平成31(ワ)5549 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年11月29日 東京地方裁判所
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判決文本文3,550 文字)

令和元年11月29日判決言渡・同日原本領収裁判所書記官平成31年(ワ)第5549号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和元年8月23日判決主文 1 被告は,原告に対し,330万円及びこれに対する平成31年2月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求主文と同旨第2 事案の概要本件は,原告が,被告の執筆した原告に関するコラムが新聞に掲載されたことにより名誉権を侵害されたと主張して,被告に対し,不法行為に基づき,損 害賠償金330万円(慰謝料300万円及び弁護士費用相当額30万円)及びこれに対する不法行為の日である平成31年2月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 請求原因当事者 原告は,a 議員であり,b 党に所属し同党の副党首を務める者である。 被告は,政治評論家である。 被告によるコラムの執筆及び新聞社への提供被告は,平成31年初め頃,「ギクシャクし続ける日韓関係」と題するコラム(以下「本件コラム」という。)を執筆し,これをc 新聞社に提供した。 本件コラムは,同年2月6日付けc 新聞朝刊(以下,c 新聞を「本件新聞」 という。)に掲載された。 本件コラムには,「徴用工に賠償金を払えということになっているが,この訴訟を日本で取り上げさせたのはA議員。日本では敗訴したが韓国では勝った。A氏は実妹が北朝鮮に生存している。政争の具に使うのは反則だ。」との記載がある(以下,この記載を「本件記載」といい,被告が本件コラム 本で取り上げさせたのはA議員。日本では敗訴したが韓国では勝った。A氏は実妹が北朝鮮に生存している。政争の具に使うのは反則だ。」との記載がある(以下,この記載を「本件記載」といい,被告が本件コラム の本件記載部分を執筆した行為を「本件行為」という。)。 なお,実際には,原告が徴用工の訴訟を日本で取り上げさせたという事実はない。また,原告の実妹が北朝鮮に生存しているという事実もない。なお,原告は,日本で生まれ育ち,日本国籍を有する。 ⑶ 本件記載による原告の社会的評価の低下 本件記載は,原告が身内(実妹)を利するために徴用工の訴訟を「政争の具」として日本で取り上げさせたとするものであって,あたかも原告が身内を利するために政治活動を行っているかのごとき印象を読者に与えるものである。 d 議員であり,かつb 党の副党首という地位にある原告が,身内を利する ために政治活動を行っているかのように書くことは,原告につき,「全国民」の代表たる地位に背き,かつ,政党の要職者たる立場をも踏みにじる者であるかのごとく指摘するものであって,原告の社会的評価を著しく低下させ,原告の名誉を毀損するものである。 損害 本件記載は,d 議員である原告につき「全国民」の代表たるd 議員として最も恥ずべき行為をしたと言っているに等しく,また,b 党の副党首である原告につき政党の要職者として最も恥ずべき行為をしたと指摘するものに等しいものであり,かように自己の公的な人格を全否定する本件記載によって原告が受けた被害(社会的評価の低下それ自体という無形損害及び心痛)は 甚大である。 原告にはそもそも妹がおらず,原告が徴用工の訴訟を日本で取り上げさせたという事実も全くないことから,本件記載はことご 価の低下それ自体という無形損害及び心痛)は 甚大である。 原告にはそもそも妹がおらず,原告が徴用工の訴訟を日本で取り上げさせたという事実も全くないことから,本件記載はことごとく虚偽の事実をもって原告の名誉を毀損するものである。被告は,虚偽であることを知りながら又は虚偽か否かを気にもかけずにいわゆる「現実の悪意」をもって本件行為に至ったものであり,原告はこれによって甚大な被害を受けた。 被告が本件行為に至った動機(原告を攻撃するためという動機)や執筆後も原告に対する説明をせず逃げようとしている被告の態度等も斟酌すると,原告が本件行為により被った精神的苦痛を慰謝するための慰謝料の額は,300万円を下回らない。 また,本件の弁護士費用相当額は,30万円を下回らない。 2 請求原因に対する認否請求原因(1)は認め,同(2)のうち,原告の妹の存否は不知,その余は認め,同(3)及び(4)について,本件記載に関する原告の上記意見・評価については,認否の限りでない。 なお,本件行為について具体的な説明をしないのは,更なる説明をすること により迷惑をかける人も出かねないからである。「原告を攻撃するために口からでまかせで本件記載部分を執筆した」旨の原告の主張は,強引な決めつけである。もっとも,原告が被告を「ジャーナリスト」とは到底いえないと非難していることは理解でき,かかる非難を真摯に受け止め,心より反省するとともに,今後同じような過ちがないように慎重を期す。 第3 当裁判所の判断 1 請求原因(1)の事実は当事者間に争いがない。 2 請求原因(2)のうち,原告の実妹が北朝鮮に生存しているという事実がないことは証拠(甲3)により認められ,その余の事実については,当事者間に争い 請求原因(1)の事実は当事者間に争いがない。 2 請求原因(2)のうち,原告の実妹が北朝鮮に生存しているという事実がないことは証拠(甲3)により認められ,その余の事実については,当事者間に争いがない。 3 請求原因(3)について,被告は,「本件記載に関する原告の上記意見・評価に ついては,認否の限りでない。」とするのみであるから,明らかに争わないものとも解されるが,念のため判断しておく。 本件記載の内容が原告の社会的評価を低下させるか否かは,本件記載についての一般の読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容にしたがって判断すべきものである(最高裁判所昭和31年7月20日第二小法廷判決・ 民集10巻8号1059頁参照)。しかるところ,本件記載は,徴用工の訴訟を日本で取り上げさせたのは原告であること,原告の実妹が北朝鮮に生存していることなどの事実を摘示し,これらを前提として,原告が政争に勝つための道具として徴用工の訴訟を使うことが反則であるとの意見ないし論評を加えているものと解される。そうすると,本件記載は,d 議員という「全国民を代表 する」(憲法43条1項)地位にある原告が,身内を利するために又は公私を混同させて政治活動を行っているとの印象を与えるものであり,原告の政治家としての社会的評価を著しく低下させるものというべきである。 したがって,本件行為は原告に対する不法行為を構成し,被告はこれにより原告に生じた損害について賠償する責任を負う。 4 請求原因⑷について判断する。 本件記載の名誉毀損表現の内容に照らせば,原告が本件行為により精神的苦痛を被ったことが認められるところ,上記3のとおり,①本件コラムの内容は原告の政治家としての社会的評価を著しく低下させるも 本件記載の名誉毀損表現の内容に照らせば,原告が本件行為により精神的苦痛を被ったことが認められるところ,上記3のとおり,①本件コラムの内容は原告の政治家としての社会的評価を著しく低下させるものであること,②本件コラムが,新聞という,多数の読者が想定され類型的に信憑性が高いとされる 媒体に掲載されたこと,③被告が,本件記載の内容につきその真偽を調査・確認することなく本件行為に至ったこと(乙3及び弁論の全趣旨),④本件記載の内容の主要部分である「原告が徴用工の訴訟を日本で取り上げさせたという事実」や「原告の実妹が北朝鮮に生存しているという事実」が実際には存在しないこと(前者については当事者間に争いがなく,後者については甲3及び乙 1により認められる。),以上のような事情によれば,平成31年2月9日に 本件新聞に本件コラムに係る訂正記事が掲載されたこと(乙1)を考慮しても,本件記載部分が本件新聞に掲載されたことにより原告が被った精神的苦痛を慰謝するための慰謝料としては,300万円を相当と認める。また,本件に係る弁護士費用相当額はその1割である30万円と認めるのが相当である。 5 結論 以上によれば,原告の請求は理由があるから認容することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第16部 裁判長裁判官沖中康人 裁判官五十嵐浩介 裁判官渡邉麻紀

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