平成23(ワ)39771 不正競争行為差止請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年10月16日 東京地方裁判所
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平成26年10月16日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(ワ)第39771号不正競争行為差止請求事件口頭弁論の終結の日平成26年9月9日判決アメリカ合衆国ペンシルベニア州<以下略>(日本における事務所東京都港区<以下略>)原告ノグチメディカルリサーチインスティチュート(日本における名称米国財団法人野口医学研究所)同訴訟代理人弁護士大谷隼夫松阪健治無津呂 幸 憲宮口裕幸千葉県鎌ケ谷市<以下略>被告 A 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,1800万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告に対し,被告が原告の周知な営業表示に類似する営業表示を使用して原告の営業と混同を生じさせ,また,被告の上記営業表示の使用が訴訟上の和解で定めた義務に違反すると主張して,不当利得返還請求 権又は債務不履行による損害賠償請求権に基づき,被告が受領した協賛金等の額に相当する1800万円の損失又は損害及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 原告は,昭和58年6月に,医学者野口英世 の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 原告は,昭和58年6月に,医学者野口英世の業績を記念し,日米医学交流の促進を目的に掲げ,アメリカ合衆国ペンシルベニア州に設立された法人であり,日本国内及び国外において,「米国財団法人野口医学研究所」との表示(以下「原告表示」という。)を使用して,医学交流活動,日本語により受診可能な人間ドック,医療健康相談サービス等を行い,医師,医学生,看護師の医学留学のサポートをするために,留学の説明会,留学先の紹介等も行っている。 被告は,米国財団法人野口英世記念財団(以下「本件財団」という。)の理事長を務めていた者で,かつ,野口グローバルライフ株式会社(以下「本件会社」という。)の取締役であった者である(甲3,4)。 (2) 原告は,平成14年12月6日,当裁判所に対し,本件財団を被告として,「米国財団法人野口英世記念財団」との表示の使用の差止めを求める訴え(平成14年(ワ)第26961号事件。以下「前訴」という。)を提起した。 本件前訴において,平成16年8月24日,原告と本件財団との間で,以下の内容を含む訴訟上の和解(以下「本件和解」という。甲4)が成立した。 ア本件財団が「米国財団法人野口英世記念財団」の名称によって日米医学交流事業を行う場合は,その時期,場所,実施内容を原告に事前に連絡し,協議した上でこれを行う。原告と本件財団は,本和解成立後相互に情報の交換等を行い,日米医学交流の促進のために協力し,信頼関係を築くこと に努力する。(2項)イ本件財団は,株式会社野口メドライン(以下「野口メドライン」という。)をして,平成16年12月20日限り,野口メド 流の促進のために協力し,信頼関係を築くこと に努力する。(2項)イ本件財団は,株式会社野口メドライン(以下「野口メドライン」という。)をして,平成16年12月20日限り,野口メドラインのホームページを別紙「野口メドラインのホームページの変更」記載のとおり修正させる。(4項)ウ本件財団は,野口メドラインをして,平成18年6月末日限り,野口メディカルホットラインの会員証につき,野口英世の肖像の写真及び「業務提携:米国財団法人野口英世記念財団」「提供:米国財団法人野口英世記念財団」の文字を削除する。(5項(1))エ本件財団は,平成21年6月末日までの間に,野口メドラインが上記イ,ウについて違反をした場合には,違反の日から違反が解消される日まで1日につき2万円の違約金を支払い,原告に上記違約金を上回る損害が生じた場合には,上回る損害を付加して支払う。(6項)(3) 本件財団は,平成18年10月30日ころの理事会の解散決議により法人格を失った(甲6)。 2 争点(1) 不正競争に基づく不当利得返還請求権の成否ア原告表示は原告の営業の表示として周知であるかイ本件財団の表示は原告表示と同一又は類似であるかウ被告の行為は原告の営業と混同を生じさせるものであるかエ被告が利益を受け,そのために原告に損失を及ぼしたか(2) 本件和解に定めた義務の違反に基づく損害賠償請求権の成否 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(不正競争に基づく不当利得返還請求権の成否)について(原告の主張)ア原告表示は原告の営業の表示として周知であるか 原告は,原告表示を用いて,医学交流セミナーを18回に亘って開催するなどしたほか,24時間対応可能な医療健康相談サービスを展開し ア原告表示は原告の営業の表示として周知であるか 原告は,原告表示を用いて,医学交流セミナーを18回に亘って開催するなどしたほか,24時間対応可能な医療健康相談サービスを展開して原告表示とともに全国紙を含む新聞等に掲載され,また,原告の品質推奨認定事業マークの付された健康食品やサプリメントが全国で販売され雑誌や新聞に広告が掲載されていることなどからすれば,原告表示は,遅くとも平成14年ころには,原告の営業を表示するものとして,全国の一般消費者の間に広く認識されていた。 イ本件財団の表示は原告表示と同一又は類似であるか原告表示と本件財団の表示は,「米国」「法人」「野口」「財団」といった,類否判断の上で重要と考えられる部分が共通しており,外観,観念,称呼いずれにおいても類似する。 ウ被告の行為は原告の営業と混同を生じさせるものであるか原告表示と類似し,既に法人格が消滅し存在しなくなった本件財団の表示を使用して国際医学貢献活動への支援名目で協賛金等を募ったりする被告の行為は,需要者において,原告と被告が同一の営業主体であるか,又は原告と被告との間に資本関係若しくは系列関係など密接な関係が存在すると誤信させ,原告の営業と被告の営業を混同させるおそれが強い。現に,本件財団や本件会社が原告の関連法人であると思い込み,原告に問合せをした者がいる。 エ被告が利益を受け,そのために原告に損失を及ぼしたか被告は,本件会社と共謀し,国際医学貢献活動への支援名目で,本件財団として,有限会社いとう商事,有限会社環境技研,戸倉工業株式会社,株式会社野生薬物研究開発センター,株式会社バイオテック,本件会社,株式会社野口メデックス,野口メディカルアシスタンス,株式会社サイバーネットソリューションズから,本件財団の表示又 倉工業株式会社,株式会社野生薬物研究開発センター,株式会社バイオテック,本件会社,株式会社野口メデックス,野口メディカルアシスタンス,株式会社サイバーネットソリューションズから,本件財団の表示又は別紙標章目録記載のロゴマーク(以下「本件ロゴマーク」という。)の使用を許可することの 対価として,協賛金等の名目で,1社当たり少なくとも200万円を受領した。原告は,品質推奨等のために原告表示等の使用を許可する場合には,その対価として,1社当たり220万円を受け取っているから,被告は法律上の原因なくして合計1800万円の利益を受け,そのために原告にこれに相当する損失を及ぼしている。 (被告の主張)本件財団の表示のうち,「米国」「法人」「財団」は,アメリカ合衆国で非営利法人の設立許可を得た法人であれば,これらの表示をするのは当然であるし,野口英世博士の偉業を顕彰する団体又は法人は世界中に多数存在するのであって,類似性や混同行為に関する原告の主張には理由がない。 被告は,本件財団の法人格が消滅した後は,本件財団の収益活動に全く関与していないのであって,本件財団の表示及び本件ロゴマークの使用を継続して協賛金等を募ったなどの事実は一切ない。 (2) 争点(2)(本件和解に定めた義務の違反に基づく損害賠償請求権の成否)について(原告の主張)ア本件和解は,その文言上は,本件財団及び野口メドラインのみが当事者及び客体となっているが,被告個人が行う同様の行為や野口メドライン以外の第三者を通じて行われる同様の行為が本件和解条項に抵触しないとすれば全く意味がなく,原告と被告との間では,被告自らも,野口メドライン以外の第三者を通じて同様の行為を行わないことが当然の前提となっていた。 イ前記(1)エ記載 が本件和解条項に抵触しないとすれば全く意味がなく,原告と被告との間では,被告自らも,野口メドライン以外の第三者を通じて同様の行為を行わないことが当然の前提となっていた。 イ前記(1)エ記載のとおり,被告は,本件和解に反して,本件会社等をして本件ロゴマーク等を表示させ,本件財団の表示等を用いて活動を継続し,本件財団の代表者として,3万円から200万円の協賛金等を受領し,これにより,原告は,その信用を毀損され,合計1800万円の得べかりし 利益を失った。 (被告の主張)本件和解において,本件財団の表示及び本件ロゴマークの使用について,本件財団が原告の許可を得たり,事前に原告に連絡をしたりする等の合意をした事実はない。また,本件財団が本件和解においてホームページ上から本件ロゴマーク等を削除等させることに応じた第三者とは,文言上明らかなとおり,野口メドラインに限定されている。したがって,本件和解に定めた義務の違反はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(不正競争に基づく不当利得返還請求権の成否)について本件の事案に鑑み,本件財団の表示は原告表示と同一又は類似であるか及び被告の行為は原告の営業と混同を生じさせるものであるかについて判断する。 (1) 原告表示は,団体の種類を表す「米国財団法人」の部分を除くと,「野口」と「医学研究所」とで構成されている。このうち,「野口」の部分は,医学者野口英世に由来する氏であるが,日本国内では一般的な氏を表すから,当然に医学者野口英世を想起させるものではない。また,「医学研究所」は,学問分野としての医学に関連する研究を行う機関を意味するものであると考えられる。そうであるから,これらを組み合わせた原告表示は,医療に関係する団体の名称として特別顕著なものとはいえない。 所」は,学問分野としての医学に関連する研究を行う機関を意味するものであると考えられる。そうであるから,これらを組み合わせた原告表示は,医療に関係する団体の名称として特別顕著なものとはいえない。 本件財団の表示は,団体の種類を表す「米国財団法人」の部分を除くと,「野口英世」と「記念財団」とで構成されている。このうち,「野口英世」の部分は,医学者野口英世に由来する氏名であり,医学者野口英世を想起させる。また,「記念財団」の部分は,特定の者の業績等を記念する財団に付される一般的な名称であると考えられる。 そうすると,団体の種類を表す「米国財団法人」は,特定の営業を識別する機能がないから,原告表示と本件財団の表示との類否を判断するに当たっ ては,原告表示のうちの「野口医学研究所」と本件財団の表示のうちの「野口英世記念財団」とを対比するのが相当である。そして,原告表示のうちの「野口」の部分が医学者野口英世を想起させることがあるとしても,これに続く「医学研究所」の部分と「記念財団」の部分は,外観,観念,称呼が異なるから,本件財団の表示は,原告表示に類似しないのであって,取引者又は需要者において,原告の営業と混同を生じさせるおそれがあると認めることはできない。 (2) 原告は,現実に原告と本件財団を混同した事例がある旨主張するが,本件会社を原告と思い込んで問合せをしてきた者がいる旨のメモ(甲48)は,本件財団の表示が原告表示に類似することや,本件財団の表示の使用により原告の営業と混同を生じさせることの根拠とはならないし,本件財団がバックにある会社について電話をしたが通じないので原告に電話をかけてきたという者がいる旨のメモ(甲47)は,仮にその事実が認められるとしても,原告表示が医療関係の団体の名称として特別顕著なものとはいえ クにある会社について電話をしたが通じないので原告に電話をかけてきたという者がいる旨のメモ(甲47)は,仮にその事実が認められるとしても,原告表示が医療関係の団体の名称として特別顕著なものとはいえないことなどからすれば,これをもって,本件財団の表示が原告表示に類似して,原告の営業と混同を生じさせるおそれがあると認めるには足りない。原告の主張は,採用することができない。 (3) したがって,不正競争に基づく原告の請求は,理由がない。 2 争点(2)(本件和解に定めた義務の違反に基づく損害賠償請求権の成否)について(1) 原告の主張によれば,被告の受領した協賛金等が原告の得べかりし利益として原告の損害となるためには,本件財団の表示が原告表示に類似し,原告の営業と混同を生じさせたことが前提となっていると考えられるが,前記1のとおり,本件財団の表示が原告表示に類似し,原告の営業と混同を生じさせるおそれがあると認めることはできないし,本件財団の表示の使用により原告の信用が毀損されると認めることもできないから,仮に被告に本件和 解で定めた義務の違反があったとしても,これにより原告が主張するような損害が発生したと認めることはできない。 (2) なお,仮に原告がロゴマークに係る損害の発生を主張する趣旨であると考えたとしても,証拠(甲53の1)によれば,原告が使用するロゴマークは,大円とその右側上部の十字の図形とからなり,大円の内部に経線緯線様の線を配置し,中央に「Noguchi」,その下に「HumanDryDock」,「NingenDock」の英文字を横書きで配置し,円の周囲に「INTERNATIONALHEALTH & CLINIC」,「NoguchiMedicalResearchInstitute」の英文字 nDock」の英文字を横書きで配置し,円の周囲に「INTERNATIONALHEALTH & CLINIC」,「NoguchiMedicalResearchInstitute」の英文字を周囲に沿って配置したものであることが認められるところ,本件ロゴマークがこれに類似するとは認められないから,被告が本件ロゴマークを使用していたとしても,被告の受領した協賛金等が原告の得べかりし利益として原告の損害となるとは認められない。 (3) したがって,本件和解に定めた義務の違反に基づく原告の請求は,理由がない。 3 よって,原告の請求は,いずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判官藤田壮 裁判官宇野遥子 裁判長裁判官高野輝久は,差支えのため署名押印することができない。 裁判官藤田壮

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