平成16年7月30日判決言渡平成15年(ワ)第3440号損害賠償請求事件 主文 1 被告らは,原告に対し,連帯して,103万1456円及びこれに対する平成15年9月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告株式会社Aは,原告に対し,129万3797円及びこれに対する平成15年8月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告の被告株式会社Aに対するその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,被告らの負担とする。 5 この判決は,第1,第2項につき,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1項同旨 2 被告Aは,原告に対し,138万1597円及びこれに対する平成15年8月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,被告Aに雇用されていた原告が,先輩従業員の被告Bから,継続的に暴言,暴行を受け,受傷したことにつき,被告Bは不法行為責任,被告Aは使用者責任を負うとして,被告らに対し,治療費等3万1456円及び慰謝料100万円の合計103万1456円並びにこれに対する被告らに対する各訴状送達の遅い方の日の翌日である平成15年9月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め,また,被告Aが,被告Bの加害行為を放置し,抑止しなかったばかりか,原告に暴言を加え,支払うべき賃金及び手当を支払わず,最終的に解雇するという一連の不法行為に及んだとして,被告Aに対し,賃金及び手当の不払額合計38万1597円及び慰謝料100万円の合計138万1597円並びにこれに対する訴状送達の日の翌日である平成15年8月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。 97円及び慰謝料100万円の合計138万1597円並びにこれに対する訴状送達の日の翌日である平成15年8月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。 2 争いのない事実及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(1) 原告は,金属表面処理一般塗装等を目的とする被告Aにおいて,平成14年2月21日から平成15年4月23日まで従業員として勤務した。 被告Bは,被告Aの従業員である。 (2) 原告の被告Aにおける日給は9600円であり,1日の所定労働時間は8時間であった。 原告の被告Aにおける平成14年2月から平成15年4月までの給料明細に記載された法定労働時間外労働時間とタイムカードに記録された労働時間による法定労働時間外労働時間の時間差は合計82.5時間であり,12万3750円(9600円÷8時間×1.25×82.5時間)の時間外勤務手当が未払である。 原告の被告Aにおける平成14年2月から平成15年4月までの休日出勤の時間は,合計115.5時間であり,時間外勤務手当は18万7110円(9600円÷8時間×1.35×115.5時間)となるが,被告Aから支払われた額の合計は16万1663円であり,その差額の2万5447円が未払である。 原告にタイムカードに記録された以外の法定労働時間外労働がある場合の時間外勤務手当の計算式は,9600円÷8時間×1.25×時間数であり,深夜の法定労働時間外労働がある場合の時間外勤務手当の計算式は,9600円÷8時間×1. 5×時間数である。 3 争点本件の主たる争点は,(1)被告Bの原告に対する暴言,暴行,傷害の存否と被告Aの使用者責任の有無,(2)被告Aの原告に対する被告Bの加害行為の放置,暴言,賃金及び手当の未払,解雇という一連の不法行為の存否である。 (1) 争点 告Bの原告に対する暴言,暴行,傷害の存否と被告Aの使用者責任の有無,(2)被告Aの原告に対する被告Bの加害行為の放置,暴言,賃金及び手当の未払,解雇という一連の不法行為の存否である。 (1) 争点(1)についてア原告の主張(ア) 被告Bは,原告の先輩従業員であり,入社後間もなく当該仕事に不慣れな原告を指導助言して習熟させるべき立場にありながら,これをしないばかりでなく,平成14年8月ころから,職場で仕事中の原告に対し,「橋のたもとにホームレスがいるからそこに行け。」,「おい,リストラ。」,「もう仕事なんかやらんでいいから帰って行け。」,「もう明日から会社にこんでいいわ。」,「早く会社を辞めろ。」,「馬鹿やろう,何やってるんだ,てめー。」などと,日常的に暴言を浴びせ続け,「おい,どけ。」と怒鳴って足を蹴るなど,暴力にまでエスカレートしかねない様相を呈していた。 (イ) その挙げ句,被告Bは,平成15年2月5日,原告が工場内で作業中,原告の仕事の要領が悪いとして,同日午後1時30分ころから約2分間くらい,作業場塗料ポンプ南側において,原告の頭部,顔面,脚部を殴ったり,蹴ったりする暴行を加えた。 原告は,頭をはじめ全身が余りに痛くて仕事にならないほどの苦痛があり,帰ろうとしたが,工場長に2度事実を告げて相談した結果,帰宅を思いとどまり,我慢して仕事を続行した。 (ウ) 被告Bは,平成15年2月7日,原告の仕事が気に入らないとして,同日午前10時ころから約1ないし2分間くらい,作業場南西部西側棚付近において,原告の右顔面を何か持った右手で殴り,原告の右ほほに傷が残った。また,被告Bは,原告の左右の足首を蹴り,左膝を蹴った。 原告は,この日も終業まで辛抱して残った。 (エ) 被告Bは,平成15年2月8日午後2時30分ころから約2分間くらい,作 の右ほほに傷が残った。また,被告Bは,原告の左右の足首を蹴り,左膝を蹴った。 原告は,この日も終業まで辛抱して残った。 (エ) 被告Bは,平成15年2月8日午後2時30分ころから約2分間くらい,作業場南西隅において,突然原告の後頭部を5ないし6回殴り,更に左膝を1回,両足首を各1回蹴った。 原告は,頭部,膝,足の痛みのほか,吐き気とめまいを覚え,気分が悪くなり,仕事ができなくなって,午後4時30分,タイムカードを打刻して帰宅した。原告は,帰宅途中,吐き気,めまいを感じながら,必死で帰宅し,まだ吐き気が続いていたので,すぐに床についた。 原告は,上記のような被告Bの加害行為に精神的にも追い込まれ,胸部に強い圧迫感を覚えた。 この日は土曜であったが,原告は,同日夕方,かかりつけの大隈病院,救急医療センターの紹介により,名古屋市a区bの吉田病院で救急診療を受け,頭部打撲,両足打撲で加療10日間との診断を受けた。 (オ) 原告は,吉田病院での救急診療受診後,家族にすべてを話し,相談の結果,平成15年2月9日夜,被告A代表取締役であるC宅へ電話して,被告Bの暴行と傷害の事実を報告した。 その結果,Cの意を受け,原告は,平成15年2月10日に出社した直後に,以上の被害を被告Bから受けたこと等について,Cに詳しく報告した。 そして,Cの意向で,朝礼の際,従業員全員の前でも被告Bの暴行と傷害の事実について語ったが,その際,被告Bから,病院受診が疑わしいと言われたため,吉田病院の診察券まで提示するなどした。 (カ) このように原告が被害申告をしているにもかかわらず,その後も,平成15年2月中,下旬,同年3月上旬と被告Bから原告に対し引き続き暴言,暴行があった。 (キ) そして,再び被告Bの暴行がエスカレートし,被告Bは,平成15年3月5日午後2時30分ころか の後も,平成15年2月中,下旬,同年3月上旬と被告Bから原告に対し引き続き暴言,暴行があった。 (キ) そして,再び被告Bの暴行がエスカレートし,被告Bは,平成15年3月5日午後2時30分ころから約2ないし3分間くらい,作業場中央塗料ポンプ北西製品棚付近において,他の人の仕事について原告の点検不足だと言って,原告の顔面を平手打ちし,これを避けた原告がふらついて転倒したところ,その左胸部を塗料が付いて固くなった靴で蹴りつけ,原告は痛みでしばらく呼吸もできない状況となった。 (ク) 被告Bは,平成15年3月6日午前中,約1分間弱くらい,原告の頭を叩いた。 (ケ) 被告Bは,平成15年3月7日午前中,約1分間弱くらい,原告の右顔面に殴りかかった。 (コ) 原告は,平成15年3月8日,被告Bから蹴りつけられた胸部が余りに痛く,呼吸も困難なため,大隈病院整形外科で診察を受けたところ,左胸部挫傷で2ないし3週間の安静通院を要するとの診断であった。 (サ) 被告Bは,以上のとおり,暴言,暴行,傷害という故意による一連の不法行為を繰り返した。 被告Aは,被告Bの原告に対する就業中の前記不法行為につき,被告Bの使用者として,民法715条に基づき,原告の被った損害につき,被告Bと連帯してその賠償責任を有する。 (シ) 原告は,被告Bの暴行及び傷害のため,医療機関に支払をした平成15年2月8日から同年4月25日までの治療費,文書料等合計3万1456円相当の損害を被り,被告Bの一連の暴言,暴行,傷害による精神的苦痛として100万円の慰謝料相当額の損害を被った。 (ス) よって,原告は,被告らに対し,連帯して,損害合計103万1456円(3万1456円+100万円)及びこれに対する被告らに対する各訴状送達が遅い方の日の翌日である平成15年9月4日から支払済みまで よって,原告は,被告らに対し,連帯して,損害合計103万1456円(3万1456円+100万円)及びこれに対する被告らに対する各訴状送達が遅い方の日の翌日である平成15年9月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 イ被告らの主張(ア) 被告Bは,原告が被告Aに入社した当時24歳であり,年齢的には原告が先輩の地位にあり,入社年月日も被告Bがわずか2年ほど先にすぎない。また,原告は,被告Aに入社する際,「15年の塗装経験者である。」旨申告して入社しており,被告Bが原告を指導助言して習熟させるべき立場にはない。さらに,原告と被告Bとが同僚として稼働するようになったのは,平成15年2月1日からであり,平成14年8月ころには原告と被告Bは一緒に仕事をしたことはない。もちろん,被告Bが原告に対して暴言を吐いた事実もない。 (イ) 被告Bが原告に暴行を加えた事実は一切ない。当時,被告Aの仕事の班体制としては,原告,被告B及びDの3人班体制であった。Dからの事情聴取でも,「原告主張の暴行事実はない。」旨供述している。また,被告Aは狭い工場であり,常時,原告らの傍らには5人前後の従業員がいるから,作業中に被告Bが暴行を加えればだれかが気付くはずであるが,傍らで作業している作業員も「原告主張の暴行事実はない。」旨供述しており,原告が目撃者と主張する者は暴行の目撃を否定している。さらに,原告は,工場長に相談をした旨主張するが,工場長自身も「相談された事実はない。」旨供述している。なお,Cは,原告の妻から暴行事実の申告を受け,その事実を確認するため原告と面談したが,原告から直接暴行事実を告げられたことはない。 原告が診断書を提出した吉田病院,大隈病院からの回答は,原告の申告を裏付ける客観的根拠はなく,レントゲン撮影等の その事実を確認するため原告と面談したが,原告から直接暴行事実を告げられたことはない。 原告が診断書を提出した吉田病院,大隈病院からの回答は,原告の申告を裏付ける客観的根拠はなく,レントゲン撮影等の検査によっても異常所見はなかったなどというものであり,その回答内容からも原告主張の暴行事実には理由がないというべきである。 (2) 争点(2)についてア原告の主張(ア) 被告Aは,前記の被告Bによる原告に対する長期にわたる連続的な暴行,傷害という不法行為を知りながら,効果的な抑止措置をとらず,これを放置し,ひいてはこれを助長した。 (イ) 原告が,平成14年4月分給料について,給料明細上の残業(超過勤務)時間が実際の時間と大きく違っていたので,被告のCに対し,「タイムカードを見せてほしい。」と言ったところ,Cは,何日かたった平成14年5月7日,原告に対し,「お金のことでがたがた言うな。」と暴言を述べた。 また,原告が,前日に膝を痛めたので平成14年9月19日に欠勤し,翌20日に出勤すると,Cは,朝礼時に原告を指して,「仕事の遅い人が来ました。昨日は早く終わったのに。」と暴言を述べた。 さらに,Cは,日常的に,原告に対し,「お前は馬鹿か,馬鹿は馬鹿なりの仕事をしろ。」と暴言を述べ,原告が休憩時間に休憩を取っていると,「やることが遅いし,手順が悪いのだから,休憩なんかしていないで,さっさと仕事をしろ。」と暴言を述べた。 (ウ) 被告Aは,原告に対し,争いのない事実等にある平成14年2月から平成15年4月までの12万3750円の時間外勤務手当の未払,休日出勤分の2万5447円の時間外勤務手当の未払があるほか,タイムカードに記録された以外の法定労働時間外労働が合計61時間(平成14年4月3時間,同年5月3.5時間,同年8月2時間,同年9月5.5時間 勤分の2万5447円の時間外勤務手当の未払があるほか,タイムカードに記録された以外の法定労働時間外労働が合計61時間(平成14年4月3時間,同年5月3.5時間,同年8月2時間,同年9月5.5時間,同年10月6.5時間,同年11月2.5時間,同年12月6時間,平成15年1月3時間,同年2月4.75時間,同年3月14.25時間,同年4月10時間)あり,その分の時間外勤務手当9万1500円(9600円÷8時間×1.25×61時間)が未払であり,また,深夜の法定労働時間外労働が合計13.5時間(平成14年5月0.5時間,平成15年2月3.5時間,同年3月7時間,同年4月2.5時間)あり,その分の時間外勤務手当2万4300円(9600円÷8時間×1.5×13.5時間)が未払である。 以上の未払は被告Aの不法行為であり,原告は,時間外勤務手当の未払額合計26万4997円(12万3750円+2万5447円+9万1500円+2万4300円)相当の損害を被った。 (エ) 被告Aは,原告に対し,平成14年11月20日,同月21日の日給9600円の2日分1万9200円,平成14年11月分皆勤手当4000円,平成14年12月から平成15年2月まで毎月の手当のうち5000円の3か月分1万5000円,平成15年3月11日,同月13日,同月14日,同月18日の日給9600円の4日分3万8400円,平成15年3月分皆勤手当5000円,手当1万円,平成15年4月分皆勤手当5000円,手当2万円の合計11万6600円(1万9200円+4000円+1万5000円+3万8400円+5000円+1万円+5000円+2万円)を不当に支払わず,その被告Aの不法行為によって,原告は同額の損害を被った。 なお,原告が平成14年11月20日,同月21日に被告Aを休んだのは,前記の平成1 000円+1万円+5000円+2万円)を不当に支払わず,その被告Aの不法行為によって,原告は同額の損害を被った。 なお,原告が平成14年11月20日,同月21日に被告Aを休んだのは,前記の平成14年9月20日のCの暴言があり,その後,同年10月30日の朝礼時には,リストラもあり得るとのCの暴言があり,そのころから,被告Bが原告を「おい,リストラ。」と呼んで罵倒するようになり,同年11月19日に被告Bが「仕事遅いで会社辞めたら。」と原告に怒鳴ったことから,そのような暴言に耐えきれず休んだものである。 また,原告が平成15年3月11日,同月13日,同月14日,同月18日に被告Aを休んだのは,同月5日に被告Bに蹴られた胸の辺りが腫れて変色し,胃の辺りも痛んで眠れず,同月8日に大隈病院を受診し,同月11日は大隈病院で再診を受け,同月13日は出勤途次地下鉄車内で吐き気がし,その旨被告Aに届けて帰宅し,同月14日は大隈病院で胃カメラによる検査を受け,同月18日は,出勤直後,同月17日の被告Bの暴行による帰宅の理由について説明も聞かずにCから非難されて帰宅したものである。 以上のとおり,原告の欠勤は,いずれも被告B及び被告Aの責めに帰すべき事由による就労不能であるから,原告に賃金請求権がある。 (オ) 被告Aは,原告に対し,平成15年3月24日付けで解雇を通告し,同年4月23日に不当解雇するという不法行為を行った。 (カ) 被告Aが,原告の使用者として,その就労につき安全に職場を管理する義務を怠り,原告に対する被告Bの加害行為を放置し,抑止しなかったばかりか,原告に暴言を加え,支払うべき賃金,手当を支払わず,最終的に解雇するという一連の不法行為に及んだことによる精神的苦痛として,原告は,100万円の慰謝料相当額の損害を被った。 (キ) よって,原告は 原告に暴言を加え,支払うべき賃金,手当を支払わず,最終的に解雇するという一連の不法行為に及んだことによる精神的苦痛として,原告は,100万円の慰謝料相当額の損害を被った。 (キ) よって,原告は,被告Aに対し,損害合計138万1597円(26万4997円+11万6600円+100万円)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成15年8月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 イ被告らの主張(ア) 被告Aが,被告Bによる原告に対する長期にわたる連続的な暴行,傷害を知りながら,効果的な抑止措置をとらず,これを放置し,ひいてはこれを助長したという事実はない。 (イ) 時間外勤務手当については,被告Aに平成14年2月から平成15年4月までの12万3750円の時間外勤務手当の未払,休日出勤分の2万5447円の時間外勤務手当の未払があることは認めるが,原告にタイムカードに記録された以外の法定労働時間外労働及び深夜の法定労働時間外労働があるということはなく,被告Aにその労働時間に応じた時間外勤務手当の未払があるということもない。 (ウ) 原告は,平成14年11月20日,同月21日,平成15年3月11日,同月13日,同月14日,同月18日は被告Aに出勤しておらず,被告Aに賃金の支払義務はない。 平成14年11月分,平成15年3月分,同年4月分の皆勤手当については,原告の皆勤の事実がないので,被告Aに皆勤手当の支払義務がない。 原告の主張する手当とは,能率手当を指していると推測されるが,平成14年12月から平成15年4月までの能率手当については,原告は後記のとおり作業能率を悪化させており,被告Aに能率手当の支払義務はない。 (エ) 被告Aが原告を解雇した事情は以下のとおりである。すなわち,被告Aは,熟練の塗装工に までの能率手当については,原告は後記のとおり作業能率を悪化させており,被告Aに能率手当の支払義務はない。 (エ) 被告Aが原告を解雇した事情は以下のとおりである。すなわち,被告Aは,熟練の塗装工に欠員が発生したことから,平成14年1月ころから,ハローワークに熟練塗装工の職人募集をした。その後,ハローワークから原告の紹介があり,原告は,被告Aに対して,「15年の塗装経験者(熟練工)である。」旨申し述べたので,被告Aは原告を採用した。ところが,平成14年2月20日から同年11月14日まで,原告は,Dと同班(2人体制)で塗装作業をしていたが,不良作業が多く,同じ失敗を繰り返しており,この時点で熟練工であることの疑念が発生した。そのため,Dが原告の穴埋め作業に奔走する状況であった。被告Aとしては,やむなく,平成14年11月22日から平成15年1月31日まで,原告とEとを同班(2人体制)として作業を行ってもらった。しかし,原告は,Eの作業指示に従わず,作業効率も悪く,上記と同様に不良作業が多かった。そのため,上記と同様に,Eが原告の穴埋め作業に奔走する状況であり,原告が熟練工であることの疑念は更に強まった。被告Aとしては,やむなく,平成15年2月1日から,原告,被告B及びDの班(3人体制)として作業を行ってもらった。しかし,原告は,従前と同様に作業指示に従わず,同じ不良作業を繰り返していた。被告Aとしては,有能な熟練工を雇用した予定であったのに,むしろ,原告が被告Aの作業効率を悪化させ,かつ,作業改善の見込みもなかった。被告Aとしては,原告の熟練工との申告が虚偽申告であると判断せざるを得なかった。その結果,被告Aとしては,やむなく原告を解雇するに至ったものである。なお,後日,原告の妻から,原告には右手が震える持病があるとの事実を聞かされた。 第 申告が虚偽申告であると判断せざるを得なかった。その結果,被告Aとしては,やむなく原告を解雇するに至ったものである。なお,後日,原告の妻から,原告には右手が震える持病があるとの事実を聞かされた。 第3 判断 1 前記争いのない事実に,甲13ないし17,21ないし24,28,37ないし39,乙4ないし9,12,13,証人F,原告本人,被告A代表者本人,被告B本人及び後掲証拠並びに弁論の全趣旨によれば,以下のとおりの事実を認めることができる。 (1) 原告は,平成13年12月にそれまで勤めていた会社を経営不振により解雇され,「塗装経験者」を募集する旨の被告Aの職業安定所における求人公開カード(甲29)による紹介により,平成14年2月21日から,被告Aにおいて勤務するようになった。 原告は,それまで勤務していた会社で約15年の塗装作業経験を有していたが(乙3),被告Aにおける塗装作業と違い小さな物の塗装経験であった。 被告Aに勤務するようになった当初の3か月間は試用期間であった。 (2) 平成14年4月30日,原告が同月分の給料を受け取ると,給料明細と実残業時間との間に大きな違いがあった。そこで,原告が,Cに「タイムカードを見せてほしい。」旨述べたところ,同年5月7日ころ,Cから,「お金のことでがたがた言うな。」という趣旨の応答があった。 (3) 原告は,被告Aに雇用された当初は,Dと2人の班において,配電盤,受電盤の本体フレーム等の塗装作業や研ぎ出し作業(塗装前の研磨作業)に従事していたが,塗り忘れ,塗りむら,塗り過ぎによる塗面の流れ等の不良作業があり,注意や指導を受けると返事は良いものの,同じような失敗を繰り返して,改善が見られず,Dが残業して手直し作業をしたり,被告Aの従業員のGが取引先にまで出向いて手直しをすることもあった。 平成14年8月 意や指導を受けると返事は良いものの,同じような失敗を繰り返して,改善が見られず,Dが残業して手直し作業をしたり,被告Aの従業員のGが取引先にまで出向いて手直しをすることもあった。 平成14年8月ころ,原告は被告Bと同じ班ではなかったが,被告Bは,原告らの班の隣りで原告らの班が行った下塗り塗装の仕上げ塗装をしており,原告らの班の下塗り塗装のミスに関連して,そのころから,原告に対し,「もう辞めろ。お前仕事がなってない。もうお前なんか来んでいい。」などと暴言を浴びせるようになった。 (4) 原告が膝を痛め平成14年9月19日に大隈病院で水抜きをしてもらうため被告Aを欠勤し,翌20日出勤すると,朝の朝礼において,Cから,「仕事の遅い人が来ました。昨日は早く終わったのに。」という発言が従業員全員の前であり,原告は屈辱的思いを味わった。 その後も,Cから,原告に対し,「お前は馬鹿か,馬鹿は馬鹿なりの仕事をしろ。」とか,休憩時間に休憩を取っていると,「やることが遅いし,手順が悪いのだから,休憩なんかしていないで,さっさと仕事をしろ。」などの暴言が浴びせられた。 そして,平成14年10月30日の朝礼では,Cから,「不景気のためリストラもある。」旨の話があり,そのころから,被告Bは,原告のことを「おい,リストラ。」と呼ぶようになった。 (5) 平成14年11月19日には,被告Bが,原告に対し,「仕事が遅いから,会社辞めたら。」と怒鳴った。 原告は,被告Bの暴言に我慢できず,平成14年11月20日と21日の2日間被告Aを休んだ。 原告の妻は,それまで体調不良で欠勤したことなどなかった原告が2日間欠勤し,その前に1度「会社で嫌がらせがある。」旨話したことがあったことから,自分のパートの仕事を探しにいったハローワークの窓口で,「主人の再就職先で嫌がらせがある したことなどなかった原告が2日間欠勤し,その前に1度「会社で嫌がらせがある。」旨話したことがあったことから,自分のパートの仕事を探しにいったハローワークの窓口で,「主人の再就職先で嫌がらせがあるようなのですが。」と相談した。そして,「会社での仕事内容,気になることなどをテープ録音するとか,日にちや時間,内容をメモするなどして様子を見てください。」との助言を得たことから,そのことを原告に伝えたところ,原告は勤務時間とか仕事内容を帰宅途中の地下鉄車内で手帳に記録しているということであったので,翌日から,原告の妻において,原告の手帳の内容をパソコンに入力して整理,保存するようにした。 (6) 被告Aは,平成14年11月22日から,原告をEと2人の班とし,Eの気中開閉器ボックスのライン塗装作業の助手として,品物のつり下げ,降ろし,マスキング等の単純作業に従事してもらうこととした。しかし,原告は,Eの指示どおりに品物がさめないうちにマスキングテープをはがさず,そのためテープがはがれなくなるなどの不良作業があり,ライン作業のラインを止めてはやり直すということがあり,Eから,原告を他の班へ変えるようにとの要求が出された。 そのため,被告Aは,平成15年2月1日から,原告を被告B及びDとの3人による配電盤等の外装仕上げ班とし,被告Bが仕上げ塗装作業,Dが研ぎ出し作業,原告がDの助手として,品物を掛けたり,運んだりなどの単純作業を担当することとした。しかし,原告の品物の掛け方が悪かったり,違う品物を運んできたりなどして作業に支障を来したり,塗装の膜厚の測定を間違えたり,電機サンダーで研ぎ出しをするときに研ぎ過ぎてしまったりなどし,注意を受けても,返事は良いものの,同じようなことの繰り返しであった。そのため,被告Bは,不良品の手直しのため残業せざるを得な えたり,電機サンダーで研ぎ出しをするときに研ぎ過ぎてしまったりなどし,注意を受けても,返事は良いものの,同じようなことの繰り返しであった。そのため,被告Bは,不良品の手直しのため残業せざるを得ない状態となり,いらだって,原告に対し,「帰れ。橋の下でホームレスをやった方がいい。」などと怒鳴りつけるなどした。 (7) そして,平成15年2月5日,被告Bは,工場内で作業中の原告に対し,「仕事の要領が悪い。」などと言って,原告の頭部,顔面を殴打し,足首を蹴る暴行を加えた。原告は,非常な痛みを感じたが,当日は帰宅を思いとどまり,我慢して仕事を続行した。 (8) 平成15年2月7日,被告Bは,原告の仕事が気に入らないとして,原告の右顔面をハツリという金物工具の柄ではないかと思われるようなもので殴り,原告の右ほほから血がにじんだ。また,被告Bは,原告の左右の足首と左膝を蹴り,足首は赤紫色な腫れ上がり,擦り傷とあざになったが,原告は,同日も我慢して終業まで働いた。 (9) 平成15年2月8日午後,被告Bは,突然,原告の頭部を帽子ごとわしづかみにして前に押し倒し,斜め後ろから,後頭部を素手で5,6回殴り,更に左膝と両足首を各1回蹴った。さらに,被告Bは,原告の正面から両手で胸ぐらをつかみ,後ろの棚に突き倒したため,原告は,背中をぶつけその場にしゃがみこんだ。 原告は,気分が悪くなり,仕事ができるような状態ではなかったことから,午後4時30分にタイムカードを打刻して,早退した。原告は,帰宅途中,吐き気とめまいを感じ,帰宅したときも顔面蒼白で吐き気が続いていたため,すぐに横になった。 原告は,当日は土曜日であったが,胸に圧迫感を感じたので,かかりつけの大隈病院で診察を受けようと思い,同病院に電話して症状を話したところ,担当医が不在ということで,救急医療事務セ ぐに横になった。 原告は,当日は土曜日であったが,胸に圧迫感を感じたので,かかりつけの大隈病院で診察を受けようと思い,同病院に電話して症状を話したところ,担当医が不在ということで,救急医療事務センターを紹介され,そこに連絡した結果,名古屋市a区bの吉田病院で救急診療を受けることになり,原告の妻の運転する車で同病院に赴いた。同病院での診察の結果は,頭部打撲,両足打撲で10間の加療を要するというものであった(甲1)。なお,調査嘱託の結果によれば,そのような診断の根拠としては,原告の申告のみであり,特別な客観的根拠はなく,レントゲン写真やCTスキャンの検査による特異な所見はなかったことが認められるが,加療期間が10日間程度の打撲症について,レントゲン写真やCTスキャンの検査等による客観的所見がないからといって,暴行及び受傷の事実を否定できるものではない。 原告は,吉田病院から帰った後,妻や2人の子供に対し,被告Aにおける被告Bによる暴力の事実について打ち明けた。 家族で話し合った結果,翌平成15年2月9日夜,原告は,C宅へ電話して,被告Bの暴力について話をした。 そして,翌平成15年2月10日に出社した原告は,Cに被告Bの暴力について詳しく話し,朝礼の場でも他の従業員の前で同様の話をしたところ,被告Bがこれをなじるような発言と,病院での受診を疑うような発言があったことから,原告は,吉田病院の診察券を見せるなどした。 原告の妻は,原告が暴言による嫌がらせのみならず暴行まで受けていることを知ったことから,平成15年2月10日から,原告から被告Aにおける暴行の事実を詳細に聞き出し,パソコンに入力して記録するようになった。 (10) その後も,被告Bの原告に対する暴言,暴力は続き,平成15年2月17日には,右足のふくらはぎを蹴り,帽子をはぎ取り床に投げ の事実を詳細に聞き出し,パソコンに入力して記録するようになった。 (10) その後も,被告Bの原告に対する暴言,暴力は続き,平成15年2月17日には,右足のふくらはぎを蹴り,帽子をはぎ取り床に投げ捨て,「明日から来なくていい。」などと言い,同月27日には,「おれの言うことをなぜ聞かない。手際が悪い。」などと言って,顔面に塗料を吹き付け,右耳の上をこぶしで殴り,同年3月1日には,仕事が遅すぎるとして,殴ったり,蹴ったりし,同月3日には,原告が仕事上で小さな傷を見落としたことにつき,「何で見落とした。おれをなめているのか。」などと言って,突き飛ばし,右耳の上をこぶしで殴り,塗料を顔面に吹きつけ,さらに,原告がした電着作業の手直しについて,「なぜもっときれいに手直ししないか。」などと言って,右手こぶしで左のほほを殴り,左手に持っていた金棒で頭を殴打し,同月4日には,Dが作業中にいなくなったことについて,「お前も一緒だ。」などと言って,つばを吐きかけ,右ほほをこぶしで殴り,右足首を蹴り上げ,「早く会社を辞めたら。」などと言った。 (11) そして,平成15年3月5日午前,被告Bは,原告が被告Bの「なぜあんなに時間がかかるのだ。」との発言に反論したことに対し,「おれの言うことを聞け。」などと言って,原告の後頭部を殴り,また,同日午後2時過ぎには,Eの行った仕事について,「お前の点検不足だ。」などと言って,原告の顔面を平手打ちしようとし,これを避けようとした原告がふらついて尻餅をつく状態で後ろに倒れたところ,その左胸部を蹴りつけた。原告は痛みでしばらく呼吸もできないほどであり,両ひじを床のコンクリートに強打して血がにじみ,打撲と擦り傷が残った。 さらに,夜の残業中にも,被告Bは,原告を突き飛ばし,つばを吐きかけた。 同日の夜,原告の妻は,原告の胸に靴 もできないほどであり,両ひじを床のコンクリートに強打して血がにじみ,打撲と擦り傷が残った。 さらに,夜の残業中にも,被告Bは,原告を突き飛ばし,つばを吐きかけた。 同日の夜,原告の妻は,原告の胸に靴跡が残って変色し,腫れあがっているのを見て驚き,病院へ行こうと言ったが,原告は疲れているので寝たいなどと言ってこれに応じなかった。そして,原告の二男が携帯電話のカメラで原告の受傷の状況を写して長男に送信したところ,それを見た長男が,普通のカメラで撮影しておくよう電話で指示してきたが,当日はフィルムがなかったので撮影できなかった。 (12) 平成15年3月6日午前,被告Bは,原告が被告Bに言い返したことに対し,頭を殴打し,原告のしていたマスクを引っ張った。そのため,マスクのゴムにより原告の耳の後ろ側が切れ,血が流れた。 同日夜,原告は,当日購入したフィルムにより,二男に写真を撮ってもらったが,その写真には,必ずしも明瞭ではないものの,平成15年2月7日の被告Bの暴行による右ほほの傷(甲27の1)と右足首の傷(甲27の12),同月27日と同年3月3日に被告Bに顔面に吹き付けられた塗料と殴打による左ほほ上部の青あざ(甲27の2),同年3月5日の被告Bの暴行による左脇腹の腫れと変色(甲27の4),両ひじと右手の擦り傷(甲27の5ないし7),同月6日の被告Bの暴行による耳の後ろ側が切れてかさぶたとなっている状態(甲27の3)などが写った。 (13) 平成15年3月7日午前,被告Bは,原告に対し,仕事の工程が違う旨述べて,原告の右ほほを殴り,また,原告のマスクのゴムを引っ張って離すという嫌がらせをした。 (14) 平成15年3月8日,原告は,被告Bから同月5日に蹴りつけられた胸が痛く,呼吸するのも辛かったので,大隈病院の整形外科を受診したところ,左胸部挫傷 を引っ張って離すという嫌がらせをした。 (14) 平成15年3月8日,原告は,被告Bから同月5日に蹴りつけられた胸が痛く,呼吸するのも辛かったので,大隈病院の整形外科を受診したところ,左胸部挫傷で2,3週間の安静通院を要するとの診断であった(甲25)。なお,乙14によれば,上記診断に特別の根拠はなく,レントゲン撮影によっても明らかな異常所見は認められなかったことが認められるが,2,3週間の安静通院を要する挫傷について,レントゲン撮影による明らかな異常所見が認められなかったからといって,暴行及び受傷の事実を否定できるものではない。 (15) 平成15年3月11日,原告は,胸の辺りに痛みと圧迫感があり,胃の痛みもひどかったことから,大隈病院の整形外科を再受診するため,被告Aを欠勤した。 再受診の結果,胃腸科を受診するよう指示され,胃カメラによる検査のため,同月14日に再来院するよう言われた。 平成15年3月11日夜,原告は,Cの自宅に電話し,被告Bの暴力がエスカレートしている旨伝え,原告の妻も電話に出てCと直接話し,事実関係が知りたいと要求した結果,被告Aへの来社を勧められ,翌日ころに期日を調整した結果,同月18日に被告AでCと面談することになった。 (16) 平成15年3月12日,原告が被告Aに出勤すると,前日の電話の内容に係る被告Bの暴行の事実について,Cから,被告Bは否定している旨伝えられた。 平成15年3月13日,原告は,被告Aへの出勤途中の地下鉄車内で吐き気をもよおし,気持ちが悪くなったため,耐えられずに地下鉄を降り,被告Aに欠勤の電話連絡をして帰宅した。 平成15年3月14日,原告は,大隈病院で胃カメラによる検査を受けるため,被告Aを欠勤した。検査の結果,胃潰瘍と診断され,その原因については,医学的に断定はできないが,ストレスによる して帰宅した。 平成15年3月14日,原告は,大隈病院で胃カメラによる検査を受けるため,被告Aを欠勤した。検査の結果,胃潰瘍と診断され,その原因については,医学的に断定はできないが,ストレスによるもの又は鎮痛薬によるもの等が考えられると診断された(甲26)。 (17) 平成15年3月17日,原告は,胃が痛く,体調が極めて悪かったが,我慢して被告Aに出勤した。出勤すると,Cから,「3月25日までは面倒見る。」などと言われた。 平成15年3月17日午前,原告が,大きな扉の研ぎ出しの仕事をし,はがれたパテの修正をしようとしていたところ,被告Bが何かを話し掛けてきたが,原告がこれを聞きそびれたところ,被告Bは,「態度が悪い。」などと言って,原告の後ろから後頭部を素手で殴った。原告は,吐き気とめまいを感じ,昼食も食べられないまま,午後の仕事に入った。 同日午後2時過ぎ,被告Bは,「研ぎが悪い。お前みたいなやつはもう帰っていけ。」などと言って,原告の作業服のえり元を引っ張り,原告がこれを振り払うと,後ろから原告のえり首を持って引っ張り,事務所前まで数十メートルを強引に引きずっていった。原告は,首を絞められる状態で,咳き込んで苦しんでいたが,被告Bは,近くにいたGに「こんなやつもういらんわ。首になるようなやつは。」などと言い残して,工場内に戻っていった。原告は,Gから,「今日はもう帰っていけ。」などと言われ,やむを得ずそのままタイムカードを打刻して午後3時過ぎに早退した。 (18) 平成15年3月18日,原告が通常どおりに出勤すると,Cから,「昨日なぜ無断退社した。」と言われた。原告は,事実をCに説明しようとしたが聞き入れてもらえず,非難されたことから,被告Aぐるみのいじめと感じ,つくづく嫌になり,我慢ができずにそのまま帰宅した。その結果,同日は欠勤 社した。」と言われた。原告は,事実をCに説明しようとしたが聞き入れてもらえず,非難されたことから,被告Aぐるみのいじめと感じ,つくづく嫌になり,我慢ができずにそのまま帰宅した。その結果,同日は欠勤扱いとされた。 同日午後0時30分ころ,原告は,前記の面談約束に従い,原告の妻及び二男と共に,被告Aに赴き,Cと面談した。 Cは,原告の勤務状況を非難し,被告Bの暴力の存在については,原告や原告の妻が前記の二男が撮影した写真や診断書を示すなどしたが,「こういう写真を見ても私は認めません。」などと述べて強く否定した。 被告Bも,「暴行の記憶はない。ぼくは何もしていない。」などと発言し,謝罪の言葉はなく,原告ら家族を非難するような発言をした。 Cからは,「3月25日までは面倒見るけど。」という言葉があったが,「面倒を見るとはどういうことか。」との質問に対する返事はなかった。 (19) 原告は,翌平成15年3月19日以降も,通常どおり出勤して仕事をこなし,同月26日には原告の妻が労働基準監督署や警察署に相談に行くなどしていたところ,同月28日朝,原告が出勤すると同時に,Cから,「4月25日で解雇します。」と告げられた。原告が,「理由は。」と尋ねると,「仕事が遅いから。」という答えであった。 Cとしては,原告の勤務状況には問題があると考えていたものの,注意等を受けたときの原告の態度は素直であったので,縁があって採用したものであるとして解雇までは考えず,長期間雇用を継続してきたが,平成15年3月18日の面談の際の原告の妻の発言態度に憤慨した結果,解雇を決意したものである。 (20) 平成15年4月7日,原告は,退社の際,Cから,同年3月24日付け解雇予告通知書(甲31)と退職願用紙(甲32)を渡された。しかし,労働基準監督署に電話で相談した結果,解雇予告通知書 る。 (20) 平成15年4月7日,原告は,退社の際,Cから,同年3月24日付け解雇予告通知書(甲31)と退職願用紙(甲32)を渡された。しかし,労働基準監督署に電話で相談した結果,解雇予告通知書があるのなら退職願は書く余地のないものである旨言われ,また,有給休暇を取得できる旨の指導を受けた。 そこで,原告は,平成15年4月11日,労働基準監督署に相談した結果を書面化し(甲33),これに同月14日から同月25日までの間に10日間の有給休暇を取得する旨の有給休暇届(甲34)を添付して,被告Aあてに提出した。 また,平成15年4月19日,原告は,緑警察署を訪ね,受傷の事実について相談するなどし,被害届を提出した。 (21) 原告が平成15年2月8日から同年4月16日までの間に吉田病院,はるか薬局及び大隈病院に支払った治療費,薬代,文書料等の合計は3万1456円になる(甲2ないし11)。 (22) 被告Aは,原告に対し,平成14年2月から平成15年4月までの12万3750円の時間外勤務手当の未払,休日出勤分の2万5447円の時間外勤務手当の未払があることを認めているが,これはタイムカードの記録に基づいたものである。 さらに,原告は,タイムカードに記録された時間以外にも稼働しており,前記のとおり,給料明細と実残業時間との間に大きな違いがあったことから,実際の労働時間を手帳にメモし,これを原告の妻がパソコンに入力して記録していた。その記録によれば,タイムカードに記録された以外の法定労働時間外労働が合計61時間(平成14年4月3時間,同年5月3.5時間,同年8月2時間,同年9月5.5時間,同年10月6.5時間,同年11月2.5時間,同年12月6時間,平成15年1月3時間,同年2月4.75時間,同年3月14.25時間,同年4月10時間)であり,深夜の法 月2時間,同年9月5.5時間,同年10月6.5時間,同年11月2.5時間,同年12月6時間,平成15年1月3時間,同年2月4.75時間,同年3月14.25時間,同年4月10時間)であり,深夜の法定労働時間外労働が合計13.5時間(平成14年5月0.5時間,平成15年2月3.5時間,同年3月7時間,同年4月2.5時間)であった(甲19)。 そして,上記法定労働時間外労働に係る時間外勤務手当の計算式が,9600円÷8時間×1.25×時間数であり,深夜の法定労働時間外労働がある場合の時間外勤務手当の計算式が,9600円÷8時間×1.5×時間数であることは当事者間に争いがないから,合計11万5800円(9600円÷8時間×1.25×61時間+9600円÷8時間×1.5×13.5時間)の時間外勤務手当が未払ということになる。 (23) 被告Aは,原告が,平成14年11月20日,同月21日に欠勤したとして,その2日分の日給の合計1万9200円を支払わず,また,その前月まで毎月5000円支払われていた皆勤手当(甲40の3ないし6,8ないし10)を1000円に減額して差額の4000円を支払わなかった(甲40の11)。 被告Aは,原告に対し,平成14年3月から同年11月までは毎月2万円の手当(被告Aの採用面接時の説明では能率給を支給する旨の説明があった(甲30)ので,能率手当の趣旨と認められる。)を支払っていたが(甲40の2ないし6,8ないし11),同年12月から平成15年2月までは各月とも同手当を各1万5000円に減額して各5000円の差額の3か月分合計1万5000円を支払わなかった。 被告Aは,原告が,平成15年3月11日,同月13日,同月14日,同月18日に欠勤したとして,その4日分の日給の合計3万8400円を支払わず,また,皆勤手当5000円も 000円を支払わなかった。 被告Aは,原告が,平成15年3月11日,同月13日,同月14日,同月18日に欠勤したとして,その4日分の日給の合計3万8400円を支払わず,また,皆勤手当5000円も支払わず,手当は1万円に減額して差額の1万円を支払わなかった(甲40の16)。 被告Aは,原告の平成15年4月分の給料について,皆勤手当5000円,手当2万円のいずれも支払わなかった(甲40の17)。 2 以上の認定事実に対し,被告Bは,前記認定の原告に対する暴行の存在を全面的に否定する供述,陳述(乙13)をし,Cはこれに沿う供述,陳述(乙12)をし,被告A従業員もこれに沿う陳述(乙4ないし6)をする。 しかし,前記認定のとおり,原告の妻は,原告が被告Bから暴行を受けていることを原告に打ち明けられて以来,その暴行の態様について原告から聞き出した内容を詳細に記録していたものであり(甲13),病院の診断書(甲1,25,26)や二男が撮影した写真(甲27の1ないし12)もこれに沿うものとなっている。そして,暴行の状況に関する原告本人の供述,陳述(甲17)の内容は,現実に経験した者でなければ表現できないような臨場感のある描写となっており,これに沿う原告の妻の証言,陳述(甲14,21),原告の2人の子供の陳述(甲14,24)も同様であって,十分に信用することができる。 被告Bは,原告が自分よりはるかに若い被告Bに怒られたことを根に持って,逆恨みのような感じで訴えられたのではないかと思う旨供述する。しかし,原告の主張する暴行の期間が極めて長期間にわたっているところ,複数の診断書の取得時期,二男による写真の撮影時期などに照らすと,逆恨みによる訴え提起のために虚偽の証拠を作り出し本訴提起に及んだものとは到底認めることができない。 3 争点(1)(被告Bの原告に対す 数の診断書の取得時期,二男による写真の撮影時期などに照らすと,逆恨みによる訴え提起のために虚偽の証拠を作り出し本訴提起に及んだものとは到底認めることができない。 3 争点(1)(被告Bの原告に対する暴言,暴行,傷害の存否と被告Aの使用者責任の有無)について(1) 前記1で認定した事実によれば,被告Bは,原告に対し,長期間にわたり,暴言,暴行を繰り返し,傷害を負わせたものであって,その行為は原告に対する一連の不法行為を構成するものというべきである。 (2) そして,前記1で認定の被告Bが原告に対して暴言,暴行を繰り返した状況に照らせば,被告Bの原告に対する暴言,暴行は,いずれも被告Aの事業の執行につき行われたものと認めることができ,被告Aは,被告Bの使用者として,民法715条に基づき,原告の被った損害につき,被告Bと連帯してその賠償責任を有するものというべきである。 (3) 原告は,被告Bの暴行及び傷害のため,前記1で認定したとおり,病院や薬局に治療費,薬代,文書料等合計3万1456円を支払っており,同額の損害を被ったものと認めることができる。 また,前記1で認定した被告Bによる一連の暴言,暴行,傷害の態様,程度,回数,期間の長さ等を総合勘案すると,原告が被告Bの一連の不法行為によって被った精神的苦痛を慰謝するための慰謝料としては100万円が相当と認められる。 (4) よって,原告は,被告らに対し,上記損害額の合計103万1456円(3万1456円+100万円)及びこれに対する被告らに対する各訴状送達の遅い方の日の翌日である平成15年9月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めることができる。 4 争点(2)(被告Aの原告に対する被告Bの加害行為の放置,暴言,賃金及び手当の未払,解雇という一連の不法行為の存 払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めることができる。 4 争点(2)(被告Aの原告に対する被告Bの加害行為の放置,暴言,賃金及び手当の未払,解雇という一連の不法行為の存否)について(1) 前記1で認定した事実によれば,被告Aは,少なくとも,原告が,平成15年2月9日の夜にC宅へ電話して,被告Bの暴力について報告した以降は,被告Bの暴行の存在を知り,使用者としてこれを適切に抑止すべき注意義務を負ったものということができるが,その後も被告Bによる暴行が続いたものであって,被告Aには,被告Bの暴行を抑止しなかったことについて少なくとも過失による不法行為責任があると認めることができる。 しかし,被告Aが被告Bの暴行を抑止しなかった結果,原告が被った損害は,被告Bの暴行によって原告が被った損害と重複する関係にあるというべきであり,前記3で認定した損害とは別個の損害が発生したものと認めることはできない。 (2) 前記1で認定した事実によれば,被告Aは,原告に対し,平成14年2月から平成15年4月までの12万3750円の時間外勤務手当の未払,休日出勤分の2万5447円の時間外勤務手当の未払があるほか,タイムカードに記録された以外の法定労働時間外労働合計61時間分の時間外勤務手当9万1500円,深夜の法定労働時間外労働合計13.5時間分の時間外勤務手当2万4300円の未払があると認められ,その未払額合計は26万4997円(12万3750円+2万5447円+9万1500円+2万4300円)となると認められる。 時間外勤務手当の未払については,被告Aに少なくとも過失があったものと認められ,その未払は原告に対する不法行為を構成するものということができ,その不法行為によって,原告は,未払額相当の26万4997円の損害を被ったものと認め ては,被告Aに少なくとも過失があったものと認められ,その未払は原告に対する不法行為を構成するものということができ,その不法行為によって,原告は,未払額相当の26万4997円の損害を被ったものと認めることができる。 (3)ア前記1で認定したとおり,被告Aは,原告に対し,平成14年11月分の給料については,原告が同月20日,同月21日に欠勤したとして,その2日分の日給の合計1万9200円を支払わず,また,その前月まで毎月5000円支払っていた皆勤手当を1000円に減額して差額の4000円を支払わなかったものである。 ところで,前記1で認定した事実によれば,原告が平成14年11月20日,同月21日に被告Aを休んだのは,同年10月30日に,Cから,「不景気のためリストラもある。」旨の話があり,そのころから,被告Bは,原告のことを「おい,リストラ。」と呼ぶようになり,同年11月19日には,被告Bが,原告に対し,「仕事が遅いから,会社辞めたら。」と怒鳴ったことに我慢できなかったことによるものと認められる。しかし,そのような発言が,前記3で認定したとおり,暴言によって精神的苦痛を与えたものとして別途不法行為を構成するものということはできるとしても,欠勤が2日にとどまりその後は出勤していることに照らすと,その暴言によって原告が就労不能の状況にまで追い込まれたものと認めることは困難である。そうすると,平成14年11月分の給料について,同月20日,同月21日の日給9600円の2日分1万9200円が支払われず,また,同月の皆勤手当が1000円に減額され差額の4000円が支払われなかったことにつき,原告にその未払分の賃金請求権があったものと認めることは困難である。 そうすると,被告Aがその未払賃金請求権を違法に侵害したものと認めることはできない。 イ次に 00円が支払われなかったことにつき,原告にその未払分の賃金請求権があったものと認めることは困難である。 そうすると,被告Aがその未払賃金請求権を違法に侵害したものと認めることはできない。 イ次に,前記1で認定したとおり,被告Aは,原告に対し,平成14年12月分から平成15年2月分までの給料について,前月まで毎月2万円支払っていた手当を各1万5000円に減額して3か月分合計1万5000円を支払わなかったものである。 この点については,前記1で認定したとおり,手当の趣旨は,能率手当であり,作業能率に応じて支払われる手当というべきところ,被告Aとしては,原告のDと2人の班における作業状況に問題があったため,平成14年11月22日から,Eと2人の班とし,Eの助手としての作業に従事させたものであり,その作業状況にも問題があったことから,平成15年2月1日から,被告B及びDと3人の班とし,Dの助手としての作業を担当させるようにしたが,なお作業状況に問題があったのであるから,平成14年11月まで手当が毎月2万円支払われていたからといって,同年12月以降も原告がその作業能率に応じて同額の手当請求権を有していたものと認めることは困難である。 そうすると,前月まで毎月2万円支払われていた手当につき,平成14年12月分から平成15年2月分まで各1万5000円に減額され,3か月分で合計1万5000円が支払われなかったことにつき,原告にその未払分の賃金請求権があるということはできず,被告Aがかかる未払賃金請求権を違法に侵害したものと認めることはできない。 ウまた,前記1で認定したとおり,被告Aは,原告に対し,平成15年3月分の給料について,原告が同月11日,同月13日,同月14日,同月18日に欠勤したとして,その4日分の日給の合計3万8400円を支払わなかっ 記1で認定したとおり,被告Aは,原告に対し,平成15年3月分の給料について,原告が同月11日,同月13日,同月14日,同月18日に欠勤したとして,その4日分の日給の合計3万8400円を支払わなかったものである。 この点については,前記1で認定したとおり,平成15年3月11日は,原告が,被告Bから同月5日に受けた暴行により胸の辺りに痛みと圧迫感を感じ,胃の痛みもひどかったことから,病院を受診するため,被告Aを欠勤したものであり,その結果,胃カメラによる検査のため,同月14日に再来院するよう言われたものである。また,平成15年3月13日は,原告は,被告Aへの出勤途中の地下鉄車内で吐き気をもよおし,気持ちが悪くなったため,耐えられずに地下鉄を降り,被告Aに欠勤の電話連絡をして帰宅したものである。そして,平成15年3月14日は,原告は,胃カメラによる検査を受けるため,被告Aを欠勤したものであり,検査の結果,胃潰瘍と診断され,その原因については,断定はできないが,ストレスによるもの又は鎮痛薬によるもの等が考えられると診断されたものである。さらに,平成15年3月18日は,原告が通常どおりに出勤したところ,Cから,「昨日なぜ無断退社した。」と言われ,前日の出来事を説明しようとしたが聞き入れてもらえず,非難されたことから,被告Aぐるみのいじめと感じ,つくづく嫌になり,我慢ができずにそのまま帰宅した結果,欠勤扱いとされたものである。 以上によれば,平成15年3月11日,同月13日,同月14日の原告の欠勤は,いずれも被告Bの暴行による傷害と被告Bの暴言,暴行に起因すると認めるのが相当な胃潰瘍の治療及びその症状悪化のための欠勤と認められるのであり,前記3で認定したとおり,被告Bの暴行,傷害について被告Aが使用者責任を負うべきものである以上,その欠勤は被告Aの ると認めるのが相当な胃潰瘍の治療及びその症状悪化のための欠勤と認められるのであり,前記3で認定したとおり,被告Bの暴行,傷害について被告Aが使用者責任を負うべきものである以上,その欠勤は被告Aの責めに帰すべき事由による就労不能というべきである。したがって,原告には上記3日分の2万8800円(9600円×3)の賃金請求権があると認めることができる。 そうすると,上記3日分の賃金の未払については,被告Aに少なくとも過失があったものと認められ,その未払は原告の賃金請求権を違法に侵害したものとして不法行為を構成するものということができ,その不法行為によって原告が被った損害は,未払額相当の2万8800円と認めることができる。 しかし,平成15年3月18日の原告の欠勤については,上記のCの言動によって原告が就労不能の状況にまで追い込まれたものと認めることは困難であり,原告に同日分の賃金請求権があると認めることはできない。したがって,同日分の日給が支払われなかったことにつき,原告にその未払分の賃金請求権があるにもかかわらず被告Aがこれを違法に侵害したものと認めることはできない。 さらに,前記1で認定したとおり,被告Aは,原告に対し,平成15年3月分の給料について,皆勤手当5000円を支払わなかったものである。 しかし,この点については,上記のとおり,原告には平成15年3月18日に欠勤があったものといわざるを得ず,原告に皆勤手当5000円の賃金請求権があったものと認めることは困難である。したがって,皆勤手当5000円が支払われなかったことにつき,原告にその未払分の賃金請求権があるにもかかわらず被告Aがこれを違法に侵害したものと認めることはできない。 また,前記1で認定したとおり,被告Aは,原告に対し,平成15年3月分の給料について,手当も2万円から1万円 の賃金請求権があるにもかかわらず被告Aがこれを違法に侵害したものと認めることはできない。 また,前記1で認定したとおり,被告Aは,原告に対し,平成15年3月分の給料について,手当も2万円から1万円に減額して1万円を支払わなかったものである。 しかし,この点については,前記1で認定したとおり,平成15年2月1日から原告を被告B及びDと3人の班とし,Dの助手としての作業を担当させるようにした後の作業状況にもなお問題があったのであり,同年3月における原告の作業能率が2万円の手当を受給できるようなものであったと認めるに足りる的確な証拠はない。したがって,手当が2万円から1万円に減額され1万円が支払われなかったことにつき,原告にその未払分の賃金請求権があるにもかかわらず被告Aがこれを違法に侵害したものと認めることはできない。 エさらに,前記1で認定したとおり,被告Aは,原告に対し,平成15年4月分の給料について,皆勤手当5000円,手当2万円を支払わなかったものである。 しかし,この点については,前記1で認定したとおり,原告は,平成15年4月11日,同月14日から同月25日までの間に10日間の有給休暇を取得する旨の有給休暇届を提出しているところ,有給休暇を取得した場合,平均賃金等に基づく賃金の受給権を失わないということはいえるが,皆勤手当も受給できると認めるに足りる的確な証拠はなく,また,手当2万円の不払についても,同年4月における原告の作業能率が2万円の手当を受給できるようなものであったと認めるに足りる的確な証拠はない。したがって,原告にその未払分の賃金請求権があるにもかかわらず被告Aがこれを違法に侵害したものと認めることはできない。 (4) 前記1で認定した事実によれば,原告は,平成14年5月7日,タイムカードの確認を要求したことについて,C 金請求権があるにもかかわらず被告Aがこれを違法に侵害したものと認めることはできない。 (4) 前記1で認定した事実によれば,原告は,平成14年5月7日,タイムカードの確認を要求したことについて,Cから,「お金のことでがたがた言うな。」と言われ,平成14年9月20日には,朝の朝礼において,従業員全員の前で,Cから,「仕事の遅い人が来ました。昨日は早く終わったのに。」と言われ,屈辱的な思いを味わい,その後も,Cから,「お前は馬鹿か,馬鹿は馬鹿なりの仕事をしろ。」とか,休憩時間に休憩を取っていると,「やることが遅いし,手順が悪いのだから,休憩なんかしていないで,さっさと仕事をしろ。」などと言われたことが認められる。 Cのこれらの発言は,従業員である原告に対する発言としては,社会通念上許容される範囲を超えた暴言というべきものであり,被告Aとしての不法行為を構成するものというべきである。 (5) 前記1で認定した事実によれば,被告Aは,原告に対し,平成15年3月24日付けで解雇を通告し,同年4月23日に解雇したものであるが,Cが原告の解雇を決意したのは,原告の勤務状況には問題があると考えていたものの,注意等を受けたときの原告の態度は素直であったので,縁があって採用したものであるとして解雇までは考えず,長期間雇用を継続してきたが,平成15年3月18日の面談の際の原告の妻の発言態度に憤慨した結果であると認められる。 そうすると,被告Aによる原告の解雇は,Cが原告の妻の態度に憤慨したということを直接の理由とするものであり,解雇まで相当とするような勤務成績不良等の客観的に合理的な解雇理由があったものということはできず,社会通念上相当であるとは認められないものといわざるを得ない。そうすると,かかる解雇は違法であり,原告に対する不法行為を構成するというべきで 客観的に合理的な解雇理由があったものということはできず,社会通念上相当であるとは認められないものといわざるを得ない。そうすると,かかる解雇は違法であり,原告に対する不法行為を構成するというべきである。 (6) 以上によれば,被告Aが,原告の使用者として,原告に暴言を加え,違法な解雇をしたという不法行為によって原告が被った損害を慰謝するための慰謝料としては,暴言の内容,態様や,原告が月額20万円前後の給料(甲40の2ないし6,8ないし12,14ないし17)と額面7万円の夏期手当(甲40の7),額面10万円の冬期手当(甲40の13)を受給していたという解雇前の賃金受給の状況等の諸事情を総合勘案すると,100万円と認めるのが相当である。 なお,原告は,被告Aが支払うべき賃金,手当を支払わなかったという不法行為によっても原告が精神的苦痛を被った旨主張するが,不払の賃金,手当の金額に相当する財産的損害を被ったものとはいえるが,その不払によって財産的損害のほかに精神的損害まで被ったものと認めることは困難である。 (7) 以上によれば,原告が被告Aの時間外勤務手当の不払,賃金の不払,暴言,解雇という不法行為によって被った損害の合計は,時間外勤務手当の未払による損害26万4997円,平成15年3月11日,同月13日,同月14日の3日分の賃金未払による損害2万8800円,暴言,解雇による慰謝料100万円の合計129万3797円となる。 よって,原告は,被告Aに対し,上記損害額の合計129万3797円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成15年8月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,主文掲記の限度で理由があるからこれを認容し,原告の被告Aに対するその余の 払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,主文掲記の限度で理由があるからこれを認容し,原告の被告Aに対するその余の請求は理由がないから棄却し,原告の被告Aに対する請求について一部棄却部分があるが,訴訟費用については,その全部を被告らの負担とするのを相当と認め,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第1部裁判官橋本昌純
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