裁判所
昭和45年7月16日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所 昭和38(ネ)1455
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主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。理由 上告代理人真野毅ほか四名の上告理由第一点および上告代理人荒井秀夫の上告理由第二点について。原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)は、訴外Dが、昭和二四年一〇月一八日に、訴外Eから、原判決添付物件目録(一)の土地に第一順位の抵当権を設定して金三〇万円を借り受け、ついで昭和二六年三月五日に、ふたたび右Eから、右(一)の土地に第二順位の抵当権、その地上にある物件目録(二)の建物に第一順位の抵当権を各設定して金一〇六万円を借り受けたこと、昭和二八年四月六日に右両者間で成立した訴訟上の和解において、DはEに対し、右二口の貸金債務の元利金一四〇万五〇七七円の存在を承認し、その月賦弁済を約するとともに、月賦弁済金二回分の履行遅滞を停止条件として右(一)の土地および(二)の建物を前記一四〇万五〇七七円の債務の支払に代えてEに譲渡する旨の停止条件付代物弁済契約を結んだこと、ところがDは昭和二八年七月分および八月分の月賦弁済金の支払を怠つたため、同月末日の経過とともに、右代物弁済契約の停止条件が成就し、その後昭和二九年二月一九日に、被上告人が右Eから(一)の土地を買い受けてその所有権を取得したこと、を確定しており、右士地所有権に基づいて、その地上にある物件目録(三)の建物の所有権をDから株式会社Fを経て譲り受けたとしてその敷地部分を占有している上告人に対し、右建物を収去してその敷地を明け渡すことを求める被上告人の本訴請求を、認容すべきものとしているのである。これに対し上告論旨は、債権担保の目的のもとに(一)の土地(および(二)の建物)を目的とする前記停止条件付代物弁済契約が締結された当時、(一)の土地およびそ- 1 - べきものとしているのである。これに対し上告論旨は、債権担保の目的のもとに(一)の土地(および(二)の建物)を目的とする前記停止条件付代物弁済契約が締結された当時、(一)の土地およびそ- 1 -の地上の(三)の建物がともにDの所有に属していた以上、停止条件の成就により右土地・建物が所有者を異にするに至つた場合には、民法三八八条の類推適用により、建物所有者のために法定地上権が認められるべきであり、上告人は右建物所有権とともに法定地上権を取得したものとして、その敷地を占有する権原があるものというべきであるのに、これを認めなかつた原判決には、法令の解釈適用を誤つた違法があると主張する。 1 -の地上の(三)の建物がともにDの所有に属していた以上、停止条件の成就により右土地・建物が所有者を異にするに至つた場合には、民法三八八条の類推適用により、建物所有者のために法定地上権が認められるべきであり、上告人は右建物所有権とともに法定地上権を取得したものとして、その敷地を占有する権原があるものというべきであるのに、これを認めなかつた原判決には、法令の解釈適用を誤つた違法があると主張する。思うに、債権担保の目的で不動産につき停止条件付代物弁済契約(または代物弁済予約)が締結された場合においては、右契約は、債権者が、弁済期に債務の弁済がされないとき、代物弁済による所有権移転の形式をかりて、目的不動産の換価処分またはそれに代わる適正な評価によつて具体化する該物件の価額から自己の債権の優先弁済を受けることを目的とし、その際自己の債権額を超える価額があるときは、その差額相当額をいわば清算金として債務者に返還することを要する趣旨の債権担保契約と解すべきであつて、右契約上の権利の実質は担保権と同視すべきものであることは、当裁判所の屡次の判例において判示されて来たとおりである(昭和四〇年(オ)第一四六九号同四二年一一月一六日第一小法廷判決、民集二一巻九号二四三〇頁、昭和四一年(オ)第六〇二号同四三年三月七日第一小法廷判決、民集二二巻三号五〇九頁、昭和四二年(オ)第五五七号同四五年三月二六日第一小法廷判決参照)。そして、本件停止条件付代物弁済契約も、かかる趣旨の債権担保契約にほかならないことは、前記の原審確定事実に徴し、明らかである。したがつて、以上と )第五五七号同四五年三月二六日第一小法廷判決参照)。そして、本件停止条件付代物弁済契約も、かかる趣旨の債権担保契約にほかならないことは、前記の原審確定事実に徴し、明らかである。したがつて、以上と同じく、(一)の土地に対する渡辺の停止条件付代物弁済契約に基づく権利の実質が担保権であることを立論の前提として、民法三八八条の類推適用を主張する論旨は、肯綮にあたるものを含むといわなければならない。しかし、本件においては、前記の原審確定事実によつて明らかなように、Eは、(一)の土地に対し、停止条件付代物弁済契約の締結に先き立ち、右契約をもつて担- 2 -保しようとした債権と同一債権を被担保債権とする第一および第二順位の抵当権の設定を受けていたものである(各抵当権の設定登記がその当時経由されていることも、原審によつて確定されている。 主張する論旨は、肯綮にあたるものを含むといわなければならない。しかし、本件においては、前記の原審確定事実によつて明らかなように、Eは、(一)の土地に対し、停止条件付代物弁済契約の締結に先き立ち、右契約をもつて担- 2 -保しようとした債権と同一債権を被担保債権とする第一および第二順位の抵当権の設定を受けていたものである(各抵当権の設定登記がその当時経由されていることも、原審によつて確定されている。)が、かりにEにおいて右抵当権の実行をしたときは、(三)の建物所有者が法定地上権をもつて(一)の土地の競落人に対抗しうるためには、抵当権設定当時においてすでに右建物が土地と同じくDの所有に属するものとして存在していたことを要するところ、原審においては、かかる事実の主張はなく、上告論旨の主張するところによつても、抵当権設定よりのちである昭和二七年七月に至つて右建物の建築の着手があつたというのであるから、競落に伴う法定地上権の成立は、これを認めるによしなかつたのであり、したがつて、Eは、もともと、右建物を存置させるべき負担を伴わないものとして(一)の土地を換価しうる地位を有していたということができるのである。そして、本件においては、Eは、同一債権の担保を目的として、重ねて右土地につきDとの間で停止条件付代物弁済契約を結び、同人が債務の履行を怠るや、抵当権の実行によらず、右債務不履行のため代物弁済契約の条件が成就し右土 ては、Eは、同一債権の担保を目的として、重ねて右土地につきDとの間で停止条件付代物弁済契約を結び、同人が債務の履行を怠るや、抵当権の実行によらず、右債務不履行のため代物弁済契約の条件が成就し右土地が自己の所有に帰したとしてこれを他に処分することにより、債権の満足を得る方法をとつたものにほかならないのであり、その結果抵当権は消滅に帰することとなつたのであるから、この場合においても、同人は、右抵当権を実行した場合と同じく、抵当権者として右土地の担保価値を把握していたのと同一条件のもとに、すなわち、(三)の建物を地上に存置させるべき負担を伴わないものとして、右土地を担保目的に供することができたものと認められなければならない。してみれば、本件においては、停止条件付代物弁済契約締結当時には右土地・建物が同一所有者に属していたにせよ、民法三八八条の類推適用による法定地上権の成立は、所詮、これを認める余地がないものというべきであるから、原審の判断がその結論において正当であることは動かず、論旨は採用することができない。 に存置させるべき負担を伴わないものとして、右土地を担保目的に供することができたものと認められなければならない。してみれば、本件においては、停止条件付代物弁済契約締結当時には右土地・建物が同一所有者に属していたにせよ、民法三八八条の類推適用による法定地上権の成立は、所詮、これを認める余地がないものというべきであるから、原審の判断がその結論において正当であることは動かず、論旨は採用することができない。- 3 -上告代理人真野毅ほか四名の上告理由第二、三点および上告代理人荒井秀夫の上告理由第三点について。前記の訴訟上の和解の成立過程およびその和解条項に関し原審の認定判示するところは、挙示の証拠関係に照らして、首肯することができなくはない。そして、右事実認定のもとに、和解条項第四項として約定された(一)の土地および(二)の建物を目的とする代物弁済に関する合意は、代物弁済の狭義の予約ではなく、停止条件付契約の趣旨と解すべきものとした原審の判断は、正当として是認することができる。論旨引用の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の適法にした事実の認定を争い、または、原審の認定にそ の判断は、正当として是認することができる。論旨引用の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の適法にした事実の認定を争い、または、原審の認定にそわない事実関係を前提として原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。上告代理人真野毅ほか四名の上告理由第四点および上告代理人荒井秀夫の上告理由第一点について。原審の引用する第一審判決の正当に認定判示するところによれば、本件代物弁済契約の停止条件成就後における契約当事者間における折衝の経過が、代物弁済の効力と何ら牴触せず、所論のような趣旨のもとになされたものとは解しえないことが明らかである。したがつて、第一審判決の事実認定と、右事実関係によつて一たん生じた代物弁済の効力に消長を来たすことはなく、債権者たるEが右契約によつて取得した権利を放棄したものとは認められないとした第一審判決の判示とを、全面的に引用した原判決は、上告人の抗弁が所論の趣旨においても成り立たないことを判示しているものと解することができる。それゆえ、原判決に所論の判断遺脱の違法はなく、論旨は採用することができない。 る。したがつて、第一審判決の事実認定と、右事実関係によつて一たん生じた代物弁済の効力に消長を来たすことはなく、債権者たるEが右契約によつて取得した権利を放棄したものとは認められないとした第一審判決の判示とを、全面的に引用した原判決は、上告人の抗弁が所論の趣旨においても成り立たないことを判示しているものと解することができる。それゆえ、原判決に所論の判断遺脱の違法はなく、論旨は採用することができない。よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。- 4 -最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官入江俊郎裁判官長部謹吾裁判官松田二郎裁判官岩田誠裁判官大隅健一郎- 5 - 岩田誠裁判官 大隅健一郎
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