平成15(ワ)2724 退職慰労金等(通称 北海道振興退職慰労金請求)

裁判年月日・裁判所
平成17年2月17日 札幌地方裁判所
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判決文本文18,649 文字)

主文 1  原告らの請求をいずれも棄却する。 2  訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1  請求 1  被告は,原告Aに対し,1058万6475円及びこれに対する平成15年12月18日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2  被告は,原告Bに対し,480万6725円及びこれに対する平成15年12月18日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2  事案の概要本件は,被告の取締役を退職した原告らが,被告に対し,それぞれ,取締役退職慰労金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めるとともに,併せて,被告の使用人(従業員)を兼ねていたとして,それぞれ,従業員退職金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。被告は,取締役退職慰労金の請求に対し,原告らが主張する退職慰労金の額等の決定を否認するとともに,民事再生法178条による免責の抗弁を主張し,また,従業員退職金の請求に対し,原告らが従業員であったことを否認するとともに,信義則違反や放棄の黙示の意思表示の抗弁を主張して,原告らの請求をいずれも争っている。 (1) 原告Aの請求ア取締役退職慰労金163万0125円から支払済みの124万7400円を控除した残額38万2725円及びこれに対する催告の日の翌日(訴状送達の日の翌日)である平成15年12月18日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金(計算方法)9万4500円(退任当時の基本報酬)×11×1.5(支給率)+9万4500円×0.75(加算功労金)=163万0125円イ従業員退職金(昭和60年9月から平成15年9月30日までの在職による。)(ア) 昭和60年9月から平成9年6月ま 4500円×0.75(加算功労金)=163万0125円イ従業員退職金(昭和60年9月から平成15年9月30日までの在職による。)(ア) 昭和60年9月から平成9年6月までの在職に係る退職金669万3750円及びこれに対する催告の日の翌日(訴状送達の日の翌日)である平成15年12月18日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金(計算方法)53万5500円(平成9年6月当時の基本給)×12.5(被告の従業員給与規定(乙第7号証)(以下「本件旧給与規定」という。)による支給率)(本件旧給与規定が適用されることについては後記1(11)参照)=669万3750円(イ) 平成9年7月から同15年9月30日までの在職に係る退職金351万円及びこれに対する催告の日の翌日(訴状送達の日の翌日)である平成15年12月18日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金(計算方法)54万円(平成15年9月当時の基本給)×6.5(被告の退職金支給規定(甲第10号証)(以下「本件退職金支給規定」という。)による支給率)=351万円(支給率についての原告Aの主張)原告Aの従業員としての退職は,被告の再生手続に係る役員の一新に伴う合意退職であり,本件退職金支給規程5条5号所定のその他やむを得ない事由による退職に当たるから,原告Aに支払われるべき従業員退職金の算定の基礎となるべき勤続年数に対応する支給率については,同規定8条2項により,同規定別表のA欄に記載された支給率のうち勤続年数6年に対応する6.5が適用される。 (ウ) 基本給についての原 定の基礎となるべき勤続年数に対応する支給率については,同規定8条2項により,同規定別表のA欄に記載された支給率のうち勤続年数6年に対応する6.5が適用される。 (ウ) 基本給についての原告Aの主張被告は,原告Aに対し,平成9年6月当時及び同15年9月当時,いずれも基本給として上記の額の金銭を支払った。 上記の額は,いずれも,被告の賃金規定(乙第1号証)の定めによる額を超えるものであるが,同規定は,その制定時よりも前に被告に雇用された従業員には適用されない(このような経過措置については同規定上明文の定めはないが,被告においては,その経営の実情から相当であるとして,このような経過措置による運用がされてきた。)。 (2) 原告Bの請求ア取締役退職慰労金40万1625円から支払済みの27万5400円を控除した残額12万6225円及びこれに対する催告の日の翌日(訴状送達の日の翌日)である平成15年12月18日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金(計算方法)7万6500円(退任当時の基本報酬)×3×1.5(支給率)+7万6500円×0.75(加算功労金)=40万1625円イ従業員退職金(平成5年9月から同15年9月30日までの在職による。)(ア) 平成5年9月から平成9年6月までの在職に係る退職金130万0500円及びこれに対する催告の日の翌日(訴状送達の日の翌日)である平成15年12月18日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金(計算方法)43万3500円(平成9年6月当時の基本給)×3(本件旧給与規定による支給率)(本件旧給与規 支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金(計算方法)43万3500円(平成9年6月当時の基本給)×3(本件旧給与規定による支給率)(本件旧給与規定が適用されることについては後記1(11)参照)=130万0500円(イ) 平成9年7月から同15年9月30日までの在職に係る退職金338万円及びこれに対する催告の日の翌日(訴状送達の日の翌日)である平成15年12月18日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金(計算方法)52万円(平成15年9月当時の基本給)×6.5(本件退職金規定による支給率)=338万円(支給率についての原告Bの主張)原告Aの主張と同じ(ウ) 基本給についての原告Bの主張原告Aの主張と同旨 1  争いのない事実(1) 被告は,札幌市内を中心に不動産の管理運営等を業とする株式会社である。 (2)平成15年4月9日,被告は,札幌地方裁判所に対し,再生手続開始の申立てをし,同日,同裁判所は,再生手続開始の決定をした(以下この開始決定に基づく再生手続を「本件再生手続」という。)。その後,同裁判所は,本件再生手続について,再生計画認可の決定及び再生手続終結の決定をし,同年10月にこれらの決定は確定した(以下この再生計画認可の決定の確定を「本件決定の確定」という。)。 (3) 原告Aは,昭和47年6月に被告に従業員として雇用され,その後,同60年9月に従業員退職金を受け取った上で被告の取締役に就任し,平成9年6月27日にこれを退任したが,同10年6月に再び取締役に就任し,同15年10月31日にこれを退任した。 (4 ,その後,同60年9月に従業員退職金を受け取った上で被告の取締役に就任し,平成9年6月27日にこれを退任したが,同10年6月に再び取締役に就任し,同15年10月31日にこれを退任した。 (4) 平成8年12月から同15年9月までの間,被告は,原告Aに対し,従業員としての給与(基本給)として,別紙の「A」の欄の「基本給」の欄のとおりの金員を支払い,併せて,取締役としての報酬(基本報酬)として,別紙の「A」の欄の「役員報酬」の欄のとおりの金員を支払った。 (5) 原告Bは,昭和53年12月に被告に従業員として雇用され,その後,平成5年9月に従業員退職金を受け取った上で被告の取締役に就任し,同9年6月27日にこれを退任したが,同10年6月に再び取締役に就任し,同15年10月31日にこれを退任した。 (6) 平成8年12月から同15年9月までの間,被告は,原告Bに対し,従業員としての給与(基本給)として,別紙の「B」の欄の「基本給」の欄のとおりの金員を支払い,併せて,取締役としての報酬(基本報酬)として,別紙の「B」の欄の「役員報酬」の欄のとおりの金員を支払った。 (7) 平成9年6月27日,被告の株主総会は,原告らに対して被告の定める一定の基準に従い相当額の範囲内で取締役退職慰労金を支給すること,その具体的金額,支払時期,方法等の決定を取締役会に一任するとの決議をした(以下これを「本件総会決議」という。)。 (8) 上記(7)と同じ日,被告の取締役会は,本件総会決議を受けて,原告らに対して被告の定める一定の基準に従い相当額の範囲内で取締役退職慰労金を支給すること,その具体的金額,支払時期,方法等の決定を被告代表者(当時)に一任するとの決議をした(以下これを「本件取締役会決議」という。)。 (9)平成11年4月30日, 取締役退職慰労金を支給すること,その具体的金額,支払時期,方法等の決定を被告代表者(当時)に一任するとの決議をした(以下これを「本件取締役会決議」という。)。 (9)平成11年4月30日,被告は,取締役退職慰労金として,原告Aに対し124万7400円を,原告Bに対し27万5400円を,それぞれ支払った(以下これを「本件各支払」という。)。 (10) 本件再生手続において,原告らの取締役退職慰労金は再生債権としての届出がされず,また,被告代表者(当時)は,これを再生債権についての認否書(民事再生法101条3項)に記載しなかった(以下これを「本件不記載」という。)。 (11) ちなみに,被告の従業員退職金の支給体系は,本件旧給与規定において定められていたところ,これが改正されて,平成9年4月1日以降は,本件退職金規程が施行されたが,なお同年3月31日以前に雇用された従業員については本件旧給与規定の定めが適用されることとされた(本件退職金支給規定の付則1条ないし3条)。 2  争点(1) 被告代表者(当時)は,平成10年12月22日,本件取締役会決議に基づき,原告らに支払うべき取締役退職慰労金の額を決定したか。同日の被告の常務会の決定又は決裁(以下これを「本件決裁等」という。)が,原告らに支払うべき取締役退職慰労金の額の決定に当たるか。(取締役退職慰労金請求の請求原因)ア原告らの主張本件決裁等は,原告らに支払うべき取締役退職慰労金の額の決定に当たる。 イ被告の主張被告代表者(当時)が原告らに支払うべき取締役退職慰労金の額を決定したことは否認する。本件決裁等は,原告らに支払うべき取締役退職慰労金の額の決定に当たらない。 原告らに対する取締役退職慰労金の支給は,本件各支払によりそ 払うべき取締役退職慰労金の額を決定したことは否認する。本件決裁等は,原告らに支払うべき取締役退職慰労金の額の決定に当たらない。 原告らに対する取締役退職慰労金の支給は,本件各支払によりその全額が支払済みとなっている。 (ア) 被告は,株式を公開している株式会社であり,外部監査の経由による会計書類による厳格な情報開示が求められるものであるところ,被告の会計書類においては,原告らに対する取締役退職慰労金については,一貫して本件各支払による金額のみが計上されている。 (イ) 本件決裁等は,金額の算出根拠を説明したものにすぎず,資金繰りにより支払が続けられない場合もあることが想定されていた。 ウ原告らの反論(ア) 被告は,第40期の決算において原告らに対する取締役退職慰労金の額が計上されたことによりこれが確定したと主張するが,これにより確定したのであれば,その後の本件決裁等を行う必要はなかったはずである。 (イ) 被告において,本件各支払に係る金額のみを決算報告書に計上し,これを原告らに支払ったのは,被告の資金繰りが苦しかったために本件決裁等により決められた額の一部を計上し支給したにすぎず,被告のような株式を公開している株式会社においても,経営戦略等から未払金の一部を会計書類に計上しないことはあり得るところであって,会計書類に未払金の計上がないからといって未払債務がないということにはならない。 (ウ) 本件各支払に係る被告の決裁文書の支給説明の欄には,役員報酬のみについて精算支給するとの記載があり,他に弁済すべき債務が残っていることをうかがわせるものとなっている。 (エ) 本件決裁等において取締役退職慰労金の額を定めた取締役は原告らを含めて7人であるところ,被告は,うち4人に対し, ,他に弁済すべき債務が残っていることをうかがわせるものとなっている。 (エ) 本件決裁等において取締役退職慰労金の額を定めた取締役は原告らを含めて7人であるところ,被告は,うち4人に対し,本件決裁等で定められた額の取締役退職慰労金等を支払っている。 (2) 被告代表者(当時)は,本件不記載に際し,原告らの被告に対する取締役退職慰労金債権があることを知っていたか。(取締役退職慰労金請求に係る民事再生法178条による免責の抗弁に対する同法181条1項3号の再抗弁)ア原告らの主張被告代表者(当時)は,本件不記載に際し,原告らの被告に対する取締役退職慰労金債権があることを知っていた。 したがって,被告は,本件決定の確定により原告らに対する取締役退職慰労金債務についての責任を免れることはできない(民事再生法181条1項3号)。 イ被告らの主張仮に原告らの被告に対する取締役退職慰労金債権が本件決裁等によって発生していたとしても,本件決定の確定により,被告は,その責任を免れるのであって(民事再生法178条),原告らの上記の再抗弁の主張は否認ないし争う。 (3) 原告らは,被告の取締役に就任した後も,被告の従業員を兼務していたか。(従業員退職金請求の請求原因)ア原告らの主張原告らは,被告の取締役に就任した後も,退職することなく被告の従業員を兼務し,平成15年9月30日,被告の従業員を退職した。 (ア) 原告らは,被告の取締役に就任した後も,従業員としての業務に従事していた。 (イ) 原告らは,被告の取締役に就任した後も,前記1(4)のとおり被告から従業員としての基本給を受け取り,給与支給明細書を毎月受け取っていた。 (ウ) 本件決裁等において,原告らを (イ) 原告らは,被告の取締役に就任した後も,前記1(4)のとおり被告から従業員としての基本給を受け取り,給与支給明細書を毎月受け取っていた。 (ウ) 本件決裁等において,原告らを含む従業員兼務取締役については,取締役退職慰労金とともに従業員退職金の額も決定されている。 (エ) 被告は,原告らが取締役就任後に受け取っていた従業員の基本給は,被告の賃金規程を大きく上回るものであるから,いわゆるお手盛りによる支給であったと主張するが(後記イ(ウ)b),被告が主張する賃金規程はその施行時に在籍していた従業員に一律に適用することが予定されていなかったものであって,原告らが受け取っていた基本給は他の従業員兼務取締役の基本給と比べて突出して高額であったということもない。 (オ) 原告Aは昭和60年9月に,同Bは平成5年9月に,それぞれ被告から従業員退職金を受け取ったが(前記1(3)(5)),被告において,従業員が取締役に就任した場合及び従業員兼務取締役が取締役を退任した場合にその時点で従業員退職金を前払い的に精算支給するという慣行があり,原告らに対する上記の従業員退職金の支給は,この慣行に基づいてされたものであって,その支給の時点で原告らが被告の従業員を退職したわけではない。 イ被告の主張原告らが被告の従業員を兼務していたことは否認する。 (ア) 原告Aは昭和60年9月に,原告Bは平成5年9月に,それぞれ従業員退職金を被告から受け取り取締役に就任した際に,被告の従業員を退職した。 (イ) 被告の規模の中小企業においては,役員が従業員と同じく雑務を処理することが通常であって,勤務実態は取締役の従業員兼務の有無を判断する直接の基準とはならないし,また,原告Aは,従業員としての労務を提供して 規模の中小企業においては,役員が従業員と同じく雑務を処理することが通常であって,勤務実態は取締役の従業員兼務の有無を判断する直接の基準とはならないし,また,原告Aは,従業員としての労務を提供していなかった。 (ウ) 次の事実から考えると,原告らは,従業員を兼務しない取締役であるとの認識を持っていた。 a 従業員退職金は,退職時において所定の規程に基づき額等を決定し支給されるものであるところ,原告らにおいては,このような手続が執られることなく,取締役退職慰労金と同じ手続で決定されている。 b 原告らが取締役就任後に被告から受け取っていた従業員の基本給の名目の金員の額は,被告の賃金規程(乙第1号証)を大きく上回るものであって,これは,いわゆるお手盛りによる役員報酬であり,賃金と評価することはできない(したがって,原告らが主張する従業員退職金の算定根拠としての基本給の主張も,その前提を欠く。)。 c 原告Aは昭和60年9月に,同Bは平成5年9月に,それぞれ被告から従業員退職金を受け取ったが(前記1(3)(5)),これは,その時点で原告らがいずれも被告の従業員を退職したことを示すものである。 (エ) 原告らが主張する前記ア(オ)の慣行は否認する。 (4)原告らの被告に対する従業員退職金の各請求は,信義則に違反し又は権利濫用に当たるか。(従業員退職金請求の請求原因に対する抗弁その1)ア被告の主張仮に原告らが取締役に就任した後も被告の従業員としての地位を有していたとしても,原告らの被告に対する従業員退職金の各請求は,信義則に違反し又は権利濫用に当たり,許されない。 (ア) 原告らが被告から前記1(4)(6)のとおりの金銭を受け取っていた時期,被告の経営状態は極めて悪く(当 対する従業員退職金の各請求は,信義則に違反し又は権利濫用に当たり,許されない。 (ア) 原告らが被告から前記1(4)(6)のとおりの金銭を受け取っていた時期,被告の経営状態は極めて悪く(当期利益及び当期未処理損失の概数は,それぞれ,平成9年3月期決算でマイナス1億9800万円及び1億9300万円,同10年3月期決算でマイナス8億1300万円及び8億0600万円,同11年3月期決算でマイナス7億9600万円及び10億7300万円,同12年3月期決算で7300万円及びマイナス7億2700万円,同13年3月期決算でマイナス11億95100万円及び18億7700万円,同14年3月期決算でマイナス2億2500万円及び21億0200万円,同15年3月期決算でマイナス84億8000万円及び105億8200万円となっている。),被告は,最終的には約346億円の負債を抱えて,本件再生手続に係る開始の申立てをするに至り,本件再生手続に係る再生計画における再生債権免除率は79パーセントに及んだのであって,もし原告らに対して退職金等の金銭を支払う内容の再生計画案が立案されれば,再生債権者等はこれを是認しなかったであろうことは明らかである。 (イ) 原告らは,被告の経理,収益状況等を何ら把握しておらず,本件再生手続に係る事務に貢献していなかった。 (ウ) 前記(3)イ(イ)のとおりイ原告らの主張原告らの被告に対する従業員退職金の各請求は,信義則に違反し又は権利濫用に当たることは争う。 (ア) 前記(3)ア(エ)と同じ(イ) 原告らは,いずれも,従業員兼務取締役として,主に従業員としての業務に従事していたのであって,取締役ではあったが被告の高度の経営判断に関与できない立場にあったから,被告が本件再生手続に (イ) 原告らは,いずれも,従業員兼務取締役として,主に従業員としての業務に従事していたのであって,取締役ではあったが被告の高度の経営判断に関与できない立場にあったから,被告が本件再生手続に至ったことについて原告らに責任があるということはできない。 (5) 原告らは,被告に対し,本件請求に係る従業員退職金債権を放棄するとの黙示の意思表示をしたか。(従業員退職金請求の請求原因に対する抗弁その2)ア被告の主張仮に原告らが取締役に就任した後も被告の従業員としての地位を有していたとしても,原告らは,遅くとも平成15年7月14日に被告が本件再生手続における再生計画案を提出した時点で,被告に対し,本件請求に係る従業員退職金債権を放棄する旨の黙示の意思表示をした。 (ア) 前記(4)ア(ア)と同じ(イ) 原告らは,本件再生手続における再生計画案等の立案に際して,本件請求に係る従業員退職金債権について何らの主張もしなかった。 イ原告らの主張原告らが被告に対して本件請求に係る従業員退職金債権を放棄するとの黙示の意思表示をしたことは争う。 (ア) 原告らは,いずれも,従前の慣行のとおり,平成15年9月30日に被告の従業員を退職する時点で従業員退職金を受け取ることができると考えていた。 (イ) 原告らは,本件再生手続における再生計画案の立案等の作業から排除されていた。被告の監査役であったCは,被告代表者(当時)らに対し,原告らの退職金を支払う必要があると説明し,被告は,原告らに対する退職金の支払義務を認識しながら,上記の再生計画案等の立案作業に原告らを関与させなかった。 (ウ) よって,原告らが再生計画案等の立案に際して本件請求に係る従業員退職金債権について何らの主張もせず 支払義務を認識しながら,上記の再生計画案等の立案作業に原告らを関与させなかった。 (ウ) よって,原告らが再生計画案等の立案に際して本件請求に係る従業員退職金債権について何らの主張もせず,これが再生計画案等に盛り込まれなかったとしても,原告らが当該債権について黙示の放棄をしたということはできない。 第3  判断 1  争点(1)(被告代表者(当時)による取締役退職慰労金の額の決定の有無)について(1) 事実関係甲第1ないし第3号証,第4号証の1ないし3,第5,第6号証,第16号証の1,2,第17号証,乙第2号証の1ないし7,第3ないし第6号証,証人Cの証言,原告ら各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 ア被告においては,本件総会決議及び本件取締役会決議の前の決算期である第39期(平成8年4月1日から同9年3月31日)の決算報告書(乙第2号証の1)中の損益計算書に,当期利益がマイナス1億9798万5767円,当期未処分利益がマイナス1億9344万8524円,特別損失としての役員退職金が0円との記載がされた。(乙第2号証の1及び弁論の全趣旨)イ本件総会決議は,原告ら及び原告らと同じく総会後に被告の取締役を退任するD,E及びFの取締役退職慰労金について,被告が定める基準に従い,その具体的金額,支払時期,方法等の決定を取締役会に一任するというものであった。(甲第1号証)ウ本件取締役会決議は,上記アと同じく,原告らを含む5人の取締役の退職慰労金について,被告が定める基準に従い,その具体的金額,支払時期,方法等の決定を被告代表者(当時)に一任するというものであった。(乙第6号証)エ被告においては,本件総会決議及び本件取締役会決議の時期を含む決算期である第40期( その具体的金額,支払時期,方法等の決定を被告代表者(当時)に一任するというものであった。(乙第6号証)エ被告においては,本件総会決議及び本件取締役会決議の時期を含む決算期である第40期(平成9年4月1日から同10年3月31日)の決算報告書(乙第2号証の2)中の損益計算書に,当期利益がマイナス8億1324万3282円,当期未処分利益がマイナス8億0669万1806円との記載がされ,併せて,平成10年3月における未払金の一覧表(乙第3号証)において,原告らを含む取締役の退職慰労金について,次のとおりの額(いずれも取締役としての報酬の名目で支払っていた月額のみを基礎額として,これに被告の役員退職慰労金支給規定(甲第3号証)所定の支給率(取締役在任年数1年当たり1.5)を乗じた額から2割を控除した額であり,原告らについては本件各支払に係る金額と一致する。)が40期に新たに増加し,減少しないまま同額が期末残高とされた。(甲第3号証,第16号証の1,2,乙第2号証の2,第3号証,第5号証及び弁論の全趣旨)(ア) 原告A 124万7400円(イ) 原告B 27万5400円(ウ) E 290万円(エ) F 51万3000円オ上記エの第40期の決算期の後,平成10年12月21日,原告Aは,G及びHに対する取締役退職慰労金の支払をするに先立ち,被告の総務部長として,これら両名及び原告ら,E,F及びIの取締役退職慰労金について,その未払分の金額の確定,支給計画の決定についての伺いの文書(甲第4号証の1)を,未払額として各人につき取締役の報酬の名目で支払う月額と従業員の基本給の名目で支払う月額を合算した額を基礎額としてこれに被告の役員退職慰労金支給規定(甲第3号証)所定の支給率(取締役在任年数1年当たり 払額として各人につき取締役の報酬の名目で支払う月額と従業員の基本給の名目で支払う月額を合算した額を基礎額としてこれに被告の役員退職慰労金支給規定(甲第3号証)所定の支給率(取締役在任年数1年当たり1.5)及び加算功労金(ただし原告ら及びE及びFのみについて基礎額に一律0.75を乗じた額)を併せた額を計算式とともに記載した書面(甲第4号証の2,3)を添付して,決裁として上げたところ,その決裁の過程で,決裁権者らが,「被告の現況から見て取締役の連帯責任により慰労金は相殺されて当然であると思うが,そうすれば既に退任した役員にも波及させなければ問題が生じることから,今回はやむを得ない処置としたい,ただし資金繰りの関係から今月はHとGの両名分を支払い,3月末までにできればF,I両名分を支払うこととし,なお他の者については当然支払うべきものであるが現職であることを考慮して被告代表者に一任したい」(相談役意見)「未払額については添付された書面のとおりで確定とし,相談役意見のとおり支払時期は資金繰りに合わせて決定したい」(常務取締役意見,J経理部長賛成)という旨の意見を書き加えた上で,被告代表者(当時)が決裁の署名をし,翌22日に常務会としての決裁を終えた(これが本件決裁等に当たる。)。(甲第3号証,第4号証の1ないし3,原告A本人尋問の結果及び弁論の全趣旨)(ア) 原告A 1086万7000円(イ) 原告B 267万7500円(ウ) E 2325万円(エ) F 470万2500円(オ) I 980万円(カ) G 600万円(キ) H 150万円(ク) 合計  5879万7000円カ被告においては,本件各決裁等の時期を含む決算期である第41期(平成1 円(カ) G 600万円(キ) H 150万円(ク) 合計  5879万7000円カ被告においては,本件各決裁等の時期を含む決算期である第41期(平成10年4月1日から同11年3月31日)の決算報告書(乙第2号証の3)中の損益計算書に,当期損失が7億9643万6420円,当期未処理損失が10億7312万8226円,特別損失のうち役員退職金が750万円との記載がされた。(乙第2号証の3及び弁論の全趣旨)キ平成11年3月31日,被告の経理部財務課は,会計上,上記エの取締役退職慰労金の未払金として計上した合計493万5800円について,これらの取締役は現職であることから,第40期発生分の損失を抑えるために,未払金としての処理を取り消して雑収入に繰り入れたい,これらの取締役については退職時に本件決裁等に係る退職慰労金について計上したい,Fの取締役退職慰労金を418万9500円として新たに計上したいとの伺いを文書(甲第16号証の1,2)で決裁に上げたところ,その決裁過程において,J経理部長(被告の経営の立て直しのために株式会社北洋銀行から被告の経理部長に就任していた。)は,「取締役退職慰労金については被告代表者(当時)と当時の常務取締役の間の合意により上記エのとおりその額を確定し,第40期の有価証券報告書に未払金として記載したものであって,これを資金繰りとの関係で雑益に戻すことは有価証券報告書の性質から認められない」,「本件決裁等は,上記エの未払金の処理について一切触れられていないことから,支払額を認めたものではなく,単に退職慰労金の算出根拠を説明したものと理解される」「資金繰りは厳しいが上記エの額であれば総額500万円程度であるから第31期の支払として本件を決着させたい」との意見を書面( 認めたものではなく,単に退職慰労金の算出根拠を説明したものと理解される」「資金繰りは厳しいが上記エの額であれば総額500万円程度であるから第31期の支払として本件を決着させたい」との意見を書面(乙第5号証)で付し,併せて,原告らに対しては上記エの金額を支払うことが指示された。(甲第16号証の1,2,乙第5号証)ク平成11年4月13日,本件各支払に際し,被告においては,上記エと同じく,取締役としての報酬の名目で支払っていた月額のみを基礎額として,これに被告の役員退職慰労金支給規定(甲第3号証)所定の支給率(取締役在任年数1年当たり1.5)を乗じた額から2割を控除した額(上記エのとおり本件各支払に係る金額と一致する。)を支給する,支給説明として役員報酬額のみについて清算支給するとの伺いの文書(甲第5,第6号証)が決裁に上げられ,総務部長,J経理部長の決裁を経て,被告代表者(当時)がこれに決裁の署名をした。(甲第3号証,第5,第6号証及び弁論の全趣旨)ケ被告においては,本件各支払の時期を含む決算期である第42期(平成11年4月1日から同12年3月31日)の決算報告書(乙第2号証の4)中の損益計算書に,当期利益が7307万6020円と利益に転じ,当期未処理損失が7億2650万5206円との記載がされ,併せて,平成12年3月における未払金の一覧表(乙第4号証)において,原告らを含む取締役の退職慰労金について,上記エと同じ額が,それぞれ,第41期の期末残高として記載されるとともに,第42期において同額減少し,同期末残高はないとの記載がされた。(乙第2号証の4,第4号証及び弁論の全趣旨)コ被告においては,その第43期(平成12年4月1日から同13年3月31日)の決算報告において再び当期利益が赤字に戻り,その後利益に転じ された。(乙第2号証の4,第4号証及び弁論の全趣旨)コ被告においては,その第43期(平成12年4月1日から同13年3月31日)の決算報告において再び当期利益が赤字に戻り,その後利益に転じることなく,本件再生手続に至る前の第45期(平成14年4月1日から同15年3月31日)にはその当期未処理損失が21億0203万4358円に膨れ上がるに至った。(乙第2号証の5ないし7及び弁論の全趣旨)サ被告の第43期ないし第45期(平成12年4月1日から同15年3月31日)の各決算報告書中には,原告らの取締役退職慰労金の未払分があることをうかがわせるような記載は見当たらない。(乙第2号証の5ないし7)(2) 前記(1)オで認定した事実によれば,本件決裁等においては,取締役の報酬の名目で支払う月額と従業員の基本給の名目で支払う月額を合算した額に所定の支給率を乗じて加算功労金を加えた額を前提に,未払額の確定と支給計画について決裁が上げられたが,決裁過程で付された意見により,原告らに対する支払の実施については被告の資金繰りを見ながら進めていくことで被告代表者(当時)に一任することとなったというのであり,これに,前記(1)で認定したように,本件総会決議及び本件取締役会決議の当時から本件決裁等の時期を経て本件再生手続の申立てに至るまでの間,被告の経常損失が膨大な額に膨らみその経営や資金繰りが極めて苦しい状況にあったこと,本件総会決議及び本件取締役会決議において取締役退職慰労金の額のみならずその支払時期や方法等の決定についても被告代表者(当時)に一任されるに至ったこと,これらの決議の後の被告の最初の決算報告において,本件決裁等に先立ち,本件各支払と同じ額(取締役としての報酬の名目で支払っていた月額に所定の支給率を乗じた額から2割を控除した 任されるに至ったこと,これらの決議の後の被告の最初の決算報告において,本件決裁等に先立ち,本件各支払と同じ額(取締役としての報酬の名目で支払っていた月額に所定の支給率を乗じた額から2割を控除した額)の取締役退職慰労金が未払金として計上され,その後,本件決裁等を経た後も,このような会計上の取扱いに変更がないまま,決算報告上は本件各支払により原告らに対する取締役退職慰労金の支払が完了したとされていること,本件決裁等の後の最初の決算期における取締役退職慰労金の会計処理上の決裁において,経理部長が,本件決裁等について,会計上未払金としての処理が想定されていなかったことから支払額を決めたものではなく単に金額の算出根拠を説明したにすぎないものであったと理解するほかない旨の指摘をしていることを併せて考えると,本件決裁等は,いまだ本件取締役会決議等による一任を受けて原告らに対する取締役退職慰労金の額とその支払時期等を決めたものではなく,あくまでも,今後の資金繰りを踏まえて支払う場合に想定される一応の金額の見込みを算出したものにすぎないものであって,その金額について支払の具体的な目処は立っておらず,これを実際に支払えるか否かはその後の被告の資金繰りいかんによるものであったことが認められる(そして,前記(1)で認定した事実によれば,本件各支払決定に際し,被告代表者(当時)が,本件支払決定により原告らに対する取締役退職慰労金の支給を完了させるとの意思決定をしたことが推認される。)。ちなみに,原告A本人尋問の結果によれば,被告においては,株主総会決議において,原告らの取締役退職慰労金についての報告が求められた場合には,決算報告書の記載どおりの報告をすることを想定していたことが認められるところ,このような事実は,上記の認定判断に符合するものであるということ らの取締役退職慰労金についての報告が求められた場合には,決算報告書の記載どおりの報告をすることを想定していたことが認められるところ,このような事実は,上記の認定判断に符合するものであるということができる。 なお,原告らは,本件決裁等で原告ら等に対する取締役退職慰労金の額が被告の意思決定として定められたのであって,資金繰り及び経営戦略上本件各支払に係る額のみを会計書類に計上し支給した旨を主張するが,上記で判示したとおり,本件決裁等が,支給の具体的な見通しがない段階での額の積算にすぎない以上,これを支給についての被告の意思決定であると認めることはできない。 また,原告らは,本件各支払に係る被告の決裁文書(甲第5,第6号証)(上記ク参照)の支給説明の欄が他に原告らに支払うべき債務が残っていることをうかがわせるものであると主張するが,甲第5,第6号証によれば,当該記載は,「役員報酬のみについて清算支給する」というものであって,本件決裁等の経緯があるため上記ケでみたような支給額の算出根拠を記載したにすぎず,このような記載から他に原告らに対する債務があることを推認することはできない。さらに,原告らは,本件決裁等による額を支給された取締役が4人いることを主張するが,これらの4人(G,H,F及びI)については,いずれも,会計書類に計上した上で支払われたものであって(乙第3,第4号証及び弁論の全趣旨により認められる。),原告らと同列に論じることはできない。 よって,その余の点(争点(2))について判断するまでもなく,原告らの取締役退職慰労金請求は,いずれも理由がない。 2  争点(3)(原告らの従業員性の有無)について(1) 事実関係ア甲第11号証,第13号証,第17号証,乙第9ないし第11号証,証人Cの証言,原告A本人尋 ,いずれも理由がない。 2  争点(3)(原告らの従業員性の有無)について(1) 事実関係ア甲第11号証,第13号証,第17号証,乙第9ないし第11号証,証人Cの証言,原告A本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,昭和47年6月に被告に雇用されてから,経理部に配属されて経理事務を担当し,昭和60年9月に取締役に就任した際には経理部長となり,引き続き経理部の事務を担当し,また,同10年6月に再び取締役に就任した際には総務部長(同13年6月には経理部長兼務)となり,総務部及び経理部の事務を担当していたこと,これらの経理部及び総務部の事務は被告の定款等の定めにより取締役が従事すべきものではなく代表者の指揮命令の系統下で行われるものであること,被告は,原告Aが取締役に就任した後も,同人の雇用保険料を支払っていたことが認められる。 イ甲第12号証,第14号証,第15号証の1ないし3,第17号証,乙第9ないし第11号証,Cの証言,原告B本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば,原告Bは,昭和53年12月に被告に雇用されてから,被告が経営するススキノグリーンホテルの業務を担当し,その後本社のホテル事業部で勤務した後,平成5年9月に取締役に就任した際にはホテル営業部長となって引き続き本社のホテル営業部の事務を担当し,その後,被告が経営するグリーンホテル札幌の総支配人となり,更にその後本社のホテル事業部長を兼務し,平成10年6月に再び取締役に就任した際にはホテル営業企画部長(同13年7月にはホテル事業部長)となり,本社のホテル事業部の事務を担当していたこと,これらのホテル事業部等の事務は被告の定款等の定めにより取締役が従事すべきものではなく代表者の指揮命令の系統下で行われるものであること,被告は,原告Aが取締役に就任し 業部の事務を担当していたこと,これらのホテル事業部等の事務は被告の定款等の定めにより取締役が従事すべきものではなく代表者の指揮命令の系統下で行われるものであること,被告は,原告Aが取締役に就任した後も,同人の雇用保険料を支払っていたことが認められる。 (2) 前記(1)で認定した事実及び前記第2の1(4)(6)の事実(原告らが従業員としての基本給を受け取っていたこと)によれば,原告らは,いずれも,被告の取締役に就任してから後も,単に定款に基づいた取締役としての業務に従事するだけでなく,被告代表者の指揮監督の下で従前からの従業員としての業務に従事していたということができるから,原告らは被告の従業員を兼ねた取締役であった(少なくとも従業員としての業務に従事していた)と認められる。 3  争点(5)(従業員退職金債権を放棄するとの黙示の意思表示)について(1) 事実関係ア前記1(1)で認定した事実及び弁論の全趣旨によれば,被告においては,従業員を兼務しているとされる取締役の退職金については,取締役退職慰労金の支給において必要な法定の手続(株主総会決議)を経て支給され,決算書類上も未払金の役員退職金という費目のみに計上されることとなっており,その額も従業員としての勤務が考慮される場合があって,このような支給の手続とは別個に従業員としての退職金の支給の手続が執られないという慣行があったことが認められる。 イ乙第1号証,第7号証,証人Cの証言,原告A本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば,被告においては,経営状況の悪化の中で,従業員に支払う退職金の額を抑制等するため,平成8年4月1日から新しい賃金規程(乙第1号証)を施行したこと,同規程(ただし平成14年6月1日施行の時点のもの)によれば従業員に支払うべき基本給の月額は 業員に支払う退職金の額を抑制等するため,平成8年4月1日から新しい賃金規程(乙第1号証)を施行したこと,同規程(ただし平成14年6月1日施行の時点のもの)によれば従業員に支払うべき基本給の月額は最高額でも29万0100円であること,同規程は原告らにも適用されるべきことが認められる。なお,原告らは,上記の新しい賃金規程は原告らを含む施行前からの従業員には適用されないと主張し,証人Cの証言及び原告A本人尋問の結果中にも同旨の供述部分等があるが,乙第1号証によると,同規程にはこのような主張や供述部分に添うような経過規定が置かれていないことが認められ(一方で,甲第10号証によると,従業員退職金の支給体系については,本件退職金支給規程にこのような経過措置の定めが置かれている。),これに,原告らのように同規程が想定しない高額の従業員としての基本給を受け取っていた者は数人程度しかいなかったこと(原告A本人尋問の結果により認められる。),退職金の額の抑制という同規程が設けられた経緯によれば施行前から雇用されている従業員にも同規程を適用すべき必要があったといえることから考えれば,原告らには適用がなかったとする上記の供述部分等を採用することはできない。 したがって,前記第2の1(4)(6)でみた被告の原告らに対する従業員の基本給の名目としての金員の支払は,本来原告らに適用されるべき賃金規程により算出される額を大きく上回るものであったということができる。 ウ原告A及び同B各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば,本件再生手続において,原告らは当初は被告の取締役の地位にあったところ,被告においては,再生手続外での弁済が求められる原告らの従業員退職金があればその額を考慮して再生計画の立案に当たる必要があり,また,他の取締役の退職慰労金につい は被告の取締役の地位にあったところ,被告においては,再生手続外での弁済が求められる原告らの従業員退職金があればその額を考慮して再生計画の立案に当たる必要があり,また,他の取締役の退職慰労金についてこれを再生債権として届けるか否かが話題になっていたにもかかわらず,原告らは,被告代表者(当時)や本件再生手続に係る再生申立手続の代理人であった被告訴訟代理人弁護士らに対し,自らの取締役退職慰労金や従業員退職金について一切言及しなかったことが認められる。 (2) 前記(1)で認定した事実及び前記第2の1(3)ないし(6)の事実によれば,原告らは,被告の取締役に就任する際に,従業員退職金の支給を受けていること,取締役就任後は,従業員の基本給の名目で賃金規程上支給されるべき額を超える金銭の支給を受けていたこと,被告においては,従業員兼務取締役の退職金は,取締役退職慰労金について必要な法定の手続を執った上で取締役退職慰労金として支給されることが想定され,従業員退職金についてこれとは別個の支給の手続を執ることは予定されていなかったこと,本件再生手続において原告らが自己の従業員退職金の扱いについて何ら言及しなかったというのであって,これらのことから考えると,原告らは,いずれも,本件再生手続において,被告に対し,従業員退職金債権を放棄する旨の黙示の意思表示をしたと認められるのであって,かつ,このような放棄が原告らの自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在していたということができる。 なお,原告らは,本件再生手続の際に,被告から退職金を受け取ることができると考えていた,被告代表者(当時)らが本件再生手続における再生計画案等の立案に関与させてもらえなかったと主張し,また,その旨を本人尋問において供述している。しかし,本 ら退職金を受け取ることができると考えていた,被告代表者(当時)らが本件再生手続における再生計画案等の立案に関与させてもらえなかったと主張し,また,その旨を本人尋問において供述している。しかし,本件再生手続に至るまで悪化した被告の経営状況,財務状況(前記1(1)カ,ケ及びコで認定したとおりである。)の下において,原告らは,被告の取締役であったのであるから,自分らへの従業員退職金が支給されると考えていたのであれば,再生手続開始後の労働債権すなわち共益債権として(民事再生法119条2号)本件再生手続によらずに支払われるべき原告らの従業員退職金債権の額や支払方法について被告代表者(当時)らに少なくとも申入れをし,被告においてこのような申入れをどのように取り扱うかを視野に入れて再生計画案等の検討が進められるべきものであったところ,原告らは,このような申入れさえせずに,単に本件再生計画等の立案に関与させてもらえなかった,関与する機会がなかった,内心において退職金の支給を受けることができると思っていたというにとどまるのであるから,このようなことによっては,原告らが従業員退職金債権を放棄するとの黙示の意思表示をしたこと及びこれが原告らの自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在していることを覆すに足りないといわざるを得ない。 よって,原告らの従業員退職金請求は,その余の点(争点(4),基本給,支給率等)について判断するまでもなく,いずれも理由がない。 4  以上によれば,原告らの請求はいずれも理由がない。 札幌地方裁判所民事第2部裁判官氏本厚司 事第2部 裁判官 氏本厚司

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