平成14年特(わ)第6308号証券取引法違反罪判決 主文 被告人を懲役1年及び罰金100万円に処する。 その罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 この裁判確定の日から3年間その懲役刑の執行を猶予する。 被告人から金1048万9591円を追徴する。 理由 【犯罪事実】被告人は,株式会社A資産管理部に所属し,同会社の資産管理等の業務に従事していたものであるが,平成13年7月10日ころ,その職務に関し,同会社の業務執行を決定する機関が東京証券取引所マザーズ市場に上場されている株式会社Bの株券の公開買付けを行うことについて決定した旨の株式会社Aの公開買付けの実施に関する事実を知り,同事実の公表前にあらかじめ株式会社Bの株券を買い付け,同事実の公表後に同株券を売り抜けて利益を得ようと企て,法定の除外事由がないのに,同事実の公表前である同年8月17日から同月30日までの間,東京都(以下略)所在のC証券株式会社を介し,(略)所在の東京証券取引所において,自己又は自己の義母D名義で,上記Bの株券合計15株を,買付価格合計746万7000円で買い付けた。 【量刑の事情】本件は,株式会社の資産管理等の業務に従事していた被告人が,その職務に関し,同会社が他社の株券の公開買付けを実施することを知り,同事実の公表前に同会社の株券を買い付けたという,いわゆるインサイダー取引の事案である。 インサイダー取引は,証券市場の公正性と健全性を損ない,ひいては証券市場に対する投資者の信頼を失わせるものとして厳しい非難を免れないところ,被告人は,職務上,自己の勤 ンサイダー取引の事案である。 インサイダー取引は,証券市場の公正性と健全性を損ない,ひいては証券市場に対する投資者の信頼を失わせるものとして厳しい非難を免れないところ,被告人は,職務上,自己の勤務先の会社(当時)が他社の株券の公開買付けを実施することを決定した旨知るや上司から当該株券の取引は行わないよう再三注意を受けていたにもかかわらず,かつ職務上知った情報を使ってインサイダー取引を行わない旨の機密保持同意書を会社に提出していたにもかかわらず,少数の株を取引するだけならば犯行が発覚することもないなどと安易に考えて本件犯行に及んだものであり,その後,実際にこれを売り抜けて多額の利益を得たことも併せ考えると,本件の犯情は悪質といわざるを得ない。また,被告人は,購入したマンションのローンの返済資金を作るために本件犯行に及んだなどと述べているが,このような利欲的な犯行の動機に酌むべき点は全くない。 以上によれば,被告人の刑事責任を軽くみることはできない。そして,このような利欲的な色合いの強い犯行に対しては,その罪の刑種につき懲役刑及び罰金刑を選択するのが相当である。 しかしながら,被告人は,本件犯行を素直に認めて反省し,今後は二度と犯罪を犯さないと誓っていること,これまで前科がないことなど,本件の発覚により,その時点で勤務していた会社を依願退職したこと,被告人には扶養しなければならない幼い子供が2人いることなど被告人に有利に酌むべき事情もあるので,これらの諸情状を総合考慮し,被告人に対しては,今回に限り,その懲役刑の執行を猶予することとした。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役1年及び罰金100万円,追徴1048万9591円)(参与判事補岸野康隆)平成15年2月28日東京地方裁判所刑事第15部 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役1年及び罰金100万円,追徴1048万9591円)(参与判事補岸野康隆)平成15年2月28日東京地方裁判所刑事第15部裁判官市川太志
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