季休暇に入る前に仲直りをしていたことが明らかであり,安全配慮義務違反は認められない。 亡Aの置かれていた状況a 本件寮の環境 原告らのいうルールはまさに集団生活におけるマナーや気遣い,配 慮の範疇に属するものであって,原告らが主張するように不当で合理性を欠いた過度の要求であると評価することはできない。また,本件寮で,上級生から下級生への指導は,行き過ぎたものにならないように,舎監との相談の下でされていた。 b 被告Bら周囲の生徒とのトラブル 被告Bが,亡Aに対し,本件ラインを送信したこと,身体的特徴を揶揄したこと,本件寮のライングループのアイコンに亡Aの写真を設定してグループ名を変更したこと,お風呂セットを隠したこと,亡Aのスマートフォンを触ったこと,また,Cと亡Aとの関係が悪化しており,Cが亡Aに文句を言うなどしたという外形的事実はいずれも認 めるが,その評価は争う。被告Bが,上記⑴ア(被告Bの主張)で主張しているように,三者のトラブルの端 Cと亡Aとの関係が悪化しており,Cが亡Aに文句を言うなどしたという外形的事実はいずれも認 めるが,その評価は争う。被告Bが,上記⑴ア(被告Bの主張)で主張しているように,三者のトラブルの端緒は,亡Aが,Cの写真をライン上で無断送信し,ライン上で悪口をいったことなどにあり,双方向性の顕著な「けんか」であって,「いじめ」に該当するようなものではない。 なお,学校調査委員会及び県いじめ調査委員会の調査により,被告Bの行為の一部がいじめと認定されているが,これは,本件の発生後に施行されたいじめ防止対策推進法によるいじめの定義をより厳密に当てはめたものであり,本件当時の文部科学省が定めていたいじめの定義(「けんか」を除くとするもの)には該当しない。また,これら の行為と亡Aの自殺との因果関係も認定されていない。 c シグマテストの結果について亡Aが,シグマテストにおいて,「死んでしまいたいと本当に思うときがある」との項目にチェックをしていたことは認めるが,自殺願望とは異なり,一般に二,三割の人が経験するとされる希死念慮にとど まるものである。また,シグマテストは,6月6日に実施されている から,亡Aと被告B及びCとの関係が特に悪化した同月28日前後の亡Aの精神状態を評価する根拠資料とはならない。 Jの対応についてJは,亡A及びその母である原告甲の言い分と,被告B及びCの言い分の双方を丁寧に確認し,本件トラブルの双方向性を確認した上で,特 定の誰かが悪いといった安易な人物否定に走らず,いずれの言い分も受け入れた上で,それぞれの行為にはやってはならないものがあったとして,3人それぞれに対し,人間関係が悪化した原因を考えさせ,それぞれの非のあった点を反省させる指導 物否定に走らず,いずれの言い分も受け入れた上で,それぞれの行為にはやってはならないものがあったとして,3人それぞれに対し,人間関係が悪化した原因を考えさせ,それぞれの非のあった点を反省させる指導を行ったものであり,冷静かつ中立な指導であるといえ,強制的に和解をさせたものではない。実際,その 後3人は談笑したり,学校から一緒に寮に帰ったりするなど,現に仲直りをした様子が見られており,同日以降,亡Aと被告B及びCとの間でトラブルが発生したとは認められない。 また,Jは,当初から,舎監らと情報共有を行って本件に複数名で対応し,生徒指導主事や教頭,担任にも本件を報告するなど,本件につい て可能な限りの組織的対応を行っていたと認められる。Jは,副舎監への連絡や,当日の舎監への連絡,舎監会議での情報共有と意見交換を行いながら,組織として本件について対応したのであり,7月8日以降も,舎監会議において本件を報告し,注意して見守るように指示をしていた。 以上のとおり,Jは,本件について,双方向性のある事案であるとい う適切な事実認識の下で適切な対応を行い,現に亡Aと被告B及びCが仲直りをするに至っているから, Jの対応に安全配慮義務違反は認められない。 Kの対応について本件は,Kの担任するクラスを超えた寮生間のトラブルであるから, 最も適切な対処のできるJが中心となって対応し,クラス担任として, Jからの情報提供で事実経過を把握しながらクラスでの亡Aの様子を見守る等したKの対応に安全配慮義務違反に当たる事実はない。 また,上記のとおり,亡Aと被告Bらとのトラブルは7月8日に解決していたこと,寮生活を継続するか否かは家庭が決めるべき問題であること,シグマテストについて,あえて個人用シートに記載され 実はない。 また,上記のとおり,亡Aと被告Bらとのトラブルは7月8日に解決していたこと,寮生活を継続するか否かは家庭が決めるべき問題であること,シグマテストについて,あえて個人用シートに記載されていない 項目に係る情報を親に提供すべき義務を負うとは考え難いことからすれば,家庭訪問時のKの対応にも問題はない。 イ J及びKの安全配慮義務違反と亡Aの自殺との因果関係(原告らの主張)亡Aは,上記⑴ア及び⑵アの各(原告らの主張)記載のとおり,被告B をはじめとする生徒らから,種々の人格権侵害を受け,その結果,強い精神的ストレスを受ける状態となった。亡Aは,本件ラインの送信をきっかけとしてJに相談したが,同人の誤った対応により,教員らに相談しても無駄であると感じ,さらに強い心理的圧力を受けるようになった。亡Aはこうした精神的ストレスを解決するために,寮を辞めることを強く願って いたが,JやKは,亡Aの両親に対して,トラブルは解決したから,亡Aはもう大丈夫であるという誤った報告をしたため,亡Aの両親は,亡Aを退寮させる途を模索する術を失った。それでも,亡Aは,退寮するという強い意思を持っていたが,8月1日の家庭訪問において,Kが,寮生活を続けることを前提とした話をした上,Jにより誤った認識を持たされた亡 Aの両親に対応を一任したため,亡Aは,寮を辞められる見込みがないことに直面し,強い心的ストレスにさらされ,うつ状態に至り,自死しなければ問題解決はできないとの心理的視野狭窄に陥って自死に至った。 以上のとおり,J及びKの誤った対応がなければ,亡Aが,退寮や退学についての途が閉ざされたと思い込むことなく,本件寮から逃れる途を模 索することが可能となったはずであり,亡Aが自死に至るこ 以上のとおり,J及びKの誤った対応がなければ,亡Aが,退寮や退学についての途が閉ざされたと思い込むことなく,本件寮から逃れる途を模 索することが可能となったはずであり,亡Aが自死に至ることもなかった から,教職員らの安全配慮義務違反と亡Aの自死には相当因果関係がある。 (被告県の主張)否認する。 上記ア(被告県の主張)で述べたとおり,亡Aは,被告B及びCとは,Jの適切な対応により7月8日の段階で関係が改善しており,亡Aが絶望 感を強めた理由は,帰省後の親子のコミュニケーションの中で生じたと考えられる。亡Aは,本件寮の当番やルールに適応できず,アパート生活をしている友人のような自由な生活に変えたいという思いが両親に届かないことにより,孤立感や絶望感,無力感を深め,絶対的な閉塞感を持つに至り,自死に至ったと考えるべきである。 ウ被告県が支払うべき損害の額(原告らの主張)J及びKの安全配慮義務違反により,亡A及び原告甲に以下の損害が生じた。 亡Aに生じた損害合計4257万4741円 a 死亡慰謝料 2000万円b 逸失利益 4415万8856円468万9300円(平成25年度の賃金センサスの全労働者平均賃金)×15.6949(18歳から67歳までの49年間に相当するライプニッツ係数)×(1-0.4〈生活費控除〉)により算出。 c 弁護士費用 641万5885円d 損益相殺 ▲2800万円独立行政法人日本スポーツ振興センターからの災害共済給付金 原告甲に生じた損害合計495万円a 葬式費用 150万円 d 損益相殺 ▲2800万円独立行政法人日本スポーツ振興センターからの災害共済給付金 原告甲に生じた損害合計495万円a 葬式費用 150万円 b 固有の慰謝料 300万円 c 弁護士費用 45万円(被告県の主張)全て否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前記前提事実のほか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ⑴ 本件寮における寮生のルール等本件寮には,事実上,1,2年生は,寮の敷地内では各学年に割り当てられた休養室以外の場所では会話をしてはいけない,集団行動禁止,先輩や先 生にはすぐに挨拶をする,廊下,学習室等において物音や足音は立てない,当番の生徒が朝起きる際には音の出る目覚まし時計を使ってはならない(携帯電話のバイブレーション機能は可),携帯電話を触るときはタオル等で隠して触る等の寮生らにより自主的に設けられた暗黙のルールがあった。上級生は,下級生がこれらのルールを遵守していないと判断した場合,ミーティングを 開いて指導を行っていた。なお,舎監は,上記のような暗黙のルールの存在を認識していたが,このような上級生の指導に立ち会うことはほとんどなかった(乙イ1,18,証人C,証人J,弁論の全趣旨)。 ⑵ 亡Aの本件高校入学後の経緯ア亡Aは,本件高校に入学した4月頃,本件寮の寮生であり,出身地が近 いという共通点のあった被告B及びCと親しくなった。なお,亡A,被告B及びCは,それぞれ異なるクラスに在籍していた(甲7の1,乙イ1・23頁,乙イ11,乙ロ1,5,証人C,被告B本人)。 イ亡Aは,本件寮に入寮後,当番の仕事等を積極的にこなしてはいたもの 被告B及びCは,それぞれ異なるクラスに在籍していた(甲7の1,乙イ1・23頁,乙イ11,乙ロ1,5,証人C,被告B本人)。 イ亡Aは,本件寮に入寮後,当番の仕事等を積極的にこなしてはいたものの,午前5時に起床できないことや,足音や物音を立てない,喋らないな どのルールを守れないことがあった。また,1年生が多くの当番を担当し なければならず,特に弁当当番については,亡AやCを含む運動系の部活動に所属していない1年生が多く担当しなければならなかったことなど,当番の分担が不公平であることを含めて,亡Aは,上記暗黙のルールに不満を抱くようになった。そこで,亡Aは,4月から5月頃,出身中学校の同級生のライングループに,寮生活の愚痴や寮を辞めたい等のメッセージ を送信したり,級友や親に不満を訴えたりした。また,5月15日には,本件高校の養護教諭にも,寮を辞めたいという心情を吐露していた(乙イ1・24~26,35~37頁)。 ウ亡Aは,4月から5月頃にかけて,被告B及びCとの間で,寮における生活態度等について相互に不満を抱くようになり,亡Aが被告B及びCに 同人らの体型を揶揄して,「デブ」,「豚」などと言うようになり,他方,被告Bが亡Aの唇を揶揄して「たらこ」と言うなど,相互に身体的特徴を揶揄し合うようになった。さらに,亡AがCの写真を無断で自身の出身中学校の同級生のライングループに貼り付けたことや,Cが亡Aに寮の決まりを守るよう注意したことから亡AとCが口論するなど,亡Aと被告B及び Cは,次第に対立するようになっていった(乙イ1・68,69頁,証人C)。 エ亡Aは,5月頃より,唇を隠すために,日常的にマスクを着用するようになった(乙イ1・38,45頁,証人J)。 オ 5月から6月頃に,寮生の になっていった(乙イ1・68,69頁,証人C)。 エ亡Aは,5月頃より,唇を隠すために,日常的にマスクを着用するようになった(乙イ1・38,45頁,証人J)。 オ 5月から6月頃に,寮生のミーティングが開かれたが,その中で,本件 寮の上級生から,亡Aを含む1年生に対して,1年生がルール(廊下を走らない,しゃべらない等)を守っていないことについての指導が行われる機会が複数回あり,その際,亡Aが名指しで注意されることがあった。そのため,亡Aは,廊下を走らない,喋らない等のルールを守ることができなかった際に,上級生から連帯責任で怒られるリスクをおそれた他の1年 生からも注意されることがあった。 (以上,甲7の1・38,39頁,乙イ1・26,34,54,55頁,証人C)カ 5月頃から6月頃にかけて,亡Aと被告B及びCとの間で以下の出来事があった。 被告Bは,5月中旬頃,本件寮の寮生らがメンバーとなっているライ ングループのアイコンに使用する写真を無断で亡Aの顔写真に変更した上,同グループの名称を「死んだ魚の煮付け」に変更した。 亡Aは,5月下旬頃,被告B及びCの着替え中の写真やいわゆる変顔の写真を無断で撮影し,亡Aの友人のラインのグループに送信した。 亡Aは,6月上旬頃,被告Bに「ミートボール」,Cに「肉団子」と発 言した。 被告Bは,6月頃,亡Aに対する嫌がらせとして,亡Aが休養室内に置いていたお風呂セットを,勝手に他の場所に置き換えた。 被告Bは,6月頃,亡Aの利用するスマートフォンを,亡Aに無断で触った。 被告Bは,5月から6月頃,亡Aが近くにいる際,自身の友人に対して亡Aの悪口とも受け取られること(「Fて最悪ね。」など)をいい,亡A 利用するスマートフォンを,亡Aに無断で触った。 被告Bは,5月から6月頃,亡Aが近くにいる際,自身の友人に対して亡Aの悪口とも受け取られること(「Fて最悪ね。」など)をいい,亡Aがこれを指摘すると,被害妄想ではないのかと言い返したことがあった。 (以上,甲3,7の1,乙イ1・58~61,69,73頁,乙ロ1, 証人C,被告B本人,弁論の全趣旨)キ Kは,6月14日,亡Aと10分程度の面談を行ったところ,亡Aは,本件寮を退寮して,下宿をしたいが,できそうもない旨話した(乙イ24)。 ク被告Bは,遅くとも7月23日までの間に,亡Aが所持していた亡Aの出身中学校の卒業アルバムに,「亡A’♡ ばーか。 (被告B)より」と書 き込んだ(乙イ1・59頁,被告B本人)。 ケ亡Aは,6月下旬ころ,出身中学校の同級生のライングループに,被告Bについて述べていることを暗に示して,以下のメッセージを送信した。 「おい,まじH人うざいなー」,「しねばいい」,「まぁH人の一部つか1人」,「あーーうざい」,「がちで中学気分のまんまやけんうざい」,「ヤンチー校からきたけん校則丸無視で寮則も守ったもんじゃない」,「綺麗に校則 まもってない」,「自分の周りを友達でかためて」,「自分たちのことしか考えとらん」,「まぁ自己中なんだよ」,「けど1番こわい?うざい先輩から嫌われとる」,「退学せんといいだしたけん」,「まじはよやめろ」「あがんカスいらんわ」,「まじカスすぎ」,「がちでおらんくなってほしい」,「あーーーきもい」。 (以上,乙イ1・69頁,乙ロ4) コ被告Bは,6月28日までに,亡Aの出身中学校の同級生の1人と被告Bの友人を通じて,亡Aが上記ケのメッセージを送信した事実を知って 。 (以上,乙イ1・69頁,乙ロ4) コ被告Bは,6月28日までに,亡Aの出身中学校の同級生の1人と被告Bの友人を通じて,亡Aが上記ケのメッセージを送信した事実を知って,腹を立て,本件高校内で亡Aに対し直接強い口調で文句を言ったが(なお,この際,これに気がついたCともう1名の生徒が被告Bのそばに来た。),亡Aが事実を素直に認めなかったため,その態度にさらに不満を持った。 被告BとCは,6月28日,本件寮の休養室から隣室にいた亡Aに,Cがスマートフォンを用いて架電したが,亡Aが電話に出なかったことから,本件ラインを送信した。 (以上,甲2,乙イ1・58頁,証人C,被告B本人)サ本件ラインを確認した亡Aは,同日,原告甲に架電し,寮内で被告B及 びCと揉めたこと,寮を出たいと考えていることを伝え,被告Bから送られたメッセージであるとして,原告甲に本件ラインを転送した。 原告甲は,同日,Kに架電し,本件ラインについて相談したが,Kからは,寮の問題は舎監長であるJに伝えるように言われたため,Jに架電して,本件ラインの内容がひどく心配である旨を伝えたところ,7月1日に 本件高校において対面で相談することが決まった。 Jは,6月28日(金曜日)から同月30日(日曜日)までの担当の舎監に原告甲からの相談内容を伝え,寮での亡Aの様子を見るように要請した。 (以上,乙イ2の4,2の6,11,23,24,乙ロ8)シ原告甲は,7月1日,本件高校を訪れ,J及び副舎監長のMと相談した。 その際,原告甲は,亡Aが出身中学校のライングループに被告Bの悪口を 送信したこと(上記ケ)がきっかけとなった可能性がある旨を述べた。Jは,亡A自身からも事実確認をするため,まずは原告甲から亡Aに対し ,原告甲は,亡Aが出身中学校のライングループに被告Bの悪口を 送信したこと(上記ケ)がきっかけとなった可能性がある旨を述べた。Jは,亡A自身からも事実確認をするため,まずは原告甲から亡Aに対し本件について舎監に相談した旨を伝えるように依頼した。 Jは,本件について,生徒指導主事及び教頭に報告し,寮生間の寮内のトラブルであることから,まずは舎監において対応するという方針を確認 した。 (以上,甲16,乙イ11,乙ロ8,証人J,原告甲本人)ス亡Aと被告Bは,7月5日までの間に,共通の友人を介して話合いをし,仲直りをするように言われたが,解決には至らなかった(乙イ11,証人J)。 セ Kは,Jから本件ラインの送信に至った経緯についての経過報告を受け, 7月5日,亡Aから事情を聞いたところ,亡Aが退寮の強い意向を示したため,両親とよく話し合うように助言した(乙イ24,証人K)。 ソ Jは,原告甲から亡Aに舎監に相談した旨を伝えたという連絡を受けたため,7月5日夕方,亡Aから,被告Bとの確執について事情聴取したところ,既に友人が仲裁に入り仲直りさせられたため,被告Bとは普通に会 話ができるようになったと述べた。なお,この際,亡Aは,5月頃から,被告Bに「いじられる」ようになったことや,被告Bの上記カいてもJに伝えた。 Jは,同日夜,原告甲に架電し,被告Bとのトラブルは既に解決したと亡Aが述べたこと,もっとも,本件ラインの内容について被告Bに指導を 行う必要があるため,被告Bからの事実確認も行う予定であること等を説 明したが,これを受けて原告甲が亡Aに確認したところ,亡Aは,実際には問題は解決しておらず,かえって被告Bから,より酷い悪口を言われるようになった旨訴えた。 その頃,亡Aは,原告 を説 明したが,これを受けて原告甲が亡Aに確認したところ,亡Aは,実際には問題は解決しておらず,かえって被告Bから,より酷い悪口を言われるようになった旨訴えた。 その頃,亡Aは,原告甲に,以下のメッセージをラインで送信した。 「(これ以前の部分は不明)うちのなかでは寮やめるまで解決せんし おたかい嫌いなまんまやしなんもかわってなかったもんJから聞きれてやったこといっただけだし影でこそころもせず顔に出しておまえといっしょにいるとやだて言われるとやけんねFまじすかんとか で,寮でなかいい子だけでどっかいこうぜとかの話をきかなんと? それを三年間せなんと? あいつはこがんこと言うと被害妄想じゃ?とか普通に言って来るやつけんねはなしあってもそれを仲良い子にあいつうざかていうだけやけんね Jが寮はやめさせんて行ったけん寮やめっとて聞かれてわからんて答えたらうちがやめるていおよるけんねけっきょくいっしょにおれんもんもうやだ共同生活とかもうよか家かえってもなんか言われてうんとかはいとかしか言わんとはなんか いったらまた聞いてくるか文句いうかやけんたいほんとはいいたいことやまほどあるけんね頭ではずっといいよるとやけんね口足らずやけんなんかいっても丸め込まれてつたわらんしそんぐらいならしゃべりたくないわ もう死にたい」 (以上,甲16,乙イ11,15,23,証人J,原告甲本人)タ原告甲は,同月6日朝,Jに架電し,問題は解決しておらず,亡Aは本件寮の皆から悪口を言われている旨,亡Aは口下手であることからうまく伝えることができなかった旨,同日亡Aは帰省するため,本人からさらに話を聞く旨を伝えた。 同月7日,Jが原告甲に架電したところ,原告甲は 悪口を言われている旨,亡Aは口下手であることからうまく伝えることができなかった旨,同日亡Aは帰省するため,本人からさらに話を聞く旨を伝えた。 同月7日,Jが原告甲に架電したところ,原告甲は,亡Aが寮を出たいとしか言わないがどうすればよいかと相談した。Jは,被告B及びCからも事情を聴いた上で指導を含めて検討する旨を伝えた。 Jは,同月8日頃,6月28日から7月7日までの亡Aと被告Bらにかかる問題の経緯を,本件高校の生徒部長,本件寮の副舎監長及びKに書面 で報告した。 (以上,甲16,乙イ11,15,23,証人J,原告甲本人)チ亡Aは,7月8日午前,ラインのアイコンの件以外にも,被告Bからこそこそと悪口を言われたり,洗面用具を隠されたり,スマートフォンを勝手に開かれたりしており,3年間一緒にいることは無理だと思う旨記 載した亡A自身の手紙と,亡Aの話では,被告Bは悪口を言って亡Aを精神的に追い詰めており,亡Aを退寮させることを考えている旨記載した原告甲の手紙を,Jに渡した。それらの手紙は,亡Aが7月7日に帰省した際,亡Aと原告甲によりそれぞれ作成されたものであった。Jは,同日午後1時頃,手紙の内容を確認した上,亡Aと面談し,手紙に記載 された事実に間違いがないかを確認した。 Jは,同日午後4時30分頃,被告B及びCを呼び出し,亡Aに対してしたことと,亡Aからされたことを書きだすように指示した。その後,Jは,被告B及びCの記載した事実を確認しつつ,個別に事情聴取をした。被告Bは,亡Aから,「デブ」,「豚」等の悪口を言われたこと,自身 の写真や悪口を他人のライングループに送信されたこと,これらの行為 に対抗して,亡Aに対し,学校で直接文句や悪口を言ったり,ラインで悪口を送っ ,「豚」等の悪口を言われたこと,自身 の写真や悪口を他人のライングループに送信されたこと,これらの行為 に対抗して,亡Aに対し,学校で直接文句や悪口を言ったり,ラインで悪口を送ったりしたほか,上記カは,亡Aが,自身を無断撮影した写真や被告Bの悪口を亡Aの出身中学校のライングループに送信したことや,寮の規則を守らなかったことについて言い訳しかしなかったため,けんかをしたこと,ラインで悪口を 送ったりしたこと等を述べた。 Jは,被告B及びCが,この事態を何とかしなければならないと思っている旨述べたため,Jが亡Aをその場に呼んで,3人の仲裁をすることを被告B及びCに了承させた。 Jは,同日午後6時頃,亡Aを呼び出し,被告B及びCの上記訴えにつ いて事実かどうかを確認したところ,亡Aがこれを認めたため,Jが3人の仲裁をすることを亡Aに了承させた。 Jは,亡A,被告B及びCに対し,①他人の誹謗・中傷をしないこと,②ラインの使い方を考え直すこと,③今後同様のことが発生した場合,関係者全員を自宅通学にする等の措置をとる可能性があることを約束す るよう指導し,亡A,被告B及びCもこれを了承した。 その後,亡A,被告B及びCが自分たちで話合いをする様子だったため,Jはその場を離れた。亡A,被告B及びCは,20分程度3人で話合いをした。Jは,その場を離れてから約20分後に3人の様子を確認したところ,3人は談笑しており,笑顔も見られたため,話合いを終わ りとし,3人を帰寮させた。 Jは,原告甲に架電し,上記の経過を報告した上,今後問題が起こらないよう家庭でも話をしてほしい旨伝えた。Jは,被告B及びCの母親にも架電し,一連の出来事について報告した上,同様の注意をした。 ,原告甲に架電し,上記の経過を報告した上,今後問題が起こらないよう家庭でも話をしてほしい旨伝えた。Jは,被告B及びCの母親にも架電し,一連の出来事について報告した上,同様の注意をした。 (以上,甲3,4,16,乙イ9~11,証人J,証人C,被告B本人) ツ Jは,7月11日頃までに,Kや,本件寮のその他の舎監に対し,本件 ラインを中核とする亡Aらのトラブルに関し,亡Aら3人が仲直りした旨を連絡した(乙イ3の3,24)。 テ 7月上旬ころ,シグマテストの採点結果が本件高校に送付された。送付された資料には,生徒ごとの調査結果が記載された個人表として教師用のものと生徒返却用のものの2種類が含まれており,教師用のものには,生 徒の悩み事や気がかりなことに関するテストの結果が別紙4【添付省略】「教師用」欄の「項目」欄記載の48項目に分類されて記載されているのに対し,生徒返却用のものでは,別紙4「個人用」欄の「項目」欄記載のとおり,項目の一部が統合又は削除されているところ,亡Aの教師用個人表には,別紙4「教師用」欄の「亡Aの結果」欄に記載のとおりの各項目に亡 Aが該当する旨の記載がされていた。また,同表の「自己を見つめる」という項目の結果は,10段階中1(特にゆきづまり感が強い状態。なおこの段階にある生徒は亡Aのクラス42名中2人のみであった。),「自己否定」という項目の結果は10段階中2(投げやりな感じが強い),「行動のタイプ」という項目の結果は5段階中最も「行動をおさえる」に寄ってい る状態,「問題にくじけず,うちかっていこうとする力」という項目の結果は10段階中3(やや弱い),「家庭」という項目の結果は10段階中2(親しめなくなった感じが強い)となっており,「相談の要点」欄には,亡Aは, にくじけず,うちかっていこうとする力」という項目の結果は10段階中3(やや弱い),「家庭」という項目の結果は10段階中2(親しめなくなった感じが強い)となっており,「相談の要点」欄には,亡Aは,ゆきづまり感が強くて心配である旨記載されていた。 この頃,Kは,亡Aを含む担任クラスの所属生徒の受検結果を受領し, 内容を確認したが,亡Aが,「死んでしまいたいと本当に思うときがある」という項目に該当する旨回答していたことには気がつかなかった。 (以上,乙イ1,14,24,証人K)ト 7月8日以降,被告BやCは,亡Aと日常会話を交わすような関係に戻り,亡Aに対していじめやこれに類する行為に及ばなかった(甲7の1, 乙イ1,証人C,被告B本人)。 ⑶ 夏季休暇中の経緯ア亡Aは,7月23日,実家に帰省し,同月24日,ライン上に,寮を辞めたいが,先生と親から説得されて辞められない旨を書き込んだ(乙イ1・122頁)。 イ Kは,8月1日,亡Aの実家を家庭訪問し,亡A及びその両親と面談し た。面談においては,主として,亡Aの学習や進路についての話がされた。 寮についての話題はほとんど出なかったが,Kは,亡Aに対し,寮に残るのであれば頑張るようにという趣旨の発言をした。また,この際,Kは,亡Aに対し,シグマテストの生徒用の個人表を渡した。同表に記載された亡Aの悩みに関する回答の状況は,別紙4「個人用」欄記載のとおりであ り,教師用のものとは一部の項目が異なっていたが,Kが,シグマテストの具体的な結果に言及することはなかった。 亡Aは,これ以降,自室に閉じこもるようになり,昼夜逆転の生活となった。 (甲7の1・40頁,16,乙イ1・37頁,24,乙ロ8,証人K, 体的な結果に言及することはなかった。 亡Aは,これ以降,自室に閉じこもるようになり,昼夜逆転の生活となった。 (甲7の1・40頁,16,乙イ1・37頁,24,乙ロ8,証人K, 原告甲本人)ウ亡Aは,8月11日頃,原告甲に対し,本件高校を辞めて,他の高校に編入するか,働きながら専門学校に行きたい旨を告げたが,亡Aの両親は,本件高校及び本件寮での生活を今後も続けるように説得した(乙ロ8,9,原告甲本人)。 ⑷ 学校調査委員会における調査結果ア学校調査委員会は,いじめ防止対策推進法2条1項に基づき,「いじめ」を「児童生徒に対して,当該児童生徒が,当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって,当該行為の対象となっ た児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」と定義した上で,亡Aの心情 については,関係者からの事情聴取を通じてできる限り多く資料を収集した上で,多面的・多角的に考察するものとした。 以上の定義の下,学校調査委員会は,亡Aに対し,以下の「いじめ」があったと認定した。 (以上,乙イ1・10,11,70~76頁)・被告Bによる本件ラインの送信(上記⑵コ,第2の1イ) ・被告Bによるお風呂セット隠し(上記⑵カ)・被告Bによる亡Aのスマートフォンの無断使用(上記)・被告Bによる卒業アルバムへの落書き(上記⑵ク)・本件寮の上級生らが,1年生の指導に際し,亡Aがマスクを付けていることについて笑ったこと イ他方,学校調査委員会は,亡Aの自死の背景について,亡Aは,本件寮の上下関係や仕事の負担感等により寮生活に不適応状態となった 導に際し,亡Aがマスクを付けていることについて笑ったこと イ他方,学校調査委員会は,亡Aの自死の背景について,亡Aは,本件寮の上下関係や仕事の負担感等により寮生活に不適応状態となった上,一部の同級生との間でトラブルが生じ,「いじめ」に相当する行為も受け,精神的苦痛を感じたこと,大人の介入によりトラブルは現象面としては解消したものの,本心から納得できるものではなく,心理状況が完全に回復しな いまま,総合的に心身の強度が低下していったこと,その打開策として,亡Aは退寮を強く希望したところ,その心中としては夏季休暇を境に寮を辞められるという見込みがあり,7月8日以降新たなトラブルが発生しなかったこともあって,外見上は明るく元気な状況に戻ったように見え,学校関係者としても,トラブルは解決し,亡Aはもう大丈夫であるという誤 解が生じたこと,夏季休暇に入り亡Aは退寮を希望したが,トラブルが解決した旨両親にも伝わっていたこともあり,両親が退寮を許さなかったこと,以上により,亡Aは,見込みが頓挫し,再び寮生活に戻らなければならないという心的ストレスに晒され,最終的には絶望感から鬱状態に陥ったこと,そうした状態のときに,特定はできないが,何らかの理由で自死 に至った可能性が高いという見解の下,亡Aの自死の原因となった特定の 行為(「いじめ」)を認めることはできず,上記アの「いじめ」が亡Aの自死に直接の影響を与えたとは認め難いと判断した(乙イ1・124,125頁)。 ⑸ 県いじめ調査委員会における調査結果ア県いじめ調査委員会は,上記学校調査委員会による調査結果に対する再 調査・検討を行い,学校調査委員会と同様に,「いじめ」をいじめ防止対策推進法2条1項により定義した上,上記⑷アの5つの行為のうち, いじめ調査委員会は,上記学校調査委員会による調査結果に対する再 調査・検討を行い,学校調査委員会と同様に,「いじめ」をいじめ防止対策推進法2条1項により定義した上,上記⑷アの5つの行為のうち,以下の4つの行為を「いじめ」に該当すると認定した(甲7の1・36~38頁)。 ・被告Bによる本件ラインの送信・被告Bによるお風呂セット隠し ・被告Bによる亡Aのスマートフォンの無断使用・被告Bによる卒業アルバムへの落書きまた,さらに以下の2つの行為を,「いじめ」に該当すると認定した。 ・被告Bによる身体的特徴(唇)についての悪口(7月8日より前)・被告Bによる寮のライングループのアイコンへの写真掲載及びグループ 名の変更(上記)他方,学校調査委員会が「いじめ」に該当すると認定した行為のうち,本件寮の上級生らが亡Aがマスクを付けていることについて笑ったことに関しては,そのような事実があったとは認定できないと判断した。 イ県いじめ調査委員会は,亡Aの自死の背景につき,遺書その他の資料が 残されていないこともあり,直接の原因は特定できないが,「いじめ」や寮生間のトラブルは,寮の決まり事や人間関係等の諸要因と相まって,亡Aがこれ以上寮生活を続けたくないと思うきっかけになったことは否定できず,夏季休暇終了を控え,寮を辞めたいという願いが叶いそうになく,「うつ状態」が改善されないまま自死につながったのではないかと判断した(甲 7の1・41頁)。 2 被告Bに対する請求について⑴ 被告Bの不法行為責任の有無(争点⑴ア)ア弁当当番の押し付け原告らは,被告BがCとともに亡Aに弁当当番を押し付け,亡Aが弁当箱を洗う様子を監視したと主張するが,こ 求について⑴ 被告Bの不法行為責任の有無(争点⑴ア)ア弁当当番の押し付け原告らは,被告BがCとともに亡Aに弁当当番を押し付け,亡Aが弁当箱を洗う様子を監視したと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。 なお,亡Aが,本件寮における当番の分担が不公平であることに不満を抱いていたことは認められるが(上記1⑵イ),この事実は被告Bが亡Aに弁当当番を押し付けた事実を推認させるものではない。 イ身体的特徴についての揶揄被告Bは,亡Aに対し,その唇を揶揄して「たらこ」などということが 複数回あったと認められるが,他方,亡Aにおいても,被告BやCに対して,同人らの体型を揶揄して「デブ」,「豚」と言うなどしており,亡Aと被告Bとは,口げんかの渦中で互いに身体的特徴を揶揄し合っていたと認められる(上記1⑵ウ)。亡Aが唇を隠すためにマスクを着用するようになるなど,亡Aが被告Bの発言により精神的苦痛を受けていたと認められるも のの,被告Bが一方的又は執拗に亡Aの身体的特徴を揶揄していたとまでは認められないことに照らせば,被告Bの行為を口げんかの範疇を超える客観的に違法な行為とまで認めることはできない。 ウ本件寮のライングループのアイコンの変更及びグループ名の書き換え被告Bは,本件寮生のライングループのアイコンに亡Aに無断で亡Aの 写真を用い,グループ名を「死んだ魚の煮付け」に変更したと認められる(上記1。この行為は,あたかも亡Aが「死んだ魚の煮付け」であるかのような印象をグループに属する者(亡Aを含む。)に与えるものであるところ,「死んだ魚の煮付け」は,「死んだ」という語句を含むマイナスのイメージを与える言葉であって,同行為は,少なくとも亡Aに不快感を 与えるに プに属する者(亡Aを含む。)に与えるものであるところ,「死んだ魚の煮付け」は,「死んだ」という語句を含むマイナスのイメージを与える言葉であって,同行為は,少なくとも亡Aに不快感を 与えるに足りるものであり,現に,亡Aは後にJにこの件を相談するなど 一定の精神的苦痛を受けたことがうかがわれる(上記1⑵ソ)。しかし,被告B本人及び証人Cの供述によれば,本件当時,上記グループに属する者の間で,「いじり」として,相互に同種の行為を行うことが繰り返されており,被告Bの行為もその一環として行われたと解されることにも照らせば,上記行為は,単なる冗談としては適切さを欠くことは否めないものの,高 校生の日常生活の中で行われた相手方を不快にさせる行為にとどまるといえ,社会通念上許される限度を超えた客観的に違法な行為とまで認めることはできない。 エ強い口調での文句被告Bが,亡Aに対し,本件高校内で強い口調で文句を言った事実は認 められるが(上記1⑵コ),口調の強さの程度など,被告Bが具体的に何と述べたかを認めるに足りる証拠はなく,文句を言うことが直ちに亡Aの何らかの権利又は法律上保護される利益を侵害するものと解することはできないから,上記行為に違法性は認められない。 オお風呂セット隠し 被告Bは,亡Aが休養室内に置いていたお風呂セットを他の場所に置き換えたと認められるところ(上記,これは亡Aに対する嫌がらせとして行われたものであり,被告Bが主張するように亡Aの行為への反撃であるとしても適切さを欠くことは否定できない。しかし,被告Bは,お風呂セットを探せばすぐに見つかる休養室内の他の場所に1回だけ置き換 えたにすぎないと述べており(乙ロ13,被告B本人),そのような可能性を否定する くことは否定できない。しかし,被告Bは,お風呂セットを探せばすぐに見つかる休養室内の他の場所に1回だけ置き換 えたにすぎないと述べており(乙ロ13,被告B本人),そのような可能性を否定することはできない。したがって,亡Aの所有権ないし占有権が侵害されたと評価できるとしても,その程度は極めて軽微であるから,これにより亡Aが精神的苦痛を感じたことがうかがわれること(上記1⑵チ)を踏まえても,被告Bの行為を社会通念上許される限度を超えた客観的に 違法な行為とまで認めることはできない。 カスマートフォンの無断使用被告Bが,亡Aの利用するスマートフォンを,亡Aに無断で触ったことは認められるものの(上記1,ロック(パスワード)がかかっていたため中身まで見ることはできなかったことが認められる(乙イ1・71,72頁,乙ロ1)。スマートフォンのデータの内容は一般に個人のプライバ シーに属するから,使用者に無断でスマートフォンを使用しようとすることが適切さを欠くことは否定できないものの(亡Aに対する反撃であるとしても,これを正当化することはできない。),上記のとおり,そのプライバシーはいまだ侵害されるに至っていないから,亡Aが精神的苦痛を感じ被告Bの行為 を社会通念上許される限度を超えた客観的に違法な行為とまで認めることはできない。 キラインへの「ブス」との書き込み原告らは,被告Bが,ライン上の何らかのグループ又は亡Aとのトーク(1対1でのメール)上に,亡Aについて「ブス」と書き込んだと主張す るが,これを認めるに足りる証拠はない(乙イ1・43,59頁によれば,亡Aの中学時代の同級生が,学校調査委員会の調査に対し,上記のような書き込みを見たと述べたことがうかがわれるが,その陳 す るが,これを認めるに足りる証拠はない(乙イ1・43,59頁によれば,亡Aの中学時代の同級生が,学校調査委員会の調査に対し,上記のような書き込みを見たと述べたことがうかがわれるが,その陳述は曖昧である上,被告Bが書き込んだとは述べていない。)。 ク寮及び校内での悪口 被告Bは,5月から6月頃,亡Aが近くにいる際,自身の友人に対して亡Aの悪口とも受け取られること(「Fて最悪ね。」など)をいい,亡Aがこれを指摘すると,被害妄想ではないのかと言い返したことがあったと認められる(上記1⑵カ)。しかし,被告Bの発言は,被告Bの亡Aに対する悪感情の吐露にとどまっており,亡Aの人格をことさらに攻撃したり, 他の友人らと複数で亡Aを攻撃したわけではなく,被害妄想ではないかと いう発言も亡Aの指摘を受けての単発的な反撃にすぎないから,これらの行為をもって,亡Aの権利又は法律上保護される利益を侵害する違法な行為と認めることはできない。 ケ本件ラインの送信被告Bが亡Aに送信した本件ラインは,亡Aが被告Bの悪口を出身中学 校の同級生のライングループに送信したこと等を受けて,話をするために亡Aを休養室に呼び出す目的で送信されたものと解されるところ,その内容を見ると,「はげ」,「唇」,「汚い」,「つら死んどる」,「唇とばすなよ」,「タラコびーむ爆笑」など,亡Aの容貌を強く揶揄する表現,また,「日曜日しらんぞ」,「レスキュー隊呼んどけよ」など,亡Aの身体に危害を加え る可能性を暗に示す表現を含んでおり,全体として,亡Aの人格権を侵害し,さらに亡Aを畏怖させるに足りる脅迫行為であるといわざるを得ない。 被告Bは,女子高生でありこれまで亡Aに身体的な加害行為を加えたことがない被告Bが「レスキュー隊呼 全体として,亡Aの人格権を侵害し,さらに亡Aを畏怖させるに足りる脅迫行為であるといわざるを得ない。 被告Bは,女子高生でありこれまで亡Aに身体的な加害行為を加えたことがない被告Bが「レスキュー隊呼んどけよ」などという文言を用いたとしても,恐怖心を抱かせるには足りないと主張するところ,被告Bの属性に も照らせば,現に救急通報を要するような生命や身体に対する深刻な加害行為が行われることまでを直ちに想起させるとはいえないものの,一定の身体に対する加害行為や苛烈な人格攻撃などをされる可能性を想起させるに足るものといえるから,被告Bの主張は採用できない。 被告Bは,本件ラインは,亡Aが出身中学校に被告Bの悪口を書き込ん だことをきっかけとして送信したものであるから,本件ラインの送信は一方的ないじめではなく,違法性を欠くと主張する。この点,亡Aは,被告Bについて出身中学校のライングループに送信した内容(上記1⑵ケ)は,被告Bについて「しねばいい」などというものであり,被告Bの人格権を侵害し,それ自体許されるような行為とはいえないが,このことは,上記 イのように口論の過程での悪口の応酬とも評価できない場面で,亡Aを直 接脅迫することを正当化する理由とはならない。 以上によれば,本件ラインの送信は違法な脅迫行為であるから,不法行為を構成する。 コ卒業アルバムへの落書き被告Bは,亡Aの出身中学校の卒業アルバムに,「亡A’♡ ばーか。 (被 告B)より」と落書きしたが,当該行為は,落書きの記載内容及びその対象が卒業アルバムという思い出の深い物であることなども含めて考慮すると,物の効用を害する行為であって,器物損壊に当たり,不法行為を構成する(なお,亡Aは,Jに対しこの事実を相談して 載内容及びその対象が卒業アルバムという思い出の深い物であることなども含めて考慮すると,物の効用を害する行為であって,器物損壊に当たり,不法行為を構成する(なお,亡Aは,Jに対しこの事実を相談しておらず,この事実を認識していなかった可能性があるが,この点は不法行為の成否に影響しな い。)。 被告Bは,亡Aとじゃれ合う中で,亡Aの承諾の下,上記落書きをしたと主張し,これに沿う供述をする。しかし,亡Aに対する悪口ととれる内容であること,被告Bは,学校調査委員会の調査の過程では上記のような供述をしておらず,供述の変遷が見られること(乙イ1・59頁)からす れば,亡Aが上記落書きを承諾していたとまでは認め難い。 サ一方的な謝罪の強要原告らは,7月8日の話合いにおいて,被告B及びCが,亡Aを一方的に責め立てて謝罪を強要したと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。 この話合いの一部は録音されており(乙ロ6),その中で,被告Bが「あんたさぁ,言い訳の前にごめんて言わんと。」と言ったり,Cが「謝り方覚えた方が良いと思うよ。」と言うなど,亡Aに謝罪の言葉を求める発言をしている様子は見られるものの,これらをもって強要と解することができないことに加え,被告Bからの,「亡A”にうちが悪口言ったこともごめんて 思っとるよ。」などと亡Aに対する謝罪ととれる発言が見られること,話合 いの後に3人が談笑している様子も見られたこと(上記1チれば,話合いを全体として見ても,被告B及びCが亡Aを一方的に責め立てて謝罪を強要したとは認められない。 シ夏季休暇前の状況原告らは,7月8日以降,夏季休暇前に,被告BやCが亡Aに悪口を言 うなどしたと主張する。 この点,当時の 立てて謝罪を強要したとは認められない。 シ夏季休暇前の状況原告らは,7月8日以降,夏季休暇前に,被告BやCが亡Aに悪口を言 うなどしたと主張する。 この点,当時の寮長は,学校調査委員会の聴き取りで,1年生のもめ事は夏季休暇前も継続していた旨供述している(乙イ6・9頁)ものの,被告BやCが亡Aに悪口を述べていたとまでは供述しておらず,かえって,亡Aが,寮内のレクリエーション(7月11日)の場や,夏季休暇に入る に当たり帰省する被告Bと挨拶をしていたなどの生徒による供述が複数ある(乙イ1・23,31~33頁)ことなどを含め,原告らの上記主張にかかる事実を認めることはできない(ほかに,これを認めるに足りる証拠はない。)。 ス以上によれば,被告Bによる本件ラインの送信及び卒業アルバムへの落 書きは,不法行為を構成するものの,被告Bが亡Aに弁当当番を押し付けた事実及び夏季休暇前に悪口を言うなどした事実は認められず,その余の行為は,これが5月から6月にかけて被告Bと亡Aとの仲が悪化する過程で一体として行われたものであることを踏まえても,社会通念上許される限度を超えた客観的に違法な行為であるとまで評価することはできない。 ⑵ 損害の額(争点⑴イ)本件ラインの内容は,亡Aに対する人格権侵害及び脅迫に該当するものであるが,上記⑴ケのとおり,その内容は,生命又は身体に対する深刻な加害行為を想起させるものとまではいえず,極めて悪質なものとまではいえないこと,被告Bが本件ラインを送信したきっかけは,亡Aが被告Bの悪口を出 身中学校のライングループに送信したことにあり,その内容も,被告Bが精 神的苦痛を感じるに足りるものといえ,亡Aが被告Bにその内容を知られることを意図していな Aが被告Bの悪口を出 身中学校のライングループに送信したことにあり,その内容も,被告Bが精 神的苦痛を感じるに足りるものといえ,亡Aが被告Bにその内容を知られることを意図していなかったとしても,相互性のあるトラブルであることが否定できないこと,本件ラインの送信を中核としたトラブルについて,亡Aと被告B,Cが話合いをして互いに謝罪をしていること,卒業アルバムへの落書きは小さく,卒業アルバム全体の価値を毀損した程度は大きくないことな どを考慮すれば,慰謝料は10万円,弁護士費用は1万円を相当と認める。 なお,被告Bは,本件について過失相殺をすべきであると主張するが,被告Bの行為は故意によるものであり,過失相殺の対象とはならない。 ⑶ 損害賠償請求権の放棄の有無(争点⑴ウ)被告Bは,7月8日に亡Aと被告Bが仲直りしたことをもって,亡Aが, 不法行為に基づく損害賠償請求権を放棄したと評価すべきであると主張する。この点,7月8日の話合い終了後同人らが談笑しており,現に夏季休暇に至るまでトラブルが生じていないことに照らせば,亡Aと被告Bが少なくとも表面的には仲直りしたと認められるものの,そのことをもって,亡Aが,当時亡Aが認識していなかった可能性がある卒業アルバムへの落書きを含む上 記損害賠償請求権を放棄したと認めるに足りる証拠はなく,損害賠償請求権の放棄は認めることはできない。 ⑷ 小括以上によれば,亡Aは被告Bに対し民法709条に基づき11万円の損害賠償を請求できるところ,亡Aの死亡により原告甲と亡Dがこの2分の1で ある5万5000円ずつを相続し,さらに亡Dの相続した5万5000円の請求権については亡Dの死亡により原告甲がその2分の1である2万7500円,原告乙と原告丙がその4分 亡Dがこの2分の1で ある5万5000円ずつを相続し,さらに亡Dの相続した5万5000円の請求権については亡Dの死亡により原告甲がその2分の1である2万7500円,原告乙と原告丙がその4分の1である1万3750円ずつを相続した。 したがって,原告甲は,被告Bに対し,8万2500円及びこれに対する不法行為の後の日である平成25年8月17日から支払済みまで民法所定の 年5分の割合による遅延損害金を,原告乙及び原告丙は,被告Bに対し,それ ぞれ1万3750円及びこれに対する前同様の遅延損害金を請求できる。 3 被告熊本県に対する請求について⑴ J及びKの安全配慮義務違反の有無(争点⑵ア)ア公立高校の教員の一般的義務公立高校における教員には,学校における教育活動及びこれに密接に関 連する生活関係における生徒の安全の確保に配慮すべき義務があり,特に,生徒の生命,身体,精神,財産等に大きな悪影響ないし危害が及ぶおそれがあるようなときには,そのような悪影響ないし危害の現実化を未然に防止するため,その事態に応じた適切な措置を講じる一般的な義務があるというべきである。 イ 「いじめ」該当性について原告らは,被告Bの行為のうち,①本件ラインの送信(上記2⑴ケ)の他,少なくとも,②身体的特徴についての揶揄(同イ),③ライングループのアイコンの変更及びグループ名の書き換え(同ウ),④お風呂セット隠し(同オ),⑤スマートフォンの無断使用(同カ)並びに⑥卒業アルバムへの 落書き(同コ)は,「いじめ」に該当するから,J,Kら本件高校の教職員らは,本件が「いじめ」に該当するとの認識の下で適切な措置を講じるべきであったと主張する。 本件は,いじめ防止対策推進法施行(平成25年9月28日施行 に該当するから,J,Kら本件高校の教職員らは,本件が「いじめ」に該当するとの認識の下で適切な措置を講じるべきであったと主張する。 本件は,いじめ防止対策推進法施行(平成25年9月28日施行)前の事案であるところ,当時の文部科学省が用いていた「いじめ」の定義は, 「当該児童生徒が,一定の人間関係のある者から心理的,物理的な攻撃を受けたことにより,精神的な苦痛を感じているもの(けんか等を除く)」というものであるが(甲9),上記①ないし⑤は,本件寮の同級生である被告Bが亡Aに対して行った行為であり,これを受けた亡Aは,7月5日及び同月8日に,Jに対し,直接,又は手紙で,これらの行為を相談するなど (上記ソ,チ,上記⑥につ いては亡Aが認識していない可能性があるが,仮に認識したとすれば精神的苦痛を感じるであろうと推測できる。なお,上記①ないし⑥の各行為のうち,①は亡Aの行為がきっかけの1つとなって行われたもの,②は亡Aと被告Bが相互に行っていたものであり,双方向性を有していたことは否定できないが,上記③ないし⑥は,仮に亡Aに対する反撃として行われた ものであるとしても,それ自体けんかに該当するような行為とは認め難いこと,上記①は,亡Aによる行為とは別の機会に行われたものであり,やはり単なるけんかとは性質が異なること,文部科学省は,「いじめ」該当性の判断は,いじめられた児童生徒の立場に立って行うとしているところ(甲9), 上述したとおり,亡Aが相応の精神的苦痛を負っていたと認められ ることに照らせば,上記①ないし⑥の各行為は,「けんか等」に該当するとはいえず,「いじめ」に該当するか,少なくともこれに準じた行為であると認めるのが相当である。 ウ公立高校の教職員の義務の具体的内容上述したと ①ないし⑥の各行為は,「けんか等」に該当するとはいえず,「いじめ」に該当するか,少なくともこれに準じた行為であると認めるのが相当である。 ウ公立高校の教職員の義務の具体的内容上述したとおり,いじめ防止対策推進法の施行の前後を通じて,いじめは 被害生徒の精神的苦痛に着目した概念であって,いじめが生じた場合,まさに学校における教育活動及びこれに密接に関連する生活関係において,生徒の生命,身体,精神,財産等に悪影響が生じている状態があるから,公立高校の教職員は,被害申告等によりいじめの発生又はその可能性を認識した場合には,安全配慮義務の内容として,いじめに係る事実関係を確認 した上,いじめを行った児童に対する指導等,いじめを止めさせ,かつ,いじめの再発防止のための措置を講じるべき義務を負うと解するのが相当である。 もっとも,いじめの定義は非常に広範であって,いじめが行われた事案の中には,様々なものが含まれる上,これに対する措置の検討に際しても 将来予測に基づかざるを得ない部分が多く含まれることからすれば,いじ めに対していかなる措置を講じるべきかは一義的に定まるものではなく,問題となったいじめの悪質性・頻度などの態様,背景事情,加害生徒の性格特性や被害生徒の心身に現に生じている影響等諸般の事情の考慮に基づいた,教職員の合理的な裁量による判断に委ねられていると解するのが相当である。 エ Jの対応について上記認定事実によれば,Jは,6月28日に原告甲からの電話で本件ラインに関するトラブルの発生を把握し,直ちに直近3日間の担当の舎監に亡Aの様子を見るように指示し,7月1日には原告甲と面談した上,亡Aから事情聴取をし,亡Aが帰省した際には原告甲に架電して亡Aの 状況を確認し ルの発生を把握し,直ちに直近3日間の担当の舎監に亡Aの様子を見るように指示し,7月1日には原告甲と面談した上,亡Aから事情聴取をし,亡Aが帰省した際には原告甲に架電して亡Aの 状況を確認した上で,教頭,生徒部長,副舎監長及びKに情報提供するなどして,状況の把握等に努め,同月8日午後1時頃まで(亡Aから受け取った手紙の内容を確認し,亡Aと面談するまで)の間に,ⓐ被告Bが,Cの関与の下で,亡Aに本件ラインを送信したこと,ⓑそのきっかけは,亡Aが出身中学校のライングループに被告Bの悪口を送信した点 にある可能性があること,ⓒ亡Aが,被告Bから,ライングループのアイコンを自身の写真に無断で変更される,悪口を言われる,洗面用具を隠される,携帯電話を触られるなどされ,被告Bと3年間一緒にいることは難しいと考えている旨述べていること,ⓓ原告甲は,亡Aを退寮させることを考えていることをそれぞれ認識したと認められる。 以上を踏まえて,同日にJがとった対応は,①被告B及びCを呼び出し,亡Aに対してしたことと亡Aからされたことを聴取した上,被告B及びCが亡Aに対する行為を認めたことから,Jが亡Aを呼び,仲裁して被告B及びCとのトラブルを解決することを確認する,②亡Aに対し,被告B及びCから聴取した内容の事実確認をして,亡Aが被告B及びC に対する行為を認めたことから,Jが仲裁して当事者間のトラブルを解 決することを確認する,③3名に対し,他人の誹謗・中傷をしないこと,ラインの使い方を考え直すこと,及び,今後同様のことが発生した場合は全員を自宅通学の措置とする可能性があることを伝えて指導する,④3名が話合いをする様子であったため,その場を離れ,20分後に様子を確認するといったものであった。 まず, た場合は全員を自宅通学の措置とする可能性があることを伝えて指導する,④3名が話合いをする様子であったため,その場を離れ,20分後に様子を確認するといったものであった。 まず,当事者である被告B及びCから事情を聴取し,その際,亡Aにしたことのみならず亡Aからされたことも含めて事情聴取をしたことは,本件のきっかけが亡Aによる悪口にもあった可能性があることにも照らせば,事実確認の方法として,適切さを欠くとはいえない。また,被告B及びCが,Jからの聴取に対し,亡Aからされた行為に対する不 満を述べつつも(乙イ9),亡Aに対してした行為を素直に認めた上,同人との確執を解消したい旨述べるなど,本件の解決に積極的な意向を示していたこと,亡Aにおいても,「しねばいい」などと被告Bの悪口を出身中学校のライングループに書き込むという,被告Bがこれを知れば精神的苦痛を感じるような行為をしていたところ,亡Aもこれを認めてお り,亡Aに対しても今後このような行為をしないように指導する必要があったと考えられることからすれば,亡A,被告B及びCの3名に対して,他人の誹謗・中傷をしないように指導したことが,適切さを欠くとはいえない。さらに,上記のように,被告B及びCは,本件の解決に積極的な意向を示していること,亡A,被告B及びCの3名は同級生であ り,高校生活を送る上で3名の関係を完全に絶つことは困難であること,被告Bによるいじめ行為は,それ自体不法行為に該当しないものが多く含まれるなど悪質性の程度が高くはなかったことからすれば,話合いによる関係改善の機運があると判断して,一定の時間3名で話合いをさせた対応は,しばらくしてJ自身が3名の様子を確認するなどの一定の配 慮をしていることも考慮すると,適切さを欠くとはいえな 合いによる関係改善の機運があると判断して,一定の時間3名で話合いをさせた対応は,しばらくしてJ自身が3名の様子を確認するなどの一定の配 慮をしていることも考慮すると,適切さを欠くとはいえない。 以上によれば,Jがとった対応は本件の事情に即した合理的な判断によるものであるといえ,実際,7月8日以降,被告B及びCは亡Aに対していじめに該当するような行為に及んでおらず,日常会話をするような関係に戻っていたと認められるから,被告Bらによるいじめの再発防止が実現されたと認められる。したがって,Jの対応に安全配慮義務違 反があったとは認められない。 原告らは,Jは,被告Bの行為がいじめであるという認識を持つべきであったと主張する。確かに,被告Bの行為は,上記イのとおり,当時文部科学省の採用していたいじめの定義に該当するか,少なくともこれに準じたものであるところ,Jは,本件は双方向性があること を理由にいじめではないと認識していたと供述する(証人J)が,本件が双方向性のある事案であること自体は誤りではなく,Jが,本件の事実関係を踏まえて合理的な措置をとったと認められることは上の上ではいじめに該当すると判断していなかったからといって,Jの対応が安全配慮義務に違反する ということはできない。 b 原告らは,Jは,亡A,被告B及びCからのさらなる事情聴取や,他の寮生からの事情聴取を行い,また,他の教職員との情報共有を行うなどして,本件の全体像の把握に努めるべきであったと主張する。 しかし,亡A,被告B及びCが,それぞれした行為,された行為と して述べる内容が概ね合致していたこと,亡Aは,Jに対し,本件ラインの送信を中核とする被告Bからの被害しか相談しておらず しかし,亡A,被告B及びCが,それぞれした行為,された行為と して述べる内容が概ね合致していたこと,亡Aは,Jに対し,本件ラインの送信を中核とする被告Bからの被害しか相談しておらず,口頭で話しきれなかったとして書いた手紙(甲3)も,被告Bと3年間一緒に過ごすのは無理である旨の記載にとどまっており,他の寮生から亡Aに対する加害行為があったとはうかがわれないこと(なお,原告 らは,上級生が亡Aの唇を笑うことがあったと主張するが,これを認 めるに足りる証拠はない。県いじめ調査委員会もこの事実を認定していない〈甲7の1・34頁〉。),上述したとおり,被告Bのいじめ行為の悪質性が高いとはいえないことに照らせば,他の寮生からの事情聴取をしなかったことを含め,Jによる事情聴取が不十分であり適切さを欠いていたということはできない(むしろ,さらなる事情聴取を重 ねた場合に,必要以上に事を荒立て,亡Aが他の寮生から反感を買ったり,好奇の目で見られたりしてしまう可能性も否定できない。)。 また,Jは,教頭,生徒指導主事,K及び他の舎監らにも本件に係る情報を共有した上で本件への対応に当たっておりタ),他の教員らとの情報共有が不十分であり適切さを欠いていたというこ とはできない。 さらに,原告らは,Jが亡Aのシグマテストの内容を確認しなかったことを指摘する。確かに,亡Aのシグマテストの結果からは,亡Aが,6月6日の時点で,現状の生活に満足しておらず,「ゆきづまり感」を感じている状況にあったこと,死にたいという気持ちになることが あったことなど,何らかの理由により心理的負荷を抱えていた様子が読み取れるが,亡Aのシグマテストの結果はクラス担任であるKが受領し,管理していたことに加え,シグマテ という気持ちになることが あったことなど,何らかの理由により心理的負荷を抱えていた様子が読み取れるが,亡Aのシグマテストの結果はクラス担任であるKが受領し,管理していたことに加え,シグマテストは,教育現場で当然に用いられているものではなく,本件高校では平成25年度に導入されたばかりであり,その活用法なども確立されてはいなかったことから すれば,亡Aから相談を受けたJが,亡Aのシグマテストの内容を確認すべき義務を負っていたということはできない。 c 原告らは,Jとしては,他の教職員らとも連携して,亡Aが深刻な心理的負荷を抱えていることを認識し,亡Aに寄り添いその心理的負荷を除去する等の措置をとった上,亡Aの様子を中長期的な対策を立 てて観察すべきであったと主張する。 しかし,亡Aからの相談の内容は,被告B及びCとの確執についてのものにとどまっており,亡Aが同人らとの関係について心理的負荷を負っていたことはうかがわれるものの,これ以外に,亡Aが,心理的負荷の原因となるような問題に直面している様子はなく,亡Aの体調や生活状況が変化するなど,深刻な心身の不調を示す兆候はうかが われなかったという当時の状況の下で,被告B及びCに対する指導を行って同人らとの関係改善を図り,現に,同人らの亡Aに対するさらなる加害行為を防止したJの対応が,不合理であり適切さを欠いたものということはできない。 また,Jは,本件ラインの送信を中核とする亡Aと被告B及びCと のトラブルを,Kのほか,日常的に寮生の見守りに当たる舎監らに対しては舎監会議で報告しており,当直の舎監が亡Aと被告Bの様子に注意している様子も見られること(乙イ2の6),7月8日以降,現に亡Aと被告B及びCとのト ほか,日常的に寮生の見守りに当たる舎監らに対しては舎監会議で報告しており,当直の舎監が亡Aと被告Bの様子に注意している様子も見られること(乙イ2の6),7月8日以降,現に亡Aと被告B及びCとのトラブルは発生していないことも踏まえれば,他の教員との連携の状況や,7月8日以降の対応が,不合理であ り適切さを欠いたものということはできない。 なお,亡Aとしては,被告B及びCと仲直りをするのではなく,本件寮を辞めて被告B及びCとの関係を絶つことを望んでいた可能性もあり(亡Aは,7月8日の話合いの中で,本件寮を辞めて逃げるつもりである旨を述べていた〈乙イ10〉。),7月8日に被告B及びCと の関係が形式的には修復されたことから,かえって退寮する理由を失う結果になったと評価することもできる。しかし,7月8日当時,亡Aは,被告Bとの対立を主たる理由として,退寮を強く希望していたものであり,本件ラインの送信が契機となって亡Aと被告B及びCとのトラブルが発覚し,そのことによって亡Aが心理的負荷を抱えてい る状況が判明したことからすると,まずは亡Aと被告B及びCの関係 改善を図ることとしたJの判断が,不合理であり適切さを欠くということはできない。 原告らは,文部科学省の作成に係る「いじめの防止等のための基本的な方針」(甲11)の別添2「学校における「いじめの防止」「早期発見」「いじめに対する措置」のポイント」に基づき,Jら本件高校の 教職員のとるべきであった義務の内容を主張するが,上述のとおり,いじめの定義はかなり広範なものであり,具体的な事案に応じた対応は,上記方針を参考にしつつも個別具体的に検討すべきであるといえるから,上記方針に記載してある対応をとらなかったからといって直ちに安全 いじめの定義はかなり広範なものであり,具体的な事案に応じた対応は,上記方針を参考にしつつも個別具体的に検討すべきであるといえるから,上記方針に記載してある対応をとらなかったからといって直ちに安全配慮義務違反があるということはできない。 d 原告らは,Jとしては,亡Aの両親に,必要なときには退寮を含めた選択肢があることを伝達するなど,適宜適切な情報を提供すべきであったと主張する。 しかし,上述したとおり,本件については,亡Aが被告Bの悪口を書き込んだという事実もあり,亡Aに対する指導も必要であったと判 断し得ること,7月8日の話合い後,亡Aと被告B及びCが談笑しており,関係が改善した様子が見られたことに照らせば,7月8日の時点で,原告甲に以上の経過を伝えて,今後問題が起こらないよう家庭でも話をしてほしい旨伝えたJの措置が適切さを欠いていたということはできない。また,7月8日以降についても,亡Aに特段注意を 要するような兆候が見られず,夏季休暇に至るまで,本件寮を辞めたい旨の発言をすることがなかったことからすれば,Jが,亡Aの両親に対する適切な情報提供を怠ったということはできない。 e 原告らは,本件寮は,上級生が暗黙のルールを下級生に強制する閉塞的な環境であり,このような環境が本件の背景にあることを指摘す る。この点,本件寮の暗黙のルールは,本件寮が,寮生が日常生活の 多くの時間を過ごす場所であるにもかかわらず,休養室以外の場所での会話の禁止,集団行動の禁止,物音や足音を立てない,携帯電話はタオルで隠して触るなど,集中して学習をする上級生への配慮の一環として形成されたものであることはうかがわれるとしても,学習の阻害要素になり得る行為を包括的に禁止するものであっ を立てない,携帯電話はタオルで隠して触るなど,集中して学習をする上級生への配慮の一環として形成されたものであることはうかがわれるとしても,学習の阻害要素になり得る行為を包括的に禁止するものであってやや過剰で あることは否定できない。そして,このようなやや過剰なルールを守らない1年生がいた場合には,連帯責任として,1年生全員が上級生から指導を受けており,このような本件寮の状況が,亡Aを含む1年生の心理的な負担になっていたことが認められ(証人C),亡Aと被告B及びCとの本件のトラブルの要因の1つ,また,亡Aが本件寮を辞 めたいと考える要因の1つになっていたとも考えられる。 しかし,亡Aの心身の状況について,夏季休暇よりも前に特段の注意を要すべき兆候が現れていたと認めるに足りる証拠はなく,また,被告B及びCとのトラブルについては上述のとおりいじめの再発防止が図られたことに照らせば,本件寮の状況が上記のようなものであ るとしても,この点は,Jの安全配慮義務違反を基礎づけるものとはいえない。 オ Kの対応について Kは,6月14日の面談の時点で,亡Aから本件寮を退寮したい旨の意向を伝えられ,その後,同月28日に原告甲との電話で本件ライン事 件を認識した上,7月5日には亡Aから直接事情を聴取して,亡Aが,被告Bらとの関係を理由として退寮したいと思うに至っていることを把握し,同月11日までに,本件ラインの送信を中核とする亡A,被告B及びCのトラブルについてJから報告を受けていたほか,亡Aの担任教諭として,7月上旬の時点(7月8日との先後関係を含むその具体的な 日時は証拠上明らかではない。)で,亡Aのシグマテストの結果を受領し ており,亡Aが,シグマテストにおいて,「死んでしまい て,7月上旬の時点(7月8日との先後関係を含むその具体的な 日時は証拠上明らかではない。)で,亡Aのシグマテストの結果を受領し ており,亡Aが,シグマテストにおいて,「死んでしまいたいと本当に思うときがある」という項目に該当する旨回答していたことを認識し得たといえる。 以上の事情の下,Kは,上記7月5日の面談以外は,亡Aと被告B及びCとの問題の主たる対応を舎監長であるJに任せていたと認められる ところ,本件は亡A,被告B及びCという本件寮生の間で生じたトラブルであったこと,Kの担任クラスにおいて,亡Aに何らかの問題がある兆候があったとは認められないこと,現に,Jの対応により,亡Aと被告B及びCとの関係改善が図られたことからすれば,Kが,舎監長であるJの対応に任せたこと自体は不適切であるとはいい難い。 しかしながら,上述したとおり,亡Aは,シグマテストにおいて「死んでしまいたいと本当に思うときがある」という項目に該当する旨の回答をしたところ,この項目に該当すると回答したからといって,直ちに自殺を企図する具体的なおそれがあるとまではいえないとしても,少なくとも,6月6日の時点で,希死念慮を抱くほどには重大な心理的負荷 を抱えていたことがうかがわれる。そして,5月から6月にかけて亡Aと被告B及びCとの関係が悪化し,7月8日までの時点で,被告Bによるいくつかのいじめ行為の存在が発覚していること,亡Aが,6月15日の時点でも,退寮の意向を口にしていることからすれば,亡Aのかかる精神的苦痛は,被告B及びCとの関係等本件寮での生活に起因すると 考えるのが自然である。したがって,以上を認識し得たKとしては,安全配慮義務の一環として,本件寮での亡Aの状況を十分に見守り,亡Aの精神的苦痛の原因やその程度につ 本件寮での生活に起因すると 考えるのが自然である。したがって,以上を認識し得たKとしては,安全配慮義務の一環として,本件寮での亡Aの状況を十分に見守り,亡Aの精神的苦痛の原因やその程度について把握した上,必要な場合には,専門家の支援も得て,亡Aの精神的苦痛の解消を図るための対応を執ることができるよう,少なくとも,舎監長であり,亡Aと被告B及びCと のトラブルの対応を担っていたJに対し,亡Aのシグマテストの回答結 果を伝えるべき義務を負っていたと認めるのが相当である。 しかるに,Kは,亡Aがシグマテストで上記の回答をしていることを漫然と見逃して,Jにこれを伝えなかったから,Kの対応には亡Aに対する安全配慮義務違反があるといえる。 他方,原告らは,Kにおいて,8月1日の時点で,亡Aの退寮の意向や シグマテストの回答結果に係る認識も有していたのであるから,8月1日の家庭訪問の時点において,亡Aをいじめから解放するために,亡Aが深刻な心理的負荷を抱えていることを認識し,その緊急的な保護を図るとともに,観察を継続する義務や,亡Aの両親に適切な情報を提供し,必要なときには退寮を含めた選択肢があることを伝達すべき義務を特に尽 くすべきであったと主張する。 この点,Kは,8月1日に実施した家庭訪問において,亡Aに対し,寮に残るのであれば頑張るようにという旨の助言をしたこと,シグマテストの生徒返却用の個人表を亡Aに手渡したが,その具体的な結果を取り上げることはしなかったことが認められるものの,被告B及びCとの間 のトラブルについては一応の解決が見られており,7月8日以降,亡Aの心身の状況に深刻な悪影響が生じていることをうかがわせる具体的な兆候があったとは言い難いこと(なお,Kの上記を踏まえても のトラブルについては一応の解決が見られており,7月8日以降,亡Aの心身の状況に深刻な悪影響が生じていることをうかがわせる具体的な兆候があったとは言い難いこと(なお,Kの上記を踏まえても,上記2⑴シのとおり,複数の生徒が,亡Aと被告B及びCとの関係が改善したと供述していることからすれば,現に新たなトラブルやいじめ が生じていながら見逃されたとは考えがたい。)からして,客観的な事情に照らして,亡Aの心理的負荷の程度は相当程度改善したと判断していたとしても不合理とはいえず,家庭訪問の時点において,亡A及び亡Aの両親が,本件寮を退寮させる旨の積極的な意向を示してはいなかったことも踏まえれば,Kが上記の助言をしたことが適切さを欠くということ はできない。また,以上のとおり,亡Aの心理的負荷が相当程度改善して いたと客観的に判断し得ることからすれば,亡Aが「死んでしまいたいと本当に思うときがある」という項目に該当する旨の回答をしていることなど,シグマテストにおいてあえて生徒返却用の個人表に記載されていない事項を亡Aの両親に伝えるべき義務を負っていたとまで認めることはできない。 ⑵ Kの安全配慮義務違反と亡Aの自殺との因果関係(争点⑵イ)亡Aは遺書などを残していないが,上述のとおり,6月6日の時点で本件寮の生活にも起因する重大な心理的負荷を抱えていたとうかがわれること,7月8日の話合い以降,被告B及びCとの関係は解決し,同日以降亡Aに対する新たな加害行為がなかったと認められるところ,8月1日に,亡Aの両 親及びKが,亡Aが本件寮に残るという前提の話をした後に,昼夜逆転の生活になるなど,心身の状況が悪化していること,同月11日に,両親に対し,本件高校を辞めたい旨訴えていること,亡Aの自殺は,本件 親及びKが,亡Aが本件寮に残るという前提の話をした後に,昼夜逆転の生活になるなど,心身の状況が悪化していること,同月11日に,両親に対し,本件高校を辞めたい旨訴えていること,亡Aの自殺は,本件寮に戻る2日前に発生したことなどからすれば,亡Aの自殺の背景としては,本件寮生活を続けたくないという思いが残存していた蓋然性が高い。 しかしながら,亡Aの置かれていた客観的状況(本件寮の環境や被告B及びCとの関係,いじめ行為など)は,上述したとおり,相応の心理的負荷を感じる程度のものではあるが,それ自体,自殺を決意するほどの強度の精神的苦痛を感じさせるものとまではいい難いこと,被告B及びCとの関係については,Jの適切な対応により解決していたこと,「死んでしまいたいと本当に 思うときがある」という項目に該当する旨の回答をしたという事実は,亡Aの重大な心理的負荷の徴表ではあるが,このことが直ちに自殺を図る具体的なおそれがあることに結びつくとまではいい難いこと,その他に,亡Aの心身の状況について,夏季休暇よりも前に特段の注意を要すべき兆候が現れていたと認めるに足りる証拠はなく,むしろ,元気な様子も見られていたこと からすれば,Kにおいて,亡Aの自殺を具体的に予見することができたとは いい難い上,仮にKが7月上旬の時点でJに対し,シグマテストの結果を伝えていたとしても,Jの対応に影響を及ぼしたとまでは認められない。 したがって,Kの安全配慮義務違反と亡Aの自殺との間に相当因果関係を肯定することはできない。 小括 以上によれば,Jの対応には安全配慮義務違反があったとは認められず,Kの対応には,一部,安全配慮義務に違反するものが含まれるものの,これと亡Aの自殺との間に相当因果関係を肯定することはでき 以上によれば,Jの対応には安全配慮義務違反があったとは認められず,Kの対応には,一部,安全配慮義務に違反するものが含まれるものの,これと亡Aの自殺との間に相当因果関係を肯定することはできないから,原告らの被告県に対する請求は理由がない。 第4 結論 よって,原告らの請求は,原告甲が,被告Bに対し,8万2500円及びこれに対する不法行為の後の日である平成25年8月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,原告乙及び原告丙が,被告Bに対し,それぞれ1万3750円及びこれに対する前同様の遅延損害金を請求する部分については理由があるから,その限度で認容し,その余につい てはいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法64条ただし書を適用して,主文のとおり判決する。 熊本地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官小野寺優子 裁判官矢澤雅規 裁判官水口美弥は,異動のため,署名押印できない。 裁判長裁判官小野寺優子 (別紙3) 本件ライン一覧「おいて」「電話でろて」「おいて」「はげ」 「唇」「汚い」「どんだけへぼいと」「根性悪いよそこのあなた」「言いたいことゎ面と向かってゆぇや」 「言い訳やろー」「人の真似ばっかすんな」「つら死んどる」「もっとマスクあげろ」「友達おらんけんて,妬むな」 「逃げんなや」「休養室こいや」「日曜日しらんぞ」「おい」「レスキュー隊呼んどけよ」 「唇とばすなよ」「うけるー」「最後に.. 「友達おらんけんて,妬むな」 「逃げんなや」「休養室こいや」「日曜日しらんぞ」「おい」「レスキュー隊呼んどけよ」 「唇とばすなよ」「うけるー」「最後に.....」「タラコびーむ爆笑」
▼ クリックして全文を表示