主文 被告が原告に対し,平成10年12月16日付けでした,原告の平成7年分の所得税に係る更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,平成12年11月14日付け裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,原告が,平成7年分の所得税について,相続等により取得した居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例を定めた規定の適用を受けられるものとして,確定申告を行ったところ,被告から,その適用を否定され,更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたため,これらの各処分の取消しを求めている事案である。 1 法令の定め租税別措置法(ただし,平成8年法律第17号による改正前のもの。以下「措置法」という。)36条の2第1項は,個人が,その有する家屋又は土地若しくは土地の上に存する権利で,その年1月1日において,同法31条3項に規定する所有期間が10年を超えるもの(当該個人の父若しくは母又は祖父若しくは祖母が居住の用に供していた家屋又は土地若しくは土地の上に存する権利でこれらの者から相続又は遺贈により取得したものとして政令で定めるものに限る。)のうち,同項1号ないし4号に規定する譲渡資産の譲渡をした場合において,当該譲渡の日の属する年の前年1月1日から当該譲渡の日の属する年の12月31日までの間に,当該個人の居住の用に供する家屋又は当該家屋の敷地の用に供する土地若しくは当該土地の上に存する権利で,国内にあるもの(買換資産)の取得(建設を含むものとし,贈与又は交換によるものその他政令で定めるものを除く。)をし,かつ,当該取得の日から当該譲渡の日の属する年の翌年12月31日までの間に当該個人の居住の用に供したとき,又は 取得(建設を含むものとし,贈与又は交換によるものその他政令で定めるものを除く。)をし,かつ,当該取得の日から当該譲渡の日の属する年の翌年12月31日までの間に当該個人の居住の用に供したとき,又は供する見込みであるときは,原則として,当該譲渡資産の譲渡による収入金額が当該買換資産の取得価額以下である場合にあっては当該譲渡資産の譲渡がなかったものとし,当該収入金額が当該取得価額を超える場合にあっては当該譲渡資産のうちその超える金額に相当するものとして政令で定める部分の譲渡があったものとして,長期譲渡所得の課税の特例に関する同法31条を適用するものと規定して,いわゆる相続等により取得した居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例を定めている(以下,これを「本件特例」という。)。 そして,租税特別措置法施行令24条の2第3項は,上記の措置法36条の2第1項において買換資産の取得のうち特例の適用が除外される「その他政令で定めるもの」として,代物弁済としての取得(金銭債務の弁済に代えてするものに限る。)を規定している。 2 前提となる事実(いずれも当事者間に争いがない。)(1) 原告は,日商広告企業株式会社(以下「日商広告企業」という。)のすべての株式を保有し,同社の代表取締役を務めている者である。 (2) 原告は,昭和61年5月21日,父の死亡により下記の不動産を取得して,これを原告の居住の用に供していた。 記ア所在東京都目黒区α地番 990番72地目宅地地積 115・70平方メートルイ所在東京都目黒区α990番地12家屋番号 990番24種類居宅・車庫構造木造アルミニューム板葺3階建床面積 1階 13・88平方メートル2階 46・28平方メートル3階 46・28平方メートル( 家屋番号 990番24種類居宅・車庫構造木造アルミニューム板葺3階建床面積 1階 13・88平方メートル2階 46・28平方メートル3階 46・28平方メートル(以下,ア及びイを併せて「譲渡資産」という。)(3) 原告は,平成7年4月26日付けで,Aに対し,本件譲渡資産を代金8100万円で売却した。 (4) 原告は,平成7年6月9日,上記代金のうち7300万円の支払を受け,うち5000万円については,同日,日商広告企業にこれを入金し,同社の城南信用金庫に対する借入金の返済に充てるとともに,本件譲渡資産に設定されていた,債務者を日商広告企業及び原告,根抵当権者を城南信用金庫として極度額7000万円の根抵当権を,同日付けで抹消した上,所有権移転登記を経由した。 また,上記7300万円のうち2000万円については,平成7年7月10日,日商広告企業の当座預金口座に入金され,同日に,同社の城南信用金庫に対する手形貸付による借入金の弁済に充てられた(以下,原告から日商広告企業に移転された上記5000万円及び2000万円を併せて「本件金員」という。)。 (5) 原告は,平成7年9月1日受付で,下記不動産のうち,アの土地の持分3分の1につき,日商広告企業から同年6月22日売買を原因とする所有権一部移転登記を,イの建物の持分3分の1について所有権保存登記をそれぞれ了した。なお,下記不動産の持分を原告に譲渡するに当たり,売買契約書は作成されていない。 記ア所在東京都品川区β地番 82番6地目宅地地積 268・06平方メートル(以下,「本件土地」といい,原告が取得した本件土地の持分を「本件土地持分」という。)イ所在東京都品川区β82番地6家屋番号 82番6の2種類事務所・居宅 地積 268・06平方メートル(以下,「本件土地」といい,原告が取得した本件土地の持分を「本件土地持分」という。)イ所在東京都品川区β82番地6家屋番号 82番6の2種類事務所・居宅構造鉄筋コンクリート造陸屋根3階建床面積 1階 121・30平方メートル2階 120・53平方メートル3階 82・33平方メートル(以下,「本件建物」といい,原告が取得した本件建物の持分を「本件建物持分」という。また,本件土地持分及び本件建物持分を併せて「本件取得資産」という。)(6) 原告は,平成8年3月13日,本件譲渡資産の譲渡に係る所得(以下「本件譲渡所得」という。)の金額の計算につき,措置法36条の2第1項に定める本件特例を適用し,分離長期譲渡所得の金額を0円として,平成7年分所得税の確定申告を行った。 (7) これに対し,被告は,原告に対し,平成10年12月16日付けで,平成7年分の所得税につき,分離長期譲渡所得の金額を4695万円として,納付すべき税額を469万5000円とする更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った(その後,裁決により一部取り消された後の上記過少申告加算税賦課決定を「本件賦課決定処分」といい,本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。)。 (8) 原告は,被告に対し,平成11年1月20日付けで,本件更正処分等につき異議申立てをしたが,被告は,同年4月15日付けで,原告の異議申立てを棄却する旨の決定をした。 (9) さらに,原告は,国税不服審判所長に対し,平成11年5月17日付で,本件更正処分等に対する審査請求を行ったが,国税不服審判所長は,平成12年11月14日付で,上記更正処分に対する審査請求を棄却し,本件賦課決定処分の一部を取り消す旨の裁決 平成11年5月17日付で,本件更正処分等に対する審査請求を行ったが,国税不服審判所長は,平成12年11月14日付で,上記更正処分に対する審査請求を棄却し,本件賦課決定処分の一部を取り消す旨の裁決を行い,平成12年11月16日ころ,これを原告に通知した。 なお,原告の平成7年分の所得税に関する確定申告,本件更正処分等及びこれに対する不服申立て等の経緯は,別表1記載のとおりである。 3 被告の主張する本件更正処分等の根拠(1) 被告が,本件訴えにおいて主張する,原告の平成7年分の所得税の課税標準等及び納付すべき税額は,次のとおりである。 ア総所得金額(別表3符号②の金額) 1540万円上記金額は,原告の平成7年分の給与所得の金額(別表3符号①の金額)であり,原告が平成8年3月13日に被告に提出した平成7年分の所得税の確定申告書(以下「本件確定申告書」という。)に記載されている総所得金額と同額である。 イ分離課税の長期譲渡所得の金額(別表2符号⑥及び別表3符号③の金額) 7429万円上記金額は,次のaの金額からbないしdの金額を控除した金額である。 a 収入金額(別表2符号①の金額) 8100万円上記金額は,本件譲渡資産の売買代金の金額である。 b 取得費(別表2符号②の金額) 405万円上記金額は,措置法31条の4第1項の規定に基づき,上記aの収入金額に100分の5の割合を乗じて算出した金額である。 c 譲渡費用(別表2符号③の金額) 166万円上記金額は,原告が平成7年5月9日に本件譲渡資産の売買の仲介手数料として株式会社鈴萬に支払った金額160万円及び本件譲渡資産の売買における売買契約書に貼付した収入印紙代6万円の合計額である。 d 特別控除額(別表2符号⑤の金額) 100万円上記金額は,措置法31条5項に規定する長期 払った金額160万円及び本件譲渡資産の売買における売買契約書に貼付した収入印紙代6万円の合計額である。 d 特別控除額(別表2符号⑤の金額) 100万円上記金額は,措置法31条5項に規定する長期譲渡所得の特別控除額である。 ウ所得控除額の合計額(別表3符号⑩の金額) 263万9260円上記金額は,所得税法74条に規定する社会保険料控除の額106万6260円(別表3符号④の金額),同法76条に規定する生命保険料控除の額5万円(別表3符号⑤の金額),同法77条に規定する損害保険料控除の額3000円(別表3符号⑥の金額),同法83条に規定する配偶者控除の額38万円(別表3符号⑦の金額),同法84条に規定する扶養控除の額76万円(別表3符号⑧の金額)及び同法86条に規定する基礎控除の額38万円(別表3符号⑨の金額)の合計額であり,本件確定申告書に記載されている所得控除額と同額である。 エ課税総所得金額(別表3符号⑪の金額) 1276万円上記金額は,前記アの総所得金額1540万円から前記ウの金額263万9260円を控除した後の金額(国税通則法(以下「通則法」という。)118条1項の規定により1000円未満の端数切捨て後のもの)である。 オ課税分離長期譲渡所得金額(別表3符号⑫の金額) 7429万円上記金額は,前記イの金額と同額の金額である。 カ納付すべき税額(別表3符号⑱の金額) 2028万7000円上記金額は,次のa及びbの金額の合計額2288万5000円から,c及びdの金額の合計額259万8000円を控除した後の金額である。 a 課税総所得金額に対する税額(別表3符号⑬の金額) 259万8000円上記金額は,前記エの金額に対し,所得税法89条1項による税率を乗じて算出した金額である。 b 課税分離長期譲渡所得金額に対する税額( 所得金額に対する税額(別表3符号⑬の金額) 259万8000円上記金額は,前記エの金額に対し,所得税法89条1項による税率を乗じて算出した金額である。 b 課税分離長期譲渡所得金額に対する税額(別表3符号⑭の金額) 2028万7000円上記金額は,前記オの金額に対し,措置法31条1項による税率を乗じて算出した金額である。 c 特別減税額(別表3符号⑯の金額) 5万円上記金額は,平成7年分所得税の特別減税のための臨時措置法4条に規定する特別減税の額である。 d 源泉徴収税額(別表3符号⑰の金額) 254万8000円上記金額は,総所得金額の計算の基礎となった給与所得について源泉徴収をされた所得税の額であり,本件確定申告書に記載されている源泉徴収税額と同額である。 (2) 本件更正処分の適法性以上のとおり,原告の平成7年分の納付すべき所得税額は2028万7000円となるところ,本件更正処分における原告が納付すべき所得税額は469万5000円であり,上記金額の範囲内であるから,本件更正処分は適法である。 (3) 本件賦課決定処分の根拠及び適法性原告は,平成7年分所得税の課税標準及び納付すべき所得税額を過少に申告していたものであり,過少に申告したことについて通則法65条4項に規定する正当な理由も存在しない。 したがって,通則法65条1項の規定により,原告が本件更正処分によって新たに納付すべきこととなった所得税額(同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切捨て後のもの)である469万円に100分の10の割合を乗じて算出した金額46万9000円,及び,同法65条2項の規定により,原告が本件更正処分によって新たに納付すべきこととなった所得税額(469万5000円)のうち,同条3項2号に規定する期限内申告税額(254万8000円) 9000円,及び,同法65条2項の規定により,原告が本件更正処分によって新たに納付すべきこととなった所得税額(469万5000円)のうち,同条3項2号に規定する期限内申告税額(254万8000円)に相当する金額を超える部分に相当する金額(同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切捨て後のもの)である214万円に100分の5の割合を乗じて算出した金額である10万7000円とを合計した金額である57万6000円が過少申告加算税の額として賦課されることとなるから,この金額と同額である本件賦課決定処分は適法である。 4 当事者の主張(原告の主張)本件土地持分の取得原因は,原告による取得の目的,取得の経緯及び前後の事情等に照らし,売買であることが明らかであり,本件譲渡所得の金額の計算については,本件特例が適用されるべきであるところ,これを適用せずに算出した本件譲渡所得の金額に基づいて行われた本件更正処分等は違法である。 (1)本件取得資産の取得の経緯ア原告は,家族とともに,昭和37年に建築された本件譲渡資産である建物に居住していたが,上記建物は,平成5年ころには老朽化していた。 また,原告を代表取締役とする日商広告企業は,東京都中央区γに本店を置いていたが,その賃料として月額約100万円,保有車両の駐車料金として月額30万円を負担していた。 そこで,原告及び日商広告企業は,同社が土地を取得し,その上に建築される建物に同社の本店を移転するとともに,上記土地及び上記建物を原告と同社の共有とし,原告の自宅を上記建物に移転することとした。 そして,原告は,平成5年中に,京橋税務署及び目黒税務署に赴き,本件特例の適用に関し,税務署職員に相談をした。 イ日商広告企業は,平成6年5月30日,本件土地を代金2億1000万円で購入し,上記代金は て,原告は,平成5年中に,京橋税務署及び目黒税務署に赴き,本件特例の適用に関し,税務署職員に相談をした。 イ日商広告企業は,平成6年5月30日,本件土地を代金2億1000万円で購入し,上記代金は,すべて城南信用金庫からの借入により調達した。 他方,原告及び日商広告企業は,同社が本件土地を購入した直後から,建物の設計に着手し,平成6年10月30日には,同社が本件建物の建築請負契約を締結し,同年11月8日には,原告宛てに建築確認の通知が行われた。 このころ,原告と日商広告企業は,建築代金の3分の1を原告,残り3分の2を同社がそれぞれ負担し,本件土地も同様の割合により両者が共有することとした。 ウ本件建物は,平成6年11月ころに着工され,平成7年4月初めころには,同年5月末ころに入居が可能となることが確実となった。そこで,原告は,同年4月初めころ,本件譲渡資産の売却を不動産業者に依頼し,同月26日付けで,本件譲渡資産を8100万円で売却する契約を締結した。 原告は,平成7年4月26日,売買代金のうち,800万円を手付金として受領し,残金7300万円については,同年6月9日までに所有権移転登記手続と引換えに受領することとされた。 その後,原告は,同年5月中旬ころ,本件譲渡資産から退去して本件建物に転居し,同月30日ころ,同所への転入届を提出した。 エ他方,平成7年5月中旬ころには,原告が本件土地持分の代金として7000万円,本件建物の建築費用として,日商広告企業が負担する建築費用7080万円の3分の1に相当する2360万円の,合計9360万円を負担すべきことが確実となっていた。 オ原告は,平成7年6月9日,Aから,本件譲渡資産の残代金7300万円の支払を受けた。 そして,原告は,平成7年6月9日,上記残代金のうち5000万円を日商広告 担すべきことが確実となっていた。 オ原告は,平成7年6月9日,Aから,本件譲渡資産の残代金7300万円の支払を受けた。 そして,原告は,平成7年6月9日,上記残代金のうち5000万円を日商広告企業に入金し,同社は,これを城南信用金庫に対する借入金の返済に充て,城南信用金庫は,本件譲渡資産に設定されていた根抵当権を抹消し,原告からAに対して,本件譲渡資産の所有権移転登記が経由された。 また,原告は,同年7月10日,上記残代金のうち2000万円を日商広告企業の当座預金口座に入金し,上記金員は,同社の城南信用金庫に対する手形貸付による借入金の弁済に充てられた。 原告の日商広告企業に対する上記の5000万円及び2000万円の各入金は,原告の日商広告企業に対する本件取得資産の売買代金の内金とする趣旨によるものであった。 なお,日商広告企業は,平成7年6月ないし7月ころ,城南信用金庫に多額の定期預金を有しており,同月10日の手形貸付による借入金の返済については,定期預金を取り崩して返済することも,手形の書替えにより満期を延長することも可能であった。このことからも明らかなとおり,原告から日商広告企業への資金移動による借入金の返済は,もっぱら城南信用金庫のアドバイスに基づくものであり,日商広告企業がこの時点で借入金の返済を迫られていたわけではなかった。 カ日商広告企業は,平成7年6月22日,取締役会を開催し,同社が取得した本件土地の3分の1の持分を原告に売却することを決議した。 また,原告が日商広告企業と共同して本件土地上に建築した本件建物については,平成7年8月1日,建築工事完了引渡証明書が発行され,同月23日,表示の登記が完了した。 そこで,原告と日商広告企業は,同年9月1日付けで,本件建物について,原告と同社の共有による所有権保存登 は,平成7年8月1日,建築工事完了引渡証明書が発行され,同月23日,表示の登記が完了した。 そこで,原告と日商広告企業は,同年9月1日付けで,本件建物について,原告と同社の共有による所有権保存登記を行うとともに,本件土地持分について,売買を原因とする所有権持分移転登記を申請した。 なお,本件建物の建築代金のうち原告の負担分である2380万円及び本件土地持分の代金7000万円の合計9380万円と,原告が日商広告企業に支払った本件金員合計7000万円との差額である2380万円については,原告が現在も同社に分割返済しているところである。 (2) 本件土地持分の取得原因が売買であること以上のとおり,原告による取得の目的,取得の経緯及び前後の事情等に照らせば,本件土地持分の取得原因は売買であり,本件建物も原告と日商広告企業が共同して建築したものであることが明らかである。 ア原告は,前記(1)のとおり,日商広告企業が本件土地を購入する際に,本件土地の持分を同社から取得し,本件土地上に建築する建物に入居する意思を有しており,日商広告企業も,本件土地の持分を原告に譲渡し,その上に建築する建物を原告と共有する意思を有していたことが明らかである。 そうすると,原告としては,このような経済的目的を達するために,有償契約により資産を取得する場合の一般的な法律行為である売買により,本件土地持分を取得したものと推認することが合理的である。 イまた,原告は,前記(1)のとおり,自宅の売却と日商広告企業からの本件土地の持分の買取り及び本件建物の共同建築を目的として行動し,これを前提に税務相談を行い,自宅に適するよう土地を選択し,建物の設計を行い,その上で自宅を売却して本件建物に転居し,その代金を同社に順次入金しており,同社の取締役会においても本件土地持分を売 し,これを前提に税務相談を行い,自宅に適するよう土地を選択し,建物の設計を行い,その上で自宅を売却して本件建物に転居し,その代金を同社に順次入金しており,同社の取締役会においても本件土地持分を売却する承認決議が行われ,本件土地についても,売買を原因として所有権移転登記が行われている。 このように,本件土地持分の取得に至るすべての行為は,売買を取得原因とすることを前提として行われており,原告が本件土地持分を売買により取得したことは明らかである。 そして,上記の経緯にかんがみれば,日商広告企業と原告との間において,平成7年6月22日に,本件土地持分に係る売買契約が成立したというべきである。 (3) 被告の主張に対する反論ア被告は,原告が当初から新住居を確保する意思を有していたとしても,賃借によってもその目的を達し得る以上,本件取得資産を取得する意思を有していたとは限らず,仮に原告が本件土地持分を取得する意思を有していたとしても,売買以外の法律行為によりこれを取得することもできるから,このことから直ちに本件土地持分の取得原因が売買であるとはいえないと主張する。 しかし,本件においては,原告から日商広告企業に対して賃料が支払われず,同社において地代相当額が収益として認定課税されていないこと等に照らせば,新住居を賃借により確保できるとする被告の主張は,あくまで抽象的な可能性を論ずるものにすぎない。 また,有償契約により資産を取得する場合の法律行為としては,売買によることが一般的であるから,本件土地持分の取得についても,特段の事情がない限り,売買と推認することが経験則に合致するものというべきであり,原告が当初から本件土地持分を取得する意思を有していたにもかかわらず,いったん金銭消費貸借契約を締結した上で,その代物弁済としてこれを取得したと と推認することが経験則に合致するものというべきであり,原告が当初から本件土地持分を取得する意思を有していたにもかかわらず,いったん金銭消費貸借契約を締結した上で,その代物弁済としてこれを取得したと判断することは,経験則に反するのみならず,本件特例の適用を受けるべく行動した原告の目的にも反し,相当でない。 イ被告は,原告が日商広告企業に入金した本件金員を,同社が借入金の返済に充てたことから,原告が同社の借入金を返済する目的で本件金員を交付したのであって,本件金員は貸金として交付されたものであり,原告は,その回収のために,同社から貸金額に相応する本件取得資産を取得した旨主張する。 しかし,売買代金をどのように利用するかは売主の自由であり,日商広告企業が原告から入金された本件金員を借入金の返済に充てたことは,本件金員の法的性格に関する判断に何ら影響を及ぼすものではない。 また,平成7年6月9日及び同年7月10日に,日商広告企業において自ら調達できない資金需要が存したとしても,原告が同年5月中ころには,本件土地及び本件建物につき持分を取得して使用することを前提に本件建物に入居していることに照らせば,当時,既に本件土地持分の売買が事実上成立していたというべきである。 さらに,原告が7000万円の貸付金に見合う持分を代物弁済として取得するのであれば,原告が取得する持分の割合について,原告が日商広告企業に2000万円を超える清算金を支払う必要が生じるような,3分の1という割合にする必要はないことからも,本件土地持分の取得原因が代物弁済でなかったことが明らかである。 したがって,被告の上記主張は,いずれも理由がないというべきである。 ウ被告は,日商広告企業の会計帳簿において,本件金員の勘定科目が前受金又は借入金とされずに,借入金とされているこ らかである。 したがって,被告の上記主張は,いずれも理由がないというべきである。 ウ被告は,日商広告企業の会計帳簿において,本件金員の勘定科目が前受金又は借入金とされずに,借入金とされていることを理由に,本件金員がいずれも貸付金であったと主張する。 しかし,日商広告企業は,前受金を事業関連の金員のみを対象とする勘定科目としているうえ,その内訳コードも40以上に及んでおり,本件金員を前受金として記帳した場合,他の前受金との関係で混乱を生じるおそれがあった。また,同社は,仮受金についても,事業関連の金員のみを対象とする勘定科目としており,平成6年以降,その使用例もなかった。そこで,同社は,本件金員を便宜的に借入金として処理したものである。 したがって,日商広告企業による上記の会計処理が直ちに不適切であるとはいい難く,また,仮に適切でなかったとしても,このよう会計処理は,原告から同社の会計処理を一任されたB税理士の判断によるものであって,原告及び同社の意向によるものではない以上,上記の会計処理をもって,本件金員が貸付金であると推認することはできない。 エ被告は,本件土地持分が売買契約に移転したとすると,代金の支払時期が早すぎると主張する。 しかし,本件土地持分について,日商広告企業の取締役会の決議を得て,同社と原告の間で平成7年6月22日に売買契約が締結されたとしても,原告が同社の全株式を保有していることからすれば,原告が同日以前に,売買契約の成立を確信して,あたかもこれが成立しているかのように行動することは十分あり得ることであるし,代金の支払が本件土地持分の所有権移転登記以前に行われたことについても,原告と同社の間に同時履行を問題とすべき関係がない以上,不自然であるとはいえない。 オ被告は,本件土地持分の売買契約書が存在しない の支払が本件土地持分の所有権移転登記以前に行われたことについても,原告と同社の間に同時履行を問題とすべき関係がない以上,不自然であるとはいえない。 オ被告は,本件土地持分の売買契約書が存在しないことを理由に,本件土地持分の取得原因が売買でないと主張する。 しかし,売買は諾成契約であって,契約書の作成は売買契約の成立要件ではない。 また,本件土地持分の売買の場合,買主である原告は,売主である日商広告企業の全株式を保有する代表取締役であるから,売買当事者間において,契約書の作成を必要とする状況がなかったというべきである。 そして,本件土地持分の売買を他の役員も了承していたことや,契約書を作成しないことにより収入印紙が節約できること等に照らしても,本件土地持分の売買について契約書が作成されなかったことには,十分な合理性があるというべきである。 カ被告は,利益相反取引を規制する商法265条1項の規定の趣旨からすれば,原告と日商広告企業の間で売買が行われたとすれば,売買代金額を取締役会議事録に記載しているはずであり,本件土地持分の売買代金額が上記議事録に記載されていないことは,本件土地持分の取得原因が売買でなく代物弁済であったことの証拠であると主張する。 しかし,本件土地持分の売買の場合には,取締役会で売買代金額を定めており,単にこれを取締役会議事録に記載しなかったにすぎないのであって,むしろ,上記議事録の記載によれば,取締役会において売買に関する議決が行われたことが明らかであるから,被告の上記主張は失当である。 キ被告は,本件建物の建築確認における建築主等が原告から日商広告企業に変更されたことから,原告が本件建物を共同建築したものでない旨主張する。 しかし,本件建物の建築確認における建築主等を変更したのは,本件建物の名義上の注文主 における建築主等が原告から日商広告企業に変更されたことから,原告が本件建物を共同建築したものでない旨主張する。 しかし,本件建物の建築確認における建築主等を変更したのは,本件建物の名義上の注文主が日商広告企業であったにもかかわらず,建築設計事務所が誤って建築確認申請を原告名義で行ったことが原因であり,原告が建築主等でないことを自認したものではない。 そして,被告の上記主張は,対外的な契約上の名義人と,内部的な実質上の契約当事者が分離することを否定するものであって,不適切というべきである。 (4) 以上のとおり,原告による本件土地持分の取得原因は,売買であることが明らかであるから,本件譲渡所得の金額の計算については,本件特例が適用されるべきである。 したがって,本件譲渡所得の金額につき,本件特例を適用せずに算出し,その金額を基礎として算出された所得税額に基づいて行われた本件更正処分等は,違法である。 (被告の主張)本件特例は,居住用財産を売却し,その対価をもって代わりの資産を積極的に取得した場合に適用が認められるものであって,代物弁済による取得については,現実に譲渡代金を取得し,それにより買い換えたとはいえないことから,本件特例の適用を認めることはできない。 しかるところ,原告は,本件譲渡資産の対価を貸付金とし,当該貸付金債権の弁済を受けるのに代えて本件取得資産を取得したのであって,売買によりこれを取得したものではないから,本件譲渡所得について,本件特例の適用を認めることはできない。 (1) 本件取得資産の取得の経緯ア日商広告企業は,平成6年5月30日,本件土地を代金2億1000万円で取得した。 なお,日商広告企業は,本件土地の取得につき,みなみ商事株式会社(以下「みなみ商事」という。)に仲介手数料として500万円を支払った 平成6年5月30日,本件土地を代金2億1000万円で取得した。 なお,日商広告企業は,本件土地の取得につき,みなみ商事株式会社(以下「みなみ商事」という。)に仲介手数料として500万円を支払った。 イ日商広告企業は,平成6年9月1日,株式会社松田建築設計事務所(以下「松田建築設計事務所」という。)との間で,本件建物の設計業務及び工事監理業務について,報酬総金額を309万円(消費税相当額を含む。)とする建築士業務委託契約を締結した。 また,日商広告企業は,同年10月30日,有限会社リバティープランニング(以下「リバティープランニング」という。)との間で,本件建物について,代金を6695万円(消費税相当額を含む。)とする工事請負契約を締結した。 ウ他方,原告は,平成6年9月29日,品川区建築主事に対し,本件建物について,建築主等を原告として,建築基準法6条1項の規定による確認申請を行い,同年11月8日付けで,当該申請に対する確認通知書を受けた。 その後,日商広告企業は,平成7年2月16日,建築主等を原告から日商広告企業とする建築主等変更届を建築主事に提出し,建築主事は,同月20日,その旨確認した。 なお,上記建築主等変更届の「変更の期日および理由」欄には,変更の期日として「平成6年12月1日」,理由として「資金都合による」と記載されている。 エ日商広告企業は,原告の本件譲渡資産の売買残代金7300万円を原資として原告から交付された本件金員を,城南信用金庫からの借入金の返済に充てた。 また,日商広告企業は,本件金員を借入金として会計帳簿に記帳した。 オ日商広告企業は,平成7年8月22日,原告と共同して,本件建物の表示登記の申請を行い,同年9月1日,原告と共同して,本件土地持分の所有権移転登記の申請,及び,日商広告企業の持分を3分の2 した。 オ日商広告企業は,平成7年8月22日,原告と共同して,本件建物の表示登記の申請を行い,同年9月1日,原告と共同して,本件土地持分の所有権移転登記の申請,及び,日商広告企業の持分を3分の2,原告の持分を3分の1とする本件建物の保存登記の申請を行い,本件取得資産の移転を行った。 カ日商広告企業は,平成7年7月31日付けで,前記エの借入金7000万円を消滅させる会計処理を行った。 (2) 本件取得資産の取得原因が代物弁済であること以上の事実関係からすれば,原告は,日商広告企業に対する貸付金である本件金員7000万円の弁済を受けるのに代えて本件取得資産を取得したものと認められ,本件取得資産の取得原因は,代物弁済に当たるというべきであるから,本件取得資産を買換資産として本件特例を受けることはできない。 (3) 原告の主張に対する反論これに対し,原告は,本件土地持分を売買によって取得したものであり,本件建物持分を日商広告企業との共同建築により取得したものであると主張するが,原告の主張は,次のとおり,いずれも失当である。 ア本件土地持分に係る売買契約が存在しないこと原告は,本件土地持分の売買契約が,平成7年6月22日に成立した旨主張する。 しかし,上記売買契約については,代金額が明示された売買契約書が作成はされていない。 また,日商広告企業の同日付け取締役会議事録には,「当会社所有の土地を当会社の代表取締役へ売却する件」との記載があるものの,売買代金の額及び決定方法に関する記載はなく,上記記載が,原告が本件土地持分取得について了承を得たとするものにすぎないことに照らしても,この記載から売買契約が成立したものと認めることはできない。 さらに,本件土地持分の売買契約については,代金額が当事者間で明確であったことや,時価による売買 とするものにすぎないことに照らしても,この記載から売買契約が成立したものと認めることはできない。 さらに,本件土地持分の売買契約については,代金額が当事者間で明確であったことや,時価による売買とする旨の合意が存在したこと等,代金額が明示されていないことについての合理的な事情がない。 この点について,原告は,平成7年5月中旬には本件土地持分の売買代金が7000万円となることが確実になったとするが,そうであるとすれば,原告が売買契約締結の日と主張する同年6月22日において,代金額を明記した売買契約書を容易に作成できたにもかかわらず,これが作成されておらず,上記取締役会議事録にも売買代金額の記載がないことは,極めて不自然である。 以上の各事情に照らせば,原告と日商広告企業との間に,本件土地持分に係る売買契約が成立した事実を認めることはできない。 そして,原告が本件金員の運用を城南信用金庫に委ね,その経理処理を一任されたB税理士がこれを長期借入金として処理し,本件取得資産の取得とともに当該借入金の残高が消滅したことに照らせば,本件取得資産の移転及び代金の決済は,代物弁済として行われたものというべきである。 イ原告が本件建物を日商広告企業と共同で建築したものではないことa 原告は,本件建物を日商広告企業と共同で建築したのであって,本件建物持分を代物弁済により取得したのではない旨主張する。 しかし,本件建物の設計に係る建築士業務委託契約書における委託者及び工事請負契約書における注文者は,いずれも日商広告企業であり,本件建物の工事代金を請負人に支払ったのも同社であることからすれば,本件建物を建築したのは,同社というべきである。 また,本件建物に係る当初の建築確認申請は,原告を建築主等として行われたにもかかわらず,日商広告企業は,平成7年2 ったのも同社であることからすれば,本件建物を建築したのは,同社というべきである。 また,本件建物に係る当初の建築確認申請は,原告を建築主等として行われたにもかかわらず,日商広告企業は,平成7年2月16日,建築主等を原告から同社に変更する旨の建築主等変更届を品川区建築主事に提出し,同月20日にその旨の確認を受けており,建築確認通知においても,本件建物の最終的な建築主は同社とされていることからも,本件建物は,同社が建築したものというべきである。 さらに,本件建物に係る建物表示登記の申請書に添付された同社の取締役会議事録において,本件建物の持分3分の1が原告の所有である旨記載されていることについても,建物の持分に係る建物の表示登記が権利の実体を示すものではないこと,上記取締役会議事録の議決事項として,「下記建物の表示登記するにあたり,所有者は,持分3分の1C,持分3分の2日商広告企業株式会社であり,当社の利益に何ら反するものではないこと。」と記載されているにすぎないこと等に照らせば,上記事実をもって,原告が同社と共同で本件建物を建築したということはできない。 b さらに,原告が本件建物を日商広告企業と共同して建築したとする原告の主張を前提とすれば,原告が負担すべき本件建物の建築代金は,自己の持分に相当する額となるはずである。 しかるに,原告の本件建物における持分が3分の1であり,建築費用の総額が7649万6408円であるとする原告の主張からすれば,原告の本件建物持分の負担額は,その3分の1の2549万8803円となるべきところ,原告は,当初,建物について2360万円の債務しか負担せず,また,2380万円を日商広告企業に分割返済中である旨主張しており,被告がこの点を指摘すると,本件建物持分の取得価額が2549万8803円である旨主張を変更 物について2360万円の債務しか負担せず,また,2380万円を日商広告企業に分割返済中である旨主張しており,被告がこの点を指摘すると,本件建物持分の取得価額が2549万8803円である旨主張を変更している。 このように,原告が本件訴えにおいて,本件建物持分に関する自己の負担額についてすら正確な認識を示し得ないことからすれば,原告が日商広告企業と共同して本件建物を建築したものでないことは明らかである。 c 他方,原告は,本人尋問において,本件建物を日商広告企業と共同して建築したとする主張に沿う供述をする一方,同社から本件建物持分を買い受けたと認識しているとも供述しており,原告による本件建物持分の取得原因が自ら建築したことによるものか売買によるものかについて,首尾一貫していないことからも,原告が同社と共同して本件建物を建築したものでないことが窺われる。 d 原告は,当初から本件譲渡資産を売却し,これに代替する居宅として本件取得資産の取得を計画していたことから,本件建物の一部を自宅とする意思を有していたことが明らかであり,原告から日商広告企業に対する5000万円の資金移動以前に,後日の売買代金等の決済を前提として,あらかじめ本件建物の居宅部分の引渡しを受けたと主張する。 しかしながら,原告が本件建物の一部を自宅として使用する意思を有していたとしても,本件建物を賃借すればその目的を達するのであるから,原告が本件取得資産の所有権を取得する意思を有していたとはいえない。 また,仮に,原告がそのような意思を有していたとしても,売買以外の法律行為によって本件取得資産を取得することは可能であるし,さらに,原告が本件取得資産を建築及び売買により取得する意思を有していたとしても,そのことから直ちに,原告が本件建物持分を自らの建築又は売買により取得したとはい 取得資産を取得することは可能であるし,さらに,原告が本件取得資産を建築及び売買により取得する意思を有していたとしても,そのことから直ちに,原告が本件建物持分を自らの建築又は売買により取得したとはいえない。 したがって,原告の上記主張は失当である。 e 以上によれば,原告が本件建物を日商広告企業と共同建築した事実,及び,原告が同社から本件建物持分を売買により譲り受けた事実は,いずれも認めることができないというべきである。 ウ本件金員の性質について原告は,原告が日商広告企業に対して支払った本件金員の性質について,本件建物持分の売買代金の内金,及び,本件建物の建築代金のうち原告が負担すべき分について同社が支払った立替金の内金であると主張する。 しかしながら,内金とは,本来,買主から売主に対して代金の一部前払の趣旨で支払われる金員であるところ,平成7年6月22日に本件土地持分の売買契約が成立したとする原告の主張からすれば,本件金員のうち,同日以前に支払われた5000万円については,売買契約の成立前に,特段の合意もないまま代金の大半が支払われたこととなり,不合理といわざるを得ない。 また,本件建物持分について,遅くとも平成7年5月中旬には,原告の日商広告企業に対する2360万円の債務の発生が確実になったとする原告の主張を前提とすれば,同年6月9日には,本件建物持分に係る原告の債務が既に確定していたこととなるから,本件金員の交付は,本件建物持分についての請負代金の立替金の弁済にすぎず,これを代金の一部前払としての性質を有する内金であるとする原告の主張は不合理である。 仮に,本件金員が本件取得資産の売買の対価であるとすれば,平成7年6月9日に支払われた5000万円及び同年7月9日に支払われた2000万円が具体的に何の対価であったか明らかなは 張は不合理である。 仮に,本件金員が本件取得資産の売買の対価であるとすれば,平成7年6月9日に支払われた5000万円及び同年7月9日に支払われた2000万円が具体的に何の対価であったか明らかなはずであるにもかかわらず,原告は,この点について十分な主張,立証をしておらず,原告の主張及び本人尋問における供述に照らせば,原告は,本件金員が具体的に何の対価として支払われたかを認識していないといわざるを得ない。 このようなことからすれば,原告は,7000万円の貸付金が存在したことから,概ねこれに見合う資産を取得しようと考えて,日商広告企業から本件取得資産を取得したというべきであって,本件金員の性質に関する原告の上記主張は理由がない。 エ本件金員に係る日商広告企業の会計処理についてa 日商広告企業は,本件金員のうち,平成7年6月9日に同社に資金移動した5000万円について,同月12日付けで社長からの「借入金」として会計処理し,また,同年7月10日に同社に資金移動した2000万円についても,同日付けで「借入金」として処理している。これらの会計処理に照らせば,本件金員が原告の同社に対する貸付金であることは明らかである。 b これに対し,原告は,日商広告企業における前受金勘定及び仮受金勘定の性格やその使用状況を挙げて,本件金員が便宜的に借入金として処理されたにすぎない旨主張する。 しかし,日商広告企業は,コンピュータによる会計処理を行っており,平成7年度合計残高試算表の「科目別勘定残高明細表」における「前受金 206」勘定の下に続く「01」,「02」,「03」等の付番を「00」又は「99」などと工夫することによって,他の事業関連の取引と容易に区別して会計処理を行うことが可能であるし,B税理士は,同社が過去に仮受金勘定を使用していたことを認めてい 03」等の付番を「00」又は「99」などと工夫することによって,他の事業関連の取引と容易に区別して会計処理を行うことが可能であるし,B税理士は,同社が過去に仮受金勘定を使用していたことを認めている。加えて,B税理士自身が,本件金員を長期借入金として処理したことについて,「正当な経理処理,指導したと思っておりまして,別に間違ったとは思っておりません。」と証言していることからしても,当該処理が誤りであるかのような原告の主張は失当である。 c また,B税理士は,原告から日商広告企業に支払われた本件金員の性格について,売買代金の内金である旨供述をするが,そうであるとすれば,原告からの仮受金ないしは前受金として,適正に会計処理すれば足りるのであるから,これを借入金として処理したことは,同社が原告から借入金として受け入れたことを示すものというべきである。 さらに,原告は,本人尋問において,会計処理についてはB税理士に任せていた旨供述し,B税理士も,基本的には同人が日商広告企業の経理会計をリードしていた旨証言しており,本件金員に関する会計処理についても,基本的には経理一般の通例に従って処理したものと認められるから,B税理士による上記の会計処理は,実態に即したものであったというべきである。 d そもそも,原告は,本件譲渡資産を譲渡するに当たり,これに設定されていた根抵当権を抹消する必要があったことから,その被担保債権である日商広告企業の借入金を返済させる目的で,本件譲渡資産の譲渡代金のうち5000万円を日商広告企業に移動させ,同社は,原告からの当該資金をもって,城南信用金庫からの借入金を弁済し,上記根抵当権を抹消したものであるから,原告の日商広告企業に対する上記の5000万円の資金移動が,同社の借入金を返済することにより,原告の所有する本件譲渡資産 て,城南信用金庫からの借入金を弁済し,上記根抵当権を抹消したものであるから,原告の日商広告企業に対する上記の5000万円の資金移動が,同社の借入金を返済することにより,原告の所有する本件譲渡資産に設定されていた上記根抵当権を抹消することを目的とするものであったことは明らかである。 また,原告が同社に対する2000万円の資金移動についても,その経緯に照らし,同社の城南信用金庫からの手形貸付に係る借入金を弁済することが目的であったことは明らかである。 したがって,原告から日商広告企業に対する上記の各資金移動は,同社の借入金を弁済することを目的としたものであるから,いずれも,原告の日商広告企業に対する貸付金にほかならないというべきである。 (4) 以上によれば,原告が売買により本件土地持分を取得し,自己建築により本件建物持分を取得した事実を認めることはできない。 そして,原告は,日商広告企業に対する貸付金7000万円の弁済を受けるのに代えて,本件取得資産を取得したものであり,その取得原因は代物弁済であるから,原告は,本件譲渡資産の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算において,本件特例の適用を受けることはできず,このことを前提としてされた本件更正処分等は,いずれも適法である。 5 争点以上によれば,本件の争点は,原告が本件取得資産を取得した原因が,本件建物持分については日商広告企業との共同建築,本件土地持分については同社からの売買によるものか(原告の主張),それとも,本件建物持分及び本件土地持分のいずれも同社からの代物弁済によるもの(被告の主張)か,の点にある。 第3 争点に対する判断 1 前提となる事実及び証拠(甲5の1・2,6の1ないし4,9の1・2,10の1ないし4,16,17,乙1,3,5,8,11,12,証人B,原告本人)によれば, の点にある。 第3 争点に対する判断 1 前提となる事実及び証拠(甲5の1・2,6の1ないし4,9の1・2,10の1ないし4,16,17,乙1,3,5,8,11,12,証人B,原告本人)によれば,次の事実が認められる。 (1) 原告は,平成5年ころ,妻及び2人の子とともに,原告の父から相続した本件譲渡資産である建物に居住していたが,上記建物が昭和37年に建築されてから約40年を経過し,老朽化して頻繁に補修を要する状況となっていたことや,家族4人にとって手狭になっていたことから,上記建物の買換え又は建替えを考えるようになった。 また,当時,原告が株式の100パーセントを保有し,代表取締役を務める日商広告企業の本店は,東京都中央区δ14番10号に所在していたが,同社は,本店社屋の賃料,光熱費及び保有車両6台の駐車料金として,毎月合計約150万円を負担しており,負担軽減のために本店を移転すべく,他所に社屋を求めることを検討していた。 そこで,日商広告企業及び原告は,同社の社屋を新たに確保して,同社の本店及び原告の自宅を同所に移転することを計画し,まず,同社において,新社屋建築のための土地を取得することとした。 (2) 原告は,平成5年の夏ころ,日商広告企業と取引を有する城南信用金庫に,土地の取得について相談したところ,城南信用金庫と関連を有する不動産会社のあっせんにより,土地の紹介を受けることとなった。 そして,日商広告企業は,平成6年5月30日,本件土地を代金2億1000万円で購入した。同社は,その際,上記代金の全額を城南信用金庫からの借入により調達した。 (3) 他方,原告は,平成5年ころ,税務相談のため,京橋税務署及び目黒税務署に赴き,本件譲渡資産を売却して新居を購入する場合に,本件特例の適用により税額を軽減させることが可能か否かに 調達した。 (3) 他方,原告は,平成5年ころ,税務相談のため,京橋税務署及び目黒税務署に赴き,本件譲渡資産を売却して新居を購入する場合に,本件特例の適用により税額を軽減させることが可能か否かについて,税務署職員に相談した。 (4) その後,平成6年9月1日,委託者を日商広告企業,受託者を松田建築設計事務所として,本件建物の設計業務及び工事監理業務について,報酬総金額(消費税相当額を含む。)を309万円とする建築士業務委託契約が締結され,同建築設計事務所によって,本件建物の設計が進められた。そして,その設計においては,1階を日商広告企業の事務所,2階を原告の居宅部分,3階をリビングルーム及び食堂とすることが,当初からの前提となっていた。 次いで,同年10月30日には,注文者を日商広告企業,請負人をリバティープランニングとして,本件建物について,代金を6695万円(消費税相当額を含む。)とする工事請負契約が締結された。そして,請負人のリバティープランニングに対しては,平成7年5月9日までに,日商広告企業から,本件建物工事代金として合計7080万円が支払われた。 (5) ところで,本件建物の建築確認申請は,平成6年9月29日,建築主等を原告として行われ,同年11月8日付けで,建築主事から,これに対する確認通知書を受けたが,その後,日商広告企業から,同年12月1日,資金都合により,建築主等が原告から同社に変更されたとして,建築主等変更届が提出され,建築主事は,同月20日,その旨確認した。 (6) 本件建物は,平成6年11月ころに着工され,当初は平成7年3月末日に完成する予定であったが,途中で設計を変更したことから,完成時期も若干延期されることとなった。 他方,原告は,本件建物の完成に合わせて本件譲渡資産を売却することを考え,平成7年3月こ 年3月末日に完成する予定であったが,途中で設計を変更したことから,完成時期も若干延期されることとなった。 他方,原告は,本件建物の完成に合わせて本件譲渡資産を売却することを考え,平成7年3月ころ,不動産業者に売却の仲介を依頼したところ,買受希望者が現れたことから,同年4月26日,Aとの間で,本件譲渡資産を8100万円で売却する旨の契約を締結した。 原告は,同日ころ,売買代金のうち,手付金として800万円の支払を受け,残金7300万円については,同年6月9日までに所有権移転登記手続と引換えに支払を受けることとされた。 そして,同年5月8日ころ,本件建物の建築工事がほぼ完了し,原告及び日商広告企業に対して引渡しが行われ,原告は,同月10日ころ,本件譲渡資産を明け渡して本件建物に転居し,同月16日,品川区長に対し,同所への転入届を提出した。 (7) 原告は,平成7年6月9日,Aから,本件譲渡資産の明渡し及び所有権移転登記手続と引換えに,本件譲渡資産の残代金7300万円の支払を受けた。 本件譲渡資産には,根抵当権者を城南信用金庫,債務者を日商広告企業及び原告とする極度額7000万円の根抵当権が設定されていたことから,原告は,事前に城南信用金庫と相談したところ,城南信用金庫は,原告に対し,まず上記代金のうち5000万円をもって上記根抵当権の被担保債権を弁済してもらうために,いったんこれを原告の普通預金口座に入金した後,日商広告企業の当座預金に入金するよう要請した。そこで,原告は,上記要請に従って,同日,受領した残代金7300万円のうち5000万円を原告の普通預金口座に入金した後,同社の当座預金に振り替え,同社は,これを城南信用金庫に対する借入金の返済に充て,城南信用金庫は,本件譲渡資産に設定されていた根抵当権を抹消した。 また,原告は, を原告の普通預金口座に入金した後,同社の当座預金に振り替え,同社は,これを城南信用金庫に対する借入金の返済に充て,城南信用金庫は,本件譲渡資産に設定されていた根抵当権を抹消した。 また,原告は,上記残代金7300万円のうち,2000万円についても,原告の普通預金口座に入金した後,城南信用金庫の要請により,原告名義の定期預金口座を作成し,平成7年7月10日,上記定期預金口座を解約した上,2000万円を日商広告企業の当座預金口座に入金し,上記金員は,同社の城南信用金庫に対する手形貸付による借入金の弁済に充てられた。 なお,日商広告企業は,上記5000万円について,補助元帳の「長期借入金借入その他」の科目において,平成7年6月12日付けで社長から同額を借り入れた旨記帳し,上記2000万円についても,同年7月10日付けで,補助元帳の同じ科目において,借入金として記帳している。これらの会計処理は,原告から同社の会計処理を一任されていたB税理士の判断によって行われたものであり,このような会計処理を行うについて,原告が同税理士に対して具体的な指示をしたことはなかった。 (8) 日商広告企業は,平成7年6月22日付けで,取締役会議事録を作成した。上記議事録には,「議案当会社所有の土地を当会社の代表取締役へ売却する件」「議長は,当会社が所有する下記土地(注:本件土地)の所有権の一部(持分3分の1)を当会社の代表取締役であるCへ売却したい旨を述べ,その理由,売買価格等を詳細に説明し,商法265条所定の承認を求めたところ,全員異議なくこれを承認し可決した。」と記載されている。 (9) リバティープランニングは,平成7年8月1日,本件建物について,建築主欄を,持分3分の1については原告,持分3分の2については日商広告企業とする建築工事完了引渡証明書を発 と記載されている。 (9) リバティープランニングは,平成7年8月1日,本件建物について,建築主欄を,持分3分の1については原告,持分3分の2については日商広告企業とする建築工事完了引渡証明書を発行した。 そして,原告及び日商広告企業は,同月22日,本件建物について表示の登記を申請し,同月23日,同申請に係る表示の登記が完了した。 そこで,原告及び日商広告企業は,同年9月1日,本件建物につき,原告の持分を3分の1,同社の持分を3分の2とする所有権保存登記手続を行うとともに,本件土地持分について,同年6月22日売買を原因とする所有権一部移転登記手続を行った。 (10) 日商広告企業は,平成7年7月31日付けで,総勘定元帳において,同社が本件建物を建築するに当たって設けた勘定科目である「建設仮勘定」の残高2億9571万9718円につき,諸口3口を相手科目として,これを0円とする会計処理を行うとともに,本件土地につき,総勘定元帳の「土地」の科目において,同科目に記帳された本件土地の価額の3分の1に相当する7000万円で原告に持分を売却した旨記載し,本件建物につき,総勘定元帳の「建物」の科目において,同科目に記帳された本件建物の価額の3分の1に相当する2857万3239円で原告に持分を売却した旨記帳し,他方で,補助元帳の「長期借入金」科目において,同日前記(7)の借入金7000万円が消滅した旨記帳されている。 そして,本件取得資産の対価である9857万3239円と,借入金として記帳されていた7000万円との差額である2380万円については,日商広告企業の補助元帳の「長期貸付金貸付金萱原」の科目においては,貸付金として記帳された。 (11) 日商広告企業の平成7年7月31日付け取締役会議事録には,「裁決事項」として,本件建物の表示の登記を 業の補助元帳の「長期貸付金貸付金萱原」の科目においては,貸付金として記帳された。 (11) 日商広告企業の平成7年7月31日付け取締役会議事録には,「裁決事項」として,本件建物の表示の登記をするに当たり,本件建物の所有者を持分3分の1につき原告,持分3分の2につき日商広告企業とすることについて,同社の利益に反しないものとして,取締役会が承認した趣旨の記載が存在する。 2 そこで,以上の事実を前提として,本件の争点について判断する。 (1) 本件建物について,平成7年9月1日,原告の持分を3分の1,同社の持分を3分の2とする所有権保存登記手続が行われ,本件土地について,同日,原告に対し,その3分の1の持分が,同年6月22日売買を原因として移転登記されていることは,前記のとおりであり,これらは,いずれも,原告の主張する本件取得資産の取得原因と符合している。 (2)ア被告は,これらの各持分権(本件取得資産)は,原告が主張するように建築又は売買によって取得されたものではなく,日商広告企業からの代物弁済によって取得されたものであると主張する。 イ確かに,原告から,日商広告企業には,平成7年6月9日に5000万円,同年7月10日に2000万円がそれぞれ入金されており,入金先の日商広告企業の補助元帳においては,これらの各金員は,原告からの「借入金」としての記載がされていることは,前記のとおりである。 しかし,入金先の日商広告企業は,原告自身が代表取締役を務める法人であるが,このような会計処理を行うことについて原告が具体的に指示をしたことはなく,これらの会計処理は,同社の会計処理を任されていたB税理士の判断によって行われたものであり,同税理士が,これらの会計処理を行うに当たって,実際に原告と日商広告企業との間に金銭消費貸借として金員を授受する旨 の会計処理は,同社の会計処理を任されていたB税理士の判断によって行われたものであり,同税理士が,これらの会計処理を行うに当たって,実際に原告と日商広告企業との間に金銭消費貸借として金員を授受する旨の合意が存在したことを確認したものでなかったことは,同人の証言及び陳述書(甲18)に照らして明らかである。 そして,上記の会計帳簿における記載のほかには,同社が原告から受け入れた上記各金員(本件金員)について,後に同社がこれらの金員を原告に対して返還する旨の合意が存在したことを窺わせるに足る証拠はなく,利息や返還時期に関する合意の存在等を認めるに足る証拠もない。 ウまた,本件全証拠を検討しても,その後,本件取得資産について,原告のために,前記の建物持分権保存登記及び土地持分権移転登記が行われるまでの間に,原告と日商広告企業との間に,日商広告企業が本来原告に対して負担していた金銭消費貸借契約に基づく債務の支払に代えて,本件取得資産を給付して債務を消滅させる旨の合意が成立したことを認めるに足る資料は存在しない。 エかえって,日商広告企業の総勘定元帳の「土地」の科目においては,平成7年7月31日に,本件土地の価額の3分の1に相当する7000万円で原告に持分を売却した旨が,また,同元帳の「建物」の科目においては,同日に,同科目に記載された建物の価額の3分の1に相当する2857万3239円で原告に本件建物の持分3分の1を売却した旨の記載があり,さらに,同日,借入金7000万円を消滅させる会計処理も行われているものである。 オそうすると,本件金員の入金先の日商広告企業の会計帳簿において,イ記載のとおりの記載が行われ,同社が,原告自身が代表取締役を務める法人であったとしても,そのことから,本件金員の入金の趣旨が原告から同社に対する貸付金であること,さ 商広告企業の会計帳簿において,イ記載のとおりの記載が行われ,同社が,原告自身が代表取締役を務める法人であったとしても,そのことから,本件金員の入金の趣旨が原告から同社に対する貸付金であること,さらには,その後,同社が,原告に対し,本件建物及び本件土地の各持分3分の1をこの貸付金の返済に代えて,給付したものであることを認めることは,いずれも困難であるというべきである。 (3)アむしろ,前記の認定の事実によれば,本件建物の建築等については,次のような事情の存在を指摘することができる。 a そもそも,本件土地を取得して,その上に本件建物を建てる計画は,原告が,平成5年ころ,それまで居住していた目黒区α990番地12所在の居宅が老朽化し,手狭でもあったことを契機に検討されたものであり,原告が,そのころ,京橋税務署及び目黒税務署を訪れて,本件譲渡資産を売却して,新居の購入をした場合には,本件特例の適用を受けて税額を軽減することが可能か否かの相談をしていることからすれば,原告は,本件譲渡資産の売却代金をもって,新たな住居の取得費用に充てるつもりであったことを窺うことができることb そして,原告は,検討の結果,新居の取得とあわせて,自らが100パーセントの株式を保有し,代表取締役を務める日商広告企業の本社社屋の賃料等の負担軽減をも図る目的で,新たに本件土地を取得し,その上に1棟の建物を建てて,これを同社の社屋と原告の新たな住居とすることを計画し,松田建築設計事務所に依頼して,1階を日商広告企業の事務所,2階を原告の居宅部分,3階をリビングルーム及び食堂とするような設計がされたことc 本件建物についての建築確認申請においては,日商広告企業のみが建築主としてその確認がされているが,実際に建築に当たったリバティープランニングとの間では,原告も,個人住 するような設計がされたことc 本件建物についての建築確認申請においては,日商広告企業のみが建築主としてその確認がされているが,実際に建築に当たったリバティープランニングとの間では,原告も,個人住宅の部分の共同建築主として取り扱われ,その意向に従って,工事が進められたことd そして,原告は,建物が完成した平成7年5月10日ころには,本件建物の住宅用部分に入居したが,それについて,日商広告企業との間で,改めて契約の締結等を行ったり,同社に賃料を支払ったりした事実はないことe さらに,原告は,同年8月1日には,前記のとおり,日商広告企業と共に,本件建物の3分の1の持分について保存登記の申請を行い,その旨の登記がされていることイまた,本件土地については,次のような事情の存在を指摘することができる。 a 本件土地については,いったんは,日商広告企業において他から取得をするものの,最終的には,原告も,個人住宅部分の持分割合に相応した3分の1程度の持分を取得することが,当初から,原告と日商広告企業との間で予定されていたものと窺われることb 現に,本件土地持分について,平成7年8月1日,日商広告企業から原告に前記のとおり,所有権移転登記が行われていることウそして,これらの各事情に照らせば,原告は,本件建物については,当初から,共同建築主の地位にあり,また,本件土地についても,遅くとも,平成7年6月9日より前の時点で,日商広告企業から本件土地持分を同社の購入価格の3分の1に当たる7000万円で買い受けることが合意されていたと認めるのが相当であるということができる(ただし,日商広告企業の取締役会において,同社の代表取締役の地位にある原告と同社との間の本件土地持分についての取引が承認がされたのは,同年6月22日ころであったと認められる。)。 (4 ことができる(ただし,日商広告企業の取締役会において,同社の代表取締役の地位にある原告と同社との間の本件土地持分についての取引が承認がされたのは,同年6月22日ころであったと認められる。)。 (4) そうであるとすれば,原告は,平成7年6月9日の時点においても,日商広告企業に対し,本件建物の共同建築主として,それまで日商広告企業において実際上立て替えて負担してもらっていた原告の負担部分に係る建築請負代金相当額を支払わなければならない立場にあるとともに,本件土地持分の対価として同社の取得金額の3分の1に相当する金額を支払なければならない立場にもあり,両者を合わせて原告が日商広告企業に支払うべき額は9200万円を超える程度になることは確実であったというべきである。 そして,日商広告企業は,本件土地の購入代金の全額を城南信用金庫からの借入金によっていたところ,原告は,平成7年6月9日当時,本件譲渡資産の買受人に対し,同資産に設定されていた根抵当権(根抵当権者を城南信用金庫,債務者を日商広告企業及び原告,極度額7000万円)を抹消した上で,所有権の移転登記をすべき義務を負担していたことから,平成7年6月9日に日商広告企業に5000万円を支払い,日商広告企業がこれを城南信用金庫に対する弁済に充てて,上記根抵当権の抹消が実現したものである。 したがって,このような状況の下において原告が日商広告企業に支払った本件金員は,原告の同社に対する前記各債務の内金の各支払としてされたものと解するのが相当であり,原告の本件建物部分は原告の自らの建築により,本件土地部分は日商広告企業からの売買によってそれぞれ取得されたものと認めることができる。 なお,このように解すると,原告は,本件土地持分についての売買契約が有効に成立するより前に5000万円の支払をしたこと は日商広告企業からの売買によってそれぞれ取得されたものと認めることができる。 なお,このように解すると,原告は,本件土地持分についての売買契約が有効に成立するより前に5000万円の支払をしたこととなるが,原告と日商広告企業との間の本件土地持分の売買契約が有効に成立するためには,同社の取締役会の承認を経る必要があったものである一方で,原告においては,これより先に,自ら本件譲渡資産についての前記根抵当権を抹消の上で所有権移転登記を行うことが必要であり,支払の相手方である日商広告企業は,自らが代表取締役を務める法人であったのであるから,本件土地持分の売買契約が成立する以前に売買代金の一部を日商広告企業に交付することには理由があったものであり,これをもって不自然な行為であるということはできない。 第4 結論以上によれば,本件譲渡所得の金額の計算においては,本件特例の適用が認められるべきであるにもかかわらず,その適用がないことを前提として行われた本件更正処分及び本件賦課決定処分は,いずれも違法というべきである。 よって,原告の請求はいずれも理由があるので,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官市村陽典裁判官森英明裁判官馬渡香津子
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