【DRY-RUN】主 文 一 原告の請求を棄却する。 二 訴訟費用は原告の負担とする。 事 実 第一 当事者の求めた裁判 一 請求の趣旨 1 被告は「香炉園」の商号を使用してお茶の売買をしてはなら
主文 一原告の請求を棄却する。 二訴訟費用は原告の負担とする。 事実 第一当事者の求めた裁判一請求の趣旨 1 被告は「香炉園」の商号を使用してお茶の売買をしてはならない。 2 被告は「香炉園」と記載した店頭の看板を除去し、取引上使用する一切の文書に「香炉園」の名称を使用してはならない。 二請求の趣旨に対する答弁主文と同旨第二当事者の主張一請求原因 1 原告は、お茶の卸売、小売等を目的として、昭和四二年九月一八日、本店を金沢市<以下略>に置き、「株式会社香炉園」という商号で設立登記された会社である。 2 原告の代表取締役であるA(以下、「A」という。)と原告のもと取締役であつた被告は夫婦であるが、昭和四九年九月から別居状態にあるところ、被告は、昭和五〇年四月二一日、金沢地方裁判所においてAの職務の執行停止及び被告を職務代行者として選任する旨の仮処分決定を得、昭和五二年四月、原告の商品等一切を金沢市<以下略>の被告住所地に移動し、同所で店舗を開設して原告の営業を継続していた。 しかし、その後、右仮処分決定については、原告らの異議申立てに基づき昭和五三年八月四日金沢地方裁判所においてこれを取り消す旨の判決がなされ、同判決に対する被告の控訴、上告はいずれも棄却された(昭和五四年三月一四日控訴棄却、同年一一月一六日上告棄却。)。 3 しかるに、被告は、右仮処分の取消判決後も依然として、前記被告の住所地において「お茶の香炉園」なる商号を使用してお茶の卸売、小売等の営業を続けており、「お茶の香炉園」の看板を掲げ、また、一切の文書に「お茶の香炉園」の商号を使用して取引をしているものである。 4 被告の右行為は、不正競争の目的をもつて原告の登記した商号(株式会社香炉園)と類似の商号(お茶の香炉園)を使用するもので 、一切の文書に「お茶の香炉園」の商号を使用して取引をしているものである。 4 被告の右行為は、不正競争の目的をもつて原告の登記した商号(株式会社香炉園)と類似の商号(お茶の香炉園)を使用するものであつて、これにより被告は原告の得意先を奪うなど原告の営業を妨害している。 5 よつて、原告は、被告に対し、商法二〇条一項に基づき請求の趣旨記載のとおり「香炉園」という商号の使用の禁止等を求める。 二請求原因に対する認否請求原因1ないし3の事実は認めるが、同4は争う。 三被告の主張 1 原告は、現在お茶の販売業務を行なつておらず、また、これを行なう意思もないのであるから、原、被告間にはなんらの競争関係も存在していないのであつて、被告は、「お茶の香炉園」なる商号を使用して営業するにつき原告に対する不正競争の目的を有していない。 2 また、右のように原告が現実にお茶の販売業務をしていないのに対し、被告は、「お茶の香炉園」なる商号でお茶の販売を業とし、これによつて生計をたてているのであつて、このことからすれば、原告の本件請求は、単に被告に損害を加えることのみを目的とするものというべきで、権利の濫用である。 四被告の主張に対する認否及び反論被告の主張のうち、原告が現在お茶の販売業務を行なつていないことは認めるが、その余は争う。 原告がお茶の販売業務を行なつていないのは、被告が類似商号を使用し、原告の全得意先を奪つていることなどのためであり、原告としては、被告に対し商号使用の差止めをした上、全得意先を回復するつもりであり、決してお茶の販売業をやめたものではない。 原告の本件請求は、原告の営業目的達成のため当然なすべき行為であり、権利の濫用には当たらない。 第三証拠(省略) 理由 一請求原因1ないし3の事実は当事者間に争いがな ない。 原告の本件請求は、原告の営業目的達成のため当然なすべき行為であり、権利の濫用には当たらない。 第三証拠(省略) 理由 一請求原因1ないし3の事実は当事者間に争いがない。 まず、被告の不正競争の目的の有無について検討する。 1 右当事者間に争いのない事実及び成立に争いのない甲第一、三号証、乙第二、三号証、原告代表者及び被告各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和四二年九月一八日設立された会社であるが、実質的にはA、被告夫婦の共同して営む個人企業というべき性質のものであつたこと、設立後、しばらくしてから、Aはその経営にあまり熱意を示さないようになり、また、夫婦仲も円満を欠くようになつて、昭和四九年九月、Aは原告の肩書地である彦三町の家を出て、被告と別居するに至つたこと、別居後は主として被告が事実上原告の経営にあたるようになつたが、その後、被告は、昭和五〇年四月二一日、金沢地方裁判所においてAの取締役兼代表取締役としての職務の執行停止及び被告を代表取締役の職務代行者に選任する旨の仮処分決定を得て、原告の業務を継続してきたこと、被告は、右職務代行者に就任中の昭和五二年四月、原告の営業所を被告の肩書地に移すこととし、原告の商品、什器等を同所に移動して原告の営業を続けていたこと、原告及びAは右仮処分決定に対し異議の申立てをし、金沢地方裁判所は、昭和五三年八月四日、Aの取締役としての任期が既に満了していることを理由に右仮処分決定を取り消す旨の判決をしたこと、右判決に対する被告の控訴、上告はいずれも棄却されたこと(昭和五四年三月一四日控訴棄却、同年一一月一六日上告棄却。)、かくして、被告は原告の代表取締役の職務代行者たる地位を喪失するに至り、一方、Aは昭和五四年六月一一日再び原告の取締役及び代表取締役に就 (昭和五四年三月一四日控訴棄却、同年一一月一六日上告棄却。)、かくして、被告は原告の代表取締役の職務代行者たる地位を喪失するに至り、一方、Aは昭和五四年六月一一日再び原告の取締役及び代表取締役に就任したこと、ところが、Aは、右代表取締役に就任後もまったく原告の営業を行なわず、むしろ原告の肩書地において原告の業務とは関係なしに個人として一松という名称で茶道具等古道具類の販売業を営んでいること、その結果、原告は、今日に至るまで約二年もの間、お茶の販売等一切の営業活動をしていないばかりか、会社としての具体的な業務もなく、いわば一種の休業状態が続いていること(なお、昭和五五年版石川県職業別電話帳にも原告の名は登載されていない。)、一方、被告は、前示のとおり職務代行者たる地位を喪失したものの、原告の債務について連帯保証していることもあり、その営業をやめる意思はなかつたので、そのまま今度は被告個人の営業として、肩書地で従業員二名を使用し従前同様お茶の販売等を営み、「お茶の香炉園」なる商号を用いていること、が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。 2 ところで、商法二〇条一項所定の「不正の競争の目的」とは、自己の営業を登記商号の使用者の営業と混同誤認させ、その商号の有する信用等を自己の営業に利用しようとする意図をいうものであつて、当然、その前提として、両者の間に当該営業について事実上の競争関係の存在することが必要であると解される。 しかるに、本件においては、既に認定したとおり、原告は、被告がその代表取締役の職務代行者たる地位を喪失してから今日に至るまで約二年もの間、一切の営業活動をしておらず、休業の状態にあるものであつて、原告と被告の間にはその営業に関し実際上なんらの競争関係もないことが明らかである。したがつて、仮に、被告の使用する「お茶の香炉 二年もの間、一切の営業活動をしておらず、休業の状態にあるものであつて、原告と被告の間にはその営業に関し実際上なんらの競争関係もないことが明らかである。したがつて、仮に、被告の使用する「お茶の香炉園」なる商号が原告の登記商号と類似しているとしても、原告がその営業の実体を有せず、被告との競争関係にない以上、被告がこれを不正競争の目的で使用するものということはできないというべきであり、また、前示認定の諸事情に照らしても被告に不正競争の目的があると認めることはできない。 3 なお、原告は、被告が類似商号を使用して原告の全得意先を奪つていることなどのために営業ができないだけであつて、決して営業をやめたものではない旨主張する。 なるほど、原告代表者及び被告各本人尋問の結果によれば、被告が原告の従前の得意先をも対象に営業していることが認められるが、右事実があるからといつて原告が二年もの長期にわたり一切の営業活動をなしえないとすることには合理性がなく、原告の主張するところは、被告の不正競争目的を認め難いとした前示判断をなんら左右するものではない。 以上のとおりであつて、結局、被告に商法二〇条一項所定の「不正の競争の目的」があると認めることはできないから、原告の本件請求はその余の点につき判断するまでもなく理由がないことに帰する。 二よつて、原告の本件請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官佐藤久夫)
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