平成20年3月14日判決言渡平成15年(ワ)第3753号損害賠償請求事件主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 主位的請求被告らは,原告ら各自に対し,連帯して,400万円及びこれに対する平成12年9月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 予備的請求被告国は,原告ら各自に対し,400万円及びこれに対する平成12年9月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 本件の概要平成12年9月11,12日に愛知県を中心とする東海地方において発生し。 ,た集中豪雨(以下「本件豪雨」という)に伴う庄内川及び新川の増水により新川の左岸堤防が決壊し(以下「本件破堤」という,名古屋市西区中小田。)井二丁目,同三丁目,同四丁目,同区あし原町,同区こも原町,愛知県西春日井郡新川町(現清須市)及び同郡西枇杷島町(現清須市)に浸水被害(以下「本件水害」という)が生じた。 。 本件は,本件水害にあった原告らが,被告国に対して,主位的に,国家賠償法2条に基づき,建設大臣が管理する新川洗堰若しくは庄内川の管理に瑕疵があったとして,損害賠償(損害発生の日からの民法所定の年5分の割合による遅延損害金を含む)を,予備的に,憲法29条3項に基づき,建設大臣の管。 理する庄内川の破堤被害を防止するために原告らが特別の犠牲を負わされたとして,損失補償を求め,被告愛知県(以下「被告県」という)に対して,国。 家賠償法2条に基づき,愛知県知事が管理する新川治水緑地の管理若しくは新川の管理に瑕疵があったとして損害賠償(損害発生の日からの民法所定の年5分の割合による遅延損害金を含む)を求めた事案である。 。 争いのない事実等(1) 当事者等 る新川治水緑地の管理若しくは新川の管理に瑕疵があったとして損害賠償(損害発生の日からの民法所定の年5分の割合による遅延損害金を含む)を求めた事案である。 。 争いのない事実等(1) 当事者等ア原告ら(ただし,原告Aについては承継前原告Bで,原告Cについては承継前原告Dである)は,平成12年9月12日当時,名古屋市西区中。 小田井地区付近及び愛知県西春日井郡西枇杷島町付近に居住し,又は工場,店舗などを保有して事業を行っていた者で,本件水害により建物や家財等の動産の浸水被害を受けた。 承継前原告Bは,平成15年11月11日に死亡し,その相続人らの間で平成18年11月15日に原告Aが本訴請求債権を取得する旨の遺産分割協議がなされた。 承継前原告Dは,平成18年1月10日に死亡し,その相続人らの間で平成18年12月25日に原告Cが本訴請求債権を取得する旨の遺産分割協議がなされた。 イ建設大臣(現国土交通大臣)は,昭和44年3月に庄内川及び新川が一級河川に指定されたことに伴い,従前愛知県知事が管理していた庄内川及び新川を直接管理することとなり(河川法9条1項参照,このうち新川)について愛知県知事にその管理の一部を委任した。 庄内川の新川洗堰は,建設大臣(現国土交通大臣)が管理している。 ウ被告県の代表者である愛知県知事は,河川法9条2項及び河川法施行令2条1項の規定により,地方自治法2条9項1号に規定する第1号法定受託事務として新川の管理の一部を行っている。 新川治水緑地は,愛知県知事が管理している。 (2) 庄内川及び新川の概要ア庄内川庄内川は,岐阜県及び愛知県に跨って流れる流域面積約1010㎞, 幹川流路延長約96㎞の一級河川であり,岐阜県恵那郡山岡町の夕立山に源を発し,夕立山から発した庄内川(なお,岐阜県内では「土岐川」 庄内川は,岐阜県及び愛知県に跨って流れる流域面積約1010㎞, 幹川流路延長約96㎞の一級河川であり,岐阜県恵那郡山岡町の夕立山に源を発し,夕立山から発した庄内川(なお,岐阜県内では「土岐川」と呼称されている)は岐阜県東濃地方を西流し,瑞浪市では左支川小里川,。 右支川日吉川,土岐市で左支川妻木川,多治見市で左支川笠原川などを合流し,岐阜県と愛知県の県境をなす玉野渓谷に流入する。玉野渓谷を抜けた庄内川は,春日井市高蔵寺で濃尾平野に出て,春日井市と名古屋市守山区の境を流れ,同市北区で瀬戸市の猿投山に源を発する左支川矢田川を合流して,名古屋市の北西部を流れて伊勢湾に注いでいる。 イ新川新川は,庄内川下流域でほぼ庄内川と併走して伊勢湾に注ぐ流域面積約258.9㎞,流路延長約24.3㎞の一級河川である。新川は,新地 蔵川,大山川,合瀬川及び五条川等が合流する河川であり,かつ,大山川,合瀬川及び五条川自体が様々な小河川をいくつも合流している。 (3) 新川洗堰新川洗堰は,天明4年から天明7年にかけて新川が開削された際に築造された洗堰であり,庄内川の河口から約19.4㎞の地点に位置する(以下,河口からの距離を表記する際は,単位を㎞として「19.4K」等と表記する。 。)(4) 新川治水緑地新川治水緑地は,新川洗堰の敷地を利用して設置が計画された遊水地(洪水を一時的に貯めて,洪水の最大流量(ピーク流量)を減少させるために設けられる区域)である。 (5) 法令等ア河川法(昭和39年法律167号)16条1項は「河川管理者は,そ,の管理する河川について,計画高水流量その他当該河川の河川工事及び河川の維持についての基本となるべき方針に関する事項(以下「河川整備基本方針」という)を定めておかなければならない」と定め,同法16。 。 条 河川について,計画高水流量その他当該河川の河川工事及び河川の維持についての基本となるべき方針に関する事項(以下「河川整備基本方針」という)を定めておかなければならない」と定め,同法16。 。 条の2第1項は「河川管理者は,河川整備基本方針に沿って計画的に河,川の整備を実施すべき区間について,当該河川の整備に関する計画(以下「河川整備計画」という)を定めておかなければならない」旨規定す。 。 る。 イ河川法を改正する平成9年法律69号の附則2条1項は「河川法16,条1項の規定に基づき河川整備基本方針が定められるまでの経過措置として,平成9年法律69号による改正前の河川法(以下「改正前河川法」という)16条1項の規定に基づき定められている工事実施基本計画の一。 部を,政令の定めるところにより,河川整備基本方針とみなす」旨,同。 附則2条2項は「河川法16条の2第1項の規定に基づき河川整備計画,が定められるまでの経過措置として,上記工事実施基本計画の一部を,政令の定めるところにより,河川整備計画とみなす」旨規定する。 。 ウ改正前河川法16条1項は「河川管理者は,その管理する河川につい,て,計画高水流量その他当該河川の河川工事の実施についての基本となるべき事項(以下「工事実施基本計画」という)を定めておかなければな。 らない」旨規定し,同条2項は「工事実施基本計画は,水害発生の状。 ,況並びに水資源の利用の現況及び開発を考慮し,かつ,国土総合開発計画との整合を図って,政令で定める準則に従い,水系ごとに,その水系に係る河川の総合的管理ができるように定められなければならない」旨規定。 する。平成9年政令342号による改正前の河川法施行令(昭和40年政令14号。以下「改正前施行令」という)10条1項1号は,工事実施。 基本計画作 ができるように定められなければならない」旨規定。 する。平成9年政令342号による改正前の河川法施行令(昭和40年政令14号。以下「改正前施行令」という)10条1項1号は,工事実施。 基本計画作成の準則として「洪水,高潮等による災害の発生の防止又は,軽減に関する事項については,過去の主要な洪水,高潮等及びこれらによる災害の発生の状況並びに災害の発生を防止すべき地域の気象,地形,地質,開発の状況等を総合的に考慮」して作成しなければならない旨規定し,同10条2項は「工事実施基本計画には,①当該水系に係る河川の総合,的な保全と利用に関する基本方針,②基本高水並びにその河道及び洪水調節ダムへの配分に関する事項,主要な地点における計画高水流量に関する事項,主要な地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関する事項といった河川工事の実施の基本となるべき計画に関する事項,③主要な地点における計画高水位,計画横断形その河道計画に関する重要な事項,主要な河川工事の目的,種類及び施行の場所並びに当該河川工事の施行により設置される主要な河川管理施設の機能の概要といった河川工事の実施に関する事項を定めなければならない」旨規定する。なお,上。 記法令の規定における基本的概念の内容は,以下のとおりである。 (ア) 基本高水基本高水とは,洪水防御に関する計画の基本となる洪水(ダムで洪水調節等の人工的な操作の加わる前の洪水)をいう。基本高水は,河川の重要度,既往洪水による被害の実態,治水事業の経済効果等を総合的に考慮して決定される洪水防御計画の規模に対応する年超過確率(ある値に等しいかそれを超える値が生起する確率を超過確率といい,その値として年最大値を用いる場合を年超過確率という。例えば,年超過確率1/100とは,ある値と同じかそれを超えるよう する年超過確率(ある値に等しいかそれを超える値が生起する確率を超過確率といい,その値として年最大値を用いる場合を年超過確率という。例えば,年超過確率1/100とは,ある値と同じかそれを超えるようなことが100年に1回の確率で起きることを意味する)を持つ計画降雨量(計画規模を定。 め,さらに降雨継続時間を定めることにより決定する降雨量)により求められる。最終的に,この基本高水は,流量の経時的変化(一般的には1時間単位)を表したハイドログラフ(河川の流量を縦軸に,時間を横軸にとって,その時間的変化を図示したもの)で表示される。 (イ) 計画高水流量計画高水流量とは,基本高水をダム等の洪水調節施設と河道に合理的に配分した後の河道への配分流量をいう。計画高水流量は,上流から下流まで一貫して,ダムの建設,堤防の改築,河道の掘削などの一連の治水事業の計画・実施の指標となる。 (ウ) 計画高水位及び計画横断形計画高水位とは,河道の改修計画を立てるときの基本となる水位で,計画高水流量,河道の横断形,縦断形と関連して定められる。 計画横断形とは,計画高水流量の規模の洪水を計画高水位以下で流下させるために定めた河川の横断面の形状をいい,これは単に川幅,低水路の幅・深さ,高水敷の幅・高さ等だけでなく,両岸の堤防の形状,高さ,幅も含めて決められる。 (6) 庄内川・新川に関する河川計画ア庄内川に関する河川計画(ア) 昭和45年3月「庄内川水系工事実施基本計画」策定庄内川が昭和44年3月に一級河川に指定されたことに伴い,建設大臣は,昭和45年3月「庄内川水系工事実施基本計画(以下「昭和,」45年計画」という)を定めた。 。 (イ) 昭和50年4月計画変更建設大臣は,昭和50年4月,降雨量等の基礎データや庄内川流域の開発状況を踏まえて昭和45年計画 事実施基本計画(以下「昭和,」45年計画」という)を定めた。 。 (イ) 昭和50年4月計画変更建設大臣は,昭和50年4月,降雨量等の基礎データや庄内川流域の開発状況を踏まえて昭和45年計画の内容を大幅に改訂した。これが昭和50年4月に定められた「庄内川水系工事実施基本計画(以下「本」件計画」という)であり,上記(5)イの経過措置により,本件水害当。 時,本件計画の一部が河川整備基本方針及び河川整備計画とみなされていた。 イ新川に関する河川計画(ア) 庄内川水系全体計画愛知県知事は,昭和52年3月,改正前河川法79条1項及び改正前施行令45条1号により建設大臣の認可が必要な工事実施基本計画において定められた河川の総合的な保全と利用に関する基本方針に沿って計画的に実施すべき改良工事に関する計画として,庄内川水系全体計画を策定し,同月31日付けで建設大臣の認可を得た。 (イ) 新川流域整備計画・治水暫定計画昭和52年6月の第33回河川審議会の「総合的な治水対策の推進方策についての中間答申」において総合治水対策を強力に推進するよう提言がなされたことを受けて,被告県は,昭和55年9月,新川流域総合治水対策協議会を設置した。同協議会は,昭和57年2月に,新川流域整備計画を承認し,同計画の中の河川改修計画として新川の治水暫定計画を策定した。 (7) 本件豪雨ア降雨平成12年9月11日から翌12日にかけて台風14号及び秋雨前線がもたらした降雨により,東海地方では大きな降水量を記録し,名古屋地方気象台では11日午後7時に時間雨量が最大93㎜を記録し,総雨量は567㎜に上った。 イ水位新川最上流部の新地蔵川・大山川・合瀬川の三川合流地点付近の久地野地点(20.084K地点,水防基準地点)では,平成12年9月11日午後7時40分 ㎜を記録し,総雨量は567㎜に上った。 イ水位新川最上流部の新地蔵川・大山川・合瀬川の三川合流地点付近の久地野地点(20.084K地点,水防基準地点)では,平成12年9月11日午後7時40分に計画高水位(T.P(TokyoPeil:東京湾. 中等潮位の略称で,全国の測量の基準となる高さである)6.57m)。 を超過し,午後9時ころにはT.P.6.90mに達し,その後一時的に低下傾向を示したものの,新川洗堰からの庄内川洪水の越流により再び上昇に転じ,翌12日午前2時50分に最高水位T.P.7.32mを記録し,同日午前8時30分まで計画高水位を超え続けていた。 ウ流量新川の久地野地点における流量は,平成12年9月11日午後9時ころに約630㎥/s,新川洗堰からの庄内川洪水の越流開始後の翌12日午前2時50分ころに約720㎥/sとなった。 (8) 本件破堤新川の水場川が右岸で合流する16K地点(以下「本件破堤地点」といい,同地点で,左岸堤防が決壊した個所を「本件破堤個所」という)では,平。 成12年9月11日午後7時40分に水位がT.P.5.20mを,翌12日午前2時10分には計画堤防高(計画高水位に余裕高を加えたもの)T. P.6.20mを超え,同日午前3時20分に最高水位T.P.6.28mに達し,同日午前3時30分ころ,破堤した。 原告らの主張(1) 本件破堤の原因について本件破堤は,以下の経緯により発生した。 ア新川洗堰からの庄内川洪水の流入新川流域の自己流量だけでは,本件破堤地点の水位は計画高水位を大きく超えることはなく,速やかに水位は低下するはずであった。計画高水位まではコンクリート護岸が設けられているので,それ以下の水位では河川水の堤体への浸透は起こらず,河川浸透水による破堤が生じる可能性はなかった。ところが 速やかに水位は低下するはずであった。計画高水位まではコンクリート護岸が設けられているので,それ以下の水位では河川水の堤体への浸透は起こらず,河川浸透水による破堤が生じる可能性はなかった。ところが,平成12年9月11日午後9時から10時ころに始まった新川洗堰からの庄内川洪水の流入(最大流入量270㎥/s)により計画高水位を超える状態が続き,水位が上昇して最高水位となった。この新川洗堰からの庄内川洪水の流入により本件破堤地点は計画高水位を超える状態が続いた。 イ堤体への河川水の浸潤本件破堤個所は,堤体が透水性の高い砂質土で構成されており,そこに河川水が計画高水位を超えた部分(コンクリート護岸がない部分)から浸透し,堤体での浸潤線の発達により,堤体が不安定化した。この不安定な状態が継続することにより,本件破堤個所において堤防裏法面(堤内地側の堤防の斜面)にすべり崩壊が発生し,すべり崩壊が拡大することにより破堤するに至った。 (2) 新川洗堰の瑕疵及び庄内川の河川管理の瑕疵についてア新川洗堰の瑕疵新川洗堰は瑕疵ある堤防である。 (ア) 庄内川と新川は別河川であること庄内川と新川は別個の流域を持つ別河川である。 a新川水系の庄内川水系からの分離独立の経緯等(a) 新川開削の背景①大山川及び合瀬川の庄内川への合流不全庄内川は,新川洗堰上流部付近から河床勾配が緩やかになるため流下する土砂が河床に堆積しやすい状況であった。他方,庄内川流域の上流には瀬戸や土岐という磁器,陶器の生産地を控えているため陶土採掘,燃料採取のための森林伐採等により表土の流出が増大し,陶土原料残滓の流出も加わり多量の土砂が流下する状況にあった。そのため,新川洗堰付近から下流部において,土砂の堆積が激しく河床の上昇が顕著に表れた。 大山川及び合瀬川は庄内川に合流 の流出が増大し,陶土原料残滓の流出も加わり多量の土砂が流下する状況にあった。そのため,新川洗堰付近から下流部において,土砂の堆積が激しく河床の上昇が顕著に表れた。 大山川及び合瀬川は庄内川に合流していたが,両河川は,庄内川河床の激しい上昇により庄内川への合流が正常にできなくなり,合流不全を起こすようになっていた。このため,両河川の合流部入り口には水が滞留して湿地が発生し,大蒲沼と呼ばれる湿地となった。この湿地化の傾向は大蒲沼形成後も徐々に進行し,大蒲沼は拡大していった。大山川及び合瀬川に洪水が発生した際には,両河川の合流部で庄内川の河床上昇による合流不全のため,両支川の水位が上昇し,庄内川が増水して水位が上昇した場合には庄内川本川の洪水が大蒲沼へ逆流して水位が上昇し,さらに,それによる背水で大山川及び合瀬川の水位が一層上昇するようになった。その結果,大蒲沼や両河川の溢水や破堤によって周辺部では水害が頻発するようになった。水害とともに,大蒲沼の湿地拡大により沼周辺の耕作地の排水不良が一層悪化し,それによって耕作地が荒廃した。 ②五条川と庄内川との合流不全庄内川の河床上昇により,五条川も庄内川への合流が正常にできなくなっており,五条川に洪水が発生した際には,五条川合流部の合流不全のため五条川による水位上昇,庄内川の洪水の合流部からの逆流による水位上昇及び五条川の背水が激しくなり,合流部上流で溢水,破堤が頻発していた。 ③庄内川右岸地域の湿地化による悪水の滞留と湿田化庄内川の河床の上昇は,庄内川右岸で最も低い地域,大蒲沼-五条川合流部間の地域にとって深刻な内水の排水障害を引き起こしていた。主として潅漑の余剰水として上流から流れてくる悪水は,河床の上昇した庄内川へ排水することが困難になり,堤内地の流末に滞留し,その結果,庄内川 間の地域にとって深刻な内水の排水障害を引き起こしていた。主として潅漑の余剰水として上流から流れてくる悪水は,河床の上昇した庄内川へ排水することが困難になり,堤内地の流末に滞留し,その結果,庄内川右岸側の湿地化が進行,拡大し,大山川・合瀬川,庄内川右岸及び五条川で囲まれた地域のうち,庄内川に近い広範な地域が湿地化していった。 また,庄内川右岸の水田は,庄内川の河床上昇及び支川の合流不全による水位上昇により,湿田化が進行していた。乾田に比較して湿田は耕作作業が困難で過重であるだけでなく,堀田にして耕作面積の一部しか作付けできなかったり,水腐れなど生育条件が厳しいなど耕作面積に対する収穫量が低い低収穫率の悪条件が重なり,耕作地の湿地化は米の収穫量の減少をもたらしていた。 (b) 新川開削の目的新川開削には,第1に大山川と合瀬川の庄内川との合流部の合流不全に伴う大蒲沼の湿地化拡大の解消,軽減及び水害の回避並びに五条川と庄内川との合流部の合流不全に伴う合流部上流での湿地化拡大の解消,軽減及び水害の回避,第2に庄内川右岸側の悪水を集約して排水し湿田を乾田に変えるという目的があった。 (c) 新川開削等大山川と合瀬川の水害を回避し,両河川の合流部である大蒲沼の湿地化とその拡大を解消するため,新川を開削し,大山川,合瀬川の両河川を庄内川の支川から新川の支川に付け替えた。また,両河川が合流していた本川であった庄内川の両河川による負担を軽減するとともに庄内川の両河川への逆流をなくすため,両河川の庄内川合流部に築堤して閉鎖した。 五条川も同様に庄内川の支川から新川の支川とする付け替えを行って五条川による庄内川の負担を軽減し,庄内川の五条川への逆流防止のために五条川の庄内川合流部を閉鎖した。 (d) 新川水系と庄内川水系の分離上記(c)のとおり,新川 ら新川の支川とする付け替えを行って五条川による庄内川の負担を軽減し,庄内川の五条川への逆流防止のために五条川の庄内川合流部を閉鎖した。 (d) 新川水系と庄内川水系の分離上記(c)のとおり,新川は,庄内川右岸に合流していた支川を庄内川と切り離して別に流す新しい河川となり,新川流域の水は庄内川に流れ込まず,新川は庄内川と流域そのものが別のものとなった。 この時点で,新川は流域(集水域,水系として庄内川から分離し)独立した別河川となった。 (e) 本件計画等による新川の庄内川からの完全な分離昭和50年の本件計画で庄内川から新川への分派量が0㎥/sとされ,昭和52年の庄内川水系全体計画で新川への庄内川からの流入をなくし,新川洗堰下流部を治水緑地として遊水地にするとされたことにより,新川の庄内川とのつながりは全くなくなり,新川の庄内川からの独立性は完全なものとなった。 b治水計画上の両河川の分離独立庄内川と新川は,形式上の水系指定では同じ水系に属しているが,同一水系としての一貫管理の実態がなく,別個の主体により別々に規模や設定条件の異なる工事実施基本計画以下の改修計画が作成され管理されている。 (a) 被告国が定めた本件計画には,新川の河川工事の実施についての基本となるべき事項は定められていない。新川の計画高水流量その他当該河川の工事の実施についての基本となるべき事項(工事実施基本計画)は庄内川水系全体計画で被告県が定めている。被告国は同計画を認可しているが,工事実施基本計画は被告国が自ら定めなければならず,指定区間についても都道府県に定めさせることはできない(改正前施行令2条2項。被告国が計画を認可したからと)いって自ら工事実施基本計画を定めたことにはならないから,庄内川は被告国によって,新川は被告県によって工事実施基本計画以下 せることはできない(改正前施行令2条2項。被告国が計画を認可したからと)いって自ら工事実施基本計画を定めたことにはならないから,庄内川は被告国によって,新川は被告県によって工事実施基本計画以下の改修計画が策定されている。 (b) 庄内川は年超過確率1/200(下流部,計画高水位の河口水)位T.P.2.90mとする本件計画によって専ら河道対応による治水対策が行われているのに対して,新川は年超過確率1/5,計画高水位の河口水位T.P.1.20m,さらに流域対応を行う新川流域整備計画・治水暫定計画により治水対策が行われている。 c河川管理実態等からみた庄内川と新川の分離・独立新川は,被告県の管理下にあった昭和25年から昭和44年までのみならず,昭和44年3月に庄内川水系に属する一級河川となった後も,新川水系として庄内川水系とは別個に管理されてきた。 (a) 昭和44年3月一級河川指定以前新川は,昭和25年度から昭和44年までの間,被告県が中小河川改修事業として改修工事を行ってきたが,①庄内川水系に関する「当初庄内川改修工事全体計画(昭和25年」の施行区域や計画)概要には新川に関する記載が全くなく,②庄内川水系に関する「庄内川改修工事第2回変更全体計画(昭和34年度」及び「庄内川)改修工事第3回変更全体計画(昭和43年度」にも新川に関する)記載が全くなく,③被告県が,庄内川改修誌において「8新川改修計画」という独立した項を設けて改修計画の内容を記述して新川について庄内川水系から独立した河川改修計画を策定していることから,被告県は,河川改修事業については,新川水系を庄内川水系とは別個独立した改修計画により河川工事を行ってきたといえる。 (b) 昭和44年3月一級河川指定以後新川は一級河川庄内川水系の一部として政令で指定されなが 川改修事業については,新川水系を庄内川水系とは別個独立した改修計画により河川工事を行ってきたといえる。 (b) 昭和44年3月一級河川指定以後新川は一級河川庄内川水系の一部として政令で指定されながら,被告県が庄内川とは別個独立した水系として全面的に管理しており,建設大臣も自ら管理するのではなく,被告県の全面的管理を認めてきた。 ①庄内川改良工事全体計画調査書の水系別流域面積一覧表において,新川水系と庄内川水系とを並列して両者を独立した水系として記載している。 ②建設省(現国土交通省)は被告県に対し庄内川改良工事全体計画調査書で,新川に関して以下のような指示及び意見を出しているが,これは,新川が建設大臣の管理となった後も,被告県が新川洗堰からの分派の廃止などによる計画高水流量その他河川工事の実施に関する基本的事項を作成して決定し,建設大臣が意見や指示をしているにすぎず,被告県が新川を全面的に管理することを前提とするものである。 <ア>昭和43年2月6日付け認可指示事項「新川については,合瀬川,青木川等の改修による流量増があるので分派流量を0としたときの庄内川改修に対する影響,並びに水系から分離されるときの問題点を十分に検討すること」<イ>昭和44年9月12日各中小河川全体計画審査意見書(河川名:庄内川)「新川についても改修基本構想をかため,庄内川に編入するかどうかは別途検討すること」<ウ>昭和46年6月14日各中小河川全体計画審査意見書(河川名:新川)「計画流量については了解するが庄内川との関係についてはなお直轄と協議すること」<エ>昭和49年10月28日各中小河川全体計画審査意見書(河川名:新川)「最大到達時間をチェックしておくこと「遊水地の容量」,に対して,10%程度の余裕及び地下水位の検討をして, ること」<エ>昭和49年10月28日各中小河川全体計画審査意見書(河川名:新川)「最大到達時間をチェックしておくこと「遊水地の容量」,に対して,10%程度の余裕及び地下水位の検討をして,遊水地の底高を決定して調節計算を行う」<オ>昭和50年6月10日各中小河川全体計画審査意見書(河川名:新川)「新川(久地野地点~五条川合流点)の最大流下能力を検討すること。新川の流量検討については,河川計画課にも説明しておくこと。新川下流の河道配分流量は概ね1100㎥/sとし,これを超える流量についてはポンプによる庄内川へのカット等についても検討すること」<カ>昭和51年5月19日各中小河川全体計画審査意見書(河川名:新川)「①計画流量については了承する。②新川の計画横断形及び縦断形については原則的に了承する。③施行計画(暫定)を検討しておくこと」。 ③庄内川改良工事全体計画調査書の「Ⅳ庄内川水系全体計画の変更概要(第4回変更」及び「Ⅴ新川」には次の記載があり,被)告県が,建設大臣とは別個独立に,新川について,洪水処理計画である新川洗堰の閉鎖その他基本高水の計画高水流量への流量調節という河川工事の実施の基本となるべき事項を策定している。 <ア>新川洗堰から地蔵川合流点までの区間については新川水系の洪水調節池(治水緑地)として利用する計画とした。 <イ>新川の洪水処理として地蔵川の流域変更,大山川放水路,洗堰治水緑地により基本高水1430㎥/sを河道流量(計画高水流量)1100㎥/sに調節する。 <ウ>新川水系全川についての計画流量配分が図示されている。 (c) 「20周年記念庄内川その流域と治水史」の記述建設省が,新川水系を庄内川水系の一部として管理していると認識していれば,庄内川水系に関する「20周年記念庄内川その流 流量配分が図示されている。 (c) 「20周年記念庄内川その流域と治水史」の記述建設省が,新川水系を庄内川水系の一部として管理していると認識していれば,庄内川水系に関する「20周年記念庄内川その流域と治水史」と題する冊子に新川についての改修計画や改修事業に関する記載があって当然であるところ,同冊子においては,昭和25年から平成元年までの庄内川水系にかかる河川改修事業について,新川の改修事業については改修計画も含め全く記載がなく,建設省も新川水系を庄内川水系の一部とは考えていなかった。 d被告国の主張に対する反論被告国は「新川は庄内川の派川である」と主張するが,新川は,。 庄内川の派川ではない。 (a) 降雨,降雪などによる降水を集水する地域的範囲を流域といい,河川はそれを集めて流れる流路であるが,派川は,そのうち本川の下流部で枝分かれしている河川であり,独自の集水域を持たず,また本川とつながっており日常的な水の供給は本川からなされているものである。派川といいながら本川から日常的に水が流れていない河川は存在しない。 (b) 新川は,独自の集水範囲を持って流域を形成し,かつ流域からの流出水を最終的に集水する河川である。新川は,庄内川と最も近いところでも堤防によって隔てられて分離されており,日常的に庄内川から水が流れているわけではなく,庄内川の水位が新川洗堰よりも高くなったときだけ新川洗堰を越流して庄内川の水が新川に流入するにすぎない。 (イ) 河川流域内の降雨による洪水はその流域内で処理し,他流域に持ち込まないのが洪水排除に関する根本原則である。やむを得ず他流域に洪水を分水するときは,分水先河川の処理能力に分水量分の処理能力を自らの負担で追加増加した上で分水しなければならない。洪水の流域内処理の原則は洪水などの悪水の排除に関する である。やむを得ず他流域に洪水を分水するときは,分水先河川の処理能力に分水量分の処理能力を自らの負担で追加増加した上で分水しなければならない。洪水の流域内処理の原則は洪水などの悪水の排除に関する流域間の生死をかけた激しい水争いを繰り返して確立された治水に関する根本原則である。洪水を他流域に排除し,他流域を危険にさらして自己流域の安全を図ることは慣習又は条理によって許されない。 新川は,自己流域の年超過確率1/5の洪水も河道対応で処理しきれない脆弱な河川であり,庄内川の管理者である被告国が新川洗堰越流洪水分の処理能力を自らの負担で新川に追加増加させる余地は全くないから,庄内川から新川へ洪水を流入させることはおよそ許されない。 (ウ) 本件水害は,新川洗堰から越流した庄内川の洪水によって新川の堤防が破堤して生じたものであるところ,上記(ア)のとおり,庄内川と新川が別河川であり,また上記(イ)のとおり,別河川である庄内川から新川へ洪水を流入させることはおよそ許されないのであるから,被告国は新川洗堰にも洪水が越流しないように,その上下流と同様の堤防を築くか,新川洗堰を嵩上げ閉鎖して庄内川の堤防として通常の高さにし,堤防として有すべき安全性を備えるものとしなければならなかった。 (エ) 堤防とは,流水が河川外に流出することを防止するために設けられる河川管理施設である(河川管理施設等構造令(昭和51年政令199号。以下「構造令」という)17条)ところ,新川洗堰は庄内川から。 新川へ洪水が越流するようになっており,堤防として通常有すべき安全性を欠いていた。 被告国は,新川洗堰の嵩上げ閉鎖を行わず,新川洗堰が堤防として通常有すべき安全性を欠いたままにしていたから,新川洗堰には,国家賠償法2条1項が規定する瑕疵がある。 イ庄内川の河川管理の瑕疵(そ 。 被告国は,新川洗堰の嵩上げ閉鎖を行わず,新川洗堰が堤防として通常有すべき安全性を欠いたままにしていたから,新川洗堰には,国家賠償法2条1項が規定する瑕疵がある。 イ庄内川の河川管理の瑕疵(その1)(ア) すでに改修計画が定められ,これに基づいて現に改修中である河川については,同計画が全体として格別不合理と認められる場合には,同計画に基づく河川管理には瑕疵があるというべきである(最高裁昭和59年1月26日第一小法廷判決・民集38巻2号53頁参照。 )(イ) 被告国は,本件水害発生当時,本件計画に基づき庄内川の河川改修を行っていたが,同計画は,格別不合理なものであった。 a被告国は,改正前河川法9条1項,16条1項,2項,改正前施行令10条2項から,同法4条1項に基づく水系指定を受けた水系に属するすべての河川について,計画高水流量その他当該河川の河川工事の実施についての基本となるべき事項(工事実施基本計画)を定めておかなければならず,工事実施基本計画には,①基本高水並びにその河道及び洪水調節ダムへの配分に関する事項,主要な地点における計画高水流量に関する事項,主要な地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関する事項といった河川工事の実施の基本となるべき計画に関する事項,②主要な地点における計画高水位,計画横断形その河道計画に関する重要な事項等を定めなければならない。 また,被告国は,改正前施行令2条2号から,自ら工事実施基本計画を定めなければならず,一級河川の指定区間についても,これを都道府県に定めさせることは許されない。 b(a) 新川は一級河川庄内川水系にある一級河川であるから,上記法令の定めから,被告国は,新川に関して工事実施基本計画を自ら定めなければならないのであり,被告県が定めることはできない。 (b) b(a) 新川は一級河川庄内川水系にある一級河川であるから,上記法令の定めから,被告国は,新川に関して工事実施基本計画を自ら定めなければならないのであり,被告県が定めることはできない。 (b) 新川はその重要性(かつて庄内川に合流していた庄内川右岸にある大山川,合瀬川,五条川に加え新地蔵川を支川にもち,新川水系の流域面積は地蔵川を含め庄内川水系全体の流域面積の約20%を占め,沿川地域の地形が低平で都市化しており,洪水が起こると大きな被害が予想される)からしても,被告国が工事実施基本計画。 を定める必要がある河川である。 c本件計画における新川についての検討と記載被告国が定めた本件計画中には,新川に関する計画高水流量その他河川工事の実施についての基本となるべき事項(工事実施基本計画)が全く記載されていなかった。また,基本高水や計画高水流量を決定するための流出計算モデル等による流量検討において,新川流域は庄内川流域の分割小流域とされておらず他流域他水系とされており,新川流域は庄内川水系の洪水流量検討の対象に入れられていなかった。 d被告国の主張に対する反論被告国は「本件計画は,庄内川から新川への分派量を0㎥/sと,している。これは,最終的には庄内川本川からの洪水を新川に分流させないという庄内川水系全体から見て基本となるべき計画に関する事項を新川に関して定めたものである」旨主張するが,新川洗堰から。 の分派量0㎥/sというのは庄内川の分派量であり,庄内川の基本高水についての河道及び洪水調節施設への配分に関する流量の記載であって,新川の流量に関する記載ではないから,上記記載があるだけでは,新川に関する河川工事の実施についての基本となるべき事項(工事実施基本計画)が定められていることにはならない。 また,全国に109ある一級河川水系 量に関する記載ではないから,上記記載があるだけでは,新川に関する河川工事の実施についての基本となるべき事項(工事実施基本計画)が定められていることにはならない。 また,全国に109ある一級河川水系の中で,派川への分派量を0㎥/sとする宮川,吉野川,十勝川は,派川への分派量を0㎥/sとしていても派川に関して計画高水流量その他河川工事の基本事項(主要な地点における計画高水位や計画横断形等)が記載されており,分派量0㎥/sという記載から河川工事の実施についての基本となるべき事項(工事実施基本計画)の記載があるとはいえない。 (ウ) 被告国は,本件水害発生当時,本件計画に基づく庄内川の改修計画である「直轄河川改修計画書庄内川水系庄内川(平成元年11月」)(以下「直轄河川改修計画書」という)により庄内川の河川改修を行。 っていたが,同計画は,格別不合理なものであった。 すなわち,河川の改修は,緊急に改修を要する箇所から段階的に行うことになるため,流域全体について調査・検討をした上で策定された改。 ,修計画(これは工事実施基本計画とは区別された工事計画である)に改修の緊急性や必要度を考慮して改修の時期・順序が定められていなければならない。したがって,庄内川の改修計画の策定にあたっても,流域全体についての検討,すなわち新川の新川洗堰よりも下流の改修状況等の諸事情をも検討して,改修の時期と順序が定められなければならなかった。 しかし,直轄河川改修計画書の策定に際して,新川の改修状況その他新川の諸事情は検討の対象ともされておらず,新川の諸事情やそれと庄内川改修との工事の時期と順序を含めた関わりについては全く検討されていない。また,同改修計画書には,新川の計画高水流量その他計画高水位などの河川工事の実施に関する事項の記載がなく,庄内川の改修工事に 川改修との工事の時期と順序を含めた関わりについては全く検討されていない。また,同改修計画書には,新川の計画高水流量その他計画高水位などの河川工事の実施に関する事項の記載がなく,庄内川の改修工事についても時期と順序が定められておらずその検討もされていなかった。 ウ庄内川の河川管理の瑕疵(その2)(ア) 河川管理についての瑕疵の有無は,過去に発生した水害の規模,発生の頻度,発生原因,被害の性質,降雨状況,流域の地形その他の自然的条件,土地の利用状況その他の社会的条件,改修を要する緊急性の有無及びその程度等諸般の事情を総合的に考慮し,河川管理における財政的,技術的及び社会的制約の下で同種・同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認しうる安全性を備えていると認められているかどうかを基準として判断されなければならない(最高裁昭和59年1月26日第一小法廷判決・民集38巻2号53頁参照。 )(イ) 新川洗堰を嵩上げ閉鎖せず,新川への庄内川洪水の流入を残したまま庄内川下流の改修を行ってきたという被告国による庄内川の河川管理は,河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認しうる安全性を備えているとはいえず,瑕疵がある。 a新川の治水上の脆弱性(a) 新川の河道流下能力新川は河道流下能力の乏しい治水上極めて脆弱な河川である。 ①新川について最初に計画高水流量その他の事項が定められた計画は,昭和16年に作成された直轄改修のための「第1回全体計画流量配分」であり,それによれば,洗堰越流量300㎥/s,五条川合流後の計画高水流量600㎥/sと計画され,同計画は昭和25年庄内川改修工事全体計画に引き継がれた。 しかし,昭和30年代後半から,新川流域の開発が進み,都市化が進行し,流域では洪水流量の増大等による水害の危険性に脅かされるこ と計画され,同計画は昭和25年庄内川改修工事全体計画に引き継がれた。 しかし,昭和30年代後半から,新川流域の開発が進み,都市化が進行し,流域では洪水流量の増大等による水害の危険性に脅かされることとなったため,昭和43年全体計画における認可指示事項(同年2月6日付け)で,従来の計画を変更し,洗堰越流量を0㎥/sとすることが検討され,本件計画において,新川流域の都市化による流出量の増大等という流域の状況の下,新川河道の流下能力不足という現況から,洗堰を閉鎖・嵩上げし,越流量を0㎥/sとすると決定された。 ②被告県は,昭和52年,年超過確率1/100規模の降雨に対応する新川の改修計画として,庄内川水系全体計画を策定したが,これを短期間に実施するのはほとんど不可能であったため,同計画中の暫定計画において河道整備のみの場合で年超過確率1/30規模,治水緑地整備を含める場合で年超過確率1/50規模の計画を策定した。しかし,都市化の進展は著しく,水害の危険性はさらに増大していたため,新川流域整備計画・治水暫定計画が策定され,年超過確率1/5規模への対応とされた。 ③新川流域整備計画・治水暫定計画において,年超過確率1/5規模の場合の基本高水は960㎥/sであったが,新川にはこれを流下させる能力はなかったため,同計画の流量分担計画では河道の分担量を基本高水960㎥/sのうち730㎥/sにとどめ,流域分担100㎥/sを設けた。 ④新川流域整備計画・治水暫定計画策定時の現況の新川の五条川合流点における河道処理流量も380㎥/sであり,同計画に比べ,著しく河道流下能力が不足していた。 ⑤本件水害当時の新川の改修事業は,新川流域整備計画に基づくものであり,年超過確率1/5,計画降雨量50㎜/hにすぎないものであったが,当時はその計画さえも達成 著しく河道流下能力が不足していた。 ⑤本件水害当時の新川の改修事業は,新川流域整備計画に基づくものであり,年超過確率1/5,計画降雨量50㎜/hにすぎないものであったが,当時はその計画さえも達成しておらず,新川は水害に対して脆弱で危険な状況にあった。 (b) 新川流域の浸水被害等①昭和44年の庄内川の直轄編入以降本件豪雨までの間に,新川周辺では38回もの水害が発生したが「新川水系」の浸水被害,はこれにとどまるものではなく,新川流域の青木川,五条川,合瀬川,鴨田川及び水場川などで生じた浸水被害もこれに含まれ,別紙新川周辺浸水被害一覧表の浸水被害も新川水系の浸水被害に当たる。 ②新川流域において浸水被害を受けている市町村からは,水害を防止するために雨水貯留施設の整備促進,排水機場の設置,排水機の増強,新川洗堰の嵩上げ・閉鎖等を求める陳情,要望,意見等がほぼ毎年繰り返されていた。 ③上記①の浸水被害はそのほとんどが内水被害であるが,これは,新川に十分な流下能力がなかったため,外水氾濫による被害を回避すべく堤内での湛水被害を甘受した結果に他ならなかった。すなわち,新川流域整備計画によると,新川の現況計画対象高水は750㎥/sであり,現況河川分担流量は380㎥/s,現況流域分担流量は370㎥/sとなっており,現況の流下能力は約50パーセントでしかなく,新川で内水被害の形で現れている浸水被害は,新川の破堤による外水被害が生じないようにするため新川への流入が制限されていることがその原因であった。 (c) 外水対策としての総合治水新川は,昭和54年から開始された総合治水対策の適用河川の一つである。同対策は,洪水氾濫対策として河川整備によるだけでは計画目標とする降雨に対する安全度の確保が困難な河川について,河川整備とあわせて流域からの 54年から開始された総合治水対策の適用河川の一つである。同対策は,洪水氾濫対策として河川整備によるだけでは計画目標とする降雨に対する安全度の確保が困難な河川について,河川整備とあわせて流域からの流出量を抑制する流域対策が急務であることから,流出量の抑制対策を洪水氾濫対策に位置づけるものであって,流下能力の低い新川の外水対策でもあった。 b新川と庄内川の安全度庄内川は新川より安全度が高かった。新川は,庄内川と比べ洪水防御計画が計画規模の大きさなどにおいて大きく劣っており,整備状況も現況堤防の高さや幅も劣っていた。 (a) 洪水防御計画について①計画規模等庄内川は,基準地点枇杷島上流域で年超過確率1/200・降雨量250㎜/日として本件計画によって専ら河道対応による改修事業が進められてきたのに対し,新川は,年超過確率1/100・計画降雨量98㎜/hの庄内川水系全体計画の実施が困難であったため,これを大きく下回る年超過確率1/5・降雨量50㎜/hの新川流域整備計画により河道対応及び流域対応を合わせた総合治水対策が行われてきた。 ②計画高水位の河口水位について計画堤防高は計画高水位に余裕高を加えたものであるから,計画高水位の高さにより堤防の安全度が定まるところ,計画高水位決定のためになされる不等流計算では河口として0K地点の水位を出発点水位として順次上流へ水位計算していくから,計画高水位の決定において河口水位を高く設定すると計画高水位は高い水位になる関係にあり,河口水位を比較検討することで両河川の安全度の比較が可能となる。 庄内川の河口水位は本件計画においてT.P.2.90mとされ,新川の河口水位は庄内川水系全体計画及び新川流域整備計画においてT.P.1.20mとされ,庄内川の方が1.70m高く設定されており,その結果庄内川 口水位は本件計画においてT.P.2.90mとされ,新川の河口水位は庄内川水系全体計画及び新川流域整備計画においてT.P.1.20mとされ,庄内川の方が1.70m高く設定されており,その結果庄内川の計画高水位は新川の計画高水位よりも1.7m高くなっており,計画高水位に基づく安全度は新川の方が庄内川よりも低かった。 (b) 整備状況について①現況堤防高庄内川の現況堤防高は,別紙図1-1及び1-2の「現況堤防高(緑の線)のとおりであるが,両図の「現況堤防高」と「計」画高水位+1.2m」の比較から明らかなように,5Kより上流では,ごく限られた個所を除いて現況堤防高は,計画高水位に構造令20条1項の基準値1.2m(本件計画では,庄内川下流部の計画高水流量は3500~4200㎥/sとされ,構造令20条1項では計画高水流量2000㎥/s以上5000㎥/s未満についての余裕高基準値は1.2mとされている)を加えた高。 さ(以下,これを「構造令基準」という)を上回っており(約。 0.3m以上上回っているところが大部分である,庄内川下。)流部は,3.5~5.0K地点の区間を除いては,現況堤防高は高さにおいてほぼ構造令基準以上の堤防であった。 新川の現況堤防高は,別紙図2-1の「堤防高」のとおりであり,橋梁部分では極端に高いところがあるものの,それ以外は構造令基準(同図の「計画堤防高」と同じ高さである)程度の高。 さである(庄内川水系全体計画によれば,新川の計画高水流量は590~1100㎥/sで,構造令20条1項では計画高水流量500㎥/s以上2000㎥/s未満についての余裕高基準値は1.0mとされており,計画高水位にこれを加えたものが構造令基準となる。 。)上記のとおり,構造令基準を上回っている程度は庄内川の方が新川より高く,庄内 000㎥/s未満についての余裕高基準値は1.0mとされており,計画高水位にこれを加えたものが構造令基準となる。 。)上記のとおり,構造令基準を上回っている程度は庄内川の方が新川より高く,庄内川の現況堤防は,高さにおいて新川と同程度かそれを上回っており,越水に対する安全性が高い。 ②現況堤防の計画高水位での堤防幅<ア>堤防幅の算出方法計画高水位は計画高水流量の洪水を流下させる水位とされ,盛土による堤防の勾配は50%以下とされており(構造令22条1項,天端から高さ1に対して幅2以上の比によって法幅)が決まる関係にあるから,計画高水位での堤防幅によって,計画規模の洪水のときの河川水の堤体浸透に対する安全度を検討することができる。 計画高水位での堤防幅は,天端幅に計画高水位から天端までの高さ(余裕高)と法勾配によって決まる法幅を加えたものであり,以下の計算式により求められる。 計画高水位での堤防幅=天端幅+余裕高÷法勾配×2<イ>庄内川の計画高水位での堤防幅庄内川の現況天端幅は7m,庄内川下流部の現況堤防は構造令基準の余裕高1.2m以上の高さがあるので余裕高を1.2mとし,法勾配は高さ1に対して幅が2であるから,計画高水位での堤防幅は,7+1.2÷1/2×2=11.8mとなる。 <ウ>新川の計画高水位での堤防幅新川の現況天端幅は6m,新川12.8K地点より上流の余裕高は1mであり,法勾配は12.6K地点より上流は高さ1に対して幅2であるから,計画高水位での堤防幅は,6+1÷1/2×2=10mとなる。 <エ>現況堤防の計画高水位での堤防幅は,庄内川の方が新川よりも1.8m大きく,河川水の堤体浸透に対する安全度からは,庄内川の方が新川よりも安全性が高い。 c新川と庄内川の安全度の本件豪雨による検証本件豪雨により, 高水位での堤防幅は,庄内川の方が新川よりも1.8m大きく,河川水の堤体浸透に対する安全度からは,庄内川の方が新川よりも安全性が高い。 c新川と庄内川の安全度の本件豪雨による検証本件豪雨により,庄内川の方が新川よりも安全度が高いことが検証された。 (a) 本件豪雨時の庄内川の状況①水位本件豪雨時の庄内川の痕跡水位は別紙図1-1及び1-2のとおりであり,約5K地点の上下流の状況は,以下のとおりであった。 約5Kより下流の水位は計画高水位以下であり,河口水位はT. P.1.64mであった。現況堤防高が計画高水位より低い3. 8K~4.6Kの区間で水位と堤防高の差が20~30㎝となり,一色大橋下流の4.4K付近では越水があった。 約5Kより上流の水位は,計画高水位を最大で約0.8m上回っていたが,水位と現況堤防高を比較すると,現況堤防高がその上下流に比べて低くなっている左岸8.4K,12K及び14. 2K並びに右岸10K及び14.2Kを除いて,ほとんどの区間では堤防高を1m以上下回っていた。 ②堤防損傷<ア>裏法崩れ(法すべり)庄内川で裏法崩れがあったのは,2か所だけであり,新川洗堰よりも下流では裏法崩れはなかった。 <イ>漏水新川洗堰よりも下流での漏水は右岸15K付近であったが,規模は小さかった。 <ウ>表法洗掘表法洗掘はなかった。 <エ>越水個所での堤防損傷越水個所である一色大橋下流の右岸4.4K付近の堤防は,裏法尻を初めとする法面は洗掘や崩れによる乱れは全くなく,裏法崩れはなかった。 ③検証結果本件豪雨において,庄内川は,洪水位が約6Kより上流で計画高水位を最大で約0.8m上回ったものの,現況堤防高に対しては,現況堤防高の低い数箇所以外のほとんどの区間で約1mは下回る水位で流下でき,現況堤防高が最も低い一色大橋 ,洪水位が約6Kより上流で計画高水位を最大で約0.8m上回ったものの,現況堤防高に対しては,現況堤防高の低い数箇所以外のほとんどの区間で約1mは下回る水位で流下でき,現況堤防高が最も低い一色大橋右岸下流で越水しただけで,同部分を含め新川洗堰の下流では問題とすべき堤防損傷は認められなかったのであり,庄内川堤防の洪水に対する強い強度が検証された。 (b) 本件豪雨時の新川の状況①水位新川は,本件豪雨で2回のピーク水位を記録し,第1ピーク(平成12年9月11日午後9時)の水位は図2-1のとおりであり,第2ピーク(平成12年9月12日午前3時)の水位は図2-2のとおりであった。 洪水位を計画高水位と比較すると,第1ピークでは五条川合流直前の12.8Kより上流の区間で洪水位が計画高水位を最大で約0.8m上回っており,第2ピークでは同区間で洪水位が計画高水位を1.1m上回っていた。 洪水位と現況堤防高を比較すると,第1ピークでは,洪水位が現況堤防高の低い所でも少なくとも数10㎝下回っていたが,第2ピークでは五条川合流直前の12.8Kより上流の区間で,洪水位は現況堤防高の低い各所(本件破堤地点を含む)で現況堤。 防高とほぼ同じであり,ほぼ堤防天端まで満杯になって洪水が流れていた。 ②堤防損傷本件破堤個所では,平成12年9月12日午前2時ころ,堤防裏法尻部ですべり崩壊が生じて堤体に亀裂が生じるようになり,このすべり崩壊が時間とともに拡大し,同日午前2時30分ころには天端に達し,河川水位が堤防天端満杯状態であったことから河川水の浸透及び水圧に耐えることができず,同日午前3時30分ころに破堤に至った。 本件破堤個所以外でも,第2ピークでは,越水が各所で生じ,また堤防裏法の法崩れや漏水も各所で生じた。新川24.3Kと新地蔵川34Kでは破堤 えることができず,同日午前3時30分ころに破堤に至った。 本件破堤個所以外でも,第2ピークでは,越水が各所で生じ,また堤防裏法の法崩れや漏水も各所で生じた。新川24.3Kと新地蔵川34Kでは破堤が生じた。 ③検証結果新川は,本件豪雨において,洪水位が現況堤防高を下回った程度は第1ピークで最低数10㎝,第2ピークでは洪水位が堤防天端とほぼ同じ高さであり,第1ピークのように洪水位が堤防天端よりも数10㎝以上低ければ破堤を起こすような堤防損傷なく洪水を流下できるが,第2ピークのように堤防天端まで満杯状態であれば破堤や堤防損傷を引き起こすことが検証された。 (c) 比較検討本件豪雨により,庄内川は新川より現況堤防高が洪水位を上回る程度が大きく,越水しても堤防損傷の生じない安全度の高い堤防を有しており,新川よりも洪水に対して安全であることが検証された。 d新川洗堰閉鎖と庄内川のポンプ排水新川洗堰を閉鎖しても庄内川左岸側の内水排水ポンプの運転を制限すれば現況堤防高が計画高水位より低い区間を含めて庄内川の新川洗堰より下流の水位の上昇はないにもかかわらず,庄内川左岸側の内水排除のためのポンプ排水による水位の上昇を打ち消すために新川洗堰が閉鎖されないまま残されていた。 (a) 新川洗堰閉鎖と庄内川のポンプ排水の有無による庄内川水位の比較現況河道を前提に,Ⅰ新川洗堰を閉鎖しない場合(本件豪雨時の再現状況)及びⅡ新川洗堰を閉鎖した場合(小田井遊水地による100㎥/sの分派を前提とする)と,Ⅲ排水ポンプ(①当知,宝。 神,打出,②岩塚,中村,城北及び③矢田川の福徳,三階橋,守西,宮前の各排水ポンプ)による排水がある場合及びⅣ同排水ポンプによる排水のない場合とを組み合わせて,庄内川の新川洗堰よりも下流の本件豪雨時の水位を計算すると,次のいずれの地 田川の福徳,三階橋,守西,宮前の各排水ポンプ)による排水がある場合及びⅣ同排水ポンプによる排水のない場合とを組み合わせて,庄内川の新川洗堰よりも下流の本件豪雨時の水位を計算すると,次のいずれの地点においても,新川洗堰を閉鎖してポンプ排水をしない場合(ⅡかつⅣの場合)の方が,新川洗堰を閉鎖せずにポンプ排水をした場合(ⅠかつⅢの場合)よりも低い水位となる。 ①一色大橋(4.53K)付近ⅠかつⅢの場合4.646mⅡかつⅣの場合4.567m(<ア>-約0.08m)②4.4K地点ⅠかつⅢの場合4.354mⅡかつⅣの場合4.283m(<ア>-約0.07m)③豊公橋直上流(12.0K)ⅠかつⅢの場合8.078mⅡかつⅣの場合8.047m(<ア>-約0.03m)④東海道線橋梁(14.233K)ⅠかつⅢの場合9.114mⅡかつⅣの場合9.096m(<ア>-約0.02m)(b) 庄内川左岸のポンプ排水による水位上昇を打ち消すための新川洗堰の必要性上記(a)のとおり,新川洗堰を閉鎖してもポンプ排水を停止すれば水位は上がらず,逆にポンプ排水を停止しなければ新川洗堰から越流させない限り水位が上昇することになるから,水位の上昇を防ぐための「はけ口」として新川洗堰が必要となる。 e新川洗堰を閉鎖しなかったことの河川管理としての瑕疵(a) 被告国は,上記aの新川の治水上の脆弱性,上記b,cの新川の安全度が庄内川の安全度よりも劣っていることを認識していたにもかかわらず,新川とその流域の形成過程その他自然条件,土地利用状況とその変化,河道流下能力等の河道状況及び水害の状況等新川についての諸事情の検討を全くしていなかった。 (b) 被告国は,上記dのとおり,新川洗堰を閉鎖しても庄内川左岸側の内水排水ポンプの運転を制限すれば現況堤 河道流下能力等の河道状況及び水害の状況等新川についての諸事情の検討を全くしていなかった。 (b) 被告国は,上記dのとおり,新川洗堰を閉鎖しても庄内川左岸側の内水排水ポンプの運転を制限すれば現況堤防高が計画高水位より低い区間を含めて庄内川の新川洗堰より下流の水位の上昇はなく,庄内川左岸側の内水排除のためにポンプ排水をするとそれによる水位の上昇を打ち消すために新川洗堰が必要となることを認識していた。仮に認識していなかったとすれば,被告国は,庄内川下流部の堤防嵩上げに際して河川改修における下流優先の原則の適用において当然しなければならない検討(新川洗堰の閉鎖による庄内川水位への影響の検討)を行っていなかったことになる。 被告国は,意図して,あるいはなすべき検討をせずに,庄内川左岸側の内水排除のためのポンプ排水を行うべく,新川洗堰を閉鎖しなかった。 (c) 上記(a),(b)のとおり,被告国は,庄内川の河川管理である河川改修において,新川の諸事情や庄内川左岸側のポンプ排水を停止すれば新川洗堰を閉鎖しても下流水位の上昇はないという河川改修において考慮すべき事情を知っていながら,あるいは庄内川下流部の堤防嵩上げにおいて上記事情を当然検討すべきであるのに全く検討せず,かえって,庄内川左岸の内水排除のためのポンプ排水のために新川洗堰を閉鎖せず存続させて,河道流下能力が不十分で浸水被害が激しく治水上脆弱な新川に洪水を流入させるという河川改修において本来考慮すべきでない事情を過大に配慮して庄内川左岸の内水ポンプ排水を優先させていた。 これは,同種同規模の河川管理の一般水準及び社会通念から認められる河川管理の在り方を大きく逸脱した明らかに不合理なものであり,瑕疵ある河川管理である。 (3) 新川治水緑地の管理の瑕疵及び新川の河川管理の瑕疵についてア 川管理の一般水準及び社会通念から認められる河川管理の在り方を大きく逸脱した明らかに不合理なものであり,瑕疵ある河川管理である。 (3) 新川治水緑地の管理の瑕疵及び新川の河川管理の瑕疵についてア新川治水緑地の管理の瑕疵(ア)a昭和50年の本件計画において,新川流域の都市化による流出量の増大等という流域の状況の下で,新川河道の流下能力不足という現況から,新川洗堰を閉鎖・嵩上げし,新川洗堰からの越流量を0㎥/sとすることが決定された。 b昭和57年の新川流域整備計画においても,基準年度の昭和55年から10年後の昭和65年(平成2年)度を目標年度として,新川洗堰閉鎖を前提においた計画を立てた。 (イ) 上記の計画の下では,河川貯留施設である新川治水緑地を整備するということは新川洗堰からの越流量を0㎥/sとする措置をとることを意味する。 (ウ) 新川治水緑地の庄内川側に堤防がなく庄内川からの洪水の流入があるときには,新川洗堰からの越流量が0㎥/sとなっておらず,新川治水緑地が治水緑地としての役割を果たしていないことは明白であるから,新川治水緑地が治水緑地として「通常有すべき安全性」を欠いていたことは明らかである。 イ新川の河川管理の瑕疵(その1)(ア) すでに改修計画が定められ,これに基づいて現に改修中である河川については,同計画が全体として格別不合理と認められる場合には,同計画に基づく河川管理には瑕疵があるというべきである(最高裁昭和59年1月26日第一小法廷判決・民集38巻2号53頁参照。 )(イ) 被告県は,本件水害発生当時,庄内川水系全体計画に基づいて新川の河川改修を行っていたが,同計画は格別不合理なものであった。 a上記(2)イのとおり,新川については,本件計画において基本高水その他河川工事の実施についての基本となるべ 水系全体計画に基づいて新川の河川改修を行っていたが,同計画は格別不合理なものであった。 a上記(2)イのとおり,新川については,本件計画において基本高水その他河川工事の実施についての基本となるべき事項(工事実施基本計画)が定められていなかったから,庄内川水系全体計画を本件計画の下位計画と位置づけることはできない。 b庄内川水系全体計画は,改正前河川法16条1項の規定する河川工事の実施についての基本となるべき事項(工事実施基本計画)に基づかない格別不合理な計画である。 ウ新川の河川管理の瑕疵(その2)(ア) 改修計画が定められ,これに基づいて現に改修中である河川については,同計画が全体として格別不合理と認められない場合でも,その後の事情の変動により当該河川の未改修部分(本件では新川洗堰部分がこれにあたる)につき水害発生の危険性が特に顕著となり,当初の計画。 の時期を繰り上げ,又は工事の順序を変更するなどして早期の改修工事を施工しなければならないと認めるべき特段の事情が生じた場合に,同未改修部分につき改修が行われていなければ,河川管理に瑕疵があるというべきである(最高裁昭和59年1月26日第一小法廷判決・民集38巻2号53頁参照。 )(イ) 新川については,上記(2)ウ(イ)aのとおり,新川の治水上の脆弱性のため,早期に新川洗堰を閉鎖すべき特段の事情があり,被告県は,庄内川の河川管理者である被告国に対して新川の河川管理の前提となっている新川洗堰の閉鎖を求める作為義務が生じていたにもかかわらず,被告国に対し新川洗堰の閉鎖を求めず,その結果新川洗堰の閉鎖がなされなかった。 (4) 被告国の損失補償責任について新川洗堰は,そこから庄内川の洪水を新川に流入させて,被告国が管理する庄内川の破堤被害を防止するためのものであり,庄内川左岸側 新川洗堰の閉鎖がなされなかった。 (4) 被告国の損失補償責任について新川洗堰は,そこから庄内川の洪水を新川に流入させて,被告国が管理する庄内川の破堤被害を防止するためのものであり,庄内川左岸側の内水排除のためのポンプ排水による水位上昇を打ち消すためのはけ口として閉鎖されず存置されてきた。 原告ら新川流域の住民は,新川洗堰によって特別な犠牲を負わされている。 したがって,少なくとも被告国は新川洗堰からの流入水によって生じた原告らの被った損害について損失補償の責任がある。 (5) 損害について原告らが本件水害により被った損害は,それぞれ別紙被害総括表のとおり(このうち,建物損害額算定上の条件は,別紙建物損害額算定条件一覧表のとおりであり,その他の損害については,実際に生じた損害額を計上している)であるが,以下のいずれかの算定方法により,内金として1人当たり。 400万円の損害賠償を請求する。 ア包括的一律請求本件水害により,原告らそれぞれに,別紙被害総括表のとおり,損害が生じたが,原告らはすべて本件水害により床上浸水の被害を受け,生活基盤を破壊されたのであり,同表の個別損害項目を積み上げただけでは評価しきれない生活利益全体が包括的に失われるという意味で財産的・精神的損害を総合した一つの総体としての「生活」が破壊されるという損害を被った。 「生活」が奪われた実態は,各原告の収入や物的財産の多少により大きく異なるものではなく,各原告間で差はないから,一律に,少なくともその損害額が400万円を下ることはないと金銭化した上で,内金として400万円を請求する。 イ慰謝料の一括一律請求本件水害は,原告らに精神的苦痛という無形の被害も生じさせた。見る間に床上まで浸水していった体験が恐怖として原告らの心に深い傷を与えた。床上浸水であるため寝食 を請求する。 イ慰謝料の一括一律請求本件水害は,原告らに精神的苦痛という無形の被害も生じさせた。見る間に床上まで浸水していった体験が恐怖として原告らの心に深い傷を与えた。床上浸水であるため寝食の場や日常の家財道具は一瞬にして奪われ,復旧に相当の期間と労力がかかった。また,本件水害は個人的な作品・文書・写真,形見,贈与物,回顧物,知的財産などを失わせ,汚損させた。 これらは復元不可能なものであり,原告らは金銭では代えがたい精神的苦痛を受けた。 上記のように各原告の「生活」が破壊された事実を慰謝料算定において斟酌し,財産的損害をもすべて考慮した慰謝料としての一括一律請求として,原告らそれぞれについて400万円を請求する。 ウ個別損害項目の積み上げによる損害賠償請求本件水害により,原告らそれぞれに,別紙被害総括表のとおりそれぞれ400万円を下らない損害を被ったから,同損害の内金400万円を請求する。 被告国の主張(1) 本件破堤の原因について新川洗堰からの庄内川流入水の流入は新川の水位を高めた要因の一つではあるが,新川洗堰からの庄内川流入水の流入が本件破堤に結びついたかは不明である。本件破堤個所の堤体への浸透は,河川水のみならず,堤体への記録的な降雨等による影響もあった。 (2) 新川洗堰の瑕疵及び庄内川の河川管理の瑕疵についてア新川洗堰の瑕疵について(ア) 庄内川と新川は別河川ではないこと新川開削の経緯は,以下のとおりであり,新川は庄内川水系に属する庄内川の派川であって,新川洗堰が閉鎖されていないことは同洗堰の瑕疵にあたらない。 a江戸時代,瀬戸地方を中心に窯業が盛んになり,その原材料としての陶土が採掘され,磁器を焼き上げる際の燃料として木材が採取され,山林が荒廃して流出土砂が増大した上,庄内川河口付近の干拓により流路 a江戸時代,瀬戸地方を中心に窯業が盛んになり,その原材料としての陶土が採掘され,磁器を焼き上げる際の燃料として木材が採取され,山林が荒廃して流出土砂が増大した上,庄内川河口付近の干拓により流路が延長されて庄内川の流水の疎通が悪くなり,庄内川下流部の河床が上昇し,洪水が頻発するようになった。他方,合瀬川や五条川等は庄内川の右支川であったところ,庄内川下流部右岸地域はその付近一帯で最も低い低平地となっていることや庄内川の河床が上昇したことから,その流水が直接庄内川に合流することが困難になった。そのため,合瀬川や五条川の排水も悪くなり,それらの各河川と庄内川との合流点付近には大きな水たまりができ,湿地的地形となった。出水のたびに合流点付近で破堤し,付近一帯に大きな被害をもたらした。 庄内川の河床上昇による水はけの悪化と頻発する洪水に対して,流域住民からの治水対策を求める直訴が何度も行われ,尾張藩の藩士水野千之右衛門の建白書の提出などもあって,天明4年(1784年)から天明7年(1787年)にかけて,新川洗堰の築造と新川の約16㎞の開削が行われた。すなわち,合瀬川や五条川を直接庄内川へつなぐのではなく,バイパス路として新川を構築してこれに合瀬川や五条川をつなぐことによって庄内川右岸の排水効果を図り,バイパス路である新川と庄内川をつなげることにより庄内川の洪水流量を調節することとした。 b原告らの主張に対する反論新川は庄内川から独立した河川ではない。 河川は有機的に連結して水系をなし,相互に影響を及ぼすものであるところ,現実に新川の庄内川からの分岐点である新川洗堰は現時点においても改修がされていないのであるから,現時点においても新川が庄内川の派川であることは否定できない。 一級河川の指定は,河川法に基づき,はじめに政令で水系の指定を行 分岐点である新川洗堰は現時点においても改修がされていないのであるから,現時点においても新川が庄内川の派川であることは否定できない。 一級河川の指定は,河川法に基づき,はじめに政令で水系の指定を行い,次いでその水系にかかる河川を建設大臣(現国土交通大臣)が指定する。 庄内川水系は昭和40年3月24日政令43号により改正前河川法4条1項の水系(一級水系)に指定され,次いで昭和44年3月20日政令31号により,庄内川水系に属する庄内川,矢田川,香流川,隅除川,天神川,瀬戸川,新川,大山川等の河川が一級河川に指定されたものであり,この指定の仕方からしても,新川は庄内川水系に属する一級河川である。 原告らは,庄内川の本件計画における計画規模と新川の治水暫定計画における計画規模を比較してその規模が異なることを両河川が別個の河川であることの根拠とするが,新川の最終的な目標である庄内川水系全体計画の計画規模は年超過確率1/100であり,治水暫定計画はあくまで庄内川水系全体計画の達成に至る過程の段階的なものであって,上記のような比較をすること自体,意味がない。 (イ) 新川洗堰は堤防ではないこと新川洗堰は,水位がある高さ以上になると水が越流するもので,洪水調節用の遊水地又はある水位以上の水だけを分流させる分水路に用いられる「越流堤」といわれる河川堤防技術の一種であり,その本来の機能は水位がある一定の高さ以上になると水が越流することにより洪水を調節するものである。したがって,新川洗堰は,洪水時の水流をその流路内に完全に制限して氾濫を防止することをその本来的機能とする堤防ではないから,河川管理施設としての新川洗堰自体の管理の瑕疵は問題とならない。 イ庄内川の河川管理の瑕疵について被告国は,基本となる河川計画に基づく改修を鋭意進めていたのであり,庄 能とする堤防ではないから,河川管理施設としての新川洗堰自体の管理の瑕疵は問題とならない。 イ庄内川の河川管理の瑕疵について被告国は,基本となる河川計画に基づく改修を鋭意進めていたのであり,庄内川の河川管理に瑕疵がなかった。 (ア) 河川計画a昭和39年に全面改正された河川法では,従前の管理区間ごとに独立した河川管理を行う「区間管理主義」を改め,都道府県の財政力等による地域格差を解消し,水系全体に影響を及ぼすような行為について一貫した管理を可能とすべく「一級河川」と「二級河川」という,分類を採用し,国土保全・国民経済上重要な河川である一級河川はすべて建設大臣が管理することとした(一元管理化。また,一級河川)では,建設大臣が水系一貫管理を実現するため,建設大臣は水系ごとに河川改修工事の基本計画(工事実施基本計画)を定めるものとされた。 b昭和44年3月,庄内川が一級河川に指定されたこと(以下「直轄編入」という)により,その管理主体が愛知県知事から建設大臣へ。 と移行し,建設大臣は,これに伴い直ちに庄内川水系の工事実施基本計画の策定に着手し,翌昭和45年3月には庄内川水系工事実施基本計画(昭和45年計画)を定めた(なお,同計画は直轄編入時点である昭和44年3月にさかのぼって適用されることになった。 。)もっとも,直轄編入間もない時点での早期の策定が要求され,また,河川管理事務を愛知県知事から引き継いだばかりで降雨量等の基礎データも十分解せず,同計画は,従前,愛知県知事が昭和25年に策定していた「庄内川改良工事全体計画(基本高水のピーク流量を31」50㎥/sとし,当時の基準点味鋺における計画高水流量を2500㎥/s,基準点枇杷島におけるそれを2700㎥/sとするもの)を基に策定された暫定的な性格の計画であり,同計画にお ピーク流量を31」50㎥/sとし,当時の基準点味鋺における計画高水流量を2500㎥/s,基準点枇杷島におけるそれを2700㎥/sとするもの)を基に策定された暫定的な性格の計画であり,同計画においては,出水の状況や流域の開発状況をふまえた調査検討が必要とされていた。 c昭和45年計画は,基本高水について調査検討が必要とされた上,同計画策定後の昭和45年6月に昭和28年以降の枇杷島上流域の流域平均日雨量で第1位となる降雨が,また,昭和47年7月には当時において昭和30年以降の枇杷島地点の流量記録で第2位となる洪水がそれぞれ発生したことなどから,建設大臣は,昭和50年4月に,降雨量等の基礎データや庄内川流域の開発状況もふまえて昭和45年計画の内容を大幅に改訂した。これが本件計画であり,被告国は,同計画に基づいて庄内川の河川改修を実施してきた。 d本件計画に定められた主要事項は,以下のとおりである。 (a) 基本方針本件計画は,庄内川水系における河川の総合的な保全と利用に関する基本方針として「河川工事の現状,砂防・治山工事の実施,,水害発生の状況及び河川の利用の現況(水産資源の保護及び漁業を含む)並びに河川環境の保全を考慮し,また,関連地域の社会・。 経済情勢の発展に即応するよう中部圏開発整備計画及び木曽川水系水資源開発基本計画等との調整を図り,かつ,土地改良事業及び下水道事業等の関連工事並びに既存の水利施設等の機能の維持を十分配慮して,水源から,河口まで一貫した計画のもとに,しばしば水害の発生している地域についての対策を重点として,次のように工事を実施するものとする」として「上流部の瑞浪市・土岐市・。 ,多治見市等及び下流部の名古屋市等の沿川地域を洪水から防御するため,上流にダムを建設して洪水の調節を行い,河道については, ように工事を実施するものとする」として「上流部の瑞浪市・土岐市・。 ,多治見市等及び下流部の名古屋市等の沿川地域を洪水から防御するため,上流にダムを建設して洪水の調節を行い,河道については,築堤,掘削,護岸等を施工するとともに,小田井遊水地により洪水の調節を行い,下流の洪水の軽減を図るほか,河川の環境を整備するための事業を行う」と定めている。 。 (b) 本件計画の諸元①基本高水並びにその河道及び洪水調節ダムへの配分に関する事項本件計画で設定されている「基本高水のピーク流量」等の基礎数値は,以下のとおりである。 <ア>防御対象洪水の計画規模基準地点枇杷島上流域:1/200(年超過確率)基準地点多治見上流域:1/100(年超過確率)<イ>基本高水のピーク流量基準地点枇杷島:4500㎥/s基準地点多治見:2700㎥/s<ウ>計画高水流量基準地点枇杷島:4200㎥/s(小里川ダム・小田井遊水地により300㎥/sを調節)基準地点多治見:2400㎥/s(小里川ダムにより300㎥/sを調節)<エ>計画高水位基準地点枇杷島:T.P.9.24m基準地点多治見:T.P.97.37m<オ>堤防余裕高庄内川上流部:1.0ないし1.2m庄内川下流部:1.5ないし2.0m矢田川:2.0m②主要な地点における計画高水流量に関する事項本件計画においては,上流部(東谷橋から上流)の計画高水流量は,瑞浪において1600㎥/sとし,日吉川,肥田川,妻木川等を合わせて,多治見において2400㎥/sとし,下流部(東谷橋から河口)の計画高水流量は,大留において3500㎥/sとし,内津川,矢田川等を合わせ,枇杷島において4200㎥/sとし,その下流では河口まで同流量とする。計画高水流量図では,味鋺において3700㎥/s,支川矢田川の 流量は,大留において3500㎥/sとし,内津川,矢田川等を合わせ,枇杷島において4200㎥/sとし,その下流では河口まで同流量とする。計画高水流量図では,味鋺において3700㎥/s,支川矢田川の瀬古において1200㎥/sとされている。 ③主要な地点における計画高水位,計画横断形その他河道計画に関する重要な事項本件計画では,計画高水位及び計画横断形については,基準地点枇杷島及び多治見のほか,本川の瑞浪,味鋺,支川矢田川の瀬古と河口を選定し設定する。 (c) 河道計画上記(b)のとおり,本件計画においては昭和45年計画よりも計画高水流量が増量されているところ,かかる流量を安全に流下させるためには河道容量を増加する必要があり,本件計画では主に河床の切り下げにより河道容量を確保する。 (d) 主要な河川工事の目的等本件計画においては,主要な河川工事の目的等につき「上流部,東谷橋から上流については,沿川地域の洪水を防御するため,上流にダムを建設するとともに,河道については,築堤・掘削・護岸等を施工」するものとする。他方「下流部東谷橋から下流については,川巾はほぼ現状のままとし,堤防の拡築及び河床掘削,河口部の浚渫を行い,河積の増大を図り,護岸・水制等を施工する。さらに庄内川の右岸名古屋市西区の小田井遊水地により洪水を調節し,下流の洪水の安全な流下を図る」とされているものの,庄内川上流部。 のダム及び同下流部の小田井遊水地の建設以外の改修については一般的・抽象的な形で触れられているのみである。 (e) 新川について本件計画は,新川を含めた庄内川水系全体を対象とする計画であるところ,新川に関して,庄内川から新川への分派量を0㎥/sとしている。これは,本件計画において,新川洗堰の最終的な完成形として越流量を0㎥/sとすることによって, 内川水系全体を対象とする計画であるところ,新川に関して,庄内川から新川への分派量を0㎥/sとしている。これは,本件計画において,新川洗堰の最終的な完成形として越流量を0㎥/sとすることによって,最終的には庄内川本川からの洪水を新川に分流させないという庄内川水系全体からみて基本となるべき計画に関する事項を新川について定めたものである。 (イ) 庄内川の改修状況a庄内川の改修過程における制約及び配慮事項被告国は,本件計画に基づき庄内川の河川改修を進めてきたが,本件計画で定められた洪水の防御策を完全な形で実施することは極めて困難であった。 (a) 技術上の制約及び配慮事項①河川一般についての技術上の制約治水面における河川管理は,最近の科学技術をもってしてもなお未解明の多い自然現象と,それぞれに異なる地形,特性をもち,画一的ではなく,しかも,社会情勢の変動が流域の土地利用を急激に変更させ,それに伴う流出機構の変化によって大きな影響を受ける河川を対象としているため,事前に実用負荷でテストを繰り返して作用やその結果の確認をすることは困難である。河川工学も,過去の洪水時の経験を基礎として理論的あるいは実験的に研究を重ね,その信頼度は次第に向上してきているものの,流水の作用に対する河川の安全性は実際の洪水によって初めてテストされ検証されていくという宿命をもっている。 したがって,最新の技術をもって十分と考えてなされた河川改修工事も,その後の情勢の変化に対応し得なくなり,万全のものでなくなることがある。 河川改修工事は,一般に,その水系全体の安全状況等を絶えず念頭において順次実施するものである。すなわち,河川の安全度は箇所ごとに不揃いであるため,その河川の水系を全般的に眺めて整備が急がれる箇所から着手するとともに,一般的には下流部から上 況等を絶えず念頭において順次実施するものである。すなわち,河川の安全度は箇所ごとに不揃いであるため,その河川の水系を全般的に眺めて整備が急がれる箇所から着手するとともに,一般的には下流部から上流部へ向かって順次工事を進めていかなければならない(下流優先原則。したがって,局部的部分を改修するための財)政上の措置が整ったとしても,下流部の改修が完了していない限り,一般的には当該部分のみの改修を先行させることは適当ではないという制約が存する。 ②庄内川下流部の状況被告国は,庄内川下流部の以下の事情に配慮しつつ,庄内川の河川改修を進めなければならなかった。 庄内川の河川形状や氾濫形態について,堀込み河道(堤内地盤高が計画高水位より高い河道)や山付き河道(川の片岸もしくは両岸が山などの自然河岸となっている河道)が多くを占める上流盆地部では堤防から洪水が氾濫してもそれほど氾濫範囲が広がらない「非拡散型氾濫域」であるのに対し,低平地が広がる下流部は河川周辺の地盤高が本件計画で定められた計画高水位より5mも低い区間があるなど庄内川が天井川(川底が周辺の土地より高くなっている河道)化していることもあり,堤防から洪水が氾濫した場合に広範囲に浸水被害が及ぶ「拡散型氾濫域」である。 本件計画で定められた計画高水位を前提とした場合,庄内川全川にわたって現況堤防高が計画高水位に達しない箇所が散見され,取り分け,堤防による洪水防御が不可欠な庄内川下流部のうち新川洗堰から下流の一連区間では計画高水位よりも現況堤防高が極めて低い状況にあった。 本件計画当時の庄内川における現況堤防高と計画高水位は別紙図3-1及び3-2のとおりであり,庄内川下流部右岸では約4. 0Kから約5.4Kまでの一連区間の堤防高は計画高水位よりも約1mも低く,庄内川下流部左岸でも約4. における現況堤防高と計画高水位は別紙図3-1及び3-2のとおりであり,庄内川下流部右岸では約4. 0Kから約5.4Kまでの一連区間の堤防高は計画高水位よりも約1mも低く,庄内川下流部左岸でも約4.0Kから約4.4Kまでの一連区間の堤防高は計画高水位よりも約0.2m低い状況であり,庄内川下流部の大当郎町や下之一色町を中心に左右合わせて約2㎞にわたり現況堤防高が低い状況が連続していた。 橋桁の低い橋梁は,①洪水時において洪水の流下を阻害し,橋梁による水位の堰上げを招いてその上流部付近で越水や破堤による甚大な被害を発生させるおそれを生じさせるとともに,②橋桁の流失・損傷等により交通や物流の大動脈を遮断し,社会的にも大きな影響を与えかねないため,かかる橋梁の改築が不可欠となるところ,別紙図3-1及び3-2のとおり,新川洗堰よりも下流の庄内川下流部に架けられていた明徳橋,正徳橋,一色大橋,大当郎橋及び前田橋の5橋梁の桁下高は計画高水位よりも低く,早急な対策が必要であった。 (b) 社会的制約①河川一般河川改修工事を実施するに当たっては,用地取得等が必要となることが多いが,この用地取得については,地価の高騰や地域住民の強固な所有権意識,生活問題等が絡んでますます困難となっており,工事の進捗の障害となっている。 昭和30年代から40年代半ばに至る我が国の経済の高度成長及び人口,資産の都市集中等により,宅地化の進展など河川の流域の土地利用は大きく変化し,このような状況の下で河川流域の宅地による保水機能の低下,地下浸透の減少,雨水流下時間の短縮等による流出機構の変化により河川に対する負荷が高まるとともに,従来の土地利用の状態では浸水被害として意識されていなかった内水氾濫が浸水被害として顕在化してきた。このように,社会の変化が,治水事業の既定 る流出機構の変化により河川に対する負荷が高まるとともに,従来の土地利用の状態では浸水被害として意識されていなかった内水氾濫が浸水被害として顕在化してきた。このように,社会の変化が,治水事業の既定の目標が未達成のままでも新たに発生した浸水被害への対応を要求し,河川管理者はこれへの対応を余儀なくされる。 ②下之一色地区の歴史的経緯と占用家屋庄内川における改修が急がれる地区の中で,一番下流に位置する下之一色地区一帯(右岸側3.2Kから4.4K付近)には,本件計画が策定されたころ,占用許可を得た国有地に建つ家屋や倉庫等(以下「占用家屋等」という)が,堤防脇や堤防上に建。 ち並んでいた。 庄内川右岸下之一色地区及び左岸正徳橋から一色大橋付近までの区間における直轄編入以降の毎年度の占用家屋等の補償・廃止の推移状況は別紙占用家屋等の補償・廃止戸数一覧表のとおりである。下之一色地区の堤防の改修を行うためには,堤防に存在している占用家屋等の移転を進めなければならなかったが,直轄編入当時は,右岸下之一色地区では約180戸もの占用家屋が,左岸地区では約40戸もの占用家屋が存在していた。 公共用地の取得に関しては,正当な取引価格をもって行うが,河川敷の土地は堤内地の土地に比べ非常に低かったり,また,占用家屋は土地に対する補償がなく,物件移転補償しかなく,それらの交渉は極めて難航し,本件豪雨前において住民の災害に対する意識が希薄であったこともあり,占用家屋の移転や用地買収についての理解を得て用地交渉を進めるには多大な困難が伴った。 (c) 財政上の制約河川の安全性を高めるためには,河道整備,洪水調整施設等の設置といった河川改修工事を実施する必要があるところ,これには莫大な費用を必要とする。そして,我が国には多数の河川が存在するところ,これらの河川の 安全性を高めるためには,河道整備,洪水調整施設等の設置といった河川改修工事を実施する必要があるところ,これには莫大な費用を必要とする。そして,我が国には多数の河川が存在するところ,これらの河川の全体について同時に河川工事を実施してすべてを完成させることは到底不可能である。 国民ないし住民の限られた租税負担のもとにおける国及び県の資金は,これら治水事業だけではなく,教育,社会福祉,保健医療,公害防止等の環境保全など数多くの他の行政需要にも応じなければならないものであるから,治水事業に投下しうる資金には自ずから限界が存する。したがって,必要とされる治水事業であっても,到底短時日に達成しうるものではない。 狭窄部のネック箇所である枇杷島地区では,東海道新幹線庄内川橋梁(JR,東海道本線枇杷島橋梁(JR,枇杷島橋(名古屋))市)の3橋の阻害橋梁の架け替えが必要である。これらの橋梁の架け替えは,その経済・社会的効果等を考えれば,まず新橋梁を架設し,機能を確保してから旧橋梁を撤去することになる。このように鉄道橋においては,新橋梁の上下線において,新橋梁にすりつけていくために数百mにわたり線路の付け替えが必要となる。線路を付け替えるには道路橋に比し広大な用地買収が必要となり,調整の時間を要するとともに多額の資金を要することになる。 (d) 時間的制約長区間の河川改修工事の場合に,河川整備基本方針(本件においては工事実施基本計画)に定められたものを忠実に完成させながら下流から上流へ工事を進めることとすると,計画横断形は将来の目標であって整備途上においてはその河川の現実の横断形とかなり大きな差があるのが一般的で,その工事の期間中に改修済みの部分と未改修部分とが画然と二分して存在することになり,未改修部分についてはいっそう洪水の危険にさらされ いてはその河川の現実の横断形とかなり大きな差があるのが一般的で,その工事の期間中に改修済みの部分と未改修部分とが画然と二分して存在することになり,未改修部分についてはいっそう洪水の危険にさらされることになる。また,特定の河川の改修のみを優先的に実施し,その実施後に他の河川の改修に移るという方式も,長期間全然改修が手つかずの状況で水害の危険にさらされ続ける地域を広範囲に生じさせることとなる。そこで,河川改修を実施するに当たっては,上下流・左右岸のバランスを図りながら逐次,平均的に改修を進捗させる段階的な河川改修がとられるため,長い工期を要することもある。 改修工事の実施に当たっては,住民の生活上の諸権利に配慮しながら進行させなければならないこと,河川においては河川の流水機能を阻害することなく,かつ,流水が工事の支障とならないような工法により施工しなければならないこと,河川の河道拡大等を先行できない場合,たとえば鉄道橋,道路橋の架け替え等の事業計画がある場合には,当該事業の改良計画に整合させなければならないこと,河川改修工事実施に当たっては,当該改修工事地域の環境等を変更させることとなるため,地域住民の賛同と協力を得る必要があるところ,長期間災害が発生していない地域においては,河川改修の必要性は受け入れられにくい面もあること等から,河川改修工事は自ずからその完了までに長年月を要することになる。 いったん完成した施設が,流域土地の利用状況の変化等により既往の機能では対応し得なくなり,計画を改定して改修を行わなければならないこともあって,河川工事の進行方法等からも,河川の安全性を高めることは短時日になし得るものではない。 b本件計画下における庄内川の河川改修の経過被告国が,上記の制約の下で,本件計画策定後本件水害が発生した平成12年 事の進行方法等からも,河川の安全性を高めることは短時日になし得るものではない。 b本件計画下における庄内川の河川改修の経過被告国が,上記の制約の下で,本件計画策定後本件水害が発生した平成12年までの間に実施してきた庄内川の主要な改修工事は,以下のとおりである。 (a) 小里川ダム建設本件計画では従来よりも基本高水が増量するものの,庄内川における河道の大幅な拡大は極めて困難であったことから,本件計画上,庄内川全川の洪水調節施設として庄内川上流部のダム建設が位置づけられるに至った。 そこで,被告国は,庄内川左支川である小里川の庄内川合流点(約66K)から上流8.3㎞地点を選定し,東濃地域,尾張地域の水害を軽減するための洪水調節等を目的とする小里川ダムを建設することとし,昭和57年に建設に着手し,平成16年3月に竣工し,同年4月より運用が開始された。 同ダムは,堤高114mの重力式コンクリートダムであり,有効貯水容量1290万㎥に洪水容量の一部を貯留しておくことにより庄内川への洪水流量を軽減し,庄内川全川にわたって洪水時の水位を低下させることで,洪水被害を防止・軽減することが可能となった。 (b) 庄内川上流部における改修庄内川上流の土岐川では,岐阜県多治見市平和町地区において川幅が狭く,洪水時に土岐川の水位上昇による溢水や内水被害が発生していたことから,被告国は,昭和53年度に同地区に排水機場を設置したほか,その抜本的な改善を図るべく多治見市平和町地区の引堤を行うこととし,昭和58年に用地買収に着手して平成3年に概成させた。被告国は,河道が狭窄しており円滑な流下が妨げられていた岐阜県土岐市土岐津地区についても引堤を行うこととし,地元の合意が得られず難航したが,平成15年度に概成させた。 平成11年6月に発生した洪水により岐阜県土 道が狭窄しており円滑な流下が妨げられていた岐阜県土岐市土岐津地区についても引堤を行うこととし,地元の合意が得られず難航したが,平成15年度に概成させた。 平成11年6月に発生した洪水により岐阜県土岐市及び瑞浪市で浸水被害が発生した。被告国は,岐阜県とともに,再度の災害防止に向け,岐阜県多治見市,土岐市,瑞浪市(ただし,土岐市浅野地区より上流は岐阜県知事が管理している)において,いわゆる復。 緊事業(復緊事業とは,河川等災害復旧事業(以下「災害復旧事業」という)並びに直轄河川等災害関連緊急事業,河川等災害復。 旧助成事業及び河川等災害関連事業(以下「改良復旧事業」という)に関連し,災害復旧事業及び改良復旧事業による下流部で流。 量増加量への対応が必要になる区域について,河川の改良に関する事業を緊急に実施することにより,再度災害の防止を図り,もって国土保全と民生の安定に資することを目的として平成11年度より実施されている事業で,災害復旧事業又は改良復旧事業による下流部での流量増加量への対応が必要な区域において,概ね4年間で緊急的かつ集中的に治水対策を実施するものである)を実施するこ。 ととなり,直轄管理区間においては河床掘削,護岸整備,引堤等を実施し,河川内の工事を平成15年度に概成させた。 (c) 庄内川下流部における改修庄内川下流部においては,継続的に,築堤や堤防の護岸工事等を実施するほか,次のような河川改修工事を実施してきた。 ①小田井遊水地の整備約17Kに建設が予定されていた小田井遊水地は,直轄編入以前より将来の洪水調節施設として位置づけられていたが,同時に同地域は平常時は公園として利用できるよう名古屋市において都市公園としての整備が進められていた。 昭和46年に公園区域の用地取得がほぼ終了し公園整備も精力的に進められて 位置づけられていたが,同時に同地域は平常時は公園として利用できるよう名古屋市において都市公園としての整備が進められていた。 昭和46年に公園区域の用地取得がほぼ終了し公園整備も精力的に進められていたので,被告国は,効率的に事業を遂行するため,公園の整備状況と合わせて堤防用地取得や治水施設整備を進めることとし,昭和53年度から用地取得を行いながら囲繞堤(河川堤防の一種で,遊水地と河川を隔てる堤防のうち,越流堤以外の堤防区間をいう)の建設に着手した。また,被告国は,。 昭和61年度ないし63年度にかけて排水水門を整備し,昭和63年度から越流堰に着手し,平成元年度に遊水地として概成させた。 ②河道・堤防等の拡充<ア>大当郎地区の堤防の改修庄内川右岸の名古屋市中川区下之一色町から大当郎町地区(河口から3.2Kの明徳橋下流から大当郎橋上流の6.0K付近)の堤防は,計画高水位からみても堤防高が低く,改修が急がれる重要区間であったため早急に同地点の改修に着手した。 大当郎地区では区画整理事業が遂行されていたことから,被告国は,同地区の区画整理事業の協力を得て,大当郎地区の堤防上の占用家屋の移転を進めたところ,昭和50年に占用家屋の移転を完了し,昭和59年には大当郎地区の築堤工事が概成し,その結果同地区の堤防は計画高水位を超える程度まで嵩上げされた。 <イ>明徳橋左岸の引堤庄内川に架かる主要地方道名古屋十四山線明徳橋の左岸詰め側の地形は,昭和50年当時,極端に川側に突き出して川幅を狭くしており,かかる地形を反映して,同地区における堤防の線形もクランク状となっていた。明徳橋自体も老朽化が著しく,明徳橋の桁下高が計画高水位より低かったため,安全性からみても問題があった。 名古屋市が,昭和48年ころ,明徳橋の架け替えを行うこととなったた もクランク状となっていた。明徳橋自体も老朽化が著しく,明徳橋の桁下高が計画高水位より低かったため,安全性からみても問題があった。 名古屋市が,昭和48年ころ,明徳橋の架け替えを行うこととなったため,被告国は,これと同時に明徳橋左岸側の抜本的改修を行うこととし,明徳橋左岸の引堤を実施することとなり,昭和48年から用地買収に着手し,一部工場などの移転地確保等が難航したものの,昭和55年には用地買収は完了し,昭和58年には一連の引堤工事が完了した。 これにより明徳橋の桁下高は計画高水位以上となり,同地点における堤防も計画堤防高にまで整備されるに至った。 <ウ>下之一色地区の改修庄内川下流右岸の名古屋市中川区下之一色町地区は,堤防高が計画高水位より低い区間が連続する治水安全度が低い地区であり,同地区の洪水被害を防止する上で改修が急がれたが,同地区の堤防上には占用家屋が連なっていたため,それら占用家屋や民地の家屋の移転が必要であった(占用家屋約180戸,民地の家屋約30戸。被告国は,直轄編入後の昭和47年度)より順次移転を進め,昭和63年度にはさらにそれらを促進すべく地元への事業説明を行い,事業計画内容を地元関係者と鋭意調整を行い,平成2年度までに約110戸の占用家屋と2戸の民地の家屋を移転し,平成3年度に築堤工事に着手することができ,その後もまとまった用地が確保できた箇所から順次堤防整備を進めてきた。 <エ>橋梁の架け替え事業庄内川下流部の明徳橋,正徳橋,一色大橋,大当郎橋及び前田橋の5橋梁の桁下高は計画高水位より低く,洪水被害を生じさせる危険をはらんでいたため,被告国は,鋭意,関係機関と調整の上,橋梁の架け替えを実施してきたところであり,昭和51年に前田橋,昭和58年に明徳橋,平成5年に大当郎橋の架け替えが実施された。 一 させる危険をはらんでいたため,被告国は,鋭意,関係機関と調整の上,橋梁の架け替えを実施してきたところであり,昭和51年に前田橋,昭和58年に明徳橋,平成5年に大当郎橋の架け替えが実施された。 一般国道1号が庄内川を渡河する一色大橋及び一色大橋と明徳橋の間にある正徳橋はいずれも本件水害発生時点において桁下が計画高水位以下にあることにより橋梁の取付部も含めて一連区間の堤防が計画高水位以下となっていた。 一色大橋は平成3年に発生した洪水で桁下に水が当たるなど治水上大きなネック地点となっており,低い堤防から洪水が越水したり,橋梁が洪水の流下の阻害となって上流部で堰上げして堤防を越水するおそれもあった。一色大橋が洪水により流出した場合は,堤防を破堤させるおそれがあるとともに一般国道1号という主要幹線道路を寸断し,地域の生活や広域的な経済活動に多大な影響を与える危険性があった。 被告国は,一色大橋の架け替えと堤防の嵩上げを実施することとし,平成12年4月に事業に着手し,計画規模の洪水に対して影響のない高さに橋梁を改築する工事に着手していた。 正徳橋については,本件水害発生前に架け替え工事に着手していたが,本件水害後に架け替えが実現するに至った。 (ウ) 河川管理責任a本件水害当時,被告国は,本件計画に基づいて庄内川を改修している途上であったが,このように改修計画が定められ,これに基づいて現に改修中である河川については,同計画が全体として格別不合理と認められなければ,その後の事情の変動により当該河川の未改修部分(本件では新川洗堰部分がこれにあたる)につき水害発生の危険性。 が特に顕著となり,当初の計画の時期を繰り上げ,又は工事の順序を変更するなどして早期の改修工事を施工しなければならないと認めるべき特段の事情が生じない限り,同未改修部分につ つき水害発生の危険性。 が特に顕著となり,当初の計画の時期を繰り上げ,又は工事の順序を変更するなどして早期の改修工事を施工しなければならないと認めるべき特段の事情が生じない限り,同未改修部分につき改修が行われていないことのみから河川管理に瑕疵があるということはできない(最高裁昭和59年1月26日第一小法廷判決・民集38巻2号53頁参照。 )b改修計画の不合理性がないこと庄内川の河川改修は本件計画及び具体的な改修計画に基づいて実施されているところ,本件計画は,次の(a)ないし(d)のとおり,都市河川という庄内川の特徴に十分対応したものであり,河川管理の一般的水準及び社会通念に照らしても適切・合理的であって,格別不合理と見られるべき点は存しない。また,本件計画に基づく具体的な改修の実施計画も次の(e)のとおり不合理とみるべき余地はない。 (a) 洪水防御計画の計画規模洪水防御計画の計画規模は,一般に,河川の大きさ,対象となる地域の社会的・経済的重要性,想定される被害の質・量,既往の水害の履歴などの要素を考慮して定められるところ,庄内川においては,戦後から本件水害発生時までの間,昭和34年の伊勢湾台風による被害を除いてはさほど甚大な災害は発生していなかったものの,その流域には我が国の枢要都市である名古屋市圏が存在し,人口・資産も極度に集中し,洪水が発生した場合には人的・物的に広範かつ深刻な被害が生じることが想定されることから,本件計画の計画規模を,庄内川下流部においては年超過確率1/200とし,上流部におけるそれを年超過確率1/100と設定した。 (b) 基本高水基本高水については,雨量データが存在している明治28年から昭和47年までの78年間における各年の流域平均日雨量の最大値から,統計手法を用いて,基準地点多治見の上流域で 設定した。 (b) 基本高水基本高水については,雨量データが存在している明治28年から昭和47年までの78年間における各年の流域平均日雨量の最大値から,統計手法を用いて,基準地点多治見の上流域では,計画規模年超過確率1/100に相当する計画降雨量229㎜/日,基準地点枇杷島の上流域では,計画規模年超過確率1/200に相当する計画降雨量250㎜/日を算出し,また,降雨の時間分布及び地域分布が異なる降雨パターン(昭和32年8月,昭和33年8月,昭和36年6月,昭和42年7月,昭和45年6月及び昭和47年7月の6つの洪水)により,実際の降雨量を計画降雨量に引き延ばして得られる計画降雨群を設定した。 以上を基に,貯留関数法(流域からの流出高と流域内の雨水貯留高の間に関数を仮定することで,流域への降水量による流出量を推定する方法)を用い洪水流量の時間的変化を示すハイドログラフ群を作成し,上記計画対象6洪水の最大流量から,基本高水のピーク流量を基準点枇杷島地点で4500㎥/s,基準点多治見地点で2700㎥/sとしたものであり,これらは通常の基本高水の算定方法に従ったものである。 (c) 計画高水流量計画高水流量は,基本高水のピーク流量を河道及び洪水調節ダムや遊水地に合理的に配分して定められるものであるところ,庄内川では,上流部のダム及び小田井遊水地を考慮し,上流部では基本高水のピーク流量2700㎥/s(基準地点多治見)のうち,ダムにより300㎥/sを調節して2400㎥/sとし,下流部では基本高水のピーク流量4500㎥/s(基準地点枇杷島)のうち,小里川ダム及び小田井遊水地により300㎥/sを調節して,4200㎥/sとしており,その設定過程は合理的である。 (d) 計画高水位計画高水位(河道の改修計画を立てるときの基本となる水位)は,沿 小里川ダム及び小田井遊水地により300㎥/sを調節して,4200㎥/sとしており,その設定過程は合理的である。 (d) 計画高水位計画高水位(河道の改修計画を立てるときの基本となる水位)は,沿川の地盤高との差を小さくするものとし,多くの場合既往最大の洪水位を考慮して設定するのが通常であるところ,庄内川についても,既往最大の洪水位等を考慮して基準点枇杷島の計画高水位をT. P.9.24m(基準地点枇杷島上流15.8Kのポイント)と設定しており,河川管理の一般通念に沿って設定されている。 (e) 具体的な改修の実施計画について本件計画は,庄内川上流部のダム及び同下流部の小田井遊水地の建設以外の改修については一般的・抽象的な形で触れられているのみであるが,具体的な改修を実施するにあたっては,庄内川流域の都市化や庄内川下流部の氾濫形態,また,庄内川下流部の堤防について問題となる計画高水位と本件計画策定当時の現況堤防高との関係,河川管理の技術的制約等を基礎として,改修の必要性・緊急性を十分に検討して上記(イ)bのとおり改修を行っており,具体的な改修の実施計画も河川管理の一般水準及び社会通念に照らして不合理とみるべき余地はない。 c特段の事情の不存在以下の事実から,未改修部分である新川洗堰につき水害発生の危険性が特に顕著となり,当初の計画の時期を繰り上げ,又は工事の順序を変更するなどして早期の改修工事を施工しなければならないと認めるべき特段の事由が生じたとはいえない。 (a) 未改修部分である新川洗堰につき水害発生の危険性が特に顕著となったか否かを検討するにあたっては,既往洪水における新川洗堰の越流量がどのようなものであったか,新川の洪水発生状況がどのようなものであったかがもっとも重視されるべき要因であるところ,既往洪水における新川洗堰 を検討するにあたっては,既往洪水における新川洗堰の越流量がどのようなものであったか,新川の洪水発生状況がどのようなものであったかがもっとも重視されるべき要因であるところ,既往洪水における新川洗堰の越流量と新川流域で発生した洪水の発生状況は別紙新川洪水発生状況一覧表のとおりであり,直轄編入から本件水害までの間に計10回の新川洗堰からの越流が観測されているものの,その越流量は最大で110㎥/s程度であり,内水被害は度々発生しているものの特段の外水被害は発生していなかった。 (b) 新川においては,庄内川の直轄編入以降本件豪雨発生時まで,優先して新川洗堰の閉鎖・嵩上げを検討しなければならないような災害復旧関係事業が採択されたこともなかった。 (c) 庄内川下流部には計画高水位以下の堤防が存在し,改修を実施する上で重要な要因となる想定被害についても,新川よりも庄内川の被害の方が明らかに大きいことが容易に推認された。 (エ) 原告らの主張に対する反論a原告らは「本件計画中に,庄内川水系に属する新川に関する工事,実施基本計画が策定されていない」旨主張するが,以下のとおり,。 本件計画には,新川を含めた庄内川水系について工事実施基本計画を定めている。 (a) 「工事実施基本計画」とは,当該河川の河川工事の実施についての基本となるべき事項を,河川管理者がその管理する河川について定めるものであるが,これは河川別,河川管理者別に定められるのではなく,水系ごとにその水系に係る河川の総合的な管理が確保できるように水系単位で定めなければならないものである。これは,河川が有機的に結合して水系をなしており,河川に関する計画においては一つの水系に係る河川が全体として対象にされなければならないことによる。 (b) 本件計画も,庄内川,新川といった個別の河川ごと ,河川が有機的に結合して水系をなしており,河川に関する計画においては一つの水系に係る河川が全体として対象にされなければならないことによる。 (b) 本件計画も,庄内川,新川といった個別の河川ごとにではなく,庄内川水系全体として一つの工事実施基本計画を定めている。 (c) 本件計画においては,庄内川水系における一級河川新川に関して庄内川から新川への分派量が0㎥/sとされており,これは,新川洗堰の越流量を0㎥/sとすることにより,最終的には庄内川本川からの洪水を新川に分流させないという庄内川水系全体から見て基本となるべき計画に関する事項を新川に関して定めたものである。 本件計画において,計画高水流量配分図に新川についての流量の記載が全くなかったり,庄内川の計画高水流量を決定するための流出計算において新川洗堰からの新川への分流量を計算に入れていないのは,新川洗堰からの越流量を0㎥/sとすることによって,最終的には庄内川本川からの洪水を新川に分流させないという計画だからである。 (d) 本件計画中に,新川の計画高水流量が定められていないとしても,全国に109ある一級水系において,一級河川数は1万3991あり(平成16年4月30日現在,庄内川水系においても76河川)あるが,新川のみが工事実施基本計画において計画高水流量が定められていないというものではなく,工事実施基本計画の中に支派川すべてについての計画高水流量を定めなければならないと規定したものは存在しないから,これをもって新川について工事実施基本計画が策定されていないということはできない。 b原告らは「被告国が,直轄河川改修計画書の策定に際して,新川,の改修状況その他新川の諸事情は検討の対象ともしておらず,新川の諸事情やそれと庄内川改修との工事の時期と順序を含めた関わりについては 原告らは「被告国が,直轄河川改修計画書の策定に際して,新川,の改修状況その他新川の諸事情は検討の対象ともしておらず,新川の諸事情やそれと庄内川改修との工事の時期と順序を含めた関わりについては全く検討していない」旨主張するが,被告国は,新川の諸事。 情を検討して庄内川の管理を行い,被告国も新川の改修事業に関与,参画しており,被告国の庄内川の河川管理に瑕疵があったとはいえない。 (a) 被告国は,内水被害も含めた浸水被害の状況については,毎年,新川についてもその状況を把握してきたが,新川では本件豪雨まで特段の外水被害が発生していなかったという事情を考慮して,庄内川下流部の改修を実施するのが合理的であると判断した上で,庄内川水系の改修事業を実施してきた。 (b) 被告国は,本件計画に基づいて新川を含む庄内川水系全体の河川を管理していたものであり,庄内川水系における指定区間内の新川の改良工事については,被告県が,改正前河川法79条1項及び改正前施行令45条1号の各規定に従い,本件計画に定められた基本方針に沿って「庄内川水系全体計画」を策定したが,愛知県知事が同計画を策定するに際して,被告国は,同一水系に属する庄内川と新川について,水系全体からみた一貫性を確保するために「全体計画審査意見書」と題する書面において意見や指示を出しており,愛知県もこの意見書指示事項を考慮して同計画をとりまとめた。そして,建設大臣は,同計画を本件計画に基づく庄内川水系全体からみた水系一貫の統一のとれた計画であるとして,昭和52年3月31日付けで認可した。 (c) 被告国は,本件計画において,新川洗堰からの分派量を0㎥/sと変更する際に,新川の外水被害の状況を勘案し,新川地域の都市化及びこれに伴う流出機構の変化等,新川の流域開発の事情も考慮した。 (d) 新 告国は,本件計画において,新川洗堰からの分派量を0㎥/sと変更する際に,新川の外水被害の状況を勘案し,新川地域の都市化及びこれに伴う流出機構の変化等,新川の流域開発の事情も考慮した。 (d) 新川の改修計画の全体計画は被告国が認可しており,また,被告国は,新川流域整備計画を策定した新川流域総合治水対策協議会の構成員として治水暫定計画の策定にも参画した。 (e) 被告国は,新川を総合治水対策特定河川事業の対象河川に指定し,これにより,被告国の定めた要領,指針に基づき,被告県及び流域の市町が新川の総合治水対策特定河川事業を実施し,その中で内水対策である流域対策も進められてきた。 (f) 被告県が新川で改修事業を実施していく上で,水系一貫管理の観点から,被告国が被告県に補助金を交付している。すなわち,被告県が河川の改修状況や上下流・左右岸バランスなどを考慮し,庄内川水系全体計画に沿って実施を予定する改良工事について補助金を申請し,それに対して被告国がその河川の改修状況,上下流・左右岸バランス,改良工事が庄内川水系全体計画に沿っているかどうかなどをみて,補助金の目的や効果が妥当であると判断して被告県への補助金を交付している。 c原告らは「被告国が新川洗堰を嵩上げ閉鎖せず,新川への庄内川,洪水の流入を残したまま庄内川下流の改修を行ってきたことは,河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認しうる安全性を備えているとはいえず,瑕疵がある」旨主張するが,次の(a)ないし(e)の。 事実から,被告国の上記河川管理に瑕疵があったとはいえない。 (a) 新川の治水上の脆弱性について新川が治水上脆弱であるとはいえない。 ①新川においては,上記(ウ)c(a)のとおり,本件豪雨発生まで特段の外水被害がなかった。 原告らは「新川周辺における内水被害の原 新川の治水上の脆弱性について新川が治水上脆弱であるとはいえない。 ①新川においては,上記(ウ)c(a)のとおり,本件豪雨発生まで特段の外水被害がなかった。 原告らは「新川周辺における内水被害の原因が新川の外水対,策にある」旨主張するが,内水を河川へ排出するまでは,各市。 町村の内水管理者がその責務を負い,内水対策を下水道の整備による排水機能の向上と都市施設・建物の耐水性の補強等により実施するのであり,内水被害が外水対策の結果ということはできない。 また,新川周辺の内水被害の発生は,新川周辺の地形が概して低平地であり,かつ既開発地が多いことから内水被害を受けやすい地形特性をもつことにもよるものであり,外水対策の結果ではない。 原告らは,新川について流域対応を含む総合治水対策がとられていることもその脆弱性の根拠とするが,各河川における治水対策は,その河川の大きさや流域の状況,過去の災害の状況等を勘案しつつ,内水対策の必要性の度合い等に応じて,内水管理者との間の適正な役割分担に基づいてその内容が定められるものであり,流域対策が必要であることをもって直ちに当該河川が脆弱であることにはならない。 ②新川においては,庄内川の直轄編入以降本件豪雨発生時まで,大規模な災害復旧関係事業が採択されたこともなかった。 (b) 新川と庄内川の安全度について原告らの主張は新川の方が庄内川よりも安全度が低いことの根拠とはならない。 ①河口部の計画高水位について庄内川と新川の河口部の計画高水位は,それぞれの河川の規模や特性などを勘案し,それぞれの基準に基づき適正に定められたもので,両者を比較すること自体意味がない。 庄内川の河口部の計画高水位については,流域の規模や河口付近の地形形状により洪水の発生と高潮が同時に発生する可能性があるため,既往洪水に 適正に定められたもので,両者を比較すること自体意味がない。 庄内川の河口部の計画高水位については,流域の規模や河口付近の地形形状により洪水の発生と高潮が同時に発生する可能性があるため,既往洪水における洪水ピークと潮位偏差について整理を行い,潮位のピークと流量のピークを調査して必要に応じて改修計画規模と同一の確率偏差を考慮した水位を与えるとの観点から,河川の洪水流量の発生と河口の高潮との同時生起確率(200年)を求めてT.P.+2.90mとされた。 新川の河口部の計画高水位については,被告県の管理する河川の計画により,朔望平均満潮位とされた。 ②現況堤防高について本件豪雨発生時の新川の堤防高は,別紙図4のとおり,全川にわたり庄内川水系全体計画の計画高水位より高く,さらに一部の狭窄区間等を除いてほぼ計画堤防高まで達している状況であったのに対し,庄内川下流部においては,現況堤防高が計画高水位を下回る区間があった(本件豪雨発生前年である平成11年の庄内川下流部の現況堤防高は,別紙図5-1及び5-2のとおりであり,左岸側3.8Kから4.4K付近(正徳橋上流から一色大橋下流までの区間)及び右岸側4.0Kから4.4K付近(正徳橋上流から一色大橋下流までの区間)では,計画高水位を下回る危険な状況にあり,左右岸とも19K付近までは,堤防改修箇所を除いて,依然として計画堤防高をほぼ下回っていた。 。)構造令の定める余裕高の基準値は,最低基準を示したものであり,余裕高については,河川の重要度(背後地の重要性,上下)流又は対岸における堤防の高さ等を考慮の上,必要に応じて基準値より増高する必要があり,単純に数字だけを挙げて現況堤防高と構造令基準による堤防高を比較することには意味がない。 ③現況堤防幅について堤防の天端幅は,本来的には,個々の区 の上,必要に応じて基準値より増高する必要があり,単純に数字だけを挙げて現況堤防高と構造令基準による堤防高を比較することには意味がない。 ③現況堤防幅について堤防の天端幅は,本来的には,個々の区間について,背後地の重要性,洪水の継続時間,堤防又は地盤の土質条件等の特性に応じて定めるべきであり,堤防天端幅について庄内川と新川で上記の検討条件に違いがある以上,両河川における計画高水位の堤防幅を数字だけを挙げて単純に比較することには意味がない。 (c) 本件豪雨による庄内川の安全度の検証について本件豪雨により庄内川には破堤等の危険性があったのであり,本件豪雨により庄内川の安全度が検証されたとはいえない。 ①計画高水位を超えた水位と破堤の危険本件豪雨で,庄内川は,新川洗堰付近からJR関西本線橋までの一連区間約12㎞にわたって計画高水位を超過し,枇杷島観測地点では約4時間にわたり計画高水位を超えた。水位が計画高水位を超えていたということは,堤防に護岸が設置してある高さ(洪水を安全に流下させることのできる水位)を超え,余裕高部分(護岸未設置(土盛り)で洗掘されやすい)まで水位が達していたということであり,庄内川は,JR関西本線橋(約7K)から新川洗堰下流付近(約19K)までの一連区間約12㎞にわたってどこが破堤してもおかしくない状況であった。 ②越水と破堤の危険庄内川左岸側3.8Kから4.4K付近(正徳橋上流から一色大橋下流までの区間)及び右岸側4.0Kから4.4K付近(正徳橋上流から一色大橋下流までの区間)は堤防高が計画高水位を下回っている区間であり,かつ庄内川の堤防は土堤で越水に対して極めて弱い構造であったところ,本件豪雨により上記区間の一色大橋下流右岸で越水し,また同区間は越水寸前の状態となり,越水により堤防川裏(堤内地側)が 区間であり,かつ庄内川の堤防は土堤で越水に対して極めて弱い構造であったところ,本件豪雨により上記区間の一色大橋下流右岸で越水し,また同区間は越水寸前の状態となり,越水により堤防川裏(堤内地側)が洗掘され,堤防の弱体化により破堤する危険があった。 ③本件豪雨時における庄内川の流下能力本件豪雨後に「平成12年度庄内川河道計画検討業務」で庄内川の流下能力(洪水を安全に流すことのできる最大流量)が検討されたが,以下の基本条件で算出された庄内川の流下能力のうち,最も低かったのが4.4K右岸の2032㎥/sであった。これに対し,本件豪雨では枇杷島地点で最大約3500㎥/sもの流量を記録し,庄内川の河道が満杯の状況で流れた区間があった。 したがって,流下能力の点からも庄内川はいつ破堤してもおかしくない状態であった。 <ア>出発水位は,本件豪雨による0.0K地点洪水痕跡水位の左右岸平均T.P.1.64mとする。 <イ>余裕高については,激特計画流量(平成12年11月に採択された河川激甚災害対策特別緊急事業(以下「激特事業」という)における計画流量)を激特事業後堤防高-余裕高1. 。 2m程度の水位で流下させることのできる河道を設定する。 ④橋梁流失の危険橋梁は,洪水の流下に対し大きな障害物となり,桁下高不足による橋桁の流失は非常に多いところ,本件豪雨発生時,一色大橋(4.6K付近)については,橋梁の桁下高が計画高水位に達しておらず,本件豪雨による洪水の水位が橋梁の桁下まで達しており,流失の危険も含めて非常に危険な状況にあった。 (d) 新川洗堰閉鎖と庄内川のポンプ排水について,,原告らは「新川洗堰を閉鎖してポンプ排水をしない場合の方が新川洗堰を閉鎖せずにポンプ排水をした場合よりも低い水位となる」旨主張するが,新川洗堰を閉鎖せずにポンプ と庄内川のポンプ排水について,,原告らは「新川洗堰を閉鎖してポンプ排水をしない場合の方が新川洗堰を閉鎖せずにポンプ排水をした場合よりも低い水位となる」旨主張するが,新川洗堰を閉鎖せずにポンプ排水をした場合。 については小田井遊水地への分派量を0㎥/sとしているのに対し,新川洗堰を閉鎖してポンプ排水をしない場合については小田井遊水地への分派量を100㎥/sとして小田井遊水地の機能を加味しており,両者の数値を単純に比較するのは不適切である。 新川洗堰を閉鎖せずにポンプ排水をした場合で小田井遊水地への分派量が0㎥/sの場合と,新川洗堰を閉鎖してポンプ排水をしない場合について小田井遊水地への分派量を0㎥/sとした場合の河道流量を比較すると,計画高水位よりも堤防が低かった庄内川下流部の正徳橋上流(3.8K付近)から一色大橋(4.4K付近)地点では河道流量は同じであり庄内川水位は変わらないのに対し,6. 2Kよりも上流では後者の方が河道流量が大きくなり,かえって水位が上昇してしまう。 (e) 本件豪雨により庄内川が破堤した場合の推定住家被害等①庄内川下流部の推定住家被害破堤の外力条件として,本件豪雨による庄内川枇杷島地点のハイドログラフによる洪水の流量を用い,枇杷島観測地点の水位がピークに達した場合の破堤による外水被害の推計は,もっとも浸水住家世帯数が少ない右岸5K(下之一色付近)が破堤した場合に8840世帯(全世帯床上浸水,次いで2万9737世帯)(右岸15Kが破堤した場合。床上浸水2万3914世帯,床下浸水5823世帯,3万1798世帯(右岸10Kが破堤した)),場合。床上浸水1万6551世帯,床下浸水1万5247世帯5万3664世帯(右岸20Kが破堤した場合。床上浸水3万7928世帯,床下浸水1万5737世帯,11万60 (右岸10Kが破堤した)),場合。床上浸水1万6551世帯,床下浸水1万5247世帯5万3664世帯(右岸20Kが破堤した場合。床上浸水3万7928世帯,床下浸水1万5737世帯,11万6032世帯)(左岸5Kが破堤した場合。床上浸水6万7233世帯,床下浸水4万8800世帯,13万8355世帯(左岸10Kが破堤)した場合。床上浸水9万9516世帯,床下浸水3万8838世帯,もっとも浸水住家世帯数が多い左岸15K(枇杷島付近))が破堤した場合が17万5310世帯(床上浸水13万2147世帯,床下浸水4万3163世帯)である。 ②家屋等の倒壊・流出,人命被害の危険の大きさ本件豪雨における河道流量は,新川(久地野)のピーク流量720㎥/sに対して,庄内川(枇杷島)では約3500㎥/s流下し,また,別紙図6のとおり,新川の堤内地盤高と堤防高の差に比して庄内川の堤内地盤高と堤防高の差は大きく,庄内川の破堤時の氾濫水のエネルギーは大きいことが容易に推認され,氾濫水のエネルギーの大きさゆえ,家屋等の倒壊・流出はもとより人命被害の危険も大きいものが想定される。 ③庄内川が破堤した場合の原告ら居住地への想定被害原告ら居住地への想定被害も本件水害による原告らの浸水被害よりも大きくなることが想定される。 本件豪雨により庄内川が15K右岸堤防から氾濫した場合の原告ら居住地付近の想定氾濫洪水解析によれば,庄内川の洪水氾濫による浸水区域は,原告らの居住地はもちろん,新川及びその堤防を乗り越えて,新川右岸側の新川町(現清須市,清洲町(現)清須市,春日町にまで達する。また,浸水深は,南は名鉄名古)屋本線より北は名鉄犬山線・愛知環状鉄道までの範囲が2.0mから3.0m及び3.0mから4.0m,一部は4.0mから5. 0mに達する。 床上まで 春日町にまで達する。また,浸水深は,南は名鉄名古)屋本線より北は名鉄犬山線・愛知環状鉄道までの範囲が2.0mから3.0m及び3.0mから4.0m,一部は4.0mから5. 0mに達する。 床上までの高さを50㎝程度として,原告らの本件水害による浸水被害と,上記想定氾濫解析による最大浸水深とを対比すると,別紙浸水被害対比表のとおり,名古屋市西区中小田井地区ではおおむね変わらないものの,その他の地区では庄内川の想定氾濫の方が大きくなっている。 上記②のとおり,庄内川と新川の流量の大きさの違い及び堤内地盤高と堤防高の差から,氾濫流のエネルギーも本件水害よりも大きくなることが想定される。 (3) 被告国の損失補償責任について被告国に損失補償責任はない。 被告県の主張(1) 本件破堤の原因についてア降水量が新川の計画規模をはるかに超え,これに内水域からのポンプ排水及び新川洗堰からの庄内川の洪水流量も加わり,計画高水位を超える河川水が長時間にわたり外力として作用した。 イ降雨及び河川水の堤体浸透により堤体は湿潤状態となり,安全率の低下した堤防裏法面に法すべりが発生した。 ウその後,裏法面のすべり変状が徐々に堤体天端に及び,堤防がやせ細った。 エ浸透してきた法面流により,裏法面の浸食がさらに進み,堤防はますます細くなり堤防天端に迫る高い水位には耐えきれない状態となった。 オ破堤区間上流部で薄くなった堤防の上部がくずれ,越流し,堤防法尻部及び基礎地盤を激しく洗堀した。 カ破堤の初期段階では残っていた高水護岸が壊れることにより河川水が一気に流出し,破堤口を拡大していった。堤防法尻部及び基礎地盤での洗堀も拡大,落堀が形成された。 (2) 新川治水緑地の管理の瑕疵及び新川の河川管理の瑕疵についてア新川治水緑地の管理の瑕疵について(ア) し,破堤口を拡大していった。堤防法尻部及び基礎地盤での洗堀も拡大,落堀が形成された。 (2) 新川治水緑地の管理の瑕疵及び新川の河川管理の瑕疵についてア新川治水緑地の管理の瑕疵について(ア) 新川が庄内川の派川であること(水系一貫管理の前提)a新川の自然的形状(その上流端が庄内川右岸の新川洗堰であること)からしても,また庄内川や新川にかかる河川計画上の扱い(後記のように,新川に関する庄内川水系全体計画は,庄内川水系工事実施。 ,基本計画に沿って策定された下位計画である)からしても,新川は庄内川水系を構成する派川である。 b原告らの主張に対する反論原告らは「将来的に新川洗堰からの越流量を0㎥/sとする計画,事項が定められたことをもって,新川が庄内川水系から独立した別の水系を構成することとなった」旨主張するが,新川洗堰からの越流。 量を0㎥/sとするのは最終的な目標ないし到達点であって,その実現には未だ相当の時日を要し,それまでの間は,新川は庄内川の派川である。 (イ) 水系一貫管理a河川法において水系主義(同法4条1項,5条1項)がとられた理由は,河川が自然的・有機的に結合して水系をなしているため,水系ごとに河川管理者を定めることにより水系を一体として一貫した管理を行い,行政区間ごとの治水,利水のアンバランスや利害衝突を解消する点にあり,かかる水系一貫管理の要請から,幹川である庄内川の管理と矛盾抵触するような管理を新川において行うことは許されない。 b新川治水緑地に新川洗堰からの越流を防止する堤防を築くことは庄内川下流部の流量増加につながる行為であり,庄内川下流部の河川改修工事が進捗し,その安全性が確保された上でなされるべき改修である。そうであるところ,本件豪雨時の庄内川下流部は全般的に堤防高が計画より下回っており 量増加につながる行為であり,庄内川下流部の河川改修工事が進捗し,その安全性が確保された上でなされるべき改修である。そうであるところ,本件豪雨時の庄内川下流部は全般的に堤防高が計画より下回っており安全性が確保されていたとはいえない状態であって,かかる状況下で上記のような堤防を築けば庄内川下流部の危険性を一段と高める結果となり,水系一貫管理の原則に反することとなる。したがって,被告県がかかる堤防を築くことは不可能であった。 (ウ) 新川の計画事項との関係将来的に新川洗堰からの越流量を0㎥/sとする計画事項は,新川の計画事項ではなく庄内川の計画事項であり,越流量を0㎥/sとする改修をいつ,どのような手順で実施するかは,庄内川の下流域の安全性の確保等の総合的な観点から,庄内川の河川管理者である建設大臣(現国土交通大臣)に委ねられていた。 (エ) 新川治水緑地の位置づけ新川治水緑地は,庄内川水系全体計画及び新川流域整備計画において,新地蔵川,大山川及び合瀬川の流水の一部を貯留することを目的として整備することが計画されたものであり,新川洗堰からの越流水を貯留することは目的とされていなかった。 (オ) 新川洗堰からの越流実績との関係本件豪雨前においては,新川洗堰からの越流は昭和47年7月を始めとして10回の越流が推定されているが,このうち新川の年最高水位(新川久地野地点)を観測した日と越流が発生した日が同一であったのは,昭和55年8月,昭和58年9月及び平成3年9月の3回のみであった。 (カ) 本件豪雨の規模a本件豪雨で名古屋地方気象台が観測した降水量は「名古屋」で降り始めからの総降水量567㎜,日最大1時間降水量93㎜(平成12年9月11日午後6時から7時,同気象台の月最大24時間降水量)534.5㎜は,明治24年の同気象台による統計 水量は「名古屋」で降り始めからの総降水量567㎜,日最大1時間降水量93㎜(平成12年9月11日午後6時から7時,同気象台の月最大24時間降水量)534.5㎜は,明治24年の同気象台による統計開始以来の極値であった昭和46年8月30日の月最大24時間降水量277.5㎜の約2倍,名古屋の年間平均降水量1535㎜の約3分の1を記録し,愛知県内の他の観測所の多くで観測開始以来の極値を更新した。 b上記のような本件豪雨の規模は,数百年に一度という未曾有のものであり,かかる規模の豪雨を予見して改修工事を行うことは不可能であった。 イ新川の河川管理の瑕疵について被告県は,基本となる河川計画に基づく改修を鋭意進めていたのであり,新川の河川管理に瑕疵がなかった。 (ア) 河川計画a(a) 新川は,昭和44年4月1日の庄内川水系の一級水系指定とともに庄内川水系の一級河川として建設大臣から指定され,新川の整備計画も,庄内川水系が一級水系に指定された昭和44年4月1日にさかのぼって施行された昭和45年計画に含まれることとなった。 庄内川水系の一部である新川に関する改修計画は,昭和52年3月に愛知県知事により庄内川水系全体計画として策定され,同月31日付けで建設大臣の認可を受けたが,これは本件計画のいわば下位計画に相当するものであった。 平成9年に河川法が改正されたが,経過措置として工事実施基本計画が河川整備基本方針及び河川整備計画とみなされていたため,本件水害の時点では,本件計画に沿って策定された庄内川水系全体計画にしたがって,新川の河川改修が実施されていた。 (b) 庄内川水系全体計画庄内川水系全体計画中,新川に関する計画の概要は,以下のとおりである。 ①同計画では,新川流域の急激な都市化等の状況をふまえて,基本高水及び計画高水流量が計画さ いた。 (b) 庄内川水系全体計画庄内川水系全体計画中,新川に関する計画の概要は,以下のとおりである。 ①同計画では,新川流域の急激な都市化等の状況をふまえて,基本高水及び計画高水流量が計画された。具体的には,降雨を河川の流出量に換算する計算方法として貯留関数法を用いて,降水量から流出量を算定する流出計算モデルを作成し,これに新川における過去の実績降雨を入力して得られた流出量を実績洪水と比較検証して諸定数を決定し,新川の流出計算モデルを確定する。そして,名古屋気象台における明治24年から昭和41年までの資料をトーマス法による確率処理から得られた降雨強度曲線から年超過確率1/100の計画降雨波形を作成し,モデルに入力することにより基本高水を算出した。 ②基本高水年超過確率1/100の場合について,新川本川の基本高水は,以下のとおりとされた。 新川河口~五条川合流点1430㎥/s五条川合流点~水場川合流点850㎥/s水場川合流点~鴨田川合流点790㎥/s鴨田川合流点~三川合流点780㎥/s③計画高水流量新川の基本高水1430㎥/sは,地蔵川の流域変更,大山川放水路,新川調整池により調整し,新川河口から五条川合流点の計画高水流量を1100㎥/sとした。 ④暫定計画庄内川水系全体計画では,年超過確率1/100を計画規模とした基本高水及び計画高水流量が計画されたが,これに対応した河川改修には膨大な時間と費用を要するため,全体計画の前段階として,暫定計画が併せて策定された。この暫定計画は,新川本川の計画規模について河道整備のみの場合は年超過確率1/30(1時間雨量76㎜相当)対応,治水緑地整備を含める場合は年超過確率1/50(1時間雨量86㎜相当)対応とされていた。 ⑤新川治水緑地について本件計画を受けて,新川治 みの場合は年超過確率1/30(1時間雨量76㎜相当)対応,治水緑地整備を含める場合は年超過確率1/50(1時間雨量86㎜相当)対応とされていた。 ⑤新川治水緑地について本件計画を受けて,新川治水緑地を整備することにより,新地蔵川,大山川及び合瀬川の流水の一部を貯留して,将来は新川の洪水110㎥/sをカットする調節池として計画された。 b(a) 庄内川水系全体計画では,新川本川の計画規模を年超過確率1/100である1時間雨量98㎜を相当として計画された。しかし,新川及びその流域内各河川は,市街地を網目状に流れており,その数も多い上流路延長も長く,短期間に庄内川水系全体計画に対応した整備を実施することは不可能であったため,おおむね10か年程度で実施可能な治水対策として,昭和57年の新川流域整備計画中に治水暫定計画が策定された。治水暫定計画は,流域対策と合わせて年超過確率1/5である1時間雨量50㎜相当に対応するものとして計画されているが,同計画は,庄内川水系全体計画の達成に至る過程において整備途上であっても整備効果を発揮するものとして策定された。本件水害は,庄内川水系全体計画の達成を最終的な到達点とし,新川流域整備計画に基づく治水暫定計画を進めている最中に発生した。 (b) 新川流域整備計画(治水暫定計画)新川流域整備計画及び治水暫定計画の概要は,以下のとおりである。 ①流域整備の基本方針<ア>治水機能の地域区分地域と河川の関わり合いは,流域全体で必ずしも一様なものではなく様々であり,流域整備の方針は流域と河川の関わり合いの違いにより異なってくるため,新川流域を土地条件により,なかでも河川との関わり合いの違いによって,保水地域,遊水地域,低地地域に分類し,それぞれについての対策を実施する。 <イ>流域整備の基本方針流域 より異なってくるため,新川流域を土地条件により,なかでも河川との関わり合いの違いによって,保水地域,遊水地域,低地地域に分類し,それぞれについての対策を実施する。 <イ>流域整備の基本方針流域整備の達成については,おおむね10か年程度を目処とし,1時間雨量50㎜相当に対応した安全度を確保できるように,流域及び河川における対策を講じる。 <ウ>治水暫定計画の基本方針短期間に庄内川水系全体計画に対応した整備を実施することはほとんど不可能であったため,おおむね10か年程度で実施可能な治水対策として,流域対策と合わせて1時間雨量50㎜相当の安全度を確保できるよう河川整備を進めるという治水暫定計画を策定する。 <エ>土地利用の基本方針流域の土地利用計画は,保水・遊水機能の保全に努めるとともに,治水施設の整備状況に応じた適正な土地利用を図る。 <オ>流域対策の基本方針新川流域の開発の特徴として,土地区画整理事業による他は大規模開発は少なく,60%以上が0.1ha未満の小規模開発であったため,流域対策は流域の市町が主体となり,また,公共事業に伴う対策を率先しながら実施していく。 <カ>流量分担計画上記各基本方針に基づき,別紙新川流量分担計画図のとおり流量分担計画を定める。 ②河川の整備計画<ア>新川の治水施設の整備状況新川は,庄内川水系全体計画に基づく改修が進められているが,引き続き上流の護岸整備や局部的拡巾,浚渫が必要である。 <イ>治水計画(治水暫定計画)短期間に庄内川水系全体計画に対応した整備を実施することはほとんど不可能であったため,1時間雨量50㎜相当を計画規模として必要な治水施設の整備を行うという治水暫定計画を策定した。 同計画では,新川の五条川合流後地点(12.4K)における昭和65年(平成2年)想定流域の あったため,1時間雨量50㎜相当を計画規模として必要な治水施設の整備を行うという治水暫定計画を策定した。 同計画では,新川の五条川合流後地点(12.4K)における昭和65年(平成2年)想定流域の計画対象高水は960㎥/s(平成2年当時の現況は750㎥/s)であるが,このうち河道処理流量を730㎥/s(平成2年当時の現況は380㎥/s)とし,残余の230㎥/sは流域分担と合わせて計画遊水地,放水路により洪水調節するものとする。すなわち,計画放水路として2ルートで合計125㎥/sをカットするほか,新川治水緑地等6か所の遊水地を設置し(総貯留容量は85万),8000㎥,流域分担は自然遊水地区と雨水貯留施設で行い自然遊水地区は洪水の毎に浸水している河川沿いの低地の湛水を無被害湛水にまで解消した上でなお自然に残る遊水機能を計画的に維持することにより,総貯留容量は30余か所で102万㎥とする。雨水貯留施設は新規開発地を対象として開発に応じて設置し,保水機能の維持を図ることにより,総貯留容量は,148万5000㎥と設定する。 ③地域毎の整備計画<ア>保水地域の整備計画保水地域の概要ⅰ流域全体の約78%(202㎞)を占める丘陵・台地・ 緩扇状地等の保水地域は,都市計画法により市街化区域(46%)及び市街化調整区域(54%)に二分され,保水機能保全のための対処の仕方に応じて,自然地,新規開発地及び既開発地に分類され,特性に応じて対策を講じていく。 保水機能保全対策ⅱ自然地の保水機能保全対策として,市街化調整区域の保持及び法令・指導等による自然保水機能の保全をする。新既開発地の保水機能保全対策として,開発型公共事業の流出抑制対策,新規大規模開発対策,新規小規模開発対策及び河川への排水樋管の流量調整をする。既開発地の保水機能保 による自然保水機能の保全をする。新既開発地の保水機能保全対策として,開発型公共事業の流出抑制対策,新規大規模開発対策,新規小規模開発対策及び河川への排水樋管の流量調整をする。既開発地の保水機能保全対策として貯留施設(浸透施設)の設置等流出抑制策を講じる。 なお,開発型公共事業,大規模開発地,小規模開発地及び既開発地における保水機能保全対策として,雨水貯留事業等による代替施設対策量をも含め,保水地域において確保すべき対策量は198万㎥とする。 <イ>遊水地域の整備計画遊水地域の概要ⅰ流域全体の約7%(18㎞)を占める遊水地域は,市街 化調整区内の未市街地が該当しており,水田,畑地が大きな部分を占め,ほとんどが農業振興地域の整備に関する法律(昭和44年法律58号)に基づく農用地に定められていたが,下流から改修を進める場合,河川延長が長いのでその効果はなかなか上流区間に及ばない。そのため,青木川放水路等の放水路により保水地域の流出量の一部を上流でカットすることにより,遊水・低地地域の浸水の増大を防ぐとともに,自然遊水地区を確保する。 遊水機能保全対策ⅱ遊水機能保全対策として,市街化調整区域の保持,新規開発地の遊水機能保全対策,営農環境の改善,盛土の抑制及び河川への排水樋管の流量調整を定める。 <ウ>低地地域の整備計画低地地域の概要ⅰ流域全体の約15%(39㎞)を占める低地地域は,下 流部の市街化されている区域,中流部の市街化区域となっている河川沿いの低地が該当し,新川下流部の低地は,名古屋市の近郊で既開発地が多く,我国有数の地盤沈下地帯に連なる地域であり,河川に沿う底平な地形上に位置していることから,浸水・湛水被害を受けやすく,下流部ではそのほとんどの排水を内水排除ポンプに依存している。そこで,低地地域におい 数の地盤沈下地帯に連なる地域であり,河川に沿う底平な地形上に位置していることから,浸水・湛水被害を受けやすく,下流部ではそのほとんどの排水を内水排除ポンプに依存している。そこで,低地地域においては,まず積極的に洪水防御策を講じ,安全度を向上させる。 低地地域保全対策ⅱ低地地域保全対策として,内水排除計画等の促進,内水ポンプの運転調整,貯留施設の設置を定める。低地地域保全のための必要対策量は,雨水貯留事業等による代替施設対策量をも含め,100万㎥とする。 <エ>その他流域対策のうち,暫定的な対策については,新川流域整備計画における治水暫定計画達成後の河川改修による治水安全度の向上を勘案し,順次解除していくこととするが,治水対策上効果が大きいもの,または,公共開発事業で設置したものについては,恒久化を図っていく。 ④その他出水時の安全対策及び住民への啓蒙対策として,警報避難システムの確立,水防管理体制の強化,浸水実績の公表,高床式建築の奨励,パンフレット等による広報等の施策を実施する。 (イ) 新川の改修状況a河川改修の諸制約新川の河川改修には,以下の制約があった。 (a) 河川改修にあたっては,河川の形状や地理状況,上流部と下流部の自然的・地形的要因,右岸と左岸の沿川の状況や社会的条件といった諸要因を勘案し,そのバランスを図りながら,できる限り平均的・段階的に改修を進めていくことが要請される。 (b) 河川改修は,膨大な時間と費用を必要とする事業であり,治水以外の行政需要・目的や投資効果等をも勘案して,適切な調和の範囲内で限られた予算を配分して改修を一歩一歩進めていくほかない。 (c) 河川の下流部の改修が未了の間に上流部を改修すれば下流部の流量増加を招き危険を増大させることになるため,原則的に下流から順次改修を進め られた予算を配分して改修を一歩一歩進めていくほかない。 (c) 河川の下流部の改修が未了の間に上流部を改修すれば下流部の流量増加を招き危険を増大させることになるため,原則的に下流から順次改修を進めていくことが要請され,一気呵成に改修を完遂することは不可能である。 (d) 治水事業は,性質上試験による実証という作業が不可能であり,過去の水害事例等の経験則から予測的に手法を編み出すことに頼らざるをえない。水害事例の科学的観測がある程度なされるようになってからの歴史も長いものでない上,対象が巨大な自然現象であり全く同一条件ということもあり得ないから,治水事業は相対的・確率的な信頼性に立脚せざるをえない。 (e) 河川の改修には,規模や高さ,強度や構造等が異なる橋梁の補強や架け替えが不可避な場合が多く,それには用地取得が伴うことも多いため,それだけで困難な事業となる。特に,主要幹線道路や幹線鉄道の場合,橋梁の架け替えは橋梁管理者の事業に与える影響も甚大なものがある。 新川では,本件豪雨が発生した平成12年の時点で45個所の橋梁のうち,19個所の橋梁が治水暫定計画に対応した改築が未了であった。この未改築の橋梁の中には,東海道新幹線,関西本線,名鉄名古屋本線,近鉄名古屋線という主要な鉄道橋も含まれており,このような民間鉄道事業者の管理する橋梁の改築は容易に進むものではなかった。 (f) 河川改修には,用地の取得が必要となることも多いが,用地の取得には地域住民の利害,権利や生活問題等が錯綜して絡んでくるほか,地価の高騰・下落の影響も大きく一刀両断的に進めることは不可能である。 新川においては,新川町(現清須市)土器野新田地区で新川橋付近の洪水の流下断面が不足しており,民有地を買収して河道を拡げる工事を必要としていたが,同工事を実施するために必要 ることは不可能である。 新川においては,新川町(現清須市)土器野新田地区で新川橋付近の洪水の流下断面が不足しており,民有地を買収して河道を拡げる工事を必要としていたが,同工事を実施するために必要な用地買収面積は2834㎡,物件の移転補償件数は140件と多いこと,補償金額が不満で交渉が折り合わない者がいること,家屋を河川占用している者については補償は家屋のみとなるため土地代が不足して移転先が見付からないこと,民有地の土地境界争いが原因で土地の境界が確定しないため用地買収が進められない物件があること等により,用地取得は非常に困難な状況であった。 (g) 河川改修においては,時の経過が河川沿川の自然的・社会的な状況の変化をもたらし,我が国では開発と都市化,人口・資産の集中が急速に進展し,都市化に伴う流域の保水機能の低下,地下浸透の減少,雨水流出時間の短縮等の流出機構が急激に変容し,都市部で一旦水害が発生した場合の影響が著しく大きくなった。 新川における流域対策も含めた治水暫定計画は,かかる時代の変化に伴う眼前の課題に対処すべく策定されたものであるが,このうち流域対策は,被告県のみにおいてなし得るものではなく,関係する市町村,開発事業者や沿線民地の所有者等の協力が不可欠であった。 b新川の河川改修の進捗状況上記のような諸制約の下でも,愛知県知事は,以下のとおり新川流域整備計画の達成に務め,概ね下流部から上流部に向けて,矢板の施工や護岸の施工,堤防及びパラペットの嵩上げを順次進め,新川本川では,本件豪雨時点において,堤防の強化はほぼ完了した状態にあった。なお,新川流域整備計画による新川の改修を施設整備ベースでみると,平成12年度末時点では,新川水系主要5河川で69%,新川本川で86%であった。 (a) 新川下流部(河口~五条川合流点付 にあった。なお,新川流域整備計画による新川の改修を施設整備ベースでみると,平成12年度末時点では,新川水系主要5河川で69%,新川本川で86%であった。 (a) 新川下流部(河口~五条川合流点付近)までは概ね年超過確率1/5である50㎜/h対応の改修は概成していたが,地盤沈下,老朽化により堤防が弱体化して漏水が発生したり,堤防の高さが不足していたことから,堤防の質的強化のため,矢板の施工(漏水防止,浚渫準備も兼用,護岸の施工,堤防やパラペットの嵩上げを実施)することとした。 (b) 新川上流部(五条川合流点付近~上流端)は,堤防の老朽化による漏水が発生していたこと及び洪水の流下断面が不足していたことから,矢板の施工(漏水防止,浚渫準備も兼用,護岸の施工を先)行し,合わせて狭窄部の拡幅や橋梁の改築に必要な用地の買収及び狭窄部の拡幅,築堤,護岸工を施工し,順次橋梁を改築した後に浚渫を実施する計画とした。 (c) 橋梁については,本件水害の時点では19個所の橋梁について,治水暫定計画に対応した改築等が未了の状態であったが,未了のものについても,改築中のものが2個所,改築に伴う用地買収や補償に着手していたものが2個所あり,順次改築は進められていた。 (d) 新川治水緑地の整備については用地取得に着手していたが難航しており,整備は未了であった。 (ウ) 河川管理責任a上記(ア)のとおり,本件水害は,本件計画の下位計画にあたる庄内川水系全体計画の達成を最終的な到達点とし,新川流域整備計画に基づく治水暫定計画を進めている最中に発生したが,このように改修計画が定められ,これに基づいて現に改修中である河川については,同計画が全体として格別不合理と認められなければ,その後の事情の変動により当該河川の未改修部分(本件では新川洗堰部分がこれにあた に改修計画が定められ,これに基づいて現に改修中である河川については,同計画が全体として格別不合理と認められなければ,その後の事情の変動により当該河川の未改修部分(本件では新川洗堰部分がこれにあたる)につき水害発生の危険性が特に顕著となり,当初の計画の時期。 を繰り上げ,又は工事の順序を変更するなどして早期の改修工事を施工しなければならないと認めるべき特段の事情が生じない限り,同未改修部分につき改修が行われていないことのみから河川管理に瑕疵があるということはできない(最高裁昭和59年1月26日第一小法廷判決・民集38巻2号53頁参照。 )b現行河川法が水系主義を採用していることから,河川管理者の河川管理責任を論ずる際にも水系全体の管理を念頭において,その一部を構成するものとして管理の瑕疵の有無を検討すべきであり,上記ア(ア)のとおり新川は庄内川水系を構成する河川であるから,庄内川水系全体の管理を念頭におき,その一部を構成するものとして管理の瑕疵の有無が検討されるべきである。 c改修計画の合理性上記(ア)のとおり,本件水害は,本件計画の下位計画にあたる庄内川水系全体計画の達成を最終的な到達点とし,新川流域整備計画に基づく治水暫定計画を進めている最中に発生したが,いずれの計画も,以下のとおり不合理な点はなく,極めて妥当なものであった。 (a) 本件計画の合理性同計画の合理性については,被告国の主張を援用する。 (b) 庄内川水系全体計画以下の河川計画の合理性庄内川水系全体計画及び新川流域整備計画(治水暫定計画)の内容は上記(ア)のとおりであるところ,以下のとおり,いずれの計画にも不合理な点はなく,極めて妥当なものであった。 ①河川の整備計画は,制御しがたい自然力に対することを目的とするため高度に専門的・技術的な判断が必要であり であるところ,以下のとおり,いずれの計画にも不合理な点はなく,極めて妥当なものであった。 ①河川の整備計画は,制御しがたい自然力に対することを目的とするため高度に専門的・技術的な判断が必要であり,その地理的な対象も広範囲に及び,膨大な時間と費用を要するほか,地形的要因や沿川の状況の変化等にも配慮しなければならないなど,総合的・技術的で複雑な判断が必要とされ,河川の整備計画における改修の方針や具体的方法,順序等は策定権者の広範な裁量に委ねられている。 ②庄内川水系全体計画は,過去の降雨や洪水の実績をもとに,一般的に用いられる貯留関数法等の計算手法によって基本高水等の諸元を導いており,科学的に不合理な点はない。 ③新川流域整備計画及び治水暫定計画は,庄内川水系全体計画を前提に,急激な都市化に対応した治水効果を早期に発揮することを目的として,流域対策も含めた総合的な観点から計画規模や計画流量配分,治水対策を計画したものであって,科学的・技術的に何ら不合理な点はない。 d特段の事情の不存在本件計画,その下位計画である庄内川水系全体計画,新川流域整備計画及び治水暫定計画の当初の計画を繰り上げ又は工事の順序を変更し,新川洗堰からの越流を直ちに0㎥/sとするための工事を特に早期に実施しなければならない特段の事情が生じたとはいえない。 (a) 新川洗堰からの越流量を0㎥/sとするに至るまでには,庄内川の河川整備が進捗し,庄内川下流域の安全性が確認されることが必要であるところ,庄内川の整備計画の実施手順については,河川管理者である建設大臣の裁量に委ねられており,庄内川の河川整備は様々な諸制約の下に鋭意進められている途上にあった。 (b) 新川の昭和44年以降の水害実績を見ても,ほとんどが内水被害であり,堤外地の浸水はあったものの,破堤は全く ねられており,庄内川の河川整備は様々な諸制約の下に鋭意進められている途上にあった。 (b) 新川の昭和44年以降の水害実績を見ても,ほとんどが内水被害であり,堤外地の浸水はあったものの,破堤は全くなく,新川堤防からの溢水もほとんどなかった。 (c) 本件豪雨前においては,新川洗堰からの越流は昭和47年7月を始めとして10回の越流が推定されているが,このうち新川の年最高水位(新川久地野地点)を観測した日と越流が発生した日が同一であったのは,昭和55年8月,昭和58年9月及び平成3年9月の3回のみであった。また,計画高水位を超えたのは平成3年9月のみであり,その際も計画高水位T.P.6.57mに対しT.P. 6.60mというようにごく僅かに超えたにすぎなかった。 (エ) 原告らの主張に対する反論a原告らは「庄内川水系全体計画は,改正前河川法16条1項の規,定する河川工事の実施についての基本となるべき事項(工事実施基本計画)に基づかない格別不合理な計画である」旨主張するが,上記。 (ア)aのとおり,庄内川水系全体計画は本件計画の下位計画に相当するもので,本件計画に沿って策定されたものであるから,同法同条項の規定する河川工事の実施についての基本となるべき事項(工事実施基本計画)に基づくものであることは明らかである。 b原告らは,新川洗堰を早期に閉鎖すべき特段の事情が生じていた旨主張するが,上記(ウ)dのとおり,かかる特段の事情は生じていなかった。 (3) 損害について原告らの別紙被害総括表及び別紙建物損害額算定条件一覧表の算定方法は,合理性がない。 ア損害賠償は,現実に生じた損害の補填が原則であり,複数の評価法があるにもかかわらず,原告らが主張するように「損保方式により算定した家屋損害額」と「被災家屋の改修に要した回収実費額」及び「 ない。 ア損害賠償は,現実に生じた損害の補填が原則であり,複数の評価法があるにもかかわらず,原告らが主張するように「損保方式により算定した家屋損害額」と「被災家屋の改修に要した回収実費額」及び「その他の方法によって算定された家屋損害額」を比較し,大なる方を採用する算出方法には合理性がない。 イ別紙被害総括表のうち「家財損害」は,家財の内容が明らかでなく,,「加工品損害」も,単に「商品,製品・中間製品,原材料,部材,加工品」とあるだけで種類や数量が明らかにされていない。また「加工賃収,入損害」と「休業損害」の関係が不明である「特殊損害」は内容が明ら。 かでなく,とりわけ「知的財産」は物損という概念になじまない。 ウ別紙被害総括表のうち「家財損害「機械・器具・車両損害」は「再」,購入」という費目で金額を計上しているものがあるが,被害として主張できるのはあくまで実損害である以上,損害額は新家財の購入価額ではなく,被害を受けたとする時点における交換価値(時価)であるはずである。 エ別紙被害総括表では,損害を生じたという物の所有権の帰属も明らかでない。 第3当裁判所の判断 前提となる事実関係争いのない事実等に証拠(甲A11,乙イ7ないし9,12,15ないし18,23,24,31,32,35,37,68,69の1・2,70,73,74,乙ロ1,3,4の1・2,5,6,8,9,11ないし14,証人E,証人F,証人G)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 (1) 庄内川及び庄内川流域の特性(乙イ7,弁論の全趣旨)ア流路特性庄内川の流域の平面的な形状は,東西方向に細長く伸びており,流域の勾配は,最高標高が843m(左支川小里川の上流端天瀑山)程度であるためなだらかであり,流域内の最高点と最低点との高度差を本川流 特性庄内川の流域の平面的な形状は,東西方向に細長く伸びており,流域の勾配は,最高標高が843m(左支川小里川の上流端天瀑山)程度であるためなだらかであり,流域内の最高点と最低点との高度差を本川流路の長さで割った流域最大起伏量比は,0.85である。河床の勾配は,庄内川本川は75K付近からかなり緩やかな勾配となり,内津川が合流する30K付近でさらに一段勾配が緩やかになり,基準点枇杷島(15.0K)から下流は水平に近い勾配となって名古屋港に注いでいる。 イ流域の地形(ア) 上流部である東部山間部においては,堀込み河道や山付き河道が多くを占め,仮に洪水防御が必要となる盆地地域で堤防から洪水が氾濫したとしても,それほど氾濫範囲が広がらない非拡散型氾濫域となっている。 (イ) 下流部である西部平野部は,もともと低平地であり,緩勾配により流出土砂の堆積による河床の上昇が生じやすく天井川化しているため,仮に低平地で洪水が氾濫した場合には広範囲に浸水被害が及ぶ拡散型氾濫域となっている。 ウ都市化傾向庄内川流域市町(15市14町)における人口は,戦後の昭和25年の流域市町の人口は約190万人であったが,昭和45年には約330万人と増加し,本件水害が発生した平成12年には約400万人にまで増加しており,名古屋市を中心に庄内川下流部に高度な都市化傾向が見られる。 (2) 新川及び新川流域の特性(乙イ7,乙ロ1,4の2,5)ア新川の概要新川は西春日井郡大野木町(現名古屋市西区大野木)地先の庄内川分派放流地点である新川洗堰に始まり,20.2K地点付近で大山川,合瀬川,新地蔵川と合流し,庄内川に沿って南西方向に流下しながら途中右岸側に内水河川鴨田川,水場川を合わせ,12.4K地点で右支川五条川を合流して伊勢湾に流入する一級河川である。 イ新川開削の ,合瀬川,新地蔵川と合流し,庄内川に沿って南西方向に流下しながら途中右岸側に内水河川鴨田川,水場川を合わせ,12.4K地点で右支川五条川を合流して伊勢湾に流入する一級河川である。 イ新川開削の経緯(ア) 江戸時代,尾張藩の奨励もあって瀬戸地方を中心に焼物がさかんとなり,そのために山が荒廃し,流出土砂が増大した結果,庄内川の河床が上昇し,また,庄内川河口付近一帯の干拓が進められ,数㎞流路が先に延ばされたため川の流れが悪くなり,洪水が頻発した。 (イ) 上記のとおり庄内川の河床が上昇し,合瀬川は庄内川に直接流れ込むことができなくなり,大蒲沼及びその付近一帯は湿地帯を形成していき,また,五条川と庄内川の合流点でも川底が上がり,排水が悪くなるとともに合流点付近やその西側一帯が湿地帯へと変わっていった。 (ウ) 上記のような庄内川の水はけの悪化と頻発する洪水に対し民衆からの直訴が何度も行われ,水野千之右衛門の建白書の提出などもあり,庄内川の水はけの改善と頻発する洪水への対策として,新たに一河川を設けることとなり,天明4(1784)年工事に着手し,天明7(1787)年に開削工事が完成した。 ウ流路特性新川流域の各河川の河床勾配は,上流は木曽川の形成した犬山扇状地に立地することから河床の勾配は1/200~1/500程度であるのに対し,下流は沖積平野であるため1/2000~1/5000と勾配が緩く,長い区間にわたって潮位の影響を受けるため,洪水の疎通が悪い。 エ都市化傾向昭和30年以降,経済活動の活発化に伴い流域の開発が進み,流域人口は,昭和25年には約25万人であったが,昭和55年には約84万人に増加した。 (3) 新川洗堰ア洗堰とは,河川工学上,水位がある高さ以上になると水が堤防を越流するもので,洪水調節用の遊水地又はある水位以上の には約25万人であったが,昭和55年には約84万人に増加した。 (3) 新川洗堰ア洗堰とは,河川工学上,水位がある高さ以上になると水が堤防を越流するもので,洪水調節用の遊水地又はある水位以上の水だけを分流させる分水路に用いられる「越流堤」と呼ばれる河川堤防技術の一種であり,本堤(いわゆる堤防)の一部を低くして築造されるものである(乙イ17,18。 )イ新川洗堰は,天明4(1784)年に始まった新川開削工事と共に築造されたが,庄内川の堤防を掘り下げ,庄内川の洪水をその部分から大蒲沼に流入させ,さらに新川に流下させることにより庄内川の洪水を調節するという目的があった(乙イ7。 )ウ新川洗堰は,明治16年に,築造後150年を経てその間の幾度かの洪水により破壊されたため大修理が行われた(乙イ7。 )エ平成元年当時の新川洗堰は,横幅約56m,堤防天端下がり約3m,敷高T.P.+9.0mで,本川流量が約1900㎥/sで越流を開始していたが,本件水害後,激特事業により約1m嵩上げされた(乙イ7,32。 )(4) 新川治水緑地ア新川治水緑地は,昭和52年3月に愛知県知事が策定した庄内川水系全体計画において,新川の洪水を約110㎥/sカットする新川調節池として計画された。昭和57年2月に新川流域総合治水対策協議会が策定した新川流域整備計画においても,新川洗堰敷地を利用して設置し,新川の洪水を110㎥/s調節する遊水地として計画された(乙ロ4の2,5。 )イ被告県は,本件豪雨の時点で新川治水緑地の用地取得に着手していたものの難航し,整備は未了であったが,本件豪雨後に用地取得が完了し,護岸工事,堤防補強工事,池底の掘削工事が行われた(弁論の全趣旨。 )(5) 本件豪雨以前の洪水被害の状況ア庄内川下流域庄内川では,昭和44年の直 未了であったが,本件豪雨後に用地取得が完了し,護岸工事,堤防補強工事,池底の掘削工事が行われた(弁論の全趣旨。 )(5) 本件豪雨以前の洪水被害の状況ア庄内川下流域庄内川では,昭和44年の直轄編入以来,破堤や決壊による被害は生じていない。昭和44年から本件水害が発生した平成12年9月までの間の庄内川水系における主要な洪水は別紙庄内川主要洪水一覧表のとおりである。同表に記載されている8つの洪水のうち庄内川下流部において外水被害が発生したのは平成12年9月の本件水害のみである(乙イ7,12,弁論の全趣旨。 )イ新川(ア) 洪水被害新川周辺の昭和44年から平成12年までの水害実績は,別紙新川水害実績一覧表のとおりである。そのほとんどを内水被害が占め,僅かな回数の溢水はあったものの,破堤は全くなく,外水被害は発生していなかった(乙ロ11。 )(イ) 新川洗堰と洪水被害との関係昭和44年度から平成12年度までの新川洗堰の越流実績と新川久地野地点における年最高水位は,別紙水位及び越流量等一覧表のとおりである。新川洗堰からの越流は昭和47年7月を始めとして10回の越流が推定されるが,このうち新川の年最高水位を観測した日と越流が発生した日が同一であったのは,昭和55年8月,昭和58年9月及び平成3年9月の3回のみである。このうち,計画高水位を超えたのは平成3年9月だけで,計画高水位T.P6.57mに対し,T.P6.60mであった。新川洗堰の越流量が最も多かったのは昭和47年7月13日で,その量は110㎥/sであった(乙ロ12。 )(6) 庄内川・新川の河川管理の経過等ア愛知県知事による庄内川・新川の河川管理愛知県知事は,昭和25年以降,当初庄内川改修工事全体計画(昭和25年度,庄内川改修工事第2回変更全体計画(昭和34年度,庄 庄内川・新川の河川管理の経過等ア愛知県知事による庄内川・新川の河川管理愛知県知事は,昭和25年以降,当初庄内川改修工事全体計画(昭和25年度,庄内川改修工事第2回変更全体計画(昭和34年度,庄内川))改修工事第3回変更全体計画(昭和43年度)により,庄内川・新川の河川管理を行ってきた。 愛知県知事は,上記各計画において,庄内川から新川への分派流量を300㎥/sとしたが,建設大臣は,庄内川改修工事第3回変更全体計画の認可にあたり「新川については,合瀬川,青木川等の改修による流量増,があるので分派流量を0としたときの庄内川改修に対する影響,並びに水系から分離されるときの問題点を十分に検討すること」との指示(昭和43年2月6日付け認可指示事項)をした(乙ロ4の2。 )イ庄内川水系の一級水系の指定庄内川水系は,河川法(昭和39年法律167号)が制定されたのを受けて,昭和40年3月24日政令43号により,同法4条1項の水系に指定された(乙イ23。 )ウ庄内川,新川等の一級河川の指定河川法が昭和39年に制定され,昭和40年4月1日に施行されたのを受けて,昭和44年3月20日政令31号により,庄内川水系の庄内川,矢田川,香流川,隅除川,天神川,瀬戸川,新川,大山川等の河川が一級河川に指定された(直轄編入。これに伴い,庄内川については建設大臣)が直接管理し,新川については,改正前河川法9条2項及び改正前施行令2条1項の規定により,直轄編入と同時に指定区間告示がなされ,機関委任事務として愛知県知事が管理の一部を行うこととされた。平成12年4月1日以降は,愛知県知事が,地方自治法(平成11年法律87号)2条9項1号に規定する第1号法定受託事務として,建設大臣(現国土交通大臣)が指定した区間である新川の管理の一部を行っている(乙イ2 月1日以降は,愛知県知事が,地方自治法(平成11年法律87号)2条9項1号に規定する第1号法定受託事務として,建設大臣(現国土交通大臣)が指定した区間である新川の管理の一部を行っている(乙イ24,乙ロ14。 )エ庄内川の直轄管理区間の指定(乙イ24,弁論の全趣旨)庄内川は,昭和44年の直轄編入の際,建設省告示第646号により,直轄管理区間が河口から約21K(名古屋市西区稲生町地先)までと指定されたが,その後,直轄管理区間は,昭和48年4月に名古屋市守山区上志段味地先の東谷橋まで(約38K,昭和49年4月に岐阜県多治見市)生田町地先の虎渓大橋まで(約53K,昭和51年5月に岐阜県土岐市)肥田町浅野地先の三共橋(約63K)までと延伸された。 直轄管理区間は庄内川本川だけでなく,その一部の支川にも及んでおり,昭和48年に庄内川の左支川である矢田川の名古屋市東区大幸町地先の宮前橋(矢田川と庄内川の合流点から約7㎞の地点)まで,昭和58年4月に庄内川の右支川である八田川の春日井市朝宮町地先(八田川と庄内川との合流点から約4㎞の地点)まで指定された。 (7) 本件豪雨当時実施されていた河川計画ア庄内川に関する計画(ア) 建設大臣は,昭和44年3月の直轄編入に伴い,昭和45年3月,昭和45年計画を定めたが,昭和50年4月,降雨量等の基礎データや庄内川流域の開発状況を踏まえて昭和45年計画の内容を大幅に改訂した(本件計画。本件計画は,平成6年6月に部分改定されたが,基本)的な内容に変更はなく(乙イ8,本件豪雨当時,被告国は,本件計画)に基づいて庄内川の河川改修を実施していた。 (イ) 本件計画は,建設省(現国土交通省)河川局作成にかかる昭和50年3月付け「庄内川水系工事実施基本計画参考資料」を基に策定されたが,同資料の概要は,以 基づいて庄内川の河川改修を実施していた。 (イ) 本件計画は,建設省(現国土交通省)河川局作成にかかる昭和50年3月付け「庄内川水系工事実施基本計画参考資料」を基に策定されたが,同資料の概要は,以下のとおりである(乙イ12。 )a治水計画検討の基本方針(a) 計画規模は,流域の重要性等を考慮し,降雨量の年超過確率は基準点枇杷島上流域を1/200,多治見上流域を1/100とする。 (b) 計画の基本量は資料整備状況及び信頼度から流域平均日雨量を用いる。 (c) 河道とダムに対する流量の配分については,経済性と技術的可能性とを考慮して決定する。 (d) ダムの調節方式は一定量放流方式とする。 (e) ダムによる洪水調節能力及び河道の疎通能力を検討する場合には,基準地点での安全度に相当する日雨量を計画雨量とし,その雨量を持つ6パターンの洪水を計画対象洪水とする。 (f) 計算手法は,洪水追跡処理の容易な貯留関数を用いる。 b計画雨量の検討基準地点は,東谷橋より上流を多治見,下流を枇杷島とする。昭和32年8月,昭和33年8月,昭和36年6月,昭和42年7月,昭和45年6月及び昭和47年7月の6つの洪水(降雨の時間分布及び地域分布が異なる降雨パターンを有する洪水)についての,基準地点多治見及び枇杷島の上記a(a)の計画規模に相当する計画雨量,実績降雨及び引伸し倍率は,別紙計画雨量及び実績降雨一覧表のとおりである。 c基本高水,計画高水流量の検討上記bの計画降雨を用いて流出計算を行うと,基準地点枇杷島,多治見及び各主要地点における上記bの計画対象6洪水のダム及び遊水地による調節前後のピーク流量は,別紙主要地点におけるピーク流量一覧表のとおりである。降雨の地域分布型または時間分布型の相違によるピーク流量の変動を検討すると,ピーク流量の分布は 洪水のダム及び遊水地による調節前後のピーク流量は,別紙主要地点におけるピーク流量一覧表のとおりである。降雨の地域分布型または時間分布型の相違によるピーク流量の変動を検討すると,ピーク流量の分布は,洪水調節の有無を問わず,対数正規分布による近似が可能であり,計画対象6洪水の基準地点枇杷島における洪水前の最大流量4500㎥/sはピーク流量群の約85%,また洪水調節後の最大流量4200㎥/sは90%を包絡する。さらに,枇杷島地点における年最大流量の超過確率をも勘案すると,計画対象6洪水による最大流量は,計画雨量確率1/200,日雨量250㎜として,異なった地域分布,時間分布型の降雨に対し,河川の重要度に見合った安全度で対応できると考えられる。よって,基準地点枇杷島における基本高水のピーク流量を4500㎥/sとし,後記dのダム計画及び遊水地計画により,計画高水流量を4200㎥/sとする。 dダム等による洪水調節計画庄内川水系に計画されている小里川ダム及び小田井遊水地について,「ダムの放流方式及び治水容量の決定に際しては,一定量放流方式としダムの洪水調節容量については,ダムサイト地点における計画対象洪水及び基準地点枇杷島,多治見における計画対象洪水に対して安全であるように考慮する。調節地の容量については,技術性・経済性及び土地利用計画等を勘案し,利用可能な容量を設定する」との条件。 で,上記bの計画対象6洪水における流入,放出量及び必要容量を計算すると,別紙流入・放流量等一覧表のとおりとなる。 e 結論 上記検討の結果,昭和45年計画について,基本高水のピーク流量を枇杷島,多治見においてそれぞれ4500㎥/s,2700㎥/s,計画高水流量をそれぞれ4200㎥/s,2400㎥/sと改訂する。 (ウ) 本件計画の主要な内容は,以下のとおりで 基本高水のピーク流量を枇杷島,多治見においてそれぞれ4500㎥/s,2700㎥/s,計画高水流量をそれぞれ4200㎥/s,2400㎥/sと改訂する。 (ウ) 本件計画の主要な内容は,以下のとおりである(乙イ9。 )a河川の総合的な保全と利用に関する基本方針河川工事の現状,砂防・治山工事の実施,水害発生の状況及び河川の利用の現況(水産資源の保護及び漁業を含む)並びに河川環境の。 保全を考慮し,また,関連地域の社会・経済情勢の発展に即応するよう中部圏開発整備計画及び木曽川水系水資源開発基本計画等との調整を図り,かつ,土地改良事業及び下水道事業等の関連工事並びに既存の水利施設等の機能の維持を十分配慮して,水源から,河口まで一貫した計画のもとに,しばしば水害の発生している地域についての対策を重点として,次のように工事を実施する。 保全に関しては,上流部の瑞浪市・土岐市・多治見市等及び下流部の名古屋市等の沿川地域を洪水から防御するため,上流にダムを建設して洪水の調節を行い,河道については,築堤,掘削,護岸等を施工するとともに,小田井遊水地により洪水の調節を行い,下流の洪水の軽減を図るほか,河川の環境を整備するための事業を行う。また,流況調整河川を建設し,庄内川及び周辺河川の内水排除及び浄化を図る。 利用に関しては,中京経済圏の飛躍的な発展に伴う諸用水の需要の増大に対処するため,流況調整河川等を建設し,水資源の開発を行うとともに,広域的かつ合理的な利用の促進を図る。 b河川工事の実施の基本となるべき計画に関する事項(a) 基本高水並びにその河道及び洪水調節ダムへの配分に関する事項①上流部(東谷橋から上流)基本高水は,多治見上流域の計画雨量(日雨量)を229㎜とし,昭和32年8月洪水,昭和47年7月洪水等を主要な対象洪水として検討し,そ 洪水調節ダムへの配分に関する事項①上流部(東谷橋から上流)基本高水は,多治見上流域の計画雨量(日雨量)を229㎜とし,昭和32年8月洪水,昭和47年7月洪水等を主要な対象洪水として検討し,そのピーク流量を,基準地点多治見において2700㎥/sとし,このうち,上流ダムにより300㎥/sを調節して,河道への配分流量を2400㎥/sとする。 ②下流部(東谷橋から河口)基本高水は,枇杷島上流域の計画雨量(日雨量)を250㎜とし,昭和32年8月洪水,昭和47年7月洪水等を主要な対象洪水として検討し,そのピーク流量を,基準地点枇杷島において4500㎥/sとし,このうち上流ダム及び小田井遊水地により300㎥/sを調節して,河道への配分流量を4200㎥/sとする。 (b) 主要な地点における計画高水流量に関する事項①上流部(東谷橋から上流)計画高水流量は,瑞浪において1600㎥/sとし,日吉川,肥田川,妻木川等を合わせて,多治見において2400㎥/sとする。 ②下流部(東谷橋から河口)計画高水流量は,大留において3500㎥/sとし,内津川,矢田川等を合わせ,枇杷島において4200㎥/sとし,その下流では河口まで同流量とする。 ③計画高水流量図は,別紙計画高水流量図のとおりとする(同図において庄内川から新川への分派量は0㎥/sとされている。 。)(c) 主要な地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関する事項庄内川の上流部は製陶業が発達しており,この排水によって河川は常時白濁化しているため,枇杷島下流における既得水利は小規模の農業用水のみである。 枇杷島における過去10か年間の平均渇水流量は2.3㎥/s,平均低水流量は7.1㎥/sであるが,流水の正常な機能を維持するため必要な流量については,水質等に関して,調査・ 模の農業用水のみである。 枇杷島における過去10か年間の平均渇水流量は2.3㎥/s,平均低水流量は7.1㎥/sであるが,流水の正常な機能を維持するため必要な流量については,水質等に関して,調査・検討のうえ決定するものとする。 c河川工事の実施に関する事項(a) 主要な地点における計画高水位,計画横断形,その他河道計画に関する重要な事項①計画高水位庄内川水系の主要な地点における計画高水位は,以下のとおりとする。 瑞浪(庄内川,64.1K:T.P.151.73m)多治見(庄内川,49.2K:T.P.97.37m)味鋺(庄内川,21.8K:T.P.14.03m)枇杷島(庄内川,15.7K:T.P.9.24m)河口(庄内川,0K:)T.P.6.20m(計画高潮堤防高)計画潮位:4.02m瀬古(矢田川,合流点から3.2㎞:T.P.12.92m)②計画横断形庄内川水系の主要な地点における河道の計画横断形は別紙図7のとおりとする。 ③堤防高堤防高は,計画高水位に,庄内川の上流部については1.0m~1.2m,下流部については1.5m~2.0m及び矢田川については2.0mを,それぞれ加えたものとする。 (b) 主要な河川工事の目的,種類及び施行の場所並びに当該河川工事の施行により設置される主要な河川管理施設の機能の概要上流部東谷橋から上流については,沿川地域の洪水を防御するため,上流にダムを建設するとともに,河道については築堤・掘削・護岸等を施工する。 下流部東谷橋から下流については,川巾はほぼ現状のままとし,堤防の拡築及び河床掘削,河口部の浚渫を行い,河積の増大を図り,護岸・水制等を施工する。また,庄内川の右岸名古屋市西区の小田井遊水地により洪水を調節し,下流の洪水の安全な流下を図る。 名古屋市及びその周辺部につ び河床掘削,河口部の浚渫を行い,河積の増大を図り,護岸・水制等を施工する。また,庄内川の右岸名古屋市西区の小田井遊水地により洪水を調節し,下流の洪水の安全な流下を図る。 名古屋市及びその周辺部については,高水敷の整備等を行い,河川の環境を整備するとともに,木曽川と庄内川を連絡する流況調整河川を建設し,庄内川及び周辺河川の内水排除及び浄化を図るとともに,各種用水の取水を可能ならしめる。 なお,上流部に建設するダムについては,調整・検討のうえ計画を決定する。 (エ) 直轄河川改修計画書a本件水害発生当時,実際の庄内川の河川改修工事は,平成元年11月中部地方建設局(現中部地方整備局)作成にかかる直轄河川改修計画書に従って行われていた(甲A11,証人E12頁。 )b直轄河川改修計画書には,同計画書で定められている河川改修工事をどのような順序で行うかということに関する記載はなかったが,実際の河川改修工事の実施にあたっては,毎年の予算要求の中で,庄内川工事事務所から中部地方建設局に原案を上げ,同局で審査した結果を建設省(現国土交通省)において検討し,最終的に予算が配布されることになっていた(甲A11,証人E12頁。 )c直轄河川改修計画書には,その策定に際して新川の改修状況その他新川の諸事情に関する記載や,新川の計画高水流量その他計画高水位などの河川工事の実施に関する事項の記載はなかった(甲A11。 )d直轄河川改修計画書には「庄内川水系庄内川の直轄河川改修計画,書について」と題する文書が添付されており,同文書には次の記載がある(甲A11。 )「直轄河川改修計画については,それまでの根拠規程であった地方建設局処務規程が平成13年1月に廃止され,現在は,河川管理者の参考資料の一つという位置付けになっています。 したがって,本計画に 。 )「直轄河川改修計画については,それまでの根拠規程であった地方建設局処務規程が平成13年1月に廃止され,現在は,河川管理者の参考資料の一つという位置付けになっています。 したがって,本計画に基づいて河川改修を実施するものではありません。 平成9年の河川法改正以降,直轄河川の工事にあたっては,河川整備計画が定められている河川についてはそれに基づいて,未策定の河川については,旧河川法上の工事実施基本計画を新法の河川整備基本方針,河川整備計画とみなし,各年の工事内容についてはその都度総合的に判断しています」。 イ新川に関する計画(ア) 庄内川水系全体計画a改正前河川法79条1項及び改正前施行令45条1号により建設大臣の認可が必要な「工事実施基本計画において定められた河川の総合的な保全と利用に関する基本方針に沿って計画的に実施すべき改良工事」に関する計画として,愛知県知事は,新川について,昭和52年3月,庄内川水系全体計画を策定し,同月31日付けで建設大臣の認可を得た(乙ロ4の1・2。 )b同計画のうち新川に関する主要な内容は,以下のとおりである(乙ロ4の2。 )(a) 河川現況新川の沿岸は名古屋市をはじめとした市街地を貫流することから人家連たんし,防御すべき資産は莫大なものがある。下流部は愛知県尾張西部の地盤沈下地帯にも相当し,地盤高T.P.-2m程度の所があり,堤防直下の沖積砂層が10m程度の所まで堆積していることから平常的に漏水問題がほぼ両岸全区間を通して生じ,根本的な改修が強く希求されている。 (b) 計画概要新川は全川23K区間を計画対象とする。新川洗堰から地蔵川合流点までの区間は新川水系の洪水調節池(治水緑地)として利用する計画とし,全川にわたり河床掘削を計画し,最上流部及び最下流部を除き低水路護岸工を 全川23K区間を計画対象とする。新川洗堰から地蔵川合流点までの区間は新川水系の洪水調節池(治水緑地)として利用する計画とし,全川にわたり河床掘削を計画し,最上流部及び最下流部を除き低水路護岸工を計画した。 (c) 基本高水の算定①計算方法新川は,大半が緩勾配の流域より形成され,地勢も水田,畑,原野で占められた河川であるため,流出量の算定は貯留関数によるものとした(貯留関数法。 )②実績洪水による検証近年における実績3洪水について久地野地点における水位痕跡を不当流計算によって作成したH-Q曲線より流量ハイドログラフに換算し,その結果と貯留関数による推算ハイドログラフを比較した結果,現象解析としては十分な条件で実績と推算結果が一致した。 ③基本高水の計算条件<ア>計画降雨波型被告県において明治24年から昭和41年にわたる76年間の資料をトーマス法による確率処理を行って得られた降雨強度曲線からW(年超過確率)=1/100,1/50,1/30,1/10,1/5の5降雨について中央集中型を降雨波型を採用して計画降雨波型とした。 <イ>流出計算系統図計画に際しての流域分割は現況用排水系統図はもちろん,各市町村における公共都市両下水道計画生棚川等の幹線排水路計画を参考に流域分割を行い,その結果に基づいて貯留関数における流出計算系統図を別紙図8のとおり整理した。 <ウ>将来流域における定数の決定将来流域における開発の見込度としては各市町村毎の都市計画法に基づいて,土地用途区分のうち,既成市街地,住宅地域,工業地域及び商業地帯を人口流出流域とし,緑地,公園及びその他の調整区域を自然流出流域とした。 <エ>内水地区の取扱い比流量法によって計算し,貯留関数の計算結果に加味するものとした。 (d) 計画高水流量の検討①基本 流出流域とし,緑地,公園及びその他の調整区域を自然流出流域とした。 <エ>内水地区の取扱い比流量法によって計算し,貯留関数の計算結果に加味するものとした。 (d) 計画高水流量の検討①基本高水新川本川の基本高水(W=1/100)は,以下のとおりである。 新川河口~五条川合流点1430㎥/s五条川合流点~水場川合流点850㎥/s水場川合流点~鴨田川合流点790㎥/s鴨田川合流点~三川合流点780㎥/s※三川合流点とは,地蔵川,大山川及び合瀬川の合流地点を指す。 ②新川における洪水調節新川の基本高水1430㎥/sを1100㎥/sまでに調節する方法として次の<ア>ないし<ウ>の方式を採用した結果,各区間における流量配分は次の<エ>となった。 <ア>地蔵川の流域変更地蔵川と八田川との交差点において地蔵川の流域を庄内川へ流域変更する。この新川への調節効果は170㎥/sである。 <イ>大山川放水路方式大山川の新木津用水分派点より上流の流出量の一部100㎥/sを大山川放水路(流況調整河川)によってカットする。これによる新川本川の調節効果は88㎥/sである。 <ウ>新川調節池上記方式による調節の不足分を河口で調整できるように新川調節池で110㎥/sをカットする計画とした。 <エ>洪水調節の結果による計画高水流量新川河口~五条川合流点1100㎥/s五条川合流点~水場川合流点480㎥/s水場川合流点~鴨田川合流点430㎥/s鴨田川合流点~三川合流点390㎥/s③暫定計画三川合流点における三角ハイドロ合成を行うと,別紙図9のとおり合流量は515㎥/sとなり,新川調節池で100㎥/sカットを見込めば515-100=415≒420㎥/sとなる。 そこで,新川の暫定計画流量配分を,現状流域を対象としW=1/5 ,別紙図9のとおり合流量は515㎥/sとなり,新川調節池で100㎥/sカットを見込めば515-100=415≒420㎥/sとなる。 そこで,新川の暫定計画流量配分を,現状流域を対象としW=1/50として,次のように設定する(但し,洪水調節を行わず基本高水として評価した場合にはW=1/30。 )新川河口~五条川合流点730㎥/s五条川合流点~水場川合流点420㎥/s水場川合流点~鴨田川合流点420㎥/s鴨田川合流点~三川合流点420㎥/s(イ) 新川流域整備計画・治水暫定計画a昭和52年6月の第33回河川審議会の「総合的な治水対策の推進方策についての中間答申」において総合治水対策を強力に推進するよう提言がなされたことを受けて,被告県は,昭和55年9月,新川流域総合治水対策協議会を設置した。 同協議会は,昭和57年2月15日付けで,新川流域整備計画を承認した。同計画の中の河川改修計画として新川の治水暫定計画が策定された。 )。 b新川流域整備計画の主要な内容は,以下のとおりである(乙ロ5(a) 流域整備の基本方針①治水機能の地域区分地域と河川の係わり合いは,流域全体で必ずしも一様なものではなく,その形は様々であり,流域整備の方針は,流域と河川の係わり合いの違いによって異なってくるため,新川流域を土地条件により,なかでも河川との係わり合いの違いによって,保水地域,遊水地域及び低地地域に分類し,その分類ごとにそれぞれについての対策を実施する。 ②流域整備の基本方針<ア>流域整備の前提流域整備計画を策定するための前提条件として,計画目標年次を設定し,これに対する流域の市街化状況を想定し,この市街化による流出量の増大等のインパクトに対し,的確な対策を講じていく必要がある。 流域整備の目標年次ⅰ流域整備の達成に として,計画目標年次を設定し,これに対する流域の市街化状況を想定し,この市街化による流出量の増大等のインパクトに対し,的確な対策を講じていく必要がある。 流域整備の目標年次ⅰ流域整備の達成については,今後おおむね10か年程度を目途とし,この期間中に50㎜/hの安全度を確保できるように,流域及び河川における対策を講じる。 目標年次における流域開発の想定ⅱ新川流域においては,現在設定されている都市計画法における市街化区域が流域の約50%を占めている。 このすべてが市街化され,その結果,市街化区域外の調整区域内にある既成市街地を合わせると流域内の市街地は約64%になるものと想定する。 <イ>治水計画の基本方針新川の治水計画として,流域条件を前提とし既に中小河川改修事業全体計画を策定する。同計画により,将来計画としてR=98㎜/h(年超過確率1/100)の洪水(基本高水1430㎥/s)に対処可能な治水施設の整備を進める。 <ウ>治水暫定計画の基本方針新川流域内各河川は平地を網状に流れているため,その数や延長が多く,市街地は流域に均等に存在している。 これら河川の改修は用地問題等の困難な問題があり,その事業費も莫大なものとなるので,短期間に中小河川改修事業全体計画に対応した整備を実施することはほとんど不可能である。 したがって,おおむね10か年程度で実施可能な治水対策として,治水暫定計画を設定する。 治水暫定計画では,流域対策と合わせてR=50㎜/h(年超過確率1/5)降雨に対し安全となるように河川整備を進める。 <エ>土地利用の基本方針流域の土地利用計画においては,流域の有する保水・遊水機能の保全に努めるとともに,治水施設の整備状況に応じた適正な土地利用を図る。 <オ>流域対策の基本方針新川流域の開発の特徴として,地形の 針流域の土地利用計画においては,流域の有する保水・遊水機能の保全に努めるとともに,治水施設の整備状況に応じた適正な土地利用を図る。 <オ>流域対策の基本方針新川流域の開発の特徴として,地形の平坦性ならびに交通の利便性等から土地区画整理事業による他は大規模開発は少なく,60%以上が0.1ha未満の小規模開発である。したがって,流域対策は流域の市町が主体となり,また,公共事業に伴う対策を率先しながら実施していく。 <カ>流量分担計画流量分担計画は,別紙新川流量分担計画図のとおりとする。 (b) 河川の整備計画①治水施設の整備現況新川,五条川,大山川,合瀬川及び青木川等において中小河川改修事業あるいは小規模河川改修事業,または,地盤沈下対策河川事業等により治水施設の整備を推進してきたが,昭和54年度からは総合治水対策特定河川事業に移行された。 新川では,現状流域に対しては下流区間は50㎜/h対応の改修は概成しており,引き続き上流の護岸整備や局部的拡巾,浚渫が必要である。 ②治水計画<ア>改修計画の経緯新川流域において水系一貫した計画は中小河川改修事業全体計画であり,昭和47年に策定に着手,その後5年間検討が積み重ねられ,昭和52年3月に(策定が)完了している。 <イ>中小河川改修事業全体計画昭和52年に策定された中小河川改修事業全体計画では,将来計画として現在の市街化区域(約50%)が将来全域市街化されることを想定し,流域の重要度を考慮して,確保すべき治水安全度を年超過確率1/30~1/100とするよう定めている。 この計画では,新川の五条川合流後における基本高水のピーク流量を1430㎥/sとし,このうち,放水路,治水緑地及び地蔵川の庄内川への流域変更によって330㎥/s調節し,河道の計画高水流量を1100㎥/s 画では,新川の五条川合流後における基本高水のピーク流量を1430㎥/sとし,このうち,放水路,治水緑地及び地蔵川の庄内川への流域変更によって330㎥/s調節し,河道の計画高水流量を1100㎥/sとされている。 ③治水暫定計画河川改修については,流域対策を行うこととあわせて,50㎜/h降雨により河川に流入する流量を安全に流下させるよう必要な治水施設の整備を行う。 すなわち,新川の五条川合流後地点(12K/400)における昭和65年(平成2年)想定流域の計画対象高水は960㎥/sであるが,このうち河道処理流量を現状流域の流出量に見合う730㎥/sとし,残余の230㎥/sは流域分担とあわせて計画遊水地,放水路により洪水調節する。 治水暫定計画の流量配分図は別紙図10のとおりであり,これに基づき,総合治水特定河川を中心として,必要な法河川,準用河川の整備を行う。 これらの洪水調節のうち放水路は流況調整河川木曽川導水事業の放水路を始め,流況調整河川(カット量100㎥/s)及び青木川放水路(カット量25㎥/s)である。 また,遊水地は新川最上流端洗堰敷地を利用して設置する新川治水緑地を始めとして6か所に計画的に設置し,その総貯留容量は85万8000㎥である。 なお,流域分担は自然遊水地区と雨水貯留施設で行う。自然遊水地区は洪水の毎に浸水している河川沿いの低地の湛水を無被害湛水までに解消した上でなお自然に残る遊水機能を計画的に維持しようとするもので,総貯留容量は30余か所で102万㎥である。 また,雨水貯留施設は新規開発地を対象として開発に応じて設置し,保水機能の維持を図るもので,総貯留容量は148万5000㎥である。 (c) 地域毎の整備計画①保水地域の整備計画<ア>保水地域の概要保水地域は,丘陵・台地・緩扇状地・自然堤防が該当し 置し,保水機能の維持を図るもので,総貯留容量は148万5000㎥である。 (c) 地域毎の整備計画①保水地域の整備計画<ア>保水地域の概要保水地域は,丘陵・台地・緩扇状地・自然堤防が該当しており,流域全体の約78%(202㎞)を占めている。また, 保水地域は,都市計画法の線引きによって,市街化区域(46%)及び市街化調整区域(54%)に二分される。 保水地域は,保水機能保全のための対処の仕方に応じて,自然地,新規開発地,既開発地に分類でき,これらの特性に応じて対策を講じていく。 <イ>保水機能保全対策自然地の保水機能保全対策として,市街化調整区域の保持及び法令・指導等による自然保水機能の保全が,新既開発地の保水機能保全対策として,開発型公共事業の流出抑制対策,新規大規模開発対策,新規小規模開発対策及び河川への排水樋管の流量調整が,既開発地の保水機能保全対策として貯留施設(浸透施設)の設置等流出抑制策を講じる。 開発型公共事業,大規模開発地,小規模開発地及び既開発地における保水機能保全対策として,雨水貯留事業等による代替施設対策量をも含め,保水地域において確保すべき対策量は198万㎥とする。 ②遊水地域の整備計画<ア>遊水地域の概要遊水地域は,五条川,青木川等の河川沿いの低地で,地形的には扇状地上の旧河道,谷底平野及び氾濫平野のうち,市街化調整区域内の未市街地が該当しており,流域全体の約7%を占めている。 遊水地域の土地利用現況は,水田,畑地が大きな部分を占めており,これらのほとんどが農振法に基づく農用地に定められている。 遊水地域の河川の現況の流下能力は20~30㎜/h程度であるが,下流から改修を進める場合,河川延長が長いので,その効果はなかなか上流区間に及ばない。このため,青木川放水路,木曽川導水事業の放 る。 遊水地域の河川の現況の流下能力は20~30㎜/h程度であるが,下流から改修を進める場合,河川延長が長いので,その効果はなかなか上流区間に及ばない。このため,青木川放水路,木曽川導水事業の放水路により,保水地域の流出量の一部を上流でカットすることによって,遊水・低地地域の浸水の増大を防ぐとともに,農地の無被害湛水を前提とした自然遊水地区を確保する。河道の整備は,これらの効果を組み込み,50㎜/h降雨に対応する水準で行う。 <イ>遊水機能保全対策遊水地域における施策は,市街化調整区域の保持,新規開発地の遊水機能保全対策,営農環境の改善,盛土の抑制及び河川への排水樋管の流量調整である。 ③低地地域の整備計画<ア>低地地域の概要低地地域は,下流部に広がる低平な沖積平野の後背低地で,ほとんどが市街化されている区域及び中流部の市街化区域となっている河川沿いの低地が該当しており,流域全体の約15%(39㎞)を占めている。 新川下流部の低地は,名古屋市の近郊で既開発地が多く,我国有数の地盤沈下地帯に連なる地域であり,河川に沿う低平な地形上に位置していることから,浸水・湛水被害を受けやすく,下流部ではそのほとんどの排水を内水排除ポンプに依存している。 したがって,低地地域においては,まず積極的に洪水防御策を講じ,安全度を向上させることが肝要である。 <イ>低地地域保全対策低地地域における施策は,内水排除計画等の促進,内水ポンプの運転調整及び貯留施設の設置である。 低地地域保全対策として,雨水貯留事業等による代替施設対策量をも含め,低地地域において確保すべき対策量は100万㎥とする。 ④暫定対策の解除流域対策のうち,暫定的な対策については,本計画における治水暫定計画達成後の河川改修による治水安全度の向上を勘案して,順次解 地地域において確保すべき対策量は100万㎥とする。 ④暫定対策の解除流域対策のうち,暫定的な対策については,本計画における治水暫定計画達成後の河川改修による治水安全度の向上を勘案して,順次解除していくこととするが,その詳細については,今後協議会において決定する。 なお,治水対策上効果が大きいもの,または,公共開発事業で設置したものについては,例えば防災調整池または雨水貯留施設の管理移管等により,積極的に恒久化を図っていく。 (d) その他出水時の安全対策及び住民への啓蒙対策として,警報避難システムの確立,水防管理態勢の強化,浸水実績の公表,高床式建築の奨励及びパンフレット等による広報を実施するものとする。 (8) 本件豪雨時までの河川改修の状況ア庄内川(乙イ7,68,69の1・2,70,証人F,弁論の全趣旨)本件計画当時の庄内川における現況堤防高と計画高水位,計画堤防高は別紙図3-1及び3-2のとおりである。 庄内川下流部右岸では約4.0Kから約5.4Kまでの一連区間の堤防高は計画高水位よりも約1mも低く,庄内川下流部左岸でも約4.0Kから約4.4Kまでの一連区間の堤防高は計画高水位よりも約0.2m低い状況であり,庄内川下流部の大当郎町や下之一色町を中心に左右合わせて約2㎞にわたり現況堤防高が低い状況が連続していた。 新川洗堰よりも下流の庄内川下流部に架けられていた明徳橋(名古屋市,正徳橋,一色大橋,大当郎橋及び前田橋の5橋梁の桁下高は,計画)高水位よりも低かった。 東海道新幹線庄内川橋梁,東海道本線枇杷島橋梁,枇杷島橋の桁下高は,計画堤防高よりも低かった。 被告国は,本件計画策定後本件水害が発生した平成12年までの間に,主として,以下の庄内川の工事を行ってきたが,本件水害発生時には本件計画を計画目標とする河川改修を行ってい 計画堤防高よりも低かった。 被告国は,本件計画策定後本件水害が発生した平成12年までの間に,主として,以下の庄内川の工事を行ってきたが,本件水害発生時には本件計画を計画目標とする河川改修を行っている途上であった。 (ア) 小里川ダム建設小里川ダムは,昭和50年の本件計画に位置づけられている唯一のダムで,多治見地点において300㎥/sのピークカットを目的とする洪水調節単独ダムで,庄内川の支川小里川に計画された。 同ダムは,本件計画後,昭和54年に実施計画調査となり,昭和57年に工事に着手され,本件豪雨時は整備途上であった。 同ダムは,堤高114mの重力式コンクリートダムであり,有効貯水容量1290万㎥に洪水容量の一部を貯留しておくことにより,ダム地点の計画高水流量1100㎥/sのうち最大840㎥/sを調節し,東濃地域及び尾張地域の水害の低減を図るものとして計画されていた。 (イ) 庄内川上流部における改修a脇之島排水機場岐阜県多治見市街の南方に位置する脇之島川が土岐川左岸に合流する一帯(平和町地先)は,土岐川の水位上昇に伴う逆流や内水による被害が発生していたことから,同地区に排水機場を設置することとなり,昭和51年度に樋管工事に着手し,昭和53年度に完成した。 b平和町の引堤上記脇之島排水機場の本川上流一帯は川幅が狭く,背水の影響や支川の合流で市街地の計画流量時の水位が高くなってしまう。これを低く抑えるため,屈曲し右岸に突出している笠原川下流の左岸平和町地区を引堤することとなり,昭和58年から用地買収に着手し,昭和60年度から引堤部分の築堤工事に着手した。 c土岐市関連工事岐阜県土岐市土岐津地区について,河道が狭窄であったため引堤を行うこととし,一連の区間について昭和58年3月に河川予定地の指定をし,事業の進捗を図ってきた。 堤工事に着手した。 c土岐市関連工事岐阜県土岐市土岐津地区について,河道が狭窄であったため引堤を行うこととし,一連の区間について昭和58年3月に河川予定地の指定をし,事業の進捗を図ってきた。 (ウ) 庄内川下流部における改修a大当郎地区の改修河口から3.2㎞の明徳橋下流から大当郎橋上流の6.0㎞付近にかける右岸側の名古屋市中川区下之一色町~大当郎町一帯は,堤防高が低く弱小堤となっていたため,直轄編入と同時に4.5㎞の一色大橋上流の大当郎地区の占用家屋の移転を同地区の区画整理事業の協力を得て進めるとともに,堤内用地の確保を図り,昭和50年に占用家屋の移転を完了し,昭和56年までに暫定改修で概成した。 b明徳橋左岸引堤明徳橋の左岸詰めは極端に川側に突き出し川幅を狭くし,堤防の線形もクランク状になっていた。明徳橋自体も,老朽化が著しく床版に穴があき,急遽仮橋を架け対応するといった状況にあった。 このため,橋梁の架け替え(名古屋市施工)と引堤を同時に実施することとし,昭和48年から用地買収に着手した。一部工場などの移転地確保等に難があったが昭和55年に用地買収を完了し,昭和58年に一連の引堤工事を完了した。 c小田井遊水地小田井遊水地は,直轄編入以前から洪水調節施設として位置づけられ,一方名古屋市の都市公園として整備が進められていた。昭和46年に公園区域内の用地取得はほぼ終了し,公園整備が精力的に進められていたので,これと合わせて堤防用地取得や治水施設整備も進めることになり,昭和53年度から用地取得を行いながら囲繞堤の築造に着手した。 昭和61~63年度にかけて排水水門を整備し,昭和63年度から越流堰に着手し,平成元年度に遊水地として概成した。 d下之一色地区の改修下之一色地区は,堤防高が計画高水位を下回っており,堤防の嵩上 昭和61~63年度にかけて排水水門を整備し,昭和63年度から越流堰に着手し,平成元年度に遊水地として概成した。 d下之一色地区の改修下之一色地区は,堤防高が計画高水位を下回っており,堤防の嵩上げ・補強が急がれる区域であったが,既設堤防上に占用家屋が連なっており,堤防改修を遅滞させていた。堤防の改修には約180戸の占用家屋と約30戸の民地家屋の移転が必要であり,昭和63年度には通常改修を前提とする占用家屋の移転,民地の買収を促進すべく地元への事業説明を行い,工事実施測量を完了し,事業計画内容を地元関係者と調整し,平成2年度までに約110戸の占用家屋と2戸の民地の家屋を移転し,平成3年度に築堤工事に着手したが,本件水害当時も占有家屋のすべての移転はなされていない状況にあった。 e橋梁の掛け替え桁下高は計画高水位より低い明徳橋,正徳橋,一色大橋,大当郎橋及び前田橋の5橋梁のうち,前田橋については昭和51年に,明徳橋については昭和58年に,大当郎橋については平成5年に架け替えが実施された。 被告国は,平成12年4月に,一般国道1号が庄内川を渡河する一色大橋の架け替えと堤防の嵩上げを実施するための事業に着手したが,本件水害当時には,完成していなかった。 被告国は,本件水害発生前に,正徳橋の架け替え工事に着手していたが,本件水害当時には,完成していなかった。 東海道新幹線庄内川橋梁,東海道本線枇杷島橋梁,枇杷島橋の掛け替え事業については,全く着手されていない。 イ新川(乙イ35,乙ロ6,13,14,証人G)被告県は,本件豪雨以前より,新川流域整備計画(治水暫定計画)に基づき,新川の法河川(昭和46年3月指定)24.278㎞につき,おおむね下流部から上流部に向けて矢板施工,護岸の施工,堤防及びパラペットの嵩上げを順次進めたほか,狭窄部の 備計画(治水暫定計画)に基づき,新川の法河川(昭和46年3月指定)24.278㎞につき,おおむね下流部から上流部に向けて矢板施工,護岸の施工,堤防及びパラペットの嵩上げを順次進めたほか,狭窄部の拡幅や橋梁の改築のための用地買収,橋梁の改築等をしてきたが,本件豪雨時点での改修状況は,別紙平成12年当時の新川進捗状況概略図(乙ロ13)のとおりである。同計画による新川の改修を施設整備ベース(ただし,新川治水緑地及び放水路処理施設は除く)でみると,平成12年度末時点では,新川水系主要5河川。 で68.9%,新川本川で86.2%であった。 また,各市町が主体となり,流域対策がなされてきたが,平成12年度末においては,雨水を流域内で貯留する必要対策量に対するその対策率は,最も低い師勝町,西春町で3%,最も高い岩倉市で56%で,平均して26%であった(乙イ35。 )(9) 本件水害ア本件豪雨(ア) 降雨概要(乙イ15,乙ロ8,9)平成12年9月に日本海をゆっくりと南下した秋雨前線が,同月10日午後9時には東北地方から山陰沖の日本海沿岸に停滞し,その後同月12日にかけて日本列島上で南北振動を繰り返した。 他方,同月3日にマリアナ諸島付近で発生した台風14号が,大型で非常に強い勢力を保ちながらゆっくりと北西に進んだ。 東海地方には平成12年9月10日夜から台風14号の東側に広がる雨雲がかかり始め,同月11日には台風からの暖かく湿った空気が大量に流れ込み,秋雨前線の活動は著しく活発となり,同日昼過ぎから三重県で激しい雨が降り始め,夕方から夜遅くにかけて愛知県内各地で記録的な雨が降った。 発達した雨雲は,三重県南部から愛知県西部に次々と流れ込み,愛知県の激しい雨は翌12日の明け方まで続いた。 愛知県内では,平成12年9月12日未明から記録的な豪雨と 知県内各地で記録的な雨が降った。 発達した雨雲は,三重県南部から愛知県西部に次々と流れ込み,愛知県の激しい雨は翌12日の明け方まで続いた。 愛知県内では,平成12年9月12日未明から記録的な豪雨となり,気象庁名古屋雨量観測所では,同月11日午後7時に時間最大雨量93㎜(なお,従来の極値は昭和62年9月の68㎜であった,日降水。)量428㎜(なお,従来の極値は平成3年9月の217㎜であった)。 を記録し,同日未明から翌12日までの総雨量は年間総雨量1535㎜の1/3にも及ぶ567㎜となり,明治24年の統計開始以来最大の記録となった。 (イ) 河川の水位a庄内川庄内川の枇杷島基準点(約15K)では,平成12年9月11日午後8時20分に警戒水位(T.P.5.70m)を超え,同日午後9時には出動水位(T.P.6.40m)を,翌12日午前2時20分には計画高水位(T.P.9.18m)を,同日午前4時30分には過去の最高水位を2m近く上回るT.P.9.46mを記録した(乙イ15。 )b新川新川本川の水位は,上流の水防警報基準地点「久地野(約21」K)では,平成12年9月11日午前9時ころに規模の小さなピークを観測した後,低減していたが,午後2時ころから再び上昇に転じて急激な増加を続け,同日午後5時50分に警戒水位(T.P.4.50m)を,午後6時30分出動水位(T.P.5.40m,午後7)時40分計画高水位(T.P.6.57m)を次々に超過し,午後9時ころには過去の最高水位(T.P.6.60m)を大きく上回る水位(T.P.6.90m。第1ピーク)に達した。その後一時的に低下傾向を示したものの,午後9時から午後10時にかけて始まった新川洗堰を越流した庄内川の流水が加わって再び上昇に転じ,翌12日午前2時50分に本件豪雨にお m。第1ピーク)に達した。その後一時的に低下傾向を示したものの,午後9時から午後10時にかけて始まった新川洗堰を越流した庄内川の流水が加わって再び上昇に転じ,翌12日午前2時50分に本件豪雨における最高水位T.P.7.32m(第2ピーク)を記録した(乙ロ8。 )(ウ) 河川の流量a庄内川本件豪雨により,ピーク流量では基準点枇杷島の当時の過去最大ピーク流量である平成3年9月19日洪水の約2200㎥/sを上回る3500㎥/s(約1.6倍にあたる)を記録した(乙イ73。 。 )b新川新川本川上流の久地野(約21K)における流量を,本件豪雨の水位観測データと過去の流量観測から得られた水位流量曲線で(H-Q曲線)で推定すると,第1ピーク時の流量は約630㎥/s,第2ピーク時は約720㎥/sとなる。痕跡水位からは,そのうち最大で270㎥/sが庄内川から流入したと推定される(乙ロ8。 )イ本件豪雨による被害(ア) 愛知県下における被害状況本件豪雨により名古屋市及び周辺市町では広範囲に内水被害が発生し,愛知県内を中心に各所で被害が発生した。特に庄内川・新川沿川2市5町では,約42万人に避難勧告が出され,愛知県内の被害は,死者7名,負傷者約100名,床上・床下浸水家屋約6万6000世帯(うち床上浸水は約2万4000世帯)にも及んだ。また,東海道新幹線が約21時間にわたり運転不能となったのを始め,地下鉄等他の鉄道も長時間にわたり運転不能になり,東名・名神等の高速道路,幹線国道も断続的な通行止めにより流通網が麻痺したほか,電気について中部管内で最大約33万戸が供給停止になったのを始め,ガス,電話,水道といったライフラインの停止により多くの人々の生活に影響を及ぼした(乙イ15,乙ロ9。 )(イ) 庄内川・新川における被害状況a庄内 最大約33万戸が供給停止になったのを始め,ガス,電話,水道といったライフラインの停止により多くの人々の生活に影響を及ぼした(乙イ15,乙ロ9。 )(イ) 庄内川・新川における被害状況a庄内川の被害状況(a) 国道1号線一色大橋右岸下流地点で越水が発生し,破堤には至らなかったものの,床上4戸を含む約180戸の家屋が浸水した(乙イ15。 )(b) JR関西本線橋から国道19号勝川橋付近までの約15㎞の区間で計画高水位を超過し,枇杷島観測地点では約4時間にわたって計画高水位を超えた(乙イ16。 )(c) 名古屋市中川区下之一色町先や西枇杷島町(当時)十軒裏地先などでは漏水が発生し,名古屋市守山区川北町地先では法崩れ・護岸損傷が生じるなど,本件豪雨により,庄内川・土岐川,矢田川及び八田川では,堤防法崩れ,護岸の崩壊,漏水などが約80か所で発生した(乙イ73。 )(d) 水防活動等上記ア(イ)aのとおり,平成12年9月11日午後9時ころ庄内川は出動水位を超えたため,支川八田川の春日井では同日午後5時30分に,矢田川の瀬古では同日午後8時32分に,枇杷島では同日午後9時5分に,志段味では同日午後9時51分に,土岐川土岐に同日午後11時16分に,多治見に同日午後11時20分にそれぞれ水防警報の出動が発表され,以下の水防活動が行われた(乙イ74。 )①平成12年9月11日午後11時30分ころ松川橋下流50m(25.0K~25.2K)付近で裏法崩れのため,シート張工を消防団83名で実施した。 ②平成12年9月12日午前3時ころには東海道新幹線上下流部(14.2K~14.4K)付近3か所で越水防止のため消防団70名で土嚢積工を実施した。 ③平成12年9月12日午前4時25分ころ,一色大橋下流右岸4.2K~4.4K付近で越水が生 新幹線上下流部(14.2K~14.4K)付近3か所で越水防止のため消防団70名で土嚢積工を実施した。 ③平成12年9月12日午前4時25分ころ,一色大橋下流右岸4.2K~4.4K付近で越水が生じ,消防団100名,市土木職員160名等で土嚢積みを行い,越水を止めた(その後自衛隊60名で土嚢積みをさらに実施。同じく一色大橋下流左岸4. )2K付近も越水防止のため,土嚢積工を消防団30名で実施したのを始め,庄内川・矢田川・八田川において堤防巡視や水防工法を実施した。 b新川の被害状況新川では,隣接する支川新地蔵川の1か所を含め3か所で破堤した。 本件破堤地点では左岸堤防が約100mにわたり決壊し,名古屋市西区,清須市西枇杷島町・新川町にまたがる氾濫面積約5㎞,浸水家 屋は約8000棟にも及ぶ大きな被害が出た。他の区域においても内水ポンプの排水能力を上回る洪水の流出により内水氾濫が発生し,新川沿川では総氾濫面積約19㎞に及ぶ深刻な浸水被害となった。こ の水害により,新川流域では約2万9000人の住民が避難を強いられたほか,1万8000戸を超える住家が被災,事業所の浸水被害を加えると推定約6700億円に及ぶ甚大な被害となり,深刻な傷跡を残した(乙ロ8。 )本件豪雨による新川沿川の氾濫被害実態は,別紙浸水被害状況調査表のとおりである(乙ロ3。 )ウ本件破堤に関する事実(乙ロ8)(ア) 本件破堤地点の水位等本件破堤地点の水位は,平成12年9月11日午後7時40分に計画高水位T.P.5.20mを,翌12日午前2時10分に計画堤防高T. P.6.20mを超えて堤防満杯の状態となり,同日午前3時20分に最高水位T.P.6.28mに達した。16K地点における左岸堤防天端の標高は,平成11年の測量結果によるとT.P.6.33mとなってお .6.20mを超えて堤防満杯の状態となり,同日午前3時20分に最高水位T.P.6.28mに達した。16K地点における左岸堤防天端の標高は,平成11年の測量結果によるとT.P.6.33mとなっており,上記日時における本件破堤地点における洪水流量は堤防をあふれる寸前の状態であったと推定された。 (イ) 本件破堤地点の流量本件破堤地点は久地野地点より約4㎞下流に位置し,両地点間には11か所の排水機場が設置されており,本件豪雨による洪水中には排水区域の流出状況や排水調整措置に対応して運転操作が行われていた。 本件破堤地点近傍の流量は,久地野地点の流量にポンプによる内水排水量を考慮すると,平成12年9月11日午後9時ころに700㎥/s,翌12日午前3時に750㎥/sと推定され,後者の流量の内訳は,自己流域からの流出量約59%,ポンプ排水量約8%及び庄内川からの流入量約33%と推定された。 (ウ) 本件破堤個所周辺の土質の状態本件破堤個所周辺での堤防設置位置は,庄内川治水地形分類図(建設省中部地方建設局庄内川工事事務所,昭和54年)によると自然堤防地帯に分類されるが,明治22年の古地図では水場川の水路の旧河道跡付近となっている。堤防基礎地盤は洪積砂礫層の上に沖積粘性土層(2~4m程度)があり,その上に透水性の砂層が厚く(5~7m程度)分布し,表層には粘性土が薄く(1m程度)分布している。ただし,この表層粘性土は破堤区間直上流部で確認されない部分がある。 堤防本体部分は全般的に砂質・レキ質土の材料で構成されているが,その上部下部に粘性土を含む区間(破堤箇所下流でみられる)とそう。 でない区間がある。破堤箇所の堤体は後者のタイプで,透水性は比較的高い状態であった。 破堤区間の上流端では基礎及び法尻部で,破堤時に生じたとみられる最大洗掘深6mの深掘 所下流でみられる)とそう。 でない区間がある。破堤箇所の堤体は後者のタイプで,透水性は比較的高い状態であった。 破堤区間の上流端では基礎及び法尻部で,破堤時に生じたとみられる最大洗掘深6mの深掘れ(落堀:おっぽり)があった。 堤防の構造は,低水護岸としてシートパイルが打設され,その頂部及び高水敷きはコンクリートで覆われている。表のりは計画高水位までコンクリートブロックが1:2の勾配で張られている。表のり余裕部分と裏のりの勾配は1:2であり,天端の幅は6mで,いずれも土羽となっている。低水護岸として設置されているシートパイルは,約10mの長さがあり,難透水層である沖積粘性土層(厚さ2~4m程度)に貫入していた。堤防天端は舗装されておらず,降雨の浸透しやすい状態であった。水路が堤内地の堤体沿いに設置されている。 (エ) 本件破堤個所に係る目撃証言本件破堤個所に関する目撃証言は4名程度から得られているものの,破堤の瞬間を目撃した者はいない。上記目撃証言から推定される破堤に至るまでの堤防の変状は,以下のとおりである。 a堤体が浸潤化し,裏法面にすべりによる亀裂が生じた。 bすべり面が時間とともに拡大し,堤防天端の幅が狭くなった。 c河川の水位が堤防満杯に近い状態であったことから薄くなった堤防断面では河川水の浸透及び河川水の水圧に持ちこたえることができず破堤に至った。 (オ) 本件破堤個所に係る被災状況a新川堤防では低水護岸としてシートパイルが施され,堤防表法には計画高水位まではコンクリート張り護岸,計画高水位以上は芝で被覆されており,浸食によるとみられる被害はない。 b本件破堤個所周辺の天端面は舗装されておらず,雨水が浸透しやすい状態であり,雨水浸透及び川表側からの計画高水位を超えた河川水の浸透があった。 c本件破堤個所周辺の堤防 るとみられる被害はない。 b本件破堤個所周辺の天端面は舗装されておらず,雨水が浸透しやすい状態であり,雨水浸透及び川表側からの計画高水位を超えた河川水の浸透があった。 c本件破堤個所周辺の堤防では水位がほぼ堤防天端に達しており,越水が生じていた可能性はある。 (カ) 本件破堤個所周辺の土質調査及び安全性調査結果本件破堤後の土質調査結果を基に堤防をモデル化し,被災時の外力のもと,浸食,浸透及び越水に対する堤防の安全性を,標準的な解析手法で照査したところ,以下の結果が得られた。 a浸食高水護岸及びその上部の芝のり面は流体力に対してともに安全である。 b浸透降雨及び河川水位を外力とし,①堤体が細粒土分を余り混入しない砂質,レキ質土で構成されていたとするタイプと②堤体が細粒土分を多く混入する粘性土と砂質・レキ質土から構成されていたとするタイプの2タイプについて,浸透流計算,円弧すべり計算を実施すると,透水性の比較的高い①のタイプでは,すべりに対する安定性は安全率1近傍に迫る危険な状態である。このような状態は,基礎地盤表層の粘土層の有無によってほとんど差異はない。局所動水勾配は許容される値近くまで増加した。 透水性が比較的低い②のタイプは安全率1.8と安全性が高い。 c越水越流水深を5㎝,10㎝,30㎝と想定して計算すると,堤防裏法面に生じるせん断力はいずれのケースも許容される値を上回った。 (10) 本件豪雨後とられた措置ア本件豪雨後,被告国と被告県は,平成12年度から概ね5年間で総額610億円の緊急的な治水対策を激特事業により実施することとし,同対策により,庄内川と新川の一体的な整備を図ることとした(乙イ16。 )なお,激特事業とは,洪水等により激甚である災害が発生した地域について災害復旧助成事業又は災害関連事業(災害関連 ることとし,同対策により,庄内川と新川の一体的な整備を図ることとした(乙イ16。 )なお,激特事業とは,洪水等により激甚である災害が発生した地域について災害復旧助成事業又は災害関連事業(災害関連緊急砂防事業・災害関連緊急地すべり対策事業を除く)の対象とならない場合に,河川の改良。 事業等を緊急に実施することにより,再度災害の防止を図り,もって国土の保全と民生の安定に資することを目的とする事業である(乙イ31。 )イ平成12年度から平成16年度にかけて,被告国及び被告県により実施された庄内川及び新川に関する激特事業の内容は,以下のとおりである(乙イ32。 )(ア) 庄内川新川洗堰より下流の区間において,築堤・堤防の強化,河道の掘削,新川洗堰の改築(約1mの嵩上げを行い,庄内川から新川への越流量を低減させた,小田井遊水地の改築(約1.3m越流堤を嵩上げし,。)遊水地の洪水調節機能を向上させた,水防拠点の整備及び防災情報。)システムの整備等を行った。 (イ) 新川堤防の強化,河床の掘削,橋梁の改築・補強,遊水地(新川治水緑地)の整備及び内水河川ポンプの増強等を行った。 (11) 本件豪雨において庄内川が破堤した場合の想定住家被害本件豪雨により庄内川が破堤した場合を想定し,次のアの条件で推計した結果は次のイのとおりである(乙イ37。 )ア(ア) 想定氾濫解析検討方針a検討の基本方針(a) 想定被害は庄内川中流域を対象とする。 (b) 庄内川中下流氾濫域の地形特性を想定氾濫計算に反映するために,250mメッシュの氾濫解析モデルを用いる。 (c) 平成12年9月出水時枇杷島地点実績ハイドロを枇杷島地点に与える。ただし,枇杷島地点より上流側での検討では,各観測地点でのハイドロを調整して適切となる箇所において与える。 (d) 破 いる。 (c) 平成12年9月出水時枇杷島地点実績ハイドロを枇杷島地点に与える。ただし,枇杷島地点より上流側での検討では,各観測地点でのハイドロを調整して適切となる箇所において与える。 (d) 破堤開始は,枇杷島地点ピーク開始時とする。 (e) 想定氾濫解析手法は「河道・氾濫原一体型不定流モデル」によ,る。 b基本条件の設定(a) 河道条件河道条件は最新の資料に基づく現況河道とする。 (b) 検討ケース検討対象ケースは,以下のとおりとする。 ①対象流量ハイドロ:平成12年9月11日型(枇杷島地点実績ハイドロ)②河道H-Q式:平成12年9月出水時現況河道(弯曲・砂洲を考慮する)(c) 洪水調節施設実績ハイドロを用いることで,新川洗堰による越流の影響を考慮する。 (d) 氾濫解析モデル氾濫解析手法は,平成10年度に作成された以下の氾濫解析モデルを基本的に用いる。 ①氾濫解析モデル:河道・氾濫原一体型不定流モデル②河道:1次元不定流モデル③氾濫原:2次元不定流モデル(イ) 検討条件の整理aハイドログラフ等検討条件の整理ハイドログラフ:水位時系列をH-Q式で換算(3段階)河道H-Q条件:現況河道H-Q式(弯曲・砂洲あり)庄内川の越水の取扱い:考慮しない(かべたて)b破堤地点の整理想定氾濫解析の破堤地点は,庄内川河口~20K区間で5.0㎞ピッチに設定する。 cハイドロ流入地点の整理ハイドロの流入地点については,以下の地点に与える。 (a) 5.0K,10.0K,15.0K地点破堤の場合(枇杷島地点より下流)枇杷島地点(15.7K)に最も近く,河道流下による流量ピークが小さくなると考えられる15.6K地点にハイドロを与える。 (b) 20.0K地点破堤の場合(枇杷島地点より上流)枇杷島地点より上流であるため, 点(15.7K)に最も近く,河道流下による流量ピークが小さくなると考えられる15.6K地点にハイドロを与える。 (b) 20.0K地点破堤の場合(枇杷島地点より上流)枇杷島地点より上流であるため,矢田川と八田川の影響を受けないと考えられる21.0K地点にハイドロを与える。 dハイドログラフの整理ハイドログラフについては,以下のものを上記cで整理した地点に与える。 (a) 5.0K,10.0K,15.0K地点破堤の場合(枇杷島地点より下流)枇杷島地点におけるハイドログラフをそのまま与える。 (b) 20.0K地点破堤の場合(枇杷島地点より上流)枇杷島地点より上流であるため,枇杷島地点のハイドログラフに対して矢田川,落合ポンプ所,新川洗堰の流量の整理を行う。 ハイドロ時間差について,Kravenでの流速W=2.1m/sを用いて流下時間を計算し,枇杷島地点ハイドロが1時間間隔で整理されていることから,別紙ハイドログラフの取り扱い方針で整理したものを与える。 e河道条件の整理(a) 対象とする河道条件検討対象とする河道は,平成5,6年測量河道断面の河道とする。 (b) 河道整備状況の整理想定氾濫解析では,計画上必要とされる低水護岸,高水護岸及び漏水対策が未整備の場合には,堤防の安全性が低下するものと考え,無害流量の評価において,低水護岸,高水護岸及び漏水対策の整備状況に応じた割引を行う。 (c) 河道条件の整理想定氾濫解析で対象とする河道条件については,以下の条件を用いる。 ①堤内地盤高及び高水敷高の整理堤内地盤高・高水敷高については200mピッチの距離標について平成10年度に作成した氾濫解析中で整理した堤内地盤高・高水敷高を用いる。 ②堤防高の整理堤防高について,200mピッチの距離標について平成10年度に作成した氾濫解析 0mピッチの距離標について平成10年度に作成した氾濫解析中で整理した堤内地盤高・高水敷高を用いる。 ②堤防高の整理堤防高について,200mピッチの距離標について平成10年度に作成した氾濫解析中で整理した堤防高を適用する。 ③河道H-Q式河道のH-Q式については,現況河道(弯曲・砂洲あり)の河道H-Q式を用いる。 ④河道粗度係数河道の粗度係数については,工事実施基本計画策定時に使用されている低水路粗度係数を代表粗度係数として用いる。 f破堤条件の整理各破堤地点における破堤条件は別紙破堤条件一覧表のとおりとする。 イ想定氾濫被害想定氾濫解析結果により計算を行った想定被害は,別紙想定被害算出結果表のとおりである(なお,同表の数値はそれぞれ小数点第1位を四捨五入して得た数値であり,内訳の合計数と計の数値が一致しない地点がある。 。) 本件破堤の原因について新川洗堰からの庄内川流入水の流入が新川の水位を高めた要因の一つであることは当事者間に争いがなく,これに上記1(9)ア及びウの各事実を総合すると,新川洗堰からの庄内川流入水の流入が本件破堤の原因の一つとなったこと,及び本件破堤個所の破堤機構は以下のとおりであったことが推定される。 (1) 降雨量が新川の計画規模をはるかに超え,内水域からのポンプ排水が行われていたところに,新川洗堰からの庄内川の洪水流入が加わり,計画高水位を超える河川水が長時間にわたり外力として作用した。 (2) 降雨及び河川水の堤体浸透により堤体は湿潤状態となり,安全率の低下した堤防裏法面に法すべりが発生した。 (3) その後,裏法面のすべり変状が徐々に堤体天端に及び,堤防がやせ細った。 (4) 浸透してきた法面流により,裏法面の浸食がさらに進み,堤防はますます細くなり堤防天端に迫る高い水位には耐えきれない状 3) その後,裏法面のすべり変状が徐々に堤体天端に及び,堤防がやせ細った。 (4) 浸透してきた法面流により,裏法面の浸食がさらに進み,堤防はますます細くなり堤防天端に迫る高い水位には耐えきれない状態となった。 (5) 破堤区間上流部で薄くなった堤防の上部がくずれ,越流し,堤防法尻部及び基礎地盤を激しく洗堀した。 (6) 破堤の初期段階では残っていた高水護岸が壊れることにより河川水が一気に流出し,破堤口を拡大していった。また,堤防法尻部及び基礎地盤での洗堀も拡大,落堀が形成された。 新川洗堰の瑕疵及び庄内川の河川管理の瑕疵について(1) 新川洗堰の瑕疵について国家賠償法2条1項の公の営造物の設置又は管理の瑕疵とは,営造物が通常有すべき安全性を欠き,他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいう(最高裁昭和56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号1396頁)ところ,原告らは「新川洗堰が堤防として通常有すべき安全性を欠いてい,た」と主張する。 。 しかし,そもそも,①河川工学上,新川洗堰は越流堤の一種であり,構造上本堤の一部を低くして築造され,その本来の用法は水位がある一定の高さ以上になると水が越流堤の天端を越流していくことにより洪水を調節するものであること(上記1(3)アの認定事実,②新川洗堰は,庄内川の堤防を)掘り下げ,庄内川の洪水をその部分から大蒲沼に流入させ,さらに新川に流下させることにより庄内川の洪水を調節する目的で築造されたこと(上記1(3)イの認定事実)からすれば,新川洗堰は,洪水時の水流をその流路内に完全に制限して氾濫を防止することをその本来的機能とする本堤(いわゆる堤防)とはその性格を異にする。したがって,原告らの同主張はその前提において採用できない。 (2) 庄内川の河川管理の瑕疵についてア庄内川と新川との関 することをその本来的機能とする本堤(いわゆる堤防)とはその性格を異にする。したがって,原告らの同主張はその前提において採用できない。 (2) 庄内川の河川管理の瑕疵についてア庄内川と新川との関係本件計画において庄内川から新川への分派量が0㎥/sとされており(乙イ9,また,庄内川水系全体計画においても庄内川から新川への分)派量を0㎥/sとすることが前提とされている(乙ロ4の2。 )しかし,直轄編入から本件豪雨までの間に,庄内川から新川に対しては新川洗堰を通じて10回の越流があったと推定され(上記1(5)イ(イ)の認定事実,かつ,本件豪雨当時,現に新川洗堰が閉鎖されていなかった)のであるから,新川が庄内川の派川であることは否定できない。 また,庄内川水系は昭和40年3月24日政令43号により改正前河川法4条1項の水系(一級水系)に指定され,次いで昭和44年3月20日政令31号により,庄内川水系に属する庄内川,矢田川,香流川,隅除川,天神川,瀬戸川,新川,大山川等の河川が一級河川に指定されたこと(上記1(6)の認定事実)からして,法規上も,新川は庄内川水系に属する一級河川であるといえる。 したがって,庄内川と新川は同一水系に属する河川であって,本川と派川の関係にあるというべきである。 この点,原告らは,原告らの主張(2)ア(ア)のとおり,庄内川と新川は別河川である旨主張するが,上記認定判断に照らし,容易に採用できない。 イ河川管理についての判断基準国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは,営造物が通常有すべき安全性を欠いて他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいい,このような瑕疵の存在については,当該営造物の構造,用法,場所的環境,利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的,個別的に判断すべきものである。ところで,一般 人に危害を及ぼす危険性のある状態をいい,このような瑕疵の存在については,当該営造物の構造,用法,場所的環境,利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的,個別的に判断すべきものである。ところで,一般に河川は,管理の開始当初から右の安全性を有しているものではなく,洪水等の自然的原因による災害をもたらす可能性を内包し,治水事業を経て逐次その安全性を高めていくことが予定されているものであるところ,治水事業については,議会が国民生活上の他の諸要求との調整を図りつつ配分を決定した予算の下で必要性,緊急性の高いものから逐次改修を実施していくほかはないという財政的制約,長い工期を要するという時間的制約,流域全体について総合的に調査検討の上,緊急に改修を要する箇所から段階的に,また下流から上流に向けて行うことを要するなどの技術的制約,流域の開発等による雨水の流出機構の変化や治水用地の取得難などの社会的制約が内在するものであるから,河川が通常予測し得る水害を未然に防止するに足りる安全性を備えるに至っていないとしても,そのことから直ちに河川の管理について瑕疵があるとすることはできず,河川の備えるべき安全性としては,原則として,右諸制約の下で施行されてきた治水事業の過程における改修,整備の段階に対応する安全性をもって足りるものとせざるを得ない。そして,河川の管理についての瑕疵の有無は,過去に発生した水害の規模,発生の頻度,発生原因,被害の性質,降雨状況,流域の地形その他の自然的条件,土地の利用状況その他の社会的条件,改修を要する緊急性の有無及びその程度等の諸般の事情を総合的に考慮し,右諸制約の下での同種同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断すべきである(最高裁昭和59年1月26日 情を総合的に考慮し,右諸制約の下での同種同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断すべきである(最高裁昭和59年1月26日第一小法廷判決・民集38巻2号53頁,最高裁平成2年12月13日第一小法廷判決・民集44巻9号1186頁参照。 )そして,この理は,同一水系に属する本川と派川にもあてはまるというべきである。なぜならば,同一水系に属する本川と派川という関係にある以上,両河川を一体のものとして適用されるべきであるからである。 もっとも,本川の洪水を調節するものとして洗堰が設置されている場合に,派川の安全性を確保するために洗堰を閉鎖しなかったことが河川管理の瑕疵にあたるか否かについては,洗堰の閉鎖が本川及び派川の各流域住民の利害に重大な影響を及ぼす可能性があることから,特に,洗堰の沿革及び現況,本川と派川で過去に発生した水害の規模,発生の頻度,発生原因,本川と派川それぞれの改修計画の内容及び実施状況,本川と派川それぞれの洪水により想定される被害状況等を勘案し,河川管理における財政的,技術的及び社会的制約の下で同種・同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認し得るかどうかによって判断すべきである。 そこで,以下,庄内川の河川管理の瑕疵につき,上記の観点から検討する。 ウ新川洗堰の沿革及び現況について新川洗堰は,江戸時代に,庄内川の堤防を掘り下げ,庄内川の洪水をその部分から大蒲沼に流入させ,さらに新川に流下させることにより庄内川の洪水を調節する目的で築造され,明治16年に,築造後150年を経てその間の幾度かの洪水により破壊されたため大修理が行われた(上記1(3)の認定事実。 )被告県による当初庄内川改修工事全体計画(昭和25年度,庄内川改)修工事 明治16年に,築造後150年を経てその間の幾度かの洪水により破壊されたため大修理が行われた(上記1(3)の認定事実。 )被告県による当初庄内川改修工事全体計画(昭和25年度,庄内川改)修工事第2回変更全体計画(昭和34年度,庄内川改修工事第3回変更)全体計画(昭和43年度)では,新川洗堰から新川への分派流量は300㎥/sとされた(乙ロ4の2。 )その後,新川地域の都市化及びこれに伴う流出機構の変化等があり,被告国は,新川の外水被害の状況や新川の流域開発の事情も考慮し,本件計画(昭和50年)において,新川洗堰からの分派量を0㎥/sと変更し,将来的に新川洗堰の閉鎖を予定した。しかし,本件豪雨当時,新川洗堰は閉鎖されていなかった(上記1(2)エ,1(7)ア,3(2)ア,弁論の全趣旨。 )エ庄内川と新川で過去に発生した水害の規模,発生の頻度,発生原因について庄内川では,昭和44年の直轄編入以来,破堤や決壊による被害は生じていない。昭和44年から本件水害が発生した平成12年9月までの間の庄内川水系における主要な洪水は別紙庄内川主要洪水一覧表のとおりである。同表に記載されている8つの洪水のうち庄内川下流部において外水被害が発生したのは平成12年9月の本件水害のみである(上記1(5)アの認定事実。 )新川周辺の昭和44年から平成12年までの水害実績は,別紙新川水害実績一覧表のとおりである。そのほとんどを内水被害が占め,僅かな回数の溢水はあったものの,破堤は全くなく,外水被害は発生していなかった(上記1(5)イの認定事実。 )もっとも,新川において内水被害が多く発生していることは,新川流域の各河川の上流が木曽川の形成した犬山扇状地に立地するためその河川勾配が1/200~1/500程度であるのに対し,下流が沖積平野であるためその河 川において内水被害が多く発生していることは,新川流域の各河川の上流が木曽川の形成した犬山扇状地に立地するためその河川勾配が1/200~1/500程度であるのに対し,下流が沖積平野であるためその河川勾配が1/2000~1/5000と緩く,長い区間にわたって潮位の影響を受けることから,洪水の疎通が悪いといった新川の流路特性(上記1(2)ウの認定事実)もその一因となっていると推測される。 また,本件豪雨当時実施されていた新川流域整備計画(治水暫定計画)は,新川洗堰からの分派量が0㎥/sであることを前提とし,年超過確率1/5に対応する計画にすぎない。その内容も,新川の五条川合流後地点の計画対象高水が960㎥/s(平成2年当時の現況は750㎥/s)で,このうち河道処理流量を現状流域の流出量に見合う730㎥/s(平成2年当時の現況は380㎥/s)とし,残余の230㎥/sを流域分担とあわせて計画遊水地,放水路により洪水調節するというもので(上記1(7)イの認定事実,新川の同計画上の河道処理流量にさほどの余裕があるも)のとはいえない。 したがって,本件豪雨前に外水被害がなかったとはいえ,新川には治水上の脆弱性があり,その計画自体からしても新川洗堰から庄内川の洪水の一部を流下させることには相当程度の危険性があったということができる。 オ庄内川と新川の改修計画の内容及び実施状況について(ア) 庄内川の改修計画の内容及び実施状況昭和50年4月の本件計画で,①計画規模は,庄内川下流部において年超過確率1/200,上流部において年超過確率1/100,②基本高水は,基準点枇杷島地点で4500㎥/s,基準点多治見地点で2700㎥/s,③計画高水流量は,上流部で2400㎥/s,下流部で4200㎥/s,④計画高水位は,基準点枇杷島の計画高水位をT.P. 9.24 ,基準点枇杷島地点で4500㎥/s,基準点多治見地点で2700㎥/s,③計画高水流量は,上流部で2400㎥/s,下流部で4200㎥/s,④計画高水位は,基準点枇杷島の計画高水位をT.P. 9.24m(基準地点枇杷島上流15.8Kのポイント)とされた(上記1(7)アの認定事実。 )本件計画当時,庄内川下流部で現況堤防高が計画高水位より低い箇所が長区間にわたりあり,5か所の橋梁の桁下高が計画高水位よりも低かったほか,東海道新幹線庄内川橋梁,東海道本線枇杷島橋梁,枇杷島橋等の主要橋梁の桁下高が計画堤防高より低かった(上記1(8)アの認定事実。 )被告国は,本件計画策定後本件水害が発生した平成12年までの間に,主として,小里川ダム建設,脇之島排水機場設置,平和町の引堤,土岐市関連工事,大当郎地区の改修,明徳橋左岸引堤,小田井遊水地の慨成,下之一色地区の改修等の庄内川の工事,前田橋,大当郎橋の掛け替えを行い,名古屋市が明徳橋を付け替えたが,いまだ,下之一色地区の改修,正徳橋,一色大橋,東海道新幹線庄内川橋梁,東海道本線枇杷島橋梁,枇杷島橋の改修は未了で,本件水害発生時には本件計画を計画目標とする河川改修の途上であった(上記1(8)アの認定事実。 )(イ) 新川の改修計画の内容及び実施状況昭和52年3月の庄内川水系全体計画で,①新川本川の計画規模は,年超過確率1/100,1時間雨量98㎜,②基本高水は,新川河口~五条川合流点で1430㎥/s,五条川合流点~水場川合流点で,850㎥/s,水場川合流点~鴨田川合流点で790㎥/s,鴨田川合流点~三川合流点で780㎥/s,③計画高水流量は,新川河口~五条川合流点で1100㎥/s,五条川合流点~水場川合流点で480㎥/s,水場川合流点~鴨田川合流点で430㎥/s,鴨田川合流点~三川合流点で390 流点で780㎥/s,③計画高水流量は,新川河口~五条川合流点で1100㎥/s,五条川合流点~水場川合流点で480㎥/s,水場川合流点~鴨田川合流点で430㎥/s,鴨田川合流点~三川合流点で390㎥/sとされ,その暫定計画として,①計画規模は,年超過確率1/50,②暫定計画流量配分は,新川河口~五条川合流点で730㎥/s,五条川合流点~水場川合流点で420㎥/s,水場川合流点~鴨田川合流点で420㎥/s,鴨田川合流点~三川合流点で420㎥/sとされた(上記1(7)イ(ア)の認定事実。 )昭和57年2月15日の新川流域整備計画中の治水暫定計画では,①計画規模は,年超過確率1/5,1時間雨量50㎜,②流量分担計画は,別紙新川流量分担計画図のとおりとされた(上記1(7)イ(イ)の認定事実。 )被告県は,本件豪雨以前より,新川流域整備計画(治水暫定計画)に基づき,新川の法河川(昭和46年3月指定)24.278㎞につき,おおむね下流部から上流部に向けて矢板び施工,護岸の施工,堤防及びパラペットの嵩上げを順次進めたほか,狭窄部の拡幅や橋梁の改築のための用地買収,橋梁の改築等をしてきたが,本件豪雨時点での改修状況は,別紙平成12年当時の新川進捗状況概略図(乙ロ13)のとおりである。同計画による新川の改修を施設整備ベース(ただし,新川治水緑地及び放水路処理施設は除く)でみると,平成12年度末時点では,。 新川水系主要5河川で68.9%,新川本川で86.2%であった。各市町が主体となる流域対策については,平成12年度末において,雨水を流域内で貯留する必要対策量に対するその対策率は,平均で26%であった(上記1(8)イの認定事実。 )カ庄内川と新川それぞれの洪水により想定される被害状況について(ア) 庄内川の右岸5.0K,右岸10.0K,右岸1 対策量に対するその対策率は,平均で26%であった(上記1(8)イの認定事実。 )カ庄内川と新川それぞれの洪水により想定される被害状況について(ア) 庄内川の右岸5.0K,右岸10.0K,右岸15.0K,右岸20.0K,左岸5.0K,左岸10.0K,左岸15.0K地点が破堤した場合の想定被害は,別紙想定被害算出結果表のとおりである(上記1(11)の認定事実。 )本件破堤以外による被害も含めた本件豪雨による新川沿川の氾濫被害実態は,別紙浸水被害状況調査表のとおりである(上記1(9)イ(イ)bの認定事実。 )上記の床下浸水及び床上浸水の合計数を比較すると,庄内川の右岸5Kが破堤した場合の想定住家被害数は本件豪雨による新川沿川の浸水被害数を下回るものの,庄内川のそれ以外の地点が破堤した場合の想定住家被害数は,いずれも本件豪雨による新川沿川の浸水被害を上回る。また,想定住家被害数の少ない庄内川の右岸5Kが破堤した場合も,約8800世帯が2m以上の浸水深の床上浸水の被害を被ることとなり,被害の程度は本件豪雨による新川沿川の浸水被害(2m以上の浸水深の床上浸水被害数は約1750世帯であり,1.5m~2mの浸水深の床上浸水被害数を合わせても約4550世帯である)を大きく上回る。 。 したがって,本件豪雨により庄内川が破堤した場合の想定住家被害は,本件破堤による被害よりも甚大である。 (イ) 本件豪雨における河道流量は,新川(久地野)のピーク流量720㎥/sに対して,庄内川(枇杷島)では約3500㎥/sであった(上記1(9)ア(ウ)の認定事実。また,別紙図6のとおり,新川の堤内地)盤高と堤防高の差に比して庄内川の堤内地盤高と堤防高の差は大きい(弁論の全趣旨。したがって,庄内川の破堤時の氾濫水のエネルギー)は大きいことが容易に推認され,その 紙図6のとおり,新川の堤内地)盤高と堤防高の差に比して庄内川の堤内地盤高と堤防高の差は大きい(弁論の全趣旨。したがって,庄内川の破堤時の氾濫水のエネルギー)は大きいことが容易に推認され,その氾濫水のエネルギーの大きさゆえ,家屋等の倒壊・流出はもとより人命被害の危険も大きいと想定される。 (ウ) 正徳橋,一色大橋,東海道新幹線庄内川橋梁,東海道本線枇杷島橋梁,枇杷島橋が庄内川の洪水により流出した場合には,国道一号線などの主要幹線道路や鉄道が不通となり,重大な影響が生ずる(弁論の全趣旨。 )キ総合判断以上を総合すると,新川には治水上の脆弱性があり,本件豪雨当時実施されていた新川流域整備計画(治水暫定計画)の内容やその実施状況から新川洗堰からの越流により新川が破堤する危険性は相当程度あったとはいいうる。しかし,新川洗堰は,もともと江戸時代から庄内川の洪水を調節するものとして存在していたこと,本件水害当時,庄内川下流部が改修未了であった上,庄内川下流部で破堤した場合の被害は新川が破堤した場合の被害と比較して甚大であると予想されたこと,本件水害前に新川洗堰からの越流により外水被害が生じたことがなかったこと等からすると,新川洗堰を閉鎖せず新川への庄内川洪水の流入を残したまま庄内川下流の改修を行ってきた被告国の庄内川の河川管理が,河川管理における財政的,技術的及び社会的制約の下で同種・同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認しえないものとまではいえず,被告国の庄内川の河川管理に瑕疵はないというべきである。 ク庄内川の河川管理に関する原告らのその他の主張についての検討(ア) 原告らは「本件計画では庄内川の派川である新川の計画高水流量,が定められていないが,これは「工事実施基本計画は被告国が自ら定,めなければならず,指 する原告らのその他の主張についての検討(ア) 原告らは「本件計画では庄内川の派川である新川の計画高水流量,が定められていないが,これは「工事実施基本計画は被告国が自ら定,めなければならず,指定区間についても都道府県に定めさせることはできない」とする改正前施行令2条2項に反し,格別不合理である」。 。 旨主張する(原告らの主張(2)イ(イ) 。 )確かに,本件計画では庄内川の派川である新川の計画高水流量が定められておらず(乙イ9,これは「工事実施基本計画は被告国が自ら),定めなければならず,指定区間についても都道府県に定めさせることはできない」とする改正前施行令2条2項に反するもので,本件計画に。 は同施行令に反する不備があると解される。なぜならば,少なくとも,上流からの洪水(基本高水)を本川である庄内川と派川である新川とでどのように配分するかは計画高水流量そのものの問題であって,基本計画に組み入れる必要があるからである。 しかし,被告国が昭和50年4月に本件計画を策定するに当たって,従来,300㎥/sとされていた新川洗堰からの分派量を0㎥/sとしたこと,被告県が,改正前河川法79条1項及び改正前施行令45条1号の各規定に従い,本件計画に定められた基本方針に沿って「庄内川水系全体計画」を策定したが,その際,新川洗堰からの分派量が0㎥/sであることを前提とした新川の基本高水を算出したこと,愛知県知事が同計画を策定するに際して,被告国は「全体計画審査意見書」と題す,る書面において意見や指示を出し,被告県もこの意見書指示事項を考慮して同計画をとりまとめたこと,建設大臣は,同計画を昭和52年3月31日付けで認可したこと(乙イ8,乙ロ4の1・2,弁論の全趣旨)からすると,本件計画の上記不備は,形式的なものにすぎない。被告国が,新 同計画をとりまとめたこと,建設大臣は,同計画を昭和52年3月31日付けで認可したこと(乙イ8,乙ロ4の1・2,弁論の全趣旨)からすると,本件計画の上記不備は,形式的なものにすぎない。被告国が,新川の外水被害の状況を勘案し,新川地域の都市化及びこれに伴う流出機構の変化等,新川の流域開発の事情も考慮し,本件計画において,新川洗堰からの分派量を0㎥/sと変更したこと(証人E,弁論の全趣旨)をも勘案すると,本件計画は被告県の庄内川水系全体計画を含めて,全体として格別不合理とまではいえない。 (イ) 原告らは「被告国が,直轄河川改修計画書で,新川の改修状況そ,の他新川の諸事情を検討の対象とせず,新川の諸事情やそれと庄内川改修との工事の時期と順序を含めた関わりについて全く検討していないのは格別不合理である」旨主張する(原告らの主張(2)イ(ウ) 。 。 )確かに,被告国は,直轄河川改修計画書で,新川の改修状況その他新川の諸事情を検討の対象とせず,新川の改修状況その他新川の諸事情に関する記載や,新川の計画高水流量その他計画高水位などの河川工事の実施に関する事項の記載について全く記載していない(上記1(7)ア(エ)cの認定事実。 )しかし,新川洗堰は,もともと江戸時代から庄内川の洪水を調節するものとして存在していたこと,本件水害当時,庄内川下流部が改修未了であった上,庄内川下流部で破堤した場合の被害は新川が破堤した場合の被害と比較して甚大であると予想されたこと,本件水害前に新川洗堰からの越流により外水被害が生じたことがなかったこと等の上記認定の事実からすると,被告国が上記の事項につき検討をせず,直轄河川改修計画書に上記の記載をしなかったとしても,結果的に格別不合理であったとまでは認め難い。 (ウ) 原告らは「庄内川は新川より安全度が高かった。 らすると,被告国が上記の事項につき検討をせず,直轄河川改修計画書に上記の記載をしなかったとしても,結果的に格別不合理であったとまでは認め難い。 (ウ) 原告らは「庄内川は新川より安全度が高かった。新川は,庄内川,と比べ洪水防御計画が計画規模の大きさなどにおいて大きく劣っており,整備状況も現況堤防の高さや幅においても劣っていた」と主張する。 (原告らの主張(2)ウ(イ)b。 )しかし,庄内川と新川とでは,河川の大きさ,洪水防御計画の対象となる地域の社会的経済的重要性,想定される被害の質量及び過去の災害の履歴などが異なるから,洪水防御計画の計画規模や現況堤防の高さや幅によって,その安全度の高低を評価することはできないというべきである。 (エ) 原告らは「本件豪雨により庄内川の安全度が高いことが検証され,た」旨主張する(原告らの主張(2)ウ(イ)c。 。 )しかし,以下のとおり,本件豪雨により庄内川には破堤等の危険性があった。 ①計画高水位を超えた水位と破堤の危険本件豪雨で,庄内川は,新川洗堰付近からJR関西本線橋までの一連区間約12㎞にわたって計画高水位を超過し,枇杷島観測地点では約4時間にわたり計画高水位を超えており,堤防の余裕高部分(護岸未設置(土盛り)で洗掘されやすい)まで水位が達して破堤の危険があった(上記1(9)イ(イ)の認定事実及び弁論の全趣旨。 )②越水と破堤の危険庄内川左岸側3.8Kから4.4K付近(正徳橋上流から一色大橋下流までの区間)及び右岸側4.0Kから4.4K付近(正徳橋上流から一色大橋下流までの区間)は堤防高が計画高水位を下回っている区間であり,かつ庄内川の堤防は土堤で越水に対して弱い構造であったところ,本件豪雨により上記区間の一色大橋下流右岸で越水し,また同区間は越水寸前の状態となり,越水によ 防高が計画高水位を下回っている区間であり,かつ庄内川の堤防は土堤で越水に対して弱い構造であったところ,本件豪雨により上記区間の一色大橋下流右岸で越水し,また同区間は越水寸前の状態となり,越水により堤防川裏(堤内地側)が洗掘され,堤防の弱体化により破堤する危険があった(乙イ13,弁論の全趣旨。 )③本件豪雨時における庄内川の流下能力「出発水位は,本件豪雨による0.0K地点洪水痕跡水位の左右岸平均T.P.1.64mとする。余裕高は,激特計画流量(激特事業における計画流量)を激特事業後堤防高-余裕高1.2m程度の水位で流下させることのできる河道を設定する」との基本条件のもとに。 庄内川の流下能力(洪水を安全に流すことのできる最大流量)を算出すると,最も低いのは4.4K右岸の2032㎥/sであった。これに対し,本件豪雨では枇杷島地点で最大約3500㎥/sもの流量を記録し,庄内川の河道が満杯の状況で流れた区間があった。したがって,流下能力の点からも破堤する危険があった(乙イ13,弁論の全趣旨。 )④橋梁流失の危険橋梁は,洪水の流下に対し大きな障害物となり,桁下高不足による橋桁の流失は非常に多いところ,本件豪雨発生時,一色大橋(4.6K付近)は,橋梁の桁下高が計画高水位に達しておらず,本件豪雨による洪水の水位が橋梁の桁下まで達しており,流失の危険も含めて非常に危険な状況にあった。庄内川が狭窄している枇杷島地区にある東海道新幹線庄内川橋梁,東海道本線枇杷島橋梁,枇杷島橋についても,本件豪雨による洪水の水位が橋梁の桁下まで達しており,非常に危険な状況にあった(乙イ13,73,証人E。 )(オ) 原告らは「新川洗堰を閉鎖しても庄内川左岸側の内水排水ポンプ,の運転を制限すれば現況堤防高が計画高水位より低い区間を含めて庄内川の新川洗堰 険な状況にあった(乙イ13,73,証人E。 )(オ) 原告らは「新川洗堰を閉鎖しても庄内川左岸側の内水排水ポンプ,の運転を制限すれば現況堤防高が計画高水位より低い区間を含めて庄内川の新川洗堰より下流の水位の上昇はないにもかかわらず,庄内川左岸側の内水排除のためのポンプ排水による水位の上昇を打ち消すために新川洗堰が閉鎖されないまま残されていた」と主張する(原告らの主張。 (2)ウ(イ)d。 )しかし,原告らは,上記主張の前提として,新川洗堰を閉鎖せずにポンプ排水をした場合については小田井遊水地への分派量を0㎥/sとしているのに対し,新川洗堰を閉鎖してポンプ排水をしない場合については小田井遊水地への分派量を100㎥/sとして小田井遊水地の機能を加味しており,両者の数値を単純に比較するのは不適切といわざるをえず,原告らの同主張は,その前提において採用できない。 新川治水緑地の管理の瑕疵及び新川の河川管理の瑕疵について(1) 新川治水緑地の管理の瑕疵についてア国家賠償法2条1項の公の営造物の設置又は管理の瑕疵とは,営造物が通常有すべき安全性を欠き,他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいい,このような瑕疵の存否については,当該営造物の構造,用法,場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的・個別的に判断すべきと解される。 イ新川治水緑地は,庄内川水系全体計画及び新川流域整備計画において,新川の洪水(新地蔵川,大山川及び合瀬川からの流水)を約110㎥/sカットする遊水地として計画されたものである(上記1(4)の認定事実)が,新川洗堰からの越流があるからといって,新川治水緑地が新川の洪水を貯留する遊水地として通常有すべき安全性を欠いていたとはいえず,原告らの新川治水緑地の管理の瑕疵に関する主張は主張自体失当というべきで 川洗堰からの越流があるからといって,新川治水緑地が新川の洪水を貯留する遊水地として通常有すべき安全性を欠いていたとはいえず,原告らの新川治水緑地の管理の瑕疵に関する主張は主張自体失当というべきである。 (2) 新川の河川管理の瑕疵についてア河川管理についての判断基準は,上記3(2)イのとおりである。 イ新川には治水上の脆弱性があり,新川洗堰からの越流により新川が破堤する危険性は相当程度あったということはできるが,新川洗堰は,もともと江戸時代から庄内川の洪水を調節するものとして存在していたこと,本件水害当時,庄内川下流部が改修未了であった上,庄内川下流部で破堤した場合の被害は新川が破堤した場合の被害と比較して甚大であると予想されたこと,本件水害前に新川洗堰からの越流により外水被害が生じたことがなかったこと等からして,新川洗堰を閉鎖せず新川への庄内川洪水の流入を残したまま庄内川下流の改修を行ってきた被告国の庄内川の河川管理が,河川管理における財政的,技術的及び社会的制約の下で同種・同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認しえないものとはいえないことは,上記3(2)キのとおりである。 同様に,新川洗堰を閉鎖せず新川への庄内川洪水の流入を残したまま新川の改修を行ってきた被告県の新川の河川管理が,河川管理における財政的,技術的及び社会的制約の下で同種・同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認しえないものとはいえず,被告県の新川の河川管理に瑕疵はないというべきである。 ウこの点,原告らは「被告県は,本件水害発生当時,庄内川水系全体計,画に基づいて新川の河川改修を行っていたが,同計画は改正前河川法16条1項の規定する河川工事の実施についての基本となるべき事項(工事実施基本計画)に基づかない格別不合理な計画である 川水系全体計,画に基づいて新川の河川改修を行っていたが,同計画は改正前河川法16条1項の規定する河川工事の実施についての基本となるべき事項(工事実施基本計画)に基づかない格別不合理な計画である」旨主張する(原告。 らの主張(3)イ。 )確かに,本件計画では庄内川の派川である新川の計画高水流量が定められておらず(乙イ9,庄内川水系全体計画は,形式的には,改正前河川)法16条1項の規定する河川工事の実施についての基本となるべき事項(工事実施基本計画)を定めていないこととなる。 しかし,被告国が昭和50年4月に本件計画を策定するに当たって,従来,300㎥/sとされていた新川洗堰からの分派量を0㎥/sとしたこと,被告県が,改正前河川法79条1項及び改正前施行令45条1号の各規定に従い,本件計画に定められた基本方針に沿って「庄内川水系全体計画」を策定したが,その際,新川洗堰からの分派量が0㎥/sであることを前提とした新川の基本高水を算出したこと,愛知県知事が同計画を策定するに際して,被告国は「全体計画審査意見書」と題する書面において,意見や指示を出し,被告県もこの意見書指示事項を考慮して同計画をとりまとめたこと,建設大臣は,同計画を昭和52年3月31日付けで認可したこと,被告国が本件計画において新川洗堰からの分派量を0㎥/sと変更したのは,新川の外水被害の状況を勘案し,新川地域の都市化及びこれに伴う流出機構の変化等,新川の流域開発の事情も考慮したためであること(上記3(2)クの認定事実)からすると,庄内川水系全体計画は,格別不合理とまではいえない。 また,原告らは「新川の治水上の脆弱性のため,早期に新川洗堰を閉,鎖すべき特段の事情がある」旨主張する(原告らの主張(3)ウ)が,新。 川洗堰を閉鎖せず新川への庄内川洪水の流入を残したま えない。 また,原告らは「新川の治水上の脆弱性のため,早期に新川洗堰を閉,鎖すべき特段の事情がある」旨主張する(原告らの主張(3)ウ)が,新。 川洗堰を閉鎖せず新川への庄内川洪水の流入を残したまま新川の改修を行ってきた被告県の新川の河川管理が,河川管理における財政的,技術的及び社会的制約の下で同種・同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認しえないものとはいえないことは,上記認定判断のとおりである。 被告国の損失補償責任について財産上の犠牲が単に一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超え,特別の犠牲を課したものである場合には,これについて損失補償に関する規定がなくても,直接憲法29条3項を根拠にして,補償請求をする余地が全くないわけではないと解される(最高裁昭和43年11月27日大法廷判決・刑集22巻12号1402頁参照。 )しかし,新川洗堰は,もともと江戸時代から庄内川の洪水を調節するものとして存在していたこと,本件水害当時,庄内川下流部が改修未了であった上,庄内川下流部で破堤した場合の被害は新川が破堤した場合の被害と比較して甚大であると予想されたこと,本件水害前に新川洗堰からの越流により外水被害が生じたことがなかったこと等の事情からすると,原告らが本件水害によって被った損失は「特別の犠牲」によるものではないと解される。 ,この点,原告らは「庄内川左岸側の内水排除のためのポンプ排水による水,位上昇を打ち消すためのはけ口として閉鎖されず存置されてきた」とも主張。 する(原告らの主張(4))が,これを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告らの上記損失補償請求にかかる主張は採用できない。 結論 以上の次第で,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし りる証拠はない。 したがって,原告らの上記損失補償請求にかかる主張は採用できない。 結論 以上の次第で,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第6部裁判長裁判官内田計一裁判官安田大二郎裁判官高橋正典
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