平成30(行ウ)45 公文書部分公開決定処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成30年11月15日 東京地方裁判所
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判決文本文10,429 文字)

平成30年11月15日判決言渡平成30年(行ウ)第45号公文書部分公開決定処分取消等請求事件主文 1 板橋区長が平成30年1月29日付けで原告に対してした別紙1文書目録記載1の公文書の部分公開決定のうち,同目録記載2(2)の部分を非公開とした部 分を取り消す。 2 板橋区長は,原告に対し,別紙1文書目録記載1の公文書につき,同目録記載2(2)の部分を公開する旨の決定をせよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,原告が,東京都板橋区情報公開条例(以下「本件条例」という。)に基づき,板橋区長に対し,別紙1文書目録記載1の公文書(以下「本件請求 対象文書」という。)の公開請求をしたところ(以下「本件公開請求」という。),その一部(同目録記載2(1)及び同(2)の部分)を非公開とし,その余の部分を公開する旨の部分公開決定(以下「本件処分」という。)を受けたため,本件処分のうち,同目録記載2(2)の部分(以下「本件非公開部分」という。)を非公開とした部分は違法であると主張して,同部分の取消しを求める とともに,板橋区長に対して本件非公開部分を公開する旨の決定をすることの義務付けを求める事案である(以下,上記義務付けを求める部分を「本件義務付けの訴え」という。)。 1 本件条例の定めは,別紙3「本件条例の定め」に記載のとおりである(なお,同別紙中で定義した略称等は,以下の本文においても同様に用いるものとす る。)。 2 前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)(1) 原告は,平成30年1月17日付けで,本件条例に基づき,同条例上の実施機関である板橋区長に対し,「東京地方裁判所平成28年 2 前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)(1) 原告は,平成30年1月17日付けで,本件条例に基づき,同条例上の実施機関である板橋区長に対し,「東京地方裁判所平成28年1月26日判決(損害賠償請求事件)に係る判決書の供覧文書(ただし,供覧に係る起案用紙初葉表面のみ)」(本件請求対象文書)の公開請求を行った(本件公開請 求)。 なお,上記損害賠償請求事件(以下「別件訴訟」という。)は,第三者が原告となり,板橋区を被告とした訴訟である(以下,別件訴訟の原告である上記第三者のことを,「別件訴訟原告」という。)。 (2) 板橋区長は,平成30年1月29日,原告に対し,本件請求対象文書のう ち,別紙1文書目録記載2(1)及び同(2)(本件非公開部分)の各部分を非公開とし,その余の部分を公開するとの部分公開決定(本件処分)を行った。 (3) 板橋区長は,原告に対し,平成30年1月31日,本件処分に係る通知をし(弁論の全趣旨),同年2月2日,別紙1文書目録記載2(1)及び同(2)の各部分を黒塗りにした本件請求対象文書の写し(別紙2)を交付した。 (4) 原告は,本件処分のうち本件非公開部分を非公開とした部分は違法であると主張して,平成30年2月9日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 本件の争点は,本件処分のうち本件非公開部分を非公開とした部分の適法性であり,具体的には,本件非公開部分が,①本件条例6条1項2号の「個人に関する情報(中略)で特定の個人が識別され得るもの」(以下「個人識別情 報」ということがある。)に該当し,かつ,②同号ただし書アの除外事由に該当せず,非公開情報に該当するか否かである。 4 争点に対する当事者の主張(被告の主張)(1) 本件非公開部分には,本件請 ということがある。)に該当し,かつ,②同号ただし書アの除外事由に該当せず,非公開情報に該当するか否かである。 4 争点に対する当事者の主張(被告の主張)(1) 本件非公開部分には,本件請求対象文書が供覧された部署の職員の肩書が 記載されているところ,当該肩書から別件訴訟の担当部署名が判明し,これ によって,被告と別件訴訟原告との間にあった法的トラブルの概要(生活保護関係か,公園関係かなど)ないし板橋区と別件訴訟原告との間の法律関係が明らかとなるから,本件非公開部分は,本件条例6条1項2号の「個人に関する情報」に当たる。 (2) 本件非公開部分から判明する部署名のみから別件訴訟原告を識別すること はできないものの,本件条例3条後段が個人に関する情報の保護に最大限の配慮をするよう実施機関に求めていること,本件条例5条が何人も公開請求を実施することができるとして請求を実施する者の間口を広げていること,本件条例6条1項2号は個人識別可能性について公開対象となる文書上の記載のみを判断材料とする等の限定文言を記載していないことなどからすれば, 同号の「特定の個人が識別され得る」とは,極めて特殊な立場にある者のみが知り得る他の情報(当該公開対象文書の入手過程において取得された情報を含む。)との照合によって,特定の個人が識別される場合を含むと解するのが相当である。 そうしたところ,例えば,東京地方裁判所構内に掲示された開廷表のうち, 被告等の自治体を当事者とする事件の事件番号及び当事者名を毎日メモするという行為を実施している者ないし団体であれば,開廷表に記載された情報を基に,あるいは,更に民訴法上の訴訟記録の閲覧制度を活用することにより,「板橋区を被告とし,東京地方裁判所が平成28年1月26日に判決を言い 施している者ないし団体であれば,開廷表に記載された情報を基に,あるいは,更に民訴法上の訴訟記録の閲覧制度を活用することにより,「板橋区を被告とし,東京地方裁判所が平成28年1月26日に判決を言い渡した損害賠償請求事件」の原告(別件訴訟原告)の氏名及び住所を容 易に知ることができる。 また,毎日開廷表をメモしていなくとも,別件訴訟の期日が開かれた日に裁判所にたまたま出向いた者であれば,誰でも,開廷表に記載された別件訴訟原告の氏名や事件番号等をメモしたり記憶したりすることが可能であるところ,別件訴訟が判決までに2年程度の期間を要したことも考慮すれば,別 件訴訟の開廷表を一旦見逃したことがあったとしても,その後,別件訴訟の 別期日の開廷表を東京地方裁判所構内で見つけることは容易といえる。実際,東京地方裁判所に保管されている別件訴訟の訴訟記録には,被告以外の閲覧者が裁判所に提出した閲覧謄写票が編綴されており,開廷表を見るなどして事件番号等を知り,別件訴訟の訴訟記録を閲覧した者が存在する。 さらに,被告が当事者となった東京地方裁判所平成26年(行ウ)の事件 のうち,「行ウ」以降の事件番号が3ケタであり(本件請求対象文書に記載のある「平成26年」という文字幅との比較から,3ケタであることが判別できる。),本件請求対象文書の登録日である平成28年2月2日以前の近接した日に何らかの期日があったという条件を充足する事件の訴訟記録を閲覧した者であれば,当該訴訟で争われた概要を知っているので,これと本件 非公開部分から判明する部署名の所管業務を照らし合わせることで,別件訴訟原告を識別することができる。 以上のように,上記各行為を実施した者が有する情報と照合することにより,本件非公開部分の情報が,別件訴訟原告の情報 部署名の所管業務を照らし合わせることで,別件訴訟原告を識別することができる。 以上のように,上記各行為を実施した者が有する情報と照合することにより,本件非公開部分の情報が,別件訴訟原告の情報であることが判明するから,本件非公開部分は,「特定の個人が識別され得るもの」に当たる。 (3) ところで,開廷表をメモするといった上記各行為は,実施しようと思えば誰でも実施可能な行為であるから,本件非公開部分と対照して個人を識別できる情報を有している者が存在する一定程度の蓋然性があるといえ,また,このような者は,特殊な立場の者というよりは,一般人であるとの評価が妥当である可能性がある。 また,そもそも,民訴法上,何人でも訴訟記録の閲覧を請求することができるのであるから,別件訴訟の訴訟記録に記録されている情報は,一般人が通常入手し得る情報といえる。すなわち,民訴法上の閲覧制度を利用して別件訴訟の訴訟記録を閲覧すれば,誰でもその訴訟の概要や別件訴訟原告の氏名等を知ることが可能となり,このような者が有する情報と照合することに より,本件請求対象文書によって供覧された判決書が別件訴訟原告と被告と の間の訴訟の判決書であることが判明する。 したがって,個人識別情報該当性の判断に当たり照合対象とすべき他の情報の範囲を,一般人が通常入手し得る情報に限ると解したとしても,本件非公開部分は,「特定の個人が識別され得るもの」に当たる。 (4) なお,開廷表をメモする行為は誰でも実施できる行為ではあるが,開廷表 に記録された情報は,法令等の規定により又は慣行として公にされているものではないし,訴訟記録の閲覧制度についても,事件番号や当事者名によって事件を特定しなければ,閲覧をすることはできないことからすれば,本件非公開部 ,法令等の規定により又は慣行として公にされているものではないし,訴訟記録の閲覧制度についても,事件番号や当事者名によって事件を特定しなければ,閲覧をすることはできないことからすれば,本件非公開部分は,本件条例6条1項2号ただし書ア所定の情報には当たらない。 (原告の主張) (1) 本件非公開部分それ自体からは,特定の個人を識別することはできない。 また,いわゆるモザイク・アプローチ(他の情報と照合することにより特定の個人の識別可能性を判断する手法のこと。以下同じ。)による個人識別可能性もない。したがって,本件非公開部分は,本件条例6条1項2号所定の非公開情報に該当しないから,本件処分は違法である。 (2) 被告は,毎日開廷表をメモするような者を考慮した場合にモザイク・アプローチにより個人が識別可能であると主張するが,実際にそのような者がいることについての立証はない。また,開廷表は当日のみ閲覧の用に供されるものであるから,開廷表に記載された情報を知るためには,一日のうちに一般人が行わないような調査を行う必要があるところ,このような特別の調査 をすれば入手し得るかもしれないような情報を,他の情報として,モザイク・アプローチを行うことは適切でない。 被告は,開廷表を見た者が本件非公開部分を見た場合には別件訴訟原告を識別する情報が得られる旨主張するが,この場合,その者は本件請求対象文書を見る前に既に別件訴訟原告を識別しているのであり,本件非公開部分を 公開することによってそれまで識別不可能であった特定の個人が識別される という関係にはない。モザイク・アプローチを適用することによって新たに公開される個人情報がない以上,モザイク・アプローチは不適切であるか,成立しないというべきである。 以上のとおり, る という関係にはない。モザイク・アプローチを適用することによって新たに公開される個人情報がない以上,モザイク・アプローチは不適切であるか,成立しないというべきである。 以上のとおり,被告の主張する特定人が存在することの立証,特定人基準を用いることの妥当性及び個人情報の公開につながる蓋然性の立証がなされ ていない以上,本件非公開部分についてモザイク・アプローチを適用する場合は一般人基準によることが相当である。そして,一般人が本件非公開部分に記された「公園課長」等の課長名等の文字列を見た場合において,他の情報とあいまって別件訴訟原告の氏名その他個人情報を知ることができないことは明らかである。 したがって,本件非公開部分は,他の情報と照合することにより特定の個人を識別し得る情報とはいえず,本件条例6条1項2号の非公開情報には当たらない。 (3) なお,仮に開廷表に記載された情報等が一般人の知るところであるとするならば,当該情報は,それ自体が公知の情報となり,事件番号や別件訴訟原 告の氏名といった情報は本件条例6条1項2号ただし書アに該当するということになるから,モザイク・アプローチの成否を検討する余地はない。 第3 当裁判所の判断 1 本件処分のうち本件非公開部分を非公開とした部分の取消請求について(1)ア本件条例は,区民の公文書の公開を求める権利を保障することなどによ り,区民と区政との信頼関係を深め,地方自治の本旨に即した区政を推進することを目的とし(1条),実施機関に対し,区政に関し区民に説明する責務を十分に果たすよう本件条令を解釈し,運用するものとし(3条前段),また,個人に関する情報がみだりに公にされることがないよう最大限の配慮をすることを義務付けている(3条後段)。その上で,本 する責務を十分に果たすよう本件条令を解釈し,運用するものとし(3条前段),また,個人に関する情報がみだりに公にされることがないよう最大限の配慮をすることを義務付けている(3条後段)。その上で,本件条例 は,実施機関は,公開請求があったときは,非公開情報に該当しない限り 当該公文書を公開しなければならない旨定め(6条),6条1項2号において,個人識別情報については,除外事由に当たらない限り,非公開とするものとしている。その趣旨は,公文書の公開請求権と個人情報保護の権利利益は抵触する場合があり得ることから,情報公開によって得られる利益と公開されることにより私人が被る不利益との調整を図ろうとしたとこ ろにあると解される。 イ以上を前提に,本件条例6条1項2号についてみるに,同号が,特にいわゆるプライバシーに関する情報に限定することなく,個人に関する情報で特定の個人を識別し得るものについては,除外事由に当たらない限り非公開とするものと定めていること,3条後段が,個人に関する情報がみだ りに公にされることがないよう最大限の配慮をすることを実施機関に義務付けていることに鑑みれば,「個人に関する情報」とは,氏名,住所,生年月日等の情報に限られず,心身の状況,親族関係,職歴,所得,財産の状況その他当該個人に関連性を有する一切の情報をいうと解するのが相当である。また,上記のように,3条後段が,実施機関は個人に関する情報 がみだりに公にされないよう最大限の配慮をしなければならないとし,6条1項2号が,特定の個人が識別され得るか否かについて,当該公文書の記載のみから判断する等の限定文言を付していないことからすれば,同号にいう「特定の個人が識別され得る」情報とは,当該情報単独で特定の個人を識別することができるものに限られ 否かについて,当該公文書の記載のみから判断する等の限定文言を付していないことからすれば,同号にいう「特定の個人が識別され得る」情報とは,当該情報単独で特定の個人を識別することができるものに限られず,他の情報と照合することによ り,特定の個人を識別することができることとなるものを含むと解するのが相当である。 そして,本件条例に基づく公文書の公開請求は何人でもできるとされていること(5条)からすると,当該個人と特定の関係にある者等ある特定の範疇に属する者からの公開請求が行われる可能性もあるから,個人情報 の保護のためには,一般人が知り,あるいは知り得る情報を照合対象とす るだけでは足りず,ある特定の範疇に属する者が通常入手し得る情報についても照合対象とすべき場合があることは否定できない。もっとも,前記のとおり,本件条例6条1項2号は,公文書の公開請求権と個人情報保護の権利利益の調整を図る規定であり,非公開情報に該当しない限り実施機関は当該公文書を公開しなければならないとされていることからすると, 照合対象とすべき他の情報が無限定に広がることは相当でない(被告作成の手引きにおいて,非公開情報につき,「これを極めて限定的なものとして捉え,「原則公開」の精神に即して解釈・運用されなければならない」とされている(甲17)のも,これと同趣旨のことをいうものと解される。)。 したがって,一般人が知り,あるいは知り得る情報を照合対象とすることにより,当該個人が識別される具体的可能性がある場合に加え,公開請求に係る当該情報の性質や内容に照らし,特定の範疇に属する者が通常入手可能である情報と照合することにより,当該個人が識別される具体的可能性がある場合にも,当該情報は,本件条例6条1項2号にいう「特定の 情報の性質や内容に照らし,特定の範疇に属する者が通常入手可能である情報と照合することにより,当該個人が識別される具体的可能性がある場合にも,当該情報は,本件条例6条1項2号にいう「特定の 個人が識別され得るもの」に当たると解するのが相当である。 (2)アこれについて本件をみるに,本件非公開部分には,別件訴訟に係る判決書が供覧された被告区役所内の職員の肩書が記載されており,当該記載から判明する当該職員の部署名により,例えば租税関係の紛争とか生活保護関係の紛争といった,別件訴訟における別件訴訟原告と被告との間の法的 紛争の抽象的な概要ないし類型を推知し得るといえる。そうすると,本件非公開部分の情報は,「個人に関する情報」に当たるといえる。 イもっとも,本件非公開部分に記載された肩書やここから判明する当該職員の部署名という情報単独では,前記のとおり,法的紛争の抽象的な概要ないし類型を推知し得るにすぎず,特定の個人である別件訴訟原告を識別 することはできない。そこで,他の情報と照合することによって別件訴訟 原告を識別することが可能であるかについて,更に検討する。 (ア) まず,本件非公開部分を含む本件請求対象文書の公開経過から判明するのは,別件訴訟が,東京地方裁判所に平成26年に提訴され,平成28年1月26日に判決の言渡しのあった,被告を当事者とする「損害賠償請求事件」との事件名の付された行政事件のうち,ある一定の法的 紛争の類型に該当するものということのみである。そして,本件において,被告との間で当該類型に分類される法的紛争を抱えていたのが,別件訴訟原告のみ,あるいは別件訴訟原告を含む極少数の者のみであるといった特殊性を示す事情は証拠上認められない。また,東京地方裁判所の事件であること,判決日,事件 類される法的紛争を抱えていたのが,別件訴訟原告のみ,あるいは別件訴訟原告を含む極少数の者のみであるといった特殊性を示す事情は証拠上認められない。また,東京地方裁判所の事件であること,判決日,事件名,提訴時期,被告が一方当事者とな っていること等の情報についても,これらを手掛かりとして別件訴訟そのものを特定し得るほどに別件訴訟に特有の情報とはいえないし,そうであれば,これらの情報と一般人が知り得る他の情報とを照合することによって別件訴訟原告が識別され得るともいい難い。以上からすると,本件非公開部分の情報は,一般人が知り,あるいは知り得る情報と照合 したとしても,別件訴訟原告を識別し得るものということはできない。 この点,被告は,東京地方裁判所構内の開廷表の情報は何人でも取得することができること,民訴法上,何人でも訴訟記録の閲覧を請求することができると規定されていることを根拠に,別件訴訟の訴訟記録に記録されている情報は,一般人が入手し得る情報に当たると主張する。し かしながら,開廷表は,一般に,当該事件の口頭弁論等の期日が開かれる当日に,裁判所庁舎の受付付近及び法廷付近等一定の場所に限って閲覧の用に供されるものにすぎず,一般人が入手可能な情報であるとはいえない。また,訴訟記録を民訴法上の閲覧制度を利用して閲覧するためには,被告も認めるとおり,通常は当事者名や事件番号等により当該事 件を特定して閲覧請求をする必要があり,本件非公開部分に記録された 情報は,訴訟記録の閲覧請求において,事件を特定するために用いられているものではなく,そして,このような特定のための情報を別件訴訟につき一般人が有していることをうかがわせる事情も認められないことからすると,別件訴訟の訴訟記録に記録されている情報が,一般人の られているものではなく,そして,このような特定のための情報を別件訴訟につき一般人が有していることをうかがわせる事情も認められないことからすると,別件訴訟の訴訟記録に記録されている情報が,一般人の入手し得る情報に当たるとの被告の主張は採用できない。 (イ) そこで次に,公開請求に係る当該情報の性質や内容に照らし,特定の範疇に属する者が通常入手可能である情報と照合することにより,当該個人が識別される具体的可能性があるといえるか否かについて検討する。 この点,別件訴訟原告の同僚や近隣住民等別件訴訟原告と特定の関係 にある者を想定してみても,別件訴訟原告から別件訴訟に関する情報を知らされない限り,通常は別件訴訟のことを知ることはできないのであるし,本件非公開部分に記載された情報が,法的紛争の抽象的な概要ないし類型を推知し得る程度の極めて概括的な情報にすぎないことからすれば,上記特定の関係にある者が別件訴訟原告に関して通常入手可能な 一定の情報(例えば,別件訴訟原告の住所地,経歴等の情報)と照合したとしても,別件訴訟原告を識別し得る具体的可能性があるということはできない。 被告は,本件非公開部分に記録された情報と,ある者が東京地方裁判所構内の開廷表から得た情報との照合,又は,更にその者が別件訴訟の 訴訟記録を閲覧して得た情報との照合により,別件訴訟原告を識別することができる旨主張する。しかしながら,開廷表や別件訴訟の訴訟記録の情報を得た特定の範疇に属する者にとっては,本件非公開部分に記録された別件訴訟原告に係る情報が特定人に係る情報であることを識別することができるとしても,飽くまで本件非公開部分に記録された情報か らは,法的紛争の抽象的な概要ないし類型を推知し得るにとどまるので 訟原告に係る情報が特定人に係る情報であることを識別することができるとしても,飽くまで本件非公開部分に記録された情報か らは,法的紛争の抽象的な概要ないし類型を推知し得るにとどまるので あって,既に別件訴訟につきより詳細な情報を知る又は知り得る立場にある上記のような特定の範疇に属する者にとっては,本件非公開部分に記録された情報により,特定の個人が識別され得る新規の有意な情報が付加されるものではない。そうであるとすると,前記(1)アで述べた本件条例の趣旨に照らし,上記のような特定の範疇に属する者の有する情報 を,公文書に記録された個人に関する情報が特定の個人が識別されるものであるか否かを判断する際に照合すべき情報に含めるのは相当ではないというべきである。 その他,特定の範疇に属する者が通常入手可能である情報と照合することにより,当該個人が識別される具体的可能性があることを認めるに 足りる証拠はない。 ウ以上によれば,本件非公開部分は,本件条例6条1項2号にいう「個人に関する情報」には当たるものの,当該情報単独で特定の個人を識別することはできず,また,他の情報と照合したとしても,特定の個人である別件訴訟原告を識別し得るものとはいえないから,「特定の個人が識別され 得るもの」に当たらない。 (3) したがって,本件非公開部分は本件条例6条1項2号所定の非公開情報に該当しないから,同号ただし書ア該当性について判断するまでもなく,本件処分のうち本件非公開部分を非公開とした部分は違法であり,取消しを免れない。 2 本件義務付けの訴えについて(1) 前記1で判示したとおり,本件処分のうち本件非公開部分を非公開とした部分は違法であり,取り消されるべきであるところ,本件条例6条1項は,実施機 2 本件義務付けの訴えについて(1) 前記1で判示したとおり,本件処分のうち本件非公開部分を非公開とした部分は違法であり,取り消されるべきであるところ,本件条例6条1項は,実施機関は,同条項各号所定の情報が記録されている場合を除き,当該公文書の公開義務を負うとしており,本件条例には,当該公文書に非公開情報が 記録されていない場合に,あえてこれを非公開とする処分ができるとする行 政裁量を定めた規定はない。そして,前記1で説示したとおり,本件非公開部分は,本件条例6条1項2号所定の非公開情報に該当せず,また,同条項所定のその他の非公開情報に該当することをうかがわせる事情も存在しない。 したがって,本件において,実施機関である板橋区長は,本件非公開部分を公開するとの処分をすべきことが明らかであると認められる。 (2) よって,行政事件訴訟法37条の3第5項に基づき,板橋区長に対し,本件非公開部分を公開すべき旨を命ずる判決をするのが相当である。 第4 結論よって,原告の請求はいずれも理由があるから,これらを認容することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官林 俊之 裁判官小川弘持 裁判官三貫納 有子(別紙2省略)

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