昭和45(あ)2415 預金等に係る不当契約の取締に関する法律違反、背任

裁判年月日・裁判所
昭和50年4月3日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決中被告人A、同Bに関する部分を破棄する。      被告人A、同Bの各控訴を棄却する。      原審における訴訟費用中証人C、同Dに支給した分は、告被人A、同B の連帯

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主文原判決中被告人A、同Bに関する部分を破棄する。 被告人A、同Bの各控訴を棄却する。 原審における訴訟費用中証人C、同Dに支給した分は、告被人A、同Bの連帯負担とし、証人板花忠一に支給した分は、被告人Aの負担とする。 理由一被告人Aの弁護人岡林辰雄、同安達十郎、同中田直人、同谷村正太郎の上告趣意第一点は、憲法三一条、三九条、三七条、七六条、一一条違反をいう点もあるが、実質はすべて事実誤認、単なる法令違反の主張である。同第二点のうち、判例違反をいう部分は、所論引用の判例は事案を異にして本件に適切でなく、預金等に係る不当契約の取締に関する法律(以下「預金等不当契約取締法」という。)五条の規定につき憲法三一条、三九条違反をいう部分は、所論条項が故意犯の構成要件中に過失犯の要素を部分的に取り入れた一種の複合的形態のものであることは構成要件の明確性をなんら害するものでないばかりか、金融秩序の正常性、健全性を維持する見地にかんがみれば、所論条項があきらかに実質的合理性を欠き、かつ、刑罰対象を不当な範囲にまで拡大するものであるとはとうてい認めがたく、また、所論条項には実行時に適法な行為を事後的に処罰する趣旨ももとより含まれていないのであるから、所論は前提を欠き、その余の憲法三一条、三九条違反をいう部分は、実質において事実誤認、単なる法令違反をいうに尽きる主張である。同第三点は、憲法三八条二項違反及び単なる手続法令違反をいうが、記録によれば、被告人Aの所論供述に任意性ありとして犯罪事実の認定に供した原判断に誤りがあるとは認めがたいから、所論は前提を欠くものである。以上のとおり、被告人Aの弁護人の所論はすべて適法な上告理由にあたらない。 被告人Bの弁護人佐々木秀典の上告趣意(補充書の に供した原判断に誤りがあるとは認めがたいから、所論は前提を欠くものである。以上のとおり、被告人Aの弁護人の所論はすべて適法な上告理由にあたらない。 被告人Bの弁護人佐々木秀典の上告趣意(補充書の内容を含む。)は、憲法三七- 1 -条違反をいう点もあるが、実質は事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であり、すべて適法な上告理由にあたらない。 二被告人A、同Bに対する検察官の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、所論引用の各判例はいずれも事案を異にして必ずしも本件に適切でなく、その余は、単なる法令違反の主張であつて、すべて適法な上告理由にあたらない。 三しかしながら、検察官の所論にかんがみ、職権により調査すると、原判決中被告人A、同Bに関する部分は、以下に述べる理由により、結局破棄を免れないものである。 1 まず、被告人A、同Bに対する各背任の公訴事実につき、第一審判決がその挙示する各証拠により認定した事実関係の要旨は、「被告人Bは、E、Cらと図り、右Eの資金繰りを補うため、同女においていわゆる裏利を負担することとして預金者を集め、これら預金者に右裏利を得させる目的でF信用金庫柴又支店に預金を斡旋し、一方、右信用金庫支店からは、右Eのための借入名義人(いわゆるトンネル会社)として新設を予定していたG株式会社(代表者被告人B)に対し、右斡旋にかかる預金を担保とすることなく、事実上これに見合う額の融資を得ようと企て、その旨同柴又支店長たる被告人Aに申し入れてその承諾を得、ここに右預金を担保とすることなく融資を行うべきことを互いに約したものであるが、そのうえで、右融資の約に基づき、被告人A、同Bは、前記Cと共謀し、被告人Aにおいて、前記信用金庫支店の業務を総括する支店長としては借受人の資産、事業内容を十分調査し、貸付額又は弁済期に応 あるが、そのうえで、右融資の約に基づき、被告人A、同Bは、前記Cと共謀し、被告人Aにおいて、前記信用金庫支店の業務を総括する支店長としては借受人の資産、事業内容を十分調査し、貸付額又は弁済期に応じ適当な保証人を立てさせ、十分かつ確実な担保を徴収するほか融資総額及び稟議決済に関する右信用金庫の内部基準を守り、もつて貸付金の回収が不能ないし著しく困難となることのないよう注意して貸付事務を処理すべき任を負うものであり、また、前記の斡旋預金を担保としないG株式会社への融資が、後日の回収に困難があり場合によつては回収不能の危険さえ有するものであ- 2 -つて、前記信用金庫に財産上の損害を生ぜしめる虞れの極めて強いものであることを認識しておりながら、前記G株式会社に融資を与えてその利益を図る目的から、右任務に背き、一〇〇〇万円の定期預金を担保に徴収したのみで、前後三回にわたり総額八二〇〇万円を貸し付け、前記信用金庫に対しその回収不能の危険を生じさせて財産上の損害を加えたものである。」というのである。 2 ところで、右事実関係について第一審判決が被告人A、同Bらに対し背任の罪の共同正犯の成立を認めたのに対し、原審は、第一審の事実認定を是認しながら右の罪の成立を否定した。その理由の骨子は、預金等不当契約取締法五条違反の罪は直接には金融機関の財産を保護法益とする抽象的危険犯であつて、これと背任罪との関係はいわゆる法条競合のうちの択一関係にあたり、「本件の場合には従来判例が背任罪を構成するものと認めてきた、不良貸付・不当貸付の範囲に属するともいえるものであるが(中略)、これと択一関係に立つ預金等不当契約取締法五条の罪が設けられた以上、背任罪の成立を認めるためには或いは主観的意図において貸付によつて第三者に特別の金銭上の利益を得させるに止まらず、それ以 が(中略)、これと択一関係に立つ預金等不当契約取締法五条の罪が設けられた以上、背任罪の成立を認めるためには或いは主観的意図において貸付によつて第三者に特別の金銭上の利益を得させるに止まらず、それ以上に何等かの利益を自己または第三者に得させるとか、任務違背が重大であるとか、損害発生の蓋然性が著しく高度であると認められる場合でなければならない」との見解に立ち、本件の場合には、本件融資は被告人Aが同Bの事業手腕と信用力に信頼して与えた利益であつてそれ以外に特段の利得を与えたものではなく、また、本件任務違背の中核は十分な担保なしに多額の融資をしたことに尽きるところ、右の点は預金等不当契約取締法五条違反の罪を構成すべきものであるにとどまり、右の点以外に社会通念上許されない任務違背があるとは認められず、かつ、損害発生の蓋然性に関しては被告人Aの認識はせいぜい抽象的危険としての程度にとどまつていたものであるとし、これによれば、被告人らの所為については預金等不当契約取締法五条の予想するものを超えて背任罪を構成することの証明がないというにある。 - 3 -3 しかしながら、預金等不当契約取締法は、金融機関の業務の有する公共的使命にかんがみて、その経営の健全化とひいて一般預金者の保護を図ると共に、正常かつ健全な金融秩序の維持をも右に劣らぬ重要な目的とする政策上の取締法規であり、同法五条の罪については、それがほかならぬ金融機関の役職員による右公共的使命に対する背反的行為であるところに、処罰の実質的理由が存するものである。 それゆえにこそ、同法五条所定の要件のもとに融資が約されれば、それによつてただちに同条の罪が既遂に達するものとされているのであつて、右融資の約束の現実の実行の有無、当該預金以外の担保の徴収の有無等、金融機関の財産に対する侵害の発生又は危険 融資が約されれば、それによつてただちに同条の罪が既遂に達するものとされているのであつて、右融資の約束の現実の実行の有無、当該預金以外の担保の徴収の有無等、金融機関の財産に対する侵害の発生又は危険の具体化に関する事項は、右の罪の成否とはなんら関わりがないのであり、もとより、背任罪における要素である図利、加害目的のごときも右の罪の構成とは無縁である。 すなわち、背任の罪と預金等不当契約取締法五条の罪との間には、犯罪構成要件の仕組み、制裁の趣旨及び対象、保護法益、処罰の実質的理由等の点において重要な一般的差異が存するのであつて、これによれば、両者が一個の行為によつて行われる場合があるとしても、その間にいわゆる法条競合の関係があると解するのは相当でなく、両者は、各所定の構成要件を充足することにより、別個独立に成立することを妨げられるものではないと言わなくてはならない。帰するところ、預金等不当契約取締法五条の罪の成立する限度において背任罪の成立範囲が縮少限定されると解すべきいわれは存しないのである。 上来説示の観点から本件における前記事実関係について見れば、被告人A、同Bの各所為はいずれも刑法二四七条所定の背任罪の共同正犯に該当し、かつ、右は預金等不当契約取締法五条の罪の構成要件該当行為とはその自然的行為を別個にするものであると認められるから、両者は刑法四五条前段の併合罪に当るものというべくこれと同旨の第一審判決の判断は正当である。 - 4 -四そうすると、「被告人Aについては預金等不当契約取締法五条の罪を超えて背任罪を構成する証拠がなく、従つて択一関係にある預金等不当契約取締法五条一項二号の罪のみに当ると解すべきであり、また被告人Bについては、被告人Aの背任罪が成立しないのでその共同正犯ともなることはない」として、第一審判決中被告人 て択一関係にある預金等不当契約取締法五条一項二号の罪のみに当ると解すべきであり、また被告人Bについては、被告人Aの背任罪が成立しないのでその共同正犯ともなることはない」として、第一審判決中被告人Aに関する有罪部分、同Bに関する部分を破棄し、右両名に対する各背任罪の成立を否定して無罪を言い渡した原審の判断には、法令の解釈適用の誤りがあり、これが判決に影響を及ぼし、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものであることは明らかである。 よつて、刑訴法四一一条一号により原判決中被告人A、同Bに関する部分はこれを全部破棄し、なおただちに判決をすることができるものと認め、同法四一三条但書、三九六条、一八一条一項本文、一八二条により被告事件について主文のとおり判決する。 この判決は、裁判官全員一致の意見によるものである。 検察官外村隆公判出席昭和五〇年四月三日最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官岸上康夫裁判官藤林益三裁判官下田武三裁判官岸盛一裁判官団藤重光- 5 -

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