令和1(行ケ)10139 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年8月27日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
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判決文本文30,245 文字)

令和2年8月27日判決言渡 令和元年(行ケ)第10139号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和2年7月2日判決 原告 アテネ株式会社 同訴訟代理人弁護士 小林幸夫 弓削田博 藤沼光太 神田秀斗 平田慎二 同訴訟代理人弁理士 牛木護 清水榮松 高橋知之 中村聡 被告 株式会社ボンマーク 同訴訟代理人弁護士 大川直 同訴訟代理人弁理士 高橋英樹 高田守 小澤次郎 大西秀和 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 特許庁が無効2018-800133号事件について令和元年9月18日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 被告は,名称を「メタルマ 特許庁が無効2018-800133号事件について令和元年9月18日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等(1) 被告は,名称を「メタルマスク及びその製造方法」とする発明に係る特許権(特許第4192197号。平成19年4月5日出願,平成20年9月26日設定登録。請求項の数9。以下,この特許権に係る特許を「本件特許」 という。)の特許権者である。(甲24)(2) 原告は,平成30年11月29日,本件特許のうち請求項1及び2に係る発明につき,無効審判請求をした。(甲17)(3) 被告は,平成31年3月5日付けで,本件特許の特許請求の範囲につき訂正請求をした(以下「本件訂正」という。)。(甲19) (4) 特許庁は,令和元年9月18日,本件訂正を認めた上で,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月27日,原告に送達された。 (5) 原告は,令和元年10月23日,本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。 2 特許請求の範囲の記載本件訂正がされた後の請求項1及び2に係る特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(以下,各請求項に記載された発明を請求項の番号に従い「本件訂正発明1」及び「本件訂正発明2」といい,併せて「本件各訂正発明」と総称する。また,本件訂正がされた後の明細書及び図面(甲19,25)を併せ て「本件明細書」という。)。 【請求項1】半田ペーストをプリント配線板に塗布形成するために形成された開口パターンと,前記プリント配線板への位置合わせ用のために前記開口パターンに近接して設けられ,交流電源による電解マーキングによって刻印された をプリント配線板に塗布形成するために形成された開口パターンと,前記プリント配線板への位置合わせ用のために前記開口パターンに近接して設けられ,交流電源による電解マーキングによって刻印された複数の認識マー クと,を備えたことを特徴とするメタルマスク。 【請求項2】開口パターンと,スクリーン印刷の位置合わせ用のために前記開口パターンに近接して設けら れ,交流電源による電解マーキングによって刻印された複数の認識マークと,を備えたことを特徴とするメタルマスク。 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであり,原告が主張する取消事由と関連する部分としては,要するに,本件訂正発明1と下記の 甲1(以下,下記の文献については書証番号に従い「甲1文献」等という。)に記載された発明(以下「甲1発明」という。)との間の相違点3及び本件訂正発明2と甲1発明との間の相違点6につき,甲3文献に記載された交流電源による電解マーキング法(本件審決において「甲3発明」と呼称されているもの。以下「甲3記載技術」という。)を甲1発明のアライメントマークに 用いることには阻害要因が存在し,このほか甲2文献及び甲4ないし甲15文献に記載された事項を勘案しても,各相違点に係る構成を当業者が容易に想到し得るものであるということはできないというものである。 甲1:特開平10-151724号公報甲2:特開平1-214864号公報 甲3:特開平1-180995号公報 甲4:特開平1-263292号公報甲5:金属表面工業全書,槇書店,昭和48年10月30日甲6:実願平5-70126号(実開平7-40157 :特開平1-180995号公報 甲4:特開平1-263292号公報甲5:金属表面工業全書,槇書店,昭和48年10月30日甲6:実願平5-70126号(実開平7-40157号)のCD-ROM甲7:特開平7-256855号公報 甲8:特開平10-157064号公報甲9:特開2000-71637号公報甲10:特開2005-193512号公報甲11:特開2007-62184号公報甲12:東京地方裁判所平成30年(ワ)第24818号特許権侵害差 止等請求事件原告準備書面1甲13:同事件被告第3準備書面甲14:同事件被告第5準備書面甲15:電解マーキング装置のカタログ,中野マーキングシステム株式会社 (2) 本件審決が認定した甲1発明並びに本件各訂正発明と甲1発明との間の一致点及び相違点は,次のとおりである。 ア甲1発明「半田ペーストをプリント配線板に印刷形成するために形成された開口部と, 前記プリント配線板への位置合わせ用のために設けられ,マスクの一方の面に凹部が形成され,前記凹部の少なくとも底面に,前記一方の面の色と異なる色を有する金属層が形成されたアライメントマークと,を備えたことを特徴とする印刷用マスク」 イ本件訂正発明1と甲1発明との間の一致点及び相違点 (一致点)「半田ペーストをプリント配線板に塗布形成するために形成された開口パターンと,前記プリント配線板への位置合わせ用のために設けられた認識マークとを備えたメタルマスク」である点(相違点1) 本件訂正発明1では,認識マークが開口パターンに近接して設けられているのに対 線板への位置合わせ用のために設けられた認識マークとを備えたメタルマスク」である点(相違点1) 本件訂正発明1では,認識マークが開口パターンに近接して設けられているのに対して,甲1発明では,アライメントマークが開口部に近接して設けられているか否かが定かでない点(相違点2)本件訂正発明1では,認識マークが複数設けられるのに対して,甲1発 明ではアライメントマークが複数設けられているか否かが明らかでない点(相違点3)本件訂正発明1では,認識マークが,「交流電源による電解マーキングによって刻印される」のに対して,甲1発明では,アライメントマークは, 「マスクの一方の面に凹部が形成され,前記凹部の少なくとも底面に,前記一方の面の色と異なる色を有する金属層が形成され」るものである点ウ本件訂正発明2と甲1発明との間の一致点及び相違点(一致点)「開口パターンと,スクリーン印刷の位置合わせ用のために設けられた 認識マークとを備えたメタルマスク」である点(相違点4)本件訂正発明2では,認識マークが開口パターンに近接して設けられているのに対して,甲1発明では,アライメントマークが開口部に近接して設けられているか否かが定かでない点 (相違点5) 本件訂正発明2では,認識マークが複数設けられるのに対して,甲1発明ではアライメントマークが複数設けられているか否かが明らかでない点(相違点6)本件訂正発明2では,認識マークが,「交流電源による電解マーキングに よって刻印される」のに対して,甲1発明では,アライメントマークは,「マスクの一方の面に凹部が形成され,前 点6)本件訂正発明2では,認識マークが,「交流電源による電解マーキングに よって刻印される」のに対して,甲1発明では,アライメントマークは,「マスクの一方の面に凹部が形成され,前記凹部の少なくとも底面に,前記一方の面の色と異なる色を有する金属層が形成され」るものである点 4 取消事由(1) 本件審決が,次のとおり認定又は判断したことが相当であることについ ては,当事者間に争いがない。 ア本件訂正を認めたことイ甲1発明の内容並びに本件各訂正発明と甲1発明との間の一致点及び相違点について,上記3(2)のとおり認定したことウ相違点1及び4,相違点2及び5並びに相違点3及び6は,それぞれ実 質的に同じ相違点であるとしたことエ相違点1及び4につき,いずれも実質的な相違点ではないか,あるいは,甲1発明のアライメントマークを開口部に近接して設けることは当業者が適宜なし得る程度のことと判断したことオ相違点2及び5につき,いずれも実質的な相違点ではないか,あるいは, 甲2文献に記載された技術事項に基づいて当業者が容易になし得る程度のことと判断したこと(2) 原告が主張する取消事由は,本件各訂正発明の進歩性(相違点3及び6の容易想到性)についての判断の誤りである。 第3 原告の主張 1 取消事由1(本件訂正発明1の進歩性についての判断の誤り)について (1) 動機付けがあることア示唆があること(ア) 甲1文献には,従来のアライメントマークの課題として充填物質が離脱してしまうことが挙げられるとともに(甲1【0005】等),アライメントマークを形成する手段は電解めっき法等に限定されない旨が記 載されている(甲1【0024】)。このように,甲1発明が発 離脱してしまうことが挙げられるとともに(甲1【0005】等),アライメントマークを形成する手段は電解めっき法等に限定されない旨が記 載されている(甲1【0024】)。このように,甲1発明が発明された時点において,当業者には,適宜の手段によってマスクから離脱しないアライメントマークを形成することが課題として認識されていた。この点については,甲6ないし甲11文献にも,マスクから脱落しないアライメントマークが望まれている旨が記載されている。また,甲1文献に は,エッチング法等,凹部の形成方法の具体例(甲1【0020】)や金属層として形成される金属の具体例(甲1【0025】)のほか,電解めっき法以外に金属層を形成する方法の具体例(甲1【0024】)が挙げられており,種々の金属層及び種々の方法により,メタルマスクにアライメントマークを形成し得ることが記載されている。 他方で,甲3記載技術である交流電源による電解マーキング法によって刻印された認識マークが,メタルマスクの洗浄時であっても決して脱落することはないものであること(本件明細書【0028】)は,当業者に周知な事実である。 したがって,甲1発明に接した当業者は,適宜の方法により脱落しな い認識マークを形成することが課題であると認識し,又は示唆されるから,脱落しないことを技術的特徴とする甲3記載技術を甲1発明に適用することを容易に想到することが可能である。 (イ) 本件各訂正発明においては,認識マークが交流電源による電解マーキング法によって刻印されるところ,電解マーキング法においては,エ ッチング作用により,皮膜形成の前に必ず凹部が形成されるものであり, その概念に凹部の形成を内包している。 したがって,甲1発明において凹部が形成さ ,電解マーキング法においては,エ ッチング作用により,皮膜形成の前に必ず凹部が形成されるものであり, その概念に凹部の形成を内包している。 したがって,甲1発明において凹部が形成される場合であっても,甲3記載技術を甲1発明に適用する動機付けはあるというべきである。 (ウ) 甲3文献の記載(1頁左欄下から4行目ないし右欄3行目,第5図)に照らせば,同文献には,交流電源による電解マーキング法により平板 形状の被加工物にマークを施す技術が開示されているといえる。また,電解マーキング法により形成されるマークが名称,製造年月日,メーカー名に限定されないことは,当業者の技術常識に属するものであり,このことは甲5文献の記載からも明らかである。 そうすると,金属製の平板であるメタルマスクに認識マークを施す際 に交流電源による電解マーキング法を採用し得ることは,甲3文献においても示唆されているといえる。 イ技術分野,作用及び機能の共通性(ア) 甲3記載技術は,金属製の被加工物にマークを施す技術であり,メタルマスクという金属板に認識マークを施す技術である甲1発明と,技 術分野において密接に関連している。 (イ) 甲3記載技術は,マークを施す部位を黒色に皮膜し,その周囲の面との光の反射率を異ならせるものであるのに対し,甲1発明は,マークとなる部位に凹部を形成し,その底面に他の部位と異なる色(異なる反射率)を有する金属層を形成するものであり,両者は,周辺部との色彩 差によりマークを認識させるという課題・作用の共通性を有している。 (ウ) 甲3記載技術が対象としている細径超硬ドリルに表示された文字等は,自動化された工場においてはロボットがカメラによって認識することもあることから,甲1発明のアライメン の共通性を有している。 (ウ) 甲3記載技術が対象としている細径超硬ドリルに表示された文字等は,自動化された工場においてはロボットがカメラによって認識することもあることから,甲1発明のアライメントマークとは,コントラストが必要という意味において機能が共通する。 (エ) メタルマスクは,部品の製造工程や組立工程で用いられる「治具」 であり,部品の製造工程や組立工程で用いられるドリル等の「工具」と密接に関連する生産部材であるところ,実際の生産現場においては,両者を峻別せずに「治工具」と総称していることなどからすれば,両者は密接に関連するものとして認識されている。 ウ本件各訂正発明の効果は顕著なものではないこと 本件特許において解決すべき課題として挙げられているのは,①認識マークの脱落防止,②箔物への認識マークの形成である(本件明細書【0011】)ところ,本件特許が出願された時点(以下「本件出願時」という。)において,上記①の課題は,既に当業者に認識されていた(甲1,6ないし11)ものであるし,上記②の課題も,金属の素材や硬度等によりマー キング形成が難しい場合には電解マーキング法を用いることが甲15文献において推奨されていたように,既に当業者に広く認識されていたものであるから,これらを解決する本件各訂正発明の作用効果は,全く顕著なものではない。 (2) 阻害要因は存在しないこと 本件審決は,甲3文献において,電解マーキング法に関し,「(1) 得られるマーキング皮膜は被加工物の酸化物,或いは反応生成物に限られるため,物理的及び科学的に安定した黒色皮膜を得ることが困難であり,皮膜の退色,離脱,溶出等の問題がある。」(以下「欠点(1)」という。),「(2) 同法では原理上表面がエッチングさ 生成物に限られるため,物理的及び科学的に安定した黒色皮膜を得ることが困難であり,皮膜の退色,離脱,溶出等の問題がある。」(以下「欠点(1)」という。),「(2) 同法では原理上表面がエッチングされ,その上に黒色皮膜が生成されるので,エッチン グ深さの制御及び皮膜厚さの制御は事実上不可能であり,ドリル等のような高精度を要求される工具類のマーキングには不適当である。」(以下「欠点(2)」という。),「(3) 電解液の補充が多すぎるとマーキングパターンに滲みが発生する一方,少なすぎると掠れが発生し,かつ,表面がエッチングされて傷が残るため,再度マーキングすることはできない。」(以下「欠点(3)」という。), 「(4) 解像度に限度があり,同法では0.2mm幅の線が限界であるし,ま た,上記(3)の理由によって明瞭さに欠ける。」(以下「欠点(4)」という。)と記載されていることを理由に,同法を甲1発明のアライメントマークに用いることには阻害要因があるとしているが,次のとおり,欠点(1)ないし(4)は,いずれも阻害要因とはなり得ない。 ア電解マーキング法においては,被加工金属の属性と電解液の属性との相 性が悪いと,欠点(1)のとおり,物理的・化学的に安定した皮膜が得られず,皮膜の退色等の問題が生ずることがある。そのため,メタルマスクの製造者が電解マーキング法によって位置合わせ用マークを刻印しようとする場合には,マスク材料と適切な相性を有する電解液を採用すべく一定の創意工夫や努力が求められるが,このような創意工夫等は,製造者一般に求 められる程度のものであって,電解マーキング法の採用を妨げるほどの難点ではない。 したがって,欠点(1)は,阻害要因とはなり得ない。 イメタルマスクは,円柱形状であるドリル 造者一般に求 められる程度のものであって,電解マーキング法の採用を妨げるほどの難点ではない。 したがって,欠点(1)は,阻害要因とはなり得ない。 イメタルマスクは,円柱形状であるドリルとは異なり平板形状であるため,印加電圧や電流密度,通電時間を適切に設定することにより,エッチング 深さを容易に制御することができる上,位置合わせ用マークの深さについては,刻印部である凹部が貫通孔とならなければよいという極めて緩い制約しかない。また,甲3文献の記載からすれば,欠点(2)は,当時認識されていた電解マーキング法そのものの課題ではなく,シャンク部が円柱形状である工具類に細かな線で構成される数字や文字等を刻印する場合につ いての課題であると理解すべきものである。 したがって,欠点(2)は,阻害要因となり得ない。 ウ欠点(3)は,電解液量が過大又は過少である場合に生ずるにすぎない。電解液の浸透を防止したり,電解液量や通電時間等を適切に管理したりすることにより,にじみやかすれの発生を防止することは可能であるし,製品 の製造工程において,電解液量や通電時間等の状態諸量を適切に管理する ことは,製造者に当然に求められることである。 したがって,欠点(3)は,阻害要因とはなり得ない。 エ甲3記載技術は,マーキングパターンとして数字や文字等を対象とするものであるところ,同技術が対象とする細径ドリルのシャンク部に刻印される文字の大きさは1mm程度であり,このような大きさの文字を0.2 mm幅の線で構成するのは画数の多い漢字では困難であるから,電解マーキング法における解像度に限度があることは,細径ドリルに文字を刻印するに際して同法を適用することの阻害要因となり得る。 他方で,メタルマスクの位置合わせ用マークは, 漢字では困難であるから,電解マーキング法における解像度に限度があることは,細径ドリルに文字を刻印するに際して同法を適用することの阻害要因となり得る。 他方で,メタルマスクの位置合わせ用マークは,直径が0.5mm以上の単純な黒丸等である上,位置合わせ用マークにとって重要であるのは位 置座標としての正確さと明瞭性であるから,0.2mm幅の線が限界であったとしても,制約にはならない。 欠点(4)に関し,本件審決は,電解マーキング法には加工精度にも問題があると指摘しているが,甲3文献に記載されている加工精度は,X-Y軸からなる被加工平面と直交するZ軸方向の1次元の加工精度であるのに 対し,位置合わせ用マークとしてのアライメントマークに求められる加工精度は,X軸-Y軸からなるマスク平面における位置座標としての2次元の加工精度であって,両者は無関係であるから,本件審決の指摘は的外れである。 したがって,欠点(4)は,阻害要因とはなり得ない。 (3) その他ア凹部の形成の有無は実質的な相違とはいえないこと交流電源による電解マーキング法においても,メタルマスクの表面にエッチング作用によって形成された凹部の上に黒色皮膜が形成されるのであるから,本件訂正発明1の認識マーク及び甲1発明のアライメントマー クは,いずれもメタルマスク表面の凹部の底面に形成された,メタルマス クの色と異なる色を有する層である点で共通する。また,認識マークにおいて重視されるのは,メタルマスクの色と認識マークである皮膜の色とのコントラスト(色彩差)のみである。 したがって,凹部の形成の有無は,電解マーキング法と甲1発明との間の実質的な相違とはいえない。 イ本件訂正発明1に至らないという判断に誤りがあること スト(色彩差)のみである。 したがって,凹部の形成の有無は,電解マーキング法と甲1発明との間の実質的な相違とはいえない。 イ本件訂正発明1に至らないという判断に誤りがあること(ア) 本件審決は,仮に甲3記載技術を甲1発明に適用したとしても,相違点3に係る本件訂正発明1の構成である「交流電源による電解マーキングによって刻印された認識マーク」とはならないと判断した。 (イ) しかしながら,甲3文献の記載によれば,甲3記載技術は,そもそ も交流電源による電解マーキング法を前提としている。また,甲3記載技術を甲1発明に適用した場合には,マスクの一方の面に凹部が形成され,凹部の少なくとも底面に対して,電解マーキング法により一方の面の色と異なる色を有する金属層がその表面に形成され,これ自体が周囲との色彩差により認識マークとして機能することとなる。 したがって,甲3記載技術を甲1発明に適用した場合には,本件訂正発明1に至るのであるから,本件審決の判断は失当である。 2 取消事由2(本件訂正発明2の進歩性についての判断の誤り)について本件訂正発明2と甲1発明との間の実質的な相違点は,本件訂正発明1と同様に,認識マーク(アライメントマーク)が電解マーキング法により形成され るか否かのみであるから,取消事由2の主張内容は,取消事由1と同旨である。 第4 被告の主張 1 取消事由1について(1) 動機付けがないことア技術分野,作用及び機能の共通性について (ア) 甲1発明のアライメントマークは,印刷用マスクとプリント配線板 との位置合わせ用に形成されるものであり,CCDカメラ等によってその位置が認識されるものであるから,画像処理を行うためのコントラストが必要となる上, ークは,印刷用マスクとプリント配線板 との位置合わせ用に形成されるものであり,CCDカメラ等によってその位置が認識されるものであるから,画像処理を行うためのコントラストが必要となる上,印刷用マスクをプリント配線板に対して指定された公差内に配置するための位置精度及び輪郭の寸法精度が必要となる。 (イ) 他方で,甲3記載技術によってドリル等に表示される文字や数字等 は,製品名やメーカー名等を表すものであり,単なる表示機能しか有していない。また,本件出願時において,画像処理の対象として高い精度が要求される位置合わせ用のマークに電解マーキング法を使用することができるとの認識は,当業者間で全く持たれていない。 (ウ) したがって,甲1発明によるアライメントマークの形成と甲3記載 技術による工具類への文字や数字等の表示とは,適用される製品が異なるとともに,作用及び機能をも異にするものであり,技術分野が関連するとはいえないから,甲1発明に甲3記載技術を適用する動機付けはない。 イ本件出願時の技術水準について (ア) 甲1文献には,アライメントマークの形成方法として,エッチング法等によって凹部をあらかじめ形成した後,電解めっき法等によって当該凹部に金属層を後から形成することのみが記載されている。また,メタルマスクを開示する甲2文献や甲6ないし甲11文献にも,位置合わせ用のマークの形成方法として,あらかじめ凹部又は貫通孔を形成した 上で,その凹部等に別の部材を付加するという発想しか記載されていない。このように,本件出願時においては,あらかじめ形成しておいた凹部に樹脂等の別の部材を付加することによって必要な機能を確保することが,位置合わせ用のマークを形成することの前提となっていたものであ い。このように,本件出願時においては,あらかじめ形成しておいた凹部に樹脂等の別の部材を付加することによって必要な機能を確保することが,位置合わせ用のマークを形成することの前提となっていたものである。 (イ) また,甲3文献には,電解マーキング法に対する認識として欠点(1) ないし(4)が記載されているが,これは,同法について,精度等の要求が低い表示用として利用する場合であっても多くの課題が存在することを示すものであり,まして高い精度等が要求される位置合わせ用のマークに要求される機能は有していないという認識しかされていなかったことを示している。 (ウ) 以上のとおり,本件出願時においては,電解マーキング法によって位置合わせ用のマークに必要な機能を確保することができるとは全く認識されておらず,同法を用いてメタルマスクに位置合わせ用のマークを形成すること自体,全く予期されていなかったものである。 ウ文献中の内容の示唆について (ア) 原告が提出したメタルマスクを開示するすべての文献(甲1,2,6ないし11)には,位置合わせ用のマークとして,あらかじめ凹部又は貫通孔を形成した上で,その凹部等に別の部材を付加するという発想しか記載されておらず,電解マーキング法を位置合わせ用のマークに適用することについては記載も示唆もない。 (イ) また,甲3文献には,電解マーキング法の欠点が記載されているのみであり,同法をメタルマスクの位置合わせ用のマークに適用することについては記載も示唆もない。 (ウ) さらに,甲4文献,甲5文献,甲15文献には,電解マーキング法をメタルマスクの位置合わせ用のマークに適用することについて,何ら の記載も示唆もない。 (2) 阻害 い。 (ウ) さらに,甲4文献,甲5文献,甲15文献には,電解マーキング法をメタルマスクの位置合わせ用のマークに適用することについて,何ら の記載も示唆もない。 (2) 阻害事由があることアアライメントマークは,印刷用マスクをプリント配線板に対して公差内に配置するための位置精度及び輪郭の寸法精度に加え,画像処理を行うためのコントラストが必要とされるところ,甲3文献には,電解マーキング 法には退色,離脱,溶出,にじみ,かすれ等が生じる上,解像度に限度が あり明瞭さに欠けるという欠点(1)ないし(4)が存在する旨が記載されている。また,甲3文献には,電解マーキング法における欠点(1)ないし(4)を解決するための方法として,甲1発明において採用されている電解めっき法が挙げられている。 したがって,甲1発明のアライメントマークを甲3記載技術によって形 成することには,明らかに阻害要因がある。 イ本件出願時においては,電解マーキング法によって位置合わせ用のマークを形成すれば同マークに必要な機能を確保することができるという認識は全くされておらず,当業者は,このような方法自体を全く予期し得なかったものである。 (3) その他甲1文献には,エッチング等によって凹部を形成する工程が行われた後に,同工程で得られた凹部の底面にメッキ層等の別の金属層を付加する工程を別途行うことが記載されている。これに対し,本件訂正発明1における交流電源による電解マーキング法においては,金属イオンの溶出及び再溶出による 凹みの発生と溶出した金属イオンの付着及び再付着による皮膜の形成とは同じ工程で行われるから,凹みの発生と皮膜の形成とを切り離して考えることはできない。 したがって,凹部の形 び再溶出による 凹みの発生と溶出した金属イオンの付着及び再付着による皮膜の形成とは同じ工程で行われるから,凹みの発生と皮膜の形成とを切り離して考えることはできない。 したがって,凹部の形成の有無は,電解マーキング法と甲1発明との間の実質的な相違といえる。 2 取消事由2について本件訂正発明2も,本件訂正発明1について主張したところと同様の理由により,進歩性を有するものである。 第5 当裁判所の判断 1 本件各訂正発明 (1) 特許請求の範囲 本件各訂正発明の特許請求の範囲は,前記第2の2のとおりである。 (2) 本件明細書の記載本件明細書には,次のとおり記載されている(甲19,25。図面については別紙本件明細書図面目録記載のとおりである。)。 ア技術分野 【0001】 この発明は,認識マークを備えたメタルマスクとその製造方法に関するものである。 イ背景技術【0002】 各種電子部品をプリント配線板に実装するため,従来から,メタルマスクを使用したスクリーン印刷法によって,半田ペースト(クリ ーム半田)等をプリント配線板に塗布形成する方法が採用されている。一般に,メタルマスクを使用したスクリーン印刷法では,コンベヤ等によってメタルマスクの下方を移動,停止する各プリント配線板に対して,順次半田ペースト等の塗布形成が実施される。このため,メタルマスクには,その片面或いは両面に,プリント配線板への位置合わせ用の認識マークが 形成されており,半田ペースト等の塗布前に,上記認識マークを基準として,メタルマスクと各プリント配線板との位置合わせが行われている。 【0003】 従来では,メタルマスクに認識マークを形成するに際し,半 れており,半田ペースト等の塗布前に,上記認識マークを基準として,メタルマスクと各プリント配線板との位置合わせが行われている。 【0003】 従来では,メタルマスクに認識マークを形成するに際し,半田ペースト等をプリント配線板に塗布するための開口部(開口パターン)をメタルマスクに形成した後,メタルマスクの所定位置にエッチング液を 用いて凹部を形成(ハーフエッチング)し,この凹部にトナー(カーボンの微粉末と接着剤との混合物)を詰めて乾燥させる方法が採用されていた。 【0004】 また,メタルマスクに認識マークを形成するための従来技術として,電鋳法によって製造されるメタルマスクにおいて,開口部の形成と同時に認識マークの凹部を形成するものが提案されている(例えば,特 許文献1(判決注:特開平7-256855号公報)参照)。なお,特許文 献1記載の方法は開口部と認識マークとの相対位置精度を向上させるためのものであるが,上記方法によってメタルマスクの所定位置に凹部を形成した場合であっても,認識マークを完成させるためには,この凹部にトナーを充填して乾燥させる工程が更に必要であった。 ウ発明が解決しようとする課題 【0006】 特許文献1記載のものを含め,トナーを用いて認識マークを形成する従来のメタルマスクでは,認識マークの凹部からトナーが取れてしまう場合があり,かかる場合に,プリント配線板への位置合わせができなくなるといった問題が生じていた。 【0007】 なお,上記トナーの凹部からの脱落は,メタルマスクの洗浄 時に発生することが多い。特に近年では,メタルマスクの開口部が密集しているため,半田ペースト等の除去に超音波洗浄が多く用いられている。 このため,キャビテーション効果等によってトナーが凹部から脱落し易く 発生することが多い。特に近年では,メタルマスクの開口部が密集しているため,半田ペースト等の除去に超音波洗浄が多く用いられている。 このため,キャビテーション効果等によってトナーが凹部から脱落し易くなり,上記問題が多発する要因となっていた。 【0008】 また,メタルマスクが製造ラインに組み込まれた後に,認識 マークのトナーが脱落してしまうと,製造ラインを停止させて,トナーを再度凹部に充填する作業が必要となってしまう。更に,メタルマスクの使用者が上記充填作業を行うことができない場合には,例えば,メタルマスクの製造元の技術者を呼び寄せて上記充填作業を行ってもらう必要がある。このため,一旦トナーの脱落が発生すると,メタルマスクをその一部 に含む製造ラインの生産性が著しく低下するといった問題もあった。 【0009】 また,従来の方法では,認識マークの凹部を形成するためにエッチング液を使用するため,廃液が出て環境的にも好ましいものではなかった。 【0010】 更に,従来の方法では,凹部にトナーを充填して認識マーク を形成するため,この凹部にはトナーを充填するための所定の深さ(例え ば,50μm以上の深さ)が必要となる。したがって,トナーを用いて認識マークを形成する方法は,箔物メタルマスクに適用することが困難であり,特に両面に認識マークを形成する必要がある場合には,その適用は不可能であった。 【0011】 この発明は,上述のような課題を解決するためになされたも ので,その目的は,認識マークの脱落を確実に防止することができるとともに,箔物に対しても容易に認識マークを形成することができるメタルマスク,並びに,その製造方法を提供することである。 エ課題を解決するための手段【0012】 この発明に係るメタルマス きるとともに,箔物に対しても容易に認識マークを形成することができるメタルマスク,並びに,その製造方法を提供することである。 エ課題を解決するための手段【0012】 この発明に係るメタルマスクは,半田ペーストをプリント配 線板に塗布形成するために形成された開口パターンと,プリント配線板への位置合わせ用のために開口パターンに近接して設けられ,交流電源による電解マーキングによって刻印された複数の認識マークと,を備えたものである。 【0013】 また,この発明に係るメタルマスクは,開口パターンと,ス クリーン印刷の位置合わせ用のために開口パターンに近接して設けられ,交流電源による電解マーキングによって刻印された複数の認識マークと,を備えたものである。 オ発明の効果【0016】 この発明によれば,半田ペーストをプリント配線板に塗布形 成する際に用いられるメタルマスクにおいて,認識マークの脱落を確実に防止することができるとともに,箔物に対しても容易に認識マークを形成することができる。 【0017】 また,この発明によれば,スクリーン印刷に用いられるメタルマスクにおいて,認識マークの脱落を確実に防止することができるとと もに,箔物に対しても容易に認識マークを形成することができる。 カ発明を実施するための最良の形態【0020】 先ず,電鋳法やレーザー加工により,メタルマスク1の所定位置に,半田ペースト等をプリント配線板に塗布形成するための開口部(開口パターン)(図1乃至図10においては図示せず)を形成する。そして,開口部の加工が終了したメタルマスク1を準備し(図1参照),メタル マスク1の両面に付着している油分を脱脂液によって除去する(図2参照)。脱脂液により油分を除去した後,メタルマ 成する。そして,開口部の加工が終了したメタルマスク1を準備し(図1参照),メタル マスク1の両面に付着している油分を脱脂液によって除去する(図2参照)。脱脂液により油分を除去した後,メタルマスク1の両面(認識マークを形成する面)上に,レジスト液或いはドライフィルム等を使用して,それぞれ薄膜状のレジスト2(感光膜)を形成する(図3参照)。 【0021】 次に,メタルマスク1の両面に形成された各レジスト2上に, ポジタイプ用の認識マーク部3aが設けられたフィルム3を乗せて焼き付ける(図4参照)。なお,上記工程においては,当然のことながら,フィルム3に設けられた認識マーク部3aをメタルマスク1の認識マークを形成する位置に合わせてフィルム3を配置し,その後,露光する。ここで,認識マーク部3aの黒い部分は露光の際に光が透過しないため,認識マー ク部3aの下方に位置する部分のレジスト2は硬化しない。一方,フィルム3のうち認識マーク部3a以外の部分では露光の際に光が透過するため,上記認識マーク部3a以外の部分の下方に位置するレジスト2は硬化する。 【0022】 なお,図4はネガタイプのレジスト2を用いた場合の露光工 程を示したものである。一方,ポジタイプのレジスト2を用いた場合には,ネガタイプ用の認識マーク部3aが設けられたフィルム3を使用すれば良い。かかる場合,上記の場合とは逆に,認識マーク部3aのみ光が透過し,認識マーク部3aの下方に位置する部分のレジスト2が溶解することになる。 【0023】 上記露光工程が終了した後,フィルム3を各レジスト2上か ら剥離し,レジスト2のうち,上記露光工程において硬化しなかった部分(未硬化レジスト部2a)のみを現像液によってメタルマスク1の両面上から除去する(図 た後,フィルム3を各レジスト2上か ら剥離し,レジスト2のうち,上記露光工程において硬化しなかった部分(未硬化レジスト部2a)のみを現像液によってメタルマスク1の両面上から除去する(図5参照)。以上の工程により,メタルマスク1の両面上から,認識マークを形成する部分(認識マーク形成部1a)のレジスト2を除去することができ,メタルマスク1の両面上に,認識マーク形成部1a の部分のみ開口したレジスト2が完成する(図6参照)。 【0024】 次に,メタルマスク1の所定位置(認識マーク形成部1a)に,認識マークを電解処理によって刻印(電解マーキング)する。具体的な工程は以下の通りである。先ず,図7に示すように,電極4とメタルマスク1表面の認識マーク形成部1aとを電解液5に浸し,上記電極4及び メタルマスク1を交流電源6に接続する。すると,メタルマスク1側が陽極となった際に,認識マーク形成部1aの表面から金属イオンが電解液5に溶け出す。電解液5に溶け出した上記金属イオンは,電解液5中でOH基と反応,化学変化を起こし,黒色等の濃い色に変化する。 【0025】 そして,極性が切り換わりメタルマスク1側が陰極になると, 電解液5中で黒色等に変化した金属イオンがメタルマスク1に戻り,これによって,メタルマスク1の所定位置(上記認識マーク形成部1aであった位置)に,他の部分よりも濃い色の皮膜1bが形成される。即ち,上記皮膜1bが認識マークとなる(図8参照)。なお,図8にも示したように,皮膜1bを形成する工程では,メタルマスク1の表面から金属イオンが電 解液5中に溶け出すため,認識マークが形成される部分は,極浅く掘り込まれた状態になる。例えば,皮膜1bの表面は,メタルマスク1の他の部分の表面よりもt=5~10μm程度深い ら金属イオンが電 解液5中に溶け出すため,認識マークが形成される部分は,極浅く掘り込まれた状態になる。例えば,皮膜1bの表面は,メタルマスク1の他の部分の表面よりもt=5~10μm程度深い位置に配置される。 【0026】 上記工程によってメタルマスク1の表面に認識マーク(皮膜1b)を形成した後,同様の手順,即ち,上記電解マーキング工程によっ て,メタルマスク1の裏面にも認識マークを形成する。そして,メタルマ スク1の両面の所定位置に認識マークを形成した後,剥離液によってメタルマスク1の両面上から全てのレジスト2を除去し(図9参照),図10及び図11に示すメタルマスク1を完成させる。 【0027】 なお,図11は本発明の実施の形態1におけるメタルマスクを示す平面図である。図11に示すメタルマスク1では,半田ペースト等 をプリント配線板に塗布形成するための開口部(開口パターン)1cの近傍に,上記プリント配線板への位置合わせ用の複数の認識マークが配置されており,これらの認識マークは,上述の通り,電解処理によって刻印されている。 【0028】 この発明の実施の形態1によれば,認識マークは,電解処理 によってメタルマスク1に刻印されるため,メタルマスク1の洗浄時であっても決して脱落することはない。したがって,超音波洗浄が必要なものに対しては,特に有効な手段となる。また,従来のように認識マークを形成するためにエッチング液を使用することはないため,環境的にも優しく,廃液の後処理等も不要になる。なお,電解液としてほぼ中性のものを使用 すれば,中和等の後処理も不要になる。 【0029】 更に,t=5~10μm程度の厚みがあれば認識マークを形成することができるため,箔物メタルマスクに対しても容易に適用が可能 のものを使用 すれば,中和等の後処理も不要になる。 【0029】 更に,t=5~10μm程度の厚みがあれば認識マークを形成することができるため,箔物メタルマスクに対しても容易に適用が可能である。したがって,箔物メタルマスクの両面に認識マークを形成する必要がある場合には,有効な手段となる。特に,メタルマスク1の両面(プ リント配線板への対向面とこの対向面の反対面)に刻印された認識マークの一部が,平面視重なって配置されている場合には,好適である。 (3) 本件各訂正発明の特徴以上によれば,本件各訂正発明は,次のとおり理解することができる。 ア本件各訂正発明は,認識マークを備えたメタルマスクに関するものであ る。(【0001】) イ以前から,各種電子部品をプリント配線板に実装するために,メタルマスクを使用したスクリーン印刷法により,半田ペースト(クリーム半田)等をプリント配線板に塗布形成する方法が採用されている。そして,メタルマスクには,その片面又は両面にプリント配線板への位置合わせ用の認識マークが形成され,半田ペースト等の塗布前に,上記認識マークを基準 として,メタルマスクと各プリント配線板との位置合わせが行われるところ,従来は,メタルマスクの所定位置にエッチング液を用いて凹部を形成し,この凹部にトナーを詰めて乾燥させることにより,認識マークを形成する方法が採用されていた。(【0002】,【0003】)ウトナーを用いて認識マークを形成する従来のメタルマスクでは,特に洗 浄の際に,認識マークの凹部からトナーが取れてしまう場合があり,プリント配線板への位置合わせができなくなるなどの問題が生じていた。また,従来の方法では,トナーを充填するために凹部に所定の深さが必要な 浄の際に,認識マークの凹部からトナーが取れてしまう場合があり,プリント配線板への位置合わせができなくなるなどの問題が生じていた。また,従来の方法では,トナーを充填するために凹部に所定の深さが必要なため,箔物メタルマスクに適用することが困難であるという問題があった。本件各訂正発明は,これらの課題を解決するために発明されたものであり,そ の目的は,認識マークの脱落を確実に防止することができるとともに,箔物に対しても容易に認識マークを形成することができるメタルマスク及びその製造方法を提供することである。(【0006】,【0007】,【0010】,【0011】)エ本件訂正発明1に係るメタルマスクは,半田ペーストをプリント配線板 に塗布形成するために形成された開口パターンと,プリント配線板への位置合わせ用のために開口パターンに近接して設けられ,交流電源による電解マーキングによって刻印された複数の認識マークと,を備えたものである。また,本件訂正発明2に係るメタルマスクは,開口パターンと,スクリーン印刷の位置合わせ用のために開口パターンに近接して設けられ,交 流電源による電解マーキングによって刻印された複数の認識マークと,を 備えたものである。(【0012】,【0013】)オ本件各訂正発明によれば,メタルマスクにおいて,認識マークの脱落を確実に防止することができるとともに,箔物に対しても容易に認識マークを形成することができる。(【0016】,【0017】) 2 甲1発明並びに甲1発明と本件各訂正発明との間の一致点及び相違点 (1) 甲1文献には,次のとおり記載されている(甲1)。 ア特許請求の範囲【請求項1】半田印刷用の開口部が設けられた印刷用マスクであって,その一方の の一致点及び相違点 (1) 甲1文献には,次のとおり記載されている(甲1)。 ア特許請求の範囲【請求項1】半田印刷用の開口部が設けられた印刷用マスクであって,その一方の面にプリント配線板との位置決めのためのアライメントマークとして凹部 が形成され,前記凹部の少なくとも底面に,前記一方の面の色と異なる色を有する金属層が形成されてなる印刷用マスク。 【請求項2】金属層がめっき法により形成されてなる請求項1記載の印刷用マスク。 【請求項3】 金属層が金からなる請求項1または2記載の印刷用マスク。 【請求項4】請求項1~3いずれか記載の印刷用マスクをプリント配線板に積層し,前記プリント配線板の半導体素子実装部分にクリーム半田を印刷することを特徴とするプリント配線板の半田印刷方法。 イ発明の属する技術分野【0001】 本発明は,印刷用マスクおよびそれを用いたプリント配線板の半田印刷方法に関する。さらに詳しくは,プリント配線板上の半導体素子実装部分にクリーム半田を印刷する際に用いられる印刷用マスク,および該印刷用マスクを用いたプリント配線板の半田印刷方法に関する。 ウ従来の技術 【0002】 一般に,プリント配線板の表面のICチップ実装部分には,半田バンプと呼ばれる半田のボール群が形成されており,この半田バンプにICチップを載せて加熱することにより,プリント配線板にICチップが実装されている。 【0003】 従来,半田バンプを形成する方法として,メタルマスクやプ ラスチックマスク等の印刷用マスクおよびプリント配線板に,それぞれ該印刷用マスクと該プリント配線板との位置決めのためのアライメントマークをあらかじめ形成させておき 方法として,メタルマスクやプ ラスチックマスク等の印刷用マスクおよびプリント配線板に,それぞれ該印刷用マスクと該プリント配線板との位置決めのためのアライメントマークをあらかじめ形成させておき,所定の位置に印刷用マスクとプリント配線板とが積層するように両者のアライメントマーク同士を整合させたのち,クリーム半田を印刷する方法が採用されている。 【0004】 具体的には,例えば,プリント配線板の上方から,該プリント配線板に形成されているアライメントマークをカメラで読み取り,その位置座標を記憶し,次に印刷用マスクの上方または下方から該印刷用マスクに設けられたアライメントマークをカメラで読み取り,その位置座標を記憶して,両者の位置座標のずれを求め,ずれ量を演算して記憶した後, 前記プリント配線板を前記印刷用マスクの直下のステージにまでコンベアで移動させ,ずれ量が許容範囲内に収まるようにステージの位置を調整し,次いで前記印刷用マスクを前記プリント配線板上に積層し,前記プリント配線板の所定位置にクリーム半田を印刷した後,かかるクリーム半田をリフロー処理することにより半田バンプを形成する方法が採用されて いる。 【0005】 しかしながら,前記印刷方法では,印刷用マスクのアライメントマークは,印刷用マスクに設けられた凹部または貫通孔に,カーボン樹脂等の顔料を練り込んで着色された樹脂を充填して形成されているため,印刷後に印刷用マスクに付着した半田粒子を洗浄した際には,顔料自 体が有する離型性によってカーボン樹脂が剥がれるという欠点がある。 【0008】 このように,充填されたカーボン樹脂がアライメントマークから離脱した場合には,その周囲との色彩の差がなくなるため,アライメントマークとしての役割を果たさな う欠点がある。 【0008】 このように,充填されたカーボン樹脂がアライメントマークから離脱した場合には,その周囲との色彩の差がなくなるため,アライメントマークとしての役割を果たさなくなるので,近年,充填物質が離脱しがたいアライメントマークを有する印刷用マスクの開発が待ち望まれている。 エ発明が解決しようとする課題【0009】 本発明は,前記従来技術に鑑みてなされたものであり,アライメントマークに充填された充填物質の離脱等が発生しがたく,該アライメントマークを確実にしかも容易に認識することができる印刷用マスク,およびそれを用いたプリント配線板の半田印刷方法を提供することを目 的とする。 オ課題を解決するための手段【0010】 本発明の要旨は,(1)半田印刷用の開口部が設けられた印刷用マスクであって,その一方の面にプリント配線板との位置決めのためのアライメントマークとして凹部が形成され,前記凹部の少なくとも底面に, 前記一方の面の色と異なる色を有する金属層が形成されてなる印刷用マスク,(2)金属層がめっき法により形成されてなる前記(1)記載の印刷用マスク,(3)金属層が金からなる前記(1)または(2)記載の印刷用マスク,並びに(4)前記(1)~(3)いずれか記載の印刷用マスクをプリント配線板に積層し,前記プリント配線板の半導体素子実装部分にクリーム半田を印刷するこ とを特徴とするプリント配線板の半田印刷方法に関する。 カ発明の実施の形態【0011】 本発明の印刷用マスクは,半田印刷用の開口部が設けられた印刷用マスクであって,その一方の面にプリント配線板との位置決めのためのアライメントマークとして凹部が形成され,前記凹部の少なくとも底 面に,前記一方の面の色と異なる色を有 開口部が設けられた印刷用マスクであって,その一方の面にプリント配線板との位置決めのためのアライメントマークとして凹部が形成され,前記凹部の少なくとも底 面に,前記一方の面の色と異なる色を有する金属層が形成されたものであ る。 【0012】 本発明の印刷用マスクに用いられる基板としては,特に限定がなく,従来用いられているものを用いることができる。かかる基板の材質としては,例えば,ニッケル合金,ニッケル-コバルト合金,ステンレス鋼等の金属;エポキシ樹脂,ポリイミド樹脂等の樹脂等があげられるが, 本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。なお,これらのなかでは,コスト,耐久性,開口部の精度等の点から,ニッケル合金,ニッケル-コバルト合金等が好ましい。 【0014】 前記印刷用マスクは,前記基板に,半田印刷用の開口部(貫通孔)と,プリント配線板に対する位置決めとなるアライメントマークと して凹部とを形成することによって得られる。 【0018】 また,前記凹部は,前記基板において,通常,プリント配線板に設けられているアライメントマークと対応する位置に設けられる。かかる凹部を設ける位置およびその数は,任意であり,プリント配線板に応じて適宜選定すればよい。 【0019】 前記凹部の形状,大きさ,深さ等は,特に限定がなく,任意である。その一例として,例えば,形状および大きさとして直径50~100μm程度の円形があげられ,また深さとして5~20μm程度があげられる。 【0020】 前記凹部は,例えば,エッチング法,レーザー加工法等によ って形成させることができる。 【0021】 本発明においては,前記凹部の少なくとも底面に,該凹部が設けられる面の色と異なる色を有する金属層が形成されている点に,1 法,レーザー加工法等によ って形成させることができる。 【0021】 本発明においては,前記凹部の少なくとも底面に,該凹部が設けられる面の色と異なる色を有する金属層が形成されている点に,1つの大きな特徴がある。 【0022】 このように,前記凹部の少なくとも底面に前記金属層が形成 されいる場合(判決注:「形成されている場合」の誤りであると認める。) には,該金属層は,前記基板との接着強度に優れているので,例えば印刷用マスクを洗浄する際などに外的応力が加わった場合であっても,該金属層が離脱するなどの不都合が発生することがない。 【0024】 本発明において,印刷用マスクの一方の面に設けられた凹部に金属層を形成する方法としては,例えば,化学蒸着法,電解めっき法, 無電解めっき法等によって金属層を形成する方法があげられるが,本発明はかかる方法のみに限定されるもではない(判決注:「限定されるものではない」の誤りであると認める。)。なお,これらの方法のなかでは,作業性,コスト等の点から,電解めっき法等のめっき法によって金属層を形成する方法が好ましい。 【0025】 前記金属層に用いられる金属としては,例えば,金,銀,銅,白金,黒化処理(酸化処理)が施された銅等があげられるが,これらの中では,印刷用マスクの洗浄等における外的応力による剥離が生じ難く,しかも印刷用マスクの基板が金属や樹脂であっても,それらの色彩とは異なった色彩を有するので認識しやすいという点から,金が特に好ましい。 (2) 以上の記載によれば,甲1発明の内容並びに本件各訂正発明と甲1発明との間の一致点及び相違点については,本件審決が認定したとおり(前記第2の3(2))であると認められる。 3 取消事由1(本件訂正発明1の進歩性につ ば,甲1発明の内容並びに本件各訂正発明と甲1発明との間の一致点及び相違点については,本件審決が認定したとおり(前記第2の3(2))であると認められる。 3 取消事由1(本件訂正発明1の進歩性についての判断の誤り)について(1) 甲3文献の記載 甲3文献には,次のとおり記載されている(甲3。図面については別紙甲3文献図面目録記載のとおりである。)。 ア特許請求の範囲ホルダー内に収容した被鍍金物の周面上にステンシルを密着させ,このステンシルに表現されている数字や文字等のパターンにしたがって,上記 被鍍金物の周面上の被鍍金部分に流動する鍍金液を接触させて電気鍍金 することを特徴とするマーキング方法。 イ産業上の利用分野本発明は,高速度鋼や超鋼合金製の工具類に文字や数字等のパターンを表示するためのマーキング方法の改良に関する。 ウ従来の技術 金属製の被加工物にマークを施すには,一般に電解マーキング法が採用されている。この電解マーキング法は,第5図に示すようにステンシル1の孔部に電解液2と被加工物3を接触させ,電解液2に接触するカーボン電極4と被加工物3との間に交流を印加することによって,被加工物の表面に皮膜5を生成するものである。そして,生成される皮膜は被加工物3 の酸化物,或いは被加工物3と電解液2との反応生成物である。 エ発明が解決しようとする課題(ア) 上記電解マーキング法は簡便であって量産には適しているが,以下に挙げる欠点がある(欠点(1)ないし(4))。 「(1) 得られるマーキング皮膜は被加工物の酸化物,或いは反応生成物 に限られるため,物理的及び化学的に安定した黒色皮膜を得ることが困難であり,皮膜の退色,離脱,溶出等の問題があ 4))。 「(1) 得られるマーキング皮膜は被加工物の酸化物,或いは反応生成物 に限られるため,物理的及び化学的に安定した黒色皮膜を得ることが困難であり,皮膜の退色,離脱,溶出等の問題がある。 (2) 同法では原理上表面がエッチングされ,その上に黒色皮膜が生成されるので,エッチング深さの制御及び皮膜厚さの制御は事実上不可能であり,ドリル等のような高精度を要求される工具類のマーキ ングには不適当である。 (3) 電解液の補充が多すぎるとマーキングパターンに滲みが発生する一方,少なすぎると掠れが発生し,かつ,表面がエッチングされて傷が残るため,再度マーキングすることはできない。 (4) 解像度に限度があり,同法では0.2mm幅の線が限界であるし, また,上記(3)の理由によって明瞭さに欠ける。」 (イ) 一方,湿式鍍金法は,電解マーキング法と比較して電流密度及び時間の設定により皮膜厚さを任意に変えることができ,しかも,被加工面をエッチングすることがないので,精度を要求されるマーキングには最適であり,再度マーキングすることも可能である。例えば,黒クロム鍍金法は皮膜強度,色調,科学的安定性等に優れた皮膜が得られる。しか しながら,黒クロム鍍金法でマーキングする場合,印刷法・フォトレジスト法を利用して鍍金不要部の全面をマスクし,その後で鍍金処理を行なわなければならず,工程が複雑であって量産向きでないし,当然コストアップになることは避けられない。 (ウ) そこで,本発明の目的は安価なステンシルで被鍍金物を局部的にマ スクし,その被鍍金部分に部分鍍金を施すことによって,従来法と比較して物理的及び化学的に優れ,解像度が良好であると共に,再度のマーキングが可能であるマーキング法を提供することにある。 マ スクし,その被鍍金部分に部分鍍金を施すことによって,従来法と比較して物理的及び化学的に優れ,解像度が良好であると共に,再度のマーキングが可能であるマーキング法を提供することにある。 オ課題を解決するための手段上記本発明の目的は,ホルダー内に収容した被鍍金物の周面上にステン シルを密着させ,このステンシルに表現されている数字や文字等のパターンにしたがって,上記被鍍金物の周面上の被鍍金部分に流動する鍍金液を接触させて電気鍍金するマーキング法により達成される。 (2) 相違点3の容易想到性についてア上記(1)ウのとおり,甲3文献には,金属製の被加工物にマークを施す方 法として,交流電源による電解マーキング法(甲3記載技術)が一般に採用されている旨が記載されており,相違点3に係る構成(認識マークが交流電源による電解マーキングによって刻印されること)が記載されているものといえる。 そこで,本件出願時における当業者が,甲3記載技術を甲1発明に適用 することを容易に想到することができたか否かについて,以下,検討する。 イ(ア) 前記2(1)のとおり,甲1発明は,プリント配線板との位置合わせ用のマークであるアライメントマーク(認識マーク)を備えた金属製の印刷用マスクに関する発明である(甲1【0001】ないし【0003】)。 また,アライメントマークは,印刷用マスクをプリント配線板に対して正しい位置に配置するためのものであり,カメラで読み取られるなどし てその位置座標が正確に認識されることによって位置合わせ用のマークとしての機能を果たすものといえる(甲1【0003】,【0004】)から,形成されるアライメントマークには,その形状や記載内容に係る精度よりも,マークの位置や輪郭の寸法に係る精 位置合わせ用のマークとしての機能を果たすものといえる(甲1【0003】,【0004】)から,形成されるアライメントマークには,その形状や記載内容に係る精度よりも,マークの位置や輪郭の寸法に係る精度が強く求められるものということができる。 他方で,上記(1)のとおり,甲3文献には,高速度鋼や超鋼合金製の工具類に文字や数字等のパターンをマーキングする方法として,甲3記載技術が従来の技術として挙げられるとともに,その課題を解決する手段として湿式鍍金法を用いたマーキング方法が記載されている。そして,甲3文献に記載されたこれらの技術は,高精度を要求されるドリル等の 工具類に識別情報としての文字や数字等を表示するためのものであるから,マーキングされる文字や数字等には,その位置や大きさに係る精度よりも,文字や数字等としての明瞭さや高い解像度が強く求められるものということができる。 これらの事情を考慮すると,甲1発明及び甲3記載技術は,各技術が 属する分野が異なるものである上,技術の適用対象や要求される機能も異なるというべきである。 これに加え,前記2(1)のとおり,甲1発明における被加工品は,金属製の印刷用マスクであるところ,その材料としてはニッケル合金やニッケル-コバルト合金等が好ましいとされている(甲1【0012】)のに 対し,上記(1)によれば,甲3文献における被加工品は,高速度鋼や超硬 合金性の工具類であるから,甲1発明及び甲3記載技術は,被加工品の材料も異なる。 以上によれば,甲1発明及び甲3記載技術は,技術分野や技術の適用対象,要求される機能,材料がいずれも異なるというべきである。 (イ) 前記2(1)カによれば,甲1発明におけるアライメントマークの形 成方法は,印刷用マスクに は,技術分野や技術の適用対象,要求される機能,材料がいずれも異なるというべきである。 (イ) 前記2(1)カによれば,甲1発明におけるアライメントマークの形 成方法は,印刷用マスクに用いられる基板にエッチング法やレーザー加工法等によってあらかじめ凹部を設けた上で,当該凹部の少なくとも底部に電解めっき法等によって金属層を形成するというものである。これに対し,前記1(2)カ及び上記(1)ウによれば,甲3記載技術である交流電源による電解マーキング法においては,金属イオンの溶出及び再溶出 による凹みの発生と,溶出した金属イオンの付着及び再付着による皮膜の形成とは,同じ工程で行われるものと解すべきである(本件審決においても説示されているとおりである。)から,同法は,あらかじめ凹部を形成するという工程を経ることなく被加工物の表面に皮膜を形成するというものである。このように,甲1発明と電解マーキング法は,あらか じめ凹部を形成するという工程を経るか否かという点において実質的に異なる金属層又は皮膜の形成方法であるから,技術の内容においても違いが存するものというべきである。 また,このほか,本件において原告が証拠として提出した各文献において,電解マーキング法を甲1発明に適用し得ることが示唆されている といえるものは存しない。 (ウ) 以上のとおり,甲1発明及び甲3記載技術は,技術分野や技術の適用対象,要求される機能,材料,技術の内容の各点において異なるものである上,甲1文献その他の各文献において,甲3記載技術を甲1発明に適用し得ることを示唆する記載があるともいえないことからすれば, 本件出願時における当業者において,甲3記載技術を甲1発明に適用す る動機付けがあったということはできない。 明に適用し得ることを示唆する記載があるともいえないことからすれば, 本件出願時における当業者において,甲3記載技術を甲1発明に適用す る動機付けがあったということはできない。 ウ(ア) 前記2(1)ウ及びエのとおり,甲1発明は,従来の印刷用マスクにおいては,アライメントマークとして充填されたカーボン樹脂等が洗浄の際に離脱してしまうという課題が存在したことから,このような離脱等を防止するとともに,確実にしかも容易に認識することができるアライ メントマークを形成することを目的としている。そして,前記2(1)カのとおり,甲1発明においては,この課題を解決するための手段として,印刷用マスクに用いられる基板にあらかじめ凹部を設けた上で,当該凹部の少なくとも底部に金属層を形成する方法が採用されているところ,金属層を形成する方法としては電解めっき法等のめっき法が好ましいと されている(甲1【0024】)。 (イ) 他方で,上記(1)のとおり,甲3文献においては,電解マーキング法について,金属製の被加工物にマークを施す方法として一般に採用されているものの,欠点(1)ないし(4)を有することから,これらの欠点を克服するための方法として,電気鍍金(電解めっき)を用いた文字や数字 等のマーキング方法を採用すべきである旨が記載されている。 (ウ) そうすると,甲1文献においては,めっき法を採用するのが好ましいとされている一方で,甲3文献においては,甲3記載技術である電解マーキング法について,電解めっき法に劣るマーキング方法であると否定的な評価がされているのであるから,甲1文献及び甲3文献に接した 当業者が,敢えてめっき法とは異なる甲3記載技術を甲1発明に適用しようとすることは考え難いというべ るマーキング方法であると否定的な評価がされているのであるから,甲1文献及び甲3文献に接した 当業者が,敢えてめっき法とは異なる甲3記載技術を甲1発明に適用しようとすることは考え難いというべきである。 (エ) また,上記(ア)によれば,甲1発明においては,アライメントマークの耐久性や識別性等の向上がその目的とされているといえるのに対し,上記(1)エ(ア)のとおり,甲3文献においては,甲3記載技術につい て,「得られるマーキング皮膜は・・・安定した黒色皮膜を得ることが困 難であり,皮膜の退色,離脱,溶出等の問題がある」(欠点(1)),「明瞭さに欠ける」(欠点(4))など,上記の甲1発明の目的を達することを阻害する欠点が存在する旨が記載されている。 (オ) 以上の各事情を考慮すると,甲3記載技術を甲1発明に適用することについては,阻害要因があるというべきである。 エ以上検討したところによれば,本件出願時における当業者において,甲3記載技術を甲1発明に適用する動機付けはなく,むしろ,これを適用することには阻害要因があったというべきである。 したがって,相違点3につき,本件出願時における当業者が,甲3記載技術を甲1発明に適用することを容易に想到することができたというこ とはできない。 (3) 原告の主張について以上に対し,原告は,当業者が甲3記載技術を甲1発明に適用することを容易に想到することができたとして種々の主張をするが,次のとおり,いずれも採用することができない。 ア原告は,甲1発明と甲3記載技術とは,他の部位と異なる反射率を有する金属層を形成し,周辺部との色彩差によりマークを認識させるという点で課題・作用の共通性を有し,機能も共通している上,両者は「治工具」とし ,甲1発明と甲3記載技術とは,他の部位と異なる反射率を有する金属層を形成し,周辺部との色彩差によりマークを認識させるという点で課題・作用の共通性を有し,機能も共通している上,両者は「治工具」として技術分野においても密接に関連するものであるなどと主張する。 しかしながら,上記(2)イ(ア)で検討したとおり,甲1発明及び甲3記載 技術は,技術分野や技術の適用対象,要求される機能,材料,技術の内容がいずれも異なるものというべきであるところ,原告主張の共通点は,これらの違いにもかかわらず,甲3記載技術を甲1発明に適用する動機付けとなるほど大きな要素であるということはできない。 イ原告は,電解マーキング法においても,エッチング作用によって皮膜形 成の前に必ず凹部が形成されるから,凹部の形成の有無は電解マーキング 法と甲1発明との間の実質的な相違とはいえず,また,甲1発明において凹部が形成される場合であっても,甲3記載技術を甲1発明に適用する動機付けはあるなどと主張する。 しかしながら,上記(2)イ(イ)で検討したとおり,甲1発明と電解マーキング法とは,あらかじめ凹部を形成するという工程を経るか否かという点 において実質的に異なる金属層又は皮膜の形成方法であるというべきであるから,電解マーキング法において,認識マーク形成部の表面から金属イオンが溶出するという現象(本件明細書【0024】参照)が生ずることをもって,同法と甲1発明との間の実質的な相違には当たらないということはできない。 ウ原告は,甲3文献において,円柱形状ではなく平板形状の被加工物に対して電解マーキング法によりマークを施す技術が開示されていることなどから,甲3記載技術を甲1発明に適用し得ることの示唆があるなど ウ原告は,甲3文献において,円柱形状ではなく平板形状の被加工物に対して電解マーキング法によりマークを施す技術が開示されていることなどから,甲3記載技術を甲1発明に適用し得ることの示唆があるなどと主張する。 しかしながら,上記(2)ウで検討したとおり,甲3文献においては,甲3 記載技術について,各種の欠点を有するマーキング方法であると記載されている。 そうすると,甲3文献において,平板形状の被加工物にマークを施すことを想定した記載があるからといって,甲3記載技術を甲1発明に適用し得ることが示唆されているとみることはできないというべきである。 エ原告は,金属の素材や硬度等によりマーキング形成が難しい場合に電解マーキング法を用いることが,本件出願時において既に当業者に広く認識されていたなどと主張する。 そこで検討するに,証拠(甲15,16)及び弁論の全趣旨によれば,甲15文献は,平成16年前後に中野マーキングシステム株式会社が作成 した電解マーキング装置のパンフレットであり,同文献には,電解マーキ ング法によってニッケルを素材とした機械部品等への黒色マーキングをすることができる旨の記載が存在することが認められる。しかしながら,他にこの記載を紹介したり,あるいは,同様の記述をした文献等が存在したりしたことを裏付けるような証拠はなく,本件出願時において,甲15文献の記載内容が当業者の間においてどの程度知られていたかなどの事 情は不明というほかない。そうだとすれば,甲15文献の存在及び記載内容をもって,金属の素材や硬度等によりマーキング形成が難しい場合に電解マーキング法を用いることが,本件出願時において既に当業者に広く認識されていたものと認めることはできない。 オ原告は び記載内容をもって,金属の素材や硬度等によりマーキング形成が難しい場合に電解マーキング法を用いることが,本件出願時において既に当業者に広く認識されていたものと認めることはできない。 オ原告は,欠点(1)ないし(4)につき,甲3記載技術を甲1発明に適用する ことの阻害要因とはなり得ないなどと主張する。 しかしながら,上記(1)のとおりの甲3文献の記載内容によれば,欠点(1)ないし(4)は,電解マーキング法一般を念頭に置いた欠点を列挙したものと読むことができるのであって,そうであれば,同文献に接した当業者が,電解めっき法に劣るマーキング方法であると否定的に評価されている 甲3記載技術を,電解めっき法を採用するのが好ましいとされている甲1発明に敢えて適用しようとすることは考え難いというべきである。また,欠点(1)ないし(4)につき,本件出願時の時点において既に克服された欠点であることが技術常識又は周知の事項であったと認めるに足りる証拠は存しない。 したがって,欠点(1)ないし(4)は,甲3記載技術を甲1発明に適用することについての阻害要因となり得るというべきである。 カ原告は,欠点(4)に関して,甲3文献が対象としている細径ドリルに文字等を刻印する場合と,甲1発明が対象としているメタルマスクに位置合わせ用マークを刻印する場合とでは,要求される加工精度に差があるなどと 主張する。 しかしながら,上記(2)イ(ア)で検討したとおり,甲1発明のアライメントマークについても,メタルマスクとプリント配線板との位置を正確に合わせるための位置座標としての機能を果たすために,高い位置精度及び輪郭の寸法精度が要求されるものということができる。 そうすると,電解マーキング法によるマーキングの欠点として, 板との位置を正確に合わせるための位置座標としての機能を果たすために,高い位置精度及び輪郭の寸法精度が要求されるものということができる。 そうすると,電解マーキング法によるマーキングの欠点として,解像度 に限度がある上,明瞭さに欠けることを指摘する欠点(4)は,甲3記載技術を甲1発明に適用することについての阻害要因となり得るというべきである。 4 取消事由2(本件訂正発明2の進歩性についての判断の誤り)について前記2(2)によれば,相違点6は,実質的に相違点3と同様の内容であると認 められるところ,取消事由1について判断したところに照らすと,相違点6についても,本件出願時における当業者が,甲3記載技術を甲1発明に適用することを容易に想到することができたということはできない。 5 結論以上によれば,本件審決が,本件各訂正発明について,いずれも当業者が容 易に想到することができたとはいえず,進歩性があると判断したことに誤りはなく,原告が主張する取消事由は,いずれも理由がない。 よって,原告の請求は,理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 鶴岡稔彦 裁判官中平健 裁判官都野道紀 (別紙) 本件明細書図面目録 【図1】 【図2】 判官都野道紀 (別紙)本件明細書図面目録 【図1】【図2】【図3】【図4】【図5】【図6】【図7】【図8】【図9】【図10】【図11】 (別紙)甲3文献図面目録 (皮膜の符号「4」(図面の中央部)は,「5」の誤りであると認める。)

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