令和5(わ)159 殺人

裁判年月日・裁判所
令和6年8月29日 前橋地方裁判所
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判決文本文1,947 文字)

主文 被告人を懲役17年に処する。 未決勾留日数中460日をその刑に算入する。 理由 (犯罪事実) 被告人は、令和4年11月16日午後11時頃、群馬県伊勢崎市(住居省略)A方において、A(当時42歳)に対し、殺意をもって、その顔面、胸腹部、背面等を包丁(刃体の長さ約21.2センチメートル)で多数回突き刺すなどし、よって、同月17日午前0時22分頃、前橋市(住居省略)B病院において、Aを顔面、胸腹部及び背面の多数の刺創に基づく出血性ショックにより死亡させて殺害した。 (法令の適用)罰条刑法199条刑種の選択有期懲役刑未決勾留日数の算入刑法21条訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書 (量刑の理由) 1 被告人と被害者の夫は、同じネパール人として親しい関係にあったが、本件当日、被告人は、共通の友人(ネパール人)と共に、その友人の娘の荷物を運ぶため、被害者の夫から自動車を借りることになっていたところ、被害者の夫の都合で借りることができなくなった。その後、被告人は、同日午後7時頃から自宅でその友人と 一緒に飲酒したが、その際、その友人が被害者の夫の悪口を並び立てた。また、その間、被告人は、被害者の夫やその上司に繰り返し電話をかけたが、被害者の夫が電話に出ることはなかった。そのような中、被告人は、やにわに自宅にあった包丁を持ち出し、一人で被害者方に歩いて行った。被害者方には、被害者が一人だけでいたところ、被告人は、判示のとおり、被害者を包丁で多数回突き刺すなどして殺 害した。 2 本件の行為態様について見ると、被告人は、刃体の長さが約21.2センチメートルという殺傷能力の高い包丁を使い 判示のとおり、被害者を包丁で多数回突き刺すなどして殺 害した。 2 本件の行為態様について見ると、被告人は、刃体の長さが約21.2センチメートルという殺傷能力の高い包丁を使い、その刃が欠けたり、被害者の肝臓が切断したりするほどの強い力で、被害者の顔面、胸腹部、背面を多数回突き刺すなどしており、その行為態様は、強固な殺意に基づく残忍なものであったといえる。 被害者は、夜間、自宅に一人でいた際に、いきなり訪れた被告人からそのような 攻撃を受けて、かけがえのない生命を奪われており、その際には多大な恐怖感や痛みも伴っていたものと推察され、本件の結果は極めて重大である。被害者遺族も多大な精神的苦痛を被っており、厳しい処罰感情を有している。 被告人において、包丁を持ち出したり、被害者を包丁で突き刺すなどしたりした理由については、被告人が飲酒の影響で覚えていない旨供述しているため判然とし ない。前記1の経緯を見ると、共通の友人が被害者の夫から自動車を借りられなかったことや、その友人が被害者の夫の悪口を言ったことが関係しているとは考えられるが、自動車を借りられなくて困ったのは、その友人であって被告人ではなかったのであるし、そもそも、その貸し借りについて被害者が関与していた様子は全くない。そのような状況下で、何らの落ち度も見当たらない被害者の生命を奪った本 件犯行は、理不尽極まりないものというほかなく、その経緯及び動機に酌量の余地があるとは考えられない。 他方、弁護人は、被告人が犯行時アルコール酩酊状態にあり、そのことが本件犯行に大きく寄与した旨主張している。しかし、起訴前の精神鑑定の結果や被告人の犯行前後の行動等を踏まえると、犯行時における被告人のアルコール酩酊の程度は 軽度なものに過ぎなかったことが認め 件犯行に大きく寄与した旨主張している。しかし、起訴前の精神鑑定の結果や被告人の犯行前後の行動等を踏まえると、犯行時における被告人のアルコール酩酊の程度は 軽度なものに過ぎなかったことが認められる。また、被告人は、飲酒をすると自身に暴力的になる傾向があることを自覚していたにもかかわらず、自らの意思で飲酒をした上で本件犯行に至っている。それらのことからすれば、本件犯行時に飲酒状態にあったことは、被告人のために酌量すべき事情として評価できない。 3 その他に斟酌し得る一般情状としては、被告人が本件犯行を認め、後悔の念を示 し、遺族に対する謝罪の気持ちを述べていること、日本における被告人の前科が不 見当であることが指摘できる。 4 そこで、以上の情状を考慮し、刃物類を凶器とし、被害者が知人・友人等である殺人既遂事案の量刑傾向も参照して検討した結果、被告人を主文の刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑-懲役18年) 令和6年8月29日前橋地方裁判所刑事第1部 裁判長裁判官橋本 健 裁判官柴田裕美 裁判官藤井貴洋

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