令和5年2月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和2年(行ウ)第417号行政文書開示決定処分取消請求事件口頭弁論終結日令和4年11月18日判決主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求処分行政庁が令和2年8月3日付けで原告に対してした別紙開示決定処分目 録記載の行政文書開示決定処分を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は、原告が、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)に基づき、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下「本件専門家会議」という。)の「議事の記録」について開示請求をしたところ、処 分行政庁がした別紙開示決定処分目録記載の行政文書開示決定処分(以下「本件開示決定」という。)は対象文書の特定を誤った違法があるなどと主張して、その取消しを求める事案である。 2 関係法令等の定め⑴ 法の定め ア法3条は、何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の長に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる旨規定する。 イ法4条は、前条の規定による開示請求は、次に掲げる事項を記載した開示請求書を行政機関の長に提出してしなければならない旨規定する。 一開示請求をする者の氏名又は名称及び住所又は居所並びに法人その他 の団体にあっては代表者の氏名二行政文書の名称その他の開示請求に係る行政文書を特定するに足りる事項ウ法5条柱書きは、行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に同条各号に掲げる不開示情報のいずれかが記録され ている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文 る事項ウ法5条柱書きは、行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に同条各号に掲げる不開示情報のいずれかが記録され ている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない旨規定する。 法5条5号は、国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の 中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるものを不開示とする旨規定する。 公文書等の管理に関する法律(以下「公文書管理法」という。)の定め公文書管理法10条1項は、行政機関の長は、行政文書の管理が公文書管 理法4条から9条までの規定に基づき適正に行われることを確保するため、行政文書の管理に関する定めを設けなければならない旨規定している。 本件ガイドラインの定め(甲5)ア 「行政文書の管理に関するガイドライン」(平成23年4月1日内閣総理大臣決定。以下「本件ガイドライン」という。)は、公文書管理法の目的 を踏まえ、公文書管理法10条1項の規定に基づく行政文書の管理に関する定めを設けるに当たって、その規定例を示すとともに、留意事項として当該規定の趣旨・意義や職員が文書管理を行う際の実務上の留意点について、内閣総理大臣が定めたものである。 イ本件ガイドラインの「第3 作成」の「1 文書主義の原則」の本文 は、職員は、文書管理者の指示に従い、公文書管理法4条の規定に基づ き、公文書管理法1条の目的の達成に資するため、○○省における経緯も含めた意思決定に至る過程並 書主義の原則」の本文 は、職員は、文書管理者の指示に従い、公文書管理法4条の規定に基づ き、公文書管理法1条の目的の達成に資するため、○○省における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに○○省の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、文書を作成しなければならないとしている。 本件ガイドラインの「第3 作成」の「2 別表第1の業務に係る文 書作成」の本文は、本件ガイドライン別表第1に掲げられた業務については、当該業務の経緯に応じ、同表の行政文書の類型を参酌して、文書を作成するものとするとしている。 ウ本件ガイドラインの「第3 作成」の「留意事項」は、本件ガイドラインの「別表第1の業務に係る文書作成」についての留意事項を規定し、 審議会等や懇談会等(以下「懇談会等」という。)については、公文書管理法1条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容を記載した「議事の記録」を作成す るものとしている。 本件ガイドラインの「第3 作成」の「留意事項」は、上記の留意事項とは別に、「歴史的緊急事態に対応する会議等における記録の作成の確保」についての留意事項を規定し、「歴史的緊急事態」に対し政府全体として対応する会議その他の会合(以下「会議等」という。)について は、将来の教訓として極めて重要であり、以下のとおり会議等の性格に応じて記録を作成するものとするとし、個別の事態が「歴史的緊急事態」に該当するか否かは、公文書管理を担当する大臣が閣議等 いて は、将来の教訓として極めて重要であり、以下のとおり会議等の性格に応じて記録を作成するものとするとし、個別の事態が「歴史的緊急事態」に該当するか否かは、公文書管理を担当する大臣が閣議等の場で了解を得て判断するとしている。 ① 政策の決定又は了解を行う会議等 国民の生命、身体、財産に大規模かつ重大な被害が生じ、又は生じ るおそれがある緊急事態に政府全体として対応するため、政策の決定又は了解を行う会議等(作成すべき記録)開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容を記載した「議事の記録」、決定又は了解を記録した文書、配布資料等 ② 政策の決定又は了解を行わない会議等国民の生命、身体、財産に大規模かつ重大な被害が生じ、又は生じるおそれがある緊急事態に関する各行政機関の対応を円滑に行うため、政府全体として情報交換を行う会議等であり、政策の決定又は了解を行わないもの (作成すべき記録)活動期間、活動場所、チームの構成員、その時々の活動の進捗状況や確認事項(共有された確認事項、確認事項に対して構成員等が具体的に採った対応等)を記載した文書(以下「活動の記録」という。)、配布資料等 3 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠(証拠の表記については枝番を含む場合がある。以下同じ。)又は弁論の全趣旨により容易に認めることのできる事実。なお、証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。) 別件開示請求の経緯ア原告は、処分行政庁に対し、令和2年4月20日、法4条1項に基づき、 下記の文書(以下「別件対象文書」という。)について開示請求をした(以下「別件開示請求」という。) 別件開示請求の経緯ア原告は、処分行政庁に対し、令和2年4月20日、法4条1項に基づき、 下記の文書(以下「別件対象文書」という。)について開示請求をした(以下「別件開示請求」という。)。(乙1)記新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の会議内容を録音したもの、発言者と発言内容のわかる記録、非公式に行っている会議の資料・録音物・ 会議内容を記録したもの、専門家会議のメンバー以外で関与している者の わかるものイ処分行政庁は、令和2年5月29日、法11条に基づき、別件開示請求に係る開示決定等の期限を延長することを決定した。(乙2)ウ処分行政庁は、令和2年6月26日、別件開示請求に対し、別件対象文書に該当するものとして「『新型コロナウイルス感染症対策専門家会議』 第2回の速記業者からの納品物」(以下「本件納品物1」という。)を、法5条5号の不開示情報に該当すると認めた部分を除いて開示することを決定するとともに、別件対象文書のうち「非公式に行っている会議の資料、録音物及び会議内容を記録したもの並びに専門家会議のメンバー以外で関与している者のわかるもの」については、不存在を理由に不開示とする一 部開示決定をした。(乙3、4)エ処分行政庁は、本件開示決定後の令和2年9月28日、別件開示請求に対し、別件対象文書として①「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」第1回~10回議事概要、②「『新型コロナウイルス感染症対策専門家会議』第6回、第8回、第10回の速記業者からの納品物」(以下「本件納 品物2」といい、本件納品物1と併せて「本件各納品物」という。)、③「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」第1回会議の議事概要作成時の議事メモ、④「新型コロナウイルス感染症対策 「本件納 品物2」といい、本件納品物1と併せて「本件各納品物」という。)、③「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」第1回会議の議事概要作成時の議事メモ、④「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の第1回~第3回、第6回、第8回、第10回出席者一覧のうち上記②及び③について法5条5号の不開示情報に該当すると認めた部分を除いて開示するこ とを決定した(以下、上記ウの一部開示決定と併せて「別件各一部開示決定」という。)。(乙5) 本件開示請求の経緯ア原告は、処分行政庁に対し、令和2年6月3日、法4条1項に基づき、下記の文書(以下「本件対象文書」という。)について開示請求をした(以 下「本件開示請求」という。)。(甲1) 記新型コロナウイルス対策専門家会議の請求受付時点で開催された会議についての本件ガイドラインの定める「議事の記録」イ処分行政庁は、令和2年7月1日、法10条2項に基づき、本件開示請求に係る開示決定等の期限を延長することを決定した。(甲2) ウ処分行政庁は、令和2年8月3日、本件対象文書に該当するものとして、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議第1~12回議事概要」(以下「本件議事概要」という。)及び「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議第1~15回配布資料」(以下、本件議事概要と併せて「本件議事概要等」という。)を開示することを決定した(本件開示決定)。(甲3 ~4の12) 本件議事概要の記載内容等ア本件議事概要は、本件専門家会議の開催日時、開催場所、出席者、発言要旨(議事概要)が記載されているものであるが、本件専門家会議における発言者と発言内容が特定された形でその発言内容が記載されているもの ではなか 件専門家会議の開催日時、開催場所、出席者、発言要旨(議事概要)が記載されているものであるが、本件専門家会議における発言者と発言内容が特定された形でその発言内容が記載されているもの ではなかった。(甲4)イ本件各納品物は、速記業者が作成した本件専門家会議の議事内容について逐語的に記録した速記録である。本件各納品物においては、本件専門家会議における発言者と発言内容が特定された形でその発言内容が記載されているが、本件専門家会議の構成員及び出席者(以下「出席者等」という。) による発言内容の確認・訂正がされていないものである。(乙4)ウ本件議事概要は、速記業者からの本件各納品物や本件専門家会議の担当職員が作成した議事メモ等を基に作成されている。(弁論の全趣旨)本件訴えの提起原告は、令和2年10月28日、本件訴えを提起した。(顕著な事実) 4 争点及び当事者の主張 本件議事概要が本件対象文書に該当するか。 (原告の主張)原告は、本件開示請求に係る本件対象文書を、本件専門家会議の請求受付時点で開催された会議についての本件ガイドラインの定める「議事の記録」と記載し特定した。本件ガイドラインの定める「議事の記録」とは、「開催 日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容」を記載したものとされている。 本件開示決定で開示された本件議事概要には、「議事概要」の項目に出席者等の発言とおぼしき事項が羅列表記されているが、そのいずれも発言者名が明記されておらず、誰がどのような発言をしたのかが記載されていない。 したがって、本件議事概要は、本件ガイドラインに定める「議事の記録」に該当しないものである。 処分行政庁は、このように発言者と発言内容が特定された形 な発言をしたのかが記載されていない。 したがって、本件議事概要は、本件ガイドラインに定める「議事の記録」に該当しないものである。 処分行政庁は、このように発言者と発言内容が特定された形でその発言内容が記載されていない文書を本件対象文書として開示しており、本件開示決定には対象文書の特定を誤った違法がある。 (被告の主張)処分行政庁は、本件専門家会議の「議事の記録」として、原告が本件対象文書として開示を求めるような、発言者ごとに発言内容を記載した文書を作成しておらず、本件開示請求がされた令和2年6月3日時点(以下「本件開示請求時点」という。)において存在した本件対象文書に該当する行政文書 としては、本件開示決定において開示した本件議事概要等しか保有していなかった。 本件議事概要の作成においては、議事メモや速記業者からの本件各納品物が利用されていたが、本件各納品物は速記業者から納品されたままの状態であり、発言内容の正確性や誤記等の確認もされていないものであった。本件 議事概要は、このような速記録や議事メモ等を基に作成されたものであり、 他方で、本件議事概要等以外に、発言者ごとに発言内容が記載された本件専門家会議の「議事の記録(以下「原告主張の対象文書」という。)」は作成されていない。なお、原告は、速記業者からの本件各納品物を別件各一部開示決定により一部開示を受けているが、これらは本件専門家会議における「議事の記録」ではない。 以上によれば、本件対象文書は、既に本件開示決定において開示された本件議事概要等にほかならないのであり、仮に本件開示決定を取り消して本件開示請求時点の状態に戻してみても、それにより原告主張の対象文書の開示がされる法的利益があるとはいえない。また、原告が本件開 た本件議事概要等にほかならないのであり、仮に本件開示決定を取り消して本件開示請求時点の状態に戻してみても、それにより原告主張の対象文書の開示がされる法的利益があるとはいえない。また、原告が本件開示請求の対象文書として意図していた文書が、原告主張の対象文書であったとしても、そも そも原告主張の対象文書は存在しないのであるから、その開示を受ける余地はなく、その意味においても本件開示決定の取消しを求める法的利益はない。 したがって、本件訴えは、訴えの利益を欠くものであるから却下されるべきである。 本件各納品物が本件対象文書に該当するか。 (原告の主張)本件ガイドラインの「議事の記録」を正しく解釈して本件対象文書を特定すれば、処分行政庁としても、本件議事概要には、「開催日時、開催場所、出席者、議事要旨」の記載があるだけで、発言者と発言内容が特定された形でその発言内容が記載されておらず、「議事の記録」にいう「発言者及び発言内 容」の記載がなかったことが分かったはずである。 他方で、本件専門家会議については、発言者と発言内容とを逐語形式で記載した資料として、速記業者が処分行政庁に納品した本件各納品物が存在した。 そのため、処分行政庁としては、本件対象文書として本件議事概要に加え て、本件開示請求時点において作成し保有していた第2回会議、第6回会議、 第8回会議、第10回会議から第15回会議までの本件各納品物を、本件議事概要を補完するものとして特定して開示すべきであった。 したがって、処分行政庁がした本件開示決定については、本件対象文書である「議事の記録」の解釈を誤りその特定を誤った違法がある。 (被告の主張) 本件開示請求においては、「請求する行政文 って、処分行政庁がした本件開示決定については、本件対象文書である「議事の記録」の解釈を誤りその特定を誤った違法がある。 (被告の主張) 本件開示請求においては、「請求する行政文書の名称等」欄には、「新型コロナウイルス対策専門家会議の請求受付時点で開催された会議についての行政文書管理ガイドラインの定める『議事の記録』」(本件対象文書)と記載される一方で、原告が指摘するところの「速記録」(これが本件各納品物を指す趣旨か、それ以外であるかについては必ずしも明らかではない。)の記載は見 受けられない。前記のとおり、処分行政庁においては、本件議事概要が本件ガイドラインに基づき本件専門家会議の議事を記録したものであるとの認識の下、これを作成し保有してきたものである。したがって、処分行政庁が、本件開示請求に記載された「議事の記録」について、本件議事概要を意味するものであると解釈したことについては合理性がある。 原告は、本件対象文書にいう「議事の記録」として本件各納品物が含まれており、これをもって対象文書として特定すべきであるかのような主張をする。しかし、本件専門家会議においては、本件各納品物をもって「議事の記録」とはせず、本件議事概要をもって「議事の記録」とするとの扱いが明確にされていたのであるから、原告の主張する上記解釈は困難である。実際、 原告も本件開示請求に先立つ別件開示請求においては、「議事の記録」との峻別を意識した語を用いて別件対象文書を特定していたものである。このような原告による開示請求の態様をも踏まえると、処分行政庁において、原告が求める本件対象文書に本件各納品物が含まれていると判断することはできなかった。 また、原告は、本件議事概要が本件ガイドラインに定める「議事の記録」 も踏まえると、処分行政庁において、原告が求める本件対象文書に本件各納品物が含まれていると判断することはできなかった。 また、原告は、本件議事概要が本件ガイドラインに定める「議事の記録」 の要素を満たしていないのであるから、これを補うものとして本件各納品物を本件対象文書として特定すべきである旨主張する。しかし、処分行政庁が作成し保有していた本件議事概要に欠けている要素はなく、本件各納品物がこれを補い得るものであるということはできない。この点をおくとしても、原告がいかなる法的根拠に基づき本件議事概要の内容を補完するものとして、 本件各納品物を本件対象文書として特定すべきであったと主張するのか不明であるから、原告の上記主張には理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認める ことができる。なお、この認定に反する証拠は、その限度で採用することができない。 ア新型コロナウイルス感染症対策本部(以下「対策本部」という。)は、安倍晋三内閣総理大臣(当時。以下「安倍総理」という。)が、同感染症が拡大している状況に鑑み、政府としての対策を総合的かつ強力に推進す るため、新型インフルエンザ等対策特別措置法15条1項の規定に基づき、令和2年1月30日付け閣議決定により内閣に設置した組織である。対策本部の副本部長は、加藤勝信厚生労働大臣(当時。以下「加藤大臣」という。)のほか、同法に基づく事務を担当する国務大臣である西村康稔新型コロナウイルス感染症対策担当大臣(当時。以下「西村担当大臣」という。) 等であった。 イ本件専門家会議は、対策本部の決定に基づき、対策本部の下に設置された、新型コロナウイルス感染症の対策について医学的な 染症対策担当大臣(当時。以下「西村担当大臣」という。) 等であった。 イ本件専門家会議は、対策本部の決定に基づき、対策本部の下に設置された、新型コロナウイルス感染症の対策について医学的な見地から助言等を行うための専門家による会議である。本件専門家会議の構成員は、医学的・科学的知見を有する医師、大学教授及び弁護士を含む専門家であり、国務 大臣は含まれていない。 ウ令和2年3月10日の閣議においては、新型コロナウイルス感染症に係る事態は、行政文書の管理に関する本件ガイドラインに規定する「歴史的緊急事態」に該当するものとする旨の閣議了解がされた。 エ上記のとおり「歴史的緊急事態」に指定されたことを受けて、所管部署である内閣官房新型インフルエンザ等対策室(当時)は、令和2年3月1 0日付けで、対策本部に係る記録を本件ガイドラインの規定に基づいて作成することとし、その手順等を記載した「新型コロナウイルス感染症対策本部に係る記録の作成について」と題する書面(以下「本件手順書」という。)を作成した。 本件手順書においては、対策本部が政策の決定又は了解を行う場合があ るため、対策本部に係る記録については、本件ガイドラインにいう「議事の記録」を作成するものとし、「議事の記録」には、①開催日時、②開催場所、③出席者、④発言者及び発言内容を記載することとされた。 他方で、対策本部の下に設置される本件専門家会議等は、政策の決定又は了解を行わないが、緊急事態に関する各行政機関の対応を円滑に行うた め、政府全体として情報交換を行うものであるから、これらの会議等に係る記録については、活動の記録等を作成するものとし、活動の記録には、本件議事概要と同様のひな型に準じ、活動期間、活動場所、会議・幹事会の構成員、 して情報交換を行うものであるから、これらの会議等に係る記録については、活動の記録等を作成するものとし、活動の記録には、本件議事概要と同様のひな型に準じ、活動期間、活動場所、会議・幹事会の構成員、その時々の活動の進捗状況や確認事項(共有された確認事項、確認事項に対して構成員等が具体的に採った対応等)を記載することとさ れた。 (甲4、甲19・資料10、乙4、公知の事実) ア本件専門家会議は、令和2年2月16日から同年6月19日までの間に合計17回(以下、それぞれ「第1回会議」などという。)開催された。 イ第1回会議において、加藤大臣は、構成員に自由かつ率直に議論しても らうため、発言者が特定されない形で本件議事概要を作成するという方針 を出席者等に説明し、その了解を得た。(甲19・資料5)ア上記方針及び本件手順書の記載に沿って、第1回会議(令和2年2月16日開催)から第15回会議(同年5月29日開催)までの間、具体的に発言者と発言内容が分からない形で記載された本件議事概要が作成され、これらが公表された。 イなお、処分行政庁は、本件開示請求時点(令和2年6月3日)において、速記業者から第2回会議、第6回会議、第8回会議、第10回会議から第15回会議までの本件各納品物を受領していた。(甲4、18、弁論の全趣旨) 令和2年5月14日以降、本件専門家会議において発言者名が記載された 「議事の記録」が作成されていないことを問題視する報道がされるようになった。 このような中で行われた令和2年5月29日開催の第15回会議では、構成員から議事の記録の在り方を検討してもよいのではないかとの趣旨の発言があり、これを契機として、出席者等との間で記録の作成方法についての調 整・検討がされ 5月29日開催の第15回会議では、構成員から議事の記録の在り方を検討してもよいのではないかとの趣旨の発言があり、これを契機として、出席者等との間で記録の作成方法についての調 整・検討がされた。このような経過を経て、出席者等から、第16回以降の会議については、具体的に発言者と発言内容が分かる形で議事の記録を作成する旨の了解が得られた。(甲18、19・資料3、4、乙8) ア菅義偉内閣官房長官(当時)は、令和2年6月1日の記者会見において、本件専門家会議が本件ガイドラインに規定する「懇談会等」に該当するこ との認識を示し、「懇談会は発言者及び発言内容を記載した議事の記録を作成されるもの」と説明するとともに、その一方で本件専門家会議の記録として「発言者と発言内容が一対一対応でないこともあり得る」との見解を述べた旨の報道がされた。(甲19・資料6)イこのような状況を踏まえて、西村担当大臣は、令和2年6月7日の午後 の記者会見において、本件専門家会議について、「第1回の会議におきまし て、自由かつ率直にご議論いただくために、発言者が特定されない形の議事概要を作成し、公表するという、この方針についてメンバーの皆さんにご了解いただいたうえで、対応してきているところであります。これは行政文書の管理に関するガイドラインに照らしても適切な対応であったものであります。いわゆる意思決定をしない会議ということで、資料であると か、議事概要について公表してきているところであります。」と述べ、さらに、「今般5月29日の専門家会議の場で、議論がでたことを踏まえまして、構成員、メンバーの先生方からのご意見を伺いました。その結果、引き続き、従来と同様のかたちで、議事概要を作成、公表することとしつつ、今後、開かれる会議以降 会議の場で、議論がでたことを踏まえまして、構成員、メンバーの先生方からのご意見を伺いました。その結果、引き続き、従来と同様のかたちで、議事概要を作成、公表することとしつつ、今後、開かれる会議以降の議事概要については、発言者名を明記することと いたしました。そして、これと合わせて、先ほども申し上げましたように、ガイドラインに基づいて作成すべき記録としては、これまでの議事概要で足りるわけですけれども、そのような皆様、先生方にも確認をいたしましたので、保存されている速記録を各委員や出席者にご確認をいただいたうえで、残していくこととします。実は、1回目と3回目は速記が入ってい ないのですけれども、それぞれ録音等をもとに同様の記録を作成し、しっかりと対応していきたいと考えています。」と発言した。(甲18)ウ安倍総理は、令和2年6月8日の衆議院本会議における質疑において、「5月29日の専門家会議の場で、議事概要のあり方について御意見があったことを踏まえ、改めて構成員の皆様の御意見、御意向を確認した結果、 引き続き、従来と同様の形で速記録等に基づき議事概要を作成、公表することとしつつ、今後開かれる会議の議事概要については、発言者名を明記することで御了解が得られたと承知しております。」と述べ、さらに、本件専門家会議の「速記録についても、適切に保存し、保存期間満了後は、国立公文書館に移管の上、原則公表扱いになるものと承知しております。」と 答弁した。(甲17、甲19・資料8) ア上記の方針に基づき、令和2年6月12日開催の第16回会議では、同会議の「議事概要」について、発言内容の要点をまとめる従前の形式を維持した上で、具体的に発言者と発言内容が分かる形で作成された。 (乙9)イまた、第1 年6月12日開催の第16回会議では、同会議の「議事概要」について、発言内容の要点をまとめる従前の形式を維持した上で、具体的に発言者と発言内容が分かる形で作成された。 (乙9)イまた、第16回会議以降は、速記録等に基づき発言者等確認済み記録(速記業者からの納品物である速記録等を基にして出席者等からの発言内容の 確認・修正を経るなどして逐語の形式で作成された記録をいう。以下同じ。)が作成されるとともに、第15回会議より前の会議分についても遡って発言者等確認済み記録が作成されることとなった。作成された発言者等確認済み記録については、適切に保存した上で、保存期間満了後には国立公文書館に移管して保存することとされた。 (甲17~19・資料8、9、乙4、 6、弁論の全趣旨) 2 争点(本件議事概要が本件対象文書に該当するか。)について 前記前提事実アに認定したとおり、原告は、本件対象文書を「新型コロナウイルス対策専門家会議の請求受付時点で開催された会議についての本件ガイドラインの定める『議事の記録』」と特定して、本件開示請求をしたも のであるところ、本件ガイドラインの「第3 作成」の「留意事項」は、本件ガイドラインの「別表第1の業務に係る文書作成」について規定し、懇談会等については、開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容を記載した「議事の記録」を作成するものとしているものである。 このような本件ガイドラインの定めに照らせば、原告が本件対象文書とし て開示を求めていた「議事の記録」とは、本件ガイドラインに基づき作成された本件専門家会議の議事を記録したものであって、その記載内容としては、上記「議事の記録」にあるように開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容を記載したものが想 イドラインに基づき作成された本件専門家会議の議事を記録したものであって、その記載内容としては、上記「議事の記録」にあるように開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容を記載したものが想定されていたと解釈することができる。 これに対し、被告は、本件対象文書として本件議事概要等を開示したもの であるところ、本件議事概要には、本件専門家会議の開催日時、開催場所、 出席者、発言要旨(議事概要)が記載されているものであるが、発言者と発言内容が特定された形でその発言内容が記載されておらず、原告の想定を前提とすれば、原告が開示を求める本件対象文書の記載事項を一部充足するものではなかったと認められる。 しかしながら、前記認定事実イからエまでによれば、本件専門家会議は、 対策本部の決定に基づき、対策本部の下に設置された新型コロナウイルス感染症の対策について医学的な見地から助言等を行うための専門家による会議であるところ、本件専門家会議を所管する部署である内閣官房新型インフルエンザ等対策室(当時)においては、令和2年3月10日の閣議において、新型コロナウイルス感染症に係る事態が本件ガイドラインに規定する「歴史 的緊急事態」に該当するものとする旨の閣議了解がされたことを受けて、同日付けで、本件ガイドラインの規定に基づいて対策本部等に係る記録を作成することとし、その手順に関する本件手順書を定めたものであると認められる。 そして、本件手順書においては、対策本部の下に設置される本件専門家会 議等については、活動の記録等を作成するものとし、活動の記録には、本件議事概要と同様のひな型に準じ、活動期間、活動場所、会議・幹事会の構成員、その時々の活動の進捗状況や確認事項(共有された確認事項、確認事項に対 、活動の記録等を作成するものとし、活動の記録には、本件議事概要と同様のひな型に準じ、活動期間、活動場所、会議・幹事会の構成員、その時々の活動の進捗状況や確認事項(共有された確認事項、確認事項に対して構成員等が具体的に採った対応等)を記載することとされたものであり、これに基づき第1回会議において、構成員に自由かつ率直に議論して もらうため、発言者が特定されない形で本件議事概要を作成するという方針について了解を得て、本件議事概要が作成されたと認められる。 これらの事実及び前記認定事実ア及びに照らせば、担当部署である内閣官房新型インフルエンザ等対策室(当時)においては、本件ガイドラインに規定する本件専門家会議の議事を記録したものとして、本件議事概要を作 成したものであると認められ、他方で、本件開示請求時点(令和2年6月3 日時点)においては、発言者と発言内容が特定された形でその発言内容を記載した発言者等確認済み記録を作成し保有していなかったことが認められる。 そうすると、本件議事概要等は、原告が開示を求める本件対象文書の記載事項を一部充足するものではなかったものではあるが、本件ガイドラインに基づき本件専門家会議の議事を記録したものとして作成されたものであるこ とからすれば、本件対象文書に該当するものというべきである。 これに対し、原告は、本件議事概要には発言者と発言内容が特定された形でその発言内容が記載されていないにもかかわらず、処分行政庁がこれを本件対象文書として特定して開示したことは、その特定を誤った違法がある旨主張し、その前提として、処分行政庁が本件開示請求時点において、発言者 名と発言内容を記載した発言者等確認済み記録を保有していたかのような主張をする。しかし、上記に認定説示したと 法がある旨主張し、その前提として、処分行政庁が本件開示請求時点において、発言者 名と発言内容を記載した発言者等確認済み記録を保有していたかのような主張をする。しかし、上記に認定説示したとおり、本件開示請求時点においては、発言者等確認済み記録は作成されておらず、処分行政庁においては、これを保有していなかったのであるから、原告の上記主張は前提を誤っている。 なお、原告は、本件開示請求時点において、本件専門家会議の議事を記録したものとして発言者等確認済み記録を作成していなかったこと自体が違法であるかのような主張をし、その根拠として、本件ガイドラインの「第3 作成」の「留意事項」は、本件ガイドラインの「別表第1の業務に係る文書作成」についての留意事項を規定し、同事項において懇談会等については発言 者及び発言内容を記載した「議事の記録」を作成するものとしていることを指摘する。 しかしながら、本件ガイドラインの「第3 作成」の「留意事項」には、「別表第1の業務に係る文書作成」自体の留意事項とは別に、「歴史的緊急事態に対応する会議等における記録の作成の確保」についての留意事項も規定 されており、本件ガイドライン上これらの留意事項に関する適用関係を規律 する規定もない。そして、「歴史的緊急事態に対応する会議等における記録の作成の確保」についての留意事項によれば、本件専門家会議のように政策の決定又は了解を行わない会議等に係る記録については、「議事の記録」の作成までは求められておらず、活動の記録を作成することをもって足りるとされているものであり、本件手順書の記載もこれに沿うものであったということ ができる。 このような本件ガイドライン等の規定に照らせば、本件開示請求時点において、処分行政庁が本 をもって足りるとされているものであり、本件手順書の記載もこれに沿うものであったということ ができる。 このような本件ガイドライン等の規定に照らせば、本件開示請求時点において、処分行政庁が本件専門家会議の議事を記録したものとして発言者等確認済み記録を作成していなかったとしても、違法であるとまではいえない。 仮に本件ガイドラインの規定の適用について、上記のとおり解釈すること が困難であったとしても、処分行政庁においては、本件開示請求時点で本件対象文書に該当し得るものとして本件議事概要のみを作成し、発言者等確認済み記録を作成し保有していなかったことに変わりはないのであるから、この点に関する解釈の違いは、本件における前記認定判断を左右するものではない。 以上によれば、争点についての原告の主張は採用することができず、本件ガイドラインに基づき本件専門家会議の議事を記録したものとして作成された本件議事概要等は、本件対象文書に該当するものというべきである。 したがって、原告の争点についての主張は採用することができない。 3 争点(本件各納品物が本件対象文書に該当するか。)について 原告は、処分行政庁としては、本件対象文書として本件議事概要等に加え、これを補完するものとして本件各納品物を特定して開示すべきであったと主張し、これを開示しなかった本件開示決定が違法である旨主張するところ、前記認定事実イによれば、処分行政庁は、本件開示請求時点において第2回会議、第6回会議、第8回会議、第10回会議から第15回会議までの本 件各納品物を保有していたことが認められる。 本件各納品物は、速記業者が作成した本件専門家会議の議事内容について逐語的に記録した速記録であり、本件各納 第15回会議までの本 件各納品物を保有していたことが認められる。 本件各納品物は、速記業者が作成した本件専門家会議の議事内容について逐語的に記録した速記録であり、本件各納品物においては、発言者と発言内容が特定された形で会議における発言内容が記載されているものであったと認められ(前記前提事実イ)、原告が本件開示請求において開示を求めていた本件対象文書の記載事項を満たすものであったということができる。 しかしながら、前記2に認定説示したとおり、原告が開示を求めていた本件対象文書は、本件ガイドラインに基づき作成された本件専門家会議の議事を記録したものであって、本件各納品物自体は、上記のとおり速記業者が作成し内閣官房に納品した速記録にとどまるものであり、本件ガイドラインに基づき作成された記録ではない。すなわち、前記前提事実ウ及び前記認 定事実によれば、本件議事概要は、本件各納品物や担当職員が作成した議事メモ等を基に、本件ガイドラインに基づく本件専門家会議の議事を記録したものとして正式に作成されたものであるのに対し、本件各納品物はその作成過程において参考にされた資料にとどまるというべきであるから、これが本件対象文書にいう「本件ガイドラインの定める『議事の記録』」に当たる と解釈することはできない。 このことは、原告自身が、本件開示請求に先立つ別件開示請求において、別件対象文書を「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の会議内容を録音したもの、発言者と発言内容のわかる記録、非公式に行っている会議の資料・録音物・会議内容を記録したもの、専門家会議のメンバー以外で関与し ている者のわかるもの」と特定し、本件対象文書にいう「本件ガイドラインの定める『議事の記録』」と明確に書き分け る会議の資料・録音物・会議内容を記録したもの、専門家会議のメンバー以外で関与し ている者のわかるもの」と特定し、本件対象文書にいう「本件ガイドラインの定める『議事の記録』」と明確に書き分けて開示請求をしていること(前記前提事実)からも明らかである。 したがって、原告の争点についての主張は採用することができない。 4 小括 以上によれば、本件開示請求時点において、処分行政庁は、本件議事概要等 以外に本件対象文書に該当するものを作成し保有していなかったものであるから、本件開示決定は本件対象文書を全部開示したものであるということができる。そうすると、原告は、本件開示請求に係る本件対象文書の全部開示を受けているものであるから、本件訴えにより本件開示決定を取り消す法的利益はないというべきである。 したがって、本件訴えは、その余の点について判断するまでもなく、訴えの利益を欠き不適法である。 5 結論よって、原告の本件訴えは、不適法であるから却下することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官市原義孝 裁判官小西圭一 裁判官和田崇寛 (別紙)指定代理人目録については、記載を省略。
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