平成18(ワ)1117 不当利得返還請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年1月26日 京都地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-34127.txt

判決文本文6,362 文字)

- 1 -H19.1.26京都地方裁判所平成18年(ワ)第1117号不当利得返還請求事件事件番号:平成18年(ワ)第1117号裁判年月日:H19.1.26部:第3民事部結果:一部認容判示事項の要旨:隔地者間で連鎖販売契約(特定商取引に関する法律37条2項)を締結した場合において,連鎖販売業を行う者による承諾の通知が発せられる前に,相手方が連鎖販売の内容を明らかにする書面を受領し,それから20日が経過しても,クーリングオフ(同法40条1項)は制限されない。 主文 被告は,原告Aに対して37万3845円,原告Bに対して55万2825円及び原告Cに対して56万1810円並びに各金員に対する平成18年2月28日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,これを20分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求被告は,原告Aに対して金39万6295円,原告Bに対して55万3325円及び原告Cに対して56万3810円並びに各金員に対する平成18年2月28日(契約解除日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 第2事案の概要本件は,インターネット接続機器及びその周辺機器の販売・製造及びリース- 2 -等を目的とする株式会社である被告との間で,インターネット接続機器の販売やインターネットショッピングサービス等の提供のあっせんを目的とする連鎖販売契約(特定商取引に関する法律37条2項)である代理店登録契約(以下「本件代理店契約」という。)を締結した原告らが,本件代理店契約を解除(同法40条1項,以下「クーリングオフ」とも 的とする連鎖販売契約(特定商取引に関する法律37条2項)である代理店登録契約(以下「本件代理店契約」という。)を締結した原告らが,本件代理店契約を解除(同法40条1項,以下「クーリングオフ」ともいう。)したとして,支払った商品代金等の返還を求めている事案である。 基礎となる事実(争いのない事実及び証拠等により容易に認定される事実)(1)被告は,インターネット接続機器及びその周辺機器の販売・製造及びリース等を目的とする株式会社である。 (2)原告らは個人であり,また,商品の販売等を店舗等により行う者ではない。 (3)本件代理店契約は,新規代理店を勧誘できれば,1代理店について2万円の分配を得ることができ,新規代理店の支払う会費5985円のうち1600円を得ることができることをもって,代理店登録を誘うものである。また,本件代理店契約は,その契約締結にあたり,インターネット接続機器を購入する等の負担を伴うものである。本件代理店契約は連鎖販売契約(特定商取引に関する法律37条2項)である。 (4)原告Aは,勧誘を受け,平成17年4月21日,「UP代理店入会のご案内」と題する冊子(乙6)と「UP代理店契約内容」と題する冊子(乙7,以下「本件冊子」という。)を受け取り,本件冊子に綴られている本件代理店契約の申込書の必要事項を記入した(乙2の1)。原告Aは,翌22日,被告にインターネット接続機器の代金52万2900円を銀行振込した上,その振込用紙の控えの写しとクーリングオフについての説明を受けたことをなどを証するチェックシート等(乙2の2,2の3)を添えて,上記申込書を被告に郵送した。 被告は,上記申込書を受領した上,同月25日付けの代理店登録証(甲6)を原告Aに送付し,原告Aはそれを同月26日に受領した。 - 3 -(5)本件冊子に )を添えて,上記申込書を被告に郵送した。 被告は,上記申込書を受領した上,同月25日付けの代理店登録証(甲6)を原告Aに送付し,原告Aはそれを同月26日に受領した。 - 3 -(5)本件冊子には,本件代理店契約の内容が記載されており,その表紙には,「本書面は『特定商取引に関する法律』第三章第三十七条第二項に定められた契約書面です。」と記載されている。 (6)原告Aは,その両親である原告B及び原告Cに対して,本件代理店契約を締結するように勧誘し,本件冊子をそれぞれ交付した。 原告Cは同年5月14日に,原告Bは同月16日に,本件冊子に綴られていた申込書の必要事項を各記入した(乙3の1,乙4の1)。原告C及び原告Bは,同月18日に被告にインターネットの接続機器の代金各52万2900円を銀行振込した上,上記各申込書及び必要書類を被告に送付した。 被告は,上記各申込書を受領した上,同月20日付けの代理店登録証(甲7,8)を原告B及び原告Cに送付し,原告両名はそれを同月24日に受領した。 (7)ア原告Aは,本件契約に基づいて,被告に対し,会費3万5910円(5985円×6か月),販促品購入代金4050円を支出した。 イ原告Bは,本件契約に基づいて,被告に対し,会費2万9925円(5985円×5か月)を支出した。 ウ原告Cは,本件契約に基づいて,被告に対し,会費3万5910円(5985円×6か月)を支出した。 (8)原告Aは,原告B及び原告Cを勧誘したことにより,被告から,紹介手数料として19万4015円を受領した。 (9)原告らは,被告に対し,平成18年2月27日付け内容証明郵便をもって,本件代理店契約を解除(クーリングオフ)するとの意思表示をし,同月28日に到達した(甲1,2)。 争点及び当事者の主張(1)原告らの主張ア原告 成18年2月27日付け内容証明郵便をもって,本件代理店契約を解除(クーリングオフ)するとの意思表示をし,同月28日に到達した(甲1,2)。 争点及び当事者の主張(1)原告らの主張ア原告Aは平成17年4月25日に,原告B及び原告C,同年5月20日- 4 -に,本件代理店契約を締結した。本件冊子は,原告Aに平成17年4月21日,原告Bに同年5月16日に,原告Cに同年5月14日に交付されており,いずれも契約締結前に交付されたものである。 イ特定商取引に関する法律は,「契約を締結した場合において」,「遅滞なく」,契約書面を交付しなければならないものと定めているところ(同法37条2項),契約締結前に交付された書面は,上記契約書面とはいえない。 ウ商品の販売のあっせんについて,その条件のある場合は,その内容の記載が必要であるところ(政令30条1項),本件冊子には,オプション商品として,「ワイヤレスキーボード,外付けモデム」が掲載されているが,これらの価格等あっせん条件の記載がない。したがって,本件冊子は契約書面の要件を欠いている。 エ(ア)原告Aは,インターネット接続機器の購入代金52万2900円,会費3万5910円(5985円×6か月),販促品購入代金4050円のほか,研修費7500円,LAN工事代金2万5200円,振込手数料735円の合計59万6295円を支出した。 (イ)原告Bは,インターネット接続機器の代金52万2900円,会費2万9925円(5985円×5か月)のほか,研修費500円の合計55万3325円を支出した。 (ウ)原告Cは,インターネット接続機器の購入代金52万2900円,会費3万5910円(5985円×6か月)のほか,研修費5000円の合計56万3810円を支出した。 オ原告らは,原告Aが,原告B及び 原告Cは,インターネット接続機器の購入代金52万2900円,会費3万5910円(5985円×6か月)のほか,研修費5000円の合計56万3810円を支出した。 オ原告らは,原告Aが,原告B及び原告Cを勧誘したのみで,他の勧誘をしておらず,クーリングオフが権利の濫用となるような事情はない。 原告らが研修会や勉強会に出席したからといって,本件代理店契約のクーリングオフが権利の濫用となるものではない。 - 5 -(2)被告の主張ア現金支払による代理店登録申込がなされた場合には,申込人が登録申請書を作成した時点をもって契約登録日として扱っている。したがって,原告Aは,平成17年4月21日,原告Bは同年5月16日,原告Cは同年5月14日に,本件代理店契約を締結したものである。よって,原告らは,本件代理店契約を締結した日に本件冊子の交付を受けている。 イ特定商取引に関する法律37条2項は,一度意思決定をした者について熟慮と翻意の機会があることを知らしめるために契約書面を交付することを求めているものであり,契約締結後でなければ契約書面を提示してはならないということを定めているものではない。 仮に,同項が契約締結後の契約書面の交付を定めているとしても,同項の文言は明確ではなく,本件代理店契約の締結に手続違反が存したとしても,契約を無効とするほどの違法はない。 ウワイヤレスキーボード,外付けモデムといった商品は,市販されているものであり,原告も購入しておらず,その価格が記載されていないからといって,契約書面の要件を欠くものではない。 エLAN工事代金はNTTに支払われているはずであり,被告は受領していない。 振込手数料も被告は受領していない。 研修費のうち,原告Aについて5000円を超える分,原告Bの分すべて,原告Cについて3000円を超え 金はNTTに支払われているはずであり,被告は受領していない。 振込手数料も被告は受領していない。 研修費のうち,原告Aについて5000円を超える分,原告Bの分すべて,原告Cについて3000円を超える分については,被告が行った研修の費用ではなく,被告は受領していない。 オ原告らは,研修会や勉強会に出席するなどの代理店としての活動に従事しており,契約後1年近く経過してから,期待していたよりも成果があげられなかったからといって,本件代理店契約時に契約書面の交付を受けたとはいえないことを奇貨として,本件代理店契約のクーリングオフを主張- 6 -することは,信義則に反し,権利の濫用として許されない。 第3当裁判所の判断 特定商取引に関する法律は,連鎖販売契約(無店舗個人との契約)の締結までに,連鎖販売業の概要について記載した書面を契約者に交付することを求めており(同法37条1項),さらに,連鎖販売契約を締結した場合には,遅滞なく,連鎖販売契約の内容を明らかにする書面(以下「契約書面」という。)を契約者に交付することを求めている(同条2項)。そして,連鎖販売契約については,契約書面を受領した日から起算して20日を経過したときを除き,書面により連鎖販売契約の解除(クーリングオフ)を行うことができる(同法40条1項)と定めている。 この趣旨は,連鎖販売取引においては,組織,契約内容が複雑なこと,勧誘にあたり巧みな言葉で必ず利益があがると信じこまされてしまうこと等により,商取引に不慣れな個人が契約内容を理解しないまま一時的な興奮に駆られて契約し,後日トラブルを生じたり,思わぬ損失を被る危険性があることから,一定の場合の除き,契約が解除(クーリングオフ)できるようにしたものである。 そして,契約書面の交付を求めた趣旨は,契約内容の明確による判断の適 ラブルを生じたり,思わぬ損失を被る危険性があることから,一定の場合の除き,契約が解除(クーリングオフ)できるようにしたものである。 そして,契約書面の交付を求めた趣旨は,契約内容の明確による判断の適正を図ることのみではなく,既に契約をした者にその契約についての熟慮を促すこともあるというべきであり,その上,契約書面は,連鎖販売契約を「締結した場合において」,「遅滞なく」交付されることが要求されていること(同法37条2項)からすれば,契約締結前に契約内容を明らかにする書面が交付されたとしても,それにより,クーリングオフは制限されないというべきである。 そして,遠隔地者間の契約は,原則として,承諾の通知を発したときに成立するところ(民法526条1項),郵送により連鎖販売契約の申込がされた場合には,その承諾の意思表示が発せられるまでは契約は成立せず,承諾の意思表示が発せられたときに契約が成立するのであるから,承諾の意思表示が発せられた時かそれ以降に契約書面を契約者に交付しなければならないというべき- 7 -である。 本件においては,被告が原告らに代理人登録証を送付したのは,原告Aについて平成17年4月25日であり,原告B及び原告Cについて同年5月20日と推認されるところ,各送付日に本件代理店契約がそれぞれ成立したというべきである。 この点,被告は,現金支払による代理店登録申込がなされた場合には,申込人が登録申請書を作成した時点をもって契約登録日として扱っている旨主張する。しかし,本件冊子にも,現金支払による代理店登録申込がなされた場合には,申込人が登録申請書を作成した時点をもって契約登録日として扱う旨の規定はなく,他に被告主張のような取扱いが合意されたことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告は,原告らに対して,連鎖販売契 込人が登録申請書を作成した時点をもって契約登録日として扱う旨の規定はなく,他に被告主張のような取扱いが合意されたことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告は,原告らに対して,連鎖販売契約を「締結した場合において」,「遅滞なく」,本件冊子を交付したとはいえないから,その交付により,クーリングオフ(特定商取引に関する法律40条1項)が制限されるとはいえない。その他,契約書面(特定商取引に関する法律37条2項)が交付されたという被告の立証はない。 被告は,原告らのクーリングオフの主張は,信義則に反し,権利の濫用として許されないと主張するが,原告Aが原告B及び原告Cを勧誘したほかに原告らが勧誘したことがあったと認められず,そのほか,クーリングオフの主張が信義則に反し,権利の濫用となるべき事情を認めることはできない。 よって,本件代理店契約は,クーリングオフの書面(甲1)が発送された平成18年2月27日に解除(クーリングオフ)されたというべきであり(特定商取引に関する法律40条2項),被告は,原告らから本件代理店契約に基づき受領した金員(ただし,原告らが本件代理店契約に基づき被告から受領した金員を控除する。)について,返還しなければならない。 被告が,本件代理店契約に基づき,原告Aから37万3845円(56万7- 8 -860円-19万4015円)を受領した事実,原告Bから55万2825円を受領した事実及び,原告Cから56万1810円を受領した事実については争いがないが,これを超える額について被告が金員を受領した事実を認めるに足りる証拠はない。 第4 結論 以上によれば,原告らの請求は主文第1項の限度で理由があるから,これらを認容し,その余はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条, りる証拠はない。 第4 結論 以上によれば,原告らの請求は主文第1項の限度で理由があるから,これらを認容し,その余はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条,64条本文に,仮執行の宣言について同法259条1項にそれぞれ従い,主文のとおり判決する。 京都地方裁判所第3民事部裁判官下馬場直志

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る