平成27(行ウ)202 異議申立却下決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年10月27日 東京地方裁判所
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判決文本文7,514 文字)

平成27年10月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年(行ウ)第202号異議申立却下決定取消請求事件口頭弁論終結日平成27年9月1日判決フランス国パリ <以下略>原告アンスティチュー・デ・ヴェッソー・エ・デュ・サンフランス国パリ <以下略>原告ユニベルシテ・パリ・ディドロ-パリ7上記2名訴訟代理人弁護士日野孝俊同愛甲栄治東京都千代田区<以下略>被告国同指定代理人青木朝子同湯峯奈々子同門奈伸幸同平川千鶴子同小林大祐 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求特許庁長官が平成26年10月2日原告らに対してした異議申立却下決定を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告らが,国際特許出願について特許庁長官に対し国内書面及び翻訳文提出書を提出したところ,特許庁長官から平成26年4月25日付けで,これらの提出に係る手続をいずれも却下する旨の処分を受けたため,同処分について行政不服審査法による各異議申 に対し国内書面及び翻訳文提出書を提出したところ,特許庁長官から平成26年4月25日付けで,これらの提出に係る手続をいずれも却下する旨の処分を受けたため,同処分について行政不服審査法による各異議申立てをしたところ,特許庁長官から同年10月2日付けで,同申立てには必要な書面が添付されておらず同法13条1項に違反するとしてこれらを却下する旨の決定を受けたため,同決定の取消しを求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲記した事実以外は,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告アンスティチュー・デ・ヴェッソー・エ・デュ・サンは,フランス国において製薬業を営む会社であり,原告ユニベルシテ・パリ・ディドロ-パリ7は,フランス国所在の大学である(弁論の全趣旨)。 イ被告は,国である。 (2) 原告らによる国際出願原告らは,平成23年3月28日,「血管新生促進性組成物,その調整方法およびその使用」との名称の発明について,「千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約」(以下「特許協力条約」という。)に基づき,国際出願(乙6,PCT/FR2011/050673,以下「本件国際出願」という。)を行った。本件国際出願について,特許法184条の3第1項の規定により,その国際出願日に日本国にされたものとみなされた特許出願(特願2013-501903号)における国際出願の翻訳文の提出期限は平成24年11月26日である。 (3) 国内書面及び翻訳文提出に係る手続ア原告らは,平成25年6月10日付けで,A国際特許事務所のA弁理士らを代理人として,特許庁長官に対し,翻訳文の提出期間徒過に「正当な理由」があったこと等を主張する回復理由書(甲14)を提出し,併せて,国内書面(乙8,以下「本件国内書面」という。)及び翻訳 弁理士らを代理人として,特許庁長官に対し,翻訳文の提出期間徒過に「正当な理由」があったこと等を主張する回復理由書(甲14)を提出し,併せて,国内書面(乙8,以下「本件国内書面」という。)及び翻訳文提出書(甲15,以下「本件翻訳文提出書」という。)を提出した。 イ特許庁長官は,同年9月5日付けで,原告らに対し,本件国内書面に係る手続及び本件翻訳文提出書に係る手続(以下,両手続を併せて「本件各手続」という。)を,それぞれ却下すべき旨を各却下理由通知書(甲16,以下「本件通知書」と総称する。)により通知し,同通知書は,同月10日に到達した。 なお,同通知書においては,本件国内書面に係る手続については,出願の取下擬制により客体がなく,本件翻訳文提出書に係る手続については,特許法184条の4第4項所定の要件を充足しないことが,それぞれ却下の理由とされている。 ウ原告らは,同年10月8日付けで,本件各手続につき各弁明書(甲17)を特許庁長官あてに提出した。 エ特許庁長官は,同年12月11日付けで,原告らに対し,本件翻訳文提出書の提出期限を徒過したことについて,特許法184条の4第4項に規定する「正当な理由」があるとはいえないとして,本件翻訳文提出書に係る手続を却下すべき旨を却下理由通知書(甲18)により通知し,同通知書は,同月17日に到達した。 オ原告らは,平成26年1月16日付けで,本件各手続につき各弁明書(甲19)を特許庁長官あてに提出した。 カ特許庁長官は,同年4月25日付けで,原告らに対し,弁明書に記載された弁明の趣旨を考慮しても却下の理由は解消されないとして,本件各手続をそれぞれ却下する旨の各処分(甲20,以下「本件却下処分」と総称する。)をし,同処分は,同年5月7日に到達した。 (4) 本件却下処分に対 考慮しても却下の理由は解消されないとして,本件各手続をそれぞれ却下する旨の各処分(甲20,以下「本件却下処分」と総称する。)をし,同処分は,同年5月7日に到達した。 (4) 本件却下処分に対する異議申立てア原告らは,同年7月4日付けで,本件却下処分に対し,B特許事務所のB弁理士(以下「B弁理士」という。)らを代理人として各異議申立て(以下「本件異議申立て」と総称する。)を行ったが,原告らの代表者の資格証明に関する書面等を添付しなかった(甲21,22)。 イ特許庁長官は,同月9日付けで,本件異議申立てが行政不服審査法13条1項の規定に違反するとして,同法48条において準用する同法21条の規定により,①原告らの代表者の資格を証明する書面(登記事項証明書等),及び②代理人であることを証明する書面を提出するよう求める各補正命令(甲23,以下「本件補正命令」と総称する。)を発した。本件補正命令は,同月11日に送達された(弁論の全趣旨)。なお,同補正命令においては,同命令書受領の日から30日以内の書面の提出が求められていた。 ウ原告らの代理人であるC弁理士(以下「C弁理士」という。)が,同月31日,特許庁に対し,電話で「代表者の資格を証明する書面がないので,代わりに代理人事務所が作成した書面を公証人に公証してもらうことでよいか」と照会したのに対し,特許庁担当者は「誰が代表者であるかということについて公証してもらうことになると思うが,通常は,公証する者が自ら書面を作るのではないかと思います」旨,電話で回答した(乙4)。 このほか,原告らの代理人であるB弁理士は,同年8月7日,特許庁を訪れて,特許庁担当者と面談した(乙5)。 エ原告らは,同年8月6日付け「補正書(行政不服審査法による異議申立てに関して)」と題する書面(甲2 告らの代理人であるB弁理士は,同年8月7日,特許庁を訪れて,特許庁担当者と面談した(乙5)。 エ原告らは,同年8月6日付け「補正書(行政不服審査法による異議申立てに関して)」と題する書面(甲24)を特許庁に提出したところ,同書面には「委任状」と題する書面が添付されていた。また,同補正書には「代表者の資格を証明する書面ついて,フランスでは登記事項証明がなく,公的な機関による証明書はないとのことであり,貴庁において,本件のように,証明書類がない場合において,代表者の資格証明として認定された事例が御座いましたら,具体的な書面の内容をご教示頂けますようよろしくお願い申し上げます。」との記載があった。 オ特許庁長官は,同年10月2日付けで,本件補正命令に記載された補正がされなかったため本件異議申立ては行政不服審査法13条1項の規定に違反し,不適法であるとして,同法47条1項により本件異議申立てをいずれも却下する旨の決定(甲25,以下「本件決定」という。)をし,同決定は,同月6日に,原告らの代理人であるB弁理士に送達された。 2 争点本件決定が行政不服審査法21条ないし憲法29条に違反し,取り消されるべきか 3 争点に関する当事者の主張(1) 原告の主張ア特許庁長官が原告らに対して提出を求めた原告らの代表者の資格証明は,フランスに法人登記制度がないことから,提出できないものであった。被告が指摘するように,フランスにおいて「商業」登記制度が存在するとしても,原告らのような公益組織や教育・研究機関は「商業」登記制度の対象外である。 また,原告らは,本件補正命令に対し,何らの補正もせずに提出期限を徒過したのではなく,平成26年8月6日付けの補正書(甲24)と原告らの委任状を提出しており,同補正書において代表者の資格証 ある。 また,原告らは,本件補正命令に対し,何らの補正もせずに提出期限を徒過したのではなく,平成26年8月6日付けの補正書(甲24)と原告らの委任状を提出しており,同補正書において代表者の資格証明書を提出できない事情を説明した上で,教示を求めている。これに対する回答がなければ,原告らとしては適正な補正を行うことができない。 そして,行政不服審査法21条には,「審査請求が不適法であつて補正することができるものであるときは,審査庁は,相当の期間を定めて,その補正を命じなければならない」と規定されているから,特許庁長官としては,同条に基づき,B弁理士の問合せに対し,資格証明書の代替となる書面について再度の補正命令を発するか,少なくとも事実上教示すべき義務があった。 しかし,B弁理士及びC弁理士と特許庁担当者との質疑が記録された書面(乙1ないし4)からは,特許庁担当者が,資格証明書の代替となる書面について具体的に教示したことは窺われない。 以上の事情によれば,本件では,再度の補正命令や教示がされないまま,本件異議申立てを却下する本件決定がされているのであるから,行政不服審査法21条に反する違法があり,本件決定は取消しを免れない。 イなお,原告らは,特許庁長官による本件補正命令に応じる意思があったからこそ,代理人のC弁理士が平成26年7月31日に特許庁に架電して資格証明書の方式等につき問い合わせ,同年8月6日付けで補正書を提出して登記事項証明に代替する書面について教示を求め,同月7日にはB弁理士が特許庁を訪問して同旨の問合せを行っているのである。 また,本件異議申立てとこれに先行する平成25年8月8日付けの異議申立てとは別個の手続であって,時期的にも異なり,先行する異議申立てに関して補正がされていないことを,本件異議申立てに関し である。 また,本件異議申立てとこれに先行する平成25年8月8日付けの異議申立てとは別個の手続であって,時期的にも異なり,先行する異議申立てに関して補正がされていないことを,本件異議申立てに関して原告らが補正命令に応じない意思が明らかであったことの根拠とすることはできない。 ウ本件決定は,本件却下処分の実体面について争う機会を遮断し,原告らの財産権を侵害するものであるから,憲法29条1項にも違反する。 (2) 被告の主張ア原告らは,再度の補正命令や教示がないままされた本件決定は行政不服審査法21条に違反する旨主張するが,同条は再度の補正命令については何ら規定しておらず,請求人が補正命令に従わなかった場合には,不適法なものとして原則的に却下されるべきであるから,特許庁長官が再度の補正命令を発すべき義務を負う根拠はない。 実質的にみても,原告らは,本件異議申立てに先行して平成25年8月8日付けで行った異議申立てにおいて,同法13条1項により定められた代表者の資格を証明する書面を添付せず,特許庁長官が複数回補正を命じたにもかかわらず,同補正命令に対し適正な補正をしなかった上,平成26年7月4日付けで本件異議申立てをした後も,補正命令書により補正のための相当な期間が与えられていたにもかかわらず,提出期限までに代表者の資格を証明する書面を提出しなかったものである。かかる原告らの態度からすると,本件補正命令に応じない意思が明らかであって,このような場合にまで再度の補正命令を発する必要があるとはいえない。 また,特許庁担当者は,代表者の資格を証明する書面について,B弁理士及びC弁理士による合計5回にわたる質問に対し,いずれも回答しており(乙1ないし5),「何らの教示もないままに」との原告らの主張は理由がない。法令 者は,代表者の資格を証明する書面について,B弁理士及びC弁理士による合計5回にわたる質問に対し,いずれも回答しており(乙1ないし5),「何らの教示もないままに」との原告らの主張は理由がない。法令上も,原告らが主張する教示義務については規定されておらず,特許庁長官が同義務を負うべき根拠もない。 なお,原告らは,フランスには法人登記制度がない旨主張するが,同国には商業登記制度が存在し,商業登記簿謄本により会社代表者の資格証明が可能である。 イこのように,本件決定は適法にされたものであるから,原告らの財産権を侵害するとはいえない。実質的にみても,本件補正命令に対し,原告らが代表者の資格を証明する書面を提出するなどの適正な補正をしていれば,本件異議申立ては当初から有効なものとして扱われていたにもかかわらず,原告らが,本件補正命令に従った補正をしなかったことから,本件決定がされたとの事情に鑑みれば,かかる結果については原告らに帰責性がある。 したがって,原告らの憲法違反の主張も理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 本件決定の違法性の有無について(1) 本件での事実経過は,当事者間に争いのない事実及び各掲記の証拠により,前記第2の1(2)ないし(4)記載のとおりであると認められる。 (2) 行政不服審査法13条1項によれば,同法に基づく不服申立てにおいては,代表者等の資格は書面で証明しなければならないとされている。 しかし,上記認定のとおり,本件却下処分に対する本件異議申立てにおいては,原告らの代表者の資格証明等に関する書面が添付されておらず,上記条項に違反していたため,特許庁長官は,原告らに対し,本件補正命令を発し,原告らの代表者の資格証明書面等の提出を求めたところ,原告らは,特許庁に対し,複数回,「フランスで 面が添付されておらず,上記条項に違反していたため,特許庁長官は,原告らに対し,本件補正命令を発し,原告らの代表者の資格証明書面等の提出を求めたところ,原告らは,特許庁に対し,複数回,「フランスでは代表者の資格を証明する公的な書面がない」などとして,代表者の資格証明をどのように行うべきか照会したため,特許庁の担当者は,平成26年7月31日,公証人が作成した書面によって同資格証明を行うべき旨,電話で回答したものである。 以上のとおり,特許庁担当者は,原告らからの代表者の資格証明書面に関する照会に対して,必要な回答をしており,原告らとしては,同回答に基づいて,公証人が作成した書面によって原告らの代表者の資格証明を行うことができる旨理解したはずである。現に,原告らは,本訴においては,公証人の認証を受けた代表者の資格証明書面を提出しているものであるから,同様な書面を本件異議申立てに係る手続において提出することができたはずである。 以上からすれば,原告らが,本件補正命令において定められた期間内に,原告らの代表者の資格証明に関する書面を提出しなかったことに正当な理由があるとは認められず,本件異議申立ては行政不服審査法13条1項に違反し,不適法であるから,これらをいずれも却下した本件決定に違法はない。 (3) なお,原告らは,本件において特許庁から提出を求められた資格証明書は提出できないものであったから,特許庁長官としては,行政不服審査法21条に基づき,B弁理士の問合せに対し,資格証明書の代替となる書面について,再度の補正命令を発するか,少なくとも教示すべき義務があった旨主張する。 しかし,そもそも,前記(2)のとおり,原告らが特許庁から提出を求められた資格証明書が提出できないものとはいえないから,原告らの上記主張はその ,少なくとも教示すべき義務があった旨主張する。 しかし,そもそも,前記(2)のとおり,原告らが特許庁から提出を求められた資格証明書が提出できないものとはいえないから,原告らの上記主張はその前提を欠く。 また,同法上,いったん審査庁が補正を命じた後,なお補正が可能である場合に再度補正を命じなければならないとの規定はないし,前記(2)のとおり,特許庁担当者は,原告らに対し,提出すべき書面について具体的に指示している。このように,特許庁担当者は,原告らに対して必要な教示を行ったものといえ,原告らは,特許庁担当者から回答を得ながら,原告らの代表者の資格証明に関する書面を提出せずに所定の期間を徒過したものであるから,実質的にみても,特許庁が再度の補正命令を発しなかったことに違法はない。 なお,原告らは,本件補正命令を受けて平成26年8月6日付け補正書(甲24)を提出する際に,代表者の資格証明の書面に関して再度教示を求めているが,この点については特許庁の担当者がそれ以前に電話で回答済みであって,同じ内容を再度回答しないことが違法とはいえない。 (4) また,原告らは,本件決定が,本件却下処分の実体面について争う機会を遮断し,原告らの財産権を侵害するものであり,憲法29条1項に違反するとも主張する。 しかし,本件決定がされたのは,原告らが本件補正命令により書面の提出を指示され,かつ,特許庁担当者によって提出すべき書面を具体的に教示されたにもかかわらず,同書面を所定の期間内に提出しなかったためであり,原告らが特許権を取得できないとしても,これは原告らが自ら招いた結果にすぎず,本件決定が憲法29条1項に違反するとは到底認められない。 2 結論以上のとおり,本件決定に違法はなく,原告らの請求は理由がないからこれらをいずれも棄却 主文 以上のとおり,本件決定に違法はなく,原告らの請求は理由がないからこれらをいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 理由 これは原告らが自ら招いた結果にすぎず,本件決定が憲法29条1項に違反するとは到底認められない。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官沖中康人 裁判官矢口俊哉 裁判官宇野遥子

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